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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106938
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】タイナス冷凍加工品
(51)【国際特許分類】
   A23L 19/00 20160101AFI20240801BHJP
   A23L 23/00 20160101ALI20240801BHJP
   A23B 7/04 20060101ALI20240801BHJP
   A23B 7/06 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
A23L19/00 A
A23L23/00
A23B7/04
A23B7/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023021192
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】591119370
【氏名又は名称】ヤマモリ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】烏山 将織
(72)【発明者】
【氏名】宮村 かおり
(72)【発明者】
【氏名】松本 裕子
【テーマコード(参考)】
4B016
4B036
4B169
【Fターム(参考)】
4B016LC03
4B016LE03
4B016LG05
4B016LP03
4B016LP06
4B016LP07
4B016LP11
4B036LF05
4B036LH29
4B036LP01
4B036LP03
4B036LP17
4B169AA01
4B169HA07
(57)【要約】
【課題】 冷凍・解凍した後であっても、褐変を抑制しつつ、タイナスとして好まれる噛み応えのある食感を有するタイナス冷凍加工品を提供する事。
【解決手段】
冷凍・解凍後に果肉部分を10mm×10mm×10mmに切り出した際の歪率50%の荷重が1.0×10N/m以上2.9×10N/m以下であり、かつ、加熱処理前にカットした断面における色調が、冷凍・解凍後に色差計で測定されるL*a*b*表色系のL*値が25以上46以下、かつ、a*値が-2以上4以下である、タイナス冷凍加工品。カットした生のタイナスを90℃~120℃の温度帯で加熱処理する事で得られるタイナス冷凍加工品の製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カットしたタイナス果肉を加熱処理後に、果肉中心まで凍結させた後に果肉中心まで解凍させ、10mm×10mm×10mmに切り出した際の歪率50%の荷重が1.0×10N/m以上2.9×10N/m以下であり、かつ、加熱処理前にカットした断面における色調が、色差計のL*a*b*表色系のL*値が25以上46以下、かつ、a*値が-2以上4以下である、タイナス冷凍加工品。
【請求項2】
生のタイナスを用いて、タイナスをカットする工程と、前記カット工程後のタイナスを、茹で加熱においては90℃~100℃で5分~60分間、蒸し加熱においては95℃~120℃で5分~25分間、油調加熱では101℃~120℃で2分~10分間加熱する工程と、前記加熱工程後のタイナスを凍結させる工程とを含む請求項1に記載のタイナス冷凍加工品の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のタイナス冷凍加工品を含むことを特徴とする飲食物。
【請求項4】
請求項1に記載のタイナス冷凍加工品を含むことを特徴とする加工食品。
【請求項5】
請求項1に記載のタイナス冷凍加工品を含むことを特徴とするタイカレー。
【請求項6】
請求項2に記載のタイナス冷凍加工品を含むことを特徴とする飲食物。
【請求項7】
請求項2に記載のタイナス冷凍加工品を含むことを特徴とする加工食品。
【請求項8】
請求項2に記載のタイナス冷凍加工品を含むことを特徴とするタイカレー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタイナス冷凍加工品、及びタイナス冷凍加工品の製造法に関する。
【技術背景】
【0002】
タイナス(ナス属:マクアポ)は東南アジアを中心に栽培される作物であり、ナスの一品種である。日本国内で一般的に流通している紫色の外皮に覆われた茄子とは異なり、緑色と白色のゼブラ柄の果皮であり、ゴルフボール程度の大きさで、丸型あるいは卵型の形を有する。食感においては日本国内で一般的に流通している紫色の外皮に覆われた茄子とは異なり、噛み応えのある食感が特徴である。東南アジア料理においては、サラダとして生食される場合やスープ料理や炒め物など、様々な料理に使用される一般的な野菜であり、特にタイ料理においては、グリーンカレーやレッドカレーなどの具材などに使用される野菜である。
【0003】
タイナスは日本国内での栽培はほとんど普及していないものの、タイ料理を中心としたエスニック料理が日本国内においても定着し始め、今後加工食品への活用も期待される。タイナスは日本で流通している茄子(紫色の外観を呈する茄子:千両2号、長茄子など)と異なり、カット後に冷凍し解凍すると、著しく褐変してしまう特徴を有し、商品価値を損ねてしまう。グリーンカレーなどのカレー類でタイナスに求められる品質としては加熱後も噛み応えがある食感と、カット面の果肉部分が白い点が挙げられる。冷凍加工を施すことで、タイナスを通年供給する事が可能となると共に、品質面においてはタイナスを解凍した場合であっても、カット面の果肉部分が白く、噛み応えのある食感を有することが望まれる。
【0004】
これまでに茄子に関する様々な加工方法が報告されている。特開2016‐182043号公報には、容器に充填後に加熱処理を施した後でも歯ごたえのある食感を有し、かつ青臭さのない風味を有する加工茄子又は加工茄子を含む食品及びその製造方法を提供することを目的とし、生茄子を80℃以上100℃以下の油温で2分以上10分以下油揚した後、容器に入れて80℃以上100℃以下の温度で15分以上60分以下加熱処理する方法が公開されている。特開2016‐158534号公報には、生の茄子をマイクロウエーブで処理した後に冷凍し、その後乾燥する乾燥茄子の製造方法と当該乾燥茄子を含む食品、特開2007‐49950号公報では、果皮部が鮮やかな紫色の色調を有しつつ、良好な風味及び食感を有し、これらが保持されるナス加工品の製造方法が公開されている。しかしながら、いずれも日本で流通する茄子(紫色の外観を呈する茄子:千両2号、長茄子など)を鑑みた加工方法であり、歯ごたえのある食感や果皮部が鮮やかな紫色の色調を有する点が重んじられる一方で、冷凍後の解凍により著しく褐変するタイナスの加工方法としては不十分であり、またタイナスに関する製造方法に関しては何ら報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016‐182043号公報
【特許文献2】特開2016‐158534号公報
【特許文献3】特開2007‐49950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
茄子に関する報告はあるものの、タイナスに関する報告は乏しく、適切な加工条件は一般的にはほとんど知られていない。日本では馴染みが無く、好まれる品質に関しても十分に知られておらず、更には、工業的に、効率的に、安定的に加工する製造方法に関しての詳細な報告はこれまでになされていない。
【0007】
そこで本発明は冷凍・解凍した後であっても、褐変を抑制しつつ、タイナスとして好まれる噛み応えのある食感を有するタイナス冷凍加工品を提供する事を目的とする。具体的にはカットしたタイナスを冷凍・解凍した後でも、カット面の果肉部分の白さが維持されており、かつ、噛み応えがあるタイナス冷凍加工品とその製造方法、並びに当該タイナス冷凍加工品を含む飲食物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、冷凍・解凍後に果肉部分を10mm×10mm×10mmに切り出した際の歪率50%の荷重が1.0×10N/m以上2.9×10N/m以下であり、かつ、加熱処理前にカットした断面における色調が、冷凍・解凍後に色差計で測定されるL*a*b*表色系のL*値が25以上46以下、かつ、a*値が-2以上4以下である、タイナス冷凍加工品に関するものである。またカットした生のタイナスを90℃~120℃の温度帯で加熱処理する事で得られるタイナス冷凍加工品の製造方法に関するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、カットしたタイナスを冷凍・解凍した後においても、カット面の果肉部分の白さを維持しつつ、かつ、噛み応えのあるタイナス冷凍加工品を提供することが出来る。更にそれを加工した飲食物を提供することを目的とし、タイナスを通年供給することが可能となり、需要拡大が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】タイナスの外観
図2】タイナスをくし切りし、室温にて5時間経過後の外観
図3】タイナスをくし切りし、冷凍・解凍後、室温にて5時間経過後の外観(比較例1)
図4】長ナスをイチョウ切りし、室温にて5時間経過後の外観
図5】長ナスをイチョウ切りし、冷凍・解凍後、室温にて5時間経過後の外観
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るタイナス冷凍加工品の特徴、製造方法、ならびにこれを用いた飲食物について具体的に説明する。ただし、以下の説明は特許の請求範囲を限定するものでは無い。
【0012】
本発明に係るタイナス冷凍加工品は、冷凍・解凍後に果肉部分を10mm×10mm×10mmに切り出した際の歪率50%の荷重が1.0×10N/m以上2.9×10N/m以下であり、かつ、加熱処理前にカットした断面における色調が、冷凍・解凍後に色差計で測定されるL*a*b*表色系のL*値が25以上46以下、かつ、a*値が-2以上4以下である特徴を有する。荷重が1.0×10N/m未満であると噛み応えのある食感とはならずに好ましくない。またL*値が25未満、あるいはa*値が4よりも大きい場合には、冷凍・解凍後のタイナスカット面の果肉が白さを維持することができず、好ましくない。歪み率50%の荷重が1.0×10N/m以上、L*値が25以上、かつa*値が4以下であることで、冷凍・解凍後であっても、カット面の果肉の白さがあり、噛み応えのある食感を有するタイナス冷凍加工品を提供することが出来る。
【0013】
本発明に係るタイナス冷凍加工品の冷凍・解凍後におけるカット面の果肉の白さとは、加熱処理前にカットした断面における色調が、冷凍・解凍後に色差計のL*a*b*表色系のL*値が25以上46以下、かつ、a*値が-2以上4以下であることを特徴としている。カット面の果肉は白いものが好ましく、L*値が25未満である場合には、黒い外観を呈し好ましくなく、またa*値が4よりも大きい場合には、褐変してしまい好ましくない。
【0014】
本発明に係るタイナス冷凍加工品の冷凍・解凍後における噛み応えのある食感は、サンプルを試料台に設置し、対象サンプルが50%の歪み率となるまでプランジャーで上部から一定速度で押し込み、その時の押し込みに要する荷重の大きさで示される。対象サンプルの歪み率とは、対象サンプルを圧縮したプランジャーの押込み距離を、試料台に設置された対象サンプルの底面から対象サンプル頂上部までの高さで割った値で表され、本発明内ではその数字を百分率で表記し、50%の歪み率とした。具体的には高さが10mmの対象サンプルに対し歪み率が50%の場合は、プランジャーの押込み距離は5mmとなる。本発明では、歪み率50%での荷重が一定値以上ものが、噛み応えのある食感であると判断した。具体的には1.0×10N/m以上2.9×10N/m以下が好ましく、さらに好ましくは1.3×10N/m以上2.9×10N/m以下である。歪み率50%の荷重が1.0×10N/m未満であると、食感が柔らかすぎる為、好ましく無い。
【0015】
タイナス冷凍加工品の歪み率50%の荷重はクリープメーター(RE‐3305S/株式会社 山電)を用いて測定される。荷重は測定される果肉の大きさによって変化するため本発明においては10mm×10mm×10mmのダイス状に果肉をカットして測定されるものとする。タイナス冷凍加工品を品温20℃とし、直径20mmの円板型プランジャーを1mm/秒の速度で果肉を圧縮させた際の歪み率50%の荷重である。
【0016】
本発明に用いられるタイナスの大きさ、収穫時期は特に限定されるものでは無く、適当な大きさにカットしたものを用いることが出来る。カットの方法は、乱切り、輪切り、くし切り等任意である。また収穫後から加工するまでの期間も特に限定されるものでは無い。
【0017】
本発明に係るタイナス冷凍加工品の製造方法は、生のタイナスを適当な大きさにカットしたものを加熱する方法が挙げられる。加熱温度としては90℃以上120℃以下であり、加熱時間は5分以上60分以下が好ましい。加熱条件が茹で加熱においては90℃~100℃で5分~60分間、蒸し加熱においては95℃~120℃で5分~25分間、油調加熱では、101℃~120℃で2分~10分間であることが好ましい。また加熱時、あるいは加熱前にポリフェノールオキシダーゼの阻害効果のある食塩水に浸漬する方法や、ポリフェノールの酸化防止剤であるアスコルビン酸やその塩類を用いて浸漬や前処理を実施することが出来る。酵素阻害剤や酸化防止剤はこれに限定するものでは無く使用することが出来る。
【0018】
本発明に係るタイナス冷凍加工品の製造方法のうち、茹で加熱とは、水を加熱し所定温度の液温にてタイナスを加熱する方法を指す。
【0019】
本発明に係るタイナス冷凍加工品の製造方法のうち、蒸し加熱とは、容器に蒸気を充満させ、その容器中で食品を加熱する方法を指す。容器内温度を所定温度とし、タイナスを加熱する方法を指す。
【0020】
本発明に係るタイナス冷凍加工品の製造方法のうち、油調加熱とは、油を加熱し所定温度の油温にてタイナスを加熱する方法を指す。油脂の種類は特に限定するものでは無く、コーン油、パーム油、なたね油、大豆油、ラードなどが使用出来る。また2種類以上の油を混合して使用しても良い。
【0021】
本発明に係るタイナス冷凍加工品の製造方法のうち、冷凍方法及び解凍方法は特に限定されるものではなく、果肉の中心まで冷凍及び解凍されていれば通常行われる冷凍・解凍方法を用いることができ、冷凍及び冷凍後の時間は特に限定されるものではない。解凍に要する時間も特に限定されるものではなく、0℃~20℃の雰囲気中、あるいは流水中で、30分~10時間かけて解凍する方法等が考えられる。果肉の中心まで凍結するには果肉の中心温度が-5℃以下になっていれば良い。また果肉の中心まで解凍するには果肉の中心温度が0℃以上になっていれば良い。
【0022】
本発明に係るタイナス冷凍加工品は、そのまま飲食することも可能であるし、更なる加工を施して飲食物に利用することも可能である。そのまま飲食する場合には、解凍したタイナス冷凍加工品をそのまま喫食することも可能であるし、外食や中食メニュー等においてはタイナス冷凍加工品を解凍したものを、メニューの具材としてそのまま使用することが可能である。メニューは、タイカレー類、その他カレー類、シチュー類、スープ類、麺類、惣菜類、炒め物類等、特に限定されるものではなく、使用可能である。また、タイカレーの具材として配合しパウチに充填後、密閉し殺菌する加工食品等に使用出来る。加工食品とは食品になんらかの加工を施したものであり、水産練り製品・肉加工品・乳加工品・野菜加工品・果実加工品・油脂食品・嗜好食品・調味料・菓子類・冷凍食品・レトルト食品・缶詰食品・びん詰め食品・インスタント食品等が挙げられる。タイカレーとは、グリーンカレー、レッドカレー、イエローカレー、マッサマンカレー、パネーンカレー、プリックカレー等が挙げられる。
【0023】
<試験例1>
(実施例1~5)
生のタイナス(収穫後2日後)のヘタを切り、くし切り状にカットした。カットしたタイナス250gを90℃に加熱した水700gに投入し、液温が90℃となるように適宜火加減を調整しながら、7、10、20、30、60分間茹で加熱した。ザルにて水を切り、室温にて10分間静置させ、荒熱を取った。その後-20℃の冷凍庫での静置により-20℃に凍結させ、タイナス冷凍加工品を作製した。
【0024】
(実施例6~8)
茹で加熱条件を95℃7、10、20分間とする以外は、実施例1~5と同様の方法でタイナス冷凍加工品を作製した。
【0025】
(実施例9、10)
茹で加熱条件を100℃5、7分間とする以外は、実施例1~5と同様の方法でタイナス冷凍加工品を作製した。
【0026】
(比較例1)
生のタイナス(収穫後2日後)のヘタを切り、くし切り状にカットし、カットしたタイナスを-20℃の冷凍庫での静置により-20℃に凍結させ、タイナス冷凍加工品を作製した。
【0027】
(比較例2)
茹で加熱条件を70℃10分間とする以外は、実施例1~5と同様の方法でタイナス冷凍加工品を作製した。
【0028】
(比較例3)
茹で加熱条件を90℃90分間とする以外は、実施例1~5と同様の方法でタイナス冷凍加工品を作製した。
【0029】
(比較例4)
茹で加熱条件を95℃3分間とする以外は、実施例1~5と同様の方法でタイナス冷凍加工品を作製した。
【0030】
(比較例5)
生の長茄子を厚さ2cmに輪切り状にカットした。カットした長ナス250gを70℃に加熱した水700gにて液温が70℃となるように適宜火加減を調整しながら、10分間茹で加熱した。ザルにて水を切り、室温にて10分間静置させ、荒熱を取った。その後-20℃の冷凍庫での静置により-20℃に凍結させ、長茄子冷凍加工品を作製した。
【0031】
(比較例6)
茹で加熱条件を90℃20分間とする以外は、比較例5と同様の方法で長茄子冷凍加工品を作製した。
【0032】
<評価>
実施例1~10、比較例1~6で得られたタイナス冷凍加工品、長茄子冷凍加工品を-20℃で2日間凍結した後、20℃の室温にて5時間静置させ解凍した。解凍後、果肉を10mm×10mm×10mmのサイズにカットし、クリープメーター(RE‐3305S/株式会社山電)を用い、品温20℃、直径20mmの円板型プランジャーを1mm/秒の速度で果肉を圧縮させた際の歪み率50%の荷重を測定した。また同様に解凍したタイナス冷凍加工品、長茄子冷凍加工品の果肉面の色調を、色差計(分光色差計 SE6000/日本電色工業株式会社)を用いて測定した。5名のパネラーにて官能評価により食感の硬さ、外観検査により褐変の様子を目視で評価した。評価基準としては、食感の硬さは柔らかいものを1点、硬いものを7点とした。外観検査では、褐変しているものを1点、褐変していないものを5点とした。食感と外観の観点より、総合的な好ましさを評価した。評価基準としては、◎:最も好ましい、○:好ましい、△:やや好ましい、×:好ましくない、を示している。結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
表1から明らかなように、冷凍・解凍前に茹で加熱していない場合(比較例1)は、顕著に褐変している。さらに一般的なブランチグ条件と考えられる70℃10分の茹で加熱を実施した後に冷凍・解凍した場合(比較例2)、タイナスの褐変を全く抑制することができなかった。一方で、長茄子用いて70℃10分の茹で加熱を実施した後に冷凍・解凍した場合(比較例5)は、食感・外観ともに好ましい結果であり、従来日本で流通している茄子とタイナスの性質が全く異なる事がわかる。カットしたタイナスを90℃7分~60分(実施例1~5)、95℃7分~20分(実施例6~8)、100℃5分~7分(実施例9、10)にて茹で加熱することで、冷凍・解凍による褐変を抑制しつつ、噛み応えのある食感とすることが出来た。比較例6に示されるように、タイナスとして好ましい90℃20分の茹で加熱を長茄子にて実施したところ、食感が柔らかくなりすぎてしまった。
【0035】
<試験例2>
(実施例11~15)
生のタイナス(収穫後3日後)のヘタを切り、くし切り状にカットした。カットしたタイナス500gをホテルパンに並べ、スチームコンベクションオーブン(Maruzen Super Steam/株式会社マルゼン)を用いて、蒸し加熱(スチームモード、風速:中)した。庫内温度を95℃とし8、10、15、23、25分間加熱した。加熱後室温にて10分間静置させ、荒熱を取った。その後-20℃の冷凍庫での静置により-20℃に凍結させ、タイナス冷凍加工品を作製した。
【0036】
(実施例16~21)
蒸し加熱条件を、庫内温度100℃(コンビモード、蒸気出力:50、風速:中)とし5、7、10、15、20、23分間加熱する以外は、実施例11~15と同様の方法でタイナス冷凍加工品を作製した。
【0037】
(実施例22~25)
蒸し加熱条件を、庫内温度110℃(コンビモード、蒸気出力:50、風速:中)とし、5、7、12、15分間加熱する以外は、実施例11~15と同様の方法でタイナス冷凍加工品を作製した。
【0038】
(実施例26~28)
蒸し加熱条件を、庫内温度120℃(コンビモード、蒸気出力:50、風速:中)とし、5、7、12分間加熱する以外は、実施例11~15と同様の方法でタイナス冷凍加工品を作製した。
【0039】
(比較例7)
蒸し加熱条件を、庫内温度95℃(スチームモード、風速:中)とし30分間加熱する以外は、実施例11~15と同様の方法でタイナス冷凍加工品を作製した。
【0040】
(比較例8)
蒸し加熱条件を、庫内温度100℃(コンビモード、蒸気出力:50、風速:中)とし3分間加熱する以外は、実施例11~15と同様の方法でタイナス冷凍加工品を作製した。
【0041】
(比較例9)
生の長茄子を厚さ2cmに輪切り状にカットした。カットした長ナス500gをホテルパンに並べ、スチームコンベクションオーブン(Maruzen Super Steam/株式会社マルゼン)を用いて、蒸し加熱(コンビモード、蒸気出力:50、風速:中)した。庫内温度を100℃にて10分間加熱した。加熱後室温にて10分間静置させ、荒熱を取った。その後-20℃の冷凍庫での静置により-20℃に凍結させ、タイナス冷凍加工品を作製した。
【0042】
実施例11~28、比較例7~9で得られたタイナス冷凍加工品、長茄子冷凍加工品を試験例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0043】
【表2】
【0044】
表2から明らかなように、蒸し加熱では95℃~120℃、5分~25分間加熱処理した後に冷凍・解凍した場合、褐変を抑制しつつ、噛み応えのある硬い食感とすることができた(実施例11~28)。95℃30分(比較例7)では柔らかい食感であり、100℃3分(比較例8)では褐変を十分に抑制出来なかった。またタイナスでは100℃10分加熱処理した場合(実施例18)では、褐変を抑制しつつ、噛み応えのある食感であったのに対し、長茄子にて100℃10分加熱処理した場合(比較例9)は、柔らかすぎる食感となり、求める品質とはならなかった。
【0045】
<試験例3>
【実施例29】
生のタイナス(収穫後3日後)のヘタを切り、くし切り状にカットした。カットしたタイナス500gに対し、浸漬溶液として2%w/w食塩水700gに20℃5分間浸漬させ、その後ザルにて水気を切った。ホテルパンに並べ、スチームコンベクションオーブン(Maruzen Super Steam/株式会社マルゼン)を用いて、庫内温度を99℃とし5分間加熱(スチームモード、風速:中)した。加熱後室温にて10分間静置させ、荒熱を取り、-20℃の冷凍庫での静置により-20℃に凍結させ、タイナス冷凍加工品を作製した。
【実施例0046】
浸漬溶液を1%w/wアスコルビン酸溶液を用いた以外は、実験例8と同様にタイナス冷凍加工品を作製した。
【実施例0047】
浸漬溶液に浸す工程を省き、実験例8と同様にタイナス冷凍加工品を作製した。
【0048】
実施例29~31で得られたタイナス冷凍加工品を試験例1と同様に評価した。結果を表3に示す。
【0049】
【表3】
【0050】
表3から明らかなように、ポリフェノールオキシダーゼの阻害剤である食塩にて浸漬した場合(実施例29)、ポリフェノールの酸化防止剤であるアスコルビン酸にて浸漬した場合(実施例30)、浸漬溶液に浸さなかった場合(実施例31)、何れにおいても同程度に褐変を抑制しつつ、噛み応えのある食感とすることができた。本発明のタイナス冷凍加工品を作製する上で、ポリフェノールオキシダーゼの阻害剤やポリフェノールの酸化防止剤を使用しても構わないことが示された。
【0051】
<試験例4>
【実施例32】
生のタイナス(収穫後2日後)のヘタを切り、くし切り状にカットした。カットしたタイナス250gを101℃に加熱したなたね油1000gにて液温が101℃となるように適宜火加減を調整しながら、5分間加熱し油調した。その後、ザルにて表面の油を切り、室温にて10分間静置させ、荒熱を取った。-20℃の冷凍庫での静置により-20℃に凍結させ、タイナス冷凍加工品を作製した。
【0052】
(実施例33~35)
油調条件を105℃3、5、10分間とする以外は、実施例32と同様の方法でタイナス冷凍加工品を作製した。
【実施例0053】
油調条件を115℃4分間とする以外は、実施例32と同様の方法でタイナス冷凍加工品を作製した。
【実施例0054】
油調条件を120℃2分間とする以外は、実施例32と同様の方法でタイナス冷凍加工品を作製した。
【0055】
(比較例10)
油調条件を80℃10分間とする以外は、実施例32と同様の方法でタイナス冷凍加工品を作製した。
【0056】
(比較例11)
油調条件を100℃1分間とする以外は、実施例32と同様の方法でタイナス冷凍加工品を作製した。
【0057】
(比較例12)
油調条件を160℃2分間とする以外は、実施例32と同様の方法でタイナス冷凍加工品を作製した。
【0058】
(比較例13)
生の長茄子を厚さ2cmに輪切り状にカットした。カットした長ナス250gを80℃に加熱したなたね油1000gにて液温が80℃となるように適宜火加減を調整しながら、10分間加熱し油調した。その後、ザルにて表面の油を切り、室温にて10分間静置させ、荒熱を取った。-20℃の冷凍庫での静置により-20℃に凍結させ、長茄子冷凍加工品を作製した。
【0059】
実施例32~37、比較例10~13で得られたタイナス冷凍加工品、長茄子冷凍加工品を試験例1と同様に評価した。結果を表4に示す。
【0060】
【表4】
【0061】
表4から明らかなように、101℃~120℃、2分~10分間油調した後に冷凍・解凍した場合、褐変を抑制しつつ、噛み応えのある硬い食感とすることができた(実施例32~37)。100℃1分油調した後に冷凍・解凍した場合(比較例11)は褐変を十分に抑制出来なかった。また〔先行文献1〕(特開2016‐182043号公報)には80℃~100℃、2分~10分油調し、容器に詰め加熱することで、茄子の食感及び風味が保持された加工茄子を提供する方法が公開されている。カットしたタイナスを80℃10分間油調し冷凍・解凍した場合(比較例10)、褐変が著しく進んでしまった。一方、長茄子に関して80℃10分油調し、冷凍・解凍した場合(比較例13)、硬さがあり、褐変を抑制出来ていることが確認された。これらの結果からも、従来日本で流通している紫色の外皮に覆われた茄子とタイナスが異なる性質を持つことが確認された。更にカットしたタイナスを一般的な油調条件である160℃2分間油調した後に冷凍・解凍した場合(比較例12)は、油調処理前にカットした断面が褐変してしまった。
【0062】
<試験例5>
(実施例38~41、比較例14、15)
[グリーンカレーの作製]
タイグリーンカレーソースYPK5(ヤマモリ株式会社)100gに対し、水50gを加え希釈した。鶏もも肉を10mmサイズにカットし、沸騰水中で5分間加熱後、ザルにて水気を切り室温にて10分間静置させ荒熱を取った。パウチ(130mm×160mm)に希釈したソース90g、前記加熱した鶏もも肉16g、実施例3、実施例5、実施例18、実施例24、比較例1、比較例3で作製したタイナス冷凍加工品を20℃にて2時間静置させ解凍させた後50g充填した。パウチを密閉し、90℃の湯浴にて15分間加熱させた。加熱後に流水で10分間冷却し、-20℃の冷凍庫での静置により-20℃に凍結させ、グリーンカレーを作製した。
【0063】
実施例38~41、比較例14、15にて作製したグリーンカレーを沸騰水中で5分間加熱した。5名のパネラーにて官能評価によりタイナスの食感の硬さ、外観検査により褐変の様子を目視で評価した。評価基準としては、食感の硬さは柔らかいものを1点、硬いものを7点とした。外観検査では、褐変しているものを1点、褐変していないものを5点とした。食感と外観の観点より、総合的な好ましさを評価した。評価基準としては、◎:最も好ましい、○:好ましい、△:やや好ましい、×:好ましくない、を示している。結果を表5に示す。
【0064】
【表5】
【0065】
表5から明らかなように、実施例3、実施例5、実施例18、実施例24で作製したタイナス冷凍加工品を用いてグリーンカレーに作製した場合、褐変を抑制しつつ、噛み応えのある硬い食感とすることができた(実施例38~41)。一方で、未加熱で作製したタイナス冷凍加工品を用いた場合(比較例14)は、顕著に褐変してしまっており、茹で加熱90℃90分間処理したタイナス冷凍加工品を用いた場合(比較例15)は、柔らか過ぎる食感であった。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明のタイナス冷凍加工品を冷凍・解凍後、そのままでも色調と適度な硬さ、食感を維持したままのタイナスとして飲食することも可能であるし、あるいは更なる加工をしてもタイナスとしての色調や食感を維持したまま消費者に提供することが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5