(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106920
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】充放電検査装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240801BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
H02J7/00 Q
H02J7/00 A
H02J7/00 301A
H01M10/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011423
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】598072179
【氏名又は名称】株式会社片岡製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100211513
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100167438
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100166800
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 裕治
(72)【発明者】
【氏名】大西 克明
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 富士夫
(72)【発明者】
【氏名】福田 幹郎
(72)【発明者】
【氏名】加茂 繁雄
【テーマコード(参考)】
5G503
5H028
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA02
5G503BB02
5G503DA07
5G503EA09
5G503FA01
5H028AA10
5H028BB04
5H028BB10
5H028BB11
5H028CC08
(57)【要約】
【課題】充放電検査装置を大型化することなく、効果的に二次電池の温度上昇を抑制することができる充放電検査装置を提供することをと目的とする。
【解決手段】二次電池の充放電検査を行う充放電検査装置1であって、複数の二次電池8が装填された電池トレー7に対し、複数の二次電池8の正極側に位置し、複数の二次電池8のそれぞれに対応する複数のプローブ16と、冷却手段14を有し、電池トレー7を挟んでプローブ16の反対側に位置し、上下方向に移動することにより複数の二次電池8を前記プローブに向けて押圧する押圧ユニット5とを備えることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の充放電検査を行う充放電検査装置であって、
複数の二次電池が装填された電池トレーに対し、前記複数の二次電池の正極側に位置し、前記二次電池のそれぞれに対応する複数のプローブと、
冷却手段を有し、前記電池トレーを挟んで前記プローブの反対側に位置し、上下方向に移動することにより前記複数の二次電池を前記プローブに向けて押圧する押圧ユニットと
を備えることを特徴とする充放電検査装置。
【請求項2】
前記プローブは、正極用プローブおよび負極用プローブから成り、
前記充放電検査装置は、前記二次電池の一端側に正極用プローブおよび負極用プローブを当接して前記二次電池の充放電検査を行う片側プローブ方式である
ことを特徴とする請求項1に記載の充放電検査装置。
【請求項3】
前記充放電検査装置は、前記電池トレーを挟んで上側に前記押圧ユニットが備えられ、下側に前記複数のプローブが固定されているプローブユニットが備えられており、
前記充放電検査装置は、さらに、
前記電池トレーを載置する電池トレー台を備え、
前記押圧ユニットは、前記電池トレー台の上方から前記二次電池が前記プローブと接触するよう下降し、前記二次電池を押圧する
ことを特徴とする請求項2に記載の充放電検査装置。
【請求項4】
前記充放電検査装置は、さらに、
前記押圧ユニットおよび前記電池トレー台を上下動させる昇降シリンダを備え、
前記昇降シリンダは、
前記押圧ユニットと電池トレー台とを一体的に下降させて前記二次電池と前記プローブとを接触させ、
その後、前記押圧ユニットを下降させ、前記二次電池の上端部に当接させて押圧する
ことを特徴とする請求項3に記載の充放電検査装置。
【請求項5】
前記充放電検査装置は、前記電池トレーを挟んで上側に前記複数のプローブが固定されているプローブユニットが備えられ、下側に前記押圧ユニットが備えられており、
前記押圧ユニットは、前記電池トレーの下方から前記二次電池が前記プローブと接触するまで上昇し、前記二次電池を押圧する
ことを特徴とする請求項2に記載の充放電検査装置。
【請求項6】
前記押圧ユニットは、前記電池トレーに装填された前記複数の二次電池のそれぞれを対応するプローブに向けて個別に押圧する複数の電池押圧手段を備える
ことを特徴とする請求項3または請求項5に記載の充放電検査装置。
【請求項7】
前記正極用プローブを同軸型一本で構成し、前記負極用プローブを単極型2本で構成する
ことを特徴とする請求項2に記載の充放電検査装置。
【請求項8】
前記充放電検査装置は、さらに、
上下方向に移動する前記押圧ユニットの停止位置を前記二次電池の品種に応じて選択的に切り替える品種切替手段を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の充放電検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の性能試験を行う充放電検査装置に関し、特に検査対象である二次電池の温度上昇を抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン電池に代表される充電して繰り返し使用することのできる二次電池が、様々な電気機器や電子機器、ハイブリッド自動車、電気自動車等に採用されている。このような二次電池は、製造工程の最終段階において、充放電を繰り返し行う充放電検査装置にて性能試験が行われる。
二次電池の性能検査結果は温度の影響を受けやすいため、充放電検査装置においては、二次電池の温度上昇を抑制したり、複数の二次電池間における温度ムラを抑制する工夫がなされている。
例えば、特許文献1では、充放電検査装置の上方側に吸気口、下方側に通風孔と排気口とを設け、上方に拡散板を介して流入する温調空気を電池に向かって送風自在な複数の送風機を備えることにより、電池の温度ムラを抑制する技術が開示されている。特許文献2では、電源とプローブとを一体化した充放電ユニットを電池の片側(上方側)に複数配置し、また、充放電ユニットの隙間にファンを設けることにより、電源から電池への温度干渉を抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7015026号公報
【特許文献2】特許第6470804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、従来から充放電検査装置では二次電池の温度上昇を抑制するために様々な工夫が行われているが、特許文献1に開示されている技術は、単純に充放電検査装置に恒温槽を組み合わせた構造となっており、装置が大型化するという問題がある。また、特許文献2の技術は、電源から電池への温度干渉を抑制することはできるものの、充放電検査に伴う電池自身の温度上昇を抑制する効果が無い。
そこで本発明は、上記の問題点に鑑みなされたものであって、充放電検査装置を大型化することなく、効果的に二次電池の温度上昇を抑制することができる充放電検査装置を提供することをと目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明の充放電検査装置は、二次電池の充放電検査を行う充放電検査装置であって、複数の二次電池が装填された電池トレーに対し、前記複数の二次電池の正極側に位置し、前記二次電池のそれぞれに対応する複数のプローブと、冷却手段を有し、前記電池トレーを挟んで前記プローブの反対側に位置し、上下方向に移動することにより前記複数の二次電池を前記プローブに向けて押圧する押圧ユニットとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
上記の構成により、本発明の充放電検査装置は、充放電検査に伴い冷却手段を備えた押圧ユニットを上下動させることにより冷却手段と二次電池との距離が縮まり、効果的に二次電池の温度上昇を抑制することができる。また、冷却手段を押圧ユニットに備えることにより、装置の大型化およびそれに伴うコスト高を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態1に係る充放電検査装置1の全体構成を示す斜視図である。
【
図2】充放電検査中の充放電検査装置1を示す斜視図である。
【
図3】充放電検査中の充放電検査装置1を示す断面図である。
【
図4】充放電検査装置1における冷却方法(冷却風の流れ)を説明するための図である。
【
図5】(a)、(b)、(c)充放電検査装置1のプローブについて説明するための図である。
【
図6】(a)、(b)、(c)参考技術に係るプローブについて説明するための図である。
【
図7】実施形態2に係る充放電検査装置20の全体構成を示す斜視図である。
【
図8】充放電検査中の充放電検査装置20を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<概要>
本実施態様の一態様に係る充放電検査装置は、二次電池の充放電検査を行う充放電検査装置であって、複数の二次電池が装填された電池トレーに対し、前記複数の二次電池の正極側に位置し、前記二次電池のそれぞれに対応する複数のプローブと、冷却手段を有し、前記電池トレーを挟んで前記プローブの反対側に位置し、上下方向に移動することにより前記複数の二次電池を前記プローブに向けて押圧する押圧ユニットとを備えることを特徴とする。
充放電検査に伴い冷却手段を備えた押圧ユニットを上下動させることにより、冷却手段と二次電池との距離が縮まり、効果的に二次電池の温度上昇を抑制することができる。
【0009】
本実施態様の別態様に係る充放電検査装置において、前記プローブは、正極用プローブおよび負極用プローブから成り、前記充放電検査装置は、前記二次電池の一端側に正極用プローブおよび負極用プローブを当接して前記二次電池の充放電検査を行う片側プローブ方式であることを特徴とする。
片側プローブ方式とすることにより、二次電池の両端側の端子にプローブを当接して充放電検査を行う両側プローブ方式と比較すると、配線やメンテナンスが容易であったり、またコストを抑制したりすることができる。
【0010】
本実施態様の別態様に係る充放電検査装置は、前記電池トレーを挟んで上側に前記押圧ユニットが備えられ、下側に前記複数のプローブが固定されているプローブユニットが備えられており、前記充放電検査装置は、さらに、前記電池トレーを載置する電池トレー台を備え、前記押圧ユニットは、前記電池トレー台の上方から前記二次電池が前記プローブと接触するように下降し、前記二次電池を押圧することを特徴とする。
このように、充放電検査装置は下側プローブ方式に適用可能である。下側プローブ方式の場合において、前記充放電検査装置は、さらに、前記押圧ユニットおよび前記電池トレー台を上下動させる昇降シリンダを備え、前記昇降シリンダは、前記押圧ユニットと電池トレー台とを一体的に下降させて前記二次電池と前記プローブとを接触させ、その後、前記押圧ユニットを下降させ、前記二次電池の上端部に当接させて押圧することを特徴とする。
【0011】
これにより、二次電池とプローブとの接触を確実に行うことができる。
本実施態様の別態様に係る充放電検査装置は、前記電池トレーを挟んで上側に前記複数のプローブが固定されているプローブユニットが備えられ、下側に前記押圧ユニットが備えられており、前記押圧ユニットは、前記電池トレーの下方から前記二次電池が前記プローブと接触するように上昇し、前記二次電池を押圧することを特徴とする。
この構成によると、プローブは固定されており上下動することがないため、二次電池との接触の安定性が向上する。
本実施態様の別態様に係る充放電検査装置において、前記押圧ユニットは、前記電池トレーに装填された前記複数の二次電池のそれぞれを対応するプローブに向けて個別に押圧する複数の電池押圧手段を備えることを特徴とする。
【0012】
これにより、個々の二次電池を個別に押圧することが可能となり、仮に電池トレーが撓みなどにより変形している場合であっても、すべての二次電池においてプローブとの接触の安定性が向上する。
本実施態様の別態様に係る充放電検査装置は、前記正極用プローブを同軸型一本で構成し、前記負極用プローブを単極型2本で構成することを特徴とする。
このように、プローブが二次電池に対して対称配置され、かつ最小本数で構成されるため、二次電池に対してバランス良くプローブ接触が安定して行えると共に、冷却風による冷却効率が向上する。
本実施態様の別態様に係る充放電検査装置は、さらに、上下方向に移動する前記押圧ユニットの停止位置を前記二次電池の品種に応じて選択的に切り替える品種切替手段を備えることを特徴とする。
【0013】
現在、一般的に使用されている代表的な二次電池はリチウムイオン電池であるが、リチウムイオン電池はその容量、大きさの異なる複数の種類が存在する。そこで、充放電検査装置が品種切替手段を備えることにより、複数種類の二次電池の充放電検査を一台の装置で行うことが可能となる。
<実施形態1>
ここでは、本発明の一実施態様に係る充放電検査装置1について図面を参照しながら説明する。
(1)充放電検査装置1の全体構成
【0014】
図1は、充放電検査装置1の全体構成を示す斜視図である。
充放電検査装置1は、電池トレー7に収容された状態で搬入される複数個の二次電池8の各々の電極にプローブ16を接続し、二次電池8の充電および/または放電を伴う充放電検査を実施するものである。
実施形態1の充放電検査装置1は、各々の二次電池8の一端側に3本のプローブ16を当接させて検査を行う片側プローブ方式あって、特に、二次電池8の下方にプローブ16が位置する下プローブ方式である。
【0015】
充放電検査装置1は、下部フレーム2と上部フレーム3とが4本の支柱4により連結されており、下部フレーム2には、複数のプローブ16を備えたプローブユニット15が固定されている。各プローブ16は金属製であり、プローブユニット15は塩化ビニル等の絶縁材料から成る。各プローブ16の基端部がプローブユニット15に支持されている。フレーム2と上部フレーム3との間には、二次電池8をプローブ16に向けて押し当てるための押圧ユニット5が配置されている。
押圧ユニット5には電池トレー台6が吊持されている。具体的には、電池トレー台6は、4本の吊棒6aと、当該4本の吊棒6aにて押圧ユニット5に吊持されている2本の長尺状の底フレーム6bと、水平方向位置決めを行うためのストッパ6cを備える。二次電池8の充放電検査を行う際には、検査対象となる複数個の二次電池8を電池トレー7に収容した上、その電池トレー7を充放電検査装置1の電池トレー台6に搬入する。充放電検査装置1では、二次電池8の正極側を下向きに負極側を上向きにして電池トレー7に収容する。こうして、電池トレー台6の底フレーム6bには複数の二次電池8が装填された状態の電池トレー7が載置される。
【0016】
充放電検査装置1はエアシリンダまたは液圧シリンダ等で構成されるアクチュエータ9を左右に備えており、押圧ユニット5は、アクチュエータ9によりその高さ位置を上下動させることが可能である。電池トレー台6は支柱4を介して押圧ユニット5に対し吊持されているため、電池トレー台6も押圧ユニット5と一体的に上下動する。
図1に示す充放電検査装置1は、充放電検査の前後の状態であり押圧ユニット5が最上位に位置する開状態を示している。開状態のときにスタッカークレーン等により電池トレー7を搬入および搬出する。
図2および
図3に示す充放電検査装置1は、充放電検査のために押圧ユニット5を下降させた閉状態を示している。
【0017】
押圧ユニット5は、電池トレー7に装填可能な二次電池8の数と一致する数の電池押圧手段13を備える。一例として電池押圧手段13は円筒形であり、電池押圧手段の底面の径は、二次電池8の径と同程度の大きさである。各電池押圧手段13の底面がそれぞれ対応する二次電池8の上面を押圧する。下部フレーム2にはスプリングを内蔵した4本のストッパ部材10が固定されており、
図2および
図3に示すように、下降した電池トレー台6の底フレーム6bがストッパ部材10の上面に当接することにより、電池トレー7の高さ位置が制限される。
【0018】
ここで、充放電検査装置1は、まず、押圧ユニット5と電池トレー台6とを一体的に下降させると、電池トレー台6の底フレーム6bがストッパ部材10の上面に当接し、電池トレー台6の下降が停止する。この時点で二次電池8は、プローブ16のバネ押圧により電池トレー7に対して押し上げられている仮接触状態となる。引き続き、押圧ユニット5のみが下降すると、電池押圧手段13のそれぞれが対応する各二次電池8に当接し、当接した状態のまま押圧ユニット5をストッパ部材12が品種切替手段11の突起部(後述)に接触する位置まで下降させることで、二次電池8に仮接触状態にあるプローブ16の先端を下方に押し戻す。これにより、二次電池8とプローブ16とを確実に当接させることができる。
【0019】
一般的に電池トレー7は樹脂成型品であるため、使用回数や使用頻度等の使用状況によっては、その形状が撓みや歪みなどにより変形することがある。二次電池8の高さが電池トレー7の底面で決定される構造の場合、電池トレー7に変形が生じた状態で使用すれば、プローブ16と二次電池8との接触度合いが不均一となることがあるが、これが充放電検査の精度低下を招く恐れがある。そこで、充放電検査装置1は、それぞれの二次電池8に対応する複数の電池押圧手段13を押圧ユニット5に設け、各電池押圧手段13が個々の二次電池8を押圧することにより、電池トレー7の変形を考慮せずともすべての二次電池8に適正な押圧がなされ、安定したプローブ16との接触が実現可能となる。
【0020】
充放電検査装置1が対象とする二次電池8は一例として円筒型リチウムイオン電池であるが、現在一般的に使用されているリチウムイオン電池のセルサイズは、18650サイズ(直径18mm×高さ65mm)、および、2170サイズ(21mm×70mm)である。また、今後の電気自動車での標準仕様が予想される4680サイズ(46mm×80mm)等もある。セルサイズが大きくなれば電池トレー7の撓みも大きくなるため、特にセルサイズの大きな二次電池の充放電検査においては、個々の二次電池8を押圧することが可能な電池押圧手段13を備える構成は有利である。
また、複数種類の二次電池に対応するため、充放電検査装置1は、検査対象の二次電池8の大きさに応じて電池押圧手段13の下降距離を変更する品種切替手段11を下部フレーム2の左右に備えている。
【0021】
品種切替手段11は、一例として、
図1~
図3に示すように、2つの高さの異なる突起部11aおよび11bを備え、検査対象となる二次電池8の種類に応じて突起部11aまたは11bの何れかを選択的に使用する。具体的には、品種切替手段11は、突起部11aおよび突起部11bの位置を下部フレーム2の上面において変位させる任意のスライド機構を備える。さらに、押圧ユニット5における品種切替手段11に対向する位置にはストッパ部材12が固定されており、検査対象となる二次電池8の種類に応じて、突起部11aおよび突起部11bの何れを使用するか選択し、選択した突起部11aまたは突起部11bがストッパ部材12と当接するように、スライド機構により位置を変位させる。これにより、選択された突起部11aまたは突起部11bとストッパ部材12とが当接することにより、電池押圧手段13の下降を停止させる。
【0022】
(2)充放電検査装置1の冷却方法
図1に示すように、押圧ユニット5の天板には2つの冷却手段14が備えられている。冷却手段14は、充放電検査中の二次電池8の温度が周辺環境温度よりも例えば10℃以上上昇しないように、温度上昇を抑制する機能を有する。一例として、本実施形態の冷却手段は、ラジエータ(熱交換器)とファンとを含んで構成され、各二次電池8に供給するための冷却風を生成する。二次電池の充放電による自己発熱が大きくなると測定値に影響を与える。特に大型の二次電池では充放電による自己発熱が大きくなる傾向にある。自己発熱の影響によりセル温度にバラツキが生じると良品を不良品と認定する誤判定を招くこともある。
一例として、充放電検査装置1の冷却手段14は、周辺環境温度より5℃程度低い温度の水を流し、さらに外気により冷やされた空気(冷却風)を電池トレー7に送り込む。
【0023】
また、先に説明したように、充放電検査装置1は、充放電検査のために押圧ユニット5が下方へ移動するので、それに伴い押圧ユニット5に固定されている冷却手段14も下降する。これにより、冷却手段14は、充放電検査中の二次電池8の極めて近傍から二次電池8を冷却することが可能となる。装置に対して冷却手段が固定されている場合と比較して冷却効果を高めることができる。
図3は、充放電検査装置1の断面図である。同図に示すように、押圧ユニット5は中空構造であり、冷却手段14により冷やされた空気(冷却風)を内部(中空構造)に溜めて温度を均一化する機能を有する。さらに、押圧ユニット5は複数のスリット5aを有し、均一化された冷却風はスリット5aを介して二次電池8に供給される。
【0024】
充放電検査装置1の冷却方法について、
図4および
図5を用いてさらに説明する。
図4に示すように、2つの冷却手段14により冷やされた冷却風は押圧ユニット5の内部に入り込んで拡散し、温度が均一化される。これは冷却手段14の設置位置に関わらず複数の二次電池8を均一に冷却するためである。続いて、押圧ユニット5の各スリット5aから二次電池8に向けて冷却風を吹き付ける。電池トレー7は、冷却手段14にて生成された冷却風が二次電池8を通り外部に排出するための十分な抜け穴(通風孔)が形成されており、冷却風は二次電池8の周囲を通り電池トレー7の通風孔から外部に排出される。
【0025】
(3)プローブ16の構成
充放電検査装置1は、二次電池8の一端にプローブ16の先端を接触させて、図示していない電源から供給された電源電圧をプローブ16に印加して二次電池8を充電し、および/または、二次電池8に充電されている電荷を、プローブ16を介して放電させる充放電検査を行う。さらに、充放電検査装置1は、二次電池8の充放電の際にプローブ16に流れる電流の大きさや、二次電池8の端子間の電圧を測定する。
充放電検査装置1で用いるプローブ16は、二次電池8の一端にプローブ16の先端を接触させる片側プローブ方式である。二次電池の両端にプローブ接触させて充放電検査を行う両側プローブ方式もあるが、片側プローブ方式は両側プローブ方式と比較すると、配線やメンテナンスが容易であり、これに伴いコスト的なメリットもある。
【0026】
図5(a)は充放電検査装置1が検査対象としている二次電池8の一般的な外観を示す斜視図である。同図に示すように、二次電池8は電池上面に着目すると、中心に正極があり、外周縁上に負極がある。充放電検査装置1では、各二次電池8の電池上面を下向きにして電池トレー7に収容する。
また、
図5(b)に示すように、本実施形態で用いるプローブ16は、1本の同軸プローブ16a(V+,I+)と2本の単極プローブ16b(V-,I-)とから構成され、正極に同軸プローブ16aを当接させ、負極に2本の単極プローブ16bを当接させる。同軸プローブ16aは、1本のプローブに電流用の端子と電圧用の端子とを接続することが可能である。1本のプローブで構成することにより、複数プローブで構成する場合に比べて省スペース、低コストとできる。また、プローブ数が少ないため、冷却風が通り抜けやすく冷却効果も高まる。
【0027】
ここで、
図5(b)および(c)に示すように、正極側のプローブ16aの接触面形状と負極側のプローブ16bの接触面形状とは同一であり、正極側の同軸プローブ16aは、接触面の全体が二次電池8の正極と当接し、負極側の単軸プローブ16bは、接触面の一部が負極と当接するように構成されている。これにより、個々の二次電池8の位置ずれに対して確実にプローブ16を当接することができる。また、負極側の2本の単極プローブ16bは、正極側の同軸プローブ16aを挟んで対向する位置に配置されている。これにより当接時のバランスを良好に確保することができる。
次に、
図6を用いて参考技術1および参考技術2のプローブについて説明する。
図6(a)は参考技術1のプローブを説明するための図である。参考技術1は、本実施形態の充放電検査装置1と同様に上プローブ方式の充放電検査装置であって、二次電池(1)の中央に正極用の4本のプローブ(6a)が当接し、周囲に負極用の4本のプローブ(6b)が当接する構成である。
【0028】
図6(b)および(c)は参考技術2のプローブを説明するための図である。参考技術2の充放電検査装置も上プローブ方式である。二次電池の検査にあっては、蓄電池トレー104に載置した二次電池40に対し、先ず内側に配置された4本のコンタクトプローブ101を二次電池の第1の電極端子41と接触させる(
図6(b))。その後、外側に配置された4本のコンタクトプローブ101を二次電池の第2の電極端子42と接触させる(
図6(c))。
参考技術1および参考技術2は何れも正極用のプローブ4本および負極用のプローブ4本の計8本のプローブを二次電池に当接させて検査を行う構成である。一方、本実施形態の充放電検査装置1は、正極用のプローブ1本および負極用のプローブ2本の計3本のプローブを二次電池8に当接させて検査を行う構成であり、これら参考技術と比較すると、プローブ数が少なく冷却手段14による冷却風の効果を十分に発揮することができる。
【0029】
(4)実施形態の効果
以上説明したように、充放電検査装置1によれば、充放電検査中の二次電池8の近傍で冷却手段14を稼働させて二次電池8を冷却することにより、二次電池8の温度上昇を抑制し、正確な検査を行うことが可能となる。そのため、二次電池8の不良判断、ランク分け判断の精度向上により、二次電池8の歩留まり向上と低コスト化を実現する。
また、冷却手段14を押圧ユニット5に備えることにより、装置の大型化およびそれに伴うコスト高を抑制することができる。
【0030】
<実施形態2>
ここでは、本発明の一態様である実施形態2について説明する。実施形態2に係る充放電検査装置20は、実施形態1の充放電検査装置1と同様に、各々の二次電池8の一端側に3本のプローブ16を当接させて検査を行う片側プローブ方式である。充放電検査装置1と異なる点は、充放電検査装置20は、二次電池8の上方にプローブ16が位置する上プローブ方式である。そのため、実施形態1で説明した各構成要素が概ね上下反転して配置されている。充放電検査装置20では、二次電池8の正極側を上向きに、負極側を下向きにして電池トレー7の電池収容部に収容する。
図7および
図8において、実施形態1と同様の構造および/または同様の機能を有する構成要素については、実施形態1と同じ符号を用いている。
【0031】
図7および
図8に示すように、充放電検査装置20は、下部フレーム22と上部フレーム23とが4本の支柱4により連結されている。上部フレーム23には、複数のプローブ16を備えたプローブユニット15が固定されており、下部フレーム22には電池トレー台26が固定されている。電池トレー台26には、検査対象となる複数個の二次電池8が装填された状態の電池トレー7が載置される。電池トレー7の構造は、実施形態1で説明したとおりである。
下部フレーム22と上部フレーム23との間には、二次電池8をプローブ16に向けて押し当てるための押圧ユニット25が配置されている。
【0032】
充放電検査装置20は、充放電検査装置1と同様にアクチュエータ9を左右に備えており、押圧ユニット25は、アクチュエータ9によりその高さ位置を上下動させることが可能である。充放電検査を行う際には、
図8に示ように、押圧ユニット25を上昇させて押圧ユニット25の上面で電池トレー7を押し上げ、プローブユニット15に向かって押圧する。これにより、各二次電池8を対応するプローブ16に当接させる。 なお、充放電検査装置20も複数種類の二次電池に対応可能なように、押圧ユニット25に品種切替手段11が備えられている。
電池トレー7は、開状態(
図7)のときは電池トレー台26に載置されているが、押圧ユニット25が上昇し、押圧ユニット25が電池トレー7に当接して以降は、
図8に示すように電池トレー台26を離れ、押圧ユニット25の上面に載置されている状態となる。
【0033】
押圧ユニット25には2つの冷却手段14が備えられている。充放電検査のために押圧ユニット25が上方へ移動するので、それに伴い押圧ユニット25に固定されている冷却手段14も上昇する。これにより、冷却手段14は、充放電検査中の二次電池8の極めて近傍から二次電池8を冷却することが可能となり、装置に対して冷却手段が固定されている場合と比較して冷却効果を高めることができる。
以上説明したように、充放電検査装置20によれば、プローブ16と二次電池8との接触を確実に行いながら、充放電検査中の二次電池8の近傍で冷却手段14を稼働させて二次電池8を冷却することにより、二次電池8の温度上昇を抑制し、正確な検査を行うことが可能となる。そのため、二次電池8の不良判断、ランク分け判断の精度向上により、二次電池8の歩留まり向上と低コスト化を実現する。
【0034】
また、実施形態2ではプローブユニット15が上部フレーム23に固定されており上下動しないため、各プローブ16と二次電池8との接続の安定性が向上する。
また、均一で効率のよい電池冷却を行うことが可能な充放電検査装置20を小型および低コストで実現することができる。
<その他の変形例>
以上、本発明の実施態様として、充放電検査装置1および充放電検査装置20について説明したが、本発明は上記に説明した充放電検査装置1および充放電検査装置20に限定されないのは勿論であり、上記の実施形態1および実施形態2を以下のように変更することも可能である。
【0035】
ここでは、上記の実施形態1および実施形態2の変形例を説明する。上記の実施形態1および実施形態2と以下に説明する変形例とを如何様にも組み合わせることができる。
(1)上記の実施形態1では、押圧ユニット5がプローブ16の数と一致する数の電池押圧手段13を備える構成であったが、この構成は必須ではない。例えば、複数本の二次電池8に対し一つの電池押圧手段で押圧する構成であってもよいし、実施形態2で説明したように、複数の二次電池8が収納された電池トレー7を一括で押圧する構成であってもよい。
【0036】
(2)実施形態1および実施形態2では、押圧ユニット5および押圧ユニット25に2つの冷却手段14が搭載されているが、この構成は必須ではない。冷却手段14は少なくとも一つあれば足りる。また、2つ以上の冷却手段14を備える場合の配置も任意である。
(3)実施形態1および実施形態2において、検査対象となる二次電池の種類に応じて、品種切替手段11を削除してもよいし、突起部を増加させてもよい。
(4)実施形態2において、押圧ユニット25は個々の二次電池8を押圧する電池押圧手段を備えていても良い。
(5)実施形態1および実施形態2は、円筒型二次電池の例で説明したが、角型形状の二次電池であっても良い。
【符号の説明】
【0037】
1 充放電検査装置(実施形態1)
2 下部フレーム
3 上部フレーム
4 支柱
5 押圧ユニット
6 電池トレー台
7 電池トレー
8 二次電池
9 アクチュエータ(昇降シリンダ)
10 ストッパ部材
11 品種切替手段
12 ストッパ部材
13 電池押圧手段
14 冷却手段
15 プローブユニット
16 プローブ
20 充放電検査装置(実施形態2)
22 下部フレーム
23 上部フレーム
25 押圧ユニット
26 電池トレー台