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特開2024-107128交換可能なイオンビームターゲットを用いるシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107128
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】交換可能なイオンビームターゲットを用いるシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   H05H 3/06 20060101AFI20240801BHJP
【FI】
H05H3/06
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024091523
(22)【出願日】2024-06-05
(62)【分割の表示】P 2021578178の分割
【原出願日】2020-06-29
(31)【優先権主張番号】62/869,337
(32)【優先日】2019-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518434245
【氏名又は名称】フェニックス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ジェイコブソン,ルーカス
(72)【発明者】
【氏名】グリッブ,タイ
(72)【発明者】
【氏名】ラデル,ロス
(72)【発明者】
【氏名】センブッシュ,エヴァン
(72)【発明者】
【氏名】バロウズ,プレストン
(72)【発明者】
【氏名】モル,エリ
(57)【要約】
【課題】交換可能なイオンビームターゲットを用いるシステムおよび方法を提供する。
【解決手段】本明細書において提供されるのは、複数の交換可能なイオンビームターゲットを用いて複数の種々の単一エネルギーの中性子エネルギーを生成するための、複数のシステムおよび複数の方法である。特定の実施形態では、前記複数のイオンビームターゲットの各々は、他のイオンビームターゲットとは少なくとも100キロ電子ボルト(keV)異なる単一エネルギーのエネルギー値を生成するように構成されている。いくつかの実施形態では、前記複数のイオンビームターゲットは、LiF、TiD1.5-1.8、TiT1-2、ErD1.5、ErTまたはLiから構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)第1のターゲットを、少なくとも2つのイオンビームターゲットのセットから、加速イオンビームを生成するイオンビーム加速器へと挿入する工程と、
b)加速イオンビームが前記第1のターゲットに衝突するような長さの間、前記イオンビーム加速器を作動させ、それにより、第1の単一エネルギーの中性子エネルギー値を有する複数の中性子を生成する工程と、
c)前記イオンビーム加速器から前記第1のターゲットを除去する工程と、
d)第2のターゲットを、前記少なくとも2つのターゲットのセットから、前記イオンビーム加速器へと挿入する工程と、
e)イオンビームが前記第2のターゲットに衝突するような長さの間、前記イオンビーム加速器を作動させ、それにより、前記第1の単一エネルギーの中性子エネルギー値とは少なくとも100キロ電子ボルト(keV)異なる第2の単一エネルギーの中性子エネルギー値を有する複数の中性子を生成する工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記第2の単一エネルギーの中性子エネルギー値は、前記第1の単一エネルギーの中性子エネルギー値とは少なくとも500キロ電子ボルト異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも2つのイオンビームターゲットは、少なくとも3つのイオンビームターゲットを含み、
f)前記イオンビーム加速器から前記第2のターゲットを除去する工程と、
g)第3のターゲットを、前記少なくとも3つのターゲットのセットから、前記イオンビーム加速器へと挿入する工程と、
h)イオンビームが前記第3のターゲットに衝突するような長さの間、前記イオンビーム加速器を作動させ、それにより、前記第1および第2の単一エネルギーの中性子エネルギー値の両方とは少なくとも100キロ電子ボルト(keV)異なる第3の単一エネルギーの中性子エネルギー値を有する複数の中性子を生成する工程と、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第3の単一エネルギーの中性子エネルギー値は、前記第1および第2の単一エネルギーの中性子エネルギー値とは少なくとも500キロ電子ボルト異なる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも3つのイオンビームターゲットは、少なくとも4つのイオンビームターゲットを含み、
i)前記イオンビーム加速器から前記第3のターゲットを除去する工程と、
j)第4のターゲットを、前記少なくとも4つのターゲットのセットから、前記イオンビーム加速器へと挿入する工程と、
k)イオンビームが前記第4のターゲットに衝突するような長さの間、前記イオンビーム加速器を作動させ、それにより、前記第1、第2および第3の単一エネルギーの中性子エネルギー値のうちの全てとは少なくとも100キロ電子ボルト(keV)異なる第4の単一エネルギーの中性子エネルギー値を有する複数の中性子を生成する工程と、
をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記第4の単一エネルギーの中性子エネルギー値は、前記第1、第2および第3の単一エネルギーの中性子エネルギー値とは少なくとも500キロ電子ボルト異なる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記複数のイオンビームターゲットの各々は、
LiF、TiD1.5-1.8、TiT1-2、ErD1.5、ErTもしくはLiを含むか、
LiF、TiD1.5-1.8、TiT1-2、ErD1.5、ErTもしくはLiからなるか、
または、LiF、TiD1.5-1.8、TiT1-2、ErD1.5、ErTもしくはLiから実質的になる、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも4つのイオンビームターゲットの各々は、前記第1、第2、第3および第4のイオンビームターゲットの中で特有の厚さを有する、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも4つのイオンビームターゲットの全体によって、少なくとも10メガ電子ボルト(MeV)に及ぶ範囲の単一エネルギーの中性子エネルギー値を有する複数の中性子が提供される、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
工程b)と工程c)との間に、第1の単一エネルギーの中性子エネルギー値を有する前記複数の中性子を用いてアイテムをスキャンする工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記アイテムは、宇宙システム、宇宙機器、航空機部品、インフラストラクチャ、および輸送システムの部品からなる群から選択されるものである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも4つのイオンビームターゲットの各々は、約300keV、約1MeV、約2.5MeV、約4MeV、約6MeVおよび約14MeVからなる群から選択される異なる単一エネルギーの中性子エネルギー値を生成する、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
a)コンピュータプロセッサと、
b)1つ以上のコンピュータプログラム、およびデータベースを含む、非一時的なコンピュータメモリであって、前記1つ以上のコンピュータプログラムは、加速器システム操作ソフトウェアを含む、非一時的なコンピュータメモリと、
c)前記非一時的なコンピュータメモリと動作可能に通信状態にある以下の複数のサブシステム:
i)複数のイオンビームターゲットのうちの1つを保持するように構成されたターゲット保持機構を備えるターゲットステーション、および、
ii)前記複数のイオンビームターゲットのいずれがイオンビーム加速器システム内に存在するのかに基づいて、前記加速器システム操作ソフトウェアによって調整される強さを有するイオンビームを生成するビーム生成サブシステム、
のうちの1つ以上のサブシステムを含む前記イオンビーム加速器システムであって、前記複数のイオンビームターゲットから選択された前記イオンビーム加速器システム内に存在する特定のイオンビームターゲットを捉えるように前記加速器システム操作ソフトウェアによって自動的に調整され得る前記イオンビーム加速器システムと、
を備える、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年7月1日に出願された米国仮出願第62/869,337号の優先権を主張するものである。その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
本明細書において提供されるのは、複数の交換可能なイオンビームターゲットを用いて複数の種々の単一エネルギーの(monoenergetic)中性子エネルギーを生成するための、複数のシステムおよび複数の方法である。特定の実施形態では、前記複数のイオンビームターゲットの各々は、他のイオンビームターゲットとは少なくとも100キロ電子ボルト(keV)異なる単一エネルギーのエネルギー値を生成するように構成されている。いくつかの実施形態では、前記複数のイオンビームターゲットは、LiF、TiD1.5-1.8、TiT1-2、ErD1.5、ErTまたはLiから構成されている。
【背景技術】
【0003】
中性子ラジオグラフィーおよびトモグラフィーは、航空宇宙、エネルギー、自動車、防衛および他の分野における製造された部品の非破壊試験および品質管理のための、証明された技術である。X線と同様、中性子が物体を通過するとき、中性子はその物体の内部構造に関する情報を提供する。中性子は、多くの高密度材料を容易に通過することができ、内部材料についての詳細な情報を提供する。これには、多くの低密度材料が含まれる。この特性は、ジェットエンジンタービンブレード、衛星部品、軍需品、航空機および宇宙船部品、ならびに複合材料を含む、非破壊評価を必要とする多くの部品にとって、極めて重要である。
【発明の概要】
【0004】
本明細書において提供されるのは、複数の交換可能なイオンビームターゲットを用いて複数の種々の単一エネルギーの中性子エネルギーを生成するための、複数のシステムおよび複数の方法である。特定の実施形態では、前記複数のイオンビームターゲットの各々は、他のイオンビームターゲットとは少なくとも100キロ電子ボルト(keV)異なる(または10~90keV異なる)単一エネルギーのエネルギー値を生成するように構成されている。いくつかの実施形態では、前記複数のイオンビームターゲットは、LiF、TiD1.5-1.8、TiT1-2、ErD1.5、ErTまたはLiから構成されている。
【0005】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、複数の単一エネルギーの中性子エネルギーを生成するための複数のシステムであって、a)イオンビームを生み出すように構成されたイオン源と、b)前記イオン源に動作可能に結合され、前記イオンビームを受け取り、前記イオンビームを加速して加速イオンビームを生成するように構成された加速器と、c)ターゲット保持機構を備えるターゲットステーションと、d)複数の交換可能なイオンビームターゲットであって、前記複数の交換可能なイオンビームターゲットの各々は、i)前記ターゲット保持機構によって保持されるように構成され、かつii)前記加速イオンビームが衝突したとき、前記複数の交換可能なイオンビームターゲットの中で特有の単一エネルギーの中性子エネルギー値を有する複数の中性子を生成する、前記複数の交換可能なイオンビームターゲットと、を備え、前記加速イオンビームが衝突したとき、前記複数の交換可能なイオンビームターゲットの全体によって、少なくとも300キロ電子ボルト(keV)に及ぶ(または少なくとも150~250keVに及ぶ)範囲の単一エネルギーの中性子エネルギー値を有する複数の中性子が提供される、複数のシステムである。
【0006】
特定の実施形態では、前記複数の交換可能なイオンビームターゲットの各々は、LiF、TiD1.5-1.8、TiT1-2、ErD1.5、ErTおよび/もしくはLiを含むか、LiF、TiD1.5-1.8、TiT1-2、ErD1.5、ErTおよび/もしくはLiからなるか、または、LiF、TiD1.5-1.8、TiT1-2、ErD1.5、ErTおよび/もしくはLiから実質的になる。他の実施形態では、前記複数の交換可能なイオンビームターゲットの各々は、iii)前記複数のイオンビームターゲットの中で特有の厚さを有する。さらなる実施形態では、前記複数の交換可能なイオンビームターゲットの全体によって、少なくとも1メガ電子ボルト(MeV)(例えば、少なくとも1...1.5...2.0...4.5...7.0...または9.0MeV)に及ぶ範囲の単一エネルギーの中性子エネルギー値を有する複数の中性子が提供される。特定の実施形態では、前記複数の交換可能なイオンビームターゲットの全体によって、少なくとも10メガ電子ボルト(例えば、少なくとも10...12...15...または20メガ電子ボルト)に及ぶ範囲の単一エネルギーの中性子エネルギー値を有する複数の中性子が提供される。
【0007】
特定の実施形態では、前記複数の交換可能なイオンビームターゲットの各々の前記単一エネルギーの中性子エネルギーは、互いに少なくとも100keV異なる(例えば、少なくとも100...200...400...800...または2000keV)。さらなる実施形態では、前記複数の交換可能なイオンビームターゲットの各々の前記単一エネルギーの中性子エネルギーは、互いに少なくとも500keV異なる。いくつかの実施形態では、前記複数の交換可能なイオンビームターゲットは、少なくとも3つのイオンビームターゲット(例えば、少なくとも3、4、5、6、7、8または9)を含む。他の実施形態では、前記複数の交換可能なイオンビームターゲットは、少なくとも6つのイオンビームターゲット(例えば、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14または15)を含む。特定の実施形態では、前記複数の交換可能なイオンビームターゲットは、i)約300keVの単一エネルギーの中性子エネルギー値を生成する第1のイオンビームターゲット、ii)約1MeVの単一エネルギーの中性子エネルギー値を生成する第2のイオンビームターゲット、iii)約2.5MeVの単一エネルギーの中性子エネルギー値を生成する第3のイオンビームターゲット、iv)約4MeVの単一エネルギーの中性子エネルギー値を生成する第4のイオンビームターゲット、v)約6MeVの単一エネルギーの中性子エネルギー値を生成する第5のイオンビームターゲット、およびvi)約14MeVの単一エネルギーの中性子エネルギー値を生成する第6のイオンビームターゲット、を含む。いくつかの実施形態では、前述の値の間の単一エネルギーの中性子エネルギー値が採用される(例えば700keV、2.3MeV、3.1MeV、5.2MeV、および12.3MeV)。
【0008】
いくつかの実施形態では、前記複数のシステムは、制御システムをさらに備え、前記制御システムは、前記複数の交換可能なイオンビームターゲットのいずれが前記ターゲット保持機構によって保持されるのかに基づいて、前記加速イオンビームの入射イオンエネルギーを変更するように構成されたソフトウェアを備える。他の実施形態では、前記複数のシステムは、前記複数の中性子によりアイテム(物品)をスキャンするように構成された試験施設をさらに備える。特定の実施形態では、前記アイテムは、宇宙システム、宇宙機器、航空機部品、インフラストラクチャ、および、輸送システムの部品からなる群から選択されるものである。特定の実施形態では、前記複数のシステムは、コリメータをさらに備える。他の実施形態では、前記ターゲットステーションは、水冷システムをさらに備える。
【0009】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、a)第1のターゲットを、少なくとも2つのイオンビームターゲットのセットから、加速イオンビームを生成するイオンビーム加速器へと挿入する工程と、b)加速イオンビームが前記第1のターゲットに衝突するような長さの間、前記イオンビーム加速器を作動させ、それにより、第1の単一エネルギーの中性子エネルギー値を有する複数の中性子を生成する工程と、c)前記イオンビーム加速器から前記第1のターゲットを除去する工程と、d)第2のターゲットを、前記少なくとも2つのターゲットのセットから、前記イオンビーム加速器へと挿入する工程と、e)イオンビームが前記第2のターゲットに衝突するような長さの間、(および特定のエネルギーにおいて)前記イオンビーム加速器を作動させ、それにより、前記第1の単一エネルギーの中性子エネルギー値とは少なくとも100キロ電子ボルト(keV)異なる第2の単一エネルギーの中性子エネルギー値を有する複数の中性子を生成する工程と、を含む、複数の方法である。他の実施形態では、前記第2の単一エネルギーの中性子エネルギー値は、前記第1の単一エネルギーの中性子エネルギー値とは少なくとも500キロ電子ボルト(keV)異なる(例えば、少なくとも500...1000...2000...10,000keV)。
【0010】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも2つのイオンビームターゲットは、少なくとも3つのイオンビームターゲットを含み、前記方法は、f)前記イオンビーム加速器から前記第2のターゲットを除去する工程と、g)第3のターゲットを、前記少なくとも3つのターゲットのセットから、前記イオンビーム加速器へと挿入する工程と、h)イオンビームが前記第3のターゲットに衝突するような長さの間、前記イオンビーム加速器を作動させ、それにより、前記第1および第2の単一エネルギーの中性子エネルギー値の両方とは少なくとも100キロ電子ボルト(keV)異なる第3の単一エネルギーの中性子エネルギー値を有する複数の中性子を生成する工程と、をさらに含む。さらなる実施形態では、前記第3の単一エネルギーの中性子エネルギー値は、前記第1および第2の単一エネルギーの中性子エネルギー値とは少なくとも500キロ電子ボルト異なる。
【0011】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも3つのイオンビームターゲットは、少なくとも4つのイオンビームターゲットを含み、前記方法は、i)前記イオンビーム加速器から前記第3のターゲットを除去する工程と、j)第4のターゲットを、前記少なくとも4つのターゲットのセットから、前記イオンビーム加速器へと挿入する工程と、k)イオンビームが前記第4のターゲットに衝突するような長さの間、前記イオンビーム加速器を作動させ、それにより、前記第1、第2および第3の単一エネルギーの中性子エネルギー値のうちの全てとは少なくとも100キロ電子ボルト(keV)異なる第4の単一エネルギーの中性子エネルギー値を有する複数の中性子を生成する工程と、をさらに含む。いくつかの実施形態では、前記第4の単一エネルギーの中性子エネルギー値は、前記第1、第2および第3の単一エネルギーの中性子エネルギー値とは少なくとも500キロ電子ボルト異なる。いくつかの実施形態では、複数の前記工程は、第5、第6、第7またはそれ以上のイオンビームターゲットについて、繰り返される。
【0012】
いくつかの実施形態では、前記複数のイオンビームターゲットの各々は、LiF、TiD1.5-1.8、TiT1-2、ErD1.5、ErTもしくはLiを含むか、LiF、TiD1.5-1.8、TiT1-2、ErD1.5、ErTもしくはLiからなるか、または、LiF、TiD1.5-1.8、TiT1-2、ErD1.5、ErTもしくはLiから実質的になる。他の実施形態では、前記少なくとも4つのイオンビームターゲットの各々は、前記第1、第2、第3および第4のイオンビームターゲットの中で特有の厚さを有する。さらなる実施形態では、前記少なくとも4つのイオンビームターゲットの全体によって、少なくとも5または10メガ電子ボルト(MeV)に及ぶ範囲の単一エネルギーの中性子エネルギー値を有する複数の中性子が提供される(例えば、少なくとも5...7...10...15...20...または30MeV)。特定の実施形態では、前記方法は、工程b)と工程c)との間に(または工程g)と工程h)との間に、または工程j)と工程k)との間に)、第1の単一エネルギーの中性子エネルギー値を有する前記複数の中性子を用いてアイテムをスキャンする工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、前記アイテムは、宇宙システム、宇宙機器、航空機部品、インフラストラクチャ、および輸送システムの部品からなる群から選択されるものである。特定の実施形態では、前記少なくとも2つ、または少なくとも3つ、または少なくとも4つのイオンビームターゲットの各々は、約300keV、約1MeV、約2.5MeV、約4MeV、約6MeVおよび約14MeVからなる群から選択される異なる単一エネルギーの中性子エネルギー値を生成する。
【0013】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、a)コンピュータプロセッサと、b)1つ以上のコンピュータプログラム、およびデータベースを含む、非一時的なコンピュータメモリであって、前記1つ以上のコンピュータプログラムは、加速器システム操作ソフトウェアを含む、非一時的なコンピュータメモリと、c)前記非一時的なコンピュータメモリと動作可能に通信状態にある以下の複数のサブシステム:i)複数のイオンビームターゲットのうちの1つを保持するように構成されたターゲット保持機構を備えるターゲットステーション、および、ii)前記複数のイオンビームターゲットのいずれがイオンビーム加速器システム内に存在するのかに基づいて、前記加速器システム操作ソフトウェアによって調整される強さを有するイオンビームを生成するビーム生成サブシステム、のうちの1つ以上のサブシステムを含む前記イオンビーム加速器システムであって、前記複数のイオンビームターゲットから選択された前記イオンビーム加速器システム内に存在する特定のイオンビームターゲットを捉えるように前記加速器システム操作ソフトウェアによって自動的に調整され得る前記イオンビーム加速器システムと、を備える、複数のシステムである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本特許または特許出願書類は、色彩を付して作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を付した本特許または特許出願公開の写しは、申請および必要な手数料の納付があるときに、特許庁(the Office)により提供される。
図1】試験施設に設置された加速器システムの例示的な概略図を示す。
図2】加速器システム、試験施設および制御コンポーネントの例示的なボックス図を示す。
図3A】ターゲットステーションを含む加速器システムの例示的な部分を、非断面図において示す。
図3B】ターゲットステーションを含む加速器システムの例示的な部分の特定のコンポーネントを、断面図において示す。
図4A】ビームラインが次いでターゲットに衝突することができないようにビームダンプが当該ビームラインを遮る、例示的な実施形態を示す。
図4B】どのようにしてビームダンプが引き込んで、コリメータおよびターゲットへとビームが進み続けることを可能とすることができるのかを示す。
図5】例示的なターゲットステーションの断面図を示す。
図6A】本明細書のシステムにおいて使用するための例示的なターゲット保持フランジの上面図を示す。
図6B】本明細書のシステムにおいて使用するための例示的なターゲット保持フランジの断面図を示す。
図7】例示的なターゲットステーションの断面図を示す。
図8】例示的な4フィンガコリメータおよび保持機構を示す。
図9】300keVにおけるp-LiFターゲットから2cmの場合の中性子エネルギースペクトルターゲットモデリングを示し、種々のターゲット厚さに対するフラックス(束)とエネルギーとの関係を示す。
図10】400keVにおけるp-LiFターゲットから2cmの場合の中性子エネルギースペクトルターゲットモデリングを示し、種々のターゲット厚さに対する束とエネルギーとの関係を示す。
図11】500keVにおけるp-LiFターゲットから2cmの場合の中性子エネルギースペクトルターゲットモデリングを示し、種々のターゲット厚さに対するフラックスとエネルギーとの関係を示す。
図12】1MeVにおけるp-LiFターゲットから2cmの場合の中性子エネルギースペクトルターゲットモデリングを示し、種々のターゲット厚さの場合のフラックスとエネルギーとの関係を示す。
図13】2.5MeVにおけるp-LiFターゲットから2cmの場合の中性子エネルギースペクトルターゲットモデリングを示し、種々のターゲット厚さの場合のフラックスとエネルギーとの関係を示す。
図14】3.9MeVにおけるp-LiFターゲットから2cmの場合の中性子エネルギースペクトルターゲットモデリングを示し、種々のターゲット厚さに対するフラックスとエネルギーとの関係を示す。
図15】4MeVにおけるd-TiD1.5ターゲットから2cmの場合の中性子エネルギースペクトルターゲットモデリングを示し、種々のターゲット厚さに対するフラックスとエネルギーとの関係を示す。
図16】6MeVにおけるd-TiD1.5ターゲットから2cmの場合の中性子エネルギースペクトルターゲットモデリングを示し、種々のターゲット厚さに対するフラックスとエネルギーとの関係を示す。
図17】15MeVにおけるd-LiFターゲットから2cmの場合の中性子エネルギースペクトルターゲットモデリングを示し、種々のターゲット厚さに対するフラックスとエネルギーとの関係を示す。
図18】300keVにおけるp-LiFターゲットから30cmの場合の中性子エネルギースペクトルターゲットモデリングを示し、種々のターゲット厚さの場合のフラックスとエネルギーとの関係を示す。
図19】400keVにおけるp-LiFターゲットから30cmの場合の中性子エネルギースペクトルターゲットモデリングを示し、種々のターゲット厚さの場合のフラックスとエネルギーとの関係を示す。
図20】500keVにおけるp-LiFターゲットから30cmの場合の中性子エネルギースペクトルターゲットモデリングを示し、種々のターゲット厚さの場合のフラックスとエネルギーとの関係を示す。
図21】1MeVにおけるp-LiFターゲットから30cmの場合の中性子エネルギースペクトルターゲットモデリングを示し、種々のターゲット厚さの場合のフラックスとエネルギーとの関係を示す。
図22】2.5MeVにおけるp-LiFターゲットから30cmの場合の中性子エネルギースペクトルターゲットモデリングを示し、種々のターゲット厚さの場合のフラックスとエネルギーとの関係を示す。
図23】3.9MeVにおけるp-LiFターゲットから30cmの場合の中性子エネルギースペクトルターゲットモデリングを示し、種々のターゲット厚さの場合のフラックスとエネルギーとの関係を示す。
図24】4MeVにおけるd-TiD1.5ターゲットから30cmの場合の中性子エネルギースペクトルターゲットモデリングを示し、種々のターゲット厚さに対するフラックスとエネルギーとの関係を示す。
図25】6MeVにおけるd-TiD1.5ターゲットから30cmの場合の中性子エネルギースペクトルターゲットモデリングを示し、種々のターゲット厚さに対するフラックスとエネルギーとの関係を示す。
図26】15MeVにおけるd-LiFターゲットから30cmの場合の中性子エネルギースペクトルターゲットモデリングを示し、種々のターゲット厚さの場合のフラックスとエネルギーとの関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において提供されるのは、複数の交換可能なイオンビームターゲットを用いて複数の種々の単一エネルギーの中性子エネルギーを生成するための、複数のシステムおよび複数の方法である。特定の実施形態では、前記複数のイオンビームターゲットの各々は、他のイオンビームターゲットとは少なくとも100キロ電子ボルト(keV)異なる単一エネルギーのエネルギー値を生成するように構成されている。いくつかの実施形態では、前記複数のイオンビームターゲットは、LiF、TiD1.5-1.8、TiT1-2、ErD1.5、ErTまたはLiから構成されている。
【0016】
特定の実施形態では、本明細書に提供されるのは、照射効果試験(radiation effects testing)および中性子スキャンに用いられ、さまざまな中性子エネルギーをともなう、単一の中性子システムである。特定の実施形態では、宇宙システムおよび宇宙機器(例えば、衛星および衛星部品)、放射線損傷を受ける可能性のある材料および部品、放射線損傷を受ける可能性のある材料および部品、民生原子力発電所において用いられる機能/電子システム(例えば、機器核化(equipment nuclearization))、インフラストラクチャ(例えば、雷に対するハードニング(hardening))、特に信頼性に関して自然放射線環境(例えば、大気中性子)に敏感であり得るだろうシステム(例えば輸送手段)、ならびに指向性エネルギー兵器(例えば、高パワーマイクロ波(High Power Microwave))からの脅威を扱う必要のあるシステムを含むものの、これらに限定されるのではない、システムおよび部分が、放射線および/または内部欠陥のためにスキャンされる。いくつかの実施形態では、本明細書のシステムおよび実施形態は、複数の種々の中性子照射値(例えば、14MeV、6MeV、4MeV、2.5MeV、1MeVおよび300keV中性子照射)の下での部品の挙動を評価することを可能にする。表1では、対応する例示的な中性子束(中性子フラックス)を有する例示的な中性子エネルギーが提供される。
【0017】
【表1】
【0018】
特定の実施形態では、単一の加速器システム内において交換可能な複数の種々のイオンビームターゲットが用いられる。いくつかの実施形態では、さまざまな厚さのLiFターゲットが用いられる(例えば、表1の300keV、400keV、500keV、1MeV、2.5MeVおよび15MeVの中性子の場合)。特定の実施形態では、さまざまな厚さのTiD1.5ターゲットが用いられる(例えば、表1の4MeVおよび6MeVの中性子の場合)。National Electrostatics Corporation(NEC)によって提供されるアジャスタブルな商用のタンデム加速器システム(tandem accelerator system)等の、任意のタイプの適切な加速器システムが、本明細書において用いられ得る。例示的な加速器システムの性能仕様を以下の表2に示す。
【0019】
【表2】
【0020】
特定の実施形態では、本明細書のシステムは単一のビームラインを用いるが、一方、他の実施形態では、複数のビームラインが複数のターゲットステーションとともに用いられる。特定の実施形態では、純リチウム(pure lithium)イオンビームターゲットが用いられる。
【0021】
任意のタイプの適切なイオン源が、本明細書のシステムとともに用いられ得る。特定の実施形態では、(例えば、トロイダル放電チャンバ(Toroidal discharge chamber)を有する)陽子または重陽子イオン源が用いられる。特定の実施形態では、イオン源電源ならびに仕切弁(アイソレーションバルブ)およびバッキングポンプを有する2つの分子ポンプ(例えば、650l/sターボ)は、例えば、-60kVにバイアスアップされる。特定の実施形態では、2つの4.2kVA定格絶縁トランスが用いられ、AC電力がイオン源ポンプおよび電源に届けられる。いくつかの実施形態では、絶縁流体が冷却のため、接地電位からイオン源へと閉ループにおいてポンプ送りされる。特定の実施形態では、以下のシステムコンポーネントのうちの1つ以上が用いられる:エクストラクタ(extractor)、加速ギャップ(acceleration gap)およびアインツェルレンズアセンブリ(einzel lens assembly);前段加速管(pre-acceleration tube);バイアス絶縁電源(bias isolation power supply);Y‐スティアラ(Y-steerer);ファラデーカップ(faraday cup);ならびにプロセス制御装置および電源。
【0022】
特定の実施形態では、システム内の低エネルギービームラインに関連して、磁界偏向がイオン源からのイオンビームを質量分析するために用いられる。いくつかの実施形態では、静電X‐Yスティアラ(electrostatic X‐Y steerer)およびアインツェルレンズが、質量分析されたビームを加速器のストリッパ管(stripper tube)に向けるために設けられている。特定の実施形態では、システムは、以下のうちの1つ以上を用いる:偏向磁石(Inflection Magnet);レンズ、ビームスティアラ(Beam Steerer);ファラデーカップ;ビームプロファイルモニタ;および制御装置。
【0023】
任意のタイプの適切な加速器が、本明細書中の方法およびシステムに使用され得る。特定の実施形態では、加速器は、二重加速(タンデム)静電加速器である(例えば、一価イオンに対して0.4~6.0MeVのエネルギーを届けることができる)。いくつかの実施形態では、4つの高性能荷電チェーンシステム(charging chain system)がカラム内に設置され、高電圧ターミナルに対して保存的な600μアンペアの電流が提供される。荷電チェーンは、ベルトの場合におけるよりもはるかに少ないエネルギー損失で電流を効率的にガスに届ける。その結果、高荷電電流は、比較的緩やかな電力入力により、困難な冷却問題を導入することなく提供され得る。特定の実施形態では、加速管は、堅固な金属およびセラミックの構成であり、適度な温度までベーキング可能である。それらは、有機セメントによりシールされた管内において通常達成される圧力よりも、約100倍低い圧力において動作され得る。これは、ガス分子のイオン化による逆流電子がイオンビーム電流よりも何倍も大きな総電流ドレインを与え得る高電流用途(応用)にとって、有利である。管には、上首尾の動作(動作がうまくゆくこと)を可能とするのに傾斜場または高い管圧力が必要とされない。特定の実施形態では、加速器を備えた真空システムは、すべて金属およびセラミックの構成(例えば、イオン源、ターボ分子ポンプおよびゲートバルブを除く)からなっており、超高真空動作が可能である。いくつかの実施形態では、この真空システムの設計目標は、イオンビームが存在しないとき、1×10-8Torrと5×10-8Torrとの間である。特定の実施形態では、加速システムは、以下のコンポーネントのうちの少なくとも1つを含む:タンク、カラム、ターミナル、ショーティングロッドシステム(shorting rod system)、荷電システム、電圧安定化システム、加速管および真空システム、ポテンシャルディストリビューション(potential distribution)、および絶縁ガス(例えば、Sf6)。
【0024】
特定の実施形態では、後段加速ビームラインは、中性子生成のために陽子/重陽子ビームをさまざまなターゲット内へと向け(steer)、集束させる(focus)ために必要なコンポーネントを含む。いくつかの実施形態では、このシステムは、以下でさらに説明するように、単一の常設されたターゲットステーション内へターゲットアセンブリ上における交換可能なターゲットディスクを供給する。
【0025】
特定の実施形態では、本明細書のシステムおよび方法は、種々のターゲットをターゲットステーションの中に設置することができる当該ターゲットステーションを用いる。例示的なターゲットステーションが、加速器システムの一部に取り付けられた状態で、図3に示されている。特定の実施形態では、ターゲットが照射されていないときは、ビームは、図4Aに示されるように、空気作動の線形フィードスルー(air actuated linear feedthrough)によって制御されるビームダンプ(beam dump)に当たっているだろう(例えば、ビームの100%がビームダンプ内へと集められ、電流が測定される)。特定の実施形態では、ビームダンプは、引き込んで、ビームが進み続けることを可能とすることができる(例えば、図4Bに示されるように、4フィンガコリメータ(four finger collimator)へ)。いくつかの実施形態では、ビーム電流がコリメータ(例えば、4フィンガコリメータ)に当たったとき、それは測定されてビームダンプ電流測定値から減じられ、ターゲット上の正確なビーム電流が計算される。図4Aに示すように、ビームは、4フィンガコリメータを通過し、中性子発生ターゲットに当たる。
【0026】
特定の実施形態では、少なくとも1つのビューポート(viewport)が、ターゲットステーションの一部として含まれ、ターゲットが視覚化されることを可能にする(例えば、図5の断面図に示されるようにである)。いくつかの実施形態では、ターゲット健全性モニタリングが、以下の少なくとも1つを測定することにより、間接的に実行される:ターゲット保持フランジ内に設置されたエネルギー分解平面シリコン荷電粒子検出器(energy-resolving planar silicon charged particle detector)の使用、この検出器および外部の長検出器(long detector)からの出力が、中性子出力をモニタリングするために、協調して使用される;ターゲットチャンバ圧力;ファストゲートバルブ(fast gate valve)位置;ターゲット冷却剤流入(target coolant flow in);ターゲット冷却剤流出(target coolant flow out);ターゲット冷却剤温度入(target coolant temperature in);ターゲット冷却剤温度出(target coolant temperature out);名目中性子束(an nominal neutron flux)。
【0027】
いくつかの実施形態では、本明細書における交換可能なイオンビームターゲットは、図6に示すように、ターゲット保持フランジ内に配置されている。一般に、熱負荷がターゲット上で非常に高いことが、冷却されたターゲットホルダ内にターゲットを取り付けることにより十分かつ均一な冷却を達成することを困難にしている。したがって、いくつかの実施形態では、一般的に薄いターゲット材料を含むタンタル基板(支持体:substrate)の直接水冷が採用される。イオンビームターゲットの2つの例示的な設計は、以下の通りである。第1に、特定の実施形態では、内部冷却ラインを有するタンタルディスクから構成される単一の統合ターゲットアセンブリが、ターゲットを保持するために用いられる。ターゲットは、真空結合放射(vacuum coupling radiation:VCR)型のフィッティングである水冷ラインによって所定の位置に取り付けられ、堅固に保持されている。冷却水システムは、特定の実施形態において、ターゲットアセンブリを変更する前に送水管から水が完全に除去されることを確実にする特徴を有する。第2に、いくつかの実施形態では、ターゲットは、薄い(~3mm)タンタルディスクと、ターゲットの裏側を冷却水に直接に曝露するターゲットホルダに取り付けられ、シールされたイオンビームターゲットと、から構成されている。特定の実施形態では、このターゲットは、全金属「Oリング」シールに依存する。この場合、ターゲットホルダフランジ内に存在するターゲットホルダは、通常、ターゲット変更とともに置き換えられない。しかしながら、定期的なメンテナンス/交換が一般に採用される。LiFまたはTiD1.5(または純リチウム等の、他の材料)ターゲット表面と、コンポーネント照射に利用可能な真空チャンバの外側のオープンスペースとの間の距離は、特定の実施形態では、約15mmである。さらに、コンポーネントが照射されるターゲットステーションの外表面は、いくつかの実施形態では、平坦かつ自由または突出であり、これにより、ターゲットステーションの照射表面に向かって直接、大きなコンポーネントを配置することが可能となる。
【0028】
特定の実施形態では、ターゲットステーション設計では、所望の反応を生じるために、単一のターゲットに衝突する1つのビームラインが採用される。ターゲットは、種々の反応のために他のターゲットと交換され得る。いくつかの実施形態では、変更のための手順では、以下の工程が行われる:1)ターゲットと、ポンピングステーションをターゲットエリアから隔離するファストバルブ(fast valve)との間の標準ゲートバルブを閉じる;2)ターゲットエリアを通気する;3)バックターゲットフランジを除去する(取り外す)、4フィンガコリメータは、それが点検されない限り、所定の位置に留まる;4)水冷ラインを取り付ける2つのVCR型のナットを緩めることによって、またはターゲットディスクを除去することによって、ターゲットを除去する;5)2つのVCR型ナットを締めることによって、新しいターゲットをバックフランジ内に設置する;6)バックターゲットフランジを4フィンガコリメータフランジ上へと再設置する;7)あら引きポンプへのバルブを開き、ターゲットチャンバをあら引き、あら引きポンプへのバルブを閉じる;そして8)ポンピングステージへのゲートバルブを開く(十分な圧力が達成され、あら引きポンプバルブが閉じられた場合にのみ、インターロックが実行され得る)。特定の実施形態では、4フィンガコリメータを保持するゼロレングスフランジ(zero length flange)は、それ自体のボルトパターンによって取り付けられ、通常のターゲット変更の間、ターゲットチャンバにしっかりと取り付けられたままである(例えば、それは、4フィンガコリメータが点検を必要とするときにのみ取り外されるだろう)。特定の実施形態において、外側フランジは、ステンレスナイフエッジを有する改質アルミニウムコンフラットである。一般に、ターゲット変更のための時間の大部分は、バッキングプレートであるコンフラットフランジを取り外して、再設置することであるだろう。特定の実施形態では、バックフランジには、単一のクランプ機構およびポリマーOリング(例えば、中性子ダメージのために定期的に変更されるだろう)を有する「クイックドア(quick door)」が設けられている。特定の実施形態において、コンフラットシールが採用される場合、垂直コンフラットガスケットの取り付けが採用される。
【0029】
上の表1に示され以下に(表3として)再び示される、中性子エネルギーおよびフラックスパラメータに関する包括的なモデリング研究が、本明細書における実施形態の開発中に行われた。
【0030】
【表3】
【0031】
このモデリングの結果を図9図26に示す。図9図26にモデリングされたLiFおよびTiD1.5に加えて、純リチウムターゲットもまた使用され得ることに注意されたい。特定の実施形態では、チタン原子1個あたり格子間点に1.5個の重水素原子を有するチタン(TiD1.5)は、DD反応のフラックスを最大化するために用いられる。多くの場合、より狭いエネルギーバンドとより高い中性子束との間には固有のトレードオフがあり、その逆もまた然りである。多くの反応について、モデリング作業は、そのトレードオフを実証するために、種々のターゲット厚さの選択肢を示している。エネルギースペクトル対総フラックスの優先順位付けに応じて、他のターゲット厚さもまた可能である。この例示的なモデリングでは、すべての反応は、175uAのビーム電流を有する。LiFおよびTiD1.5はともに、タンタルバッキング上への薄膜堆積(thin film deposition)(固体)である。
【0032】
特定の実施形態において、統合制御システムが、本明細書における中性子生成システムとともに用いられる。それは、独立した安全および/または制御システムを含む。特定の実施形態では、ソフトウェアコンポーネントが制御システムに含まれ、その結果、スワップイン(取付け)およびスワップアウト(取り外し)される種々のターゲットを適応させる変更を行うことが可能となる。特定の実施形態では、ソフトウェア制御がシステムを十分に自動化することにより、オペレータが特定のイオンビームターゲットを選択することが可能となり、システムは、イオンビームのターゲットに対する必要な距離、およびイオンビームの強さを、自動的に補整する。
【0033】
図1は、試験施設に設置された加速器システムの例示的な概略図を示す。この図では、部分10は、中性子発生ターゲットアセンブリを示し、部分20は、高エネルギービーム輸送アセンブリを示し、部分30は、イオンビーム加速器を示し、部分40は低エネルギービーム輸送アセンブリを示す。また、この図において、部分50はイオン源を示し、部分60は補助制御キャビネットを示し、部分70は放射線遮蔽物を示し、部分80は放射線遮蔽物を示す。
【0034】
図2は、加速器システム、試験施設および制御コンポーネントの例示的なボックス図を示す。この図に示すように、単一エネルギー中性子システムは、イオン源(例えば、TORVISイオン源(TORVIS ion source))、低エネルギービーム輸送コンポーネント、加速器(例えば、タンデム加速器)、高エネルギービーム輸送、ターゲットステーションの各コンポーネントから構成されている。ターゲットステーションは例えば、LiFおよびTiD1.5ターゲットに対して構成され得る。また、この図には、前述のコンポーネントのすべてを制御する統合制御システムも示されている。統合制御システムは、オペレータステーションにおける制御コンソールを介してシステムと対話するオペレータによって制御される。
【0035】
図3は、ターゲットステーションを含む加速器システムの例示的な部分を示す。この図は、フォーカシング(集束)およびスティアリングステーションから来たビーム(矢印)が、ターボポンプ、バルブ(例えば、VATシリーズ750高速加速器仕切弁)を通り、次いで、コリメータ(例えば、熱量測定および電流測定システムを有する4フィンガコリメータ)およびターゲット(例えば、複数の交換可能なターゲットのうちの1つ)を有するターゲットチャンバに入ることを示す。
【0036】
図4Aは、ビームラインが次いでターゲットに衝突することができないようにビームダンプがターゲットチャンバ内で当該ビームラインを遮る、例示的な実施形態を示す。図4Bは、どのようにしてビームダンプが引き込んで、コリメータおよびターゲットにビームが進み続けることを可能とすることができるのかを示す。ビームダンプは水冷されている。ビームがビームダンプにより捉えられたとき、それはコリメータ(例えば、4フィンガコリメータ)により測定され得る。
【0037】
図5は、例示的なターゲットステーションの断面図を示す。コリメータがターゲットの前に示されている(例えば、4フィンガコリメータ)。
【0038】
図6は、本明細書のシステムにおいて使用するための例示的なターゲット保持フランジの上面図(6A)および断面図(6B)を示す。外輪コンフラット(outer ring ConFlat)は、アライメントピンを有し、ステンレス鋼から構成され得る。コンフラットフランジは例えば、アルミニウムに対して爆着されたステンレス鋼から構成され得る。ターゲットは、真空結合放射(VCR)型のフィッティングである水冷ラインによって所定の位置に取り付けられ、堅固に保持されている。
【0039】
図7は、例示的なターゲットステーションの断面図を示す。この図では、すき間のある(interleaved)非接触コリメータリーフが、イオンビームターゲットの上方に示されている。
【0040】
図8は、例示的な4フィンガコリメータおよび保持機構を示す。保持機構の接続部は、熱的および電気的絶縁のために、ろう付けセラミック(brazed ceramic)であり得る。標準CFフランジシールが、熱量測定用の4つの絶縁冷却回路、および一対のアライメントピンとともに示されている。中央のタンタル陽子シンクおよび外側の銅ヒートシンクを有する4フィンガコリメータが示されている。
【0041】
本明細書において提供される全ての公報および特許は、その全体が参照により援用される。本発明の記載の構成および方法のさまざまな修正および変形は、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなしに、当業者に明らかであろう。本発明は特定の好ましい実施形態との関連において説明されてきたが、特許請求の範囲に記載の本発明はかかる特定の実施形態に不当に限定されるものではないことを理解されたい。実際、本発明の記載の実施態様に対する、関連分野の当業者には明らかであるところのさまざまな修正は、本発明の範囲内であることが意図されている。
【0042】
また、本開示には、以下の番号付けされた条項が含まれる。
【0043】
1.
複数の種々の単一エネルギーの中性子エネルギーを生成するためのシステムであって、
a)イオンビームを生み出すように構成されたイオン源と、
b)前記イオン源に動作可能に結合され、前記イオンビームを受け取り、前記イオンビームを加速して加速イオンビームを生成するように構成された加速器と、
c)ターゲット保持機構を備えるターゲットステーションと、
d)複数の交換可能なイオンビームターゲットであって、前記複数の交換可能なイオンビームターゲットの各々は、
i)前記ターゲット保持機構によって保持されるように構成され、かつ
ii)前記加速イオンビームが衝突したとき、前記複数の交換可能なイオンビームターゲットの中で特有の単一エネルギーの中性子エネルギー値を有する複数の中性子を生成する、
前記複数の交換可能なイオンビームターゲットと、
を備え、
前記加速イオンビームが衝突したとき、前記複数の交換可能なイオンビームターゲットの全体によって、少なくとも300キロ電子ボルト(keV)に及ぶ範囲の単一エネルギーの中性子エネルギー値を有する複数の中性子が提供される、システム。
【0044】
2.
前記複数の交換可能なイオンビームターゲットの各々は、
LiF、TiD1.5-1.8、TiT1-2、ErD1.5、ErTもしくはLiを含むか、
LiF、TiD1.5-1.8、TiT1-2、ErD1.5、ErTもしくはLiからなるか、
または、LiF、TiD1.5-1.8、TiT1-2、ErD1.5、ErTもしくはLiから実質的になる、
条項1に記載のシステム。
【0045】
3.
前記複数の交換可能なイオンビームターゲットの各々は、
iii)前記複数のイオンビームターゲットの中で特有の厚さを有する、
条項1に記載のシステム。
【0046】
4.
前記複数の交換可能なイオンビームターゲットの全体によって、少なくとも1メガ電子ボルト(MeV)に及ぶ範囲の単一エネルギーの中性子エネルギー値を有する複数の中性子が提供される、条項1に記載のシステム。
【0047】
5.
前記複数の交換可能なイオンビームターゲットの全体によって、少なくとも10メガ電子ボルトに及ぶ範囲の単一エネルギーの中性子エネルギー値を有する複数の中性子が提供される、条項1に記載のシステム。
【0048】
6.
前記複数の交換可能なイオンビームターゲットの各々の前記単一エネルギーの中性子エネルギーは、互いに少なくとも100keV異なる、条項1に記載のシステム。
【0049】
7.
前記複数の交換可能なイオンビームターゲットの各々の前記単一エネルギーの中性子エネルギーは、互いに少なくとも500keV異なる、条項1に記載のシステム。
【0050】
8.
前記複数の交換可能なイオンビームターゲットは、少なくとも3つのイオンビームターゲットを含む、条項1に記載のシステム。
【0051】
9.
前記複数の交換可能なイオンビームターゲットは、
i)約300keVの単一エネルギーの中性子エネルギー値を生成する第1のイオンビームターゲット、
ii)約1MeVの単一エネルギーの中性子エネルギー値を生成する第2のイオンビームターゲット、
iii)約2.5MeVの単一エネルギーの中性子エネルギー値を生成する第3のイオンビームターゲット、
iv)約4MeVの単一エネルギーの中性子エネルギー値を生成する第4のイオンビームターゲット、
v)約6MeVの単一エネルギーの中性子エネルギー値を生成する第5のイオンビームターゲット、および
vi)約14MeVの単一エネルギーの中性子エネルギー値を生成する第6のイオンビームターゲット、
を含む、条項1に記載のシステム。
【0052】
10.
制御システムをさらに備え、
前記制御システムは、前記複数の交換可能なイオンビームターゲットのいずれが前記ターゲット保持機構によって保持されるのかに基づいて、前記加速イオンビームの入射イオンエネルギーを変更するように構成されたソフトウェアを備える、条項1に記載のシステム。
【0053】
11.
前記複数の中性子によりアイテムをスキャンするように構成された試験施設をさらに備える、条項1に記載のシステム。
【0054】
12.
前記アイテムは、宇宙システム、宇宙機器、航空機部品、インフラストラクチャ、放射線損傷を受ける可能性のある材料および部品、ならびに、輸送システムの部品からなる群から選択されるものである、条項11に記載のシステム。
【0055】
13.
コリメータをさらに備える、条項1に記載のシステム。
【0056】
14.
前記ターゲットステーションは、水冷システムをさらに備える、条項1に記載のシステム。
【0057】
15.
a)第1のターゲットを、少なくとも2つのイオンビームターゲットのセットから、加速イオンビームを生成するイオンビーム加速器へと挿入する工程と、
b)加速イオンビームが前記第1のターゲットに衝突するような長さの間、前記イオンビーム加速器を作動させ、それにより、第1の単一エネルギーの中性子エネルギー値を有する複数の中性子を生成する工程と、
c)前記イオンビーム加速器から前記第1のターゲットを除去する工程と、
d)第2のターゲットを、前記少なくとも2つのターゲットのセットから、前記イオンビーム加速器へと挿入する工程と、
e)イオンビームが前記第2のターゲットに衝突するような長さの間、前記イオンビーム加速器を作動させ、それにより、前記第1の単一エネルギーの中性子エネルギー値とは少なくとも100キロ電子ボルト(keV)異なる第2の単一エネルギーの中性子エネルギー値を有する複数の中性子を生成する工程と、
を含む、方法。
【0058】
16.
前記第2の単一エネルギーの中性子エネルギー値は、前記第1の単一エネルギーの中性子エネルギー値とは少なくとも500キロ電子ボルト異なる、条項15に記載の方法。
【0059】
17.
前記少なくとも2つのイオンビームターゲットは、少なくとも3つのイオンビームターゲットを含み、
f)前記イオンビーム加速器から前記第2のターゲットを除去する工程と、
g)第3のターゲットを、前記少なくとも3つのターゲットのセットから、前記イオンビーム加速器へと挿入する工程と、
h)イオンビームが前記第3のターゲットに衝突するような長さの間、前記イオンビーム加速器を作動させ、それにより、前記第1および第2の単一エネルギーの中性子エネルギー値の両方とは少なくとも100キロ電子ボルト(keV)異なる第3の単一エネルギーの中性子エネルギー値を有する複数の中性子を生成する工程と、
をさらに含む、条項15に記載の方法。
【0060】
18.
前記第3の単一エネルギーの中性子エネルギー値は、前記第1および第2の単一エネルギーの中性子エネルギー値とは少なくとも500キロ電子ボルト異なる、条項17に記載の方法。
【0061】
19.
前記少なくとも3つのイオンビームターゲットは、少なくとも4つのイオンビームターゲットを含み、
i)前記イオンビーム加速器から前記第3のターゲットを除去する工程と、
j)第4のターゲットを、前記少なくとも4つのターゲットのセットから、前記イオンビーム加速器へと挿入する工程と、
k)イオンビームが前記第4のターゲットに衝突するような長さの間、前記イオンビーム加速器を作動させ、それにより、前記第1、第2および第3の単一エネルギーの中性子エネルギー値のうちの全てとは少なくとも100キロ電子ボルト(keV)異なる第4の単一エネルギーの中性子エネルギー値を有する複数の中性子を生成する工程と、
をさらに含む、条項17に記載の方法。
【0062】
20.
前記第4の単一エネルギーの中性子エネルギー値は、前記第1、第2および第3の単一エネルギーの中性子エネルギー値とは少なくとも500キロ電子ボルト異なる、条項19に記載の方法。
【0063】
21.
前記複数のイオンビームターゲットの各々は、
LiF、TiD1.5-1.8、TiT1-2、ErD1.5、ErTもしくはLiを含むか、
LiF、TiD1.5-1.8、TiT1-2、ErD1.5、ErTもしくはLiからなるか、
または、LiF、TiD1.5-1.8、TiT1-2、ErD1.5、ErTもしくはLiから実質的になる、条項15~20のいずれか一項に記載の方法。
【0064】
22.
前記少なくとも4つのイオンビームターゲットの各々は、前記第1、第2、第3および第4のイオンビームターゲットの中で特有の厚さを有する、条項19に記載の方法。
【0065】
23.
前記少なくとも4つのイオンビームターゲットの全体によって、少なくとも10メガ電子ボルト(MeV)に及ぶ範囲の単一エネルギーの中性子エネルギー値を有する複数の中性子が提供される、条項19に記載の方法。
【0066】
24.
工程b)と工程c)との間に、第1の単一エネルギーの中性子エネルギー値を有する前記複数の中性子を用いてアイテムをスキャンする工程をさらに含む、条項15に記載の方法。
【0067】
25.
前記アイテムは、宇宙システム、宇宙機器、航空機部品、インフラストラクチャ、および輸送システムの部品からなる群から選択されるものである、条項24に記載の方法。
【0068】
26.
前記少なくとも4つのイオンビームターゲットの各々は、約300keV、約1MeV、約2.5MeV、約4MeV、約6MeVおよび約14MeVからなる群から選択される異なる単一エネルギーの中性子エネルギー値を生成する、条項19に記載の方法。
【0069】
27.
a)コンピュータプロセッサと、
b)1つ以上のコンピュータプログラム、およびデータベースを含む、非一時的なコンピュータメモリであって、前記1つ以上のコンピュータプログラムは、加速器システム操作ソフトウェアを含む、非一時的なコンピュータメモリと、
c)前記非一時的なコンピュータメモリと動作可能に通信状態にある以下の複数のサブシステム:
i)複数のイオンビームターゲットのうちの1つを保持するように構成されたターゲット保持機構を備えるターゲットステーション、および、
ii)前記複数のイオンビームターゲットのいずれがイオンビーム加速器システム内に存在するのかに基づいて、前記加速器システム操作ソフトウェアによって調整される強さを有するイオンビームを生成するビーム生成サブシステム、
のうちの1つ以上のサブシステムを含む前記イオンビーム加速器システムであって、前記複数のイオンビームターゲットから選択された前記イオンビーム加速器システム内に存在する特定のイオンビームターゲットを捉えるように前記加速器システム操作ソフトウェアによって自動的に調整され得る前記イオンビーム加速器システムと、
を備える、システム。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26