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  • 特開-軟質ポリウレタンフォーム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106958
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】軟質ポリウレタンフォーム
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20240801BHJP
   C08G 18/38 20060101ALI20240801BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20240801BHJP
【FI】
C08G18/00 F
C08G18/38 017
C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023189043
(22)【出願日】2023-11-06
(31)【優先権主張番号】P 2023010736
(32)【優先日】2023-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003425
【氏名又は名称】株式会社東洋クオリティワン
(71)【出願人】
【識別番号】000118556
【氏名又は名称】伊藤製油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】腰塚 絹香
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 和成
(72)【発明者】
【氏名】鎌倉 大輔
(72)【発明者】
【氏名】窪田 智也
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034BA03
4J034BA07
4J034DA01
4J034DB04
4J034DB05
4J034DB07
4J034DF01
4J034DG01
4J034DG03
4J034DG04
4J034DG14
4J034DN01
4J034DP12
4J034DP15
4J034DP19
4J034DQ05
4J034DQ16
4J034DQ18
4J034EA11
4J034EA12
4J034HA01
4J034HA06
4J034HA07
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC22
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC65
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA01
4J034JA32
4J034KA01
4J034KB02
4J034KB05
4J034KC08
4J034KC17
4J034KC18
4J034KD02
4J034KD03
4J034KD07
4J034KD12
4J034KE02
4J034NA01
4J034NA02
4J034NA03
4J034NA06
4J034NA08
4J034QA01
4J034QB01
4J034QB13
4J034QB14
4J034QB15
4J034QC01
4J034QD03
4J034RA03
4J034RA12
(57)【要約】
【課題】感触と安定感とを向上できる軟質ポリウレタンフォームを提供する。
【解決手段】軟質ポリウレタンフォームの試験片が加圧板で5Nの荷重を受けたときの加圧板の位置を初期位置とし、加圧板で試験片を100mm/分の速度で圧縮したときに得られる、初期位置からの試験片の圧縮量(mm)をxとし、試験片が受けた荷重(N)をyとする関数y=f(x)の二次導関数において、初期位置に対する試験片の圧縮率が2%から7%までの範囲における二次導関数の最大値と最小値との差を、最大値のときのxの値と最小値のときのxの値との差で除した値が12以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟質ポリウレタンフォームであって、
前記軟質ポリウレタンフォームの第1の試験片が加圧板で5Nの荷重を受けたときの前記加圧板の位置を初期位置とし、前記加圧板で前記第1の試験片を100mm/分の速度で圧縮したときに得られる、前記初期位置からの前記第1の試験片の圧縮量(mm)をxとし、前記第1の試験片が受けた荷重(N)をyとする関数y=f(x)の二次導関数において、前記初期位置に対する前記第1の試験片の圧縮率が2%から7%までの範囲における前記二次導関数の最大値と最小値との差を、前記最大値のときのxの値と前記最小値のときのxの値との差で除した値は12以下である軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項2】
前記軟質ポリウレタンフォームは、ポリオール成分、ポリイソシアネート成分および発泡剤を含む原料組成物から得られるものであり、
前記ポリオール成分は、窒素原子を含む多価アルコールとひまし油脂肪酸とがエステル結合したひまし油誘導体を含み、
前記ひまし油誘導体は、前記ポリオール成分100重量部に対し20重量%以上である請求項1記載の軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項3】
前記ポリオール成分の平均分子量は1600以下である請求項2記載の軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項4】
前記軟質ポリウレタンフォームの第2の試験片は加圧面の寸法が幅50mm長さ200mm、高さが200mmの直方体であり、前記加圧板は前記加圧面の幅より大きい寸法をもち、
前記加圧面の中央に中央が位置する前記加圧板で前記第2の試験片が高さ方向に5Nの荷重を受けたときの前記加圧板の位置を初期位置とし、前記第2の試験片の高さ方向に100mm/分の速度で前記加圧板が移動したときの荷重変位曲線は、前記初期位置に対して前記第2の試験片の高さが10%以上低くなったときに極大になる請求項1から3のいずれかに記載の軟質ポリウレタンフォーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は軟質ポリウレタンフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
軟質ポリウレタンフォームの突き上げ感と沈み込みとを低減するため、特許文献1にはマットレス用軟質ポリウレタンフォームを15-30%の反発弾性および80-140Nの25%硬度にする先行技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-46668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
体表にかかる圧力を分散する、例えばクッションやマットレス等の用途であると、軟質ポリウレタンフォームは、荷重を受け始めたときの応力(抵抗力)は小さく、荷重の増加に伴って応力が少しずつ大きくなっていくものが、感触が良く、さらに安定感があるので好ましい。先行技術では感触と安定感の点に改善の余地がある。
【0005】
本発明はこの問題点を解決するためになされたものであり、感触と安定感とを向上できる軟質ポリウレタンフォームの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明の第1の態様は、軟質ポリウレタンフォームの第1の試験片が加圧板で5Nの荷重を受けたときの加圧板の位置を初期位置とし、加圧板で第1の試験片を100mm/分の速度で圧縮したときに得られる、初期位置からの第1の試験片の圧縮量(mm)をxとし、第1の試験片が受けた荷重(N)をyとする関数y=f(x)の二次導関数において、初期位置に対する第1の試験片の圧縮率が2%から7%までの範囲における二次導関数の最大値と最小値との差を、最大値のときのxの値と最小値のときのxの値との差で除した値が12以下である。
【0007】
第2の態様は、第1の態様において、軟質ポリウレタンフォームは、ポリオール成分、ポリイソシアネート成分および発泡剤を含む原料組成物から得られるものであり、ポリオール成分は、窒素原子を含む多価アルコールとひまし油脂肪酸とがエステル結合したひまし油誘導体を含み、ひまし油誘導体は、ポリオール成分100重量部に対し20重量%以上である。
【0008】
第3の態様は、第2の態様において、ポリオール成分の平均分子量は1600以下である。
【0009】
第4の態様は、第1から第3の態様のいずれかにおいて、軟質ポリウレタンフォームの第2の試験片は加圧面の寸法が幅50mm長さ200mm、高さが200mmの直方体であり、加圧板は、第2の試験片の加圧面の幅より大きい寸法をもつ。加圧面の中央に中央が位置する加圧板で第2の試験片が高さ方向に5Nの荷重を受けたときの加圧板の位置を初期位置とし、第2の試験片の高さ方向に100mm/分の速度で加圧板が移動したときの荷重変位曲線は、初期位置に対して第2の試験片の高さが10%以上低くなったときに極大になる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第1の試験片の圧縮量をx(mm)、第1の試験片が受けた荷重をy(N)とする関数y=f(x)の二次導関数は、関数y=f(x)における接線の傾きの変化の割合を表す。第1の試験片の圧縮率が2%から7%までの範囲は、軟質ポリウレタンフォームの感触と安定感に深く関わる。この範囲における二次導関数の最大値と最小値との差を、最大値のときのxの値と最小値のときのxの値との差で除した値は12以下であるため、軟質ポリウレタンフォームの感触と安定感とを向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(a)は第1の試験片および加圧板の斜視図であり、(b)は第2の試験片および加圧板の斜視図であり、(c)は第2の試験片の荷重変位曲線である。
図2】(a)は軟質ポリウレタンフォームの関数y=f(x)の一次導関数および二次導関数であり、(b)は従来の軟質ポリウレタンフォームの関数y=f(x)の一次導関数および二次導関数である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。軟質ポリウレタンフォームは、ポリオール成分、イソシアネート成分および発泡剤を含む原料組成物から得られる。軟質ポリウレタンフォームの用途は特に制限がないが、一例として、体表にかかる圧力を分散するクッション、背もたれ、マットレス(寝具マット)、枕、オットマンが挙げられる。
【0013】
ポリオール成分は、ヒドロキシル基を2つ以上有する化合物であれば特に限定されず、公知の軟質ポリウレタンフォームの成形に使われるポリオールが選択される。ポリオール成分は、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリジエン及びポリカプロラクトンを含む群から選択される1種以上のヒドロキシル末端の化合物が例示される。
【0014】
ポリエーテルを含むヒドロキシル末端の化合物は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、シュークロース等の多価アルコールに、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したポリエーテルポリオールが例示される。
【0015】
ポリエステルを含むヒドロキシル末端の化合物は、マロン酸、コハク酸、アジピン酸等の脂肪族カルボン酸やフタル酸等の芳香族カルボン酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等の脂肪族グリコール等と、を重縮合して得られるポリエステルポリオールが例示される。
【0016】
ポリエーテル及びポリエステルを含むヒドロキシル末端の化合物は、ポリエーテルポリオールと多塩基酸とを反応させてポリエステル化したポリエーテルエステルポリオール、あるいは1分子内にポリエーテルとポリエステルの両セグメントを有するポリエーテルエステルポリオールが例示される。
【0017】
ポリオール成分は、ヒドロキシル末端ポリ炭化水素、ヒドロキシル末端ポリホルマール、脂肪酸トリグリセリド、ヒドロキシル末端ポリエステル、ヒドロキシメチル末端ポリエステル、ヒドロキシメチル末端ペルフルオロメチレン、ポリアルキレンエーテルグリコール、ポリアルキレンアリーレンエーテルグリコール及びポリアルキレンエーテルトリオールを含む群より選択され得る。ポリオール成分は、アジピン酸-エチレングリコールポリエステル、ポリ(ブチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)及びヒドロキシル末端ポリブタジエンを含む群からも選択され得る。
【0018】
ひまし油は脂肪酸トリグリセリドの一種である。ひまし油は脂肪酸とグリセリンとがエステル結合した植物油脂であり、1分子に水酸基と二重結合とをもつリシノレイン酸が脂肪酸の約90%を占める。ひまし油は分子中に約3個の水酸基をもつため2級の水酸基をもつ3官能のポリオールとみなすことができる。
【0019】
ひまし油を出発原料とするひまし油系ポリオール、ひまし油を加水分解して得られるひまし油脂肪酸を利用した変性ポリオールを用いることもできる。変性ポリオールは、窒素原子を含む多価アルコールとひまし油脂肪酸とがエステル結合したひまし油誘導体が例示される。ひまし油誘導体に含まれる炭素-窒素結合が、軟質ポリウレタンフォームの感触の向上に寄与すると推定している。
【0020】
窒素原子を含む多価アルコールは、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジエタノールイソプロパノールアミンが例示される。アニリン、メタトルエンジアミン、マンニッヒ化合物等の芳香族アミンやエチレンジアミン等の脂肪族アミンにアルキレンオキシドを付加して得られるポリオールも、窒素原子を含む多価アルコールに含まれる。
【0021】
ポリオール成分は、ポリマーポリオールを含み得る。ポリマーポリオールは、ポリアルキレンオキシドからなるポリエーテルポリオールにポリアクリルニトリル、アクリロニトリル-スチレン共重合体等のポリマー成分をグラフト共重合させたものが例示される。
【0022】
ひまし油誘導体は、軟質ポリウレタンフォームの感触を向上させるため、原料組成物に含まれるポリオール成分100重量部に対し20重量%以上であることが好ましく、より好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは40重量%以上である。さらに軟質ポリウレタンフォームの感触を向上させるために、ポリオール成分の平均分子量は1600以下であることが好ましい。
【0023】
ポリオール成分の平均分子量は、原料組成物に含まれるポリオール成分に占める各ポリオール成分の割合を、各ポリオール成分の平均分子量に乗じた加重平均によって求める。各ポリオール成分の平均分子量は、KOHの分子量である56.1にポリオール成分の官能基数を乗じた値を1000倍し、その値をポリオール成分の水酸基価(mgKOH/g)で除して得た商の小数点第1位を四捨五入した値である。
【0024】
イソシアネート成分は、イソシアネート基を2以上有する脂肪族系、脂環族系または芳香族系のポリイソシアネート、それらの混合物、それらを変性して得られる変性ポリイソシアネートが挙げられる。脂肪族系ポリイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキサメタンジイソシアネートが例示される。芳香族系ポリイソシアネートは、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメリックMDI(クルードMDI)が例示される。
【0025】
発泡剤は水、二酸化炭素、低沸点有機化合物が例示される。低沸点有機化合物は、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等の炭化水素、ハロゲン化メタン、ハロゲン化エタン類、フッ素化炭化水素類のハロゲン化炭化水素が例示される。ハロゲン化炭化水素は、塩化メチレン、HCFC-141b、HFC-245fa、HFC-356mfcが例示される。
【0026】
発泡剤は、水、二酸化炭素および低沸点有機化合物をそれぞれ単独で使用しても良いし、これらを併用しても良い。発泡剤は水を主成分とするのが好ましい。取り扱いが容易だからである。水が主成分というのは、発泡剤に占める水の割合が50質量%を超えていることをいう。発泡剤の配合量は、ポリオール成分100質量部に対して2-10質量部が好ましい。軟質ポリウレタンフォームの成形性や弾性を確保するためである。ただし、比重等の調整によって軟質ポリウレタンフォームの成形性や弾性が確保できるならば、発泡剤の配合量はこの範囲から外れても良い。
【0027】
軟質ポリウレタンフォームは、ポリオール成分、イソシアネート成分および発泡剤を含む原料組成物を混合撹拌した後、コンベアと一緒に連続的に繰り出された紙またはフィルムの上に原料組成物を供給し、ポリオール成分とイソシアネート成分との樹脂化反応と、イソシアネート成分と発泡剤との泡化反応と、を同時に進行させることにより得られる。コンベアの上で軟質ポリウレタンフォームを成形するのではなく、圧力を開放したバッチ発泡によって軟質ポリウレタンフォームを成形しても良い。
【0028】
原料組成物は触媒の存在下で反応させるのが好ましい。触媒は、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミノモルホリン、N-エチルモルホリン、テトラメチルグアニジン等のアミン触媒、スタナスオクトエート、ジブチル錫ジラウレート等のスズ触媒、フェニル水銀プロピオン酸塩、オクテン酸鉛等の有機金属触媒が例示される。
【0029】
原料組成物は、さらに整泡剤、破泡剤、難燃剤、酸化防止剤、着色剤などの添加剤を含んでも良い。整泡剤は軟質ポリウレタンフォームの気泡の形成を促進・安定化する成分である。整泡剤は有機珪素系界面活性剤、脂肪酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩、スルホン酸塩等の陰イオン界面活性剤が例示される。破泡剤は、ポリブテン等の炭化水素系、ダイマー酸ジエステル等のエステル系、シクロペンタシロキサン等のシリコーン系が例示される。難燃剤はリン酸エステル系、ハロゲン化リン酸エステルが例示される。酸化防止剤はトリゾール系、ベンゾフェノン系が例示される。
【0030】
軟質ポリウレタンフォームの機械的特性を測定するための試験片は、寸法以外はJIS K6400-1:2004に準じて採取する。試験片は一辺が200mmの正方形の底面をもち、高さが50mmの直方体である。試験片の底面は、原料組成物が注入されるコンベアの底面に平行な面であり、試験片の高さは、コンベアの底面に垂直である。
【0031】
機械的特性を測定する試験機は、株式会社エー・アンド・デイ社製の万能試験機RTG-1200又はこれと等価な機能を有するものを使用する。試験機は、加圧板と固定した支持板との間で試験片を圧縮し、力を±1%以上または±1N以上の精度で、かつ、圧縮下の試験片の厚さ(加圧板の変位)を±0.25mmの精度で測定し、加圧板の変位と荷重とを自動的に記録する。支持板は、試験片より大きく平滑な固い表面をもち、試験片の下から空気を逃がすための通気孔が設けられている。通気孔の大きさは直径が約6mm、通気孔の間隔は約20mmである。
【0032】
加圧板は直径200mmの平らな円盤である。加圧板の、試験片の加圧面に接する面は磨き加工をしていない平滑な面であり、その面のエッジの半径は0.1mmである。加圧板は、試験片の加圧面の傾きに応じて動くようにボールジョイント又は別の手段を介して試験機に取り付けられている。
【0033】
図1(a)は第1の試験片10及び加圧板12の斜視図である。図1(b)は第2の試験片13及び加圧板12の斜視図である。試験片は、加圧板12から力を受ける面の違いによって第1の試験片10と第2の試験片13とに分けられる。第1の試験片10は主に圧縮特性を測定する試験片であり、縦横200mmの正方形の面を、加圧板12が接する加圧面11とする。第2の試験片13は主に座屈を測定する試験片であり、幅50mm長さ200mmの長方形の面を、加圧板12が接する加圧面14とする。
【0034】
図1(a)に示すように第1の試験片10の圧縮特性を測定するため、加圧面11の中央が加圧板12の中央となるように試験機(図示せず)の支持板の上に第1の試験片10を置く。加圧板12で加圧面11に5Nの力を加えたときの加圧板12の位置を初期位置とし、そのときの第1の試験片10の厚さを0.1mmまで読み取り測定する。予備圧縮を行うことなく、初期位置から第1の試験片10の厚さの75±2.5%まで100±20mm/分の速度で第1の試験片10を加圧板12で加圧し、加圧の過程における加圧板12の変位と第1の試験片10が受けた荷重とを0.1秒毎に測定する。第1の試験片10を試験機から取り除くため、加圧板12を最初の位置まで戻す。
【0035】
加圧の過程における測定結果に基づき、初期位置からの第1の試験片10の圧縮量(mm)をxとし、第1の試験片10が受けた荷重(N)をyとする関数y=f(x)を求める。次いで関数y=f(x)の平均変化率を求め、関数y=f(x)の一次導関数f’(x)を求める。次に一次導関数f’(x)の平均変化率を求め、関数y=f(x)の二次導関数f”(x)を求める。
【0036】
例えば初期位置のxy座標を(x0,y0)とし、0.1秒毎のxy座標を順に(x1,y1)、(x2,y2)、(x3,y3)・・・とすると、y=f(x)の平均変化率は、f’(x1)=(y1-y0)/(x1-x0)、f’(x2)=(y2-y1)/(x2-x1)、f’(x3)=(y3-y2)/(x3-x2)・・・であり、f’(x)の平均変化率は、f”(x2)={f’(x2)-f’(x1)}/(x2-x1)、f”(x3)={f’(x3)-f’(x2)}/(x3-x2)・・・である。これをプロットしたものを図2(a)及び図2(b)に示す。
【0037】
図2(a)は本発明の軟質ポリウレタンフォームの典型的な関数y=f(x)(二点鎖線)の一次導関数f’(x)(破線)及び二次導関数f”(x)(実線)である。図2(b)は従来の軟質ポリウレタンフォームの典型的な関数y=f(x)の一次導関数f’(x)及び二次導関数f”(x)である。図2(a)及び図2(b)は初期位置のときの第1の試験片10の厚さに対する圧縮率(%)をx軸にとり、第1の試験片10が受けた荷重(N)をy軸にとる。
【0038】
第1の試験片10が受けた荷重y(N)が第1の試験片10の圧縮量x(mm)の関数であるy=f(x)の二次導関数は、関数y=f(x)における接線の傾きの変化の割合を表す。第1の試験片10の圧縮率が2%未満の範囲は、第1の試験片10に5Nの力が加わった初期位置付近のばらつきを含むため、この範囲は除外し、圧縮率が2%以上7%以下の範囲を評価する。
【0039】
第1の試験片10の圧縮率が2%以上7%以下の範囲は、軟質ポリウレタンフォームの感触と安定感に深く関わる。図2(a)に示すように、第1の試験片10の圧縮率が2%から7%までの範囲における二次導関数の最大値(MAX)と最小値(MIN)との差を、最大値のときのxの値と最小値のときのxの値との差で除した値が12以下であると、荷重を受け始めたときの応力(抵抗力)が小さく、荷重の増加に伴って応力が少しずつ大きくなっていくため、感触が良く、さらに安定感がある。
【0040】
一方、図2(b)に示すように、第1の試験片10の圧縮率が2%から7%までの範囲における二次導関数の最大値(MAX)と最小値(MIN)との差を、最大値のときのxの値と最小値のときのxの値との差で除した値が12を超えるものは、応力が急に大きくなるため感触が悪いと推定できる。従来技術においても関数y=f(x)はxの増加に伴ってyが次第に大きくなるので、軟質ポリウレタンフォームの感触や安定感をうまく評価できなかったが、関数y=f(x)の二次導関数と軟質ポリウレタンフォームの感触とを関連付けることで的確な評価ができる。
【0041】
図1(b)及び図1(c)を参照して試験片の座屈を説明する。第2の試験片13の座屈を測定するため、図1(b)に示すように、加圧面14の中央が加圧板12の中央となるように試験機(図示せず)の支持板の上に第2の試験片13を置く。加圧板12で加圧面14に5Nの力を加えたときの加圧板12の位置を初期位置とし、そのときの第2の試験片13の高さを0.1mmまで読み取り測定する。予備圧縮を行うことなく、初期位置から第2の試験片13の高さの50±2.5%まで100±20mm/分の速度で加圧板12を移動し、加圧の過程における加圧板12の変位と第2の試験片13が受けた荷重とを0.1秒毎に測定する。第2の試験片13を試験機から取り除くため、加圧板12を最初の位置まで戻す。
【0042】
図1(c)は第2の試験片13の加圧時の荷重変位曲線である。図1(c)は初期位置のときの第2の試験片13の高さに対する変位(%)をx軸にとり、第2の試験片13が受けた荷重(N)をy軸にとる。加圧板12に加圧面14が押された第2の試験片13は、加圧板12の移動に伴い弓形に曲がり、曲がりが大きくなって耐えきれなくなると折れ曲がる。
【0043】
図1(c)の実線は本発明の軟質ポリウレタンフォームの典型的な荷重変位曲線であり、初期位置における第2の試験片13の高さに対して10%以上高さが低くなったとき、すなわち初期位置における第2の試験片13の高さの90%以下になったときに極大になる。一方、破線は従来の軟質ポリウレタンフォームの典型的な荷重変位曲線であり、初期位置における第2の試験片13の高さに対して高さが10%未満低いときに極大になる。本発明の軟質ポリウレタンフォームは、荷重変位曲線の極大値のときのxの値が従来の軟質ポリウレタンフォームに比べて大きいので、座屈しにくいことがわかる。
【実施例0044】
本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。表1に実施例1-8及び比較例1-6における軟質ポリウレタンフォームの原料の配合を示す。表1に示す数値は、ポリオール100重量部のときの単位質量である。
【0045】
【表1】
【0046】
表1に示す各成分は以下のとおりである。
ポリオール1:トリエタノールアミンとひまし油脂肪酸とがエステル結合したひまし油誘導体とひまし油の混合物、ひまし油誘導体:ひまし油=1:1(質量比)、バイオマス度93%、平均分子量1000、水酸基価153mgKOH/g、官能基数2.7
ポリオール2:トリエタノールアミンとひまし油脂肪酸とがエステル結合したひまし油誘導体とひまし油の混合物、ひまし油誘導体:ひまし油=2:3(質量比)、バイオマス度94%、平均分子量1000、水酸基価153mgKOH/g、官能基数2.7
ポリオール3:ひまし油を出発原料とするひまし油系ポリオール、バイオマス度100%、平均分子量2200、水酸基価90mgKOH/g、官能基数3.5
ポリオール4:ひまし油を出発原料とするひまし油系ポリオール、バイオマス度98.4%、平均分子量1500、水酸基価115mgKOH/g、官能基数3
ポリオール5:石油由来の石油系ポリオール、平均分子量3000、水酸基価56mgKOH/g、官能基数3
ポリオール6:石油由来の石油系ポリオール、平均分子量1573、水酸基価107mgKOH/g、官能基数3
イソシアネート:トルエンジイソシアネート(TDI)、2,4-トルエンジイソシアネート75-85%、2,6-トルエンジイソシアネート15-25%
触媒1:アミン触媒、DABCO(登録商標)33LX
触媒2:アミン触媒、TEDA(登録商標)L33
触媒3:アミン触媒、DABCO(登録商標)BL22
触媒4:スズ触媒、KOSMOS(登録商標)T9
触媒5:スズ触媒、ネオスタン(登録商標)U28
整泡剤1:VORASURF(登録商標)SF2904
整泡剤2:Niax(登録商標)Silicone L-598
整泡剤3:TEGOSTAB(登録商標)B8228
酸化防止剤:Niax(登録商標)Color Stabilizer CS-17
着色剤1:黒色顔料
着色剤2:青色顔料
着色剤3:黄色顔料
発泡剤1:ジクロロメタン標準液
発泡剤2:水
【0047】
ポリオール1-6の平均分子量は、KOHの分子量にポリオールの官能基数を乗じた値を1000倍し、その値をポリオールの水酸基価で除して得た商の小数点第1位を四捨五入した値である。
【0048】
表1に記した平均分子量は、原料のポリオール成分に占める各ポリオールの割合を、ポリオールの平均分子量に乗じた加重平均によって求めた値である。表1に記した誘導体の割合は、原料のポリオール成分100重量部に占めるひまし油誘導体の割合(重量%)である。
【0049】
表1に記したバイオマス度は軟質ポリウレタンフォームの質量に占める植物由来の原料の質量の割合であり、以下の式によって算出した。
【0050】
バイオマス度=ひまし油由来のポリオール1-4の質量×各ポリオールのバイオマス度/(全ての原料の質量の合計-ガス化による質量減少) ・・・式
式の中の「ガス化による質量減少」は、原料に含まれる水の質量を水の分子量(18)で除した値に二酸化炭素の分子量(44)を乗じた値である。
【0051】
実施例1-8及び比較例1-6における軟質ポリウレタンフォームは以下のようにして成形した。ポリオール、触媒、整泡剤、酸化防止剤、着色剤および発泡剤を計量し、撹拌して混合物を得た。イソシアネートを計量し、混合物に加えて撹拌し、圧力開放されたコンベアに供給することにより成形体を得た。成形体から、スキン層を含まないように、底面の一辺が200mmの正方形であって高さが50mmの直方体からなる試験片を採取した。試験片の底面はコンベアの底面に平行な面とした。
【0052】
得られた試験片について、(1)見掛け密度、(2)硬さ、(3)試験片の圧縮率が2%から7%までの範囲における二次導関数の最大値と最小値との差を最大値のときのxの値と最小値のときのxの値との差で除した値(以下「f”(x)の傾き」と称す)、(4)試験片が座屈するときに荷重変位曲線が極大となる変位(%)を求めた。さらに(5)試験者が指先で試験片を押して行う官能試験により感触と安定感とを評価した。結果は表1に記した。
【0053】
見掛け密度はJIS K7222:2005に準じて求めた。硬さ(25%ILD)はJIS K6400-2:2012に規定された硬さ試験D法に準じて求めた。
【0054】
f”(x)の傾きは、始めに加圧板で試験片(第1の試験片10)の加圧面に5Nの力を加えたときの加圧板の位置を初期位置とし、予備圧縮を行うことなく、初期位置から試験片の厚さの75±2.5%まで100±20mm/分の速度で試験片を加圧板で加圧し、加圧の過程における加圧板の変位と試験片が受けた荷重とを0.1秒毎に測定した。次いで初期位置からの試験片の圧縮量(mm)をxとし、試験片が受けた荷重(N)をyとする関数y=f(x)の二次導関数を求め、試験片の圧縮率が2%から7%までの範囲における二次導関数の最大値と最小値との差を、最大値のときのxの値と最小値のときのxの値との差で除して求め、有効数字4桁に丸めた。
【0055】
試験片が座屈するときに荷重変位曲線が極大となる変位(極大値のときのxの値)は、加圧板で試験片(第2の試験片13)の加圧面に5Nの力を加えたときの加圧板の位置を初期位置とし、予備圧縮を行うことなく、初期位置から試験片の高さの50±2.5%まで100±20mm/分の速度で試験片を加圧板で加圧し、加圧の過程における加圧板の変位と試験片が受けた荷重とを0.1秒毎に測定した結果に基づいて得られる荷重変位曲線から求めた。座屈の試験は、実施例2,3,6及び比較例1,2,5,6について行った。
【0056】
感触と安定感は、試験片(第1の試験片10)の加圧面を試験片の厚さ方向に試験者が指先で押す官能試験によって評価した。評価は、表面が柔らかく感触が良好であり、ほぼ一定の変形で指先が沈み込み、荷重が増加しても変形の様子が変化しないものを「A」とし、表面は少し硬いが感触は概ね良好であり、ある荷重を超えると変形の様子が変化するものを「B」とし、表面が硬く、ある荷重を超えると折れ曲がるように急激に変形するものを「C」とした。
【0057】
表1に示すように実施例1-8及び比較例1-4はいずれも密度が約40kg/mであったが、実施例1-8はf”(x)の傾きが12以下であり、比較例1-4はf”(x)の傾きが12よりも大きな値であった。比較例5,6もf”(x)の傾きが12よりも大きかった。比較例5,6は密度が約20kg/mであり、実施例1-8及び比較例1-4に比べて密度が小さかった。f”(x)の傾きは密度に依存しないことが明らかになった。
【0058】
f”(x)の傾きが12以下であった実施例1-8は官能試験の評価がA又はBであったのに対し、f”(x)の傾きが12よりも大きかった比較例1-6は官能試験の評価がCであった。f”(x)の傾きが12以下であると感触と安定感を確保できることが明らかになった。
【0059】
f”(x)の傾きが10以下であった実施例1-6は官能試験の評価がAであったのに対し、f”(x)の傾きが10よりも大きかった実施例7,8は官能試験の評価がBであった。f”(x)の傾きが10以下であると、さらに感触と安定感を良好にできることが明らかになった。
【0060】
実施例2,3,6は荷重変位曲線の極大値のときのxの値が10%以上であったのに対し、比較例1,2,5,6は荷重変位曲線の極大値のときのxの値が10%未満であった。荷重変位曲線の極大値のときのxの値が大きいことは、試験片が高さ方向に圧縮荷重を受けたときに、変形の様子が変化して横方向に曲がる限界が大きいことを示している。極大値のときのxの値が10%以上であった実施例2,3,6は官能試験の評価がAであったのに対し、極大値のときのxの値が10%未満の比較例1,2,5,6は官能試験の評価がCであった。極大値のときのxの値が10%以上であると感触と安定感を良好にできることが明らかになった。
【0061】
実施例1-8及び比較例1,3,4は原料にポリオール1(ひまし油誘導体)を含む点で共通した。しかし、実施例1-8は、ひまし油誘導体をポリオール成分100重量部に対し20重量%以上含み、かつ、ポリオール成分の平均分子量が1600以下であるという2つの条件を満たすのに対し、比較例1,3,4は、2つの条件の少なくとも1つを満たしていない点で相違した。実施例によれば、ポリオール成分100重量部に対しひまし油誘導体が20重量%以上含まれ、かつ、ポリオール成分の平均分子量が1600以下であるものは、軟質ポリウレタンフォームの感触と安定感が良好であることが明らかになった。
【0062】
実施例1-4,8によれば、ポリオール成分として、ひまし油誘導体およびひまし油、又は、これらとひまし油系ポリオールとの混合物を用いることで、感触と安定感が良好で、かつ、バイオマス度が60%以上の軟質ポリウレタンフォームが得られることが明らかになった。
【0063】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0064】
実施例では、トリエタノールアミンとひまし油脂肪酸とがエステル結合したひまし油誘導体とひまし油とを含むポリオール(ポリオール1,2)を用いる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。トリエタノールアミンとひまし油脂肪酸とがエステル結合したひまし油誘導体のみを含むポリオールを用いることは当然可能である。
【0065】
また、トリエタノールアミンに代えて、他の窒素原子を含む多価アルコールとひまし油脂肪酸とがエステル結合したひまし油誘導体を用いることも当然可能である。他の窒素原子を含む多価アルコールは、ジエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジエタノールイソプロパノールアミンが例示される。
【符号の説明】
【0066】
10 第1の試験片
12 加圧板
13 第2の試験片
14 加圧面
図1
図2