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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107043
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】逆止弁および冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
   F16K 15/02 20060101AFI20240801BHJP
   F25B 41/20 20210101ALI20240801BHJP
【FI】
F16K15/02
F25B41/20 B
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024090062
(22)【出願日】2024-06-03
(62)【分割の表示】P 2021159099の分割
【原出願日】2021-09-29
(31)【優先権主張番号】P 2021064095
(32)【優先日】2021-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】古賀 英明
(72)【発明者】
【氏名】濱田 正吾
(72)【発明者】
【氏名】河本 巧
(57)【要約】
【課題】弁体の開閉移動を円滑化することができる逆止弁および冷凍サイクルシステムを提供する。
【解決手段】逆止弁1が、外管部2と、弁本体3と、弁体4と、を備え、弁本体3は、弁体4を支持する筒状の弁ホルダ5と、弁座部6と、弁口7と、を有し、弁体4は、弁ホルダ5内において、弁座部6に着座する弁閉位置と、弁座部6から離れた弁開位置P1と、の間を軸方向に移動自在に設けられ、弁ホルダ5には、筒状の周面を貫通して外管部2の内部と弁口7とを連通する連通孔21が設けられ、弁体4の外周面と弁ホルダ5の内周面とは、互いに接触する接触部と、互いに接触せずに離隔した非接触部と、を介して摺接するように構成されていることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びる筒状の外管部と、前記外管部に内蔵される弁本体と、前記弁本体に設けられる弁体と、を備えた逆止弁であって、
前記弁本体は、前記弁体を支持する筒状の弁ホルダと、前記弁体が着座可能な弁座部と、前記弁座部に着座した前記弁体により閉じられる弁口と、を有し、
前記弁体は、前記弁ホルダ内において、前記弁座部に着座する弁閉位置と、前記弁座部から離れた弁開位置と、の間を軸方向に移動自在に設けられ、
前記弁ホルダには、筒状の周面を貫通して前記外管部の内部と前記弁口とを連通する連通孔が設けられ、
前記弁体の一次側端面には流体を受け止める凹部が形成され、前記凹部は前記弁口の内径よりも大きな内径の内周縁と、前記弁体の外周側全周から軸心二次側に向かって傾斜した面と、を有することを特徴とする逆止弁。
【請求項2】
前記凹部は、該凹部の内周縁から二次側に立ち上がる立ち上がり部と、中央の球面と、を有することを特徴とする請求項1に記載の逆止弁。
【請求項3】
前記凹部は、前記内周縁から複数のR部により形成された傘状の窪みであることを特徴とする請求項2に記載の逆止弁。
【請求項4】
前記凹部の軸方向の深さは、前記内周縁の内径の10%~30%であることを特徴とする請求項1に記載の逆止弁。
【請求項5】
前記弁体の一次側において、前記弁体の外周縁と前記凹部の内周縁の相互間の部位は、前記弁座部に着座するシール面となるとともに、前記弁体の軸方向について他の部位よりも薄肉のリング状の部位であることを特徴とする請求項1に記載の逆止弁。
【請求項6】
前記弁体の二次側端部には、前記弁体の軸方向に所定深さまで延在する、貫通しない穴が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の逆止弁。
【請求項7】
前記弁本体には、前記弁ホルダに固定されて前記弁体の開度を規制する弁ストッパーが設けられ、前記弁体の弁開側端面と前記弁ストッパーの弁座側端面とが互いに接離するように構成されていることを特徴とする請求項1~6のうち何れか一項に記載の逆止弁。
【請求項8】
前記弁ストッパーは、C形止め輪であることを特徴とする請求項7に記載の逆止弁。
【請求項9】
前記弁体が、強化繊維非含有の樹脂材で形成されていることを特徴とする請求項1~8のうち何れか一項に記載の逆止弁。
【請求項10】
前記樹脂材がPEEK材であることを特徴とする請求項9に記載の逆止弁。
【請求項11】
請求項1~10の何れか一項に記載の逆止弁を備えた冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆止弁および冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、逆止弁として、外管の内部に設けられる弁本体と、弁本体の内部に設けられる弁体と、を備え、弁本体は、弁口を構成する弁座部と、弁体を移動自在に収容する筒状の弁ホルダ(弁ケース)と、を有したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この逆止弁において、弁ホルダには、外管の内部と弁口とを連通する連通孔が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-200552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1に記載されたような従来の逆止弁は、冷凍サイクルシステムにおける冷媒の流路の途中に設置されて使用される。このような冷媒の多くには潤滑用に冷凍機油が含有されているが、弁体の外周面と弁ホルダの内周面との間に冷凍機油が存在すると、その表面張力によって弁体の移動抵抗が生じることがある。このとき、弁体の外周面と弁ホルダの内周面との接触面積が大きいほど移動抵抗も大きくなり、弁体の開閉に支障をきたす可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、弁体の開閉移動を円滑化することができる逆止弁および冷凍サイクルシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の逆止弁は、軸方向に延びる筒状の外管部と、前記外管部に内蔵される弁本体と、前記弁本体に設けられる弁体と、を備えた逆止弁であって、前記弁本体は、前記弁体を支持する筒状の弁ホルダと、前記弁体が着座可能な弁座部と、前記弁座部に着座した前記弁体により閉じられる弁口と、を有し、前記弁体は、前記弁ホルダ内において、前記弁座部に着座する弁閉位置と、前記弁座部から離れた弁開位置と、の間を軸方向に移動自在に設けられ、前記弁ホルダには、筒状の周面を貫通して前記外管部の内部と前記弁口とを連通する連通孔が設けられ、前記弁体の一次側端面には流体を受け止める凹部が形成され、前記凹部は前記弁口の内径よりも大きな内径の内周縁と、前記弁体の外周側全周から軸心二次側に向かって傾斜した面と、を有することを特徴とする。
【0007】
このような本発明によれば、弁体の外周面と弁ホルダの内周面との相互間に非接触部を設けることで接触部における接触面積が小さく抑えられている。これにより、弁体の外周面と弁ホルダの内周面との間に冷凍機油が存在したとしても、その冷凍機油の表面張力による移動抵抗を低減し、弁体の外周面が弁ホルダの内周面に張り付くことはなく、弁体の開閉移動を円滑化することができる。
【0008】
この際、前記非接触部は、前記弁体の外周面と前記弁ホルダの内周面との少なくとも一方に形成された複数の溝により構成され、当該複数の溝は、前記弁体の中心軸に対して線対称となる位置に設けられていることが好ましい。この構成によれば、複数の溝により非接触部が効果的に構成され、それら複数の溝が弁体の中心軸に対して線対称となる位置に設けられて移動抵抗が中心軸回りに均一に分散されるので、弁体の開閉移動を一層円滑化することができる。また、非接触部として弁体に溝を設けることにより弁体が軽くなり弁開に要する圧力差が小さくなるので、弁開し易くすることもできる。
また、前記凹部は、該凹部の内周縁から二次側に立ち上がる立ち上がり部と、中央の球面と、を有することが好ましい。
【0009】
さらに、前記複数の溝は、互いに等しい大きさに形成されていることが好ましい。この構成によれば、弁体における中心軸回りの重量分布が均一化されるので、弁体の開閉移動を更に円滑化することができる。
また、前記凹部は、前記内周縁から複数のR部により形成された傘状の窪みであることが好ましい。
【0010】
また、前記複数の溝は、各々、前記弁体の前記中心軸に沿った弁体軸方向に延在するように形成され、前記弁体軸方向に交差する断面の断面形状が前記弁体軸方向に一定である、又は前記断面形状が前記弁体軸方向に徐々に変化することが好ましい。このような構成によれば、非接触部を構成する溝が弁体軸方向に延在することで残りの接触部も弁体軸方向に延在することとなり、当該弁体軸方向に沿った弁体の開閉移動を更に円滑化することができる。また、溝の弁体軸方向に交差する断面の断面形状が、弁体軸方向に一定であるか徐々に変化するので、弁体における弁体軸方向の重量分布が均一化されるか緩やかに変化することになるので、この点においても弁体の開閉移動を一層円滑化することができる。
また、前記凹部の軸方向の深さは、前記内周縁の内径の10%~30%であることが好ましい。
【0011】
また、前記非接触部は、前記弁体の外周面に形成された溝であり、前記弁体が前記弁座部から前記弁開位置まで離れた弁全開時に前記溝と前記連通孔とが連通することが好ましい。この構成によれば、溝と連通孔とが連通した部分が接触部に存在する冷凍機油の逃がし孔として機能し、溝への冷凍機油の溜まりが防がれるので、接触部における冷凍機油の表面張力の保持が抑制されて弁体の開閉移動を更に円滑化することができる。
また、前記弁体の一次側において、前記弁体の外周縁と前記凹部の内周縁の相互間の部位は、前記弁座部に着座するシール面となるとともに、前記弁体の軸方向について他の部位よりも薄肉のリング状の部位であることが好ましい。
また、前記弁体の二次側端部には、前記弁体の軸方向に所定深さまで延在する、貫通しない穴が形成されていることが好ましい。
【0012】
また、前記弁本体には、前記弁ホルダに固定されて前記弁体の開度を規制する弁ストッパーが設けられ、前記弁体の弁開側端面と前記弁ストッパーの弁座側端面とが互いに接離するように構成されていることが好ましい。更に、前記弁体の弁開側端面と前記弁ストッパーの弁座側端面は、互いに接触する軸方向接触部と、互いに接触せずに離隔した軸方向非接触部と、を介して接離するように構成されていることが好ましい。一般的に、上記のように弁ストッパーに当接させることで弁開時の位置決めを行う構造では、弁体の弁開側端面と弁ストッパーの弁座側端面の間にも冷凍機油が入り込む可能性がある。このとき、弁体の弁開側端面と弁ストッパーの弁座側端面の間に入り込んだ冷凍機油が、表面張力によってこれら2つの面同士を張り付けて、弁ストッパーに当接した弁開位置の弁体が弁閉位置へと移動しようとするときの移動抵抗を生じさせる場合がある。そして、弁体の弁開側端面と弁ストッパーの弁座側端面の接触面積が大きいほど上記の移動抵抗も大きくなり、弁体の弁開側端面が弁ストッパーの弁座側端面に張り付いたままとなると弁が閉じなくなる場合もある。これに対し、上記の好ましい構成によれば、弁体の弁開側端面と弁ストッパーの弁座側端面とは、軸方向接触部と軸方向非接触部とを介して接触するので、弁開側端面と弁座側端面の接触面積が小さく抑えられている。これにより、これら2つの面の間に冷凍機油が存在したとしても、その冷凍機油の表面張力による移動抵抗を低減し、弁体の弁開側端面が弁ストッパーの弁座側端面に張り付くことはなく、弁体の開閉移動を円滑化することができる。
【0013】
また、前記弁ストッパーは、C形止め輪であることが好ましい。この構成によれば、弁ストッパーの弁座側端面の面積が、例えば当該弁座側端面が円形面であるような場合に比べて小さく抑えられる。つまり、弁開側端面と弁座側端面の接触面積が、弁ストッパー側でも小さく抑えられるので、弁体の弁開側端面と弁ストッパーの弁座側端面との張付きが一層抑えられ、弁体の開閉移動を更に円滑化することができる。また、上記の構成によれば、安価で取付けも容易なC形止め輪が弁ストッパーとして利用されることから、製造コストを低減させることもできる。
【0014】
前記弁体には、前記弁体軸方向に所定深さまで延在する、貫通しない肉抜き穴が形成されていることが好ましい。この構成によれば、弁体を樹脂で形成する際にヒケや気泡等の発生を抑えることができる。また、肉抜き穴が形成されていることで弁体が軽量化されるので、開弁圧力差も小さくなるので弁開し易くなり、弁体の開閉移動を更に円滑化することもできる。
【0015】
また、前記弁体が、強化繊維非含有の樹脂材で形成されていることが好ましい。この構成によれば、強化繊維が非含有であることで弾性率が低くて変形し易い樹脂材で弁体が形成されるので、仮にシール面の平坦度が低い場合でも、シール面が変形して弁口に密着することで弁漏れを抑制することができる。
【0016】
また、前記樹脂材がPEEK材であることが更に好ましい。この構成によれば、塑性変形が少なく、高温高圧という厳しい使用環境に対する耐性に優れたPEEK材によって弁体が形成される。このようなPEEK材を弁体の形成樹脂として採用することで、逆圧解消後には、塑性変形の抑制による良好な形状復帰を得ることができる。また、弁体に、上記のような厳しい使用環境に対する優れた耐性を付与することができる。
【0017】
また、本発明の冷凍サイクルシステムは、前記いずれかの逆止弁を備えていることを特徴とする。
【0018】
このような本発明によれば、冷凍サイクルシステムにおいて上述の逆止弁が採用されているので、当該逆止弁における弁体の開閉移動を円滑化することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の逆止弁および冷凍サイクルシステムによれば、弁体の開閉移動を円滑化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態に係る逆止弁の、軸方向に沿った断面を示す全体断面図である。
図2図1に示されている逆止弁の要部を拡大して示す拡大断面図である。
図3図1及び図2に示されている弁体の上面図、図中のV0-V1線に沿った断面図、及び図中のV0-V2線に沿った断面図である。
図4図1図3に示されている弁体の上面図、及び側面図である。
図5図1図4に示されている逆止弁を備えた、第1実施形態に係る冷凍サイクルシステムを示す図である。
図6】第2実施形態に係る逆止弁の、軸方向に沿った断面を示す全体断面図である。
図7図6に示されている弁体の上面図、及び図中のV14-V14線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態のうち第1実施形態に係る逆止弁を図1図4に基づいて説明する。
【0022】
図1は、第1実施形態に係る逆止弁の、軸方向に沿った断面を示す全体断面図であり、図2は、図1に示されている逆止弁の要部を拡大して示す拡大断面図である。
【0023】
第1実施形態の逆止弁1は、詳細については後述するように冷凍サイクルシステムにおける冷媒の流路の途中に設置されて使用され、潤滑用の冷凍機油を含有する冷媒が流体として流される。この逆止弁1は、図1に示すように、一次側(図1の下側)から二次側(図1の上側)への流体の流れ(正流)を許可し、二次側から一次側への流体の流れ(逆流)を禁止する弁装置である。逆止弁1は、軸線Lに沿った軸方向に延びる円筒状の外管部2と、外管部2に内蔵される弁本体3と、弁本体3に設けられる弁体4と、を備えている。弁本体3は、弁体4を支持する筒状の弁ホルダ5と、弁体4が着座可能な弁座部6と、が一体に形成された黄銅製等の部材であり、弁座部6には、着座した弁体4により閉じられる弁口7が形成されている。弁体4は、図2に示されているように、弁ホルダ5内において、弁座部6に着座する弁閉位置P2と、弁座部6から離れた弁開位置P1と、の間を軸方向に移動自在に設けられている。
【0024】
外管部2は、銅製の一体成形部材であり、一次側の一次継手部11と、二次側の二次継手部12と、一次継手部11よりも拡径された第一拡径部13と、第一拡径部13よりも拡径されて二次継手部12に連続する第二拡径部14と、を備えている。一次継手部11は、一次配管(不図示)に連結される一次開口部11Aと、一次開口部11Aに連続する円筒状の一次円筒部11Bと、一次円筒部11Bから第一拡径部13に向かって拡径される第一連結部11Cと、を有している。また、二次継手部12は、二次配管(不図示)に連結される二次開口部12Aと、二次開口部12Aに連続する円筒状の二次円筒部12Bと、二次円筒部12Bから第二拡径部14に向かって拡径される第二連結部12Cと、を有している。二次開口部12Aは、二次円筒部12Bよりも若干拡径されている。
【0025】
第一拡径部13は、その内部に圧入された弁座部6を保持する部位であり、周面の4箇所には、径方向内側に変形して弁座部6を固定する固定部13Aが形成されている。これらの固定部13Aは、プレス装置のポンチによってカシメ変形され、弁座部6の環状凹部25に食い込むことで、弁座部6が外管部2内部の所定位置に固定されるようになっている。第二拡径部14は、その内周面と弁ホルダ5の外周面とが所定の隙間を介して対向し、この隙間を流体が円滑に流れる程度の内径寸法を有した円筒状に形成されている。第二拡径部14と第一拡径部13の境界部分には、第一拡径部13に向かって縮径される段差部14Aが設けられている。
【0026】
弁本体3の弁ホルダ5には、円筒状の周面を径方向に貫通する連通孔21が4箇所に設けられ、これらの連通孔21によって、弁ホルダ5の内部と外管部2の第二拡径部14の内部とが連通されている。連通孔21は、側面視で円形に形成されている。すなわち、連通孔21は、弁ホルダ5に対して軸直交方向からドリル等による穴開け加工によって形成されている。弁ホルダ5の二次側端部近傍の内面には、SUS製で略円環状の弁ストッパー22が取り付けられ、図1及び図2に示されている弁開位置P1に移動した弁体4が弁ストッパー22に当接することで、弁体4の弁開位置P1よりも二次側への移動が規制されている。この弁ストッパー22としては、具体的にはC型止め輪が採用される。すなわち、弁開位置P1とは、弁体4が弁座部6から離れた位置で、なおかつ、弁体4が弁ストッパー22に当接したことで、弁ストッパー22よりも二次側に弁体4が移動することが規制された位置(弁ストロークにおける二次側方向最大位置)のことである。図2には、弁ホルダ5内で弁開位置P1に位置する弁体4が、図中上段に示されている。
【0027】
弁座部6は、一次側に延びる円筒部23を有し、この円筒部23の二次側(弁ホルダ5側)端部の内面には段差状の弁座面24が設けられ、図2における図中下段に示されている弁閉位置P2に移動した弁体4が弁座面24に着座するようになっている。円筒部23の一次側端部近傍の外面には、外管部2の固定部13Aが食い込む環状凹部25が形成されている。また、弁座部6の二次側端部外面には、径方向に突出した環状凸部26が形成され、この環状凸部26が外管部2の段差部14A内面に当接することで、弁本体3が外管部2に対して位置決めされている。CO2冷媒等の超高圧で使用する場合、弁閉時に弁座部6が弁閉方向に受ける力をこの段差部14A内面で受けることができるため、弁座部6の圧入ずれ防止の効果がある。環状凸部26には、その周方向の一部が切り欠かれたDカット部27が形成されている。ここで、弁座部6の環状凸部26は、外管部2の段差部14A内面に当接するが、これらの間には微小な隙間である液封部が形成されることになる。この液封部に流体である冷媒が入り込んで溜まり、冷媒が冷えて液化した状態で急激に高温に曝された場合、液冷媒が急激に体積膨張することになるが、Dカット部27が液封部に連通していることで、膨張した冷媒が外管部2内部に抜け出すようになっている。従って、冷媒の膨張圧力による外管部2や弁座部6の破損や変形が防止できるようになっている。
【0028】
図3は、図1及び図2に示されている弁体の上面図、図中のV0-V1線に沿った断面図、及び図中のV0-V2線に沿った断面図である。また、図4は、図1図3に示されている弁体の上面図、及び側面図である。尚、弁体4の上面図の斜線部は弁ストッパー22への接触部分を示しており、側面図の斜線部は弁ホルダ5の内周面との横穴21より上部での接触部を示している。
【0029】
図2図4に示されているように、弁体4は、円柱の外周面に弁体軸方向D11の溝43を4つ設けて弁体軸方向D11に交差する断面形状が略十字形となるように形成された樹脂製部材である。その外径は、弁ホルダ5の内径よりも若干小さく、弁ホルダ5の内周面に沿って弁ホルダ5内を軸方向に移動自在に設けられている。弁体4は、中心軸4A回りの4枚の羽状リブ41と、一次側にあって弁座面24に当接する底板部42と、を残すように円柱の外周面に4つの溝43が形成されている。
【0030】
4つの溝43は、弁体4の中心軸4Aに対して線対称となる位置、具体的には中心軸4A回りに90°間隔で並ぶ4つの位置に設けられている。また、4つの溝43は、各々、弁体4の中心軸4Aに沿った弁体軸方向D11に延在するように形成されている。そして、各溝43は、弁体軸方向D11に交差する断面の断面形状が、弁体軸方向D11について、二次側の途中までは中心角が略90°の扇型で一定の断面一定部分43Aとなっている。また、溝43における、断面一定部分43Aの一次側端部から底板部42までは、中心角が略90°の円弧を描きつつ溝深さが浅くなるように断面形状が弁体軸方向D11に徐々に変化する断面変化部分43Bとなっている。4つの溝43は、各々が断面一定部分43Aと断面変化部分43Bを有する、互いに等しい大きさで同形状に形成されている。
【0031】
弁体4の底板部42は、溝43における断面変化部分43Bの溝底面を周方向に繋いだ扁平な円錐形状を有している。この底板部42における一次側は、傘状の窪み42Aが形成されており、図2に示されている弁閉位置P2では、この窪み42Aの周縁が弁座面24に当接するように着座する。弁体4は、弁閉位置P2においてこのように着座し、これにより弁口7が閉じて二次側から一次側への流体の逆流が阻止されるようになっている。
【0032】
また、弁開時には、弁口7から正流の流体が流出し、底板部42における窪み42Aで流体が効果的に受け止められて弁体4が二次側へと押し上げられるように移動して弁開する。弁体4における二次側の端部(即ち、弁開側端面)は、4枚の羽状リブ41の二次側の端縁で構成される十字型端面41Bとなっている。図2に示されている弁開位置P1では、この十字型端面41Bにおける径外方向の4つの端部41B-1、即ち、図4の上段の図において斜線で示された部分が弁ストッパー22における弁座側端面22Aに当接して移動が規制される。このとき、弁体4の十字型端面41B(弁開側端面)と弁ストッパー22の弁座側端面22Aとは、弁体4の移動に伴って、次のような軸方向接触部4Eと軸方向非接触部4Fと、を介して接離する。軸方向接触部4Eは、弁体4における十字型端面41Bの4つの端部41B-1で構成される部位である。また、軸方向非接触部4Fは、それら4つの端部41B-1の相互間で、4つの溝43の弁開側の端部43Cで構成される部位である。
【0033】
また、本実施形態では、弁体4には、弁開位置P1の側の端面、つまり上記の十字型端面41Bにおける中央部から弁体軸方向D11に所定深さまで延在する貫通しない肉抜き穴44が形成されている。尚、本実施形態の肉抜き穴44とは異なり、方向が逆の底板部42における窪み42Aの中央部から弁体軸方向D11に開けた貫通しない肉抜き穴を設けることとしてもよい。
【0034】
ここで、4つの溝43が形成されて4枚の羽状リブ41と一次側の底板部42とが残された弁体4は、4枚の羽状リブ41の先端縁41Aが、弁ホルダ5の内周面5Aに接触する接触部4Bを構成している。また、4つの溝43が、弁ホルダ5の内周面5Aに接触せずに離隔した非接触部4Cを構成している。弁体4は、この接触部4Bと非接触部4Cとを介して弁ホルダ5の内周面5Aと摺接するように構成されている。
【0035】
また、非接触部4Cを構成する4つの溝43それぞれは、図2に示されているように、弁体4が弁座部6から弁開位置P1まで離れた弁全開時に4つの溝43それぞれの一次側端部と、弁ホルダ5における4つの連通孔21とが連通するように構成されている。この結果、弁開位置P1では、弁体4の非接触部4C(即ち4つの溝43)と弁ホルダ5の外側空間との間に通路が形成される。本実施形態では、この通路が、接触部4Bに冷凍機油が存在する場合のこの冷凍機油を排出する逃がし孔4Dとして機能する。
【0036】
図1図4を参照して説明した逆止弁1は、図1に示されている縦置き状態で使用される場合には、次のように動作する。まず、弁体4が着座して弁閉位置P2にあるときに一次側から二次側へと正流で流体が流れると、弁口7から流出する流体に押された弁体4が、弁ストッパー22に当接する弁開位置P1まで移動する。正流の流れが止まると弁体4は自重で落下して弁座部6に着座する弁閉位置P2まで移動する。
【0037】
また、逆止弁1は、横置き状態や、図1とは上下逆向きの縦置き状態で使用される場合には、次のように動作する。まず、弁閉位置P2では一時側よりも二次側の圧力が高く設定され、このときの差圧によって弁体4が弁座部6に押し付けられて着座状態が維持される。この状態において一次側から二次側へと正流で流体が流れると、弁口7から流出する流体に押された弁体4が、弁ストッパー22に当接する弁座から最も離れた弁開位置P1まで移動する。そして、弁閉時には、二次側の圧力を一次側よりも高めることで、その差圧によって弁体4が弁座部6に着座する弁閉位置P2まで移動する。
【0038】
この逆止弁1が、以下に説明するように冷凍サイクルシステムにおける冷媒の流路の途中に設置されて使用される。
【0039】
図5は、図1図4に示されている逆止弁を備えた、第1実施形態に係る冷凍サイクルシステムを示す図である。
【0040】
この図5に示されている冷凍サイクルシステム50は、例えば、業務用エアコン等の空気調和機に用いられる。この冷凍サイクルシステム50は、室内側熱交換器51、室外側熱交換器52、膨張弁53、四方弁54、並列に接続された3台の圧縮機55、が配管で接続されたものである。逆止弁1は、各圧縮機55への冷媒の逆流を防ぐために、各圧縮機55における吐出(高圧出力)側と四方弁54との間に、圧縮機55を一次側、四方弁54を二次側として接続されている。
【0041】
冷房運転時には、実線矢印D51で示されているように、室内側熱交換器51で熱を吸収した冷媒が、四方弁54を介して圧縮機55へと流れ、圧縮機55で圧縮された後、逆止弁1と四方弁54を経て室外側熱交換器52に至る。そして、この室外側熱交換器52で熱を放出した後、膨張弁53を経て室内側熱交換器51に戻る。暖房運転時には、点線矢印D52で示されているように、室内側熱交換器51で熱を放出した冷媒が、膨張弁53を経て室外側熱交換器52に至る。そして、この室外側熱交換器52で熱を吸収した後、四方弁54を介して圧縮機55へと流れ、圧縮機55で圧縮された後、逆止弁1と四方弁54を経て室内側熱交換器51に戻る。冷凍サイクルシステム50は、これらのサイクルを繰り返して室内の冷房または暖房を行う。
【0042】
ここで、例えば、冷却負荷が大きい条件では、3台の圧縮機55を同時に運転するため、3台の各逆止弁1は全開状態となる。また、冷却負荷が小さい条件では、1台の圧縮機55の運転だけで足りるので、他の2台の圧縮機55は運転しない。このときには、2台の逆止弁1の二次側圧力が一次側圧力より高くなることで二次側からの逆流が生じ、2台の逆止弁1が閉じた状態となる。
【0043】
以上に説明した第1実施形態の逆止弁1及び冷凍サイクルシステム50によれば、弁体4の外周面と弁ホルダ5の内周面5Aとの相互間に非接触部4Cを設けることで接触部4Bにおける接触面積が小さく抑えられている。これにより、弁体4の外周面と弁ホルダ5の内周面5Aとの間に冷凍機油が存在したとしても、その冷凍機油の表面張力による移動抵抗を低減し、弁体4の外周面が弁ホルダ5の内周面5Aに張り付くことはなく、弁体4の開閉移動を円滑化することができる。
【0044】
ここで、本実施形態では、非接触部4Cは、弁体4の外周面に形成された4つの溝43により構成され、これら4つの溝43は、弁体4の中心軸4Aに対して線対称となる位置に設けられている。この構成によれば、4つの溝43により非接触部4Cが効果的に構成され、それら4つの溝43が弁体4の中心軸4Aに対して線対称となる位置に設けられて移動抵抗が中心軸4A回りに均一に分散されるので、弁体4の開閉移動を一層円滑化することができる。また、非接触部4Cとして弁体4に溝43を設けることにより弁体4が軽くなり弁開に要する圧力差が小さくなるので、弁開し易くすることもできる。
【0045】
さらに、本実施形態では、4つの溝43は、互いに等しい大きさに形成されている。この構成によれば、弁体4における中心軸4A回りの重量分布が均一化されるので、弁体4の開閉移動を更に円滑化することができる。
【0046】
また、本実施形態では、4つの溝43は、各々、弁体4の中心軸4Aに沿った弁体軸方向D11に延在するように形成されている。そして、各溝43は、弁体軸方向D11に交差する断面の断面形状が弁体軸方向D11に一定の断面一定部分43Aと、徐々に変化する断面変化部分43Bとを有している。このような構成によれば、非接触部4Cを構成する溝43が弁体軸方向D11に延在することで残りの接触部4Bも弁体軸方向D11に延在することとなり、当該弁体軸方向D11に沿った弁体4の開閉移動を更に円滑化することができる。また、溝43の弁体軸方向D11に交差する断面の断面形状が、弁体軸方向D11に一定であるか徐々に変化するので、弁体4における弁体軸方向D11の重量分布が均一化されるか緩やかに変化することになる。上記の構成によれば、この点においても弁体4の開閉移動を一層円滑化することができる。
【0047】
また、本実施形態では、弁体4が弁座部6から弁開位置P1まで離れた弁全開時に溝43と弁ホルダ5の連通孔21とが連通する。この構成によれば、溝43と連通孔21とが連通した部分が接触部4Bに存在する冷凍機油の逃がし孔4Dとして機能し、溝43への冷凍機油の溜まりが防がれる。これにより、接触部4Bにおける冷凍機油の表面張力の保持が抑制され、弁体4の外周面が弁ホルダ5の内周面5Aに張り付くことはなく、弁体4の開閉移動を更に円滑化することができる。
【0048】
また、本実施形態では、十字型端面41B(弁開側端面)と弁ストッパー22の弁座側端面22Aとが、軸方向接触部4Eと軸方向非接触部4Fとを介して接離するように構成されている。一般的に、上記のように弁ストッパー22に当接させることで弁開時の位置決めを行う構造では、弁体4の十字型端面41Bと弁ストッパー22の弁座側端面22Aの間にも冷凍機油が入り込む可能性がある。このとき、弁体4の十字型端面41Bと弁ストッパー22の弁座側端面22Aの間に入り込んだ冷凍機油は、表面張力によってこれら2つの面同士を張り付けるように作用する。このような作用は、弁ストッパー22に当接した弁開位置P1の弁体4が弁ストッパー22から離れて弁閉位置P2へと移動しようとするときの移動抵抗を生じさせる場合がある。
【0049】
ここで、本実施形態とは異なり、例えば弁体が単純な円柱状に形成され、弁開側の円形面で弁ストッパー22に面着する等といった、弁体4の弁開側端面と弁ストッパー22の弁座側端面22Aの接触面積が大きくなる構造について考えることとする。このような構造では、上記のような張付きによる移動抵抗が大きくなり、円柱状の弁体の弁開側端面が弁ストッパー22の弁座側端面22Aに張り付いたまま離れなくなって弁が閉じなくなる場合もある。
【0050】
これに対し、本実施形態によれば、弁体4の十字型端面41B(弁開側端面)と弁ストッパー22の弁座側端面22Aとは、軸方向接触部4Eと軸方向非接触部4Fとを介して接離するので、十字型端面41Bと弁座側端面22Aの接触面積が小さく抑えられる。これにより、これら2つの面の間に冷凍機油が存在したとしても、その冷凍機油の表面張力による移動抵抗を低減し、弁体4の十字型端面41Bが弁ストッパー22の弁座側端面22Aに張り付くことはなく、弁体4の開閉移動を円滑化することができる。
【0051】
また、本実施形態では、弁体4が弁開位置P1に位置するときには、上述したように溝43と弁ホルダ5の連通孔21とが連通して逃がし孔4Dが形成される。このため、弁体4の十字型端面41Bと弁ストッパー22の弁座側端面22Aとの間の冷凍機油も、溝43と逃がし孔4Dとを経由して弁ホルダ5の外部へ逃がすことができ、この点においても、弁体4の開閉移動を円滑化することができる。
【0052】
また、本実施形態では、弁ストッパー22としてC形止め輪が採用されている。この構成によれば、本実施形態とは異なり例えば弁座側端面が円形面であるような場合に比べて弁ストッパー22の弁座側端面22Aの面積が小さく抑えられる。つまり、弁体4の十字型端面41Bと弁ストッパー22の弁座側端面22Aとの接触面積が、弁ストッパー22側でも小さく抑えられる。その結果、弁体4の十字型端面41Bと弁ストッパー22の弁座側端面22Aとの張付きが一層抑えられ、弁体4の開閉移動を更に円滑化することができる。また、上記の構成によれば、安価で取付けも容易なC形止め輪が弁ストッパー22として利用されることから、製造コストを低減させることもできる。
【0053】
また、本実施形態では、弁体4には、弁開位置P1の側の端面から弁体軸方向D11に所定深さまで延在する貫通しない肉抜き穴44が形成されている。この構成によれば、弁体4を樹脂で形成する際にヒケや気泡等の発生を抑えることができる。また、肉抜き穴44が形成されていることで弁体4が軽量化されるので、開弁圧力差も小さくなるので弁開し易くなり、弁体4の開閉移動を更に円滑化することもできる。
【0054】
次に、第2実施形態について説明する。この第2実施形態は、逆止弁における弁体の形状等が上述した第1実施形態と異なっている。以下では、第2実施形態に係る逆止弁ついて、図6及び図7に基づき、第1実施形態との相違点に注目して説明を行う。他方、冷凍サイクルシステムについては、第1実施形態と同等であるので図示や説明を省略する。
【0055】
図6は、第2実施形態に係る逆止弁の、軸方向に沿った断面を示す全体断面図であり、図7は、図6に示されている弁体の上面図、及び図中のV14-V14線に沿った断面図である。尚、図6では、図1に示されている第1実施形態の逆止弁1の構成要素と同等な構成要素には図1と同じ符号が付されており、以下では、それら同等な構成要素についての重複説明を割愛する。
【0056】
第2実施形態の逆止弁100は、第1実施形態の逆止弁1と同様の弁装置であり、軸線Lに沿った外管部2に弁本体3が内蔵され、その弁本体3に筒状の弁ホルダ5に支持された状態で弁体140が設けられている。弁体140は、弁座部6に着座して弁口7を閉じる弁閉位置P2と、弁座部6から離れた弁開位置P1と、の間を軸方向に移動自在に設けられている。
【0057】
本実施形態では、弁体140において4枚の羽状リブ141の先端縁141Aが接触部140Bを構成し、4つの溝143が非接触部140Cを構成している点は上述した第1実施形態と同じである。また、本実施形態でも、十字型端面141B(弁開側端面)と弁ストッパー22の弁座側端面22Aとが、軸方向接触部140Eと軸方向非接触部140Fとを介して接離するように構成されている。軸方向接触部140Eは、十字型端面141Bの4つの端部141B-1で構成され、軸方向非接触部140Fは、4つの溝143の弁開側の端部143Cで構成される。他方、各溝143では、第1実施形態とは異なり、底板部142から平端部を経ることなく斜めに立ち上がって断面変化部分143Bが形成されている。また、その傾斜は、図3に示されている第1実施形態の断面変化部分43Bよりも急勾配となっている。その結果、本実施形態では、溝143における十字型端面141Bの側の断面一定部分143Aは、中心軸140Aに沿った弁体軸方向D141の長さが、第1実施形態の断面一定部分43Aよりも短くなっている。更に、本実施形態では、図7に断面図で示されているように、肉抜き穴144が弁体軸方向D141に先細りで丸底のテーパ穴なっている。また、十字型端面141Bには、4枚の羽状リブ141それぞれの端面部分に弁体140の着脱時に弁体140を保持するためのイジェクタピン穴141Cが1つずつ設けられている。
【0058】
そして、本実施形態では、弁体140が、強化繊維非含有の樹脂材で形成されている。この樹脂材としては、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)材、PI(ポリイミド)材、PPS(ポリフェニレンサルファイド)材等といった高強度材料が挙げられる。これらの高強度材料は、塑性変形が少なく、高温高圧という厳しい使用環境に対する耐性に優れた樹脂材である。本実施形態では、これらの高強度材料のうち、特に高強度のPEEK材が採用されている。そして、CF(カーボンファイバー)やGF(グラスファイバー)等といった強化繊維が非含有の状態でPEEK材が用いられて弁体140が形成されることで、塑性変形が少なく高耐性でありながら弾性率が低いため、弾性変形域が広く、弾性域内で変形し易い(延び易い)という性質が弁体140に付与されている。尚、上述の第1実施形態では、弁体4について単に樹脂製部材であると述べるに留めたが、この弁体4についても、第2実施形態と同様に、強化繊維非含有のPEEK材で形成することとしてもよい。
【0059】
以上に説明した第2実施形態によっても、上述の第1実施形態と同様に、弁体140の開閉移動を円滑化することができることは言うまでもない。
【0060】
また、本実施形態では、弁体140が、強化繊維非含有の樹脂材で形成されている。この構成によれば、上述のように、強化繊維が非含有であることで弾性率が低くて変形し易い樹脂材で弁体140が形成されることとなる。ここで、上記のような厳しい使用環境下で動作する弁体140では、そのシール面において平坦度の低下がみられる場合がある。弁体140においては、このような場合にあっても逆圧時の弁漏れが抑制されることが望ましい。このとき、本実施形態によれば、弁体140に、弾性率が低くて変形し易いという性質が付与されることから、仮にシール面の平坦度が低い場合でも、シール面が変形して弁口7に密着することで弁漏れを抑制することができる。
【0061】
また、本実施形態では、弁体140を形成する樹脂材として、塑性変形が少なく、高温高圧という厳しい使用環境に対する耐性に優れたPEEK材が採用されている。この構成によれば、上記のように弾性率が低くて変形し易い弁体140に対し、逆圧解消後の良好な形状復帰や使用環境に対する優れた耐性等といった効果を奏することができる。
【0062】
尚、以上に説明した第1及び第2実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、これに限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によっても尚本発明の逆止弁及び冷凍サイクルシステムの構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【0063】
例えば、上述の第1及び第2実施形態では、業務用エアコン等の空気調和機に用いられる逆止弁1,100を例示したが、逆止弁は、業務用エアコンに限らず、家庭用エアコンに用いてもよいし、空気調和機に限らず、各種の冷凍機、冷蔵庫等にも適用可能である。また、以上の様々な冷凍サイクルシステムにおいて、図5の冷凍サイクルシステム50の逆止弁取付け例の様に圧縮機の吐出側への取付けに限定するものではなく、様々な冷凍サイクルシステム中の様々な場所での逆流防止用として適用が可能である。また、各冷凍サイクルシステムの冷媒としては、多種多様な冷媒(例えば、各種フロン系冷媒や、炭化水素系冷媒やCO2やアンモニア等といった自然冷媒等)がある。これらのどの冷媒に対応した冷凍サイクルシステムにも本発明の逆止弁を適用することができる。
【0064】
尚、上述の第1及び第2実施形態の説明では、連通孔21については、弁ホルダ5の円筒状の周面を径方向に貫通する4箇所に設けられている構造について説明してきたが、4箇所に限定するものではなく1箇所や、2箇所以上の複数箇所でもよい。また、連通孔21は側面視で円形に形成された孔について、記述してきたが、側面視で円形に限定するものではなく、楕円形等でもよい。また、上述の第1及び第2実施形態では、外管部2(継手部材と本体部材)が銅製の一体形成部材の構造の逆止弁について説明してきたが、入口、出口の銅管継手部材と、弁体を収容する本体部材と、を別体とした構造の逆止弁にも適用することができる。
【0065】
また、上述の第1及び第2実施形態では、非接触部の一例として、弁体4,140の外周面に形成された4つの溝43,143により構成された非接触部4C,140Cが例示されている。しかしながら、非接触部はこれに限るものではなく、弁ホルダの内周面に形成された複数の溝で構成されたものであってもよく、あるいは弁体の外周面と弁ホルダの内周面との両方に形成された複数の溝で構成されたものであってもよい。また、非接触部は、このような溝で構成されたものに限らず、例えば弁体の外周面と前記弁ホルダの内周面との少なくとも一方に形成された複数の窪み等であってもよい。また、溝は軸方向に向けた螺旋溝でもよい。
【0066】
また、上述の第1及び第2実施形態では、複数の溝で構成される非接触部の一例として、弁体4,140の中心軸4A,140Aに対して線対称となる位置に設けられ4つの溝43,143で構成される非接触部4C,140Cが例示されている。しかしながら、非接触部は。これに限るものではなく、溝の数や位置は適宜に設定し得るものである。従って、溝の数は、1つや、4つ以外の複数でもよい。ただし、弁体4,140の中心軸4A,140Aに対して線対称となる位置に設けられ4つの溝43,143で非接触部4C,140Cを構成することで、弁体4,140の開閉移動を更に円滑化することができる点は上述した通りである。
【0067】
また、上述の第1及び第2実施形態では、非接触部を構成する複数の溝の一例として、互いに等しい大きさに形成されている4つの溝43,143が例示されている。しかしながら、非接触部を構成する複数の溝は、これに限るものではなく、互いに異なる大きさに形成されたものであってもよい。ただし、非接触部4C,140Cを互いに等しい大きさに形成されている4つの溝43,143で構成することで、弁体4,140の開閉移動を更に円滑化することができる点は上述した通りである。
【0068】
また、上述の第1及び第2実施形態では、非接触部を構成する溝の一例として、弁体軸方向D11,D141に交差する断面の断面形状が弁体軸方向D11,D141に一定の断面一定部分43A,143Aと徐々に変化する断面変化部分43B,143Bとの両方を有する溝43,143が例示されている。しかしながら、非接触部を構成する溝は、これに限るものではなく、溝の断面形状は任意形状に設定し得るものである。ただし、断面形状が弁体軸方向D11,D141に一定である、又は断面形状が弁体軸方向D11,D141に徐々に変化する溝43,143で非接触部4C,140Cを構成することで、弁体4,140の開閉移動を更に円滑化することができる点は上述した通りである。尚、溝は、断面形状が弁体軸方向に一定の断面一定部分のみで形成されていてもよく、あるいは断面形状が弁体軸方向に徐々に変化する断面変化部分のみで形成されていてもよい。
【0069】
また、上述の第1及び第2実施形態では、溝で構成される非接触部の一例として、弁全開時に弁ホルダ5の連通孔21と連通する溝43,143で構成される非接触部4C,140Cが例示されている。しかしながら、非接触部はこれに限るものではなく、弁全開時に連通部が連通孔と遮断されるものであってもよい。ただし、弁全開時に弁ホルダ5の連通孔21と連通する溝43,143で非接触部4C,140Cを構成することで、溝43,143への冷凍機油の溜まりが防がれるので弁体4,140の開閉移動を更に円滑化することができる点は上述した通りである。
【0070】
また、上述の第1及び第2実施形態では、弁体の一例として、弁開側端面が十字型端面41B,141Bとなり、弁ストッパー22の弁座側端面22Aに対して、軸方向接触部4E,140Eと軸方向非接触部4F,140Fとを介して接離する弁体4,140が例示されている。しかしながら、弁体は、これに限るものではなく、例えば、弁開側端面が円形平面となっており、当該円形平面で弁ストッパーに当接するもの等であってもよい。ただし、弁ストッパー22の弁座側端面22Aに、軸方向接触部4E,140Eと軸方向非接触部4F,140Fとを介して接離する弁体4,140によれば、弁体4,140が弁ストッパー22から離れ易く、弁体4,140の開閉移動を円滑化することができる点は上述した通りである。また、弁開側端面は、上述形状に限るものではなく、軸方向接触面積が小さくなれば、十字型や、円形平面以外の形状でもよく、また、軸方向接触部の面粗度を粗くしてもよく、同様の効果が得られる。
【0071】
また、上述の第1及び第2実施形態では、弁ストッパーの一例として、C形止め輪の弁ストッパー22が例示されている。しかしながら、弁ストッパーは、弁ホルダに固定されて弁体の開度を規制するものであれば、例えば円板状部材等であってもよく、その具体的な部材態様を問うものではない。ただし、C形止め輪の弁ストッパー22を用いることで、弁体4,140の開閉移動を更に円滑化することができ、また、製造コストを低減させることもできる点は上述した通りである。
【0072】
また、上述の第1及び第2実施形態では、弁体の一例として、肉抜き穴44,144が形成された弁体4,140が例示されている。しかしながら、弁体は、これに限るものではなく、肉抜き穴が形成されていない中実構造のもの等であってもよい。ただし、弁体4,140に肉抜き穴44,144を設けることで、樹脂形成時のヒケや気泡等の発生を抑えることができ、軽量化によって弁体4,140の開閉移動を更に円滑化することができる点は上述した通りである。
【0073】
また、上述の第2実施形態では、弁体の一例として、強化繊維非含有の樹脂材で形成された弁体140が例示されている。しかしながら、弁体は、これに限るものではなく、強化繊維を含有した樹脂材や他の材料で形成することとしてもよい。ただし、強化繊維非含有の樹脂材で弁体140を形成することで、逆圧時の弁漏れを抑制することができる点は上述した通りである。
【0074】
また、上述の第2実施形態では、弁体を形成する強化繊維非含有の樹脂材の一例として、強化繊維非含有のPEEK材が例示されている。しかしながら、弁体を形成する強化繊維非含有の樹脂材は、これに限るものではなく、強化繊維非含有であれば、上述のPI材やPPS材、あるいはPA(ポリアミド)材等といった他の樹脂であってもよい。ただし、強化繊維非含有のPEEK材を用いることで、逆圧解消後の形状復帰や使用環境に対する耐性等において特に優れた効果を奏することができる点は上述した通りである。
【0075】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0076】
1,100 逆止弁
2 外管部
3 弁本体
4,140 弁体
4A,140A 中心軸
4B,140B 接触部
4C,140C 非接触部
4D 逃がし孔
4E,140E 軸方向接触部
4F,140F 軸方向非接触部
5 弁ホルダ
6 弁座部
7 弁口
21 連通孔
22 弁ストッパー
22A 弁座側端面
41,141 羽状リブ
41A,141A 先端縁
41B,141B 十字型端面(弁開側端面)
43,143 溝
50 冷凍サイクルシステム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7