(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107121
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】液体吸収剤を再生する方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/14 20060101AFI20240801BHJP
B01D 53/62 20060101ALI20240801BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20240801BHJP
B01D 53/96 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
B01D53/14 210
B01D53/14 220
B01D53/62
B01D53/78
B01D53/96
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024091360
(22)【出願日】2024-06-05
(62)【分割の表示】P 2021530971の分割
【原出願日】2019-11-20
(31)【優先権主張番号】2019901496
(32)【優先日】2019-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(71)【出願人】
【識別番号】590003283
【氏名又は名称】コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガナイゼーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】グレイム・パクスティ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ウェブスター-ガーディナー
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・コンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】チィ・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ベネット
(72)【発明者】
【氏名】ポール・フェロン
(57)【要約】
【課題】分解に対する安定性及び/又は再生適応性が向上し、更に十分なガス吸収能力を提供するアミン系液体吸収剤系が尚も必要とされている。更に、使用時に分解した場合のアミン系液体吸収剤を再生する改良型方法を提供することが望まれる。
【解決手段】本発明は、液体吸収剤を再生する方法であって、液体吸収剤を疎水性媒体と接触させる工程であり、液体吸収剤が、少なくとも1種の式(I)のアミンと、少なくとも1種の式(II)のイミンを含むその分解生成物とを含む、工程(式中、各Arは、独立に芳香族基であり、各Rは、独立に、水素、オルガニル基及びNH
2から選択される)と、分解生成物を疎水性媒体中に又は疎水性媒体から選択的に抽出する工程とを含む、方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吸収剤を再生する方法であって、
前記液体吸収剤を疎水性媒体と接触させる工程であって、前記液体吸収剤が、少なくとも1種の式(I)のアミンと、少なくとも1種の式(II)のイミンを含むその分解生成物とを含む、工程と、
【化1】
(式中、各Arは、独立に芳香族基であり、各Rは、独立に、水素、オルガニル基及びNH
2から選択される)
前記分解生成物を前記疎水性媒体中に又は前記疎水性媒体から選択的に抽出する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
前記疎水性媒体が有機溶媒である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記有機溶媒が、芳香族炭化水素溶媒、酸素含有溶媒及びハロゲン化溶媒からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記液体吸収剤を前記疎水性媒体から分離する工程と、前記液体吸収剤をガス吸収方法における液体吸収剤流に再循環させる工程を更に含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
抽出された分解生成物を変換して、少なくとも1種の式(I)の再生アミンを形成する工程を更に含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記変換が、前記イミンを加水分解して、第1の量の式(I)の再生アミン、及び式(III)のアルデヒドを形成する工程を含む、請求項5に記載の方法。
【化2】
【請求項7】
前記第1の量の再生アミンを含む水溶液と前記アルデヒドを含む有機溶液とを、液-液分離により分離する工程を更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記アルデヒドを変換して、還元的アミノ化により第2の量の式(I)の再生アミンを形成する工程を更に含む、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記還元的アミノ化が、
i)前記アルデヒドをヒドロキシルアミンと反応させて、オキシムを形成する工程、及び
ii)前記オキシムを還元して、前記第2の量の再生アミンを形成する工程
を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記再生アミンをガス吸収方法における液体吸収剤流に再循環させる工程を更に含む、請求項5から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記液体吸収剤が、少なくとも10重量%の水を含む水性組成物である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記液体吸収剤が、式(I)のアミンより大きなpKaを有する第三級アミン、障害アミン、炭酸塩、アミノ酸塩及びそれらの混合物から選択される少なくとも1種の更なる塩基を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記液体吸収剤が、吸収剤として少なくとも1種の脂肪族アミンを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記脂肪族アミンが、非障害第一級又は第二級アミン及びアルカノールアミンから選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記液体吸収剤における前記脂肪族アミンの、式(I)の化合物と式(II)の化合物の合計に対するモル比が2:1より大きい、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記液体吸収剤が、吸収された二酸化炭素を含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
二酸化炭素吸収体カラムの液体出口流から、前記疎水性媒体と接触させるための前記液体吸収剤を得る工程を更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記分解生成物を抽出した後に、前記液体吸収剤を二酸化炭素ストリッピングカラムの出口流に戻す工程を更に含む、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記液体吸収剤が式(I)のアミンを少なくとも10重量%の量で含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記液体吸収剤が、前記疎水性媒体との接触前に式(II)のイミンを少なくとも1重量%の量で含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記分解生成物を前記疎水性媒体中に又は前記疎水性媒体から抽出することにより、式(II)のイミンの量を前記液体吸収剤中の0.5重量%未満に減少させる、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
各Rが水素である、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
各Arが単環式6員芳香族基を含む、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記単環式6員芳香族基が少なくとも1つの窒素環原子を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
各Arが、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル及びフェニルからなる群から選択される、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記液体吸収剤が3-アミノメチルピリジンを含む、請求項1から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
二酸化炭素を含むガス流から二酸化炭素を吸収する方法であって、
前記ガス流と、少なくとも1種の式(I)のアミンを含む液体吸収剤とを接触させる工程であって、式(I)のアミンが分解して、少なくとも1種の式(II)のイミンを含む分解生成物を形成する、工程と、
【化3】
(式中、各Arは、独立に芳香族基であり、各Rは、独立に、水素、オルガニル基及びNH
2から選択される)
請求項1から26のいずれか一項に記載の方法によって液体吸収剤を再生する工程と
を含む方法。
【請求項28】
二酸化炭素及び二原子酸素(O
2)を含むガス流から二酸化炭素を吸収する方法であって、
ガス流と、
i)少なくとも1種の式(I)
【化4】
のアミン、及び
ii)少なくとも1種の脂肪族アミン
を含む液体吸収剤と
を接触させる工程であり、式(I)の化合物をO
2によって選択的に分解させて、少なくとも1種の式(II)
【化5】
のイミンを含む分解生成物を形成する、工程を含み、
式(I)のアミン及び式(II)のイミンにおいて、各Arが、独立に芳香族基であり、各Rが、独立に、水素、オルガニル基及びNH
2から選択される、
方法。
【請求項29】
前記脂肪族アミンが、非障害第一級又は第二級アミン及びアルカノールアミンから選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記液体吸収剤における前記脂肪族アミンの、式(I)の化合物と式(II)の化合物の合計に対するモル比が2:1より大きい、請求項28又は29に記載の方法。
【請求項31】
請求項1から26のいずれか一項に記載の方法によって前記液体吸収剤を再生する工程を更に含む、請求項28から30のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミン及びそのイミン分解生成物を含む液体吸収剤を再生する方法に関する。この方法は、液体吸収剤を疎水性媒体に接触させる工程と、分解生成物を疎水性媒体中に又は疎水性媒体から選択的に抽出する工程とを含む。この方法は、特に、ガス流からCO2を捕捉するのに使用されるアミン系液体吸収剤の再生に適用可能であり、その例示的用途の観点で本発明を開示するのが便利である。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素(CO2)の排出は、温室効果及び地球温暖化の主原因と考えられている。京都議定書では、国連気候変動枠組み条約が温室効果ガス排出量の削減目標を設定している。
【0003】
大気中のCO2排出量を削減する1つの方法は、それを捕捉し、続いて地質学的貯蔵を行う。燃焼後の捕捉では、最初に、吸収体に好適な液体吸収剤を使用して煙道ガスのCO2を窒素及び残留酸素から分離する。次いで、ストリッピングと呼ばれる方法でCO2を吸収剤から除去することで、吸収剤を再利用可能とする。次いで、適切な乾燥工程で水和物の形成を防止しながら、ストリッピングされたCO2を圧縮及び冷却により液化する。この形態の燃焼後捕捉は、発電所、製鉄所、セメント窯、か焼炉、バイオガス工場、天然ガス処理、メタン改質及び溶鉱炉を含む様々なCO2源に適用可能である。
【0004】
燃焼後CO2捕捉における反応性吸収剤として、様々なアミン水溶液及びアルカノールアミン水溶液が検討されてきた。捕捉方法は、水とアミンとCO2の一連の化学反応を伴う。アミンは弱塩基であり、酸-塩基反応を生じることがある。CO2は、アミン溶液に溶解すると、一般的に認識されている下記式に従って水及び中性型のアミン(RaRbRcN)と反応して、プロトン化アミン、炭酸(H2CO3)、水溶性重炭酸(HCO3
-)イオン及び水溶性炭酸(CO3
2-)イオンを生成する。
CO2+2H2O⇔HCO3
-+H3O+ (式1)
CO2+OH-⇔HCO3
- (式2)
CO3
2-+H3O+⇔HCO3
-+H2O (式3)
HCO3
-+H3O+⇔H2CO3+H2O (式4)
OH-+H3O+⇔2H2O (式5)
RaRbRcN+H3O+⇔RaRbRcNH++H2O (式6)
【0005】
アミンが第一級アミン(RaRbNH、Rb=H)又は第二級アミン(RaRbNH、Rb≠H)である場合は、好適な吸収動態を有する更なる反応経路が利用可能であり、その場合は二酸化炭素とアミンが反応してカルバメート(RaRbNCOO-)を生成する。次いで、カルバメートは、一般的に認識されている下記反応に従って酸-塩基化学作用に関与することもある。
CO2+RaRbNH+H2O⇔RaRbNCOO-+H3O+ (式7)
RaRbNCOO-+H3O+⇔RaRbNCOOH (式8)
【0006】
ストリッピング時のCO2の脱着は、吸収されたCO2を含むアミン水溶液を加熱することによって行われる。加熱により、CO2の物理的溶解度が低下するが、より重要なことはアミンのpKaが低下して、pH及びCO2吸収能が同時に低下する。pKaの低下の程度は、主としてアミンプロトン化反応のエンタルピに左右される。カルバメート形成を含む全ての他の反応は、反応エンタルピが小さいため、比較的温度に影響されない。したがって、吸収剤を低温と高温の間で吸収剤を循環させることよって吸収及び放出できるアミン1モル当たりのCO2のモル数として定義されるアミン水溶液の循環能は、アミンの分子構造、特にそのプロトン化しやすさに強く依存する。
【0007】
第三級アミン(RaRbRcN、Ra、Rb、Rc≠H)及び特定の立体障害第一級又は第二級アミンは高い循環吸収能を有するが、感知可能な量のカルバメートを形成することができない。したがって、これらの系の吸収動態は、比較的好ましくない。芳香族アミン(RaRbRcN, Ra=芳香族)は、カルバメート又はプロトン化アミン種を形成するには十分な塩基性はなく、概してCO2捕捉に適さない。
【0008】
アミンに基づくCO2捕捉方法に特有の熱循環の1つの結果は、アミンの分解であり、特に、(燃焼煙道ガス又はバイオガスによく見られるように)処理されるガス流にO2が存在する場合の酸化的分解である。これにより、経時的に性能が低下し、吸収剤の再生及び補充に伴いコストが高くなる。非障害第一級及び第二級アミン並びにアルカノールアミンは、特に、酸化的分解しやすい。例えば、石炭煙道ガス環境中で30重量%のモノエタノールアミン(MEA)を酸化的分解すると、捕捉されたCO21トン当たり約1.5kgのアミンが失われる。分解生成物は、典型的には、有機酸(例えばギ酸及びシュウ酸)、並びに吸収剤水溶液に対する溶解性が高い他の極性分子を含む。したがって、開始アミンを蒸留、イオン交換又は電気透析によってその分解生成物から分離することによって再生を実施する必要がある。回収された分解生成物は、廃棄物として廃棄される。
【0009】
したがって、分解に対する安定性及び/又は再生適応性が向上し、更に十分なガス吸収能力を提供するアミン系液体吸収剤系が尚も必要とされている。更に、使用時に分解した場合のアミン系液体吸収剤を再生する改良型方法を提供することが望まれる。
【0010】
先行技術として提示される特許文献又は他の刊行物への本明細書での参照は、請求項のいずれかの優先日の時点でその文献又は刊行物が公知であったこと、或いはそれに含まれる情報が一般知識の一部であったことを認めるものとして捉えられるべきではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】C Gouedard, D Picq, F Launay, P-L Carrette; Int. J. Greenh. Gas Con.,10,244 (2012)
【非特許文献2】Organic Letters, 2002, 4 (12), 2055-2058
【非特許文献3】Journal of Organic Chemistry, 1944, 9 (6), 529-536
【非特許文献4】P. Feron, Absorption-Based Post-Combustion Capture of Carbon Dioxide, Elsevier (2016)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の態様によれば、本発明は、液体吸収剤を再生する方法であって、
液体吸収剤を疎水性媒体と接触させる工程であり、液体吸収剤が、少なくとも1種の式(I)のアミンと、少なくとも1種の式(II)のイミンを含むその分解生成物とを含む、工程と、
【0014】
【0015】
(式中、各Arは、独立に芳香族基であり、各Rは、独立に、水素、オルガニル基及びNH2からなる群から選択される)
【0016】
分解生成物を疎水性媒体中に又は疎水性媒体から選択的に抽出する工程と
を含む、方法を提供する。
【0017】
一部の実施形態において、疎水性媒体は有機溶媒である。有機溶媒は、芳香族炭化水素溶媒、酸素含有溶媒及びハロゲン化溶媒からなる群から選択することができる。
【0018】
一部の実施形態において、方法は、液体吸収剤を疎水性媒体から分離する工程と、液体吸収剤をガス吸収方法における液体吸収剤流に再循環させる工程とを更に含む。
【0019】
一部の実施形態において、方法は、抽出された分解生成物を変換して、少なくとも1種の式(I)の再生アミンを形成する工程を更に含む。再生アミンを、場合により、ガス吸収方法における液体吸収剤流に再循環させてもよい。
【0020】
分解生成物の変換は、イミンを加水分解して第1の量の式(I)の再生アミン、及び式(III)
【0021】
【0022】
のアルデヒドを形成する工程を含んでいてもよい。
【0023】
次いで、第1の量の再生アミンを含む水溶液と、アルデヒドを含む有機溶液とを、液-液分離により分離してもよい。次いで、アルデヒドを変換して、還元的アミノ化により第2の量の式(I)の再生アミンを形成してもよい。還元的アミノ化は、i)アルデヒドをヒドロキシルアミンと反応させてオキシムを形成すること、及びii)オキシムを還元して、第2の量の再生アミンを形成する工程を含んでいてもよい。
【0024】
一部の実施形態において、液体吸収剤は、少なくとも10重量%の水を含む水性組成物である。
【0025】
一部の実施形態において、液体吸収剤は、式(I)のアミンより大きなpKaを有する第三級アミン、障害アミン、炭酸塩、アミノ酸塩及びそれらの混合物から選択される少なくとも1種の更なる塩基を含んでいてもよい。pKaは好ましくは式(I)のアミンより少なくとも0.25単位高い。本明細書に用いられているアミン又は他の塩基のpKaは、対応する共役酸のpKaを指す。
【0026】
一部の実施形態において、液体吸収剤は、吸収剤として少なくとも1種の脂肪族アミンを含む。脂肪族アミンは、非障害第一級又は第二級アミン及びアルカノールアミンから選択することができる。このような実施形態において、脂肪族アミンはモノエタノールアミン及び/又はジエタノールアミンを含んでいてもよい。液体吸収剤における脂肪族アミンの、式(I)の化合物と式(II)の化合物の合計に対するモル比は2:1より大きく、例えば5:1より大きく、又は10:1より大きくてもよい。
【0027】
一部の実施形態において、液体吸収剤は吸収された二酸化炭素を含む。一部のこのような実施形態において、二酸化炭素吸収体カラムの液体出口流から、疎水性媒体と接触させるための液体吸収剤を得てもよい。場合により、分解生成物を抽出した後に、液体吸収剤を二酸化炭素ストリッピングカラムの出口流に戻してもよい。
【0028】
一部の実施形態において、液体吸収剤は、式(I)のアミンを少なくとも10重量%、例えば10重量%から80重量%の量で含む。
【0029】
一部の実施形態において、液体吸収剤は疎水性媒体との接触前に式(II)のイミンを少なくとも1重量%の量で含む。
【0030】
一部の実施形態において、分解生成物を疎水性媒体中に又は疎水性媒体から抽出することにより、式(II)のイミンの量が液体吸収剤中の0.5重量%未満に減少する。
【0031】
一部の実施形態において、式(I)と式(II)における各Rは水素である。一部の実施形態において、式(I)と式(II)における各Arは単環式6員芳香族基を含む。単環式6員芳香族基は少なくとも1つの窒素環原子を含んでいてもよい。一部の実施形態において、各Arは、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル及びフェニルからなる群から選択される。一部の実施形態において、液体吸収剤は3-アミノメチルピリジンを含む。
【0032】
第2の態様によれば、本発明は、二酸化炭素を含有するガス流から二酸化炭素を吸収する方法であって、
ガス流と、少なくとも1種の式(I)のアミンを含む液体吸収剤とを接触させる工程であり、式(I)のアミンが分解して、少なくとも1種の式(II)のイミンを含む分解生成物を形成する、工程と
【0033】
【0034】
(式中、各Arは、独立に芳香族基であり、各Rは独立に、水素、オルガニル基及びNH2から選択される)
本明細書に開示される実施形態のいずれかに記載の方法によって液体吸収剤を再生する工程と
を含む、方法を提供する。
【0035】
第3の態様によれば、本発明は、二酸化炭素及び二原子酸素(O2)を含むガス流から二酸化炭素を吸収する方法であって、ガス流と、
i)少なくとも1種の式(I)
【0036】
【0037】
のアミン、及び
ii)少なくとも1種の式(II)の脂肪族アミン
を含む液体吸収剤と
を接触させる工程であり、式(I)の化合物がO2によって選択的に分解されて、少なくとも1種の式(II)
【0038】
【0039】
のイミンを含む分解生成物を形成する、工程を含み、
式(I)のアミン及び式(II)のイミンにおいて、各Arが、独立に芳香族基であり、各Rが、独立に、水素、オルガニル基及びNH2から選択される、
方法を提供する。
【0040】
脂肪族アミンは、少なくとも1種の式(I)のアミンを欠く同等の液体吸収剤で方法を実施したと仮定した場合に予想されるほどには分解されない。
【0041】
一部の実施形態において、脂肪族アミンは、非障害第一級又は第二級アミン及びアルカノールアミンから選択される。脂肪族アミンはモノエタノールアミン及び/又はジエタノールアミンを含んでいてもよい。
【0042】
一部の実施形態において、液体吸収剤における脂肪族アミンの、式(I)の化合物と式(II)の化合物の合計に対するモル比は2:1より大きく、例えば5:1より大きく、又は10:1より大きい。
【0043】
一部の実施形態において、方法は、本明細書に開示される実施形態のいずれか1つに記載の方法により液体吸収剤を再生する工程を更に含む。
【0044】
「含む(comprise又はcomprises)」及び「含んでいる(comprising)」という用語が本明細書(請求項を含む)で使用されている場合、それらは、記載の特徴、整数、工程又は成分を特定するが、1つ又は複数の他の特徴、整数、工程又は成分、或いはそれらの群の存在を排除するものではないと解釈されるべきである。
【0045】
本明細書に用いられているように、開示の装置の様々な特徴に関連する「第1の」、「第2の」、「第3の」等の用語は任意に割り当てられ、単に、その装置が様々な実施形態において組み入れることができる2つ以上のこのような特徴を区別することを意図するものである。これらの用語はそれら自体が任意の特定の方向又は順序を示すものではない。更に、「第1の」特徴の存在は「第2の」特徴が存在することを示唆するものでなく、「第2の」特徴の存在は「第1の」特徴が存在すること等を示唆するものではないことが理解されるべきである。
【0046】
以下、本発明の更なる態様を、発明を実施するための形態に記載する。
【0047】
ここでは、本発明の実施形態を、添付の図面を参照しながら、単に例示として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】ガス混合物からCO
2ガスを除去する方法に統合された本発明の実施形態による液体吸収剤再生システムの概略図である。
【
図2】6Mの3-AMPyを当初含有していた水性吸収剤を用いてパイロットプラントにて1500時間にわたってCO
2捕捉を行った際の3-AMPy及び3-AMPyの分解によって形成されたイミン二量体のIR分光法(黒点)及びHPLC(白点)により決定された濃度を示すグラフである。
【
図3】3Mの3-AMPyと3MのAMPとを当初含有していた水性吸収剤を用いて200日以上にわたってパイロットプラントにてCO
2捕捉を行った際の3-AMPy、AMP、及び3-AMPyの分解によって形成されたイミン二量体の濃度を示すグラフである。
【
図4】3Mの3-AMPyと3MのAMPとを当初含有しており、158日間にわたりパイロットプラントでのCO
2捕捉に用いられた水性吸収剤のサンプルをジクロロメタンで抽出した後に得られた有機相のGC-MSクロマトグラムを示す図である。
【
図5】3Mの3-AMPyと3MのAMPとを当初含有しており、158日間にわたりパイロットプラントでのCO
2捕捉に用いられた水性吸収剤のサンプルをジクロロメタンで抽出した後に残留した水相のGC-MSクロマトグラムを示す図である。
【
図6】CO
2とO
2の雰囲気に10日間にわたり55℃で曝露させたベンジルアミン水溶液の
13C-NMRスペクトルを示す図である。
【
図7】3mol/Lの3-AMPy及び3mol/Lの2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)を当初含有しており、208日間にわたりパイロットプラントでのCO
2捕捉に用いられた水性吸収剤の成分の(a)Amberlite XAD-2ビーズによる吸収前、(b)このビーズによる吸収後、及び(c)このビーズによって吸収剤から抽出された成分の
13C-NMRスペクトルを示す図である。
【
図8】(d)未使用のジエタノールアミンの吸収剤溶液、(c)CO
2とO
2の雰囲気に115時間にわたり55℃で曝露させた後のジエタノールアミンの吸収剤溶液、(b)CO
2とO
2の雰囲気に115時間にわたり55℃で曝露させた後のジエタノールアミン及びベンジルアミンの吸収剤溶液、及び(a)CO
2とO
2の雰囲気に115時間にわたり55℃で曝露させた後のジエタノールアミン及び3-アミノメチルピリジンの吸収剤溶液の
13C-NMRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明は、例えばCO2捕捉方法において、アミン系液体吸収剤を使用するガス吸収に関する。式(I)のアミン、例えばアミノメチルピリジン又はベンジルアミンを含む液体吸収剤は、好適なCO2捕捉性能を提供する。循環吸収能は第三級又は立体障害アミンと同等であるが、よりモノエタノールアミン(MEA)により近い吸収動態を有する。式(I)では、Arは芳香族基であり、Rは、水素、オルガニル基及びNH2から選択される。
【0050】
【0051】
式(I)のアミンを含む液体吸収剤の安定性を検討したところ、これらの材料は芳香環構造によって付与される特有の化学的安定性により、30重量%のMEAと比べ熱分解の影響を受けにくいことが判明した。更に、吸収剤を高温で酸素含有ガス流と接触させると生じる酸化的分解は、主に式(II)のイミン二量体分解生成物の形成を伴う。
【0052】
【0053】
イミン二量体への酸化的分解は、プロトン化アミンを起源とすることが理解され、下記のスキーム
【0054】
【0055】
に従う(3-アミノメチルピリジンの特定の事例の場合)。
【0056】
意図的なイミン形成反応は、典型的には非水条件下で進行し、水性反応生成物が溶液から除去され、且つ/又は感知可能な反応速度及び変換率を得るために触媒が使用されるため、この分解経路が代表的なCO2ガス吸収条件下で優勢であることは、意外であると思われた。得られるイミンは、安定した共役パイ結合配置に有利であるため、スキームに示される選択的分解形態は、式(I)のアミンに特有と考えられる。この安定化は、連鎖基がエチレン又はより長鎖のアルキレンであるアミノアルキル置換芳香族、又は実際に従来の脂肪族アミン若しくはMEA等のアルカノールアミン吸収剤には拡大しない。かかるアミンは同じプロトン化アミンの初期損失を経てアルデヒドを形成するが、更なる分解により、カルボン酸、アルデヒド及びアミノ酸を含む多様な生成物を形成する(C Gouedard, D Picq, F Launay, P-L Carrette; Int. J. Greenh. Gas Con.,10,244 (2012))。
【0057】
発明人らは、式(I)のアミンの特有の分解特性を利用して、これらのアミンを含む液体吸収剤を再生できることを認識した。したがって、本明細書では、少なくとも1種の式(I)のアミンと、少なくとも1種の式(II)のイミンを含むそのイミン分解生成物とを含む液体吸収剤を再生する方法を開示する。
【0058】
【0059】
式(I)と式(II)の分子において、各Arは、独立に芳香族基であり、各Rは、独立に、水素、オルガニル基及びNH2から選択される。方法は、液体吸収剤を疎水性媒体に接触させる工程と、分解生成物を疎水性媒体中に又は疎水性媒体から選択的に抽出する工程とを含む。
【0060】
イミン二量体分解生成物は疎水性媒体中に又は疎水性媒体から優先的に移動するのに十分無極性である一方、非分解アミン吸収剤は、極性で典型的には水性の液体吸収剤中に保持される。したがって、非分解アミン分子の損失をほとんど伴うことなく、分解生成物除去が高度に選択的に除去されると考えられ得る。分解生成物は、それ自体が、液体吸収剤に優先的に溶解する極性分子であるため、この再生手法は、多くの他のアミン系及びアルカノールアミン系吸収剤では実現不可能である。
【0061】
分解生成物の除去により、再生液体吸収剤が得られ、次いでこれを再循環させてガス捕捉方法に戻すことができる。有利には、かかる再生方法を容易にガス捕捉設備に統合することができる。分解生成物を除去した結果として、方法における吸収剤溶液のアミン吸収剤濃度、すなわちガス吸収能を、例えば式(I)の補充アミンの添加によって適度に高いレベルに維持することができる。更に、吸収剤溶液の物理的特性に対するイミン二量体の悪影響、例えば粘度の増大を軽減することができる。
【0062】
以下に更に詳細に記載するように、再生方法は、場合により、イミン二量体分解生成物を変換して式(I)のアミンに戻す工程を含んでいてもよい。その場合、分解生成物の少なくとも一部をガス吸収のために回収し再使用できるが、この場合も多くの他のアミン吸収剤では実現不可能である。
【0063】
疎水性媒体による抽出
一般に、疎水性媒体は、実質的に水に非混和性又は不溶性であるが、式(II)のイミンを、液体吸収剤から抽出するように、可溶化又は吸収できる任意の液体又は固体の材料を含んでいてもよい。
【0064】
一部の実施形態において、疎水性媒体は、疎水性液体、特に有機溶媒である。好適な有機溶媒は、水に対する溶解能がゼロである必要はないが、接触すると、異なる相が形成されるという点で、実質的に液体吸収剤と非混和性である必要があることが理解されるべきである。
【0065】
接触時に、2つの相を十分に混合して、分解生成物を確実に有機溶媒相に移転させることができる。次いで続く相分離により、再生された液体吸収剤から液-液分離によって有機相が分離可能となる。非分散型膜接触器を含む液-液抽出用の従来型の方法及び機器を使用して、有機溶媒を液体吸収剤と接触させ、次いで液体吸収剤から分離することができる。液-液抽出はバッチ処理又は連続処理であってもよく、単一の段階を含む、又は場合により選択性を向上させるため複数の段階を含んでいてもよい。疎水性液体と液体吸収剤とを任意の好適な比率、例えば1:10から10:1、又は1:5から5:1、又は1:3から3:1の、約1:1等の重量比で接触させてもよい。疎水性液体と液体吸収剤とを任意の好適な温度、特に疎水性液体の沸点より低い温度、例えば20℃から70℃、又は20℃から50℃で接触させることができる。場合により、疎水性液体と液体吸収剤とを撹拌又は剪断して、接触ひいては式(II)のイミンの抽出を向上させてもよい。
【0066】
有機溶媒がイミン分解生成物を液体吸収剤より優先的に分配するのに十分に疎水性であるならば、有機溶媒の選択は特に限定されるとは考えられない。一部の実施形態において、有機溶媒は無極性溶媒又は水非混和性極性非プロトン性溶媒である。一部の実施形態において、有機溶媒は揮発性であり、例えば(大気圧での)沸点が25℃から120℃、又は100℃未満、又は80℃未満等、120℃未満である。揮発性が高いほど、分解生成物の下流の処理における可溶化成分からの蒸発によって有機溶媒の分離が容易になり、作用中のアミン吸収剤における溶媒の蓄積も防止できる。
【0067】
好適な有機溶媒の例としては、トルエン等の芳香族炭化水素、酢酸エチル等の酸素含有溶媒、ジクロロメタン(DCM)等のハロゲン化溶媒が挙げられる。以下に記載するように、このような溶媒は、水性アミン吸収剤と接触した場合の優れた相分離挙動、及び分解生成物の高度に選択的な抽出をもたらすだけでなく、続く酸加水分解工程による溶解イミン二量体の変換を容易にすることもできる。脂肪族炭化水素等、高度に無極性の溶媒もイミンの抽出に効果を発揮することが期待される。
【0068】
一部の実施形態において、有機溶媒は、酢酸又はギ酸のC2~C6直鎖及び分岐アルキルエステル、C3~C6直鎖又は分岐脂肪族ケトン、ハロゲン化メタン、ハロゲン化エタン、並びに芳香族炭化水素からなる群から選択される少なくとも1種を含む。
【0069】
疎水性有機溶媒を使用すると、イミン二量体分解生成物を抽出するための選択性が高められることが判明し、実施が容易であるため有利と考えられる。しかし、他の疎水性媒体をも採用できると想定される。一部の実施形態において、液体吸収剤をポリマービーズ等の疎水性固体と接触させ、比較的無極性のイミン二量体分解生成物を優先的に固体に吸収させる。これは、例えば、液体吸収剤を通す充填吸収カラム内で行ってもよい。好適な疎水性固体の例としては、多孔質疎水性ポリマー樹脂が挙げられる。好適な疎水性固体類は、多環芳香族吸収剤樹脂、例えばスチレン-ジビニルベンゼンコポリマー等の架橋スチレンポリマーである。Sigma-Aldrich社から入手可能なAmberlite XAD-2ビーズ及びPurolite社から入手可能なPurosorb PAD500は、このような材料である。好適と考えられる別の疎水性固体類は、アクリル系吸収剤樹脂、例えば脂肪族メタクリレートポリマーである。Purolite社から入手可能なPurosorb PAD950は、このような材料である
【0070】
更なる実施形態において、液体吸収剤を、アミン吸収剤及び他の極性種を保持しながらイミン二量体分解生成物が疎水性膜を通って選択的に透過することを可能にする疎水性膜と接触させる。
【0071】
液体吸収剤
一部の実施形態において、液体吸収剤は水性組成物である。水性液体吸収剤は、少なくとも10重量%の水、例えば少なくとも20重量%の水を含んでいてもよい。
【0072】
一部の実施形態において、液体吸収剤は、式(I)のアミンを、組成物の総重量に対して少なくとも10重量%、例えば10重量%から80重量%、15重量%から80重量%、20重量%から80重量%、又は25重量%から80重量%の量で含む。
【0073】
一部の実施形態において、液体吸収剤は、式(I)のアミンに加え、更なるCO2吸収剤を含む。式(I)のアミンの更なる吸収剤に対する重量比は、例えば99:1から1:99、又は10:1から1:10、又は5:1から1:5であってもよい。一部の実施形態において、液体吸収剤は、アミン、アルカノールアミン、炭酸塩、アミノ酸塩及びイミダゾールから選択される1種又は複数の更なるCO2吸収化合物を含む。1種又は複数の更なるアミンは、第一級、第二級及び第三級アミンから選択されてもよい。
【0074】
好適な更なるCO2吸収化合物の例としては、モノエタノールアミン、エチレンジアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、2-アミノ-2-メチル-エタノールアミン等の第一級アミン、N-メチルエタノールアミン、ピペラジン、ピペリジン及び置換ピペリジン、3-ピペリジンメタノール、3-ピペリジンエタノール、2-ピペリジンメタノール、2-ピペリジンエタノール、ジエタノールアミン、ジグリコールアミン及びジイソプロパノールアミン等の第二級アミン、N-メチルジエタノールアミン、N-ピペリジンメタノール、N-ピペリジンエタノール、N,N-ジメチルアミノエタノール及び3-キンクリジノール等の第三級アミン、炭酸カリウム、グリシン酸ナトリウム、タウリン酸カリウム、アラニン酸ナトリウム、米国特許第8,741,246号に開示されているもの等のイミダゾール及びN-官能化イミダゾール、並びにタウリン、サルコシン及びアラニン等のアミノ酸が挙げられる。
【0075】
一部の実施形態において、液体吸収剤は、組成物における式(I)のアミンより大きな、例えば0.25単位高いpKaを有する更なる塩基を含む。更なる高pKa塩基は、好ましくは、第三級アミン、障害アミン、炭酸塩、アミノ酸塩及びそれらの混合物から、最も好ましくは、第三級アミン、障害アミン及びそれらの混合物から選択される。本発明者らは、式(I)のアミンからのイミン二量体の形成、ひいては総分解率も、このような塩基が存在する状況では抑制されることを見いだした。理論に縛られることを望まなくても、更なる高pKaのアミン又は他の塩基は、酸性ガスが吸収する際に放出されるプロトン、特に、CO2が式(I)のアミンと急速に反応してカルバメートを形成する結果として生じるプロトンによって優先的にプロトン化されると考えられる。したがって、これらのプロトンの優先的取り込みにより、式(I)のアミンの分解方法の初期工程が抑制される。更に、CO2は引き続き式(I)のアミンと直接反応してカルバメートを形成するため、好適なCO2吸収動態は、許容できないほど更なる塩基によって阻害されるわけではない。液体吸収剤は、更なる高pKa塩基を少なくとも10重量%、例えば少なくとも20重量%の量で含んでいてもよい。一部の実施形態において、更なる高pKa塩基及び式(I)のアミンは、同等のモル量、例えば2:1から1:2mol/mol又は約1:1mol/molで存在する。
【0076】
(アミノメチル)ピリジンの場合、25℃での2-(アミノメチル)ピリジン、3-(アミノメチル)ピリジン及び4-(アミノメチル)ピリジンのpKaは8.6である。更なる高pKa塩基、特に立体障害アミン又は第三級アミンは、少なくとも8.85のpKa、例えば少なくとも9のpKa、8.85から11.5のpKa、又は9から11.5のpKaを有することが好ましい。
【0077】
本明細書に用いられているように、「立体障害アミン」という用語は、第二級又は第三級いずれかの炭素原子に結合した少なくとも1つの第一級又は第二級アミノ基を含む化合物として定義される。一実施形態において、立体障害アミンは、第二級又は第三級いずれかの炭素原子に結合した第二級アミノ基、或いは第三級炭素原子に結合した第一級アミノ基である。
【0078】
好適な立体障害アミン、第三級アミン、炭酸塩及びアミノ酸塩の例としては、25℃での対応する共役酸のpKaと併せて下表に示すものが挙げられる。
【0079】
【0080】
要求される塩基性を有する他の好適な第三級アミン及び立体障害アミンは、上記で参照した分解メカニズム及びイミン形成抑制方法を考慮する当業者にとっては容易に明らかとなる。
【0081】
一部の実施形態において、液体吸収剤は、
式(I)のアミンを、溶液の総重量に対して10重量%から80重量%、例えば15重量%から80重量%、20重量%から80重量%又は25重量%から80重量%の量で、
場合により、式(I)のアミンより大きなpKaを有する、第三級アミン、障害アミン及びそれらの混合物から選択される更なるアミンを、最大70重量%、例えば10重量%から70重量%の量で、及び
水を少なくとも10重量%、例えば10重量%から90重量%又は20重量%から80重量%の量で
含む。
【0082】
一部の実施形態において、液体吸収剤は、1種又は複数の脂肪酸アミン吸収剤を含む。一部の実施形態において、脂肪族アミンは、非障害第一級又は第二級アミン及びアルカノールアミンから選択される。このようなアミンは、CO2捕捉用途に最も一般的に使用される吸収剤の一部を含み、酸化的分解の影響を受けやすく、有機酸及び他の極性分子等の一連の分解生成物を形成する。本発明者らは意外にも、液体吸収剤溶液に式(I)の化合物が存在すると、たとえ全アミンの微量成分としてわずかに含まれる場合であっても、この分解を抑制することを見いだした。したがって、式(I)の化合物は、独自に有効な共吸収剤として作用するだけでなく、犠牲アミンとしても作用して、更なる(且つ典型的に最も豊富な)脂肪族アミン吸収剤分子の不可逆的損失を抑制する。有利には、次いで液体吸収剤を本明細書に開示されているように再生することで、イミン分解生成物を除去可能である。
【0083】
本明細書に用いられているように、「非障害第一級又は第二級アミン」という用語は、第一級炭素原子に結合した少なくとも1つの第一級又は第二級アミノ基を含む化合物として定義される。脂肪族アミンは、モノエタノールアミン又はジエタノールアミンを含む、又はそれらで構成されていてもよい。脂肪族アミンは、液体組成物の主要なアミン吸収剤化合物として、例えば全吸収剤の50%を超えて存在していてもよい。例えば、好ましくは非障害第一級又は第二級アミン及びアルカノールアミンから選択される脂肪族アミンの、式(I)と式(II)の化合物の合計に対するモル比は、2:1より大きく、又は5:1より大きく、又は10:1より大きく、又は20:1より大きく、又は50:1より大きくてもよい。
【0084】
液体吸収剤は、イミダゾリウムカチオン又は第四級アンモニウム塩等のイオン液体又は有機塩を含む必要はなく、このような成分を実質的に含まないものであってもよい。組成物は、望まれる場合には、式(I)のアミン及び/又は存在すると考えられる他の吸収剤の溶解度を修正するために、水に加え溶媒を含んでいてもよい。共溶媒の例は、例えば、グリコール;グリコールエーテル、グリコールエーテルエステル、グリコールエステルからなる群から選択されるグリコール誘導体;長鎖短鎖脂肪族アルコール、例えば、C1~C4アルカノール、長鎖脂肪族アルコール、長鎖芳香族アルコール、アミド、エステル、ケトン、リン酸塩、有機炭酸塩及び有機硫黄化合物からなる群から選択することができる。溶質又は他の材料等、更なる成分が存在していてもよい。
【0085】
液体吸収剤は、疎水性媒体との接触前に、式(II)のイミンを、1重量%を超える、又は2重量%を超える量で含んでいてもよい。循環吸収方法、例えば燃焼後CO2捕捉の場合、液体吸収剤中の分解生成物の量は典型的に、分解率、吸収剤が再生及び再循環向けに除去される割合、及び再生方法の効率(すなわちイミン除去率)によって決定付けられる定常状態濃度に維持される。したがって、式(II)のイミンの好適な濃度範囲は、作用する吸収剤中の分解生成物のレベル及び再生向けに除去される流れのサイズの両方を最小限化するよう、競合する必須要素のバランスを取ることによって決定できることが理解されるべきである。実際には、式(II)のイミンの定常状態量を、運用上の問題が生じ(例えば、粘度増大に起因する質量移動損失又は発泡)、式(I)の活性アミンの損失に起因するCO2吸収能の低下が許容不能となるレベル未満に維持することができる。相応に、液体吸収剤は、疎水性媒体との接触前に、式(II)のイミンを、10重量%未満、又は5重量%未満、又は3重量%未満、例えば2重量%未満の量で含んでいてもよい。
【0086】
液体吸収剤は、疎水性媒体との接触後も、式(II)のアミンを引き続き、ただし接触前より低濃度で含んでいてもよい。この場合もやはり、最大限技術的に達成可能な濃度低減は、実際には経済的制約により好適とならない可能性があることが理解されるべきである。一部の実施形態において、抽出によって液体吸収剤中のイミンの量は、1重量%未満、又は0.5重量%未満、又は0.1重量%未満、例えば0.05重量%未満に減少する。
【0087】
液体吸収剤は、疎水性媒体との接触時点で、吸収されるガス、例えばCO2を含んでいてもよい。吸収されるCO2の濃度は、水性溶媒の沸点未満で吸収剤を空気に曝露させた場合に得られる平衡濃度の少なくとも2倍(更に好ましくは少なくとも5倍)であってもよい。一実施形態において、吸収されるCO2は吸収剤の少なくとも0.2重量%、又は少なくとも1重量%、又は少なくとも10重量%を占める。
【0088】
式(I)のアミン及び式(II)のイミン
再生される液体吸収剤は、少なくとも1種の式(I)のアミンと、少なくとも1種の式(II)のイミンを含むその分解生成物とを含む。組成物は、1つのみの式(I)のアミン分子と、したがって単一の対応する式(II)のイミン分子とを含んでいてもよい。ただし、アミン吸収剤分子の混合物、例えば2つ以上のアミノメチルピリジン異性体の混合物を使用してもよいと想定される。したがって、得られる分解生成物は、複数のイミン分子を含んでいてもよく、その場合は2つの式(I)の開始分子によって決定付けられるとおり、2つのAr基及び2つのR基は同一又は異なってもよいことが理解されるべきである。
【0089】
アミンとイミン分子のR基は、水素、オルガニル基及びNH2から選択される。一部の実施形態において、R基は、水素、アルキル、シクロアルキル及び芳香族基、例えば、水素、C1~C10アルキル、C1~C6シクロアルキル基及び単環式芳香族基から選択される。一部の実施形態において、R基は水素である。
【0090】
アミンとイミン分子のAr基は、芳香族基から選択される。一部の実施形態において、Ar基は、単環式芳香族基、特に、場合により1つ又は複数のC1~C10アルキル等の非芳香族置換基に置換される6員単環式芳香族基を含む。一部の実施形態において、単環式6員芳香族基は、0個、1個、2個又は3個の窒素環原子を含み、他の環原子は炭素である。一部の実施形態において、Ar基は、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル及びフェニルから選択される。
【0091】
一部の実施形態において、液体吸収剤は、2-アミノメチルピリジン、3-アミノメチルピリジン、4-アミノメチルピリジン及び/又はベンジルアミン、特に3-アミノメチルピリジンを、式(I)のアミンとして含む。
【0092】
抽出された分解生成物の変換
一部の実施形態において、再生方法は、抽出された分解生成物を変換して、式(I)の再生アミンを形成する工程を含む。次いで、再生アミンを補充アミンとしてガス吸収方法に再循環させることで、廃棄物形成及び全体的なアミン消費を低減することができる。
【0093】
変換は、下記の代表的なスキーム:
【0094】
【0095】
に従って、式(II)のイミンを加水分解して、1当量の式(I)の再生アミン及び1当量の式(III)のアルデヒドを形成する工程を含んでいてもよい。
【0096】
式(II)のイミンは、酸性水性条件では不安定であることが分かっている。したがって、分解生成物を液体吸収剤から有機溶媒に抽出する場合、分離された有機相を酸性化水相と接触させること、例えば触媒量の酢酸を含有させることによって、加水分解を行ってもよい。加水分解のための好適な混合及び時間を経た後、2つの相は従来型の液-液分離技法によって分離され、式(I)の再生アミンは水相へと分配され、より極性が低い式(III)のアルデヒドが有機相に残留する。次いで、式(I)の再生アミンの第1の部分を含有する状態となった水相を、ガス吸収方法に再循環させてもよい。イミンの各分子が2個のアミン分子を備えることから、理論的には、分解されたアミンの最大50mol%をこの方法工程によって回収できることが理解されるべきである。
【0097】
場合により、次いでアルデヒドを還元的アミノ化して第2の量の式(I)の再生アミンを形成してもよい。アルデヒドからアミンへの還元的アミノ化は多数の異なる経路を介して進行可能で、一般に還元剤と窒素源の両方を使用することを必要とする。一部の実施形態において、還元的アミノ化は、下記のスキーム:
【0098】
【0099】
に示されるとおり、アルデヒドをヒドロキシルアミンと反応させてオキシムを形成し、次いでオキシムを還元して式(I)のアミンを形成することによって行われる。
【0100】
他の実施形態において、還元的アミノ化を、アンモニア、H2及び遷移金属触媒を使用して(例えばOrganic Letters, 2002, 4 (12), 2055-2058に開示されているように)、又はギ酸アンモニウムを使用して(Journal of Organic Chemistry, 1944, 9 (6), 529-536に開示されているようなロイカート反応)行うことができる。
【0101】
次いで、アルデヒドの変換によって製造された再生アミンをガス吸収方法に再循環させてもよい。理論的には、これにより、実質的に全てのイミン二量体分解生成物を回収し、アミンとして再循環させることが可能となるが、再生方法における1つ又は両方のアミン回収工程(すなわち加水分解及び還元的アミノ化)を実施する決定は、未使用アミン購入コストと比較したコストに影響される可能性があるということを理解されたい。
【0102】
燃焼後CO
2捕捉
本明細書に開示される再生方法は、燃焼後捕捉等のCO
2捕捉方法において特に有用であると考えられ、場合によりこのような方法に統合してもよい。1つのこのような実施形態を実証する概略プロセスフローチャートを
図1に示す。プロセス(100)は、煙道ガス流からCO
2を吸収するための吸収反応器(102)、及びCO
2を脱着させるための脱着(ストリッパー)反応器(104)を含む。吸収反応器(102)は、第1の入口(106)、第2の入口(108)、第1の出口(110)、第2の出口(112)、及び1つ又は複数のガス吸収接触領域(114)を含む。吸収反応器(102)の第1の入口(106)は、CO
2リッチの煙道ガスを吸収カラム(102)に流入させる煙道ガス入口である。CO
2リッチの煙道ガスの全圧は、用途に応じて大きく変動することがある。煙道ガスにおけるCO
2分圧は、例えば0.1から100kPaであってもよい。第2の入口(108)は、(上記の)式(I)のアミンと、式(II)のイミンを含むその分解生成物とを含むCO
2が希薄な水性吸収剤を吸収カラム(102)に流入させる吸収剤入口である。CO
2リッチの煙道ガスとCO
2が希薄な吸収剤とが、ガス吸収接触領域(114)にて接触する。これらの領域において、CO
2リッチの煙道ガスにおけるCO
2が吸収剤に吸収されて、第1の出口(110)を介してカラム(102)から流出するCO
2が希薄な煙道ガス、及び第2の出口(112)を介して流出するCO
2リッチの吸収剤を形成する。CO
2が希薄な煙道ガスは、まだ一部のCO
2を含むが、その濃度はCO
2リッチの煙道ガスより低いと考えられる。
【0103】
吸収剤は、吸収カラム(102)内で25℃から50℃の温度を有することで、ストリッピング時の顕著な温度上昇範囲、ひいては高い循環能を可能にするものであってもよい。吸収剤の局所環境は、吸収カラム(102)内で、例えば溶液へのCO2吸収を増加させるために、吸収反応に好適となるよう変化させてもよい。かかる局所環境変更としては、pHの変更、温度の変更、圧力の変更等が挙げられてもよい。代替的に又は付加的に、溶液は、CO2吸収の補助となる他の化合物を含んでいてもよい。これらの化合物は、式(I)のものを含むアミン吸収剤分子の親和性又は吸収能を変化させてもよく、或いはこれらの化合物がCO2を吸収してもよい。更なる化合物を吸収反応器(102)内の吸収剤溶液に添加する場合、処理装置は付加的にこれらの化合物を除去する手段を含んでいてもよい。
【0104】
脱着反応器(104)は、入口(118)、第1の出口(120)、第2の出口(122)、及び1つ又は複数のガス脱着領域(124)を含む。CO2リッチの吸収剤は、吸収カラム(102)の第2の出口(112)を介して流出し、入口(118)を介して脱着カラム(104)に流入する。次いで、CO2リッチの吸収剤からのCO2の脱着が、ガス脱着領域(124)で生じる。
【0105】
CO2の脱着は、脱着方法に好適となるよう、加熱及び/又は圧力低下を伴ってもよい。更に、CO2リッチの溶液に更なる化合物を添加して、脱着方法を拡充してもよい。このような化合物は、脱着反応に好適となるよう、例えば、溶液のpHを変化させること又は別のパラメータを変化させることによって溶液環境を変化させるものであってもよい。
【0106】
CO2リッチの吸収剤からCO2を除去すると、CO2リッチのガス流及びCO2が希薄な吸収剤が形成される。CO2が希薄な吸収剤はまだ一部のCO2を含むが、その濃度は脱着カラム(104)に流入するCO2リッチの吸収剤より低い。CO2リッチのガス流を、CO2出口である第1の出口(120)を介して取り出し、続いて地層注入向けに圧縮、冷却及び液化してもよい(不記載)。CO2が希薄な吸収剤は、第2の出口(122)を介して取り出され、吸収カラム(102)にその第2の入口(108)を介して再循環される。脱着カラム(104)内の吸収剤の必要な温度は一般に吸収カラム(102)内より高く、したがって、2つのカラム間で循環するCO2が希薄な流れとCO2リッチの流れとを熱交換器(126)内で熱接触させて、処理装置の全体的なエネルギー効率を向上させることができる。
【0107】
2つのカラム間で循環する水性吸収剤は典型的に、特に脱着カラム(104)内で高温に曝されるとともに、煙道ガスと一緒に流入する二原子酸素(O2)が存在する状況にも曝される。相応に、本明細書に開示されるとおり、式(I)のアミンの一部が、式(II)のイミンを含む分解生成物に変換される。何らかの介入を行わなければ、イミンの量が経時的に増加し、水性吸収剤の循環CO2吸収能が低下し、最終的に、吸収剤溶液の粘度増大が原因で、発泡又は質量及び熱伝導の損失等、運用上の問題も引き起こす。
【0108】
このように、プロセス(100)は、混合器(128)及び相分離ユニット(130)を含む再生区間を含む。吸収カラム(102)から第2の出口(112)を介して流出するCO
2リッチの吸収剤の一部は、再生流(132)として再生ユニットへと迂回され、混合器(128)内で有機溶媒(134)と接触する。本明細書に開示されるとおり、有機溶媒は疎水性であり、式(II)のイミンを水性吸収剤から選択的に抽出する能力を理由に選択される。混合器(128)は、有機溶媒への高度なイミン抽出を可能にするよう、十分な乱流と接触時間とを提供する。混合流(136)は混合器から流出した後、相分離ユニット(130)、例えば連続作動型デキャンタに移送され、非混和性有機相と水相とが分離される。水相は、有機相へと抽出されたイミンが枯渇してCO
2リッチの吸収剤となり、再生後の流れ(138)として分離ユニットから流出する。再生後の流れ(138)は、残留イミンを含むが、その濃度は再生流(132)より低いと考えられる。再生後の流れは、脱着カラム(104)からその出口(122)を介して流出するCO
2が希薄な吸収剤と結合されることで、処理装置内で循環する吸収剤溶液の一次ループに再び加わる。
図1に示されるとおり、水相はより低密度の相であり、分離して相分離ユニット(130)内の最上層に移動する。これは比重が水より大きい有機溶媒(ジクロロメタン等)を使用する場合に予想されるとおりである。ただし、比重が水より低い有機溶媒(トルエン等)を使用する場合には、水相が逆に、より高密度の相となる可能性もあることが理解されるべきである。
【0109】
CO2吸収によってイオン強度が増大すると、相間の極性差ひいてはイミン抽出の有効性が増大することから、CO2リッチの吸収剤を再生向けに引き出すことが有利と考えられる。更に、再生吸収剤を、好ましくは、脱着反応器(104)から流出するCO2が希薄な溶液に添加してもよい。これにより、再生吸収剤中に存在するいずれの残留有機溶媒もCO2リッチのガス流生成物に持ち越されるのを防ぐ。むしろ、いずれかの残留有機溶媒の少なくとも一部をストリッピングによって吸収カラム(102)内の吸収剤から除去することができる。ただし、再生向けの吸収剤を、原則として、一次ループ上のいずれかの好適な場所から引き出し、いずれかの好適な場所に戻してもよいことが理解されるべきである。
【0110】
再生流(132)の必要なサイズは、処理装置の一次ループ内で循環する吸収剤の流れと相対的に、予想される分解率、及び吸収剤において許容できる分解生成物のレベルに依存することも理解されるべきである。分解率を最小限化することにより、再生向けに迂回される流れのサイズを低減することができる。したがって、本明細書に開示されるとおり、水性吸収剤は、式(I)のアミンに加え、式(I)のアミンより大きなpKaを有する第三級又は障害アミン等、更なる塩基を含むことが特に好ましい。したがって、(通過毎に)再生向けに迂回される水性吸収剤の割合は、循環する吸収剤全体と相対的に小さく、例えば5%未満、又は2%未満、又は1%未満であってもよい。パイロット規模のCO2吸収実験で得られた分解率の推定に基づき、一次ループ内で循環する吸収剤の約0.1%を連続的に再生することにより、作用する吸収剤における式(II)のイミンの濃度を2重量%未満に維持することができると考えられる。
【0111】
イミン含有有機流(140)は、相分離ユニット(130)から流出する。場合により、この流れを統合型再アミノ化ユニット(142)で処理して、含まれる式(II)のイミンの少なくとも一部を式(I)のアミンに変換する。したがって、次いでアミンはアミン戻り流(144)経由で一次吸収剤ループに再循環される。代替的に、イミン含有有機流(140)を処理して有機溶媒のみ回収する、バッチモードで(又はオフサイトで)処理してアミンを再生する、又は廃棄物として廃棄してもよい。
【0112】
存在する場合、統合型再アミノ化ユニット(142)は、イミン含有有機流(140)を酸性化水相と接触させる加水分解ユニットを含んでいてもよい。このように、本明細書に開示されるとおり、イミンを加水分解して1当量の式(I)のアミン及び1当量の式(III)のアルデヒドを形成する。相分離後、ここで再生アミンを含有する状態となる水相は、アミン戻り流(144)経由で一次吸収剤ループに戻される。アルデヒド含有有機相を更に、オンサイト又はオフサイトで、バッチモード又は連続モードで処理して、還元的アミノ化によってアルデヒドを式(I)のアミンに変換する、且つ/又は有機溶媒を回収する、若しくは廃棄物として廃棄してもよい。
【0113】
本発明の一態様において、i)CO2吸収工程とCO2脱着工程の間で少なくとも1種の式(I)のアミンを含む液体吸収剤を循環させること((a)吸収工程は、CO2を含むガス混合物をCO2が希薄な状態の液体吸収剤と接触させて、CO2リッチの状態の液体吸収剤及びCO2が希薄なガス混合物を形成することを含み、(b)脱着工程は、CO2リッチの状態の液体吸収剤からCO2を脱着させて、CO2が希薄な状態の液体吸収剤及びCO2リッチのガス混合物を形成することを含み、(c)少なくとも1種の式(I)のアミンが分解する結果、液体吸収剤は、少なくとも1種の式(I)のアミンと、少なくとも1種の式(II)のイミンを含むその分解生成物とを含む)と、ii)本明細書に開示される実施形態のいずれか1つに従って液体吸収剤を再生することとを含む、CO2ガスをガス混合物から除去する方法が提供される。
【0114】
他の用途
式(I)のアミンの選択的分解化学作用を、CO2以外のガス、例えばH2S又はSOx等、他の酸性ガスを吸収する方法にも応用可能であると想定される。このようなガスを、CO2と一緒に、又はCO2を含まないガス流から吸収してもよい。
【0115】
一連の実施形態において、式(I)のアミンを使用して、二原子酸素を除去する。このように、式(I)のアミンを液性組成物に、組成物に流入する望ましくない二原子酸素と反応する十分な量で添加することにより、液体組成物における他の望ましくない酸化反応を防止又は抑制する。液体組成物が、より高いレベルの式(II)のイミンを含む状態になれば、本明細書に開示される方法によってその組成物を再生することができる。式(I)のアミンを添加される液体組成物は、モノエタノールアミン系吸収剤(例えば30%のMEA)等の従来型吸収剤を含む、CO2捕捉用途向けのアミン含有吸収剤であってもよい。
【実施例0116】
下記の実施例を参照しながら本発明を説明する。これらの実施例は、本明細書に記載の本発明を例示するものであり、それを制限するものではないことが理解されるべきである。
【0117】
本明細書で使用する化学略語は下記の意味を有する。
AMPy:(アミノメチル)ピリジン
2-AMPy:2-(アミノメチル)ピリジン
3-AMPy:3-(アミノメチル)ピリジン
4-AMPy:4-(アミノメチル)ピリジン
MEA:モノエタノールアミン
AMP:2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール
【0118】
(実施例1)
6mol/Lの3-AMPyを含む水性吸収剤を使用するパイロットプラント試行
実質的に
図1に示されるとおり、吸収カラム(102)、脱着カラム(104)及び熱交換器(126)で構成された、褐炭発電所に所在の0.4トン/日のCO
2捕捉プラントを使用して、拡大型のパイロットプラント試行を実施した。この捕捉プラントを、流速80m
3/時の煙道ガススリップ流を発電所から直接取得しながら稼働させた。
【0119】
6mol/Lの水性3-AMPy (61重量%の3-AMPy及び39重量%の水)での一連の試験を、約1500時間(63日間)にわたり実施した。実施中、プラントの性能をリボイラーのエネルギー要件の観点から評価し、アミンの分解を観察した。形成された単一の支配的分解生成物も特定し、特性評価を行った。低温リッチ分割処理構成(cold rich split process configuration)を用いない場合と用いる場合とでそれぞれ、CO21トン当たり2.9及び2.6GJのリボイラー最低負荷が達成された。これと比べ、どちらの構成でも、5mol/Lのモノエタノールアミン(MEA)の場合にはCO21トン当たり3.4GJである。低温リッチ分割構成では、吸収カラム(102)から流出したCO2リッチの吸収剤の一部が熱交換器(126)を迂回し、CO2リッチの吸収剤の加熱部分用の入口より高いレベルで脱着カラム(104)に流入した。これが水とアミン蒸気とを除去し、脱着カラムに対する凝縮負荷を低減する。
【0120】
加速分解条件下での実験室試験において、形成された支配的分解生成物は3-AMPyのイミン二量体であることが分かった。一連の試験中、赤外(IR)分光法と高速液体クロマトグラフィー(HPLC)とにより、アミン損失とイミン形成のモニタリングを実施した。13C及び1H-NMR分光法によるプラントサンプルの更なる分析の結果、先に特定されたイミンはプラントにおける一次分解生成物であることが確認された。
【0121】
図2は、一連のパイロットプラント試験中のアミンとイミンの濃度の傾向のグラフである。
【0122】
パイロットプラント試行中、分解反応メカニズムについて、実験室にて、全体的な反応を可能性のある個別の化学変換に分け、それらが生じたかどうか試験することによって検討した。判定されたメカニズムは、プロトン化した3-AMPy分子、及びアンモニウムイオンの損失と、それに続く酸化によって進行する。酸素との反応を介した3-AMPyのイミンへの完全な分解メカニズムを下記のスキームに示す。
【0123】
【0124】
(実施例2)
3mol/Lの3-AMPy及び3mol/LのAMPを含有する水性吸収剤を用いるパイロットプラント試行
上記のスキームの分解メカニズムを基に、3-AMPyをより強い塩基と配合して、CO2吸収中のプロトン化3-AMPyの形成を低減すると、その分解を抑制できると考えられた。2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)は必要な塩基性を有し、CO2捕捉用途において堅牢であることが知られているため、これを配合向けのアミンとして選択した。AMPはCO2と直接反応せず、むしろ塩基として作用して、3-AMPyが反応する際に放出されるプロトンを優先的に受容する。シミュレーションは、水性の3mol/Lの3-AMPy及び3mol/LのAMPの吸収剤に用いられる濃度が、分解の低減及び捕捉性能の維持に最適であることを示唆した。
【0125】
一連のパイロットプラント試験を、3mol/Lの3AMPy及び3mol/LのAMP (32重量%の3-AMPy、26重量%のAMP及び42重量%の水)を含有する水性吸収剤を用いて5000時間にわたり実施した。吸収剤の分解が実施例1の吸収剤より大幅に遅かったため、大幅により長い一連の試験を実施可能であった。実施例1と同じリボイラーエネルギー要件が達成された。
図3は、一連の試験期間にわたる3-AMPy、AMP及びイミンの濃度を示す。イミン形成速度は、実施例1の試行で見られたものより桁違いに低かった。加えて、全体的な分解速度は5mol/LのMEAの場合の予想より10倍遅いことが分かった(実施例3参照)。
【0126】
イミン二量体の形成、及びこれにより可能となる、より塩基性が高いアミン共吸収剤の使用による分解の抑制は、アミノ(C1)芳香族系、特にアミノメチル置換ヘテロ芳香族の特有の特性である。アミノ基とピリジン基の間にエチル及びプロピル等のより長い架橋鎖を有する(アミノアルキル)ピリジンは、イミンを形成せず、鎖損失及びより伝統的な、容易に回収又は初期アミンに再生できない生成物を形成するメカニズムによって分解する。
【0127】
(実施例3)
実施例1及び2の吸収剤とMEAの比較
パイロットプラントを、5mol/L (30重量%)の水性モノエタノールアミン(MEA)も使用して約500時間稼働させた。これにより、パラメータ研究によって各吸収剤について最適なリボイラー負荷を特定することが可能となった。これらの最適なリボイラー負荷及びアミン分解速度が下表に示されており、標準のプラント構成向けである(リッチ分割なし)。パイロットプラントでの運転期間が短かったため、MEA分解情報を文献から取得していることに留意されたい。
【0128】
【0129】
モノエタノールアミンの酸化的分解は、有機酸(例えばギ酸及びシュウ酸)、並びに多様な他の生成物を生成することが知られており、それらの多くは水性吸収剤溶液における溶解度が高い。したがって、分解生成物は容易に回収又は再生してモノエタノールアミンを形成することができない。
【0130】
(実施例4)
(アミノメチル)ピリジンの分解を抑制する他の塩基
実施例2に示されるとおり、吸収体組成物にAMPが存在すると、CO2吸収時に形成されるAMPy誘導体の二量体化によって生成されるイミンの形成が抑制された。(アミノメチル)ピリジンより共役酸pKaが高いアミンを含む他の塩基を、この役割に使用してもよい。好ましい塩基は、安定し、CO2吸収時にプロトンを受容する役割を提供する第三級及び立体障害アミンである。25℃での2-(アミノメチル)ピリジン、3-(アミノメチル)ピリジン及び4-(アミノメチル)ピリジンの平均pKaは8.6である。
【0131】
好適な塩基は典型的に、(アミノメチル)ピリジンのpKaより少なくとも0.25単位高いpKa、すなわち8.6より約0.25単位高いpKaを有する(これはプロトンに対する選択性が2.5倍高くなることに相当する)。好適な第三級及び立体障害アミン、炭酸塩及びアミノ酸塩の例としては、25℃での共役酸のpKaと併せて下表に記載のものが挙げられる。
【0132】
【0133】
(実施例5)
有機溶媒へのイミン二量体の抽出
3mol/Lの3-AMPy及び3mol/Lの2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)を当初含有していた水性吸収剤のサンプルを、実施例2に記載の一連のパイロットプラント試験での3800時間(約158日間)の運転後に取得した。AMPの結果として溶液の安定性が向上したにもかかわらず、
図3から、この時点までに顕著な量(約0.2mol/L)のイミン二量体分解生成物が存在していたことが明らかに分かる。
【0134】
同量のサンプル及びジクロロメタンを分離ファンネルに入れて激しく振り、相分離させた。次いで2つの相を収集し、GG-MSによって別々に分析した。
図4及び
図5はそれぞれ有機相と水相のガスクロマトグラフを示し、ピークは参照スペクトルのライブラリとの比較によって質量分析法により特定されている。有機相にはイミン分解生成物がほぼ独占的に存在する一方、水相にはアミン吸収剤がほぼ独占的に残留することが分かった。
【0135】
同じ水性吸収剤のサンプルを、同量のトルエン又は酢酸エチルも使用して抽出した。ジクロロメタン、トルエン及び酢酸エチルでの抽出後の有機相を、13C-NMRによって分析した。3つの事例全てにおいて、スペクトルから、有機相へのイミン二量体の選択的抽出に成功したことが確認された。
【0136】
(実施例6)
粘度に対する再生の効果
3mol/Lの3-AMPy及び3mol/Lの2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)を当初含有しており、実施例2に記載の一連のパイロットプラント試験での約5000時間(約208日間)の運転後に取得した水性吸収剤の別のサンプルを、実施例5に記載のとおり、ジクロロメタンで抽出した。抽出の結果、サンプルの粘度は9.9mPa.sから6.0mPa.sに低下した(Anton Parr社のLOVIS 2000 ME測定機器を使用して40℃で測定)。これと比べ、未使用の、CO2を含まない吸収剤の粘度は4.7mPa.sであった。粘度低下の効果は、流動特性の改善及び質量移動抵抗の低減を通じ、プラントにおける吸収剤の性能が向上することである。
【0137】
イミン分解生成物が粘度に与える影響を確認するため、イミンを人工合成し、下記のスキームに従って単離した。
【0138】
【0139】
合成イミン(構造をIR分光法によって確認)を未使用の吸収剤に添加し、粘度に対する影響を測定した(Anton Parr社のLOVIS 2000 MEを使用して40℃で測定)。溶液の粘度は、添加した合成イミンの濃度に比例して増加した。
【0140】
(実施例7)
イミン分解生成物からの3-AMPyの再生
3mol/Lの3-AMPy及び3mol/Lの2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)を当初含有していた水性吸収剤のサンプルを、実施例2に記載の一連のパイロットプラント試験での約3800時間(約158日間)の運転後に取得した。サンプルを同量のジクロロメタン(DCM)と一緒に分離ファンネルに入れ、1分間振った。次いで相を分離させ、各相を別々に収集した。ここではDCM中に存在したイミン分解生成物を2工程の手順によって3-AMPyに変換し、イミン1モル毎に第1の当量及び第2の当量の3-AMPyを連続的に得た。第1の工程で、2当量の酢酸及び過剰水をイミン二量体のDCM溶液に添加し、室温で24時間にわたり激しく撹拌した。イミン二量体は酸性水性条件下では不安定であるため、下記のスキームに従って加水分解して3-AMPy及びアルデヒドの分子を形成させた。
【0141】
【0142】
得られた水/DCM混合物を分離ファンネルに入れ、相分離後に水相とDCM相とを別々に収集した。3-AMPyは水相に残留し、アルデヒドはDCM相に残留した。次いで、DCM/アルデヒド溶液を室温で2時間にわたりヒドロキシルアミン及び塩酸(HCl)を添加してエタノール中で撹拌することにより、アルデヒドを3-AMPyの更なる部分に変換させ、オキシムを形成させた。次いで少量の亜鉛(Zn)を添加し、撹拌を2時間継続した結果、オキシムをアミンに還元した。この反応は下記のスキームに従って進行する。次いでZn粉塵を濾過によって除去し、DCMとエタノールとを回転蒸発によって除去した。純粋な3-AMPyの形成を1H-NMRによって確認した。
【0143】
【0144】
(実施例8)
ベンジルアミンの酸化的分解
式(I)のもう1種のアミンであるベンジルアミン(BZA)の酸化的分解について、ガス捕捉方法における長期分解をシミュレートするよう設計された加速分解条件を用いて検討した。1mol/LのBZA溶液10mLを、Fischer-Porter社の容器に入れた。容器を密閉し、容器の残存頭上空間をCO
2(1bar)とO
2(9bar)とで満たした。容器内の液相を磁気撹拌棒によって撹拌し、水槽に浸漬して10日間にわたり55℃まで加熱した。次いでサンプルを取得し、
13C-NMR分光法(Bruker社のAvance 400)によって分析した。得られたスペクトルは、
図6に示され、特徴的な160.57ppmでのC=Nピーク及び93.66ppmでのN-Cピークから、相当量の該当する式(II)のイミンの形成を明確に示した。相対ピーク面積を基に、BZAの約41%がイミンに変換されていた。
【0145】
(実施例9)
固体吸収によるイミン二量体の抽出
3mol/Lの3-AMPy及び3mol/Lの2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)を当初含有していた水性吸収剤のサンプルを、実施例2に記載の一連のパイロットプラント試験での5000時間(約208日間)の運転後に取得した。AMPの結果として溶液の安定性が向上したにもかかわらず、この時点までに顕著な量(約0.35mol/L)のイミン二量体分解生成物が存在していた。
【0146】
Amberlite XAD-2という、疎水性架橋ポリスチレンコポリマー樹脂を、脱イオン水中で3回洗浄し、続いてジクロロメタン(DCM)中で3回洗浄した。洗浄したビーズを、5000時間にわたり煙道ガスに曝露させた吸収剤サンプルと混合した。混合物を2時間撹拌して、疎水性成分をポリマー樹脂に付着させた。混合物を濾過して、分解後のアミン吸収剤の水溶性部分を除去した。ビーズを水で洗浄し、この水を濾液に添加した。次いでビーズを、DCMで3回に分けて洗浄し、収集したDCMを部分的に蒸発させた。
【0147】
図7は、(a) Amberliteとの接触前のサンプル、(b)水性濾液及び(c) DCM洗浄液残留物の
13C-NMRスペクトルを示す。160ppm付近の特徴的なイミンピークがDCM洗浄液に明確に存在するが水性濾液には実質的に存在せず、これはイミンの大部分がAmberliteによって抽出されたことを示唆する。42ppm付近のピークの欠如(これらのピークはサンプル及び水性濾液のスペクトルには存在する)によって証明されるとおり、アミンはほとんどビーズに抽出されず、DCM洗浄液に持ち越された。AmberliteからDCMに吸収されたイミンを洗浄すれば、アミンを液-液抽出によって抽出されるイミンと同じ形態で更に処理できる。
【0148】
(実施例10)
犠牲酸素捕捉剤としてのBZA及び3-AMPy
ジエタノールアミン(DEA)は、CO2分離用途向けに産業で使用される低コストのアルカノールアミンであり、O2の存在下で分解することが知られている。DEA分解に対する3-アミノメチルピリジン(3-AMPy)及びベンジルアミン(BZA)の効果について、ガス捕捉方法における長期分解をシミュレートするよう設計された加速分解条件を用いて検討した。したがって、DEA溶液を次のとおり調製した:i)6mol/LのDEA、ii)5.9mol/LのDEA及び0.1mol/LのBZA、並びにiii)5.9mol/LのDEA及び0.1mol/Lの3-AMPy。各溶液(10mL)を、Fischer-Porter社の容器に入れた。容器を密閉し、容器の残存頭上空間をCO2(1bar)とO2(9bar)とで満たした。容器内の液相を磁気撹拌棒によって撹拌し、水槽に浸漬して115時間にわたり55℃まで加熱した。
【0149】
次いでサンプルを取得し、
13C-NMR分光法(Bruker社のAvance 400)によって分析した。得られたスペクトルが
図8に示されている。これらのスペクトルは、DEAのみの溶液(
図8c)の場合、非分解溶液(
図8d)と比較してDEA分解の形成(67ppmでのピーク)がかなりの量であることを明確に示す。少量のBZA又は3-AMPyを含む溶液の場合、この分解は生じなかった(それぞれ
図8b及び
図8a)。0.1mol/LのBZA又は0.1mol/Lの3-AMPyの存在下でDEA分解の不発生は、これらのアミンが選択的に分解したことでDEA分解を防止したことを実証するものである。
【0150】
当業者は、本明細書に記載の本発明が、具体的に記載されているもの以外の変形形態や変更形態を受け入れる余地があることを理解するであろう。本発明は、本発明の精神と範囲に含まれる、そのような変形形態や変更形態を全て含むことが理解される。
【0151】
将来の特許出願が、本出願に基づいて、又は本出願からの優先権を主張する形で、オーストラリア又は海外で出願される場合もある。下記の暫定的な特許請求の範囲は単に例示であり、あらゆるこのような将来の出願において主張される可能性のある内容の範囲の制限を意図するものではないことが理解されるべきである。1つ又は複数の本発明の更なる定義又は再定義を目的に、後日、特徴が暫定的な特許請求の範囲に追加される、又は暫定的な特許請求の範囲から省略される場合もある。