(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010694
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】コネクタ検査治具、コネクタ検査装置、コネクタ検査方法およびコネクタ検査装置の制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H01R 43/00 20060101AFI20240118BHJP
H01R 13/24 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
H01R43/00 Z
H01R13/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112119
(22)【出願日】2022-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】山下 淳也
(72)【発明者】
【氏名】植野 義則
【テーマコード(参考)】
5E051
【Fターム(参考)】
5E051GB10
(57)【要約】
【課題】より構造が簡単で不良の端子金具を特定できるコネクタ検査治具等を提供する。
【解決手段】コネクタ検査治具は、ハウジングと、ハウジングの一端部側に固定された第1のカバーと、他端部側に固定された第2のカバーと、一端部に端子部を備え第1のカバーから端子部が露出されるようにハウジングに収容された複数の第1のピンと、一端部に第1のピンに接触する接触部を備え他端部が第2のカバーに固定されハウジングに収容された複数の第2のピンと、第2のピンが貫通する貫通穴を備え第2のカバーとの近接と離間が可能に第2のカバーに取り付けられた摺動板と、フランジ部と摺動板とに挟まれ各々の第1のピンを摺動板から離れる方向に付勢する複数の付勢部材と、複数の付勢部材が摺動板を押す力を計測する力センサと、を有し、複数の第1のピンは、端子部の第1のカバーから露出する長さが互いに異なる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングの一端部側に固定された第1のカバーと、
前記ハウジングの他端部側に固定された第2のカバーと、
一端部に端子部をそれぞれ備え、他端部にフランジ部をそれぞれ備え、前記第1のカバーから複数の前記端子部の各々が露出されるように前記ハウジングに収容された複数の第1のピンと、
一端部に前記第1のピンに接触する接触部を備え、他端部に前記第2のカバーに固定される胴部を備え、前記ハウジングに収容された複数の第2のピンと、
複数の前記第2のピンの各々が貫通する複数の貫通穴を備え、前記第2のカバーとの近接と離間が可能となるように前記第2のカバーに取り付けられた摺動板と、
前記フランジ部と前記摺動板との間に設けられ、複数の前記第1のピンの各々を前記摺動板から離れる方向に付勢する複数の付勢部材と、
複数の前記付勢部材が前記摺動板を押圧する押圧力を計測する力センサと、
を有し、
複数の前記端子部において前記第1のカバーから露出する部分の長さは、互いに異なる、
ことを特徴とするコネクタ検査治具。
【請求項2】
前記第1のピンの並び順に従って、前記第1のカバーから露出する部分の長さが変化している、
ことを特徴とする請求項1に記載のコネクタ検査治具。
【請求項3】
複数の前記第1のピンにおいて、
複数の前記端子部の前記第1のカバーから露出する部分の長さが短くなるにしたがって、対応する前記付勢部材の付勢力が大きくなっている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のコネクタ検査治具。
【請求項4】
前記第1のピンおよび前記第2のピンが導体であり、
前記第2のピンの他端部には、被検査コネクタを検査する検査装置が接続される、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のコネクタ検査治具。
【請求項5】
請求項1または2に記載のコネクタ検査治具と、
被検査コネクタに対して前記ハウジングの一端部が近接または離間するように前記ハウジングの位置を制御する位置制御手段と、
前記ハウジングの位置を変化させた際に前記力センサが計測した前記押圧力を取得する押圧力取得手段と、
前記被検査コネクタに対する前記ハウジングの位置と前記押圧力との関係を示す検査データを表示する表示手段と、
を有することを特徴とするコネクタ検査装置。
【請求項6】
基準となる前記被検査コネクタを検査した際に取得される前記検査データを基準検査データとして取得する基準検査データ取得手段を有し、
前記表示手段が、
前記基準検査データを表示する、
ことを特徴とする請求項5に記載のコネクタ検査装置。
【請求項7】
前記検査データを前記基準検査データと比較して、前記被検査コネクタの各々の端子金具が正常であるか不良であるかを判定する判定部を有する、
ことを特徴とする請求項6に記載のコネクタ検査装置。
【請求項8】
コネクタ検査装置とコネクタ検査治具を用いたコネクタ検査方法であって、
前記コネクタ検査治具は、
ハウジングと、
前記ハウジングの一端部側に固定された第1のカバーと、
前記ハウジングの他端部側に固定された第2のカバーと、
一端部に端子部をそれぞれ備え、他端部にフランジ部をそれぞれ備え、前記第1のカバーから複数の前記端子部の各々が露出されるように前記ハウジングに収容された複数の第1のピンと、
一端部に前記第1のピンに接触する接触部を備え、他端部に前記第2のカバーに固定される胴部を備え、前記ハウジングに収容された複数の第2のピンと、
複数の前記第2のピンの各々が貫通する複数の貫通穴を備え、前記第2のカバーとの近接と離間が可能となるように前記第2のカバーに取り付けられた摺動板と、
前記フランジ部と前記摺動板との間に設けられ、複数の前記第1のピンの各々を前記摺動板から離れる方向に付勢する複数の付勢部材と、
複数の前記付勢部材が前記摺動板を押圧する押圧力を計測する力センサと、
を有し、
複数の前記端子部において前記第1のカバーから露出する部分の長さは、互いに異なり、
前記コネクタ検査装置が、
被検査コネクタに対して前記ハウジングの一端部が近接または離間するように前記ハウジングの位置を制御し、
前記ハウジングの位置を変化させた際の前記押圧力を取得し、
前記被検査コネクタに対する前記ハウジングの位置と前記押圧力との関係を示す検査データを表示する、
ことを特徴とするコネクタ検査方法。
【請求項9】
前記コネクタ検査装置が、
基準となる前記被検査コネクタを検査した際に取得される前記検査データを基準検査データとして取得し、
前記基準検査データを表示する、
ことを特徴とする請求項8に記載のコネクタ検査方法。
【請求項10】
コネクタ検査治具を用いたコネクタ検査を行うコネクタ検査装置を制御するコネクタ検査装置の制御プログラムとであって、
前記コネクタ検査治具は、
ハウジングと、
前記ハウジングの一端部側に固定された第1のカバーと、
前記ハウジングの他端部側に固定された第2のカバーと、
一端部に端子部をそれぞれ備え、他端部にフランジ部をそれぞれ備え、前記第1のカバーから複数の前記端子部の各々が露出されるように前記ハウジングに収容された複数の第1のピンと、
一端部に前記第1のピンに接触する接触部を備え、他端部に前記第2のカバーに固定される胴部を備え、前記ハウジングに収容された複数の第2のピンと、
複数の前記第2のピンの各々が貫通する複数の貫通穴を備え、前記第2のカバーとの近接と離間が可能となるように前記第2のカバーに取り付けられた摺動板と、
前記フランジ部と前記摺動板との間に設けられ、複数の前記第1のピンの各々を前記摺動板から離れる方向に付勢する複数の付勢部材と、
複数の前記付勢部材が前記摺動板を押圧する押圧力を計測する力センサと、
を有し、
複数の前記端子部において前記第1のカバーから露出する部分の長さは、互いに異なり、
前記コネクタ検査装置に、
被検査コネクタに対して前記ハウジングの一端部が近接または離間するように前記ハウジングの位置を制御する処理と、
前記ハウジングの位置を変化させた際の前記押圧力を取得する処理と、
前記被検査コネクタに対する前記ハウジングの位置と前記押圧力との関係を示す検査データを表示させる処理とを、
実行させることを特徴とするコネクタ検査装置の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ検査治具等に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の電線の各々を同時に接続するために、コネクタが用いられている。一般的に、コネクタには雄型コネクタと雌型コネクタがある。コネクタの接続では、雄型コネクタと雌型コネクタが嵌合される。雄型コネクタでは、電線の端部に雄型端子金具が固定されている。そして、雄型端子金具がハウジングに固定されている。同様に、雄型コネクタでは、電線の端部に雌型端子金具が接続され、雌型端子金具がハウジングに固定されている。一般的に、雄型、雌型いずれの場合も、端子金具がハウジングの端子挿入孔に固定される。この固定が正常に行われていないと、雄型コネクタと雌型コネクタを接続した際に、端子金具がずれて接続不良が生じる。また、雄型端子金具が雌型端子金具に挟持されないと接触不良となる。このため、雄型、雌型いずれの場合も、端子金具がハウジングに固定され、相手方の端子金具と嵌合できる状態にあるか検査する必要がある。
【0003】
上記のコネクタの検査を行う技術が、例えば、特許文献1に開示されている。特許文献1に記載の技術は、導通検査用コンタクトプローブおよびこれを含む導通検査器に関するものである。特許文献1の導通検査器では、複数の雌型端子金具に挿入される接触ピンを備えたコンタクトプローブが用いられる。このコンタクトプローブは、接触ピンをケーシングによって保持する。この時、バネの弾性力によって、コンタクトプローブが、雌型端子金具からの抜取方向に付勢される。また、コンタクトプローブには、接触ピンと検査回路との導通と非導通とを切り替えるスイッチ機構が備えられている。このスイッチ機構は、通常時に非導通である。そして、接触ピンが引き出されて、ケーシングから所定量突出すると、スイッチが導通状態となる。雌型コネクタの検査では、まず、各々の接触ピンを検査対象の雌型コネクタの雌型端子金具に挿入する。この際、雌型端子金具の舌片によって接触ピンが挟持される。次に、雌型コネクタから離れる(離反する)方向に、検査装置がコンタクトプローブを所定量移動させる。ここで、接触ピンが正常に挟持されていれば、接触ピンが付勢力に抗して突出するため、接触ピンが検査回路と導通する。一方、接触ピンが正常に挟持されてなければ、接触ピンが突出しないため、接触ピンが検査回路と導通しない。接触ピンが挟持されないことは、雌型端子金具が不良であることを意味する。例えば、接圧力が足りないことなどが不良の原因となる。ここで、接圧力とは、舌片が接触ピンを挟持する圧力のことである。以上のような動作により、導通検査器は、雌型端子金具の検査を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、接触ピンを保持するケーシングにスイッチ機構を設ける必要がある。このため、コンタクトプローブの構造が複雑になるという問題があった。
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、より構造が簡単で不良の端子金具を特定できるコネクタ検査治具等を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明のコネクタ検査治具は、ハウジングと、前記ハウジングの一端部側に固定された第1のカバーと、前記ハウジングの他端部側に固定された第2のカバーと、一端部に端子部をそれぞれ備え、他端部にフランジ部をそれぞれ備え、前記第1のカバーから複数の前記端子部の各々が露出されるように前記ハウジングに収容された複数の第1のピンと、一端部に前記第1のピンに接触する接触部を備え、他端部に前記第2のカバーに固定される胴部を備え、前記ハウジングに収容された複数の第2のピンと、複数の前記第2のピンの各々が貫通する複数の貫通穴を備え、前記第2のカバーとの近接と離間が可能となるように前記第2のカバーに取り付けられた摺動板と、前記フランジ部と前記摺動板との間に設けられ、複数の前記第1のピンの各々を前記摺動板から離れる方向に付勢する複数の付勢部材と、複数の前記付勢部材が前記摺動板を押圧する押圧力を計測する力センサと、を有し、複数の前記端子部において前記第1のカバーから露出する部分の長さは、互いに異なる。
【0008】
また本発明のコネクタ検査装置は、上記のコネクタ検査治具と、被検査コネクタに対して前記ハウジングの一端部が近接または離間するように前記ハウジングの位置を制御する位置制御手段と、前記ハウジングの位置を変化させた際に前記力センサが計測した前記押圧力を取得する押圧力取得手段と、前記被検査コネクタに対する前記ハウジングの位置と前記押圧力との関係を示す検査データを表示する表示手段と、を有する。
【0009】
また、本発明のコネクタ検査方法は、コネクタ検査治具を用いたコネクタ検査方法であって、前記コネクタ検査治具は、ハウジングと、前記ハウジングの一端部側に固定された第1のカバーと、前記ハウジングの他端部側に固定された第2のカバーと、一端部に端子部を備え、他端部にフランジ部を備え、前記第1のカバーから前記端子部が露出されるように前記ハウジングに収容された複数の第1のピンと、一端部に前記第1のピンに接触する接触部を備え、他端部に前記第2のカバーに固定される胴部を備え、前記ハウジングに収容された複数の第2のピンと、前記第2のピンが貫通する貫通穴を備え、前記第2のカバーとの近接と離間が可能となるように前記第2のカバーに取り付けられた摺動板と、前記フランジ部と前記摺動板とに挟まれ、各々の前記第1のピンを前記摺動板から離れる方向に付勢する複数の付勢部材と、複数の前記付勢部材が前記摺動板を押す力を計測する力センサと、を有し、複数の前記第1のピンは、前記端子部の前記第1のカバーから露出する長さが互いに異なり、前記コネクタ検査装置が、被検査コネクタに対して前記ハウジングの一端部が近接または離間するように前記ハウジングの位置を制御し、前記ハウジングの位置を変化させた際の前記力センサの出力に基づいて、前記付勢部材が前記摺動板を押す押圧力を算出し、前記被検査コネクタに対する前記ハウジングの位置と前記押圧力との関係を示す検査データを表示する。
【0010】
また、本発明にコネクタ検査装置の制御プログラムは、コネクタ検査治具を用いたコネクタ検査を行うコネクタ検査装置を制御するコネクタ検査装置の制御プログラムとであって、前記コネクタ検査治具は、ハウジングと、前記ハウジングの一端部側に固定された第1のカバーと、前記ハウジングの他端部側に固定された第2のカバーと、一端部に端子部を備え、他端部にフランジ部を備え、前記第1のカバーから前記端子部が露出されるように前記ハウジングに収容された複数の第1のピンと、一端部に前記第1のピンに接触する接触部を備え、他端部に前記第2のカバーに固定される胴部を備え、前記ハウジングに収容された複数の第2のピンと、前記第2のピンが貫通する貫通穴を備え、前記第2のカバーとの近接と離間が可能となるように前記第2のカバーに取り付けられた摺動板と、前記フランジ部と前記摺動板とに挟まれ、各々の前記第1のピンを前記摺動板から離れる方向に付勢する複数の付勢部材と、複数の前記付勢部材が前記摺動板を押圧する押圧力を計測する力センサと、を有し、複数の前記第1のピンは、前記端子部の前記第1のカバーから露出する長さが互いに異なり、前記コネクタ検査装置に、被検査コネクタに対して前記ハウジングの一端部が近接または離間するように前記ハウジングの位置を制御する処理と、前記ハウジングの位置を変化させた際の前記押圧力を取得する処理と、前記被検査コネクタに対する前記ハウジングの位置と前記押圧力との関係を示す検査データを表示させる処理とを、実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果は、より構造が簡単で不良の端子金具を特定できるコネクタ検査治具等を提供できることである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施形態のコネクタ検査治具を示す模式図である。
【
図2】第1の実施形態のコネクタ検査治具の第1のピンを示す模式図である。
【
図3】第1の実施形態のコネクタ検査治具の第2のピンを示す模式図である。
【
図4】第1の実施形態のコネクタ検査治具の各要素の組み方を示す模式図である。
【
図5】第1の実施形態のコネクタ検査装置を示すブロック図である。
【
図6】第1の実施形態のコネクタ検査装置の制御部の一例を示すブロック図である。
【
図7】第1の実施形態のコネクタ検査治具と被検査コネクタの具体例を示す模式図である。
【
図8】第1の実施形態のコネクタ検査の第1例の第1の状態を示す模式図である。
【
図9】第1の実施形態のコネクタ検査の第1例の第2の状態を示す模式図である。
【
図10】第1の実施形態のコネクタ検査の第1例の第3の状態を示す模式図である。
【
図11】第1の実施形態のコネクタ検査の第1例の第4の状態を示す模式図である。
【
図12】第1の実施形態のコネクタ検査の第2例の第1の状態を示す模式図である。
【
図13】第1の実施形態のコネクタ検査の第2例の第2の状態を示す模式図である。
【
図14】第1の実施形態のコネクタ検査の第2例の第3の状態を示す模式図である。
【
図15】第1の実施形態のコネクタ検査データの一例を示すグラフである。
【
図16】第1の実施形態のコネクタ検査装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図17】第1の実施形態のコネクタ検査装置の別の動作例を示すフローチャートである。
【
図18】第1の実施形態のコネクタ検査治具の変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。なお各図面の同様の構成要素には同じ番号を付し、説明を省略する場合がある。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態のコネクタ検査治具10を示す模式図である。
図2は、第1の実施形態のコネクタ検査治具10の第1のピン4を示す模式図である。
図3は、第1の実施形態のコネクタ検査治具10の第2のピン5を示す模式図である。また、
図4は、第1の実施形態のコネクタ検査治具10の各要素の組み方を示す模式図である。
【0015】
図1を参照して、コネクタ検査治具10は、ハウジング1と、第1のカバー2と、第2のカバー3と、第1のピン4と、第2のピン5と、摺動板6と、付勢部材7と、力センサ8とを有する。
【0016】
第1のカバー2は、ハウジング1の一端部側に固定される。
【0017】
第2のカバー3は、ハウジング1の他端部側に固定される。
【0018】
コネクタ検査治具10は、複数の第1のピン4を備える。
図1、
図2及び
図4を参照して、各々の第1のピン4は、一端部に端子部4aを備える。また、各々の第1のピン4は、他端部にフランジ部4bを備える。そして、第1のカバー2から、端子部4aが露出されるように、それぞれの第1のピン4がハウジング1に収容される。複数の端子部4aにおいて、第1のカバー2から露出する部分の長さは、互いに異なっている。ここで、露出部分の長さと第1のピン4の位置とは、対応が取られている。第1のピン4の並び順と、露出部分の長さとの関係に制約はない。しかしながら、
図1の例のように、第1のピン4の配列の順番で、露出部分の長さが順次変化するようにしておくと、対応が分かりやすい。なお、
図1の例では、5個の第1のピン4が一列に整列しているが、第1のピン4の配置は、この例に限定されない。例えば、第1のピン4の数が6以上であっても良い。また例えば、第1のピン4が2列以上に配列されていても良い。
【0019】
図1、
図2及び
図4を参照して、第2のピン5は、一端部に接触部5aを備える。接触部5aは、第1のピン4に接触する。また、第2のピン5は、他端部に第2のカバーに固定される胴部5bを備える。複数の第1のピン4に対応する複数の第2のピン5がハウジング1に収容される。
【0020】
図1及び
図4を参照して、第2のカバーには摺動板6が取り付けられる。摺動板6は、第2のピン5が貫通する貫通穴を備える。また、第2のカバーとの近接と離間が可能となるように、摺動板6が第2のカバー3に取り付けられる。
【0021】
図1及び
図4を参照して、付勢部材7は、フランジ部4bと摺動板6との間に設けられる。付勢部材7は、各々の第1のピン4を摺動板6から離れる方向に付勢する。第1のピン4に対応して、複数の付勢部材7が設けられる。複数の第1のピン4において、対応する付勢部材7の付勢力が変化しても良い。例えば、端子部4aの第1のカバー2から露出する部分の長さが短くなるにしたがって、付勢力が大きくなるように、付勢部材7が取り付けられる。
【0022】
力センサ8は、摺動板6に加わる押圧力を計測する。摺動板6には、複数の付勢部材7から押圧力が加えられる。
【0023】
次に、コネクタ検査治具10を用いたコネクタ検査装置100について説明する。
図5は、第1の実施形態のコネクタ検査装置100を示すブロック図である。コネクタ検査装置100は、位置制御手段110と、被検査コネクタ保持手段120と、制御手段130と、表示手段140とを有する。
【0024】
位置制御手段110は、ハウジング1の位置、すなわちコネクタ検査治具10の位置を制御する。被検査コネクタ90に対して、ハウジング1の一端部が近接または離間するように、ハウジング1の位置が制御される。
【0025】
被検査コネクタ保持手段120は、被検査コネクタ90を保持する。被検査コネクタ90のそれぞれの端子金具と対応する第1のピン4が正対するように、被検査コネクタ90が保持される。制御手段130は、位置制御手段110を制御する。また、力センサ8が計測した押圧力を制御手段130が取得する。そしてハウジング1の位置と押圧力との関係を表す検査データを制御手段130が生成する。また、制御手段130が表示手段140の表示を制御する。この制御によって、表示手段140が、検査データを表示する。検査データは、被検査コネクタ90に対するハウジング1の位置と、押圧力との関係を示すデータである。
【0026】
図6は、第1の実施形態のコネクタ検査装置100の制御手段130の一例を示すブロック図である。制御手段130は、位置制御手段制御部131と、押圧力取得部132と、検査データ生成部133と、基準検査データ取得部134と、表示制御部135と、判定部136とを有する。
【0027】
位置制御手段制御部131は、位置制御手段110の動作を制御する。
【0028】
押圧力取得部132は、ハウジングの位置が変化した際に力センサ8が計測した押圧力を取得する。
【0029】
検査データ生成部133は、検査データを生成する。検査データは、ハウジング1の位置と押圧力との関係を示すデータである。
【0030】
基準検査データ取得部134は、基準検査データを取得する。基準検査データは、基準となる被検査コネクタ90を検査した際に取得される。基準検査データは、例えば、それぞれの付勢部材7の付勢力に基づいて押圧力を算出した理論値として取得される。また、例えば、端子金具に不良がない良品の被検査コネクタ90を基準品として検査を行って、基準検査データが取得される。この場合、基準品の検査データが基準検査データとなる。
【0031】
次に、具体例を用いて、コネクタ検査装置100の動作について説明する。説明にあたり、複数の第1のピン4の端子部4aが区別できるように、各々の端子部4aに符号が付与される。また被検査コネクタ90の各々の端子金具についても符号が付与される。
図7は、第1の実施形態のコネクタ検査治具と被検査コネクタの具体例を示す模式図である。
図7の例では、図の左端の端子部4aの露出部分の長さが一番長くなっている。また、左から右側に向かって露出部分の長さが次第に短くなるように、端子部4aが配列されている。そして、それぞれの端子部4aについて、左から順に4a1、4a2、4a3、4a4、4a5の符号が付されている。また、端子部4aに対応する端子金具については、
図7の左から順にh1、h2、h3、h4、h5の符号が付されている。なお、以降の説明には、以下の仮定がある。端子部4aが端子金具に所定長さ挿入されると、端子部4aはそれ以上移動しない。つまり、所定の挿入長で、端子部4aが端子金具に嵌合されて停止する。
【0032】
(具体例1)
まず良品の被検査コネクタ90の検査におけるコネクタ検査装置100の動作例について説明する。ここで良品とは、端子金具h1、h2、h3、h4、h5において、取り付け不良が無いという意味である。
【0033】
図8は、第1の実施形態のコネクタ検査の第1例の第1の状態を示す模式図である。なお、
図8から
図14では、図が煩雑になるのを避けるため、端子部4aと端子金具の符号の一部の記載が省略されている。
図8では、位置制御手段110によって、
図7の状態よりも、ハウジング1が被検査コネクタ90に近づいている。
図8に示す第1の状態においては、端子部4a1の一部が端子金具h1に挿入されている。この状態では、端子金具h1から受ける抗力の分だけ、端子部4a1に対応する付勢部材7が縮んでいる。この付勢部材7から摺動板6が受ける押圧力が力センサ8によって計測される。
【0034】
図9は、第1の実施形態のコネクタ検査の第1例の第2の状態を示す模式図である。
図9では、
図8の状態よりハウジング1が被検査コネクタ90に接近している。第2の状態においては、端子部4a1に加えて、2番目に長い端子部4a2が端子金具h2に挿入され、停止している。この状態では、端子金具h2から受ける抗力の分だけ、端子部4a2に対応する付勢部材7が縮められる。そして、第1の状態よりも、端子部4a1に対応する付勢部材7が、さらに縮んでいる。力センサ8によって、これらの付勢部材7から摺動板6が受ける押圧力が計測される。
【0035】
図10は、第1の実施形態のコネクタ検査の第1例の第3の状態を示す模式図である。
図10では、
図9の状態よりハウジング1が被検査コネクタ90に接近している。第3の状態においては、端子部4a1、4a2に加えて、3番目に長い端子部4a3が端子金具h3に挿入され、停止している。この状態では、端子金具h3から受ける抗力の分だけ、端子部4a3に対応する付勢部材7が縮められる。そして、第2の状態よりも、端子部4a1に対応する付勢部材7、および、端子部4a2に対応する付勢部材7が、さらに元の状態から縮められる。力センサ8によって、これらの付勢部材7から摺動板6が受ける押圧力が計測される。
【0036】
図11は、第1の実施形態のコネクタ検査の第1例の第4の状態を示す模式図である。
図11では、
図10の状態よりハウジング1が被検査コネクタ90に接近している。第4の状態においては、端子部4a1、4a2、4a3に加えて、4番目に長い端子部4a4が端子金具h4に挿入され、停止している。この状態では、端子金具h4から受ける抗力の分だけ、端子部4a4に対応する付勢部材7が縮められる。そして、第2の状態よりも、端子部4a1~4a3に対応する付勢部材7が、さらに元の状態より縮められている。力センサ8によって、これらの付勢部材7から摺動板6が受ける押圧力が計測される。
【0037】
以上のように、良品の被検査コネクタ90の検査では、ハウジング1が被検査コネクタ90に接近するにしたがって、端子金具に挿入される端子部4aの数が増加する。また、それに伴って、それぞれの端子部4aに対応する付勢部材7の縮みが大きくなる。その結果、ハウジング1が被検査コネクタ90に接近するにしたがって、力センサ8で計測される押圧力が増加する。
【0038】
図15は、第1の実施形態のコネクタ検査データの一例を示すグラフである。横軸の「位置」は、ハウジング1が被検査コネクタ90に近づく方向が正になっている。上記の良品の検査では、
図15に基準値(□)で示すような検査データが得られる。グラフには、端子部が端子金具に嵌合される位置が追記されている。4a1~4a5がh1~h5に対応する。また、これらの点における押圧力がプロットされている。各端子金具の取り付けが正常であるか判定するためには、これらの各端子部4aが嵌合するポイントにおける押圧力が、基準値と比較される。基準値から予め定めた第1の範囲内に押圧力があれば、判定部136が、端子金具の取り付けが正常であると判定する。一方、基準値から予め定めた第1の範囲外に押圧力があれば、端子金具の取り付けが不良であると判定される。
【0039】
(具体例2)
次に、不良品の被検査コネクタ90の検査におけるコネクタ検査装置100の動作例について説明する。ここでは、端子金具h2の取り付けが不良であるケースについて説明する。ここで、取り付けが不良とは、端子金具h2が被検査コネクタの本体に固定されていないことを意味する。つまり、端子金具h2は、端子部4aから押されると、動く。
【0040】
図12は、第1の実施形態のコネクタ検査の第2例の第1の状態を示す模式図である。
図12に示す第1の状態においては、端子部4a1の一部が端子金具h1に挿入されている。端子金具h1は正常である。このため、端子金具h1から受ける抗力の分だけ、端子部4a1に対応する付勢部材7が縮んでいる。この付勢部材7から摺動板6が受ける押圧力が力センサ8によって計測される。この時の押圧力は、
図15の、h1嵌合位置に(○)で示した値になる。端子金具h1の取り付けが正常であるため、この値は、基準値に対して正常範囲の値となる。
【0041】
図13は、第1の実施形態のコネクタ検査の第2例の第2の状態を示す模式図である。
図13では、
図12の状態よりハウジング1が被検査コネクタ90に接近している。第2の状態においては、2番目に長い端子部4a2に押されて、端子金具h2が図の下方向に移動している。この場合、2番目の端子部4a2には、端子金具h2からの抗力が働かない。このため、付勢部材7が縮まらない。その結果、力センサ8が計測する押圧力の増加は、1番目の端子部4a1に対応する付勢部材7が縮まることによる増加分だけになる。その結果、計測される押圧力は、基準値より小さく、正常範囲から外れた値となる。
図15のh2嵌合位置、この値が(○)で示されている。この結果から、端子金具h2の取り付けが不良であることが特定される。
【0042】
図14は、第1の実施形態のコネクタ検査の第2例の第3の状態を示す模式図である。
図14では、
図13の状態よりハウジング1が被検査コネクタ90に接近している。第3の状態においては、端子部4a1に加えて、3番目に長い端子部4a3が端子金具h3に挿入され、停止している。この状態では、端子金具h3から受ける抗力の分だけ、端子部4a3に対応する付勢部材7が縮められる。そして、端子部4a1に対応する付勢部材7が、さらに元の状態より縮められている。一方、2番目の端子部4a2に対応する付勢部材7は縮んでいない。また、2番目の端子金具h2がさらに図の下方に動いている。2番目の付勢部材7は縮んでいない分だけ、計測される押圧力が基準値より小さくなる。ただし、h3嵌合位置における押圧力とh2嵌合位置における押圧力の差分は正常である。このため、判定部136が端子金具h3の取り付けを正常と判定する。
【0043】
上記の例では、端子金具および端子部4aが5個だとしたが、これらの数は任意の自然数nへの一般化が可能である。つまり、n番目の嵌合位置で押圧力が基準値から外れたら、その位置の端子金具の取り付けが不良であると判定できる。さらに、以降の検査で、差分が維持されていれば、判定部136が、そこまでの端子金具の取り付けが正常と判定できる。一方、基準値との差分が増加したら、当該端子金具の取り付けが不良であると判定される。
【0044】
次に、以上に具体例を示したコネクタ検査装置100の動作についてのまとめを説明する。
図16は、第1の実施形態のコネクタ検査装置100の動作例を示すフローチャートである。まず、位置制御手段110によって、ハウジング1が被検査コネクタ90に接近される。その位置は、一番長い端子部4aが端子金具に嵌合する位置である(S101)。ここで、一番長い端子部4aとは、第1のカバー2からの露出部分の長さが一番長い第1のピン4の端子部4aである。次に、この位置における押圧力の計測値が、基準値に対して正常範囲内にあるか判定される(S102)。ここで、押圧力が正常範囲内だったら(S102_Yes)、当該端子金具が正常であると、判定部136が判定する(S103)。そして、判定した端子金具が、最後に嵌合される端子金具であるか、判定部136が判定する(S105)。一方、S102で、押圧力の計測値が基準値に対して正常範囲外だったら、判定部136が当該端子金具の取り付けを不良と判定する(S104)。
【0045】
次に、上記で判定した端子金具が、最後の端子金具であるか、判定部136が判定する。ここで、最後の端子金具とは、露出部が一番短い端子部4aが嵌合される端子金具である。ここで、判定されたのが最後の端子金具だった場合は(S105_Yes)、終了する。一方、対象が最後の端子金具でなかった場合は(S105_No)、次の第1のピン4の端子部4aが端子金具に嵌合する位置に、位置制御手段110がコネクタ検査治具10を移動させる(S106)。そして、S102に戻り、次の端子金具が正常であるか判定される。
【0046】
以上に説明したコネクタ検査装置100において、複数の端子部4aの露出部分の長さが互いに異なる。このため、コネクタ検査治具10を被検査コネクタ90に徐々に接近させていった際に、長い端子部4aから順番に、端子部4aが対応する端子金具に接触する。そして、端子金具の取り付けが正常であれば、端子部4aが端子金具に嵌合する。この時、対応する付勢部材7が縮められ、力センサ8が計測する押圧力が増加する。一方、端子金具が不良であれば、押圧力の増加が基準値の正常範囲から外れる。このため、ハウジング1の位置と押圧力との関係を示す検査データを取得することで、不良の端子金具が特定される。
【0047】
次にコネクタ検査装置100の別の動作例について説明する。
図17は、第1の実施形態のコネクタ検査装置100の別の動作例を示すフローチャートである。この動作例では、まず、一番短い第1のピン4の端子部4aが端子金具に嵌合する位置まで、位置制御手段110がコネクタ検査治具10を移動させる(S201)。ここで、一番長い第1のピンとは、第1のカバー2からの露出部分の長さが一番短い第1のピン4である。次に、計測された押圧力が、基準値の正常範囲内であるか、判定部136が判定する(S202)。ここで、押圧力が正常範囲内だったら(S202_Yes)、すべての端子金具が正常であると、判定部136が判定する(S203)。一方、押圧力が基準範囲だった場合は(S202_No)、嵌合する位置にある端子金具の中に不良があると判定部136が良、不良の判定を行う(S204)。次に、コネクタ検査治具10の位置が全部の嵌合が外れる位置にあるか判定する(S205)。ここで、全部の嵌合が外れる位置であったら(S205_Yes)、終了する。次に、1つの嵌合が外れる位置まで、位置制御手段110がコネクタ検査治具10を移動させる(S206)。次にS202に戻り、押圧力が基準値の正常範囲内にあるか、判定部136が判定する。ここで、押圧力が基準値の正常範囲内であれば、1つ前で対象になった端子金具が不良であることが確定する。一方、押圧力が基準値の正常範囲外であれば、嵌合位置にある端子部4aに対応する端子金具の中に不良があることが明らかになる。つまり上記の判定を繰り返すことにより、1つ前に判定した端子金具が正常であるか不良であるか、コネクタ検査装置100が判定できる。
【0048】
(変形例)
上記したコネクタ検査装置100では、押圧力に基づいて端子金具の不良が検出されていた。しかし、コネクタ検査装置100に電気的な導通検査を行う機能が付加できる。
図18は、第1の実施形態のコネクタ検査治具の変形例を示す模式図である。本変形例のコネクタ検査治具10aでは、第1のピン4と第2のピン5が導体で形成されている。そして、第2のピン5の胴部5bが検査装置のコネクタ20と接続可能になっている。検査装置のコネクタ20は、それぞれの第2のピン5に対応する配線が接続されている。そして、配線が、コネクタ検査装置100に接続している。同様に、被検査コネクタ90の端子金具に接続する配線が、コネクタ検査装置100に接続している。
【0049】
上記のコネクタ検査治具10aを用いることで、各端子部4aと端子金具との導通を検査する導通検査を、コネクタ検査装置100が実行できる。
【0050】
以上第1の実施形態のコネクタ検査治具10等について説明した。
【0051】
本発明のコネクタ検査治具10は、ハウジング1と、第1のカバー2と、第2のカバー3と、第1のピン4と、第2のピン5と、摺動板6と、付勢部材7と、力センサ8とを有する。第1のカバー2は、ハウジング1の一端部側に固定される。第2のカバー3は、ハウジング1の他端部側に固定される。コネクタ検査治具10は、複数の第1のピン4を備える。各々の第1のピン4は、一端部に端子部4aを備える。また、各々の第1のピン4は、他端部にフランジ部4bを備える。そして、第1のカバー2から端子部4aが露出されるように、それぞれの第1のピン4がハウジング1に収容される。複数の端子部4aにおいて、第1のカバー2から露出する部分の長さは、互いに異なっている。第2のピン5は、一端部に接触部5aを備える。接触部5aは、第1のピン4に接触する。また、第2のピン5は、他端部に胴部5bを備える。胴部5bは、第2のカバー3に固定される。複数の第1のピン4に対応する複数の第2のピン5がハウジング1に収容される。摺動板6は、複数の第2のピン5の各々が貫通する複数の貫通穴を備える。また、第2のカバーとの近接と離間が可能となるように、第2のカバー3に摺動板6が取り付けられる。付勢部材7は、フランジ部4bと摺動板6との間に設けられる。摺動板6から離れる方向に複数の付勢部材7が複数の第1のピンの各々を付勢する。力センサ8は、押圧力を計測する。ここで、押圧力とは、複数の付勢部材7が摺動板6を押圧する力である。
【0052】
以上の構成では、ハウジング1を被検査コネクタ90に徐々に接近させた際に、露出部分の長さに応じて、順次、端子部4aが被検査コネクタ90の端子金具に嵌合する。そして力センサ8を利用して、押圧力がモニターされる。端子金具がせいじょうであれば、基準値の正常範囲内で押圧力が推移する。一方、端子金具が不良であれば、押圧力が正常範囲から外れる。コネクタ検査治具10では、1つずつ端子部4aが端子金具に接触あるいは嵌合していくため、不良の端子金具が特定される。
【0053】
また一態様によれば、コネクタ検査治具10において、第1のピン4の並び順に従って、露出部分の長さが変化している。露出部分の長さとは、端子部4aの第1のカバー2から露出する部分である。このような並びとすることで、検査中の端子金具が識別しやすい状態になる。
【0054】
また一態様によれば、コネクタ検査治具10の複数の前記第1のピンにおいて、対応する前記付勢部材の付勢力が異なっている。一例では、複数の端子部4aの第1のカバー2から露出する部分の長さが短くなるにしたがって、対応する付勢部材の付勢力が大きくなっている。このような構成とすると、ハウジング1が被検査コネクタ90に徐々に接近する際の押圧力の増加を均等に近づけることが可能になる。
【0055】
また一態様によれば、コネクタ検査治具10の第1のピン4および第2のピン5が導体である。また、第2のピンの他端部に、被検査コネクタ90を検査するコネクタ検査装置100が接続される。このような構成とすることで、第1のピン4と端子金具の間の導通検査を行うことが可能になる。
【0056】
また、本発明のコネクタ検査装置100は、上記のコネクタ検査治具10と、位置制御手段110と、押圧力取得手段(押圧力取得部132)と、制御手段130と、表示手段140とを有する。位置制御手段110は、ハウジング1の位置を制御する。被検査コネクタ90に対してハウジング1の一端部が近接または離間するように、その制御が行われる。押圧力取得手段(押圧力取得部132)は、押圧力を取得する。ハウジング1の位置を変化させた際に力センサが計測される力が押圧力である。表示手段140は、検査データを表示する。検査データは、被検査コネクタ90に対するハウジング1の位置と押圧力との関係を示すデータである。検査データが表示されることで、押圧力が基準値を異なる現象が発生したハウジング1の位置が把握される。この位置は、端子部4aの露出部分の長さに対応している。このため、位置に基づいて、不良の端子金具が特定される。
【0057】
また一態様によれば、コネクタ検査装置100が基準検査データ取得手段(基準検査データ取得部134)を有している。基準となる被検査コネクタ90を検査した際に取得される検査データが、基準検査データである。また表示手段140が基準検査データを表示する。検査データと基準検査データが併せて表示されることで、不良端子金具の識別が容易になる。
【0058】
また一態様によれば、コネクタ検査装置100が、判定部136を有する。判定部136は、被検査コネクタの各々の端子金具が正常であるか不良であるかを判定する。検査データを基準検査データと比較することによって、判定が行われる。判定部136によって、不良端子金具の検出が自動化される。
【0059】
また本発明のコネクタ検査方法は、コネクタ検査装置100とコネクタ検査治具10を用いたコネクタ検査方法である。ここで、ハウジング1と、第1のカバー2と、第2のカバー3と、第1のピン4と、第2のピン5と、摺動板6と、付勢部材7と、力センサ8とを有する。第1のカバー2は、ハウジング1の一端部側に固定される。第2のカバー3は、ハウジング1の他端部側に固定される。コネクタ検査治具10は、複数の第1のピン4を備える。各々の第1のピン4は、一端部に端子部4aを備える。また、各々の第1のピン4は、他端部にフランジ部4bを備える。そして、第1のカバー2から端子部4aが露出されるように、それぞれの第1のピン4がハウジング1に収容される。複数の端子部4aにおいて、第1のカバー2から露出する部分の長さは、互いに異なっている。第2のピン5は、一端部に接触部5aを備える。接触部5aは、第1のピン4に接触する。また、第2のピン5は、他端部に胴部5bを備える。胴部5bは、第2のカバー3に固定される。複数の第1のピン4に対応する複数の第2のピン5がハウジング1に収容される。摺動板6は、複数の第2のピン5の各々が貫通する複数の貫通穴を備える。また、第2のカバーとの近接と離間が可能となるように、第2のカバー3に摺動板6が取り付けられる。付勢部材7は、フランジ部4bと摺動板6との間に設けられる。摺動板6から離れる方向に複数の付勢部材7が複数の第1のピンの各々を付勢する。力センサ8は、押圧力を計測する。ここで、押圧力とは、複数の付勢部材7が摺動板6を押圧する力である。そして、コネクタ検査装置100が、ハウジングの位置を制御する。被検査コネクタ90に対してハウジングの一端部が近接または離間するように、この制御が行われる。また、コネクタ検査装置100が、ハウジング1の位置を変化させた際の押圧力を取得する。この押圧力は、ハウジング1の位置を変化させた際の押圧力である。そして、コネクタ検査装置100が、検査データを表示する。検査データは、被検査コネクタ90に対するハウジング1の位置と押圧力との関係を示すデータである。
【0060】
このような構成とすることにより、ハウジング1を被検査コネクタ90に徐々に接近させた際に、露出部分の長さに応じて、順次、端子部4aが被検査コネクタ90の端子金具に嵌合する。そして力センサ8を利用して、押圧力がモニターされる。端子金具がせいじょうであれば、基準値の正常範囲内で押圧力が推移する。一方、端子金具が不良であれば、押圧力が正常範囲から外れる。コネクタ検査治具10では、1つずつ端子部4aが端子金具に接触あるいは嵌合していくため、不良の端子金具が特定される。
【0061】
また一態様によれば、コネクタ検査方法において、コネクタ検査装置100が、基準検査データを取得する。基準検査データは、基準となる被検査コネクタ90の検査データである。そして、コネクタ検査装置100が、基準検査データを表示する。検査データが基準検査データと一緒に表示されることで、不良端子金具の識別が容易になる。
【0062】
また、本発明のコネクタ検査装置の制御プログラムは、コネクタ検査治具10を用いたコネクタ検査装置100を制御する。ここで、ハウジング1と、第1のカバー2と、第2のカバー3と、第1のピン4と、第2のピン5と、摺動板6と、付勢部材7と、力センサ8とを有する。第1のカバー2は、ハウジング1の一端部側に固定される。第2のカバー3は、ハウジング1の他端部側に固定される。コネクタ検査治具10は、複数の第1のピン4を備える。各々の第1のピン4は、一端部に端子部4aを備える。また、各々の第1のピン4は、他端部にフランジ部4bを備える。そして、第1のカバー2から端子部4aが露出されるように、それぞれの第1のピン4がハウジング1に収容される。複数の端子部4aにおいて、第1のカバー2から露出する部分の長さは、互いに異なっている。第2のピン5は、一端部に接触部5aを備える。接触部5aは、第1のピン4に接触する。また、第2のピン5は、他端部に胴部5bを備える。胴部5bは、第2のカバー3に固定される。複数の第1のピン4に対応する複数の第2のピン5がハウジング1に収容される。摺動板6は、複数の第2のピン5の各々が貫通する複数の貫通穴を備える。また、第2のカバーとの近接と離間が可能となるように、第2のカバー3に摺動板6が取り付けられる。付勢部材7は、フランジ部4bと摺動板6との間に設けられる。摺動板6から離れる方向に複数の付勢部材7が複数の第1のピンの各々を付勢する。力センサ8は、押圧力を計測する。ここで、押圧力とは、複数の付勢部材7が摺動板6を押圧する力である。そして、コネクタ検査装置の制御プログラムが、コネクタ検査装置100を制御する。この制御では、ハウジング1の位置を制御する処理を、コネクタ検査装置の制御プログラムがコネクタ検査装置100に実行させる。この制御では、被検査コネクタ90に対してハウジング1の一端部が近接または離間するように位置の制御が行われる。また、押圧力を取得する処理を、コネクタ検査装置の制御プログラムがコネクタ検査装置100に実行させる。この押圧力は、ハウジング1の位置を変化させた際の押圧力である。そして、検査データを表示させる処理をコネクタ検査装置の制御プログラムが、コネクタ検査装置100に実行させる。検査データは、被検査コネクタ90に対するハウジング1の位置と押圧力との関係を示すデータである。
【0063】
このような構成とすることにより、ハウジング1を被検査コネクタ90に徐々に接近させた際に、露出部分の長さに応じて、順次、端子部4aが被検査コネクタ90の端子金具に嵌合される。そして力センサ8を利用して、押圧力がモニターされる。端子金具がせいじょうであれば、基準値の正常範囲内で押圧力が推移する。一方、端子金具が不良であれば、押圧力が正常範囲から外れる。コネクタ検査治具10では、1つずつ端子部4aが端子金具に接触あるいは嵌合していくため、不良の端子金具が特定される。
【0064】
上述した第1の実施形態の処理を、コンピュータに実行させるプログラムおよび該プログラムを格納した記録媒体も本発明の範囲に含む。記録媒体としては、例えば、磁気ディスク、磁気テープ、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ、などを用いることができる。
【0065】
以上、第1の実施形態を模範的な例として本発明を説明した。しかしながら、本発明は、上記実施形態には限定されない。即ち、本発明は、本発明のスコープ内において、当業者が理解し得る様々な態様を適用することができる。
【0066】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0067】
(付記1)
ハウジングと、
前記ハウジングの一端部側に固定された第1のカバーと、
前記ハウジングの他端部側に固定された第2のカバーと、
一端部に端子部をそれぞれ備え、他端部にフランジ部をそれぞれ備え、前記第1のカバーから複数の前記端子部の各々が露出されるように前記ハウジングに収容された複数の第1のピンと、
一端部に前記第1のピンに接触する接触部を備え、他端部に前記第2のカバーに固定される胴部を備え、前記ハウジングに収容された複数の第2のピンと、
複数の前記第2のピンの各々が貫通する複数の貫通穴を備え、前記第2のカバーとの近接と離間が可能となるように前記第2のカバーに取り付けられた摺動板と、
前記フランジ部と前記摺動板との間に設けられ、複数の前記第1のピンの各々を前記摺動板から離れる方向に付勢する複数の付勢部材と、
複数の前記付勢部材が前記摺動板を押圧する押圧力を計測する力センサと、
を有し、
複数の前記端子部において前記第1のカバーから露出する部分の長さは、互いに異なる、
ことを特徴とするコネクタ検査治具。
【0068】
(付記2)
前記第1のピンの並び順に従って、前記第1のカバーから露出する長さが変化している、
ことを特徴とする付記1に記載のコネクタ検査治具。
【0069】
(付記3)
複数の前記第1のピンにおいて、
前記第1のカバーから露出する長さが短くなるにしたがって、対応する前記付勢部材の付勢力が大きくなっている、
ことを特徴とする付記1または2に記載のコネクタ検査治具。
【0070】
(付記4)
前記第1のピンおよび前記第2のピンが導体であり、
前記第2のピンの他端部には、被検査コネクタを検査する検査装置が接続される、
ことを特徴とする付記1乃至3のいずれか一付記に記載のコネクタ検査治具。
【0071】
(付記5)
付記1乃至4のいずれか一付記に記載のコネクタ検査治具と、
被検査コネクタに対して前記ハウジングの一端部が近接または離間するように前記ハウジングの位置を制御する位置制御手段と、
前記ハウジングの位置を変化させた際の前記力センサの出力に基づいて、前記付勢部材が前記摺動板を押す押圧力を算出する押圧力算出手段と、
前記被検査コネクタに対する前記ハウジングの位置と前記押圧力との関係を示す検査データを表示する表示手段と、
を有することを特徴とするコネクタ検査装置。
【0072】
(付記6)
基準となる前記被検査コネクタを検査した際に取得される前記検査データを基準検査データとして取得する基準検査データ取得手段を有し、
前記表示手段が、
前記基準検査データを表示する、
ことを特徴とする付記5に記載のコネクタ検査装置。
【0073】
(付記7)
前記検査データを前記基準検査データと比較して、前記被検査コネクタの各々の端子金具が正常であるか不良であるかを判定する判定部を有する、
ことを特徴とする付記6に記載のコネクタ検査装置。
【0074】
(付記8)
付記4に記載のコネクタ検査治具と、
前記ハウジングの位置を制御する位置制御手段と、
前記被検査コネクタと各々の前記端子部との導通の有無を検査する導通検査手段と、
を有することを特徴とするコネクタ検査装置。
【0075】
(付記9)
コネクタ検査装置とコネクタ検査治具を用いたコネクタ検査方法であって、
前記コネクタ検査治具は、
ハウジングと、
前記ハウジングの一端部側に固定された第1のカバーと、
前記ハウジングの他端部側に固定された第2のカバーと、
一端部に端子部を備え、他端部にフランジ部を備え、前記第1のカバーから前記端子部が露出されるように前記ハウジングに収容された複数の第1のピンと、
一端部に前記第1のピンに接触する接触部を備え、他端部に前記第2のカバーに固定される胴部を備え、前記ハウジングに収容された複数の第2のピンと、
前記第2のピンが貫通する貫通穴を備え、前記第2のカバーとの近接と離間が可能となるように前記第2のカバーに取り付けられた摺動板と、
前記フランジ部と前記摺動板とに挟まれ、各々の前記第1のピンを前記摺動板から離れる方向に付勢する複数の付勢部材と、
複数の前記付勢部材が前記摺動板を押す力を計測する力センサと、
を有し、
複数の前記第1のピンは、
前記端子部の前記第1のカバーから露出する長さが互いに異なり、
前記コネクタ検査装置が、
被検査コネクタに対して前記ハウジングの一端部が近接または離間するように前記ハウジングの位置を制御し、
前記ハウジングの位置を変化させた際の前記力センサの出力に基づいて、前記付勢部材が前記摺動板を押す押圧力を算出し、
前記被検査コネクタに対する前記ハウジングの位置と前記押圧力との関係を示す検査データを表示する、
ことを特徴とするコネクタ検査方法。
【0076】
(付記10)
前記コネクタ検査装置が、
基準となる前記被検査コネクタを検査した際に取得される前記検査データを基準検査データとして取得し、
前記基準検査データを表示する、
ことを特徴とする付記9に記載のコネクタ検査方法。
【0077】
(付記11)
前記コネクタ検査装置が、
前記検査データを前記基準検査データと比較して、前記被検査コネクタが良品であるか不良品であるかを判定する、
ことを特徴とする付記9または10に記載のコネクタ検査方法。
【0078】
(付記12)
前記端子部のうちで一番短い前記端子部が前記被検査コネクタの端子金具に嵌合する位置に前記ハウジングの位置を制御し、
徐々に前記ハウジングを前記被検査コネクタから離間した際の、前記押圧力の値と基準検査データの押圧力を比較し、その差分に基づいて、前記ハウジングへの固定に不具合がある前記端子金具を特定する、
ことを特徴とする付記9乃至11に記載のコネクタ検査方法。
【0079】
(付記13)
コネクタ検査治具を用いたコネクタ検査を行うコネクタ検査装置を制御するコネクタ検査装置の制御プログラムとであって、
前記コネクタ検査治具は、
ハウジングと、
前記ハウジングの一端部側に固定された第1のカバーと、
前記ハウジングの他端部側に固定された第2のカバーと、
一端部に端子部を備え、他端部にフランジ部を備え、前記第1のカバーから前記端子部が露出されるように前記ハウジングに収容された複数の第1のピンと、
一端部に前記第1のピンに接触する接触部を備え、他端部に前記第2のカバーに固定される胴部を備え、前記ハウジングに収容された複数の第2のピンと、
前記第2のピンが貫通する貫通穴を備え、前記第2のカバーとの近接と離間が可能となるように前記第2のカバーに取り付けられた摺動板と、
前記フランジ部と前記摺動板とに挟まれ、各々の前記第1のピンを前記摺動板から離れる方向に付勢する複数の付勢部材と、
複数の前記付勢部材が前記摺動板を押圧する押圧力を計測する力センサと、
を有し、
複数の前記第1のピンは、
前記端子部の前記第1のカバーから露出する長さが互いに異なり、
前記コネクタ検査装置に、
被検査コネクタに対して前記ハウジングの一端部が近接または離間するように前記ハウジングの位置を制御する処理と、
前記ハウジングの位置を変化させた際の前記押圧力を取得する処理と、
前記被検査コネクタに対する前記ハウジングの位置と前記押圧力との関係を示す検査データを表示させる処理とを、
実行させることを特徴とするコネクタ検査装置の制御プログラム。
【符号の説明】
【0080】
1 ハウジング
2 第1のカバー
3 第2のカバー
4 第1のピン
5 第2のピン
6 摺動板
7 付勢部材
8 力センサ
10 コネクタ検査治具
90 被検査コネクタ