(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107008
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】トラクタ
(51)【国際特許分類】
B62D 1/02 20060101AFI20240801BHJP
A01B 69/00 20060101ALI20240801BHJP
B62D 5/04 20060101ALI20240801BHJP
B62D 6/00 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
B62D1/02
A01B69/00 301
A01B69/00 303M
B62D5/04
B62D6/00
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024076966
(22)【出願日】2024-05-10
(62)【分割の表示】P 2024037146の分割
【原出願日】2018-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】川井 美紗子
(72)【発明者】
【氏名】小林 句美子
(72)【発明者】
【氏名】森岡 保光
(72)【発明者】
【氏名】西野 邦彦
(57)【要約】
【課題】自動操舵に関わる複数のスイッチの誤操作を防ぐ。
【解決手段】ステアリングハンドルと、ステアリングハンドルを回転可能に支持するステアリングシャフトと、ステアリングハンドルによる手動操舵と走行予定ラインに基づくステアリングハンドルの自動操舵とのいずれかで走行可能な車体と、自動操舵時にステアリングハンドルを回転させるステアリングモータと、ステアリングシャフトの周囲に配置され且つ自動操舵の開始又は終了を切り換える操舵切換スイッチと、車体の自動操舵を行う自動操舵機構と、ステアリングモータを制御する制御装置とを備え、自動操舵機構は、ステアリングシャフトに設けられ且つステアリングシャフトと供回りするギアと、ステアリングモータの回転軸に設けられ且つ回転軸と供回りするギアとを含むギア機構を有し、操舵切換スイッチ、制御装置、ギア機構は、ステアリングハンドルの下方に配置されているトラクタ。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングハンドルと、
前記ステアリングハンドルを回転可能に支持するステアリングシャフトと、
前記ステアリングハンドルによる手動操舵と、走行予定ラインに基づく前記ステアリングハンドルの自動操舵とのいずれかで走行可能な車体と、
前記自動操舵時に前記ステアリングハンドルを回転させるステアリングモータと、
前記ステアリングシャフトの周囲に配置され且つ、前記自動操舵の開始又は終了を切り換える操舵切換スイッチと、
前記車体の自動操舵を行う自動操舵機構と、
前記ステアリングモータを制御する制御装置と、
を備え、
前記自動操舵機構は、前記ステアリングシャフトに設けられ且つ当該ステアリングシャフトと供回りするギアと、前記ステアリングモータの回転軸に設けられ且つ当該回転軸と供回りするギアとを含むギア機構を有し、
前記操舵切換スイッチ、前記制御装置及び前記ギア機構は、前記ステアリングハンドルの下方に配置されているトラクタ。
【請求項2】
前記ギア機構は、前記操舵切換スイッチの下方に配置されている請求項1に記載のトラクタ。
【請求項3】
前記ギア機構は、前記ステアリングシャフトの一方側と他方側に跨って配置されている請求項1又は2に記載のトラクタ。
【請求項4】
前記ギア機構は、前記ステアリングモータの出力軸に装着された第1ギアと、前記第1ギアと噛み合う第2ギアと、前記ステアリングシャフトに取り付けられ且つ前記第2ギアの回転に伴って前記ステアリングシャフトと共に回転する第4ギアと、を含んでいる請求項1~3のいずれか1項に記載のトラクタ。
【請求項5】
前記ギア機構は、連結軸により前記第2ギアと連結された第3ギアを含み、
前記第2ギアと前記第3ギアは、前記連結軸と共に一体的に回転し、
前記第4ギアは、前記第3ギアと噛み合っている請求項4に記載のトラクタ。
【請求項6】
前記ステアリングモータと前記ギア機構と前記制御装置は、側面視にて、前記ステアリングシャフトの軸心方向に沿って並んで配置されている請求項1~5のいずれか1項に記載のトラクタ。
【請求項7】
前記制御装置は、前記ステアリングシャフトの軸心方向において、側面視にて、前記ギア機構を挟んで前記ステアリングモータと反対側に配置されている請求項6に記載のトラクタ。
【請求項8】
トラクタの運転情報を表示可能な表示装置と、
前記表示装置を支持するパネルカバーと、
を備え、
前記ステアリングモータと前記ギア機構と前記制御装置は、前記パネルカバーの内部に配置されている請求項1~7のいずれか1項に記載のトラクタ。
【請求項9】
前記制御装置は、筐体と、前記筐体内に配置された回路基板とを有し、
前記筐体は、直方体状であって、前記パネルカバーの内部において、最も短い辺が車体幅方向又は略車体幅方向を向くように縦置きで配置されている請求項8に記載のトラクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示された作業車両(トラクタ)が知られている。
特許文献1に開示された作業車両は、GPS衛星から送信される電波を受信して機体の位置を算出するGPS位置算出手段と、操舵装置を回動する操舵駆動手段と、エンジン回転制御手段と、変速手段と、これらを制御する制御部を備え、機体の位置に基づいて設定経路に沿って走行するように操舵駆動手段、エンジン回転制御手段及び変速手段を制御して自動走行可能とする自動走行モードと、変速操作手段、操舵操作手段及びエンジン回転操作手段の人為的操作に応じて機体の走行を可能とする手動走行モードとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記作業車両は、自動走行モードと手動走行モードを切り換えるモード切換操作手段となる自動・手動切換スイッチを備えている。しかしながら、特許文献1には、自動・手動切換スイッチの具体的な配置については開示されておらず、また、自動操舵の開始前の設定を行う設定モードに切り換えるスイッチについても開示されていない。そのため、特許文献1に開示の作業車両では、自動操舵に関わる複数のスイッチの誤操作を確実に防ぐことは困難であった。
【0005】
本発明は、このような従来技術に鑑みてなされたものであって、自動操舵に関わる複数のスイッチの誤操作を確実に防ぐことができる作業車両(トラクタ)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るトラクタは、ステアリングハンドルと、前記ステアリングハンドルを回転可能に支持するステアリングシャフトと、前記ステアリングハンドルによる手動操舵と、走行予定ラインに基づく前記ステアリングハンドルの自動操舵とのいずれかで走行可能な車体と、前記自動操舵時に前記ステアリングハンドルを回転させるステアリングモータと、前記ステアリングシャフトの周囲に配置され且つ、前記自動操舵の開始又は終了を切り換える操舵切換スイッチと、前記車体の自動操舵を行う自動操舵機構と、前記ステアリングモータを制御する制御装置と、を備え、前記自動操舵機構は、前記ステアリングシャフトに設けられ且つ当該ステアリングシャフトと供回りするギアと、前記ステアリングモータの回転軸に設けられ且つ当該回転軸と供回りするギアとを含むギア機構を有し、前記操舵切換スイッチ、前記制御装置及び前記ギア機構は、前記ステアリングハンドルの下方に配置されている。
【0007】
好ましくは、前記ギア機構は、前記操舵切換スイッチの下方に配置されている。
好ましくは、前記ギア機構は、前記ステアリングシャフトの一方側と他方側に跨って配置されている。
【0008】
好ましくは、前記ギア機構は、前記ステアリングモータの出力軸に装着された第1ギアと、前記第1ギアと噛み合う第2ギアと、前記ステアリングシャフトに取り付けられ且つ前記第2ギアの回転に伴って前記ステアリングシャフトと共に回転する第4ギアと、を含んでいる。
好ましくは、前記ギア機構は、連結軸により前記第2ギアと連結された第3ギアを含み、前記第2ギアと前記第3ギアは、前記連結軸と共に一体的に回転し、前記第4ギアは、前記第3ギアと噛み合っている。
【0009】
好ましくは、前記ステアリングモータと前記ギア機構と前記制御装置は、側面視にて、前記ステアリングシャフトの軸心方向に沿って並んで配置されている。
好ましくは、前記制御装置は、前記ステアリングシャフトの軸心方向において、側面視にて、前記ギア機構を挟んで前記ステアリングモータと反対側に配置されている。
【0010】
好ましくは、トラクタは、トラクタの運転情報を表示可能な表示装置と、前記表示装置を支持するパネルカバーと、を備え、前記ステアリングモータと前記ギア機構と前記制御装置は、前記パネルカバーの内部に配置されている。
好ましくは、前記制御装置は、筐体と、前記筐体内に配置された回路基板とを有し、前記筐体は、直方体状であって、前記パネルカバーの内部において、最も短い辺が車体幅方向又は略車体幅方向を向くように縦置きで配置されている。
【発明の効果】
【0011】
上記トラクタによれば、自動操舵に関わる複数のスイッチの誤操作を確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】作業車両(トラクタ)の構成及び制御ブロック図を示す図である。
【
図3A】プッシュスイッチにおける補正量を説明する説明図である。
【
図3B】スライドスイッチにおける補正量を説明する説明図である。
【
図4A】プッシュスイッチにおける第1補正部及び第2補正部を示す図である。
【
図4B】スライドスイッチにおける第1補正部及び第2補正部を示す図である。
【
図5A】自動操舵中で直進中に演算車体位置が右にずれた場合の状態を示している。
【
図5B】自動操舵中で直進中に演算車体位置が左にずれた場合の状態を示している。
【
図7】車体前部の内部構造の要部を示す平面図である。
【
図8】車体前部の内部構造の要部を示す左側面図である。
【
図9】車体前部の内部構造の要部を示す右側面図である。
【
図10】車体前部の内部構造の要部を示す背面図である。
【
図11】ステアリングハンドル、カバー等を示す背面図である。
【
図12】パネルカバー等を表示装置の表示面に対する垂直方向から見た図である。
【
図13】パネルカバー等をステアリングシャフトの軸方向の上方から見た図である。
【
図14】操舵切換スイッチの動きを説明する左側面図である。
【
図15】車体前部の内部構造の要部を示す後方斜視図である。
【
図16】
図7の一部(前部)を拡大して示す平面図である。
【
図17】ステアリングハンドル、ギア機構等を示す右後方斜視図である。
【
図19】慣性計測装置の取付構造を示す斜視図である。
【
図20】慣性計測装置の取付構造を示す平面図である。
【
図21】慣性計測装置、支持部材、防振部材、支持板を示す斜視図である。
【
図22】慣性計測装置の取付構造を示す右側面図である。
【
図23】慣性計測装置の取付構造の後部を拡大して示す右側面図である。
【
図26】慣性計測装置の取り付け位置を説明する概略平面図である。
【
図27】画面切換スイッチにより切り換えられる第1画面と第2画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
<作業車両の概略>
図28は作業車両1の一実施形態を示す側面図であり、
図29は作業車両1の一実施形態を示す平面図である。本実施形態の場合、作業車両1はトラクタである。但し、作業車両1は、トラクタに限定されず、コンバインや移植機等の農業機械(農業車両)であってもよいし、ローダ作業機等の建設機械(建設車両)等であってもよい。
【0014】
以下、トラクタ(作業車両)1の運転席10に着座した運転者の前側(
図28の矢印A1方向)を前方、運転者の後側(
図28の矢印A2方向)を後方、運転者の左側(
図29の矢印B1方向)を左方、運転者の右側(
図29の矢印B2方向)を右方として説明する。また、トラクタ1の前後方向に直交する方向である水平方向(
図29の矢印B3方向)を車体幅方向として説明する。
【0015】
図28に示すように、トラクタ1は、車体3と、原動機4と、変速装置5とを備えている。車体3は走行装置7を有していて走行可能である。走行装置7は、前輪7F及び後輪7Rを有する装置である。前輪7Fは、タイヤ型であってもクローラ型であってもよい。また、後輪7Rも、タイヤ型であってもクローラ型であってもよい。
原動機4は、ディーゼルエンジン、電動モータ等であって、この実施形態ではディーゼルエンジンで構成されている。変速装置5は、変速によって走行装置7の推進力を切換可能であると共に、走行装置7の前進、後進の切換が可能である。車体3には運転席10が設けられている。
【0016】
また、車体3の後部には、3点リンク機構等で構成された連結部8が設けられている。連結部8には、作業装置を着脱可能である。作業装置を連結部8に連結することによって、車体3によって作業装置を牽引することができる。作業装置は、耕耘する耕耘装置、肥料を散布する肥料散布装置、農薬を散布する農薬散布装置、収穫を行う収穫装置、牧草等の刈取を行う刈取装置、牧草等の拡散を行う拡散装置、牧草等の集草を行う集草装置、牧草等の成形を行う成形装置等である。
【0017】
図1に示すように、変速装置5は、主軸(推進軸)5aと、主変速部5bと、副変速部5cと、シャトル部5dと、PTO動力伝達部5eと、前変速部5fと、を備えている。推進軸5aは、変速装置5のハウジングケース(ミッションケース)に回転自在に支持され、当該推進軸5aには、エンジン4のクランク軸からの動力が伝達される。主変速部5bは、複数のギア及び当該ギアの接続を変更するシフタを有している。主変速部5bは、複数のギアの接続(噛合)をシフタで適宜変更することによって、推進軸5aから入力された回転を変更して出力する(変速する)。
【0018】
副変速部5cは、主変速部5bと同様に、複数のギア及び当該ギアの接続を変更するシフタを有している。副変速部5cは、複数のギアの接続(噛合)をシフタで適宜変更する
ことによって、主変速部5bから入力された回転を変更して出力する(変速する)。
シャトル部5dは、シャトル軸12と、前後進切替部13とを有している。シャトル軸12には、副変速部5cから出力された動力がギア等を介して伝達される。前後進切換部13は、例えば、油圧クラッチ等で構成され、油圧クラッチの入切によってシャトル軸12の回転方向、即ち、トラクタ1の前進及び後進を切り換える。シャトル軸12は、後輪デフ装置20Rに接続されている。後輪デフ装置20Rは、後輪7Rが取り付けられた後車軸21Rを回転自在に支持している。
【0019】
PTO動力伝達部5eは、PTO推進軸14と、PTOクラッチ15とを有している。PTO推進軸14は、回転自在に支持され、推進軸5aからの動力が伝達可能である。PTO推進軸14は、ギア等を介してPTO軸16に接続されている。PTOクラッチ15は、例えば、油圧クラッチ等で構成され、油圧クラッチの入切によって、推進軸5aの動力をPTO推進軸14に伝達する状態と、推進軸5aの動力をPTO推進軸14に伝達しない状態とに切り換わる。
【0020】
前変速部5fは、第1クラッチ17と、第2クラッチ18とを有している。第1クラッチ17及び第2クラッチは、推進軸5aからの動力が伝達可能であって、例えば、シャトル軸12の動力が、ギア及び伝動軸を介して伝達される。第1クラッチ17及び第2クラッチ18からの動力は、前伝動軸22を介して前車軸21Fに伝達可能である。具体的には、前伝動軸22は、前輪デフ装置20Fに接続され、前輪デフ装置20Rは、前輪7Fが取り付けられた前車軸21Fを回転自在に支持している。
【0021】
第1クラッチ17及び第2クラッチ18は、油圧クラッチ等で構成されている。第1クラッチ17には油路が接続され、当該油路には油圧ポンプから吐出した作動油が供給される第1作動弁25に接続されている。第1クラッチ17は、第1作動弁25の開度によって接続状態と切断状態とに切り換わる。第2クラッチ18には油路が接続され、当該油路は第2作動弁26に接続されている。第2クラッチ18は、第2作動弁26の開度によって接続状態と切断状態とに切り換わる。第1作動弁25及び第2作動弁26は、例えば、電磁弁付き二位置切換弁であって、電磁弁のソレノイドを励磁又は消磁することにより、接続状態又は切断状態に切り換わる。
【0022】
第1クラッチ17が切断状態で且つ第2クラッチ18が接続状態である場合、第2クラッチ18を通じてシャトル軸12の動力が前輪7Fに伝達される。これにより、前輪及び後輪が動力によって駆動する四輪駆動(4WD)で且つ前輪と後輪との回転速度が略同じとなる(4WD等速状態)。一方、第1クラッチ17が接続状態で且つ第2クラッチ18が切断状態である場合、四輪駆動になり且つ前輪の回転速度が後輪の回転速度に比べて速くなる(4WD増速状態)。また、第1クラッチ17及び第2クラッチ18が接続状態である場合、シャトル軸12の動力が前輪7Fに伝達されないため、後輪が動力によって駆動する二輪駆動(2WD)となる。
<位置検出装置の概要>
トラクタ1は、位置検出装置40を備えている。位置検出装置40は、D-GPS、GPS、GLONASS、北斗、ガリレオ、みちびき等の衛星測位システム(測位衛星)により、自己の位置(緯度、経度を含む測位情報)を検出する装置である。即ち、位置検出装置40は、測位衛星から送信された受信信号(測位衛星の位置、送信時刻、補正情報等)を受信し、受信信号に基づいて位置(例えば、緯度、経度)を検出する。位置検出装置40は、受信装置41と、慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)42とを有している。
【0023】
受信装置41は、アンテナ等を有していて測位衛星から送信された受信信号を受信する装置であり、慣性計測装置42とは別に車体3に取付けられている。この実施形態では、
受信装置41は、車体3に設けられたロプス61に取付けられている。なお、受信装置41の取付箇所は、実施形態に限定されない。
慣性計測装置42は、加速度を検出する加速度センサ、角速度を検出するジャイロセンサ等を有している。車体3、例えば、運転席10の下方に設けられ、慣性計測装置42によって、車体3のロール角、ピッチ角、ヨー角等を検出することができる。
<操舵装置、手動操舵、自動操舵の概略>
図1に示すように、トラクタ1は、操舵装置11を備えている。操舵装置11は、運転者の操作によって車体3の操舵を行う手動操舵と、運転者の操作によらずに自動的に車体3の操舵を行う自動操舵とを行うことが可能な装置である。
【0024】
操舵装置11は、ステアリングハンドル(ステアリングホイール)30と、ステアリングハンドル30を回転可能に支持するステアリングシャフト(回転軸)31とを有している。また、操舵装置11は、補助機構(パワーステアリング装置)32を有している。補助機構32は、ステアリングハンドル30の手動操舵を補助する。より詳しくは、補助機構32は、油圧等によってステアリングシャフト31(ステアリングハンドル30)の回転を補助する。補助機構32は、油圧ポンプ33と、油圧ポンプ33から吐出した作動油が供給される制御弁34と、制御弁34により作動するステアリングシリンダ35とを含んでいる。制御弁34は、例えば、スプール等の移動によって切り換え可能な3位置切換弁であり、ステアリングシャフト31の操舵方向(回転方向)に対応して切り換わる。ステアリングシリンダ35は、前輪7Fの向きを変えるアーム(ナックルアーム)36に接続されている。
【0025】
したがって、運転者がステアリングハンドル30を把持して一方向又は他方向に操作すれば、当該ステアリングハンドル30の回転方向に対応して制御弁34の切換位置及び開度が切り換わり、当該制御弁34の切換位置及び開度に応じてステアリングシリンダ35が左又は右に伸縮することによって、前輪7Fの操舵方向を変更することができる。つまり、車体3は、ステアリングハンドル30の手動操舵によって、進行方向を左又は右に変更することができる。
【0026】
次に、自動操舵について説明する。
図2に示すように、自動操舵を行うに際しては、まず、自動操舵を行う前に走行基準ラインL1を設定する。走行基準ラインL1の設定後に、当該走行基準ラインL1に平行な走行予定ラインL2の設定を行うことによって自動操舵を行うことができる。自動操舵では、位置検出装置40によって測定された車体位置と走行予定ラインをL2とが一致するように、トラクタ1(車体3)の進行方向の操舵を自動的に行う。
【0027】
具体的には、自動操舵を行う前にトラクタ1(車体3)を圃場内の所定位置に移動させ(S1)、所定位置にて運転者がトラクタ1に設けられた操舵切換スイッチ52の操作を行うと(S2)、位置検出装置40によって測定された車体位置が走行基準ラインL1の始点P10に設定される(S3)。また、トラクタ1(車体3)を走行基準ラインL1の始点P10から移動させ(S4)、所定の位置で運転者が操舵切換スイッチ52の操作を行うと(S5)、位置検出装置40によって測定された車体位置が走行基準ラインL1の終点P11に設定される(S6)。したがって、始点P10と終点P11とを結ぶ直線が走行基準ラインL1として設定される。
【0028】
走行基準ラインL1の設定後(S6後)、例えば、トラクタ1(車体3)を、走行基準ラインL1を設定した場所とは異なる場所に移動させ(S7)、運転者が操舵切換スイッチ52の操作を行うと(S8)、走行基準ラインL1に平行な直線である走行予定ラインL2が設定される(S9)。走行予定ラインL2の設定後、自動操舵が開始され、トラクタ1(車体3)の進行方向が走行予定ラインL2に沿うように変更される。例えば、現在の車体位置が走行予定ラインL2に対して左側にある場合には、前輪7Fが右に操舵され、現在の車体位置が走行予定ラインL2に対して右側にある場合には、前輪7Fが左に操舵される。なお、自動操舵中において、トラクタ1(車体3)の走行速度(車速)は、運転者が手動で当該トラクタ1に設けられたアクセル部材(アクセルペダル、アクセルレバー)の操作量を変更したり、変速装置の変速段を変更することにより変更することができる。
【0029】
また、自動操舵の開始後、運転者が任意の箇所で操舵切換スイッチ52の操作を行うと、自動操舵を終了することができる。即ち、走行予定ラインL2の終点は、操舵切換スイッチ52の操作による自動操舵の終了によって設定することができる。つまり、走行予定ラインL2の始点から終点までの長さは、走行基準ラインL1よりも長く設定したり、短く設定することができる。言い換えれば、走行予定ラインL2は、走行基準ラインL1の長さとは関連付けされておらず、走行予定ラインL2によって、走行基準ラインL1の長さよりも長い距離を自動操舵しながら走行させることができる。
【0030】
図1に示すように、操舵装置11は、自動操舵機構37を有している。自動操舵機構37は、車体3の自動操舵を行う機構であって、位置検出装置40で検出された車体3の位置(車体位置)に基づいて車体3を自動操舵する。より詳しくは、自動操舵機構37は、受信装置41にて受信した信号及び慣性計測装置42にて計測した慣性に基づいてステアリングハンドル30を自動操舵する。自動操舵機構37は、ステアリングモータ38とギア機構39とを備えている。ステアリングモータ38は、車体位置に基づいて、回転方向、回転速度、回転角度等が制御可能なモータである。ギア機構37は、ステアリングシャフト31に設けられ且つ当該ステアリングシャフト31と供回りするギアと、ステアリングモータ38の回転軸に設けられ且つ当該回転軸と供回りするギアとを含んでいる。ステアリングモータ38の回転軸が回転すると、ギア機構37を介して、ステアリングシャフト31が自動的に回転(回動)し、車体位置が走行予定ラインL2に一致するように、前輪7Fの操舵方向を変更することができる。
<表示装置の概要>
図1、
図12に示すように、トラクタ1は、表示装置45を備えている。表示装置45は、トラクタ1に関する様々な情報を表示可能な装置であって、少なくともトラクタ1の運転情報を表示可能である。表示装置45は、運転席10の前方に設けられている。
<設定スイッチ、操舵切換スイッチの概要>
図1に示すように、トラクタ1は、設定スイッチ51を備えている。設定スイッチ51は、少なくとも自動操舵の開始前の設定を行う設定モードに切り換えるスイッチである。設定モードは、自動操舵を開始する前に当該自動操舵に関する様々な設定を行うモードであり、例えば、走行基準ラインL1の始点、終点の設定等を行うモードである。
【0031】
設定スイッチ51は、ON又はOFFに切換可能であり、ONである場合には設定モードが有効である信号を出力し、OFFである場合には設定モードが無効である信号を出力する。また、設定スイッチ51は、ONである場合には設定モードが有効である信号を表示装置45に出力し、OFFである場合には設定モードが無効である信号を表示装置45に出力する。
【0032】
トラクタ1は、操舵切換スイッチ52を備えている。操舵切換スイッチ52は、設定モードにおいて自動操舵の開始又は終了を切り換えるスイッチである。具体的には、操舵切換スイッチ52は、中立位置から上、下、前、後に切換可能であり、設定モードが有効である状態で中立位置から下方に切り換えられた場合には自動操舵の開始を出力し、設定モードが有効である状態で中立位置から上方に切り換えられた場合には自動操舵の終了を出力する。また、操舵切換スイッチ52は、設定モードが有効である状態で中立位置から後に切り換えられた場合には、現在の車体位置を走行基準ラインL1の始点P10に設定することを出力し、操舵切換スイッチ52は、設定モードが有効である状態で中立位置から前に切り換えられた場合には、現在の車体位置を走行基準ラインL1の終点P11に設定することを出力する。
<補正スイッチの概要>
トラクタ1は、補正スイッチ53を備えている。補正スイッチ53は、位置検出装置40によって測定された車体位置(緯度、経度)を補正するスイッチである。即ち、補正ス
イッチ53は、受信信号(測位衛星の位置、送信時刻、補正情報等)と、慣性計測装置42で計測した測定情報(加速度、角速度)とで演算された車体位置(演算車体位置という)を補正するスイッチである。
【0033】
補正スイッチ53は、押圧可能なプッシュスイッチ又はスライド可能なスライドスイッチで構成されている。以下、補正スイッチ53がプッシュスイッチ、スライドスイッチのそれぞれである場合について説明する。
補正スイッチ53がプッシュスイッチである場合、当該プッシュスイッチの操作回数に基づいて、補正量が設定される。補正量は、補正量=操作回数×1回の操作回数当たりの補正量により決定される。例えば、
図3Aに示すように、プッシュスイッチを操作する毎に、補正量が数センチ或いは数十センチずつ増加する。プッシュスイッチの操作回数は、第1制御装置60Aに入力され、当該第1制御装置60Aが操作回数に基づいて補正量を設定(演算)する。
【0034】
また、補正スイッチ53がスライドスイッチである場合、当該スライドスイッチの操作量(変位量)に基づいて、補正量が設定される。例えば、補正量は、補正量=所定位置からの変位量により決定される。例えば、
図3Bに示すように、スライドスイッチの変位量が5mm増加する毎に、補正量が数センチ或いは数十センチずつ増加する。スライドスイッチの操作量(変位量)は、第1制御装置60Aに入力され、当該第1制御装置60Aが変位量に基づいて補正量を設定(演算)する。なお、上述した補正量の増加方法及び増加の割合は、上述した数値に限定されない。
【0035】
詳しくは、
図4A及び
図4Bに示すように、補正スイッチ53は、第1補正部53Aと、第2補正部53Bとを有している。第1補正部53Aは、車体3の幅方向(車体幅方向)における一方側、即ち、左側に対応する車体位置の補正を指令する部分である。第2補正部53Bは、車体3の幅方向における他方側、即ち、右側に対応する車体位置の補正を指令する部分である。
【0036】
図4Aに示すように、補正スイッチ53がプッシュスイッチである場合、第1補正部53A及び第2補正部53Bは、操作を行う毎に自動的に復帰するON又はOFFのスイッチである。第1補正部53Aを構成するスイッチと第2補正部53Bを構成するスイッチとは一体化されている。なお、第1補正部53Aを構成するスイッチと第2補正部53Bを構成するスイッチとは互いに離間して配置されていてもよい。
図3Aに示すように、第1補正部53Aを押圧する毎に、車体3の左側に対応する補正量(左補正量)が増加する。また、第2補正部53Bを押圧する毎に、車体3の右側に対応する補正量(右補正量)が増加する。
【0037】
図4Bに示すように、補正スイッチ53がスライドスイッチである場合、第1補正部53A及び第2補正部53Bは、長孔の長手方向に沿って左又は右に移動する摘み部55を含んでいる。補正スイッチ53がスライドスイッチである場合、第1補正部53Aと第2補正部53Bとは互いに幅方向に離間して配置されている。
図3Bに示すように、摘み部55を予め定められた基準位置から徐々に左側へ変位させると、変位量に応じて左補正量が増加する。また、摘み部55を予め定められた基準位置から徐々に右側へ変位させると、変位量に応じて右補正量が増加する。なお、
図4Bに示すように、スライドスイッチである場合、第1補正部53Aと第2補正部53Bとを一体化に形成し、摘み部55の基準位置を中央部に設定し、基準位置から左側に移動した場合に左補正量が設定され、摘み部55を中間位置から右側に移動した場合に右補正量が設定される構成としてもよい。
次に、補正スイッチ53による補正量(左補正量、右補正量)と、走行予定ルートL2と、トラクタ1(車体3)の挙動(走行軌跡)との関係について説明する。
【0038】
図5Aは、自動操舵中で直進中に演算車体位置W1が右にずれた場合の状態を示している。
図5Aに示すように、自動操舵が開始された状態において、実際のトラクタ1(車体3)の位置(実際位置W2)と演算車体位置W1とが一致し、且つ、実際位置W2と走行予定ルートL2とが一致している場合、トラクタ1は走行予定ルートL2に沿って走行する。即ち、位置検出装置40の測位に誤差がなく、位置検出装置40で検出した車体位置(演算車体位置W1)が実際位置W2と同じである区間P1では、トラクタ1は走行予定ルートL2に沿って走行する。なお、位置検出装置40の測位に誤差がなく補正も行われていない場合は、演算車体位置W1と、補正量で補正した補正後の車体位置(補正車体位置)W3とは同じ値である。補正車体位置W3は、補正車体位置W3=演算車体位置W1-補正量である。
【0039】
ここで、位置P20の付近において、実際位置W2が走行予定ルートL2に対してズレていないのにも関わらず、様々な影響により、位置検出装置40の測位に誤差が生じ、位置検出装置40で検出した車体位置W1が走行予定ルートL2(実際位置W2)に対して右側にズレてしまい、ズレ量W4が維持されているとすると、トラクタ1は、演算車体位置W1と走行予定ルートL2とにズレが生じたと判断し、演算車体位置W1と走行予定ルートL2とのズレ量W4を解消するように、当該トラクタ1を左に操舵する。そうすると、トラクタ1の実際位置W2は左の操舵によって走行予定ルートL2にシフトする。その後、運転者がトラクタ1が走行予定ルートL2からズレていることに気づき、位置P21にて第2補正部53Bを操舵して右補正量を零から増加させたとする。演算車体位置W1に対して右補正量が加えられ、補正後の車体位置(補正車体位置)W3は、実際位置W2と略同じにすることができる。つまり、第2補正部53Bによって右補正量を設定することにより、位置P20の付近において発生したズレ量W4を解消する方向に、位置検出装置40の車体位置を補正することができる。なお、
図5Aの位置P21に示すように、車体位置の補正後、トラクタ1の実際位置W2が走行予定ルートL2から左側に離れている場合は、トラクタ1は右に操舵され、当該トラクタ1の実際位置W2を、走行予定ルートL2に一致させることができる。
【0040】
図5Bは、自動操舵中で直進中に演算車体位置W1が左にずれた場合の状態を示している。
図5Bに示すように、自動操舵が開始された状態において、実際位置W2と演算車体位置W1とが一致し、且つ、実際位置W2と走行予定ルートL2とが一致している場合、
図5Aと同様に、トラクタ1は走行予定ルートL2に沿って走行する。即ち、
図5Aと同様に、位置検出装置40の測位に誤差がない区間P2では、トラクタ1は走行予定ルートL2に沿って走行する。また、
図5Aと同様に、演算車体位置W1と補正車体位置W3とは同じ値である。
【0041】
ここで、位置P22において、様々な影響により、位置検出装置40の測位に誤差が生じ、位置検出装置40で検出した車体位置W1が実際位置W2に対して左側にズレてしまい、ズレ量W5が維持されているとすると、トラクタ1は、演算車体位置W1と走行予定ルートL2とのズレ量W5を解消するように、当該トラクタ1を右に操舵する。その後、運転者がトラクタ1が走行予定ルートL2からズレていることに気づき、運転者が位置P23にて第1補正部53Aを操舵して左補正量を零から増加させたとする。そうすると、演算車体位置W1に対して左補正量が加えられ、補正後の車体位置(補正車体位置)W3は、実際位置W2と略同じにすることができる。つまり、第1補正部53Aによって左補正量を設定することにより、位置P22の付近において発生したズレ量W5を解消する方向に、位置検出装置40の車体位置を補正することができる。なお、
図5Bの位置P23に示すように、車体位置の補正後、トラクタ1の実際位置W2が走行予定ルートL2から右側に離れている場合は、トラクタ1は左に操舵され、当該トラクタ1の実際位置W2を、走行予定ルートL2に一致させることができる。
<制御装置の概略>
図1に示すように、トラクタ1は、複数の制御装置60を備えている。複数の制御装置60は、トラクタ1における走行系の制御、作業系の制御、車体位置の演算等を行う装置である。複数の制御装置60は、第1制御装置60A、第2制御装置60B及び第3制御装置60Cである。
【0042】
第1制御装置60Aは、受信装置41が受信した受信信号(受信情報)と、慣性計測装置42が測定した測定情報(加速度、角速度等)を受信し、受信情報及び測定情報に基づいて車体位置を求める。例えば、第1制御装置60Aは、補正スイッチ53による補正量が零である場合、即ち、補正スイッチ53による車体位置の補正が指令されていない場合、受信情報と測定情報とで演算された演算車体位置W1に対して補正を行わず、演算車体位置W1を自動操舵時に用いる車体位置に決定する。一方、第1制御装置60Aは、補正スイッチ53による車体位置の補正が指令されている場合、補正スイッチ53の操作回数及び補正スイッチ53の操作量(変位量)のいずれかに基づいて車体位置の補正量を設定し、演算車体位置W1を補正量で補正した補正車体位置W3を自動操舵時に用いる車体位置に決定する。
【0043】
第1制御装置60Aは、車体位置(演算車体位置W1、補正車体位置W3)及び走行予定ラインL2に基づいて制御信号を設定し、制御信号を第2制御装置60Bに出力する。第2制御装置60Bは、第1制御装置60Aから出力された制御信号に基づいて車体3が走行予定ラインL2に沿って走行するように自動操舵機構37のステアリングモータ38を制御する。
【0044】
図6に示すように、車体位置と走行予定ラインL2との偏差が閾値未満である場合、第2制御装置60Bは、ステアリングモータ38の回転軸の回転角を維持する。車体位置と走行予定ラインL2との偏差が閾値以上であって、トラクタ1が走行予定ラインL2に対して左側に位置している場合は、第2制御装置60Bは、トラクタ1の操舵方向が右方向となるようにステアリングモータ38の回転軸を回転する。車体位置と走行予定ラインL2との偏差が閾値以上であって、トラクタ1が走行予定ラインL2に対して右側に位置している場合は、第2制御装置60Bは、トラクタ1の操舵方向が左方向となるようにステアリングモータ38の回転軸を回転する。なお、上述した実施形態では、車体位置と走行予定ラインL2との偏差に基づいて操舵装置11の操舵角を変更していたが、走行予定ラインL2の方位とトラクタ1(車体3)の進行方向(走行方向)の方位(車体方位)F1とが異なる場合、即ち、走行予定ラインL2に対する車体方位F1の角度θが閾値以上である場合、第2制御装置60Bは、角度θが零(車体方位F1が走行予定ラインL2の方位に一致)するように操舵角を設定してもよい。また、第2制御装置60Bは、偏差(位置偏差)に基づいて求めた操舵角と、方位(方位偏差θ)に基づいて求めた操舵角とに基づいて、自動操舵における最終の操舵角を設定してもよい。上述した実施形態における自動操舵における操舵角の設定は一例であり、限定されない。
【0045】
第3制御装置60Cは、運転席10の周囲に設けられた操作部材の操作に応じて、連結部8を昇降させる。
なお、上述した走行系の制御、作業系の制御、車体位置の演算は限定されない。
<車体等の具体的構成>
図28に示すように、車体3は、前車軸フレーム70、フライホイールハウジング71、クラッチハウジング72、中間フレーム73、ミッションケース74を有している。
【0046】
前車軸フレーム70は、車体3の前部に配置されており、前輪7Fの車軸(前車軸)21Fを回転可能に支持している。また、前車軸フレーム70は、原動機4を支持し且つ原動機4から前方に延びている。前車軸フレーム70、フライホイールハウジング71、ク
ラッチハウジング72、中間フレーム73、ミッションケース74は、一体的に連結されることによって剛性の高い車体フレームを構成している。
【0047】
フライホイールハウジング71は、原動機4の後部に連結されていて、原動機4の出力軸に連結されたフライホイールを収容している。クラッチハウジング72は、フライホイールハウジング71に連結されていて、フライホイールを介して伝達される原動機4の動力を断続可能に伝達するクラッチを収容している。中間フレーム73は、クラッチハウジング72の後部に連結されていて、クラッチハウジング72から後方に延びている。ミッションケース74は、中間フレーム73の後部に連結されていて、変速装置5及び後輪デフ装置20Rを収容している。
【0048】
図7に示すように、前車軸フレーム70は、車体幅方向の一方(左方)に配置された第1フレーム70Aと、車体幅方向の他方(右方)に配置された第2フレーム70Bと、第1フレーム70Aと第2フレーム70Bとを連結する第3フレーム70Cと、を有している。
図7、
図28、
図29に示すように、前車軸フレーム70の前端には、ウエイト75が装着されている。また、前車軸フレーム70の上部には、ボンネット76が取り付けられている。
【0049】
ボンネット76は、原動機4を覆っている。詳しくは、ボンネット76は、原動機4の上方を覆う上板部76a、原動機4の左方を覆う左板部76b、原動機4の右方を覆う右板部76c、原動機4の前方を覆う前板部76dを有している。ボンネット76の後部には、ステアリングシャフト31等を収容するカバー77が設けられている。カバー77の上方であって且つ運転席10の前方にステアリングハンドル30が設けられている。
<パネルカバー、コラムカバー>
図8~
図10に示すように、ステアリングシャフト31の外周は、ステアリングポスト80により覆われている。ステアリングポスト80は、円筒状であって、ステアリングシャフト31の軸方向に沿って延びている。
図8、
図9に示すように、ステアリングポスト80の外周は、カバー77により覆われている。カバー77は、運転席10の前方に設けられている。
図14、
図28、
図29に示すように、カバー77は、パネルカバー78とコラムカバー79とを含んでいる。
【0050】
図11~
図14、
図28、
図29に示すように、パネルカバー78は、上板部78a、左板部78b、右板部78c、後板部78dを有している。パネルカバー78の左板部78aの前端は、ボンネット76の左板部76bに接続されている。パネルカバー78の右板部78cの前端は、ボンネット76の右板部76cに接続されている。パネルカバー78の後板部78dは、左板部78bの後端と右板部78cの後端とを接続している。パネルカバー78の上板部78aは、左板部78bの上端、右板部78cの上端、後板部78dの上端を接続しており、且つボンネット76の上板部76aに接続されている。
【0051】
図11~
図14に示すように、パネルカバー78の上板部78aには、表示装置45を支持する支持部78eが設けられている。支持部78eは、ステアリングシャフト31の前方且つステアリングハンドル30の下方において表示装置45を支持している。
本実施形態の場合、表示装置45は液晶パネルから構成されている。
図13に示すように、表示装置45は、ステアリングシャフト31の周囲に配置されている。詳しくは、表示装置45は、ステアリングシャフト31の前方に配置されている。
図12に示すように、表示装置45は、当該表示装置45の表示面に対する垂直方向(以下、「表示面垂直方向」という)から見たとき、ステアリングハンドル30のグリップ30aとオーバーラップしない位置(グリップ30aの内側)に配置されている。表示画面垂直方向は、運転席10に着座した運転者の視線方向と概ね一致するため、表示装置45の視認性が良好となる。
【0052】
図11~
図14に示すように、パネルカバー78の上板部78aは、設定スイッチ51、補正スイッチ53、画面切換スイッチ54が取り付けられた取付面78fを有している。つまり、パネルカバー78には、設定スイッチ51、補正スイッチ53、画面切換スイッチ54が設けられている。取付面78fは、支持部78eの後方であって且つステアリングハンドル30の下方に設けられている。支持部78eと取付面78fとは連続して一体的に構成されており、支持部78eは上板部78aの前部に位置し、取付面78fは上板部78aの後部に位置している。
【0053】
図8、
図9、
図11、
図14に示すように、取付面78fは、後方に向かうにつれて下方に移行するように傾斜している。
図12に示すように、取付面78fは、ステアリングシャフト31の周囲に設けられた第1領域78f1と第2領域78f2と第3領域78f3と、を有している。第1領域78f1は、ステアリングシャフト31の一側方(左方)に位置する領域である。第2領域78f2は、ステアリングシャフト31の他側方(右方)に位置する領域である。第3領域78f3は、ステアリングシャフト31の後方に位置する領域である。設定スイッチ51、補正スイッチ53、画面切換スイッチ54は、取付面78fの3つの領域(第1領域78f1、第2領域78f2、第3領域78f3)のいずれかに取り付けられることにより、ステアリングシャフト31の周囲に配置されている。設定スイッチ51、補正スイッチ53、画面切換スイッチ54の具体的な配置については後述する。
【0054】
図11~
図14、
図28、
図29に示すように、パネルカバー78の左部(左板部78b)からはシャトルレバー81が突出している。シャトルレバー81は、パネルカバー78の左部から左方に突出した後、上方に向けて延びている。シャトルレバー81は、車体3の走行方向を切り換える操作を行う部材である。より詳しく説明すると、シャトルレバー81を前方に操作(揺動)することにより、前後進切換部13が走行装置7へ前進動力を出力する状態となり、車体3の走行方向が前進方向に切り換えられる。また、シャトルレバー81を後方に操作(揺動)することにより、前後進切換部13が走行装置7へ後進動力を出力する状態となり、車体3の走行方向が後進方向に切り換えられる。シャトルレバー81が中立位置にあるときには、走行装置7へ動力が出力されない。
【0055】
シャトルレバー81の先端部(上端部)には、操作者が把持する把持部81aが設けられている。
図11に示すように、把持部81aは、ステアリングハンドル30のグリップ30aよりも左方に配置されている。また、把持部81aは、パネルカバー78の取付面78fよりも上方であって、取付面78fから左方に離れた位置に配置されている。これにより、シャトルレバー81の操作時において意図せずに取付面78fに設けられた各種スイッチ(設定スイッチ51等)に接触したり、取付面78fに設けられた各種スイッチの操作時において意図せずにシャトルレバー81に接触したりすることが防がれる。
【0056】
図11~
図14、
図28、
図29に示すように、コラムカバー79は、ステアリングハンドル30の下方に配置されている。
図8、
図9に示すように、コラムカバー79は、ステアリングシャフト31及びステアリングポスト80の上部の周囲を覆っている。コラムカバー79は、略四角筒状に形成されており、パネルカバー78の取付面78fから上方に突出している。
図12に示すように、取付面78fの第1領域78f1、第2領域78f2、第3領域78f3は、夫々コラムカバー79の一側方(左方)、他側方(右方)、後方に配置されている。つまり、取付面78fは、コラムカバー79の周囲に設けられている。取付面78fに取り付けられた設定スイッチ51、補正スイッチ53、画面切換スイッチ54は、コラムカバー79の周囲に配置されている。
【0057】
図8、
図9、
図11~
図14に示すように、取付面78fは、コラムカバー79の下端
部と接続されており、当該下端部と同じ高さに位置している。そのため、取付面78fは、コラムカバー79の高さ分だけステアリングハンドル30のグリップ30aと離間している。これにより、取付面78fに取り付けられた設定スイッチ51、補正スイッチ53、画面切換スイッチ54は、ステアリングハンドル30から離れた位置に配置されている。
【0058】
設定スイッチ51、補正スイッチ53、画面切換スイッチ54がステアリングハンドル30から離れた位置にあることによって、ステアリングハンドル30の操作時において意図せずに設定スイッチ51、補正スイッチ53、画面切換スイッチ54に接触することが防がれる。また、設定スイッチ51、補正スイッチ53、画面切換スイッチ54の操作時において意図せずにステアリングハンドル30に接触することが防がれる。そのため、誤操作による意図しない自動操舵への切り換え等を防止することができる。
<スイッチの配置>
次に、設定スイッチ51、操舵切換スイッチ52、補正スイッチ53、画面切換スイッチ54の配置について説明する。
【0059】
図11~
図13に示すように、設定スイッチ51、操舵切換スイッチ52、補正スイッチ53、画面切換スイッチ54は、ステアリングシャフト31の周囲に配置されている。以下、設定スイッチ51、操舵切換スイッチ52、補正スイッチ53、画面切換スイッチ54の具体的な配置について説明する。
図11~
図13に示すように、設定スイッチ51は、車体幅方向において、ステアリングシャフト31の一側方(左方)に配置されている。また、設定スイッチ51は、前後方向において、ステアリングシャフト31の後方に配置されている。つまり、設定スイッチ51は、ステアリングシャフト31の左方且つ後方(斜め左後方)に配置されている。本実施形態の場合、設定スイッチ51は、プッシュスイッチから構成されている。
【0060】
設定スイッチ51は、コラムカバー79との位置関係では、コラムカバー79の左方且つ後方(斜め左後方)に配置されている。設定スイッチ51は、パネルカバー78の取付面78fとの位置関係では、取付面78fの第1領域78f1の後部に配置されている。
また、設定スイッチ51は、表示装置45との位置関係では、表示装置45の後方(運転席10側)に配置されている。これにより、運転者は、運転席10に着座した姿勢を変更することなく、表示装置45を確認しながら、容易に且つ正確に設定スイッチ51を操作することができる。
【0061】
図13に示すように、設定スイッチ51は、ステアリングシャフト31の軸方向から見たとき、ステアリングハンドル30のグリップ30aとオーバーラップしていない。具体的には、設定スイッチ51は、ステアリングシャフト31の軸方向から見たとき、ステアリングハンドル30のグリップ30aの内側(ステアリングシャフト31の軸心に近い側)に配置されている。
【0062】
図11~
図13に示すように、操舵切換スイッチ52は、ステアリングシャフト31の一側方(左方)に配置されている。本実施形態の場合、操舵切換スイッチ52は、揺動可能なレバーから構成されている。操舵切換スイッチ52は、ステアリングシャフト31側に設けられた基端部を支点として揺動可能である。操舵切換スイッチ52の基端部は、コラムカバー79の内部に設けられている。操舵切換スイッチ52は、コラムカバー79の一側方(左方)に突出している。
【0063】
操舵切換スイッチ52の先端部(左端部)には、操作者が把持する把持部52aが設けられている。
図11、
図14等に示すように、把持部52aは、ステアリングハンドル30のグリップ30aの下方であってグリップ30aの近傍に配置されている。更に、
図13に示すように、把持部52aは、ステアリングシャフト31の軸方向から見たとき、ステアリングハンドル30のグリップ30aとオーバーラップしている。これにより、ステアリングハンドル30のグリップ30aを把持した状態において、把持部52aに手指を伸ばして操舵切換スイッチ52を操作することができる。
【0064】
ここで、シャトルレバー81の把持部81aは、ステアリングハンドル30のグリップ30aから下方及び左方に離れており、グリップ30aを把持した状態では手指が届かない位置に配置されている。そのため、グリップ30aを把持した状態で操舵切換スイッチ52を操作する際に、意図せずにシャトルレバー81が操作されてしまうことを防止できる。また、シャトルレバー81を操作する際に、意図せずに操舵切換スイッチ52が操作されてしまうことも防止できる。
【0065】
図14に示すように、操舵切換スイッチ52は、自動操作の開始又は終了を切り換える第1方向(矢印C1及び矢印C2で示す方向)と、走行予定ラインの基準となる走行基準ラインの始点と終点とを設定する第2方向(矢印D1及び矢印D2で示す方向)とに揺動可能である。
第1方向の揺動は、中立位置から上方又は下方への揺動である。第2方向の揺動は、中立位置から前方又は後方への揺動である。操舵切換スイッチ52は、設定モードが有効である場合に、中立位置から下方(矢印C1方向)への揺動によって自動操舵の開始を指令(出力)し、中立位置から上方(矢印C2方向)への揺動によって自動操舵の終了を指令(出力)する。また、操舵切換スイッチ52は、設定モードが有効である場合に、中立位置から後方(矢印D1方向)への揺動によって走行基準ラインの始点を設定し、中立位置から前方(矢印D2方向)への揺動によって走行基準ラインの終点を設定する。
【0066】
図11~
図13に示すように、補正スイッチ53は、車体幅方向において、ステアリングシャフト31の他側方(右方)に配置されている。また、補正スイッチ53は、前後方向において、ステアリングシャフト31の後方に配置されている。つまり、補正スイッチ53は、ステアリングシャフト31の右方且つ後方(斜め右後方)に配置されている。本実施形態の場合、補正スイッチ53は、プッシュスイッチから構成されている。補正スイッチ53は、コラムカバー79との位置関係では、コラムカバー79の右方且つ後方(斜め右後方)に配置されている。補正スイッチ53は、パネルカバー78の取付面78fとの位置関係では、取付面78fの第2領域78f2の後部に配置されている。
【0067】
また、補正スイッチ53は、表示装置45との位置関係では、表示装置45の後方(運転席10側)に配置されている。これにより、運転者は、運転席10に着座した姿勢を変更することなく、表示装置45を確認しながら、容易に且つ正確に補正スイッチ53を操作することができる。
図13に示すように、補正スイッチ53は、ステアリングシャフト31の軸方向から見たとき、ステアリングハンドル30のグリップ30aとオーバーラップしていない。具体的には、補正スイッチ53は、ステアリングシャフト31の軸方向から見たとき、ステアリングハンドル30のグリップ30aの内側(ステアリングシャフト31の軸心に近い側)に配置されている。
【0068】
画面切換スイッチ54は、表示装置45の表示を、設定モードにおける運転状況(運転
情報)を表示する第1画面Q1と、設定モードにおける設定操作を説明する第2画面Q2とに切り替えるスイッチである。
図27は、表示装置45に表示される第1画面Q1及び第2画面Q2の一例を示している。
図12、
図13に示すように、画面切換スイッチ54は、車体幅方向において、ステアリングシャフト31の他側方(右方)に配置されている。また、画面切換スイッチ54は、前後方向において、ステアリングシャフト31の前方に配置されている。つまり、画面切換スイッチ54は、ステアリングシャフト31の右方且つ前方(斜め右前方)に配置されている。本実施形態の場合、画面切換スイッチ54は、プッシュスイッチから構成されている。画面切換スイッチ54は、コラムカバー79との位置関係では、コラムカバー79の右方且つ前方(斜め右前方)に配置されている。画面切換スイッチ54は、パネルカバー78の取付面78fとの位置関係では、取付面78fの第2領域78Fの前部に配置されている。また、画面切換スイッチ54は、補正スイッチ53の前方に位置している。
【0069】
図13に示すように、画面切換スイッチ54は、ステアリングシャフト31の軸方向から見たとき、ステアリングハンドル30のグリップ30aとオーバーラップしていない。具体的には、画面切換スイッチ54は、ステアリングシャフト31の軸方向から見たとき、ステアリングハンドル30のグリップ30aの内側(ステアリングシャフト31の軸心に近い側)に配置されている。
【0070】
上述した通り、設定スイッチ51、操舵切換スイッチ52、補正スイッチ53、画面切換スイッチ54は、ステアリングシャフト31の周囲に集約して配置されている。そのため、運転者は、各スイッチの位置を一目瞭然で把握することができる。加えて、運転者は、運転席10に着座したままの状態で姿勢を変えずに各スイッチを操作することができる。そのため、操作性が良好となり、且つ誤操作を防止することができる。また、各スイッチから配策されるハーネス(配線)を短くすることができる。
【0071】
また、
図12、
図13に示すように、パネルカバー78の取付面78fには、コンビスイッチ(コンビネーションスイッチ)82が設けられている。コンビスイッチ82は、車体3の前方に設けられたウインカや前照灯等を操作するスイッチである。コンビスイッチ82は、ステアリングシャフト31の周囲に配置されている。具体的には、コンビスイッチ82は、ステアリングシャフト31の一側方(左方)に配置されている。コンビスイッチ82は、コラムカバー79との関係では、コラムカバー79の一側方(左方)に配置されている。また、コンビスイッチ82は、操舵切換スイッチ52の下方であって且つ設定スイッチ51の前方に配置されている。
【0072】
図13に示すように、コンビスイッチ82は、ステアリングシャフト31の軸方向から見たとき、ステアリングハンドル30のグリップ30aとオーバーラップしていない。具体的には、コンビスイッチ82は、ステアリングシャフト31の軸方向から見たとき、ステアリングハンドル30のグリップ30aの内側(ステアリングシャフト31の軸心に近い側)に配置されている。
【0073】
尚、以上説明した各種スイッチの配置に関して、左と右の位置関係を入れ替えて配置してもよい。つまり、一側方を左方として他側方を右方として配置してもよいし、一側方を右方として他側方を左方として配置してもよい。具体的には、例えば、設定スイッチ51及び操舵切換スイッチ52をステアリングシャフト31の右方に配置し、補正スイッチ53をステアリングシャフト31の左方に配置してもよい。
<昇降レバー(ポンパレバー)、アクセルレバー>
図11~
図13に示すように、トラクタ1は、昇降レバー83及びアクセルレバー84を備えている。
【0074】
昇降レバー83は、連結部8を昇降させるレバー(ポンパレバー)である。昇降レバー83は、ステアリングシャフト31の他側方(右方)に配置されている。昇降レバー83は、ステアリングシャフト31側に設けられた基端部を支点として揺動可能である。昇降レバー83の基端部は、パネルカバー78の内部に設けられている。昇降レバー83は、パネルカバー78の他側方(右方)に突出して上方に延びており、先端部がコラムカバー79の他側方(右方)に位置している。
【0075】
図13に示すように、昇降レバー83は、中立位置にある場合、ステアリングシャフト31の軸方向から見たときに、補正スイッチ53と画面切換スイッチ54との間に位置し、補正スイッチ53及び画面切換スイッチ54とオーバーラップしていない。これにより、昇降レバー83の操作時において意図せずに補正スイッチ53及び画面切換スイッチ54が操作されてしまうことや、補正スイッチ53及び画面切換スイッチ54の操作時において意図せずに昇降レバー83が操作されてしまうことが防がれる。
【0076】
図12、
図13に示すように、昇降レバー83の先端部(右端部)には、操作者が把持する把持部83aが設けられている。把持部83aは、ステアリングハンドル30のグリップ30aの下方であってグリップ30aの近傍に配置されている。
図13に示すように、把持部83aは、ステアリングシャフト31の軸方向から見たとき、グリップ30aとオーバーラップしている。これにより、ステアリングハンドル30のグリップ30aを把持した状態において、把持部83aに手指を伸ばして昇降レバー83を操作することができる。
【0077】
昇降レバー83は、車体幅方向において、ステアリングシャフト31を挟んで操舵切換スイッチ52と反対側に配置されている。これにより、操舵切換スイッチ52の操作時において操作者の手が昇降レバー83に接触したり、昇降レバー83の操作時において操作者の手が操舵切換スイッチ52に接触したりすることによる誤操作が防止できる。
図11~
図13に示すように、アクセルレバー84は、ステアリングシャフト31の他側方(右方)に配置されている。アクセルレバー84は、ステアリングシャフト31側に設けられた基端部を支点として揺動可能である。アクセルレバー84の基端部は、パネルカバー78の内部に設けられている。アクセルレバー84は、コラムカバー79の他側方において、パネルカバー78の取付面78fから上方に突出している。より詳しくは、アクセルレバー84は、補正スイッチ53の前方であって且つ画面切換スイッチ54の後方において、パネルカバー78の取付面78fから突出している。アクセルレバー84は、取付面78fから上方に突出してから右方(コラムカバー79から離れる方向)に延びている。
【0078】
アクセルレバー84の先端部(右端部)には、操作者が把持する把持部84aが設けられている。把持部84aは、ステアリングハンドル30のグリップ30aの下方に位置している。
図13に示すように、把持部84aは、ステアリングシャフト31の軸方向においてグリップ30aとオーバーラップしている。アクセルレバー84の把持部84aは、昇降レバー83の把持部83aの前方且つ下方に位置している。
<自動操舵機構の配置等>
次に、自動操舵機構37の配置等について説明する。
【0079】
図10、
図15~
図17に示すように、自動操舵機構37のステアリングモータ38は、ステアリングシャフト31の周囲に配置されている。具体的には、ステアリングモータ38は、ステアリングハンドル30の下方において、ステアリングシャフト31の前方且つ右方(斜め右前方)に配置されている。ステアリングモータ38の出力軸(回転軸)は、ステアリングシャフト31の軸方向と平行に配置されて下方向に延びている。
【0080】
自動操舵機構37のギア機構39は、ギアケース39aと、ギアケース39aの内部に収容された複数のギアとを有している。
図10、
図15に示すように、ギアケース39aは、支持ポスト85の上端部に固定されている。支持ポスト85は、四角筒状に形成されており、ステアリングシャフト31の軸方向に延びている。
図15、
図17に示すように、支持ポスト85の上端部には、ギアケース39aを下方から支持する上板85aが設けられている。尚、
図17では、ギアケース39aを省略して内部のギアを表示している。
図17に示すように、支持ポスト85の上部には、上板85a及びギアケース39aを貫通したステアリングシャフト31の下部が挿入されている。
図8~
図10、
図15に示すように、支持ポスト85の下端部は、取付ステー86等を介してクラッチハウジング72の上部に固定されている。
【0081】
ステアリングモータ38とギア機構39とは一体的に設けられている。具体的には、ステアリングモータ38のハウジングが、ギアケース39aの上部にボルト等によって固定されている。
図10に示すように、ステアリングモータ38及びギア機構39は、ステアリングシャフト31の軸心CL1の近傍に配置されている。詳しくは、ステアリングモータ38及びギア機構39は、車体幅方向において、ステアリングハンドル30のグリップ30aの外縁よりもステアリングシャフト31の軸心CL1に近い位置に配置されている。別の表現をすると、ステアリングモータ38及びギア機構39は、車体幅方向において、グリップ30aの車体幅方向の一側方側の外端を下方に延長した仮想線VL1と、グリップ30aの車体幅方向の他側方側の外端を下方に延長した仮想線VL2との間に配置されている。
【0082】
図17、
図18に示すように、ギア機構39は、第1ギア391、第2ギア392、第3ギア393、第4ギア394を有している。第1ギア391は、ステアリングモータ38の出力軸(回転軸)に装着されている。第2ギア392は、ステアリングシャフト31の前方に配置されており、第1ギア391と噛み合っている。第3ギア393は、第2ギア392の下方に配置されており、連結軸390により第2ギア392と連結されている。連結軸390は、ギアケース39a内に保持されたベアリング395に回転可能に支持されている。第2ギア392と第3ギア393は、連結軸390と共に一体的に回転する。第4ギア394は、第3ギア393と噛み合っている。第4ギア394は、ステアリングシャフト31に取り付けられており、ステアリングシャフト31と共に回転する。
【0083】
ステアリングモータ38が駆動して出力軸が回転すると、当該回転の動力は第1ギア391から第2ギア392に伝達され、連結軸390が回転する。連結軸390が回転すると、第3ギア393が回転し、当該回転の動力は第4ギア394を介してステアリングシャフト31に伝達され、ステアリングシャフト31が回転する。このように、ステアリングモータ38の駆動によってステアリングシャフト31が回転する。
<パワーステアリング装置の配置等>
次に、パワーステアリング装置32の配置等について説明する。
【0084】
図7、
図17に示すように、ステアリングシャフト31は、連係機構(自在継手87、88、89及びアーム90、91、92)を介してパワーステアリング装置32の制御弁34と接続されている。具体的には、ステアリングシャフト31の下部は、第1自在継手87を介して第1アーム90の一端部と接続されている。第1アーム90の他端部は、第2自在継手88を介して第2アーム91の一端部と接続されている。第2アーム91の他端部は、第3自在継手89を介して第3アーム92の一端部と接続されている。第3アーム92の他端部は、制御弁34を含むパワーステアリングユニット93と接続されている。尚、
図7に示したパワーステアリング装置32の構成は、
図1に示した構成と一部異なっているが、いずれの構成を採用してもよいし、その他の構成を採用してもよい。
【0085】
図7に示すパワーステアリングユニット93は、制御弁34とステアリングシリンダ(パワーシリンダ)35とを含んでいる。パワーステアリングユニット93(制御弁34、ステアリングシリンダ35)は、前車軸フレーム70に支持されている。パワーステアリングユニット93は、前車軸フレーム70の第1フレーム70Aと第2フレーム70Bの間に位置している。パワーステアリングユニット93は、油圧ホース(図示略)を介して油圧ポンプ33と接続されている。油圧ポンプ33は、パワーステアリングユニット93の後方であって且つ前車軸フレーム70の第2フレーム70Bの上方に配置されている。油圧ポンプ33は、原動機4の動力によって駆動する。
【0086】
ステアリングシリンダ93は、ピットマンアーム94を介して左側及び右側のタイロッド95の一端部(内端部)と連結されている。タイロッド95の他端部(外端部)は、左側及び右側の前輪7Fに連結されている。ステアリングハンドル30を手動で回転(操舵)すると、この回転はステアリングシャフト31から連係機構(自在継手87、88、89及びアーム90、91、92)を介してパワーステアリングユニット93に伝達され、制御弁34が作動(スプールが移動)する。これにより、油圧ポンプ33から吐出された作動油がステアリングシリンダ35へと送られ、ステアリングシリンダ35が駆動する。ステアリングシリンダ35の駆動力は、ピットマンアーム94を介してタイロッド95に伝達され、タイロッド95が移動することによって左側及び右側の前輪7Fの向きが変更される。
【0087】
図28に示すように、パワーステアリング装置32を構成するパワーステアリングユニット93(制御弁34、ステアリングシリンダ35)、油圧ポンプ33は、パネルカバー78の外部(パネルカバー78の前方)に配置されている。一方、
図8、
図9等に示すように、自動操舵機構37(ステアリングモータ38、ギア機構39)は、パネルカバー78の内部に配置されている。このように、自動操舵機構37(ステアリングモータ38、ギア機構39)とパワーステアリング装置32とは離れた位置に配置されている。
【0088】
自動操舵機構37とパワーステアリング装置32(例えば、制御弁34)とを近傍位置に配置した場合、まとまった広い配置スペースを必要とするが、自動操舵機構37とパワーステアリング装置32とを離れた位置に配置することによって、夫々の配置スペースは小さくて済み、まとまった広い配置スペースを必要としない。
<第1制御装置、第2制御装置の配置等>
図8、
図9に示すように、第1制御装置60A及び第2制御装置60Bは、パネルカバー78の内部に配置されている。
図10、
図16に示すように、第1制御装置60Aは、ステアリングシャフト31の一側方(左方)に配置されている。第2制御装置60Bは、ステアリングシャフト31の他側方(右方)に配置されている。第1制御装置60Aと第2制御装置60Bとは電気信号を送信可能なハーネス(図示略)により接続されている。
【0089】
このように、第1制御装置60Aと第2制御装置60Bとが別体に構成され、ステアリングシャフト31の一側方(左方)と他側方(右方)とに分けて配置されていることにより、第1制御装置60A及び第2制御装置60Bは、一体の制御装置とした場合に比べて小型化され、ステアリングシャフト31の近傍位置に配置することができる。そのため、第1制御装置60A及び第2制御装置60Bをパネルカバー78内に確実に収容することができる。また、第1制御装置60Aと第2制御装置60Bとが離れて配置されるため、一方の制御装置から発生した熱によって他方の制御装置が悪影響を受けることが防がれる。
【0090】
第1制御装置60A及び第2制御装置60Bは、筐体と、筐体内に配置された回路基板とを有している。回路基板は、半導体等の様々な電気・電子部品から構成され、上述した制御等を行うことができる。筐体は、直方体状であって、縦置きで配置されている。詳しくは、第1制御装置60Aの筐体は、3つの辺(縦、横、高さ)のうち、最も短い辺が車体幅方向を向き、最も長い辺が上下方向を向いている。第2制御装置60Bの筐体は、3つの辺のうち、最も短い辺が略車体幅方向を向き、最も長い辺が略前後方向を向いている。このように、第1制御装置60A及び第2制御装置60Bは、最も短い辺が車体幅方向又は略車体幅方向を向いている。これにより、第1制御装置60A及び第2制御装置60Bの車体幅方向における占有領域が小さくなるため、第1制御装置60A及び第2制御装置60Bをパネルカバー78内に確実に収容することができる。また、パネルカバー78を小さくすることができるため、運転席10に着座した運転者の足元スペースや前方の視界を充分に確保することができる。更に、第1制御装置60Aと第2制御装置60Bとを接近して配置することができるため、第1制御装置60Aと第2制御装置60Bを接続するハーネスを短くすることができ、ノイズの影響を受けにくくなる。
【0091】
図10に示すように、第1制御装置60Aは、車体幅方向において、ステアリングハンドル30のグリップ30aの外縁よりもステアリングシャフト31の軸心CL1に近い位置に配置されている。言い換えれば、第1制御装置60Aは、ステアリングハンドル30のグリップ30aの車体幅方向の一側方側の外端を下方向に延長した仮想線VL1よりも軸心CL1に近い位置に配置されている。第2制御装置60Bは、ステアリングハンドル30のグリップ30aの車体幅方向の他側方側の外端を下方向に延長した仮想線VL2とオーバーラップしている。
【0092】
第2制御装置60Bは、第1制御装置60Aよりも下方に配置されている。また、第2制御装置60Bは、ステアリングモータ38よりも下方に配置されている。つまり、第2制御装置60Bは、第1制御装置60A及びステアリングモータ38に対して下方にずれた位置に配置されている。これにより、第1制御装置60Aやステアリングモータ38からの発熱によって、第2制御装置60Bが悪影響を受けることが防止できる。
【0093】
図10に示すように、第2制御装置60B及びステアリングモータ38は、ステアリングシャフト31の軸心CL1に対して右方に配置されている。このように、第2制御装置60Bとステアリングモータ38とが車体幅方向における同方向(右方)に配置されていることにより、第2制御装置60Bはステアリングモータ38の近傍に位置している。これにより、第2制御装置60Bとステアリングモータ38とを電気的に接続するハーネスを短くすることができ、ノイズの影響を受けにくくなる。
【0094】
図7、
図10、
図15~
図17に示すように、第1制御装置60A及び第2制御装置60Bは、保持部材96により保持されている。保持部材96は、第1保持部96aと、第2保持部96bと、連結部96cと、を有している。第1保持部96aは、ステアリングシャフト31の一側方(左方)に配置されている。第1保持部96aには、ボルト等の固定具によって第1制御装置60Aが固定されて保持されている。第2保持部96bは、ステアリングシャフト31の他側方(右方)に配置されている。第2保持部96cには、ボルト等の固定具によって第2制御装置60Bが固定されて保持されている。連結部96cは、ステアリングシャフト31の一側方(左方)から他側方(右方)に亘って車体幅方向に延びている。連結部96cは、第1保持部96aと第2保持部96bとを連結している。
【0095】
即ち、
図16に示すように、保持部材96(第1保持部96a)は、平面視で第1制御装置60Aを、ステアリングシャフト31及びギアケース39aの一側方(左方)で支持している。保持部材96(第2保持部96b)は、第2制御装置60Bを、平面視でステアリングシャフト31及びギアケース39aの一側方(左方)に支持している。また、保持部材96(第2保持部96b)は、第2制御装置60Bを前端から後端に行くにしたがって一側方(左方)に移行するように当該第2制御装置60Bを支持している。これにより、ギアケース39aのコネクタ側(前側)と第2制御装置60Bとの間の空間200Aを広くすることができるため配線等が行い易い。
【0096】
また、
図10に示すように、保持部材96は、ギアケース39aを基準として第1制御装置60A及び第2制御装置60Bを見た場合、当該ギアケース39aの上方に第1制御装置60Aを支持し、ギアケース39aの下方に第2制御装置60Bを支持している。
保持部材96の連結部96cの車体幅方向の中間部は、接続部材97に溶接等により固定されている。接続部材97は、前後方向に延びている。
図15に示すように、接続部材97は連結部96cから前方及び後方に夫々延びている。接続部材97の後端部は、支持ポスト85の上部に固定されている。接続部材97の前端部は、前後方向に延びるステー98の後端部に接続されている。
【0097】
詳しくは、
図16、
図17に示すように、接続部材97は板部材で構成されていて、連結部96cが取り付けられ当該連結部96cから前方に延びる前板部97aと、連結部96cが取り付けられ当該連結部96cから後方(ステアリングシャフト31側)に延びる後板部97bと、後板部97bから第1制御装置60A側に延びる一方板部97cと、後板部97Bから第2制御装置60B側に延びる他方板部97dとを有している。一方板部97c及び他方板部97dは一体的に形成され、ステアリングシャフト31に向かうにしたがって下方に傾斜している。一方板部97c及び他方板部97dの後端は支持ポスト85に取付けられている。
【0098】
ステー98の前端部は、仕切り板99の上部に固定されている。
図8、
図9に示すように、仕切り板99は、ボンネット76の内部に配置されており、ボンネット76の内部の空間を、前方の第1空間S1と後方の第2空間S2とに区画している。第1空間S1には原動機4が配置される。第2空間S2には燃料タンク(図示略)が配置される。仕切り板99の下部は、クラッチハウジング72の上部に固定されている。
<受信装置の配置等>
次に、位置検出装置40を構成する受信装置41の配置等について説明する。
【0099】
受信装置41は、測位衛星の信号を受信し、受信した信号に基づいて車体3の位置を検出する。つまり、受信装置41は、衛星測位システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)により車体3の位置情報を検出する装置である。衛星測位システムとしては、例えばGPS(Global Positioning System)が用いられる。例えば、受信装置41は、測位衛星から送信された信号と、地上に設置された基地局から送信された信号とを受信し、受信した信号に基づいて車体3の位置等を算出する。詳しくは、基地局では、当該基地局の位置情報(基準位置)、測位衛星からの信号によって求めた情報(衛星受信機間距離等)等を含む補正情報を、受信装置41に無線通信等により伝達する。受信装置41においては、基地局から取得した補正情報に基づいて、測位衛星から受信した情報を補正して、より高い精度の位置情報を取得する。但し、受信装置41による車体位置の検出方法として、RTK方式等の他の方法を使用してもよい。
【0100】
図28、
図29に示すように、受信装置41はロプス61に取り付けられている。
受信装置41の取付位置を説明する前に、ロプス61の具体的な構成について説明する。
ロプス61は、運転席10の後方に設けられている。ロプス61は、第1縦柱部61aと、第2縦柱部61bと、横架部61cと、を有している。第1縦柱部61aと第2縦柱部61bと横架部61cとは、角パイプを折り曲げることにより一体に形成されている。第1縦柱部61aは、運転席10の左方且つ後方において上下方向に延びている。第2縦柱部61bは、運転席10の右方且つ後方において上下方向に延びている。横架部61cは、車体幅方向に延びており、運転席10の上方且つ後方において第1縦柱部61aの上
端と第2縦柱部61bの上端とを連結している。これにより、ロプス61は、全体として正面視にて略門型に形成されている。ロプス61は、第1縦柱部61aの下端及び第2縦柱部61bの下端に設けられた枢支軸102を支点として後方に揺動させることができる。
【0101】
受信装置41は、ロプス61の横架部61cに取り付けられている。受信装置41は、
ブラケット103に固定されており、当該ブラケット103が横架部61cに取り付けられている。ブラケット103は、横架部61cの車体幅方向の中央部に取り付けられており、当該中央部から後方に延びている。これにより、受信装置41は、横架部61cの車体幅方向の中央部の後方に位置している。このように、受信装置41は、ロプス61から後方にオフセットした(ずれた)位置に配置されている。また、受信装置41は、運転席10の上方且つ後方に位置している。
【0102】
但し、受信装置41の取付位置は、
図28、
図29に示した位置には限定されない。例えば、受信装置41は、ロプス61から前方又は側方にオフセットした位置に配置してもよい。また、受信装置41は、ロプス61の第1縦柱部61a又は第2縦柱部61bに取り付けてもよいし、トラクタ1のロプス61以外の箇所に取り付けてもよい。また、ロプス61に代えてキャノピを使用し、当該キャノピに受信装置41を取り付けてもよい。
<慣性計測装置の配置等>
次に、位置検出装置40を構成する慣性計測装置42の配置等について説明する。
【0103】
慣性計測装置42は、車体3の慣性を計測する装置である。詳しくは、慣性計測装置42は、車体3のヨー角、ピッチ角、ロール角等の慣性(慣性情報)を計測することができる。
図19、
図20、
図28、
図29に示すように、慣性計測装置42は、運転席10の下方であって、車体幅方向の中心線CL2上に配置されている。また、慣性計測装置42は、側面視において、後輪7Rとオーバーラップする位置に配置されている。
【0104】
また、慣性計測装置42は、ミッションケース74の上方に配置されている。言い換えれば、慣性計測装置42は、平面視において、ミッションケース74とオーバーラップする位置に配置されている。慣性計測装置39がミッションケース10とオーバーラップする位置にあることにより、慣性計測装置39の位置が車体3の重心位置に近くなる。そのため、慣性計測装置39が、車体3の姿勢変化の代表値(車体3における姿勢変化を代表できる値)を計測し易くなり、車体3の姿勢変化に追随して、車体3の位置を素早く且つ精度良く求めることができる。言い換えれば、慣性計測装置39が、車体3において、前後、左右、高さの重量バランスが良い位置に配置されるため、車体3の位置の計測精度を向上させることができる。
【0105】
また、
図20に示すように、慣性計測装置42は、平面視において後車軸の軸心CL3上に配置されている。連結部8に作業装置(インプルメント)を装着した場合、車体2及び作業装置の重心位置は、車体2の前後方向中心よりも後車軸の軸心CL3寄りになる。そのため、慣性計測装置42が後車軸の軸心CL3上に配置されることにより、連結部8に作業装置(インプルメント)を装着した場合においても、慣性計測装置39が車体3の重心位置に近くなることから、車体3の位置を素早く且つ精度よく求めることができる。
【0106】
以下、主として
図19~
図25に基づいて、慣性計測装置42の支持構造(取付構造)について説明する。
慣性計測装置42は、防振部材64を介して支持部材65により車体3(ミッションケース74)に支持されている。防振部材64は、慣性計測装置42の振動を抑制する部材であって、例えばゴムやバネ等の弾性変形可能な部材である。
【0107】
支持部材65は、防振部材64を介して慣性計測装置42を車体3に支持している。より詳しくは、支持部材65は、慣性計測装置42を、防振部材64を介して車体3を駆動する駆動部を覆うハウジングに支持している。駆動部は、原動機4又は原動機4の動力を伝達する装置である。本実施形態の場合、駆動部は変速装置5であって、ハウジングはミッションケース74である。但し、支持部材65が支持されるハウジングはミッションケース74には限定されず、ハウジングが覆う駆動部は変速装置5には限定されない。例えば、ハウジングがクラッチハウジング72であって、駆動部がクラッチであってもよい。以下、駆動部が変速装置5であって、ハウジングがミッションケース74であるとして説明する。
【0108】
支持部材65は、支持板66に取り付けられている。支持板66は、ミッションケース(ハウジング)74に取り付けられている。つまり、支持部材65は、支持板66を介して間接的にミッションケース74に取り付けられている。但し、支持部材65を直接的に(支持板66を介さずに)ミッションケース(ハウジング)74に取り付けてもよい。
支持板66は、運転席10の下方に配置されて当該運転席10を下方から支持している。支持板66の上面には、支持ブラケット100及びクッション材101が取り付けられている。支持ブラケット100は、支持板66の左前部と右前部に夫々溶接等によって固定されており、支持板66から前方に延びている。本実施形態の場合、支持ブラケット100は、断面L字形のアングル材から構成されている。クッション材101は、ゴム等の弾性材から構成されている。本実施形態の場合、クッション材101は円筒状である。クッション材101は、支持板66の左後部と右後部に夫々ボルト等によって固定されている。運転席10は、支持ブラケット100及びクッション材101の上部に載置されることにより、支持板66の上方に支持されている。
【0109】
支持板66は、ミッションケース74の上部に取り付けられている。
図19、
図22等に示すように、ミッションケース74は、当該ミッションケース74の上面から上方に向けて突出する突出部74aを有している。突出部74aは、ミッションケース74の前部から上方に突出する前突出部74a1と、ミッションケース74の後部から上方に突出する後突出部74a2と、を含んでいる。前突出部74a1及び後突出部74a2は、前後方向に間隔をあけて配置され、夫々車体幅方向に延びている。前突出部74a1及び後突出部74a2には、夫々上下方向に延びるねじ孔74bが形成されている。ねじ孔74bは、前突出部74a1及び後突出部74a2の夫々について、車体幅方向に間隔をあけて複数個形成されている。本実施形態の場合、ねじ孔74bは、前突出部74a1と後突出部74a2に2つずつ(合計4つ)形成されている。
【0110】
支持板66は、第1貫通孔66a及び第2貫通孔66bを有している。
第1貫通孔66aは、支持板66をミッションケース74に取り付けるための孔である。
図19、
図21、
図22に示すように、第1貫通孔66aは、ミッションケース74に形成された複数のねじ孔74bと夫々対応する位置に形成されている。具体的には、第1貫通孔66aは、前部貫通孔66a1と後部貫通孔66a2とを含んでいる。前部貫通孔66a1は、支持板66の左前部及び右前部に夫々形成されている。後部貫通孔66a2は、支持板66の左後部及び右後部に夫々形成されている。第1貫通孔66aにはボルトB1が挿通されており、当該ボルトB1がねじ孔74bに螺合されることにより、支持板66がミッションケース74の上部に固定されている。
【0111】
上述した通り、ミッションケース74は、前車軸フレーム70、フライホイールハウジング71、クラッチハウジング72、中間フレーム73、と一体的に連結されることによって剛性の高い車体フレームを構成している。そのため、支持板66は、ミッションケース74に固定されることにより、剛性の高い車体フレームに固定されることになる。
第2貫通孔66bは、支持板66に対して支持部材65を取り付けるための孔である。
図21、
図24に示すように、第2貫通孔66bは、支持板66の後方寄りの位置に設けられている。より詳しくは、第2貫通孔66bは、前部貫通孔66a1の後方であって且つ後部貫通孔66a2の前方に設けられている。第2貫通孔66bは、車体幅方向の一方(左方)に設けられた一方貫通孔66b1と、車体幅方向の他方(右方)に設けられた他方貫通孔66b2と、を含んでいる。一方貫通孔66b1と他方貫通孔66b2とは、車体幅方向の中心線CL2を挟んで対称位置に設けられている。
【0112】
支持板66の上面には、第1雌ねじ部材691及び第2雌ねじ部材692が固定されている。第1雌ねじ部材691は、一方貫通孔66b1の上方に設けられている。第2雌ねじ部材692は、他方貫通孔66b2の上方に設けられている。第1雌ねじ部材691のねじ孔は、一方貫通孔66b1と連通している。第2雌ねじ部材692のねじ孔は、他方貫通孔66b2と連通している。尚、支持板66に直接ねじ孔を形成することによって、第1雌ねじ部材691及び第2雌ねじ部材692を省略することもできる。
【0113】
図21、
図24等に示すように、支持部材65は、取付部65aと固定部65bとを有している。取付部65aと固定部65bとは、1枚の板(金属板等)を折り曲げることにより一体的に形成されている。
取付部65aは、支持板66の下方に配置されている。取付部65aは、平板状であって、支持板66と平行に配置されている。取付部65aには、慣性計測装置42が取り付けられている。詳しくは、慣性計測装置42は、取付部65aの上面に載置され、当該上面に取付具(ボルトB2及びナットN1)によって固定されている。
【0114】
固定部65bは、取付部65bから立ち上がっている。具体的には、固定部65bは、支持部材65の左側に設けられた第1固定部65b1と、支持部材65の右側に設けられた第2固定部65b2と、を含んでいる。第1固定部65b1は、取付部65aの左端から立ち上がる第1起立部62と、第1起立部62の上端から左方に延びる第1上板部67とを有している。第2固定部65b2は、取付部65aの右端から立ち上がる第2起立部63と、第2起立部63の上端から右方に延びる第2上板部68とを有している。第1上板部67の上面と第2上板部68の上面とは、同じ高さに配置され且つ取付部65aの上面と平行に配置されている。
【0115】
図24,
図25に示すように、第1上板部67には第1取付孔67aが形成されている。第2上板部68には第2取付孔68aが形成されている。第1取付孔67a及び第2取付孔68aは、上下方向に延びる貫通孔である。第1取付孔67aは、一方貫通孔66b1と重なる位置に配置される。第2取付孔68aは、他方貫通孔66b2と重なる位置に配置される。第1取付孔67a及び第2取付孔68aには夫々ボルトB3が挿通される。第1取付孔67aに挿通されたボルトB3は、一方貫通孔66b1を貫通して第1雌ねじ部材691のねじ孔に螺合される。第2取付孔68aに挿通されたボルトB3は、他方貫通孔66b2を貫通して第2雌ねじ部材692のねじ孔に螺合される。これにより、固定部65bがボルトB3によって支持板66に固定される。
【0116】
図24,
図25等に示すように、固定部65b(第1固定部65b1、第2固定部65b2)は、防振部材64を介して支持板66に固定されている。防振部材64は、略円筒形状の弾性体(ゴム等)から構成されている。
図25に示すように、防振部材64は、第1大径部64aと、第2大径部64bと、小径部64cと、を有している。第1大径部64aは、防振部材64の上部に設けられている。第2大径部64bは、防振部材64の下部に設けられている。小径部64cは、第1大径部64aと第2大径部64bとの間に設けられている。尚、
図25は第1固定部65b1における防振部材64の取付構造を示しているが、第2固定部65b2における防振部材64の取付構造も同様である。
【0117】
第1大径部64aは、固定部65b(第1固定部65b1、第2固定部65b2)の上面と支持板66の下面との間に介在している。第2大径部64bは、固定部65b(第1固定部65b1、第2固定部65b2)の下面とボルトB3の頭部との間に介在している。小径部64cは、ボルトB3の外周面と支持部材65の取付孔(第1取付孔67a、第2取付孔68a)の内周面との間に介在している。このように、ボルトB3と固定部65b(第1固定部65b1、第2固定部65b2)との間、及び、固定部65b(第1固定部65b1、第2固定部65b2)と支持板66との間には、防振部材64が介装されている。
【0118】
第1大径部64aと第2大径部64bの一方又は両方は、ボルトB3の締め付けに起因する防振部材64の弾性変形によって形成されたものであってもよいし、防振部材64が弾性変形していない状態で形成されているものであってもよい。
上述したように、支持部材65は、防振部材64を介して慣性計測装置42を支持板66の下方に支持している。
【0119】
図20、
図21等に示すように、支持板66は、慣性計測装置42の上方に設けられた開口部66cを有している。慣性計測装置42は、開口部66cから露出している。つまり、慣性計測装置42は、支持板66の下方に位置する部分と、開口部66cを通って支持板66の上方に突出している部分を有している。慣性計測装置42の最上面は、支持板66の上方に位置するが、少なくとも運転席10の下面からは当該下面との接触を確実に回避できる距離だけ離間している。また、開口部66cは、取付具(ナットN1)を露出させている。これにより、開口部66cから手や工具等を入れて取付具を容易に取り外すことができる。また、慣性計測装置42の上部を開口部66cから突出させることで、慣性計測装置42の厚み方向(上下方向)の占有スペースを小さくすることができる。
【0120】
尚、慣性計測装置42の取り付け位置は、上記実施形態には限定されない。慣性計測装置42によりトラクタ(作業車両)1の挙動を正確に検出するという観点からすると、慣性計測装置42を取り付ける位置としては、主に4つの位置が考えられる。
第1の位置は、左の前輪7FLと右の前輪7FRと左の後輪7RLと右の後輪7RRとを結ぶ領域内であり、
図26に符号Aで示す。第2の位置は、左の前輪7FLと右の後輪7RRとを結ぶ対角線と、右の前輪7FRと左の後輪7RLとを結ぶ対角線との交差点の近傍領域内であり、
図26に符号Bで示す。第3の位置は、トラクタ1の重心位置の近傍である。第4の位置は、トラクタ1の走行時においてゼロモーメントポイント(ZMP)が動く範囲(走行時に重心位置が動く範囲(動的重心位置))であり、
図26に符号Cで示す。
図26に符号Cで示すZMPが動く範囲は、トラクタ1が走行時において姿勢が安定する安定領域(例えば、安定して走行する領域)である。
【0121】
ZMPの算出は、車体3に複数の車体状態検出部を設けることにより行うことができる。車体状態検出部は、少なくとも車体3にかかる第1荷重(床反力)及びモーメントを検出する装置であって、例えば、3軸方向(X軸方向、Y軸方向、Z軸方向)の第1荷重及びモーメントを検出可能な6分力型のロードセルが使用される。X軸方向は、車体3の進行方向、Y軸方向は車体幅方向、Z軸方向は上下方向に設定することができる。
【0122】
複数の車体状態検出部は、車体3の左前部の支持点(左の前輪)に対応する第1状態検出部、車体3の右前部の支持点(右の前輪)に対応する第2状態検出部、車体3の左後部の支持点(左の後輪)に対応する第3状態検出部、車体3の右後部の支持点(右の後輪)に対応する第4状態検出部を含むことができる。ZMPの算出は、制御装置(制御装置60又は他の制御装置)(コンピュータ)により行うことができる。当該制御装置は、車体3の支持点の第1荷重(床反力)、例えば第1状態検出部、第2状態検出部、第3状態検出部、第4状態検出部における床反力及びモーメントに基づき、2次元で示されるZMPを求める。
【0123】
図26において、車体3の支持点(複数の車体状態検出部を設置した位置)を結ぶ領域Q1は、臨界領域であって、X軸及びY軸の2次元で表される。安定領域Q2(C)は、トラクタ1が走行時において姿勢が安定する安定領域であり、臨界領域Q1から所定距離だけ内側へシフトした領域である。臨界領域Q1と安定領域Q2とを除く領域、即ち、臨界領域Q1を構成する輪郭線と、安定領域Q2を構成する輪郭線との間の領域は、不安定になり易い不安定領域Q3である。
【0124】
慣性計測装置42の取り付け位置を安定領域Q2(C)とすることにより、慣性計測装置42の計測精度を向上させることができる。
<効果>
上記実施形態の作業車両(トラクタ)1によれば、以下の効果を奏する。
作業車両1は、ステアリングハンドル30と、ステアリングハンドルを回転可能に支持するステアリングシャフト31と、ステアリングハンドルによる手動操舵と、走行予定ラインに基づくステアリングハンドルの自動操舵とのいずれかで走行可能な車体3と、ステアリングシャフトの周囲に配置され且つ、少なくとも自動操舵の開始前の設定を行う設定モードに切り換える設定スイッチ51と、ステアリングシャフトの周囲に配置され且つ、設定モードにおいて自動操舵の開始又は終了を切り換える操舵切換スイッチ52と、を備えている。
【0125】
この構成によれば、設定スイッチ51と操舵切換スイッチ52とがステアリングシャフト31の周囲に配置されているため、運転者は設定スイッチ51と操舵切換スイッチ52とを一目で確実に認識することができるとともに、姿勢を変化させることなく容易に操作することができる。そのため、スイッチの誤操作による意図しない自動操舵等を防止することができる。
【0126】
また、作業車両1は、車体3に設けられ且つ、測位衛星の信号に基づいて車体の位置を検出する位置検出装置40と、ステアリングシャフト31の周囲に配置され且つ、位置検出装置で検出された車体の位置を補正する補正スイッチ53と、を備えている。
この構成によれば、設定スイッチ51と操舵切換スイッチ52に加えて補正スイッチ53もステアリングシャフト31の周囲に配置されているため、運転者は設定スイッチ51と操舵切換スイッチ52と補正スイッチ53を一目で確実に認識することができるとともに、姿勢を変化させることなく容易に操作することができる。そのため、スイッチの誤操作による意図しない自動操舵等を防止することができる。
【0127】
また、作業車両1は、ステアリングシャフト31の周囲に配置され且つ、運転情報を表示する表示装置45と、ステアリングシャフトの周囲に配置され且つ、表示装置の表示を設定モードにおける運転状況を表示する第1画面G1と、設定モードにおける設定操作を説明する第2画面Q2とに選択的に切り換える画面切換スイッチ54と、を備えている。
この構成によれば、設定スイッチ51、操舵切換スイッチ52、補正スイッチ53に加えて、画面切換スイッチ54もステアリングシャフト31の周囲に配置されているため、運転者は設定スイッチ51と操舵切換スイッチ52と補正スイッチ53と画面切換スイッチ54を一目で確実に認識することができるとともに、姿勢を変化させることなく容易に操作することができる。そのため、スイッチの誤操作による意図しない自動操舵等を防止することができる。
【0128】
また、設定スイッチ51はステアリングシャフト31の一側方に配置され、補正スイッチ53はステアリングシャフト53の他側方に配置されている。
この構成によれば、設定スイッチ51と補正スイッチ53とがステアリングシャフト31を挟んで互いに反対方向に配置されるため、ステアリングシャフト31の周囲のスペースを有効活用することができるとともに、設定スイッチ51と補正スイッチ53とを誤操作することが防がれる。
【0129】
また、操舵切換スイッチ52は、ステアリングシャフト31の一側方に配置されている。
この構成によれば、操舵切換スイッチ52と設定スイッチ51とがステアリングシャフト31に対して同じ側に配置されるため、作業車両1の自動操舵のためのスイッチ操作の操作性が良好となる。
【0130】
また、設定スイッチ51はステアリングシャフト31の一側方に配置され、画面切換スイッチ54はステアリングシャフト31の他側方に配置されている。
この構成によれば、設定スイッチ51と画面切換スイッチ54とがステアリングシャフト31を挟んで互いに反対方向に配置されるため、ステアリングシャフト31の周囲のスペースを有効活用することができるとともに、設定スイッチ51と画面切換スイッチ54とを誤操作することが防がれる。
【0131】
また、ステアリングハンドル30の下方において表示装置45を支持するパネルカバー78を備え、設定スイッチ51、補正スイッチ53、画面切換スイッチ54は、パネルカバーに設けられている.
この構成によれば、設定スイッチ51、補正スイッチ53、画面切換スイッチ54が、表示装置45を支持するパネルカバー78に集約して配置される。そのため、運転者は、表示装置45と共に、設定スイッチ51、補正スイッチ53、画面切換スイッチ54を視認することができ、操作性が良好となる。また、設定スイッチ51、補正スイッチ53、画面切換スイッチ54が、ステアリングハンドル30から離間した位置に配置されるため、ステアリングハンドル30の操作時に意図せずに設定スイッチ51、補正スイッチ53、画面切換スイッチ54に接触することや、設定スイッチ51、補正スイッチ53、画面切換スイッチ54の操作時に意図せずにステアリングハンドル30に接触することが防がれる。そのため、誤操作による意図しない自動操舵への切り換え等を防止することができる。
【0132】
また、作業車両1は、車体3の後部に設けられ且つ作業装置を連結する連結部8と、連結部8を昇降させる昇降レバー83と、を備え、昇降レバーは、ステアリングシャフト31の他側方に配置されている。
この構成によれば、昇降レバー83と操舵切換スイッチ52とがステアリングシャフト31を挟んで互いに反対方向に配置されるため、ステアリングシャフト31の周囲のスペースを有効活用することができる。また、昇降レバー83の操作時に操舵切換スイッチ52に接触したり、操舵切換スイッチ52の操作時に昇降レバー83に接触したりすることで、運転者が意図しない操作が行われることが防がれる。
【0133】
また、設定スイッチ51及び補正スイッチ53は、ステアリングシャフト31の後方に配置されている。
この構成によれば、設定スイッチ51及び補正スイッチ53がステアリングハンドル30を操作する運転者側に配置されることとなるため、設定スイッチ51及び補正スイッチ53の操作性が良好となり、誤操作が起こりにくくなる。
【0134】
また、作業車両1は、ステアリングハンドル30と、ステアリングハンドル30を回転可能に支持するステアリングシャフト31と、ステアリングハンドルによる手動操舵と、走行予定ラインに基づくステアリングハンドルの自動操舵とのいずれかで走行可能な車体3と、車体に設けられ且つ、測位衛星の信号に基づいて車体の位置を検出する位置検出装置40と、位置検出装置により検出された車体の位置に基づいてステアリングハンドルを自動操舵する自動操舵機構37と、ステアリングシャフトの一側方に配置され且つ、位置検出装置により検出された車体の位置に基づいて演算した制御信号を出力する第1制御装置60Aと、ステアリングシャフトの他側方に配置され且つ、第1制御装置により出力された制御信号に基づいて車体が走行予定ラインに沿って走行するように自動操舵機構を制御する第2制御装置60Bと、を備えている。
【0135】
この構成によれば、第1制御装置60Aと第2制御装置60Bとを一体の制御装置とした場合に比べて、制御装置が小型化される。そのため、制御装置(第1制御装置60Aと第2制御装置60B)をステアリングシャフト31の近傍位置に小スペースで配置することができる。また、第1制御装置60Aと第2制御装置60Bとがステアリングシャフト31を挟んで互いに反対方向に配置されるため、一方の制御装置から発生した熱によって他方の制御装置が悪影響を受けることが防がれる。
【0136】
また、作業車両1は、ステアリングシャフト31の周囲に配置され且つ、運転情報を表示する表示装置45と、ステアリングハンドル30の下方において表示装置を支持するパネルカバー78と、を備え、第1制御装置60A及び第2制御装置60Bは、パネルカバー78内に配置されている。
この構成によれば、第1制御装置60A及び第2制御装置60Bがステアリングシャフト41の近傍位置に配置された状態でパネルカバー78内に配置されるため、パネルカバー78を小さくすることができる。そのため、運転者の足元スペースや前方の視界を充分に確保することができる。
【0137】
また、作業車両1は、ステアリングハンドル30と、ステアリングハンドルを回転可能に支持するステアリングシャフト31と、ステアリングハンドルによる手動操舵と、走行予定ラインに基づくステアリングハンドルの自動操舵とのいずれかで走行可能な車体3と、車体に設けられ且つ、測位衛星の信号に基づいて前記車体の位置を検出する位置検出装置40と、ステアリングハンドルの手動操作を補助するパワーステアリング装置32と、パワーステアリング装置と離れた位置に配置され且つ、位置検出装置により検出された車体の位置に基づいてステアリングハンドルを自動操舵する自動操舵機構37と、を備えている。
【0138】
この構成によれば、パワーステアリング装置32と自動操舵機構37とが離れた位置に配置されているため、パワーステアリング装置32の作動と自動操舵機構37の作動とを夫々独立化させて、自動操舵機構37の作動又は非作動に関わらずパワーステアリング装置32を作動させることができる。
また、作業車両1は、ステアリングシャフト31の周囲に配置され且つ、運転情報を表示する表示装置45と、ステアリングハンドルの下方において表示装置を支持するパネルカバー78と、車体3を走行可能に支持する前輪7F及び後輪7Rと、を備え、車体は、前輪を支持する前車軸フレーム72を有し、自動操舵機構はパネルカバー内に配置され、パワーステアリング装置は、油圧ポンプ33と、油圧ポンプから吐出した作動油が供給される制御弁34と、制御弁により作動するステアリングシリンダ35と、を有し、制御弁は、前車軸フレーム72に支持されている。
【0139】
この構成によれば、パネルカバー78を大型化することなく、自動操舵機構37をステアリングシャフト31の近傍のパネルカバー78内に配置することができる。そのため、運転者の足元スペースや前方の視界を充分に確保することができる。
また、作業車両1は、ステアリングハンドル30と、ステアリングハンドルを回転可能に支持するステアリングシャフト31と、ステアリングハンドルによる手動操舵と、走行予定ラインに基づくステアリングハンドルの自動操舵とのいずれかで走行可能な車体3と、ステアリングシャフトの周囲に配置され且つ、ステアリングシャフト側に設けられた基端部を支点として、自動操舵の開始又は終了を切り換える第1方向と、走行予定ラインの基準となる走行基準ラインの始点と終点とを設定する第2方向と、に揺動可能な操舵切換スイッチ52と、を備えている。
【0140】
この構成によれば、操舵切換スイッチ52の揺動方向を変更するだけで、自動操舵の開始又は終了の切り換えと、走行予定ラインの基準となる走行基準ラインの始点と終点との設定を行うことができるため、操作性に優れている。また、操舵切換スイッチ52として複数のスイッチを設ける場合に比べて、操舵切換スイッチ52の設置スペースを小さくすることができる。
【0141】
また、操舵切換スイッチ52は、第1方向の揺動が上方又は下方への揺動であって、第2方向の揺動が前方又は後方への揺動である。
この構成によれば、操舵切換スイッチ52の上方、下方、前方、後方への揺動によって、自動操舵の開始又は終了の切り換えと、走行予定ラインの基準となる走行基準ラインの始点と終点との設定を行うことができるため、操作性に優れている。
【0142】
また、操舵切換スイッチ52は、下方への揺動により自動操舵の開始を指令し、上方への揺動により自動操舵の終了を指令し、後方への揺動により走行基準ラインの始点を設定し、前方への揺動により走行基準ラインの終点を設定する。
この構成によれば、自動操舵の開始、自動操舵の終了、走行基準ラインの始点の設定、走行基準ラインの終点の設定の各操作を、容易に且つ確実に行うことができる。
【0143】
また、ステアリングシャフト31の周囲に配置され且つ、少なくとも自動操舵の開始前の設定を行う設定モードに切り換える設定スイッチ51を備えている。
この構成によれば、操舵切換スイッチ52に加えて設定スイッチ51がステアリングシャフト31の周囲に配置されることにより、多様なスイッチを備えつつ、スイッチの配置スペースを小さくすることができる。
【0144】
また、測位衛星の信号に基づいて前記車体の位置を検出する位置検出装置40と、ステアリングシャフト31の周囲に配置され且つ、位置検出装置40で検出された位置を補正する補正スイッチ53と、を備えている。
この構成によれば、操舵切換スイッチ52、設定スイッチ51、補正スイッチ53がステアリングシャフト31の周囲に集約して配置されることにより、多種多様なスイッチを備えつつ、スイッチの配置スペースを小さくすることができる。
【0145】
また、ステアリングシャフト31の周囲に配置され且つ、表示装置45の表示を設定モードにおける運転状況を表示する第1画面Q1と、設定モードにおける設定操作を説明する第2画面Q2とに選択的に切り換える画面切換スイッチ54を備えている。
この構成によれば、操舵切換スイッチ52、設定スイッチ51、補正スイッチ53に加えて、画面切換スイッチ54もステアリングシャフト31の周囲に集約して配置されることになる。そのため、多種多様なスイッチを備えつつ、スイッチの配置スペースを小さくすることができる。
【0146】
また、作業車両1は、ステアリングハンドル30による手動操舵と、走行予定ラインに基づくステアリングハンドルの自動操舵とのいずれかで走行可能な車体3と、車体に設けられ且つ、測位衛星の信号を受信する受信装置41と、車体の慣性を計測する慣性計測装置42と、受信装置にて受信した信号及び慣性計測装置にて計測した慣性に基づいてステアリングハンドルを自動操舵する自動操舵機構37と、慣性計測装置の振動を抑制する防振部材64と、防振部材を介して慣性計測装置を車体に支持する支持部材65と、を備えている。
【0147】
この構成によれば、防振部材64によって、車体3等の振動が慣性計測装置42に伝達されることが抑制される。そのため、慣性計測装置42の計測誤差を小さくすることができ、自動操舵を正確に行うことが可能となる。
また、車体を駆動する駆動部(例えば、変速装置5)と、駆動部を覆うハウジング(例えば、ミッションケース74)と、を備え、支持部材65は、防振部材64を介して慣性計測装置42をハウジングに支持している。
【0148】
この構成によれば、防振部材64により駆動部の駆動に起因する振動が慣性計測装置42に伝達されることが抑制される。そのため、慣性計測装置42の計測誤差を小さくすることができる。
また、ハウジング74に取り付けられた支持板66を備え、支持部材65は、支持板66の下方に配置され且つ慣性計測装置42が取り付けられる取付部65aと、取付部65aから立ち上がり且つ防振部材64を介して支持板66に固定される固定部65bと、を有している。
【0149】
この構成によれば、慣性計測装置42をハウジング74に取り付けられた支持板66の下方に吊り下げた形態で且つ防振部材64を支持板65との間に介在させて取り付けることができる。そのため、防振部材64により慣性計測装置42に振動が伝達されることを効果的に防止することができる。また、支持板66の上方に運転席等の設置スペースを確保することができる。
【0150】
また、車体3に設けられた運転席10を備え、支持板66は、運転席を下方から支持している。
この構成によれば、慣性計測装置42を、支持板66を介して運転席10の下方に配置することができる。そのため、慣性計測装置42を車体3の重心近くに配置することができ、慣性計測装置42の計測精度を向上させることができる。
【0151】
また、固定部65bは、ボルトB3によって支持板66に固定され、防振部材64は、ボルトと固定部との間、及び、固定部と支持板との間に介装されている。
この構成によれば、支持板66の振動が支持部材65を介して慣性計測装置42に伝達されることを、防振部材64によって確実に防止することができる。
また、ハウジングがミッションケース74であり、支持板66はミッションケースの上部に取り付けられている。
【0152】
この構成によれば、支持板66が剛性の高いミッションケースに取り付けられることで、支持部材65が固定される支持板66の振動が抑制され、慣性計測装置42の計測精度を向上させることができる。
また、支持板66は、慣性計測装置42の上方に設けられた開口部66cを有し、慣性計測装置は開口部から露出している。
【0153】
この構成によれば、開口部66cを利用して慣性計測装置42の着脱を容易に行うことができる。また、慣性計測装置42の上部を開口部66cから突出させることで、慣性計測装置42の厚み方向(上下方向)の占有スペースを小さくすることができる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0154】
1 作業車両(トラクタ)
3 車体
30 ステアリングハンドル
31 ステアリングシャフト
37 自動操舵機構
38 ステアリングモータ
39 ギア機構
390 連結軸
391 第1ギア(ギア)
392 第2ギア(ギア)
393 第3ギア(ギア)
394 第4ギア(ギア)
45 表示装置
52 操舵切換スイッチ
60B 第2制御装置(制御装置)
78 パネルカバー