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特開2024-106962プロピレン-エチレン系樹脂組成物及びその成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106962
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】プロピレン-エチレン系樹脂組成物及びその成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/16 20060101AFI20240801BHJP
   C08F 210/16 20060101ALI20240801BHJP
   C08F 8/00 20060101ALI20240801BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20240801BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20240801BHJP
   B29B 7/48 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
C08L23/16
C08F210/16
C08F8/00
C08J3/20 CES
C08J5/00
B29B7/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023194218
(22)【出願日】2023-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2023011072
(32)【優先日】2023-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】596133485
【氏名又は名称】日本ポリプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】松山 光平
(72)【発明者】
【氏名】西部 貴久
(72)【発明者】
【氏名】岩井 伸浩
【テーマコード(参考)】
4F070
4F071
4F201
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4F070AA15
4F070AB09
4F070AB11
4F070AB24
4F070AC40
4F070AC46
4F070AC55
4F070AC56
4F070AC66
4F070AE03
4F070AE30
4F070BA05
4F070FA03
4F070FA17
4F070FB06
4F070FB07
4F070FC06
4F071AA20
4F071AA88
4F071AC08
4F071AC09
4F071AC12
4F071AC15
4F071AC19
4F071AE05
4F071AE22
4F071AF20
4F071AF23
4F071AF30
4F071AG01
4F071AH04
4F071AH05
4F071AH19
4F071BA01
4F071BB05
4F071BB06
4F071BB13
4F071BC04
4F071BC07
4F201AA04
4F201AA11
4F201AG14
4F201AR17
4F201BA01
4F201BA02
4F201BC01
4F201BC13
4F201BK02
4F201BK13
4F201BK26
4F201BL08
4J002BB151
4J002BB201
4J002BP021
4J002EG020
4J002EK037
4J002EU070
4J002EW046
4J002EW060
4J002FD040
4J002FD070
4J002FD200
4J002GG01
4J100AA02Q
4J100AA03P
4J100CA04
4J100CA31
4J100DA04
4J100DA39
4J100DA40
4J100DA42
4J100DA49
4J100DA52
4J100DA62
4J100FA09
4J100FA19
4J100FA34
4J100HA51
4J100HC36
4J100HE17
4J100JA59
4J100JA60
(57)【要約】
【課題】成形加工性が良好で、剛性と耐衝撃性とのバランス、及び透明性に優れるプロピレン-エチレン系樹脂組成物を提供する。
【解決手段】40℃のオルトジクロロベンゼン に可溶な成分(I)を1~15重量%、40℃のオルトジクロロベンゼンに不溶かつ100℃のオルトジクロロベンゼンに可溶な成分(II)を49~70重量%、及び100℃のオルトジクロロベンゼンに不溶かつ140℃のオルトジクロロベンゼンに可溶な成分(III)を20~50重量%を含む(ただし前記成分(I)、(II)及び(III)の割合の合計は100重量%)プロピレン-エチレン系樹脂組成物であって、前記成分(I)のエチレン含量が15~30重量%であり、前記プロピレン-エチレン系樹脂組成物は、温度昇温溶離分別法(TREF)による-15℃可溶分量が0.0~4.0重量%、JIS K7210(230℃、2.16kg荷重)に準拠したメルトフローレイト(MFR)MFRが2~100g/10分、エチレン含量が1~8重量%である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
40℃のオルトジクロロベンゼンに可溶な成分(I)を1~15重量%、40℃のオルトジクロロベンゼンに不溶かつ100℃のオルトジクロロベンゼンに可溶な成分(II)を49~70重量%、及び100℃のオルトジクロロベンゼンに不溶かつ140℃のオルトジクロロベンゼンに可溶な成分(III)を20~50重量%を含む(ただし前記成分(I)、(II)及び(III)の合計が100重量%である)プロピレン-エチレン系樹脂組成物であって、
前記成分(I)は、エチレン含量が15~30重量%であり、
温度昇温溶離分別法(TREF)による-15℃可溶分量が0.0~4.0重量%、JIS K7210(230℃、2.16kg荷重)に準拠したメルトフローレイト(MFR)が2~100g/10分、エチレン含量が1~8重量%であるプロピレン-エチレン系樹脂組成物。
【請求項2】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるQ値が2.5より大きく、6.0以下である請求項1に記載のプロピレン-エチレン系樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、造核剤を0.01~0.7重量%含有する請求項1または2に記載のプロピレン-エチレン系樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1または2に記載のプロピレン-エチレン系樹脂組成物を用いて得られる成形品。
【請求項5】
請求項1または2に記載のプロピレン-エチレン系樹脂組成物の製造方法であって、JIS K7210(230℃、2.16kg荷重)に準拠したメルトフローレイト(MFR)が1~100g/10分、エチレン含量が0.1~2重量%であるプロピレン-エチレン共重合体(A)と、該プロピレン-エチレン共重合体(A)と異なるプロピレン-エチレン共重合体(B)との合計100重量部に対し、過酸化物を0.0001~0.3重量部と、任意に造核剤0.01~0.7重量部とを含有する樹脂組成物を溶融混練する工程を含む、方法。
【請求項6】
前記プロピレン-エチレン共重合体(A)と前記プロピレン-エチレン共重合体(B)とを多段重合する工程を含む請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピレン-エチレン系樹脂組成物及びそれを用いて得られる成形品に関し、さらに詳しくは、成形加工性が良好で、剛性と耐衝撃性とのバランス、及び透明性に優れるプロピレン-エチレン系樹脂組成物及びその成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
結晶性ポリプロピレンは、機械的性質、耐薬品性に優れることから各種成形分野に広く用いられている。中でも、射出成形によって得られる各種容器は、医療、食品、飲料及び雑貨など多くの用途に用いられている。このような用途には、剛性、耐衝撃性及び透明性等の性能を要求されるものが多い。しかしながら、結晶性ポリプロピレンとしてプロピレン単独重合体を用いると、剛性は高くなるが耐衝撃性が不足する。そのため、プロピレン単独重合体にエチレン-プロピレンラバー等のエラストマーを添加する方法や、プロピレンの単独重合後に引き続いてエチレンとプロピレンを共重合させて、いわゆるプロピレンブロック共重合体を製造する方法により、耐衝撃性を改良することが行われてきた。
【0003】
これらの方法で、剛性と耐衝撃性とのバランスは、ある程度改善されるものの、必ずしも充分なレベルとは言えず、また、これらの方法では、透明性及び加熱後の透明性が犠牲になる。加えて、添加したエラストマーや引き続いて共重合したエチレン-プロピレン共重合体は、成形品のベタツキやブリードアウトを引き起こし、ブロッキング性や外観不良などの問題を発生しやすい。また、成形加工時に、金型への付着・汚染といった問題も誘発するという欠点を有していた。
【0004】
特許文献1には、メルトフローレイト(ASTM D1238、230℃、2.16kg荷重)が10~60g/10分であり、室温n-デカンに不溶な部分(Dinsol)85~97重量%と室温n-デカンに可溶な部分(Dsol)3~15重量%とから構成され(ただし前記DinsolとDsolとの合計は100重量%である)、前記Dinsolが下記要件(1)~(3)を満たし、かつ前記Dsolが下記要件(5)~(7)を満たすエチレンプロピレンブロック共重合体(A)からなることを特徴とするシリンジ用ポリプロピレン樹脂が開示されている。
(1)Dinsolの融点が150~165℃
(2)DinsolのGPCから求めた分子量分布(Mw/Mn)が1.0~3.5
(3)Dinsol中のエチレンに由来する骨格の含有量が0~13モル%
(5)DsolのGPCから求めた分子量分布(Mw/Mn)が1.0~3.5
(6)Dsolの135℃デカリン中における極限粘度[η]が1.5~4dl/g
(7)Dsol中のエチレンに由来する骨格の含有量が15~25モル%
【0005】
特許文献1に記載されたポリプロピレン樹脂は、衛生性、耐熱性および透明性に優れ、低分子量物質の溶出もほとんどないシリンジの原料となり、成形時の気泡発生抑制とロングラン成形性、更には射出成形時のコア金型抜き取り時の傷付抑制の全てを従来成し得なかったレベルで満足したシリンジ用ポリプロピレン樹脂としているが、透明性が十分とはいえない。
【0006】
特許文献2には、エチレン含量が0.1~3重量%、JIS K7210(230℃、2.16kg荷重)に準拠したメルトフローレイト(MFR)が10~300g/10分であるプロピレン-エチレン共重合体(A)とエチレン含量が5~20重量%、MFRが1~50g/10分であるプロピレン-エチレン共重合体(B)からなるプロピレン-エチレン系樹脂組成物であり、プロピレン-エチレン共重合体(A)とプロピレン-エチレン共重合体(B)の重量比が90:10~60:40、かつ、プロピレン-エチレン系樹脂組成物のエチレン含量が2~8重量%であるプロピレン-エチレン系樹脂組成物が開示されている。
【0007】
特許文献2に記載されたプロピレン-エチレン系樹脂組成物では、射出成形の際、糸ひきを生じやすく、収縮率が大きいという問題があった。糸引きは、成形品を型から取り出す際に、冷却固化が不十分な箇所の樹脂が糸状に引き伸ばされる現象で、製品として不十分となる。糸引きを抑制するには、十分な冷却時間をおくこと、あるいは結晶性をあげることが考えられるが、成形サイクルの増長につながり経済的に不利になったり、収縮率がさらに悪化したりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2009/041381号
【特許文献2】特開2015-025037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、成形加工性が良好で、剛性と耐衝撃性とのバランス、及び透明性に優れるプロピレン-エチレン系樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、クロス分別クロマトグラフ(CFC)とFT-IRの組み合わせにより測定される40℃以下、40℃超100℃以下、および100℃超140℃以下の3つの温度フラクションでの溶出分量と溶出分中のエチレン含量が、特定の量比とすることにより、成形加工性が良好で、剛性と耐衝撃性とのバランス、及び透明性に優れるプロピレン-エチレン系樹脂組成物及びその成形品が得られること、およびエチレン含量が異なる2種類のプロピレン-エチレン共重合体組成物を過酸化物により流動性を向上させるとそのようなプロピレン-エチレン系樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、以下のプロピレン-エチレン系樹脂組成物及びその成形品並びにその製造方法に関する。
[1] 40℃のオルトジクロロベンゼン に可溶な成分(I)を1~15重量%、40℃のオルトジクロロベンゼンに不溶かつ100℃のオルトジクロロベンゼンに可溶な成分(II)を49~70重量%、及び100℃のオルトジクロロベンゼンに不溶かつ140℃のオルトジクロロベンゼンに可溶な成分(III)を20~50重量%を含む(ただし前記成分(I)、(II)及び(III)の合計が100重量%である)プロピレン-エチレン系樹脂組成物であって、
前記成分(I)は、エチレン含量が15~30重量%であり、
温度昇温溶離分別法(TREF)による-15℃可溶分量が0.0~4.0重量%、JIS K7210(230℃、2.16kg荷重)に準拠したメルトフローレイト(MFR)が2~100g/10分、エチレン含量が1~8重量%であるプロピレン-エチレン系樹脂組成物。
[2] ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるQ値が2.5より大きく、6.0以下である、[1]に記載のプロピレン-エチレン系樹脂組成物。
[3] さらに、造核剤を0.01~0.7重量%含有する[1]または[2]に記載のプロピレン-エチレン系樹脂組成物。
[4] [1]ないし[3]のいずれかに記載のプロピレン-エチレン系樹脂組成物を用いて得られる成形品。
[5] [1]ないし[4]のいずれかに記載のプロピレン-エチレン系樹脂組成物の製造方法であって、JIS K7210(230℃、2.16kg荷重)に準拠したメルトフローレイト(MFR)が1~100g/10分、エチレン含量が0.1~2重量%であるプロピレン-エチレン共重合体(A)と、該プロピレン-エチレン共重合体(A)と異なるプロピレン-エチレン共重合体(B)との合計100重量部に対し、過酸化物を0.0001~0.3重量部と、任意に造核剤0.01~0.7重量部とを含有する樹脂組成物を溶融混練する工程を含む、方法。
[6] 前記プロピレン-エチレン共重合体(A)と前記プロピレン-エチレン共重合体(B)とを多段重合する工程を含む請求項5に記載の方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明のプロピレン-エチレン系樹脂組成物は、成形加工性が良好で、剛性と耐衝撃性とのバランス、及び透明性に優れるという特性を有している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例であり、これらの内容に本発明は限定されるものではない。なお、本明細書において、MFRはJIS K7210(230℃、2.16kg荷重)に準拠したメルトフローレイトの略称であり、TREFは温度昇温溶離分別法の略称であり、CFCはクロス分別クロマトグラフの略称であり、FT-IRはフーリエ変換赤外分光法の略称であり、GPCはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の略称である。
【0013】
本発明は、40℃のオルトジクロロベンゼンに可溶な成分(I)を1~15重量%、40℃のオルトジクロロベンゼンに不溶かつ100℃のオルトジクロロベンゼンに可溶な成分(II)を49~70重量%、及び100℃のオルトジクロロベンゼンに不溶かつ140℃のオルトジクロロベンゼンに可溶な成分(III)を20~50重量%含む(ただし(I)、(II)及び(III)の合計が100重量%である)プロピレン-エチレン系樹脂組成物であって、
前記成分(I)は、エチレン含量が15~30重量%であり、
前記プロピレン-エチレン系樹脂組成物は、温度昇温溶離分別法(TREF)による-15℃可溶分量が0.0~4.0重量%、JIS K7210(230℃、2.16kg荷重)に準拠したメルトフローレイト(MFR)が2~100g/10分、エチレン含量が1~8重量%である。
【0014】
40℃のオルトジクロロベンゼンに可溶な成分(I)は、1~15重量%、好ましくは2~13重量%で、より好ましくは3~10重量%である。上限値以下であると成型時の固化が早くなり成形加工性が向上し、この範囲の下限値以上であると耐衝撃性が向上する。
【0015】
40℃のオルトジクロロベンゼンに可溶な成分(I)のエチレン含量は、15~30重量%、好ましくは16~28重量%、より好ましくは18~25重量%である。この範囲の下限以上であると、耐衝撃性が向上し、上限値以下であると、透明性が良好となる。本明細書において、プロピレン-エチレン系樹脂のエチレン含量は、後述のとおり、フーリエ変換型赤外線吸収スペクトル分析により測定することができる。
【0016】
40℃のオルトジクロロベンゼンに可溶な成分(I)の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは3.5~10.5、より好ましくは4~10、さらに好ましくは5~9.5である。この範囲の下限値以上であると剛性が向上し、上限値以下であると耐衝撃性が向上する。本明細書において、プロピレン-エチレン系樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は、後述のとおり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)により求められる。
【0017】
40℃のオルトジクロロベンゼンに不溶かつ100℃のオルトジクロロベンゼンに可溶な成分(II)は、49~70重量%、好ましくは53~65重量%、より好ましくは57~62重量%である。下限値以上であると耐衝撃性が向上し、上限値以下であると糸引きが良好に抑制される。
【0018】
成分(II)のエチレン含量は、好ましくは1~4重量%、より好ましくは1.5~3.5重量%、さらに好ましくは1.8~3.3重量%である。この範囲の下限以上であると耐衝撃性が向上し、上限値以下であると、糸引きが良好に抑制される。
【0019】
成分(II)の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.5~3.5、より好ましくは1.8~3.3、さらに好ましくは2.0~3.5である。この範囲の下限値以上であると剛性が向上し、上限値以下であると耐衝撃性が向上する。
【0020】
100℃のオルトジクロロベンゼンに不溶かつ140℃のオルトジクロロベンゼンに可溶な成分(III)は、20~50重量%、好ましくは25~45重量%であり、より好ましくは28~40重量%である。この範囲の上限値以下であると、糸引きが良好になり、この範囲の下限値以上であると耐衝撃性が向上する。
【0021】
成分(III)のエチレン含量は、好ましくは0~1.0重量%、より好ましくは0~0.8重量%、さらに好ましくは0~0.5重量%である。この範囲の下限以上であると耐衝撃性が向上し、上限値以下であると、糸引きが良好に抑制される。
【0022】
成分(III)の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.5~3.5、より好ましくは1.8~3.3、さらに好ましくは2.0~3.5である。この範囲の下限値以上であると剛性が向上し、上限値以下であると耐衝撃性が向上する。
【0023】
上述した成分(I)、(II)及び(III)の合計は100重量%である。また、成分(I)(II)(III)の重量割合および各エチレンの割合は、後述の通りCFC-IRを用いて求める。
【0024】
[プロピレン-エチレン系樹脂組成物]
本発明のプロピレン-エチレン系樹脂組成物のMFRは、2~100g/10分の範囲であり、好ましくは5~60g/10分、より好ましくは10~30g/10分である。
MFRが2g/10分以上であると流動性向上により成形加工性が良好となり、100g/10分以下であると耐衝撃性が良好となる。
【0025】
本発明のプロピレン-エチレン系樹脂組成物のエチレン含量は、1~8重量%の範囲であり、好ましくは1.3~6重量%、より好ましくは1.6~4重量%である。この範囲であると、成形加工性を良好にし、剛性と耐衝撃性とのバランスが良好になる。
【0026】
本発明のプロピレン-エチレン系樹脂組成物のTREFによる-15℃可溶分量は0.0~4.0重量%の範囲であり、好ましくは0.0~3.6重量%、より好ましくは0.0~3.2重量%である。この範囲内であると耐糸引き性が向上する。
【0027】
また、プロピレン-エチレン系樹脂組成物のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるQ値[分子量分布(Mw/Mn)]は、好ましくは2.5より大きく6.0以下であり、より好ましくは3.0~5.5、さらに好ましくは3.5~5.0である。この範囲の下限値を超えると剛性が向上し、上限値以下であると糸引きが良好になるのに加え収縮率が小さくなり好ましい。
【0028】
プロピレン-エチレン系樹脂組成物において、オルトジクロロベンゼンに溶解させる温度による可溶、不溶の違いは、主としてエチレン含量の違いによるものと考えられる。エチレン含量が高いゴム状のプロピレン-エチレン共重合体ほど低い温度のオルトジクロロベンゼンに溶解する。したがって、エチレン含量が異なる複数のプロピレン-エチレン共重合体をブレンド及び/または多段重合することにより、所望のプロピレン-エチレン系樹脂組成物を得ることができる。
【0029】
好ましくは、エチレン含量が異なる二種の共重合体(プロピレン-エチレン共重合体(A)及びプロピレン-エチレン共重合体(B))と過酸化物を溶融混練することにより、所望のプロピレン-エチレン系樹脂組成物を得ることができる。
【0030】
[プロピレン-エチレン共重合体(A)]
本発明において、プロピレン-エチレン共重合体(A)は以下の特性を満足することが好ましい。
特性1:MFR
プロピレン-エチレン共重合体(A)のMFRは1~100g/10分、好ましくは1.2~60g/10分、より好ましくは1.4~30g/10分、さらに好ましくは2.0~9.9g/10分である。この範囲の下限値以上であると流動性の向上により成形加工性が良好となり、上限値以下のものは樹脂組成物の生産性が良好となり経済上好ましい。本明細書において、プロピレン系樹脂のMFRは、JIS K7210:1999「プラスチック―熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」のA法、条件M(230℃、2.16kg荷重)に準拠して測定され、単位はg/10分である。
【0031】
特性2:エチレン含量
プロピレン-エチレン共重合体(A)のエチレン含量は0.1~2重量%、好ましくは0.3~1.7重量%、より好ましくは0.5~1.5重量%である。この範囲の下限値以上であると透明性が良好となる。また上限値以下であると糸ひきが良好に抑制される。
【0032】
特性3:Q値[分子量分布(Mw/Mn)]
プロピレン-エチレン共重合体(A)のQ値は好ましくは3.5~6.0であり、より好ましくは4.0~6.0、さらに好ましくは4.5~5.5である。この範囲の下限値以上であると剛性が向上し、上限値以下であると耐衝撃性が向上し好ましい。さらに、この範囲内であると、プロピレン-エチレン共重合体(B)との相溶性が向上し、透明性が向上するため好ましい。なお、本明細書において、Q値は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)をいう。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定は、特開2015-140421号公報に記載された方法により行うことができる。
【0033】
[プロピレン-エチレン共重合体(B)]
本発明において、プロピレン-エチレン共重合体(B)は以下の特性を満足することが好ましい。
特性1:MFR
プロピレン-エチレン共重合体(B)のMFRは好ましくは1~50g/10分、好ましくは1.2~40g/10分、より好ましくは1.4~30g/10分、さらに好ましくは1.5~15g/10分である。この範囲の下限値以上であるとプロピレン-エチレン共重合体(A)とプロピレン-エチレン共重合体(B)との分散が向上し、フィッシュアイの発生を抑制すると共に、透明性が向上する。また上限値以下であると低結晶成分が表面にブリードしにくくなることにより加熱後の透明性が良好となる。
【0034】
特性2:エチレン含量
プロピレン-エチレン共重合体(B)のエチレン含量は好ましくは5~25重量%、より好ましくは7~23重量%、さらに好ましくは9~21重量%、特に好ましくは11~19重量%である。ただし、プロピレン-エチレン共重合体(B)のエチレン含量はプロピレン-エチレン共重合体(A)のエチレン含量よりも大きい。この範囲の下限値以上であると耐衝撃性が向上する。また上限値以下であるとプロピレン-エチレン共重合体(A)との相溶性が向上することにより透明性が良好となる。
【0035】
特性3:Q値[分子量分布(Mw/Mn)]
プロピレン-エチレン共重合体(B)のQ値は好ましくは好ましくは3.5~6.0であり、より好ましくは4.0~6.0、さらに好ましくは4.5~5.5である。この範囲の下限値以上であると剛性が向上し、上限値以下であると耐衝撃性が向上し好ましい。
【0036】
[プロピレン-エチレン共重合体組成物]
本発明において、プロピレン-エチレン共重合体組成物は、プロピレン-エチレン共重合体(A)とプロピレン-エチレン共重合体(B)を含み、その重量比(A):(B)は好ましくは95:5~60:40であり、より好ましくは94:6~70:30、さらに好ましくは93:7~80:20である。プロピレン-エチレン共重合体(A)の重量比の上限値(95)以下であると耐衝撃性が向上し、下限値(60)以上であると成形時の固化が速くなり成形加工性が向上する。
【0037】
特性1:MFR
プロピレン-エチレン共重合体組成物のMFRは、好ましくは1~70g/10分の範囲であることが好ましく、より好ましくは2~50g/10分、さらに好ましくは3~30g/10分である。MFRが1g/10分以上であると流動性向上により成形加工性が良好となり、70g/10分以下であると耐衝撃性が良好となる。
【0038】
特性2:エチレン含量
プロピレン-エチレン共重合体組成物のエチレン含量は、好ましくは1~8重量%であり、より好ましくは1.3~6重量%、さらに好ましくは1.6~5重量%である。この範囲の下限値以上であると透明性及び耐衝撃性が向上する。上限値以下であると低結晶性成分の減少により加熱後の透明性が向上する。
【0039】
特性3:Q値[分子量分布(Mw/Mn)]
プロピレン-エチレン共重合体組成物のQ値は好ましくは好ましくは2.5~6.0であり、より好ましくは3.0~5.5、さらに好ましくは3.5~5.0である。この範囲の下限値以上であると剛性が向上し、上限値以下であると糸引きが良好になるのに加え収縮率が小さくなり好ましい。
【0040】
プロピレン-エチレン共重合体組成物は、プロピレン-エチレン共重合体(A)とプロピレン-エチレン共重合体(B)の混合物でも連続重合によって製造された物でもよい。
【0041】
プロピレン-エチレン共重合体(B)部のエチレン含量(EB)は、プロピレン-エチレン共重合体(B)の重合反応器における原料エチレンの濃度とプロピレン-エチレン共重合体のエチレン含量との検量線から求めることができる。検量線の作成にあたっては、先のプロピレン-エチレン共重合体(A)の不存在下で、単一のプロピレン-エチレン共重合体を重合するときの原料エチレンの濃度とプロピレン-エチレン共重合体のエチレン含量との関係をあらかじめ取得しておく。プロピレン-エチレン共重合体組成物中のプロピレン-エチレン共重合体(A)の重量割合(WA)とプロピレン-エチレン共重合体(B)の重量割合(WB)は、以下の関係式から、求めることができる。
WA×EA+WB×EB=(WA+WB)×EC
WA+WB=100
ここで、EA、EB、およびECは、プロピレン-エチレン共重合体(A)のエチレン含量(EA)、プロピレン-エチレン共重合体(B)のエチレン含量(EB)、およびプロピレン-エチレン共重合体組成物のエチレン含量(EC)である。上記関係式において、EA、EB、およびECは0~100の実数であり、また、WAおよびWBは0~100の実数である。
【0042】
プロピレン-エチレン共重合体(B)のMFRは、プロピレン-エチレン共重合体(A)のMFR、プロピレン-エチレン共重合体組成物のMFRおよびプロピレン-エチレン共重合体(A)とプロピレン-エチレン共重合体(B)との重量比率Wcを用いて、対数加成則より、以下の関係式により算出することができる。
log(MFR)=log(MFR)*Wc+log(MFR)*(1-Wc)
0≦Wc≦1
ここで、MFR、MFR、およびMFRは、プロピレン-エチレン共重合体(A)のMFR(MFR)、プロピレン-エチレン共重合体(B)のMFR(MFR)、およびプロピレン-エチレン共重合体組成物のMFR(MFR)である。また、重量比率Wcは、プロピレン-エチレン共重合体(A)の重量割合(WA)とプロピレン-エチレン共重合体(B)の重量割合(WB)から、Wc=WA/(WA+WB)から求められる。
【0043】
プロピレン-エチレン共重合体のエチレン含量を測定するのに使用する分析装置及びその方法は以下の通りである。
フーリエ変換型赤外線吸収スペクトル分析
FT-IR、パーキンエルマー社製 1760X
13C-NMRにより組成を検定したエチレン・プロピレンランダムコポリマーを基準物質として、733cm-1の特性吸収体を用いる赤外分光法により、プロピレン-エチレン共重合体組成物中のプロピレン-エチレン共重合体(A)部とプロピレン-エチレン共重合体組成物中のエチレン含量を測定する。ペレットをプレス成形により約500ミクロンの厚さのフィルムとしたものを用いる。
【0044】
プロピレン-エチレン共重合体(A)、プロピレン-エチレン共重合体(B)及びプロピレン-エチレン共重合体組成物を得るために用いられる触媒としては、特に限定されるものではなく、公知の触媒が使用可能である。例えば、チタン化合物と有機アルミニウムを組み合わせた、いわゆるチーグラー・ナッタ触媒、又は、メタロセン触媒(例えば、特開平5-295022号公報等に記載)が使用できる。本発明では、剛性、耐衝撃性のバランスが良いプロピレン系ブロック共重合体が特に好ましいため、触媒としては、一般的に立体規則性の高いチーグラー・ナッタ触媒が好ましい。
【0045】
プロピレン-エチレン共重合体(A)、及びプロピレン-エチレン共重合体(B)及びプロピレン-エチレン共重合体組成物の製造プロセスに関しては、前述の諸特性を満足すればいかなる方法で製造してもよいが経済性の観点から気相法プロセスが好ましい、その中でも液化プロピレンの蒸発潜熱を利用して重合熱を除去する形式で水平軸回りに回転する撹拌機を有する横型反応器を持つプロセスで製造することがより好ましい。
【0046】
プロピレン-エチレン共重合体(A)、及びプロピレン-エチレン共重合体(B)の混合についても、前述の諸特性を満足すればいかなる方法で製造してもよいが、2段連続重合法を採用することによりプロピレン-エチレン共重合体(A)とプロピレン-エチレン共重合体(B)との分散が良好となりより透明性が向上する。
【0047】
[過酸化物] プロピレン-エチレン系樹脂組成物の製造方法として、例えばプロピレン-エチレン共重合体組成物100重量部に対し、過酸化物0.0001~0.3重量部、好ましくは0.001~0.05重量部、より好ましくは0.001~0.045重量部、さらに好ましくは0.01~0.04重量部を含有する樹脂組成物を溶融混練する工程を含む、方法が挙げられる。過酸化物の量を上記の範囲にすることで、成形加工性が良好になり、特に糸引きを抑制することが良好なプロピレン-エチレン系樹脂組成物とすることができる。
【0048】
本発明において過酸化物は、ベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)オクタン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3-ヘキシン、1,3-ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、α,α´-ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ビス(t-ブチルジオキシイソプロピル)ベンゼン、t-ブチル-ハイドロパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジ-t-ブチル-ジパーオキシフタレート、t-ブチルパーオキシマレイン酸、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、イソプロピルパーカーボネート等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0049】
これらは、1種に限らず2種以上を組み合せて使用することができる。これらの中でも、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3-ヘキシン、1,3-ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、α,α´-ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ビス(t-ブチルジオキシイソプロピル)ベンゼンが特に好ましい。
【0050】
さらに、過酸化物の分散性を向上するために、過酸化物を適当な媒体、例えば鉱物油やプロセスオイル等の不活性液体や、炭酸カルシウムやシリカなどの不活性無機粉末や、ポリプロピレンなどの樹脂成分であらかじめ希釈したものも使用することができる。
【0051】
これらの市販品の例としては、日油(株)製の商品名:パーヘキサ25B、パーヘキサ25B-40、パーブチルD、パーブチルP、パーブチルP-40、パーヘキシン25B、パーヘキサMC,パーヘキサHC、パーヘキサC、パーヘキサ22、アルケマ吉富(株)製の商品名:ルベロックス101、ルベロックスDI、ルベロックス130、ルベロックス531、ルベロックス331、ルベロックス220、化薬アクゾ(株)製の商品名:パーカドックス14R-P、パーカドックス14-40C、カヤヘキサADなどを挙げることができ、所望の商品を購入して使用することができる。
【0052】
プロピレン-エチレン系樹脂組成物のMFRとプロピレン-エチレン共重合体組成物のMFRとの比は、好ましくは1を超え10以下、より好ましくは1.5~6.5、さらに好ましくは2~3.5である。
上記の範囲にすることで、プロピレン-エチレン系樹脂組成物の成形加工性が良好になり、耐糸引き性が向上する。
【0053】
[造核剤]
本発明のプロピレン-エチレン系樹脂組成物は、プロピレン-エチレン共重合体組成物100重量部に対して、造核剤を、好ましくは0.01~0.7重量部、より好ましくは0.1~0.5重量部、さらに好ましくは0.15~0.3重量部含有させて溶融混練することができる。
造核剤の含有量が0.01重量部以上であると透明性の改良効果が十分であり、0.7重量部以下であると費用対前記効果(コスト・パフォーマンス)の点から有利である。なお、これら造核剤は二種以上を組み合わせて用いてもよい。二種以上を組み合わせるとき、それらの合計量を造核剤の含有量とする。
【0054】
造核剤としては、有機燐酸エステル金属塩、有機モノカルボン酸金属塩、有機ジカルボン酸金属塩、ポリマー核剤、ジベンジリデンソルビトールもしくはその誘導体、ジテルペン酸類の金属塩等が使用される。
【0055】
上記有機燐酸エステル金属塩としては、例えば、ナトリウム-2,2’-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2’-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム-2,2’-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム-2,2’-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2’-エチリデン-ビス(4-i-プロピル-6-t-ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム-2,2’-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム-2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2’-ブチリデン-ビス(4,6-ジ-メチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2’-ブチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2’-t-オクチルメチレン-ビス(4,6-ジ-メチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2’-t-オクチルメチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート、カルシウム-ビス[(2,2’-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート]、マグネシウム-ビス[2,2’-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート]、バリウム-ビス[2,2’-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート]、ナトリウム-2,2’-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2’-エチリデン-ビス(4-s-ブチル-6-t-ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2’-メチレン-ビス(4,6-ジ-メチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2’-メチレン-ビス(4,6-ジ-エチルフェニル)フォスフェート、カリウム-2,2’-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート、カルシウム-ビス[2,2’-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フオスフェート]、マグネシウム-ビス[2,2’-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート]、バリウム-ビス[2,2’-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート]、アルミニウム-トリス[2,2’-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェル)フォスフェート]、アルミニウム-トリス[2,2’-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート]、アルミニウムヒドロオキシ-ビス[2,2’-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート]、アルミニウムジヒドロオキシ-2,2’-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート等が例示される。
【0056】
上記有機モノカルボン酸金属塩としては、例えば、安息香酸、アリル置換酢酸、等の金属の塩であり、具体的には、安息香酸、p-イソプロピル安息香酸、o-第3級ブチル安息香酸、p-t-ブチル安息香酸、モノフェニル酢酸、ジフェニル酢酸、フェニルジメチル酢酸、アジピン酸及びこれらのLi、Na、Mg、Ca、Ba、Al塩、等が例示される。
上記有機ジカルボン酸金属塩としては、例えば、コハク酸、グルタール酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、フタル酸、シクロヘキサンカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸及びこれらのLi、Na、Mg、Ca、Ba、Al塩などを挙げることができる。
【0057】
上記ポリマー核剤としては、例えば、ポリビニルシクロヘキサン、ポリ-3-メチル-ブテン-1等が例示される。
【0058】
上記ジベンジリデンソルビトールもしくはその誘導体としては、例えば、1,3,2,4-ジベンジリデンソルビトール、1,3-ベンジリデン-2,4-p-メチルベンジリデンソルビトール、1,3-ベンジリデン-2,4-p-エチルベンジリデンソルビトール、1,3-p-メチルベンジリデン-2,4-ベンジリデンソルビトール、1,3-p-エチルベンジリデン-2,4-ベンジリデンソルビトール、1,3-p-メチルベンジリデン-2,4-p-エチルベンジリデンソルビトール、1,3-p-エチルベンジリデン-2,4-p-メチルベンジリデンソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-エチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-n-プロピルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-i-プロピルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-n-ブチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-s-ブチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-t-ブチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-メトキシベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-エトキシベンジリデン)ソルビトール、1,3-ベンジリデン-2,4-p-クロルベンジリデンソルビトール、1,3-p-クロルベンジリデン-2,4-ベンジリデンソルビトール、1,3-p-クロルベンジリデン-2,4-p-メチルベンジリデンソルビトール、1,3-p-クロルベンジリデン-2,4-p-エチルベンジリデンソルビトール、1,3-p-メチルベンジリデン-2,4-p-クロルベンジリデンソルビトール、1,3-p-エチルベンジリデン-2,4-p-クロルベンジリデンソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-クロルベンジリデン)ソルビトール、1,2,3-トリデオキシ-4,6:5,7-ビス-O-[(4-プロピルフェニル)メチレン]-ノニトールなどを例示することができる。特に好ましくは、1,3,2,4-ジベンジリデンソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3-p-クロルベンジリデン-2,4-p-メチルベンジリデンソルビトール、1,2,3-トリデオキシ-4,6:5,7-ビス-O-[(4-プロピルフェニル)メチレン]-ノニトール等が例示される。
【0059】
上記ジテルペン酸類の金属塩は、ジテルペン酸類とマグネシウム化合物、アルミニウム化合物等の所定の金属化合物との反応生成物である。ジテルペン酸は、一般に、マツ科植物から得られる天然樹脂として知られているロジン、具体的には、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジンなどの天然ロジン;不均化ロジン、水素化ロジン、脱水素化ロジン、重合ロジン、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸変性ロジンなどの各種変性ロジン;及び前記天然ロジンや変性ロジンの精製物などを原料として得られる。ジテルペン酸類としては、例えば、ピマル酸、サンダラコピマル酸、パラストリン酸、イソピマル酸、アビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、ネオアビエチン酸、ジヒドロピマル酸、ジヒドロアビエチン酸、テトラヒドロアビエチン酸などが挙げられる。
【0060】
これらのうち、好ましい造核剤は、有機燐酸エステル金属塩、有機ジカルボン酸金属塩であり、更に好ましくは、ナトリウム-2,2’-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2’-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート、アルミニウム-トリス[2,2’-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェル)フォスフェート]、アルミニウムヒドロオキシ-ビス[2,2’-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート]、アルミニウムジヒドロオキシ-2,2’-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェートのような架橋した置換芳香族基を有する燐酸エステル金属塩、又は、2-シクロヘキサンジカルボン酸ナトリウム、1,2-ノルボルナンジカルボン酸ナトリウム、1,2-ノルボルナンジカルボン酸マグネシウムのような脂環式炭化水素ジカルボン酸金属塩があげられる。金属塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム塩等が例示され、より好ましくはリチウム、ナトリウム、カリウム等の1族金属である。
【0061】
[その他添加剤]
本発明のプロピレン-エチレン系樹脂組成物には性能を著しく損なわない範囲で、各種添加剤、例えば、耐熱安定剤、酸化防止剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、銅害防止剤、帯電防止剤、難燃剤、親水化剤、スリップ剤、抗ブロッキング剤、防曇剤、着色剤、充填剤、ポリエチレン、エラストマー、石油樹脂、抗菌剤などを含有することができる。
【0062】
[プロピレン-エチレン系樹脂組成物の製造方法]
本発明のプロピレン-エチレン系樹脂組成物の製造方法は、40℃のオルトジクロロベンゼンに可溶な成分(I)を1~15重量%、40℃のオルトジクロロベンゼンに不溶かつ100℃のオルトジクロロベンゼンに可溶な成分(II)を49~70重量%、及び100℃のオルトジクロロベンゼンに不溶かつ140℃のオルトジクロロベンゼンに可溶な成分(III)を20~50重量%を含み(ただし前記成分(I)、(II)及び(III)の合計が100重量%である)、 前記成分(I)は、エチレン含量が15~30重量%であり、プロピレン-エチレン系樹脂組成物の温度昇温溶離分別法(TREF)による-15℃可溶分量が0.0~4.0重量%、JIS K7210(230℃、2.16kg荷重)に準拠したメルトフローレイト(MFR)が2~100g/10分、エチレン含量が1~8重量%であるプロピレン-エチレン系樹脂組成物を得ることができる。溶融混練に先立ち、所定量のプロピレン-エチレン共重合体(A)、プロピレン-エチレン共重合体(B)、過酸化物、及び任意に造核剤を、秤量し、ヘンシェルミキサー(商品名)、スーパーミキサー、リボンブレンダー、タンブラーミキサー、バンバリーミキサー等の混合装置を用いて混合してもよい。溶融混練は、単軸もしくは2軸の押出機、又はロールなどを用いることができる。溶融混練温度は、好ましくは150~300℃、より好ましくは180~250℃である。溶融混練物をペレタイズすることによって、ペレット状の組成物とすることもできる。
【0063】
[成形品]
本発明の成形品は、上記のプロピレン-エチレン系樹脂組成物を公知の方法である射出成形法、押出成形法、ブロー成形法など各種成形法によって成形することにより得られる。
【0064】
この成形品としては、具体的には、医療、食品容器(プリン容器、ゼリー容器、ヨーグルト容器、その他のデザート容器、惣菜容器、茶碗蒸し容器、インスタントラーメン等のインスタント麺類に代表されるインスタント食品用の容器、米飯容器、レトルト容器、弁当容器等)、飲料容器(飲料ボトル、チルドコーヒー容器、ワンハンドカップ容器、その他の飲料容器等)、キャップ(ペットボトルキャップ、1ピースキャップ、2ピースキャップ、インスタントコーヒーのキャップ、調味料キャップ、化粧品容器キャップ等)、その他各種容器(インク容器、化粧品容器、シャンプー容器、洗剤容器等)、日用品(衣装ケース、バケツ、洗面器、筆記用具、コンテナ、玩具、調理器具、その他各種ケース等)などが挙げられる。
【0065】
上記のプロピレン-エチレン系樹脂組成物を用いることにより、透明性に優れ、かつ精度の良い成形品、特に射出成形品を短い成形サイクルで得ることができる。得られる成形品は、各種用途に用いられ、中でも容器、バッグ、トレー等として、食品、飲食品用等に好適に用いられ、例えば、プリン、ヨーグルト、ゼリー等のデザート容器、ジュース容器、もずく等の藻類、キムチ、白菜漬け等の惣菜類、魚介類等用の容器など、食品や飲食品を入れる容器等として好適に用いることができる。
【実施例0066】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。なお、物性測定法及び使用材料は、以下の通りである。
1.物性、評価方法
(1)MFR:
メルトフローレイトは、JIS K-7210-1999(230℃、2.16kg荷重)に準拠して測定した。
【0067】
(2)TREFによる-15℃可溶分量:
試料を140℃でo-ジクロロベンゼン(ODCB)に溶解し溶液とする。これを140℃のTREFカラムに導入した後、8℃/分の降温速度で100℃まで冷却し、引き続き4℃/分の降温速度で-15℃まで冷却後、20分間保持する。引き続き昇温速度100℃/60分にてカラムを-15℃から140℃までリニアに昇温しながら60分間、溶媒であるODCBを1mL/分の流速でカラムに流して、試料を溶出させて溶出曲線を得る。
-15℃で溶出する成分の溶出量の溶出量全量に対する割合を-15℃以下の温度で溶出する成分の量(重量%)とする。
カラムサイズ:4.3mmφ×150mm
カラム充填剤:100μm表面不活性処理ガラスビーズ
溶媒:o-ジクロロベンゼン(ODCB)
試料濃度:5mg/mL
試料注入量:0.1mL
溶媒流速:1mL/分
検出器:FOXBORO社製MIRAN、1A、IR検出器(測定波長:3.42μm)
【0068】
(3)クロス分別クロマトグラフ(CFC)とFT-IRの組み合わせ測定(CFC-IR)
下記に記すように、CFCにより分別されたフラクションをGPCとFT-IRを組み合わせた装置によって分析することにより、各々の分子量とエチレン含量測定を同時に行い、プロピレン-エチレン系樹脂組成物の種々の特性値(インデックス)を決定することができる。この手法の詳細は特開2003-147035号公報に記載されているが、以下に具体的な手順を簡便に記述する。
【0069】
CFCによる40℃以下の可溶分、40℃超100℃以下の可溶分および100℃超140℃以下の可溶分の定量測定とFT-IRによる可溶分中のエチレン含量の測定
(i)使用する分析装置
(ア)クロス分別装置
ダイヤインスツルメンツ社製CFC T-100(以下、CFC T-100と略す。)
(イ)フーリエ変換型赤外線吸収スペクトル分析
FT-IR、パーキンエルマー社製 1760X
CFC T-100の検出器として取り付けられていた波長固定型の赤外分光光度計を取り外して、代わりにFT-IRを接続し、このFT-IRを検出器として使用する。
CFC T-100から溶出した溶液の出口からFT-IRまでの間のトランスファーラインは1mの長さとし、測定の間を通じて140℃の温度に保持する。FT-IRに取り付けたフローセルは、光路長1mm、光路幅5mmφのものを用い、測定の間を通じて140℃の温度に保持する。
(ウ)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)
CFC T-100後段部分のGPCカラムは、昭和電工社製AD806MSを3本直列に接続して使用する。
【0070】
(ii)CFCの測定条件
(ア)溶媒:オルトジクロルベンゼン(ODCB)
(イ)サンプル濃度:4mg/ml
(ウ)注入量:0.4ml
(エ)結晶化:140℃から40℃まで約40分かけて降温する。
(オ)分別方法:
昇温溶出分別時の分別温度は40℃、100℃及び140℃とし、全部で3つのフラクションに分別する。
なお、40℃以下で溶出する成分をフラクション1、40℃超~100℃以下で溶出する成分をフラクション2、及び100℃超~140℃以下で溶出する成分をフラクション3と定義する。3つのフラクションの成分量の合計は、100重量%である。また、分別した各フラクションは、そのままFT-IR分析装置へ自動輸送される。
(カ)溶出時溶媒流速:1ml/分
【0071】
(iii)FT-IRの測定条件
CFC T-100後段のGPCから試料溶液の溶出が開始した後、以下の条件でFT-IR測定を行い、上述した各フラクション1~3について、GPC-IRデータを採取する。
(ア)検出器:Polymer char社製MCT
(イ)分解能:8cm-1
(ウ)測定間隔:0.2分(12秒)
(エ)一測定当たりの積算回数:15回
【0072】
(iv)測定結果の後処理と解析
各温度で溶出した成分の溶出量と分子量分布は、FT-IRによって得られる2945cm-1の吸光度をクロマトグラムとして使用して求める。溶出量は各溶出成分の溶出量の合計が100%となるように規格化する。保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。
分子量への換算は、森定雄著「サイズ排除クロマトグラフィー」(共立出版)を参考に汎用較正曲線を用いる。その際使用する粘度式([η]=K×Mα)には以下の数値を用いる。
[標準ポリスチレンを使用する較正曲線作成時]
K=1.38×10-4、 α=0.70
[プロピレン-エチレンブロック共重合体のサンプル測定時]
K=1.03×10-4、 α=0.78
各溶出成分のエチレン含有量分布(分子量軸に沿ったエチレン含有量の分布)は、GPC-IRによって得られる2,956cm-1の吸光度と2,927cm-1の吸光度との比を用い、ポリエチレンやポリプロピレンや13C-NMR測定などによりエチレン含有量が既知となっているエチレン-プロピレン-ラバー(EPR)及びそれらの混合物を使用して予め作成しておいた検量線により、エチレン含有量(重量%)に換算して求める。
【0073】
なお、上記3種類の分別温度を設定した意義は次の通りである。本発明のCFC分析においては、40℃とは結晶性を持たないポリマー(例えば共重合体成分の大部分、もしくはプロピレン重合体成分(PP)の中でも極端に分子量の低い成分及びアタクチックな成分)のみを分別するのに必要十分な温度である。100℃とは、40℃では不溶であるが100℃では可溶となる成分(例えば共重合体成分中、エチレン及び/又はプロピレンの連鎖に起因して結晶性を有する成分、及び結晶性の低いPP)のみを溶出させるのに必要十分な温度である。140℃とは、100℃では不溶であるが140℃では可溶となる成分(例えばPP中特に結晶性の高い成分、及び共重合体成分中の極端に分子量が高くかつエチレン結晶性を有する成分)のみを溶出させ、かつ分析に使用するプロピレン-エチレン系樹脂組成物の全量を回収するのに必要十分な温度である。
【0074】
(4)曲げ弾性率:
芝浦機械社製EC100射出成形機を用いて試験片を成形し、室温23±1℃、相対湿度50±5%に調節された恒温室で7日間状態調整を行った後、JIS K7171に準拠して23℃における曲げ弾性率(MPa)を求めた。
【0075】
(5)シャルピー衝撃強度:
芝浦機械社製EC100射出成形機を用いて試験片を成形し、室温23±1℃、相対湿度50±5%に調節された恒温室で7日間状態調整を行った後、JIS K7111-1に準拠して23℃におけるシャルピー衝撃強度(kJ/m)を求めた。
【0076】
(6)透明性(ヘイズ):
芝浦機械社製EC100射出成形機を用いてJIS K7152-3に準拠した厚さ2mmの小型角板を成形し、室温23±1℃、相対湿度50±5%に調節された恒温室で7日間状態調整を行った後、JIS K7136に準拠してヘイズ(%)求めた。
【0077】
(7)糸引き(成形加工性):
住友重機械工業社製SE180射出成形機を用いて中央にバルブゲートを有する厚さ2mmの平板を成形温度210℃、金型冷却温度40℃、保圧圧力10MPaで10回成形し、ゲート部の糸引きの有無(有の回/10回)を確認した。
【0078】
2.使用材料
(1)プロピレン-エチレン共重合体組成物
下記の製造例1~6で得られた各プロピレン-エチレン共重合体組成物(それぞれ、PP-1~PP-6と称す)を用いた。
【0079】
<製造例1(PP-1)>
(i)固体触媒成分の製造
撹拌装置を備えた容量10Lのオートクレーブを充分に窒素で置換し、精製したトルエンを2L導入した。ここに、室温で、ジエトキシマグネシウムを200g、TiClを1L添加した。温度を90℃に上げて、フタル酸ジ-n-ブチルを50ml導入した。その後、温度を110℃に上げて3時間反応を行った。反応生成物を精製したトルエンで充分に洗浄した。次いで、精製したトルエンを導入して全体の液量を2Lに調整した。室温でTiClを1L添加し、温度を110℃に上げて2時間反応を行った。反応生成物を精製したトルエンで充分に洗浄した。次いで、精製したトルエンを導入して全体の液量を2Lに調整した。室温でTiClを1L添加し、温度を110℃に上げて2時間反応を行った。反応生成物を精製したトルエンで充分に洗浄した。更に、精製したn-ヘプタンを用いて、トルエンをn-ヘプタンで置換し、固体成分前駆体のスラリーを得た。このスラリーの一部をサンプリングし分析したところ、固体成分前駆体のTi含量は2.7重量%であった。
【0080】
次に、撹拌装置を備えた容量20Lのオートクレーブを充分に窒素で置換し、上記固体成分前駆体のスラリーを固体成分前駆体として100g導入した。精製したn-ヘプタンを導入して、固体成分前駆体の濃度が25g/Lとなる様に調整した。SiClを50ml加え、90℃で1時間反応を行った。反応生成物を精製したn-ヘプタンで充分に洗浄した。
【0081】
その後、精製したn-ヘプタンを導入して液レベルを4Lに調整した。ここに、ジメチルジビニルシランを30ml、ジイソプロピルジメトキシシランを30ml、トリエチルアルミニウムのn-ヘプタン希釈液をトリエチルアルミニウムとして80g添加し、40℃で2時間反応させて固体成分を得た。固体成分を精製したn-ヘプタンで充分に洗浄し、得られたスラリーの一部をサンプリングして乾燥、分析したところ、固体成分にはTiが1.2重量%、ジイソプロピルジメトキシシランが8.8重量%含まれていた。
【0082】
更に、上記で得られた固体成分を用いて、以下の手順により予備重合を行った。上記のスラリーに精製したn-ヘプタンを導入して、固体成分の濃度が20g/Lとなる様に調整した。次にスラリーを10℃に冷却した後、トリエチルアルミニウムのn-ヘプタン希釈液をトリエチルアルミニウムとして10g添加し、280gのプロピレンを4時間かけて供給した。プロピレンの供給が終わった後、更に30分反応を継続した。次いで、気相部を窒素で充分に置換し、反応生成物を精製したn-ヘプタンで充分に洗浄した。得られたスラリーをオートクレーブから抜き出し、真空乾燥を行って固体触媒成分を得た。この固体触媒成分は、固体成分1gあたり2.5gのポリプロピレンを含んでいた。また、この固体触媒成分のポリプロピレンを除いた部分には、Tiが1.0重量%、ジイソプロピルジメトキシシランが8.2重量%含まれていた。
【0083】
(ii)プロピレン-エチレン共重合体組成物(PP-1)パウダーの製造
撹拌機を備えた2台の横型重合槽からなる連続気相重合反応器を用いた。第1の反応器に上記で得た固体触媒成分を固体成分として0.11g/時間、またトリエチルアルミニウムの7重量%ヘキサン溶液を固体触媒成分中のTi原子1モルに対し、Al/Tiモル比が960となるように連続的に供給した。反応器内の水素のプロピレンに対するモル比が0.008となるように水素を、エチレンのプロピレンに対するモル比が0.007となるようにエチレンを、反応器内の圧力が1.8MPa、温度が60℃を保つようにプロピレンモノマーをそれぞれ反応器内に供給し第1の重合反応を行った。尚、反応熱は原料液化プロピレンの気化熱にて除去した。第1の反応器で生成したプロピレン-エチレン共重合体(A)は連続的に抜出され、第2の反応器に移送された。
【0084】
第2の反応器では、第1の反応器で生成したプロピレン-エチレン共重合体(A)の存在下、反応器内の水素濃度のプロピレン濃度に対するモル比が0.013となるように水素を、エチレン濃度のプロピレン濃度に対するモル比が0.080となるようにエチレンを、反応器内の圧力が1.9MPa、温度が63℃を保つようにプロピレンモノマーをそれぞれ反応器内に供給し第2の重合反応を行った。尚、プロピレン-エチレン共重合体(B)の重合量は、重合活性抑制剤を供給することで調整した。また反応熱は原料液化プロピレンの気化熱にて除去した。第2の反応器で生成したプロピレン-エチレン共重合体組成物は、反応器から連続的に抜き出された。結果を表1に示す。
【0085】
<製造例2(PP-2)>
(i)プロピレン-エチレン共重合体組成物(PP-2)の製造
第1の反応器の水素及びエチレンがそれぞれ水素/プロピレン=0.009モル比、エチレン/プロピレン=0.006モル比、第2の反応器の水素及びエチレンがそれぞれ水素/プロピレン=0.015モル比、エチレン/プロピレン=0.045モル比となるように重合反応を行った以外は、製造例1と同条件で行った。結果を表1に示す。
【0086】
<製造例3(PP-3)>
(i)プロピレン-エチレン共重合体組成物(PP-3)の製造
第1の反応器の水素及びエチレンがそれぞれ水素/プロピレン=0.014モル比、エチレン/プロピレン=0.007モル比、第2の反応器の水素及びエチレンがそれぞれ水素/プロピレン=0.023モル比、エチレン/プロピレン=0.065モル比となるように重合反応を行った以外は、製造例1と同条件で行った。結果を表1に示す。
【0087】
<製造例4(PP-4)>
(i)プロピレン-エチレン共重合体組成物(PP-4)の製造
第1の反応器の水素及びエチレンがそれぞれ水素/プロピレン=0.057モル比、エチレン/プロピレン=0.013モル比、第2の反応器の水素及びエチレンがそれぞれ水素/プロピレン=0.021モル比、エチレン/プロピレン=0.051モル比となるように重合反応を行った以外は、製造例1と同条件で行った。結果を表1に示す。
【0088】
<製造例5(PP-5)>
(i)プロピレン-エチレン共重合体組成物(PP-5)の製造
第1の反応器の水素及びエチレンがそれぞれ水素/プロピレン=0.056モル比、エチレン/プロピレン=0.013モル比、第2の反応器の水素及びエチレンがそれぞれ水素/プロピレン=0.032モル比、エチレン/プロピレン=0.071モル比となるように重合反応を行った以外は、製造例1と同条件で行った。結果を表1に示す。
【0089】
<製造例6(PP-6)>
(i)プロピレン-エチレン共重合体組成物(PP-6)の製造
第1の反応器の水素及びエチレンがそれぞれ水素/プロピレン=0.039モル比、エチレン/プロピレン=0.013モル比、第2の反応器の水素及びエチレンがそれぞれ水素/プロピレン=0.056モル比、エチレン/プロピレン=0.052モル比となるように重合反応を行った以外は、製造例1と同条件で行った。結果を表1に示す。
【0090】
(2)造核剤
(i)造核剤(B-1):ADEKA社製、NA-21、有機燐酸エステル金属塩系核剤、リン酸-2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)アルミニウム塩
【0091】
(実施例1)
(1)樹脂組成物の製造
プロピレン-エチレンブロック共重合体として、製造例1で得られた(PP-1)パウダー100重量部に対して、造核剤(B-1)を0.25重量部、中和剤のステアリン酸カルシウム0.10重量部、酸化防止剤のトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト(BASF社製)0.10重量部、ヒンダードアミン系光安定剤のコハク酸ジメチル-2-(4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジル)エタノール縮合物(BASF社製)0.15重量部、過酸化物の2,5-ジメチル-2,5-ジ-(t-ブチル-パーオキシ)ヘキサン(日油社製;以下パーヘキサ25B)0.025重量部を添加し、スーパーミキサーで3分間混合した。
【0092】
その後、パウダーは、東芝機械社製2軸押出機TEM35を用いホッパーを窒素シールしながら、シリンダー温度230℃、スクリュー回転数200rpm、押出量15kg/時間で造粒し、プロピレン-エチレン系樹脂組成物のペレットを得た。
【0093】
得られたプロピレン-エチレン系樹脂組成物を分析したところ、MFRは20.0g/10分であった。
得られたペレットを用いて、上述した評価を行った。プロピレン-エチレン系樹脂組成物の各組成、物性等を表1に示す。
【0094】
【表1】
【0095】
(実施例2)
プロピレン-エチレン共重合体組成物としてPP-2を用い、樹脂組成物の製造に過酸化物のパーヘキサ25B 0.023重量部を添加したこと以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。その組成、物性等を表1に示す。
【0096】
(実施例3)
プロピレン-エチレン共重合体組成物としてPP-3を用い、樹脂組成物の製造に過酸化物のパーヘキサ25B 0.022重量部を添加したこと以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。その組成、物性等を表1に示す。
【0097】
(比較例1)
プロピレン-エチレン共重合体組成物としてPP-4を用い、樹脂組成物の製造に造核剤(B-1)0.20重量部、過酸化物のパーヘキサ25Bを添加していないこと以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。その結果を表1に示す。
【0098】
(比較例2)
プロピレン-エチレン共重合体組成物としてPP-5を用い、樹脂組成物の製造に造核剤(B-1)0.20重量部、過酸化物のパーヘキサ25Bを添加していないこと以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。その組成、物性等を表1に示す。
【0099】
(比較例3)
プロピレン-エチレン共重合体組成物としてPP-6を用い、樹脂組成物の製造に造核剤(B-1)0.20重量部、過酸化物のパーヘキサ25Bを添加していないこと以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。その組成、物性等を表1に示す。
【0100】
上記の結果から、本発明のプロピレン-エチレン系樹脂組成物は、剛性と耐衝撃性とのバランスが改良され、透明性が高く、成形時の糸引き回数が少なく改良されていることが分かる。
【0101】
これに対して、比較例1、2及び3ではプロピレン-エチレン系樹脂組成物のMFRが高く、曲げ弾性率が低いことが分かる。またプロピレン-エチレン系樹脂組成物のエチレン含量が高いため、耐糸引き性が悪いことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は、成形加工性が良好で、剛性と耐衝撃性とのバランス、及び透明性に優れ、プロピレン-エチレン系樹脂組成物や、それを用いて得られる成形品、中でも医療用などの成形品、特に射出成形容器を提供しうるので、産業上大いに有用である。