(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106998
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】香り提供装置
(51)【国際特許分類】
A61L 9/12 20060101AFI20240801BHJP
F24F 8/50 20210101ALI20240801BHJP
F16K 31/70 20060101ALI20240801BHJP
A45D 34/02 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
A61L9/12
F24F8/50
F16K31/70 B
A45D34/02
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024073758
(22)【出願日】2024-04-30
(62)【分割の表示】P 2021503453の分割
【原出願日】2020-01-22
(31)【優先権主張番号】P 2019040802
(32)【優先日】2019-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 幸人
(72)【発明者】
【氏名】藤田 修二
(72)【発明者】
【氏名】デュベール セドリック
(72)【発明者】
【氏名】吉田 明彦
(57)【要約】
【課題】香りを放出可能であり、香料の交換あるいは補充を容易に行うことができる香り提供装置を提供する。
【解決手段】香料が保持される保持空間を有し、脱着可能な香料保持構造体と、前記保持空間を通過させる空気を供給する送風装置と、前記保持空間に前記空気を導入する空気供給路と、前記保持空間に前記空気の通過の可否を切り換える開閉機構と、前記開閉機構を制御する制御部とを備え、前記開閉機構は、前記空気の流路を閉じる弁部材と、前記空気の流路を閉じる方向へ前記弁部材を付勢する付勢部材と、前記空気の流路を開く方向へ前記弁部材を移動させる変形部材とを有し、前記変形部材は、通電によって生じる温度に応じて変形する細線状の形状記憶合金であり、前記制御部は、前記変形部材への通電量を制御する、香り提供装置を提供する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
香料が保持される保持空間を有し、脱着可能な香料保持構造体と、
前記保持空間を通過させる空気を供給する送風装置と、
前記保持空間に前記空気を導入する空気供給路と、
前記保持空間に前記空気の通過の可否を切り換える開閉機構と、
前記開閉機構を制御する制御部と、
を備え、
前記開閉機構は、
前記空気の流路を閉じる弁部材と、
前記空気の流路を閉じる方向へ前記弁部材を付勢する付勢部材と、
前記空気の流路を開く方向へ前記弁部材を移動させる変形部材と、
を有し、
前記変形部材は、通電によって生じる温度に応じて変形する細線状の形状記憶合金であり、
前記制御部は、前記変形部材への通電量を制御する、
香り提供装置。
【請求項2】
前記変形部材は、前記付勢部材の付勢方向に抗して、前記弁部材を前記通電量に応じた移動量だけ移動させて、前記空気の流路を開きの程度を調整する、
請求項1に記載の香り提供装置。
【請求項3】
前記細線状の形状記憶合金の非通電状態において、前記細線状の形状記憶合金に張力を発生させた状態で前記弁部材が前記空気の流路を閉じる、
請求項2に記載の香り提供装置。
【請求項4】
前記開閉機構が、前記空気供給路に備えられる、
請求項1~3のいずれか1項に記載の香り提供装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、香り提供装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、香りを提供する香り提供装置に関する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、複数個の独立した空間を有するとともに、空間ごとに別々の香り源が入っており、送風ポンプから送風空気が空間内に流入するための流入孔、及び、香り源からの香り材を含む送風空気を空間内から流出するための流出孔が空間ごとに設けられている香り源タンクと、送風ポンプからの送風空気の流路を空間ごとに開閉させるように制御する制御弁と、香り源タンクの各空間に対して空気を送風させるために送風ポンプを駆動するとともに、送風空気の流路を空間ごとに開閉させるために制御弁を駆動する駆動回路と、を備えた香り発生装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1に開示された香り発生装置は、それぞれ香り源が配置された空間を備えた香り源タンク、能動弁アレイ及び逆止弁アレイをネジで一体化して構成されている。このため、香り源の機能(香り成分)が消滅した場合には香り提供装置全体を交換することが必要になる。香り源の交換あるいは補充が容易であれば、香り提供装置を長期間使用することが可能になる。
【0005】
そこで、本開示では、香りを放出可能であり、香料の交換あるいは補充を容易に行うことができる、新規かつ改良された香り提供装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によれば、香料が保持される保持空間を有し、脱着可能な香料保持構造体と、前記保持空間を通過させる空気を供給する送風装置と、前記保持空間に前記空気を導入する空気供給路と、前記保持空間に前記空気の通過の可否を切り換える開閉機構と、前記開閉機構を制御する制御部とを備え、前記開閉機構は、前記空気の流路を閉じる弁部材と、前記空気の流路を閉じる方向へ前記弁部材を付勢する付勢部材と、前記空気の流路を開く方向へ前記弁部材を移動させる変形部材とを有し、前記変形部材は、通電によって生じる温度に応じて変形する細線状の形状記憶合金であり、前記制御部は、前記変形部材への通電量を制御する、香り提供装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
以上説明したように本開示によれば、香りを放出可能であり、香料の交換あるいは補充を容易に行うことができる。
【0008】
なお、上記の効果は必ずしも限定的なものではなく、上記の効果とともに、又は上記の効果に代えて、本明細書に示されたいずれかの効果、または本明細書から把握され得る他の効果が奏されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施の形態に係る香り提供装置の外観を示す斜視図である。
【
図2】同実施形態に係る香り提供装置を下方から見た斜視図である。
【
図3】同実施形態に係る香り提供装置の断面図である。
【
図4】同実施形態に係る香り提供装置を備えた頭部装着型表示装置を示す斜視図である。
【
図5】同実施形態に係る香り提供装置を備えた頭部装着型表示装置を下方側から見た斜視図である。
【
図6】同実施形態に係る香り放出装置の斜視図である。
【
図7】同実施形態に係る香り放出装置の断面図である。
【
図8】同実施形態に係る香り放出装置の断面図である。
【
図13】開閉機構の弁部材及び変形部材を示す模式図である。
【
図14】変形部材の非通電状態の様子を示す断面図である。
【
図15】変形部材の通電状態の様子を示す断面図である。
【
図16】香り放出装置の放出方向と空気放出装置の放出方向とを示す説明図である。
【
図17】香り提供装置の制御回路の一例を簡略化して示す説明図である。
【
図18】香り提供装置の操作機器の画面表示の一例を示す説明図である。
【
図19】香り提供装置の動作例を示す説明図である。
【
図20】変形例に係る香り提供装置を備えた頭部装着型表示装置を示す斜視図である。
【
図21】変形例に係る香り提供装置を備えた頭部装着型表示装置を下方側から見た斜視図である。
【
図22】変形例に係る香り提供装置を備えた頭部装着型表示装置の空気放出装置により排出される気流を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0011】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.香り提供装置の概要
2.香り放出装置の構成例
3.空気放出装置の構成例
4.回路構成例
5.動作例
6.変形例
【0012】
以下の説明において、香りの放出方向を前方側あるいは先端側といい、その逆方向を後方側あるいは後端側ともいう。
【0013】
<1.香り提供装置の概要>
まず、
図1~
図3を参照して、本開示の実施の形態に係る香り提供装置の概要を簡単に説明する。
図1は、本実施形態に係る香り提供装置1の外観を示す斜視図であり、
図2は、
図1に示す香り提供装置1を下方側からみた斜視図である。
図3は、
図1のI-I断面の断面図である。
【0014】
本実施形態に係る香り提供装置1は、ケース10、香り放出装置(香り放出部)130及び空気放出装置(空気放出部)90を備えている。香り放出装置130は、複数の香りの中から選択される香りを選択的に放出可能になっている。
【0015】
香り放出装置130は、ハウジング710、香料カートリッジ200、開閉機構150及び第1の送風装置840を備える。本実施形態において、香料カートリッジ200が香料保持構造体に相当する。ハウジング710の前方側には、香料カートリッジ200が脱着可能になっている。
【0016】
香り放出装置130は、香料カートリッジ200に設けられた複数の保持空間231(
図3では1つのみ図示)のそれぞれに対して第1の送風装置840から空気を供給し、それぞれの保持空間231に配置された香料保持体251に保持された液体香料を気化させて放出させる。例えば、香り放出装置130は、第1の送風装置840から供給される空気を、香料カートリッジ200の保持空間231を通過させることにより、液体香料又は湿潤状態の香料(以下、まとめて「液体香料」という。)を気化させて空気とともに保持空間231から放出させる。開閉機構150は、ハウジング710内に設けられ、それぞれの保持空間231に供給される空気の流路を開閉する。
【0017】
第1の送風装置840は、ケース10内に備えられる。ケース10内には、第1の送風装置840の他に、バッテリ810及び回路基板820が備えられる。バッテリ810は、第1の送風装置840及び開閉機構150に接続されている。回路基板820は、第1の送風装置840の駆動を制御する駆動回路と、開閉機構150の駆動を制御する駆動回路とを備える。回路基板820は、バッテリ810から第1の送風装置840への電力供給を制御することにより第1の送風装置840の駆動を制御し、香り放出装置130による香りの放出を制御する。また、回路基板820は、開閉機構150への電力供給を制御することにより、それぞれの保持空間231に供給される空気の流路を開閉する。
【0018】
空気放出装置90は、第2の送風装置91及び送風ダクト93を備える。第2の送風装置91は、バッテリ810に接続されている。また、回路基板820は、第2の送風装置840の駆動を制御する駆動回路を備える。回路基板820は、バッテリ810から第2の送風装置91への電力供給を制御することにより第2の送風装置91の駆動を制御し、空気放出装置90からの空気の放出を制御する。第2の送風装置91は、送風ダクト93側に図示しない送風出口を備え、第2の送風装置91により発生する送風は送風ダクト93に導入される。送風ダクト93は、第2の送風装置91により発生した送風を、所定の方向に向けて放出させる。
【0019】
本実施形態に係る香り提供装置1は、比較的高い直進性で、限られた範囲の空間に香りを放出する装置として用いられる。例えば、香り提供装置1は、仮想現実(VR:Virtual Reality)あるいは拡張現実(AR:Augmented Reality)を体験するための表示装置に取り付けられ、表示される画像に関連付けられた香りを提供する。これにより、ユーザは、より実感を味わうことができる。
【0020】
図4及び
図5は、本実施形態に係る香り提供装置1を備えた頭部装着型表示装置1000を示す。
図4は、頭部装着型表示装置1000を前方側から見た斜視図であり、
図5は、
図4に示す頭部装着型表示装置1000を下方側から見た斜視図である。
【0021】
頭部装着型表示装置1000は、装着部1010、表示部1020及び香り提供装置1を備える。表示部1020は、ユーザの両眼の前方に配置され、画像を表示する。装着部1010は、表示部1020に接続され、表示部1020がユーザの両眼の前方に配置されるようにしてユーザの頭部に装着される。
【0022】
香り提供装置1は、表示部1020の下部の中央に取り付けられる。香り放出装置130から放出される香りは、ユーザの鼻腔に向けて放出される。また、空気放出装置90から放出される空気は、ユーザの鼻腔に向けて放出される。香り提供装置1は、例えば、頭部装着型表示装置1000の表示部1020の制御を行う図示しない制御装置からの操作信号を受信して、香りあるいは空気を放出する。具体的な使用方法の例は、後で詳しく説明する。
【0023】
なお、頭部装着型表示装置1000は、香り提供装置1の適用例の一つであって、香り提供装置1は、頭部装着型表示装置1000以外に適用されてもよい。
【0024】
<2.香り放出装置の構成例>
次に、香り放出装置130の構成の一例を説明する。
【0025】
(2-1.全体構成例)
図6~
図8は、香り放出装置130の構成例を示す説明図である。
図6は、香り放出装置130の斜視図である。
図7及び
図8は、それぞれ
図4に示す香り放出装置130をx方向及びy方向に切断した香り放出装置130の断面図である。
【0026】
香り放出装置130は、香料カートリッジ200を装着可能なハウジング710を備える。ハウジング710は、香料カートリッジ200が装着される装着部715を備える。装着部715には、香料カートリッジ200が挿入される筒部761を有する支持部材760が挿入されている。筒部761の中央には、香料カートリッジ200に設けられた軸方向孔215が嵌合される支持軸763が筒部761と同軸上に形成されている。
【0027】
支持部材760の筒部761の外周面には、支持部材760をハウジング710に挿入する際の位置決め要素である突部767が設けられている。突部767をハウジング710の装着部715に設けられたスリット溝716の位置に合わせた状態で支持部材760をハウジング710に挿入することにより、支持部材760が適切な位置に配置される。
【0028】
香料カートリッジ200のケース210の外周には、香料カートリッジ200を支持部材760に装着する際の位置決め要素となる突部212が設けられている。突部212を支持部材760の筒部761に設けられた位置決め溝768の位置に合わせた状態で香料カートリッジ200を支持部材760に挿入することにより、香料カートリッジ200が適切な位置に配置される。
【0029】
支持部材760は、軸方向に貫通する空気供給口765を有する。第1の送風装置840から供給される空気は、空気供給口765を介して香料カートリッジ200の保持空間231に導入される。空気供給口765は、香料カートリッジ200に設けられたすべての保持空間231に対応するように複数設けられている。
【0030】
第1の送風装置840は、例えば、圧電素子に対して交流電流を供給することによりダイヤフラムを変形させて空気の吸引及び圧送を行うダイヤフラム式のポンプであってよい。バッテリ810は、放電のみを行う交換可能な電池でもよいし、充放電可能な二次電池であってもよい。第1の送風装置840の駆動の制御は、例えば、回路基板820によるスイッチング制御により行われる。
【0031】
なお、第1の送風装置840は、バッテリ810から供給される電力により駆動可能なものであれば特に制限されるものではない。ダイヤフラム式のポンプの他にも、例えば、ファンを回転させる形式の送風装置であってもよい。
【0032】
(2-2.香料カートリッジ(香料保持構造体))
次に、ハウジング710に脱着可能な香料カートリッジ200の一例を詳細に説明する。本実施形態では、それぞれ香料保持体251が配置される5つの保持空間を備えた香料カートリッジを例に採って説明する。
【0033】
図9~
図12は、香料カートリッジ200の構成例を説明するための図である。
図9は、香料カートリッジ200の分解斜視図である。
図10は、香料カートリッジ200を前方側(香り吐出側)から軸方向に見た正面図であり、
図11は、香料カートリッジ200を後方側(空気流入側)から軸方向に見た背面図である。
図12は、香料カートリッジ200の軸方向断面図であり、
図10及び
図11に示すI-I断面の矢視図である。
【0034】
香料カートリッジ200は、全体として円筒形状の外観を有する。香料カートリッジ200は、第1の送風装置840から供給される空気を通過させる複数(本実施形態では五つ)の保持空間231a~231e(以下、特に区別することを要しない場合には、保持空間231と総称する。)を有する。それぞれの保持空間231には、液体香料を保持する香料保持体251が配置されている。香料は、例えば、精油、あるいは、エタノールで希釈された精油等であってもよい。保持空間231は4つ以下であってもよく、6つ以上であってもよい。
【0035】
本実施形態に係る香料カートリッジ200は、ケース210及び香料保持体251を備えている。ケース210は、第1のケース体211と、第1のケース体211の前方側に固定される第2のケース体100とを含む。香料保持体251は、液体香料を保持し、ケース210に設けられた複数の保持空間231のそれぞれに配置されている。保持空間231に香料保持体251が配置された状態においても、保持空間231に導入される空気が通過可能になっている。
【0036】
例えば、香料保持体251は、基材としての含浸材に液体香料を含浸させた保持体であってよい。この場合、含浸材としては、例えば、ポリエステルやナイロン、フェルト、あるいはポリアセタール等からなる多孔質体又は繊維体を用いることができる。また、含浸材は、液体香料に対する耐性を有する材料であることが好ましい。液体香料は、例えば、精油、あるいは、エタノールで希釈された精油等であってよい。香料保持体251に保持させる液体香料は、それぞれの保持空間231ごとに異なっていてもよく、同じであってもよい。
【0037】
香料カートリッジ200は、外周面に、香料カートリッジ200を装着する際の位置決め要素となる突部212a,21bを有する。突部212aは第2のケース体100に設けられ、突部212bは第1のケース体211に設けられ、互いに連なるようにして軸方向に沿って形成されている。
【0038】
第1のケース体211は、軸方向長さが直径よりも長い円筒形状の外形を有する。第1のケース体211の中央部には、軸方向の両端側に開口した軸方向孔215が設けられている。第1のケース体211には、5つの保持空間231が軸回りに60度等間隔で配置される一方、疑似空間232として1つの空間が設けられている。複数の保持空間231及び疑似空間232は、それぞれ第1のケース体211の前方側に開口している。また、複数の保持空間231の後方側は、それぞれ空気導入孔221を介して外部に開放される一方、疑似空間232の後方側は閉じられている。
【0039】
第1のケース体211は、後端面に、保持空間231の数と同数の空気導入孔221a~221e(以下、特に区別することを要しない場合には、空気導入孔221と総称する。)を有する。空気導入孔221は、それぞれの保持空間231を外部に開放する。本実施形態では、5つの空気導入孔221a~221eが、1つの疑似穴223と合わせて、軸回りに60度等間隔で配置されている。空気導入孔221は、ハウジング710に挿入され固定された支持部材760の空気供給口765と連通可能になっている。この空気供給口765及び空気導入孔221が、それぞれの保持空間231に空気を供給する空気供給路として機能する。なお、複数の保持空間231及び空気導入孔221の配置位置は等間隔でなくてもよい。
【0040】
第2のケース体100は、軸方向長さが直径よりも短い円筒形状の外形を有する。第2のケース体100は、第1のケース体211の前方側端部に係合されて固定される。第2のケース体100の外周面はローレット加工が施され、周方向に沿って形成された微細な溝が複数設けられている。
【0041】
第2のケース体100の中央部には、軸方向の両端側に開口した軸方向孔111が設けられている。第2のケース体100の軸方向孔111は、第2のケース体100が第1のケース体211に取り付けられた状態で、第1のケース体211の軸方向孔215と一体となって一つの軸方向孔を形成する。軸方向孔111の周りには、それぞれ軸方向の両端に開口した複数(本実施形態では五つ)の香り放出孔101a~101e(以下、特に区別することを要しない場合には、香り放出孔101と総称する。)が設けられている。複数の香り放出孔101は、一つの疑似孔103と合わせて、軸方向孔111の周りに等間隔(本実施形態では60度等間隔)で設けられている。ただし、香り放出孔101の配置位置は等間隔でなくてもよい。
【0042】
第2のケース体100が第1のケース体211に取り付けられた状態で、複数の香り放出孔101a~101eは、それぞれ保持空間231a~231eに連通し、保持空間231a~231eを外部に開放する。それぞれの保持空間231a~231eに設けられた空気導入孔221a~221eと第2のケース体100のそれぞれの香り放出孔101a~101eとは、軸回りの同位相に位置する。つまり、それぞれの保持空間231に設けられた空気導入孔221と香り放出孔101とは、軸方向に沿って直線的に結ばれる。
【0043】
第2のケース体100の外周面のうち、疑似孔103の配置位置の外周部に相当する位置に、軸方向に沿う所定長さを有する突部212aが設けられている。第2のケース体100が第1のケース体211に取り付けられた状態で、第2のケース体100の突部212aが第1のケース体211の突部212bに連続して配置されて、一体として突部212が形成される。
【0044】
本実施形態に係る香料カートリッジ200は、香料保持体251が配置された状態においても、保持空間231に導入される空気が通過可能になっている。保持空間231を空気が通過することにより、液体香料が気化されて空気に混合されて放出される。また、空気の供給口である空気導入孔221から放出口である香り放出孔101までの空間が、その他の開放口のない閉空間となっているため、通風によって気化された香料を全て放出口から効率的に放出させることができる。
【0045】
香料カートリッジ200を脱着可能な香り放出装置130であれば、香料カートリッジ200のみを容易に交換することができ、香り提供装置1を長期間にわたって使用することができる。また、用途や気分等に応じて異なる香料カートリッジ200へ容易に交換することができるため、1つの香料カートリッジ200に保持させる香料の種類が多くない場合であっても、異なる種類の香料を利用することが容易になる。
【0046】
(2-3.開閉機構)
図6~
図8に戻り、それぞれの保持空間231ごとに空気の通過の可否を切り換える開閉機構150を詳細に説明する。
【0047】
本実施形態に係る香り提供装置1の香り放出装置130において、開閉機構150は、それぞれ空気供給口765及び空気導入孔221により形成され、保持空間231へ空気を供給する空気供給路を開閉する。開閉機構150は、物理的刺激又は化学的刺激により変形する部材を含み、保持空間231ごとに空気の通過の可否を切り換える。
【0048】
開閉機構150は、弁部材151、付勢部材153及び変形部材155を備える。香料カートリッジ200のそれぞれの保持空間231に連通する空気供給口765ごとに、弁部材151、付勢部材153及び変形部材155が独立して設けられている。
図14には、保持空間231cに対応する弁部材151c、付勢部材153c及び変形部材155cのみが示されている。
【0049】
ハウジング710の内部には、ギャラリ室713が形成されている。ハウジング710の後端面には、ギャラリ室713を覆うようにして基板160が取り付けられている。ハウジング710と基板160との接触部分は、例えば半田付け等の処理を行うことで気密性が高められている。
【0050】
ギャラリ室713には、第1の送風装置840からの空気の導入口711及びそれぞれの保持空間231に連通する空気供給口765が接続されている。ギャラリ室713の中央には、支持部材760の筒部761から後方に延びる後方軸部769が配置される。後方軸部769の周囲には、それぞれの保持空間231a~231eに対応して、弁部材151a~151e、付勢部材153a~153e及び変形部材155a~155eが配置されている。以下、特に区別を要しない場合には、弁部材151、付勢部材153、あるいは変形部材155と総称する。
【0051】
導入口711からギャラリ室713に導入された空気は、開閉機構150及び後方軸部769の隙間を通ってギャラリ室713内に行きわたるようになっている。ギャラリ室713内において、開閉機構150及び後方軸部769の隙間は比較的少なくなるように構成されており、第1の送風装置840の駆動時に、空気が速やかに保持空間231へと供給されるようになっている。
【0052】
それぞれの弁部材151a~151eは、ギャラリ室713内に設けられた支持軸157a~157eにそれぞれ軸方向に摺動可能に支持されている。具体的に、弁部材151には、後方側に開口する挿入孔151caが設けられ、支持軸157の先端部が挿入孔151caに挿入されることにより、弁部材151が軸方向に摺動可能に支持される。弁部材151の先端面は、支持部材760の空気供給口765を囲むエッジ面に当接可能になっている。支持軸157及び挿入孔151caは、断面D字状に加工され、弁部材151が回転不能になっている。
【0053】
付勢部材153は、弁部材151と支持軸157の後端部との間に配置され、弁部材151を前進方向、つまり、空気供給口765を閉じる方向へと付勢する。本実施形態の例では、付勢部材153としてコイルばねが用いられ、コイルばねの先端部が弁部材151cに埋設され、後端部が支持軸157cの後端部によって支持されている。
【0054】
変形部材155は、物理的刺激又は化学的刺激により変形して、付勢部材153の付勢力に抗して弁部材151を後退方向、つまり、空気供給口765を開く方向へと移動させる。本実施形態の例では、変形部材155として、温度変化に伴って変形する感温変形部材の一態様である細線状の形状記憶合金が用いられている。形状記憶合金は、通電時に電気抵抗により発熱して変形する。
【0055】
図13は、弁部材151及び変形部材155を示す模式図である。細線状の形状記憶合金からなる変形部材155は、中心軸を挟んで弁部材151の両側面に設けられた張出部152a,152bのうちの一方の張出部152aから弁部材151を経由して他方の張出部152bへと配設されている。つまり、両端が後方に延びて配設された変形部材155は、弁部材151に係止された状態となっている。図示は省略されているが、変形部材155の両端は、回路基板820の駆動回路に電気的に接続されている。
【0056】
図7に示すように、変形部材155の両端は、それぞれハトメ161a,161bの内部孔を介してギャラリ室713から外部に導出されている。かかるハトメ161a,161bは、内部孔に変形部材155が貫通させた状態でカシメられる。これにより、変形部材155が固定されるとともに、ギャラリ室713が外部に対しての気密性が高められる。ハトメ161a,161bに対してさらに半田付け等の気密性を高める処理を施してもよい。このとき、変形部材155にプリテンション加工を施した後でハトメ161a,161bがカシメられる。これにより、変形部材155の非通電状態で変形部材155に張力を発生させた状態で弁部材151が空気供給口765を閉じた状態になって、変形部材155に通電した際の弁部材151cの移動開始までの応答性の向上を図ることができる。
【0057】
図14~
図15は、開閉機構150の動作を示す説明図である。
図14は、変形部材155cの非通電状態の様子を示す断面図であり、
図15は、変形部材155cの通電状態の様子を示す断面図である。
【0058】
変形部材155cの非通電状態においては、付勢部材153の付勢力により弁部材151cは前進方向に付勢されて、支持部材760の空気供給口765が閉じられている。一方、変形部材155cの通電状態においては、変形部材155が縮むことにより付勢部材153の付勢力に抗して弁部材151cが後退し、支持部材760の空気供給口765が開かれている。これにより、第1の送風装置840からギャラリ室713に導入された空気が、空気供給口765及び空気導入孔221を介して保持空間231に供給される。保持空間231に供給された空気は、保持空間231内で気化した香料とともに香り放出孔101から放出される。
【0059】
かかる弁部材151、付勢部材153及び変形部材155は、それぞれの保持空間231に対応して設けられ、それぞれの変形部材155a~155eへの通電は、回路基板820の駆動回路により制御される。このため、送風装置840が駆動した状態で、回路基板820の駆動回路に操作信号が入力されることにより、所望の保持空間231に空気が供給され、異なる香りを任意のタイミングで放出させることができる。
【0060】
このとき、変形部材155への通電量に応じて、弁部材151の後退量が調節可能にされてもよい。これにより、第1の送風装置840からの空気の供給量が一定であっても、それぞれの保持空間231を通過する空気の流量を調節することができる。また、それぞれの弁部材151の後退量を調節しつつ、複数の保持空間231へ空気を供給することにより、異なる香りの混合割合を調節しつつ、様々な香りを香り放出装置130から放出させることができる。
【0061】
開閉機構150の構成は、上記の例に限られない。物理的刺激又は化学的刺激により変形する変形部材を含み、変形部材の変形に伴って、それぞれの保持空間231に供給される空気供給路を開閉できるものであれば種々の変更が可能である。ここで、物理的刺激又は化学的刺激による変形とは、通電、電磁作用、熱反応、湿度変化、光反応又は化学反応等によって、部材の形状が変化することを意味する。このような変形部材としては、形状記憶合金以外にも、バイメタルや伸縮性素材等が用いられてもよい。
【0062】
また、開閉機構150の弁部材151は、前後方向に移動するものに限られず、空気供給路の軸方向に対して交差する方向へスライドするものであってもよい。また、開閉機構は、変形部材の変形により空気の通路の面積が縮径される絞り機能を有してもよく、回転板の回転により空気の通路が開閉されるドア機能を有してもよい。さらに、開閉機構は、空気の通路の途中に、通路の一部を構成する孔を有する部材を設け、当該部材を移動させることによって空気の通路を連通させるように構成してもよい。
【0063】
<3.空気放出装置の構成例>
複数の種類の香りを放出可能な香り放出装置を使用するにあたり、異なる香りを短い間隔で放出させた場合、香りが混じり合って、本来香らせたい香りをユーザに感じさせにくくなる。このため、本実施形態に係る香り提供装置1には、空気放出装置90が備えられる。
【0064】
上述のとおり、空気放出装置90は、第2の送風装置91及び送風ダクト93を備える。バッテリ810から電力が供給されて第2の送風装置91により発生した送風は、送風ダクト93を介して所定の方向に向けて放出される。空気放出装置90による空気の放出方向は、香り放出装置130による香りの放出方向と交差するように設計されている。このため、空気放出装置90により放出される空気と、香り放出装置130により放出される香りとが交差する位置の近傍において、残り香を空気により消し飛ばすことができる。
【0065】
図16は、
図4及び
図5に示した頭部装着型表示装置1000の香り放出装置130の放出方向L1と空気放出装置90の放出方向L2とを示す説明図である。
図4及び
図5に示した頭部装着型表示装置1000をユーザが頭部Hに装着した場合において、香り放出装置130の放出方向L1と空気放出装置90の放出方向L2とが、ユーザの鼻Nの鼻腔付近で交差するように設計されている。これにより、香り放出装置130が異なる香りを順次放出する場合に、残り香を消し飛ばしつつ、次の香りをユーザに香らせることができる。
【0066】
<4.回路構成例>
次に、香り提供装置1の香り放出装置130及び空気放出装置90の駆動制御を行う回路構成の一例を説明する。
【0067】
図17は、バッテリ810から変形部材155a~155e、第1の送風装置840及び第2の送風装置91への電力供給を制御する制御回路20の一例を簡略化して示す説明図である。制御回路20は、図示しない制御部により制御される。制御部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサであってもよい。
【0068】
制御回路20は、装置全体の電力供給をオンオフするメインスイッチ21を備える。また、制御回路20は、それぞれの変形部材155a~155eの電力供給をオンオフするスイッチ23a~23e、第1の送風装置840の電力供給をオンオフするスイッチ25及び第2の送風装置91の電力供給をオンオフするスイッチ27を備える。メインスイッチ21がオンにされた状態で、それぞれのスイッチ23a~23e,25,27をオンにすることにより、変形部材155a~155e、第1の送風装置840及び第2の送風装置91にそれぞれ電力が供給される。
【0069】
スイッチ23a~23e,25,27は、供給電流の大きさをリニアに設定可能なリニアスイッチであってもよい。スイッチ23a~23eがリニアスイッチであれば、弁部材151の移動量、つまり、空気供給路の通路面積がリニアに変更可能になって、香りの放出流量を調節することができる。また、スイッチ25,27がリニアスイッチであれば、第1の送風装置840又は第2の送風装置91の送風量をリニアに変更可能になって、香り又は空気の放出流量を調節することができる。
【0070】
制御回路20のスイッチ23a~23e,25,27のオンオフ動作は、ユーザによるボタン操作にしたがって行われてもよく、制御装置からの操作信号にしたがって行われてもよい。
【0071】
また、制御回路20が、無線通信インタフェースを備えてもよい。これにより、外部の制御機器からの操作信号を受信して、香り提供装置1を制御することができる。
【0072】
<5.動作例>
次に、本実施形態に係る香り提供装置1の動作例を説明する。
【0073】
制御回路20は、ユーザによるボタン操作、あるいは、制御装置からの操作信号にしたがって、香り放出装置130からの香りの放出を制御する。例えば、ユーザが、自身の気分に応じて所望の香りを選択して放出させてもよく、ユーザが視聴する画像あるいは動画の内容あるいは雰囲気に合わせて、制御装置が適宜の香りを放出させるように制御回路20を駆動させてもよい。
【0074】
(5-1.ユーザの操作による動作例)
図18は、ユーザ自身が香りの放出及び空気の放出を制御するための操作機器の画面表示30の一例を示す。かかる操作機器は、スマートホンやタブレット端末であってもよく。専用の操作機器であってもよい。図示した画面表示30は、メインスイッチ21のオンオフを選択する操作部31、香り放出装置130から放出させる香りを選択する操作部33、及び、空気放出装置90から放出させる空気の流量を選択する操作部35を含む。ユーザは、画面表示30にしたがって所望の操作ボタンを押下することにより、香りの放出及び空気の放出を制御することができる。
【0075】
ユーザは、放出させたい香りの種類に応じた保持空間231(図中、SLOT1~SLOT5と表示)に応じて適宜の操作ボタンを押下する。図示した例では、制御部は、ユーザが選択したボタンに対応する保持空間231に通じる弁部材151を開いて保持空間231に空気を供給し、あらかじめ設定された時間(例えば1秒間)香りを放出させる。
【0076】
香りが選択可能になっているだけでなく、香りの放出時間が選択可能になっていてもよい。例えば、ユーザが香りの放出時間を3段階(0.3秒、1秒、3秒)で選択可能になっており、選択された時間に応じて弁部材151が開かれるようになっていてもよい。さらに、香りの強度が選択可能になっていてもよい。例えば、ユーザが香りの強度を3段階(強中弱)で選択可能になっており、選択された強度に応じて弁部材151の開度が調節されるようになっていてもよい。
【0077】
また、
図18に示した例において、ユーザは、空気の流量を3段階(HI/MID/LO)で選択可能になっている。制御部は、選択された流量に応じて、空気放出装置90から常時空気を放出させてもよい。常時空気を放出させることにより、香りの放出期間以外の期間にはユーザの鼻の周囲を無臭状態にしつつ、放出させた香りをユーザに香らせた後には速やかに残り香を消し飛ばすことができる。したがって、次に放出させる香りが交じり合うことを抑制することができる。この場合、制御部は、香りを放出させる期間のみ、空気の放出を停止させてもよい。
【0078】
また、制御部は、香り放出装置130から香りを放出させた後、空気放出装置90から空気を放出させてもよい。香りの放出後に空気を放出させることにより、放出させた香りをユーザに香らせた後に残り香を消し飛ばすことができる。この場合、制御部は、あらかじめ設定した所定時間又は所定量の空気を放出させてもよく、香りの放出量に応じて空気の放出量を調節してもよい。また、香りを放出させる頻度によっては、電力消費量を低減させることができる。
【0079】
また、制御部は、香り放出装置130から香りを放出させる直前に、空気放出装置90から空気を放出させてもよい。つまり、制御部は、空気放出装置90から空気を放出させた後、香り放出装置130から香りを放出させてもよい。香りの放出の直前に空気を放出させることにより、ユーザに対して香りの放出を意識させることができる。
【0080】
(5-2.制御装置の操作指令による動作例)
香り提供装置1による香りの放出及び空気の放出は、静止画や動画の表示を制御する制御装置等の他の制御装置からの操作指令に基づいて制御されてもよい。例えば、ARやVR、映画等において再生する動画の内容に応じた雰囲気を形成するために香り提供装置1が制御されてもよい。あるいは、アドラクション施設等において、ユーザが移動する位置に応じた雰囲気を形成するために香り提供装置1が制御されてもよい。
【0081】
図19は、香り放出装置130及び空気放出装置90を備えた香り提供装置1の動作例を示している。かかる動作例は、食べ物の画像を表示させつつ、表示される食べ物を連想させる香りをユーザに提供する動作例であって、香り放出装置130が一つの保持空間231(SLOT1)を通じて香りAを提供した後、短期間内に他の保持空間231(SLOT5)を通じて香りBを提供する例である。この場合、画像を表示する制御装置は、画像を表示させるタイミングに合わせて適宜の香りを発生させる操作指令を香り提供装置1の制御部に出力するように設定されている。
【0082】
図19に示した例では、香り提供装置1から放出される香りAの強度が徐々に強くなるように第1の送風装置840の出力又は弁部材151の開度の少なくとも一方が調節された後、第2の送風装置91が作動されて空気放出装置90から空気が放出され(図中のE1)、香りAの強度が低下される。また、香りBが放出される直前に、再び空気放出装置90から空気が放出され(図中のE2)、香りAが消し飛ばされる。その後に、放出される香りBの強度が徐々に強くなるように第1の送風装置840の出力又は弁部材151の開度の少なくとも一方が調節される。以降は、香りBの放出後に空気の放出が行われて(図中E3)、香りBの強度が低下される。
【0083】
このようにして、香り提供装置1は、ユーザに提供される雰囲気を形成するために、他の制御装置からの操作指令に基づいて香りを提供する。これにより、ユーザに対して短時間の間に異なる香りが提供される場合に、香りが混合されにくくなって、ユーザに提供する雰囲気を適切に制御することができる。
【0084】
なお、制御装置の操作指令により香り提供装置1を動作させる場合においても、香りの放出に対応させた空気の放出方法については、上記(5-1.)で説明した制御部による動作が適用され得る。また、香り放出装置130及び空気放出装置90を操作する動作パターンの情報が他の制御装置に記憶され、他の制御装置から香り提供装置1に操作指令が出力される構成例以外に、香り放出装置130の制御部にあらかじめ動画等に連動する動作パターンの情報が記憶され、香り提供装置1自身が当該動作パターンに従って香り放出装置130及び空気放出装置90を操作してもよい。
【0085】
<6.変形例>
香り放出装置130は、上記の例以外にも種々の変形が可能である。
【0086】
例えば、上記実施形態の例では、香り放出装置130と空気放出装置90とが一つのユニットとして構成されていたが、香り放出装置130と空気放出装置90とは、分離して構成されていてもよい。
【0087】
図20及び
図21は、変形例に係る香り提供装置を備えた頭部装着型表示装置1001を示す。
図20は、頭部装着型表示装置1001を前方側から見た斜視図であり、
図21は、
図20に示す頭部装着型表示装置1001の一部を下方側からみた斜視図である。
【0088】
変形例に係る頭部装着型表示装置1001は、装着部1010と表示部1020と香り放出装置130と空気放出装置90とを備え、香り放出装置130と空気放出装置90とが分離して配置されている。香り放出装置130は、ユーザの両目の前方に配置される表示部1020の上部に配置され、空気放出装置90は、表示部1020の下部に配置されている。香り放出装置130と空気放出装置90とは送気管80で接続され、香り放出装置130から放出される香りが送気管80を介して空気放出装置90に送られる。
【0089】
空気放出装置90は、送風ダクト97及び第2の送風装置91を備える。送風ダクト97は、ユーザの鼻が配置されるガイド部98を有する。送風ダクト97は、ガイド部98が設けられた端部側に開口している。ガイド部98が設けられた端部側とは反対側の端部に、送気管80が接続されている。送気管80を介して香り放出装置130から送られた香りは、ガイド部98を通過してユーザの鼻に導かれる。
【0090】
第2の送風装置91は、送風ダクト97内の空気あるいは香りを外部に排出可能になっている。つまり、
図20及び
図21に示す頭部装着型表示装置1001の空気放出装置90は、空気をユーザの鼻腔に向けて放出するのではなく、空気を送風ダクト97内から排出可能になっている。これにより、ユーザの鼻が配置されたガイド部98に向けて香りが放出された後に、残り香を速やかに送風ダクト97内から排出させることができる。
【0091】
第2の送風装置91により排出される気流は、ユーザの口に向けられていてもよい。
図22は、第2の送風装置91により排出される気流がユーザの口に向けられる様子を示す説明図である。気流がユーザの口に向けられていることにより、例えば、香りを放出する直前に第2の送風装置91を短期間動作させた場合に、気流が口元付近に衝突して、ユーザに香りの放出を意識させることができる。
【0092】
なお、
図20~
図22に示した変形例に係る頭部装着型表示装置1001において、香り放出装置130の配置位置は、表示部1020の上部以外の位置であってもよい。
【0093】
また、香り放出装置130は、香料カートリッジ200のそれぞれの保持空間231を通過した空気が流入可能な香り混合室を備えてもよい。香り混合室を備えることにより、異なる種類の香料が保持された複数の保持空間231に同時に空気を通過させ、これらの香りを混合したうえで放出させることができる。したがって、例えば5種類の香りを保持可能な香料カートリッジであれば、1種単独又は複数種の組み合わせにより合計30種類の香りを放出させることもできる。
【0094】
また、香り混合室を備える場合、香り混合室の内部に、攪拌流を生成するための構成を備えてもよい。例えば、香り混合室の内壁面から立設するフィンが設けられてもよく、香り混合室の内部に、攪拌流を生成可能なスタティックミキサが備えられてもよい。
【0095】
また、上記の香り放出装置130の開閉機構150は、保持空間231への空気供給路を開閉するものであったが、開閉機構は保持空間231からの香り放出路を開閉してもよい。香り放出路を閉じた場合であっても保持空間231を空気が通過することができないために、開閉機構により香りの放出の可否を切り換えることができる。開閉機構が香り放出路を開閉するように構成した場合、空気を通過させる保持空間231以外の保持空間231からの香りの漏れを抑制することができる。一方、開閉機構が空気供給路を開閉するように構成した場合、開閉機構を構成する部材が液体香料に侵食されたりする等のダメージを受けることを抑制することができる。
【0096】
また、開閉機構150は、空気供給路及び香り放出路の両方に設けられてもよい。これにより、空気を通過させない保持空間231からの香りの漏れを防ぐ効果を高めることができる。
【0097】
また、香り提供装置1が、複数の香料カートリッジ及び開閉機構を備えてもよい。この場合、複数の香料カートリッジが直列に配置されて、第1の送風装置840から供給される空気が、複数の香料カートリッジを順次通過するように構成されてもよい。複数の香料カートリッジに対して空気を通過させることにより、異なる香りを混合させたり、同一の香りの強度を高めたりすることができる。
【0098】
また、香り提供装置1は、複数の香り放出装置130を備えてもよい。これにより、より多くの種類の香りを放出させることができる。この場合、複数の香り放出装置130がそれぞれ第1の送風装置840を備えてもよく、複数の香り放出装置130の一部又は全部に共有の第1の送風装置840を備えてもよい。これにより、様々な香りを放出させることができる。また、複数の香り放出装置130からの香りの放出口が対向するように複数の香り放出装置130を備えてもよい。これにより、容易に香りを混合させて放出させることができる。
【0099】
また、香料カートリッジ200の複数の保持空間231のうちの少なくとも一つが、香料を保持させずに使用されてもよい。例えば、香料が保持されたいずれかの保持空間231に空気を通過させつつ、香料が保持されない保持空間231にも空気を通過させることにより、香りの強度を低下させることができる。また、香料が保持されない保持空間231を設けることにより、無臭の空気を放出することができるようになり、空気放出装置90を省略することができる。さらには、香料を保持させない代わりに、活性炭等の消臭剤を保持させてもよい。これにより、残り香の消臭効果を高めることができる。
【0100】
また、上記実施形態に係る香り提供装置1において、香りの放出方向又は空気の放出方向のうちの少なくとも一方が調節可能になっていてもよい。これにより、ユーザの好みに応じて香りあるいは空気の放出方向を調節することができる。
【0101】
以上説明したように、本実施形態に係る香り提供装置1によれば、それぞれ香料が保持される複数の保持空間231を有する脱着可能な香料カートリッジ200を用いた香り放出装置130を備えるため、香料カートリッジ200を変更するのみで香料を容易に交換あるいは補充することができる。したがって、香り提供装置1を長期間にわたって使用することが可能になる。
【0102】
また、本実施形態に係る香り提供装置1は、複数の保持空間231ごとに空気の通過の可否を切り換える開閉機構150を備えるために、放出させる香料の切り替えを速やかに行うことができる。また、香り提供装置1は、複数の保持空間231ごとに空気の通過の可否を切り換える開閉機構150を備えるために、複数の保持空間231に同時に空気を通過させることができ、香りを混合させながら放出させることもできる。また、開閉機構150が、物理的刺激又は化学的刺激により変形する変形部材155を含む機構であるために、動作時の振動及び振動を低減することができる。
【0103】
また、本実施形態に係る香り提供装置1は、空気放出装置90を備えており、ユーザの鼻に向けて空気を放出し、あるいは、ユーザの鼻付近から空気を吹き飛ばすことにより、鼻の周囲の空気を入れ替えることができる。このため、香りを消失させたり、香りの切り換えのための準備を行わせたりすることができる。また、香り放出装置130からの香りの放出量の調節に代わり、あるいは、香りの放出量の調節とともに、空気放出装置90からの空気の放出量を調節することによって、香りの強度を調節してもよい。
【0104】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0105】
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
(1)それぞれ香料が保持される複数の保持空間を有し、脱着可能な香料保持構造体と、
前記保持空間を通過させる空気を供給する送風装置と、
それぞれの前記保持空間に前記空気を導入する複数の空気供給路と、
物理的刺激又は化学的刺激により変形する部材を含み、前記保持空間ごとに前記空気の通過の可否を切り換える開閉機構と、
前記開閉機構を制御する制御部と、を備える、
香り提供装置。
(2)前記開閉機構は、
前記空気の流路を閉じる弁部材と、
前記空気の流路を閉じる方向へ前記弁部材を付勢する付勢部材と、
物理的刺激又は化学的刺激により変形して、前記空気の流路を開く方向へ前記弁部材を移動させる変形部材と、を備える、
前記(1)に記載の香り提供装置。
(3)前記変形部材が、温度変化に伴って変形する感温変形部材である、
前記(1)又は(2)に記載の香り提供装置。
(4)前記感温変形部材が、形状記憶合金、バイメタル又は伸縮性素材である、
前記(3)に記載の香り提供装置。
(5)前記変形部材が、細線状の形状記憶合金であり、
前記細線状の形状記憶合金が、通電による温度変化により変形して、前記付勢部材の付勢方向に抗して前記弁部材を移動させて前記空気の流路を開く、
前記(2)に記載の香り提供装置。
(6)前記細線状の形状記憶合金の非通電状態において、前記細線状の形状記憶合金に張力を発生させた状態で前記弁部材が前記空気の流路を閉じる、
前記(5)に記載の香り提供装置。
(7)前記開閉機構が、前記空気供給路に備えられる、
前記(1)~(6)のいずれか1項に記載の香り提供装置。
(8)前記送風装置から供給される空気が導入され、複数の前記空気供給路が接続されたギャラリ室を備える、
前記(1)~(7)のいずれか1項に記載の香り提供装置。
(9)前記開閉機構が、前記空気供給路に備えられ、
前記変形部材が、細線状の形状記憶合金であり、
前記細線状の形状記憶合金の少なくとも一部は、前記ギャラリ室内に配置され、
前記細線状の形状記憶合金は、ハトメの内部孔を介して前記ギャラリ室の外に導出され、
前記ハトメがカシメられることにより前記細線状の形状記憶合金が固定され、かつ、前記ギャラリ室が外部に対して閉鎖される、
前記(8)に記載の香り提供装置。
(10)それぞれの前記保持空間を通過した空気が流入可能な香り混合室を備える、
前記(1)~(9)のいずれか1項に記載の香り提供装置。
(11)複数の香りの中から選択される香りを選択的に放出可能な香り放出部と、
放出される香りの到達範囲に向けて空気を放出可能な空気放出部と、
前記香り放出部及び前記空気放出部を制御する制御部と、
を備えた、香り提供装置。
(12)前記香り放出部による香りの放出方向と、前記空気放出部による空気の放出方向とが交差する、
前記(11)に記載の香り提供装置。
(13)前記香り提供装置は、ユーザの頭部に装着されて用いられ、前記ユーザの鼻孔の周囲で、前記香り放出部による香りの放出方向と、前記空気放出部による空気の放出方向とが交差する、
前記(12)に記載の香り提供装置。
(14)前記制御部は、
前記香り提供装置の主電源がオンになっている状態で、前記空気放出部から常時前記空気を放出させる、
前記(11)に記載の香り提供装置。
(15)前記制御部は、
前記香り放出部からの香りの放出期間に、前記空気の放出を停止させる、
前記(14)に記載の香り提供装置。
(16)前記制御部は、
前記香り放出部から香りを放出させた後、前記空気放出部から前記空気を放出させる、
前記(11)に記載の香り提供装置。
(17)前記制御部は、
前記空気放出部から前記空気を放出させた後、前記香り放出部から香りを放出させる、
前記(11)に記載の香り提供装置。
(18)前記制御部は、
前記空気放出部からの空気の放出量を調節することにより、放出させる香りの強度を調節する、
前記(11)に記載の香り提供装置。
(19)前記香り提供装置は、前記香り提供装置は、ユーザの頭部に装着されて用いられ、ユーザの鼻が配置されるガイド部を有する送風ダクトを備え、
前記香り放出装置から放出される香りは、前記送風ダクトを介して前記ガイド部に向けて放出され、
前記空気放出装置は、前記送風ダクト内の空気又は香りを前記送風ダクト外へ排出する、
前記(11)に記載の香り提供装置。
(20)前記空気放出装置により前記送風ダクト外へ排出される気流は、ユーザの口に向けられる、
前記(19)に記載の香り提供装置。
(21)ユーザの頭部に装着される装着部と、
前記ユーザによる装着時に前記ユーザの視線方向に配置される表示部と、
香り提供装置と、を備え、
前記香り提供装置は、
複数の香りの中から選択される香りを選択的に放出可能な香り放出部と、
放出される香りの到達範囲に向けて空気を放出可能な空気放出部と、
前記香り放出部及び前記空気放出部を制御する制御部と、
を備えた、頭部装着型表示装置。
【符号の説明】
【0106】
1 香り提供装置
20 制御回路
90 空気放出装置
91 第2の送風装置
93 送風ダクト
151 弁部材
153 付勢部材
155 変形部材
200 香料保持構造体(香料カートリッジ)
221c 空気導入孔
231 保持空間
765 空気供給口
810 バッテリ
820 回路基板
840 第1の送風装置