(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010697
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】ガスタービン及びラジアルタービンノズルの組付方法
(51)【国際特許分類】
F01D 9/02 20060101AFI20240118BHJP
F01D 9/04 20060101ALI20240118BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20240118BHJP
F01D 25/28 20060101ALI20240118BHJP
F02C 7/28 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
F01D9/02 104
F01D9/04
F01D25/00 X
F01D25/28 E
F02C7/28 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112124
(22)【出願日】2022-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】太間 康二
【テーマコード(参考)】
3G202
【Fターム(参考)】
3G202GA01
3G202GA11
3G202GA13
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ガスタービンに良好に組み付けることができるラジアルタービンノズルを提供する。
【解決手段】ガスタービンと、ラジアルタービンノズル10の組付方法とでは、ノズル本体60の外周部分に第1リング62及び第2リング64が組み付けられた状態でラジアルタービンノズル10が組み立てられる。ラジアルタービンノズル10は、ノズル本体60の内周部分が第1ホルダ34に着座可能となり、且つ、複数のセグメント80がラジアルタービンの径方向に移動可能となるように、第1ホルダ34における該径方向の外側に配される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジアルタービンと、前記ラジアルタービンを囲むラジアルタービンノズルと、前記ラジアルタービンノズルを保持する保持部とを備えるガスタービンであって、
前記ラジアルタービンノズルは、
前記ラジアルタービンの周方向に所定の間隔で配された複数のブレードと、前記ラジアルタービンの軸方向における前記複数のブレードの一端部に連結された第1エンドウォールと、前記軸方向における前記複数のブレードの他端部に連結された第2エンドウォールとを有する円環状のノズル本体と、
前記第1エンドウォールを囲む第1リングと、
前記第2エンドウォールを囲む第2リングと、
を備え、
前記ノズル本体は、前記周方向に沿って連結された複数のセグメントを有し、
前記第1リングは、前記ラジアルタービンの径方向の外側に凹み且つ前記周方向に延在する第1外側溝を有し、
前記第2リングは、前記径方向の外側に凹み且つ前記周方向に延在する第2外側溝を有し、
前記複数のセグメントの各々は、
前記第1エンドウォールを前記径方向に対して傾斜する複数の第1分割面で分割することにより形成された第1分割円環部と、
前記第2エンドウォールを前記径方向に対して傾斜する複数の第2分割面で分割することにより形成された第2分割円環部と、
を有し、
前記第1分割円環部の外周部分は、前記径方向の外側に突出する第1フランジ部を有し、前記第1フランジ部が前記第1外側溝に挿入され、
前記第2分割円環部の外周部分は、前記径方向の外側に突出する第2フランジ部を有し、前記第2フランジ部が前記第2外側溝に挿入され、
前記ノズル本体の内周部分が前記保持部に着座可能であり、
前記複数のセグメントは、前記径方向に移動可能である、ガスタービン。
【請求項2】
請求項1記載のガスタービンにおいて、
前記複数の第1分割面の各々には、第1挿入溝が形成され、
前記複数の第2分割面の各々には、第2挿入溝が形成され、
前記第1挿入溝には、第1シール部材が挿入され、
前記第2挿入溝には、第2シール部材が挿入されている、ガスタービン。
【請求項3】
ラジアルタービンノズルの組付方法であって、
前記ラジアルタービンノズルは、
ラジアルタービンの周方向に所定の間隔で配された複数のブレードと、前記ラジアルタービンの軸方向における前記複数のブレードの一端部に連結された第1エンドウォールと、前記軸方向における前記複数のブレードの他端部に連結された第2エンドウォールとを有する円環状のノズル本体と、
前記第1エンドウォールを囲む第1リングと、
前記第2エンドウォールを囲む第2リングと、
を備え、
前記ノズル本体は、前記周方向に沿って連結された複数のセグメントを有し、
前記第1リングは、前記ラジアルタービンの径方向の外側に凹み且つ前記周方向に延在する第1外側溝を有し、
前記第2リングは、前記径方向の外側に凹み且つ前記周方向に延在する第2外側溝を有し、
前記複数のセグメントの各々は、
前記第1エンドウォールを前記径方向に対して傾斜する複数の第1分割面で分割することにより形成された第1分割円環部と、
前記第2エンドウォールを前記径方向に対して傾斜する複数の第2分割面で分割することにより形成された第2分割円環部と、
を有し、
前記第1分割円環部の外周部分は、前記径方向の外側に突出する第1フランジ部を有し、前記第1フランジ部が前記第1外側溝に挿入され、
前記第2分割円環部の外周部分は、前記径方向の外側に突出する第2フランジ部を有し、前記第2フランジ部が前記第2外側溝に挿入され、
前記組付方法は、
前記ノズル本体の外周部分に前記第1リング及び前記第2リングが組み付けられた状態で前記ラジアルタービンノズルを組み立てるノズル組立工程と、
前記ノズル本体の内周部分がガスタービンの保持部に対して着座可能となり、且つ、前記複数のセグメントが前記径方向に移動可能となるように、前記保持部の前記径方向の外側に前記ラジアルタービンノズルを配するノズル配置工程と、
を有する、ラジアルタービンノズルの組付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービン及びラジアルタービンノズルの組付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ラジアルタービンと、ラジアルタービンを囲むラジアルタービンノズル(入口ノズル)とを備えるガスタービンが開示されている。ラジアルタービンノズルは、円環状のノズル本体を備える。ノズル本体は、複数のブレードと、第1エンドウォール(リングプレート)と、第2エンドウォール(リングプレート)とを備える。複数のブレードは、ラジアルタービンの周方向に所定の間隔で配されている。第1エンドウォールは、ラジアルタービンの軸方向における複数のブレードの一端部に連結されている。第2エンドウォールは、該軸方向における複数のブレードの他端部に連結されている。
【0003】
ノズル本体は、複数のセグメント(分割ピース)を有する。複数のセグメントは、該周方向に連結されている。複数のセグメントの各々は、第1分割円環部と、第2分割円環部とを有する。第1分割円環部は、第1エンドウォールをラジアルタービンの径方向に対して傾斜する複数の第1分割面で分割することにより形成される。第2分割円環部は、第2エンドウォールを該径方向に対して傾斜する複数の第2分割面で分割することにより形成される。
【0004】
ラジアルタービンを収容するタービンハウジングには、段差部を有するバックプレートが設けられている。第1エンドウォールは、バックプレートに配されている。第2エンドウォールは、タービンハウジングに形成された環状溝に配されている。第1エンドウォールは、リングバネによって径方向の外側に押圧されることで、バックプレートの段差部に当接する。これにより、ラジアルタービンノズルは、該径方向に位置決め固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、リングバネから第1エンドウォールへの押圧力でラジアルタービンノズルが位置決め固定されるので、ラジアルタービンノズルをガスタービンに良好に組み付けることが困難である。また、ガスタービンの使用時に、ラジアルタービンノズルを通過する燃焼ガスによって、ケーシングであるバックプレート及びタービンハウジングが高温となる。これにより、バックプレート及びタービンハウジングの寸法が熱膨張によって変化し、複数のセグメント間のクリアランスが大きくなる。この結果、ガスタービンの性能が低下するおそれがある。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、ラジアルタービンと、前記ラジアルタービンを囲むラジアルタービンノズルと、前記ラジアルタービンノズルを保持する保持部とを備えるガスタービンであって、前記ラジアルタービンノズルは、前記ラジアルタービンの周方向に所定の間隔で配された複数のブレードと、前記ラジアルタービンの軸方向における前記複数のブレードの一端部に連結された第1エンドウォールと、前記軸方向における前記複数のブレードの他端部に連結された第2エンドウォールとを有する円環状のノズル本体と、前記第1エンドウォールを囲む第1リングと、前記第2エンドウォールを囲む第2リングと、を備え、前記ノズル本体は、前記周方向に沿って連結された複数のセグメントを有し、前記第1リングは、前記ラジアルタービンの径方向の外側に凹み且つ前記周方向に延在する第1外側溝を有し、前記第2リングは、前記径方向の外側に凹み且つ前記周方向に延在する第2外側溝を有し、前記複数のセグメントの各々は、前記第1エンドウォールを前記径方向に対して傾斜する複数の第1分割面で分割することにより形成された第1分割円環部と、前記第2エンドウォールを前記径方向に対して傾斜する複数の第2分割面で分割することにより形成された第2分割円環部と、を有し、前記第1分割円環部の外周部分は、前記径方向の外側に突出する第1フランジ部を有し、前記第1フランジ部が前記第1外側溝に挿入され、前記第2分割円環部の外周部分は、前記径方向の外側に突出する第2フランジ部を有し、前記第2フランジ部が前記第2外側溝に挿入され、前記ノズル本体の内周部分が前記保持部に着座可能であり、前記複数のセグメントは、前記径方向に移動可能である。
【0009】
本発明の第2の態様は、ラジアルタービンノズルの組付方法であって、前記ラジアルタービンノズルは、ラジアルタービンの周方向に所定の間隔で配された複数のブレードと、前記ラジアルタービンの軸方向における前記複数のブレードの一端部に連結された第1エンドウォールと、前記軸方向における前記複数のブレードの他端部に連結された第2エンドウォールとを有する円環状のノズル本体と、前記第1エンドウォールを囲む第1リングと、前記第2エンドウォールを囲む第2リングと、を備え、前記ノズル本体は、前記周方向に沿って連結された複数のセグメントを有し、前記第1リングは、前記ラジアルタービンの径方向の外側に凹み且つ前記周方向に延在する第1外側溝を有し、前記第2リングは、前記径方向の外側に凹み且つ前記周方向に延在する第2外側溝を有し、前記複数のセグメントの各々は、前記第1エンドウォールを前記径方向に対して傾斜する複数の第1分割面で分割することにより形成された第1分割円環部と、前記第2エンドウォールを前記径方向に対して傾斜する複数の第2分割面で分割することにより形成された第2分割円環部と、を有し、前記第1分割円環部の外周部分は、前記径方向の外側に突出する第1フランジ部を有し、前記第1フランジ部が前記第1外側溝に挿入され、前記第2分割円環部の外周部分は、前記径方向の外側に突出する第2フランジ部を有し、前記第2フランジ部が前記第2外側溝に挿入され、前記組付方法は、前記ノズル本体の外周部分に前記第1リング及び前記第2リングが組み付けられた状態で前記ラジアルタービンノズルを組み立てるノズル組立工程と、前記ノズル本体の内周部分がガスタービンの保持部に対して着座可能となり、且つ、前記複数のセグメントが前記径方向に移動可能となるように、前記保持部の前記径方向の外側に前記ラジアルタービンノズルを配するノズル配置工程と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ガスタービンの運転時に、ラジアルタービンノズルを通過する燃焼ガスの圧力によって、ノズル本体の内周部分が保持部に着座する。ガスタービンの運転時において、保持部は、ラジアルタービンノズルよりも低温である。そのため、保持部は、熱膨張による寸法の変化が少ない。これにより、ガスタービンに組み付けられたラジアルタービンノズルを精度良く位置決め固定することができる。また、第1分割面及び第2分割面がラジアルタービンの径方向に対して傾斜している。これにより、燃焼ガスがラジアルタービンノズルを通過するときに、複数のセグメントをラジアルタービンの径方向に容易に移動させることが可能となる。さらに、保持部とラジアルタービンノズルとの間にクリアランスがあることで、ラジアルタービンノズルをガスタービンに容易に組み付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】
図2は、ラジアルタービンノズルの斜視図である。
【
図3】
図3は、ラジアルタービンノズルを破断して図示した一部斜視図である。
【
図4】
図4は、ラジアルタービンノズルを破断して図示した一部斜視図である。
【
図5】
図5は、ラジアルタービンノズルの断面図である。
【
図6】
図6は、ラジアルタービンノズルの断面図である。
【
図7】
図7は、ラジアルタービンノズルの断面図である。
【
図8】
図8は、ラジアルタービンノズルの一部側面図である。
【
図9】
図9は、ラジアルタービンノズルの組立方法と、ラジアルタービンノズルのガスタービンへの組付方法とを示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、ラジアルタービンノズルの組立方法を図示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、ラジアルタービンノズル10を備えるガスタービン12の断面図である。
【0013】
ガスタービン12は、ハウジング14と、シャフト16と、ラジアルタービン18と、ラジアルタービンノズル10と、シュラウドケース20と、コンプレッサホイール22と、ディフューザ24と、燃焼器26と、ガス排出部28とを備える。ガスタービン12の上記各部は、耐熱性の金属材から構成される。
【0014】
ハウジング14は、円環状の第1ハウジング30と、円環状の第2ハウジング32とを有する。第1ハウジング30と第2ハウジング32とは、ガスタービン12の軸方向(
図1の左右方向)に沿って連結されている。ガスタービン12の軸方向は、ラジアルタービン18の軸方向である。以下、ラジアルタービンノズル10の軸方向については、単に「軸方向」ともいう。軸方向に沿った第1ハウジング30の一端部は、回転電機のハウジング(不図示)に連結されている。軸方向に沿った第1ハウジング30の他端部は、第2ハウジング32に連結されている。
【0015】
シュラウドケース20は、ハウジング14の内部に配置された中空体である。シュラウドケース20は、第1ハウジング30の内周面に固定されている。
【0016】
シャフト16は、ハウジング14内で、ラジアルタービン18と同軸に配置されている。シャフト16は、シュラウドケース20内を貫通するようにハウジング14内に配置されている。軸方向に沿ったシャフト16の一端部は、回転電機の回転シャフト(不図示)に連結されている。軸方向に沿ったシャフト16の他端部は、ラジアルタービン18に連結されている。
【0017】
コンプレッサホイール22は、シュラウドケース20の内側で、シャフト16に取り付けられている。なお、
図1では、コンプレッサホイール22とシャフト16との連結部分の図示を省略している。回転電機の回転シャフトが回転したときに、シャフト16と、コンプレッサホイール22と、ラジアルタービン18とは、一体に回転可能である。コンプレッサホイール22とシュラウドケース20との間に形成される空間には、一点鎖線の矢印で示すように、外部から取り込んだ空気が流通する。コンプレッサホイール22が回転することにより、外部から取り込んだ空気が圧縮され、圧縮空気となる。
【0018】
第2ハウジング32の内部には、シャフト16の他端部と、ラジアルタービン18と、ラジアルタービンノズル10と、シュラウドケース20の一部と、コンプレッサホイール22の一部と、ディフューザ24と、燃焼器26と、ガス排出部28とが配置されている。第2ハウジング32の内部には、第1ホルダ34(保持部)と、第2ホルダ36とが配置されている。
【0019】
ディフューザ24は、中空体である。ディフューザ24は、シュラウドケース20と共に第1ハウジング30の内周面に固定されている。ディフューザ24は、シュラウドケース20の一部と、コンプレッサホイール22の一部と、第1ホルダ34と、ラジアルタービン18とを囲むように、第2ハウジング32の内部に配置されている。ディフューザ24は、コンプレッサホイール22で生成された圧縮空気を流通させる。
【0020】
第1ホルダ34は、円環状の中空体である。第1ホルダ34の外周部分は、ディフューザ24に固定されている。第1ホルダ34は、シャフト16に連結されるラジアルタービン18の背面側を囲んでいる。第1ホルダ34の内周部分と、コンプレッサホイール22との間には、円環状のシールリング38が介挿されている。
【0021】
燃焼器26は、円環状の部材である。燃焼器26は、第1ホルダ34と共にディフューザ24に固定されている。燃焼器26は、ラジアルタービンノズル10、ラジアルタービン18及びガス排出部28を囲んでいる。
【0022】
第2ハウジング32の内周面と燃焼器26との間には、環状のガス流通路40が形成されている。ガス流通路40は、一点鎖線の矢印で示すように、ディフューザ24から導入された圧縮空気を燃焼器26に供給する。燃焼器26には、圧縮空気を導入する導入口42が形成されている。第2ハウジング32には、燃料供給ノズル44が固定されている。燃料供給ノズル44は、燃焼器26の導入口42に入り込むように配置されている。燃料供給ノズル44は、燃焼器26に燃料を供給する。
【0023】
燃焼器26には、複数の中継孔46が形成されている。複数の中継孔46は、ガス流通路40と燃焼器26の内部とを連通させる。
【0024】
燃焼器26は、燃料供給ノズル44から供給された燃料と、圧縮空気とを混合して燃焼させることで、高温の燃焼ガスを生成する。燃焼ガスは、一点鎖線の矢印で示すように、燃焼器26に形成された排出口48を介して、ラジアルタービンノズル10に排出される。
【0025】
ラジアルタービンノズル10は、燃焼器26の排出口48と向かい合うように、第2ハウジング32の内部に配置されている。ラジアルタービンノズル10は、ラジアルタービン18を囲む円環状の部材である。ラジアルタービンノズル10と燃焼器26との間には、円環状のシールリング50、52が介装されている。
【0026】
ガス排出部28は、円環状の部材である。軸方向に沿ったガス排出部28の一端部は、ラジアルタービン18の径方向(
図1では上下方向)の外側に湾曲している。以下、ラジアルタービン18の径方向については、単に「径方向」ともいう。ガス排出部28の一端部は、軸方向に沿って、第1ホルダ34と向かい合っている。ガス排出部28の一端部を含むガス排出部28の一部は、ラジアルタービン18の一部を囲んでいる。ガス排出部28のうち、ラジアルタービン18の一部を囲む部分は、第2ホルダ36として構成されている。軸方向に沿ったガス排出部28の他端部は、第2ハウジング32に固定されている。ガス排出部28の他端部には、排出口54が形成されている。
【0027】
ラジアルタービンノズル10を介してラジアルタービン18に導入された燃焼ガスは、ラジアルタービン18を回転させる。燃焼ガスは、排気ガスとして、燃焼器26の排出口54から外部に排出される。
【0028】
第1ホルダ34及び第2ホルダ36は、ラジアルタービンノズル10を径方向の内側に保持する。
【0029】
次に、ラジアルタービンノズル10の構成について、
図2~
図8を参照しながら説明する。
【0030】
図2~
図4に示すように、ラジアルタービンノズル10は、ノズル本体60と、第1リング62と、第2リング64と、第1押圧部材66と、第2押圧部材68とを備える。
【0031】
ノズル本体60は、複数のブレード70と、円環状の第1エンドウォール72と、円環状の第2エンドウォール74とを有する。
【0032】
複数のブレード70は、ラジアルタービン18の周方向(ラジアルタービン18の軸回りの方向)に所定の間隔で配されている。以下、ラジアルタービン18の周方向については、単に「周方向」ともいう。
図3及び
図8に示すように、複数のブレード70の各々は、翼状に形成されている。複数のブレード70の各々は、径方向及び周方向に対して傾斜している。複数のブレード70の各々は、径方向の内側に向かうにつれて、翼厚が小さくなる。
【0033】
図3~
図7に示すように、第1エンドウォール72は、軸方向における複数のブレード70の一端部に連結されている。第2エンドウォール74は、軸方向における複数のブレード70の他端部に連結されている。第1エンドウォール72及び第2エンドウォール74の各々は、複数のブレード70よりも径方向に突出している。
【0034】
図2及び
図3に示すように、第1リング62は、第1エンドウォール72を囲む円環状の部材である。第2リング64は、第2エンドウォール74を囲む円環状の部材である。
【0035】
図3~
図7に示すように、第1リング62は、第1外側溝76を有する。第1外側溝76は、第1リング62の内周部分に形成されている。第1外側溝76は、第1リング62の内周部分において、径方向の外側に凹んでいる。第1外側溝76は、第1リング62の内周部分において、周方向に円環状に延在している。
【0036】
第2リング64は、第2外側溝78を有する。第2外側溝78は、第2リング64の内周部分に形成されている。第2外側溝78は、第2リング64の内周部分において、径方向の外側に凹んでいる。第2外側溝78は、第2リング64の内周部分において、周方向に円環状に延在している。
【0037】
ノズル本体60は、複数のセグメント80を有する。複数のセグメント80が周方向に沿って連結されることにより、ノズル本体60が構成される。
【0038】
複数のセグメント80の各々は、ブレード70と、第1分割円環部82と、第2分割円環部84とを有する。
【0039】
図3及び
図4に示すように、第1エンドウォール72は、複数の第1分割面86で分割される。複数の第1分割面86の各々は、径方向及び周方向に対して傾斜している。第1分割円環部82は、第1エンドウォール72を複数の第1分割面86で分割することにより形成される。
【0040】
第2エンドウォール74は、複数の第2分割面88で分割される。複数の第2分割面88の各々は、径方向及び周方向に対して傾斜している。第2分割円環部84は、第2エンドウォール74を複数の第2分割面88で分割することにより形成される。
【0041】
各セグメント80において、周方向に沿った一端側の第1分割面86及び第2分割面88は、互いに平行な面である。各セグメント80において、周方向に沿った他端側の第1分割面86及び第2分割面88は、互いに平行な面である。
【0042】
図5~
図7に示すように、第1分割円環部82の外周部分は、軸方向の外側に突出している。第1分割円環部82の外周部分における軸方向の外側部分には、第1フランジ部90が形成されている。第1フランジ部90は、径方向の外側に突出し、周方向に延在する。第1フランジ部90は、第1リング62の第1外側溝76に挿入されている。
図5及び
図6に示すように、ガスタービン12へのラジアルタービンノズル10の組み付け直後において、第1分割円環部82の外周部分における第1フランジ部90に隣接する段差部91は、第1リング62の内周部分に接触している。
【0043】
図5~
図7に示すように、第1分割円環部82の内周部分には、第1突出部92が設けられている。第1突出部92は、第1分割円環部82の内周部分から軸方向の外側に突出し、且つ、周方向に延在している。第1突出部92には、第1内側溝94が形成されている。第1内側溝94は、第1突出部92における径方向の外側部分に形成されている。第1内側溝94は、径方向の内側に凹んでいる。第1内側溝94は、周方向に延在している(
図3及び
図4参照)。
【0044】
第1リング62の内周部分には、第1内周突起96が形成されている。第1内周突起96は、第1リング62の内周部分において、第1外側溝76よりも軸方向の外側に形成されている。第1内周突起96は、第1リング62の内周部分から径方向の内側に突出している。第1内周突起96は、複数のセグメント80の各々の第1フランジ部90よりも、軸方向の外側に離間している。第1内周突起96は、周方向に沿って円環状に延在している(
図3及び
図4参照)。
【0045】
第2分割円環部84の外周部分は、軸方向の外側に突出している。第2分割円環部84の外周部分における軸方向の外側部分には、第2フランジ部98が形成されている。第2フランジ部98は、径方向の外側に突出し、周方向に延在する。第2フランジ部98は、第2外側溝78に挿入されている。
図5及び
図6に示すように、ガスタービン12へのラジアルタービンノズル10の組み付け直後において、第2分割円環部84の外周部分における第2フランジ部98に隣接する段差部99は、第2リング64の内周部分に接触している。
【0046】
図5~
図7に示すように、第2分割円環部84の内周部分には、第2突出部100が設けられている。第2突出部100は、第2分割円環部84の内周部分から軸方向の外側に突出し、且つ、周方向に延在している。第2突出部100には、第2内側溝102が形成されている。第2内側溝102は、第2突出部100における径方向の外側部分に形成されている。第2内側溝102は、径方向の内側に凹んでいる。第2内側溝102は、周方向に延在している。
【0047】
第2リング64の内周部分には、第2内周突起104が形成されている。第2内周突起104は、第2リング64の内周部分において、第2外側溝78よりも軸方向の外側に形成されている。第2内周突起104は、第2リング64の内周部分から径方向の内側に突出している。第2内周突起104は、複数のセグメント80の各々の第2フランジ部98よりも、軸方向の外側に離間している。第2内周突起104は、周方向に沿って延在している。
【0048】
図2~
図4に示すように、第1押圧部材66は、円環状の板ばねである。
図3~
図7に示すように、第1押圧部材66は、第1エンドウォール72と第1リング62との間に配置されている。具体的には、第1押圧部材66の外周部106は、第1内周突起96と、複数のセグメント80の各々における第1分割円環部82の外周部分との間に配置される。第1押圧部材66の内周部108は、第1内側溝94に配置される。
【0049】
第1内周突起96は、第1押圧部材66の外周部106を軸方向の内側に押圧する。すなわち、第1内周突起96は、第1押圧部材66の外周部106をノズル本体60に向かって押圧する。第1押圧部材66の内周部108は、複数のセグメント80の各々の第1分割円環部82を軸方向の内側に押圧する。
【0050】
第2押圧部材68は、第1押圧部材66と同様の円環状の板ばねである。第2押圧部材68は、第2エンドウォール74と第2リング64との間に配置されている。具体的には、第2押圧部材68の外周部110は、第2内周突起104と、複数のセグメント80の各々における第2分割円環部84の外周部分との間に配置される。第2押圧部材68の内周部112は、第2内側溝102に配置される。
【0051】
第2内周突起104は、第2押圧部材68の外周部110を軸方向の内側に押圧する。すなわち、第2内周突起104は、第2押圧部材68の外周部110をノズル本体60に向かって押圧する。第2押圧部材68の内周部112は、複数のセグメント80の各々の第2分割円環部84を軸方向の内側に押圧する。
【0052】
図3及び
図4に示すように、複数のセグメント80のうち、少なくとも1つのセグメント80の第1突出部92には、第1切欠部114が形成されている。第1切欠部114は、第1突出部92を軸方向に貫通している。第1切欠部114は、第1内側溝94に連通している。なお、
図3及び
図4では、複数のセグメント80の各々に第1切欠部114が形成されている場合を図示している。
【0053】
図3、
図4、
図6及び
図7に示すように、第1押圧部材66の内周部108には、第1突起116が設けられている。第1突起116は、第1押圧部材66の内周部108から軸方向の外側に突出している。第1突起116は、第1切欠部114に挿入される。
【0054】
図8に示すように、複数のセグメント80(
図3~
図7参照)のうち、少なくとも1つのセグメント80の第2突出部100には、第2切欠部118が形成されている。第2切欠部118は、第2突出部100を軸方向に貫通している。第2切欠部118は、第2内側溝102(
図5参照)に連通している。なお、
図8では、複数のセグメント80の各々に、第2切欠部118が形成されている場合を図示している。
【0055】
図4、
図6、
図7及び
図8に示すように、第2押圧部材68の内周部112には、第2突起120が設けられている。第2突起120は、第2押圧部材68の内周部112から軸方向の外側に突出している。第2突起120は、第2切欠部118に挿入される。
【0056】
図2~
図4に示すように、第1押圧部材66には、複数の第1孔122が形成されている。複数の第1孔122の各々は、第1押圧部材66を軸方向に貫通している。
【0057】
図8に示すように、第2押圧部材68には、複数の第2孔124が形成されている。複数の第2孔124の各々は、第2押圧部材68を軸方向に貫通している。
【0058】
図2~
図4に示すように、複数のブレード70の各々の内部には、中空部126が形成されている。中空部126は、第1エンドウォール72に開口している。第1押圧部材66の複数の第1孔122は、複数のブレード70の中空部126と向かい合うように、周方向に間隔を置いて第1押圧部材66に形成されている。複数の第1孔122の各々は、複数の第2孔124の各々よりも大きい。
【0059】
図8に示すように、複数の第2孔124は、第2押圧部材68を軸方向から見たときに、複数のブレード70の各々を囲むように、第2押圧部材68に形成されている。
【0060】
図2~
図4に示すように、複数のブレード70の各々には、ブレード70の外側と内側(中空部126)と連通する複数の第1連通孔128が形成されている。また、複数のブレード70の各々の第2分割円環部84には、複数の第2連通孔130が形成されている。複数の第2連通孔130は、中空部126を避けるように、軸方向に形成されている。
【0061】
図3及び
図5~
図7に示すように、複数の第1分割面86(
図3及び
図4参照)の各々には、第1挿入溝132が形成されている。第1挿入溝132は、第1分割面86から周方向に凹む溝である。第1挿入溝132は、第1分割円環部82の外周部から内周部に向かって第1分割面86に沿って延在している。具体的には、第1挿入溝132の径方向の外側(外端)は、開放されている。第1挿入溝132の径方向の内側(内端)は、閉じている。第1挿入溝132には、板状の第1シール部材136が挿入されている。
【0062】
複数の第2分割面88の各々には、第2挿入溝134が形成されている。第2挿入溝134は、第2分割面88から周方向に凹む溝である。第2挿入溝134は、第2分割円環部84の外周部から内周部に向かって第2分割面88に沿って延在している。具体的には、第2挿入溝134の径方向の外側(外端)は、開放されている。第2挿入溝134の径方向の内側(内端)は、閉じている。第2挿入溝134には、板状の第2シール部材138が挿入されている。
【0063】
互いに隣接するセグメント80において、互いに向き合う第1挿入溝132の一方に第1シール部材136の一部が挿入され、互いに向き合う第1挿入溝132の他方に第1シール部材136の他の一部が挿入されている。すなわち、周方向に沿った第1シール部材136の一端部は、一方のセグメント80の第1挿入溝132に挿入されている。周方向に沿った第1シール部材136の他端部は、他方のセグメント80の第1挿入溝132に挿入されている。
【0064】
互いに隣接するセグメント80において、互いに向き合う第2挿入溝134の一方に第2シール部材138の一部が挿入され、互いに向き合う第2挿入溝134の他方に第2シール部材138の他の一部が挿入されている。すなわち、周方向に沿った第2シール部材138の一端部は、一方のセグメント80の第2挿入溝134に挿入されている。周方向に沿った第2シール部材138の他端部は、他方のセグメント80の第2挿入溝134に挿入されている。
【0065】
従って、互いに隣接する2つのセグメント80の間は、第1シール部材136及び第2シール部材138によってシールされている。
【0066】
図3~
図7に示すように、第1リング62の外周部分には、第1外周溝140が形成されている。第1外周溝140は、第1リング62の外周部分において、径方向の内側に凹んでいる。第1外周溝140は、第1リング62の外周部分において、周方向に円環状に延びている。第1外周溝140には、円環状のシールリング50(
図1及び
図5~
図7参照)が挿入される。
【0067】
第2リング64の外周部分には、第2外周溝142が形成されている。第2外周溝142は、第2リング64の外周部分において、径方向の内側に凹んでいる。第2外周溝142は、第2リング64の外周部分において、周方向に円環状に延びている。第2外周溝142には、円環状のシールリング52(
図1及び
図5~
図7参照)が挿入される。
【0068】
ノズル本体60の内周部分は、第1ホルダ34に着座可能である。また、複数のセグメント80は、径方向に移動可能である。
【0069】
具体的には、
図3~
図5に示すように、複数のセグメント80の各々について、第1分割円環部82の内周部分には、嵌合突起144が形成されている。嵌合突起144は、第1分割円環部82の内周部分から径方向の内側に突出している。第1ホルダ34には、複数のスロット146が形成されている。複数のスロット146は、複数のセグメント80の嵌合突起144と向かい合うように、周方向に互いに間隔を置いて形成されている。複数の嵌合突起144は、複数のスロット146にそれぞれ挿入されている。
【0070】
第1ホルダ34は、第1突出部92に対して、軸方向に面接触している。第2ホルダ36の外周部分は、第2突出部100に対して、軸方向に面接触している。
【0071】
図6に示すように、ガスタービン12へのラジアルタービンノズル10の組み付け直後において、複数のセグメント80の各々の第1分割円環部82の内周部分と、第1ホルダ34との間には、クリアランス148が設けられている。第2分割円環部84の内周部分と、第2ホルダ36との間には、クリアランス150が設けられている。
【0072】
以上のように構成されるガスタービン12の動作について説明する。
【0073】
図1に示すように、コンプレッサホイール22は、外部から空気を取り込んで圧縮する。圧縮空気は、ディフューザ24を介して、ガス流通路40に供給される。ガス流通路40は、圧縮空気を燃焼器26に供給する。燃料供給ノズル44は、燃焼器26に燃料を供給する。燃焼器26は、燃料供給ノズル44から供給された燃料と、圧縮空気とを混合して燃焼させることで、燃焼ガスを発生させる。燃焼ガスは、排出口48を介して、ラジアルタービンノズル10に供給される。
【0074】
燃焼ガスは、径方向の内側に向かって、複数のブレード70に衝突する。
図2、
図3及び
図8に示すように、複数のブレード70は、径方向に対して所定の角度で傾斜している。従って、複数のブレード70は、燃焼ガスの流れる方向を、所定の角度に沿った方向に変換する。流れる向きが変換された燃焼ガスは、複数のブレード70の間を通過し、ラジアルタービン18(
図1参照)に噴射される。噴射された燃焼ガスは、ラジアルタービン18の羽根に衝突し、該ラジアルタービン18を回転させる。これにより、ラジアルタービン18、シャフト16及び回転シャフトが一体に回転し、回転電機が発電する。ラジアルタービン18を通過した燃焼ガスは、ガス排出部28の排出口54を介して外部に排出される。
【0075】
図3及び
図4に示すように、外部から取り込まれた空気等の冷却ガスは、複数の第1孔122を介して、複数の中空部126に供給される。これにより、複数の第1分割円環部82と複数のブレード70とを効率よく冷却することができる。中空部126に供給された冷却ガスは、ブレード70に形成された複数の第1連通孔128を通過し、燃焼ガスと共にガス排出部28の排出口54(
図1参照)から外部に排出される。
【0076】
図4及び
図8に示すように、外部から取り込まれた空気等の冷却ガスは、複数の第2孔124を介して、第2押圧部材68と第2分割円環部84との間の空間に供給される。これにより、複数の第2分割円環部84を効率よく冷却することができる。この空間に供給された冷却ガスは、第2分割円環部84に形成された複数の第2連通孔130を通過し、燃焼ガスと共にガス排出部28の排出口54(
図1参照)から外部に排出される。
【0077】
次に、ラジアルタービンノズル10の組立方法と、ガスタービン12へのラジアルタービンノズル10の組付方法とについて、
図9~
図11Bを参照しながら説明する。
【0078】
先ず、
図9のフローチャートと、
図10~
図11Bとを参照しながら、ラジアルタービンノズル10の組立方法について説明する。
【0079】
この組立方法では、スライド用治具162(
図10参照)を用いてもよい。スライド用治具162を用いる場合、
図9のステップS1において、プレート状のベース治具160の中央部にスライド用治具162を配置する。
図10では、スライド用治具162については、二点鎖線で、外周部のみ図示している。スライド用治具162の外周部には、複数のセグメント80の内周部分を押圧可能な複数の押圧部164が形成されている。
【0080】
次に、
図9のステップS2(第1リング配置工程)において、ベース治具160(
図10参照)の上面に第1リング62を配置する。第1リング62は、スライド用治具162を通して、ベース治具160の上面に配置される。
【0081】
次のステップS3(第1押圧部材配置工程)において、第1リング62に第1押圧部材66を配置する。第1押圧部材66は、スライド用治具162を通して、第1リング62に配置される。
【0082】
次のステップS4(第1フランジ部挿入工程)において、複数のセグメント80の各々について、第1フランジ部90の一部(第1フランジ部90の周方向の一端側)を第1リング62の第1外側溝76に挿入する。なお、複数のセグメント80の各々には、一方の第1挿入溝132に第1シール部材136が予め挿入され、一方の第2挿入溝134に第2シール部材138が予め挿入されている。この場合、第1フランジ部90の周方向の他端側は、第1フランジ部90の周方向の一端側よりも径方向の内側に配置される。従って、第1フランジ部90の周方向の他端側は、第1外側溝76には挿入されない。これにより、複数のセグメント80の各々は、第1シール部材136及び第2シール部材138が予め挿入された状態で、第1フランジ部90とスライド用治具162の外周面との間に配置される。また、複数のセグメント80の各々は、周方向に隣接する2つのセグメント80が互いに間隔を空けるように配置される。
【0083】
次のステップS5(第2押圧部材配置工程)において、複数のセグメント80に対して第2押圧部材68を配置する。
【0084】
次のステップS6(第2フランジ部挿入工程)において、複数のセグメント80の各々について、第2フランジ部98の一部(第2フランジ部98の周方向の一端側)を第2リング64の第2外側溝78に挿入することにより、第2フランジ部98を配置する。この場合、第2フランジ部98の周方向の他端側は、第2フランジ部98の周方向の一端側よりも径方向の内側に配置される。従って、第2フランジ部98の周方向の他端側は、第2外側溝78には挿入されない。
【0085】
次のステップS7では、先ず、ベース治具160にボルト166を取り付ける。次に、ボルト166に押圧治具168を挿通させる。押圧治具168は、第2リング64に接触する。次に、ボルト166にナット170を取り付ける。次に、ナット170をボルト166の所定位置まで移動させることにより、第1リング62、第1押圧部材66、複数のセグメント80、第2押圧部材68、及び、第2リング64に対して、ボルト166の軸方向に沿った力を付加する。これにより、第1リング62、第1押圧部材66、複数のセグメント80、第2押圧部材68、及び、第2リング64は、該軸方向に対して保持される。なお、ボルト166の軸方向は、スライド用治具162の軸方向であると共に、ノズル本体60の軸方向(ラジアルタービン18の軸方向)に一致する。
【0086】
次のステップS8(セグメント連結工程)において、複数のセグメント80の各々を回転させながら、第1リング62の径方向の外側にスライドさせることにより、複数のセグメント80を周方向に連結する。例えば、スライド用治具162を用いる場合、スライド用治具162を軸回りに回転させる。これにより、スライド用治具162の複数の押圧部164は、複数のセグメント80の内周部分をスライド用治具162の径方向の外側に押圧する。この結果、複数のセグメント80の各々は、該径方向の外側にスライドされる。このときに、スライド用治具162の周方向に隣接する2つのセグメント80の第1分割面86が重ね合わさると共に、第2分割面88が重ね合わさる。この結果、複数のセグメント80がスライド用治具162の周方向に連結され、ノズル本体60が構成される。
【0087】
セグメント連結工程について、より具体的に説明する。スライド用治具162の回転に伴い、複数のセグメント80は、
図11Aに示す状態から、径方向の外側に移動する。スライド用治具162がさらに回転すると、複数のセグメント80の各々は、第1分割円環部82の外周部分の角部172(第1フランジ部90の周方向の一端側)と、第2分割円環部84の外周部分の角部173(第2フランジ部98の周方向の一端側)とを支点として、径方向の外側に回転する。これにより、
図11Bに示すように、第1フランジ部90の周方向の全長が第1外側溝76に挿入されると共に、第2フランジ部98の周方向の全長が第2外側溝78に挿入される。この結果、周方向に隣接する2つのセグメント80の第1分割面86が互いに重ね合わさると共に、第2分割面88が重ね合わさる。また、周方向に隣接する2つのセグメント80について、互いに向かい合う第1挿入溝132に第1シール部材136が挿入されると共に、互いに向かい合う第2挿入溝134(
図3参照)に第2シール部材138が挿入される。これにより、周方向に隣接する2つのセグメント80の間が、第1シール部材136及び第2シール部材138によってシールされる。このようにして、該周方向に隣接する2つのセグメント80が連結される。
【0088】
以上のように、隣接する2つのセグメント80の間にクリアランスを設けた状態で、セグメント80の一部を第1リング62及び第2リング64に挿入し、第1分割円環部82の外周部分の角部172と、第2分割円環部84の外周部分の角部173とを支点として、該セグメント80を回動させる。これにより、複数のセグメント80を容易且つ安定して連結することができる。
【0089】
また、ステップS8では、複数のセグメント80がスライド用治具162の周方向に連結されることに伴い、第1押圧部材66の内周部108が第1内側溝94に挿入されると共に、第2押圧部材68の内周部112が第2内側溝102に挿入される。この結果、複数のセグメント80の各々は、ノズル本体60の軸方向に位置決めされる。
【0090】
さらに、ステップS8では、複数のセグメント80がスライド用治具162の周方向に連結されることに伴い、第1押圧部材66の第1突起116が第1切欠部114に挿入されると共に、第2押圧部材68の第2突起120が第2切欠部118に挿入される。これにより、複数のセグメント80の各々は、ノズル本体60の周方向に位置決めされる。この結果、複数のセグメント80の中空部126と、複数の第1孔122との該周方向の位相を合わせることができる。
【0091】
このようにして、ラジアルタービンノズル10が構成される。
【0092】
次のステップS9では、先ず、ナット170を緩めてラジアルタービンノズル10を押圧状態から解放する。次に、ボルト166からナット170を取り外し、ボルト166から押圧治具168を取り外す。次に、ベース治具160からラジアルタービンノズル10を取り外す。
【0093】
次に、ガスタービン12へのラジアルタービンノズル10の組付方法について説明する。
【0094】
この組付方法では、ステップS10(ノズル配置工程)において、上記のステップS1~ステップS9の各工程(ノズル組立工程)によって組み立てられたラジアルタービンノズル10を、第1ホルダ34における径方向の外側に配置する。具体的には、ノズル本体60の内周部分が第1ホルダ34に対して着座可能となり、且つ、複数のセグメント80が径方向に移動可能となるように、ラジアルタービンノズル10を第1ホルダ34及び第2ホルダ36に配置する。ラジアルタービンノズル10は、第1ホルダ34及び第2ホルダ36に対して径方向にクリアランス148、150を有する状態で配置される。
【0095】
複数のセグメント80の内周部分は、ガスタービン12の運転時に燃焼ガスの圧力によって第1ホルダ34に着座する。具体的には、複数のブレード70に燃焼ガスが衝突したときに、複数のセグメント80の各々には、径方向の内側への押圧力が作用する。これにより、複数のセグメント80の各々は、径方向の内側に移動する。この結果、
図7に示すように、複数のセグメント80の各々の第1分割円環部82の内周部分は、第1ホルダ34に着座する。この結果、ラジアルタービンノズル10は、ラジアルタービン18の径方向に位置決め固定される。
【0096】
なお、上記の説明では、第1挿入溝132に第1シール部材136が挿入され、第2挿入溝134に第2シール部材138が挿入される場合について説明した。本実施形態では、隣接する2つのセグメント80の間で、第1シール部材136及び第2シール部材138を保持できればよい。そのため、本実施形態では、複数の第1分割面86に形成されたスロット(凹部)に第1シール部材136を挿入してもよい。また、複数の第2分割面88に形成されたスロット(凹部)に第2シール部材138を挿入してもよい。
【0097】
また、
図9でのラジアルタービンノズルの組立方法では、スライド用治具162を用いず、作業者が手作業で複数のセグメント80を径方向の外側に移動させることにより、複数のセグメント80を周方向に連結してもよい。
【0098】
上記の実施形態から把握し得る発明について、以下に記載する。
【0099】
本発明の第1の態様は、ラジアルタービン(18)と、前記ラジアルタービンを囲むラジアルタービンノズル(10)と、前記ラジアルタービンノズルを保持する保持部(34)とを備えるガスタービン(12)であって、前記ラジアルタービンノズルは、前記ラジアルタービンの周方向に所定の間隔で配された複数のブレード(70)と、前記ラジアルタービンの軸方向における前記複数のブレードの一端部に連結された第1エンドウォール(72)と、前記軸方向における前記複数のブレードの他端部に連結された第2エンドウォール(74)とを有する円環状のノズル本体(60)と、前記第1エンドウォールを囲む第1リング(62)と、前記第2エンドウォールを囲む第2リング(64)と、を備え、前記ノズル本体は、前記周方向に沿って連結された複数のセグメント(80)を有し、前記第1リングは、前記ラジアルタービンの径方向の外側に凹み且つ前記周方向に延在する第1外側溝(76)を有し、前記第2リングは、前記径方向の外側に凹み且つ前記周方向に延在する第2外側溝(78)を有し、前記複数のセグメントの各々は、前記第1エンドウォールを前記径方向に対して傾斜する複数の第1分割面(86)で分割することにより形成された第1分割円環部(82)と、前記第2エンドウォールを前記径方向に対して傾斜する複数の第2分割面(88)で分割することにより形成された第2分割円環部(84)と、を有し、前記第1分割円環部の外周部分は、前記径方向の外側に突出する第1フランジ部(90)を有し、前記第1フランジ部が前記第1外側溝に挿入され、前記第2分割円環部の外周部分は、前記径方向の外側に突出する第2フランジ部(98)を有し、前記第2フランジ部が前記第2外側溝に挿入され、前記ノズル本体の内周部分が前記保持部に着座可能であり、前記複数のセグメントは、前記径方向に移動可能である。
【0100】
本発明によれば、ガスタービンの運転時に、ラジアルタービンノズルを通過する燃焼ガスの圧力によって、ノズル本体の内周部分が保持部に着座する。ガスタービンの運転時において、保持部は、ラジアルタービンノズルよりも低温である。そのため、保持部は、熱膨張による寸法の変化が少ない。これにより、ガスタービンに組み付けられたラジアルタービンノズルを精度良く位置決め固定することができる。また、第1分割面及び第2分割面がラジアルタービンの径方向に対して傾斜している。これにより、燃焼ガスがラジアルタービンノズルを通過するときに、複数のセグメントをラジアルタービンの径方向に容易に移動させることが可能となる。さらに、保持部とラジアルタービンノズルとの間にクリアランスがあることで、ラジアルタービンノズルをガスタービンに容易に組み付けることができる。
【0101】
本発明の第1の態様において、前記複数の第1分割面の各々には、第1挿入溝(132)が形成され、前記複数の第2分割面の各々には、第2挿入溝(134)が形成され、前記第1挿入溝には、第1シール部材(136)が挿入され、前記第2挿入溝には、第2シール部材(138)が挿入されている。
【0102】
第1シール部材及び第2シール部材が複数のセグメントを押圧することがないので、燃焼ガスの圧力によって複数のセグメントを、ラジアルタービンの径方向の内側に容易に移動させることが可能となる。
【0103】
本発明の第2の態様は、ラジアルタービンノズルの組付方法であって、前記ラジアルタービンノズルは、ラジアルタービンの周方向に所定の間隔で配された複数のブレードと、前記ラジアルタービンの軸方向における前記複数のブレードの一端部に連結された第1エンドウォールと、前記軸方向における前記複数のブレードの他端部に連結された第2エンドウォールとを有する円環状のノズル本体と、前記第1エンドウォールを囲む第1リングと、前記第2エンドウォールを囲む第2リングと、を備え、前記ノズル本体は、前記周方向に沿って連結された複数のセグメントを有し、前記第1リングは、前記ラジアルタービンの径方向の外側に凹み且つ前記周方向に延在する第1外側溝を有し、前記第2リングは、前記径方向の外側に凹み且つ前記周方向に延在する第2外側溝を有し、前記複数のセグメントの各々は、前記第1エンドウォールを前記径方向に対して傾斜する複数の第1分割面で分割することにより形成された第1分割円環部と、前記第2エンドウォールを前記径方向に対して傾斜する複数の第2分割面で分割することにより形成された第2分割円環部と、を有し、前記第1分割円環部の外周部分は、前記径方向の外側に突出する第1フランジ部を有し、前記第1フランジ部が前記第1外側溝に挿入され、前記第2分割円環部の外周部分は、前記径方向の外側に突出する第2フランジ部を有し、前記第2フランジ部が前記第2外側溝に挿入され、前記組付方法は、前記ノズル本体の外周部分に前記第1リング及び前記第2リングが組み付けられた状態で前記ラジアルタービンノズルを組み立てるノズル組立工程と、前記ノズル本体の内周部分がガスタービンの保持部に対して着座可能となり、且つ、前記複数のセグメントが前記径方向に移動可能となるように、前記保持部の前記径方向の外側に前記ラジアルタービンノズルを配するノズル配置工程と、を有する。
【0104】
本発明によれば、ガスタービンの運転時に、ラジアルタービンノズルを通過する燃焼ガスの圧力によって、ノズル本体の内周部分が保持部に着座する。ガスタービンの運転時において、保持部は、ラジアルタービンノズルよりも低温である。そのため、保持部は、熱膨張による寸法の変化が少ない。これにより、ガスタービンに組み付けられたラジアルタービンノズルを精度良く位置決め固定することができる。また、第1分割面及び第2分割面がラジアルタービンの径方向に対して傾斜している。これにより、燃焼ガスがラジアルタービンノズルを通過するときに、複数のセグメントをラジアルタービンの径方向に容易に移動させることが可能となる。さらに、保持部とラジアルタービンノズルとの間にクリアランスがあることで、ラジアルタービンノズルをガスタービンに容易に組み付けることができる。
【0105】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0106】
10…ラジアルタービンノズル 12…ガスタービン
18…ラジアルタービン 34…第1ホルダ(保持部)
60…ノズル本体 62…第1リング
64…第2リング 70…ブレード
72…第1エンドウォール 74…第2エンドウォール
76…第1外側溝 78…第2外側溝
80…セグメント 82…第1分割円環部
84…第2分割円環部 86…第1分割面
88…第2分割面 90…第1フランジ部
98…第2フランジ部