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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107014
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】ロボットシステム
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/10 20060101AFI20240801BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20240801BHJP
   A61B 1/307 20060101ALI20240801BHJP
   B25J 3/00 20060101ALI20240801BHJP
   A61B 34/37 20160101ALI20240801BHJP
【FI】
G01N1/10 V
A61B1/00 620
A61B1/00 655
A61B1/307
B25J3/00 A
A61B34/37
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024079284
(22)【出願日】2024-05-15
(62)【分割の表示】P 2023517520の分割
【原出願日】2022-04-25
(31)【優先権主張番号】P 2021074360
(32)【優先日】2021-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】国師 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】笠 秀行
(57)【要約】
【課題】被処置者から処置者への感染リスクを低減することが可能なロボットシステムを提供する。
【解決手段】このロボットシステム(100)は、スレーブロボット(10)と、マスタロボット(20)と、ハンド部(12)が保持する処置部材(101)によって被処置者に対して処置を行う際に、ハンド部の直進動作と、ハンド部の回転動作の少なくとも一部とを、操作系統を分けることによって互いに独立して制御する制御装置(50)と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処置部材を保持するハンド部を含み、前記ハンド部が保持する前記処置部材によって被処置者に対して処置を行うスレーブロボットと、
操作者によって操作され、前記スレーブロボットを遠隔操作するマスタロボットと、
前記ハンド部が保持する前記処置部材によって前記被処置者に対して処置を行う際に、前記ハンド部の直進動作と、前記ハンド部の回転動作の少なくとも一部とを、操作系統を分けることによって互いに独立して制御する制御装置と、を備え、
前記マスタロボットは、前記ハンド部の直進動作が割り当てられた第1操作装置を含み、
前記第1操作装置は、前記操作者の一方の手によって操作される第1ハンドルを含み、
前記制御装置は、前記操作者による前記第1ハンドルの操作が円弧状の軌道を描く場合、前記操作者による前記第1ハンドルの操作に基づいて、前記ハンド部の円弧状の動作を直線的な動作に変換する制御を行う、ロボットシステム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記ハンド部の直進動作と、前記ハンド部の回転動作としての少なくとも前記ハンド部の前記処置部材の回転動作とを、前記操作系統を分けることによって互いに独立して制御する、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項3】
前記マスタロボットは、前記第1操作装置と、前記ハンド部の回転動作の少なくとも一部が割り当てられた第2操作装置と、を含み、
前記制御装置は、前記操作者の前記第1操作装置の操作に基づいて前記ハンド部の直進動作の制御を行うとともに、前記操作者の前記第2操作装置の操作に基づいて前記ハンド部の回転動作の少なくとも一部の制御を行うことによって、前記ハンド部の直進動作と、前記ハンド部の回転動作の少なくとも一部とを、前記操作系統を分けて互いに独立して制御する、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項4】
前記第1操作装置は、前記操作者の一方の手によって操作されるとともに、前記ハンド部を基準とする前後方向、左右方向および上下方向の前記ハンド部の直進動作を行うための前記第1ハンドルを含み、
前記第2操作装置は、前記操作者の他方の手によって操作されるとともに、前記前後方向に延びる第1回転軸線周りの第1回転方向、前記左右方向に延びる第2回転軸線周りの第2回転方向および前記上下方向に延びる第3回転軸線周りの第3回転方向の前記ハンド部の回転動作を行うための第2ハンドルを含み、
前記制御装置は、前記第1ハンドルの操作に基づいて、前記前後方向、前記左右方向および前記上下方向の前記ハンド部の直進動作の制御を行うとともに、前記第2ハンドルの操作に基づいて、前記第1回転方向、前記第2回転方向および前記第3回転方向の前記ハンド部の回転動作の制御を行う、請求項3に記載のロボットシステム。
【請求項5】
前記第1操作装置は、前記操作者の一方の手によって操作されるとともに、前記ハンド部の直進動作と、前記ハンド部の前記処置部材の回転動作以外の回転動作とを行うための前記第1ハンドルを含み、
前記第2操作装置は、前記操作者の足によって操作されるとともに、前記ハンド部の前記処置部材の回転動作を行うためのフットペダルを含み、
前記制御装置は、前記第1ハンドルの操作に基づいて、前記ハンド部の直進動作の制御と、前記ハンド部の前記処置部材の回転動作以外の回転動作の制御とを行うとともに、前記フットペダルの操作に基づいて、前記ハンド部の前記処置部材の回転動作の制御を行う、請求項3に記載のロボットシステム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記ハンド部の前記処置部材の回転動作を前記操作者による前記ハンド部の前記処置部材の回転動作の操作に基づくことなく自動で行うことによって、前記ハンド部の直進動作と、前記ハンド部の前記処置部材の回転動作とを、前記操作系統を分けて互いに独立して制御する、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記ハンド部の前記処置部材の回転動作を、常に、前記操作者による前記ハンド部の前記処置部材の回転動作の操作に基づくことなく自動で行う、請求項6に記載のロボットシステム。
【請求項8】
前記制御装置は、前記操作者による前記ハンド部の前記処置部材の回転動作の操作に基づくことなく、前記処置部材が前記被処置者に所定の深さまで挿入されたことに基づいて、前記ハンド部の前記処置部材の回転動作を自動で行う、請求項6に記載のロボットシステム。
【請求項9】
前記マスタロボットは、前記ハンド部の直進動作および回転動作が割り当てられた前記第1操作装置を含み、
前記第1ハンドルには、前記ハンド部の前記処置部材の回転動作以外の動作を制限し、前記ハンド部の前記処置部材の回転動作を有効とするためのスイッチが設けられており、
前記制御装置は、前記第1ハンドルの操作および前記スイッチの操作に基づく制御を行うことによって、前記ハンド部の直進動作と、前記ハンド部の前記処置部材の回転動作とを、前記操作系統を分けて互いに独立して制御する、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項10】
前記マスタロボットは、前記ハンド部の直進動作および回転動作が割り当てられた前記第1操作装置を含み、
前記第1操作装置は、前記操作者の一方の手によって操作されるとともに、スイッチが設けられていない略円柱形状を有する前記第1ハンドルを含み、
前記制御装置は、前記第1ハンドルの操作に基づいて制御を行うことによって、前記ハンド部の直進動作と、前記ハンド部の前記処置部材の回転動作とを、前記操作系統を分けて互いに独立して制御する、請求項1に記載のロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロボットシステムに関し、特に、被処置者から検体を採取するなどの処置を行うロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被処置者から検体を採取するための検体採取用ボックスが知られている。このような検体採取用ボックスは、実用新案登録第3228999号公報に開示されている。実用新案登録第3228999号公報には、検体採取用本体ボックスと、検体採取用本体ボックスに設けられた保護グローブと、を備える検体採取用ボックスが開示されている。この検体採取用ボックスでは、検体を採取する処置者が検体採取用本体ボックス内に入った状態で、保護グローブを介して、被処置者から検体を採取する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3228999号公報
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、上記実用新案登録第3228999号公報に記載された技術では、処置者が検体採取用本体ボックス内に入った状態で保護グローブを介して被処置者から検体を採取するため、処置者は被処置者に対して近接して位置する必要がある。また、処置者が検体採取用本体ボックスの中に入るため、検体採取用本体ボックス内に空気を取り込む必要がある。したがって、被処置者から検体を採取する際に、処置者が感染するリスクが高いという問題点がある。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、本開示の1つの目的は、被処置者から処置者への感染リスクを低減することが可能なロボットシステムを提供することである。
【0006】
上記目的を達成するために、本開示の一の局面によるロボットシステムは、処置部材を保持するハンド部を含み、ハンド部が保持する処置部材によって被処置者に対して処置を行うスレーブロボットと、操作者によって操作され、スレーブロボットを遠隔操作するマスタロボットと、ハンド部が保持する処置部材によって被処置者に対して処置を行う際に、ハンド部の直進動作と、ハンド部の回転動作の少なくとも一部とを、操作系統を分けることによって互いに独立して制御する制御装置と、を備え、マスタロボットは、ハンド部の直進動作が割り当てられた第1操作装置を含み、第1操作装置は、操作者の一方の手によって操作される第1ハンドルを含み、制御装置は、操作者による第1ハンドルの操作が円弧状の軌道を描く場合、操作者による第1ハンドルの操作に基づいて、ハンド部の円弧状の動作を直線的な動作に変換する制御を行う。なお、処置とは、被処置者から検体を採取すること、被処置者の検査を行うこと、被処置者の手術を行うことなどを含む広い概念である。
【0007】
本開示によれば、上記のように、被処置者から処置者への感染リスクを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態による検体採取ロボットシステムを示す図である。
図2】第1実施形態によるスレーブロボットを示す図である。
図3】第1実施形態によるスレーブロボットと被検者とを示す図である。
図4】第1実施形態によるハンド部による検体の採取について説明するための図である。
図5】第1実施形態によるハンド部の動作について説明するための図である。
図6】第1実施形態によるマスタロボットの第1操作装置を示す図である。
図7】第1実施形態によるマスタロボットの第2操作装置を示す図である。
図8】第1実施形態による制御装置の制御について説明するための図である。
図9】第1実施形態によるハンド部の円弧状の動作の直線的な動作への変換について説明するための図である。
図10】第1実施形態による検体採取作業の制御処理について説明するためのフロー図である。
図11】第1実施形態による円弧状の動作の直線的な動作への変換処理について説明するためのフロー図である。
図12】第2実施形態による検体採取ロボットシステムを示す図である。
図13】第2実施形態によるマスタロボットを示す図である。
図14】第2実施形態による制御装置の制御について説明するための図である。
図15】第2実施形態による検体採取作業の制御処理について説明するためのフロー図である。
図16】第3実施形態による検体採取ロボットシステムを示す図である。
図17】第3実施形態によるマスタロボットを示す図である。
図18】第3実施形態による制御装置の制御について説明するための図である。
図19】第3実施形態による検体採取作業の制御処理について説明するためのフロー図である。
図20】第4実施形態による検体採取ロボットシステムを示す図である。
図21】第4実施形態による制御装置の制御について説明するための図である。
図22】第4実施形態による検体採取作業の制御処理について説明するためのフロー図である。
図23】第5実施形態による検体採取ロボットシステムを示す図である。
図24】第5実施形態によるマスタロボットを示す図である。
図25】第5実施形態によるマスタロボットのハンドル近傍を示す拡大図である。
図26】第5実施形態による制御装置の制御について説明するための図である。
図27】第5実施形態による検体採取作業の制御処理について説明するためのフロー図である。
図28】第6実施形態による検体採取ロボットシステムを示す図である。
図29】第6実施形態によるマスタロボットのハンドル近傍を示す拡大図である。
図30】変形例によるスレーブロボットを示す図である。
図31】変形例によるスレーブロボットの操作による尿管鏡手術を示す図である。
図32】変形例によるハンド部の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
図1に示すように、第1実施形態としての検体採取ロボットシステム100は、スレーブロボット10と、マスタロボット20と、撮影装置30と、表示装置40と、制御装置50と、を備えている。なお、検体採取ロボットシステム100は、請求の範囲の「ロボットシステム」の一例である。
【0010】
図1図4に示すように、スレーブロボット10は、検体採取部材101によって被検者Sから検体を採取する処置を行う。検体採取部材101は、たとえば、滅菌綿棒(スワブ)である。滅菌綿棒は、棒形状を有している。スレーブロボット10は、たとえば、被検者Sの鼻腔内に検体採取部材101を挿入し、挿入した検体採取部材101によって被検者Sの鼻咽頭から検体(鼻咽頭ぬぐい液)を採取する。なお、スレーブロボット10は、被検者Sの口腔内に検体採取部材101を挿入して検体を採取してもよい。採取された検体に対しては、たとえば、PCR(Polymerase Chain Reaction)検査などのウイルス検査(新型コロナウイルスなどの検査)が行われる。検体採取ロボットシステム100では、医師などの検体採取担当者が被検者Sと対面して検体採取作業を行う必要がないので、検体採取担当者を感染リスクから隔離することが可能である。なお、検体採取部材101は、請求の範囲の「処置部材」の一例である。また、被検者Sは、請求の範囲の「被処置者」の一例である。
【0011】
スレーブロボット10は、垂直多関節ロボットである。スレーブロボット10は、アーム部11と、アーム部11の先端に取り付けられたハンド部12と、を含んでいる。アーム部11は、複数のリンク部11aを有している。複数のリンク部11a同士は、関節11bによって接続されている。関節11bは、複数設けられている。複数の関節11bの各々には、駆動部としてのモータ111(サーボモータ)(図8参照)と、位置検出部としてのエンコーダ112(図8参照)とが設けられている。ハンド部12は、検体採取部材101を保持する。ハンド部12は、たとえば、チャック機構によって検体採取部材101を把持して保持する。
【0012】
また、スレーブロボット10は、筐体60の内部に収容されている。また、筐体60内には、スレーブロボット10を制御する制御部13が設けられている。
【0013】
また、スレーブロボット10と被検者Sとの間には、遮蔽板61が配置されている。遮蔽板61は、筐体60に設置されている。また、遮蔽板61は、ガラス板およびアクリル板等の無色透明な部材により構成されており、開口部61aが設けられている。
【0014】
なお、開口部61aは、被検者Sの鼻腔に対応する位置に設けられ、開口部61aの大きさは、被検者Sの鼻および口を含む大きさである。
【0015】
また、遮蔽板61と被検者Sとの間には、位置決め器70が設置されている。位置決め器70は、被当接部71および顎乗せ台72を備えている。
【0016】
位置決め器70は、被検者Sが、被当接部71に額を当接させて、顎乗せ台72に顎を乗せることにより、被検者Sの鼻腔を、予め設定されている範囲(開口部61a)内に位置させる。これにより、被検者Sの鼻腔の位置決めを容易に行うことが可能になる。
【0017】
また、アーム部11またはハンド部12(図4では、ハンド部12の下方)には、被検者Sおよび検体採取部材101を撮影する撮影装置80が設けられている。撮影装置80は、2次元の画像を取得するカメラである。なお、撮影装置80は、3次元の画像を撮影するカメラであってもよい。また、撮影装置80は、鼻腔を含む被検者Sの顔全体を被検者Sの正面側から撮影する。また、撮影装置80は、ハンド部12に保持された検体採取部材101を撮影する。
【0018】
また、図5に示すように、ハンド部12は、複数方向に動作されるように構成されている。具体的には、ハンド部12は、アーム部11の複数の関節11bの動作によって、前後方向(A1方向)、左右方向(A2方向)および上下方向(A3方向)に直進動作(直交座標動作)されるとともに、前後方向に延びる第1回転軸線周りの第1回転方向(C1方向)、左右方向に延びる第2回転軸線周りの第2回転方向(C2方向)および上下方向に延びる第3回転軸線周りの第3回転方向(C3方向)に回転動作されるように構成されている。なお、前後方向、左右方向、上下方向、第1回転方向、第2回転方向および第3回転方向は、ハンド部12を基準とした方向である。また、ハンド部12の前後方向への直進動作は、検体採取部材101の軸方向への直進動作と略一致している。また、ハンド部12の第1回転方向への回転動作は、検体採取部材101の軸周りの回転動作と略一致している。また、ハンド部12の第1回転方向(C1方向)への回転動作は、被検者Sの検体採取位置(鼻咽頭)において検体をこすり取る際に行われる。
【0019】
図1図6および図7に示すように、マスタロボット20は、スレーブロボット10を遠隔操作する。具体的には、マスタロボット20は、医師などの操作者O(処置者)によって操作されることによって、スレーブロボット10を遠隔操作する。マスタロボット20は、操作者Oの操作に基づいた操作指令を出力する。スレーブロボット10は、マスタロボット20の操作指令に基づいて、操作者Oの操作に対応する動作を行う。
【0020】
ここで、本実施形態では、マスタロボット20は、第1操作装置20aと、第1操作装置20aとは別個に独立して設けられた第2操作装置20bと、を含んでいる。第1操作装置20aには、ハンド部12の直進動作が割り当てられている。具体的には、第1操作装置20aには、前後方向(A1方向)、左右方向(A2方向)および上下方向(A3方向)のハンド部12の直進動作が割り当てられている。また、第2操作装置20bには、ハンド部12の回転動作が割り当てられている。具体的には、第2操作装置20bには、第1回転方向(C1方向)、第2回転方向(C2方向)および第3回転方向(C3方向)のハンド部12の回転動作が割り当てられている。なお、第1操作装置20aは、請求の範囲の「第1操作装置」の一例である。また、第2操作装置20bは、請求の範囲の「第2操作装置」の一例である。
【0021】
図6に示すように、第1操作装置20aは、移動可能な操作ハンドル21と、操作ハンドル21を移動可能に支持するアーム部22と、を含んでいる。操作ハンドル21は、スレーブロボット10を操作するために設けられている。具体的には、操作ハンドル21は、検体採取部材101を保持するスレーブロボット10のハンド部12を遠隔操作するために設けられている。操作ハンドル21は、棒形状を有するグリップハンドルである。操作ハンドル21は、操作者Oの一方の手(図1では、右手)によって操作されるように構成されている。操作ハンドル21は、前後方向(A1方向)、左右方向(A2方向)および上下方向(A3方向)のハンド部12の直進動作を行うために設けられている。アーム部22は、複数のリンク部22aを有している。複数のリンク部22a同士は、関節22bによって接続されている。関節22bは、複数設けられている。複数の関節22bの各々には、駆動部としてのモータ121(サーボモータ)(図8参照)と、位置検出部としてのエンコーダ122(図8参照)とが設けられている。なお、操作ハンドル21は、請求の範囲の「第1ハンドル」の一例である。
【0022】
また、第1操作装置20aは、架台23を含んでいる。架台23は、上方で操作者O側に折れ曲がるように(略L字状に)構成されている支柱部23aを有している。支柱部23aの折れ曲がった部分の下方には、アーム部22の略L字形状の部分が設けられている。
【0023】
また、架台23の内部には、第1操作装置20aを制御する制御部24が設けられている。また、架台23の内部には、図示しない電源ユニットなどが設けられている。
【0024】
また、架台23の外表面には、操作パネル25が設けられている。操作パネル25が操作者Oによって操作されることにより、スレーブロボット10およびマスタロボット20の基本的な動作指示、制御切替、および、設定などが行われる。
【0025】
また、第1操作装置20aには、クラッチペダル26が設けられている。操作者Oにより操作ハンドル21が握られた状態で、クラッチペダル26が踏み込まれることにより、スレーブロボット10が動作せず、マスタロボット20の第1操作装置20aのみが動作するクラッチ操作が行われる。
【0026】
図7に示すように、第2操作装置20bは、操作ハンドル27を含んでいる。操作ハンドル27は、スレーブロボット10を操作するために設けられている。具体的には、操作ハンドル27は、検体採取部材101を保持するスレーブロボット10のハンド部12を遠隔操作するために設けられている。操作ハンドル27は、棒形状を有するジョイスティックである。操作ハンドル27は、操作者Oの他方の手(図1では、左手)によって操作されるように構成されている。操作ハンドル27は、第1回転方向(C1方向)、第2回転方向(C2方向)および第3回転方向(C3方向)のハンド部12の回転動作を行うために設けられている。操作ハンドル27には、位置検出部としてのエンコーダ123(図8参照)が設けられている。なお、操作ハンドル27は、請求の範囲の「第2ハンドル」の一例である。
【0027】
また、第2操作装置20bは、架台28を含んでいる。架台28の内部には、第2操作装置20bを制御する制御部29が設けられている。
【0028】
スレーブロボット10のハンド部12は、第1操作装置20aの操作ハンドル21および第2操作装置20bの操作ハンドル27の操作に基づいて動作するように構成されている。第1操作装置20aの操作ハンドル21が、ハンド部12の前後方向(A1方向)、左右方向(A2方向)および上下方向(A3方向)のいずれかに対応する方向に操作された場合、スレーブロボット10のハンド部12が、前後方向、左右方向および上下方向のいずれかの方向に動作される。また、第2操作装置20bの操作ハンドル27が、ハンド部12の第1回転方向(C1方向)、第2回転方向(C2方向)および第3回転方向(C3方向)のいずれかに対応する方向に操作された場合、スレーブロボット10のハンド部12が、第1回転方向、第2回転方向および第3回転方向のいずれかの方向に動作される。第1操作装置20aおよび第2操作装置20bは、個別または同時並行で操作される。
【0029】
図1および図3に示すように、撮影装置30は、被検者Sおよび検体採取部材101を側方から撮影するように構成されている。すなわち、撮影装置30は、被検者Sの横顔を撮影するように構成されている。撮影装置30は、2次元の画像を取得するカメラである。また、撮影装置30は、鼻を含む被検者Sの横顔全体を被検者Sの側方から撮影するように構成されている。また、撮影装置30は、ハンド部12に保持された検体採取部材101を撮影するように構成されている。撮影装置30は、たとえば、遮蔽板61の近傍でかつ遮蔽板61の被検者S側に配置されている。
【0030】
図1に示すように、表示装置40は、被検者Sおよび検体採取部材101の画像(映像)を表示する。表示装置40は、たとえば、撮影装置30により撮影した画像、および、撮影装置80により撮影した画像などを表示する。操作者Oは、表示装置40に表示されたリアルタイムの被検者Sおよび検体採取部材101の画像を視認しながら、マスタロボット20を用いたスレーブロボット10の操作によって、検体採取部材101による被検者Sからの検体採取作業を行う。表示装置40は、たとえば、液晶モニタを含んでいる。
【0031】
図1および図8に示すように、制御装置50は、操作者Oによるマスタロボット20の操作に基づいて、スレーブロボット10の動作を制御するように構成されている。また、制御装置50は、CPUなどのプロセッサと、RAMおよびROMなどのメモリとを含むコンピュータにより構成されている。また、制御装置50のメモリには、スレーブロボット10を制御するための制御ソフトが記憶されている。
【0032】
ここで、第1実施形態では、制御装置50は、ハンド部12が保持する検体採取部材101によって被検者Sから検体を採取する際に、ハンド部12の直進動作と、ハンド部12の回転動作の少なくとも一部とを、操作系統を分けることによって互いに独立して制御するように構成されている。具体的には、制御装置50は、ハンド部12が保持する検体採取部材101によって被検者Sから検体を採取する際に、ハンド部12の直進動作と、ハンド部12の回転動作の少なくとも一部とを、複数の操作装置(第1操作装置20aおよび第2操作装置20b)によって操作系統を分けて互いに独立して制御するように構成されている。また、制御装置50は、ハンド部12の直進動作と、少なくともハンド部12の検体採取部材101の回転動作とを、操作系統を分けることによって互いに独立して制御するように構成されている。
【0033】
また、第1実施形態では、制御装置50は、操作者Oの第1操作装置20aの操作に基づいてハンド部12の直進動作の制御を行うとともに、操作者Oの第2操作装置20bの操作に基づいてハンド部12の回転動作の少なくとも一部の制御を行うことによって、ハンド部12の直進動作と、ハンド部12の回転動作の少なくとも一部とを、操作系統を分けて互いに独立して制御するように構成されている。具体的には、制御装置50は、第1操作装置20aの操作ハンドル21の操作に基づいて、前後方向(A1方向)、左右方向(A2方向)および上下方向(A3方向)のハンド部12の直進動作の制御を行うとともに、第2操作装置20bの操作ハンドル27の操作に基づいて、第1回転方向(C1方向)、第2回転方向(C2方向)および第3回転方向(C3方向)のハンド部12の回転動作の制御を行うように構成されている。
【0034】
また、マスタロボット20の第1操作装置20aの操作ハンドル21が操作者Oによって操作された場合、マスタロボット20の第1操作装置20aの制御部24は、エンコーダ122の検出結果に基づいて、操作ハンドル21の操作量を制御装置50に出力するように構成されている。そして、制御装置50は、制御部24から出力された操作ハンドル21の操作量に基づいて、スレーブロボット10の位置指令値を算出するように構成されている。なお、操作者Oによる操作ハンドル21の操作が行われていない場合には、位置指令値はゼロである。
【0035】
また、マスタロボット20の第2操作装置20bの操作ハンドル27が操作者Oによって操作された場合、マスタロボット20の第2操作装置20bの制御部29は、エンコーダ123の検出結果に基づいて、操作ハンドル27の操作量を制御装置50に出力するように構成されている。そして、制御装置50は、制御部29から出力された操作ハンドル27の操作量に基づいて、スレーブロボット10の姿勢指令値を算出するように構成されている。なお、操作者Oによる操作ハンドル21の操作が行われていない場合には、位置指令値はゼロである。なお、操作者Oによる操作ハンドル27の操作が行われていない場合には、姿勢指令値はゼロである。
【0036】
そして、制御装置50は、算出された位置指令値および姿勢指令値に基づいて、スレーブロボット10の動作指令値を算出するとともに、算出された動作指令値をスレーブロボット10の制御部13に出力するように構成されている。そして、スレーブロボット10の制御部13は、制御装置50から出力された動作指令値に基づいて、関節11bのモータ111の動作を制御するように構成されている。これらの結果、マスタロボット20の操作ハンドル21および操作ハンドル27の操作に対応するようにスレーブロボット10のハンド部12の動作が制御される。
【0037】
(円弧状動作の変換について)
図9を参照して、ハンド部12の円弧状動作の変換について説明する。
【0038】
ここで、たとえば検体採取部材101の被検者Sの鼻腔内への挿入時には、ハンド部12の前後方向(A1方向)への直進動作が必要であるが、操作者Oが図示しない肘置きに肘Oaを置いた状態で操作ハンドル21の操作を行う場合、操作ハンドル21が直線的に動くように操作者Oが操作ハンドル21を操作しようとしたとしても、肘置きに配置された肘Oaを回転中心(支点)として肘から先の腕を回転させるように操作ハンドル21が操作されてしまう。この場合、操作者Oの操作ハンドル21の操作が円弧状の軌道を描くことに起因して意図せずハンド部12が円弧状に動作されてしまう。
【0039】
そこで、第1実施形態では、図9下段に示すように、制御装置50は、操作者Oの第1操作装置20aの操作ハンドル21の操作が円弧状の軌道を描く場合、操作者Oによる操作ハンドル21の操作に基づいて、ハンド部12の円弧状の動作を直線的な動作に変換する。具体的には、制御装置50は、操作者Oの第1操作装置20aの操作ハンドル21の操作に基づいて、ハンド部12の前後方向(A1方向)、左右方向(A2方向)および上下方向(A3方向)のうちの特定の方向の操作のみを抽出することによって、ハンド部12の円弧状の動作を直線的な動作に変換する。
【0040】
より具体的には、制御装置50は、ハンド部12の前後方向の直進動作の速度指令値、ハンド部12の左右方向の直進動作の速度指令値、および、ハンド部12の上下方向の直進動作の速度指令値を取得する。そして、制御装置50は、取得したハンド部12の前後方向の直進動作の速度指令値、ハンド部12の左右方向の直進動作の速度指令値、および、ハンド部12の上下方向の直進動作の速度指令値の3つの速度指令値のうちの最大の速度指令値を抽出する。そして、制御装置50は、抽出した最大の速度指令値を有効とし、最大の速度指令値以外の速度指令値を無効とすることによって、ハンド部12の円弧状の動作を直線的な動作(最大の速度指令値の直進動作)に変換する。制御装置50は、たとえば、最大の速度指令値以外の速度指令値を、ゼロとするかまたは無視することによって、無効とする。
【0041】
(検体採取作業の制御処理)
次に、図10を参照して、第1実施形態による検体採取ロボットシステム100の検体採取作業の制御処理をフローチャートに基づいて説明する。
【0042】
図10に示すように、まず、ステップS1において、検体採取作業の開始指令が受け付けられる。
【0043】
そして、ステップS2において、撮影装置30および撮影装置80によって撮影される画像(映像)が表示装置40に表示される。
【0044】
そして、ステップS3において、操作者Oの第1操作装置20aの操作ハンドル21の操作量が取得される。
【0045】
そして、ステップS4において、ステップS3において取得された操作者Oの操作ハンドル21の操作量に基づいて、スレーブロボット10の位置指令値が算出される。
【0046】
そして、ステップS5において、操作者Oの第2操作装置20bの操作ハンドル27の操作量が取得される。
【0047】
そして、ステップS6において、ステップS5において取得された操作者Oの操作ハンドル27の操作量に基づいて、スレーブロボット10の姿勢指令値が算出される。
【0048】
そして、ステップS7において、ステップS4において算出された位置指令値、および、ステップS6において算出された姿勢指令値に基づいて、スレーブロボット10の動作指令値が算出されるとともに、算出された動作指令値がスレーブロボット10に出力される。
【0049】
そして、ステップS8において、ステップS7において出力された動作指令値に基づいて、スレーブロボット10の各関節11bの動作が制御される。
【0050】
そして、ステップS9において、検体採取作業の終了指令を受け付けたか否かが判断される。検体採取作業の終了指令を受け付けていないと判断された場合、ステップS3に戻る。そして、ステップS3~S8の処理が繰り返される。また、検体採取作業の終了指令を受け付けたと判断された場合、制御処理が終了される。
【0051】
(円弧状動作の変換処理)
次に、図11を参照して、第1実施形態による検体採取ロボットシステム100のハンド部12の円弧状の動作の直線的な動作への変換処理をフローチャートに基づいて説明する。
【0052】
図11に示すように、まず、ステップS11において、操作者Oのマスタロボット20の操作ハンドル21の操作に基づいて、ハンド部12の前後方向(A1方向)の直進動作の速度指令値、ハンド部12の左右方向(A2方向)の直進動作の速度指令値、および、ハンド部12の上下方向(A3方向)の直進動作の速度指令値の3つの速度指令値が算出される。
【0053】
そして、ステップS12において、ステップS11において算出された3つの速度指令値のうちの最大の速度指令値が、ハンド部12の前後方向(A1方向)の直進動作の速度指令値であるか否かが判断される。3つの速度指令値のうちの最大の速度指令値が、ハンド部12の前後方向の直進動作の速度指令値であると判断された場合、ステップS13に進む。
【0054】
そして、ステップS13において、操作者Oの操作ハンドル21の操作がハンド部12の前後方向(A1方向)の直進動作の操作であるとみなし、ハンド部12の左右方向(A2方向)の直進動作の速度指令値、および、ハンド部12の上下方向(A3方向)の直進動作の速度指令値が無効化される。そして、ステップS17に進む。
【0055】
また、ステップS12において、3つの速度指令値のうちの最大の速度指令値が、ハンド部12の前後方向(A1方向)の直進動作の速度指令値ではないと判断された場合、ステップS14に進む。
【0056】
そして、ステップS14において、3つの速度指令値のうちの最大の速度指令値が、ハンド部12の左右方向(A2方向)の直進動作の速度指令値であるか否かが判断される。3つの速度指令値のうちの最大の速度指令値が、ハンド部12の左右方向の直進動作の速度指令値であると判断された場合、ステップS15に進む。
【0057】
そして、ステップS15において、操作者Oの操作ハンドル21の操作がハンド部12の左右方向(A2方向)の直進動作の操作であるとみなし、ハンド部12の前後方向(A1方向)の直進動作の速度指令値、および、ハンド部12の上下方向(A3方向)の直進動作の速度指令値が無効化される。そして、ステップS17に進む。
【0058】
また、ステップS14において、3つの速度指令値のうちの最大の速度指令値が、ハンド部12の左右方向(A2方向)の直進動作の速度指令値ではないと判断された場合、ステップS16に進む。
【0059】
そして、ステップS16において、操作者Oの操作ハンドル21の操作がハンド部12の上下方向(A3方向)の直進動作の操作であるとみなし、ハンド部12の前後方向(A1方向)の直進動作の速度指令値、および、ハンド部12の左右方向(A2方向)の直進動作の速度指令値が無効化される。そして、ステップS17に進む。
【0060】
そして、ステップS17において、3つの速度指令値のうちのいずれか2つが無効化された状態で、スレーブロボット10の動作指令値が算出されるとともに、算出された動作指令値がスレーブロボット10に出力される。
【0061】
そして、ステップS18において、検体採取作業の終了指令を受け付けたか否かが判断される。検体採取作業の終了指令を受け付けていないと判断された場合、ステップS11に戻る。そして、ステップS11~S17の処理が適宜繰り返される。また、検体採取作業の終了指令を受け付けたと判断された場合、制御処理が終了される。
【0062】
[第1実施形態の効果]
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0063】
第1実施形態では、上記のように、検体採取部材101によって被検者Sから検体を採取するスレーブロボット10と、操作者O(処置者)によって操作され、スレーブロボット10を遠隔操作するマスタロボット20と、を設ける。これにより、操作者O(処置者)がマスタロボット20によりスレーブロボット10を遠隔操作することにより被検者Sから検体を採取することができるので、被検者Sから操作者O(処置者)への感染リスクを低減することができる。また、ハンド部12が保持する検体採取部材101によって被検者Sから検体を採取する際に、ハンド部12の直進動作と、ハンド部12の回転動作の少なくとも一部とを、操作系統を分けることによって互いに独立して制御する制御装置50を設ける。これにより、1つの操作系統によってスレーブロボット10のハンド部12の直進動作と回転動作とが行われる構成に比べて、誤操作に起因する意図しないハンド部12の動作の発生を抑制できる。その結果、マスタロボット20によってスレーブロボット10のハンド部12を遠隔操作して被検者Sに対して処置を行う(被検者Sから検体を採取する)際の操作性を向上させることができる。
【0064】
また、第1実施形態では、上記のように、制御装置50は、ハンド部12の直進動作と、ハンド部12の回転動作としての少なくともハンド部12の検体採取部材101の回転動作とを、操作系統を分けることによって互いに独立して制御する。これにより、ハンド部12の検体採取部材101の回転動作によって被検者Sから検体をこすり取る際に、誤操作に起因して意図しない誤ったハンド部12の直進動作が発生することを抑制することができる。その結果、マスタロボット20によってスレーブロボット10のハンド部12を遠隔操作して被検者Sから検体を採取する際の操作性を向上させることができる。
【0065】
また、第1実施形態では、上記のように、マスタロボット20は、ハンド部12の直進動作が割り当てられた第1操作装置20aと、ハンド部12の回転動作の少なくとも一部が割り当てられた第2操作装置20bと、を含む。また、制御装置50は、操作者Oの第1操作装置20aの操作に基づいてハンド部12の直進動作の制御を行うとともに、操作者Oの第2操作装置20bの操作に基づいてハンド部12の回転動作の少なくとも一部の制御を行うことによって、ハンド部12の直進動作と、ハンド部12の回転動作の少なくとも一部とを、操作系統を分けて互いに独立して制御する。これにより、第1操作装置20aと第2操作装置20bとの互いに異なる操作装置の操作によってハンド部12の直進動作と回転動作の少なくとも一部とを行うことができるので、ハンド部12の直進動作と回転動作の少なくとも一部との操作において誤操作が発生することを容易に抑制することができる。その結果、誤操作に起因して意図しない誤ったハンド部12の動作が発生することを容易に抑制することができる。
【0066】
また、第1実施形態では、上記のように、第1操作装置20aは、操作者Oの一方の手によって操作されるとともに、ハンド部12を基準とする前後方向、左右方向および上下方向のハンド部12の直進動作を行うための操作ハンドル21を含む。また、第2操作装置20bは、操作者Oの他方の手によって操作されるとともに、前後方向に延びる第1回転軸線周りの第1回転方向、左右方向に延びる第2回転軸線周りの第2回転方向および上下方向に延びる第3回転軸線周りの第3回転方向のハンド部12の回転動作を行うための操作ハンドル27を含む。また、制御装置50は、操作ハンドル21の操作に基づいて、前後方向、左右方向および上下方向のハンド部12の直進動作の制御を行うとともに、操作ハンドル27の操作に基づいて、第1回転方向、第2回転方向および第3回転方向のハンド部12の回転動作の制御を行う。これにより、操作者Oの一方の手によって前後方向、左右方向および上下方向のハンド部12の直進動作の操作を行い、操作者Oの他方の手によって第1回転方向、第2回転方向および第3回転方向のハンド部12の回転動作の操作を行うことができるので、ハンド部12の直進動作と回転動作との操作において誤操作が発生することをより容易に抑制することができる。これにより、誤操作に起因して意図しない誤ったハンド部12の動作が発生することをより容易に抑制することができる。
【0067】
また、第1実施形態では、上記のように、マスタロボット20は、ハンド部12の直進動作が割り当てられた第1操作装置20aを含む。また、第1操作装置20aは、操作者Oの一方の手によって操作される操作ハンドル21を含む。また、制御装置50は、操作者Oによる操作ハンドル21の操作が円弧状の軌道を描く場合、操作者Oによる操作ハンドル21の操作に基づいて、ハンド部12の円弧状の動作を直線的な動作に変換する制御を行う。これにより、ハンド部12を直線的に動作させたいにもかかわらず、操作者Oの第1操作装置20aの操作ハンドル21の操作が円弧状の軌道を描いたためにハンド部12が円弧状に動作されようとしたとしても、ハンド部12の円弧状の動作を直線的な動作に変換することができる。その結果、操作者Oが意図したハンド部12の直線的な動作を容易に行うことができる。
【0068】
[第2実施形態]
次に、図12図15を参照して、第2実施形態による検体採取ロボットシステム200の構成について説明する。検体採取ロボットシステム200では、マスタロボット20に第1操作装置20aと第2操作装置20bとが設けられていた上記第1実施形態とは異なり、マスタロボット220に第1操作装置220aと第2操作装置220bとが設けられている。なお、上記第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0069】
図12に示すように、第2実施形態の検体採取ロボットシステム200は、スレーブロボット10と、マスタロボット220と、撮影装置30と、表示装置40と、制御装置250と、を備えている。なお、検体採取ロボットシステム200は、請求の範囲の「ロボットシステム」の一例である。
【0070】
図13に示すように、マスタロボット220は、第1操作装置220aと、第2操作装置220bと、を含んでいる。第1操作装置220aには、ハンド部12の直進動作と、ハンド部12の検体採取部材101の回転動作以外の回転動作とが割り当てられている。具体的には、第1操作装置220aには、前後方向(A1方向)、左右方向(A2方向)および上下方向(A3方向)のハンド部12の直進動作と、第2回転方向(C2方向)および第3回転方向(C3方向)のハンド部12の回転動作とが割り当てられている。また、第2操作装置220bには、ハンド部12の検体採取部材101の回転動作が割り当てられている。具体的には、第2操作装置20bには、第1回転方向(C1方向)のハンド部12の回転動作が割り当てられている。なお、第1操作装置220aは、請求の範囲の「第1操作装置」の一例である。また、第2操作装置220bは、請求の範囲の「第2操作装置」の一例である。
【0071】
第1操作装置220aは、移動可能な操作ハンドル221と、アーム部22と、架台23と、制御部24と、操作パネル25と、クラッチペダル26とを含んでいる。操作ハンドル221は、操作者Oの一方の手(図12では、右手)によって操作されるように構成されている。操作ハンドル221は、ハンド部12の直進動作と、ハンド部12の検体採取部材101の回転動作以外の回転動作とを行うために設けられている。具体的には、操作ハンドル221は、前後方向(A1方向)、左右方向(A2方向)および上下方向(A3方向)のハンド部12の直進動作と、第2回転方向(C2方向)および第3回転方向(C3方向)のハンド部12の回転動作とを行うために設けられている。なお、操作ハンドル221は、請求の範囲の「第1ハンドル」の一例である。
【0072】
第2操作装置220bは、フットペダル227(フットスイッチ)を含んでいる。フットペダル227は、操作者Oの足によって操作されるように構成されている。フットペダル227は、ハンド部12の検体採取部材101の回転動作を行うために設けられている。具体的には、フットペダル227は、第1回転方向(C1方向)のハンド部12の回転動作を行うために設けられている。フットペダル227は、操作者Oの足によって踏み込まれることによって、操作信号を出力するように構成されている。また、フットペダル227は、クラッチペダル26とは別個に独立して設けられている。
【0073】
ここで、第2実施形態では、図14に示すように、制御装置250は、ハンド部12が保持する検体採取部材101によって被検者Sから検体を採取する際に、ハンド部12の直進動作と、ハンド部12の回転動作の一部とを、操作系統を分けることによって互いに独立して制御するように構成されている。具体的には、制御装置250は、ハンド部12が保持する検体採取部材101によって被検者Sから検体を採取する際に、ハンド部12の直進動作と、ハンド部12の回転動作の一部とを、複数の操作装置(第1操作装置220aおよび第2操作装置220b)によって操作系統を分けて互いに独立して制御するように構成されている。また、制御装置250は、ハンド部12の直進動作と、ハンド部12の検体採取部材101の回転動作とを、操作系統を分けることによって互いに独立して制御するように構成されている。
【0074】
また、第2実施形態では、制御装置250は、操作者Oの第1操作装置220aの操作に基づいて、少なくともハンド部12の直進動作の制御を行うとともに、操作者Oの第2操作装置220bの操作に基づいて、ハンド部12の回転動作の一部の制御を行うことによって、少なくともハンド部12の直進動作と、ハンド部12の回転動作の一部とを、操作系統を分けて互いに独立して制御するように構成されている。具体的には、制御装置250は、第1操作装置220aの操作ハンドル221の操作に基づいて、ハンド部12の直進動作の制御と、ハンド部12の検体採取部材101の回転動作以外の動作の制御とを行うとともに、第2操作装置220bのフットペダル227の操作に基づいて、ハンド部12の検体採取部材101の回転動作の制御を行うように構成されている。より具体的には、制御装置250は、第1操作装置220aの操作ハンドル221の操作に基づいて、前後方向(A1方向)、左右方向(A2方向)および上下方向(A3方向)のハンド部12の直進動作の制御と、第2回転方向(C2方向)および第3回転方向(C3方向)のハンド部12の回転動作の制御とを行うとともに、第2操作装置220bのフットペダル227の操作に基づいて、第1回転方向(C1方向)のハンド部12の回転動作の制御を行うように構成されている。
【0075】
また、マスタロボット220の第1操作装置220aの操作ハンドル221が操作者Oによって操作された場合、マスタロボット220の第1操作装置220aの制御部24は、エンコーダ122の検出結果に基づいて、操作ハンドル221の操作量を制御装置250に出力するように構成されている。そして、制御装置250は、制御部24から出力された操作ハンドル221の操作量に基づいて、スレーブロボット10の操作指令値を算出するように構成されている。なお、操作者Oによる操作ハンドル221の操作が行われていない場合には、操作指令値はゼロである。
【0076】
また、マスタロボット220の第2操作装置220bのフットペダル227が操作者Oによって操作された場合、マスタロボット220の第2操作装置220bのフットペダル227は、操作信号を制御装置250に出力するように構成されている。そして、制御装置250は、フットペダル227の操作信号に基づいて、スレーブロボット10の自動動作指令値(検体採取部材101の回転の指令値)を算出するように構成されている。なお、操作者Oによるフットペダル227の操作が行われていない場合には、自動動作指令値はゼロである。
【0077】
そして、制御装置250は、算出された操作指令値および自動動作指令値に基づいて、スレーブロボット10の動作指令値を算出するとともに、算出された動作指令値をスレーブロボット10の制御部13に出力するように構成されている。そして、スレーブロボット10の制御部13は、制御装置250から出力された動作指令値に基づいて、関節11bのモータ111の動作を制御するように構成されている。これらの結果、マスタロボット220の操作ハンドル221およびフットペダル227の操作に対応するようにスレーブロボット10のハンド部12の動作が制御される。
【0078】
(検体採取作業の制御処理)
次に、図15を参照して、第2実施形態による検体採取ロボットシステム200の検体採取作業の制御処理をフローチャートに基づいて説明する。なお、上記第1実施形態と同一の処理については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0079】
図15に示すように、ステップS201において、操作者Oの第1操作装置220aの操作ハンドル221の操作量が取得される。
【0080】
そして、ステップS202において、ステップS201において取得された操作者Oの操作ハンドル221の操作量に基づいて、スレーブロボット10の操作指令値が算出される。
【0081】
そして、ステップS203において、操作者Oの第2操作装置220bのフットペダル227がオン(操作)されているか否かが判断される。フットペダル227から操作信号が出力されていることに基づいて、フットペダル227がオンされていると判断された場合、ステップS204に進む。
【0082】
そして、ステップS204において、フットペダル227の操作に基づいて、スレーブロボット10の自動動作指令値が算出される。
【0083】
そして、ステップS205において、ステップS202において算出された操作指令値と、ステップS204において算出された自動動作指令値とが合成される。これにより、スレーブロボット10の動作指令値が算出される。そして、ステップS7に進む。
【0084】
また、ステップS203において、フットペダル227から操作信号が出力されていないことに基づいて、フットペダル227がオンされていないと判断された場合、ステップS204およびS205の処理が行われることなく、ステップS7に進む。
【0085】
そして、ステップS7において、動作指令値がスレーブロボット10に出力される。
【0086】
そして、ステップS8において、ステップS7において出力された動作指令値に基づいて、スレーブロボット10の各関節11bの動作が制御される。
【0087】
なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0088】
[第2実施形態の効果]
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0089】
第2実施形態では、上記のように、ハンド部12が保持する検体採取部材101によって被検者Sから検体を採取する際に、ハンド部12の直進動作と、ハンド部12の回転動作の少なくとも一部とを、操作系統を分けることによって互いに独立して制御する制御装置250を設ける。これにより、上記第1実施形態と同様に、マスタロボット220によってスレーブロボット10のハンド部12を遠隔操作して被検者Sに対して処置を行う(被検者Sから検体を採取する)際の操作性を向上させることができる。
【0090】
また、第2実施形態では、上記のように、第1操作装置220aは、操作者Oの一方の手によって操作されるとともに、ハンド部12の直進動作と、ハンド部12の検体採取部材101の回転動作以外の回転動作とを行うための操作ハンドル221を含み、第2操作装置220bは、操作者Oの足によって操作されるとともに、ハンド部12の検体採取部材101の回転動作を行うためのフットペダル227を含み、制御装置250は、操作ハンドル221の操作に基づいて、ハンド部12の直進動作の制御と、ハンド部12の検体採取部材101の回転動作以外の回転動作の制御とを行うとともに、フットペダル227の操作に基づいて、ハンド部12の検体採取部材101の回転動作の制御を行う。これにより、操作者Oは、一方の手によってハンド部12の直進動作の操作とハンド部12の検体採取部材101の回転動作以外の回転動作の操作とを行うことができるとともに、足によってハンド部12の検体採取部材101の回転動作の操作を行うことができる。その結果、ハンド部12の検体採取部材101の回転動作とそれ以外の動作(ハンド部12の直進動作およびハンド部12の検体採取部材101の回転動作以外の回転動作)との操作において誤操作が発生することを容易に抑制することができる。これにより、誤操作に起因して意図しない誤ったハンド部12の動作が発生することを容易に抑制することができる。
【0091】
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0092】
[第3実施形態]
次に、図16図19を参照して、第3実施形態による検体採取ロボットシステム300の構成について説明する。検体採取ロボットシステム300では、操作者Oのフットペダル227の操作によってハンド部12の検体採取部材101の回転動作を行った上記第2実施形態とは異なり、操作者Oの操作によらずハンド部12の検体採取部材101の回転動作を自動で行う。なお、上記第1または第2実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0093】
図16に示すように、第3実施形態の検体採取ロボットシステム300は、スレーブロボット10と、マスタロボット320と、撮影装置30と、表示装置40と、制御装置350と、を備えている。なお、検体採取ロボットシステム300は、請求の範囲の「ロボットシステム」の一例である。
【0094】
図17に示すように、マスタロボット320は、上記第2実施形態の第1操作装置220aと実質的に同じ構成を備える操作装置320aを含み、上記第2実施形態の第2操作装置220bを含んでいない。マスタロボット320には、上記第2実施形態のフットペダル227が設けられていない。また、操作装置320aは、操作ハンドル221と、アーム部22と、架台23と、制御部24と、操作パネル25と、クラッチペダル26とを含んでいる。なお、操作装置320aは、請求の範囲の「第1操作装置」の一例である。
【0095】
ここで、図18に示すように、第3実施形態では、制御装置350は、ハンド部12が保持する検体採取部材101によって被検者Sから検体を採取する際に、少なくともハンド部12の直進動作と、ハンド部12の回転動作の一部とを、操作系統を分けることによって互いに独立して制御するように構成されている。具体的には、制御装置350は、ハンド部12が保持する検体採取部材101によって被検者Sから検体を採取する際に、少なくともハンド部12の直進動作と、ハンド部12の回転動作の一部とを、回転動作の自動化によって操作系統を分けて互いに独立して制御するように構成されている。より具体的には、制御装置350は、ハンド部12の検体採取部材101の回転動作を操作者Oによるハンド部12の検体採取部材101の回転動作の操作に基づくことなく自動で行うことによって、少なくともハンド部12の直進動作と、ハンド部12の検体採取部材101の回転動作とを、操作系統を分けて互いに独立して制御するように構成されている。
【0096】
また、第3実施形態では、制御装置350は、ハンド部12の検体採取部材101の回転動作を、常に、操作者Oによるハンド部12の検体採取部材101の回転動作の操作に基づくことなく自動で行うように構成されている。具体的には、制御装置350は、検体採取作業中には、検体採取部材101の被検者Sの鼻腔への挿入状態にかかわらず、ハンド部12の検体採取部材101の回転動作を、常に、操作者Oによるハンド部12の検体採取部材101の回転動作の操作に基づくことなく自動で行うように構成されている。すなわち、制御装置350は、検体採取部材101の被検者Sの鼻腔への挿入前から、ハンド部12の検体採取部材101の回転動作を操作者Oによるハンド部12の検体採取部材101の回転動作の操作に基づくことなく自動で行うように構成されている。
【0097】
また、第3実施形態では、制御装置350は、操作装置320aの操作ハンドル221の操作に基づいて、ハンド部12の直進動作の制御と、ハンド部12の検体採取部材101の回転動作以外の動作の制御とを行うとともに、操作者Oの操作によらず、ハンド部12の検体採取部材101の回転動作の制御を自動で行うように構成されている。より具体的には、制御装置350は、操作装置320aの操作ハンドル221の操作に基づいて、前後方向(A1方向)、左右方向(A2方向)および上下方向(A3方向)のハンド部12の直進動作の制御と、第2回転方向(C2方向)および第3回転方向(C3方向)のハンド部12の回転動作の制御とを行うとともに、操作者Oの操作によらず、第1回転方向(C1方向)のハンド部12の回転動作の制御を行うように構成されている。
【0098】
また、マスタロボット320の操作装置320aの操作ハンドル221が操作者Oによって操作された場合、マスタロボット320の操作装置320aの制御部24は、エンコーダ122の検出結果に基づいて、操作ハンドル221の操作量を制御装置350に出力するように構成されている。そして、制御装置350は、制御部24から出力された操作ハンドル221の操作量に基づいて、スレーブロボット10の操作指令値を算出するように構成されている。なお、操作者Oによる操作ハンドル221の操作が行われていない場合には、操作指令値はゼロである。
【0099】
また、制御装置350は、操作者Oの操作によらず、スレーブロボット10の自動動作指令値(検体採取部材101の回転の指令値)を算出するように構成されている。
【0100】
そして、制御装置350は、算出された操作指令値および自動動作指令値に基づいて、スレーブロボット10の動作指令値を算出するとともに、算出された動作指令値をスレーブロボット10の制御部13に出力するように構成されている。そして、スレーブロボット10の制御部13は、制御装置350から出力された動作指令値に基づいて、関節11bのモータ111の動作を制御するように構成されている。これらの結果、マスタロボット320の操作ハンドル221および検体採取部材101の自動回転に対応するようにスレーブロボット10のハンド部12の動作が制御される。
【0101】
(検体採取作業の制御処理)
次に、図19を参照して、第3実施形態による検体採取ロボットシステム300の検体採取作業の制御処理をフローチャートに基づいて説明する。なお、上記第1または第2実施形態と同一の処理については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0102】
図19に示すように、ステップS301において、操作者Oの操作にかかわらず、スレーブロボット10の自動動作指令値が算出される。
【0103】
そして、ステップS302において、ステップS202において算出された操作指令値と、ステップS301において算出された自動動作指令値とが合成される。これにより、スレーブロボット10の動作指令値が算出される。
【0104】
そして、ステップS7において、動作指令値がスレーブロボット10に出力される。
【0105】
そして、ステップS8において、ステップS7において出力された動作指令値に基づいて、スレーブロボット10の各関節11bの動作が制御される。
【0106】
なお、第3実施形態のその他の構成は、上記第1または第2実施形態と同様である。
【0107】
[第3実施形態の効果]
第3実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0108】
第3実施形態では、上記のように、ハンド部12が保持する検体採取部材101によって被検者Sから検体を採取する際に、ハンド部12の直進動作と、ハンド部12の回転動作の少なくとも一部とを、操作系統を分けることによって互いに独立して制御する制御装置350を設ける。これにより、上記第1および第2実施形態と同様に、マスタロボット220によってスレーブロボット10のハンド部12を遠隔操作して被検者Sに対して処置を行う(被検者Sから検体を採取する)際の操作性を向上させることができる。
【0109】
また、第3実施形態では、上記のように、制御装置350は、ハンド部12の検体採取部材101の回転動作を操作者Oによるハンド部12の検体採取部材101の回転動作の操作に基づくことなく自動で行うことによって、ハンド部12の直進動作と、ハンド部12の検体採取部材101の回転動作とを、操作系統を分けて互いに独立して制御する。これにより、操作者Oは、ハンド部12の検体採取部材101の回転動作の操作を行う必要がないので、ハンド部12の直進動作とハンド部12の検体採取部材101の回転動作との操作において誤操作が発生することを容易に抑制することができる。その結果、誤操作に起因して意図しない誤ったハンド部12の動作が発生することを容易に抑制することができる。
【0110】
また、第3実施形態では、上記のように、制御装置350は、ハンド部12の検体採取部材101の回転動作を、常に、操作者Oによるハンド部12の検体採取部材101の回転動作の操作に基づくことなく自動で行う。これにより、ハンド部12の検体採取部材101の回転動作が常に操作者Oによるハンド部12の検体採取部材101の回転動作の操作に基づくことなく自動で行われるので、ハンド部12の検体採取部材101の回転動作を常に確実に行うことができる。その結果、検体採取部材101が被検体の検体採取位置に到達した際に、検体採取部材101によって被検者の検体採取位置から検体を確実にこすり取ることができる。
【0111】
なお、第3実施形態のその他の効果は、上記第1または第2実施形態と同様である。
【0112】
[第4実施形態]
次に、図20図22を参照して、第4実施形態による検体採取ロボットシステム400の構成について説明する。検体採取ロボットシステム400では、ハンド部12の検体採取部材101の回転動作を常に自動で行っていた上記第3実施形態とは異なり、検体採取部材101が被検者Sに所定の深さまで挿入された後に、ハンド部12の検体採取部材101の回転動作を自動で行う。なお、上記第1、第2または第3実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0113】
図20に示すように、第4実施形態の検体採取ロボットシステム400は、スレーブロボット10と、マスタロボット320と、撮影装置30と、表示装置40と、制御装置450と、を備えている。なお、検体採取ロボットシステム400は、請求の範囲の「ロボットシステム」の一例である。
【0114】
ここで、図21に示すように、第4実施形態では、制御装置450は、ハンド部12が保持する検体採取部材101によって被検者Sから検体を採取する際に、少なくともハンド部12の直進動作と、ハンド部12の回転動作の一部とを、操作系統を分けることによって互いに独立して制御するように構成されている。具体的には、制御装置450は、ハンド部12が保持する検体採取部材101によって被検者Sから検体を採取する際に、少なくともハンド部12の直進動作と、ハンド部12の回転動作の一部とを、回転動作の自動化によって操作系統を分けて互いに独立して制御するように構成されている。より具体的には、制御装置450は、ハンド部12の検体採取部材101の回転動作を操作者Oによるハンド部12の検体採取部材101の回転動作の操作に基づくことなく自動で行うことによって、少なくともハンド部12の直進動作と、ハンド部12の検体採取部材101の回転動作とを、操作系統を分けて互いに独立して制御するように構成されている。
【0115】
また、第4実施形態では、制御装置450は、操作者Oによるハンド部12の検体採取部材101の回転動作の操作に基づくことなく、検体採取部材101が被検者Sに所定の深さまで挿入されたことに基づいて、ハンド部12の検体採取部材101の回転動作を自動で行うように構成されている。具体的には、制御装置450は、検体採取作業中において、検体採取部材101の被検者Sの鼻腔への挿入前には、ハンド部12の検体採取部材101の回転動作を行わないように構成されている。また、制御装置450は、検体採取部材101が被検者Sの鼻腔に所定の深さまで挿入された後には、ハンド部12の検体採取部材101の回転動作を操作者Oによるハンド部12の検体採取部材101の回転動作の操作に基づくことなく自動で行うように構成されている。
【0116】
また、制御装置450は、撮影装置30により撮影された被検者Sおよび検体採取部材101の画像(側方画像)とスレーブロボット10の位置情報(座標情報)との少なくとも1つに基づいて、検体採取部材101が被検者Sに所定の深さまで挿入されたことを検出するように構成されている。制御装置450は、撮影装置30により撮影された被検者Sおよび検体採取部材101の画像の認識結果と、スレーブロボット10のハンド部12の位置情報とに基づいて、検体採取部材101の被検者Sの鼻腔への挿入状態を検出することによって、検体採取部材101が被検者Sに所定の深さまで挿入されたことを検出するように構成されている。なお、制御装置450によるスレーブロボット10の動作指令値の算出については、検体採取部材101が被検者Sに所定の深さまで挿入されたことに基づいて自動動作指令値を算出することを除いて、上記第3実施形態と同様である。
【0117】
(検体採取作業の制御処理)
次に、図22を参照して、第4実施形態による検体採取ロボットシステム400の検体採取作業の制御処理をフローチャートに基づいて説明する。なお、上記第1、第2または第3実施形態と同一の処理については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0118】
図22に示すように、ステップS401において、撮影装置30により撮影された被検者Sおよび検体採取部材101の画像とスレーブロボット10の位置情報との少なくとも1つに基づいて、検体採取部材101が被検者Sに所定の深さまで挿入されたか否かが判断される。検体採取部材101が被検者Sに所定の深さまで挿入されたと判断された場合、ステップS402に進む。
【0119】
そして、ステップS402において、操作者Oの操作にかかわらず、スレーブロボット10の自動動作指令値が算出される。
【0120】
そして、ステップS403において、ステップS202において算出された操作指令値と、ステップS402において算出された自動動作指令値とが合成される。これにより、スレーブロボット10の動作指令値が算出される。そして、ステップS7に進む。
【0121】
また、ステップS401において、検体採取部材101が被検者Sに所定の深さまで挿入されていないと判断された場合、ステップS402およびS403の処理が行われることなく、ステップS7に進む。
【0122】
そして、ステップS7において、動作指令値がスレーブロボット10に出力される。
【0123】
そして、ステップS8において、ステップS7において出力された動作指令値に基づいて、スレーブロボット10の各関節11bの動作が制御される。
【0124】
なお、第4実施形態のその他の構成は、上記第1、第2または第3実施形態と同様である。
【0125】
[第4実施形態の効果]
第4実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0126】
第4実施形態では、上記のように、ハンド部12が保持する検体採取部材101によって被検者Sから検体を採取する際に、ハンド部12の直進動作と、ハンド部12の回転動作の少なくとも一部とを、操作系統を分けることによって互いに独立して制御する制御装置450を設ける。これにより、上記第1、第2または第3実施形態と同様に、マスタロボット220によってスレーブロボット10のハンド部12を遠隔操作して被検者Sに対して処置を行う(被検者Sから検体を採取する)際の操作性を向上させることができる。
【0127】
また、第4実施形態では、上記のように、制御装置450は、操作者Oによるハンド部12の検体採取部材101の回転動作の操作に基づくことなく、検体採取部材101が被検者Sに所定の深さまで挿入されたことに基づいて、ハンド部12の検体採取部材101の回転動作を自動で行う。これにより、検体採取部材101が被検者Sに所定の深さまで挿入される前には、ハンド部12の検体採取部材101の回転動作が行われないので、検体採取部材101が被検者Sに挿入される前に検体採取部材101が回転されることに起因して検体採取部材101の軸心がずれることを抑制することができる。その結果、検体採取部材101の被検者Sへの挿入を容易に行うことができる。また、検体採取部材101が被検者Sに所定の深さまで挿入された後には、ハンド部12の検体採取部材101の回転動作が行われるので、検体採取部材101によって被検者Sの検体採取位置から検体を確実にこすり取ることができる。
【0128】
なお、第4実施形態のその他の効果は、上記第1、第2または第3実施形態と同様である。
【0129】
[第5実施形態]
次に、図23図27を参照して、第5実施形態による検体採取ロボットシステム500の構成について説明する。検体採取ロボットシステム500では、上記第1~第4実施形態とは異なり、マスタロボット520の操作装置520aの操作ハンドル521に、ハンド部12の検体採取部材101の回転動作以外の動作を制限するためのスイッチ521aを設ける。なお、上記第1、第2、第3または第4実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0130】
図23に示すように、第5実施形態の検体採取ロボットシステム500は、スレーブロボット10と、マスタロボット520と、撮影装置30と、表示装置40と、制御装置550と、を備えている。なお、検体採取ロボットシステム500は、請求の範囲の「ロボットシステム」の一例である。
【0131】
図24に示すように、マスタロボット520は、操作装置520aを含んでいる。操作装置520aには、ハンド部12の直進動作と、ハンド部12の回転動作とが割り当てられている。具体的には、操作装置520aには、前後方向(A1方向)、左右方向(A2方向)および上下方向(A3方向)のハンド部12の直進動作と、第1回転方向(C1方向)、第2回転方向(C2方向)および第3回転方向(C3方向)のハンド部12の回転動作とが割り当てられている。なお、操作装置520aは、請求の範囲の「第1操作装置」の一例である。
【0132】
操作装置520aは、移動可能な操作ハンドル521と、アーム部22と、架台23と、制御部24と、操作パネル25と、クラッチペダル26とを含んでいる。操作ハンドル521は、操作者Oの一方の手(図23では、右手)によって操作されるように構成されている。操作ハンドル521は、ハンド部12の直進動作と、ハンド部12の回転動作とを行うために設けられている。具体的には、操作ハンドル521は、前後方向(A1方向)、左右方向(A2方向)および上下方向(A3方向)のハンド部12の直進動作と、第1回転方向(C1方向)、第2回転方向(C2方向)および第3回転方向(C3方向)のハンド部12の回転動作とを行うために設けられている。なお、操作ハンドル520aは、請求の範囲の「第1ハンドル」の一例である。
【0133】
また、図25に示すように、第5実施形態では、操作ハンドル521には、スイッチ521a(グリップスイッチ)が設けられている。スイッチ521aは、ハンド部12の検体採取部材101の回転動作以外の動作を制限し、ハンド部12の検体採取部材101の回転動作を有効とするために設けられている。スイッチ521aは、操作者Oの指によって把持操作されるように、一対設けられている。スイッチ521aは、操作ハンドル521を挟むように操作ハンドル521の一方側および他方側に設けられている。
【0134】
ここで、図26に示すように、第5実施形態では、制御装置550は、ハンド部12が保持する検体採取部材101によって被検者Sから検体を採取する際に、少なくともハンド部12の直進動作と、ハンド部12の回転動作の一部とを、操作系統を分けることによって互いに独立して制御するように構成されている。具体的には、制御装置550は、ハンド部12が保持する検体採取部材101によって被検者Sから検体を採取する際に、少なくともハンド部12の直進動作と、ハンド部12の回転動作の一部とを、スイッチ521aによって操作系統を分けて互いに独立して制御するように構成されている。より具体的には、制御装置550は、少なくともハンド部12の直進動作と、ハンド部12の検体採取部材101の回転動作とを、スイッチ521aによって操作系統を分けて互いに独立して制御するように構成されている。
【0135】
また、第5実施形態では、制御装置550は、操作装置520aの操作ハンドル521の操作およびスイッチ521aの操作に基づく制御を行うことによって、少なくともハンド部12の直進動作と、ハンド部12の検体採取部材101の回転動作とを、操作系統を分けて互いに独立して制御するように構成されている。具体的には、制御装置550は、スイッチ521aがオンされた状態で、操作ハンドル521の操作が行われた場合、前後方向(A1方向)のハンド部12の直進動作の操作指令値、左右方向(A2方向)のハンド部12の直進動作の操作指令値、上下方向(A3方向)のハンド部12の直進動作の操作指令値、第1回転方向(C1方向)のハンド部12の回転動作の操作指令値、第2回転方向(C2方向)のハンド部12の操作指令値、および、第3回転方向(C3方向)のハンド部12の回転動作の操作指令値を有効として、ハンド部12の動作の制御を行うように構成されている。
【0136】
また、制御装置550は、スイッチ521aがオフされた状態で、操作ハンドル521の操作が行われた場合、第1回転方向(C1方向)のハンド部12の回転動作の操作指令値以外の操作指令値(前後方向(A1方向)のハンド部12の直進動作の操作指令値、左右方向(A2方向)のハンド部12の直進動作の操作指令値、上下方向(A3方向)のハンド部12の直進動作の操作指令値、第2回転方向(C2方向)のハンド部12の操作指令値、および、第3回転方向(C3方向)のハンド部12の回転動作の操作指令値)を無効とし、第1回転方向(C1方向)のハンド部12の回転動作の操作指令値のみを有効として、ハンド部12の動作の制御を行うように構成されている。制御装置550は、スイッチ521aがオフされた状態では、操作ハンドル521の操作に基づいて、第1回転方向(C1方向)のハンド部12の回転動作の制御のみを行うように構成されている。
【0137】
また、マスタロボット520の操作装置520aの操作ハンドル521が操作者Oによって操作された場合、マスタロボット520の操作装置520aの制御部24は、エンコーダ122の検出結果に基づいて、操作ハンドル521の操作量を制御装置550に出力するように構成されている。そして、制御装置550は、制御部24から出力された操作ハンドル521の操作量に基づいて、スレーブロボット10の操作指令値を算出するように構成されている。なお、操作者Oによる操作ハンドル521の操作が行われていない場合には、操作指令値はゼロである。
【0138】
また、スイッチ521aがオフされている場合、制御装置550は、第1回転方向(C1方向)のハンド部12の回転動作の操作指令値以外の操作指令値(前後方向(A1方向)のハンド部12の直進動作の操作指令値、左右方向(A2方向)のハンド部12の直進動作の操作指令値、上下方向(A3方向)のハンド部12の直進動作の操作指令値、第2回転方向(C2方向)のハンド部12の操作指令値、および、第3回転方向(C3方向)のハンド部12の回転動作の操作指令値)を無効とし、第1回転方向(C1方向)のハンド部12の回転動作の操作指令値のみを有効として、スレーブロボット10の動作指令値を算出するように構成されている。
【0139】
また、スイッチ521aがオンされている場合、前後方向(A1方向)のハンド部12の直進動作の操作指令値、左右方向(A2方向)のハンド部12の直進動作の操作指令値、上下方向(A3方向)のハンド部12の直進動作の操作指令値、第1回転方向(C1方向)のハンド部12の回転動作の操作指令値、第2回転方向(C2方向)のハンド部12の操作指令値、および、第3回転方向(C3方向)のハンド部12の回転動作の操作指令値の全ての操作指令値を有効として、スレーブロボット10の動作指令値を算出するように構成されている。
【0140】
そして、制御装置550は、算出された動作指令値をスレーブロボット10の制御部13に出力するように構成されている。そして、スレーブロボット10の制御部13は、制御装置550から出力された動作指令値に基づいて、関節11bのモータ111の動作を制御するように構成されている。これらの結果、マスタロボット520の操作ハンドル521およびスイッチ521aの操作に対応するようにスレーブロボット10のハンド部12の動作が制御される。
【0141】
(検体採取作業の制御処理)
次に、図27を参照して、第5実施形態による検体採取ロボットシステム500の検体採取作業の制御処理をフローチャートに基づいて説明する。なお、上記第1実施形態と同一の処理については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0142】
図27に示すように、ステップS501において、操作者Oの操作ハンドル521の操作量が取得される。
【0143】
そして、ステップS502において、ステップS501において取得された操作ハンドル521の操作量に基づいて、スレーブロボット10の操作指令値が算出される。
【0144】
そして、ステップS503において、スイッチ521aがオンされているか否かが判断される。スイッチ521aがオンされていないと判断された場合、ステップS504に進む。
【0145】
そして、ステップS504において、ハンド部12の検体採取部材101の回転動作の操作指令値以外の操作指令値がゼロにされる。ステップS504では、第1回転方向のハンド部12の回転動作の操作指令値以外の操作指令値(前後方向のハンド部12の直進動作の操作指令値、左右方向のハンド部12の直進動作の操作指令値、上下方向のハンド部12の直進動作の操作指令値、第2回転方向のハンド部12の操作指令値、および、第3回転方向のハンド部12の回転動作の操作指令値)が無効とされる。そして、ステップS7に進む。
【0146】
また、ステップS503において、スイッチ521aがオンされていると判断された場合、ステップS504の処理が行われることなく、ステップS7に進む。
【0147】
そして、ステップS7において、動作指令値がスレーブロボット10に出力される。
【0148】
そして、ステップS8において、ステップS7において出力された動作指令値に基づいて、スレーブロボット10の各関節11bの動作が制御される。
【0149】
なお、第5実施形態のその他の構成は、上記第1、第2、第3または第4実施形態と同様である。
【0150】
[第5実施形態の効果]
第5実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0151】
第5実施形態では、上記のように、ハンド部12が保持する検体採取部材101によって被検者Sから検体を採取する際に、ハンド部12の直進動作と、ハンド部12の回転動作の少なくとも一部とを、操作系統を分けることによって互いに独立して制御する制御装置450を設ける。これにより、上記第1~第4実施形態と同様に、マスタロボット520によってスレーブロボット10のハンド部12を遠隔操作して被検者Sに対して処置を行う(被検者Sから検体を採取する)際の操作性を向上させることができる。
【0152】
また、第5実施形態では、上記のように、マスタロボット520は、ハンド部12の直進動作および回転動作が割り当てられた操作装置520aを含む。また、操作装置520aは、操作者Oの一方の手によって操作される操作ハンドル521を含む。また、操作ハンドル521には、ハンド部12の検体採取部材101の回転動作以外の動作を制限し、ハンド部12の検体採取部材101の回転動作を有効とするためのスイッチ521aが設けられている。また、制御装置550は、操作ハンドル521の操作およびスイッチ521aの操作に基づく制御を行うことによって、ハンド部12の直進動作と、ハンド部12の検体採取部材101の回転動作とを、操作系統を分けて互いに独立して制御する。これにより、スイッチ521aの操作によってハンド部12の検体採取部材101の回転動作以外の動作の制限を切り替えることができるので、ハンド部12の検体採取部材101の回転動作と検体採取部材101の回転動作以外の動作との操作において誤操作が発生することを容易に抑制することができる。その結果、誤操作に起因して意図しない誤ったハンド部12の動作が発生することを容易に抑制することができる。
【0153】
なお、第5実施形態のその他の効果は、上記第1、第2、第3または第4実施形態と同様である。
【0154】
[第6実施形態]
次に、図28および図29を参照して、第6実施形態による検体採取ロボットシステム600の構成について説明する。検体採取ロボットシステム600では、操作ハンドル521にスイッチ521aが設けられた上記5実施形態とは異なり、操作ハンドル621にスイッチが設けられていない。なお、上記第1、第2、第3、第4または第5実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0155】
図28に示すように、第6実施形態の検体採取ロボットシステム600は、スレーブロボット10と、マスタロボット620と、撮影装置30と、表示装置40と、制御装置650と、を備えている。なお、検体採取ロボットシステム600は、請求の範囲の「ロボットシステム」の一例である。
【0156】
マスタロボット620は、操作装置620aを含んでいる。図29に示すように、操作装置620aは、操作ハンドル621を含んでいる。操作装置620aは、操作ハンドル621を除いて、上記第5実施形態の操作装置520aと実質的に同じ構成を備えている。なお、操作装置620aは、請求の範囲の「第1操作装置」の一例である。
【0157】
操作ハンドル621は、操作者Oの一方の手(図28では、右手)によって操作されるように構成されている。操作ハンドル621は、ハンド部12の直進動作と、ハンド部12の回転動作とを行うために設けられている。具体的には、操作ハンドル621は、前後方向(A1方向)、左右方向(A2方向)および上下方向(A3方向)のハンド部12の直進動作と、第1回転方向(C1方向)、第2回転方向(C2方向)および第3回転方向(C3方向)のハンド部12の回転動作とを行うために設けられている。なお、操作ハンドル621は、請求の範囲の「第1ハンドル」の一例である。
【0158】
第6実施形態では、操作ハンドル621には、スイッチ(第5実施形態のスイッチ521a)が設けられていない。また、操作ハンドル621は、略円柱形状を有している。すなわち、操作ハンドル621は、検体採取部材101と同様に細長い略円柱形状を有するように形成されている。操作ハンドル621は、細長い円柱形状を有する検体採取部材101に対応する径および長さを有している。
【0159】
ここで、第6実施形態では、制御装置650は、ハンド部12が保持する検体採取部材101によって被検者Sから検体を採取する際に、少なくともハンド部12の直進動作と、ハンド部12の回転動作の一部とを、操作系統を分けることによって互いに独立して制御するように構成されている。具体的には、制御装置650は、少なくともハンド部12の直進動作と、ハンド部12の検体採取部材101の回転動作とを、操作系統を分けて互いに独立して制御するように構成されている。
【0160】
また、第6実施形態では、制御装置650は、操作装置620aの操作ハンドル621の操作に基づいて制御を行うことによって、少なくともハンド部12の直進動作と、ハンド部12の検体採取部材101の回転動作とを、操作系統を分けて互いに独立して制御するように構成されている。具体的には、制御装置650は、ハンド部12の検体採取部材101の回転動作に対応する操作ハンドル621の操作が行われた場合、第1回転方向(C1方向)のハンド部12の回転動作の操作指令値以外の操作指令値(前後方向(A1方向)のハンド部12の直進動作の操作指令値、左右方向(A2方向)のハンド部12の直進動作の操作指令値、上下方向(A3方向)のハンド部12の直進動作の操作指令値、第2回転方向(C2方向)のハンド部12の操作指令値、および、第3回転方向(C3方向)のハンド部12の回転動作の操作指令値)を無効(ゼロ)とし、第1回転方向(C1方向)のハンド部12の回転動作の操作指令値のみを有効として、ハンド部12の動作の制御を行うように構成されている。
【0161】
なお、第6実施形態のその他の構成は、上記第1、第2、第3、第4または第5実施形態と同様である。
【0162】
[第6実施形態の効果]
第6実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0163】
第6実施形態では、上記のように、ハンド部12が保持する検体採取部材101によって被検者Sから検体を採取する際に、ハンド部12の直進動作と、ハンド部12の回転動作の少なくとも一部とを、操作系統を分けることによって互いに独立して制御する制御装置650を設ける。これにより、上記第1~第5実施形態と同様に、マスタロボット620によってスレーブロボット10のハンド部12を遠隔操作して被検者Sに対して処置を行う(被検者Sから検体を採取する)際の操作性を向上させることができる。
【0164】
また、第6実施形態では、上記のように、マスタロボット620は、ハンド部12の直進動作および回転動作が割り当てられた操作装置620aを含む。また、操作装置620aは、操作者Oの一方の手によって操作されるとともに、スイッチが設けられていない略円柱形状を有する操作ハンドル621を含む。また、制御装置650は、操作ハンドル621の操作に基づいて制御を行うことによって、ハンド部12の直進動作と、ハンド部12の検体採取部材101の回転動作とを、操作系統を分けて互いに独立して制御する。これにより、操作ハンドル621の操作に基づいてハンド部12の直進動作と、ハンド部12の検体採取部材101の回転動作とを、互いに独立して制御することができるので、ハンド部12の直進動作と検体採取部材101の回転動作との操作において誤操作が発生することを容易に抑制することができる。これにより、誤操作に起因して意図しない誤ったハンド部12の動作が発生することを容易に抑制することができる。また、操作ハンドル621が略円柱形状を有することによって、略円柱形状を有する検体採取部材101と操作ハンドル621とを同様の形状にすることができるので、操作ハンドル621の操作感を、実際に検体採取部材101を操作する場合の操作感に近づけることができる。これにより、操作ハンドル621の操作性の違和感を軽減することができるので、誤操作が発生することを抑制することができる。
【0165】
なお、第6実施形態のその他の効果は、上記第1、第2、第3、第4または第5実施形態と同様である。
【0166】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく請求の範囲によって示され、さらに請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0167】
たとえば、上記第1~第6実施形態では、ロボットシステムは、検体採取部材によって被検者から検体を採取するロボットシステムである例を示したが、本開示はこれに限られない。本開示では、ロボットシステムは、被検者(被処置者)に対して検体採取以外の処置を行うロボットシステムであってもよい。たとえば、ロボットシステムは、医療用の検査器具(処置部材)によって被検者(被処置者)に対して診察を行うロボットシステムであってもよい。
【0168】
また、上記第1~第6実施形態では、スレーブロボットが垂直多関節ロボットである例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、スレーブロボットが、水平多関節ロボットおよび双腕ロボットなどのロボットであってもよい。
【0169】
また、上記第1~第6実施形態では、ハンド部の直進動作と、少なくともハンド部の検体採取部材の回転動作とを、操作系統を分けることによって互いに独立して制御する例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、ハンド部の直進動作と、ハンド部の検体採取部材の回転動作以外の回転動作(第2回転方向のハンド部の回転動作および第3回転方向のハンド部の回転動作など)とを、操作系統を分けることによって互いに独立して制御してもよい。
【0170】
また、上記第1実施形態では、ハンド部の円弧状の動作を直線的な動作に変換する制御を行う例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、上記第2~第6実施形態の構成においても、ハンド部の円弧状の動作を直線的な動作に変換する制御を行ってもよい。
【0171】
また、上記第1実施形態では、ハンド部の直進動作を行うための第1操作装置の操作ハンドルが、アーム部に支持された移動可能なグリップハンドルであり、ハンド部の回転動作を行うための第2操作装置の操作ハンドルが、ジョイスティックである例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、ハンド部の直進動作を行うための第1操作装置の操作ハンドルが、ジョイスティックであり、ハンド部の回転動作を行うための第2操作装置の操作ハンドルが、アーム部に支持された移動可能なグリップハンドルであってもよい。また、第1操作装置の操作ハンドルおよび第2操作装置の操作ハンドルの両方が、ジョイスティックまたは移動可能なグリップハンドルであってもよい。
【0172】
また、上記第2実施形態では、第2操作装置が、ハンド部の検体採取部材の回転動作を行うためのフットペダルを含んでいる例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、第2操作装置が、第2回転方向のハンド部の回転動作を行うためのフットペダル、および、第3回転方向のハンド部の回転動作を行うためのフットペダルなどを含んでいてもよい。
【0173】
また、上記第5実施形態では、スイッチがオンされている場合、前後方向、左右方向、上下方向、第1回転方向、第2回転方向、および、第3回転方向のハンド部の動作を有効とし、スイッチがオフされている場合、第1回転方向のハンド部の動作以外の動作を無効とし、かつ、第1回転方向のハンド部の動作のみを有効とする例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、スイッチがオフされている場合、前後方向、左右方向、上下方向、第1回転方向、第2回転方向、および、第3回転方向のハンド部の動作を有効とし、スイッチがオンされている場合、第1回転方向のハンド部の動作以外の動作を無効とし、かつ、第1回転方向のハンド部の動作のみを有効としてもよい。
【0174】
また、上記第1~第6実施形態では、検体採取部材によって被検者から検体を採取するロボットシステムに本開示を適用する例を示したが、本開示はこれに限られない。本開示は、たとえば、図30図32に示すように、被処置者Saに対して尿管鏡手術を行うロボットシステム700に適用されてもよい。ロボットシステム700は、スレーブロボット710と、上記第1~第6実施形態のいずれかと同様のマスタロボットと、表示装置と、上記第1~第6実施形態のいずれかと同様の制御装置と、を備えている。
【0175】
スレーブロボット710は、処置部材701によって被処置者Sa(患者)に対して尿路結石を砕く尿管鏡手術を行う処置を行う。また、処置部材701は、屈曲可能な軟性管である。スレーブロボット710は、医療スタッフにより被処置者Saの尿道内に予め挿入された尿管アクセスシース750を介して、被処置者Saの尿道内に処置部材701を挿入し、被処置者Saの尿道や尿管などの尿路内を撮影する。撮影された映像は、表示装置に表示される。操作者は、表示装置に表示されたリアルタイムの被処置者Saの映像を確認しながら、マスタロボットを用いたスレーブロボット710の操作によって、被処置者Saの尿管鏡手術を行う。尿管鏡手術では、被処置者Saの結石個所を特定すること、レーザ鉗子によりレーザ光を照射することにより結石を破砕すること、バスケット鉗子により結石を回収することなどが行われる。
【0176】
スレーブロボット710は、垂直多関節ロボットである。スレーブロボット710は、アーム部711と、アーム部711の先端に取り付けられたハンド部712と、を含んでいる。アーム部711は、複数の関節を有している。アーム部711の複数の関節の各々には、サーボモータなどの駆動部と、エンコーダなどの位置検出部とが設けられている。ハンド部712は、屈曲可能な軟性管である処置部材701を保持するように構成されている。ハンド部712は、ハンドベース712aと、尿管鏡本体712bと、モータ712cと、を有している。ハンドベース712aは、アーム部711の先端に取り付けられている。尿管鏡本体712bは、被処置者Saの尿路内を撮像可能である。尿管鏡本体712bは、被処置者Saの尿路結石を砕くためのレーザ鉗子や、尿路結石を回収するためのバスケット鉗子を挿入可能である。尿管鏡本体712bは、処置部材701を保持するように構成されている。モータ712cは、尿管鏡本体712bを後述するC12方向に回転させる。
【0177】
ハンド部712は、複数方向に動作されるように構成されている。具体的には、ハンド部712は、前後方向(A11方向)および上下方向(A12方向)に直進動作されるとともに、前後方向に延びる第1回転軸線周りの第1回転方向(C11方向)および左右方向に延びる第2回転軸線周りの第2回転方向(C12方向)に回転動作されるように構成されている。なお、前後方向、左右方向、上下方向、第1回転方向および第2回転方向は、ハンド部712を基準とした方向である。なお、処置部材701を被処置者Saの尿道内に挿入する際には、ハンド部712が前方向に直進動作される。
【0178】
詳細な説明は省略するが、制御装置は、上記第1~第6実施形態のいずれかと同様に、ハンド部712が保持する処置部材701によって被処置者Saに対して処置を行う際に、ハンド部712の直進動作と、ハンド部712の回転動作の少なくとも一部とを、操作系統を分けることによって互いに独立して制御するように構成されている。具体的には、制御装置は、上記第1~第6実施形態のいずれかと同様に、ハンド部712が保持する処置部材701によって被処置者Saに対して処置を行う際に、ハンド部712の直進動作と、ハンド部712の回転動作の少なくとも一部とを、複数の操作装置、スイッチ、または、回転動作の自動化のいずれかによって操作系統を分けて互いに独立して制御するように構成されている。
【符号の説明】
【0179】
10、710 スレーブロボット
12、712 ハンド部
20、220、320、420、520、620 マスタロボット
20a 第1操作装置(第1操作装置)
20b 第2操作装置(第2操作装置)
21 操作ハンドル(第1ハンドル)
27 操作ハンドル(第2ハンドル)
50、250、350、450、550、650 制御装置
100、200、300、400、500、600、700 検体採取ロボットシステム(ロボットシステム)
101 検体採取部材(処置部材)
220a 第1操作装置(第1操作装置)
220b 第2操作装置(第2操作装置)
221 操作ハンドル(第1ハンドル)
227 フットペダル
320a 操作装置(第1操作装置)
520a 操作装置(第1操作装置)
521 操作ハンドル(第1ハンドル)
521a スイッチ
620a 操作装置(第1操作装置)
621 操作ハンドル(第1ハンドル)
701 処置部材
O 操作者
S 被検者(被処置者)
Sa 被処置者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図32