(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010707
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】混雑状況計測システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20240118BHJP
【FI】
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112139
(22)【出願日】2022-07-13
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVASCRIPT
(71)【出願人】
【識別番号】399054321
【氏名又は名称】東洋アルミニウム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】南山 偉明
(72)【発明者】
【氏名】中尾 凌
(72)【発明者】
【氏名】東 清久
(72)【発明者】
【氏名】矢野 あかり
(72)【発明者】
【氏名】上松 正和
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC12
(57)【要約】
【課題】大掛かりな配線工事も不要で且つ精度の高い混雑状況計測システムを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の混雑状況計測システムは、加重によって発電する発電素子を備える複数の発電部と、前記発電部から生じた電圧を電源として信号を送信する送信手段と、前記送信手段から信号を受信して、前記信号から混雑状況を判定する情報処理手段と、前記情報処理手段による混雑状況の判定結果を表示する表示手段と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加重によって発電する発電素子を備える複数の発電部と、
前記発電部から生じた電圧を電源として信号を送信する送信手段と、
前記送信手段から信号を受信して、前記信号から混雑状況を判定する情報処理手段と、
前記情報処理手段による混雑状況の判定結果を表示する表示手段と、
を備える、混雑状況計測システム。
【請求項2】
前記発電部から生じた電圧を増幅して前記送信手段を起動する、MOS-FETとトランジスタのいずれかのスイッチング回路と、電池又はバッテリーと、を更に備えることを特徴とする、請求項1記載の混雑状況計測システム。
【請求項3】
前記発電部のそれぞれに固有識別番号が付されており、前記情報処理手段は、複数の前記発電部のうちの発電した発電部の固有情報を識別して、発電した前記発電部の位置情報を特定することを特徴とする、請求項1又は2記載の混雑状況計測システム。
【請求項4】
前記情報処理手段は、前記発電部全体のうちの、発電した前記発電部の数から、前記混雑状況の判定結果を判定することを特徴とする、請求項1又は2記載の混雑状況計測システム。
【請求項5】
前記情報処理手段は、所定時間内に発電した前記発電部の位置情報の変化から、人の数を算出することを特徴とする、請求項1又は2記載の混雑状況計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混雑状況計測システムに関し、特にセンサーを用いて人の混雑具合を計測するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
飲食店や量販店、駅や公共施設、イベント会場や観光名所、公共交通機関等では、多くの人が出入りし、場合によっては混雑することがある。例えば昼や夕方などの食事の時間帯に予約無しに飲食店を訪れたものの混雑しており、空席が生じるまで長時間待たされたり、いつまで待つかが分からずにその店舗での飲食を諦めたり、といった様な不都合が生じることがある。また電車の自由席に座ろうとしてホームで並んでいても、乗車してみるとその車輛は満席となっており、他の車輛に空きがあるのかどうか、荷物を持ったまま狭い車内を往来しなければならないことがある。また観光名所等に訪れたものの、想定外の観光客らによる混雑により十分に観光を楽しめないという状況もしばしば起こる。飲食店や公共交通機関の指定席等においては、予約システムが採用されていればそれを利用することは出来るが、地方路線をはじめとして、こうしたシステムを導入していないことも多く、また事前に予約をしていたものの利用当日になって混雑していることが分かっていれば利用したくなかったと考える利用者もいるため、単に予約出来れば解決できるものでもない。
【0003】
これに対して近年、電車の床にロードセルを設置し、床にかかる重量変化から電車内の混雑状況を計測するシステムが開発されている(例えば特許文献1)。また、車両内にカメラやセンサーを設置して混雑状況を計測するシステムも開発されている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-192940号公報
【特許文献2】特開2019-142471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、床にかかる重量によって混雑状況を推定するものであり、旅行客等の重い荷物を持った乗客によって、実際よりも混雑しているものと判断されることがある。一方で、体重の軽い女性や子供等の乗客が多いと、実際の乗客の人数に比して混雑具合が低いものと判断されることもあり、混雑状況の判断の正確性には欠けるという問題がある。また上記特許文献2の技術では、カメラを車両内に設置すると乗客がプライバシー侵害であることを意識してしまうおそれがある。また赤外線等の人感センサーを用いた場合、正確な混雑状況を判定するためには車両内に複数のセンサーを張り巡らせる必要があるが、その全てのセンサーにAC電源や電池等の外部電源や信号の配線を設置することになり、床や天井、壁の内部への配線管の埋め込みという大掛かりな改修を伴うため、既存の車輛に適用することは困難である。また、車両に限らず、飲食店や量販店、駅や公共施設、イベント会場や観光名所等においても、複数のカメラやセンサーを配置して、これらに電源や信号の配線を通すことは非常に大掛かりであり、容易に利用できるものではなかった。
そこで本発明は、大掛かりな配線工事も不要で且つ精度の高い混雑状況計測システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に鑑み、本願発明者らは、以下の発明に至った。
【0007】
すなわち本発明の混雑状況計測システムは、加重によって発電する発電素子を備える複数の発電部と、前記発電部から生じた電圧を電源として信号を送信する送信手段と、前記送信手段から信号を受信して、前記信号から混雑状況を判定する情報処理手段と、前記情報処理手段による混雑状況の判定結果を表示する表示手段と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の混雑状況計測システムが上記構成であることによって、発電部に人が乗ったり踏んで通過したりして加重を受けた際に発電部に備えられた発電素子が発電し、これにより送信手段が起動して信号が情報処理手段に送信される。さらに情報処理手段がこの信号を受信して、混雑状況を判定し、表示手段に混雑状況を表示する。発電部と送信手段とは、外部の電源を必ずしも必要としないため、外部電源の配線を設ける必要が無い。また、実際に発電部に人が載ったり踏んで通過したりすることで、発電部上に人が存在することが判定されるため、複数の発電部を配置することで、正確にその場所の人の量、すなわち混雑状況が判定される。従って、本発明の混雑状況計測システムは、大掛かりな配線工事も不要で且つ精度の高い混雑状況の計測ができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る混雑状況計測システムの一例を示す模式的な図である。
【
図2】実施形態に係る混雑状況計測システムに用いるスイッチング回路の一例を示す模式的な図である。
【
図3】実施形態に係る混雑状況計測システムの別の一例を示す模式的な図である。
【
図4】実施形態に係る混雑状況計測システムの情報処理手段が実行する処理のフローチャートの一例を示す模式的な図である。
【
図5】実施形態に係る混雑状況計測システムの情報処理手段が実行する処理のフローチャートの別の一例を示す模式的な図である。
【
図6】実施形態に係る混雑状況計測システムの情報処理手段が実行する処理のフローチャートのさらに別の一例を示す模式的な図である。
【
図7】第一の実施形態に係る混雑状況計測システムの一例を示す模式的な図である。
【
図8】第二の実施形態に係る混雑状況計測システムの一例を示す模式的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。説明の簡潔化のため、実質的に同一の機能を有する構成要素を同一の参照符号で示す。
【0011】
図1に示す様に、本発明の混雑状況計測システム1は、加重によって発電する発電素子10を備える複数の発電部20と、前記発電部20から生じた電圧を電源として信号30を送信する送信手段40と、前記送信手段40から信号30を受信して、前記信号30から混雑状況を判定する情報処理手段50と、前記情報処理手段50による混雑状況の判定結果60を表示する表示手段70と、を備える。
【0012】
前記発電部から生じた電圧を増幅して前記送信手段を起動する、MOS-FETとトランジスタのいずれかのスイッチング回路と、電池又はバッテリーと、を更に備えることが好ましい。
【0013】
前記発電部のそれぞれに固有識別番号が付されており、前記情報処理手段は、複数の前記発電部のうちの発電した発電部の固有情報を識別して、発電した前記発電部の位置情報を特定することが好ましい。
【0014】
前記情報処理手段は、前記発電部全体のうちの、発電した前記発電部の数から、前記混雑状況の判定結果を判定することが好ましい。
【0015】
前記情報処理手段は、所定時間内に発電した前記発電部の位置情報の変化から、人の数を算出することが好ましい。
【0016】
(混雑状況計測システム)
本発明において混雑状況計測システムは、発電素子10を備える複数の発電部20と、送信手段40と、情報処理手段50と、表示手段70と、を備えるものである。
【0017】
混雑状況計測システムが適用される場所に限定はされず、飲食店や量販店、駅や公共施設、イベント会場や観光名所、公共交通機関等に好適に適用される。また、混雑状況計測システムの設置方法もまた限定されず、椅子や床、階段や手すり、道路(歩道を含む)、橋等に発電部20を設置して、その場所の混雑状況を計測することができる。
【0018】
具体的には、発電部20は混雑状況の計測を所望とする場所に複数設置される。それぞれの発電部20には発電素子10が備えられており、これに人の体重の加重がかかることで発電する。従って、発電部20に備えられた発電素子10に人が乗ったり座ったりして加重がかかることで発電し、この発電部20が複数設置されていて、個々の発電部20における発電の有無により、混雑状況計測システム1が設置された場所における人の有無やその人数、人の密度(人口密度)等の混雑状況の計測が可能となる。発電部20における発電によって生じたエネルギーは、送信手段40に伝達される。送信手段40は発電部から伝達されたエネルギーを電源として起動する。送信手段40は発電部からのエネルギーを利用して、情報処理手段50に信号30を送信する。情報処理手段50は、信号30を利用して混雑状況の判定結果60を生成する。情報処理手段50は判定結果60を表示手段70に送信して、表示手段70に混雑状況の判定結果60が表示される。
【0019】
発電部20に人が乗ったり座ったりすることで発電素子10に加重がかかって発電され、これが所定量の発電に満たなければ送信手段40を起動することができないため、送信手段40が起動するということは、すなわち発電部20に人が乗ったり座ったりしたときである。送信手段40が起動するかどうかだけで、発電部20に人が乗ったり座ったりしているかどうかを精度よく判定することができる。また、子供でも大人でも、荷物を持った人でも持ってない人でも、少なくとも混雑状況の計測の対象にすべき人の体重は通常3kg以上あり、一定程度の発電が見込まれるため、誤作動や誤判定が生じにくい。
【0020】
さらに、本発明の混雑状況計測システムによれば、少なくとも発電部20から送信手段40までは外部電源を必ずしも必要としない。すなわち、無電源でも混雑状況の計測を所望とする場所に複数設置することができ、大掛かりな電源配線工事を必要とせず、電池交換等の手間もかからないというメリットがある。また、情報処理手段50や表示手段70を、送信手段40とは切り離して互いに無線で通信可能とし、情報処理手段50や表示手段70は別の電源や電池により稼働する様に構成するか、送信手段40の近傍に配置して直接有線により接続して発電部20によって生じたエネルギーを利用することで、大掛かりな信号の配線工事も不要にすることができる。
発電部20の発電が送信手段40の電源となるため、送信手段40における待機時の電力消費も生じず、混雑状況計測システムを長期間利用することができる。
【0021】
(発電部)
本発明において発電部20は、発電素子10を含む。発電素子10は加重によって発電可能である。すなわち、発電部20の発電素子10に人が乗ったり座ったりして加重がかかることで発電し、この発電のエネルギーにより送信手段40が起動する。発電素子10の種類や形状、個数は特に限定されず、セラミックスを含む圧電素子、エラストマーに帯電材料が積層された摩擦発電素子、発電ゴム等の公知で任意の発電素子を用いることができる。より好ましくは、柔軟性のある材料により構成された摩擦発電素子や発電ゴムを用いることが好ましい。こうした柔軟性のある摩擦発電素子や発電ゴムを用いることで、面積あたりの発電力が高く、且つ加重がかかっても柔軟性があるために壊れにくい発電部20となり、人が乗ったり座ったりした際により正常に送信手段40を起動させることができる。
【0022】
発電部20は発電素子10を備えていればよいが、この他にも、人が乗ったり座ったりする際に衝撃を和らげるクッション性の材料や、発電素子の上に設置されて発電素子に均等に加重を伝達するタイル、発電素子10を下から支持する台板、発電素子10を水や砂、埃、電磁波ノイズ等から保護する容器や袋、シート、発電素子10から電力を取り出す配線、発電素子10が発電したことを認識可能に表示するパイロットランプ、等を含んでいてもよい。
【0023】
発電部20の形状や設置方法は問わず、例えば椅子に設置される場合は椅子の座面や背もたれ、ヘッドレスト、ひじ掛け、足置きの少なくともいずれかに設置可能に構成されていることが好ましい。椅子の座面や背もたれ、ヘッドレストや足置きに発電部20が設置される場合は、例えば布、綿、ゴム、不織布、ビーズ等のクッション性のある材質の部材がその表面に備えられていてもよく、椅子の座面や背もたれ、ヘッドレストや足置きの内部に内蔵されていてもよい。また床や階段、道路や橋等に発電部20が設置される場合は、床や踏み板、アスファルトやコンクリート、土等の上に発電部20がそのまま敷設されていてもよいし、カーペットやタイル等の床板材の下に設置されていてもよい。また、手すりに発電部20が設置される場合は、手すりの手と接する部位に発電部20を内蔵又は表面に設置されるように構成されていることが好ましい。
【0024】
また発電部20の数も限定されず、2以上設置されていればよい。例えば椅子であれば、椅子の座面や背もたれ、ヘッドレストや足置き、ひじ掛けの中から、1又は2か所以上に発電部20を設置してもよく、より好ましくはこれらのうちの2か所以上に発電部20を設置することが好ましい。例えば椅子の座面に発電部20を設置することにより、人が座った時に発電部20に備えられた発電素子10が発電する。これにより送信手段40が起動し、送信手段40からの信号を受信した情報処理手段50が表示手段70に混雑状況の情報を表示する。一方で、隣の椅子に座った人が空いている他の椅子に重い荷物等を置き、これにより情報処理手段50は荷物が置かれた椅子に人が座っているものと誤判定するおそれがある。そこで、椅子の座面の他に背もたれ、ヘッドレストや足置き、ひじ掛け等にも発電部20を設置し、情報処理手段50は1つの椅子に対して2か所以上で発電が生じた場合に人が座っているものと判定する様に構成してもよい。
【0025】
また発電部20が床や階段、道路や橋等の構造物に設置される場合は、これらの幅員方向に対して複数の発電部20が配列されていることが好ましい。これにより、複数の人が横並びやすれ違い等縦横無尽に通行している場合に、それぞれの人が異なる発電部20に乗ることで、それぞれの人を区別して計測することができる。より好ましくは、幅員方向に配列されると共に、幅員方向と直交する方向にも複数の発電部20が配列されて、縦横に規則的又は不規則的に複数の発電部20が設置されていることが好ましい。これにより、人の数や密度、進行方向まで計測することができる。
【0026】
より詳細には、発電部20の配列の方法としては、一列に配列されていても、平面上に縦横ランダムに配列されていても、縦横にマトリックス状(格子状や碁盤目状)やハニカム形状に複数の発電素子が配列されていてもよい。好適には、発電部20が縦横にマトリックス状に配列されていることが好ましく、これにより人が乗ったり座ったりする際に、少なくとも複数配列された発電素子のうちのいずれかの発電素子の上に載る確率が高くなるため、より確実に混雑状況を計測することができる。
【0027】
また、発電部20において発電素子10はそのままむき出しであってもよいが、一つの発電素子ごとにプレートやタイル等の公知の床板部材をその表面に備えてもよい。例えば
図1では、それぞれの発電部20はタイル様の床板部材を備え、その裏面には1つの発電部20毎に1つの発電素子10を備える例を示している。また、1つの発電部20につき発電素子10を1つ備える他、上述の様な床板部材を備える場合には、1つの床板部材につき複数の発電素子10を備えてもよい。1つあたりの発電素子10が大きい場合には発電素子10間を詰めてそのまま配列し、1つあたりの発電素子10が小さい場合にはそれぞれの発電素子10に床板部材を載せ、これら床板部材間を詰めて配列することで、発電素子10の上に人が乗ったり座ったりする確率を高めることができる。また、発電素子10を上から覆う様にゴムやシリコン等の任意の可撓性のシートを載せてもよい。この場合、発電素子10がむき出しに配列された場合と同様のものとして、以降の説明では取り扱うものとする。
【0028】
発電部20が、発電素子10がむき出しに配置されている場合の1つの発電部20の大きさ、又は発電素子10に床板部材を載せた場合の1つの床板部材の大きさは限定されないが、3cm2以上9000cm2以下であることが好ましい。1つの発電素子10の大きさが3cm2未満であると、多くの発電部20を配列しなければ、混雑状況を計測することができなくなり、非常に精密な構造を採る必要が生じ、人の体重がかかるときの強度が担保されないおそれがある。また、1つの発電部20の大きさが9000cm2を超えると、1つの発電部20に複数の人が同時に乗ったり座ったりする可能性が高まり、正確に混雑状況を計測することができないおそれがある。より好ましくは、100cm2以上3600cm2以下であることが好ましい。
【0029】
また、発電部20に乗ったり座ったりしている人が移動しているか否かに関する情報を収集する場合には、複数の発電部20を縦横にマトリックス状又はハニカム形状に配列させることが好ましい。複数の発電部20を縦横にマトリックス状又はハニカム形状に配列することで、発電部20に乗ったり座ったりする人が移動していることを検知することができる。また、縦横に配列される発電部20の数が増えるほど、発電部20に乗ったり座ったりしている人の数だけでなく、これらの人の移動方向や移動速度などの情報を推定することが可能となり、また自転車やカート、台車等が通った時のノイズと歩行者の通行量とを区別することが可能となる。
【0030】
また発電部20が、発電素子10そのものの形状により構成されている場合の発電素子10の形状や、発電素子10に床板部材を載せられて発電部20を構成されている場合の床板部材の形状は特に限定されないが、平面視野における形状が、略正方形、略六角形、及び略円形のいずれかであることが好ましい。なお、ここでいう略正方形とは、全ての辺の長さが同一でそれぞれの内角も90度である正方形の他、正方形の四隅の角がR状に欠けたものであっても、それぞれの辺に曲線を組み合わせたものであってもよい。略六角形とは、正六角形のほか、六角形の角をR状にしたものも含まれる。またここでいう略円形とは、真円であっても楕円であっても円の一部に直線を組み合わせたものであってもよい。
【0031】
また好ましくは、発電部20間の隙間を詰めるようにして配列すると、足の小さい子供や、犬、猫等の動物の数の計測にも適用可能である。発電部20を隙間なく並べる形状であれば、形状は特に限定されないが、格子状やハニカム形状を好適に採用することができる。
【0032】
また、発電部20の配列数も限定されないが、発電部20が詰められて敷設された状態で、例えば発電部20が平面上に1m2あたり4個以上400個以下であることが好ましい。例えば発電部20に床板部材を備える場合の1つあたりの当該床板部材の大きさが2500cm2程度であれば1m2あたり最大4個、例えば25cm2程度であれば1m2あたり最大400個となる。また、発電部20に床板部材を用いずに配列する場合は、使用する発電素子10の種類によっては1m2あたり400個以上を配列することはできるが、これ以上の分解能を付与しても人が乗ったり座ったりした際の検知には精度面でも過剰であり、故障や製造不良のリスクも生じることから上記範囲内とすることが好ましい。こうした発電部20の数(密度)は、計測精度を高める場合には小さな発電部20多く設置し、精度が低くてもよい場合であって構造をシンプルにしたい場合には発電部20を少なく設置することができる。
【0033】
また、1つの発電部20において、複数の発電素子10が平面上に配列されていてもよいし、複数の発電素子10が高さ方向に積層されていてもよい。すなわち、2以上の発電素子が配列又は積み重ねられて1つの発電素子の様に構成されていてもよい。この場合、積層された発電素子10を電気的に並列に接続することで、より安定して高い発電力を得ることができる。すなわち、後述する送信手段を安定して起動することができる。1つの発電部20において発電素子10を積層する場合の発電素子10の数は特に限定されないが、例えば2以上10以下とすることが好ましく、2以上4以下であることがより好ましい。送信手段の起動電力に応じて適宜設定することができる。
【0034】
さらに、発電部20の発電量に対して送信手段40の起動に必要な電力が足りない場合には、MOS-FETやトランジスタ等のスイッチング回路と、発電部20とは別の電池等の電源と、を組み合わせた、電源の増幅回路を備えてもよい。例えば、送信手段40の起動に必要な電圧が3Vであり、発電部20の一つあたりの発電時の最大の電圧が1Vである場合、このままでは送信手段40が起動できない。そこで、
図2に例示するように、MOS-FETやトランジスタ等のスイッチング回路に3V以上の電池と発電部20、送信手段の電源入力部を接続することで、発電部20が発電したときの電圧を増幅することができる。具体的には、
図2ではn型のMOS-FETを用いており、MOS-FETのゲート(G)に発電部20のプラス極を接続し、MOS-FETのドレイン(D)に送信手段40の電源のマイナス極を接続し、送信手段40の電源のプラス極に電池を接続し、電池のマイナス極、MOS-FETのソース(S)、発電部20のマイナス極は、共通のグランドに接続する。これにより、発電部20における発電が生じていない状態ではMOS-FETのゲートに電圧が印加されていないのでスイッチング回路は閉じて送信手段40に電池の電圧が印加されないために起動せず、発電部20における発電が生じた状態ではMOS-FETのゲートに電圧が印加されてスイッチング回路が開いて送信手段40に3V以上の電圧が印加されて送信手段40が起動する。スイッチング回路が閉じている間は送信手段40が起動せず、電池の消耗が極めて低く抑えられるため、必要な起動電圧が高い送信手段40を用いたとしても、大掛かりな電源の配線も、頻繁に電池交換することも不要となる。なお、MOS-FETに代えてトランジスタを用いる場合も同様に、発電部20によって発電が生じたときにスイッチング回路が開くため、起動電圧が高い送信手段40を用いたとしても、大掛かりな電源の配線も、頻繁に電池交換することも不要となる。
【0035】
また、発電部20と送信手段40との間には、コンデンサやキャパシタ等の充電部を備えてもよい。発電部20に使用される発電素子の種類によっては、瞬間的に高い電圧が発生して直後に低下するものもあれば、緩やかな電圧上昇と低下を伴うものもあり、送信手段40の起動が安定しない可能性がある。そこで、発電部20と送信手段40との間に充電部を備えることで、発電部20からの発電エネルギーを一旦充電部で蓄え、一定のエネルギーが貯まってから送信手段40にそのエネルギーを供給して起動することができる。また、発電部20と送信手段40との間にはノイズを除去することを目的としてバイパスコンデンサを備えてもよい。
【0036】
さらに、発電部20と送信手段40との間には、ダイオードを備えてもよい。発電部20に使用される発電素子によっては、交流発電となることがあり、この場合は直流に変換する必要がある。そこで、発電部20と送信手段40との間にダイオードを用いることで、整流することができる。さらに、ダイオードとして発光ダイオードを用いてもよい。これにより、発電部20から発電されたエネルギーが流れて発光ダイオードが発光し、正常に動作しているか否か、また暗い場所でも人が発電部20に乗ったり座ったりしたことを容易に確認することができる。
【0037】
(送信手段)
本発明において送信手段40は、発電部20が発電したエネルギーを電源として起動して、情報処理手段50に信号を送信するものである。
【0038】
すなわち、発電部20に人が乗ったり座ったりしていることが起因して情報処理手段50に送信手段40から信号が届くため、送信手段40の起動の有無により、発電部20に人が乗ったり座ったりしていることが特定される。
【0039】
送信手段40は、情報処理手段50に送信する信号は無線によっても有線によってもいずれでもよいが、好ましくは無線により信号を送信可能とすることが好ましい。送信手段40による信号の送信方法が無線であると、混雑状況計測システムにおける配線を低減することができるため好ましい。
【0040】
送信手段40の種類は特に限定されず、複数のダイオードやトランジスタを組み合わせた論理回路、有線又は無線の通信機能を有するマイコンや、無線の通信機能を備える無線通信モジュールを好適に用いることができる他、可視光や赤外線等のライトによる送信機、スピーカーや音響カプラ等の音を出力するモジュール等を用いることもできる。送信手段40としてマイコンを用いる場合は、マイコンの電源に発電部20を接続して発電部20が発電したときのエネルギーにより起動可能とし、当該マイコンの出力ピンから有線で情報処理手段50に信号を送信可能としてもよいし、マイコンに無線通信機能を備える場合には無線通信により情報処理手段50に信号を送信可能としてもよい。また送信手段40として無線通信モジュールを用いる場合は、無線通信モジュールの電源に発電部20に接続して発電部20が発電したときのエネルギーにより起動可能とし、無線通信モジュールの無線通信機能により情報処理手段50に信号を送信可能としてもよい。
【0041】
送信手段40を、有線又は無線の通信機能を有するマイコンや、無線の通信機能を備える無線通信モジュールとする場合、送信手段40によって送信される信号は、送信手段40が起動したことを示すだけの信号であってもよいが、送信手段40に予め設定された情報を送信可能に構成されていてもよい。例えば、送信手段40には、個体を識別する情報としての個体識別番号や、複数の発電部が配列されたときの配列における個々発電部20の位置が特定されたアドレス情報などを予め記憶させておき、送信手段40が起動したときにこれらの情報を含む信号を情報処理手段50に送信してもよい。また、無線通信による通信により信号を送信する場合には、通信方式にも特に限定されないが、TCP/IP通信(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)によって情報処理手段50と相互通信を行ってもよいが、UDP通信(User Datagram Protocol)によって、且つ個体の識別番号の情報と配列における個々の発電素子の位置が特定されたアドレス情報とをJavaScript Object Notation(JSON)の形式により送信することが、僅かな発電量でも高速で通信できるため好ましい。例えば識別番号の情報として0から255の10進数の正の整数を2進数化した値、カンマ(,)、配列における個々の発電素子の位置が特定されたアドレス情報として0から255の10進数の正の整数を2進数化した値と、をまとめてJSON形式とすると、“0,0”、“0,1”、・・・、“0,255”、“1,0”、“1,1”、…、“1,255”、……“255,255”のいずれの組み合わせでも、3バイトに収まるため、通信時間が短時間で済む。また、配列数を256以上とする場合には、例えばアドレス情報として0~65535の10進数を2進数化した値としても1バイト増えるのみで済む。この他、後述する様な電圧に関連する情報等を組み合わせても、10バイト以下の非常に小さなデータ通信量で済むため、発電部だけで送信手段40の電源を賄うことができる。
【0042】
また送信手段40は、電圧の値を読み取ってこの値を信号として送信可能に構成されていてもよい。すなわち、送信手段には演算処理装置を備え、この演算処理装置にアナログデジタルコンバーター(ADC)が備わっていることで、発電部20で生じた電圧の値を読み取ることができる。この電圧の値を送信手段40が信号として送信することで、発電部20でどれだけの発電が生じたのかが算出可能となり、この情報から発電部20に乗ったり座ったりしている人の体重、すなわち子供であるか大人であるか、といった情報を収集することができる。この場合、送信手段40を駆動するために発電部20とは別の電源を備えていることが好ましく、例えば公知の乾電池やボタン電池を採用することができる。
【0043】
送信手段40として可視光や赤外線等のライトによる送信機を用いる場合には、発電部20による発電のエネルギーを利用して、ライトを点灯し、情報処理手段50には受光器やカメラ等を接続して、当該ライトの点灯の有無を検知可能に構成されていてもよい。特にプライバシー保護の観点から、カメラよりも受光器を用いて送信手段40としてのライトの点灯を検知可能に構成されていることが好ましい。また、複数の発電部20を設置するに際して、それぞれの発電部20に応じて、異なる色調のライトが点灯可能に構成されていてもよい。これにより、ライトの点灯により人が乗ったり座ったりしたことが計測可能であると共に、複数の発電部のうちのどの発電部が反応したかまで計測することができる。
【0044】
また、送信手段40としてスピーカーや音響カプラ等の音を出力するモジュールを用いる場合には、発電部20による発電のエネルギーを利用して、スピーカーや音を出力するモジュールから音を出力し、情報処理手段50にはマイクを接続して、当該音の出力の有無を検知可能に構成されていてもよい。また、複数の発電部20を設置するに際して、それぞれの発電部20に応じて、異なる波長や旋律の音が出力可能に構成されていてもよい。これにより、出力される音により人が乗ったり座ったりしたことが計測可能であると共に、音の波長や旋律の違いにより、複数の発電部のうちのどの発電部が反応したかまで計測することができる。
【0045】
(情報処理手段)
本発明において、情報処理手段50は送信手段40から送信された情報を受信して、混雑状況を判定する手段である。情報処理手段50の種類は特に限定されず、複数のダイオードやトランジスタを組み合わせた論理回路、有線又は無線の通信機能を有するマイコンや、無線の通信機能を備える無線通信モジュールを好適に用いることができる。
【0046】
また、情報処理手段は発電部や送信手段と一体化されていても、有線により接続されていても、情報処理手段は発電部や送信手段とは分離されていて、無線により通信可能となっていてもよい。特に、人の往来によって踏まれて壊れたり、有線の配線につまずいたりしないように、情報処理手段は発電部や送信手段とは分離されていて、無線により通信可能となっていることが好ましい。
【0047】
さらに、情報処理手段には記憶手段を備えていてもよいし、情報処理手段が外部の記憶手段と接続されていてもよい。ここでいう記憶手段とは、情報を記憶する手段であり、具体的にはメモリやハードディスク、光ディスク等の電磁的記録媒体が挙げられる。これらの記憶手段は情報処理手段そのものに内蔵されていても、情報処理手段の外部にあって直接接続されていてもよく、さらに記憶手段がサーバーとして遠隔地に設置されて通信回線により情報処理手段と接続されていてもよい。
【0048】
また、情報処理手段に記憶手段を備える場合の、記憶手段に記憶されている情報は特に限定されないが、例えば配列された発電部20の位置情報に関する情報や、過去に発電部20から発信された信号の情報、過去に発電部20から発信された信号を受信した時間の情報、混雑状況の判定に用いるための混雑状況の度合いの基準に関する情報、及び過去の混雑状況の判定結果の情報、からなる群から選択される一種又は二種以上の情報であることが好ましい。こうした情報の記憶方法も特に限定されず、配列変数を用いた関数による情報の記憶、Comma Separated Value(csv)ファイルへ情報を記録しての記憶、クエリ言語を利用したデータサーバーへの格納としての記憶、等の公知の情報記憶方法が挙げられる。
【0049】
情報処理手段には、所定時間を計測するためのタイマーを備えていてもよい。所定時間とは、現実の時間を計測するもの(例えばRTCことリアルタイムクロック回路)に限らず、情報処理手段を制御するためのプログラム上で実行されるルーチン数によるものでもよい。例えば、情報処理手段はタイマーにより所定時間を計測し、その所定時間の間に受信した信号の数をカウントすることで、時間あたりの発電部20への人の侵入を計測することができる。詳細には、例えば情報処理手段のタイマーは所定時間として100ミリ秒以上1時間以内の任意の時間を計測し、発電部20の発電に起因した信号の受信の数をタイマー稼働の間カウントすることで、発電部20が設置された領域における人口密度を推定することができる。こうした任意の所定時間は、混雑状況を計測する場所に応じて適宜変更することが好ましく、例えば人口密度の高い場所では、100ミリ秒以上1分以下の範囲でタイマーを設定し、人口密度の低い場所では、1分以上1時間以内の範囲でタイマーを設定することが好ましい。また、タイマー起動するタイミングは特に限定されず、情報処理手段が起動している間中タイマーが駆動していてもよく、任意のタイミングでタイマーが間欠的に起動していてもよく、タイマーの起動を制御する方法によりタイマーが起動してもよい。タイマーの起動を制御する方法としては、例えば情報処理手段が最初に信号を受信したことをトリガーとして、タイマーを起動してもよいし、情報処理手段にスイッチ等の任意の操作手段を設けておき、この操作手段の操作をトリガーとしてタイマーを起動してもよい。タイマーは所定の時間の計測を終えると待機状態となって、再びタイマーの起動を制御する方法によりタイマーが起動してもよい。
【0050】
さらにこれらの記憶手段への情報の記憶は、予め記憶した書き換え不可能な情報を記憶する様にしてもよいが、必要に応じて情報を書き換え可能に構成されることが好ましい。例えば、記憶手段に複数の発電部20のそれぞれの相対的な位置関係を示す位置情報を入力可能に構成しておき、この位置情報に対応する様にして発電部20を配列して設置することで、混雑情報の判定に際して参照することができる。具体的な一例として、例えば
図3に例示する混雑状況計測システム2に示す様に、64個の発電部20を縦8×横8列に配列して、1列目の発電部20のそれぞれに[11、12、13、14、15、16、17、18]、2列目の発電部20のそれぞれに[21、22、23、24、25、26、27、28]、・・・8列目の発電部20のそれぞれに[81、82、83、84、85、86、87、88]の固有番号を割り当て、記憶手段にはこれに対応して[11、12、13、14、15、16、17、18]…[81、82、83、84、85、86、87、88]の固有番号を、配列変数を用いた関数に代入する。複数の発電部20のうちの特定の発電部20に人が乗ったり座ったりしたときに当該発電部20が発電し、この発電部20に対応した固有番号を含む信号30を送信手段40から情報処理手段50に送信される。例えば
図3の例示では、信号30には、発電部20のうち人が乗っている発電部20の位置情報である「17、22、33、66、67、83、84」を含む情報が含まれている。次いで情報処理手段50は受信した信号30から固有番号を読み出し、記憶手段に記憶された、上記関数のどの配列位置に当該固有番号が記憶されているかを読み出す。
図3の例示では、情報処理手段50が受信した信号30に含まれる固有番号である「17、22、33、66、67、83、84」のそれぞれの情報(配列における要素)について、記憶手段に記憶されている関数の配列から「17」、「22」、「33」、「66」、「67」、「83」、「84」の7つの値を検索し、関数の配列中にこれらの値が存在することを確認する。これにより、64の固有番号のうちの7つの固有番号が一致したことから、配列した発電部20のうちの64分の7の割合で発電部20が発電したことが分かる。これによって情報処理手段50は、複数の配列された発電部20のうちのどれ位の割合の発電部20に人が乗ったり座ったりしたかを判断し、この割合から混雑状況の判定結果60を算出することができる。なお、
図3の例示では配列した発電部20のうちの発電した発電部20の割合によって混雑状況の判定結果60を算出する例を示しているが、時間経過による信号30の変化から、発電部20に乗ったり座ったりする人の数を推測してもよい。例えば
図3において固有番号「83、84」に乗っているのは1人だが、この後に固有番号「82」が発電したときは、固有番号「83、84」に乗っているのは1人であって固有番号「82」に移動している、と推測することができる。同様に、固有番号「17」は1人、固有番号「22、33」は1人、固有番号「66、67」は1人、と推測して、合計4人が配列された発電部20に存在することを推測することができる。これにより、より正確に混雑状況を算出することができる。
【0051】
また、情報処理手段は少なくとも1つあればよく、1つの情報処理手段が複数の送信手段からの信号を受信可能に構成されていることが好ましい。また、情報処理手段は、送信手段40から送信された信号30の受信と、当該信号30に含まれる情報を処理して得られた混雑状況の判定結果60の処理と、表示手段70への判定結果60の送信と、のそれぞれの処理を、まとめて1つの情報処理手段で処理してもよいが、複数の情報処理手段にそれぞれの役割を分担して処理してもよい。情報処理手段は発電部において生じた電力を利用して稼働してもよいが、バッテリーや電池、コンセント等の公知の電源に接続されて起動可能としてもよい。情報処理手段が発電部において生じた電力を利用して稼働できれば特に設置場所に制限ないが、少なくとも1つの情報処理手段が複数の送信手段からの信号を受信可能となれば、情報処理手段の稼働のための電源の数は少なくて済む。すなわち、大掛かりな配線工事を行わずとも、最低限の電源を用意するだけでよい。
【0052】
情報処理手段50が実行する情報処理の一態様を
図1に示す。送信手段40には、配列された複数の発電部20のそれぞれに対応するアドレスの情報が設定されており、所定の発電部20に乗ったり座ったりすることで、この発電部20に対応するアドレスの情報が信号30として情報処理手段50に送信される。
【0053】
次いで、情報処理手段50が実行する情報処理のフローチャートの一例として
図4に示す様に、情報処理手段50は、送信手段40から信号30を受信し(S10)、当該信号30に含まれる情報から判定結果60を算出して(S20)、表示手段70へ判定結果60を送信する(S30)。
このとき、判定結果60の算出方法としては様々な方法が挙げられるが、以下に具体的な判定結果60の算出方法を例示する。
【0054】
(1)
図5に情報処理手段50が実行する情報処理のフローチャートの別の態様を示す。本態様では、発電部20に対応するアドレスの情報と、当該アドレスに対応した発電部20の位置情報とを、予め情報処理手段50の記憶手段に記憶しておき、必要に応じて情報処理手段50によって記憶手段から読み込み可能としておく。送信手段40から最初の信号30を受信(S10)すると、これをトリガーとして情報処理手段50に備えられたタイマーが起動し、所定の時間計測を開始する(S52)。次いで、タイマーが起動してから所定時間が経過するまで、信号30の信号を受信し続ける(S54~S60)。このとき、情報処理手段50は、受信した信号30に含まれるアドレスの情報を読みとる(S56)。信号30には、人が乗ったり座ったりすることで発電部20が発電し、これに対応したアドレスの情報が含まれている。次いで、記憶手段から、信号30に含まれていたアドレスに対応する位置情報を読み取る(S58)。所定時間が経過した後、情報処理手段50は、所定時間の間に処理された情報から、発電した発電部20の個数と設置位置を判断する(S62)。次いで情報処理手段50は、配列された複数の発電部20の内、発電したと判断した発電部20の数の割合を算出する(S64)。これによって複数配列して設置したうちの発電部20に人が乗っている割合が算出され、すなわち人口密度としての混雑状況を判定結果60として表示手段に出力する(S66)。なお、本実施態様において「所定時間」は任意に設定される時間であり、例えば発電部20の上に乗ったり座ったりしている人が移動している場合に、発電部20の発電状況が所定時間で変化することを監視することができる時間であればよい。具体的には100ミリ秒から1時間の間で任意に設定することができる。より詳細には、人が徒歩や自転車等によって移動している様な環境で混雑状況を求めたい場合には100ミリ秒の間の発電部20の発電状況を監視することで、人の移動の状況や人数の変化を求めることができる。また電車の座席等、人が長時間その場所に留まる様な環境で混雑状況を求めたい場合には、最大1時間程度の間の発電部20の発電状況を監視することで、人の滞在状況の変化を求めることができる。以降で「所定時間」と記す場合には、上記例示の「所定時間」を示すものとする。
【0055】
(2)
図6に情報処理手段50が実行する情報処理のフローチャートの別の態様を示す。本態様においては、予め情報処理手段50の記憶手段には配列した発電部20の数を記憶する。次いで、情報処理手段50は、送信手段40から最初の信号30を受信(S10)すると、これをトリガーとして情報処理手段50に備えられたタイマーが起動し、所定の時間計測を開始する(S52)。次いで、タイマーが起動してから所定時間が経過するまで、信号30の信号を受信し続ける(S54~S72)。このとき、情報処理手段50は、送信手段40から受信する信号30の受信回数を計測する(S70)。所定時間が経過した後、情報処理手段50は、記憶手段に記憶された発電部20の数に対する信号30の受信回数から、所定時間の間にどれだけの割合の発電部20に人が乗ったり座ったりしたかを算出し、すなわち人口密度としての混雑状況の判定結果60を算出する(S74)。次いで判定結果60を表示手段70に出力する(S76)。
【0056】
以上の様に、情報処理手段50は、受信した信号30から混雑状況としての判定結果60を出力する。上記例示の態様では、記憶手段を用いているが、必ずしも必要ではなく、例えば情報処理手段50を制御するプログラムにおいて、所定の閾値を定義付けておき、当該閾値を超える信号の受信回数を以て混雑状況としての判定結果を算出してもよい。また、混雑状況の判定結果60の算出方法は特に限定されず、所定時間における信号30の受信回数が予め定められた閾値を超えるかどうか、信号30の受信間隔が予め定められた閾値を超えるかどうか、設置した複数の発電部20からの信号の強度が予め定められた閾値を超えるかどうか、に基づいて算出する様にしてもよい。なお、予め定められた閾値も特に限定されず、使用される環境によって適宜設定すればよいが、設置した発電部20の数の割合として、例えば屋内の通路において10%を超える場合は混雑していると判定することが好ましく、例えば屋外の通路において20%を超える場合は混雑していると判定することが好ましく、例えば電車の座席では80%を超える場合は混雑していると判定することが好ましい。
【0057】
(表示手段)
表示手段は、情報処理手段によって算出された混雑状況としての判定結果を表示する。表示手段は情報処理手段と一体化していても、別に有線により接続されていても、無線により接続されていてもよい。例えば情報処理手段と表示手段とが一体化している例としては、モニター付きのコンピューター、スマートフォン、タブレット、マイコン等が挙げられる。また情報処理手段と表示手段とが有線又は無線により接続している例としては、本体とモニターとが別個になったコンピューター、スマートフォン、タブレット、マイコン等が挙げられる。特に、情報処理手段は無線通信機能を備えるマイコンであり、表示手段は無線通信機能を備えるコンピューター、スマートフォン、タブレットのいずれかであることが好ましい。また、情報処理手段と表示手段とが直接的に無線で接続されていなくてもよく、例えば情報処理手段に、移動通信システム等の広域通信回線が接続されて、ゲートウェイやサーバーを介してコンピューター、スマートフォン、タブレット等の表示手段に判定結果を表示できる様に構成していることが好ましい。
【0058】
また、表示手段は必ずしもモニターである必要はなく、簡易的に混雑状況を計測した場合には、発光装置を表示手段としてもよい。例えば、所定の混雑状況であるときには発光する様に構成してもよいし、混雑状況によって発光の光量や発光の色調を変更可能に構成されていてもよい。特にこうした発光装置としては、発光ダイオードを好適に用いることができる。
【0059】
以下に、本発明の混雑状況計測システムを様々な場所に適用した例を挙げて詳述する。
【0060】
(実施形態1)
以下、第一の実施形態として、複数の座席が存在する空間に適用可能な混雑状況計測システムの各構成要件を、適宜図を参照して詳述する。
【0061】
本実施形態において、混雑状況計測システムは、複数の座席が存在する空間において混雑状況を計測する。複数の座席が存在する空間としては、例えば飲食店や電車等が挙げられ、飲食店で着座して飲食を行っている客がいるかどうか、電車の座席に乗客が着座しているかどうかから、混雑状況を計測することに用いることができる。
【0062】
例えば
図7には、新幹線の自由席などの車輛に本実施形態の混雑状況計測システム3を適用した例を示す。
図7に示す様に、本実施形態の混雑状況計測システム3は、加重によって発電する発電素子10(図示しない)を備える複数の発電部20と、発電部20から生じた電圧を電源として信号30を送信する送信手段40と、送信手段40から信号30を受信して、信号30から混雑状況を判定する情報処理手段50と、前記情報処理手段50による混雑状況の判定結果60を表示する表示手段70と、を備える。
【0063】
より具体的には、発電部20は、座席の背もたれ100と座面110の少なくともいずれかに設置されており、それぞれの発電部24、22に送信手段40が接続されている。
図7では送信手段40は座席の台座側面に送信手段40が設けられた例を示しているが、座席に埋め込まれていても、座席の背もたれの上部に設置していても、座席とは別の例えば車輛の壁面や天井に設けられていてもよい。また、
図7では送信手段40は無線により信号を送信する様に構成されているが、有線により信号を送信可能に構成されていてもよい。送信手段は1つのみならず、ゲートウェイや信号中継器等の複数の機器により構成されてリレーされていてもよい。送信手段40から送信された信号は、情報処理手段50に送信される。
図7での例では、送信手段によって外部サーバーに信号が送信され、当該外部サーバーが信号から混雑状況を判定するが、車両内に有線又は無線によって信号を受信可能なコンピューターであってもよい。情報処理手段は、受信した信号により座席への着座の有無を判定し、すなわち信号を受信した座席には人が座っており、信号を受信しなかった座席を空席とみなして、混雑状況を判定する。この混雑状況の結果は表示手段によって表示される。
図3に示す混雑状況計測システム2の例では、サーバーによって判定された混雑状況を、スマーホフォン等の電子端末によってオンラインのウェブページ上で表示可能としているが、インラインでコンピューターのモニターに表示可能にしてもよい。また、コンピューターやスマートフォン、タブレット等の画面のみならず、ランプ等によって混雑状況の有無を表示してもよい。
【0064】
また、送信手段40は発電部20によって供給されるエネルギーによって情報処理手段50が起動可能にされていてもよいが、情報処理手段50の起動を補助するためのバッテリーや電池を備えていてもよい。バッテリーや電池を用いる場合には、
図2に例示した様な、MOS-FETやトランジスタ等のスイッチング回路を好適に採用することができる。こうしたスイッチング回路を用いることで、情報処理手段50の待機の際にはバッテリーや電池の電力がほとんど消費せず、信号を送信するときにだけバッテリーや電池の電力が消費され、長期間の運用を行うことができる。また、例えば
図7の送信手段40を格納する筐体内に、バッテリーや電池と共にスイッチング回路を収容することで、大掛かりな配線工事も不要である。
【0065】
本実施形態の混雑状況計測システム3の動作機構を以下に例示する。座面110に人が座ると、座面110に設置された発電部20の発電素子10(図示しない)に加重がかかって発電する。この発電したエネルギーが送信手段40に伝達されて、送信手段40が起動する。送信手段40は、エネルギーを供給した発電部20の固有情報(アドレス)を予め記憶しており、エネルギーを供給した発電部20の固有情報を含む無線の信号30を発信する。次いで、この信号30は、車輛内に設置されたゲートウェイ(図示しない)を介して、移動通信網や固定通信網によって車輛外に設置されたサーバーとしての情報処理手段50が受信する。情報処理手段50は、信号30に含まれる発電部20の固有情報を読み出し、どの座席に人が座ったとみなすかを判定する。この判定は、他の座席についても同様に行っており、車輛内の座席の着座率を算出する。この着座率から混雑状況を判定し、判定結果60として移動通信網や固定通信網によってウェブデータとして発信する。このウェブデータは移動端末としての表示手段70で表示可能となっており、すなわち表示手段70に混雑状況の判定結果60が表示される。
【0066】
また、
図7に示す様に、本実施態様の変形例として、背もたれ100にも発電部20が設置されていてもよい。座面110に人が座れば発電するものの、隣の座席に座った客が空いている他の座席に荷物を置き、これにより座席に人が座っていると誤判定されるおそれがある。この場合、背もたれ100にも発電部20を設置しておき、座面110に設置された発電部20と、背もたれ100に設置された発電部20との両方が発電することで、人が座ったことを判定する様に情報処理手段50による混雑状況の判定方法を設定しておくことで、より精度よく混雑状況を判定することができる。
【0067】
(実施形態2)
本実施形態において、混雑状況計測システムは、複数の人が歩いたり立ち止まったりして存在する空間において混雑状況を計測する。こうした空間としては、例えば量販店や駅や公共施設、イベント会場や観光名所等が挙げられ、どれだけの人がその場にいるかから、混雑状況を計測することに用いることができる。
【0068】
例えば
図8には、四方が壁120によって閉ざされた部屋130に本実施形態の混雑状況計測システム4を適用した例を示す。
図8に示す様に、本実施形態の混雑状況計測システム4は、加重によって発電する発電素子10(図示しない)を備える複数の発電部20と、発電部20から生じた電圧を電源として信号30を送信する送信手段40と、送信手段40から信号30を受信して、信号30から混雑状況を判定する情報処理手段50と、前記情報処理手段50による混雑状況の判定結果60を表示する表示手段70と、を備える。ここで部屋130は、会議室や集会所等の収容人数に一定の制限がある部屋が例として挙げられる。
【0069】
より具体的には、発電部20は、部屋130の床面に縦横配列して敷設されており、それぞれの発電部20に送信手段40が接続されている。
図8では送信手段40は部屋130の一壁面である壁120内に設置された例を示しているが、部屋130内で空いた床面に置かれていてもよいし、床面に埋め込まれていても、図示しない天井に設置されていてもよい。また、
図8では送信手段40は有線により信号(図示しない)を情報処理手段50に送信する様に構成されているが、無線により信号を送信可能に構成されていてもよい。送信手段は1つのみならず、複数の機器により構成されてリレーされていてもよい。送信手段40から送信された信号は、情報処理手段50に送信される。
図8の例では、送信手段40によって部屋130外のサーバーである情報処理手段50に信号が送信され、当該外部サーバーが信号から混雑状況を判定するが、有線又は無線によって信号を受信可能なコンピューターであってもよい。情報処理手段50は、受信した信号により部屋130内の人の存在や、存在している数(密度)を判定し、この判定した人の数から混雑状況を判定する。この混雑状況の結果は表示手段によって表示される。
図8の例では、サーバーによって判定された混雑状況を、スマーホフォン等の電子端末によってオンラインのウェブページ上で表示可能としているが、インラインでコンピューターのモニターに表示可能にしてもよい。また、コンピューターやスマートフォン、タブレット等の画面のみならず、ランプ等によって混雑状況の有無を表示してもよい。
【0070】
本実施形態の混雑状況計測システム4の動作機構を以下に例示する。床に設置された発電部20に人が乗ると、その発電部20に備えられた発電素子10(図示しない)に加重がかかって発電する。この発電したエネルギーが送信手段40に伝達されて、送信手段40が起動する。送信手段40は、エネルギーを供給した発電部20の固有情報(アドレス)を予め記憶しており、エネルギーを供給した発電部20の固有情報を含む有線の信号(図示しない)を発信する。次いで、この有線の信号は、移動通信網や固定通信網によって部屋130外に設置されたサーバーとしての情報処理手段50が受信する。情報処理手段50は、信号30に含まれる発電部20の固有情報を読み出し、部屋130内のどのあたりに人が立ち入ったかを判定する。この判定は、部屋130内の発電部20全体に対して同様に行っており、発電部20全体の数に対する人が立ち入った発電部20の割合を算出する。この割合から混雑状況を判定し、判定結果60として移動通信網や固定通信網によってウェブデータとして発信する。このウェブデータは移動端末としての表示手段70で表示可能となっており、すなわち表示手段70に混雑状況の判定結果60が表示される。
【0071】
以上の実施態様に示される様に、本発明の混雑状況計測システムは、大掛かりな配線工事も不要で且つ精度高く、混雑状況を計測することができる。
【0072】
(その他の実施形態)
上述の実施形態は本発明の例示であって、本発明はこれらの例に限定されず、これらの例に周知技術や慣用技術、公知技術を組み合わせたり、一部置き換えたりしてもよい。また当業者であれば容易に思いつく改変発明も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0073】
1,2,3 混雑状況計測システム
10 発電素子
20 発電部
30 信号
40 送信手段
50 情報処理手段
60 判定結果
70 表示手段
100 背もたれ
110 座面
120 壁
130 部屋