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  • 特開-施肥体及び施肥体の製造方法 図1
  • 特開-施肥体及び施肥体の製造方法 図2
  • 特開-施肥体及び施肥体の製造方法 図3
  • 特開-施肥体及び施肥体の製造方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010703
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】施肥体及び施肥体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A01K 61/77 20170101AFI20240118BHJP
【FI】
A01K61/77
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112132
(22)【出願日】2022-07-13
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 株式会社みなと山口合同新聞社(日刊みなと新聞にて公開) 令和4年6月22日
(71)【出願人】
【識別番号】519021233
【氏名又は名称】株式会社朝日テック
(74)【代理人】
【識別番号】100172225
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 宏行
(72)【発明者】
【氏名】池田 修
【テーマコード(参考)】
2B003
【Fターム(参考)】
2B003AA01
2B003BB01
2B003CC03
2B003CC05
2B003DD01
2B003DD02
2B003DD06
(57)【要約】
【課題】小型な構造で、沿岸砂泥地や岩場などの場所を選ばずに、藻の栄養分を海中に供給することのできる施肥体及び施肥体の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】施肥体は、少なくとも硫酸第一鉄とフルボ酸を反応させることで生成されたフルボ酸鉄(2価)と、セメント、砂、砂利のうち少なくとも一つを含む。これにより、小型な構造で、沿岸砂泥地や岩場などの場所を選ばずに、藻の栄養分を海中に供給することができる。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも硫酸第一鉄とフルボ酸を反応させることで生成されたフルボ酸鉄(2価)と、
セメント、砂、砂利のうち少なくとも一つを含むことを特徴とする施肥体。
【請求項2】
フルボ酸鉄(2価)と、
セメント、砂、砂利を含むことを特徴とする施肥体。
【請求項3】
前記施肥体の最大の幅が、1~10cmである、請求項1または2に記載の施肥体。
【請求項4】
前記施肥体の重さが、20~1000gである、請求項1または2に記載の施肥体。
【請求項5】
前記施肥体の比重が、3以上である、請求項1または2に記載の施肥体。
【請求項6】
前記施肥体は、その最大の幅が1~10cmであり、その重さが20~1000gであり、その比重が3以上である、請求項1または2に記載の施肥体。
【請求項7】
少なくとも硫酸第一鉄とフルボ酸を反応させることで生成されたフルボ酸鉄(2価)を含み、
その最大の幅が1~10cmであり、その重さが20~1000gであり、その比重が3以上であることを特徴とする施肥体。
【請求項8】
砂泥地の水底に設けられる、請求項1、2または7に記載の施肥体。
【請求項9】
窒素、リン、カリウムをさらに含む、請求項1、2または7に記載の施肥体。
【請求項10】
セメント、砂、砂利のうち少なくとも一つを水と合わせた混合物を生成し、
少なくとも硫酸第一鉄とフルボ酸を反応させることで生成されたフルボ酸鉄(2価)を前記混合物と合わせることを特徴とした施肥体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施肥体及び施肥体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、沿岸部や川などでは、藻(海藻を含む)が減少して磯焼けも進行している。従前であれば栄養分として森林の腐植土壌中で生成するフルボ酸鉄が河川から流れ込んでいたが、近年はその量が減ってしまっているので、魚や海藻に必要な栄養分が足りなくなってしまったからである。その結果、タイなどの魚の産卵場所が減少し、魚の減少にも繋がる。特許文献1には、二価鉄含有物質と腐植含有物質を存在させ、水中に沈設した状態でフルボ酸鉄が溶出するような水域環境保全材料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-81457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
藻は、沿岸砂泥地や岩場など様々な環境下で生息している。しかしながら、特許文献1のような水域環境保全材料は、その構造上、水深1~数メートルの沿岸砂泥地などに自生するアマモの生育のために使用することが困難であり、場所を選ぶ構造となっている。また、大きな構造体となっているので、配置する手間もかかる。
【0005】
そこで本発明は、小型な構造で、沿岸砂泥地や岩場などの場所を選ばずに、藻の栄養分を海中に供給することのできる施肥体及び施肥体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の施肥体は、少なくとも硫酸第一鉄とフルボ酸を反応させることで生成されたフルボ酸鉄(2価)と、セメント、砂、砂利のうち少なくとも一つを含む。
【0007】
本発明の施肥体は、フルボ酸鉄(2価)と、セメント、砂、砂利を含む。
【0008】
本発明の施肥体は、少なくとも硫酸第一鉄とフルボ酸を反応させることで生成されたフルボ酸鉄(2価)を含み、その最大の幅が1~10cmであり、その重さが20~1000gであり、その比重が3以上である。
【0009】
本発明の施肥体の製造方法は、セメント、砂、砂利のうち少なくとも一つを水と合わせた混合物を生成し、少なくとも硫酸第一鉄とフルボ酸を反応させることで生成されたフルボ酸鉄(2価)を前記混合物と合わせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、小型な構造で、沿岸砂泥地や岩場などの場所を選ばずに、藻の栄養分を水中に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施の形態の施肥体の斜視図
図2】本発明の一実施の形態の施肥体に関する説明図
図3】本発明の一実施の形態の施肥体に関する説明図
図4】本発明の一実施の形態の人工礁の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に図面を用いて、本発明の一実施の形態を詳細に説明する。以下で述べる構成、形状、成分等は説明のための例示であって、施肥体、人工礁などの仕様に応じ、適宜変更が可能である。以下では、全ての図面において対応する要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、以下では水中を表すために海や川を例示しているが、施肥体1は海や川以外の水中で使用されても良い。
【0013】
まず図1を参照して、施肥体1について説明する。図1は、本発明の一実施の形態の施肥体の斜視図である。施肥体1は、セメント、砂、シリコン、珪藻土、砂利などの粒状(例えば、直径3mm~5mm)の石材などのうちから少なくとも一つとフルボ酸鉄(2価鉄状態)を含んで構成されている。特に、少なくともセメント、砂、砂利(粒状の石材)とフルボ酸鉄(2価鉄状態)を含むことが好ましい。これによって、例えば3~10年以上といった長期間において、ゆっくりとフルボ酸鉄(2価鉄状態)など栄養分を水中に供給することができる。
【0014】
施肥体1を長期間において栄養分を溶出できるようにすると好ましい理由は、藻が、例えば11月~3月のような1年のうちのある一定期間において成長するからである。どのような気候や地域であっても藻の成長期間に安定して長期的に栄養分を溶出できるよう、施肥体1は1年以上栄養分を供給できるようにすることが好ましい。なお、セメントとフルボ酸鉄などの栄養分だけでは栄養分が水中にあまりに溶けにくくなってしまうことがあり、砂や砂利とフルボ酸などの栄養分だけでは早期に栄養分が水中に流出してしまうことがある。
【0015】
セメントは、水や液剤などにより水和や重合し硬化する粉体を指し、アスファルト、膠(にかわ)、樹脂、石膏、石灰等、これらを少なくとも2つ以上を組み合わせたもの(接着剤を含む)を含む。砂は、砕屑物のうち、粒径が2ミリメートル~1/16mm(62.5マイクロメートル(μm))の粒子のものを含む。岩石が風化・侵食・運搬される過程で生じた岩片や鉱物片などの砕屑物(砕屑性堆積物)から構成され、サンゴ・貝殻などの石灰質の化石片を含むこともある。
【0016】
また、岩石を人工的手段で破砕した破砕物を含む場合もある。砂利は、砂より大きいサイズであって、直系5cm程度までの砕屑物が集まったもの、あるいはその石が砂とまじった集まりである。同様に、岩石が風化・侵食・運搬される過程で生じた岩片や鉱物片などの砕屑物(砕屑性堆積物)から構成され、サンゴ・貝殻などの石灰質の化石片を含むこともあり、また、岩石を人工的手段で破砕した破砕物を含む場合もある。
【0017】
すなわち、施肥体1に含まれる砂と砂利(粒状の石材)は、同じ成分でその粒のサイズの違いだけであって良い。もちろん、サイズだけでなく成分の少なくとも一部が異なっても良い。施肥体1が含む石材、砂、砂利としては、マグネシウム、バリウム、ストロンチウム、ルビジウム、窒素、リン、カリウムなどの元素を持つ鉱石など(栄養源)を含むものが望ましい。もしくは、砂、砂利とは別に、マグネシウム、バリウム、ストロンチウム、ルビジウム、窒素、リン、カリウムなどの栄養源をパウダー状にして施肥体1に混ぜても良い。このような栄養源は、施肥体1に複数の種類の栄養源を入れた方が良い。特に、なお、窒素、リン、カリウムは入った方が良い。このような栄養源は、フルボ酸鉄(2価鉄状態)があることで、藻が栄養を吸収しやすくなり、より藻の生育に影響を及ぼす。
【0018】
これによって、栄養分としてのフルボ酸鉄(2価鉄状態)や鉱石、岩塩等からなる栄養源(栄養塩)を施肥体1に含ませることができ、その栄養分を水中(海水や川)に溶け出し、藻の生育を促すことができる。施肥体1の水素イオン指数(pH)は8未満であり、7.7~7.9が最も望ましい。
【0019】
図1の施肥体1のサイズは約2cm×2cm×2cmの略直方体である。施肥体1の形状は、図1のような略直方体でも良い。もちろん、正直方体でも良いし、略多面体、正多面体、略球、球のようにどのような形でも良い。表面積の広い直方体や多面体を選ぶことで栄養分を効率的に海中に溶出させることができ、球体のように表面積を抑えることで、栄養分をより長期的に溶出させ続けることができる。
【0020】
サイズとしては、どのような形状であっても、最大の幅が1cm~10cmになるようにすると良く、好ましくは1cm~5cmであると良い。このようなサイズ(人工礁よりも小さい)とすることで、沿岸砂泥地や岩場などの場所を選ばずに、藻が根を張る場所(砂地、泥地、岩場)を大きく奪わないように施肥体1を水中に置く(散布などでも良い)ことができる。
【0021】
また、施肥体1がこのように持ち運びやすいサイズであることで、人が容易に広い範囲に散布することができるので、沿岸砂泥地や岩場などの場所を選ばずに、広範囲の藻に対して栄養分を供給することができる。もちろん、施肥体1は、砂泥地や岩場以外の海や川といったどのような水中に設けても良い。なお、砂泥地とは、海底や川底が砂地や泥地である領域がそれ以外の領域よりも多いところを言う。岩場とは、岩が存在する領域が、砂地や泥地などのそれ以外の領域よりも多いところを言う。
【0022】
また、図1の施肥体1は約55gであり、比重は約6である。施肥体1があまりに軽いと、水に流されて栄養分の必要な場所から遠く離れた場所で栄養分を溶出し続けてしまう。一方で、重すぎると、人力で散布、撒くなどして海に広範囲に施肥体1を設けることが難しくなる。従って、施肥体1の重さは20g~1000gの範囲で、好ましくは20g~200gであると良い。また、施肥体1は生育している藻の近くで栄養分を溶出し続けることが好ましいため、施肥体1が大幅に流されることや水面に浮かび上がることを避けるよう比重は3以上であると良い。
【0023】
次に、施肥体1に含まれるフルボ酸鉄(2価鉄状態)について説明する。先述したとおり、沿岸部や川などでは、藻が減少して磯焼けが進行している。従前であれば、栄養分として森林の腐の植土壌中で生成するフルボ酸鉄が河川から流れ込んでいたが、近年はその量が減ってしまっている。そこで、海水中にフルボ酸を供給したいものの、通常の2価のフルボ酸鉄は水中の酸素によって酸化され易く、3価のフルボ酸鉄(3価の鉄イオン)に変化して即座に粒状鉄として沈降してしまい、生物が摂取することができなくなってしまう。
【0024】
さらに、2価のフルボ酸鉄(2価の鉄イオン)はコンクリート内に含まれる水酸化カルシウムとも反応し、3価のフルボ酸鉄(3価の鉄イオン)になってしまう。従って、施肥体1は、水中でも2価状態をより長期間維持できるフルボ酸を含むことが好ましい。
【0025】
水中でも2価状態を長期間維持できるよう、フルボ酸鉄(2価鉄状態)は、好ましくはPh4以下の硫酸第一鉄とフルボ酸をそれぞれ真水で溶かし、それらを混ぜ合わせるなどして製造されると良い。すなわち、常に酸性状態でフルボ酸鉄に変化させると良い。Ph4以下の硫酸第一鉄を使用することで、フルボ酸鉄が海水などの水に触れても長期間3価鉄に変化しにくくなる。重量として、硫酸第一鉄に対して少なくとも0.001~0.1%のフルボ酸を配合することが好ましい。なお、施肥体1は前述した栄養源を含んでいなくてもよく、その場合、水中の栄養源と施肥体1のフルボ酸鉄(2価鉄状態)によって藻の生育を促すことができる。
【0026】
施肥体1は、適量のセメント、砂、小砂利、マイクロシリカ、天鉱石、岩塩、その他栄養源等を海水などの水(水分を含む物質)で混ぜ、その混合物の中に上述したフルボ酸鉄(2価鉄状態)を混ぜることで製造されることができる。または、施肥体1は、適量のセメント、砂、小砂利、マイクロシリカ、天鉱石、岩塩、その他栄養源等を海水などの水(水分を含む物質)で混ぜ、その混合物の表面上に上述したフルボ酸鉄(2価鉄状態)と真水または海水を混ぜ合わせたものを吹き付けて製造されることができる。フルボ酸鉄(2価鉄状態)は、上述したように好ましくはPh4以下の硫酸第一鉄とフルボ酸それぞれを真水に溶かし、それらを合わせて反応させて生成することができる。このような製造方法とすることで、栄養分としてのフルボ酸鉄(2価鉄状態)や天鉱石や岩塩等からなる栄養塩が水中(海水や川)に溶け出し、藻の生育を促すことができる。
【0027】
次に、図2、3を用いて、施肥体1の使用形態について説明する。図2図3はそれぞれ、発明の一実施の形態の施肥体に関する説明図である。施肥体1は海上から散布(撒く)などされて、バラバラで海底や川底に散在するように設けられている。もちろん、網などのなかに複数の施肥体1を入れて海や川に配置しても良い。散布というのは、施肥体1を海や川に少なくとも1個以上設けることを言い、ある海の領域の中で施肥体1が海底や川底でほぼ均等に配置されるようにしても良いし、ある一部の領域に偏って配置されるようにしても良い。
【0028】
海に生息する藻には、大きく、図2(a)の領域10のような浅瀬の沿岸砂泥地に根を張って育つアマモのような藻11から、図2(b)の領域20のように岩礁の周りに岩礁を掴むように根を張る藻12(アマモ以外の藻を含む)まである。領域20には、岩礁として、のちに説明する図4の人工礁100が設置されても良い。
【0029】
施肥体1は、領域10のような場所において、沿岸砂泥地に根を張って育つアマモのような藻に対しても、フルボ酸鉄(2価鉄状態)などの栄養分を供給することができる。施肥体1が、人工礁100のような大きな構造物ではなく、より小さな構造体であるからである。もちろん、岩礁(人工礁100を含む)の周りに生息する藻に対しても、施肥体1を岩礁の周りに設けることによって同様に栄養分を供給することができる。すなわち、施肥体1は、沿岸砂泥地の領域10や岩場(人工礁100)の領域20などの場所を選ばずに、藻の栄養分を水中に供給することができる。
【0030】
図3は牡蠣の養殖現場を示している。図2の形態以外にも、図3(a)のように、ネット30の中に1つまたは複数の施肥体1を入れて、海上の筏13などからそのネット30を吊るすようにしてもいい。この場合、施肥体1は、図2のように海底や川底に設けられるのではなく、水面と海底または川底との間に位置する。なお、ネット40には、養殖されている牡蠣14が入っている。また、図3(b)のようにネットに入れない牡蠣14の養殖の場合も、牡蠣14はネットに入っていないが、同様にネット30のようなものに施肥体1を入れて、海上の筏13などからそのネットを吊るすようにしてもいい。これによって、藻と同様牡蠣にとっても栄養分となるフルボ酸鉄(2価鉄状態)などの栄養分を供給することができる。
【0031】
また、図3(a)のようにネット30に施肥体1を入れて、水面方向から施肥体1の入ったネット30を吊るすような方法は、牡蠣14の養殖だけに限られず、その他の養殖されている魚介類や、藻の栄養分の供給としても利用できる。
【0032】
図4は、本発明の一実施の形態の人工礁の斜視図である。人工礁100は、内部に内部空洞が形成された略球状の本体部101を備える。本体部101の上部101aには、内部空洞まで貫通する上部開口102が少なくとも1つ形成されている。また、本体部101の側部101bには、内部空洞まで貫通する複数の側部開口103が形成されている。
【0033】
人工礁100は、本体部101の底部101cが海底に接地するように設置される。なお、本体部101の形状は、海底に安定して設置できる形状であればよく、岩を模した不規則な形状であってもよい。
【0034】
人工礁100のサイズは、高さが20cmから2m程度であり、設置する場所、育成対象の海藻や魚などの種類に応じて、適宜変更される。例えば、高さが70cmの人工礁100では、本体部101の厚さは15cm、重量が170kgである。また、上部開口102は直径30cm、側部開口103は直径15cmから25cmである。
【0035】
上部開口102や側部開口103は、人工礁100を設置する位置に生息する魚が自由に外部と内部空洞を往来できる大きさが望ましい。また、重量(本体部101の厚さ)は、台風などの大波で人工礁100が移動しない重さが望ましい。
【0036】
栄養分が十分に供給されると、人工礁100の外面(上部101a、側部101b)などに海藻などが生育する。この時、生育する藻は、図2(a)におけるアマモのような砂泥地に生育する藻ではなく、図2(b)のように岩場などに生息する藻12である。人工礁100が設置された領域において、施肥体1を散布または撒くなどすることによって設けることで、藻に栄養分が供給され、藻の生育を促すことができる。なお、本体部101に形成された保持部に施肥体1を充填してもよい。
【0037】
一方、アマモが生育するのは岩場や人工礁100ではなく、砂泥地であるため、人工礁100ではなく、小型の施肥体1のみを砂泥地に散布などすることによって設けると良い。また、施肥体1の栄養分は、サンゴの生育にも有効であり、成長させたいサンゴの周りに施肥体1を設けるとよい。
【0038】
以上から、施肥体1は、少なくとも硫酸第一鉄とフルボ酸を反応させることで生成されたフルボ酸鉄(2価)と、セメント、砂、砂利のうち少なくとも一つを含むことで、藻などの生育に有効で必要な栄養分を水中に供給することができる。
【0039】
また、施肥体1は、フルボ酸鉄(2価)と、セメント、砂、砂利を含むことで、藻などの生育に有効で必要な栄養分を、長期的に水中に供給することができる。
【0040】
また、施肥体1は、少なくとも硫酸第一鉄とフルボ酸を反応させることで生成されたフルボ酸鉄(2価)を含み、その最大の幅が1~10cmであり、その重さが20~1000gであり、その比重が3以上であると良い。それによって、小型な形状で手軽に、藻などの生育に有効で必要な栄養分を供給することができる。
【0041】
施肥体1は、岩礁領域はもちろん、砂泥地の水底に設けることができる。それによって岩礁を使って生育する藻に対しても、砂泥地で生育する藻に対しても、栄養分を供給することができる。また、施肥体1は、窒素、リン、カリウムをさらに含むとよい。それによって、藻に必要な栄養分をより多く供給することができる。また、窒素、リン、カリウムは、施肥体1にフルボ酸鉄(2価)が含まれることで、より効率的に藻の栄養源となる。
【0042】
この施肥体1は、セメント、砂、砂利のうち少なくとも一つを水と混ぜ合わせた混合物を生成し、少なくとも硫酸第一鉄とフルボ酸を反応させることで生成されたフルボ酸鉄(2価)を混合物と混ぜ合わせることで製造されても良い。これによって、水中でもより長期的に2価状態を維持できるフルボ酸鉄を含んだ施肥体1を製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
小型な構造で、沿岸砂泥地や岩場などの場所を選ばずに、藻の栄養分を海中に供給することのできる施肥体及び施肥体の製造方法を提供する。
【符号の説明】
【0044】
1 施肥体
30 ネット
40 ネット
100 人工礁
101 本体部

図1
図2
図3
図4