(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010708
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】フック、壁面収納システム
(51)【国際特許分類】
A47G 29/00 20060101AFI20240118BHJP
F16B 45/00 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
A47G29/00 L
A47G29/00 R
A47G29/00 H
F16B45/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112140
(22)【出願日】2022-07-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】503048051
【氏名又は名称】株式会社藤山
(74)【代理人】
【識別番号】100130498
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 禎哉
(72)【発明者】
【氏名】藤山 雄一朗
【テーマコード(参考)】
3J038
3K100
【Fターム(参考)】
3J038AA01
3J038BB03
3K100AA02
3K100AB01
3K100AE01
3K100AF04
3K100AH30
3K100AJ05
(57)【要約】
【課題】石膏ボード等の壁面に対する良好な固定状態を維持可能な固定金具を用いて壁面に取付可能なフックに関して、耐荷重性及び見栄えに優れたフックを提供する。
【解決手段】固定金具Pによって壁面Wに取り付けられるフック1であり、固定金具Pの装着を許容する固定金具装着用凹部9を有するフックベース2と、フックベース2のうち壁面Wに正対する方向から見て露出し得る領域の全部または略全部を被覆するカバー部3とを備え、フックベース2に設けたフック片5とカバー部3に設けたフック片カバー8との間に隙間S1が形成されるように構成した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に対して直接または間接的に押し当てられる面接触本体部、及び前記面接触本体部の周囲から前記面接触本体部に対して略90度折れ曲がった前記押付方向に突出する3つの挿込爪とを一体に備えた固定金具によって壁面に取り付けられるフックであり、
前記固定金具の装着を許容する固定金具装着用凹部を所定箇所に形成したフックベースと、
前記フックベースのうち前記壁面に正対する方向から見て露出し得る領域の全部または略全部を被覆するカバー部とを備え、
前記フックベースは、前記壁面から離間する斜め上方向に向かって突出するフック片を有するものであり、
前記カバー部は、前記フック片のうち前記壁面に正対する方向から見て露出し得る領域の全部または略全部を被覆するフック片カバーを有するものであり、
前記カバー部を前記フックベースに装着したカバー装着状態において、前記フック片と前記フック片カバーとの間に隙間が形成されるように構成していることを特徴とするフック。
【請求項2】
前記フック片は前記固定金具装着用凹部を有するフックベース本体に対して所定角度で立ち上がる形状をなし、
前記フック片に対する引っ掛け対象物の引っ掛け方向における前記壁面と前記フック片との開き角度を、前記引っ掛け方向における前記壁面と前記フック片カバーとの開き角度よりも小さく設定している請求項1に記載のフック。
【請求項3】
請求項1または2に記載の前記フックに引っ掛け対象物を引っ掛けることで壁面に収納スペースを形成する壁面収納システムであり、
前記引っ掛け対象物が、収納スペースを有するバスケット本体と、前記バスケット本体に回転自在に設けた取っ手とを備えたものであり、
前記取っ手のうち他の部分よりも厚み寸法を小さく設定した引っ掛け部が前記フック片の基端部に接触するように構成していることを特徴とする壁面収納システム。
【請求項4】
請求項1または2に記載の前記フックに引っ掛け対象物を引っ掛けることで壁面に収納スペースを形成する壁面収納システムであり、
前記引っ掛け対象物が、棚本体と、前記棚本体を支持する支持フレームとを備えたものであり、
前記支持フレームは、壁面に接触する壁面接触部と、前記フックに接触する引っ掛け部とを備え、前記壁面接触部よりも壁面から離間する方向に突出させた形状に設定した前記引っ掛け部が前記フック片の基端部に接触するように構成していることを特徴とする壁面収納システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石膏ボード等の壁面に固定することが可能な固定金具を用いたフック、及び壁面収納システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物の内装壁を構成する建材として、断熱性及び防音性に優れ、安価で施工が楽な石膏ボードが適用されている。しかしながら、石膏ボードは木材に比べて釘に対する固着力が弱いため、釘を使用し難いという欠点がある。
【0003】
そこで、石膏ボード面に対する固定ピン(ピン釘)の打ち込み方向が真っすぐ(垂直方向)ではなく傾斜させた方向に設定され、複数本の固定ピンをそれぞれ異なる傾斜方向に打ち込む止め具が用いられている。例えば、特許文献1には、ピン釘をそれぞれガイドする複数のガイド孔が形成された取付具本体を主体とし、各ガイド孔に沿ってそれぞれピン釘を打ち込むと、打ち込まれたピン釘が石膏ボードの内部で放射状に広がるように設定された取付具セットが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このような取付具によれば、ピン釘の打ち込み方向が被取付面に対して傾斜し且つ取付具本体を中心とした放射状となることで、釘(ピン釘)を石膏ボードに垂直に打ち込む場合に比べてピン釘による固着力が大幅に増加し、取付具本体を石膏ボードに強固に固定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、複数本の固定ピンをそれぞれ異なる傾斜方向に打ち込む態様は、固定ピンの打込方向をガイドするガイド孔を有する取付具本体とは別に、複数本のピン釘が必要であり、用意する部品点数が多く、取付箇所1か所につきピン釘の打込作業回数が複数回必要であり、作業性の点で改善の余地がある。しかも、斜め下方向から斜め上方向にピン釘に打ち込む最中はピン釘から手を離すタイミングを間違えるとピン釘が落下してしまうことになり、これも作業性が悪くなる要因である。また、石膏ボードの壁面にこのような固定ピンを打ち込んだ場合に、この固定ピンを利用して物品を引っ掛けようとしても、固定ピンでは耐荷重性が低く、ごく軽い物品しか引っ掛けることができないという問題がある。
【0007】
そこで、本出願人は、複数の別パーツから構成されるのではなく、単一のパーツで構成され、石膏ボードへの固定作業をスムーズに行うことができ、石膏ボードに対する良好な固定状態を維持可能で耐荷重性に優れた固定金具を案出し、特許出願をしている(特開2021-194151号公報)。具体的には、
図25及び
図26に示すように、石膏ボードの壁面Wに対して所定の押付方向に押し付けた状態で固定可能な金属製の固定金具として、石膏ボードの壁面Wに対して直接または間接的に押し当てられる面接触本体部P1と、面接触本体部P1の周囲から面接触本体部P1に対して略90度折れ曲がった押付方向に突出する3つの挿込爪P2とを一体に備え、各挿込爪P2に鋸歯状の1または複数の返しP3を設けた固定金具Pを案出した。
【0008】
そして、本出願人は、このような固定金具を活用したインテリア雑貨の開発を進める中で、固定金具を用いて壁に固定したフックに適宜の引っ掛け対象物を引っ掛けることで部屋のアクセントにもなる商品を想到した。特に、フックに関して、耐荷重性に優れ、且つ見栄えの向上にも貢献するフックであれば、商品のラインアップを拡充することができ、実用性の高いインテリアとして有効活用できる。
【0009】
本発明は、このような開発過程を経て想到した技術的思想に基づき、石膏ボード等の壁面に対する良好な固定状態を維持可能な固定金具を用いて石膏ボードに取付可能なフック、及びフックを用いた壁面収納システムに関し、耐荷重性及び見栄えに優れたフックを提供し、このようなフックを利用した斬新且つ実用性の高い壁面収納システムを提供することを主たる目的とするものである。なお、本発明は、石膏ボードに限らず、木製の壁面等にも取付可能なフック、及び壁面収納システムである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち本発明に係るフックは、石膏ボード等の壁面に対して直接または間接的に押し当てられる面接触本体部、及び面接触本体部の周囲から面接触本体部に対して略90度折れ曲がった押付方向に突出する3つの挿込爪とを一体に備えた固定金具によって壁面に取り付けられるフックであり、固定金具の装着を許容する固定金具装着用凹部を所定箇所に形成したフックベースと、フックベースのうち壁面に正対する方向から見て露出し得る領域の全部または略全部を被覆するカバー部とを備え、フックベースは、壁面から離間する斜め上方向に向かって突出するフック片を有するものであり、カバー部は、フック片のうち壁面に正対する方向から見て露出し得る領域の全部または略全部を被覆するフック片カバーを有するものであり、カバー部をフックベースに装着したカバー装着状態において、フック片とフック片カバーとの間に隙間が形成されるように構成していることを特徴としている。
【0011】
このようなフックであれば、3つの挿込爪のうち少なくとも1つ以上の挿込爪が、鉛直方向及び水平方向ではない斜めの姿勢で壁に進入することになり、石膏ボード等の壁面に対して抜き難い良好な挿込状態を維持することができる固定金具によってフックベースを壁面に固定することができるとともに、カバー部がフック片を含むフックベース全体を被覆することで、フックベースに装着した固定金具を隠すことができ、フック全体の見栄えの向上を図りつつ、カバー装着状態においてフック片とフック片カバーの間に隙間が形成されていることによって、フック片に引っ掛けた引っ掛け対象物の荷重がフック片カバーにダイレクトに作用する事態を防止・抑制することができ、フック全体の耐荷重性が向上する。
【0012】
なお、面接触本体部の周囲から4つ以上の挿込爪を備えた固定金具であれば、石膏ボードに対する挿込爪の挿込領域が増大し、石膏ボードのうちこれら挿込爪によって囲まれる領域を刳り抜くおそれがある。また、挿込爪が1つか2つの場合は石膏ボードに打ち込んで他の部材を支持する際の耐荷重や安定性が不十分となる。そのため、本発明では挿込爪を3つ備えた固定金具を採用している。
【0013】
特に、本発明に係るフックにおいて、フック片とフック片カバーの間に隙間を形成する具体的な構成としては、フック片が固定金具装着用凹部を有するフックベース本体に対して所定角度で立ち上がる形状をなし、フック片に対する引っ掛け対象物の引っ掛け方向における壁面とフック片との開き角度を、引っ掛け方向における壁面とフック片カバーとの開き角度よりも小さく設定した構成を挙げることができる。
【0014】
また、本発明に係る壁面収納システムは、上述のフックに引っ掛け対象物を引っ掛けることで壁面に収納スペースを形成するものであり、引っ掛け対象物が、収納スペースを有するバスケット本体と、バスケット本体に回転自在に設けた取っ手とを備えたものであり、取っ手のうち他の部分よりも厚み寸法を小さく設定した引っ掛け部がフック片の基端部(下端部)に接触するように構成していることを特徴としている。
【0015】
また、本発明に係る壁面収納システムは、上述のフックに引っ掛け対象物を引っ掛けることで壁面に収納スペースを形成するものであり、引っ掛け対象物が、棚本体と、棚本体を支持する支持フレームとを備えたものであり、支持フレームとして、壁面に接触する壁面接触部と、フックに接触する引っ掛け部とを備えたものを適用し、壁面接触部よりも壁面から離間する方向に突出させた形状に設定した引っ掛け部がフック片の基端部(下端部)に接触するように構成していることを特徴としている。
【0016】
このような本発明に係る壁面収納システムであれば、壁面に固定したフックに対して引っ掛け部がフック片の基端部(下端部)に接触する位置まで深く引っ掛かることで引っ掛け対象物を安定した状態で支持することができ、バスケット本体または棚本体に物品を収納したり、載置することで壁面を収納スペースとして活用することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、石膏ボード等の壁面に対して固定金具を良好な挿込状態で固定することができ、このような固定金具によって壁面に取り付けたフックのうちフック片とフック片カバーの間に隙間を形成していることで、耐荷重性及び見栄えに優れたフック、及び斬新且つ実用性の高い壁面収納システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る壁面収納システムの断面図。
【
図2】同実施形態に係る壁面収納システムの全体斜視図。
【
図5】同実施形態に係るフックを
図3とは異なる方向から見た全体外観図。
【
図6】同実施形態に係るフックを背面側から見た全体外観図。
【
図13】同実施形態におけるフックベースの正面図。
【
図14】同実施形態におけるフックベースの背面図。
【
図15】同実施形態におけるフックベースの平面図。
【
図16】同実施形態におけるフックベースの底面図。
【
図17】同実施形態におけるフックベースの側面図。
【
図25】同実施形態における固定金具の全体外観図。
【
図27】同実施形態におけるバスケットの全体外観図。
【
図29】同実施形態におけるバスケットの全体外観図。
【
図30】同実施形態におけるバスケットの全体外観図。
【
図31】同実施形態に係る壁面収納システムの全体外観図。
【
図32】同実施形態に係る壁面収納システムの全体外観図。
【
図33】棚を用いた壁面収納システムの全体外観図。
【
図34】棚を用いた壁面収納システムの全体外観図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0020】
本実施形態に係るフック1は、
図1に示すように、固定金具Pを用いて壁面Wに取付可能なものである。また、本実施形態に係る壁面収納システムXは、
図1及び
図2に示すように、壁面Wに取り付けたフック1に引っ掛け対象物H(図示例ではボックスタイプのバスケットB)を引っ掛けた状態で利用可能な収納システムである。
【0021】
壁面Wとしては、例えば下地の無い壁、つまり石膏ボードの壁面であってもよいし、下地のある壁、つまり石膏ボードではない壁面であってもよい。以下の説明において、「石膏ボードの壁面W」ではなく、単に「壁面W」との用語を用いる場合、その「壁面W」は石膏ボードに限らず、石膏ボードではない壁(下地のある壁)も含む。
【0022】
フック1は、
図1乃至
図12に示すように、固定金具Pの装着を許容する固定金具装着用凹部9を所定箇所に形成したフックベース2と、フックベース2のうち壁面Wに正対する方向から見て露出し得る領域の全部または略全部を被覆するカバー部3の2つのパーツから構成されるものである。なお、
図3はフック1の全体斜視図であり、
図4はフック1の分解斜視図であり、
図5、
図6はそれぞれフック1を斜め上方から見た全体斜視図、背面側から見た全体斜視図である。また、
図7、8、9、10、11はそれぞれフック1の正面図、背面図、平面図、底面図、側面図であり、
図12は
図7のA-A線断面図である。
【0023】
フックベース2は、
図4、
図13乃至
図18に示すように、背面を壁面Wに接触させた状態で固定金具Pと壁面Wに挟まれる平板状のフックベース本体4と、フックベース本体4の下端部から斜め上方(斜め前方)に向かって突出するフック片5とを備えている。なお、
図13、14、15、16、17はそれぞれフックベース2の正面図、背面図、平面図、底面図、側面図であり、
図18は
図13のA-A線断面図である。
【0024】
フックベース本体4は、正面略視半円形状をなし、両端に所定の傾き角度の直線部を設定することで全体として扇を開いた形状に模した形態を有する。フックベース本体4のうち正面から見てフック片5に重なる領域を含む所定の領域を他の部分よりも前方に張り出した張り出し面41に設定し、張り出し面41の外縁部分である段部42にカバー部3の中央開口部7の開口縁が接触または近接するように設定している(
図12参照)。
【0025】
フック片5は、フックベース本体4に対して所定角度で斜め前方に向かって傾斜する形状をなし、上端をフックベース本体4の上端よりも低い位置、具体的には上端をフックベース本体4の高さの略半分の高さ位置に設定したものである。フック片5は、正面から見ると略半円形状をなし、フック片5のうちフックベース2から遠い方向の面(前方を向く傾斜面)に高さ方向に延伸する補強リブ51を幅方向に所定ピッチで複数設けている。
【0026】
カバー部3は、
図4、
図19乃至
図24に示すように、正面から見て円形状をなし、フックベース本体4を前方から被覆するカバー部本体6と、カバー部本体6の中央部分に形成された開口部7と、開口部7の下縁から斜め上方(斜め前方)に向かって突出し、且つフック片5を前方側(正面側)から被覆するフック片カバー8とを有するものである。なお、
図19、20、21、22、23はそれぞれカバー部3の正面図、背面図、平面図、底面図、側面図であり、
図24は
図19のA-A線断面図である。
【0027】
カバー部本体6は、フックベース本体4の前面4a及び外周面4bの略全領域を被覆するものである。また、開口部7は、フックベース本体4の張り出し面41に応じた開口形状を有する。フック片カバー8は、フック片5の前面5a(前方を向く傾斜面)及び外周面5bを被覆するものである。本実施形態では、フック片カバー8の基端部とフックベース本体4の接続部分に、フックベース2に設けた係合段部21に係合可能な弾性係合爪31を設けている(
図20、
図24参照)。
【0028】
したがって、フックベース2にカバー部3を装着する際には、フックベース2の正面側からカバー部3を近付けて、フック片カバー8でフック片5を被覆するとともに、カバー部本体6でフックベース本体4を被覆する姿勢のままフックベース2をカバー部3側に押し込んで、カバー部3に設けた弾性係合爪31をフックベース2の係合段部21に係合(弾性係合)させることで、フックベース2にカバー部3を簡単且つスムーズに装着することができる。カバー部3をフックベース2に装着したカバー装着状態において、カバー部本体6とフックベース2の張り出し面41は相互に略連続するフラットな面を形成する。なお、カバー装着状態においてカバー部3をフックベース3から引き離す方向に移動させる操作力を加えると、弾性係合爪31と係合段部21との係合(弾性係合)状態が解除され、カバー部3をフックベース3から取り外すことができる。本実施形態のフック1では、
図6及び
図8に示すように、弾性係合爪31と係合段部21との係合箇所に準じた係合箇所(弾性係合爪31aが係合段部21aに弾性係合する箇所)をフック1の背面側における左右両サイドにも設定しているため、より一層良好なカバー装着状態を確保することができる。
【0029】
そして、本実施形態に係るフック1は、カバー部3をフックベース2に装着したカバー装着状態において、フック片5とフック片カバー8との間に隙間が形成されるように構成していることを特徴としている(
図12参照)。具体的には、フック片5に対する引っ掛け対象物Hの引っ掛け方向における壁面Wとフック片5との開き角度θ1(内角)を、引っ掛け方向における壁面Wとフック片カバー8との開き角度θ2(内角)よりも小さく設定することで、カバー装着状態においてフック片5とフック片カバー8との間に隙間1Sが形成されるように構成している。
図12に示すように、フック片5の基端部ではフック片カバー8がフック片5に僅かに接しているか近接している状態であり、フック片5の先端部に近付くほどフック片5の前面5a(前方を向く傾斜面)とフック片カバー8との隙間1Sが大きくなる。
【0030】
このようなフック1を壁面Wに固定する処理は、
図25及び
図26に示す固定金具Pを用いて行う。
【0031】
固定金具Pは、
図25及び
図26に示すように、壁面Wに対して当該固定金具Pを正面から壁面Wの厚み方向に押し付けた状態で固定可能なものである。
図25は固定金具Pの全体外観図であり、
図26(a)は固定金具Pの正面図であり、
図26(b),(c)は同図(a)のA1方向矢視図、A2方向矢視図である。本実施形態の固定金具Pは、壁面Wに対して直接または間接的に押し当てられる円板形状の面接触本体部P1と、面接触本体部P1の周囲から面接触本体部P1に対して略90度折れ曲がった方向にそれぞれ突出する3つの挿込爪P2とを一体に備え、壁面Wに対して垂直または略垂直となる方向と一致する押付方向に押し付けた状態で固定可能な金属製の一体品である。3つの挿込爪P2は、面接触本体部P1の周囲に均等に配置され、それぞれ鋭角に尖った先端部と、先端部から基端部に亘って鋸歯状の複数段の返しP3(図示例では2段)とを有し、矢じり形状をなすものである。本実施形態では、板厚1mmの鋼板に対してプレス加工処理等を適宜の加工処理を経て成形した固定金具Pを適用している。また、固定金具Pのうち面接触本体部P1の中央部分には、別の固定具である例えばタッピングビスNが挿通可能な貫通孔P5を形成している。面接触本体部P1の外周部分の直径は16mmであり、貫通孔P5の直径は3.2mmである。また、各挿込爪P2の基端から先端までの長さは16mmであり、各挿込爪P2の返し部分における最大幅は3mm、最小幅は2mmである。
【0032】
上述のフックベース2には、このような固定金具Pを収容可能な凹部9(本発明における「固定金具装着用凹部」)を設けている。本実施形態では、フックベース2のうちフック片5が形成されていないフックベース本体4の前向き面4aに凹部9を設けている(
図13参照)。具体的には、フックベース本体4のうちフックベース2を正面から見てフック片5に重ならない領域に合計5つの凹部9を同一半径上に所定ピッチで並べて設けている。
【0033】
凹部9は、固定金具Pの面接触本体部P1を収容可能なメイン凹部91と、固定金具Pの挿込爪P2の挿込位置をガイドする挿込爪ガイド凹部92とを有し、メイン凹部91の凹み寸法を挿込爪ガイド凹部92の凹み寸法よりも浅く設定したものである。挿込爪ガイド凹部92は、面接触本体部P1の周縁部に周方向に等ピッチ(120度)に配置されている。また、メイン凹部91の中央部分には、固定金具Pとは別の固定具であるタッピングビスNを挿通する位置をガイドするネジガイド凹部93を形成している。本実施形態では、挿込爪ガイド凹部92及びネジガイド凹部93をフックベース本体4の後向き面4cに貫通する孔に設定している(
図14参照)。なお、挿込爪ガイド凹部92やネジガイド凹部93を挿込爪P2によって突き破ることが可能な薄さ(例えば厚さ0.3mm)に設定した底部を有するタイプ(貫通していない穴)に設定することも可能である。
【0034】
フックベース2を壁面Wに固定する処理は、フックベース2の背面(フックベース本体4の後向き面4c)を壁面Wに押し当て、固定金具PまたはタッピングビスNを用いて行う。すなわち、壁面Wに下地が無い場合は固定金具Pを用いて固定し、壁面Wに下地がある場合はタッピングビスNを用いて固定する。固定金具Pを用いてフックベース2を固定する処理は、各凹部9に固定金具Pを挿し込むことで完了する。壁面Wが石膏ボードである場合には、固定金具Pを凹部9に挿し込むと、挿込爪P2の先端が石膏ボードの壁面Wに突き刺さり、固定金具Pの面接触本体部P1がメイン凹部91に完全に収容される位置まで固定金具Pを押し付けると、3つの挿込爪P2が石膏ボードの壁面Wの内部に所定距離分突き刺さった状態になり、良好な固定状態を維持することができる。その結果、フックベース2を石膏ボードの壁面Wと固定金具Pとの間で挟んだ状態で固定することができる。一方、下地がある壁面Wに対して、固定金具Pを用いずにタッピングビスNを用いてフックベース2を壁面Wに固定する場合は、凹部9のうちネジガイド凹部93にタッピングビスNを挿し込み、そのまま壁面Wにねじ込むビス止め処理を行う。なお、壁面Wに対するフックベース2の固定箇所が、下地がある箇所と無い箇所とで区別できる場合には、下地がある箇所にはタッピングビスNのみを使用し、下地が無い箇所には固定金具PとタッピングビスNを使用すればよい。
【0035】
以上の手順により、固定金具Pを用いてフックベース2を壁面Wに固定することができ、このフックベース2にカバー部3を装着することで、壁面Wにフック1を取り付けることができる。本実施形態では、このようなフック1に対して引っ掛け対象物Hを引っ掛けることで壁面収納システムXを実現している(
図1及び
図2参照)。
【0036】
引っ掛け対象物Hとしては、
図27及び
図28に示すバスケットBを挙げることができる。バスケットBは上方に開口した内部空間を有するバスケット本体B1と、バスケット本体B1の上端部に設けた取付支持具B2に基端部を回転可能に取り付けた取っ手B3とを備えたものである。本実施形態では、取っ手B3の基端部に形成した長孔B4に取付支持具B2(ピン)を挿入した状態において、取っ手B3全体をバスケット本体B1の上端部に寝かせた姿勢(
図27参照)と、取っ手B3をバスケット本体B1から立ち上げた姿勢(
図1参照)とで姿勢変更できるように構成している。そして、本実施形態のバスケットBは、取っ手B3のうちフック1に引っ掛ける部分(引っ掛け部B5)の形状をフック片5の基端部(根元)に嵌合する形状に設定している。具体的には、引っ掛け部B5の断面形状を山型(台形状)に設定し、他の部分よりも厚みが小さくなる部分を引っ掛け部B5に設定している。
【0037】
このようなバスケットBをフック1に引っ掛けると、引っ掛け部B5がフック片5の基端部に到達してフック片5の基端部とフックベース2の張り出し面41との間のスペースに略隙間無く嵌合する。この引っ掛け状態において、バスケット本体B1の内部空間を収納スペースとして利用することができ、斬新且つ実用性の高い壁面収納システムXを実現できる。
【0038】
特に、本実施形態に係るフック1は、固定金具Pによってフックベース2を壁面Wに固定することができるとともに、カバー装着状態においてフック片5とフック片カバー8の間に隙間1Sが形成されていることによって、フック片5に引っ掛けた引っ掛け対象物H(バスケットB)の荷重がフック片カバー8にダイレクトに作用する事態を防止・抑制することができ、フック1全体の耐荷重性が向上する。さらに、フックベース2のうち少なくとも壁面Wに対して正対する方向(正面側)から見て露出し得る部分の略全てカバー部3によって被覆することで、フックベース2に装着した固定金具Pを隠すことができ、フック1全体の見栄えも向上する。
【0039】
また、本実施形態に係るフック1に引っ掛けるバスケットBのサイズや形状等も適宜選択・変更することができる。例えば、上述のバスケットBはバスケット本体B1がボックス状のものであったが、
図29及び
図30に示すように少なくとも周回する起立面をワイヤで形成したタイプのバスケットBを適用することもできる。何れのバスケットBも引っ掛け部B5を含む取っ手B3及び取付支持具B2は略共通の形状であり、
図29に示すワイヤタイプのバスケットBと、
図30に示すワイヤタイプのバスケットBはバスケット本体B1の深さ(高さ寸法)が異なり、このような複数サイズのバスケットBを用意することで、
図31及び
図32に示すように、壁面収納システムXに関してバリエーションに富む商品展開を行うことができ、ユーザにとっては魅力的である。
【0040】
さらにまた、本実施形態に係る壁面収納システムXは、フック1に引っ掛ける引っ掛け対象物Hとして、
図33乃至
図35に示す棚Tを適用することができる。棚Tは、上向き面を載置面T1とし、載置面T1上のスペースを収納スペースとして利用可能な棚本体T2(棚板)と、棚本体T2を支持する支持フレームT3とを備えたものである。棚本体T2は、平面視楕円形状を有し、ねじ等を用いた締結処理等によって支持フレームT3に接続されたものである。支持フレームT3は、棚本体T2の下向き面に宛がわれる支持部T4と、壁面Wに接触する壁面接触部T5と、フック1に引っ掛ける引っ掛け部T6とを備えている。そして、壁面接触部T5よりも壁面Wから離間する方向に突出させた形状に設定した引っ掛け部T6がフック片5の基端部(下端部、根元)に接触するように構成している。
【0041】
このような棚Tをフック1に引っ掛けると、
図35に示すように、引っ掛け部T6がフック片5の基端部に到達してフック片5の基端部とフックベース本体4の張り出し面41との間に略隙間無く嵌合する。この引っ掛け状態において、ユーザが棚本体T2に適宜の物品等を置く等して棚本体T2の載置面T1上のスペースを収納スペース(物置きスペース)として活用することができ、斬新且つ実用性の高い壁面収納システムXを実現できる。また、それぞれサイズの異なる棚本体T2を用意しておき、ユーザが適宜選択・変更できるように構成すれば、壁面収納システムXに関してバリエーションに富む商品展開を行うことができ、ユーザにとっては魅力的である。
【0042】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、カバー部をフックベースに装着したカバー装着状態において、フック片とフック片カバーとの間に隙間が形成される条件を満たす範囲内において、フック片やフック片カバーのサイズや形状を適宜変更することもできる。さらにまた、フックベースやカバー部のサイズ等も適宜変更してもよい。フック片カバーには意匠を施してデザイン面での見栄えを向上したり、適宜のアレンジを図ることもできる。
【0043】
また、フックベースに形成する固定金具装着用凹部の数や配置箇所も適宜変更することができる。固定金具の形状に応じて固定金具装着用凹部の形状も適宜変更すればよい。
【0044】
また、面接触本体部の周囲に3つの挿込爪を不均等に配置した固定金具であってもよい。固定金具に関して、各挿込爪に設ける返しの数や形状、または各挿込爪における返しの位置は適宜変更することができる。
【0045】
上述のバスケットや棚以外の物品を本発明に係るフックに引っ掛けることで本発明に係る壁面収納システムを構成することも可能である。
【0046】
その他、各部の具体的構成や処理内容についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0047】
1…フック
2…フックベース
3…カバー部
5…フック片
8…フック片カバー
9…固定金具装着用凹部
B1…バスケット本体
B3…取っ手
B5…引っ掛け部
P…固定金具P
P1…面接触本体部
P2…挿込爪
T2…棚本体
T3…支持フレーム
T5…壁面接触部
T6…引っ掛け部
X…壁面収納システム
【手続補正書】
【提出日】2023-01-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
壁面に対して直接または間接的に押し当てられる面接触本体部、及び前記面接触本体部の周囲から前記面接触本体部に対して略90度折れ曲がって前記壁面に対して垂直または略垂直となる方向と一致する押付方向に突出する3つの挿込爪とを一体に備えた固定金具によって壁面に取り付けられるフックであり、
前記固定金具の装着を許容する固定金具装着用凹部を所定箇所に形成したフックベースと、
前記フックベースのうち前記壁面に正対する方向から見て露出し得る領域の全部または略全部を被覆するカバー部とを備え、
前記フックベースは、前記壁面から離間する斜め上方向に向かって突出するフック片を有するものであり、
前記カバー部は、前記フック片のうち前記壁面に正対する方向から見て露出し得る領域の全部または略全部を被覆するフック片カバーを有するものであり、
前記カバー部を前記フックベースに装着したカバー装着状態において、前記フック片と前記フック片カバーとの間に隙間が形成されるように構成していることを特徴とするフック。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
すなわち本発明に係るフックは、石膏ボード等の壁面に対して直接または間接的に押し当てられる面接触本体部、及び面接触本体部の周囲から面接触本体部に対して略90度折れ曲がって壁面に対して垂直または略垂直となる方向と一致する押付方向に突出する3つの挿込爪とを一体に備えた固定金具によって壁面に取り付けられるフックであり、固定金具の装着を許容する固定金具装着用凹部を所定箇所に形成したフックベースと、フックベースのうち壁面に正対する方向から見て露出し得る領域の全部または略全部を被覆するカバー部とを備え、フックベースは、壁面から離間する斜め上方向に向かって突出するフック片を有するものであり、カバー部は、フック片のうち壁面に正対する方向から見て露出し得る領域の全部または略全部を被覆するフック片カバーを有するものであり、カバー部をフックベースに装着したカバー装着状態において、フック片とフック片カバーとの間に隙間が形成されるように構成していることを特徴としている。