(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010716
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20240118BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
H01L29/78 657F
H01L29/78 652F
H01L29/78 652S
H01L29/78 653A
H01L29/78 652J
H01L29/78 652T
H01L29/78 657D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112157
(22)【出願日】2022-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】熊田 恵志郎
(57)【要約】
【課題】電流センス部の活性領域の破壊耐量を改善できる半導体装置を提供することを目的とする。
【解決手段】半導体装置は、メイン半導体領域と、電流検出領域とを備える。メイン半導体領域と電流検出領域は、第1導電型の半導体基板と、第1導電型の第1半導体層と、第1導電型の第1半導体領域7と、第2導電型の第2半導体領域8と、トレンチ16と、第2導電型の第1高濃度領域3と、第2導電型の第2高濃度領域とを有する。電流検出領域のオン状態の時に電流が流れる活性領域は、トランジスタとして動作する第1セル43と、第1セルの4隅に設けられ、トランジスタとしては動作せず、ダイオードとしてのみ動作する第2セル44とを有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の半導体基板と、
前記半導体基板のおもて面に設けられた、前記半導体基板より低不純物濃度の第1導電型の第1半導体層と、
前記第1半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面に設けられた第2導電型の第2半導体層と、
前記第2半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に設けられた第1導電型の第1半導体領域と、
前記第2半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に設けられた、前記第2半導体層より高不純物濃度の第2導電型の第2半導体領域と、
前記第1半導体領域および前記第2半導体層を貫通して前記第1半導体層に達するトレンチと、
前記トレンチの内部にゲート絶縁膜を介して設けられたゲート電極と、
前記第1半導体層の内部に、前記トレンチと深さ方向に対向する位置に設けられた第2導電型の第1高濃度領域と、
前記第1半導体層と前記第2半導体層の内部の前記トレンチ間に設けられ、前記第2半導体領域と接続する第2導電型の第2高濃度領域と、
前記第2半導体層および前記第1半導体領域に接する第1電極と、
前記半導体基板の裏面に設けられた第2電極と、
を有する構造により構成され、オン状態の時に主電流が流れるメイン半導体領域と、
前記構造により構成され、前記半導体基板および前記第1半導体層を前記メイン半導体領域と共通とする電流検出領域と、
を備え、
前記電流検出領域の、オン状態の時に電流が流れる活性領域は、
トランジスタとして動作する第1セルと、
前記第1セルの4隅に設けられ、トランジスタとしては動作せず、ダイオードとしてのみ動作する第2セルと、を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第2セルでは、前記第1半導体領域が設けられていないことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2セルでは、前記トレンチ間にわたって前記第2半導体領域が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2セルでは、前記第1高濃度領域と前記第2高濃度領域が接続され、前記第1高濃度領域と前記第2高濃度領域との間に前記第1半導体層が設けられていないことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2セルに設けられた前記第1高濃度領域および前記第2高濃度領域の深さは、前記第1セルに設けられた前記第1高濃度領域および前記第2高濃度領域の深さより深いことを特徴とする請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第2セルに設けられた前記第1高濃度領域および前記第2高濃度領域の不純物濃度は、前記第1セルに設けられた前記第1高濃度領域および前記第2高濃度領域の不純物濃度よりも高いことを特徴とする請求項4に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記トレンチはストライプ形状であり、
前記第2セルは、前記トレンチの長手方向で、前記第1半導体領域の長さは、前記第2半導体領域の長さより短く、前記トレンチ間に前記第1高濃度領域が設けられ、前記第1半導体領域が設けられていないことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1セルと前記第2セルを合わせた面積に対する前記第2セルの面積の比率は、10%以上40%以下であることを特徴とする請求項1~7のいずれか一つに記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第2セルは、前記第1セルの対向する2辺に設けられることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第2セルは、前記第1セルを囲むように設けられることを特徴とする請求項9に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)では、信頼性を向上させるために、電流センス部、温度センス部等を内蔵し、保護機能を付加し高機能化を図る半導体装置が提案されている。
【0003】
図13は、従来の半導体装置の構造を示す上面図である。半導体装置150において、メイン半導体素子146は、活性領域140の有効領域(MOSゲートとして機能する領域)に設けられている。活性領域140の有効領域は、メイン半導体素子146のオン時に主電流が流れる領域である。活性領域140の有効領域において、半導体基板のおもて面上には、メイン半導体素子146のコンタクト電極112(
図14、
図15参照)が設けられている。コンタクト電極112は、例えば活性領域140の有効領域の略全面を覆う。また、コンタクト電極112のおもて面上には、例えば矩形状の平面形状を有するソース電極パッド(不図示)が設けられている。
【0004】
エッジ終端領域141は、活性領域140とチップ(半導体基板)側面との間の領域であり、半導体基板のおもて面側の電界を緩和して耐圧(耐電圧)を保持するための領域である。エッジ終端領域141には、例えばガードリングや接合終端(JTE:Junction Termination Extension)構造を構成するp型領域や、フィールドプレート、リサーフ等の耐圧構造(不図示)が配置される。
【0005】
また、活性領域140には、活性領域140に隣接して、高機能領域145が設けられている。高機能領域145は、例えば略矩形状の平面形状を有する。高機能領域145には、電流センス部142、過電圧保護部(不図示)および演算回路部(不図示)等の高機能部が設けられている。
図13には、高機能部として電流センス部142のみを図示するが、高機能領域145に電流センス部142以外の他の高機能部が配置されていてもよい。
【0006】
電流センス部142は、メイン半導体素子146に流れる過電流(OC:Over Current)を検出する機能を有する。電流センス部142は、メイン半導体素子146と同一構成の単位セル(素子の機能単位)を電流センス部142の活性領域に数個程度備えた縦型MOSFETである。
【0007】
従来の半導体装置の構造について、トレンチ型の縦型MOSFETを例に説明する。
図14は、従来の半導体装置の
図13の領域S1、S2の拡大上面図である。
図15は、従来の半導体装置の構造を示す
図14のA-A’断面図である。
【0008】
半導体基体120は、炭化珪素(SiC)からなるn+型出発基板(n+型半導体基板101)上にn型炭化珪素エピタキシャル層102をエピタキシャル成長させた後に、イオン注入もしくはエピタキシャル成長にてp型ベース層105を形成している。メイン半導体素子146および電流センス部142の活性領域140では、n型炭化珪素エピタキシャル層102には、トレンチ116の底面全体を覆うように第1p+型ベース領域103が選択的に設けられている。n型炭化珪素エピタキシャル層102のn+型炭化珪素基板101側に対して反対側の表面層には、第2p+型ベース領域104が選択的に設けられている。
【0009】
また、従来の半導体装置150の活性領域140には、半導体基体120内にさらにn
+型ソース領域107、p
+型コンタクト領域108、トレンチ116、ゲート絶縁膜117、ゲート電極110が設けられる。半導体基体120のおもて面側に、層間絶縁膜111、コンタクト電極112およびソース電極パッド(不図示)が設けられ、半導体基体120の裏面側に、裏面電極113およびドレイン電極パッド(不図示)が設けられている。コンタクト電極112は、n
+型ソース領域107およびp
+型コンタクト領域108上に設けられる。
図14では、n
+型ソース領域107およびp
+型コンタクト領域108を図示するため、コンタクト電極112を実際よりも狭く描いてある。
【0010】
メイン半導体素子146および電流センス部142のエッジ終端領域141では、トレンチ116、n+型ソース領域107、ゲート絶縁膜117、ゲート電極110から構成されるMOS構造は設けられておらず、n型炭化珪素エピタキシャル層102に第1p+型ベース領域103が設けられ、第1p+型ベース領域103の表面層にp+型コンタクト領域108が設けられている。
【0011】
また、電界緩和不良や耐圧低下を抑制でき、かつ、リーク発生要因となる結晶ダメージを抑制するため、メインセル領域とセンスセル領域の間を電気的に分離するように素子分離層を備えつつ、素子分離層の底部において電界集中が緩和されるように電界緩和層を備えるSiC半導体装置が公知である(例えば、下記特許文献1参照)。
【0012】
また、主電流領域と主電流領域に流れる主電流より小さい電流が流れる電流センス領域を有し、MOSFETの動作電流とダイオード電流を検出することができる半導体装置が公知である(例えば、下記特許文献2参照)。
【0013】
また、メインSBD領域に設けられた第1,2p型領域と、トレンチ底面を囲む第1p+型領域と、により、トレンチのメインSBD領域側の側壁から底面にわたってトレンチをp型領域で囲むことで、メインSBD領域のSBD動作時に、トレンチのメインSBD領域側の底面コーナー部にかかる電界を緩和することができる半導体装置が公知である(例えば、下記特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特許第6696450号公報
【特許文献2】特開2011-198891号公報
【特許文献3】特開2022-042526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
図14および
図15で示すとおり、電流センス部142の活性領域140は、メイン半導体素子146の活性領域140と同じ構造をしており、単純に電流センス部142の活性領域140は、メイン半導体素子146の活性領域140より面積を小さくした構造となっている。また、メイン半導体素子146および電流センス部142は、内部にp型ベース層106およびp
+型コンタクト領域108とn型炭化珪素エピタキシャル層102とのpn接合で構成される寄生ダイオード(以下、内蔵ダイオードと称する)を有する。
【0016】
このため、SiCからなる半導体装置の場合、内蔵ダイオードが、順方向通電状態から逆回復動作に移行する際、内蔵ダイオードからの回り込みによる電流が電流センス部142に集中し、電流センス部142の活性領域140が破壊されるという課題がある。
【0017】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、電流センス部の活性領域の破壊耐量を改善できる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置は、次の特徴を有する。半導体装置は、第1導電型の半導体基板と、前記半導体基板のおもて面に設けられた、前記半導体基板より低不純物濃度の第1導電型の第1半導体層と、前記第1半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面に設けられた第2導電型の第2半導体層と、前記第2半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に設けられた第1導電型の第1半導体領域と、前記第2半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に設けられた、前記第2半導体層より高不純物濃度の第2導電型の第2半導体領域と、前記第1半導体領域および前記第2半導体層を貫通して前記第1半導体層に達するトレンチと、前記トレンチの内部にゲート絶縁膜を介して設けられたゲート電極と、前記第1半導体層の内部に、前記トレンチと深さ方向に対向する位置に設けられた第2導電型の第1高濃度領域と、前記第1半導体層と前記第2半導体層の内部の前記トレンチ間に設けられ、前記第2半導体領域と接続する第2導電型の第2高濃度領域と、前記第2半導体層および前記第1半導体領域に接する第1電極と、前記半導体基板の裏面に設けられた第2電極と、を有する構造により構成され、オン状態の時に主電流が流れるメイン半導体領域と、前記構造により構成され、前記半導体基板および前記第1半導体層を前記メイン半導体領域と共通とする電流検出領域と、を備える。前記電流検出領域の、オン状態の時に電流が流れる活性領域は、トランジスタとして動作する第1セルと、前記第1セルの4隅に設けられ、トランジスタとしては動作せず、ダイオードとしてのみ動作する第2セルと、を有する。
【0019】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記第1半導体領域が設けられていないことを特徴とする。
【0020】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記第2セルでは、前記トレンチ間にわたって前記第2半導体領域が設けられていることを特徴とする。
【0021】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記第2セルでは、前記第1高濃度領域と前記第2高濃度領域が接続され、前記第1高濃度領域と前記第2高濃度領域との間に前記第1半導体層が設けられていないことを特徴とする。
【0022】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記第2セルに設けられた前記第1高濃度領域および前記第2高濃度領域の深さは、前記第1セルに設けられた前記第1高濃度領域および前記第2高濃度領域の深さより深いことを特徴とする。
【0023】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記第2セルに設けられた前記第1高濃度領域および前記第2高濃度領域の不純物濃度は、前記第1セルに設けられた前記第1高濃度領域および前記第2高濃度領域の不純物濃度よりも高いことを特徴とする。
【0024】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記トレンチはストライプ形状であり、前記第2セルでは、前記トレンチの長手方向で、前記第1半導体領域の長さは、前記第2半導体領域の長さより短く、前記トレンチ間に前記第1高濃度領域が設けられ、前記第1半導体領域が設けられていないことを特徴とする。
【0025】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記第1セルと前記第2セルを合わせた面積に対する前記第2セルの面積の比率は、10%以上40%以下であることを特徴とする。
【0026】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記第2セルは、前記第1セルの対向する2辺に設けられることを特徴とする。
【0027】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記第2セルは、前記第1セルを囲むように設けられることを特徴とする。
【0028】
上述した発明によれば、電流センス部の活性領域に、メイン半導体素子の活性領域の構造と同じMOS構造部(第1セル)と、メイン半導体素子の活性領域の構造と異なる非MOS構造部(第2セル)が設けられている。このため、メイン半導体素子内の内蔵ダイオードが順方向通電状態から逆回復動作に移行する際、dv/dtにより内蔵ダイオードからの回り込みによる電流が電流センス部の非MOS構造部に集中しても、MOS構造部に達せず、電流センス部の活性領域が破壊されることを防止できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明にかかる半導体装置によれば、電流センス部の活性領域の破壊耐量を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】実施の形態1にかかる半導体装置の構造を示す上面図である。
【
図2】実施の形態1にかかる半導体装置の
図1の領域S1の拡大上面図である。
【
図3】実施の形態1にかかる半導体装置の構造を示す
図2のA-A’断面図である。
【
図4】実施の形態1にかかる半導体装置の電流センス部の構造を示す上面図である。
【
図5】実施の形態1にかかる半導体装置の構造を示す
図4のA-A’断面図である。
【
図6】実施の形態2にかかる半導体装置の電流センス部の構造を示す上面図である。
【
図7】実施の形態2にかかる半導体装置の構造を示す
図6のA-A’断面図である。
【
図8】実施の形態3にかかる半導体装置の電流センス部の構造を示す上面図である。
【
図9】実施の形態3にかかる半導体装置の構造を示す
図8のA-A’断面図である。
【
図10】実施の形態4にかかる半導体装置の構造を示す
図8のA-A’断面図である。
【
図11】実施の形態5にかかる半導体装置の電流センス部の構造を示す上面図である。
【
図12】実施の形態5にかかる半導体装置の構造を示す
図11のA-A’断面図である。
【
図13】従来の半導体装置の構造を示す上面図である。
【
図14】従来の半導体装置の
図13の領域S1、S2の拡大上面図である。
【
図15】従来の半導体装置の構造を示す
図14のA-A’断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる半導体装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および-は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本明細書では、ミラー指数の表記において、“-”はその直後の指数につくバーを意味しており、指数の前に“-”を付けることで負の指数をあらわしている。そして、同じまたは同等との記載は製造におけるばらつきを考慮して5%以内まで含むとするのがよい。
【0032】
(実施の形態1)
実施の形態1にかかる半導体装置は、シリコン(Si)よりもバンドギャップが広い半導体(ワイドバンドギャップ半導体)を半導体材料として用いて構成される。実施の形態1にかかる半導体装置の構造について、ワイドバンドギャップ半導体として例えば炭化珪素(SiC)を用いた場合を例に説明する。
図1は、実施の形態1にかかる半導体装置の構造を示す上面図である。
【0033】
図1に示す実施の形態1にかかる半導体装置50は、同一の半導体基板(半導体チップ)の活性領域40に、メイン半導体素子46と、当該メイン半導体素子46を保護・制御するための1つ以上の回路部を有する。メイン半導体素子46は、オン状態で、半導体基板の深さ方向にドリフト電流が流れる縦型MOSFETである。メイン半導体素子46は、複数の単位セル(素子の機能単位)で構成される。
【0034】
メイン半導体素子46の単位セルは、半導体基板のおもて面に平行な方向に互いに隣接して配置されている。メイン半導体素子46は、実施の形態1にかかる半導体装置50の主動作を行う。メイン半導体素子46は、メイン有効領域に配置される。メイン有効領域は、活性領域40のメイン半導体素子46が配置されている箇所である。メイン半導体素子46は、オン時に主電流が流れる領域である。メイン有効領域は、例えば略凹形状の平面形状を有し、活性領域40の大半の表面積を占めている。
【0035】
メイン半導体素子46を保護・制御するための回路部は、例えば、電流センス部42、温度センス部(不図示)、過電圧保護部(不図示)および演算回路部(不図示)等の高機能領域45であり、活性領域40のメイン無効領域に配置される。メイン無効領域は、メイン半導体素子46の単位セルが配置されていない領域であり、メイン半導体素子46として機能しない。メイン無効領域は、例えば略矩形状の平面形状を有し、メイン有効領域とエッジ終端領域41との間に配置される。
【0036】
エッジ終端領域41は、活性領域40と半導体基板の端部との間の領域であり、活性領域40の周囲を囲み、半導体基板のおもて面側の電界を緩和して耐圧を保持する。エッジ終端領域40には、例えばフィールドリミッティングリングや接合終端構造を構成するp型領域や、フィールドプレート、リサーフ等の耐圧構造(不図示)が配置される。耐圧とは、素子が誤動作や破壊を起こさない限界の電圧である。
【0037】
電流センス部42は、メイン半導体素子46と同じ条件で動作して、メイン半導体素子46に流れる過電流(OC:Over Current)を検出する機能を有する。電流センス部42は、メイン半導体素子46と離れて配置されている。電流センス部42は、メイン半導体素子46と同一構成の単位セルを、メイン半導体素子46の単位セルの個数(例えば1万個程度)よりも少ない個数(例えば10個程度)で備えた縦型MOSFETであり、メイン半導体素子46よりも表面積が小さい。
【0038】
次に、実施の形態1にかかる半導体装置50のメイン半導体素子46の構造について説明する。
図2は、実施の形態1にかかる半導体装置の
図1の領域S1の拡大上面図である。
図3は、実施の形態1にかかる半導体装置の構造を示す
図2のA-A’断面図である。
【0039】
図2および
図3では、メイン半導体素子46でそれぞれ単位セルの一部のみを示すが、メイン半導体素子46の単位セルはすべて同じ構造を有する。メイン半導体素子46は、メイン有効領域において半導体基板のおもて面側にMOSゲート(金属-酸化膜-半導体の3層構造からなる絶縁ゲート)を備えた縦型MOSFETである。
【0040】
半導体基体20は、炭化珪素からなるn+型出発基板(n+型半導体基板1:第1導電型の半導体基板)上にn型炭化珪素エピタキシャル層(第1導電型の第1半導体層)2およびp型ベース層(第2導電型の第2半導体層)6を順にエピタキシャル成長させたエピタキシャル基板である。メイン半導体素子46は、半導体基体20のおもて面側に設けられたp型ベース層6、n+型ソース領域(第1導電型の第1半導体領域)7、p+型コンタクト領域(第2導電型の第2半導体領域)8、トレンチ16、ゲート絶縁膜17およびゲート電極10で構成される一般的なMOSゲートを有する。
【0041】
トレンチ16は、半導体基体20のおもて面から深さ方向(コンタクト電極12から裏面電極13に向かう方向)にp型ベース層6を貫通してn型炭化珪素エピタキシャル層2に達する。トレンチ16は、例えば、
図2に示すように、n
+型半導体基板1のおもて面に平行な方向に延びるストライプ状に配置されている。
【0042】
トレンチ16の内部には、ゲート絶縁膜17を介してゲート電極10が設けられている。互いに隣り合う2つのトレンチ16間(メサ領域)において、p型ベース層6、n+型ソース領域7およびp+型コンタクト領域8がそれぞれ選択的に設けられている。n+型ソース領域7およびp+型コンタクト領域8は、半導体基体のおもて面とp型ベース層6の間に設けられている。
【0043】
n+型ソース領域7は、p+型コンタクト領域8よりもトレンチ16側に設けられている。p+型コンタクト領域8は設けられていなくてもよい。p+型コンタクト領域8が設けられていない場合、n+型ソース領域7よりもトレンチ16から離れた箇所でp型ベース層6が半導体基体のおもて面まで達し、半導体基体20のおもて面に露出されている。
【0044】
また、半導体基体20の内部において、n型炭化珪素エピタキシャル層2内に、第1p
+型ベース領域(第2導電型の第1高濃度領域)3および第2p
+型ベース領域(第2導電型の第2高濃度領域)4が設けられている。第1p
+型ベース領域3は、p型ベース層6と離して設けられ、深さ方向にトレンチ16の底面に対向する。第1p
+型ベース領域3の一部は第2p
+型ベース領域4に連結されている。
図3は、第1p
+型ベース領域3と第2p
+型ベース領域4とが連結されていない部分の断面を示す。
【0045】
第2p+型ベース領域4は、第1p+型ベース領域3およびトレンチ16と離してメサ領域に設けられ、p型ベース層6に接する。第1p+型ベース領域3と第2p+型ベース領域4は、p型ベース層6を介してメイン半導体素子46のソース電位に固定されている。第1p+型ベース領域3と第2p+型ベース領域4は、トレンチ16の底面にかかる電界を緩和させる機能を有する。
【0046】
層間絶縁膜11は、半導体基体20のおもて面全面に設けられ、ゲート電極10を覆う。層間絶縁膜11を深さ方向に貫通して半導体基体20に達するコンタクトホール内には、メイン半導体素子46のn
+型ソース領域7およびp
+型コンタクト領域8が露出されている。コンタクトホールの内部において、半導体基体20のおもて面上に、コンタクト電極12が設けられている。
図2では、n
+型ソース領域7およびp
+型コンタクト領域8を図示するため、コンタクト電極12を実際よりも狭く描いてある(以下の
図4、
図6、
図8、
図11でも同様である)。
【0047】
ドレイン電極となる裏面電極13は、半導体基体20の裏面(n+型出発基板の裏面)全面にオーミック接触している。裏面電極13上には、例えば、Ti膜、ニッケル(Ni)膜および金(Au)膜を順に積層した積層構造でドレインパッド(電極パッド:不図示)が設けられている。
【0048】
次に、実施の形態1にかかる半導体装置50の電流センス部42の構造について説明する。
図4は、実施の形態1にかかる半導体装置の電流センス部の構造を示す上面図である。
図5は、実施の形態1にかかる半導体装置の構造を示す
図4のA-A’断面図である。
図4では、電流センス部42の4隅の構造を示す(以下の
図6、
図8、
図11でも同様である)。
【0049】
実施の形態1にかかる半導体装置50では、電流センス部42の活性領域40BにMOS構造部(第1セル)43と非MOS構造部(第2セル)44が設けられる。MOS構造部43の構造は、メイン半導体素子46の活性領域40の構造と同じであるが、非MOS構造部44の構造は、メイン半導体素子46の活性領域40の構造と異なっている。ここで、電流センス部42の活性領域40Bとは、トレンチ16の長手方向と垂直な方向(y軸方向)では、最もエッジ終端領域41側のトレンチ16間の領域であり、トレンチ16の長手方向(x軸方向)では、n
+型ソース領域7の端から端までの領域である。すなわち
図4では、電流センス部42の活性領域40Bは、y軸方向で直線l3からl4、x方向で直線m1からm2に囲まれる領域である。
図4では、電流センス部42の活性領域40Bの構造の内、y軸方向で直線l1からl2、x方向で直線m1からm2で囲まれる領域がMOS構造部43である。y軸方向で直線l1からl3、x方向で直線m1からm2で囲まれる領域、および直線l2からl4、x軸方向でm1からm2で囲まれる領域が非MOS構造部44である。
【0050】
後述するように、非MOS構造部44は、MOS構造部43をメイン半導体素子46からの回り込みによる電流から保護するための機能を有する。このため、非MOS構造部44は一定以上の面積であることが好ましく、電流センス部42の機能を実現するため。MOS構造部43は、一定の面積が必要である。例えば、非MOS構造部44とMOS構造部43と合わせた面積(電流センス部42の活性領域の面積)に対する非MOS構造部44の面積の割合は、10%以上40%以下であることが好ましく、15%以上25%以下であることがより好ましい。このため、y方向で直線l1からl3までの距離をL2、直線l1からl2までの距離をL1、直線l2からl4までの距離をL2とし、x方向で直線m1からm2までの距離をM1とすると、非MOS構造部44とMOS構造部43と合わせた面積は、(L1+2×L2)×M1となり、非MOS構造部44の面積は2×L2×M1となる。このため、実施の形態1では、0.1≦2×L2×M1/{(L1+2×L2)×M1}≦0.4が成り立つことが好ましい。
【0051】
また、実施の形態1では、
図4および
図5に示すように、直線l1からl3で囲まれる領域および直線l2からl4で囲まれる非MOS構造部44では、トレンチ16の側壁にn
+型ソース領域7が設けられず、p型ベース層6が設けられている。このように、MOS構造が設けられないため、非MOS構造部44では、オン状態でもチャネルが形成されず、オン状態で電流が流れない。一方、第1,2p
+型ベース領域3,4、p型ベース層6、およびp
+型コンタクト領域8とn型炭化珪素エピタキシャル層2とのpn接合で構成される内蔵ダイオードが形成されている。このため、メイン半導体素子46内の、第1,2p
+型ベース領域3,4、p型ベース層6、およびp
+型コンタクト領域8とn型炭化珪素エピタキシャル層2とのpn接合で構成される内蔵ダイオードに通電し、dv/dtにより内蔵ダイオードからの回り込みによる電流が、電流センス部42の非MOS構造部44に集中しても、MOS構造部43に達せず、電流センス部42の活性領域40Bが破壊されることを防止できる。
【0052】
また、上記特許文献3では、電流センスMOSFETの周囲をSBDが取り囲み、さらにその周囲をpnダイオードが取り囲んで、電流センスMOSFETが破壊されることを防止している。しかしながら、電流センスMOSFETとpnダイオードが離れているため、上記特許文献3では、内蔵ダイオードからの回り込みによる電流がpnダイオードをすり抜けてしまうことがある。一方、本発明の実施の形態1では、ダイオードとして機能する非MOS構造部44が、MOS構造部43に隣接している。このため、内蔵ダイオードからの回り込みによる電流が非MOS構造部44をすり抜けることが少なく、上記特許文献3よりも電流センス部42の活性領域40Bをより確実に保護することができる。さらに、MOS構造部43と非MOS構造部44との間に隙間がないため、電流センス部42全体の面積を小さくすることができる。
【0053】
ここで、
図4では、非MOS構造部44は、直線l1、l3、m1、m2で囲まれる領域および直線l2、l4、m1、m2で囲まれる領域と、対向する2辺に設けられている。しかしながらこの構成に限る必要はなく、非MOS構造部44は、トレンチ16を横切る方向(y方向)の対向する2辺に設けられてもよく、4隅のみに設けられてもよい。4隅のみに設ける場合、非MOS構造部44は、直線l1、l3、m1、m4で囲まれる領域、直線l1、l3、m3、m2で囲まれる領域、直線l2、l4、m1、m4で囲まれる領域および直線l2、l4、m3、m2で囲まれる領域に設けられている。また、非MOS構造部44は、MOS構造部43を取り囲むように設けられてもよい。このようにすることで、電流センス部42の活性領域をより確実に保護することができる。いずれの場合でも、非MOS構造部44とMOS構造部43とを合わせた面積に対する非MOS構造部44の面積の割合は、上記値になることが好ましい。
【0054】
また、メイン半導体素子46および電流センス部45のエッジ終端領域41では、トレンチ16、n+型ソース領域7、ゲート絶縁膜17、ゲート電極10から構成されるMOS構造は設けられておらず、n型炭化珪素エピタキシャル層2に第1p+型ベース領域3が設けられ、第1p+型ベース領域3の表面層にp+型コンタクト領域8が設けられている。
【0055】
以上、説明したように、実施の形態1によれば、電流センス部の活性領域にメイン半導体素子の活性領域の構造と異なる非MOS構造部が設けられている。実施の形態1では、非MOS構造部で、トレンチの側壁にn+型ソース領域が設けられず、p型ベース層が設けられている。このため、メイン半導体素子内の内蔵ダイオードに通電し、dv/dtにより内蔵ダイオードからの回り込みによる電流が電流センス部の非MOS構造部に集中しても、MOS構造部に達せず、電流センス部の活性領域が破壊されることを防止できる。したがって、電流センス部の活性領域の破壊耐量を改善できる。
【0056】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2にかかる半導体装置について説明する。実施の形態2にかかる半導体装置50の上面図およびメイン半導体素子46の構造は、実施の形態1にかかる半導体装置50と同じであるため、記載を省略する(
図1~3参照)。
図6は、実施の形態2にかかる半導体装置の電流センス部の構造を示す上面図である。
図7は、実施の形態2にかかる半導体装置の構造を示す
図6のA-A’断面図である。
【0057】
実施の形態2にかかる半導体装置50でも、実施の形態1と同様に、電流センス部42の活性領域40にMOS構造部43と非MOS構造部44が設けられ、MOS構造部43の構造は、メイン半導体素子46の活性領域40の構造と同じであるが、非MOS構造部44の構造は、メイン半導体素子46の活性領域40の構造と異なっている。具体的には、非MOS構造部44では、隣り合うトレンチ16間のメサ領域全体にわたってp+型コンタクト領域8が設けられている点が実施の形態1と異なる。
【0058】
図6では、電流センス部42の活性領域40の構造の内、y軸方向で直線l1からl2、x方向でm1からm2で囲まれる領域がMOS構造部43である。y軸方向で直線l1からl3,x方向でm1からm2で囲まれる領域、および直線l2からl4,x方向でm1からm2で囲まれる領域が非MOS構造部44である。実施の形態2でも、実施の形態1と同様に、0.1≦2×L2×M1/{(L1+2×L2)×M1≦0.4が成り立つことが好ましい。実施の形態2でも、非MOS構造部44は、4隅のみに設けられてもよい。
【0059】
また、実施の形態2では、
図6および
図7に示すように、直線l1からl3で囲まれる領域および直線l2からl4で囲まれる非MOS構造部44では、トレンチ16の側壁にn
+型ソース領域7が設けられず、隣り合うトレンチ16間のメサ領域全体にわたってp
+型コンタクト領域8が設けられている。このように、MOS構造が設けられないため、非MOS構造部44では、オン状態でもチャネルが形成されず、オン状態で電流が流れない。一方、第1,2p
+型ベース領域3,4、p型ベース層6、およびp
+型コンタクト領域8とn型炭化珪素エピタキシャル層2とのpn接合で構成される内蔵ダイオードが形成されている。このため、実施の形態2でも実施の形態1と同様に、電流センス部42の活性領域40が破壊されることを防止できる。
【0060】
以上、説明したように、実施の形態2によれば、電流センス部の活性領域にメイン半導体素子の活性領域の構造と異なる非MOS構造部が設けられている。実施の形態2では、非MOS構造部で、トレンチの側壁にn+型ソース領域が設けられず、p+型コンタクト領域が設けられている。このため、実施の形態1と同様の効果を有する。
【0061】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3にかかる半導体装置について説明する。実施の形態3にかかる半導体装置50の上面図およびメイン半導体素子46の構造は、実施の形態1にかかる半導体装置50と同じであるため、記載を省略する(
図1~3参照)。
図8は、実施の形態3にかかる半導体装置の電流センス部の構造を示す上面図である。
図9は、実施の形態3にかかる半導体装置の構造を示す
図8のA-A’断面図である。
【0062】
実施の形態3にかかる半導体装置50でも、実施の形態1と同様に、電流センス部42の活性領域40にMOS構造部43と非MOS構造部44が設けられ、MOS構造部43の構造は、メイン半導体素子46の活性領域40の構造と同じであるが、非MOS構造部44の構造は、メイン半導体素子46の活性領域40の構造と異なっている。具体的には、非MOS構造部44では、第1p+型ベース領域3と第2p+型ベース領域4との間にn型炭化珪素エピタキシャル層2を設けない構成とすることで、ソース-ドレイン間に電流が流れないようにしている。
【0063】
図8では、電流センス部42の活性領域40の構造の内、y軸方向で直線l1からl2で囲まれる領域がMOS構造部43である。y軸方向で直線l1からl3で囲まれる領域および直線l2からl4で囲まれる領域が非MOS構造部44である。実施の形態3でも、実施の形態1と同様に、0.1≦2×L2×M1/{(L1+2×L2)×M1≦0.4が成り立つことが好ましい。実施の形態3でも、非MOS構造部44は、4隅のみに設けられてもよい。
【0064】
また、実施の形態3では、
図8および
図9に示すように、直線l1からl3で囲まれる領域および直線l2からl4で囲まれる非MOS構造部44では、第1p
+型ベース領域3と第2p
+型ベース領域4とが接続し、トレンチ16が並ぶ方向(y軸方向)では、第1p
+型ベース領域3と第2p
+型ベース領域4との間にn型炭化珪素エピタキシャル層2が設けられていない。このため、n
+型ソース領域7と深さ方向に対向する領域のn型炭化珪素エピタキシャル層2は、p型ベース層6と、第1p
+型ベース領域3および第2p
+型ベース領域4とで分断されている。このように、n型炭化珪素エピタキシャル層2が分断されているため、非MOS構造部44では、オン状態でもチャネルが形成されても、ソース-ドレイン間に電流が流れない。一方、第1,2p
+型ベース領域3,4、p型ベース層6、およびp
+型コンタクト領域8とn型炭化珪素エピタキシャル層2とのpn接合で構成される内蔵ダイオードが形成されている。このため、実施の形態3でも実施の形態1と同様に、電流センス部42の活性領域40が破壊されることを防止できる。
【0065】
以上、説明したように、実施の形態3によれば、電流センス部の活性領域にメイン半導体素子の活性領域の構造と異なる非MOS構造部が設けられている。実施の形態3では、非MOS構造部で、第1p+型ベース領域と第2p+型ベース領域とが接続している。このため、実施の形態1と同様の効果を有する。
【0066】
(実施の形態4)
次に、実施の形態4にかかる半導体装置について説明する。実施の形態4にかかる半導体装置50の上面図およびメイン半導体素子46の構造は、実施の形態1にかかる半導体装置50と同じであるため、記載を省略する(
図1~3参照)。また、実施の形態4にかかる半導体装置の電流センス部の構造を示す上面図は、実施の形態3の電流センス部42の構造と同じであるため、記載を省略する(
図8参照)。
図10は、実施の形態4にかかる半導体装置の構造を示す
図8のA-A’断面図である。実施の形態4では、非MOS構造部44における第1,2p
+型ベース領域3,4の下面を、MOS構造部43よりも深くしている点で実施の形態3と異なる。
【0067】
実施の形態4にかかる半導体装置50でも、実施の形態1と同様に、電流センス部42の活性領域40にMOS構造部43と非MOS構造部44が設けられ、MOS構造部43の構造は、メイン半導体素子46の活性領域40の構造と同じであるが、非MOS構造部44の構造は、メイン半導体素子46の活性領域40の構造と異なっている。実施の形態4でも、実施の形態1と同様に、0.1≦2×L2×M1/{(L1+2×L2)×M1}≦0.4が成り立つことが好ましい。実施の形態4でも、非MOS構造部44は、4隅のみに設けられてもよい。
【0068】
また、実施の形態4では、
図8および
図10に示すように、直線l1からl3で囲まれる領域および直線l2からl4で囲まれる非MOS構造部44では、第1p
+型ベース領域3と第2p
+型ベース領域4とが接続し、y軸方向では、第1p
+型ベース領域3と第2p
+型ベース領域4との間にn型炭化珪素エピタキシャル層2が設けられていない。さらに、実施の形態4では、非MOS構造部44の第1p
+型ベース領域3および第2p
+型ベース領域4は、MOS構造部43の第1p
+型ベース領域3および第2p
+型ベース領域4よりも深くなっている。また深くすることにかえて、実施の形態4では、非MOS構造部44の第1p
+型ベース領域3および第2p
+型ベース領域4の不純物濃度を、MOS構造部43の第1p
+型ベース領域3および第2p
+型ベース領域4の不純物濃度よりも高くしてもよい。
【0069】
このため、n+型ソース領域7と深さ方向に対向する領域のn型炭化珪素エピタキシャル層2は、p型ベース層6と、第1p+型ベース領域3および第2p+型ベース領域4とで分断されている。このように、n型炭化珪素エピタキシャル層2が分断されているため、非MOS構造部44では、オン状態でもチャネルが形成されても、ソース-ドレイン間に電流が流れない。一方、p型ベース層6およびp+型コンタクト領域8とn型炭化珪素エピタキシャル層2とのpn接合で構成される内蔵ダイオードが形成されている。このため、実施の形態4でも実施の形態1と同様に、電流センス部42の活性領域40が破壊されることを防止できる。
【0070】
以上、説明したように、実施の形態4によれば、電流センス部の活性領域にメイン半導体素子の活性領域の構造と異なる非MOS構造部が設けられている。実施の形態4では、非MOS構造部で、第1p+型ベース領域と第2p+型ベース領域とが接続し、非MOS構造部の第1p+型ベース領域および第2p+型ベース領域は、MOS構造部の第1p+型ベース領域および第2p+型ベース領域よりも深くなっている。このため、実施の形態1と同様の効果を有する。
【0071】
(実施の形態5)
次に、実施の形態5にかかる半導体装置について説明する。実施の形態5にかかる半導体装置50の上面図およびメイン半導体素子46の構造は、実施の形態1にかかる半導体装置50と同じであるため、記載を省略する(
図1~3参照)。
図11は、実施の形態5にかかる半導体装置の電流センス部の構造を示す上面図である。
図12は、実施の形態5にかかる半導体装置の構造を示す
図11のA-A’断面図である。
【0072】
実施の形態5にかかる半導体装置50でも、実施の形態1と同様に、電流センス部42の活性領域40BにMOS構造部43と非MOS構造部44が設けられている。MOS構造部43の構造は、メイン半導体素子46の活性領域40の構造と同じであるが、非MOS構造部44の構造は、メイン半導体素子46の活性領域40の構造と異なっている。具体的には、実施の形態5では、非MOS構造部44では、隣り合うトレンチ16間のメサ領域全体にわたってp+型コンタクト領域8が設けられている点は実施の形態2と同じであるが、非MOS構造部44がMOS構造部43を取り囲むように配置されている点で実施の形態1~4と異なる。
【0073】
実施の形態5では、電流センス部42の活性領域40の構造の内、y軸方向で直線l1からl2で囲まれ、x軸方向で直線m5からm6で囲まれる領域がMOS構造部43である。一方、y軸方向で直線l1からl3で囲まれる領域および直線l2からl4で囲まれる領域、並びに、x軸方向で直線m1からm6で囲まれる領域および直線m2からm5で囲まれる領域が非MOS構造部44である。このため、直線l1からl3までの距離をL2、直線l1からl2までの距離をL1、直線l2からl4までの距離をL2、直線m1からm6までの距離をM2、直線m5からm6までの距離をM1、直線m2からm5までの距離をM2とする。この場合、非MOS構造部44とMOS構造部43と合わせた面積(電流センス部42の活性領域40の面積)は、(L1+2×L2)×(M1+2×M2)となり、非MOS構造部44の面積は、2×L2×(M2+M1)+2×M2×(L2+L1)となる。このため、実施の形態5では、実施の形態1と同様に、0.1≦{2×L2×(M2+M1)+2×M2×(L2+L1)}/{(L1+2×L2)×(M1+2×M2)}≦0.4が成り立つことが好ましい。
【0074】
また、実施の形態5では、
図11および
図12に示すように、直線l1からl3で囲まれる領域および直線l2からl4で囲まれる非MOS構造部44では、トレンチ16の側壁にn
+型ソース領域7が設けられず、隣り合うトレンチ16間のメサ領域全体にわたってp
+型コンタクト領域8が設けられている。さらに、直線l1からl2で囲まれる領域では、直線m5からm6に対応するMOS構造部43にだけn
+型ソース領域7が設けられており、直線m1からm6および直線m2からm5に対応する非MOS構造部44では、n
+型ソース領域7が設けられていない。このように、非MOS構造部44ではn
+型ソース領域7が設けられないため、オン状態でもチャネルが形成されず、オン状態で電流が流れない。一方、第1,2p
+型ベース領域3,4、p型ベース層6、およびp
+型コンタクト領域8とn型炭化珪素エピタキシャル層2とのpn接合で構成される内蔵ダイオードが形成されている。このため、メイン半導体素子46内の、第1,2p
+型ベース領域3,4、p型ベース層6、およびp
+型コンタクト領域8とn型炭化珪素エピタキシャル層2とのpn接合で構成される内蔵ダイオードに通電し、dv/dtにより内蔵ダイオードからの回り込みによる電流が、電流センス部42の非MOS構造部44に集中しても、MOS構造部43に達せず、電流センス部42の活性領域40Bが破壊されることを防止できる。
【0075】
さらに、実施の形態5では、y軸方向の端部(直線l1からl3で囲まれる領域および直線l2からl4で囲まれる領域)だけでなく、x軸方向の端部(直線m1からm6で囲まれる領域および直線m2からm5で囲まれる領域)にも非MOS構造部44が設けられており、非MOS構造部44はMOS構造部43の4辺を取り囲んでいる。このため、y軸方向の端部のみ非MOS構造部44が設けられている実施の形態1~4よりも、内蔵ダイオードからの回り込みによる電流が電流センス部42のMOS構造部43に達しにくくなっており、電流センス部42の活性領域40Bが破壊されることをより防止できる。
【0076】
また、実施の形態5では、非MOS構造部44の構造を実施の形態1のように、トレンチ16の側壁にn+型ソース領域7が設けられず、p型ベース層6が設けられているようにしてもよい。さらに、非MOS構造部44の構造を実施の形態3のように、第1p+型ベース領域3と第2p+型ベース領域4とが接続しているようにしてもよい。非MOS構造部44の構造を実施の形態4のように、第1p+型ベース領域3と第2p+型ベース領域4とが接続し、非MOS構造部44の第1p+型ベース領域3および第2p+型ベース領域4を、MOS構造部43の第1p+型ベース領域3および第2p+型ベース領域4よりも深くしてもよい。また、非MOS構造部44はオン状態で電流が流れなければ、x軸方向の端部とy軸方向の端部とで、構造を変えてもよい。
【0077】
ここで、
図11では、非MOS構造部44は、直線l1、l3、m1、m2で囲まれる領域、直線l2、l4、m1、m2で囲まれる領域、直線l3、l4、m1、m6で囲まれる領域および直線l3、l4、m2、m5で囲まれる領域に設けられているが、非MOS構造部44は、4隅のみに設けられてもよい。この場合、非MOS構造部44は、直線l1、l3、m1、m4で囲まれる領域、直線l1、l3、m2、m3で囲まれる領域、直線l2、l4、m1、m4で囲まれる領域、直線l2、l4、m2、m3で囲まれる領域、直線l3、l5、m1、m6で囲まれる領域、直線l6、l4、m1、m6で囲まれる領域、直線l3、l5、m2、m5で囲まれる領域および直線l6、l4、m2、m5で囲まれる領域となる。この場合でも、非MOS構造部44とMOS構造部43とを合わせた面積に対する非MOS構造部44の面積の割合は、上記値になることが好ましい。
【0078】
以上、説明したように、実施の形態5によれば、電流センス部の活性領域にメイン半導体素子の活性領域の構造と異なる非MOS構造部が設けられている。実施の形態5では、トレンチの側壁にn+型ソース領域が設けられず、p+型コンタクト領域だけが設けられた非MOS構造部が、MOS構造部を取り囲んでいる。このため、y軸方向の端部のみ非MOS構造部が設けられている実施の形態1~4よりも、内蔵ダイオードからの回り込みによる電流が電流センス部のMOS構造部に達しにくくなっており、電流センス部の活性領域が破壊されることをより防止できる。したがって、実施の形態1~4よりも、電流センス部の活性領域の破壊耐量をより改善できる。
【0079】
以上において本発明は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であり、上述した各実施の形態において、例えば各部の寸法や不純物濃度等は要求される仕様等に応じて種々設定される。また、上述した各実施の形態では、半導体として、炭化珪素(SiC)の他、シリコン(Si)、窒化ガリウム(GaN)などの半導体にも適用可能である。また、上述した各実施の形態では、ストライプ形状のトレンチ型MOSFETを例に説明しているが、格子形状のトレンチ型MOSFETやプレーナ型MOSFETなどの半導体装置にも広く適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0080】
以上のように、本発明にかかる半導体装置は、インバータなどの電力変換装置や種々の産業用機械などの電源装置や自動車のイグナイタなどに使用されるパワー半導体装置に有用である。
【符号の説明】
【0081】
1、101 n+型半導体基板
2、102 n型炭化珪素エピタキシャル層
3、103 第1p+型ベース領域
4、104 第2p+型ベース領域
6、106 p型ベース層
7、107 n+型ソース領域
8、108 p+型コンタクト領域
10、110 ゲート電極
11、111 層間絶縁膜
12、112 コンタクト電極
13、113 裏面電極
16、116 トレンチ
17、117 ゲート絶縁膜
20、120 半導体基体
40、140 活性領域
41、141 エッジ終端領域
42、142 電流センス部
43 MOS構造部
44 非MOS構造部
45、145 高機能領域
46、146 メイン半導体素子
50、150 半導体装置