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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107053
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】砂沈降槽
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/18 20060101AFI20240801BHJP
   B01D 21/24 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
B01D21/18 K
B01D21/24 H
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024090411
(22)【出願日】2024-06-04
(62)【分割の表示】P 2020074848の分割
【原出願日】2020-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】508165490
【氏名又は名称】アクアインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉延 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100172498
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀幸
(74)【代理人】
【識別番号】100164242
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 直人
(72)【発明者】
【氏名】米山 和彦
(57)【要約】
【課題】改良された砂沈降槽を提供する
【解決手段】液体に混入している砂が底部に沈降する砂沈降槽2において、砂沈降槽2の底部に沈降した砂が集積される集砂ピット25と、砂沈降槽2に設置されたポンプP2と、ポンプP2によって吸い込まれた液体を吐出して集砂ピット25に向かう流れを形成する吐出口282aと、吐出口282a近傍に配置され、ポンプP2によって吸い込まれた液体とは異なる流体を供給する供給口284aとを備えている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体に混入している砂が底部に沈降する砂沈降槽において、
前記底部に沈降した砂が集積される集積部と、
ポンプと、
前記ポンプによって吸い込まれた液体を吐出して前記集積部に向かう流れを形成する吐出口と、
前記吐出口近傍に配置され、前記ポンプによって吸い込まれた液体とは異なる流体を供給する供給口とを備えていることを特徴とする砂沈降槽。
【請求項2】
一端に前記供給口が形成された流体供給管を備え、
前記流体供給管は、該流体供給管の他端が大気中に開放されたものであることを特徴とする請求項1記載の砂沈降槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体に混入している砂が底部に沈降する砂沈降槽に関する。
【背景技術】
【0002】
汚水処理施設には、下水および雨水などの液体を受け入れ、その液体に混入している砂を、砂沈降槽の底部に沈降させた後、堆積した砂を集積部に移送して液体から取り除く沈砂池設備が設けられている。砂沈降槽を通過することで砂が取り除かれた液体は、沈砂池設備の下流側部分に形成されたポンプ井に設置された揚水ポンプによって沈殿池に送り出される。この沈砂池設備として、複数の砂沈降槽とその複数の砂沈降槽が接続された共用のポンプ井(共用槽)を有するものが知られている(例えば、特許文献1等参照)。この特許文献1の沈砂池設備においては、各砂沈降槽を通過した液体が共用のポンプ井に流入する。砂沈降槽には、溝に堆積した砂を集積部に移送するための移送装置が備えられている。移送装置として、例えば、溝に設置されたスクリューコンベアと、スクリューコンベアを駆動するための駆動機器と、駆動機器からの駆動力をスクリューコンベアに伝達する駆動力伝達機構とを備えた移送装置が知られている(例えば、特許文献2等参照)。またバケットを用いて砂を持ち上げて移送する移送装置も知られている。以下、スクリューコンベアやバケット等の機械を用いて砂を移送する移送装置を機械式移送装置と称する。さらに近年では、下方部分に吸込口が設けられた空間形成部材と、その空間形成部材によって形成された移送空間に液体を吐出する吐出口とを備えた移送装置も開発されている(例えば、特許文献3等参照)。以下、特許文献3に記載された方式の移送装置をエジェクタ式移送装置と称する。このエジェクタ式移送装置における空間形成部材の吸込口は、砂沈降槽において砂が堆積する溝に設けられている。吐出口から液体が吐出されることで移送空間に水流が生じる。その水流によって移送空間に負圧が発生するため、溝に堆積した砂は吸込口から移送空間に吸い込まれる。そして、移送空間に吸い込まれた砂は、水流によって移送方向下流側にある集積部に向かって移送される。このエジェクタ式移送装置によれば、単に堆積した砂に向かって0.59MPa以上の吐出圧で液体を吐出する高圧集砂方式の移送装置に対して、堆積した砂の舞い上がりが抑制されるので移送できずに残留してしまう砂の量が少ないという効果がある。さらに、吐出口から0.05MPa以上0.3MPa以下の吐出圧で液体を吐出することで砂を移送できるため、高圧集砂方式の移送装置と比較して移送用ポンプに安価なものを使用できる上に、消費電力も削減できるといった効果もある。この特許文献3のエジェクタ式移送装置では、移送用ポンプをポンプ井に設置し、その移送用ポンプによってポンプ井の液体を吸い上げて吐出口から吐出する液体として使用している。
【0003】
機械式移送装置では、スクリューコンベアなどの機械部分が摩耗して交換が必要になることがある。また、液体中で駆動される機械部分またはその機械部分に駆動力を伝達する駆動力伝達機構に汚物などが噛み込んで機械部分が動作できなくなるといったトラブルが生じる可能性がある。さらに、機械部分や駆動力伝達機構が、液体により腐食してしまう可能性もある。これらにより、機械式移送装置は維持管理費が高くなるという問題がある。これに対し、エジェクタ式移送装置は、液体中で駆動する機械部分や駆動力伝達機構が存在しないため、トラブルが少なく、維持管理費も安くすむ。このため、機械式移送装置からエジェクタ式移送装置に改修することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-303558号公報
【特許文献2】特開2002-282607号公報
【特許文献3】特開2016-165701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年は更に改良された砂沈降槽が求められている。
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、改良された砂沈降槽を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を解決する本発明の砂沈降槽は、
液体に混入している砂が底部に沈降する砂沈降槽において、
前記底部に沈降した砂が集積される集積部と、
ポンプと、
前記ポンプによって吸い込まれた液体を吐出して前記集積部に向かう流れを形成する吐出口と、
前記吐出口近傍に配置され、前記ポンプによって吸い込まれた液体とは異なる流体を供給する供給口とを備えていることを特徴とする。
【0008】
この砂沈降槽において、
一端に前記供給口が形成された流体供給管を備え、
前記流体供給管は、該流体供給管の他端が大気中に開放されたものであってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、改良された砂沈降槽を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】スクリューコンベア式移送装置を備えた沈砂池設備を上方から見た平面図である。
図2】改修後の、エジェクタ式移送装置を備えた沈砂池設備を上方から見た図1と同様の平面図である。
図3図2に示す沈砂池設備のA-A断面図である。
図4】(a)は、図3に示すB部の詳細図である。また、(b)は、同図(a)におけるC-C断面図である。
図5】移送用ポンプと移送ノズルと攪拌ノズルを結ぶ接続管を示す概略配管図である。
図6】改修の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。本発明の一実施形態である砂沈降槽を有する沈砂池設備は、汚水処理施設に設置される固液分離設備であって、下水および雨水などの汚水に混入している砂を沈降させた後、沈降させた砂を集砂ピットに移動させて汚水から取り除くものである。
【0012】
先ず、改修前の既存の沈砂池設備の一例として、スクリューコンベア式移送装置を備えた沈砂池設備について説明する。図1は、スクリューコンベア式移送装置を備えた沈砂池設備を上方から見た平面図である。
【0013】
図1に示す、スクリューコンベア式移送装置27を備えた沈砂池設備1は、図1における左端に形成された流入渠9から下水および雨水などの汚水を受け入れる。この汚水は、液体の一例に相当する。沈砂池設備1が受け入れた汚水は、図の右側に向かってゆっくりと流れていく。以下、受け入れた汚水の流れにおける上流側を、単に上流側と称し、汚水の流れの下流側を、単に下流側と称する。沈砂池設備1は、平面視で長方形をしている。以下、沈砂池設備1の長辺方向を長手方向と称し、短辺方向を池幅方向と称する。沈砂池設備1は、砂が沈降する3つの砂沈降槽2と1つのポンプ井3とを有している。このポンプ井3は、共用槽の一例に相当する。3つの砂沈降槽2は、沈砂池設備1の上流側部分に、汚水の流れ方向に対して並列に設けられている。この砂沈降槽2は、沈砂池とも称されるものである。沈砂池設備1が受け入れた汚水は、砂沈降槽2において、その汚水に混入している砂を沈降させつつポンプ井3に向かって流れていく。この砂沈降槽2の底部は、砂が堆積する砂だまりを構成している。3つの砂沈降槽2は、同一の構成をしているので、以降の説明では、主に図1における一番上にある砂沈降槽2について説明し、残る2つの砂沈降槽2の構成については説明を省略することがある。ポンプ井3には、各砂沈降槽2が接続されている。各砂沈降槽2を通過した汚水は、それぞれポンプ井3に流入する。ポンプ井3は、各砂沈降槽2において砂が取り除かれた汚水を貯留するものである。ポンプ井3の内部には、揚水ポンプP3が設置されている。揚水ポンプP3によって吸引された汚水は、次の段階の汚水処理を行う不図示の沈殿池に送られる。
【0014】
砂沈降槽2は、四方に壁を有する平面視で長方形状をした槽である。砂沈降槽2の長辺方向は沈砂池設備1の長手方向と一致し、砂沈降槽2の短辺方向は池幅方向と一致している。なお、隣り合う砂沈降槽2を仕切っている側壁は、隣り合う砂沈降槽2に共有されている。砂沈降槽2の上流壁21には、流入渠9と砂沈降槽2を繋げる流入口21aが形成されている。そして、砂沈降槽2の上流壁21には、閉塞位置と開放位置との間を移動自在な流入ゲート22が取り付けられている。流入ゲート22が開放位置にあるときは、流入口21aが開放されて流入渠9内の汚水が流入口21aを通過して砂沈降槽2に流れ込む。一方、流入ゲート22が閉塞位置にあるときは、流入口21aが流入ゲート22によって閉塞されて流入渠9から砂沈降槽2への汚水の流入が堰き止められる。また、砂沈降槽2の下流壁23には、砂沈降槽2とポンプ井3を繋げる流出口23aが形成されている。そして、砂沈降槽2の下流壁23には、閉塞位置と開放位置との間を移動自在な流出ゲート24が取り付けられている。流出ゲート24が開放位置にあるときは、流出口23aが開放されて砂沈降槽2内の汚水が流出口23aを通過してポンプ井3に流れ込む。一方、流出ゲート24が閉塞位置にあるときは、流出口23aが流出ゲート24によって閉塞されて砂沈降槽2からポンプ井3への汚水の流出が堰き止められる。なお、砂沈降槽2内の汚水の水位よりもポンプ井3内の汚水の水位の方が高いとポンプ井3内の汚水が砂沈降槽2に逆流する場合もあるが、流出ゲート24によって流出口23aを閉塞することで、その逆流を堰き止めることができる。
【0015】
砂沈降槽2は、集砂ピット25と、トラフ26と、スクリューコンベア式移送装置27を内部に備えている。集砂ピット25は、砂沈降槽2の最も上流側部分に設けられている。この集砂ピット25は、集積部の一例に相当する。集砂ピット25には、集砂ピット25内の砂を沈砂池設備1の外に搬出するための揚砂ポンプP1が設けられている。揚砂ポンプP1を駆動すると、集砂ピット25の底部に堆積した砂が汚水とともに吸引されて不図示の沈砂分離機に送り込まれる。トラフ26は、砂沈降槽2の底部において長手方向に沿って集砂ピット25に向けて延在している。トラフ26は、池幅方向中央で集砂ピット25よりも下流側に設けられ、上方に向かって開口している。トラフ26の上流側端部は、集砂ピット25に接続している。トラフ26の構成については、後に詳述する。トラフ26の池幅方向両側における、砂沈降槽2の底面は、砂沈降槽2の側壁からトラフ26に近づくにつれて下方に向かうように傾斜した傾斜面で構成されている。そして、その傾斜面は最下部でトラフ26に接続している。砂沈降槽2に流れ込んだ汚水に混入している砂は、砂沈降槽2の底部に向かって沈降し、一部は集砂ピット25に堆積し、残りは傾斜面を滑り落ち、または直接トラフ26内(図4に示すトラフ26によって画定された溝D)に堆積する。
【0016】
スクリューコンベア式移送装置27は、スクリューコンベア271と、駆動力伝達機構272と、駆動機器273とを有する。スクリューコンベア271は、トラフ26内に設置された、周囲に螺旋形の羽根を有する中空状の軸である。スクリューコンベア271の軸方向は、トラフ26の延在方向と一致している。スクリューコンベア271の上流側端部は、集砂ピット25に少しだけ突出している。そして、その上流側端部は、不図示の軸受によって支持されている。スクリューコンベア271が回転することにより、スクリューコンベア271の周囲の羽根がトラフ26内に堆積した砂を集砂ピット25に向かって移送する。従って、図1における右側から左側に向かう方向が砂の移送方向になる。移送された砂は集砂ピット25に集積される。
【0017】
駆動力伝達機構272は、砂沈降槽2の下流側底部に設置されている。駆動力伝達機構272は、駆動機器273の駆動力をスクリューコンベア271に伝達するものである。駆動機器273は、砂沈降槽2の上部で池幅方向に掛け渡された梁8の上に設置されている。駆動機器273は、モータおよび減速機によって構成されている。駆動機器273のモータを駆動することで、減速機と駆動力伝達機構272を介してスクリューコンベア271が回転する。
【0018】
次に改修後の、エジェクタ式移送装置28を備えた沈砂池設備1について説明する。改修後の沈砂池設備1では、スクリューコンベア式移送装置27に代えてエジェクタ式移送装置28および移送用ポンプP2を設置している以外は、上述した沈砂池設備1の構成をそのまま改修後も用いるため、エジェクタ式移送装置28と移送用ポンプP2以外の構成は、これまで用いた符号を付して説明は省略することがある。また、流入渠9も既に説明した改修前のものと同一であるため説明は省略する。
【0019】
図2は、改修後の、エジェクタ式移送装置を備えた沈砂池設備を上方から見た図1と同様の平面図である。この図2には、本発明の一実施形態に相当する砂沈降槽2を有する沈砂池設備1が示されている。図2では、沈砂池設備1の底部の構造を示すため、沈砂池設備1の上部にある梁8、後述する第1接続管283の一部および第2接続管285の一部を図示省略している。また、図3は、図2に示す沈砂池設備のA-A断面図である。改修後の3つの砂沈降槽2は、第1接続管283、第2接続管285および移送用ポンプP2の有無を除いて同一の構成をしているので、図2図4を用いた説明では、主に図2における一番上にある砂沈降槽2について説明し、残る2つの砂沈降槽2の構成については説明を省略することがある。図2および図3では、図の左側から右側に向かう方向が汚水の流れ方向になり、図の右側から左側に向かう方向が砂の移送方向になる。なお、図3には、流入ゲート22が開放位置にある状態が実線で示され、流入ゲート22が閉塞位置にある状態が二点鎖線で示されている。また、流出ゲート24が開放位置にある状態が実線で示され、流出ゲート24が閉塞位置にある状態が二点鎖線で示されている。図3には、沈砂池設備1の標準的な水位を示す水面WLも示されている。この水位は、沈砂池設備1に流れ込む汚水の量によって変動する。
【0020】
図2に示すように、改修後の砂沈降槽2は、図1に示した沈砂池設備1のスクリューコンベア式移送装置27に代えてエジェクタ式移送装置28を備えている。エジェクタ式移送装置28は、空間形成部材281と、移送ノズル282と、第1接続管283と、流体供給管284と攪拌ノズル286を有する。なお、図2における一番下の砂沈降槽2は、第1接続管283に代えて第2接続管285(図5参照)を有している。空間形成部材281は、中空長尺状の部材であって、トラフ26に沿って延在している。空間形成部材281の上流側の端部は、トラフ26の上流側の端部の位置よりも少し上流側に位置している。従って、空間形成部材281は集砂ピット25内に少し突出している。空間形成部材281の下流側の端部は、トラフ26の下流側の端部の位置よりも少し上流側に位置している。空間形成部材281の延在方向の両端は開放されている。
【0021】
移送ノズル282の先端部分は、空間形成部材281によって画定された移送空間IS(図4参照)内に配置されている。移送ノズル282は、丸パイプを上下方向から扁平状につぶして形成されたものであり、その先端に池幅方向に長く上下方向には短く形成された吐出口282aが形成されている。移送ノズル282の先端部分は、空間形成部材281の開放された下流側の端部から移送空間ISに挿入されている。吐出口282aは、移送空間ISに配置されており、砂を移送する際には空間形成部材281の延在方向に向かって汚水を吐出する。すなわち、吐出口282aは、上流側にある集砂ピット25に向かって汚水を吐出する。吐出口282aから吐出する汚水は、移送用ポンプP2によって砂沈降槽2の下流側部分からくみ上げたものである。吐出口282aから吐出される汚水の吐出圧力は0.09MPaで、噴射水量は毎分1500リットルである。ただし、吐出圧力は0.05MPa以上0.3MPa以下であればよく、噴射水量は空間形成部材281の長さに応じて適宜調整すればよい。また、水の吐出流速は、8m/sec以上が好ましい。
【0022】
攪拌ノズル286は、集砂ピット25の底部における各角部近傍に合わせて4つ配置されている。4つの攪拌ノズル286はそれぞれ、池幅方向中央側に向かって汚水を吐出する。攪拌ノズル286の先端から汚水を吐出することで、集砂ピット25の内部にある砂を撹拌することができる。攪拌ノズル286から吐出する汚水も、移送用ポンプP2によって砂沈降槽2の下流側部分からくみ上げたものである。
【0023】
移送用ポンプP2は、図2における一番下にある砂沈降槽2を除く、2つの砂沈降槽2に設置されている。移送用ポンプP2は、トラフ26よりも下流側に設置されている。移送用ポンプP2は、長手方向においてトラフ26が延在している位置またはトラフ26よりも上流側に設置してもよいが、トラフ26よりも下流側に設置することで、移送用ポンプP2が吸い込む汚水に砂が混じってしまうことを抑制できる。図3に示すように、砂沈降槽2の下流端部における底部は、下流側に向かうにしたがって高くなる下流側傾斜面2aが形成され、その下流側傾斜面2aとポンプ井3の間には水平面である下流側平面2bが形成されている。移送用ポンプP2は、その下流側平面2bの上に設置されている。この移送用ポンプP2は、下流側平面2b部分に固定された不図示の支持部材によって支持されている。なお、移送用ポンプP2は、下流側傾斜面2aの上に設置してもよく、下流側傾斜面2aよりも上流側に設置してもよい。
【0024】
流体供給管284は、砂沈降槽2の下流側端部に設置されている。この流体供給管284は、沈砂池設備1よりも上部から砂沈降槽2の底部まで延び、その底部にある下端部分が移送方向下流側(沈砂池設備1の上流側)に向かって曲がった、側面視で逆L字状をした管である。流体供給管284の両端は開放されている。
【0025】
図4(a)は、図3に示すB部の詳細図である。また、図4(b)は、同図(a)におけるC-C断面図である。
【0026】
図4(a)に示すように、流体供給管284の下端部分にある先端は、空間形成部材281によって画定された移送空間ISに配置されている。この流体供給管284の先端が供給口284aになる。図4(a)および同図(b)に示すように、供給口284aと吐出口282aとは近傍に配置されている。供給口284aは、吐出口282aから吐出された汚水の流れを阻害しないように、長手方向において吐出口282aと同一の位置か、吐出口282aよりも移送方向上流側に配置することが好ましい。吐出口282aから汚水が吐出されると、吐出口282a近傍では圧力が低下した減圧状態になる。吐出口282aから汚水を吐出した直後は、流体供給管284内は沈砂池設備1の水面WL(図3参照)と同じ高さまで汚水で満たされている。しかし、その汚水は、吐出口282a近傍に生じた減圧状態によって供給口284aから引き出されてすぐに無くなり、その後は、流体供給管284の上端から吸い込まれた空気が供給口284aから供給される。供給口284aから供給された空気は、吐出口282aから吐出された汚水に同伴して移送空間ISにおける流れを形成する。この供給口284aから供給される空気は、流体の一例に相当する。すなわち、空気を供給するための動力を使用しなくても、吐出口282a近傍に生じる減圧状態を利用して供給口284aから空気を供給することができる。なお、流体供給管284の後端に流体供給ポンプを接続して空気、処理水、浄水またはファインバブル水を強制的に供給してもよい。この場合にも、上述の減圧状態を利用できるので、流体供給ポンプとして小型で安価なものを利用でき、消費電力も小さくてすむ。なお、ファインバブル水とは、100μm以下の微細気泡を含有した微細気泡含有液である。ファインバブル水は、直径が1μmよりも大きく100μm以下の気泡であるマイクロバブルを含有した汚水であってもよく、直径が1μm以下の気泡であるウルトラファインバブルを含有した汚水であってもよい。さらに、ファインバブル水は、マイクロバブルとウルトラファインバブルの両方を含有した汚水であってもよい。
【0027】
図4(b)に示すように、トラフ26は、3/4円弧の断面形状をしている。このトラフ26は、ステンレス製の板材を曲げ加工することによって形成されたものである。ただし、トラフ26は、他の材質の板材を加工したものであってもよく、射出成形や押出成形して作製したものであってもよく、コンクリートで形成されたものであってもよい。また、トラフ26の断面形状は円弧状に限られず、U字状やV字状等であってもよい。さらに、改修前にU字状やV字状等をしていたものの内部に円弧状のトラフ26を埋め込んで、改修前のトラフ26と改修後のトラフ26の隙間にコンクリートを打設してもよい。この実施形態におけるトラフ26は、内径300mmの円筒体の上方(水面WL側)1/4を切り欠いた形状のものであり、上方に向かって開口している。トラフ26によって画定された溝Dのうち、上端の開口につながる上側部分は、開口に近づくほど狭くなっている。
【0028】
空間形成部材281は、下端部分に吸込口281aを有する5/6円の断面形状をしている。この空間形成部材281は、板厚3mmのステンレス製の板材を、内径150mmの円弧状に成形したものである。吸込口281aの幅は約80mmである。この吸込口281aは、空間形成部材281の全長に渡って設けられている。また、この吸込口281aは、トラフ26の底面26aに対向して配置されており、溝Dに堆積した砂を吸い込む吸込口として機能する。空間形成部材281によって画定された移送空間ISは、砂を集砂ピット25(図2参照)に向かって移送する空間である。空間形成部材281は、上側部分が閉塞しているので、移送空間ISは、上端部分が閉塞した空間である。また、空間形成部材281は、上側部分が円弧状の断面をしているので、沈砂池設備1内を空間形成部材281の上側部分に向かって沈降してきた砂は、空間形成部材281の上側部分の外表面を滑り落ちやすい。滑り落ちた砂は、溝Dの下方に堆積する。また、移送空間ISは、下方の吸込口281aに向かうにつれて幅方向が狭くなっている。これにより、移送空間ISに吸い込まれた砂が移送空間ISから外に漏れ出にくい。また、移送空間ISにおける水の流れを維持しやすくなり、砂を遠くまで移動させることができる。
【0029】
上述したように、吐出口282aから汚水を吐出すると、空間形成部材281の内(移送空間IS)と外とで圧力差が生じ、溝Dに堆積した砂は、図4(b)に示す曲線の矢印のように、吸込口281aから移送空間ISに吸い込まれる。さらに、その移送空間ISでは、吸い込まれた砂が、吐出口282aから吐出された水の流れによって集砂ピット25側に向かって移動する。つまり、空間形成部材281は、移送空間ISに吸い込まれた砂が、移送方向下流側に向かって移動する移送経路として機能する。吐出口282aから吐出された汚水には供給口284aから供給された空気も同伴し、移送空間ISで汚水と空気と砂が混ざり合う。これらが混ざり合うことで、移送空間ISで砂を洗浄しながら移送することができる。
【0030】
図5は、移送用ポンプと移送ノズルと攪拌ノズルを結ぶ接続管を示す概略配管図である。
【0031】
第1接続管283は、移送用ポンプP2と、移送用ポンプP2が設置された砂沈降槽2に配置された移送ノズル282および攪拌ノズル286とを繋いでいる。また、第2接続管285は、移送用ポンプP2と、移送用ポンプP2が設置されていない砂沈降槽2に配置された移送ノズル282および攪拌ノズル286とを第1接続管283を介して繋いでいる。図5において、第2接続管285は、二点鎖線で囲まれて示されている。なお、図5では、第1接続管283および第2接続管285を簡略化して1本の線で示している。移送用ポンプP2は、吸い上げた砂沈降槽2の汚水を選択的に移送ノズル282および攪拌ノズル286に供給する。移送用ポンプP2で吸い上げられた汚水は、第1接続管283に設けられた逆止弁2835を通して送り出される。この逆止弁2835は、移送用ポンプP2側に汚水が逆流してしまうことを防止するためのものである。第1接続管283における逆止弁2835と各移送ノズル282との間には、移送水仕切弁2831と移送水量調整弁2832が設けられている。この第1接続管283に設けられた移送水仕切弁2831が第1開閉弁の一例に相当する。また、第2接続管285にも、移送水仕切弁2831と移送水量調整弁2832が設けられている。この第2接続管285に設けられた移送水仕切弁2831が第2開閉弁の一例に相当する。移送水仕切弁2831は、移送ノズル282への汚水を供給するか否かを切り替えるためのものである。本実施形態の移送水仕切弁2831は電動弁で構成されているが、手動弁で構成してもよい。移送水量調整弁2832は、移送水仕切弁2831が開放されたときに移送ノズル282へ供給される汚水の供給量を設定するためのものである。第1接続管283における逆止弁2835と各攪拌ノズル286との間には、攪拌水仕切弁2833と、攪拌水量調整弁2834が設けられている。また、第2接続管285にも、攪拌水仕切弁2833と、攪拌水量調整弁2834が設けられている。攪拌水仕切弁2833は、各砂沈降槽2の集砂ピット25に4つずつ設けられた攪拌ノズル286への汚水を供給するか否かを切り替えるためのものである。本実施形態の攪拌水仕切弁2833は電動弁で構成されているが、手動弁で構成してもよい。攪拌水量調整弁2834は、攪拌水仕切弁2833が開放されたときに攪拌ノズル286へ供給される汚水の供給量を設定するためのものである。
【0032】
図6は、改修の流れを示すフローチャートである。
【0033】
図1に示したスクリューコンベア式移送装置27を備えた沈砂池設備1を、図2図5に示したエジェクタ式移送装置28を備えた沈砂池設備1へ改修する流れの一例を図1図2および図5等を参照して説明する。改修作業においては、まず、砂沈降槽2の1つに設けられた流入ゲート22と流出ゲート24を閉塞位置に移動させて流入口21aと流出口23aを閉塞し、砂沈降槽2への汚水の流入を堰き止める(ステップS1)。このステップS1は、堰止工程の一例に相当する。次に、汚水の流入が堰き止められた砂沈降槽2に設置された揚砂ポンプP1を駆動して、砂沈降槽2内の汚水を排水して砂沈降槽2の水位を低下させてから、揚砂ポンプP1を停止する(ステップS2)。このステップS2は、水位低下工程の一例に相当する。なお、砂沈降槽2内の汚水を全て排水することが望ましいが、汚水の一部を残して排水してもよい。すなわち、移送用ポンプP2とエジェクタ式移送装置28の設置が可能な程度に砂沈降槽2の水位を低下させればよい。
【0034】
そして、水位が低下した砂沈降槽2に設置されているスクリューコンベア式移送装置27の撤去作業を行う。すなわち、スクリューコンベア271と、駆動力伝達機構272と、駆動機器273を、水位が低下した砂沈降槽2から取り除く(ステップS3)。その後、スクリューコンベア式移送装置27を取り除いた砂沈降槽2に、図2~5に示したエジェクタ式移送装置28の設置作業を行う。この設置作業では、先ず移送用ポンプP2を所定位置に保持するための保持部材を砂沈降槽2の底面または壁に固定する。そして、移送用ポンプP2をその保持部材を用いて設置する(ステップS4)。このステップS4は、ポンプ設置工程の一例に相当する。また、空間形成部材281を溝Dに設置して不図示の固定部材により固定する(ステップS5)。このステップS5は、空間形成部材設置工程の一例に相当する。次いで、その先端に移送ノズル282と攪拌ノズル286が取り付けられた第1接続管283を設置する(ステップS6)。これにより、移送ノズル282および攪拌ノズル286が第1接続管283で移送用ポンプP2に接続される。このステップS6は、第1接続管設置工程の一例に相当する。最後に、流体供給管284を設置する(ステップS7)。このステップS7は、供給口設置工程の一例に相当する。これらの一連の作業が完了したら、閉塞位置にある流入ゲート22と流出ゲート24を開放位置に移動させて流入口21aと流出口23aを開放する(ステップS8)。
【0035】
1つ目の砂沈降槽2の改修が完了したら、2つ目の砂沈降槽2の改修を開始する(ステップS9でNO)。2つ目の砂沈降槽2の改修は、1つ目の砂沈降槽2の改修とほぼ同一である。ただし、2つ目の砂沈降槽2の改修における第1接続管283の設置の際に、1つ目の砂沈降槽2の改修において設置した第1接続管283と2つ目の砂沈降槽2において設置する第1接続管283とを接続させる点が異なる。
【0036】
2つ目の砂沈降槽2の改修が完了したら、3つ目の砂沈降槽2の改修を開始する(ステップS9でYES)。3つ目の砂沈降槽2の改修においては、移送用ポンプP2を設置しないことと、第1接続管283の代わりに、第2接続管285を設置する点が、1つ目および2つ目の砂沈降槽2の改修と異なる。まず、流入ゲート22と流出ゲート24を閉塞位置に移動させて砂沈降槽2への汚水の流入を堰き止める(ステップS11)。このステップS11は、堰止工程の一例に相当する。次に、汚水の流入が堰き止められた砂沈降槽2に設置された揚砂ポンプP1を駆動して、砂沈降槽2の水位を低下させてから、揚砂ポンプP1を停止する(ステップS12)。このステップS12は、水位低下工程の一例に相当する。次に、水位が低下した砂沈降槽2に設置されているスクリューコンベア式移送装置27の撤去作業を行う(ステップS13)。その後、空間形成部材281を固定する(ステップS14)。このステップS14は、空間形成部材設置工程の一例に相当する。次いで、先端に移送ノズル282と攪拌ノズル286が取り付けられた第2接続管285を設置して第1接続管283と接続する(ステップS15)。これにより、3つ目の砂沈降槽2に設置された移送ノズル282および攪拌ノズル286が第2接続管285と第1接続管283を介して移送用ポンプP2に接続される。このステップS15は、第2接続管設置工程の一例に相当する。最後に、流体供給管284を設置する(ステップS16)。このステップS16は、供給口設置工程の一例に相当する。3つ目の砂沈降槽2に対する作業が完了したら、閉塞位置にある流入ゲート22と流出ゲート24を開放位置に移動させる(ステップS17)。以上で改修作業が完了する。なお、ステップS4の移送用ポンプP2の設置、ステップS5の空間形成部材281の設置、ステップS6の第1接続管283、ステップS7の流体供給管284の設置は、順番を入れ替えても構わない。同様に、ステップS14の空間形成部材281の設置、ステップS15の第1接続管283、ステップS16の流体供給管284の設置も順番を入れ替えても構わない。
【0037】
以上説明した沈砂池設備1の改修方法によれば、既存の沈砂池設備1に備えられている流入ゲート22と流出ゲート24と揚砂ポンプP1を用いて水位を低下させた砂沈降槽2にエジェクタ式移送装置28と移送用ポンプP2を設置するので、容易に改修作業を実施できる。従って、安価に改修することができる。なお、流出ゲート24が設けられていない既存の沈砂池設備1も存在する。しかし、その様な既存の沈砂池設備1には、砂沈降槽2とポンプ井3の間に、砂沈降槽2とポンプ井3の間を仕切る仕切板を差し込むための構造など汚水の流出を堰き止めるための堰止構造が設けられている。従って、その堰止構造を流出ゲート24の代わりに利用すればよい。また、上述したように砂沈降槽2は、容易に水位を低下させることができるので、砂沈降槽2に設置した揚砂ポンプP1はポンプ井3に設置したものより保守作業が容易になり、沈砂池設備1の維持管理費も安価になる。さらに、本実施形態の沈砂池設備1は、3つの砂沈降槽2のうち2つに移送用ポンプP2を設置し、残る1つの砂沈降槽2は、移送用ポンプP2を設置しないで、移送用ポンプP2を設置した砂沈降槽2から移送用の汚水を得て吐出口282aや供給口284aから吐出させている。これにより、移送用ポンプP2が砂沈降槽2の数よりも少なくてすむので、より沈砂池設備1を安価に構成できる。また、本実施形態では、2つの移送用ポンプP2それぞれが吸い上げた汚水を、3つの砂沈降槽2に配置された吐出口282aや供給口284a全てに送り出せるように構成している。これにより、移送用ポンプP2の1つが保守作業や故障等で使用不能になっていても、残る移送用ポンプP2によって、全ての吐出口282aや供給口284aに汚水を供給することができる。
【0038】
本発明は上述の実施形態に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形を行うことが出来る。例えば、本実施形態では、3つの砂沈降槽2を有する沈砂池設備1を用いて説明したが、砂沈降槽2は2つであってもよく、4つ以上であってもよい。4つ以上の砂沈降槽2がある場合は、そのうちの2つに移送用ポンプP2を設置し、残る砂沈降槽2には移送用ポンプP2を設置しないで第2接続管285を設置すればよい。また、本実施形態では3つの砂沈降槽2のうち1つは移送用ポンプP2を設置していないが、全ての砂沈降槽2に移送用ポンプP2を設置してもよい。そのように設置した場合、第2接続管は不要になるが、各砂沈降槽2の第1接続管どうしを接続しておくことが望ましい。接続しておくことで、移送用ポンプP2のうち1つが使用できないときに、他の移送用ポンプP2を用いて吐出口282aや供給口284aに汚水を供給することができる。また、複数の砂沈降槽2のうち1つのみ移送用ポンプP2を設置し、その移送用ポンプP2から他の砂沈降槽2に汚水を供給するように構成してもよい。加えて、攪拌ノズル286は省略してもよい。さらに、本実施形態では、スクリューコンベア式移送装置27に代えてエジェクタ式移送装置28および移送用ポンプP2を設置している以外は既存の沈砂池設備1の構成をそのまま用いたが、改修時に砂沈降槽2の底面やトラフの形状等を調整する形状調整工程を設けてもよい。また、ポンプ井3の中に移送用ポンプP2を設置する作業を回避する別の手段として、沈砂池設備1よりも後流にある沈殿池など、汚水処理施設に設けられた沈砂池設備1以外の設備に移送用ポンプP2を設置し、その設備に貯留された液体を吐出口282aに供給してもよい。さらに、汚水処理施設の外の水源から吐出口282aに液体を供給してもよい。
【0039】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、従来の問題点を含めて、以下にまとめて記す。
【0040】
機械式移送装置からエジェクタ式移送装置に改修するためには、吐出口から吐出する液体を供給するための移送用ポンプの設置が必要になる。このポンプ支持する支持部材を共用槽の底面などに固定して移送用ポンプを設置する作業を液体中で実施することは困難であるため、沈砂池設備を改修する際には共用槽を一旦空にしてから移送用ポンプを設置することが考えられる。しかしながら、共用槽を空にすると、沈砂池設備で処理された液体を共用槽から沈殿池に送り出せなくなるので、沈砂池設備全体の機能が停止してしまい、ひいては汚水処理施設の機能が停止してしまう。このため、共用槽を空にすることは実質的に困難である。この対応として、共用槽内の一部を防水壁で囲うことで、移送用ポンプを設置するスペースを作成し、そのスペースの液体を排水してから移送用ポンプを設置することが考えられる。しかしながら、液体が侵入しないように共用槽の中に防水壁を立てて防水壁内の液体を排水する作業は非常に煩雑で改修作業が高価になってしまうという問題がある。
【0041】
そこで、安価に改修可能な沈砂池設備の改修方法および安価な沈砂池設備が望まれている。
【0042】
以上説明した沈砂池設備の改修方法は、
液体の流れ方向に対して並列に複数設けられ液体に混入している砂が底部に沈降する砂沈降槽と、複数の該砂沈降槽が接続され該砂沈降槽を通過した液体が流入する共用槽と、該砂沈降槽に設けられ該底部に沈降した砂が集積される集積部と、該底部において該集積部に向けて延在し、上方に向かって開口したトラフと、該トラフに沿って設けられ、上端部分が閉塞した空間を形成し、該上端部分より下方に該トラフの底面に対向した吸込口が設けられた空間形成部材と、液体を吐出して該空間に該集積部に向かう流れを形成する吐出口とを有する沈砂池設備に既設の沈砂池設備を改修する沈砂池設備の改修方法において、
複数の前記砂沈降槽のうちの1つに対する液体の流入を堰き止める堰止工程と、
前記堰止工程によって堰き止められた前記砂沈降槽内の液体を排水して該砂沈降槽内の水位を低下させる水位低下工程と、
前記水位低下工程によって水位が低下した前記砂沈降槽に、該砂沈降槽の液体を吸い込んで前記吐出口に供給するためのポンプを設置するポンプ設置工程とを有することを特徴とする。
【0043】
前記砂沈降槽に一般的に設けられている液体の流入を堰き止めるための構造を利用することで、該砂沈降槽は、容易に該砂沈降槽内の液体の水位を低下させることができる。このため、前記砂沈降槽に前記ポンプを設置することで、前記共用槽に該ポンプを設置することと比較して沈砂池設備を安価に改修できる。
【0044】
ここで、前記堰止工程は、前記砂沈降槽への液体の流入口および前記砂沈降槽から前記共通槽に繋がる液体の流出口を塞ぐ工程であってよい。また、前記堰止工程は、流入ゲートと流出ゲートで閉塞する工程であってもよい。さらに、前記堰止工程は、前記流入ゲートを閉塞し、前記砂沈降槽と前記共用槽の間を仕切る仕切板を配置する工程であってもよい。また、前記ポンプ設置工程は、該ポンプを所定位置に保持するための該ポンプの保持部材を前記砂沈降槽を構成する構造体に固定する保持部材設置工程を含んでいてもよい。なお、水位低下工程は、前記ポンプの設置位置に応じて前記ポンプ設置工程が可能な程度に水位を低下させる工程であればよい。また、前記水位低下工程によって水位が低下した前記砂沈降槽に、前記空間形成部材を設置する空間形成部材設置工程を有していてもよい。さらに、前記トラフを形成するトラフ形成工程を有していてもよい。また、前記水位低下工程は、前記集積部に集積された砂を液体とともに前記砂沈降槽の外へ排出するための揚砂ポンプを利用して該砂沈降槽内の液体を排水する工程であってもよい。
【0045】
この沈砂池設備の改修方法において、
前記ポンプ設置工程は、複数の前記砂沈降槽のうちの少なくとも1つを残して2つ以上の砂沈降槽に対して実施される工程であり、
前記ポンプ設置工程によって設置された前記ポンプと該ポンプが設置された前記砂沈降槽に配置された前記吐出口とを繋ぐ、第1開閉弁が設けられた第1接続管を設置する第1接続管設置工程と、
前記ポンプ設置工程によって設置された前記ポンプと該ポンプが設置されていない前記砂沈降槽に配置された前記吐出口とを繋ぐ、第2開閉弁が設けられた第2接続管を設置する第2接続管設置工程とを有していてもよい。
【0046】
こうすることで、前記ポンプが設置されていない前記砂沈降槽に配置された吐出口からも液体を吐出できるので、該ポンプの設置台数を削減でき、この沈砂池設備をより安価に改修できる。また、前記ポンプが設置された前記砂沈降槽の保守作業等をする際に該砂沈降槽内の水位を低下させて該ポンプを大気中に露出させる場合がある。その場合でも、前記ポンプが設置された前記砂沈降槽が少なくとも2つあるので、水位を低下させていない該砂沈降槽から液体を供給することで、水位を低下させている以外の該砂沈降槽に設置された前記吐出口から液体を吐出できる。
【0047】
また、この沈砂池設備の改修方法において、
前記吐出口近傍に、前記ポンプによって吸い込まれた液体とは異なる流体を供給する供給口を設置する供給口設置工程を有していてもよい。
【0048】
前記吐出口から液体が吐出されると、その近傍にエジェクタ効果が生じて前記供給口から流体を引き出す作用が生じる。引き出された流体は、前記吐出口から吐出された液体に同伴してその液体とともに前記空間における流れを形成する。従って、前記供給口設置工程によって設置した前記供給口から、動力なしで、または小さな動力で流体を供給することができる。
【0049】
ここで、前記供給口設置工程は、前記流体として気体を供給する供給口を設置する工程であってもよく、該流体としてファインバブル水を供給する供給口を設置する工程であってもよい。また、前記供給口設置工程は、前記吐出口から吐出される液体によって生じるエジェクタ効果のみで前記流体を供給する供給口を設置する工程であってもよい。
【0050】
また、以上説明した沈砂池設備は、
液体の流れ方向に対して並列に複数設けられ液体に混入している砂が底部に沈降する砂沈降槽と、複数の該砂沈降槽が接続され該砂沈降槽を通過した液体が流入する共用槽とを有する沈砂池設備において、
前記砂沈降槽に設けられ前記底部に沈降した砂が集積される集積部と、
前記底部において前記集積部に向けて延在し、上方に向かって開口したトラフと、
前記トラフに沿って設けられ、上端部分が閉塞した空間を形成し、該上端部分より下方に該トラフの底面に対向した吸込口が設けられた空間形成部材と、
前記砂沈降槽に設置されたポンプと、
前記ポンプによって吸い込まれた液体を吐出して前記空間に前記集積部に向かう流れを形成する吐出口とを備えていることを特徴とする。
【0051】
前記ポンプを容易に設置することができるので、この沈砂池設備を安価に構成できる。また、前記砂沈降槽は、容易に水位を低下させることができるので、前記ポンプの保守作業も容易になり、この沈砂池設備の維持管理費が安価になる。
【0052】
この沈砂池設備において、
前記ポンプは、複数の前記砂沈降槽のうち少なくとも1つを残して2つ以上の砂沈降槽に設けられ、
前記ポンプが設置された前記砂沈降槽に配置された前記吐出口と該ポンプとを繋ぐ、第1開閉弁が設けられた第1接続管と、
前記ポンプが設置されていない前記砂沈降槽に配置された前記吐出口と該ポンプとを繋ぐ、第2開閉弁が設けられた第2接続管とを備えた態様であってもよい。
【0053】
この態様では、前記ポンプが設置されていない前記砂沈降槽に配置された吐出口からも液体を吐出できるので、該ポンプの設置台数が削減でき、この沈砂池設備をより安価に構成できる。また、前記ポンプが設置された前記砂沈降槽の保守作業等をする際に該砂沈降槽内の水位を低下させて該ポンプを大気中に露出させる場合がある。その場合でも、前記ポンプが設置された前記砂沈降槽が少なくとも2つあるので、水位を低下させていない該砂沈降槽から液体を供給することで、水位を低下させている以外の該砂沈降槽に設置された前記吐出口から液体を吐出できる。
【0054】
また、この沈砂池設備において、
前記吐出口近傍に配置され、前記ポンプによって吸い込まれた液体とは異なる流体を供給する供給口を備えていてもよい。
【0055】
前記吐出口から液体が吐出されることで該吐出口近傍が減圧されるので、前記供給口から動力なしで、または小さな動力で流体を供給することができる。
【0056】
ここで、前記供給口は、前記流体として気体を供給するものであってもよく、該流体としてファインバブル水を供給するものであってもよい。また、前記供給口は、前記吐出口から吐出される液体によって生じる減圧のみで流体を供給するものであってもよい。
【0057】
これらにより、安価に改修可能な沈砂池設備の改修方法および安価な沈砂池設備を提供することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 沈砂池設備
2 砂沈降槽
3 ポンプ井(共用槽)
25 集砂ピット(集積部)
26 トラフ
281 空間形成部材
282a 吐出口
P2 移送用ポンプ(ポンプ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6