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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106932
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】表示システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/18 20060101AFI20240801BHJP
   H04N 23/60 20230101ALI20240801BHJP
   H04N 23/63 20230101ALI20240801BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20240801BHJP
【FI】
H04N7/18 D
H04N7/18 U
H04N23/60 300
H04N23/63
G06Q50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011441
(22)【出願日】2023-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】520366101
【氏名又は名称】株式会社水谷精機工作所
(74)【代理人】
【識別番号】100174090
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 光
(74)【代理人】
【識別番号】100205383
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 諭史
(74)【代理人】
【識別番号】100224661
【弁理士】
【氏名又は名称】牧内 直征
(74)【代理人】
【識別番号】100100251
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 操
(72)【発明者】
【氏名】水谷 康朗
(72)【発明者】
【氏名】水野 貴夫
(72)【発明者】
【氏名】清水 悠太
【テーマコード(参考)】
5C054
5C122
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5C054CA04
5C054CA05
5C054CC02
5C054CG08
5C054DA07
5C054EA01
5C054EA03
5C054EA05
5C054EA07
5C054FC12
5C054FC13
5C054FC15
5C054FD07
5C054FE12
5C054FE23
5C054FF03
5C054GB01
5C054HA02
5C054HA19
5C122DA11
5C122EA47
5C122FA04
5C122FA06
5C122FA18
5C122FK23
5C122FK28
5C122FK37
5C122FK42
5C122GC14
5C122GC53
5C122GC54
5C122HA03
5C122HB05
5L049CC03
5L050CC03
(57)【要約】
【課題】離れた場所の対象物の状況を観察者が理解しやすい表示システムを提供する。
【解決手段】表示システム1は、離れた場所の対象物を表示し、対象物Oを撮影する対象物撮影装置2と、対象物Oが存在する空間を撮影する環境撮影装置3と、対象物Oの映像Po、および対象物Oが存在する空間の映像である環境映像Peを表示する表示装置4と、を備え、対象物Oの映像Poは、対象物Oが存在する空間を移動可能な移動体Mに設けられた対象物撮影装置2によってリアルタイムで撮影される映像であり、環境映像Peは、対象物Oが存在する空間における移動体Mの位置を視認可能な、環境撮影装置3によってリアルタイムで撮影される映像、または過去に撮影された映像のいずれかである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
離れた場所の対象物を表示する表示システムであって、
該表示システムは、
前記対象物を撮影する対象物撮影装置と、
前記対象物が存在する空間を撮影する環境撮影装置と、
前記対象物の映像、および前記対象物が存在する空間の映像である環境映像を表示する表示装置と、を備え、
前記対象物の映像は、前記対象物が存在する空間を移動可能な移動体に設けられた前記対象物撮影装置によってリアルタイムで撮影される映像であり、
前記環境映像は、前記対象物が存在する空間における前記移動体の位置を視認可能な、前記環境撮影装置によってリアルタイムで撮影される映像、または過去に撮影された映像のいずれかであることを特徴とする表示システム。
【請求項2】
前記環境映像は、前記環境撮影装置によって過去に撮影された3次元映像であり、
前記表示システムは、前記対象物の映像および前記環境映像を前記表示装置へ出力するサーバを備え、
前記サーバは、前記対象物が存在する空間における前記対象物撮影装置の位置情報を検知し、前記表示装置に前記移動体の位置を出力する位置表示手段を有することを特徴とする請求項1記載の表示システム。
【請求項3】
前記表示装置は、前記環境映像上で選択された箇所に関する情報を表示する機能を有する装置であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の表示システム。
【請求項4】
前記表示システムは、前記対象物の映像および前記環境映像を前記表示装置へ出力するサーバを備え、
前記サーバは、撮影された前記対象物の映像および前記環境映像の少なくともいずれかの映像データにインデックスを付与して保存する機能を有することを特徴とする請求項1記載の表示システム。
【請求項5】
前記対象物撮影装置および前記環境撮影装置の少なくともいずれかが、映像データとして点群データを取得可能な装置であり、
前記表示装置が、3次元表示可能な装置であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離れた場所の対象物を表示する表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報通信技術の発達により、現場に出向くことなく時間や場所を選ばずに作業、交流、見学などが可能な技術が開発されている。このような技術の適用例としては、遠隔地などの空間的に離れた場所から作業を支援する遠隔支援システムや、展示会会場などを見学するバーチャル見学システムが挙げられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、数値制御工作機械に稼動状況を撮影するビデオカメラが接続され、サポートセンタがビデオカメラから送られた画像データに基づいて数値制御工作装置を支援する遠隔支援システムが記載されている。この遠隔支援システムによれば、メーカ側が数値制御工作機械の顧客が必要な情報を適切な時期に提供できる旨が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、作業者が装備しかつ通信可能なカメラ端末と、支援者が操作しカメラ端末と通信を介し接続される作業支援端末を備え、カメラ端末が認識した作業対象物と指定被写体の距離が所定内の範囲になると作業者に通知する遠隔作業支援システムが記載されている。この遠隔作業支援システムによれば、作業者側に表示デバイスがなくても、支援者との音声コミュニケーションで作業対象物を正確に一致させることができる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-44111号公報
【特許文献2】特開2018-207420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、遠隔制御カメラによりレーザ加工装置のような数値制御工作装置の画像データが収集され、サポートセンタは収集したデータから分析された結果を顧客にフィードバックして支援を行う。この場合、装置全体という比較的広い範囲の画像データのみが収集されるため、外観上僅かに分かる程度の異常が製品に発生した場合などに、サポートセンタと情報共有をして支援を受けることが困難と考えられる。
【0007】
特許文献2では、作業支援端末は、作業者が装備するカメラ端末から送信される作業対象物のライブビュー画像データをもとに画像処理を行う。この場合、カメラ端末は、作業者の手元周辺の比較的狭い範囲の画像データのみを取得するため、遠隔地の支援者は作業者の周囲の空間の映像を見ることができない。例えば、場所を移動しながら作業を行う際などには、特許文献2に記載の技術では、支援者側の状況理解が不十分となり、適切な支援が行えないおそれがある。
【0008】
このように、離れた場所の対象物を表示するシステムとして様々なものが提案されているが、装置や空間全体の映像、または手元周辺の映像のいずれかを表示することに特化したシステムが多かった。そのため、目的に応じて使い分けられたり、場合によっては、離れた場所から現場を観察する観察者の状況理解を高めるために、2以上のシステムが導入されたりする場合があった。
【0009】
本発明はこのような背景に鑑みてなされたものであり、離れた場所の対象物の状況を観察者が理解しやすい表示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の表示システムは、離れた場所の対象物を表示する表示システムであって、上記対象物を撮影する対象物撮影装置と、上記対象物が存在する空間を撮影する環境撮影装置と、上記対象物の映像、および上記対象物が存在する空間の映像である環境映像を表示する表示装置と、を備え、上記対象物の映像は、上記対象物が存在する空間を移動可能な移動体に設けられた上記対象物撮影装置によってリアルタイムで撮影される映像であり、上記環境映像は、上記対象物が存在する空間における上記移動体の位置を視認可能な、上記環境撮影装置によってリアルタイムで撮影される映像、または過去に撮影された映像のいずれかであることを特徴とする。
【0011】
上記環境映像は、上記環境撮影装置によって過去に撮影された3次元映像であり、上記表示システムは、上記対象物の映像および上記環境映像を上記表示装置へ出力するサーバを備え、上記サーバは、上記対象物が存在する空間における上記対象物撮影装置の位置情報を検知し、上記表示装置に上記移動体の位置を出力する位置表示手段を有することを特徴とする。
【0012】
上記表示装置は、上記環境映像上で選択された箇所に関する情報を表示する機能を有する装置であることを特徴とする。
【0013】
上記表示システムは、上記対象物の映像および上記環境映像を上記表示装置へ出力するサーバを備え、上記サーバは、撮影された上記対象物の映像および上記環境映像の少なくともいずれかの映像データにインデックス(索引)を付与して保存する機能を有することを特徴とする。
【0014】
上記対象物撮影装置および上記環境撮影装置の少なくともいずれかが、映像データとして点群データを取得可能な装置であり、上記表示装置が、3次元表示可能な装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の表示システムは、対象物を撮影する対象物撮影装置と、対象物が存在する空間を撮影する環境撮影装置と、対象物の映像、および対象物が存在する空間の映像である環境映像を表示する表示装置と、を備え、対象物の映像は、対象物が存在する空間を移動可能な移動体に設けられた対象物撮影装置によってリアルタイムで撮影される映像であり、環境映像は、対象物が存在する空間における移動体の位置を視認可能な、環境撮影装置によってリアルタイムで撮影される映像、または過去に撮影された映像のいずれかであるので、観察者は遠隔地などに居ながらにして対象物が存在する空間内での対象物の位置を把握しつつ、対象物を詳細にリアルタイムで観察できる。これにより、本発明の表示システムは、現場における様々な場面での必要な情報を得ることができ、離れた場所の対象物の状況を観察者が理解しやすい。
【0016】
環境映像は、環境撮影装置によって過去に撮影された3次元映像であり、表示システムは、対象物の映像および環境映像を表示装置へ出力するサーバを備え、サーバは、対象物が存在する空間における対象物撮影装置の位置情報を検知し、表示装置に移動体の位置を出力する位置表示手段を有するので、空間内での対象物の位置をより正確に把握できる。
【0017】
表示装置は、環境映像上で選択された箇所に関する情報を表示する機能を有する装置であるので、観察者は映像以外の参考情報を入手でき、対象物に関して複合的に理解することができる。
【0018】
表示システムは、対象物の映像および環境映像を表示装置へ出力するサーバを備え、サーバは、撮影された対象物の映像および環境映像の少なくともいずれかの映像データにインデックスを付与して保存する機能を有するので、観察者は過去の映像を漏れなく、容易に観察することができる。その結果、例えば、生産現場での過去の特定の作業工程や、作業員の動きを時系列上で容易に検索して確認でき、新人教育へ活用することなどができる。
【0019】
対象物撮影装置および環境撮影装置の少なくともいずれかが、映像データとして点群データを取得可能な装置であり、表示装置が、3次元表示可能な装置であるので、対象物や、その周囲の空間をより詳細に観察することができ、観察者の理解の向上により寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の表示システムの第1実施形態の概要図である。
図2】本発明の表示システムの第2実施形態の概要図である。
図3】表示装置に表示される画面の一例を示す図である。
図4】詳細情報を閲覧する際の画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の表示システムは、展示会会場、工場、研究所などの現場と、現場から離れた事務所、オフィス、自宅などの場所とをネットワークにより接続して、遠隔地などの離れた場所から現場の対象物とその周囲の空間を観察できるシステムである。ここで、本発明において、離れた場所とは、観察者がいる空間と異なる空間を意味し、例えば、距離にかかわらず異なる建物内の空間、同じ建物内の壁面で区切られた異なる部屋、観察者からは目視で視認できない程度に離れた屋外の空間などであってもよい。
【0022】
本発明の表示システムは、例えば、工場の現場の映像と作業者が見ている映像を工場から離れた遠隔地に居る人間が、実際に工場の現場にいるかのように見ることができる、バーチャルとリアルとを自然な形で繋ぐシステムである。
【0023】
本発明の表示システムの構成について図1を用いて説明する。図1は、本発明の表示システムの第1実施形態の概要図である。本発明の表示システム1は、例えば、インターネット回線を介して参加する(現場の状況を見たり、現場に居る人間と話したりする)オンライン展示会、オンライン工場見学、オンライン技術指導(技術伝承)などに利用できる。この場合、現場から離れた場所から参加する参加者(観察者)は、ビジネスマン、学生、研修受講者、指導者、熟練者などである。
【0024】
図1において、表示システム1は、対象物Oを撮影する対象物撮影装置2と、対象物Oが存在する空間を撮影する環境撮影装置3と、対象物Oの映像Po、および対象物Oが存在する空間の映像である環境映像Peを表示する表示装置4と、を備える。さらに、表示システム1は、対象物の映像Poおよび環境映像Peを表示装置4へ出力するサーバ5を備えている。これらは、ネットワーク6を介して接続されている。図1には、例として、ウエアラブル端末を装着した工場の作業者が製品を見て、遠隔地のオフィス室内に居る熟練者から技術指導を受ける場面を示している。
【0025】
ここで、対象物は、例えば、現場が製造現場の場合は製品、部材、製造機械、操作画面、スイッチなどである。展示会会場の場合、対象物は、商品、表示装置、ポスターなどである。また、対象物が存在する空間とは、対象物が存在する屋内また屋外の所定範囲の空間を意味する。例えば、工場の場合は工場内の空間全体または空間の一部であり、展示会会場などの場合は会場内の空間全体または空間の一部である。
【0026】
本発明において、表示装置とサーバの構成は、(1)表示装置とサーバとがネットワークを介して接続される構成、(2)表示装置とサーバとが直接接続される構成のいずれであってもよい。また、「ネットワーク」とはデータの送受信可能な電子通信回線を示し、有線LAN、無線LAN、WAN、インターネットなどが該当する。
【0027】
対象物Oの映像Poは、対象物Oが存在する空間を移動可能な移動体Mである作業者に設けられた対象物撮影装置2によってリアルタイムで撮影され、表示装置4に表示される。移動体Mは、自らの意思または観察者からの指示などに基づいて移動できれば、人間に限らずロボットなどであってもよい。移動体Mは、現場において対象物Oを持ったり、操作したりすることができるアームを有していることが好ましい。
【0028】
対象物撮影装置2は、カメラ、赤外線スキャナなどの撮影手段を少なくとも1つ有し、対象物Oの映像データを取得する。本発明において、撮影装置によって取得される映像データは、静止画であってもよいし、動画であってもよい。また、映像データは、画像データに限定されず、点群データであってもよい。取得された映像データは、表示装置4での表示後もサーバに保存されてもよいし、保存されることなく消去されてもよい。移動体Mが人間である場合、対象物撮影装置2はウエアラブル端末であることが好ましい。この場合、人間の視野映像として、対象物の角度や、対象物Oと対象物撮影装置2との距離を自由に変えながら撮影でき、観察者がより多くの情報を得やすい。また、対象物撮影装置2は、ウエアラブル端末着用者が観察者と話しながら指示を受けて動けるように、端末の着用者の音声を集音する集音部、着用者に視認可能な映像を投影する投影部、音声を出力する音声出力部も有することが好ましい。
【0029】
図1において、環境映像Peは、対象物Oが存在する空間における移動体Mの位置を視認可能な、壁や天井に設けられた環境撮影装置3によってリアルタイムで撮影される俯瞰映像である。なお、環境映像Peは、対象物Oが存在する空間における移動体Mの位置を観察者が視認可能であれば、過去に撮影された映像であってもよい。移動体Mの位置は、環境映像Pe上に示されなくても、観察者が映像以外の情報(例えば、音声情報や文字情報など)から総合的に判断して移動体Mの存在領域として視認可能であればよい。すなわち、観察者は、移動体M自体を環境映像Pe上で視認できなくてもよい。
【0030】
環境映像Peは1つに限らず、異なる場所を示す複数の映像であってもよい。環境映像Peは、対象物Oが存在する空間内に設けられた1または2以上の環境撮影装置3により撮影される。環境映像Peがリアルタイムで撮影される映像である場合、環境撮影装置3は、対象物Oおよび移動体Mを複数の場所から様々な角度で観察できるように、対象物Oが存在する空間内に所定の間隔で複数設けられることが好ましい。
【0031】
ここで、本発明において「リアルタイムで撮影される」とは、撮影装置による映像の撮影と、表示装置上での表示とが即時的(同時的)に行われることを意味する。なお、撮影と表示との間には、データの伝送遅延による時間差があってもよい。
【0032】
環境撮影装置3は、カメラ、赤外線スキャナなどの撮影手段を少なくとも1つ有し、対象物Oが存在する空間の映像データを取得する。また、環境撮影装置3は、音声を集音する集音部、およびサーバとの無線通信を行なう無線通信部を有してもよい。空間の映像データには、空間内の設備、人間、床、壁面、天井などの画像が含まれる。環境撮影装置3は、空間内の所定の場所に固定する定置タイプでもよいし、空間内を移動可能な移動タイプでもよい。定置タイプの場合、環境撮影装置3は、空間内の壁や天井などに設けることができる。また、移動(可搬)タイプの場合、環境撮影装置3は、例えば、三脚、台車、天井や壁のレール、ドローンなどに設けることができる。移動タイプの環境撮影装置3としては、例えば、映像データとして画像データおよび点群データを取得可能なMatterport社の赤外線スキャナつき3Dカメラなどを用いることができる。
【0033】
表示装置4は、その画面上に対象物Oの映像Poと環境映像Peを同時に表示可能である。表示装置4は、観察者の選択などにより、対象物Oの映像Poと環境映像Peのいずれか一方のみを表示することもできる。
【0034】
次に、本発明の表示システムの別の構成について図2を用いて説明する。図2は、本発明の表示システムの第2実施形態の概要図である。なお、第1実施形態と同じ構成部分についての説明は省略する。第2実施形態の表示システム1では、表示装置4の画面に表示される環境映像Peが環境撮影装置として3Dカメラによって過去に撮影された対象物の周囲を360°観察できる3次元映像である点、および表示装置4とサーバ5とが同じ空間内で接続されている点で第1実施形態の場合と異なる。図2において、環境映像Peは、対象物が存在する空間を真上から観察する俯瞰図となっている。環境映像Peは、観察者の操作によって斜め方向、横方向などへと視点を自由に変えることができる。これにより、観察者は現場の状況をより正確に把握できる。なお、環境映像Peは、1または2以上の2次元映像であってもよい。
【0035】
上記構成である場合、サーバ5は、対象物Oが存在する空間における対象物撮影装置2の位置情報を検知し、表示装置4の画面上の環境映像Peに移動体Mの位置を出力する位置表示手段を有することが好ましい。これにより、観察者は移動体Mが撮影している対象物Oの位置をより正確に把握でき、現場の状況に応じた適切な判断を行える。なお、サーバ5は、位置表示手段を有していなくてもよい。この場合、観察者は、移動体Mとの音声通話などによって移動体Mの位置を把握することができる。
【0036】
本発明の表示システムは、対象物撮影装置および環境撮影装置の少なくともいずれかが、映像データとして点群データを取得可能な装置であり、表示装置が、3次元表示可能な装置であることが好ましい。この場合、観察者は、例えば、複雑な構造の製品、作業空間、装置などを実物大で確認することができ、装置の組み立て手順の確認や現場目線での作業性の確認などを行うことができる。
【0037】
本発明の表示システムは、工場や展示会会場のほか、商業施設、飲食店、病院、福祉施設などにも活用できる。この場合、表示装置は、環境映像上で選択された箇所に関する詳細情報を表示する機能を有することが好ましい。環境映像上には、選択により詳細情報が表示されたり、ウェブサイトへリンク(移行)したりするタグ(目印)を設けること(タグ付け)ができる。
【0038】
本発明の表示システムの管理者は、ネットワークに接続した電子情報端末を用いて環境映像上の任意の箇所に自由にタグを設けるとともに、各タグに対し詳細情報やリンク用アドレス情報を入力することができる。なお、電子情報端末は、サーバと直接接続していてもよい。管理者がタグを設けた環境映像を事前に準備する必要がある場合などには、環境映像は環境撮影装置によって過去に撮影された映像であることが好ましい。なお、環境映像が環境撮影装置によってリアルタイムで撮影される映像である場合、画像認識可能な人工知能を用いて、環境映像上の特徴箇所に関する詳細な情報やウェブサイトへのリンクを自動的に生成してタグ付けすることもできる。
【0039】
タグ付けされた環境映像について図3を用いて説明する。図3は、表示装置に表示される画面の一例を示す図である。図3(a)はリアルタイムに撮影される現在の対象物Oの映像Poで、図3(b)は過去に撮影された環境映像Pe’である。図3(c)は、画面上に対象物Oの映像Poと、環境映像Pe’にタグ付けされた環境映像Peとが表示されている図である。なお、図3(c)は、図2の表示装置4の画面の拡大図である。図3(c)における環境映像Peは、図3(b)の映像データのみからなる環境映像Pe’に対して、管理者がタグ付けと詳細情報の入力を行うとともに、位置表示手段により移動体Mの現在の位置表示がなされた映像である。図3(c)において、タグTは空間内の設備における所定の箇所に付されている。また、移動体Mの現在の位置とともに視野範囲(対象物撮影装置の撮影範囲)も表示されることで、観察者は容易に現場の状況を理解できる。図3(c)に示す環境映像Peを見る観察者は、映像の拡大縮小を自由に行うことができる。
【0040】
タグ付けされた環境映像からの詳細情報の閲覧について図4を用いて説明する。図4は、詳細情報を閲覧する際の画面の一例を示す図である。図4において、画面Dには工場内の環境映像Peが表示されている。この環境映像Peは、観察者の操作により保管庫Sが拡大された状態となっている。保管庫Sには保管室ごとにタグTが付されている。観察者は、タグTを選択することで選択した箇所に保管されている物の情報(在庫状況)を現場へ行くことなく容易に知ることができる。
【0041】
本発明の表示システムは、さらに、対象物を表示装置の画面上で簡易寸法測定する機能を有してもよい。表示システムが上記構成であることにより、観察者は映像以外の参考情報を入手でき、対象物に関する理解をより深めることができる。
【0042】
上記構成の表示システムを工場に適用した場合、現場から離れた場所のシステム利用者は、設備マニュアル、メンテナンス履歴、在庫情報などの閲覧、画面上での設備配置検討などを行うことができ、工場管理を一元化できる。
【0043】
また、上記表示システムを展示会に適用した場合、システム利用者は、展示商品に関する説明の閲覧、会場における各ブースの規模感、展示商品のサイズ確認などができる。展示会開催前には、会場設営、照明の配置、座席数の検証などを行うことができる。展示会開催後には、開催時の情報を運営履歴として管理することもできる。
【0044】
さらに、上記表示システムを商業施設に適用した場合、システム利用者は、商品説明などの閲覧、商品のサイズ確認などができる。画面上には購入サイトへのリンクを表示することができ、システム利用者はリンクを経由して容易に商品を購入できる。
【0045】
上記表示システムを飲食店に適用した場合、システム利用者は、商品メニュー、店員情報などの閲覧、店舗スペースの確認、座席数、レイアウトの検証などを行うことができる。画面上には予約サイトへのリンクを表示することができ、システム利用者は、リンクを経由して容易に予約ができる。
【0046】
上記表示システムを病院や福祉施設に適用した場合、システム利用者は、感染症蔓延防止などを理由に施設内への部外者立ち入り制限がされている状況であってもオンライン上で施設訪問ができ、施設の様子、職員の顔、入院患者や施設入居者の様子などを見ることができる。また、システム利用者は、施設の情報、職員の情報なども閲覧でき、安心して施設を利用できる。
【0047】
サーバは、撮影された対象物の映像および環境映像の少なくともいずれかの映像データにインデックスを付与して保存する機能を有することが好ましい。映像データの保存期間は、例えば、撮影装置による撮影後6カ月以上が好ましく、2年以上がより好ましく、5年以上がさらに好ましい。映像データへのインデックスの付与は、管理者により行われてもよいし、画像認識可能な人工知能により自動的に行われてもよい。インデックスは、映像の変化が大きい場面で人工知能によって仮称で付与され、その後人間により任意のインデックスへと修正して付与されてもよい。表示システムは、上記構成であることにより、サーバに保存された映像データに基づいて任意の時点における映像を容易に表示でき、観察者が過去の作業工程や、製品の外観情報などを確認できる。その結果、例えば、工場における現場の作業者に対して、より的確な指示を出すことなどができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の表示システムは、離れた場所の対象物の状況を観察者が理解しやすいので、遠隔地での展示会、工場見学、技術指導などに好適に利用できる。
【符号の説明】
【0049】
1 表示システム
2 対象物撮影装置
3 環境撮影装置
4 表示装置
5 サーバ
6 ネットワーク
D 画面
M 移動体
Pe、Pe’ 環境映像
Po 対象物の映像
S 保管庫
T タグ
図1
図2
図3
図4