(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106930
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】冷却部材
(51)【国際特許分類】
C09K 5/14 20060101AFI20240801BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
C09K5/14 E
H05K7/20 Y
H05K7/20 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011438
(22)【出願日】2023-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】520170852
【氏名又は名称】株式会社日進産業
(74)【代理人】
【識別番号】100126712
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 督生
(72)【発明者】
【氏名】石子 達次郎
【テーマコード(参考)】
5E322
【Fターム(参考)】
5E322AA03
5E322FA04
5E322FA09
(57)【要約】
【課題】日照による外部要因の温度上昇、熱源による内部要因の温度上昇のそれぞれに対応して温度上昇を抑制し、日中・夜間のいずれでも温度上昇を抑制できる冷却部材を提供する。
【解決手段】本発明の冷却部材は、内部に熱源を収納する構造物の外壁に使用される冷却部材であって、
前記外壁の表面に形成される接着層と、
前記接着層の表面に形成される熱放射層と、を備え、前記構造物の内部空間より外部の温度が高い場合には、前記熱放射層は、外部からの熱を遠赤外線に変換して外部に放射し、前記構造物の外部より内部空間の温度が高い場合には、前記熱放射層は、前記熱源からの熱を遠赤外線に変換して外部に放射し、前記熱放射層は、複数の中空セラミックスと、前記複数の中空セラミックス同士を接続する樹脂バインダとを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に熱源を収納する構造物の外壁に使用される冷却部材であって、
前記外壁の表面に形成される接着層と、
前記接着層の表面に形成される熱放射層と、を備え、
前記構造物の内部空間より外部の温度が高い場合には、
前記熱放射層は、外部からの熱を遠赤外線に変換して外部に放射し、
前記構造物の外部より内部空間の温度が高い場合には、
前記熱放射層は、前記熱源からの熱を遠赤外線に変換して外部に放射し、
前記熱放射層は、
複数の中空セラミックスと、
前記複数の中空セラミックス同士を接続する樹脂バインダとを有する、冷却部材。
【請求項2】
前記熱放射層は、外部からの熱の内、近赤外線を外部に反射する、請求項1記載の冷却部材。
【請求項3】
前記外部からの熱は、日照によるものである、請求項1記載の冷却部材。
【請求項4】
前記熱源は、電子基板、電子機器、通信機器、キュービクルおよび監視機器の少なくとも一つである、請求項1記載の冷却部材。
【請求項5】
前記複数の中空セラミックスは、複数の異なる粒径の中空セラミックスを含む、請求項1記載の冷却部材。
【請求項6】
前記中空セラミックスは、金属酸化物を含み、
前記金属酸化物は、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化第二鉄(Fe2O3)、酸化ナトリウム(Na2O)、酸化カリウム(K2O)、酸化チタン(TiO2)、酸化セリウム(CeO2)、二酸化ケイ素(SiO2)、三酸化アンチモン(Sb2O3)の少なくとも一つを含む、請求項1記載の冷却部材。
【請求項7】
前記樹脂バインダーは、アクリル樹脂にシリコンを添加したものである、請求項1記載の冷却部材。
【請求項8】
前記熱放射層の厚みは、前記熱源から伝導される熱を乱反射して閉じ込める熱量よりも、前記熱源から伝導される熱を遠赤外線に変換して放射する熱量が大きくなる厚みである、請求項1記載の冷却部材。
【請求項9】
内部空間を形成する外壁と、
前記内部空間に収納された熱源と、
前記外壁の外周の少なくとも一部に形成される請求項1から8のいずれか記載の冷却部材と、を備える構造物。
【請求項10】
前記構造物は、外部に設置される、請求項9記載の構造物。
【請求項11】
前記構造物は、変電設備、配電設備、通信基地局、監視設備および電気制御設備の少なくとも一つを含む、請求項10記載の構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部に設置され内部に熱源を有する構造物の日中および夜間のいずれでも、内部の温度上昇を抑制する冷却部材に関する。
【背景技術】
【0002】
世の中には、外部に設置されて内部に熱源を収納する構造物が多数存在する。この熱源とは、燃焼などによっての熱源だけを言うのではなく、電源や電気回路などのように、電気動作による温度上昇を伴う熱源を含む。
【0003】
例えば、電源ボックス、変電所の変電ボックス、通信基地局、通信設備ボックス、配電盤ボックス、監視装置ボックスなど、電気動作が行われる電気回路や電源を収納した筐体である「熱源を収納する構造物」が、様々な場所に設置されている。内部に収納された電気回路や電源は、電気動作を行う。必要となる電気信号による電気動作を行う。この電気動作に伴って発熱が生じる。すなわち、熱源が存在する状態である。これらの電気回路などが熱源となるからである。
【0004】
このような熱源を収納する構造物は、その種類や用途によっては、外部に設置されている。例えば、変電ボックス、通信基地局、監視装置ボックスなどは、その性質上により外部に設置されることが多い。外部に設置された状態で、変電に関する電気動作、通信動作、監視動作などの電気動作を実行する。
【0005】
これらの熱源を収納する構造物は、内部においては、熱源が熱を発生させている状態である。この熱の発生により、構造物の内部空間の温度が上昇する。また、構造物が外部に設置されていることで、日中においては太陽光を受けて外部からの熱も受ける状態となる。この外部からの熱も加わって、構造物の内部空間の温度上昇が更に進んでしまう問題がある。
【0006】
電気回路や通信設備を収納しているこのような構造物の内部空間の温度上昇が過剰になると、電気回路や通信設備の動作に悪影響が生じる。温度上昇によって、回路や電子部品の一部の動作保証範囲を超えて、誤動作に繋がる可能性がある。あるいは、温度上昇によって、電子部品などの故障が生じる可能性もある。
【0007】
また、通信設備などでは、非常にデリケートな電気信号を用いる。温度上昇が過剰になると、この電気信号のレベルや周波数に変動が生じてしまい、通信設備の動作エラーが生じる可能性もある。勿論、故障などにも繋がりえる。
【0008】
このとき、内部空間は電気回路や通信設備などの電気動作による発熱と、太陽光による照射での温度上昇との両面で温度上昇する。このため、内部空間の温度上昇は非常に大きなものとなっている。
【0009】
特に、近年の電気回路や通信設備の高機能化・高性能化に伴って、電気動作の量が大きくなっている。このため、電気回路などによる発熱も大きくなっている。加えて、地球温暖化による日照強度の増加により、太陽光の照射による熱量も大きくなってきている。二重の点で、内部空間の温度上昇が問題となっている。
【0010】
上述の通り、温度上昇が過剰となることでの、誤動作、動作エラー、故障などの問題につながる。このような構造物は、様々な場所に設置されており、誤動作や故障などに人的対応することが難しくなっている。設備の管理者や設置者にとっては、信頼性を上げつつ動作維持させることの、人的負担、コスト負担が大きな問題となっている。
【0011】
このような問題を未然防止するために、構造物内部を冷却する空調装置が設置されることが行われている。空調装置による温度上昇の抑制により、上述のような問題を解消しようとしている。このような技術が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1は、可搬型筐体に取り付けた冷却ファンが形成する冷却風の風上側に発熱量の大きい無線駆動系モジュール群を配置することで、無線駆動系モジュール群の冷却を効果的に実施できる無線通信ユニットを、開示する。
【0014】
冷却ファンにより、温度上昇を抑制することを目的としている。
【0015】
しかしながら、冷却ファンや空調設備を用いることは、電力消費が大きくなる。夏季などのように日照が強すぎる時期などにおいては、冷却ファンや空調設備に要する電力およびコストが大きくなりすぎる問題がある。
【0016】
特に、変電設備、通信基地局、通信設備などは、非常に多くの場所に設置されており、多くの場所での空調設備などに要するコストが積みあがることは、好ましくない。
【0017】
空調設備は必要であるとしても、その稼働量を抑制して、コストを削減することが求められる。当然に、空調設備の稼働量を抑えることは、環境負荷を低減することにおいても必要である。
【0018】
このため、構造物の外壁に断熱材を設けることで、日照による内部の温度上昇を抑制することも検討されている。しかしながら、構造物の内部空間は、日照による外部からの温度上昇だけでなく、内部に収納されている熱源による発熱もある。このため、断熱材で外壁が覆われると、内部の熱源からの熱が内部空間に籠ってしまい、内部空間の温度上昇が生じる問題がある。
【0019】
以上のように、従来技術では、熱源を収納する構造物の内部空間の温度上昇を抑制できない問題があった。これを解消するための空調装置による過大な電力消費やコスト負担の問題もあった。
【0020】
本発明はこれらの課題に鑑み、日照による外部要因の温度上昇、熱源による内部要因の温度上昇のそれぞれに対応して温度上昇を抑制し、日中・夜間のいずれでも温度上昇を抑制できる冷却部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の冷却部材は、内部に熱源を収納する構造物の外壁に使用される冷却部材であって、
前記外壁の表面に形成される接着層と、
前記接着層の表面に形成される熱放射層と、を備え、
前記構造物の内部空間より外部の温度が高い場合には、
前記熱放射層は、外部からの熱を遠赤外線に変換して外部に放射し、
前記構造物の外部より内部空間の温度が高い場合には、
前記熱放射層は、前記熱源からの熱を遠赤外線に変換して外部に放射し、
前記熱放射層は、
複数の中空セラミックスと、
前記複数の中空セラミックス同士を接続する樹脂バインダとを有する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の冷却部材は、日中においての日照による熱エネルギーについては、近赤外線を反射すると共に熱を遠赤外線に変換して放射する。これにより、外部からの日照による内部空間の温度上昇を抑制できる。
【0023】
また、夜間など日照の無い時間帯においては、内部空間の熱源から伝導される熱を、遠赤外線に変換して外部に放射する。これにより、夜間などのように内部空間の熱源の熱エネルギーの方が大きい場合には、これを外部に放射して、内部空間の温度上昇を抑制できる。
【0024】
このように、外部に設置されていても、日中・夜間を問わず、温度上昇を抑制できる。これにより、空調装置などに必要となる電力やコストを節減できる。環境負荷も低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施の形態1における構造物とこれに冷却部材が使用されている構成を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態1における外壁と冷却部材とを示す側面図である。
【
図3】本発明の実施の形態1における冷却部材の熱放射を示す模式図である。
【
図4】本発明の実施の形態1における中空セラミックスの構造を示す模式図である。
【
図5】本発明の熱放射層による遠赤外線変換と放射を示す試験成績書である。
【
図6】本発明の熱放射層による遠赤外線変換と放射を示す試験成績書である。
【
図7】本発明の実施の形態2における実験装置を示す模式図である。
【
図8】被覆層が200gである場合の実施例と比較例との違いを示す温度変化のグラフである。
【
図9】、
図8の実験結果の内、晴れであった一日の温度変化を抽出したグラフである。
【
図10】被覆層を250g/m2とした場合の実験結果を示すグラフである。
【
図12】被覆層を300g/m2とした場合の実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明第1の発明に係る冷却部材は、内部に熱源を収納する構造物の外壁に使用される冷却部材であって、
前記外壁の表面に形成される接着層と、
前記接着層の表面に形成される熱放射層と、を備え、
前記構造物の内部空間より外部の温度が高い場合には、
前記熱放射層は、外部からの熱を遠赤外線に変換して外部に放射し、
前記構造物の外部より内部空間の温度が高い場合には、
前記熱放射層は、前記熱源からの熱を遠赤外線に変換して外部に放射し、
前記熱放射層は、
複数の中空セラミックスと、
前記複数の中空セラミックス同士を接続する樹脂バインダとを有する。
【0027】
この構成により、外気温の上昇による構造物内部の温度上昇を抑制し、外気温が低い場合でも構造物内部の熱源からの熱を外部に放出できる。結果として、温度上昇や温度変化の幅を抑制し、熱源の機能や性能維持を実現できる。更には、内部温度の維持のための空調設備のコストやエネルギーコストを抑制できる。
【0028】
本発明の第2の発明に係る冷却部材では、第1の発明に加えて、前記熱放射層は、外部からの熱の内、近赤外線を外部に反射する。
【0029】
この構成により、外部からの熱が構造物の内部空間に侵入することを、より効果的に抑制できる。
【0030】
本発明の第3の発明に係る冷却部材では、第1の発明に加えて、前記外部からの熱は、日照によるものである。
【0031】
この構成により、日照による構造物内部の温度上昇を抑制し、空調設備などのコストを削減できる。特に夏季などにおいて効果が顕著である。
【0032】
本発明の第4の発明に係る冷却部材では、第1の発明に加えて、前記熱源は、電子基板、電子機器、通信機器、キュービクルおよび監視機器の少なくとも一つである。
【0033】
この構成により、社会活動に必要となる様々な機器を収納している構造物の、温度上昇を抑制して、機器の機能維持や性能維持を実現できる。
【0034】
本発明の第5の発明に係る冷却部材では、第1の発明に加えて、前記複数の中空セラミックスは、複数の異なる粒径の中空セラミックスを含む。
【0035】
この構成により、付与される熱を遠赤外線に変換して放射できる。これにより、温度上昇を抑制できる。
【0036】
本発明の第6の発明に係る冷却部材では、第1の発明に加えて、前記中空セラミックスは、金属酸化物を含み、
前記金属酸化物は、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化第二鉄(Fe2O3)、酸化ナトリウム(Na2O)、酸化カリウム(K2O)、酸化チタン(TiO2)、酸化セリウム(CeO2)、二酸化ケイ素(SiO2)、三酸化アンチモン(Sb2O3)の少なくとも一つを含む。
【0037】
この構成により、付与された熱を遠赤外線に変換して放射できる。
【0038】
本発明の第7の発明に係る冷却部材では、第1の発明に加えて、前記樹脂バインダーは、アクリル樹脂にシリコンを添加したものである。
【0039】
この構成により、中空セラミックスを確実に接続できる。
【0040】
本発明の第8の発明に係る冷却部材では、第1の発明に加えて、前記熱放射層の厚みは、前記熱源から伝導される熱を乱反射して閉じ込める熱量よりも、前記熱源から伝導される熱を遠赤外線に変換して放射する熱量が大きくなる厚みである。
【0041】
この構成により、内部空間の温度上昇を確実に抑制できる。
【0042】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0043】
(実施の形態1)
【0044】
(全体概要)
図1は、本発明の実施の形態1における構造物とこれに冷却部材が使用されている構成を示す斜視図である。構造物100の内部と外壁120に冷却部材1が取り付けられている状態を示している。
図2は、本発明の実施の形態1における外壁と冷却部材とを示す側面図である。
図3は、本発明の実施の形態1における冷却部材の熱放射を示す模式図である。
【0045】
冷却部材1は、構造物100の外壁120に使用される。構造物100は、熱源200を収納する。熱源200は、その機能を発揮する過程で、熱を発生する。
【0046】
構造物100は、外部に設置されている。戸外、広場、建物の屋上、山間部、街中など、様々な場所に設置されている。外部に設置されていることで、日射による自然の熱を受けたり、人工的な熱を受けたりする。また、内部に熱源200を収納していることで、熱源200からの熱が内部空間110に生じる。構造物100は、外部からの熱を受けることと内部空間110での熱の発生の両方を生じうる特性を有している。
【0047】
構造物100は、外壁120を備えている。冷却部材1は、この外壁120に使用される。すなわち、外壁120に冷却部材1が備わった状態となる。
【0048】
冷却部材1は、
図2に示されるように、外壁120の表面に形成される接着層2と接着層2の表面に形成される熱放射層3を備える。外壁120から見て、接着層2と熱放射層3が積層されている状態である。接着層2と熱放射層3は、それぞれ外壁120に塗布することで形成できる。この塗布による形成により、冷却部材1の厚みは薄い。外壁120や構造物100に重量的あるいは体積的な負担を生じさせない。
【0049】
接着層2は、外壁120の表面に形成され、熱放射層3を外壁120にしっかりと取り付ける役割を果たす。接着層3を介して熱放射層3が外壁120に確実に取り付けられる。また、接着層2は、構造物100の内部空間110に収納されている熱源200からの熱を、熱放射層3に伝導する。
【0050】
熱放射層3は、複数の中空セラミックスと中空セラミックス同士を接続する樹脂バインダとを有する。このような構成を持つことで、熱放射層3は、付与される熱を遠赤外線に変換して放射することができる。熱を遠赤外線に変換して放射することで、付与される熱が内部空間110のような囲われた空間の温度を上昇させることを抑制できる。
【0051】
熱放射層3は、外部と内部との温度の高低の違いに応じた機能を発揮する。
(1)構造物100の内部空間110より外部の温度が高い場合
外部は太陽光の日射などにより温度が高い場合がある。夏の日中などは、非常に強い日射により温度が高い。また、日射が構造物100に付与されることで、内部空間110の温度上昇を促すことにもなる。熱源200は、電子機器などであるので、外部の日射などを介して、内部空間110の温度が上昇しすぎることは好ましくない。
【0052】
また、日射に加えて夏などでは外部の温度が高く、外部の温度が伝導して内部空間110の温度が上昇することもあり得る。夏の日中などは特にそうなってしまう。こうなることも、熱源200である電子機器などへの負担となる。
【0053】
このような熱源200である電子機器などの温度上昇による負担や悪影響を防止するために、現在では冷房などの空調機器を用いている。多くの電力やコストを必要としてしまう。
【0054】
このような状況に対して、熱放射層3は、外部からの熱を遠赤外線に変換して外部に放射する。この遠赤外線への変換と放射により、外部から付与される熱が、内部空間110の温度を上昇させることを抑えることができる。すなわち、日射や外部気温の高さによる熱の付与により、内部空間110の温度上昇が起こることを抑制できる。
【0055】
つまり、外部から内部空間110への熱の侵入を抑制できる。
【0056】
例えば、夏季の日中などでは、非常に強い日射により、内部空間110の温度上昇が生じる。冷却部材1は、これを抑制できる。抑制できることで、内部空間110に収納されている熱源200への負担や悪影響を低減できる。また、内部空間110の温度上昇を抑えるために冷房などの空調機器を用いるエネルギーやコストを低減できる。この結果、外部に設置される構造物100での動作保証をするためのコストを低減でき、環境負荷も軽減できる。
【0057】
(2)構造物100の外部より内部空間110の温度が高い場合
内部空間110には、電子機器などの熱源200が収納されている。電子機器などは、電気的動作を行うので、この過程で熱を発生する。夏季や日中などは、熱源200からの熱よりも、日射などの外部からの熱が大きく、外部から内部空間110への熱の侵入よりも熱源200からの熱で内部空間110の温度上昇することが優勢になる。
【0058】
このように熱源200による内部空間110の温度上昇が生じると、(1)において説明したように、熱源200である電子機器などに負荷や不具合が生じる問題がある。これを防止するために冷房などの空調機器を使用することは、コスト、環境負荷などの面で好ましくない。
【0059】
(2)の場合には、熱源200からの熱が、接着層2を介して熱放射層3に伝導される。熱放射層3は、付与された熱を遠赤外線に変換して外部に放射する。すなわち、内部空間110の温度が外部よりも高い場合には、内部空間110で発生する熱を、遠赤外線に変換して外部に放射する。これにより、内部空間110で生じる熱が外部に排出されることが継続される。
【0060】
これにより、夜間や冬季などにおいて内部空間110の温度が上昇しすぎることによる弊害を抑制できる。この温度上昇の抑制により、熱源200による内部空間110の冷却のための空調機器などのコストを削減できる。勿論、環境負荷の軽減にもつながる。
【0061】
このように、(1)夏季や日中などのように、外部からの日射(日照)などで内部空間110の温度上昇が生じる場合、逆に(2)冬季や夜間のように熱源200による内部空間110の温度上昇が生じる場合、のいずれにおいても、熱放射層3の機能によって、内部空間110の温度上昇を抑制できる。
【0062】
これにより、電子機器などである熱源200を収納している内部空間110の温度が一定以下に維持されて、電子機器などの動作、機能、耐久性などへの負荷や損耗などを生じさせにくくできる。
【0063】
冷却部材1は、(1)の場合での温度上昇を抑制できることもさることながら、見落とされがちな夜間などの(2)の場合の温度上昇も抑制できる。
【0064】
なお、熱源200は、電子機器などのようにある機能を発揮するデバイスであり、電気動作などによって発熱をするものである。熱を発生するためだけのものではなく、必要となる動作の過程で熱を発生するものである。
【0065】
次に、各部の詳細などについて説明する。
【0066】
(熱源)
熱源200は、機能を発揮する過程で熱を発生させるデバイスや機器である。例えば、電子基板、電子機器、通信機器、監視機器、キュービクルなどである。これらの少なくとも一つであり、一つの機器などである場合もあるし、複数の機器などにより構成されることもある。
【0067】
もちろん、これら以外のデバイスや機器を含む。
【0068】
例えば、電子機器や通信機器は、電気動作(電子基板や電子部品が動作する)の過程で熱を発生する。電子機器や通信機器の高度化や複雑化に伴って、発生させる熱量は大きくなっている。この大きな熱量によって、熱を発生して内部空間110の温度を上昇させる。
【0069】
電子機器などの熱源200は、風雨や盗難などから守るために、構造物100の内部空間110に収納される。風雨や盗難などから守るために内部空間110は密閉されている。この密閉状態により、熱源200が発生する熱は、内部空間110に籠ってしまい、内部空間110の温度上昇が生じてしまう。
【0070】
また、熱源200となる電子機器や通信機器は、その特性上、24時間において動作することが多い。また、1年中において動作していることが多い。すなわち、休みなく動作する必要があるので、熱源200からの熱は常に発生している。この熱が内部空間110に籠ってしまうと、内部空間110の温度が上昇する。
【0071】
電子機器や通信機器は、高すぎる温度環境下では動作不良が生じたり、損耗が生じたりすることがある。複雑でデリケートな電子部品や電子回路の動作保証温度を超えてしまったりするからである。また、電子部品を実装する半田などが温度上昇で溶融して電子機器などが損耗する可能性もある。
【0072】
このような状況で、夏季や日中では日射などが構造物100の外部から当たって、内部空間110の温度が更に上昇する。つまり、夏季や日中では、熱源200の発生する熱量よりも大きな熱量が外部から付与される。これにより、熱源200による温度上昇よりも外部からの日射などでの温度上昇が大きくなる。
【0073】
この外部要因での温度上昇は、電子機器などへの悪影響となる。熱源200自信の温度上昇と相まって、内部空間110の温度上昇がより大きくなるからである。これが、上述した(1)の場合である。内部空間110は、密閉状態であるので、外部要因および内部要因(熱源200)による温度上昇は、電子機器などへ大きな影響を生じさせる。
【0074】
一方、冬季や夜間など外部の温度が低く日射も弱い(無い)場合においては、熱源200の熱量による温度上昇が優勢である。内部空間110は密閉されているので、内部空間110に籠る熱源200の熱は、外部に排出されにくい。このため、冬季や夜間のように外部温度が低い場合でも、内部空間110の温度上昇が生じてしまう(上記の(2)の場合である)。この場合も、電子機器などへの影響が生じてしまう。
【0075】
熱源200は、機能発揮の過程で熱を生じさせるという特性と、周囲(内部空間110)の温度上昇による影響を受けるという特性とを有している。
【0076】
(構造物)
構造物100は、熱源200を収納して外部に設置される。熱源200は、上述の通り、電子機器や通信機器などであるので、風雨から守るために構造物100が、熱源200を収納する。また、保護のために内部空間110を密閉空間とする(完全密閉との限定ではなく、風雨などからの保護ができるレベルの密閉である。通気口などが存在することを除外する意図ではない)。
【0077】
このため、構造物100は、内部空間110を形成する外壁120と、内部空間110に収納された熱源200とを備える。また、外壁120の外周の少なくとも一部に形成される冷却部材1を備える。冷却部材1を備えることで、上述した夏季、冬季、日中、夜間などの別なく、内部空間110の温度上昇を抑制できる。
【0078】
構造物100は、変電設備、配電設備、通信基地局、監視設備および電気制御設備の少なくとも一つを含む。勿論、これら以外であってもよい。これらの構造物100は、機能の特性上、外部に設置される。また、構造物100は、機能に応じた電子機器や通信機器を内部空間110に収納する必要がある。
【0079】
例えば、変電設備であれば、内部空間110に変電機器や制御盤などを収納する。配電設備であれば、内部空間110に配電機器や制御機器を収納する。通信基地局であれば、内部空間110に通信機器や送受信機器などを収納する。監視設備であれば、監視用カメラの制御機器などを収納する。電気制御設備であれば、制御盤や電源などを収納する。
【0080】
これら収納する機器などは、動作の過程で熱を発生する熱源200である。
【0081】
構造物100は密閉された内部空間110を有しているので、上記の(1)、(2)のそれぞれの場合での温度上昇が生じる。この温度上昇が、熱源200である機器に悪影響をもたらせる。
【0082】
外壁120に備わる冷却部材1は、この温度上昇を抑制して、機器などへの悪影響を防止できる。
【0083】
構造物100は、その機能や特性に応じて、様々な場所に設置される。変電設備や配電設備は、市中に設置される。通信基地局は市中および郊外に設置される。このため、外部環境の影響を様々に受けやすい。このため、冷却部材1による温度上昇抑制が非常に重要である。
【0084】
(接着層)
接着層2は、外壁120の表面に形成される。接着層は、接着能力のあるものであればよく、塗料として外壁120に塗布されることで形成される。水生の接着剤を含めばよい。
【0085】
接着層2は、外壁120と熱放射層3との接着の介在を担う。
【0086】
(熱放射層)
熱放射層3は、上述したように付与される熱を遠赤外線に変換して外部に放射する。外部の温度の方が高い場合には、外部から付与される熱を遠赤外線に変換して外部に放射する。内部空間110の温度の方が高い場合には、内部空間110から付与される熱を遠赤外線に変換して放射する。
【0087】
この遠赤外線への変換と放射により、付与される熱による温度上昇を抑制できる。遠赤外線に変換して放射することで、付与される熱の熱量を低減することを連続できる。熱量低減が続くことで、温度上昇を抑制できる。
【0088】
熱放射層3は、中空セラミックス31と中空セラミックス同士を接続する樹脂バインダ32を備える。
図3には、この構成が示されている。複数の中空セラミックス31が含まれ、樹脂バインダ32は、この中空セラミックス31同士を接続する。この中空セラミックス31が、付与された熱を遠赤外線に変換して放射する。
【0089】
図3に示されるように、外部から熱が付与される場合には、矢印Y1の方向で熱が付与される。中空セラミックス31は、この矢印Y1で付与される熱を遠赤外線に変換して放射する。放射は矢印X1の方向において行われる。これにより、構造物100の外部から熱が付与される場合において、熱が外部に放射されて内部空間110の温度上昇が抑制される。
【0090】
内部空間110から(熱源200により)の熱は、矢印Y2の方向で付与される。中空セラミックス31は、この矢印Y2で付与される熱を遠赤外線に変換して放射する。放射や矢印X2の方向において行われる。これにより、熱源200からの熱が内部空間110に籠らずに、外部に放出される。これにより、内部空間110の温度上昇が抑制される。
【0091】
図4は、本発明の実施の形態1における中空セラミックスの構造を示す模式図である。中空セラミックス31は、内部空間310を有する。内部空間310は、加わる熱を、その内部で乱反射させることで、遠赤外線に変換する。
【0092】
図4に示されるように、内部空間310において加わった熱が乱反射する。この乱反射を通じて、熱は、遠赤外線に変換される。変換された遠赤外線は、放射される。
【0093】
このように、熱放射層3は、複数の中空セラミックス31を備えることで、熱を遠赤外線に変換できる。
【0094】
また、熱放射層3が備える複数の中空セラミックス31は、粒径の異なる中空セラミックス31を含むことも好適である。粒径が異なることで、中空セラミックス31のそれぞれの内部空間310での乱反射がより多く起こる。また、粒径の異なる中空セラミックス31同士での乱反射も加わり、熱の遠赤外線への変換が、より効果的に生じる。
【0095】
また、中空セラミックス31は、その表面での熱の変換により遠赤外線を生み出して、これを放射するメカニズムも発揮する。この機能も含めて、熱放射層3は、加わる熱を次々と遠赤外線に変換して放射できる。これにより、加わる熱による熱量(熱エネルギー)を減少させて、内部空間110の温度上昇を抑制できる。
【0096】
また、粒径の中空セラミックス31が含まれることで、熱放射層3における中空セラミックス31の重点密度が高まる。大きな粒径の中空セラミックス31同士の間にできる隙間に、中程度あるいは小さな粒径の中空セラミックス31が入り込むからである。
【0097】
この結果、熱放射層3が含む中空セラミックス31の個数密度が高まる。
【0098】
個数密度が高まれば、含まれる中空セラミックス31全体の表面積が増加する。表面全体の表面積が増加することで、遠赤外線への変換量が多くなる。この増加によって、加わる熱を遠赤外線に変換することでの熱エネルギーの減衰能力が更に高まる。
【0099】
このように、熱商社層3が異なる粒径の中空セラミックス31を含むことは、熱を遠赤外線に変換することの能力向上に寄与する。
【0100】
中空セラミックス31は、金属酸化物を含むことも好適である。このような金属酸化物を含むことで、熱を遠赤外線に効率的に変換できる。ここで、金属酸化物は、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化第二鉄(Fe2O3)、酸化ナトリウム(Na2O)、酸化カリウム(K2O)、酸化チタン(TiO2)、酸化セリウム(CeO2)、二酸化ケイ素(SiO2)、三酸化アンチモン(Sb2O3)の少なくとも一つを含む。
【0101】
これらの金属酸化物を含むことで、中空セラミックス31は、熱を効率的かつ確実に遠赤外線に変換できる。金属酸化物は、内部空間310での乱反射を促進しつつ、乱反射の過程で遠赤外線を生じさせる。このように、金属酸化物を含む中空セラミックス31が含まれる被覆層3は、付与される熱を、効率的かつ確実に遠赤外線に変換できる。
【0102】
ここで、熱放射層3を構成する中空セラミックス31が、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化第二鉄(Fe2O3)、酸化ナトリウム(Na2O)、酸化カリウム(K2O)、酸化チタン(TiO2)、酸化セリウム(CeO2)、二酸化ケイ素(SiO2)、三酸化アンチモン(Sb2O3)の少なくとも2以上の種類の金属酸化物を含むことも好適である。
【0103】
異なる2種以上の種類の金属酸化物による中空セラミックス31が、熱放射層3に含まれることで、それぞれの中空セラミックス31が、加わる熱の異なる成分(波長成分や温度成分など)のそれぞれに対応して遠赤外線への変換を行える。ある金属酸化物の中空セラミックス31は、ある成分の熱を遠赤外線に変換し、別の種類の金属酸化物の中空セラミックス31は、別の成分の熱を遠赤外線に変換する。
【0104】
このように、複数の種類の金属酸化物による中空セラミックス31が熱放射層3を構成することで、加わる熱を、満遍なくかつ確実に遠赤外線に変換できる。すなわち、熱量(熱エネルギー)の減衰をより効率的に行える。結果として、内部空間110の温度上昇を確実に行える。
【0105】
樹脂バインダー32は、中空セラミックス31同士を接続する。接続することで、熱放射層3が一つの層として形成できる。ここで、樹脂バインダー32は、アクリル系樹脂であることも好適である。アクリル系樹脂であることで、樹脂バインダー32による中空セラミックス31同士をより確実に接続できる。また、アクリル系樹脂であることで、熱放射層3の軽量化も図ることができる。
【0106】
(遠赤外線放射の確認実験)
また、発明者は被覆層が熱をくわえられると遠赤外線を放射することの確認実験を、公的研究機関(島根県産業技術センター)にて行った。この実験において、試験成績書を受領しており、
図5、
図6において示す。
図5、
図6は、本発明の熱放射層による遠赤外線変換と放射を示す試験成績書である。
【0107】
図5、
図6において「ガイナ」と記載されているものが、熱放射層3の一例を示す。
【0108】
測定機器:日本電子株式会社製 本体JTR―WINSPEC100および赤外線測定ユニットIR-IRR200
【0109】
測定方法:測定機器を用いて遠赤外線放射の放射率を測定した。
【0110】
この測定に基づいて、熱放射層による熱を加えた場合の遠赤外線放射の状態を確認した。遠赤外線の波長域(一般的には3μm~1000μm)に含まれる5.0μm~22.5μmの波長域での積分放射率が94.6%と非常に高いことが確認された。トルマリンなどの遠赤外線変換能力が知られている素材に匹敵する。このように、公的研究機関での試験成績書においても、熱放射層3による熱の遠赤外線変換の能力や効率が確認された。
【0111】
(近赤外線の反射)
熱放射層3は、外部からの熱の内、近赤外線を外部に反射することも行う。中空セラミックス31が、近赤外線を反射させる。この反射により、近赤外線による内部空間110の温度上昇を抑制できる。
【0112】
(熱放射層の厚み)
熱放射層3は、上述の通り、付与される熱を遠赤外線に変換して放射する。(1)の場合においては、外部から付与される熱を外部に放射する。(2)の場合においては、内部から付与される熱を外部に放射する。いずれの場合も、内部空間110に籠る可能性のある熱を、外部に放射する。
【0113】
この熱放射層3の厚みは、熱源200から伝導される熱を乱反射して内部空間110に閉じ込める熱量よりも、熱源200から伝導される熱を遠赤外線に変換して放射する熱量が大きくなる厚みである。
【0114】
外部から付与される熱については、遠赤外線に変換して外部に放出される。
【0115】
同様に、内部の熱源200からの熱も遠赤外線に変換して外部に放射する。しかし、熱放射層3においては熱源200からの熱を乱反射することもある。この乱反射は、内部空間110に戻ることもある。乱反射が内部空間110に戻って閉じ込められると、内部空間110の温度上昇の抑制能力が小さくなってしまう。
【0116】
熱放射層3の厚みが大きいと、乱反射した熱が閉じ込められやすくなる。このため、熱放射層3の厚みは一定以下であることが好ましい。この一定以下の基準として、閉じ込める熱量よりも外部に放射する熱量が大きくなる厚みであることが適当である。この厚みは、熱源200の特性,構造物100の形状や大きさ,外部環境、外壁120の材質や厚みなどによって、適宜定められれば良い。
【0117】
このような厚みとして熱放射層3が形成されることで、日中の外部温度が高い場合だけでなく、夜間などの内部温度が高い場合でも、内部空間110への熱のこもりを抑えることができる。
【0118】
(実施の形態2)
次に実施の形態2について説明する。
【0119】
実施の形態2では、冷却部材の効果を確認した実験結果について説明する。
【0120】
図7は、本発明の実施の形態2における実験装置を示す模式図である。実験においては、
図7に示すように箱を形成した。箱の側壁および底面には、断熱材を備え、上面を蓋で閉じて内部の温度変化を測定できるようにした。
【0121】
このとき、実施例として蓋に接着層および熱放射層とを形成した箱と、比較例として鉄板のみの蓋の箱とを用意した。これら実施例である箱と比較例である箱を外気温が変化する外部に設置して、外気温の変化に対応して、箱の内部の温度変化を測定した。この温度変化の測定により、実施例においては外気温が高くなった場合でも箱内部の温度上昇を抑え、外気温が低くなった場合でも内部の温度を低く維持できることを確認した。
【0122】
このとき、実施例において接着層と熱放射層である被覆層(本発明の冷却部材)の量を変えつつ実験を行った。
図8以降において「〇〇g」との記載は、蓋に形成される被覆層の1m
2当たりの重量を示している。重量が大きいほど、被覆層の厚みが大きくなる。
【0123】
図8は、被覆層が200gである場合の実施例と比較例との違いを示す温度変化のグラフである。
図9は、
図8の実験結果の内、晴れであった一日の温度変化を抽出したグラフである。
図8,
図9のいずれも、ある期間(ここでは2022年11月9日~2022年11月18日)において、外気温の温度変化、実施例の箱(被覆層=接着層+熱放射層)内部の温度変化、比較例の箱(鉄板のみ)内部の温度変化とを、示している。実施例の箱内部も比較例の箱内部も、外気温の温度変化の影響を受ける。
【0124】
このとき、
図8、
図9に示されるように、日中などの外気温が上昇している時間においては実施例の箱内部も比較例の箱内部も温度が上昇している。しかし、比較例の箱内部の温度上昇に比較して、実施例の箱内部の温度上昇が抑えられている。すなわち、内部よりも外気温の方が高い場合には、外気温による温度上昇を、被覆層が抑制できている。これは、被覆層が外部からの熱を遠赤外線に変換して外部に放射していることを示している。
【0125】
また、夜間などで外気温が下がってくる場合においては日中に上昇した高い温度を箱内部が有している。この場合でも、実施例の箱の方が比較例の箱よりも温度が低い状態となっており、内部に残った熱を外部に放射して内部温度が高いままであることを防止している。
【0126】
このように、実施の形態1で説明した接着層と熱放射層の被覆層を備えることで、外部に晒されている箱の内部温度の上昇や上昇したままの状態が抑制されることが実験からも確認された。
【0127】
図9においては、晴れの日である2022年11月16日の温度変化を抽出したグラフを示している。
図9のグラフでは、鉄板の蓋である比較例に対して、被覆層の蓋を持つ実施例での温度上昇が十分に抑制されていることが分かる。
【0128】
加えて、外気温が低下している間では、箱内部に上昇した温度の熱量が残っている。外気温が低下してもこの熱量が残っていることで、箱内部の温度が高いままになってしまう可能性がある。この場合でも、実施例の箱内部の温度は比較例の箱内部の温度よりも低く、内部に残っている熱量を外部に放出して内部の温度が低くなるようにされている。すなわち、残った熱量により温度が高いままとなってしまうことが防止されている。
【0129】
図10は、被覆層を250g/m2とした場合の実験結果を示すグラフであり、
図11は、
図10の晴の一日を抽出したグラフである。
図8、
図9に示す場合と同様に、実施例では外気温の温度上昇での温度上昇を抑制でき、外気温が低い場合での温度を低い状態にするようにできている。
【0130】
図12は、被覆層を300g/m2とした場合の実験結果を示すグラフであり、
図13は、
図12の晴の一日を抽出したグラフである。
図8、
図9に示す場合と同様に、実施例では外気温の温度上昇での温度上昇を抑制でき、外気温が低い場合での温度を低い状態にするようにできている。
【0131】
外気温が低い場合には、比較例より実施例の方が内部温度が低くなっていることは、構造物内部に熱源があって外気温が低い場合の熱量の基となっても、これによる内部温度の上昇を抑制できていることが分かる。
【0132】
以上のように、冷却部材である被覆層を設けることで、箱内部の温度上昇や温度変化量を抑制できることが、確認された。
【0133】
この箱が構造物であるとすると、構造物が外部に晒されていることでの外気温による構造物の内部温度の上昇が抑制され、温度変化の範囲を抑えることができる。構造物が変電設備、配電設備、通信基地局、監視設備および電気制御設備の少なくとも一つであれば、これらが外部に設置されていても、外気温の変化による温度上昇を抑制できる(本発明の冷却部材を用いることで)。構造物内部の機器などが温度上昇により不具合や故障を生じさせることを抑制できる。また、これを防止するために構造物内部に空調装置を設置したり、空調装置に要するコストやエネルギーを抑制したりすることもできる。
【0134】
結果として、外部に設置される構造物での外部温度上昇や温度変化による種々の問題を解決できる。
【0135】
このように、実験からも冷却部材の効果が確認された。
【0136】
以上、実施の形態1~2で説明された冷却部材は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【符号の説明】
【0137】
1 冷却部材
2 接着層
3 熱放射層
100 構造物
110 内部空間
120 外壁
200 熱源