(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106973
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】ゴルフボール
(51)【国際特許分類】
A63B 37/00 20060101AFI20240801BHJP
【FI】
A63B37/00 316
A63B37/00 616
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024003869
(22)【出願日】2024-01-15
(31)【優先権主張番号】18/102,113
(32)【優先日】2023-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】592014104
【氏名又は名称】ブリヂストンスポーツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南馬 昌司
(72)【発明者】
【氏名】深沢 秀士
(57)【要約】
【課題】本発明は、ゴルフボールの反発弾性に優れると共に、繰り返し打撃耐久及び耐擦過傷性に優れるゴルフボールを提供することを目的とする。また、本発明は、コアと隣接するカバー各層との密着性を向上させ、耐久性に優れたゴルフボールを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、少なくとも1層のコアと少なくとも1層のカバーとを有するゴルフボールであって、上記カバーのうち少なくとも1層が、下記(a’)成分及び(b)成分、
(a’)ポリエステル樹脂
(b)分岐状構造を有するアミン含有ポリマー
を含有する樹脂組成物に形成されるゴルフボールを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1層のコアと少なくとも1層のカバーとを有するゴルフボールであって、上記カバーのうち少なくとも1層が、下記(a’)成分及び(b)成分、
(a’)ポリエステル樹脂
(b)分岐状構造を有するアミン含有ポリマー
を含有する樹脂組成物に形成されることを特徴とするゴルフボール。
【請求項2】
(b)成分の分岐状構造を有するアミン含有ポリマーがポリエチレンイミンである請求項1記載のゴルフボール。
【請求項3】
上記樹脂組成物中における(b)成分の配合量は、(a’)成分の100質量部に対して、0.1~10質量部である請求項1記載のゴルフボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアと隣接するカバー各層の密着性を向上させ、耐久性に優れたゴルフボールに関する。
【背景技術】
【0002】
コアとカバーからなるゴルフボールにおいて、カバー材は文字通り、コア材を保護するものである。カバー材としては、エチレンと酸共重合体または金属イオンで中和したものが最も多く用いられている。その理由としては、これらのエチレンと酸共重合体またはその金属塩が強靭であり、反発弾性に優れているからである。これらエチレンと酸共重合体またはその金属塩の物性は、酸含量と酸を中和する金属イオンの種類及び中和度等の要因により決定される。一般的には、酸含量が増加すると、エチレンと酸共重合体またはその金属塩は硬くなり、高剛性となる。また、中和度が増えるとエチレンと酸共重合体またはその金属塩は、反発弾性が高くなる。特に、主鎖がエチレンと酸とエステルとの3成分からなるものにおいてはその効果が顕著となる。
【0003】
しかしながら、上記のエチレンと酸とエステルとの3成分からなる共重合体または金属イオンで中和した材料をカバー材として用いると、副次的に、ゴルフボールの繰り返し打撃耐久や耐擦過傷性が悪くなるという欠点を有する。
【0004】
上記以外にも、エチレンと酸共重合体またはその金属塩の物性を改質する方法が多数試みられているが、その多くはエチレンと酸共重合体またはその金属塩にゴム、エラストマー又は硬質なポリマーをブレンドするものであるが、ゴルフボールで要求される飛びやアプローチ時スピン量、耐久性等の特性が全て良くなるものではない。
【0005】
特開昭60-60867号公報や特表2001-514561号公報には、エチレンと酸共重合体またはその金属塩の剛性を付与するために、ポリアミドや液晶ポリマーなどの硬質なポリマーをブレンドする技術も種々提案されている。また、特開2002-143345号公報や特開昭56-083367号公報には、エチレンと酸共重合体またはその金属塩に靭性を付与したり、単純にソフトな触感に改質する目的で、ポリエステルエラストマー、スチレン系エラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリウレタンエラストマーなどのエラストマーをブレンドする技術も種々提案されている。
【0006】
しかしながら、上記の提案された材料をカバー材に使用したゴルフボールは、反発弾性の低下を引き起こすことが多く、改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭60-60867号公報
【特許文献2】特表2001-514561号公報
【特許文献3】特開2002-143345号公報
【特許文献4】特開昭56-083367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、ゴルフボールの反発弾性に優れると共に、繰り返し打撃耐久及び耐擦過傷性に優れるゴルフボールを提供することを目的とする。また、本発明は、コアと隣接するカバー各層との密着性を向上させ、耐久性に優れたゴルフボールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、主成分としてのポリエステル樹脂に、ポリエチレンイミン等の分岐状構造を有するアミン含有ポリマーを含有した樹脂組成物をゴルフボールの部材に適用した場合、コアと隣接するカバー各層の密着性を向上させ、耐久性に優れていることを見出し、本発明をなすに至ったものである。
【0010】
従って、本発明は、下記のゴルフボールを提供する。
1.少なくとも1層のコアと少なくとも1層のカバーとを有するゴルフボールであって、上記カバーのうち少なくとも1層が、下記(a’)成分及び(b)成分、
(a’)ポリエステル樹脂
(b)分岐状構造を有するアミン含有ポリマー
を含有する樹脂組成物に形成されることを特徴とするゴルフボール。
2.(b)成分の分岐状構造を有するアミン含有ポリマーがポリエチレンイミンである上記1記載のゴルフボール。
3.上記樹脂組成物中における(b)成分の配合量は、(a’)成分の100質量部に対して、0.1~10質量部である上記1記載のゴルフボール。
【発明の効果】
【0011】
本発明のゴルフボールは、コアと隣接するカバー各層との密着性を向上させ、耐久性に優れるものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】コアと包囲層との密着強度を測定する際に用いる測定用試験片の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明につき、更に詳しく説明する。
本発明のゴルフボールは、少なくとも1層のコアと少なくとも1層のカバーとを有するゴルフボールであり、上記カバーのうち少なくとも1層が、特定の樹脂組成物に形成されることを特徴とする。この樹脂組成物は、主成分として、(a’)ポリエステル樹脂を含有するものである。この(a’)成分の詳細は以下のとおりである。
【0014】
(a’)ポリエステル樹脂
(a’)ポリエステル樹脂としては、特に制限はないが、具体的な例示として、東レ・デュポン(株)製の「ハイトレルシリーズ」(3046、G3548L、4047、4767、5557、6347、7247、2571、2751)、東洋紡(株)製の「ペルプレンシリーズ」(P-30B、P-40B、P-40H、P-55B、P-70B、P-90B、P-150B、P-280B、E-450B、P-75M、P-150M、S-1001、S-2001、S-3001、S-6001、S-9001)及び三菱化学(株)製の「プリマロイシリーズ」(A1400、A1500、A1600、A1700、A1800、A1900)等が挙げられ、特に、熱可塑性ポリエステルエラストマーを採用することが好適である。
【0015】
熱可塑性ポリエステルエラストマーは、(a-1)ポリエステルブロック共重合体と(a-2)硬質樹脂とからなる樹脂組成物である。更に、上記(a-1)成分は、(a-1-1)高融点結晶性重合体セグメントと、(a-1-2)低融点重合体セグメントとを構成成分とする。
【0016】
上記(a-1)成分のポリエステルブロック共重合体を構成する(a-1-1)高融点結晶性重合体セグメントは、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体、ジオール又はそのエステル形成性誘導体よりなる群から選択される1種又は2種以上で形成されるポリエステルである。
【0017】
まず、芳香族ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、ナフタレン-2,7-ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、ジフェニル-4,4’-ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、5-スルホイソフタル酸、及び3-スルホイソフタル酸ナトリウム等が挙げられる。本発明においては、芳香族ジカルボン酸を主に用いるが、必要に応じてこの芳香族ジカルボン酸の一部を、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、及び4,4’-ジシクロヘキシルジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸や、アジピン酸、コハク酸、シュウ酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、及びダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸に置換してもよい。また、ジカルボン酸のエステル形成性誘導体の具体例としては、上述したジカルボン酸の低級アルキルエステル、アリールエステル、炭酸エステル及び酸ハロゲン化物等を挙げることができる。
【0018】
次に、ジオールとしては、分子量400以下のジオールを好適に用いることができる。具体的には、1,4-ブタンジオール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、及びデカメチレングリコール等の脂肪族ジオール、1,1-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ジシクロヘキサンジメタノール、及びトリシクロデカンジメタノール等の脂環族ジオール、キシリレングリコール、ビス(p-ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p-ヒドロキシ)ジフェニルプロパン、2,2’-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、4,4’-ジヒドロキシ-p-ターフェニル、及び4,4’-ジヒドロキシ-p-クオーターフェニル等の芳香族ジオールを例示することができる。また、ジオールのエステル形成性誘導体の具体例としては、上述したジオールのアセチル体、アルカリ金属塩等を挙げることができる。
【0019】
上記の芳香族ジカルボン酸、ジオール、並びにこれらの誘導体は、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0020】
上記(a-1-1)成分としては、特にテレフタル酸及び/又はジメチルテレフタレートと1,4-ブタジオールから誘導されるポリブチレンテレフタレート単位からなるものや、イソフタル酸及び/又はジメチルイソフタレートと1,4ブタンジオールから誘導されるポリブチレンテレフタレート単位からなるもの、更には、その両者の共重合体を好適に用いることができる。
【0021】
上記(a-1-2)低融点重合体セグメントは、脂肪族ポリエーテル及び/又は脂肪族ポリエステルである。
【0022】
脂肪族ポリエーテルとしては、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体グリコール等が挙げられる。また、脂肪族ポリエステルとしては、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリエナントラクトン、ポリカプロラクトン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート等が挙げられる。本発明では、弾性特性の観点から、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体グリコール、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリブチレンアジペート、及びポリエチレンアジペート等を好適に使用することができる。更には、これらの中でも特にポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物、及びエチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体グリコールを使用することが推奨される。また、これらのセグメントの数平均分子量としては、共重合された状態において300~6000程度であることが好ましい。
【0023】
上記(a-1)成分は公知の方法で製造することができる。具体的には、ジカルボン酸の低級アルコールジエステル、過剰量の低分子量グリコール及び低融点重合体セグメント成分を触媒の存在下でエステル交換反応させ、得られる反応生成物を重縮合する方法や、ジカルボン酸と過剰量のグリコール及び低融点重合体セグメント成分を触媒の存在下でエステル化反応させ、得られる反応生成物を重縮合する方法等を採用することができる。
【0024】
(a-1)成分において上記(a-1-2)成分が占める割合は30~60質量%である。この場合、好ましい下限値は35質量%以上とすることができ、好ましい上限値は55質量%以下とすることができる。(a-1-2)成分の割合が少なすぎると、(特に低温時における)耐衝撃性や相溶性が不足するおそれがある。一方、(a-1-2)成分の割合が多すぎると、樹脂組成物(及び成形体)の剛性が不足することがある。
【0025】
(a-2)成分の硬質樹脂は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリカーボネート、アクリル系樹脂、ABS樹脂やポリスチレン等のスチレン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル、及び変性ポリフェニレンエーテルよりなる群から選択される1種又は2種以上を用いることができる。本発明では、相溶性の点からポリエステル樹脂を好適に使用することができ、更に好ましくは、ポリブチレンテレフタレート及び/又はポリブチレンナフタレートを使用することが推奨される。
【0026】
上記の(a-1)成分及び(a-2)成分の配合比率((a-1):(a-2))は、特に制限されるものではないが、質量比で50:50~90:10とすることが好ましく、より好ましくは55:45~80:20である。(a-1)成分の割合が少なすぎると、(低温時における)耐衝撃性が不足するおそれがある。一方、(a-1)成分の割合が多すぎると、組成物(及び成形体)の剛性及び成形加工性が不足するおそれがある。
【0027】
このような(a’)熱可塑性ポリエステル系エラストマーとしては、市販品を用いることができ、具体例としては、東レ・デュポン社製の“ハイトレル”を挙げることができる。
【0028】
上記(a’)成分の材料硬度については、ショアD硬度で45以下であり、より好ましくはショアD硬度で43以下、更に好ましくは41以下である。また、その下限値としては、ショアD硬度で36以上が好ましく、より好ましくはショアD硬度で38以上である。
【0029】
上記(a’)成分の反発弾性率は、74%以下であることが好ましく、より好ましくは73%以下、更に好ましくは72%以下である。また、上記反発弾性率の下限値は、好ましくは50%以上、より好ましくは52%以上、さらに好ましくは60%以上である。上記の反発弾性率は、JIS-K 6255:2013規格に基づいて測定される。
【0030】
上記(a’)成分の熱可塑性ポリエステルエラストマーの溶融粘度は、1.5×104(dPa・s)以下であり、好ましくは1.45×104(dPa・s)以下、より好ましくは1.0×104(dPa・s)以下、さらに好ましくは0.8×104(dPa・s)以下であり、下限値は、0.4×104(dPa・s)以上とすることが好ましく、より好ましくは0.5×104(dPa・s)以上である。この溶融粘度を有することにより、樹脂組成物の成型後に固化性を付与し、成型性(生産性)を良好に維持することができる。この溶融粘度は、ISO 11443:1995に準じて、温度条件200℃にてキャピログラフで測定したとき、せん断速度243(1/sec)における溶融粘度を示す。
【0031】
次に、(b)成分について説明すると、(b)成分は分岐状構造を有するアミン含有ポリマーである。(b)成分は、完全な線状高分子ではなく、分岐構造を有するポリマーであり、分子中に、1級、2級または3級アミンを含む。このため、(b)成分はカチオン密度が高くなり反応性に富むこととなり、上記(a)成分の未中和の酸成分と反応することになる。一般的に、エチレンと酸含有共重合体またはその金属塩のミクロ構造は、酸含量や酸を中和する金属イオン種及び中和度により決定されるが、ポリエチレンイミンのような分岐構造を有するアミン含有ポリマーとブレンドすることで酸含有共重合体の単体や、従来より提案されている酸含有共重合体とポリアミドとのブレンド物、酸含有共重合体とポリエチレンとのブレンド物などでは得られ難い特有の機械物性を有する樹脂組成物を得ることができる。
【0032】
(b)成分としては、ポリエチレンイミン等のアミン系ポリマーが挙げられる。また、ポリエチレンイミンのアミン価は高いものが好ましく、アミン価が18~21であることが好適である。アミン価は、ポリエチレンイミンの固形分1gに含まれるアミンのmmol数で表される。
【0033】
(b)成分の配合量は、(a’)成分の100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、より好ましくは0.1質量部以上である。上限値として、10質量部以下であることが好ましく、より好ましくは8質量部以下である。(b)成分の配合量が少なすぎると、所望の効果が得られない。一方、(b)成分の配合量は多すぎると、(a’)成分との相溶性が悪くなり、所望の効果が得られなくなり、加工中に組成物が焼け加工ができなくなるおそれがある。
【0034】
上記樹脂組成物の全量100質量%における(a’)成分及び(b)成分の合計の配合割合は、60質量%以上であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。
【0035】
上記の樹脂組成物には、必要に応じて、種々の添加剤を配合することができ、例えば顔料、分散剤、酸化防止剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、離型剤等を適宜配合することができる。
【0036】
上記の樹脂組成物は、例えば、混練型(単軸又は)2軸押出機,バンバリー,ニーダー等の各種の混練機を用いて上述した各成分を混合することにより得ることができる。
【0037】
上記の樹脂組成物の反発弾性率は、68%以下であることが好ましく、より好ましくは65%以下である。また、上記反発弾性率の下限値は、好ましくは47%以上、より好ましくは52%以上である。上記の反発弾性率は、JIS-K 6255:2013規格に基づいて測定される。
【0038】
上記の樹脂組成物の材料硬度は、ショアD硬度で48以下であり、より好ましくはショアD硬度で43以下である。また、その下限値としては、ショアD硬度で34以上が好ましく、より好ましくはショアD硬度で39以上である。
【0039】
上記の樹脂組成物は、特に、コアと該コアを被覆するカバーとからなるツーピースソリッドゴルフボール、又は、1層以上のコアと該コアを被覆する多層のカバーとからなるマルチピースソリッドゴルフボールにおけるカバー層の少なくとも1層(包囲層、中間層及び最外層)として用いることができる。
【0040】
なお、上記の樹脂組成物以外の各構成部材の説明としては以下のとおりである。
【0041】
コアは、公知のゴム材料を基材として形成することができる。基材ゴムとしては、天然ゴム又は合成ゴムの公知の基材ゴムを使用することができ、より具体的には、ポリブタジエン、特にシス構造を少なくとも40%以上有するシス-1,4-ポリブタジエンを主に使用することが推奨される。また、基材ゴム中には、所望により上述したポリブタジエンと共に、天然ゴム,ポリイソプレンゴム,スチレンブタジエンゴムなどを併用することができる。
【0042】
また、ポリブタジエンは、Nd触媒の希土類元素系触媒,コバルト触媒及びニッケル触媒等の金属触媒により合成することができる。
【0043】
上記の基材ゴムには、不飽和カルボン酸及びその金属塩等の共架橋剤,酸化亜鉛,硫酸バリウム,炭酸カルシウム等の無機充填剤,ジクミルパーオキサイドや1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等の有機過酸化物等を配合することができる。また、必要により、市販品の老化防止剤等を適宜添加することができる。
【0044】
上記コアの直径は、そのボールの構造によって適宜選定されるものであり、特に制限はないが、好ましくは20mm以上、より好ましく25mm以上、さらに好ましくは30mm以上であり、上限値としては、好ましくは41mm以下、より好ましくは40mm以下である。
【0045】
上記コアとカバー最外層との間には中間層や包囲層を設けることができる。この場合、上記中間層又は包囲層の材料硬度は、特に制限されるものではないが、ショアD硬度で35以上、好ましくは38以上、より好ましくは40以上とすることができる。また、その上限も特に制限されるものではないが、好ましくは70以下、より好ましくは65以下とすることができる。
【0046】
上記カバーのうち最外層の厚さは、特に制限はないが、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは0.4mm以上、さらに好ましくは0.5mm以上であり、上限としては、好ましくは1.2mm以下、より好ましくは1.0mm以下、さらに好ましくは0.8mm以下である。
【0047】
なお、上記カバーの表面には1種又は2種類以上の多数のディンプルを形成することができる。また、上記カバー表面には、更に各種塗料を塗装することができ、この塗料としては、ゴルフボールの過酷な使用状況に耐えうる必要から、2液硬化型のウレタン塗料、特に、無黄変のウレタン塗料が好適に挙げられる。
【実施例0048】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0049】
[実施例1~3、比較例1]
下記表1に示す実施例及び比較例に共通するゴム組成物を用い、158℃で20分間の加硫により、直径35.2mm各例のソリッドコアを作成した。
【0050】
【0051】
なお、上記コア材料の詳細は下記のとおりである。
・「ポリブタジエン A」 JSR社製、商品名「BR51」
・「ポリブタジエン B」 JSR社製、商品名「BR730」
・「アクリル酸亜鉛」 商品名「ZN-DA85S」日本触媒社製
・「有機過酸化物」 ジクミルパーオキサイド、商品名「パークミルD」(日油社製)
・「老化防止剤」 商品名「ノクラックNS6」(大内新興化学工業社製)
・「酸化亜鉛」 商品名「三種酸化亜鉛」(堺化学工業社製)
・「ペンタクロオチオフェノール亜鉛塩」和光純薬工業社製
【0052】
カバー層(包囲層)の形成
次に、上記で得たコアの周囲に、下記表2に示す樹脂組成物を射出成形法により被覆して、厚さ1.2mmの包囲層が被覆された球体(包囲層被覆球体)を製造した。
【0053】
【0054】
上記表中の詳細は下記の通りである。
「ポリエステル樹脂」:商品名「ハイトレル4001」東レ・デュポン社製
「ポリエチレンイミン」:商品名「エポミンSP-012」日本触媒社製(数平均分子量約1,200、アミン価19)
【0055】
樹脂物性(ショアD硬度)
包囲層の樹脂材料を厚さ2mmのシート状に成形し、2週間以上放置する。その後、ショアD硬度はASTM D2240-95規格に準拠して計測する。
【0056】
得られた各実施例及び比較例の包囲層被覆球体について、下記の方法により密着性を評価した。その結果を表2に示す。
【0057】
密着性
図1に示すように、包囲層被覆球体10の中心からの距離が2mmである平面をp1、ボール中心に対してp1と点対称な平面をp2とするときに、p1とp2の間にあるボール部位s1において包囲層30とコア20の密着強度を計測した。包囲層30に、包囲層30とp1が重なる部分、及び包囲層30とp2が重なる部分に切り目Tを入れ、s1以外の部分の包囲層30を剥がす。次に、p1とp2に垂直な向きになるように包囲層30に切れ目Tを入れ、切れ目から約20mm包囲層30をコア20から剥がし掴みしろを設け試験片を得た。JIS K6256「加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの接着試験方法」を参考に、つかみ治具の移動速度は50mm/分とし、0.1mmごとに引張り強度を測定した。およそ100mm分の引張強度を3個の試験片について測定し、これらの平均値を密着強度(単位:N)とした。なお、試験片は上記で得られたものを用い、包囲層30に設けたつかみしろをつかみ治具にて保持する。試験片の固定治具は、試験片がその中心位置を保ちながら回転できるものであり、つかみ治具の移動に伴いコア20に巻きついた状態の包囲層30をたるみの無い状態で剥がすことができる。
【0058】
表2の結果より、本実施例1~3は、比較例1と比べると、コアと包囲層との密着性が高く、耐久性に優れていることが分かる。