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特開2024-106966頭部モデル作成装置及び頭部モデル作成方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106966
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】頭部モデル作成装置及び頭部モデル作成方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20240801BHJP
   G06T 17/20 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
G06T7/00 660A
G06T17/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023208822
(22)【出願日】2023-12-11
(31)【優先権主張番号】P 2023011040
(32)【優先日】2023-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023084653
(32)【優先日】2023-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】相羽 英樹
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 智之
(72)【発明者】
【氏名】竹原 裕也
【テーマコード(参考)】
5B080
5L096
【Fターム(参考)】
5B080AA13
5B080AA14
5B080CA00
5B080FA08
5B080GA22
5L096FA02
5L096FA06
5L096FA09
5L096FA12
5L096FA14
5L096FA66
5L096FA67
5L096GA41
(57)【要約】
【課題】複雑な形状の前髪をより適切に表現し、モデルを再現した際の不自然さを抑制できる。
【解決手段】人物の頭部を含む画像が入力される画像入力処理部と、画像を解析し、頭部の形状の特定し、頭髪の毛根が配置される領域を頭皮エリアとして特定する頭部形状作成部と、画像を解析し、前髪が含まれるエリアを前髪エリアとして特定する髪パーツ分類部と、頭皮エリアと、前髪エリアとが重なるエリアを、前髪を生成する対象エリアとして特定する前髪作成部と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人物の頭部を含む画像が入力される画像入力処理部と、
前記画像を解析し、頭部の形状の特定し、頭髪の毛根が配置される領域を頭皮エリアとして特定する頭部形状作成部と、
前記画像を解析し、前髪が含まれるエリアを前髪エリアとして特定する髪パーツ分類部と、
前記頭皮エリアと、前記前髪エリアとが重なるエリアを、前髪を生成する対象エリアとして特定する前髪作成部と、を含む、
頭部モデル作成装置。
【請求項2】
前記前髪作成部は、前記前髪エリアから前髪を生成するパラメータを算出し、前記パラメータに基づいて前記対象エリアに前髪のモデルを生成する請求項1に記載の頭部モデル作成装置。
【請求項3】
前記対象エリアは、推定した前髪の分け目ラインから鼻筋への延長線が、前記前髪エリアの境界線と交差する点を頂点とする所定のエリアである請求項1または2に記載の頭部モデル作成装置。
【請求項4】
前記前髪作成部は、前記頂点から前記前髪エリアの境界線に向かって所定の間隔で複数のプロットを配置し、
前記複数のプロットと前記頂点とがなす線と、前記延長線とのなす角度に基づいて、前記対象エリアを特定する、
請求項3に記載の頭部モデル作成装置。
【請求項5】
前記パラメータは、前記前髪エリアの境界線に基づいて算出された前髪の形状変化を示すパラメータと、前記前髪エリアを含む所定の直線上の信号値に基づいて算出された前髪の量を示すパラメータとを含む請求項2に記載の頭部モデル作成装置。
【請求項6】
前記頭部形状作成部は、前記頭部における鼻根のランドマークと鼻柱基部のランドマークおよび眼球のランドマークとからの所定の位置に基づいて、前記頭皮エリアを特定する請求項1または2に記載の頭部モデル作成装置。
【請求項7】
前記頭部形状作成部は、
前記頭部における鼻根のランドマークと、鼻柱基部のランドマークと、眼球のランドマークとして眼球第1端のランドマークと眼球第2端のランドマークおよび眼球上端のランドマークとを取得し、
前記鼻根のランドマークと前記鼻柱基部のランドマークとを結ぶ正中線を算出し、
前記眼球第1端のランドマークと前記眼球第2端のランドマークとの距離を求め、前記眼球上端のランドマークから前記正中線に平行に前記距離の所定の倍数だけ上部に位置した点を眼球点として算出し、
前記正中線と直交し、前記眼球点を通る直線との交点を算出し、
前記鼻柱基部のランドマークと前記交点との距離を所定の比率で外分する外分点を算出し、
前記外分点を境界線に含む前記頭皮エリアを特定する、
請求項1または2に記載の頭部モデル作成装置。
【請求項8】
前記頭部形状作成部は、
前記画像から頭部の第1のモデルを作成し、
前記画像からパラメータを算出し、そのパラメータを用いて頭部の第2のモデルを作成し、
前記第1のモデルと前記第2のモデルとを重ねて位置を合わせ、前記第1のモデルにおいて毛髪の領域の境界を算出し、前記境界の各点と前記第1のモデルの中心とを通る複数の直線が前記第2のモデルを通過する複数の点を結んだ曲線と前記第2のモデルとがなすエリアを前記頭皮エリアとして特定する、
請求項1または2に記載の頭部モデル作成装置。
【請求項9】
請求項8に記載の頭部モデル作成装置において、
前記第1のモデルにおける前記毛髪の領域に前記頭皮エリアを合成する合成部をさらに備える、
頭部モデル作成装置。
【請求項10】
人物の頭部を含む画像が入力される画像入力処理ステップと、
前記画像を解析し、頭部の形状の特定し、頭髪の毛根が配置される領域を頭皮エリアとして特定する頭部形状作成ステップと、
前記画像を解析し、前髪が含まれるエリアを前髪エリアとして特定する髪パーツ分類ステップと、
前記頭皮エリアと、前記前髪エリアとが重なるエリアを、前髪を生成する対象エリアとして特定し、前髪を作成する前髪作成ステップと、を含む、頭部モデル作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭部モデル作成装置及び頭部モデル作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
仮想現実空間などで用いるアバターとして、自身の容姿に基づいて作成したリアルアバターを使用する場合がある。このようなリアルアバターを作成する場合、自身を立体スキャナーでモデリングする方法がある。リアルアバターを作成する場合、全身をモデリングすると処理が多くなるため、頭部のみをモデリングする場合もある。頭部(顔全体)をモデリングする手法の一つに、3DMM(3-Dimensional Morphable Model)を利用した方法がある。この方法は、入力された画像を解析し、3DMMの形状とテクスチャを推論することでモデルを生成する。3DMMを用いることで、顔面については、形状の変形とテクスチャ付与によって再現可能であるが、髪型は多様性が高く、基本となる変形モデルを定義づけすることは極めて困難である。
【0003】
また、アニメーションでの頭髪を再現する方法としては、例えば特許文献1に記載の方法がある。特許文献1では、マスタ毛髪と、マスタ毛髪の周囲に設定したメンバ毛髪を有する毛束を有し、マスタ毛髪を頭部の各位置に設定し、その周囲にメンバ毛髪を設定することで、頭髪を再現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-20874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
頭髪を再現する方法としては、予め複数のパターンを設定し、パターンマッチングで予め用意した髪型を適用する方法があるが、実際の頭髪の形状は種々の形状があるため、精度高く当てはめるためには、多数のパターンを用意する必要がある。また、特許文献1に記載の装置のように、モデル毎に位置を設定すると処理作業が多くなる。さらに、頭髪の中で前髪は、特に個人により形状が異なるため、再現が難しい。また、個人により、毛髪の生え際や顔の形状が異なるため、再現モデルが不自然になる可能性もある。
【0006】
本発明は、上記課題を鑑み、複雑な形状の髪をより適切に表現し、モデルを再現した際の不自然さを抑制できる頭部モデル作成装置及び頭部モデル作成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様にかかる頭部モデル作成装置は、人物の頭部を含む画像が入力される画像入力処理部と、前記画像を解析し、頭部の形状の特定し、頭髪の毛根が配置される領域を頭皮エリアとして特定する頭部形状作成部と、前記画像を解析し、前髪が含まれるエリアを前髪エリアとして特定する髪パーツ分類部と、前記頭皮エリアと、前記前髪エリアとが重なるエリアを、前髪を生成する対象エリアとして特定する前髪作成部と、を含む。
【0008】
本発明の一態様にかかる頭部モデル作成方法は、物の頭部を含む画像が入力される画像入力処理ステップと、前記画像を解析し、頭部の形状の特定し、頭髪の毛根が配置される領域を頭皮エリアとして特定する頭部形状作成ステップと、前記画像を解析し、前髪が含まれるエリアを前髪エリアとして特定する髪パーツ分類ステップと、前記頭皮エリアと、前記前髪エリアとが重なるエリアを、前髪を生成する対象エリアとして特定し、前髪を作成する前髪作成ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複雑な形状の前髪をより適切に表現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態にかかる頭部モデル作成システムの一例を示す図である。
図2図2は、頭皮モデル作成方法の一例を示すフローチャートである。
図3図3は、頭皮モデル作成方法の処理を説明するための模式図である。
図4図4は、髪パーツを説明するための模式図である。
図5図5は、頭皮モデル作成方法の一例を示すフローチャートである。
図6図6は、前髪のモデルを作成する処理を説明するための模式図である。
図7図7は、前髪のモデルを作成する処理を説明するための模式図である。
図8図8は、前髪のモデルを作成する処理を説明するための模式図である。
図9図9は、前髪のモデルを作成する処理を説明するための模式図である。
図10図10は、前髪のモデルを作成する処理を説明するための模式図である。
図11図11は、パラメータと前髪のアウトラインとの関係を説明するための模式図である。
図12図12は、毛髪の成長を説明するための模式図である。
図13図13は、毛髪の成長を説明するための模式図である。
図14図14は、毛髪の成長を説明するための模式図である。
図15図15は、毛髪の成長を説明するための模式図である。
図16図16は、毛髪の成長を説明するための模式図である。
図17図17は、前髪モデルの一例を示す模式図である。
図18図18は、前髪モデルの一例を示す模式図である。
図19図19は、前髪モデルの一例を示す模式図である。
図20図20は、頭皮エリアを特定する方法の一例を示すフローチャートである。
図21図21は、頭皮エリアを特定する処理を説明するための模式図である。
図22図22は、頭皮エリアを特定する処理の一例を説明するための説明図である。
図23図23は、頭皮エリアを特定する処理の一例を説明するための説明図である。
図24図24は、頭皮エリアを特定する処理の一例を説明するための説明図である。
図25図25は、頭皮エリアを特定する処理の一例を説明するための説明図である。
図26図26は、頭皮エリアを特定する処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0012】
図1は、本実施形態にかかる頭部モデル作成システムの一例を示す図である。本実施形態にかかる頭部モデル作成システム10は、人物の頭部が含まれる画像を取得し、取得した画像に含まれる人物の頭部のモデルを作成する。頭部モデル作成システム10は、カメラ12と、画像記憶装置14と、頭部モデル作成装置20と、を含む。
【0013】
カメラ12は、画像を撮像する装置である。カメラ12が撮影する画像は、動画、静止画のいずれでもよい。カメラ12は、撮影した画像データを頭部モデル作成装置20に出力する。カメラ12が頭部モデル作成装置20に画像データを出力する方法として、有線、無線の通信、記録媒体を用いた方法等、種々の方法を用いることができる。
【0014】
画像記憶装置14は、人物の頭部を含む画像のデータである画像データを記憶する。画像記憶装置14は、各種情報を記憶するメモリであり、例えば、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)のような主記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)などの外部記憶装置とのうち、少なくとも1つ含む。画像記憶装置14は、画像データを頭部モデル作成装置20に出力する。画像記憶装置14が頭部モデル作成装置20に画像データを出力する方法として、有線、無線の通信等、種々の方法を用いることができる。
【0015】
頭部モデル作成装置20は、カメラ12、画像記憶装置14から供給される人物の頭部を含む画像データを処理し、人物の頭部モデルを作成する。以下では、本発明の特徴である前髪のモデルである前髪モデルの作成の処理について説明する。頭部モデル作成装置20は、前髪モデル以外の髪、横髪のモデルや、顔面のモデルも周知の技術で作成し、頭部モデルを作成することができる。
【0016】
頭部モデル作成装置20は、パーソナルコンピュータ、スマートフォンやタブレット端末等である。頭部モデル作成装置20は、各部を無線、有線の通信で接続し、一部処理をクラウド上で処理してもよい。頭部モデル作成装置20は、画像入力処理部22と、入力部24と、出力部26と、演算部28と、記憶部30と、を含む。
【0017】
画像入力処理部22は、カメラ12、画像記憶装置14から供給される画像データを取得する。画像入力処理部22は、例えば、RAMやROMのような記憶装置であり、CPU(Central Processing Unit)などの演算回路を含んでもよい。画像入力処理部22は、取得した画像データを演算部28で処理できる画像データに変換して、演算部28に出力する。また、画像入力処理部22は、取得したデータを記憶部30に記憶してもよい。
【0018】
入力部24は、頭部モデル作成装置20に対する各種の入力操作を受け付ける。入力部24は、受け付けた入力操作に応じた入力信号を演算部28に出力する。入力部24は、例えば、タッチパネル、ボタン、スイッチなどを含む。入力部24としてタッチパネルが用いられる場合には、入力部24は、出力部26上に配置される。
【0019】
出力部26は、各種の映像を表示する表示部である。出力部26は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機EL(Electro-Luminescence)などを含むディスプレイである。なお、出力部26は、表示部以外にも、音声を出力する音声出力部(スピーカ)や、ユーザUに触覚刺激を出力する触覚刺激出力部が備えられていてもよい。触覚刺激出力部は、振動などにより物理的に作動することで、ユーザに触覚刺激を出力するが、触覚刺激の種類は、振動などに限られず任意のものであってよい。
【0020】
演算部28は、演算装置であり、例えばCPUなどの演算回路を含む。演算部28は、頭部形状作成部40と、髪パーツ分類部42と、前髪作成部44と、横髪作成部46と、合成部48と、を含む。演算部28は、記憶部30からプログラム(ソフトウェア)を読み出して実行することで、頭部形状作成部40と、髪パーツ分類部42と、前髪作成部44と、横髪作成部46と、合成部48とを実現して、それらの処理を実行する。なお、演算部28は、1つのCPUによってこれらの処理を実行してもよいし、複数のCPUを備えて、それらの複数のCPUで、処理を実行してもよい。また、頭部形状作成部40と、髪パーツ分類部42と、前髪作成部44と、横髪作成部46と、合成部48との少なくとも一部を、ハードウェアで実現してもよい。
【0021】
頭部形状作成部40は、画像を解析して頭部の形状、頭皮エリアを特定する処理を実行する。ここで、頭皮エリアとは、頭部の中で、頭髪の毛根が配置される領域、つまり、毛髪の基点を配置する領域である。頭部形状作成部40が画像から頭部の形状、頭皮エリアを特定する処理は、種々の形状認識技術を用いることができる。例えば、頭部形状作成部40は、人体の代表的な頭部の形状を用いて、パターンマッチングを行い、画像における、頭部の形状、向きを特定してもよい。また、頭部形状作成部40は、頭部の形状に予め設定されている頭皮の位置を、頭皮エリアとしてもよい。
【0022】
髪パーツ分類部42は、画像を解析して、頭部の髪パーツのエリアを分類する。本実施形態では、髪パーツを前髪エリアと左右の横髪エリアとに分類する。前髪エリアは前髪が含まれるエリアであり、横髪エリアは横髪が含まれるエリアである。髪パーツ分類部42は、画像の髪パーツのエリアが分類された教師データを機械学習し、髪パーツのセグメンテーションを行うプログラムを用いて、各エリアに分類する。なお、髪パーツ分類部42の処理は、機械学習を用いることが好ましいが、これに限定されず、種々の方法で髪パーツを分類することができる。
【0023】
前髪作成部44は、頭部形状作成部40で抽出した頭部の頭皮エリアの情報と、髪パーツ分類部42で抽出した前髪エリアの情報を用いて前髪のモデルである前髪モデルを作成する。前髪作成部44は、前髪を再現する頭髪を配置する頭皮のエリアである対象エリアを設定する。また、前髪作成部44は、頭部の頭皮エリアの情報と前髪エリアの情報と、前髪の画像の情報を用いて、前髪の各種パラメータを決定する。前髪作成部44は、各種パラメータに基づいて対象エリアの毛根を成長させ、前髪モデルを作成する。
【0024】
横髪作成部46は、頭部形状作成部40で抽出した頭部の頭皮エリアの情報と、髪パーツ分類部42で抽出した横髪エリアの情報を用いて横髪のモデルである横髪モデルを作成する。横髪作成部46は、前髪作成部44と同様の処理で横髪モデルを作成しても、他の公知の方法で横髪モデルを作成してもよい。
【0025】
合成部48は、前髪作成部44で作成した前髪モデルと、横髪作成部46で作成した横髪モデルを合成し、画像の頭部の毛髪のモデルを作成する。合成部48は、さらに頭部の顔面のモデルを合成してもよい。
【0026】
記憶部30は、演算部28の演算内容やプログラムなどの各種情報を記憶するメモリであり、例えば、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)のような主記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)などの外部記憶装置とのうち、少なくとも1つ含む。記憶部30が保存する演算部28用のプログラムは、頭部モデル作成装置20が読み取り可能な記録媒体に記憶されていてもよい。記憶部30は、処理プログラム50と、条件テーブル52と、を含む。処理ブログラム50は、演算部28で実行されることで頭部モデルの作成の各処理を実現するプログラムである。処理プログラム50は、演算部28で実行する頭部モデルの作成処理を実行する頭部モデル作成プログラムを含む。処理プログラム50は、機械学習で作成したプログラムや、オペレータが作成したプログラム等である。また、処理プログラム50は、複数のプログラムの組み合わせでもよい。条件テーブル52は、演算部28で実行するプログラムの処理のパラメータ、判定基準等を含む。
【0027】
次に、図2から図20を用いて、頭部モデル作成装置20の処理を説明する。図2は、頭皮モデル作成方法の一例を示すフローチャートである。図3は、頭皮モデル作成方法の処理を説明するための模式図である。図4は、髪パーツを説明するための模式図である。
【0028】
まずは、図2から図4を用いて、頭部モデル全体の作成について説明する。頭部モデル作成装置20の演算部28は、各部の処理を実行することで、図2に示す処理を実現する。演算部28は、画像入力処理部22を介して、画像データを取得する(ステップS12)。画像データは上述したように、人物の頭部を含む画像である。演算部28は、頭部形状作成部40で画像から頭部形状を抽出し、頭皮エリアを特定する(ステップS14)。
【0029】
演算部28は、髪パーツ分類部42で、画像から髪パーツを分類する(ステップS16)。髪パーツ分類部42は、画像から髪の領域を抽出し、抽出した髪の領域をパーツに分類する。例えば、髪パーツ分類部42は、図3に示す人物の頭部104を含む画像102を解析し、図4に示すように、画像102aの頭髪領域110を抽出する。髪パーツ分類部42は、さらに、頭髪領域110を、前髪エリア112、第1横髪エリア114、第2横髪エリア116に分類する。演算部28は、前髪エリア112の領域に基づいてアウトライン118を設定する。アウトライン118については、後述する。なお、本実施形態は、横髪を左右で2つのエリアに分類したが、前髪エリア112とその他の髪エリアに分類してもよい。
【0030】
演算部28は、前髪作成部44で、前髪を作成する(ステップS18)。前髪作成部44は、画像102の情報と、頭部形状作成部40で検出した頭皮エリアの情報と、前髪エリア112の情報に基づいて、前髪を形成する頭皮エリア、前髪の各種パラメータを設定し、設定に基づいて頭髪を成長させて、前髪モデルを作成する。前髪モデルの作成については後述する。
【0031】
演算部28は、横髪作成部46で、横髪を作成する(ステップS20)。横髪作成部46は、第1横髪エリア114、第2横髪エリア116に対応する領域に横髪モデルを作成する。演算部28は、合成部48で、作成した髪、つまり前髪と横髪を合成して髪モデルを作成する(ステップS22)。
【0032】
次に、図5から図20を用いて、前髪モデルの作成方法について説明する。まず、図5を用いて、処理について説明する。図5は、頭皮モデル作成方法の一例を示すフローチャートである。演算部28は、前髪作成部44で、図5に示す各処理を実行し、前髪モデルを作成する。
【0033】
前髪作成部44は、頭皮エリアを取得する(ステップS32)。前髪作成部44は、頭部形状作成部40で抽出した頭皮エリアの情報を取得する。図6は、前髪のモデルを作成する処理を説明するための模式図である。図6は、頭部モデルの三次元形状を模式的に示す図である。図6は、頭部形状作成部40で抽出した頭部の形状、つまり画像から頭部の形状を抽出して髪を取り除いた形状である。頭部形状には、頭皮エリア117(図6の点線で囲まれた範囲)が設定される。頭皮エリア117は、髪モデルを形成する毛根を配置する領域である。次に、前髪作成部44は、髪パーツの前髪エリアを取得する(ステップS34)。前髪作成部44は、髪パーツ分類部42で分類した前髪エリアの情報を取得する。なお、ステップS32とステップS34の処理は、同時に行っても逆の順番で行ってもよい。
【0034】
次に、前髪作成部44は、前髪エリアに基づいてアウトラインを整形する(ステップS36)。図7は、アウトラインを整形する処理を示す図である。前髪作成部44は、セグメンテーション結果から左右の分け目ラインを推定する。具体的には、前髪作成部44は、第1横髪エリア114と第2横髪エリア116との境界を分け目ラインとする。前髪作成部44は、左右の目を画像認識し、左右の目の中心同士を線で結び、その中点から垂線を下ろして、その線上における輝度値が最大の点を鼻の頂点とする。前髪作成部44は、鼻の頂点と分け目ラインの端点とを線で結んで鼻筋とする。前髪作成部44は、分け目ラインと鼻筋とを合わせて分け目延長ライン121とする。前髪作成部44は、分け目ライン121と、前髪エリア112の境界線112aとの頭上側で交差する一番上の位置を頂角の点119とする。
【0035】
次に、前髪作成部44は、頂角の点119を基点として、前髪エリアの境界線112aに向かって所定の間隔でプロット130を配置する。プロット130と頂角の点119とを結んだ線と分け目延長ラインとのなす角をそれぞれのプロット130について算出し、その算出結果に基づいて頂角を算出する。例えば、左右のそれぞれのプロットで角度の平均値を算出し、頂角とする。次に、前髪作成部44は、前髪エリアの境界線112aの情報に基づいて、毛先、つまり、頂角の点119から最も遠い領域に基づいて底辺を設定する。具体的には、前髪作成部44は、前髪エリアの境界線112a上の点のうち頂角の点119から最も遠い点とその左隣(または右隣)の点を結び、頂角の点119からの2つの辺と重なるまで延長して底辺とする。底辺の位置を設定する方法はこれに限定されず、前髪作成部44は、眉毛の位置や瞼の位置に基づいて底辺を設定してもよい。次に、前髪作成部44は、頂角の点119と、頂角と、底辺の位置に基づいて、頂角の点119を頂点とする三角形であるアウトライン118を作成する。ここで、この三角形は曲面上にあるので厳密には三角形とは言えないが、説明を簡単にするため三角形として扱う。
【0036】
前髪作成部44は、前髪の頭皮エリア(対象エリア)を推定する(ステップS38)。前髪作成部44は、図6に示すようにアウトライン118に含まれる頭皮エリア117の領域を前髪の頭皮エリアである対象エリア120とする。つまり、前髪作成部44は、頭皮エリア117と前髪エリア112とが重なるエリアを対象エリアとして特定する。前髪作成部44は、特定した対象エリアに前髪を生成する。
【0037】
前髪作成部44は、前髪の変形パラメータを推定する(ステップS40)。変形パラメータは、前髪モデル作成時の各毛髪の成長方向を調整するパラメータ(成長パラメータ)である。変形パラメータは、毛束の状態つまりアウトライン118の底辺と平行な方向の各位置の毛髪の量を制御する明暗パラメータや、毛髪の流れを調整する、ハネ方向、ハネ位置、中央の膨らみ、斜めバング等がある。前髪作成部44は、前髪エリア112を解析して、各パラメータを設定する。
【0038】
前髪作成部44は、前髪エリア112の画像の明暗を検出することで、明暗パラメータを推定する。前髪作成部44は、前髪が、額の全体を覆っているかシースルー(前髪を通して額が透けて見える状態)か、シースルーの場合はその程度を算出する。前髪作成部44は、アウトライン118の底辺と平行な線を任意の位置に引き、各位置の明暗を検出する。具体的には、測定線での画像のRGB値または輝度値を取得する。図8から図10は、それぞれ前髪のモデルを作成する処理を説明するための模式図である。図8から図10は、明暗パラメータの例を示す図であり、アウトライン118の底辺と平行な線の左右方向に対する明暗の変化である。図8から図10に示す明暗線150、152、154は、それぞれ異なる前髪の明暗である。図8から図10の左右方向は、カメラ12が撮影する画像の左右方向である。図8から図10に示すように、明暗線150、152、154は、髪型により、明暗が変化する。明暗線150、152、154は、毛量が多い位置で暗くなり、毛量が少ない位置で明るくなる。明暗の間隔、変化で、各位置での毛量を推定することができる。つまり、肌の色が透けている部分と髪の毛の部分の周期性および額が透けている割合を読みとり、シースルーの程度を推定することができる。前髪作成部44は、シースルーの程度を画像のコントラストによって推定してもよい。
【0039】
前髪作成部44は、変形パラメータとして、前髪エリアの境界線112aの形状から、前髪のハネ方向、ハネ位置、中央の膨らみ、斜めバングを算出する。前髪作成部44は、頂角の点119から前髪エリアの境界線112aに沿って、所定の間隔でサンプリングしたプロット点のうち隣り合う点を結んだ線分の傾きを取得する。前髪作成部44は、例えば図7に示すように、隣り合うプロット130同士を繋いで基準線140を決定し、基準線140に基づいて前髪エリアの境界線112aの傾きを検出する。前髪作成部44は、複数のプロット130のそれぞれに対して傾きを検出する。前髪作成部44は、分け目延長ライン121の左右それぞれに位置するプロット130について、傾きを検出してもよい。
【0040】
前髪作成部44は、頂角の点119とプロット130とを結んだ基準線140に対して傾きを検出してもよい。前髪作成部44は、前髪エリアの境界線112aにおいて、設定した底辺を含む範囲はプロットしないようにしてもよい。前髪のハネ方向は、底辺側での変化程度から算出する。前髪作成部44は、底辺に最も近いプロット130における傾きと、そのプロット130より頂角側に位置するプロット130における傾きとの差分を算出する。前髪作成部44は、頂角の点119に最も近いプロット130における傾きと、そのプロット130より底辺側に位置するプロット130における傾きとの差分を算出してもよい。前髪作成部44は、分け目延長ライン121の左右それぞれについて、傾きの差分を検出する。前髪作成部44は、算出した値をハネ方向のパラメータとする。中央の膨らみは、頂角側と底辺側の変化の度合いから膨らみ系かしぼみ系かを算出する。前髪作成部44は、底辺に最も近いプロット130と、頂角の点119に最も近いプロット130との間にあるプロット130の数の半分の位置にあるプロット130における傾きとの差分を算出する。前髪作成部44は、算出した値を中央の膨らみのパラメータとする。斜めバングは、左右の変化量の違いから対称形か流し系かを算出する。前髪作成部44は、底辺に最も近いプロット130から所定数だけ頂角側に位置するプロット130における傾きを算出する。前髪作成部44は、分け目延長ライン121の左右それぞれについて、傾きの差分を検出する。前髪作成部44は、算出した値を斜めバングのパラメータとする。
【0041】
図11は、変形パラメータと前髪エリア112との関係を説明するための模式図である。前髪作成部44は、ハネ方向のパラメータが持つ左右2つの値を比較して、より大きな値を持つ方向をハネ方向として決定する。前髪作成部44は、ハネ方向として決定した方向のパラメータの値の大きさに基づいて、ハネの大きさを決定する。前髪作成部44は、パラメータの大きさが第1のしきい値より小さい場合はハネが無いものと決定する(つまり、基準形状160と決定する)。前髪作成部44は、パラメータの大きさが第1のしきい値以上で第2のしきい値より小さい場合はハネ位置を上と決定する。前髪作成部44は、パラメータの大きさが第2のしきい値より大きい場合はハネ位置を毛先と決定する。
【0042】
図11に示すように、基準形状160とした場合、ハネ方向のパラメータに基づいて基準形状160を変形させることで、矢印162に示すようにハネ方向が左右のいずれかと、矢印164に示すようにハネ位置が上下のいずれかとを適切に再現することができる。
【0043】
前髪作成部44は、中央の膨らみのパラメータの値の大きさに基づいて、中央の膨らみを決定する。前髪作成部44は、パラメータの大きさが第3のしきい値より小さい場合は中央の膨らみがほっそりであると決定する。前髪作成部44は、パラメータの大きさが第3のしきい値以上で第4のしきい値より小さい場合は中央の膨らみがないものと決定する(つまり、基準形状160と決定する)。前髪作成部44は、パラメータの大きさが第4のしきい値より大きい場合は中央の膨らみがふっくらであると決定する。
【0044】
図11に示すように、基準形状160とした場合、中央の膨らみのパラメータに基づいて基準形状160を変形させることで、矢印172に示すようにほっそりかふっくらかを再現することができる。換言すると、外縁の湾曲形状の凹凸の向き、凹凸の程度を変化させることができる。
【0045】
前髪作成部44は、斜めバングのパラメータが持つ左右2つの値を比較して、より大きな値を持つ方向を斜めバングの方向として決定する。前髪作成部44は、斜めバングの方向として決定した方向のパラメータの値の大きさに基づいて、斜めバングを決定する。前髪作成部44は、パラメータの大きさが第5のしきい値より小さい場合は斜めバングがないものと決定する(つまり、基準形状160と決定する)。前髪作成部44は、パラメータの大きさが第5のしきい値以上の場合は斜めバングがあるものと決定する。
【0046】
図11に示すように、基準形状160とした場合、斜めバングのパラメータに基づいて基準形状160を変形させることで、矢印182に示すように左流しか右流しかを再現することができる。換言すると、外縁の形状の全体の向きを変化させることができる。図11は、基準形状160に対して、ハネ、中央の膨らみ、斜めバングのパラメータのうちいずれか1つを変動させた場合の形状であるが、組み合わせることで、種々の形状とすることができる。
【0047】
前髪作成部44は、前髪の頭皮エリア内の各毛根を、変形パラメータを用いて成長させて前髪を作成する(ステップS42)。図12から図16は、それぞれ毛髪の成長を説明するための模式図である。図12及び図13は、頭髪の成長を模式的に示す図であり、図14から図16は、毛髪の成長を極座標のベクトルV(r,φ,θ)で示すものである。前髪作成部44は、前髪の頭皮エリアである対象エリアの毛根の位置を決定する。対象エリアに対する毛根の配置は、予め設定した間隔としても、毛束の数に基づいて調整してもよい。前髪作成部44は、図12に示すように、頭部180の毛根の位置に頭皮に対して直交するベクトル182で頭髪を成長させる。成長とは、毛根の位置(座標)からベクトルVで示す座標への軌跡を毛髪とすることである。前髪作成部44は、頭皮から一定距離成長させた後は、図13に示すように、頭皮に沿った曲面192上のベクトル184に沿って成長させて毛髪190を作成する。つまり、極座標の径方向の成分であるr成分は、図14に示すように、頭皮位置となる点線から単調減少させて一定距離で0とする。これにより、頭皮から一定距離離れた曲面192上で、成長する毛髪とすることができる。また、まっすぐに広がる前髪の場合、φ成分θ成分は、図15に示すように頂角の位置から放射状に成長するベクトルとして設定される。これに対して、斜めバングが設定されている場合、変形パラメータが調整され、図16に示すように成長する向きが徐々に変化するベクトルとして設定される。前髪作成部44は、変形パラメータに基づいて、各毛髪のベクトルを算出して成長させることで前髪モデルを作成する。
【0048】
図17から図19は、それぞれ前髪モデルの一例を示す模式図である。上記の処理を実行することで、実際の人物の頭部の画像に基づいて、図17から図19に示す前髪モデル200,202,204を作成することができる。図17に示す前髪モデル202は、斜めバングを斜め成分なし、中央の膨らみを中央がやや膨らむ、はね方向をストレート、シースルーを図8に示す検出結果で作成した前髪である。図18に示す前髪モデル202は、斜めバングをやや左側に流す、中央の膨らみを中央はややしぼみ気味、はね方向を毛先が右にはねる、シースルーを図9に示す検出結果で作成した前髪である。図19に示す前髪モデル204は、斜めバングを左側に流す、中央の膨らみを中央がやや膨らみ、はね方向を毛先がやや右にはねる、シースルーを図10に示す検出結果で作成した前髪である。図17から図20に示すように画像に基づいて、検出した対象エリアと、パラメータとを用いて前髪を作成することで、種々の形状の前髪モデルを作成することができる。
【0049】
以上のように、頭部モデル作成システム10は、頭皮エリアのうち、髪パーツのエリアを分類するセグメンテーションで分類された前髪エリアをアウトラインで整形し、このアウトラインと重なる頭皮エリアを対象エリアとし、前髪を形成するための毛根を配置するエリアとする。さらに、頭部モデル作成システム10は、前髪エリアの形状の解析から、前髪スタイルを表現する各種パラメータを算出し、算出した各種パラメータを組み込んだベクトル(髪成長関数)によって、前髪の毛根エリアから毛先に向かって前髪を成長させて前髪モデルを作成する。
【0050】
上述したようにすることで、髪を適切に表現することができるが、個人により、髪の生え際や顔等が異なるため、頭部モデルを表現した際に額が広い等の不自然さが生じる可能性がある。そのため、頭皮エリアを下記のように特定することにより、頭部モデル表現した際の不自然さを抑制可能となる。以下、頭皮エリアを特定する方法について、図20及び図21を用いて、説明する。
【0051】
図20は、頭皮エリアを特定する方法の一例を示すフローチャートである。図21は、頭皮エリアを特定する処理を説明するための模式図である。なお、図21は、頭部形状作成部40が抽出した頭部の形状、つまり画像から頭部の形状を抽出して髪を取り除いた形状である。演算部28は、頭部形状作成部40で、図20に示す各処理を実行し、頭皮エリアを特定する。演算部28は、頭部形状作成部40が特定した頭皮エリアの情報を前髪作成部44に出力する。
【0052】
頭部形状作成部40は、頭部に含まれるランドマークからの所定の位置に基づいて、頭皮エリア117を特定する。ここでのランドマークは、顔300のランドマークをいい、例えば、目、鼻、眉毛、耳、口など顔300の部位の位置を指す。
【0053】
頭部形状作成部40は、ランドマークを取得する(ステップS52)。頭部形状作成部40は、例えばdlibと呼ばれるオープンソースの画像認識のソフトウェアを用いて、顔300のランドマークを取得する。ランドマークの抽出点数としては特に限定されないが、例えば70点を抽出する。頭部形状作成部40は、顔300のランドマークの中から所定の部位のランドマークを抽出する。本実施形態の頭部形状作成部40は、鼻根のランドマーク312と、鼻柱基部のランドマーク314と、眼球第1端のランドマーク316と、眼球第2端のランドマーク318と、眼球上端のランドマーク320との5個のランドマークを抽出する。
【0054】
鼻根のランドマーク312は、左右の目頭を結んだ直線と鼻とが交差する位置である。頭部形状作成部40は、鼻根のランドマーク312の位置を、左右の目頭を結んだ直線の中点としてもよいし、左右の目頭を結んだ直線上における輝度値が最大の点としてもよいし、周知技術のエッジ抽出により抽出された鼻のエッジのうち左右の目頭を結んだ直線上にある2点間の中点としてもよいし、鼻柱基部のランドマーク314から左右の目頭を結んだ直線に向かって垂線を延長した位置としてもよい。鼻柱基部のランドマーク314は、左右の鼻の穴を隔てている壁(鼻柱)の付け根の位置である。頭部形状作成部40は、鼻柱基部のランドマーク314の位置を、左右の鼻の穴の下端を結んだ直線の中点としてもよいし、左右の鼻の穴の下端を結んだ直線上における輝度値が最小の点としてもよいし、周知技術のエッジ抽出により抽出された鼻のエッジの下端(鼻柱に相当する位置)としてもよい。眼球第1端のランドマーク316は、眼球の目じり側の端部である。眼球第2端のランドマーク318は、眼球の目頭側の端部である。眼球上端のランドマーク320は、眼球の上側(瞼側)の端部である。眼球第1端のランドマーク316と、眼球第2端のランドマーク318および眼球上端のランドマーク320とは、右目の眼球の端であってよいが、本実施形態では、左目の眼球の端を用いて説明する。なお、頭部形状作成部40は、5つ以上のランドマークを取得してもよい。また、頭部形状作成部40は、他のランドマークを取得してもよい。頭部形状作成部40は、例えば、眉上端のランドマーク322を取得してもよい。なお、頭部形状作成部40は、他の公知技術により、顔300のランドマークを取得してもよい。
【0055】
頭部形状作成部40は、正中線を算出する(ステップS54)。正中線330は、鼻根のランドマーク312と鼻柱基部のランドマーク314とを通る直線である。正中線330は、顔300を左右に分ける線であるともいえる。
【0056】
頭部形状作成部40は、第1直線を算出する(ステップS56)。第1直線340は、正中線330と直交し、鼻柱基部のランドマーク314を通る直線である。
【0057】
頭部形状作成部40は、眼球点を算出する(ステップS58)。頭部形状作成部40は、眼球第1端のランドマーク316と眼球第2端のランドマーク318との距離dを求める。言い換えれば、距離dは、眼球左右端の距離である。そして、頭部形状作成部40は、眼球上端のランドマーク320から正中線330に平行に距離dの所定の倍数だけ上部に位置した点を眼球点Mとして算出する。ここで、所定の倍数は、任意に設定してよいが、例えば0.4であることが好ましい。すなわち、頭部形状作成部40は、眼球上端のランドマーク320から正中線330に平行に距離dの0.4倍、つまり、0.4dだけ上部に位置した点を眼球点Mとして算出する。なお、頭部形状作成部40は、眼球上端のランドマーク320を取得できない場合には、眼球第1端のランドマーク316と眼球第2端のランドマーク318との中点から距離dのx倍の位置を眼球点Mとして算出してもよい。すなわち、頭部形状作成部40は、眼球上端のランドマーク320から正中線330に平行にxdだけ上部に位置した点を眼球点Mとして算出する、この場合、xを別途設定することが好ましい。なお、頭部形状作成部40は、任意の方法で眼球点Mを算出してよい。例えば、頭部形状作成部40は、眉のランドマークを取得できる場合には、眉頂点のランドマーク322と、眼球上端のランドマーク320との中点を眼球点Mとしてもよい。つまり、眼球を基準とした比率計算により眼球点を求めることが好ましい。
【0058】
頭部形状作成部40は、交点を算出する(ステップS60)。頭部形状作成部40は、正中線330と直交し、眼球点Mを通る第2直線342を算出する。そして、正中線330と第2直線342との交点Cを算出する。
【0059】
頭部形状作成部40は、外分点を算出する(ステップS62)。頭部形状作成部40は、鼻柱基部のランドマーク314と交点Cとの距離を所定の比率で外分する点を外分点Dとして算出する。所定の比率は、任意であってよいが、2:1であることが好ましい。頭部形状作成部40は、例えば、鼻柱基部のランドマーク314と交点Cとを2:1で外分する点を外分点Dとして算出する。つまり、頭部形状作成部40は、鼻柱基部のランドマーク314及び交点Cの距離Bと、交点C及び外分点Dの距離Aとは、等しい距離となるように外分点Dを算出する。なお、外分点Dは、個人の顔や統計データ等により、2:1の比率に限定されずに算出されてもよい。また、頭部形状作成部40は、外分点Dを算出したら第3直線344を算出することが好ましい。第3直線344は、正中線330に直交し、外分点Dを通る直線である。
【0060】
頭部形状作成部40は、頭皮エリアを特定する(ステップS64)。頭部形状作成部40は、頭部の形状に予め設定されている頭皮の位置を暫定的な頭皮エリアとし、その境界線を暫定生え際ライン350とする。
【0061】
頭部形状作成部40は、外分点Dと交わる位置まで、暫定生え際ライン350を頭部の形状に沿って移動させ、最終生え際ライン352を得ることで、頭皮エリア117を特定する。つまり、暫定生え際ライン350を境界線に含む暫定的な頭皮エリアは、外分点Dおよび最終生え際ライン352を境界線に含む頭皮エリア117として特定される。暫定生え際ライン350と正中線330との交点を頂点Eとすると、頭部形状作成部40は、頂点Eを外分点Dと接する位置まで、暫定生え際ライン350を頭部の形状に沿って移動させ、最終生え際ライン352を得ることで、頭皮エリア117を特定する。言い換えれば、頭部形状作成部40は、暫定生え際ライン350をその頂点Eを第3直線344に接する位置まで頭部の形状に沿って移動させるといえる。頭部形状作成部40は、特定した頭皮エリア117の情報を前髪作成部44に出力する。
【0062】
以上のように、頭部モデル作成システム10は、頭部に含まれる顔のランドマークを取得し、直線や点を算出する処理を行い、頭皮エリアを特定する。頭部モデル作成システム10は、最終生え際ラインに基づいて、頭皮エリアを特定する。
【0063】
頭部モデル作成システム10は、画像から前髪エリアと、前髪の毛髪を成長させる基点のエリアを設定し、前髪エリアの情報と対象エリアに基づいて変形パラメータを算出し、対象エリアの毛根を変形パラメータに基づいて成長させることで、画像を入力した後、自動の処理で前髪モデルを作成することができる。また、画像に基づいた解析でパラメータを設定し、毛髪を成長させることで、画像の前髪の形状に基づいたモデルを作成することができる。つまり、種々のパターンを予め用意せずに、種々のパターンの前髪をモデル化することができる。
【0064】
また、対象エリアは、推定した前髪の分け目ラインから鼻筋への延長線が、前髪エリアの境界線と交差する点の頭上側を頂点とする所定のエリアとする、つまり、上記実施形態のアウトラインの設定方法を用いることで、対象エリアを簡単に設定することができる。
【0065】
パラメータは、前髪エリアの境界線に基づいて算出された前髪の形状変化を示すパラメータ、例えば、前髪のハネ方向、ハネ位置、中央の膨らみ、斜めバングの少なくとも1つと、エリアを含む所定の直線上の信号値に基づいて算出された前髪の量を示すパラメータ、つまり明暗のパラメータとを含むことが好ましい。これにより、前髪モデルをより画像に近い形状とすることができる。
【0066】
また、生え際ラインに基づいて、頭皮エリアを特定することによって、個人による顔や額の広さなどの違いによって発生するモデルの不自然さを抑制することができる。
【0067】
以下、図22から図26を用いて、頭皮エリアを特定する一例を説明する。図22から図26は、それぞれ頭皮エリアを特定する処理の一例を説明するための説明図である。図22から図25の処理は、頭部形状作成部40が、画像から頭部の第1のモデルを作成し、画像からパラメータを算出し、そのパラメータを用いて頭部の第2のモデルを作成する。また、頭部形状形成部40は、第1のモデルと第2のモデルとを重ねて位置を合わせ、第1のモデルにおいて毛髪の領域の境界を算出し、前記境界の各点と前記第1のモデルの中心とを通る複数の直線が前記第2のモデルを通過する複数の点を結んだ曲線と前記第2のモデルとがなすエリアを前記頭皮エリアとして特定する。合成部48は、第1のモデルにおける毛髪の領域に前記頭皮エリアを合成する。
【0068】
頭部形状作成部40は、対象の人物の3Dモデル(第1のモデル)を作成する。具体的には、図22に示すようにカメラ12が撮影した画像に含まれる人物402の3Dモデル400を作成する。頭部形状作成部40は、3Dスキャン、もしくはフォトグラメトリの手法を用いて対象となる人物の3Dモデルを作成する。なお、対象の人物402の3Dモデルは、人物の見た目の詳細を取得できる手法であればよい。頭部形状形成部40は、抽出した3Dモデルの髪を構成している部分である毛髪の領域をセマンティックセグメンテーションなどの手法により他の部分と分離する。
【0069】
頭部形状作成部40は、画像に含まれる対象の人物402の顔部分について、パラメトリックな手法で人物402の顔のパラメータを算出し、パラメータを用いてモデル(第2のモデル)、例えば、図23に示す顔モデル412を作成する。顔モデル(頭部モデル)412は、人物402の頭髪を除いた頭部のモデルである。頭部形状作成部40は、顔モデル412を作成することで、髪に隠れた頭皮面の3D形状を取得することができる。頭部形状作成部40は、例えば、カメラ12が撮影した画像に対してFLAME(Faces Learned with an Articulated Model and Expressions)モデルをフィッティングすることによりモデルを生成する方法を用いる。フィッティングとは、あるモデルを変形して所望のモデルに変形することである。頭部形状作成部40は、例えば、画像から取得したランドマークに合わせて顔モデル412を変形する。頭部形状作成部40は、3Dモデル(第1のモデル)の作成を3Dスキャンで行う場合、3Dスキャンと同時に同じポーズで静止画像を取得し、静止画像に基づいてフィッティングを行い、顔モデル412(第2のモデル)を作成する。これにより、第1のモデルと第2のモデルとが同じ画像から生成されるため、後述の位置を合わせる処理においてフィッティングの精度を向上させることができる。
【0070】
頭部形状作成部40は、3Dモデル402と顔モデル412を処理して、頭皮エリアを特定する。頭部形状作成部40は、3Dモデル402に顔モデル412を重ねて位置を合わせ、髪部分の差分を抽出することで、頭皮エリアを特定する。頭部形状作成部40は、例えば、3Dモデル402の顔部分と重なるように顔モデル412の位置を調整する。頭部形状形成部40は、顔モデル412の顔うち、目、口等の顔のランドマークを基準として、3Dモデル402に対する位置を合わせる。このとき、頭部形状作成部40は、第1のモデルまたは第2のモデルを平行移動、回転、拡大または縮小の処理を組み合わせて位置を合わせてもよい。次に、頭部形状作成部40は、3Dモデル402においての頭皮と髪の境界線を接線方向に拡張し、顔モデル412と交わる点を、顔モデル412における髪との境界線とする。なお、本実施形態では、頭皮と髪の境界線を接線方向に拡張したが、境界線を3Dモデルの頭部の中心に向けて延長させてもよい。頭部形状作成部40は、3Dモデル402の境界線を拡張することで決定した顔モデル412における髪との境界線で囲まれた領域を頭皮エリアとする。図24に示す頭皮モデル414は、顔モデル412を3Dモデル402の髪の部分の境界線に合わせて切り出したモデルである。頭皮モデル414は、すなわち頭皮エリア117である。頭部形状作成部40は、得られた頭皮モデル414と、3Dモデル402のうちの髪の部分とを合わせることで、閉じた3Dモデルとしての髪の立体領域を得ることができる。
【0071】
合成部48は、頭部形状作成部40が作成した髪の立体領域に対して、図25に示すように、頭皮モデル414に髪のモデル430を生成する。合成部48は、髪の毛の一本一本、ないしは数本分をまとめた毛束単位で髪のモデル430を生成してもよい。なお、それぞれのポリゴンとしての表現の形態は特に限定されない。合成部48は、それぞれ頭皮モデル414の表面である頭皮面を出発点とし、髪の立体領域を充填するように髪モデルを成長させる。頭皮面に対し髪モデルを成長させる起点を設定する方法としては、例えば、ランダムかつ一様な点をそれぞれの髪もしくは毛束の開始点とする方法がある。また、起点から髪を成長させる方法としては、立体領域の外周部を終点として起点から成長させる方法がある。合成部48は、3Dモデル402の情報で、人物の髪の流れを取得できる場合は、その流れも考慮した髪モデルの生成を行ってもよい。髪の流れの取得方法としては、各視点から見た画像において、髪に対してガボールフィルタを適用し、局所的な方向を取得する方法が知られている。各視点の画像より取得した方向情報を統合し、髪表面での三次元的方向を取得することが可能となる。
【0072】
合成部48は、生成した髪モデル430を、3Dモデル402の髪部分に置き換える。つまり、合成部48は、3Dモデル402の生成時に他の部分から分離された毛髪の領域を3Dモデル402から取り除き、取り除いた部分に髪モデル430が生成されている頭皮モデル414を合成する。これにより、頭部モデル作成装置20は、3Dモデルと、パラメトリックな手法で取得した頭部のパラメータに基づいて生成した頭部モデルの情報とに基づいて、頭皮エリアを特定し、特定した頭皮エリアに基づいて毛髪を生成することで、画像に含まれる人物の3Dモデルに対して、より詳細な髪モデルを持つ3Dモデルを生成することができる。
【0073】
図26は、頭皮エリアを特定する処理の一例を説明するためのフローチャートである。図26を用いて、演算部28で実行する処理を説明する。演算部28は、画像入力処理部22を介して、画像データを取得する(ステップS102)。画像データは上述したように、人物の頭部を含む画像である。演算部28は、頭部形状作成部40で画像データから対象の人物を抽出し、対象の人物の3Dモデルを作成する(ステップS104)。3Dモデルは、上述したように、種々の方法で作成することができる。頭部形状作成部40は、画像データとは異なる角度の画像データも取得して3Dモデルを作成してもよい。
【0074】
演算部22は、頭部形状作成部40で人物の顔のパラメータに基づいて顔モデルを作成する(ステップS106)。頭部形状演算部40は、パラメトリックな手法で、対象の人物の顔のパラメータを抽出し、抽出したパラメータに基づいて顔モデルを作成する。パラメータとしては、目、鼻、口の位置、大きさのパラメータ、頭部の外形のパラメータ、紙の外縁のパラメータ等である。
【0075】
演算部22は、頭部形状作成部40で3Dモデルと顔モデルに基づいて、頭皮モデルを特定する(ステップS108)。頭部形状作成部40は、上述したように3Dモデルの頭部に顔モデルを重ね、差分の情報、顔モデルの位置情報等を用いて、対象の人物の髪が生えている領域を示す頭皮モデルを作成する。演算部28は、ステップS102からステップS108の処理が、頭部形状を抽出し、頭皮エリアを特定する処理となる。
【0076】
演算部22は、合成部48で頭皮モデルに対して髪を作成する(ステップS110)。合成部48は、頭皮モデルに毛髪の基点をプロットし、基点から毛髪を成長させて、頭皮モデルに髪を作成する。演算部28は、合成部48で3Dモデルに髪を含む頭皮モデルを合成する(ステップS112)。合成部48は、髪を含む頭皮モデルを、3Dモデルの髪部分に置換して、3Dモデルに髪を含む頭皮モデルを合成する。
【0077】
このようにして、演算部28は、合成部48で3Dモデル402における毛髪の領域に頭皮モデル414を合成したモデルを作成する。合成部48は、作成したモデルに対し、前髪作成部44が作成した前髪モデルや横髪作成部46が作成した横髪モデルを合成(ステップS22)してもよい。
【0078】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これら実施形態の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能であり、各実施形態の構成を組み合わせることも可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0079】
10 頭部モデル作成システム
12 カメラ
14 画像記憶装置
20 頭部モデル作成装置
22 画像入力処理部
24 入力部
26 出力部
28 演算部
30 記憶部
40 頭部形状作成部
42 髪パーツ分類部
44 前髪作成部
46 横髪作成部
48 合成部
50 処理プログラム
52 条件テーブル
102、102a 画像
104 頭部
110 頭髪領域
112 前髪エリア
114 第1横髪エリア
116 第2横髪エリア
118 アウトライン
300 顔
312 鼻根のランドマーク
314 鼻柱基部のランドマーク
316 眼球第1端のランドマーク
318 眼球第2端のランドマーク
320 眼球上端のランドマーク
330 正中線
340 第1直線
342 第2直線
344 第3直線
350 暫定生え際ライン
352 最終生え際ライン
A,B,d 距離
C 交点
D 外分点
E 頂点
M 眼球点
図1
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図5
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