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特開2024-107240補体関連障害を処置するための方法および組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107240
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】補体関連障害を処置するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/18 20060101AFI20240801BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240801BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20240801BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
C07K16/18 ZNA
A61K39/395 N
A61P7/02
C07K16/46
C07K16/18
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024093214
(22)【出願日】2024-06-07
(62)【分割の表示】P 2021125414の分割
【原出願日】2009-11-10
(31)【優先権主張番号】61/198,803
(32)【優先日】2008-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/199,563
(32)【優先日】2008-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/199,569
(32)【優先日】2008-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/199,562
(32)【優先日】2008-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/199,764
(32)【優先日】2008-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/200,634
(32)【優先日】2008-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/200,635
(32)【優先日】2008-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/200,640
(32)【優先日】2008-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/181,788
(32)【優先日】2009-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/228,047
(32)【優先日】2009-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】503102674
【氏名又は名称】アレクシオン ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ラッセル ピー. ロサー
(72)【発明者】
【氏名】カミール ベドロシアン
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ピー. スクイント
(72)【発明者】
【氏名】レオナード ベル
(57)【要約】
【課題】補体関連障害を処置するための方法および組成物の提供
【解決手段】本開示は、とりわけ、ヒト補体のインヒビターを含む組成物、および補体関連障害を処置または予防するための方法におけるこの組成物の使用に関する。いくつかの実施形態では、このインヒビターは患者に長期に投与される。いくつかの実施形態では、このインヒビターは、全身の補体阻害を維持し、かつ急進展を妨げる量および頻度で患者に投与される。いくつかの実施形態では、この組成物は、ヒト補体成分C5タンパク質またはそのタンパク質のフラグメント、例えば、C5aもしくはC5bに結合する抗体、またはその抗原結合フラグメントを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載のキットまたは方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2008年11月10日出願の、米国仮特許出願第61/198,803号;2008年11月18日出願の、米国仮特許出願第61/199,563号;2008年11月18日出願の、米国仮特許出願第61/199,562号;2008年11月18日出願の、米国仮特許出願第61/199,569号;2008年11月19日出願の、米国仮特許出願第61/199,764号;2008年12月1日出願の、米国仮特許出願第61/200,640号;2008年12月1日出願の、米国仮特許出願第61/200,634号;2008年12月1日出願の、米国仮特許出願第61/200,635号;2009年5月28日出願の、米国仮特許出願第61/181,788号;2009年7月23日出願の、米国仮特許出願第61/228,047号;の利益を主張し、これらの各々の開示はその全体が本明細書中で参考として援用される。
【0002】
本発明の技術分野は、医薬、免疫学、分子生物学およびタンパク質化学である。
【背景技術】
【0003】
補体系は、細胞性およびウイルス性の病原の侵入に対して防御するために身体の他の免疫学的系と連動して作用する。血漿タンパク質と膜補因子との複合体集合として見出されている、少なくとも25個の補体タンパク質が存在する。血漿タンパク質は、脊椎動物の血清におけるグロブリンのうち約10%を構成する。補体成分は、一連の複雑だが正確な酵素切断および膜結合事象で相互作用することによってそれらの免疫防御機能を達成する。得られた補体カスケードは、オプソニン、免疫調節および溶解性機能を有する生成物の産生をもたらす。補体活性化に関連する生物学的活性の簡潔な要約は、例えば、Merck Manual,第16版に提供される。
【0004】
補体カスケードは、古典的経路(CP)、レクチン経路、または代替経路(AP)を介して進行し得る。レクチン経路は代表的には、高マンノース基質に対するマンノース結合レクチン(MBL)の結合で開始される。APは、抗体依存性であり得、かつ病原体表面上の特定の分子によって開始され得る。CPは代表的には、標的細胞上の抗原性部位の抗体認識およびその部位に対する結合によって開始される。これらの経路は、C3コンバターゼ(補体成分C3が活性プロテアーゼによって切断されてC3aおよびC3bを生じるポイント)に集中する。
【0005】
AP C3コンバターゼは、血液中の血漿で豊富である補体成分C3の自然な加水分解によって開始される。このプロセスはまた、「ティックオーバー(tickover)」としても公知であり、C3中のチオエステル結合の自然な切断を通じて生じてC3iまたはC3(HO)を形成する。ティックオーバーは、活性化C3の結合を支持するか、および/または天然もしくは陽性の荷電特徴を有する表面(例えば、細菌細胞表面)の存在によって容易になる。C3(HO)のこの形成によって、血漿タンパク質B因子の結合が可能になり、これによって次にD因子がB因子をBaおよびBbに切断することが可能になる。Bbフラグメントは、C3に結合したまま残り、C3(HO)Bbを含む複合体を形成する(「液相」または「初期」C3コンバターゼ)。少量産生されるだけだが、液相C3コンバターゼは、多数のC3タンパク質をC3aおよびC3bに切断し、かつC3bの生成およびその引き続く表面(例えば、細菌表面)への共有結合を生じ得る。表面結合したC3bに対するB因子は、D因子により切断され、これによってC3b,Bbを含む表面結合したAP C3コンバターゼ複合体が形成される(例えば、非特許文献1を参照のこと)。
【0006】
AP C5コンバターゼ((C3b),Bb)は、AP C3コンバターゼに対する第二のC3bモノマーの付加の際に形成される。(例えば、非特許文献2および非特許文献3を参照のこと)。第二のC3b分子の役割は、C5を結合し、かつそれらをBbによって切断させることである(例えば、非特許文献4を参照のこと。)AP C3およびC5コンバターゼは、例えば、非特許文献2に記載の三量体タンパク質プロパージンの添加によって安定化される。しかし、プロパージン結合は、機能的な別の経路C3またはC5コンバターゼを形成する必要はない。(例えば、非特許文献5および非特許文献6を参照のこと)。
【0007】
CP C3コンバターゼは、標的抗原(例えば、微生物抗原)に結合される抗体とのC1q、C1r、およびC1sの複合体である、補体成分C1の相互作用の際に形成される。抗体-抗原複合体に対するC1のC1q部分の結合によって、C1における高次構造変化が生じ、これがC1rを活性化する。次いで、活性なC1rはC1-会合したC1sを切断し、それによって活性なセリンプロテアーゼを生じる。活性なC1sは補体成分C4をC4bおよびC4aに切断する。C3bと同様に、新しく生成されたC4bフラグメントは、極めて反応性のチオールを含み、これが標的表面(例えば、微生物細胞表面)上で適切な分子とアミドまたはエステル結合を容易に形成する。C1sはまた、補体成分C2をC2bおよびC2aに切断する。C4bおよびC2aによって形成される複合体は、CP C3コンバターゼであり、これがC3をC3aおよびC3bにプロセシングし得る。CP C5コンバターゼ(C4b、C2a、C3b)はCP C3コンバターゼへのC3b単量体の付加の際に形成される(例えば、非特許文献1および非特許文献7を参照のこと)。
【0008】
C3およびC5コンバターゼにおけるその役割に加えて、C3bはまた、オプソニンとして、マクロファージおよび樹状細胞などの抗原提示細胞の表面上に存在する補体レセプターとの相互作用を通じて機能する。C3bのオプソニン機能は一般には、補体系の最も重要な抗感染性機能の1つであるとみなされる。C3b機能をブロックする遺伝子病変を有する患者は、広範な種々の病原性生物体による感染を受けやすいが、補体カスケードシーケンスで後の病変を有する患者、すなわち、C5機能をブロックする病変を有する患者は、Nisseria感染にのみさらに易感染性であり、次にごくわずかにさらに易感染性であることが見出される。
【0009】
APおよびCP C5のコンバターゼは、正常な血清中で約75μg/ml(0.4μM)で見出される190kDaのβグロブリンであるC5を切断する。C5は、グリコシル化され、その質量のうち約1.5~3パーセントが炭水化物による。成熟C5は、655アミノ酸の75kDaのβ鎖にジスルフィド結合される999アミノ酸の115kDaのα鎖のヘテロ二量体である。C5は、単一コピー遺伝子の単鎖前駆体タンパク質産物として合成される(非特許文献8)。この遺伝子の転写物のcDNA配列は、18アミノ酸リーダー配列にそった1658アミノ酸の分泌されたプロC5前駆体を予測する(例えば、特許文献1を参照のこと)。
【0010】
プロ-C5前駆体は、アミノ酸655および659の後で切断されて、β鎖をアミノ末端フラグメント(上記配列のアミノ酸残基+1~655)として、およびα鎖をカルボキシル末端フラグメント(上記配列のアミノ酸残基660~1658)として生じる(ここでは4つのアミノ酸(上記の配列のアミノ酸残基656~659)が2つの間で欠失している)。
【0011】
C5aは、C5のα鎖から、別のまたは古典的なC5コンバターゼのいずれかによって、α鎖の最初の74アミノ酸(すなわち、上記の配列のアミノ酸残基660~733)を含むアミノ末端フラグメントとして切断される。C5aの11kDaの質量のうち約20パーセントは、炭水化物による。コンバターゼ作用の切断部位は、上記の配列のアミノ酸残基733であるか、またはそれにすぐ隣接する。この切断部位に結合するかまたはそれに隣接する化合物は、切断部位に対するC5コンバターゼ酵素の接近をブロックする能力を有し、それによって補体インヒビターとして作用する。
【0012】
C5はまた、C5コンバターゼ活性以外の方法で活性化されてもよい。制限トリプシン消化(例えば、非特許文献9、ならびに非特許文献10を参照のこと)および酸処理(非特許文献11ならびに非特許文献12)もC5を切断し、かつ活性なC5bを生じ得る。
【0013】
C5の切断は、C5a、強力なアナフィラトキシンおよび走化性因子を放出し、かつ溶解性末端成分複合体C5b-9の形成をもたらす。C5aおよびC5b-9はまた、下流の炎症性因子、例えば、加水分解酵素、反応性酸素種、アラキドン酸代謝物および種々のサイトカインの放出を増幅することによって、多面的な細胞活性化特性を有する。
【0014】
末端の補体複合体の形成における第一工程は、C5bとC6、C7、およびC8とを組み合わせて標的細胞の表面にC5b-8複合体を形成する工程を包含する。C5b-8複合体といくつかのC9分子との結合の際、膜攻撃複合体(MAC、C5b-9、末端補体複合体-TCC)が形成される。十分な数のMACsが標的細胞膜開口部に挿入される場合、それらは標的細胞の(MAC細孔)媒介性急速浸透圧溶解を生じる。MACの非溶解濃度が低いほど、他の影響が生じ得る。詳細には、内皮細胞および血小板への少数のC5b-9複合体の膜挿入は、有害な細胞活性化を生じ得る。ある場合には、活性化が、細胞溶解に先んじる場合がある。
【0015】
上述のとおり、C3aおよびC5aは、アナフィラトキシンである。これらの活性化された補体成分は、肥満細胞脱顆粒を誘発し得、これが好塩基球および肥満細胞からヒスタミンを、ならびに炎症の他のメディエーターを放出し、これが平滑筋収縮、血管透過性の増大、白血球活性化、および他の炎症現象、例としては、細胞増殖を生じ、これが過形成を生じる。C5aはまた、補体活性化の部位へ炎症促進性顆粒を誘引するように機能する走化性ペプチドとしても機能する。
【0016】
C5aレセプターは、気管支および肺胞上皮細胞および気管支平滑筋細胞の表面上で見出される。C5aレセプターはまた、好酸球、肥満細胞、単球、好中球および活性化リンパ球でも見出されている。
【0017】
適切に機能する補体系は、微生物の感染に対して堅強な防御をもたらすが、補体の調節または活性化が不適切なことは、例えば、関節リウマチ(RA);ループス腎炎;虚血性再灌流傷害;非定型溶血性尿毒症症候群(aHUS);デンス・デポジット病(dense deposit disease)(DDD);黄斑変性症(例えば、加齢性黄斑変性症(AMD));溶血、肝酵素上昇、および低血小板(HELLP)症候群;血栓性血小板減少性紫斑病(TTP);自然胎児消失(spontaneous fetal loss);寡免疫性血管炎(Pauci-immune vasculitis);表皮水泡症;再発性胎児消失;多発性硬化症(MS);外傷性脳損傷;ならびに心筋梗塞、心肺バイパスおよび血液透析から生じる損傷を含めて、種々の障害の病因に関与している(例えば、非特許文献13を参照のこと)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第6,355,245号明細書
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Mueller-Eberhard(1988)Ann Rev Biochem 57:321~347
【非特許文献2】Medicusら、(1976)J Exp Med 144:1076~1093
【非特許文献3】Fearonら、(1975)J Exp Med 142:856~863
【非特許文献4】Isenmanら、(1980)J Immunol 124:326~331
【非特許文献5】Schreiberら、(1978)Proc Natl Acad Sci USA 75:3948-3952
【非特許文献6】Sissonsら、(1980)Proc Natl Acad Sci USA 77:559-562
【非特許文献7】Cooperら、(1970)J Exp Med 132:775~793
【非特許文献8】Havilandら、(1991) J. Immunol.146:362~368
【非特許文献9】Minta and Man(1997)J Immunol.119:1597~1602
【非特許文献10】WetselおよびKolb(1982)J Immunol.128:2209~2216
【非特許文献11】YamamotoおよびGewurz(1978)J Immunol.120:2008
【非特許文献12】Damerauら、(1989)Molec.Immunol.26:1133~1142
【非特許文献13】Holersら、(2008)Immunological Reviews 223:300~316
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0020】
要約
本発明の開示は、ヒト補体のインヒビター(例えば、抗C5抗体などの補体成分C5のインヒビター)を含む組成物、およびこの組成物を用いて補体関連障害を処置または予防するための方法に関する。いくつかの実施形態では、この組成物は、ヒト補体成分C5タンパク質に結合する、抗体、またはその抗原結合フラグメントを含む。いくつかの実施形態では、この組成物は、ヒトC5フラグメントC5aもしくはC5bに結合する、抗体、またはその抗原結合フラグメントを含む。いくつかの実施形態では、C5インヒビターは、低分子または核酸、例えば、siRNAまたはアンチセンスRNA(哺乳動物でC5 mRNAに結合しかつ不活性化を促進する)である。
【0021】
補体関連障害としては、ヒトにおける任意の内科的障害であって、その処置は、補体系の阻害から直接または間接的に利益がある障害が挙げられる。この障害は一般には、補体系の不適切な調節、例えば、以下が不適切であることによって特徴付けられる:(i)補体系の活性化、または(ii)被験体の活性化された補体系の期間。補体関連障害としては限定するものではないが、炎症および自己免疫障害が挙げられる。補体関連障害は、例えば、RA;抗リン脂質抗体症候群(APS);ループス腎炎;虚血性再灌流傷害;aHUS;定型(下痢または感染性とも呼ばれる)溶血性尿毒症症候群(tHUS);DDD;視神経脊髄炎(NMO);多巣性運動ニューロパチー(MMN);MS;黄斑変性症(例えば、AMD);HELLP症候群;TTP;自然胎児消失;寡免疫性血管炎(Pauci-immune vasculitis);表皮水泡症;再発性胎児消失;および外傷性脳損傷であり得る。いくつかの実施形態では、補体関連障害は、補体関連の血管障害、例えば、心血管系障害、心筋炎、心血管系障害、末梢(例えば、筋骨格)血管障害、腎血管障害、腸間膜/腸内の血管障害、血管炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑腎炎、全身性紅斑性狼瘡関連血管炎、関節リウマチ関連血管炎、免疫複合体血管炎、高安病、拡張型心筋症、糖尿病性血管症、川崎病(動脈炎)、静脈気体塞栓(VGE)、およびステント留置後再狭窄、回転式粥腫切除術(rotational atherectomy)、および経皮経管冠動脈形成拡張術(PTCA)である。さらなる補体関連障害としては限定するものではないが、重症筋無力症(MG)、寒冷凝集素症(CAD)、皮膚筋炎、発作性寒冷血色素尿症(PCH)、グレーブス病、アテローム性動脈硬化症、アルツハイマー病、全身炎症反応敗血症、敗血性ショック、脊髄損傷、糸球体腎炎、橋本甲状腺炎、I型糖尿病、乾癬、天疱瘡、自己免疫溶血性貧血(AIHA)、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、グッドパスチャー症候群、ドゴー病、および劇症型(catastrophic)APS(CAPS)が挙げられる。
【0022】
一態様では、本開示は、ヒトでの補体関連障害を処置または予防するための方法を特徴付ける。この方法は、ヒト補体のインヒビター(例えば、ヒト補体成分C5のインヒビター)を含む治療上有効な量の組成物を、それを必要とするヒトに対して投与する工程を包含する。
【0023】
別の態様では、本開示は、ヒトにおいて補体関連障害を処置または予防するための方法を特徴付け、この方法は、治療上有効な量のヒト補体のインヒビター(例えば、ヒト補体成分C5のインヒビター)を含む組成物を、それを必要とするヒトに対して投与する工程を包含する。
【0024】
本明細書に記載の任意の方法のいくつかの実施形態では、このインヒビターは、ヒト補体成分C5タンパク質の発現を阻害し得る。このインヒビターは、ヒト補体成分C5タンパク質のタンパク質発現を阻害してもよいし、またはこのタンパク質をコードするmRNAの発現を阻害してもよい。本明細書に記載の任意の方法のいくつかの実施形態では、このインヒビターは、ヒト補体成分C5のフラグメントC5aおよびC5bへの切断を阻害し得る。
【0025】
本明細書に記載の任意の方法のいくつかの実施形態では、このインヒビターは、C5aおよびC5bの一方または両方に結合し、かつ阻害する。このインヒビターは、例えばC5aまたはC5bに結合する抗体であってもよい。いくつかの実施形態では、このインヒビターは、C5aに結合するが、全長C5には結合しない抗体である。いくつかの実施形態では、このインヒビターは、C5bに結合するが、全長C5には結合しない抗体である。いくつかの実施形態では、このインヒビターは、配列番号12~25のいずれか1つに示される少なくとも4つ(例えば、少なくとも、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、または17以上)連続のアミノ酸を含むか、またはそのアミノ酸からなるアミノ酸配列を有する、ヒトC5aタンパク質またはそのフラグメントに結合する抗体である。いくつかの実施形態では、このインヒビターは、配列番号12に示されるアミノ酸配列を有するヒトC5aタンパク質に結合する抗体である。いくつかの実施形態では、このインヒビターは、配列番号4または26のいずれか1つに示される少なくとも4つ(例えば、少なくとも、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、または17以上)連続のアミノ酸を含むか、またはそのアミノ酸からなるアミノ酸配列を有する、ヒトC5bタンパク質またはそのフラグメントに結合する抗体である。いくつかの実施形態では、このインヒビターは、配列番号4または26に示されるアミノ酸配列を有するヒトC5bタンパク質に結合する抗体である。
【0026】
本明細書に記載される任意の方法のいくつかの実施形態では、このインヒビターは、ポリペプチド、ポリペプチドアナログ、核酸、核酸アナログ、および低分子からなる群より選択され得る。このポリペプチドは、本明細書に記載の任意のものなどのヒト補体成分C5タンパク質に結合する、抗体、またはその抗原結合フラグメントであってもよいし、またはそれからなってもよい。いくつかの実施形態では、この抗体は、補体成分C5タンパク質のα鎖に結合し得る。いくつかの実施形態では、この抗体は、補体成分C5タンパク質のβ鎖に結合し得る。いくつかの実施形態では、この抗体は、ヒト補体成分C5のα鎖に結合し得、かつこの抗体は、(i)ヒト体液での補体活性化を阻害し得、(ii)精製されたヒト補体成分C5のヒト補体成分C3bもしくはヒト補体成分C4bのいずれかへの結合を阻害し得、および/または(iii)ヒト補体活性化産物なしのC5aに結合し得ない(または前述の特性のいずれかの組み合わせ)。この抗体は、配列番号1~11のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有するか、またはそれからなるヒト補体成分C5タンパク質に結合し得る。この抗体は、配列番号5のアミノ酸8位置~アミノ酸位置12に相当するアミノ酸配列を含む単離されたオリゴペプチドに結合し得る。いくつかの実施形態では、この抗体は、モノクローナル抗体、単鎖抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、ポリクローナル抗体、組み換え抗体、ダイアボディ、キメラ化抗体もしくはキメラ抗体、脱免疫化ヒト抗体、完全ヒト抗体、単鎖抗体、Fvフラグメント、Fdフラグメント、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、またはF(ab’)フラグメントであってもよい。いくつかの実施形態では、この抗体は、エクリズマブであってもまたはパキセリズマブであってもよい。
【0027】
本明細書に記載される任意の方法のいくつかの実施形態では、この組成物は、ヒトに静脈内投与されてもよい。
【0028】
本明細書に記載される任意の方法のいくつかの実施形態では、補体関連障害は、別の補体経路関連障害である。本明細書に記載される任意の方法のいくつかの実施形態では、この補体関連障害は、古典的な補体経路関連障害である。いくつかの実施形態では、この補体関連障害は、関節リウマチ、虚血性再灌流傷害、非定型溶血性尿毒症症侯群、血栓性血小板減少性紫斑病、デンス・デポジット病(DDD);加齢性黄斑変性症、自然胎児消失、寡免疫性血管炎、表皮水泡症、再発性胎児消失、多発性硬化症、HELLP、子癇前症、外傷性脳損傷、アルツハイマー病、重症筋無力症、寒冷凝集素症、皮膚筋炎、グレーブス病、橋本甲状腺炎、I型糖尿病、乾癬、天疱瘡、自己免疫溶血性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、グッドパスチャー症候群、抗リン脂質抗体症候群、劇症型抗リン脂質症候群、視神経脊髄炎(NMO)、多巣性運動ニューロパチー(MMN)、デゴス(Degos)病、および本明細書に記載される任意の他の補体関連障害からなる群より選択される。
【0029】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の任意の方法は、ヒトが補体関連障害を有するか、有する疑いがあるか、または発症するリスクがあると特定する工程をさらに包含し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の任意の方法はまた、投与後に、補体関連障害の1つ以上の症状の改善についてヒトをモニタリングする工程を包含し得る。
【0030】
補体関連障害がaHUSである、本明細書に記載の任意の方法の実施形態では、aHUSは、遺伝型であっても、後天性であっても、または特発型であってもよい。いくつかの実施形態では、aHUSは、補体H因子(CFH)関連のaHUS(例えば、CFHの変異、またはCFHに結合する被験体における抗体の存在に起因する)、膜補因子タンパク質(MCP)関連のaHUS、補体I因子(CFI)関連のaHUS、C4b結合タンパク質(C4BP)関連のaHUS、フォン・ヴィレブランド因子(vWF)関連の障害、補体B因子(CFB)関連のaHUS、またはC3消費増大の結果として低C3レベルを生じる別の経路の障害であってもよい。
【0031】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の任意の方法は、被験体がaHUSを有するか、有する疑いがあるか、または発症するリスクがあることを特定する工程をさらに包含し得る。
【0032】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の任意の方法は、投与後、aHUSの1つ以上の症状の改善について被験体をモニタリングする工程を包含し得る。
【0033】
本明細書に記載される任意の方法のいくつかの実施形態では、この組成物は、血漿療法(例えば、血漿交換または血漿注入)の前、間、または後に被験体に投与され得る。いくつかの実施形態では、被験体に対するC5インヒビターの投与によって、患者による血漿療法の必要性が軽減され得る。例えば、いくつかの実施形態では、被験体へのC5インヒビターの投与(例えば、慢性投与)は、患者による血漿療法の必要性を少なくとも2カ月まで軽減または実質的に減少し得る(例えば、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月、7カ月、8カ月、9カ月、10カ月、11カ月もしくは12カ月、または1、2、3、4、5もしくは6年以上)。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の任意の方法は、定型HUSまたはaHUSを処置するために有用な1つ以上の追加の活性剤を被験体に投与する工程を包含し得る。この1つ以上の追加の活性剤は、例えば、降圧剤、抗血小板剤、プロスタサイクリン、線維素溶解剤および抗酸化剤からなる群より選択され得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、ヒトとは乳児である。乳児とは、例えば、0.5歳(例えば、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、または9.5歳)であってもよい。乳児は、10歳未満であってもよい(例えば、9.5、9、8.5、8、7.5、7、6.5、6、5.5、5、4.5、4、3.5、3、2.5、2、1.5、1、または1歳未満)。
【0035】
補体関連障害が定型HUSである本明細書に記載の任意の方法の実施形態では、定型HUSは、ヒトでの大腸菌感染に関連し得る。大腸菌感染は、例えば、大腸菌O157(例えば、O157:H7)、O26、O103、O111、またはO145感染であり得る。本明細書に記載される任意の方法のいくつかの実施形態では、代表的な溶血性尿毒症症候群は、ヒトでのShigella dysenteriae感染と関連し得る。Shigella dysenteriae感染は、Shigella dysenteriaeの1型の感染であり得る。
【0036】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の任意の方法はさらに、ヒトが定型溶血性尿毒症症候群を有するか、有する疑いがあるか、または発症するリスクがあると特定する工程を包含し得る。
【0037】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の任意の方法は、投与後に、定型溶血性尿毒症症候群の1つ以上の症状の改善についてヒトをモニタリングする工程を包含し得る。
【0038】
補体関連障害がCAPSである本明細書に記載の任意の方法の実施形態では、CAPSは、誘発条件に関連し得る。誘発条件としては、例えば、癌、移植、感染、手術、原発性抗リン脂質抗体症候群、または自己免疫障害、例えば、関節リウマチまたは全身性紅斑性狼瘡を挙げることができる。したがって、いくつかの実施形態では、CAPSは、癌、例えば、限定するものではないが、胃癌、卵巣癌、リンパ腫、白血病、子宮内膜癌、腺癌腫、肺癌、またはCAPSを誘発するかまたはCAPSと関連することが当該分野で公知の任意の他の癌と関連し得る。いくつかの実施形態では、CAPSは特発性であってもよい。
【0039】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の任意の方法はまた、ヒトがCAPSを有するか、有する疑いがあるか、または発症するリスクがあることを特定する工程を包含し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の任意の方法は、投与後、CAPSの1つ以上の症状の改善についてヒトをモニタリングする工程を包含し得る。
【0040】
本明細書に記載される任意の方法のいくつかの実施形態では、組成物は、血漿交換、プラズマフェレーシス、IVIG、またはCAPSを処置するための任意の他の追加の療法の前、間または後にヒトに対して投与され得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の任意の方法はまた、CAPSを処置するために有用な1つ以上の追加の活性剤をヒトに投与する工程を包含し得る。この1つ以上の追加の活性剤は、降圧剤、抗サイトカイン剤、ステロイド、抗凝固剤または線維素溶解剤からなる群より選択され得る。
【0042】
補体関連障害がTTPである本明細書に記載の任意の方法の実施形態では、TTPは、遺伝性であってもよい。例えば、ヒトは、ADAMTS13遺伝子に1つ以上の(例えば、2、3、4、または5以上)の変異を担持し得る。本明細書に記載される任意の方法のいくつかの実施形態では、TTPは、後天性であってもよい。例えば、いくつかの実施形態では、ヒトは、ADAMTS13メタロプロテイナーゼに結合し、かつ阻害する抗体を産生し得る。本明細書に記載される任意の方法のいくつかの実施形態では、TTPは、再発型であり得る。例えば、ヒトとは、TTPを有するヒトであってもよい。本明細書に記載される任意の方法のいくつかの実施形態では、TTP(または再発性TTP)は、誘発条件、例えば、限定するものではないが、癌、妊娠、細菌もしくはウイルスの感染、手術、または当該分野で公知であるかもしくは本明細書で記載される任意の他のTTP関連状態に関連する。本明細書に記載される任意の方法のいくつかの実施形態では、TTP(または再発性TTP)は、TTPに関連する治療剤の使用に関連する。例えば、TTPは、例えば、チクロピジンもしくはクロピドグレルなどの血小板凝集インヒビターまたは免疫抑制剤(例えば、シクロスポリン、マイトマイシンC、FK506、またはインターフェロンα)の使用に関連し得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の任意の方法は、ヒトがTTPを有するか、有する疑いがあるか、または発症するリスクがあることを特定する工程を包含し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の任意の方法は、投与後、TTPの1つ以上の症状の改善についてヒトをモニタリングする工程を包含し得る。
【0044】
本明細書に記載される任意の方法のいくつかの実施形態では、組成物は、血漿交換、血漿注入、プラズマフェレーシス、または脾臓摘出の前、間、または後にヒトに投与され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の任意の方法は、ヒトに対して、TTPを処置または予防するために有用な1つ以上の追加の活性剤を投与する工程を包含し得る。この1つ以上の追加の活性剤は、降圧剤、ステロイド、抗凝固剤、または線維素溶解剤からなる群より選択され得る。
【0045】
補体関連障害がDDDである本明細書に記載の任意の方法の実施形態では、DDDは、遺伝型の障害であり得る。例えば、ヒトは、補体H因子遺伝子、補体因子H関連5遺伝子、または補体成分C3遺伝子におけるDDD関連の変異を有し得る。
【0046】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の任意の方法は、ヒトがDDDを有するか、有する疑いがあるか、または発症するリスクがあることを特定する工程を包含し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の任意の方法は、投与後、DDDの1つ以上の症状における改善についてヒトをモニタリングする工程を包含し得る。
【0047】
本明細書に記載される任意の方法のいくつかの実施形態では、組成物は、血漿交換、血漿補充、プラズマフェレーシス、または静脈内γグロブリン療法の前、間または後にヒトに投与され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の任意の方法は、DDDを処置するために有用な1つ以上の追加の活性剤をヒトに対して投与する工程を包含し得る。1つ以上の追加の活性剤は、降圧剤、コルチコステロイド、抗凝固剤、または線維素溶解剤からなる群より選択され得る。
【0048】
補体関連障害がMGである本明細書に記載の任意の方法の実施形態では、ヒトは、MG関連自己抗体、例えば、限定はしないが、MG関連抗AChR抗体、MG関連抗MuSK抗体、またはMG関連抗横紋(striational)タンパク質抗体を発現するヒトであってもよい。MGは、眼のMGおよび/またはMGの薬物誘発型、例えば、D-ペニシラミン誘発性MGであってもよい。いくつかの実施形態では、ヒトは、筋無力症クリーゼである場合もあるし、または筋無力症クリーゼを発症するリスクがある場合もある。いくつかの実施形態では、ヒトとは、新生児のMGを有する新生児であり得て、ここではMGを有する母が、胎盤から乳児へMG関連抗体を渡す。
【0049】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の任意の方法は、MGを有するか、有する疑いがあるか、または発症するリスクがあるヒトを特定する工程をさらに包含し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の任意の方法は、投与後、MGの1つ以上の症状の改善についてヒトをモニタリングする工程をさらに包含し得る。本明細書に記載される任意の方法のいくつかの実施形態では、組成物は、血漿交換、プラズマフェレーシス、IVIG、または免疫吸着療法の前、間、または後にヒトに投与され得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の任意の方法は、MGを処置または予防するために有用な1つ以上の追加の活性剤をヒトに投与する工程を包含し得る。1つ以上の追加の活性剤は、例えば、アセチルコリンステラーゼインヒビター、免疫抑制剤、または当該分野で公知であるかもしくは本明細書に記載される、MGを処置するために有用な任意の他の追加の活性剤であってもよい。
【0051】
補体関連障害が発作性寒冷血色素尿症(PCH)である本明細書に記載の任意の方法の実施形態では、PCHは、感染(例えば、ウイルスもしくは細菌の感染)または新生物に関連し得る。例えば、PCHは、Treponema palladium感染、インフルエンザウイルス感染、水痘帯状疱疹ウイルス感染、サイトメガロウイルス(CMV)感染、エプスタイン・バーウイルス(EBV)感染、アデノウイルス感染、パルボウイルスB19感染、コクサッキーA9感染、Haemophilusインフルエンザ感染、Mycoplasma pneumoniae感染、またはKlebsiella pneumoniae感染に関連し得る。いくつかの実施形態では、PCHは、非ホジキンリンパ腫に関連し得る。いくつかの実施形態では、PCHは、免疫(例えば、麻疹免疫)に関連し得る。本明細書に記載される任意の方法のいくつかの実施形態では、PCHは、急性であってもまたは再発性であってもよい。
【0052】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の任意の方法は、ヒトがPCHを有するか、有する疑いがあるか、または発症するリスクがあることを特定する工程を包含し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の任意の方法は、投与後、PCHの1つ以上の症状の改善についてヒトをモニタリングする工程を包含し得る。
【0053】
本明細書に記載される任意の方法のいくつかの実施形態では、組成物は、血漿交換、血漿注入、IVIG療法、赤血球輸血、またはプラズマフェレーシスの前、間、または後にヒトに投与され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の任意の方法は、PCHを処置または予防するために有用な1つ以上の追加の活性剤をヒトに投与する工程を包含し得る。1つ以上の追加の活性剤は、降圧剤、ステロイド、免疫抑制剤(例えば、リツキシマブ)、抗生物質、抗ウイルス剤、および化学療法剤からなる群より選択され得る。
【0054】
補体関連障害がCADである本明細書に記載の任意の方法の実施形態では、CADは、感染(例えば、ウイルスもしくは細菌の感染)または新生物と関連し得る。例えば、CADは、HIV感染、サイトメガロウイルス(CMV)感染、エプスタイン・バーウイルス(EBV)感染、またはMycoplasma pneumoniae感染に関連し得る。いくつかの実施形態では、CADは、非ホジキンリンパ腫に関連し得る。本明細書に記載される任意の方法のいくつかの実施形態では、CADは、原発性であっても、または二次性であってもよい。
【0055】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の任意の方法は、ヒトがCADを有するか、有する疑いがあるか、または発症するリスクがあるということを特定する工程を包含し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の任意の方法は、投与後、CADの1つ以上の症状の改善についてヒトをモニタリングする工程を包含し得る。
【0056】
本明細書に記載される任意の方法のいくつかの実施形態では、組成物は、血漿交換、血漿補充、IVIG療法、またはプラズマフェレーシスの前、間、または後にヒトに投与され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の任意の方法は、CADを処置または予防するために有用な1つ以上の追加の活性剤をヒトに投与する工程を包含し得る。1つ以上の追加の活性剤は、降圧剤、ステロイド、免疫抑制剤(例えば、リツキシマブ)、抗生物質、抗ウイルス剤、および化学療法剤からなる群より選択され得る。
【0057】
補体関連障害がHELLP症候群である本明細書に記載の任意の方法の実施形態では、罹患した女性は妊娠している場合もあるし、または最近妊娠した女性である場合もある。例えば、女性は、投与の前14日内(例えば、13日、12日、11日、10日、9日、8日、7日、6日、5日、4日、3日、2日、24時間、18時間、12時間、6時間未満、または4、3、2もしくは1時間内)に出産した女性であってもよい。いくつかの実施形態では、女性は、2回以上妊娠している。いくつかの実施形態では、女性は、少なくとも1回の以前の妊娠の間に子癇前症またはHELLP症候群を発症した女性であってもよい。
【0058】
補体関連障害がHELLP症候群である実施形態では、本明細書に記載の方法はさらに、女性がHELLP症候群を有するか、有する疑いがあるか、または発症するリスクがあるということを特定する工程を包含し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の任意の方法はさらに、投与後、HELLP症候群の1つ以上の症状の改善について女性をモニタリングする工程を包含し得る。
【0059】
本明細書に記載される任意の方法のいくつかの実施形態では、組成物は、血漿交換、プラズマフェレーシス、血小板輸血、または赤血球輸血の前、間、または後に女性に投与されてもよい。
【0060】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の任意の方法は、女性においてHELLP症候群を処置または予防するために有用な少なくとも1つ以上の追加の活性剤を女性に投与する工程を包含し得る。1つ以上の追加の活性剤は、降圧剤、ステロイド、抗けいれん剤、および抗血栓剤からなる群より選択され得る。
【0061】
さらに別の態様では、本開示は、表示とヒト補体のインヒビター(例えば、ヒト補体成分C5のインヒビター)を含む組成物とを有する容器を備える(かまたはそれからなる)製品を特徴付ける。この表示は、本明細書に記載される任意の補体関連障害などの補体関連障害を有しているか、有する疑いがあるか、または発症するリスクがあるヒトに対してこの組成物を投与することを示す。このインヒビターは、補体成分C5またはそのフラグメント、例えば、C5aまたはC5bに結合する、例えば、抗体またはその抗原結合フラグメントであってもよい。いくつかの実施形態では、この製品は、補体関連障害を処置または予防する(例えば、障害の1つ以上の症状を緩和する)ために有用な1つ以上の追加の活性剤を含む。
【0062】
本開示はまた、C5インヒビターエクリズマブでの処置の際、補体関連障害aHUSおよび腎臓の血栓性微小血管症(TMA)を有する患者が、TMAのさらなる発症なしに腎臓のTMAの完全な回復を経験したという本発明者らによる発見に一部は基づく。したがって、別の態様では、本開示は、TMAを有するか、有する疑いがあるか、または発症するリスクがある患者において、血栓性微小血管症(TMA)を処置するか、またはTMAの発症もしくは重篤度を軽減するための方法を特徴付ける。この方法は、補体のインヒビター、例えば、補体成分C5のインヒビターを患者(それを必要とする)に投与し、それによって患者のTMAを処置する工程を包含する。このインヒビターは、例えば、本明細書に記載される任意のC5インヒビター、例えば、エクリズマブであってもよい。C5インヒビターの投与は、患者の脳および/または腎臓においてTMAの発症または重篤度を低減し得る。いくつかの実施形態では、C5インヒビターの投与は、患者における既存のTMA、例えば、患者の脳または腎臓に既に存在しているTMAを処置するかまたは回復を促進する。
【0063】
いくつかの実施形態では、患者は、本明細書に記載の任意の補体関連障害などの障害、例えば、膜性増殖性糸球体腎炎、ドゴー病、非定型溶血性尿毒症症侯群、抗体媒介性拒絶、HELLP症候群、または劇症型抗リン脂質抗体症候群を有する。
【0064】
本発明者らはまた、例えば、aHUSまたはCAPSを有する患者に対するエクリズマブの投与が、その疾患の1つ以上の症状の予期されない急速な緩和を生じることを発見している。例えば、本発明者らは、高血圧、尿排出の減少、および低血小板レベルが、エクリズマブでの慢性的な処置を開始して1カ月内(例えば、2週間内)にエクリズマブ処置aHUS患者では緩和されることを発見した。別の例では、本発明者らは、膜性増殖性糸球体腎炎を有する患者でのタンパク質尿は、エクリズマブでの慢性的な処置の開始後1カ月内に緩和されたことを発見した。したがって、さらに別の態様では、本開示は、発作性夜間血色素尿症の排除によって、本明細書に記載の任意の補体関連障害などの補体関連障害に関連する1つ以上の症状を緩和するための方法を特徴付ける。この方法は、補体のインヒビター(例えば、補体成分C5のインヒビター)を、それを必要とする患者に対して、補体関連障害に関連する1つ以上の症状を緩和するのに有効な量で投与する工程を包含し、ここでこの症状は、このインヒビターの投与後2カ月内に(例えば、7、6、5、4、3、または2週内に;20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、もしくは1日内に;または12、11、10、9、8、7、6内、もしくは5時間内でさえ)緩和される。補体関連障害の症状は、医薬の当該分野で周知であり、本明細書に記載されている。この補体インヒビターは、本明細書に記載される任意のC5インヒビター、例えば、エクリズマブであってもよい。2カ月内にC5インヒビターによって緩和され得る例示的な症状としては、例えば、タンパク質尿、高血圧、血小板数減少、および腎臓からの尿排出の減少が挙げられる。いくつかの実施形態では、この少なくとも1つの症状は、その正常な水準または値の40%(例えば、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、またはさらに1%)内まで緩和される。例えば、いくつかの実施形態では、aHUSを有する高血圧患者に対するC5インヒビターエクリズマブの投与は、患者の高血圧をその患者の正常血圧(拡張期および/または収縮期)の40%内まで緩和し得る。いくつかの実施形態では、C5インヒビターの投与は、被験体における補体関連障害の1つ以上の症状を完全寛解し得る。いくつかの実施形態では、患者は、腎臓移植をした患者、例えば、腎臓移植を最近受けたaHUS患者である。補体関連障害は、本明細書に記載される任意の障害、例えば、膜性増殖性糸球体腎炎、ドゴー病、非定型溶血性尿毒症症侯群、抗体媒介性拒絶、HELLP症候群、および劇症型抗リン脂質抗体症候群であってもよい。
【0065】
本明細書に記載の補体関連障害の多くは、偶発性または散発性の症状提示によって特徴付けられ、歴史的には症状が顕在する時にのみ処置されている。しかし、本発明者らは、患者が無症候性である場合にさえ、背景にある補体関連障害が存在したままであることを発見している。本発明者らはまた、この障害の再発または再燃が、補体媒介性インヒビターを用いて慢性的処置によって防止されるか、または少なくとも最小化され得ることも発見している。このような、このインヒビターの慢性的な投与は、再燃が生じる場合重篤な補体関連障害(例えば、aHUSまたはCAPS)を有する患者が被っているしばしば不可逆性の損傷(例えば、腎臓のような器官の喪失)を防止または最小化するために有用である。したがって、この患者に対して補体インヒビターを、その患者の全身の補体活性を防止または実質的に阻害するのに十分高いインヒビターの濃度を継続して維持するのに十分な量および頻度で投与することが、最も重要である。
【0066】
したがって、別の態様では、本開示は、補体関連障害を処置するための方法を特徴付けており、この方法は、補体インヒビター(例えば、抗C5抗体などのC5インヒビター)を、それを必要とする患者に対して、この患者で全身の補体阻害を維持するのに有効な量および頻度で長期に投与する工程を包含し、ただしこの補体関連障害は発作性夜間血色素尿症ではない。
【0067】
本明細書で使用する場合、「長期に投与される」、「慢性的な処置」、「長期に処置すること」またはその類似の文法的なバリエーションとは、長期間にわたって患者において全身の補体活性を完全にまたは実質的に抑制するために患者の血液中で治療剤の特定の域値濃度を維持するために使用される処置計画を指す。したがって、補体インヒビターで長期に処置される患者は、その患者の全身の補体活性を阻害または実質的に阻害する、患者の血液におけるインヒビターの濃度を維持するために十分な量および投与頻度でインヒビターを用いて、2週間以上の期間(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51もしくは52週;1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11もしくは12カ月;または1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5もしくは12年、または患者の寿命の残りにわたって)処置され得る。いくつかの実施形態では、補体インヒビターは、それを必要とする患者に対して、血清溶血性活性を20%以下(例えば、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、またはさらに5%未満)に維持するため、および血清溶血性活性を20%以下に維持するために有効である量および頻度で長期に投与され得る。例えば、Hillら、(2005)Blood 106(7):2559を参照のこと。いくつかの実施形態では、補体インヒビターは、血清乳酸脱水素酵素(LDH)レベルをLDHについての正常範囲の少なくとも20%(例えば、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、またはさらに5%未満)内で維持するのに有効な量および頻度で患者に投与され得る。Hillら、(2005)(上記)を参照のこと。いくつかの実施形態では、補体インヒビターは、血清LDHレベルを550IU/L未満(例えば、540、530、520、510、500、490、480、470、460、450、430、420、410、400、390、380、370、360、350、340、330、320、310、300、290、280、または270IU/L未満)で維持するのに有効な量および頻度で患者に投与される。患者の全身の補体阻害を維持するため、補体インヒビターを、患者に対して、例えば、週に1回、2週に1回、週に2回、1日に1回、1カ月に1回、または3週ごとに1回長期に投与してもよい。本明細書に記載される任意の方法のいくつかの実施形態では、C5インヒビター(例えば、抗C5抗体)は、患者に対して、患者血液中で1つのC5分子あたり、少なくとも0.7(例えば、少なくとも0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10以上)の二価C5インヒビター分子(単数または複数)(例えば、全抗C5抗体、例えば、エクリズマブ)濃度を維持するために有効な投与の量および頻度で投与され得る。C5インヒビターに関して「二価(divalent)」または「2価(bivalent)」とは、C5分子のための少なくとも2つの結合部位を含むC5インヒビターを指す。C5インヒビターが一価である場合(例えば、単鎖抗C5抗体またはC5に結合するFab)、このインヒビターは、血中のC5分子1個あたり少なくとも1.5(例えば、少なくとも2、2.5、3、3.5、4、4.5、または5以上)の一価C5インヒビターの濃度を維持するために有効な量および頻度でこの患者に投与され得る。いくつかの実施形態では、一価C5インヒビターは、少なくとも2:1(例えば、少なくとも3:1、少なくとも4:1、少なくとも5:1、または少なくとも6:1以上)という一価C5インヒビター対C5の比を維持するために有効な量および頻度で患者に投与され得る。本明細書に記載される任意の方法のいくつかの実施形態では、全(2価)抗C5抗体は、患者の血液の1ミリリットルあたり、少なくとも40μg(例えば、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、75、80、85、90、95、100、110、または120μg以上)という濃度でこの抗体を維持するのに有効な量および頻度で患者に投与される。好ましい実施形態では、全抗C5抗体(例えば、エクリズマブ)は、患者の血液1ミリリットルあたり少なくとも50μgという濃度でこの抗体を維持するための量および頻度で投与される。好ましい実施形態では、全抗C5抗体(例えば、エクリズマブ)は、患者の血液1ミリリットルあたり少なくとも100μgという濃度でこの抗体を維持するための量および頻度で投与される。本明細書に記載される任意の方法のいくつかの実施形態では、一価の抗C5抗体(例えば、単鎖抗体またはFabフラグメント)は、患者の血液1ミリリットルあたり少なくとも80μg(例えば、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、または170μg以上)という濃度でこの抗体を維持するために有効な量および頻度でこの患者に投与され得る。例示的な慢性的な投薬ストラテジーは本明細書に記載されている。
【0068】
別の態様では、本開示は、補体関連障害を処置するための方法を特徴付けており、この方法は、患者において全身の補体阻害を維持するのに有効な量および頻度で抗C5抗体を、それを必要とする患者に対して長期に投与する工程を包含する。いくつかの実施形態では、抗C5抗体は、それを必要とする患者に対して、血清溶血性活性を20%以下(例えば、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、またはさらに5%未満)で維持し、かつ血清溶血性活性を20%以下で維持するのに有効な量および頻度で長期に投与され得る。例えば、Hillら、(2005)Blood 106(7):2559を参照のこと。いくつかの実施形態では、抗C5抗体は、血清乳酸脱水素酵素(LDH)レベルをLDHについての正常範囲内に:少なくとも20%(例えば、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、またはさらに5%未満);または550IU/L以下(例えば、550、540、530、520、510、500、490、480、470、460、450、430、420、410、400、390、380、370、360、350、340、330、320、310、300、290、280以下、または270IU/L未満)に維持するのに有効な量および頻度で患者に投与され得る。例えば、Hillら、(2005)(上記)を参照のこと。いくつかの実施形態では、抗C5抗体は、患者の血液中でC5分子1個あたり少なくとも0.7(例えば、少なくとも0.8、0.9、1、2、3または4以上)という全(2価)抗C5抗体分子(単数または複数)の濃度を維持するための量および頻度でこの患者に投与される。いくつかの実施形態では、抗C5抗体は、少なくとも1:1(例えば、少なくとも3:2、2:1、5:2、または3:1)という血中の全(2価)抗C5抗体対C5の比を維持するために有効な量および頻度で患者に投与され得る。抗C5抗体が一価である場合、抗C5抗体は、血中でC5分子1個あたり少なくとも2という一価抗C5抗体の濃度を維持するのに有効な量および頻度でこの患者に投与され得る。いくつかの実施形態では、一価抗C5抗体は、少なくとも2:1(例えば、少なくとも3:1、少なくとも4:1、少なくとも5:1、または6:1以上)という一価抗C5抗体対C5の比を維持するために有効な量および頻度で患者に投与され得る。この抗C5抗体は、例えば、エクリズマブであってもよい。患者は、補体関連障害を有する場合も、有する疑いがある場合も、または発症するリスクがある場合もあるが、ただしこの障害は発作性夜間血色素尿症ではない。例えば、補体関連障害は、膜性増殖性糸球体腎炎、ドゴー病、非定型溶血性尿毒症症侯群、抗体媒介性拒絶、HELLP症候群、および劇症型抗リン脂質抗体症候群からなる群より選択される障害であってもよい。
【0069】
本明細書に記載される任意の方法のいくつかの実施形態では、抗C5抗体は、患者の体重に基づいてその患者に長期に投与され得る。本明細書に記載される任意の方法のいくつかの実施形態では、抗C5抗体(例えば、エクリズマブ)は、患者の体重に基づいて、表1に示される投薬スケジュールのもとで患者に長期に投与され得る。
【0070】
【表1-1】
【0071】
【表1-2】


本開示によれば、(B)の維持投薬スケジュールは、処置投与計画の期間、例えば、少なくとも1カ月(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、24、36、または48カ月以上);少なくとも1年(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15年以上);またはその患者の余生にわたって維持され得る。
【0072】
好ましい実施形態では、抗C5抗体(例えば、エクリズマブ)は、表2に示される投薬スケジュールのもとで患者の体重に基づいてその患者に投与され得る。
【0073】
【表2-1】
【0074】
【表2-2】


本開示によれば、(B)の維持投薬スケジュールは、処置投与計画の期間、例えば、少なくとも1カ月(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、24、36、または48カ月以上);少なくとも1年(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15年以上);またはその患者の余生にわたって維持され得る。
【0075】
表1または2の例示的な投薬スケジュールは、投薬計画の期間にわたって患者における全身の補体活性の完全または実質的に完全な阻害を維持するような方法で必要に応じて医療従事者によって調節され得る(投与される抗体の頻度、期間および/または総量において)ことが理解される。
【0076】
別の態様では、本開示は、補体関連障害を処置するための方法を特徴付けており、この方法は、抗C5抗体を、それを必要とする患者に対して、患者の血液1ミリリットルあたり少なくとも40μg(例えば、少なくとも41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、75、80、85、90、95、100、110、または120μg以上)の抗体という濃度を維持するのに有効な量および頻度で長期に投与する工程を包含し、ここでこの患者は、補体関連障害を有するか、有する疑いがあるか、または発症するリスクがあり、ただしこの障害は発作性夜間血色素尿症ではない。
【0077】
いくつかの実施形態では、この抗C5抗体は、2週ごとに少なくとも1回患者に投与される。いくつかの実施形態では、この抗C5抗体は、1週あたり1回患者に投与される。いくつかの実施形態では、この抗C5抗体は、以下の投薬スケジュールのもとで少なくとも9週間(例えば、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51もしくは52週;1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11もしくは12カ月;または1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5もしくは12年、またはその患者の余生の間)患者に投与され得る:少なくとも800mg(例えば、少なくとも810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000、1100、または1200mg以上)の抗C5抗体を4連続週の間に1週に1回;少なくとも800mg(例えば、少なくとも810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000、1100、または1200mg以上)の抗C5抗体を5週の間に1回;および少なくとも800mg(例えば、少なくとも810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000、1100、または1200mg以上)の抗C5抗体を、その後は、この投薬スケジュールの残りの期間、隔週に。好ましい実施形態では、少なくとも900mgの抗C5抗体を患者に対して4週間にわたり週に1回投与し;少なくとも1200mgを患者に対して、第5週の間に投与し;そして少なくとも1200mgの抗C5抗体を患者に対して、その後、慢性投薬スケジュールの残りの期間、隔週に投与する。
【0078】
さらに別の態様では、本開示は、器官または組織を移植するための方法を特徴付ける。この方法は、器官または組織を、それを必要とする患者に対して移植する工程を包含し、ここでこの移植の前および後に長期に、ヒト補体のインヒビターは、その患者における全身性の補体活性を実質的に阻害するのに有効な量および頻度でその患者に投与される。補体インヒビターは、例えば、C5インヒビター、例えば、抗C5抗体(例えば、エクリズマブ)であってもよい。本明細書に記載されるとおり、C5インヒビター(例えば、抗C5抗体)は、患者の血液中でC5分子1個について少なくとも0.7個の2価C5インヒビター分子(単数または複数)(または少なくとも1.5個の一価C5インヒビター分子(単数または複数))の濃度を維持する量および頻度で投与され得る。いくつかの実施形態では、C5インヒビター(例えば、抗C5抗体)は、患者の血液中で、少なくとも少なくとも40μg(例えば、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、75、80、85、90、95、100、110、または120μg以上)のインヒビター(例えば、この抗C5抗体)の濃度を維持する量および頻度でこの患者に投与され得る。いくつかの実施形態では、少なくとも800mg(例えば、少なくとも810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000、1100、または1200mg以上)の抗C5抗体(例えば、エクリズマブ)が、患者に対して、その患者に器官または組織を移植する前24時間内に(例えば、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、または2時間内に)投与される。いくつかの実施形態では、この方法はまた、移植の際、器官または組織中の補体活性化を阻害する時間および条件下で、この器官または組織とC5インヒビター(例えば、抗C5抗体、例えば、エクリズマブ)とを接触(例えば、浸漬)する工程を移植の前に包含し得る。この器官は、例えば、皮膚、腎臓、心臓、肺、四肢(例えば、指またはつま先)、眼、幹細胞集団、骨髄、脈管の組織、筋肉、神経組織、または肝臓であってもよい。患者は、aHUSを有する場合もあるし、発症するリスクがある場合もあるし、または有する疑いがある場合もある。いくつかの実施形態では、少なくとも700mg(例えば、少なくとも710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000、1100、または1200mg以上)の抗C5抗体が、患者に対して、移植後24時間内に(例えば、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3時間内、または2時間内)に投与される。いくつかの実施形態では、この抗C5抗体は、患者に対して、移植後に長期に投与される。例えば、抗C5抗体は、患者に対して、少なくとも9週間(例えば、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51もしくは52週;1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12カ月;または1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5もしくは12年、またはその患者の余生の間)以下の投薬スケジュールのもとで長期に投与される:少なくとも700mg(例えば、少なくとも710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000、1100、または1200mg以上)の抗C5抗体を器官または組織移植後24時間内に;少なくとも700mg(例えば、少なくとも710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000、1100、または1200mg以上)の抗C5抗体を最初の移植用量後、4週間にわたって週に1回;少なくとも700mg(例えば、少なくとも710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000、1100、または1200mg以上)の抗C5抗体を第5週の間に1回;および少なくとも700mg(例えば、少なくとも710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000、1100、または1200mg以上)の抗C5抗体を、その後、その投薬スケジュールの残りの間は隔週に。好ましい実施形態では、抗C5抗体は、以下の投薬スケジュールのもとで移植操作を受けている患者に対して投与される:少なくとも1200mgの抗C5抗体が、患者に対して移植の前24時間内に投与される;少なくとも900mgの抗C5抗体が患者に対して移植後24時間内に投与される;少なくとも1200mgの抗C5抗体が、抗C5抗体の最初の術後投与後4週間にわたって1週あたり1回患者に投与される;1200mgが患者に対して抗C5抗体の最初の術後投与後第5週で投与される;そして少なくとも1200mgの抗C5抗体が、患者に対して、この慢性処置計画の残りの間、その後隔週に投与される。
【0079】
いくつかの実施形態では、この方法はさらに、患者に対して1つ以上の免疫抑制剤、例えば、限定するものではないが、ラパマイシン、サイクロスポリンA、抗IL-2剤、OKT3、およびタクロリムスを投与する工程を包含し得る。1つ以上の免疫抑制剤が、移植の前、間または後に投与されてもよい。1つ以上の免疫抑制剤がまた、C5インヒビターの投与の前、同時または後に投与されてもよい。
【0080】
本開示はまた、患者に対して移植される場合、器官または組織に対する補体媒介性の傷害の軽減のための方法を特徴付ける。この方法は、器官または組織を、それを必要とする患者に対して移植する前に、その器官または組織とC5のインヒビターを含む薬学的溶液とを、その患者に移植された場合その器官または組織に対する補体媒介性の傷害を軽減する時間および条件下で接触させる工程を包含する。C5インヒビターはまた、この患者に対してこの器官または組織の移植の前、間および/または後に投与され得る。この溶液はまた、1つ以上の免疫抑制剤、例えば、限定するものではないが、ラパマイシン、サイクロスポリンA、抗IL-2剤、OKT3、およびタクロリムスを含んでもよい。
【0081】
本発明者らはまた、重篤な補体関連障害、例えば、CAPSおよびAPSならびに寛解があった患者において、再燃または再発について患者を罹りやすくする低レベルの補体活性が患者で保持され続けることを発見した。上で注記のとおり、これらの重篤な障害を有する患者での症状の再発は、腎臓などの主要な器官に対する即時的かつときどき不可逆性の傷害に相当し得る。したがって、本開示は1つの特定の理論または作用機序には決して限定はされないが、本発明者らは、急激な再燃または再発を防止するために、補体関連障害(例えば、aHUSおよびCAPS)を有する患者が、その障害の1つ以上の症状が緩和された後でさえ、および/または患者が臨床的寛解があった後でさえC5インヒビターで長期に処置されなければならないと断言する。したがって、さらに別の態様では、本開示は補体関連障害を処置するための方法を特徴付け、ただし、この障害は、発作性夜間血色素尿症ではない。この方法は、補体関連障害に罹患した患者に対してC5インヒビター(例えば、抗C5抗体、例えば、エクリズマブ)を、補体関連障害を処置するために有効な量で投与する工程を包含する。C5インヒビターは、この障害の1つ以上(例えば、2、3、4、5、または6以上)の症状が緩和された後でさえ患者に投与される。いくつかの実施形態では、C5インヒビターは、患者に対して、1つ以上の症状が完全に緩和された後でさえ投与される。いくつかの実施形態では、C5インヒビターは、患者が臨床的寛解した後でさえその患者に投与される。C5インヒビターは、患者に対して、1つ以上の症状がその患者において緩和されるか、および/またはその患者が臨床的寛解をした後、少なくとも8週の間(例えば、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51もしくは52週;1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11もしくは12カ月;または1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5もしくは12年、またはその患者の余生の間)、例えば、患者に長期に投与され得る。補体関連障害は、本明細書に記載の任意の障害、例えば、膜性増殖性糸球体腎炎、ドゴー病、非定型溶血性尿毒症症侯群、抗体媒介性拒絶、HELLP症候群、および劇症型抗リン脂質抗体症候群であってもよい。
【0082】
本開示は、例えば、aHUS患者における、エクリズマブの効果の観察に基づいて、特定の理論または作用機序には決して限定されないが、本発明者らは、補体成分C5aの生物学的活性が、aHUSに関連する血管収縮および高血圧に実質的に寄与し得ると結論した。したがって、C5aインヒビターを用いるC5aの阻害は、aHUSを処置するためならびに/またはaHUSに関連する血管収縮および高血圧を緩和するために有用である。この方法は、それを必要とする患者に対して、補体成分C5のインヒビターを、患者におけるaHUSを処置するのに有効な量で投与する工程を包含する。いくつかの実施形態では、aHUSに関連する血管収縮および高血圧は、C5aインヒビターの投与後、2カ月内(例えば、7、6、5、4、3もしくは2週内に;14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2もしくは1日内に;または12、11、10、9、8、7、6もしくは5時間内に)緩和され得る。いくつかの実施形態では、C5aインヒビターは配列番号12~25のいずれか1つに示される少なくとも4(例えば、少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、または17以上)連続のアミノ酸を含むか、またはそれからなるアミノ酸配列を有するヒトC5aタンパク質またはそのフラグメントに結合する抗体(またはその抗原結合フラグメント)である。いくつかの実施形態では、このインヒビターは、配列番号12に示されるアミノ酸配列を有するヒトC5aタンパク質に結合する抗体である。C5aインヒビターは、C5をフラグメントC5aおよびC5bに切断することを阻害しない。C5aインヒビターはまた、C5bも膜攻撃複合体の形成も阻害しない。本明細書に記載されるとおり、いくつかの実施形態では、C5aインヒビター(例えば、抗C5a抗体)は、C5aとC5aレセプター(例えば、C5aRまたはC5L2)との間の相互作用を阻害し得る。いくつかの実施形態では、この抗体は、モノクローナル抗体、単鎖抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、ポリクローナル抗体、組み換え抗体、ダイアボディ、キメラ化抗体もしくはキメラ抗体、脱免疫化ヒト抗体、完全ヒト抗体、単鎖抗体、Fvフラグメント、Fdフラグメント、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、またはF(ab’)フラグメントであってもよい。
【0083】
補体関連障害がaHUSである本明細書に記載の任意の方法の実施形態では、aHUSは、遺伝子型であっても、後天性型であっても、または特発性型であってもよい。いくつかの実施形態では、aHUSは、補体H因子(CFH)関連のaHUS(例えば、H因子またはH因子に結合しかつ不活性化する自己抗体における変異に関連するaHUS)、膜補因子タンパク質(MCP)関連のaHUS、補体I因子(CFI)関連のaHUS、C4b-結合タンパク質(C4BP)関連のaHUS、補体B因子-(CFB)関連のaHUS、vWF障害、またはC3消費の増大の結果として低レベルのC3を生じる補体活性化の別の経路における任意の他の変異に関連するaHUSであってもよい。
【0084】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の任意の方法はさらに、患者がaHUSを有するか、有する疑いがあるか、または発症するリスクがあることを特定する工程を包含し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の任意の方法は、投与後、aHUSの1つ以上の症状の改善について患者をモニタリングする工程を包含し得る。本明細書に記載される任意の方法のいくつかの実施形態では、C5aインヒビターは、血漿療法(例えば、血漿交換または血漿注入)の前、間または後に患者に投与され得る。いくつかの実施形態では、患者に対するC5aインヒビターの投与は、患者による血漿療法の必要性を緩和し得る。例えば、いくつかの実施形態では、患者に対するC5aインヒビターの投与(例えば、慢性投与)は、少なくとも2カ月(例えば、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月、7カ月、8カ月、9カ月、10カ月、11カ月もしくは12カ月または1、2、3、4、5、または6年以上)、患者による血漿療法の必要性を緩和または実質的に減少し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の任意の方法は、患者に対して、定型のHUSまたはaHUSを処置するために有用な1つ以上の追加の活性剤を投与する工程を包含し得る。1つ以上の追加の活性剤は、例えば、降圧剤、抗血小板剤、プロスタサイクリン、線維素溶解剤、および抗酸化剤からなる群より選択され得る。
【0085】
いくつかの実施形態では、ヒトとは乳児である。乳児は、例えば、0.5歳(例えば、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、または9.5歳)であってもよい。乳児は、10歳未満(例えば、9.5、9、8.5、8、7.5、7、6.5、6、5.5、5、4.5、4、3.5、3、2.5、2、1.5、1未満、または1歳未満)であってもよい。
【0086】
本明細書に記載される任意の方法のいくつかの実施形態では、補体関連障害は発作性夜間血色素尿症ではない。
【0087】
「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、交換可能に用いられ、かつ長さにも翻訳後修飾にもかかわらず、アミノ酸の任意のペプチド連結鎖を意味する。本明細書に記載される補体成分C5タンパク質は、野生型タンパク質を含んでも、もしくは野生型タンパク質であってもよく、または多くとも50(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、25、30、35、40、または50)まで連続のアミノ酸置換を有する改変体であってもよい。保存的置換は代表的には、以下の群のなかの置換を包含する:グリシンおよびアラニン;バリン、イソロイシン、およびロイシン;アスパラギン酸およびグルタミン酸;アスパラギン、グルタミン、セリンおよびトレオニン;リジン、ヒスチジンおよびアルギニン;ならびにフェニルアラニンおよびチロシン。
【0088】
本明細書に記載されるヒト補体成分C5タンパク質はまた、全長タンパク質および/または未熟(プレ-プロ)C5タンパク質よりも短いが、全長タンパク質が哺乳動物における抗原性応答を誘導する能力(下の「抗体産生のための方法」を参照のこと)の少なくとも10%(例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、または100%以上)を保持している、タンパク質の「抗原性ペプチドフラグメント」を包含する。C5タンパク質の抗原性ペプチドフラグメントは、末端、およびタンパク質の内部欠失改変体を包含する。欠失改変体は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20のアミノ酸セグメント(2つ以上のアミノ酸の)または連続しない単一のアミノ酸を欠いてもよい。抗原性ペプチドフラグメントは、少なくとも6(例えば、少なくとも7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、300、350、400、450、500、または600以上)のアミノ酸残基長(例えば、配列番号1~11のいずれか1つの少なくとも6連続のアミノ酸残基)であってもよい。いくつかの実施形態では、ヒトC5タンパク質の抗原性ペプチドフラグメントは、500未満(例えば、450、400、350、325、300、275、250、225、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、49、48、47、46、45、44、43、42、41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、または6未満)のアミノ酸残基長(例えば、配列番号1~11のいずれか1つにおける500未満連続のアミノ酸残基)を有する。いくつかの実施形態では、全長の抗原性ペプチドフラグメント、未熟ヒトC5タンパク質(プレプロ-C5タンパク質)は、少なくとも6、ただし500未満のアミノ酸残基長を有する。
【0089】
いくつかの実施形態では、ヒト補体成分C5タンパク質は、配列番号1(下を参照のこと)に示されるアミノ酸配列を有するヒトC5タンパク質に対して70%(例えば、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%)以上同一であるアミノ酸配列を有し得る。
【0090】
アミノ酸配列同一性(%)は、最大配列同一性パーセントを達成するように、必要な場合、配列を整列させギャップを導入した後、参照配列中のアミノ酸に同一である候補配列中のアミノ酸の割合として規定される。配列同一性のパーセントを決定する目的のためのアライメントは、当該分野の技術の範囲内の種々の方法、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN、ALIGN-2またはMegalign(DNASTAR)ソフトウエアのような市販のコンピュータソフトウエアを用いて達成することができる。比較されている配列の完全長に渡り最大アライメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含むアライメントを測定するための適切なパラメーターは、公知の方法によって決定され得る。
【0091】
例示的なヒトC5タンパク質およびその抗原性ペプチドフラグメントのアミノ酸配列は、当該分野で公知であり、下に示される。
【0092】
本開示を通じて用いる場合、「抗体」という用語は、当該分野で公知であり、本明細書に記載される種々の方法のうちいずれかによって生成される、抗体全体またはインタクトな抗体(例えば、IgM、IgG、IgA、IgD、またはIgE)分子を指す。「抗体」という用語は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ化抗体またはキメラ抗体、ヒト化抗体、脱免疫化ヒト抗体、および完全ヒト抗体を包含する。抗体は、任意の種々の種、例えば、哺乳動物、例えば、ヒト、非ヒト霊長類(例えば、サル、ヒヒ、またはチンパンジー)、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、スナネズミ(アレチネズミ)、ハムスター、ラット、およびマウスの中で生成されても、またはそれに由来してもよい。この抗体は、精製されても、または組み換え抗体であってもよい。
【0093】
本明細書で使用する場合、「抗体フラグメント」、「抗原結合フラグメント」という用語、または類似の用語は、抗原(例えば、補体成分C5タンパク質)に結合する能力を保持している抗体のフラグメント、例えば、単鎖抗体、単鎖Fvフラグメント(scFv)、Fdフラグメント、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、またはF(ab’)フラグメントを指す。scFvフラグメントは、単一のポリペプチド鎖であって、scFvが由来する抗体の重鎖および軽鎖の両方の可変領域を含む単一のポリペプチド鎖である。さらに、ダイアボディ(Poljak(1994) Structure 2(12):1121~1123;Hudsonら、(1999)J.Immunol.Methods 23(1-2):177-189、(その各々の開示はその全体が参照によって本明細書に援用される))およびイントラボディ(intrabodies)(Hustonら、(2001)Hum.Antibodies 10(3-4):127~142;Wheelerら、(2003)Mol Ther 8(3):355~366;Stocks(2004)Drug Discov. Today 9(22):960~966(その各々の開示はその全体が参照によって本明細書に援用される))(補体成分C5タンパク質に結合する)は、組成物中に組み込まれてもよいし、本明細書に記載される方法で用いられてもよい。
【0094】
他に規定しない限り、本明細書に用いる全ての技術用語および科学用語は、本開示が関与する当該分野の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、定義を含む本明細書が優先する。好ましい方法および材料が下に記載されるが、本明細書に開示される方法および材料と類似または等価な方法および材料が、現在開示される方法および組成物の実施または試験で用いられ得る。本明細書に言及される全ての刊行物、特許出願、特許および他の引用文献は、その全体が参照によって援用される。
【0095】
本開示の他の特徴および利点、例えば、補体関連障害を処置または予防するための方法は、以下の説明、実施例から、および特許請求の範囲から明らかである。また、本発明は例えば、以下を提供する:
(1)
補体関連障害を処置するための方法であって、補体インヒビターを、補体関連障害の処置を必要とする患者に対して、該患者における全身的な補体活性を実質的に阻害するのに有効な量および頻度で長期に投与する工程を包含し、ここで該患者は、補体関連障害を有するか、補体関連障害を有する疑いがあるか、または補体関連障害を発症するリスクがあり、ただし該補体関連障害は、発作性夜間血色素尿症ではない、方法。
(2)
同種の器官または組織を移植するための方法であって、器官または組織を、器官または組織の移植を必要とする患者に対して移植する工程を包含し、ここで該移植の前およびその後に、補体インヒビターが、該患者における全身性の補体活性を実質的に阻害するのに有効な量および頻度で該患者に投与される、方法。
(3)
前記器官または組織が、肝臓、腎臓、心臓、肺、皮膚、眼、骨髄、および脈管の組織からなる群より選択される、2に記載の方法。
(4)
前記患者が、補体関連障害を有するか、補体関連障害を有する疑いがあるか、または補体関連障害を発症するリスクがある、2または3に記載の方法。
(5)
前記補体インヒビターが、血清溶血性活性を20%以下まで低下し、かつ該血清溶血性活性を20%以下に維持するのに有効な量および頻度で患者に長期に投与される、1~4のいずれか1項に記載の方法。
(6)
前記補体インヒビターが、血清LDHレベルを500IU/L以下に維持するのに有効な量および頻度で患者に対して長期に投与される、1~5のいずれか1項に記載の方法。
(7)
前記補体インヒビターが、ポリペプチド、ポリペプチドアナログ、核酸、核酸アナログ、および低分子からなる群より選択される、1~6のいずれか1項に記載の方法。
(8)
前記補体インヒビターが、可溶性のCR1、LEX-CR1、MCP、DAF、CD59、H因子、コブラ毒因子、FUT-175、コンプレスタチン、およびK76 COOHからなる群より選択される、1~7のいずれか1項に記載の方法。
(9)
前記補体インヒビターがヒト補体成分タンパク質の発現を阻害する、1~7のいずれか1項に記載の方法。
(10)
前記補体インヒビターが、ヒト補体成分C5、C4、C3、またはC2の切断を阻害する、1~7のいずれか1項に記載の方法。
(11)
前記補体インヒビターが補体成分C5のフラグメントC5aおよびC5bへの切断を阻害する、10に記載の方法。
(12)
前記補体インヒビターがヒト補体成分タンパク質に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントである、10または11に記載の方法。
(13)
前記抗体またはその抗原結合フラグメントがヒト補体成分C5タンパク質に結合する、12に記載の方法。
(14)
前記抗体が前記補体成分C5タンパク質のα鎖に結合する、13に記載の方法。
(15)
前記抗体が、前記ヒト補体成分C5のα鎖に結合し、該抗体が、(i)ヒト体液における補体活性化を阻害し、(ii)精製されたヒト補体成分C5の、ヒト補体成分C3bまたはヒト補体成分C4bのいずれかへの結合を阻害し、(iii)該ヒト補体活性化産物がないC5aに結合しない、13または14に記載の方法。
(16)
前記抗体が、配列番号1~26のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有する前記ヒト補体成分C5タンパク質に結合する、13に記載の方法。
(17)
前記抗体が、配列番号5のアミノ酸位置8からアミノ酸位置12までに相当するアミノ酸配列を含む、単離されたオリゴペプチドに結合する、13に記載の方法。
(18)
前記ポリペプチドが、補体成分C5フラグメントC5bに結合する抗体を含む、12または13に記載の方法。
(19)
前記抗体がモノクローナル抗体である、12~18のいずれか1項に記載の方法。
(20)
前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、ヒト化抗体、組み換え抗体、ダイアボディ、キメラ化抗体またはキメラ抗体、脱免疫化ヒト抗体、完全ヒト抗体、単鎖抗体、Fvフラグメント、Fdフラグメント、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、およびF(ab’)2フラグメントからなる群より選択される、12~19のいずれか1項に記載の方法。
(21)
前記抗体がエクリズマブである、12または13に記載の方法。
(22)
前記抗体が、前記患者の血液中でC5分子1個ごとに少なくとも0.7個の抗C5抗体分子という濃度を維持するための量および頻度で該患者に投与される、12、13または21のいずれか1項に記載の方法。
(23)
前記抗体が、前記患者の血液1ミリリットルあたり少なくとも50μgという該抗体を維持するための量および頻度で該患者に投与される、12、13または21のいずれか1項に記載の方法。
(24)
前記抗体が、前記患者の血液1ミリリットルあたり少なくとも100μgという該抗体の濃度を維持するために有効な量および頻度で該患者に投与される、23に記載の方法。
(25)
前記患者の体重が40kg以上である、1~24のいずれか1項に記載の方法。
(26)
前記抗体が、以下:
少なくとも800mgの該抗体を、1週あたり1回で4週間連続;
少なくとも800mgの該抗体を、第5週の間に1回;および
少なくとも800mgの該抗体を、その後隔週に;
というスケジュールのもとで、少なくとも7週間、前記患者に投与される、12、13または21~25のいずれか1項に記載の方法。
(27)
前記抗体が、以下:
少なくとも900mgの該抗体を、1週あたり1回で4週間連続;
少なくとも1200mgの該抗体を、第5週の間に1回;および
少なくとも1200mgの該抗体を、その後隔週に;
というスケジュールのもとで、少なくとも7週間、前記患者に投与される、26に記載の方法。
(28)
前記患者の体重が40kg未満だが、30kg以上である、1~24のいずれか1項に記載の方法。
(29)
前記抗体が、以下:
少なくとも500mgの該抗体を、1週あたり1回で2週間連続;
少なくとも700mgの該抗体を、第3週の間に1回;および
少なくとも700mgの該抗体を、その後隔週に;
というスケジュールのもとで、少なくとも5週間、前記患者に長期に投与される、28に記載の方法。
(30)
前記抗体が、以下:
少なくとも600mgの該抗体を、1週あたり1回で2週間連続;
少なくとも900mgの該抗体を、第3週の間に1回;および
少なくとも900mgの該抗体を、その後隔週に;
というスケジュールのもとで、少なくとも5週間、前記患者に長期に投与される、29に記載の方法。
(31)
前記患者の体重が30kg未満だが、20kg以上である、1~24のいずれか1項に記載の方法。
(32)
前記抗体が、以下:
少なくとも500mgの該抗体を、1週あたり1回で2週間連続;
少なくとも500mgの該抗体を、第3週の間に1回;および
少なくとも500mgの該抗体を、その後隔週に;
というスケジュールのもとで、少なくとも5週間、前記患者に長期に投与される、31に記載の方法。
(33)
前記抗体が、以下:
少なくとも600mgの該抗体を、1週あたり1回で2週間連続;
少なくとも600mgの該抗体を、第3週の間に1回;および
少なくとも600mgの該抗体を、その後隔週に;
というスケジュールのもとで、少なくとも5週間、前記患者に長期に投与される、32に記載の方法。
(34)
前記患者の体重が20kg未満だが、10kg以上である、1~24のいずれか1項に記載の方法。
(35)
前記抗体が、以下:
少なくとも500mgの該抗体を、1週あたり1回で1週間;
少なくとも200mgの該抗体を、第2週の間に1回;および
少なくとも200mgの該抗体を、その後隔週に;
というスケジュールのもとで、少なくとも4週間、前記患者に長期に投与される、34に記載の方法。
(36)
前記抗体が、以下:
少なくとも600mgの該抗体を、1週あたり1回で1週間;
少なくとも300mgの該抗体を、第2週の間に1回;および
少なくとも300mgの該抗体を、その後隔週に;
というスケジュールのもとで、少なくとも4週間、前記患者に長期に投与される、36に記載の方法。
(37)
前記患者の体重が10kg未満だが、5kg以上である、1~24のいずれか1項に記載の方法。
(38)
前記抗体が、以下:
少なくとも200mgの該抗体を、1週あたり1回で1週間;
少なくとも200mgの該抗体を、第2週の間に1回;および
少なくとも200mgの該抗体を、その後3週間ごとに1回;
というスケジュールのもとで、少なくとも5週間、前記患者に長期に投与される、37に記載の方法。
(39)
前記抗体が、以下:
少なくとも300mgの該抗体を、1週あたり1回で1週間;
少なくとも300mgの該抗体を、第2週の間に1回;および
少なくとも300mgの該抗体を、その後3週間ごと;
というスケジュールのもとで、少なくとも5週間、前記患者に長期に投与される、38に記載の方法。
(40)
前記補体インヒビターが、前記移植の前24時間内に前記患者に投与される、2~24のいずれか1項に記載の方法。
(41)
前記補体インヒビターが、移植の前12時間内に前記患者に投与される、2~24または40のいずれか1項に記載の方法。
(42)
前記補体インヒビターが、前記器官または組織の前記移植後24時間内に前記患者に投与される、2~24、40または41のいずれか1項に記載の方法。
(43)
前記補体インヒビターが、前記器官または組織の前記移植後12時間内に前記患者に投与される、2~24、40、41または42のいずれか1項に記載の方法。
(44)
前記補体インヒビターが、補体成分C5に結合する全抗体であり、前記移植の前、該抗体の少なくとも900mgが前記患者に投与される、2~4、または40~43に記載の方法。
(45)
前記移植の前、前記抗体の少なくとも1,200mgが前記患者に投与される、44に記載の方法。
(46)
前記補体インヒビターが、補体成分C5に結合する全抗体であり、前記移植の後、該抗体の少なくとも800mgが前記患者に投与される、2~4、または40~45のいずれか1項に記載の方法。
(47)
前記移植の後、前記抗体の少なくとも900mgが前記患者に投与される、46に記載の方法。
(48)
前記移植の後、前記抗C5抗体が以下:
少なくとも800mgの該抗C5抗体を、前記器官または組織移植後24時間内;
少なくとも800mgの該抗C5抗体を、1週あたり1回で4週間;
少なくとも800mgの該抗C5抗体を、第5週の間に1回;および
少なくとも800mgの該抗C5抗体を、その後隔週に;
というスケジュールのもとで、少なくとも7週間、前記患者に投与される、46または47に記載の方法。
(49)
前記移植の後、前記抗C5抗体が以下:
少なくとも1200mgの該抗C5抗体を前記器官または組織移植後24時間内;
少なくとも900mgの該抗C5抗体を、1週あたり1回で4週間;
少なくとも1200mgの該抗C5抗体を、第5週の間に1回;および
少なくとも1200mgの該抗C5抗体を、その後隔週に;
というスケジュールのもとで、少なくとも7週間、前記患者に投与される、46、47または48のいずれか1項に記載の方法。
(50)
前記抗体が前記スケジュールのもとで少なくとも21週間前記患者に投与される、26、27、29、30、32、33、35、36、38、39、48、または49のいずれか1項に記載の方法。
(51)
前記抗体が、前記スケジュールのもとで少なくとも1年間前記患者に投与される、26、27、29、30、32、33、35、36、38、39、48、49、または50のいずれか1項に記載の方法。
(52)
前記インヒビターが、前記患者の余生の間、該患者に投与される、26、27、29、30、32、33、35、36、38、39、または48~51のいずれか1項に記載の方法。
(53)
前記インヒビターが、1週間あたり少なくとも1回、前記患者に長期に投与される、1~25、28、31、34、37、または40~47のいずれか1項に記載の方法。
(54)
前記インヒビターが、2週間ごとに少なくとも1回、前記患者に長期に投与される、1~25、28、31、34、37、または40~47のいずれか1項に記載の方法。
(55)
前記インヒビターが、前記患者の余生の間、該患者に長期に投与される、1~54のいずれか1項に記載の方法。
(56)
血栓性微小血管症(TMA)を有するか、TMAを有する疑いがあるか、またはTMAを発症するリスクがある患者においてTMAを処置するための方法であって、ヒト補体のインヒビターを、TMAの処置を必要とする患者に対して投与し、それによって該患者におけるTMAを処置する工程を包含する、方法。
(57)
血栓性微小血管症(TMA)を有するか、TMAを有する疑いがあるか、またはTMAを発症するリスクがある患者において、TMAの発症または重篤度を低減するための方法であって、ヒト補体のインヒビターを、TMAの発症または重篤度の低減を必要とする患者に対して投与し、それによって該患者における該TMAの発症または重篤度を低減する工程を包含する、方法。
(58)
前記患者が補体関連障害を有する、56または57に記載の方法。
(59)
前記インヒビターの投与が前記患者の脳において前記TMAの発症または重篤度を低減する、56~58のいずれか1項に記載の方法。
(60)
前記インヒビターの投与が、腎臓における前記TMAの発症または重篤度を低減する、56~59のいずれか1項に記載の方法。
(61)
前記患者への前記インヒビターの投与が、該患者における既存のTMAの解決を促進する、56~60のいずれか1項に記載の方法。
(62)
補体関連障害に関連する1つ以上の症状を緩和するための方法であって、該方法は補体関連障害に関連する1つ以上の症状を緩和するのに有効な量で、ヒト補体のインヒビターを、補体関連障害に関連する1つ以上の症状の緩和を必要とする患者に対して投与する工程を包含し、ここで該症状が該インヒビターの投与後14日内で緩和され、ただし該補体関連障害は、発作性夜間血色素尿症ではない、方法。
(63)
前記1つ以上の症状が、前記インヒビターの投与後10日内に緩和される、62に記載の方法。
(64)
前記1つ以上の症状が、前記インヒビターの投与後5日内に緩和される、62または63に記載の方法。
(65)
前記1つ以上の症状が、前記インヒビターの投与後2日内に緩和される、62~64のいずれか1項に記載の方法。
(66)
前記1つ以上の症状が、前記インヒビターの投与後1日内に緩和される、62~65のいずれか1項に記載の方法。
(67)
前記1つ以上の症状が、前記インヒビターの投与後12時間内に緩和される、62~66のいずれか1項に記載の方法。
(68)
前記1つ以上の症状が、タンパク質尿、LDHレベルの上昇、高血圧、血小板数減少、および尿排出量減少からなる群より選択される、62~67のいずれか1項に記載の方法。(69)
前記1つ以上の症状の少なくとも1つが正常の40%内まで緩和されている、62~68のいずれか1項に記載の方法。
(70)
前記1つ以上の症状の少なくとも1つが正常の20%内まで緩和されている、62~69のいずれか1項に記載の方法。
(71)
前記1つ以上の症状の少なくとも1つが、前記患者において完全に緩和される、62~70のいずれか1項に記載の方法。
(72)
補体関連障害を処置するための方法であって、補体関連障害に罹患している患者に対して、該補体関連障害を処置するのに有効な量でヒト補体のインヒビターを投与する工程を包含し、ここで該インヒビターは、該障害の1つ以上の症状が緩和された後でさえ該患者に投与され、ただし該補体関連障害は、発作性夜間血色素尿症ではない、方法。
(73)
前記インヒビターが、1つ以上の症状が完全寛解された後でさえ前記患者に投与される、72に記載の方法。
(74)
前記インヒビターが、前記患者が臨床寛解に入った後でさえ、該患者に投与される、72または73に記載の方法。
(75)
前記インヒビターが、前記障害の1つ以上の症状が緩和された後でさえ、少なくとも2カ月間、前記患者に投与される、62~74のいずれか1項に記載の方法。
(76)
前記インヒビターが、前記障害の1つ以上の症状が緩和された後、少なくとも6カ月間、前記患者に投与される、62~75のいずれか1項に記載の方法。
(77)
前記インヒビターが、前記障害の1つ以上の症状が緩和された後、少なくとも1年間、前記患者に投与される、62~76のいずれか1項に記載の方法。
(78)
前記インヒビターが、前記障害の1つ以上の症状が緩和された後、少なくとも2年間、前記患者に投与される、62~77のいずれか1項に記載の方法。
(79)
前記インヒビターが、前記患者に長期に投与される、62~78のいずれか1項に記載の方法。
(80)
前記補体関連障害が、膜性増殖性糸球体腎炎、非定型溶血性尿毒症症侯群、抗体媒介性拒絶、HELLP症候群、および劇症型抗リン脂質抗体症候群からなる群より選択される、1または4~79のいずれか1項に記載の方法。
(81)
aHUSを処置するための方法であって、補体成分C5aのインヒビターを、aHUSの処置を必要とする患者に対して、該患者のaHUSを処置するのに有効な量で投与する工程を包含する、方法。
(82)
前記インヒビターが:(i)C5aに結合する抗体;または(ii)該抗体の抗原結合フラグメントである、81に記載の方法。
(83)
前記抗体が、配列番号12に示されるアミノ酸配列を含むヒトC5aに結合する、81または82に記載の方法。
(84)
前記抗体がモノクローナル抗体である、81~83のいずれか1項に記載の方法。
(85)
前記抗体が単鎖抗体である、81または84のいずれか1項に記載の方法。
(86)
前記抗体がヒト化抗体である、81または85のいずれか1項に記載の方法。
(87)
前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、組み換え抗体、ダイアボディ、キメラ化抗体またはキメラ抗体、脱免疫化ヒト抗体、完全ヒト抗体、単鎖抗体、Fvフラグメント、Fdフラグメント、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、およびF(ab’)2フラグメントからなる群より選択される、81~86のいずれか1項に記載の方法。
(88)
前記インヒビターが、前記患者における高血圧および血管収縮の一方または両方を緩和する、81~87のいずれか1項に記載の方法。
(89)
前記高血圧が、前記インヒビターの投与後7日内に緩和される、88に記載の方法。
(90)
前記インヒビターが前記患者に長期に投与される、81~89のいずれか1項に記載の方法。
(91)
製品であって:
表示を備えた容器;と
ヒト補体成分C5のインヒビターを含む組成物とを備え、該表示は、補体関連障害を有するか、補体関連障害を有する疑いがあるか、または補体関連障害を発症するリスクがあるヒトに対して、該組成物が投与されることを示しており、ただし該補体関連障害が発作性夜間血色素尿症ではない、製品。
(92)
前記インヒビターが、ヒト補体成分C5タンパク質に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントである、91に記載の製品。
(93)
1つ以上の追加の活性剤をさらに含む、91または92に記載の製品。
【発明を実施するための形態】
【0096】
詳細な説明
本開示は、ヒト補体成分C5のインヒビター(例えば、ヒト補体成分C5タンパク質またはその生物学的に活性なフラグメント、例えば、C5aおよびC5bに結合する抗体)を含む組成物、およびこの組成物を用いてヒトにおける補体媒介性の障害を処置または予防するための方法を提供する。決して限定するものではないが、例示的な組成物(例えば、薬学的組成物および処方物)ならびにこの組成物を用いるための方法を下に詳述する。
【0097】
組成物
本明細書に記載される組成物は、ヒト補体のインヒビターを含む。任意のヒト補体成分に結合するか、そうでなければその生成および/または活性化をブロックする任意の化合物は、本開示に従って利用され得る。例えば、補体のインヒビターは、例えば、低分子でも、核酸でも、または核酸アナログ、ペプチド模倣物、または高分子であってもよく、これは核酸でもタンパク質でもない。これらの剤としては限定するものではないが、低分子有機分子、RNAアプタマー、L-RNAアプタマー、Spiegelmer類、アンチセンス化合物、二本鎖RNA、低分子干渉性RNA、ロック(locked)核酸インヒビター、およびペプチド核酸インヒビターが挙げられる。いくつかの実施形態では、補体インヒビターは、タンパク質であっても、またはタンパク質フラグメントであってもよい。
【0098】
いくつかの実施形態では、組成物は、ヒト補体成分に特異的な抗体を含む。いくつかの化合物は、補体成分C1、C2、C3、C4、C5(またはそのフラグメント;下を参照のこと)、C6、C7、C8、C9、D因子、B因子、P因子、MBL、MASP-1、およびMASP-2に対する抗体を含み、これによって、C5aに関連するアナフィラキシー毒性活性の発生を防ぐか、および/またはC5bに会合する膜攻撃複合体のアセンブリを防ぐ。
【0099】
この組成物はまた、天然に存在するかまたは可溶型の補体阻害性化合物、例えば、CR1、LEX-CR1、MCP、DAF、CD59、H因子、コブラ毒因子、FUT-175、コンプレスタチン、およびK76COOHを含んでもよい。任意のヒト補体成分に結合するか、そうでなければその生成および/または活性化をブロックするために利用され得る他の化合物としては限定するものではないが、タンパク質、タンパク質フラグメント、ペプチド、低分子、RNAアプタマー、例としては、ARC187(Archemix
Corporation、Cambridge,MAから市販されている)、L-RNAアプタマー、spiegelmer類、アンチセンス化合物、セリンプロテアーゼインヒビター、RNA干渉(RNAi)に利用され得る分子、例えば、二本鎖RNA、例としては、低分子干渉性RNA(siRNA)、ロック(locked)核酸(LNA)インヒビター、ペプチド核酸(PNA)インヒビターなどが挙げられる。
【0100】
いくつかの実施形態では、補体インヒビターは、補体の活性化を阻害する。例えば、補体インヒビターは、C1(例えば、C1q、C1r、またはC1s)に結合しかつその補体活性化活性を阻害し得、または補体インヒビターは、C2、C3、またはC4に結合しかつ阻害(例えば、その切断を阻害)し得る。いくつかの実施形態では、このインヒビターは、補体の別の経路および/または古典的な経路のC3コンバターゼおよび/またはC5コンバターゼの形成またはアセンブリを阻害する。いくつかの実施形態では、補体インヒビターは、末端補体の形成、例えば、C5b-9膜攻撃複合体の形成を阻害する。例えば、抗体補体インヒビターは、抗C5抗体を包含し得る。このような抗C5抗体は、C5および/またはC5bと直接相互作用して、C5bの形成および/または生理学的な機能を阻害し得る。
【0101】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、ヒト補体成分C5のインヒビター(例えば、ヒト補体成分C5タンパク質、またはその生物学的に活性なフラグメント、例えば、C5aまたはC5bに結合する、抗体、またはその抗原結合フラグメント)を含んでもよい。本明細書で使用する場合、「補体成分C5のインヒビター」とは、以下を阻害する任意の剤である:(i)補体成分C5タンパク質の細胞による発現、または適切な細胞内輸送もしくは分泌;(ii)C5切断フラグメントC5aまたはC5bの活性(例えば、同族の細胞レセプターに対するC5aの結合、またはC6および/もしくは末端補体複合体の他の成分に対するC5bの結合;上記を参照のこと);(iii)C5aおよびC5bを形成するためのヒトC5タンパク質の切断;あるいは(iv)補体成分C5タンパク質の適切な細胞内輸送、または細胞による分泌。補体成分C5タンパク質発現の阻害としては以下が挙げられる:ヒトC5タンパク質をコードする遺伝子の転写の阻害;ヒトC5タンパク質をコードするmRNAの分解の増大;ヒトC5タンパク質をコードするmRNAの翻訳の阻害;ヒトC5タンパク質の分解の増大;プレ-プロヒトC5タンパク質の適切な処理の阻害;またはヒトC5タンパク質の細胞による適切な輸送もしくは分泌の阻害。候補剤が、ヒト補体成分C5のインヒビターであるか否かを決定する方法は、当該分野で公知であり、本明細書に記載される。
【0102】
ヒト補体成分C5タンパク質のインヒビターは、例えば、低分子、ポリペプチド、ポリペプチドアナログ、核酸、または核酸アナログであってもよい。
【0103】
「低分子」とは本明細書で使用する場合、約6kDa未満、最も好ましくは約2.5kDa未満という分子量を有する剤を指すことを意味する。多くの製薬会社は、本出願の任意のアッセイでスクリーニングされ得る、低分子、しばしば、真菌、細菌、または藻類の抽出物のアレイを含む化学的および/または生物学的混合物の広範なライブラリーを有する。本出願は、とりわけ、低分子化合物ライブラリー、ペプチドライブラリー、または天然の産物のコレクションの使用を意図する。Tanらは、小型化された細胞ベースのアッセイと適合する二百万を超える合成化合物を有するライブラリーを記載している(J.Am.Chem.Soc.(1998)120:8565~8566)。このようなライブラリーがヒト補体成分C5のインヒビターについてスクリーニングするために用いられ得るということは本出願の範囲内である。多数の市販の化合物のライブラリー、例えば、Chembridge DIVERSetがある。ライブラリーはまた、NCI開発治療プログラム由来の多様性(Diversity)セットなどの学問的な研究者からも入手可能である。合理的な薬物設計も使用され得る。例えば、合理的な薬物設計は、ヒト補体成分C5タンパク質に対する結晶のまたは溶液の構造の情報を利用し得る。例えば、Hagemannら、(2008)J Biol Chem 283(12):7763~75およびZuiderwegら、(1989)Biochemistry 28(1):172~85に記載の構造を参照のこと。合理的な薬物設計はまた、公知の化合物、例えば、C5の公知のインヒビター(例えば、ヒト補体成分C5タンパク質に結合する、抗体、またはその抗原結合フラグメント)に基づいて達成され得る。
【0104】
ペプチド模倣物とは、本発明のポリペプチドの少なくとも一部が修飾されており、このペプチド模倣物の三次元構造がその本発明のポリペプチドのものと実質的に同じままである化合物であり得る。ペプチド模倣物は、本開示の本発明のポリペプチドのアナログであってもよく、これはそれ自体が、この本発明のポリペプチド配列内に1つ以上の置換または他の修飾を含むポリペプチドである。あるいは、本発明のポリペプチド配列の少なくとも一部は、非ペプチド構造で置き換えられてもよく、その結果この本発明のポリペプチドの三次元構造は実質的に保持される。換言すれば、本発明のポリペプチド配列内の1、2または3つのアミノ酸残基は、非ペプチド構造で置き換えられてもよい。さらに、本発明のポリペプチドの他のペプチド部分は、必然ではないが、非ペプチド構造で置き換えられてもよい。ペプチド模倣物(ペプチドおよび非ペプチジルアナログの両方)は、改善された特性(例えば、タンパク質分解の減少、保持の増大、またはバイオアベイラビリティの増大)を有し得る。ペプチド模倣物は一般に、改善された経口アベイラビリティを有し、これによってヒトまたは動物における障害の処置に特に適することになる。ペプチド模倣物は、類似の2次元の化学構造を有してもよいし、有さなくてもよいが、共通の三次元構造特徴および幾何形状を共有することに注意すべきである。各々のペプチド模倣物はさらに、1つ以上の固有の追加の結合構成要素を有してもよい。
【0105】
核酸インヒビターを用いて、ヒト補体成分C5をコードする内因性遺伝子の発現を減少してもよい。核酸アンタゴニストとは、例えば、siRNA、dsRNA、リボザイム、三重らせん形成体、アプタマー、またはアンチセンス核酸であってもよい。siRNAは、必要に応じてオーバーハングを含む低分子二本鎖RNA(double stranded RNA)(dsRNA)である。例えば、siRNAの二本鎖領域は約18~25ヌクレオチド長、例えば、約19、20、21、22、23、または24ヌクレオチド長である。siRNA配列は、いくつかの実施形態では、標的mRNAに対して正確に相補性であり得る。dsRNAおよびsiRNAは詳細には、哺乳動物細胞(例えば、ヒト細胞)中での遺伝子発現をサイレンシングするために用いられ得る。例えば、Clemensら、(2000)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:6499~6503;Billyら、(2001)Proc.Natl.Acad.Sci.USA
98:14428~14433;Elbashirら、(2001)Nature 411:494~8;Yangら、(2002)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99:9942~9947、および米国特許出願公開第20030166282号、同第20030143204号、同第20040038278号、および同第20030224432号を参照のこと。アンチセンス剤は、例えば、約8~約80核酸塩基(すなわち、約8~約80ヌクレオチド)、例えば、約8~約50核酸塩基、または約12~約30核酸塩基を含み得る。アンチセンス化合物としては、リボザイム、外部ガイド配列(external guide sequence)(EGS)オリゴヌクレオチド(オリゴザイム)、および他の短い触媒性RNAまたは触媒性オリゴヌクレオチド(標的核酸にハイブリダイズしてその発現を調節する)が挙げられる。アンチセンス化合物としては、標的遺伝子における配列に相補的である少なくとも8連続の核酸塩基のストレッチを含んでもよい。オリゴヌクレオチドは、特異的にハイブリダイズ可能であるように、その標的核酸配列に対してかならずしも100%相補性である必要はない。オリゴヌクレオチドは、標的に対するそのオリゴヌクレオチドの結合が標的分子の正常な機能を妨害して有用性を損ない、また特異的な結合が所望される条件下で、すなわち、インビボのアッセイもしくは治療処置の場合には生理学的条件下で、またはインビトロのアッセイの場合には、そのアッセイが行われる条件下で、非標的配列に対してそのオリゴヌクレオチドの非特異的な結合を回避するのに十分な程度の相補性がある場合に、特異的にハイブリダイズ可能である。mRNA(例えば、ヒトC5タンパク質をコードするmRNA)とのアンチセンスオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションは、mRNAの正常な機能のうち1つ以上を妨害し得る。妨害されるmRNAの機能としては、全ての重要な機能、例えば、タンパク質翻訳の部位へのRNAの転位、RNAからのタンパク質の翻訳、1つ以上のmRNA種を生じるRNAのスプライシング、およびRNAが従事し得る触媒性活性が挙げられる。RNAに対する特異的なタンパク質(単数または複数)の結合はまた、RNAに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションによって妨害され得る。例示的なアンチセンス化合物としては、標的核酸、例えば、ヒト補体成分C5タンパク質をコードするmRNAに特異的にハイブリダイズするDNA配列またはRNA配列が挙げられる。相補性領域は、約8~約80核酸塩基にわたって伸長し得る。化合物は、1つ以上の修飾された核酸塩基を含んでもよい。
【0106】
修飾された核酸塩基としては、例えば、5置換のピリミジン類、例えば、5-ヨードウラシル、5-ヨードシトシン、およびC-プロピニルピリミジン、例えば、C-プロピニルシトシンおよびC-プロピニルウラシルを挙げることができる。他の適切な修飾された核酸塩基としては、例えば、7置換-8-アザ-7-デアザプリン類および7置換-7-デアザプリン類、例えば、7-ヨード-7-デアザプリン類、7-シアノ-7-デアザプリン類、7-アミノカルボニル-7-デアザプリン類などが挙げられる。これらの例としては、6-アミノ-7-ヨード-7-デアザプリン類、6-アミノ-7-シアノ-7-デアザプリン類、6-アミノ-7-アミノカルボニル-7-デアザプリン類、2-アミノ-6-ヒドロキシ-7-ヨード-7-デアザプリン類、2-アミノ-6-ヒドロキシ-7-シアノ-7-デアザプリン類、および2-アミノ-6-ヒドロキシ-7-アミノカルボニル-7-デアザプリン類が挙げられる。例えば、米国特許第4,987,071号;同第5,116,742号;および同第5,093,246号;「Antisense
RNA and DNA」D.A.Melton,編集,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.(1988);Haselhoff and Gerlach(1988)Nature
334:585~59;Helene, C.(1991)Anticancer Drug D 6:569~84;Helene(1992)Ann.NY.Acad.Sci.660:27~36;ならびにMaher(1992)Bioassays 14:807~15を参照のこと。
【0107】
アプタマーとは、細胞表面タンパク質を含む、ほとんどの任意の分子を認識し、かつ特異的に結合するために用いられ得る短いオリゴヌクレオチド配列である。指数関数的富化(SELEX)プロセスによるリガンドの系統的進化は強力であって、かつこのようなアプタマーを容易に特定するために用いられ得る。アプタマーは、増殖因子および細胞表面抗原のような治療および診断のための広範なタンパク質の重要性について作製され得る。これらのオリゴヌクレオチドは、それらの標的に対して、類似の親和性および特異性で、抗体が結合するのと同じように結合する(例えば、Ulrich(2006)Handb
Exp Pharmacol.173:305~326を参照のこと)。
【0108】
いくつかの実施形態では、ヒトC5のインヒビターは、ヒト補体成分C5タンパク質に結合する、抗体、またはその抗原結合フラグメントである。(本明細書において以降では、この抗体は、時に「抗C5抗体」と呼ばれ得る)。
【0109】
いくつかの実施形態では、この抗C5抗体は、ヒトのプロ-C5前駆体タンパク質におけるエピトープに結合する。例えば、この抗C5抗体は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるヒト補体成分C5タンパク質中のエピトープに結合し得る(NCBIアクセッション番号.AAA51925およびHavilandら、(上記))。
【0110】
「エピトープ」とは、抗体に結合されるタンパク質(例えば、ヒト補体成分C5タンパク質)の部位をいう。「重複するエピトープ」には、少なくとも1つ(例えば、2、3、4、5、または6個)の共通のアミノ酸残基(単数または複数)を含む。
【0111】
いくつかの実施形態では、この抗C5抗体は、リーダー配列を欠く、ヒトプロ-C5前駆体タンパク質中のエピトープに結合する。例えば、この抗C5抗体は、アミノ末端リーダー配列を欠いているヒトC5タンパク質である、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むか、またはそのアミノ酸配列からなるヒト補体成分C5タンパク質中のエピトープに結合し得る。
【0112】
いくつかの実施形態では、この抗C5抗体は、ヒト補体成分C5タンパク質のα鎖におけるエピトープに結合し得る。例えば、この抗C5抗体は、ヒト補体成分C5α鎖タンパク質である、配列番号3に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質内のエピトープまたはそれと重複するエピトープに結合し得る。C5のα鎖に結合する抗体は、例えば、Amesら、(1994)J Immunol 152:4572~4581に記載される。
【0113】
いくつかの実施形態では、この抗C5抗体は、ヒト補体成分C5タンパク質のβ鎖におけるエピトープに結合し得る。例えば、この抗C5抗体は、ヒト補体成分C5β鎖タンパク質である、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質内のエピトープまたはそれと重複するエピトープに結合し得る。C5のβ鎖に結合する抗体は、例えば、Moongkarndiら、(1982)Immunobiol.162:397;Moongkarndiら、(1983)Immunobiol.165:323;およびMollnesら、(1988)Scand.J.Immunol.28:307~312に記載される。
【0114】
いくつかの実施形態では、この抗C5抗体は、ヒト補体成分C5タンパク質の抗原性ペプチドフラグメント内のエピトープまたはそれと重複するエピトープに結合し得る。例えば、この抗C5抗体は、ヒト補体成分C5タンパク質の抗原性ペプチドフラグメント内のエピトープまたはそれと重複するエピトープに結合し得、このフラグメントは、以下のアミノ酸配列を含むか、または以下のアミノ酸配列からなる:
【0115】
【化1】
いくつかの実施形態では、この抗C5抗体は、ヒト補体成分C5タンパク質のフラグメント内のエピトープまたはそれと重複するエピトープに結合し得、このフラグメントは、以下のアミノ酸配列のうち任意の1つ(これは配列番号1の例示的な抗原性フラグメントである)を含むか、または以下のアミノ酸配列のうち任意の1つからなる:
【0116】
【化2】


ヒト補体成分C5の追加の例示的な抗原性フラグメントは、その開示が参照によって本明細書に援用される、例えば、米国特許第6,355,245号に開示される。
【0117】
いくつかの実施形態では、この抗C5抗体は、ヒト補体成分C5タンパク質(例えば、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するヒトC5タンパク質)に特異的に結合する。「特異的な結合」または「特異的に結合する」という用語は、2つの分子が生理学的な条件下で相対的に安定である複合体(例えば、抗体と補体成分C5タンパク質との間の複合体)を形成することを指す。代表的には、結合は、会合定数(K)が10-1より高い場合に特異的とみなされる。したがって、抗体は、C5タンパク質に対して、少なくとも10(例えば、少なくとも10、10、10、1010、1011、1012、1013、1014または1015以上、またはそれより大きい)M-1(またはそれより大きい)というKで特異的に結合し得る。ヒト補体成分C5タンパク質に特異的に結合する抗体の例は、例えば、米国特許第6,355,245号(その開示が全体として参照によって本明細書に援用される)に記載される。
【0118】
抗体が、タンパク質抗原に結合するか否か、および/またはタンパク質抗原に対する抗体の親和性を決定する方法は当該分野で公知である。例えば、タンパク質抗原に対する抗体の結合は、限定するものではないが、ウエスタンブロット、ドットブロット、プラズモン表面共鳴法(例えば、BIAcoreシステム;Pharmacia Biosensor AB,Uppsala,Sweden and Piscataway,N.J.)、または酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)などの種々の技術を用いて検出および/または定量され得る。例えば、Harlow and Lane(1988)「Antibodies:A Laboratory Manual」Cold Spring
Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.;Benny K.C.Lo(2004)「Antibody Engineering:Methods and Protocols,」Humana Press(ISBN:1588290921);Borrebaek(1992)「Antibody Engineering,A Practical Guide,」W.H.Freeman and Co.,NY;Borrebaek(1995)「Antibody Engineering,」第2版,Oxford University
Press,NY,Oxford;Johneら、(1993)J.Immunol.Meth.160:191~198;Jonssonら、(1993)Ann.Biol.Clin.51:19~26;およびJonssonら、(1991)Biotechniques 11:620~627を参照のこと。米国特許第6,355,245号も参照のこと。
【0119】
いくつかの実施形態では、この抗C5抗体は、ヒト補体成分C5タンパク質内のエピトープまたはそれと重複するエピトープに結合する別の抗体の結合を交差ブロックし得る。いくつかの実施形態では、この抗C5抗体は、ヒト補体成分C5タンパク質のペプチドフラグメント内のエピトープ、またはそれと重複するエピトープに結合する抗体の結合を交差ブロックし得る。このペプチドフラグメントは、配列番号:1~11のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有するヒト補体成分C5タンパク質のフラグメントであってもよい。例えば、ペプチドフラグメントは、以下のアミノ酸配列を含んでも、またはそれからなってもよい:
【0120】
【化3】


本明細書で使用する場合、「交差ブロックする抗体」という用語は、その抗体の非存在下におけるエピトープに対する抗C5抗体の結合の量に対して、補体成分C5タンパク質上のエピトープに対する抗C5抗体の結合の量を少なくする抗体をいう。第一の抗体がエピトープに対する第二の抗体の結合を交差ブロックするか否かを決定するために適切な方法は、当該分野で公知である。例えば、交差ブロックする抗体は、試験抗体の有無において、5G1.1抗C5モノクローナル抗体(ハイブリドーマ細胞株ATCCの記号HB-11625によって産生される;米国特許第6,355,245号を参照のこと)の結合を比較することによって特定され得る。試験抗体の非存在下における5G1.1抗体の結合に比較した試験抗体の存在下における5G1.1抗体の結合の減少によって、この試験抗体が交差ブロックする抗体であることが示される。
【0121】
特定の抗体(例えば、抗C5抗体)が結合するエピトープを特定する方法も、当該分野で公知である。例えば、抗C5抗体の結合エピトープは、補体成分C5タンパク質のいくつか(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、または30以上)重複するペプチドフラグメント(例えば、配列番号1~11のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有するタンパク質のいくつか重複するフラグメント)に対する抗体の結合を測定することによって特定され得る。次いで、各々の異なる重複するペプチドを、固体支持体上の固有のアドレス、例えば、マルチ-ウェルのアッセイプレートの別々のウェルに結合する。次に、抗C5抗体を、その抗体がそのエピトープに結合することを可能にする時間および条件下でアッセイプレート中で各々のペプチドに対して接触させることによって取り調べる。未結合の抗C5抗体を、各々のウェルを洗浄することによって除去する。次に、もしプレートのウェルに存在するのであれば、抗C5抗体に結合する検出可能に標識された二次抗体をお互いのウェルと接触させ、未結合の二次抗体を洗浄工程によって除去する。ウェル中で検出可能に標識された二次抗体によって産生される検出可能シグナルの存在または量は、この抗C5抗体が、ウェルに会合した特定のペプチドフラグメントに結合していることの指標である。例えば、HarlowおよびLane(上記),Benny K.C.Lo(上記),ならびに米国特許出願公開第20060153836号(その開示は全体が参照によって援用される)を参照のこと。抗体が結合する特定のエピトープはまた、BIAcoreクロマトグラフィー技術(例えば、Pharmacia BIAtechnology Handbook,「Epitope Mapping,」Section 6.3.2、(May 1994);およびJohneら、(1993)J.Immunol.Methods 160:20191~8を参照のこと)を用いて特定され得る。
【0122】
本明細書に記載される抗C5抗体は、補体成分C5タンパク質(例えば、ヒトC5タンパク質)のC5aおよび/またはC5bの活性なフラグメントの生成または活性をブロックするのにおいて活性を有し得る。このブロッキング効果を通じて、抗C5抗体は、例えば、C5aの炎症促進効果およびC5b-9膜攻撃複合体(MAC)の生成を、細胞の表面で阻害する。C5aの生成をブロックする能力を有する抗C5抗体は、例えば、Moongkarndiら、(1982)Immunobiol.162:397およびMoongkarndiら、(1983)Immunobiol.165:323に記載される。
【0123】
いくつかの実施形態では、抗C5抗体、またはその抗原結合フラグメントは、C5タンパク質がヒト補体成分C3b(例えば、APまたはCP C5コンバターゼ複合体に存在するC3b)に結合する能力を、50%を超える(例えば、55、60、65、70、75、80、85、90、または95%以上)まで低下し得る。いくつかの実施形態では、C5タンパク質に対する結合の際、抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントは、C5タンパク質が補体成分C4b(例えば、CP C5コンバターゼに存在するC4b)に結合する能力を50%を超える(例えば、55、60、65、70、75、80、85、90、または95%以上)まで低下し得る。抗体が、補体成分C5タンパク質のC5aおよび/またはC5bの活性なフラグメントの生成または活性を、あるいは補体成分C4bまたはC3bに対する結合をブロックし得るか否かを決定する方法は、当該分野で公知であって、例えば、米国特許第6,355,245号およびWurznerら、(1991)Complement Inflamm 8:328~340.(以下も参照のこと)に記載されている。
【0124】
いくつかの実施形態では、抗C5抗体は、補体成分C5タンパク質のα鎖のアミノ末端領域に結合するが、遊離のC5aには結合しない。α鎖のアミノ末端領域内の抗C5抗体のエピトープとしては、例えば、ヒト配列内のエピトープ
【0125】
【化4】


が挙げられる。
【0126】
いくつかの実施形態では、組成物が、エクリズマブ(Soliris(登録商標);Alexion Pharmaceuticals,Inc.,Cheshire,CT)を含むか、および/または抗体がエクリズマブである。(例えば、Kaplan(2002)Curr Opin Investig Drugs 3(7):1017~23;Hill(2005)Clin Adv Hematol Oncol 3(11):849~50;およびRotherら、(2007)Nature Biotechnology 25(11):1256~1488を参照のこと)。
【0127】
いくつかの実施形態では、この組成物は、パキセリズマブ(Alexion Pharmaceuticals,Inc.,Cheshire,CT)を含むか、および/または抗体がパキセリズマブである。(例えば、Whiss(2002)Curr Opin
Investig Drugs 3(6):870~7;Patelら、(2005)Drugs Today(Barc)41(3):165~70;およびThomasら、(1996)Mol Immunol.33(17~18):1389-401を参照のこと)。
【0128】
いくつかの実施形態では、C5インヒビターは、C5a(本明細書では「抗C5a抗体」と呼ばれるときがある)に結合する抗体である。いくつかの実施形態では、この抗体は、C5aには結合するが、全長C5には結合しない。上記のとおり、C5のプロ型である1676アミノ酸残基の前駆体タンパク質は、一連のタンパク質分解性切断事象によって処理される。最初の18ペプチド(番号付け-18~-1)は、前駆体タンパク質から切断されるシグナルペプチドを構成する。残りの1658アミノ酸タンパク質は、2つの場所で切断されてα鎖およびβ鎖が形成される。最初の切断事象は、アミノ酸残基655~656の間で生じる。第二の切断はアミノ酸残基659と660との間で生じる。この2つの切断事象が、3つの別個のポリペプチドフラグメントの形成を生じる:(i)β鎖と呼ばれるアミノ酸1~655を含むフラグメント;(ii)α鎖と呼ばれるアミノ酸660~1658を含むフラグメント;および(iii)アミノ酸656~659からなるテトラペプチドフラグメント。α鎖およびβ鎖ポリペプチドフラグメントは、ジスルフィド結合を介してお互いと接続されて、成熟C5タンパク質を構成する。CPまたはAP C5コンバターゼは、残基733と734との間でα鎖を切断することによって成熟C5を活性化し、これがC5aフラグメントの遊離を生じる(アミノ酸660~733)。成熟C5の残りの部分は、フラグメントC5bであって、これは、β鎖に結合したα鎖ジスルフィドの残基734~1658を含む。
【0129】
インビボでは、C5aは、血清酵素、カルボキシペプチダーゼBによって、カルボキシ末端アルギニン残基を失っている「C5a des-Arg」と名付けられた73アミノ酸型へ急速に代謝される。したがって、いくつかの実施形態では、C5aに結合する抗体はまた、デサージネート(desarginated)C5aに結合する。いくつかの実施形態では、C5aに結合する抗体は、デサージネート(desarginated)C5aには結合しない。
【0130】
いくつかの実施形態では、C5インヒビターは、C5aに存在するネオエピトープ(すなわち、成熟C5のα鎖フラグメントからのC5aの遊離の際に露出されるエピトープ)に結合する抗体である。C5aに結合する抗体(例えば、C5aに存在するネオ-エピトープ)は、当該分野では、公知であり、このような抗体を産生するための方法も公知である。例えば、C5aに結合する抗体は、例えば、PCT公開番号WO 01/15731;Amesら、(1994)J Immunol 152(9):4572~4581;Inoue(1989)Complement Inflamm 6(3):219~222;および米国特許第6,866,845号のうちのいずれか1つに記載のC5aネオエピトープ特異的抗体の結合特異性を有し得る。別の例では、C5aに結合する抗体は、限定するものではないが、sc-52633(Santa Cruz Biotechnology,Inc.,Santa Cruz,California)、I52-1486(BD Pharmingen/BD Biosciences)、ab11877(Abcam,Cambridge,Massachusetts)、およびHM2079(クローン2952;HyCult Biotechnology,the Netherlands)などの市販のC5aネオエピトープ特異的抗体の結合特異性を有し得る。いくつかの実施形態では、C5aに結合する抗体は、上述の任意のC5aネオエピトープ特異的抗体の結合を交差ブロックし得る。
【0131】
いくつかの実施形態では、C5インヒビターは、哺乳動物(例えば、ヒト)C5aタンパク質に結合する抗体であってもよい。例えば、この抗体は、以下のアミノ酸配列を有するヒトC5aタンパク質に結合し得る:
【0132】
【化5】


この抗体は、以下のアミノ酸内のエピトープまたはそれと重複するエピトープでヒトC5aに結合し得る:
【0133】
【化6】


いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号12~25のいずれか1つに示される、少なくとも4(例えば、少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、または17以上)連続のアミノ酸を含むか、またはそれからなるアミノ酸配列を含む、ヒトC5aタンパク質またはそのフラグメントに結合し得る。本明細書に記載される抗体が結合し得るさらなるC5aタンパク質フラグメント、ならびに適切なC5a特異的な抗原組み合わせ部位を生成するための方法は、例えば、その開示が全体として本明細書に参照によって援用される、米国特許第4,686,100号に示される。
【0134】
いくつかの実施形態では、C5aに対する抗体の結合は、C5aの生物学的活性を阻害し得る。C5a活性を測定するための方法としては例えば、走化性アッセイ、RIA、またはELISAが挙げられる(例えば、Ward and Zvaifler(1971)J Clin Invest 50(3):606~16およびWurznerら、(1991)Complement Inflamm 8:328~340を参照のこと)。いくつかの実施形態では、C5aに対する抗体の結合は、C5aとC5aR1との間の相互作用を阻害し得る。C5aとC5aR1との間の相互作用を決定および/または測定するために適切な方法(抗体の有無における)は、当該分野で公知であり、例えば、MaryおよびBoulay(1993)Eur J Haematol 51(5):282~287;Kanekoら、(1995)Immunology 86(1):149~154;Gianniniら、(1995)J Biol Chem 270(32):19166~19172;ならびに米国特許出願公開第20060160726号に記載されている。例えば、C5aR1発現末梢血単核球に対する検出可能に標識された(例えば放射性活性で標識された)C5aの結合は、抗体の有無で評価され得る。抗体の非存在下での結合の量に比較して、抗体の存在下でC5aR1に結合する検出可能に標識されたC5aの量の減少は、この抗体がC5aとC5aR1との間の相互作用を阻害することの指標である。いくつかの実施形態では、C5aに対する抗体の結合は、C5aとC5L2との間の相互作用を阻害し得る(下を参照のこと)。C5aとC5L2との間の相互作用を検出および/または測定するための方法は、当該分野で公知であり、例えば、Ward(2009)J Mol Med 87(4):375~378およびChenら、(2007)Nature 446(7132):203~207に記載されている(下を参照のこと)。
【0135】
いくつかの実施形態では、C5インヒビターとは、C5bに結合する抗体(本明細書において、時に「抗C5b抗体」とも呼ばれる)である。いくつかの実施形態では、この抗体は、C5bに結合するが、全長C5には結合しない。C5bの構造は、上記されており、例えば、Mueller-Eberhard(1985)Biochem Soc Symp 50:235~246;Yamamoto and Gewurz(1978)J Immunol 120(6):2008~2015;およびHavilandら、(1991)(上記)にも詳細である。上記のとおり、C5bは、C6、C7、およびC8と組み合わさって、標的細胞の表面でC5b-8複合体を形成する。組み合わせの連続の間に形成されるタンパク質複合体中間体としては、C5b-6(C5bおよびC6を含む)、C5b-7(C5b,C6、およびC7を含む)、およびC5b-8(C5b、C6、C7、およびC8を含む)が挙げられる。いくつかのC9分子の結合の際、膜攻撃複合体(MAC、C5b-9末端補体複合体(TCC))が形成される。十分な数のMACが標的細胞膜に入る場合、それらが作製する開口部(MAC細孔)は、標的細胞の急速な浸透圧溶解を媒介する。
【0136】
いくつかの実施形態では、C5bに対する抗体の結合は、C5bとC6との間の相互作用を阻害し得る。いくつかの実施形態では、C5bに対する抗体の結合は、C5b-9 MAC-TCCのアセンブリまたは活性を阻害し得る。いくつかの実施形態では、C5bに対する抗体の結合は、補体依存性の細胞溶解を阻害し得る(例えば、インビトロおよび/またはインビボで)。抗体が補体依存性溶解を阻害するか否かを評価するために適切な方法としては、例えば、溶血アッセイまたは溶解性C5b-9の活性を検出するための他の機能的なアッセイが挙げられる。例えば、抗体の存在下における補体の細胞溶解能力の低下は、KabatおよびMayer(編集)「Experimental Immunochemistry,第2版,」135~240、Springfield,IL,CC Thomas(1961),135~139頁、または、例えば、Hillmenら、(2004)N Engl J Med 350(6):552に記載されるようなニワトリ赤血球溶血方法などのアッセイの従来のバリエーションによって記載される溶血アッセイによって測定され得る。
【0137】
C5bに結合する抗体、およびこのような抗体を作製するための方法は、当該分野で公知である。例えば、米国特許第6,355,245号を参照のこと。市販の抗C5b抗体は、例えば、Hycult Biotechnology(カタログ番号:HM2080;クローン568)およびAbcam(商標)(ab46151またはab46168)を含む多数のベンダーから入手可能である。
【0138】
いくつかの実施形態では、C5インヒビターは、C5bの哺乳動物(例えば、ヒト)型に結合する抗体である。例えば、この抗体は、以下のアミノ酸配列を有するヒトC5bタンパク質の一部に結合し得る:
【0139】
【化7】


いくつかの実施形態では、この抗体は、以下のアミノ酸配列を有するヒトC5bタンパク質の一部に結合し得る:
【0140】
【化8】


いくつかの実施形態では、この抗体は、配列番号4または配列番号26に示される少なくとも4(例えば、少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20以上)連続のアミノ酸を含むか、またはそれからなるアミノ酸配列を含むヒトC5bタンパク質またはそのフラグメントに結合し得る。
【0141】
C5インヒビター抗体が結合し得るヒトC5bまたはC5aのさらなる例示的なサブフラグメントは、その開示が参照によって本明細書に援用される、例えば、米国特許第6,355,245号に開示されている。
【0142】
いくつかの実施形態では、このインヒビターは、C5aポリペプチド(例えば、配列番号12に示されるアミノ酸配列を有するヒトC5aポリペプチド)に特異的に結合する抗体である。いくつかの実施形態では、このインヒビターは、C5bポリペプチドに特異的に結合する抗体である。
【0143】
ある特定の因子が、ヒト補体成分C5のインヒビターであるか否かを決定するための方法は、本明細書に記載されており、当該分野で公知である。例えば、体液中のC5aおよびC5bの濃度および/または生理学的活性は、当該分野で周知の方法によって測定され得る。C5a濃度または活性を測定するための方法としては、例えば、走化性アッセイ、RIA、またはELISAが挙げられる(例えば、WardおよびZvaifler(1971)J Clin Invest.50(3):606~16、ならびにWurznerら、(1991)Complement Inflamm.8:328~340を参照のこと)。C5bについては、本明細書に考察されるような溶血性アッセイまたは可溶性のC5b-9についてのアッセイを用いてもよい。当該分野で公知の他のアッセイも用いてもよい。これらおよび他の適切なタイプのアッセイを用いて、抗C5抗体のようなヒト補体成分C5を阻害し得る候補因子をスクリーニングして、例えば、本明細書に記載の方法で有用な化合物を特定し、かつこのような化合物の適切な投与レベルを決定してもよい。
【0144】
mRNAまたはタンパク質の発現の阻害(例えば、ヒトC5タンパク質発現、またはヒトC5タンパク質をコードするmRNAの発現の阻害)を検出するための方法は、分子生物学の当該分野で周知であり、これには、例えば、mRNAについておよびタンパク質検出についてのノーザンブロットおよびRT-PCR(または定量的RT-PCR)技術、ウエスタンブロット、ドットブロットまたはELISA技術(例えば、Sambrookら、(1989)「Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版」Cold Spring Harbor Laboratory
Press,Cold Spring Harbor,N.Y.を参照のこと)が挙げられる。
【0145】
候補化合物がヒトC5のC5aおよびC5b型への切断を阻害するか否かを決定するための方法は、当該分野で公知であり、例えば、Moongkarndiら、(1982)Immunobiol.162:397;Moongkarndiら、(1983)Immunobiol.165:323;Isenmanら、(1980)J Immunol.124(1):326~31;Thomasら、(1996)Mol.Immunol.33(17~18):1389~401;およびEvansら、(1995)Mol.Immunol.32(16):1183~95に記載されている。
【0146】
ヒト補体成分C5の阻害はまた、被験体の体液における補体の細胞溶解能力を減少し得る。存在する補体の細胞溶解能力のこのような減少は、例えば、KabatおよびMayer(編集),「Experimental Immunochemistry,第2版」135~240、Springfield,IL,CC Thomas(1961),第135~139頁に記載の溶血アッセイなどの従来の溶血性アッセイ、または例えば、Hillmenら、(2004)N Engl J Med 350(6):552に記載のようなニワトリ赤血球溶血法などのそのアッセイの従来のバリエーションなどの当該分野で周知の方法によって測定され得る。
【0147】
薬学的組成物および処方物。補体インヒビター(例えば、ヒト補体成分C5のインヒビター、例えば、抗C5抗体またはその抗原結合フラグメント)を含む組成物は、例えば、aHUS、CAPS、ドゴー病またはTMAを処置するための被験体への投与のための薬学的組成物として、処方され得る。この薬学的組成物は一般には、薬学的に許容され得るキャリアを含む。本明細書で使用する場合、「薬学的に許容され得るキャリア」とは、薬学的に適合性である、任意のおよび全ての溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを指し、これらを包含する。組成物は、薬学的に許容され得る塩、例えば、酸付加塩、または塩基付加塩を含んでもよい(例えば、Bergeら、(1977)J.Pharm.Sci.66:1~19を参照のこと)。
【0148】
組成物は、標準的な方法に従って処方され得る。薬学的処方物は、十分確立された技術であり、さらに、例えば、Gennaro(2000)「Remington:The Science and Practice of Pharmacy,」第20版、Lippincott,Williams & Wilkins(ISBN:0683306472);Anselら、(1999)「Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,」第7版,Lippincott Williams & Wilkins Publishers(ISBN:0683305727);およびKibbe(2000)「Handbook
of Pharmaceutical Excipients American Pharmaceutical Association」第3版(ISBN:091733096X)に記載されている。いくつかの実施形態では、組成物は、例えば、適切な濃度および2~8℃での保管に適している緩衝化溶液として処方されてもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、0℃未満の温度での保管のために処方され得る(例えば、-20℃または-80℃)。
【0149】
薬学的組成物は、種々の形態であってもよい。これらの形態としては、例えば、液体、半固体、および固体剤形、例えば、液体溶液(例えば、注射用液および注入可能溶液)、分散剤または懸濁剤、錠剤、丸剤、粉末、リポソームおよび坐剤が挙げられる。好ましい剤形は、一部は、投与および治療適用の意図される方式に依存する。例えば、全身送達または局所送達を意図する抗C5抗体を含む組成物は、注射溶液または注入可能溶液の形態であってもよい。したがって、組成物は、非経口の方式(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、または筋肉内の注射)での投与のために処方されてもよい。「非経口投与」、「非経口的に投与される」および他の文法的に等価な句は、本明細書で使用する場合、通常は注射による、外部投与および局所投与以外の投与方式を指し、これには、限定するものではないが、静脈内、鼻腔内、眼内、肺、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、関節内(intracapsular)、眼窩内、心臓内、皮内、肺内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内(intraarticular)、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外、脳内、頭蓋内、頸動脈内および胸骨内の注射および注入が挙げられる(下を参照のこと)。
【0150】
この組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、分散剤、リポソーム、または高濃度での安定な保管に適した他の階層構造として処方されてもよい。無菌の注射可能な溶液は、本明細書に記載される抗体を、適切な溶媒中に必要な量で、必要に応じて上記で挙げられた成分の1つまたは組み合わせとともに組み込むことによって、続いて無菌濾過することによって調製され得る。一般には、分散剤は、本明細書に記載されるヒト補体成分C5のインヒビター(例えば、抗C5抗体)を、基本分散媒体および上述されたもの由来の必要な他の成分を含む無菌ビヒクル中に組み込むことによって調製される。滅菌注射用溶液の調製のための無菌粉末の場合、調製の方法としては、真空乾燥および凍結乾燥が挙げられ、これによって、本明細書に記載の抗体の粉末に加えて任意の追加の所望の成分をその以前に無菌濾過した溶液から得る。溶液の適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散剤の場合には必要な粒径の維持によって、およびサーファクタントの使用によって、維持され得る。注射用組成物の長期の吸収は、吸収を遅延する試薬、例えば、一ステアリン酸塩およびゼラチンを組成物中に含むことによって行われ得る。
【0151】
特定の実施形態では、C5インヒビター(例えば、抗C5抗体またはその抗原結合フラグメント)は、移植片およびマイクロカプセル化送達系を含む、徐放性処方物のような、急速放出に対して化合物を保護するキャリアとともに調製され得る。生分解性、生体適合性のポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物類、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル類、およびポリ乳酸が用いられ得る。このような処方物の調製のための多くの方法は、当該分野で公知である。(例えば、J.R.Robinson(1978)「Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,」Marcel Dekker,Inc.,New York.を参照のこと)。
【0152】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体は、ヒトのような哺乳動物への肺内投与のために(例えば、ネブライザーを介した投与のために)適切な組成物中に処方され得る。このような組成物を調製するための方法は、当該分野で周知であり、例えば、米国特許出願公開第20080202513号;米国特許第7,112,341号および同第6,019,968号;ならびにPCT公開番号WO 00/061178および同第WO
06/122257(その各々の開示は、その全体が参照によって本明細書に援用される)に記載されている。乾燥粉末吸入器処方物およびその処方物の投与のために適切なシステムは、例えば、米国特許出願公開第20070235029号、PCT公開番号WO
00/69887;および米国特許第5,997,848号に記載されている。
【0153】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるヒトC5のインヒビター(例えば、抗C5抗体またはその抗原結合フラグメント)は、循環中で、例えば、血中、血清中または他の組織中でその安定化および/または保持を改善する部分で例えば修飾されてもよい。この安定化部分は、抗体の安定性または保持を少なくとも1.5倍(例えば、少なくとも2、5、10、15、20、25、30、40、または50倍以上)まで改善し得る。
【0154】
本明細書に記載されるヒト補体成分C5の核酸インヒビター(例えば、アンチセンス核酸またはsiRNA)は、細胞内で因子を発現および産生するために用いられ得る核酸を送達するために遺伝子治療プロトコールの一部として用いられる遺伝子構築物に組み込まれてもよい。このような組成物の発現構築物は、任意の生物学的に有効なキャリア、例えば、インビボで細胞に対して成分遺伝子を効率的に送達し得る任意の処方物または組成物中で投与され得る。アプローチとしては、ウイルスベクター中の本発明の遺伝子の挿入が挙げられ、このウイルスベクターとしては、組み換えレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、および単純疱疹ウイルス-1(HSV-1)、または組み換えの細菌または真核生物プラスミドが挙げられる。ウイルスベクターは、細胞を直接トランスフェクトし得る;プラスミドDNAは、例えば、カチオン性リポソーム(リポフェクチン)、または誘導体化(例えば、抗体コンジュゲート)、ポリリジンコンジュゲート、グラミシジンS、人工ウイルスエンベロープまたは他のこのような細胞内キャリアの補助で送達されても、同様に、遺伝子構築物の直接注射またはインビボで行われるCaPO沈殿で送達されてもよい(下の「エキソビボのアプローチ(Ex vivo Approaches)」も参照のこと)。適切なレトロウイルスの例としては、当業者に公知であるpLJ、pZIP、pWEおよびpEMが挙げられる(例えば、Eglitisら、(1985)Science 230:1395~1398;DanosおよびMulligan(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:6460~6464;Wilsonら、(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:3014~3018;Armentanoら、(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:6141~6145;Huberら、(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:8039~8043;Ferryら、(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:8377~8381;Chowdhuryら、(1991)Science 254:1802~1805;van Beusechemら、(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:7640~7644;Kayら、(1992)Human Gene Therapy 3:641-647;Daiら、(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10892~10895;Hwuら、(1993)J.Immunol.150:4104~4115;米国特許第4,868,116号、および同第4,980,286号;PCT公開番号WO89/07136、WO89/02468、WO89/05345、およびWO92/07573を参照のこと)。別のウイルス遺伝子送達系は、アデノウイルス由来のベクターを利用する(例えば、Berknerら、(1988)BioTechniques 6:616;Rosenfeldら、(1991)Science 252:431~434;およびRosenfeldら、(1992)Cell 68:143~155を参照のこと)。アデノウイルス株Ad5型dl324由来の適切なアデノウイルスベクターまたはアデノウイルスの他の株(例えば、Ad2、Ad3、Ad7、など)由来の適切なアデノウイルスベクターは、当業者に公知である。本発明の遺伝子の送達のために有用なさらに別のウイルスベクター系は、アデノ随伴ウイルス(AAV)である。例えば、Flotteら、(1992)Am.J.Respir.Cell.Mol.Biol.7:349~356;Samulskiら、(1989)J.Virol.63:3822~3828;およびMcLaughlinら、(1989)J.Virol 62:1963~1973を参照のこと。
【0155】
いくつかの実施形態では、2つ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10以上)のインヒビター(単数または複数)(例えば、1つ以上のヒトC5のインヒビター)を同時に処方してもよい。例えば、C5特異的なsiRNAおよび抗C5抗体を一緒に処方してもよい。
【0156】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるヒト補体のインヒビター(例えば、ヒトC5のインヒビター、例えば、抗C5抗体またはその抗原結合フラグメント)は、補体関連障害(例えば、本明細書に記載の任意の補体関連障害、例えば、APS、CAPS、aHUS、ドゴー病、HELLP症候群)を処置するか、またはその症状を緩和するために有用な1つ以上の追加の剤と処方され得る。例えば、抗C5抗体は、降圧剤、抗凝固剤および/またはステロイド(例えば、コルチコステロイド)と処方されてもよい。抗凝固剤の例としては、例えば、ワルファリン(Coumadin)、アスピリン、ヘパリン、フェニンジオン(phenindione)、フォンダパリヌクス(fondaparinux)、イドラパリヌクス(idraparinux)、およびトロンビンインヒビター(例えば、アルガトロバン、レピルジン、ビバリルジン、またはダビガトラン(dabigatran)が挙げられる。ヒトC5のインヒビター(例えば、抗C5抗体、抗C5a抗体、または抗C5b抗体)はまた、線維素溶解剤(例えば、アンクロド(ancrod)、ε-アミノカプロン酸、抗プラスミン-a、プロスタサイクリン、およびデフィブロチド)、シクロホスファミド、またはCAPSの処置のための抗サイトカイン剤と処方されてもよい。抗サイトカイン剤としては、例えば、サイトカイン(例えば、炎症促進性サイトカン、例えば、TNF)に結合してその活性を調節する抗体または可溶性のレセプターが挙げられる。抗サイトカイン剤の例としては、例えば、TNFインヒビター、例えば、可溶性のTNFレセプター(例えば、エタネルセプト(etanercept);Enbrel(登録商標))または抗TNF抗体(例えば、インフリキシマブ(infliximab);Remicade(登録商標))が挙げられる。いくつかの実施形態では、このインヒビターは、抗CD20剤、例えば、リツキシマブ(Rituxan(商標);Biogen Idec,Cambridge,MA)と処方されるか、またはそれと使用するために処方され得る。いくつかの実施形態では、ヒトC5のインヒビターは、静脈内免疫グロブリン療法(IVIG)と、または血漿交換とともに被験体に投与するために処方され得る。
【0157】
ヒトC5のインヒビターを第二の活性剤と組み合わせて用いる場合、または2つ以上のヒトC5のインヒビターを用いる場合(例えば、抗C5a抗体および抗C5b抗体)、その剤は別々に処方してもまたは一緒に処方してもよい。例えば、それぞれの薬学的組成物は、例えば、投与の直前に混合して一緒に投与してもよいし、または別々に、例えば、同時にまたは異なる時点で投与してもよい(下を参照のこと)。
【0158】
上記のとおり、組成物は、それが治療上有効な量のヒトC5のインヒビター(例えば、抗C5抗体またはその抗原結合フラグメント)を含むように処方されてもよいし、またはその組成物は、その成分が全体として、本明細書に記載の任意の補体関連障害のような障害を処置するために治療上有効であるように、治療量未満のインヒビターおよび1つ以上の治療量未満の追加の活性剤を含むように処方されてもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、インヒビターが全体として、補体関連障害、例えば、aHUS、CAPS、ドゴー病、またはHELLP症候群などを処置するために治療上有効である濃度であるように、ヒトC5の2つ以上のインヒビターを、それぞれ治療用量未満で含むように処方されてもよい。治療上有効な用量(例えば、抗C5抗体の治療上有効な用量)を決定するための方法は、当該分野で公知であって、本明細書に記載される。
【0159】
抗体を産生するための方法
本開示による、抗体(例えば、抗C5抗体、抗C5a抗体、および/または抗C5b抗体)、またはその抗原結合フラグメントを作製するために適切な方法は当該分野で公知あり(例えば、米国特許第6,355,245号を参照のこと)、本明細書に記載されている。例えば、モノクローナル抗C5抗体は、補体成分C5発現細胞、C5ポリペプチド、またはC5ポリペプチドの抗原性フラグメント(例えば、C5aまたはC5b)を、免疫原として用いて生成され得、これによって、動物での免疫応答が生じ、抗体産生細胞が続いてモノクローナル抗体が単離され得る。このような抗体の配列は、決定され得、そして抗体またはその改変体は、組み換え技術によって産生され得る。組み換え技術を用いて、キメラ、CDRグラフト、ヒト化および完全ヒト抗体を、モノクローナル抗体の配列に基づいて産生してもよく、同様に、ヒト補体成分C5に結合し得るポリペプチドも産生し得る。
【0160】
さらに、組み換えライブラリー由来の抗体(「ファージ抗体」)は、例えば、C5発現細胞、またはそれに由来するポリペプチドを、標的特異性に基づいて抗体またはポリペプチドを単離するためのベイト(bait)として用いて選択してもよい。非ヒトおよびキメラ抗C5抗体の産生および単離は、十分に当業者の範囲内である。
【0161】
組み換えDNA技術を用いて、非ヒト細胞で産生される抗体の1つ以上の特徴を修飾してもよい。したがって、キメラ抗体は、診断または治療適用においてその免疫原性を低下するように構築され得る。さらに免疫原性は、CDRグラフティング、および必要に応じてフレームワーク修飾によって抗体をヒト化することによって最小化され得る。その各々の内容が参照によって本明細書に援用される米国特許第5,225,539号および同第7,393,648号を参照のこと。
【0162】
抗体は、動物血清から得られてもよいし、またはモノクローナル抗体もしくはそのフラグメントの場合、細胞培養物中で産生されてもよい。組み換えDNA技術を用いて、細菌または好ましくは哺乳動物細胞培養中での手順を含む、樹立された手順にしたがって抗体を産生してもよい。選択された細胞培養系は好ましくは抗体産生物を分泌する。
【0163】
別の実施形態では、本明細書で開示される抗体を産生するためのプロセスは、ハイブリッドベクターで形質転換されている、宿主、例えば、大腸菌または哺乳動物細胞を培養する工程を包含する。このベクターは、抗体タンパク質をコードする第二のDNA配列に対して適切なリーディングフレーム中で連結されたシグナルペプチドをコードする第一のDNA配列に対して作動可能に連結されたプロモーターを含む1つ以上の発現カセットを含む。次いで、この抗体タンパク質を収集して単離する。必要に応じて、発現カセットは、適切なリーディングフレーム中でシグナルペプチドに対して各々が個々に作動可能に連結された抗体タンパク質をコードする多シストロン性(例えば、二シストロン性)DNA配列に対して作動可能に連結されたプロモーターを含んでもよい。
【0164】
インビトロのハイブリドーマ細胞または哺乳動物宿主細胞の増殖は、適切な培養培地で行い、この培地は、習慣的な標準的な培養培地(例えば、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)またはRPMI 1640培地)を含み、必要に応じて哺乳動物血清(例えば、ウシ胎仔血清)、または微量元素および成長維持補充物(例えば、支持細胞、例えば、正常なマウス腹腔滲出細胞、脾臓細胞、骨髄マクロファージ、2-アミノエタノール、インスリン、トランスフェリン、低密度リポタンパク質、オレイン酸など)を補給する。細菌細胞または酵母細胞である宿主細胞の増殖は、同様に、当該分野で公知の適切な培養培地で行う。例えば、細菌に適切な培養培地としては、培地LE、NZCYM、NZYM、NZM、テリフィック・ブロス(Terrific Broth)、SOB、SOC、2
xYT、またはM9最小培地が挙げられる。酵母に関しては、適切な培養培地としては、培地YPD、YEPD,最小培地、または完全最小Dropout培地が挙げられる。
【0165】
インビトロ産生によって、比較的純粋な抗体調製物が得られ、大量の所望の抗体を得るためのスケールアップ産生が可能になる。細菌細胞、酵母、植物または哺乳動物細胞培養のための技術は、当該分野で公知であり、かつ同質の懸濁培養物を(例えば、エアリフトリアクター中に、または連続撹拌リアクター中に)含み、そして細胞培養物を固定するかまたは捕捉する(例えば、中空ファイバー、マイクロカプセル中に、アガロースマイクロビーズまたはセラミックカートリッジ上に)。
【0166】
大量の所望の抗体はまた、インビボで哺乳動物細胞を増殖することによって得てもよい。この目的のためには、所望の抗体を産生するハイブリドーマ細胞を、組織適合性の哺乳動物に注入して、抗体産生腫瘍の増殖を生じる。必要に応じて、動物を、炭化水素、特に鉱油、例えば、プリスタン(テトラメチル-ペンタデカン)を用いて注射の前にプライミングする。1~3週後、抗体をそれらの哺乳動物の体液から単離する。例えば、適切な骨髄腫細胞と、抗体産生脾臓細胞(Balb/cマウス由来)との融合によって得られるハイブリドーマ細胞、または所望の抗体を産生するハイブリドーマ細胞株Sp2/0由来のトランスフェクトされた細胞を、プリスタンで必要に応じて前処理したBalb/cマウスへ腹腔内注射する。1~2週間後、腹水を動物から採取する。
【0167】
前述、および他の技術は、例えば、KohlerおよびMilstein,(1975)Nature 256:495~497;米国特許第4,376,110号;HarlowおよびLane,Antibodies:a Laboratory Manual,(1988)Cold Spring Harbor(この開示は全てが参照によって本明細書に援用される)に考察される。組み換え抗体分子の調製のための技術は、上記の引用文献に、そしてまた例えば:WO97/08320;米国特許第5,427,908号;米国特許第5,508,717号;Smith(1985)Science 225:1315~1317;ParmleyおよびSmith(1988)Gene 73:305~318;De La Cruzら、(1988)Journal of Biological Chemistry 263:4318~4322;米国特許第5,403,484号;米国特許第5,223,409号;WO88/06630;WO92/15679;米国特許第5,780,279号;米国特許第5,571,698号;米国特許第6,040,136号;Davisら、(1999)Cancer Metastasis Rev.18(4):421~5;ならびにTaylorら、(1992)Nucleic Acids Research 20:6287~6295;Tomizukaら、(2000)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97(2):722~727(その各々の内容がその全体が参照によって本明細書に援用される)に記載されている。
【0168】
細胞培養上清を、所望の抗体について、優先的に、補体成分C5発現細胞の免疫蛍光染色によって、イムノブロッティングによって、酵素イムノアッセイ(例えば、サンドイッチアッセイ、もしくはドットアッセイ)、またはラジオイムノアッセイによって、スクリーニングする。
【0169】
抗体の単離のためには、培養上清中のまたは腹水中の免疫グロブリンを、例えば、硫酸アンモニウムでの沈殿、ポリエチレングリコールなどの吸湿性物質に対する透析、選択膜を通じた濾過などによって濃縮してもよい。必要に応じておよび/または所望の場合、抗体を従来のクロマトグラフィー方法、例えば、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー、DEAE-セルロースでのクロマトグラフィーおよび/または(免疫)アフィニティークロマトグラフィー、例えばアフィニティークロマトグラフィーによって、補体成分C5発現細胞株由来の1つ以上の表面ポリペプチドで、またはプロテイン-Aもしくはプロテイン-Gで精製する。
【0170】
別の実施形態では、適切な哺乳動物中でC5プロテインに対する抗体を分泌する細菌細胞株の調製のためのプロセスが得られる。例えば、ウサギを、C5発現組織もしくは細胞由来のプールしたサンプル、またはC5ポリペプチドもしくはそのフラグメントで免疫する。免疫されたウサギから産生されたファージディスプレイライブラリーを構築して、当該分野で周知の方法(例えば、参照によって本明細書に援用される種々の引用文献に開示される方法など)によって所望の抗体についてパニングする。
【0171】
モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマ細胞も開示される。好ましいハイブリドーマ細胞は遺伝子的に安定であり、所望の特異性の本明細書に記載されるモノクローナル抗体を分泌し、かつインビトロで解凍および増殖によって冷凍培養物から、またはインビボで腹水として増殖され得る。
【0172】
別の実施形態では、補体成分C5タンパク質に対するモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマ細胞株の調製のためのプロセスが提供される。そのプロセスでは、適切な哺乳動物、例えば、Balb/cマウスを、C5の1つ以上のポリペプチドもしくは抗原性フラグメントで、またはC5発現細胞由来の1つ以上のポリペプチドもしくは抗原性フラグメント、C5発現細胞自体、または上記の精製されたポリペプチドを含む抗原性キャリアで免疫する。免疫された哺乳動物の抗体産生細胞を培養物中で短時間培養するか、または適切な骨髄腫細胞株の細胞と融合する。融合物中で得られたハイブリッド細胞をクローニングして、所望の抗体を分泌する細胞クローンを選択する。例えば、C5発現慢性リンパ球性白血病(CLL)細胞株で免疫したBalb/cマウスの脾臓細胞を、骨髄腫細胞株PAIの細胞または骨髄腫細胞株Sp2/0-Ag14の細胞と融合する。次いで、得られたハイブリッド細胞を、所望の抗体の分泌についてスクリーニングして、陽性のハイブリドーマ細胞をクローニングする。
【0173】
ハイブリドーマ細胞株を調製するための方法は、ヒトC5タンパク質(またはその免疫原性フラグメント)を含む免疫学的組成物を、皮下におよび/または腹腔内に、数回、数ヶ月にわたって、例えば、2~4ヶ月の間、例えば、4~6回、注射することによってBalb/cマウスを免疫する工程を包含する。免疫されたマウス由来の脾臓細胞を、最終注射の2~4日後に採取して、融合プロモーター、好ましくはポリエチレングリコールの存在下で骨髄腫細胞株PAIの細胞と融合する。好ましくは、骨髄腫細胞を、免疫されたマウス由来の3~20倍過剰の脾臓細胞と、分子量約4000の約30%~約50%のポリエチレングリコールを含む溶液中で融合させる。融合後、その細胞を、選択培地、例えば、HAT培地を補充された、上記のような適切な培養培地中で、正常な骨髄腫細胞が、所望のハイブリドーマ細胞を過剰増殖することを防ぐように一定間隔で増殖させる。
【0174】
抗体およびそのフラグメントは「キメラ」であってもよい。キメラ抗体およびその抗原結合フラグメントは、2つ以上の異なる種(例えば、マウスおよびヒト)由来の部分を含む。キメラ抗体は、ヒト定常ドメイン遺伝子セグメント上へスプライシングされた所望の特性のマウス可変領域で産生され得る(例えば,米国特許第4,816,567号)。この方式では、非ヒト抗体を修飾して、それらをヒトでの臨床適用(例えば、ヒト被験体で補体関連障害を処置または防ぐための方法)に適するようにしてもよい。
【0175】
本開示のモノクローナル抗体は、非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」型を含む。ヒト化またはCDR-グラフトmAbは特に、ヒトの治療剤として有用である。なぜなら、それらは、マウス抗体ほど急速に循環から排除されず、代表的には有害な免疫反応を誘発しないからである。ヒト化抗体を調製する方法は、一般に当該分野で周知である。例えば、ヒト化は、本質的に、Winterおよび共同研究者の方法(例えば、Jonesら、(1986)Nature 321:522~525;Riechmannら、(1988)Nature 332:323~327;およびVerhoeyenら、(1988)Science 239:1534~1536を参照のこと)に従って、ヒト抗体の対応する配列をげっ歯類のCDRまたはCDR配列で置き換えることによって、行われ得る。また、例えば、Staelensら、(2006)Mol Immunol 43:1243~1257も参照のこと。いくつかの実施形態では、非ヒト(例えば、マウス)抗体のヒト化型は、ヒト抗体(レシピエント抗体)であり、ここではレシピエント抗体の超可変(CDR)領域残基が、マウス、ラット、ウサギまたは非ヒト霊長類などの非ヒト種、または非ヒト霊長類(所望の特異性、親和性および結合能力を有する)由来の超可変領域残基(ドナー抗体)で置き換えられる。ある場合には、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域残基がまた、対応する非ヒト残基(いわゆる、「復帰突然変異(バック・ミューテーション)(back mutations)」)で置き換えられる。さらに、ファージディスプレイライブラリーを、抗体配列内の選択部位でアミノ酸を変化するために用いてもよい。ヒト化抗体の特性はまた、ヒトフレームワークの選択によって影響される。さらに、ヒト化抗体およびキメラ化抗体を、レシピエント抗体において、またはドナー抗体において見出されない残基を含むように修飾し、抗体特性、例えば、親和性またはエフェクター機能などをさらに改善してもよい。
【0176】
完全ヒト抗体はまた、本開示中に提供される。「ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列由来の可変領域および定常領域(存在する場合)を有する抗体を包含する。ヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基を含み得る(例えば、インビトロでのランダム変異誘発もしくは部位特異的変異誘発によって、またはインビボでの体細胞変異によって誘導される変異)。しかし、「ヒト抗体」という用語は、マウスのような別の哺乳動物種の生殖細胞系列由来のCDR配列が、ヒトフレームワーク配列上にグラフトされている抗体(すなわち、ヒト化抗体)を包含しない。完全ヒト抗体またはヒト抗体は、ヒト抗体遺伝子を担持する(可変(V)、多様性(D)、接続部(J)、および定常(C)エキソンを担持する)トランスジェニックマウス由来であっても、またはヒト細胞由来であってもよい。例えば、内因性免疫グロブリン産生の非存在下におけるヒト抗体の完全レパートリーを免疫の際に産生できるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を作製することが現在可能である(例えば、Jakobovitsら、(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2551;Jakobovitsら、(1993)Nature 362:255~258;Bruggemannら、(1993)Year in Immunol.7:33;およびDuchosalら、(1992)Nature 355:258を参照のこと)。トランスジェニックマウス系統は、再配列されていないヒト免疫グロブリン遺伝子由来の遺伝子配列を含むように操作され得る。ヒト配列は、ヒト抗体の重鎖および軽鎖の両方をコードし得、マウス中で正確に機能し、再配列を受けて、ヒトでのものと類似の広範な抗体レパートリーをもたらす。トランスジェニックマウスは、標的タンパク質(例えば、補体成分C5タンパク質、そのフラグメント、またはC5タンパク質を発現する細胞)で免疫されて、特定の抗体の多様なアレイおよびそれらのコードするRNAを作製し得る。次いで、このような抗体の抗体鎖成分をコードする核酸を、動物からディスプレイライブラリーへクローニングしてもよい。代表的には、重鎖および軽鎖配列をコードする核酸の別々の集団をクローニングし、次いで別々の集団をベクターへの挿入物上で組み合わせ、その結果このベクターの任意の所定のコピーは、重鎖および軽鎖のランダムな組み合わせを受ける。このベクターを、それらがアセンブルされて、そのベクターを含むディスプレイパッケージの外面上に提示され得るように、抗体鎖を発現するために設計する。例えば、抗体鎖は、そのファージの外面からファージコーティングタンパク質との融合タンパク質として発現され得る。その後、ディスプレイパッケージは、標的に結合する抗体のディスプレイについてスクリーニングしてもよい。
【0177】
さらに、ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリー由来であってもよい(Hoogenboomら、(1991)J.Mol.Biol.227:381;Marksら、(1991)J.Mol.Biol.,222:581~597;およびVaughanら、(1996)Nature Biotech 14:309(1996))。合成のヒト抗体V領域の無作為化された組み合わせを用いる合成のファージライブラリーを、作製してもよい。抗原での選択によって、V領域が事実上、極めてヒト様である完全ヒト抗体を作製してもよい。例えば、米国特許第6,794,132号、同第6,680,209号、同第4,634,666号、およびOstbergら、(1983),Hybridoma 2:361~367(その各々の内容が、その全体が参照によって本明細書に援用される)を参照のこと。
【0178】
ヒト抗体の生成については、Mendezら、(1998)Nature Genetics 15:146~156、Green and Jakobovits(1998)J.Exp.Med.188:483~495(その開示は、その全体が参照によって本明細書に援用される)も参照のこと。ヒト抗体はさらに、米国特許第5,939,598号;同第6,673,986号;同第6,114,598号;同第6,075,181号;同第6,162,963号;同第6,150,584号;同第6,713,610号;および同第6,657,103号、ならびに米国特許出願公開第2003-0229905号(A1)、同第2004-0010810号(A1)、同第US2004-0093622号(A1)、同第2006-0040363号(A1)、同第2005-0054055号(A1)、同第2005-0076395号(A1)、同第2005-0287630号(A1)に考察され、描写される。また国際公開番号WO94/02602、WO96/34096、およびWO98/24893、ならびに欧州特許第0 463 151号(B1)も参照のこと。上で引用した特許、出願、および引用文献の各々の開示は、その全体が参照によって本明細書に援用される。
【0179】
別のアプローチでは、他に、GenPharm International,Inc.,を含んでおり「ミニ遺伝子座(minilocus)」アプローチを利用した。ミニ遺伝子座アプローチでは、外因性Ig遺伝子座を、Ig遺伝子座由来の小片(個々の遺伝子)の包含によって模倣する。したがって、1つ以上のV遺伝子、1つ以上のD遺伝子1つ以上のJ遺伝子、μ(ミュー)定常領域、および第二定常領域(好ましくはγ定常領域)を、動物への挿入のための構築物中に形成する。このアプローチは、例えば、以下の米国特許番号中に記載されている:米国特許第5,545,807号;同第5,545,806号;同第5,625,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,661,016号;同第5,770,429号;同第5,789,650号;および同第5,814,318号;同第5,591,669号;同第5,612,205号;同第5,721,367号;同第5,789,215号;同第5,643,763号;同第5,569,825号;同第5,877,397号;同第6,300,129号;同第5,874,299号;同第6,255,458号;および同第7,041,871号(その開示は参照によって本明細書に援用される)。また、欧州特許第EP 0 546 073号(B1)、国際特許公開番号WO 92/03918、WO 92/22645、WO 92/22647、WO 92/22670、WO 93/12227、WO 94/00569、WO 94/25585、WO 96/14436、WO 97/13852、およびWO 98/24884(その各々の開示は全体が参照によって本明細書に援用される)も参照のこと。さらにTaylorら、(1992)Nucleic Acids Res.20:6287;Chenら、(1993)Int.Immunol.5:647;Tuaillonら、(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:3720~4;Choiら、(1993)Nature Genetics 4:117;Lonbergら、(1994)Nature
368:856~859;Taylorら、(1994)International
Immunology 6:579~591;Tuaillonら、(1995)J.Immunol.154:6453~65;Fishwildら、(1996)Nature Biotechnology 14:845;ならびにTuaillonら、(2000)Eur.J.Immunol.10:2998~3005(その各々の開示は全体が参照によって本明細書に援用される)を参照のこと。
【0180】
特定の実施形態では、脱免疫化抗C5抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。脱免疫抗体またはその抗原結合フラグメントとは、所定の種に対して(例えば、ヒトに対して)抗体またはその抗原結合フラグメントを非免疫原性にするか、または免疫原性を低下させるために修飾されている抗体である。脱免疫は、当業者に公知の任意の種々の技術を利用して抗体またはその抗原結合フラグメントを修飾することによって達成され得る(例えば、PCT公開番号WO 04/108158およびWO 00/34317を参照のこと)。例えば、抗体またはその抗原結合フラグメントは、抗体またはその抗原結合フラグメントのアミノ酸配列内の可能性のあるT細胞エピトープおよび/またはB細胞エピトープを特定すること、ならびに例えば、組み換え技術を用いて、この抗体またはその抗原結合フラグメントから1つ以上の可能性のあるT細胞エピトープおよび/またはB細胞エピトープを除去することによって脱免疫されてもよい。次いで、この修飾された抗体またはその抗原結合フラグメントを、必要に応じて、生成して、試験し、1つ以上の所望の生物学的活性、例えば、結合親和性などを保持しているが、免疫原性が低下している抗体またはその抗原結合フラグメントを特定してもよい。可能性のあるT細胞エピトープおよび/またはB細胞エピトープを特定するための方法は、当該分野で公知の技術、例えば、計算法(例えば、PCT公開番号WO 02/069232を参照のこと)、インビトロまたはインシリコの技術、および生物学的アッセイまたは物理的方法(例えば、MHC分子に対するペプチドの結合の決定、抗体またはその抗原結合フラグメントを受ける種由来のT細胞レセプターに対するペプチド:MHC複合体の結合の決定、抗体またはその抗原結合フラグメントを受ける種のMHC分子を有するトランスジェニック動物を用いるタンパク質またはそのペプチド部分の試験、あるいは抗体またはその抗原結合フラグメントを受ける種由来の免疫系細胞で再構成されたトランスジェニック動物での試験、等)などを用いて行ってもよい。種々の実施形態では、本明細書に記載される脱免疫化抗C5抗体としては、脱免疫抗原結合フラグメント、Fab、Fv、scFv、Fab’およびF(ab’)、モノクローナル抗体、マウスの抗体、操作された抗体(例えば、キメラ抗体、単鎖抗体、CDRグラフト抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、および人工選択抗体)、合成抗体および半合成抗体が挙げられる。
【0181】
いくつかの実施形態では、抗C5抗体の重鎖可変ドメインを、および/または軽鎖可変ドメインをコードする挿入物を含む組み換えDNA、またはC5タンパク質発現細胞株を作製する。DNAという用語は、コードしている一本鎖DNA、このコードしているDNAと、それに対して相補性のDNAとからなる二本鎖DNA、またはこれらの相補性(一本鎖)DNA自体を包含する。
【0182】
さらに、抗C5抗体の重鎖可変ドメインおよび/または軽鎖可変ドメインをコードするDNAを酵素的にまたは化学的に合成して、重鎖可変ドメインを、および/もしくは軽鎖可変ドメイン、またはその変異体コードする真正のDNA配列を含んでもよい。真正のDNAの変異体は、1つ以上のアミノ酸が欠失、挿入または1つ以上の他のアミノ酸と交換されている上述の抗体の重鎖可変ドメインおよび/または軽鎖可変ドメインをコードするDNAである。好ましくは、この改変(単数または複数)は、ヒト化および発現最適化の適用では、抗体の重鎖可変ドメインのおよび/または軽鎖可変ドメインのCDRの外側である。変異体DNAという用語はまた、サイレント変異を包含し、ここでは1つ以上のヌクレオチドが、同じアミノ酸(単数または複数)をコードする新規なコドンを有する他のヌクレオチドによって、置換される。変異配列という用語はまた、縮重配列を包含する。縮重配列は、限定されない数のヌクレオチドが、もともとコードされるアミノ酸配列の変化を生じずに他のヌクレオチドによって置き換えられているという点で遺伝子コードの意味内で縮重している。このような縮重配列は、重鎖のマウスの可変ドメインおよび/または軽鎖のマウスの可変ドメインの最適発現を得るために、特定の宿主、特に大腸菌に好適である種々の制限部位および/または特定のコドンの頻度に起因して有用であり得る。
【0183】
変異という用語は、当該分野で公知の方法による真正DNAのインビトロ突然変異誘発によって得られるDNA変異を包含するものとする。
【0184】
完全なテトラマーの免疫グロブリン分子およびキメラ抗体の発現のアセンブリに関しては、重鎖および軽鎖可変ドメインをコードする組み換えDNAインサートを重鎖および軽鎖定常ドメインをコードする対応するDNAと融合し、次いで、例えば、ハイブリッドベクターへの組み込み後に、適切な宿主細胞中に移す。
【0185】
抗C5抗体の重鎖マウス可変ドメインをコードする挿入物を含む組み換えDNAまたはヒト定常ドメインIgG、例えばγ1、γ2、γ3もしくはγ4、特定の実施形態ではγ1もしくはγ4に融合したC5発現細胞株を用いてもよい。ヒト定常ドメインκまたはλ、好ましくはκに融合された抗体の軽鎖マウス可変ドメインをコードする挿入物を含む組み換えDNAもまた提供される。
【0186】
別の実施形態は、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインがスペーサー基によって連結される組み換えポリペプチドをコードする組み換えDNAに関連し、このDNAは、必要に応じて、宿主細胞における抗体のプロセシングを容易にするシグナル配列、および/または抗体の精製を容易にするペプチドをコードするDNA配列、および/または切断部位および/またはペプチドスペーサーおよび/またはある因子を含む。
【0187】
したがって、本開示のモノクローナル抗体または抗原結合フラグメントは、他の因子、例えば、治療剤または検出標識にコンジュゲートされていない裸の抗体または抗原結合フラグメントであってもよい。あるいは、モノクローナル抗体または抗原結合フラグメントは、例えば、細胞毒性剤、低分子、ホルモン、酵素、成長因子、サイトカイン、リボザイム、ペプチド模倣物、化学物質、プロドラッグ、コード配列を含む核酸分子(例えば、アンチセンス、RNAi、遺伝子標的構築物、など)または検出標識(例えば、NMRまたはX線造影剤、蛍光分子など)のような因子にコンジュゲートされてもよい。特定の実施形態では、抗C5抗体または抗原結合フラグメント(例えば、Fab、Fv、単鎖scFv、Fab’、およびF(ab’))を、抗体または抗原結合フラグメントの半減期を増大する分子に連結する(上記を参照のこと)。
【0188】
いくつかの可能性のあるベクター系は、哺乳動物細胞におけるクローニングされた重鎖および軽鎖の遺伝子の発現が可能である。ベクターの1クラスは、宿主細胞ゲノムへの所望の遺伝子配列の組み込みに依拠する。DNAを安定に組み込んでいる細胞は、薬物耐性遺伝子、例えば、大腸菌gpt(MulliganおよびBerg(1981)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,78:2072)またはTn5 neo(SouthernおよびBerg(1982)Mol.Appl.Genet.1:327)を同時に導入することによって選択され得る。選択マーカー遺伝子は、発現されるDNA遺伝子配列に対して連結されるか、または同時トランスフェクションによって同じ細胞に導入されてもよい(Wiglerら、(1979)Cell 16:77)。第二のクラスのベクターは、染色体外のプラスミドに対して自律複製能力を付与するDNAエレメントを利用する。これらのベクターは、動物ウイルス、例えば、ウシパピローマウイルス(Sarverら、(1982)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,79:7147)、ポリオーマウイルス(Deansら、(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:1292)、またはSV40ウイルス(Lusky and Botchan(1981)Nature 293:79)に由来し得る。
【0189】
免疫グロブリンcDNAは、抗体タンパク質をコードする成熟mRNAを提示する配列のみからなるので、遺伝子の転写およびRNAのプロセシングを調節する追加の遺伝子発現エレメントが、免疫グロブリンmRNAの合成に必要である。これらのエレメントとしては、スプライスシグナル、転写プロモーター、例としては、誘導性プロモーター、エンハンサーおよび末端シグナルを挙げることができる。このようなエレメントを組み込むcDNA発現ベクターとしては、OkayamaおよびBerg(1983)Mol.Cell Biol.3:280;Cepkoら、(1984)Cell 37:1053;ならびにKaufman(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:689によって記載されるベクターが挙げられる。
【0190】
本開示から明白であるとおり、ヒト補体成分に結合する抗体(例えば、C5、C5b、またはC5aに結合する抗体)は、併用療法を含む治療(例えば、補体関連障害の治療)、ならびに疾患進行のモニタリングに用いられ得る。
【0191】
本開示の治療の実施形態では、二重特異性抗体が想定される。二重特異性抗体は、モノクローナルであり、好ましくは、ヒトまたはヒト化の抗体であって、少なくとも2つの異なる抗原についての結合特異性を有する抗体である。この場合、結合特異性の1つは、ヒト補体成分C5についてであって、もう一方は、任意の他の抗原についてである。
【0192】
二重特異性抗体を作製するための方法は、当業者の範囲内である。伝統的には、二重特異性抗体の組み換え産生は、2つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の同時発現(ここでは2つの重鎖が異なる特性を有する)に基づく(MilsteinおよびCuello(1983)Nature 305:537~539)。所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体-抗原組み合わせ部位)は、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合され得る。融合は好ましくは、免疫グロブリン重鎖定常ドメイン(ヒンジ、C2およびC3領域の少なくとも一部を含む)との融合である。免疫グロブリン重鎖融合物および必要に応じて免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAを、別の発現ベクターに挿入して、適切な宿主生物体中に同時トランスフェクトする。二重特異性抗体を生成するための例示的な現在公知の方法のさらなる詳細については、例えば、Sureshら、(1986)Methods in Enzymology 121:210;PCT公開番号WO 96/27011;Brennanら、(1985)Science 229:81;Shalabyら、J.Exp.Med.(1992)175:217~225;Kostelnyら、(1992)J.Immunol.148(5):1547~1553;Hollingerら、(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444~6448;Gruberら、(1994)J.Immunol.152:5368;およびTuttら、(1991)J.Immunol.147:60を参照のこと。二重特異性抗体としてはまた、架橋された抗体またはヘテロコンジュゲート抗体が挙げられる。ヘテロコンジュゲート抗体は、任意の簡便な架橋方法を用いて作製され得る。適切な架橋剤は、当該分野で周知であり、多数の架橋技術とともに、米国特許第4,676,980号に開示される。
【0193】
組み換え細胞培養物から直接に二重特異性抗体フラグメントを作製および単離するための種々の技術もまた記載されている。例えば、二重特異性抗体は、ロイシンジッパーを用いて作製されている。(例えば、Kostelnyら、(1992)J.Immunol.148(5):1547~1553を参照のこと)。FosおよびJunタンパク質からのロイシンジッパーペプチドを、遺伝子融合物によって2つの異なる抗体のFab’部分に連結してもよい。抗体のホモ二量体をヒンジ領域で還元して、モノマーを形成し、次いで再酸化して抗体ヘテロ二量体を形成してもよい。この方法はまた、抗体ホモ二量体の産生のために利用され得る。Hollingerら、(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444~6448によって記載される「ダイアボディ」技術によって、二重特異性抗体フラグメントを作製するための別の技術がもたらされている。このフラグメントは、同じ鎖の上の2つのドメインの間の対合を可能にするには短すぎるリンカーによって軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)を含む。したがって、1つのフラグメントのVHドメインおよびVLドメインを、別のフラグメントの相補的なVLおよびVHドメインと対合するように強制し、それによって2つの抗原結合部位を形成する。単鎖Fv(scFv)二量体の使用によって二重特異性抗体フラグメントを作製するための別のストラテジーも報告されている(例えば、Gruberら、(1994)J.Immunol.152:5368を参照のこと)。あるいは、抗体は、例えば、Zapataら、(1995)Protein Eng.8(10):1057~1062に記載されるような「直鎖状抗体」であってもよい。要するに、これらの抗体は、一対の抗原結合領域を形成する一対のタンデムFdセグメント(V-C1-V-C1)を含む。直鎖状抗体は、二重特異的であっても、単一特異的であってもよい。
【0194】
本開示はまた、Wuら、(2007)Nat Biotechnol 25(11):1290~1297に記載の四価二重可変ドメイン免疫グロブリン(DVD-Ig)分子などの二重特異性抗体の改変型を包含する。DVD-Ig分子は、2つの異なる親抗体由来の2つの異なる軽鎖可変ドメイン(VL)が、タンデムで直接または短いリンカーを介して、組み換えDNA技術によって、続いて軽鎖定常ドメインによって、連結されるように設計される。2つの親抗体からDVD-Ig分子を作製するための方法は、例えば、PCT公開番号WO 08/024188およびWO 07/024715(その開示の各々は、その全体が参照によって本明細書に援用される)にさらに記載されている。
【0195】
処置の方法
上記の組成物(例えば、本明細書に記載される任意のC5インヒビターまたはその薬学的組成物)は、とりわけ、種々の補体関連障害(例えば、AP関連の障害またはCP関連の障害)を被験体において処置または予防するための方法において有用である。この組成物は、投与の経路に一部は基づく、種々の方法を用いて被験体、例えば、ヒト被験体に投与され得る。この経路は、例えば、静脈内注射または注入(IV)、皮下注射(SC)、腹腔内(IP)、肺内、眼内または筋肉内の注射であってもよい。特定のインヒビター、例えば、低分子は、被験体に経口投与されてもよい。
【0196】
投与は、例えば、局所の注入、注射によって、またはインプラントによって達成し得る。インプラントは、多孔性、非多孔性またはゼラチン状の物質であってもよく、これはサイラスティック膜またはファイバーのような膜を含む。インプラントは、被験体に対する組成物の徐放性の放出または周期的な放出のために構成され得る。(例えば、その各々の開示が全体として参照によって本明細書に援用される米国特許出願公開第20080241223;米国特許第5,501,856号;同第4,863,457号;および同第3,710,795号;欧州特許第488401号;および欧州特許第430539号を参照のこと)。この組成物は、例えば、拡散性の、浸食性の、または対流的な系、例えば、浸透圧ポンプ、生分解性インプラント、電気拡散系、電気浸透系、蒸気圧ポンプ、電解ポンプ、沸騰ポンプ、圧電ポンプ、浸食ベースのシステム、または電気機械システムに基づく移植可能なデバイスによって被験体に送達され得る。
【0197】
本明細書に記載される補体インヒビター(例えば、抗C5抗体などのC5インヒビター)の適切な用量は、被験体における補体関連障害を処置または予防できる用量であって、これは、種々の要因(例えば、処置されるべき被験体の年齢、性別および体重、ならびに用いられる特定のインヒビター化合物を含む)に依存し得る。例えば、同じ被験体を処置するのに必要なC5特異的siRNA分子の用量に比較して、RAを有する被験体を処置するのに種々の用量の抗C5抗体が必要であり得る。被験体に投与される用量に影響する他の要因としては、例えば、補体関連障害の種類または重篤度が挙げられる。例えば、RAを有する被験体は、AMDを有する被験体よりも抗C5抗体の種々の投薬量の投与を必要とし得る。他の要因としては、例えば、被験体に同時にまたは以前に罹患した他の医学的障害、被験体の一般的健康状態、被験体の遺伝的素因、食餌、投与時間、排出速度、併用薬、および被験体に投与される任意の他の追加の治療剤を挙げることができる。任意の特定の被験体についての特定の投薬および処置計画は、処置する医療従事者(例えば、医師または看護士)の判定に依存することも理解されるべきである。
【0198】
本明細書に記載される抗体は、固定用量として、または体重1kgあたりのミリグラム(mg/kg)の用量で投与されてもよい。いくつかの実施形態では、この用量はまた、抗体または組成物中の1つ以上の活性な抗体に対する他の宿主免疫応答の産生を低減または回避するように選択され得る。決して限定するものではないが、抗体の例示的な投薬量としては、例えば、1~100μg/kg、0.5~50μg/kg、0.1~100μg/kg、0.5~25μg/kg、1~20μg/kg、および1~10μg/kg、1~100mg/kg、0.5~50mg/kg、0.1~100mg/kg、0.5~25mg/kg、1~20mg/kg、および1~10mg/kgが挙げられる。本明細書に記載される抗体の例示的な投薬量としては限定するものではないが、0.1μg/kg、0.5μg/kg、1.0μg/kg、2.0μg/kg、4μg/kg、および8μg/kg、0.1mg/kg、0.5mg/kg、1.0mg/kg、2.0mg/kg、4mg/kg、および8mg/kgが挙げられる。さらなる例示的な投薬量およびスケジュールが本明細書に提供される(例えば、表1および2を参照のこと)。
【0199】
薬学的組成物は、本明細書に記載される治療上有効な量の補体インヒビター(例えば、抗C5抗体のようなC5インヒビター)を含んでもよい。このような有効量は、投与される抗体の効果に、または2つ以上の因子が用いられる場合、抗体および1つ以上の追加の活性剤の組み合わせの効果に一部は基づいて、当業者によって容易に決定され得る。本明細書に記載される抗体の治療上有効な量はまた、個体の疾患状態、年齢、性別および体重などの要因、ならびにその個体において、抗体(および1つ以上の追加の活性剤)が所望の応答、例えば、少なくとも1つの状態パラメーターの改善、例えば、補体関連障害の少なくとも1つの症状の改善を誘引する能力に応じて変化し得る。例えば、C5aおよびC5bに結合する抗体の治療有効量は、当該分野で公知であるかまたは本明細書に記載の特定の障害、および/またはその特定の障害の症状のうちの任意の1つを阻害する(その重篤度を低減するかまたはその出現を排除する)か、および/または予防し得る。治療上有効な量とはまた、組成物の任意の毒性または有害な影響を治療上有益な効果が上回る量である。
【0200】
本明細書に記載されるC5インヒビター(例えば、抗C5抗体)の適切なヒト用量はさらに、例えば、第I相用量漸増研究において評価され得る。例えば、van Gurpら、(2008)Am J Transplantation 8(8):1711~1718;Hanouskaら、(2007)Clin Cancer Res 13(2、part 1):523~531;およびHetheringtonら、(2006)Antimicrobial Agents and Chemotherapy 50(10):3499~3500を参照のこと。
【0201】
本明細書に用いられる、「治療上有効な量」もしくは「治療上有効な用量」という用語、または類似の用語は、所望の生物学的応答または医学的応答(例えば、補体関連障害の1つ以上の症状における改善)を誘発する因子(例えば、C5インヒビター)の量を意味するものとする。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、治療上有効な量の抗C5抗体を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、哺乳動物細胞におけるC5 mRNAに特異的に結合してその不活性化を促進する、治療上有効な量のsiRNAを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、C5aに特異的に結合する、治療上有効な量の抗体を含む。いくつかの実施形態では、この組成物は、全体として、治療上有効であるように、本明細書に記載される任意の抗体、および1つ以上の(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、または11以上)の追加の治療剤を含む。例えば、組成物は、本明細書に記載される抗C5抗体および免疫抑制剤を含んでもよく、ここでこの抗体および因子は、各々が、組み合された場合に、被験体中の補体関連障害を処置または予防するために治療上有効である濃度である。
【0202】
このような組成物の毒性および治療上の有効性は、細胞培養物または実験動物(例えば、本明細書に記載の任意の補体関連障害の動物モデル)における公知の薬学的手順によって決定され得る。これらの手順は、例えば、LD50(集団の50%に対して致死の用量)およびED50(集団の50%において治療上有効な用量)を決定するために用いられ得る。毒性効果と治療効果との間の用量比は、治療指数であって、LD50/ED50の比として表現され得る。高い治療指数を示す補体インヒビター(例えば、哺乳動物細胞におけるC5 mRNAに結合しかつその不活性化を促進する、C5インヒビター、例えば、抗C5抗体、抗C5a抗体、または核酸)が好ましい。毒性の副作用を呈する組成物が用いられ得るが、罹患した組織の部位に対してこのような化合物を標的して送達システムを設計し、正常な細胞に対する潜在的な損傷を最小化し、それによって副作用を軽減するように注意を払うべきである。
【0203】
細胞培養アッセイおよび動物研究から得られるデータは、ヒトにおける使用のためのある範囲の投薬量を処方するのにおいて用いられ得る。このようなインヒビターの投薬量は一般に、毒性がほとんどないかまたは全くない、ED50を含むインヒビターのある範囲の循環濃度内にある。この投薬量は、使用される剤形および利用される投与経路に依存してこの範囲内で変化し得る。本明細書に記載されるように用いられる(例えば、補体関連障害を処置または予防するため)C5インヒビター(例えば、抗C5抗体または抗C5a抗体)については、治療上有効な用量は、細胞培養アッセイから最初に評価され得る。用量は、細胞培養中で決定されるIC50(すなわち、症状の最大半分阻害を達成する試験化合物の濃度)を含む、循環中の血漿濃度範囲を達成するために動物モデルで処方され得る。このような情報は、ヒトでの有用な用量をより正確に決定するために用いられ得る。血漿中のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって、またはELISAによって測定され得る。
【0204】
いくつかの実施形態では、この方法は、補体関連障害について他の治療剤と組み合わせて行われてもよい。例えば、この組成物は、被験体に対して、プラズマフェレーシス、IVIG療法、血漿注入、または血漿交換と同時に、前に、または後に投与されてもよい。例えば、Appelら、(2005)J Am.Soc Nephrol.16:1392~1404を参照のこと。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるC5インヒビター(例えば、抗C5抗体または抗C5a抗体)は、IVIGと組み合わせては投与されない。いくつかの実施形態では、この組成物は、被験体に対して、腎臓移植と同時に、前に、または後に投与されてもよい。抗C5抗体の例示的な投薬スケジュールとともに、器官(例えば、腎臓)または組織を移植するための例示的な方法は本明細書に提供される。
【0205】
本明細書において用いる場合「被験体」とは、任意の哺乳動物であってもよい。例えば、被験体は、ヒト(例えば、患者)、非ヒト霊長類(例えば、サル、ヒヒまたはチンパンジー)、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、アレチネズミ、ハムスター、ラット、またはマウスであってもよい。いくつかの実施形態では、被験体とは、乳児(例えば、ヒト乳児)である。いくつかの実施形態では、被験体は女性である。
【0206】
本明細書で使用する場合、「予防の必要な」、「処置の必要な」または「それを必要とする」被験体とは、適切な医療従事者(例えば、ヒトの場合には医師、看護士または施術者;非ヒト哺乳動物の場合には獣医)の判定によって、所定の処置(補体インヒビター(例えば、C5インヒビター、例えば、抗C5抗体、抗C5a抗体または核酸(例えば、siRNAまたはアンチセンス核酸)(哺乳動物細胞においてC5 mRNAに結合してその不活性化を促進する)を含む組成物での処置)から合理的に利益を得る被験体を指す。
【0207】
上記のとおり、本明細書に記載される補体インヒビター(例えば、C5インヒビター、例えば、抗C5抗体)は、種々の補体関連障害、例えば、AP関連の障害および/またはCP関連の障害などを処置するために用いられ得る。このような障害としては、限定するものではないが、関節リウマチ(RA);抗リン脂質抗体症候群;ループス腎炎;虚血-再灌流傷害;非定型溶血性尿毒症症侯群(aHUS);定型または感染性の溶血性尿毒症症候群(tHUS);デンス・デポジット病(dense deposit disease)(DDD);視神経脊髄炎(NMO);多巣性運動ニューロパチー(MMN);多発性硬化症(MS);黄斑変性症(例えば、加齢性黄斑変性症(AMD));溶血、肝酵素上昇、および低血小板(HELLP)症候群;血栓性血小板減少性紫斑病(TTP);自然胎児消失;寡免疫性血管炎(Pauci-immune vasculitis);表皮水泡症;再発性胎児消失;および外傷性脳損傷が挙げられる。(例えば、Holers(2008)Immunological Reviews 223:300~316、ならびにHolersおよびThurman(2004)Molecular Immunology 41:147~152を参照のこと)。いくつかの実施形態では、補体関連障害は、補体関連の血管障害、例えば、心血管系障害、心筋炎、心血管系障害、末梢(例えば、筋骨格)血管障害、腎血管性障害、腸間膜/腸血管障害、血管炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑腎炎、全身性紅斑性狼瘡関連血管炎、関節リウマチ関連血管炎、免疫複合体血管炎、高安病、拡張型心筋症、糖尿病性血管症、川崎病(動脈炎)、静脈気体塞栓(VGE)、およびステント留置後再狭窄、回転式粥腫切除術(rotational
atherectomy)、および経皮経管冠動脈形成拡張術(PTCA)である(例えば、米国特許出願公開第20070172483号を参照のこと)。さらなる補体関連障害としては限定するものではないが、MG、CAD、皮膚筋炎、グレーブス病、アテローム性動脈硬化症、アルツハイマー病、全身炎症反応敗血症、敗血性ショック、脊髄損傷、糸球体腎炎、橋本甲状腺炎、I型糖尿病、乾癬、天疱瘡、自己免疫溶血性貧血(AIHA)、ITP、グッドパスチャー症候群、ドゴー病、抗リン脂質抗体症候群(APS)および劇症型APS(CAPS)が挙げられる。
【0208】
本明細書で使用する場合、「補体関連障害を発症するリスクの」(例えば、AP関連の障害またはCP関連の障害)被験体とは、その障害を発症する1つ以上の(例えば、2、3、4、5、6、7または8以上)の危険因子を有する被験体である。危険因子は、特定の補体関連障害に依存して変化するが、医薬の分野では周知である。例えば、DDDの発症に関する危険因子としては、例えば、その状態を発症する素因、すなわち、その状態の家族歴、または例えば、補体H因子(CFH)、補体H因子関連5(CFHR5)、および/もしくは補体成分C3(C3)をコードする遺伝子における1つ以上の変異などの状態を発症する遺伝的素因が挙げられる。このようなDDD関連の変異、および被験体が1つ以上の変異を有するか否かを決定する方法は、当該分野で公知であり、例えば、Lichtら、(2006)Kidney Int.70:42~50;Zipfelら、(2006)「The role of complement in membranoproliferative glomerulonephritis」Complement and Kidney Disease,Springer,Berlin,第199~221頁;Aultら、(1997)J Biol.Chem.272:25168~75;Abrera-Abeledaら、(2006)J Med.Genet 43:582~589;Poznanskyら、(1989)J Immunol.143:1254~1258;Jansenら、(1998)Kidney Int.53:331~349;およびHegasyら、(2002)Am J Pathol 161:2027~2034に記載されている。したがって、DDDを発症する危険性のあるヒトとは、例えば、CFHをコードする遺伝子における1つ以上のDDD関連変異を有するヒト、またはその疾患の発症の家族歴があるヒトであり得る。
【0209】
TTPについての危険因子は、医学分野において周知であり、これには、例えば、その状態を発症する素因、すなわち、その状態の家族歴、またはその状態を発症する遺伝的素因、例えば、ADAMTS13遺伝子における1つ以上の変異が挙げられる。TTPに関連するADAMTS13変異は、詳細には、例えば、Levyら、(2001)Nature 413:488~494;Kokameら、(2004)Semin.Hematol.41:34~40;Lichtら、(2004)Kidney Int.66:955~958;およびNorisら、(2005)J.Am.Soc.Nephrol.16:1177~1183に概説されている。TTPの危険因子としてはまた、TTP、またはTTPの再発を引き起こすことが公知である条件または因子、例えば、限定するものではないが、癌、細菌感染(例えば、Bartonella sp.感染)、ウイルス感染(例えば、HIVおよびカポジ肉腫ウイルス)、妊娠または手術が挙げられる。例えば、Averyら、(1998)American Journal of Hematology 58:148~149およびTsai(上記))を参照のこと。TTP、またはTTPの再発はまた、特定の治療剤(薬物)、例としては、例えば、チクロピジン(ticlopidine)、FK506、コルチコステロイド、タモキシフェン、またはシクロスポリンAの使用に関連している(例えば、Gordonら、(1997)Seminars in Hematology 34(2):140~147を参照のこと)。本明細書において以降では、TTPのこのような徴候は、必要に応じて、例えば、「感染関連のTTP」、「妊娠関連のTTP」または「薬物関連のTTP」と呼ばれる場合がある。したがって、TTPを発症するリスクにあるヒトとは、例えば、ADAMTS13遺伝子において1つ以上のTTP関連変異を有するヒトであり得る。再発型のTTPを発症するリスクのあるヒトは、例えば、TTPを有し、感染を有し、妊娠しているか、または手術を受けているヒトであり得る。
【0210】
aHUSの危険因子は、医薬の当該分野で周知であり、これには、例えば、その状態を発症する素因、すなわち、その状態の家族歴、またはその状態を発症する遺伝的素因、例えば、補体因子H(CFH)、膜補因子タンパク質(MCP;CD46),C4b-結合タンパク質、補体B因子(CFB)、または補体I因子(CFI)における1つ以上の変異などが挙げられる。(例えば、Warwickerら、(1998)Kidney Int.53:836~844;Richardsら、(2001)Am J Hum Genet 68:485~490;Caprioliら、(2001)Am Soc Nephrol 12:297~307;Neumanら、(2003)J Med Genet 40:676~681;Richardsら、(2006)Proc Natl
Acad Sci USA 100:12966~12971;Fremeaux-Bacchiら、(2005)J Am Soc Nephrol 17:2017~2025;Esparza-Gordilloら、(2005)Hum Mol Genet
14:703~712;Goicoechea de Jorgeら、(2007)Proc Natl Acad Sci USA 104(1):240~245;Blomら、(2008)J Immunol.180(9):6385~91;およびFremeaux-Bacchiら、(2004)J Medical Genet 41:e84を参照のこと)。(またKavanaghら、(2006)(上記)も参照のこと)。危険因子としてはまた、例えば、Streptococcus pneumoniaeの感染、妊娠、癌、抗癌剤(例えば、キニン、マイトマイシンC、シスプラチン、またはブレオマイシン)に対する曝露、免疫療法剤(例えば、サイクロスポリン、OKT3、またはインターフェロン)に対する曝露、抗血小板剤(例えば、チクロピジンまたはクロピドグレル)に対する曝露、HIV感染、移植、自己免疫疾患、ならびに複合メチルマロン酸血症およびホモシスチン尿症(cblC)が挙げられる。例えば、Constantinescuら、(2004)Am J Kidney Dis 43:976~982;George(2003)Curr Opin Hematol 10:339~344;Gottschallら、(1994)Am J Hematol 47:283~289;Valavaaraら、(1985)Cancer 55:47~50;Miralbellら、(1996)J Clin Oncol 14:579~585;Dragon-Dureyら、(2005)J Am Soc Nephrol 16:555~63;およびBeckerら、(2004)Clin Infect Dis 39:S267~S275を参照のこと。
【0211】
HELLPの危険因子は、医学分野で周知であり、これには例えば、多胎妊娠、母性年齢25歳以上、白人種、以前の妊娠における子癇前症またはHELLPの出現、ならびに不良な妊娠転帰の既往が挙げられる(例えば、Sahinら、(2001)Nagoya
Med J 44(3):145~152;Sullivanら、(1994)Am J Obstet Gynecol 171:940~943;およびPaddenら、(1999)Am Fam Physician 60(3):829~836を参照のこと)。例えば、最初の妊娠の間に子癇前症を発症した妊娠白人女性は、第二の妊娠の間、または後にHELLP症候群を発症する危険性がある人であり得る。
【0212】
CADの危険因子は、医学分野で周知であり、これには、例えば、CADまたはCAD再発を引き起こすことが公知の条件または因子、例えば、限定するものではないが、新生物または感染(例えば、細菌およびウイルス感染)が挙げられる。CADの発症に関連することが公知である条件としては、例えば、HIV感染(およびAIDS)、C型肝炎感染、Mycoplasma pneumonia感染、エプスタイン・バーウイルス(EBV)感染、サイトメガロウイルス(CMV)感染、風疹、または感染性単核球症が挙げられる。CADに関連する新生物としては限定するものではないが、非ホジキンリンパ腫が挙げられる。本明細書において以降では、CADのこのような徴候は、必要に応じて、例えば、「感染関連のCAD」または「新生物関連のCAD」と呼ばれ得る。したがって、CADを発症するリスクのあるヒトとは、例えば、HIV感染、風疹またはリンパ腫を有するヒトであり得る。また、例えば、Gertz(2006)Hematology 1:19-23;Horwitzら、(1977)Blood 50:195~202;FinlandおよびBarnes(1958)AMA Arch Intern Med 191:462~466;Wangら、(2004)Acta Paediatr Taiwan 45:293~295;Michauxら、(1998)Ann Hematol 76:201~204;ならびにChangら、(2004)Cancer Genet Cytogenet 152:66~69も参照のこと。
【0213】
血栓性微小血管症(TMA)の危険因子は、医学分野で周知であり、これには、例えば、aHUS、TTPまたはTMAに関連する他の状態、例えば、狼瘡(ループス)、癌、播種性静脈内凝固および他の凝固障害、および子癇前症の病歴などが挙げられる。例えば、CopelovitchおよびKaplan(2008)Pediatr Nephrol 23(10):1761~7を参照のこと。
【0214】
PCHの危険因子は、医学分野で周知であり、これには、例えば、PCH、またはPCHの再発を誘発することが公知である状態または因子、例えば、限定するものではないが、新生物、感染(例えば、細菌感染およびウイルス感染)、または特定の免疫(例えば、麻疹免疫)が挙げられる。PCHの発症に関連することが公知の状態としては、例えば、梅毒(Treponema palladium感染)、麻疹、おたふく風邪、インフルエンザウイルス感染、水痘帯状疱疹ウイルス感染、サイトメガロウイルス(CMV)感染、エプスタイン・バーウイルス(EBV)感染、アデノウイルス感染、パルボウイルスB19感染、コクサッキーA9感染、Haemophilus influenza感染、Mycoplasma pneumoniae感染、およびKlebsiella pneumoniae感染が挙げられる。例えば、Bunchら、(1972)Arch Dis Child 47(252):299~300;Zimanら、(2004)Transfusion 44(8):1127~1128;Sokolら、(1984)Acta Haematol 72(4):245~257;Papaliaら、(2000)Br J Haematol 109(2):328~9;Sokolら、(1982)Acta Haematol 68(4):268~277;およびBellら、(1973)Transfusion 13(3):138~141を参照のこと。PCHに関連する新生物としては限定するものではないが、固形および造血系の新生物、例えば、骨髄線維症、慢性リンパ球性白血病(CLL)、および非ホジキンリンパ腫が挙げられる。例えば、Shararaら、(1994)South Med J.87(3):397~9;Sivakumaranら、(1999)Br J Haematol 105(1):278~9;Brecciaら、(2004)Eur J Haematol
73(4):304~6;およびWynnら、(1998)Clin Lab Haematol 20(6):373~5を参照のこと。本明細書において以降では、PCHのこのような徴候は、必要に応じて、例えば、「感染関連のPCH」または「新生物関連のPCH」と呼ばれ得る。したがって、PCHを発症するリスクのあるヒトとは、例えば、EBV感染またはリンパ腫を有するヒトであり得る。
【0215】
MGの危険因子は、医学分野で周知であって、これには、例えば、この状態を発症する素因、すなわち、この状態の家族歴または家族性MGのような状態を発症する遺伝的素因が挙げられる。例えば、いくつかのHLA型は、MGを発症する危険性の増大に関連している。MGの危険因子としては、限定するものではないが、D-ペニシラミンなどの特定のMG誘導性薬物の摂取またはそれに対する曝露が挙げられる。例えば、Drososら、(1993)Clin Exp Rheumatol.11(4):387~91およびKaeserら、(1984)Acta Neurol Scand Suppl.100:39~47を参照のこと。MGは、一時的である場合もあるので、MGを有する1つ以上の症状を以前に経験している被験体は、再発の危険性があり得る。したがって、MGを発症するリスクのあるヒトとは、例えば、MGの家族歴を有するヒト、および/またはD-ペニシラミンなどのMG誘発性薬物を摂取しているかもしくは投与されているヒトであり得る。
【0216】
本明細書で使用する場合、「CAPSを発症するリスクのある」被験体とは、その障害を発症する1つ以上の(例えば、2、3、4、5、6、7、または8以上)危険因子を有する被験体である。CAPSの頻度の約60%では感染のような事象を誘発することが先行する。したがって、CAPSの危険因子としては、限定するものではないが、特定の癌(例えば、胃癌、卵巣癌、リンパ腫、白血病、子宮内膜癌、腺癌腫、および肺癌)、妊娠、産褥、移植、原発性APS、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、手術(例えば、眼の手術)、および特定の感染などのCAPSを誘発することが公知の状態が挙げられる。感染としては、例えば、パルボウイルスB19感染およびC型肝炎感染が挙げられる。本明細書において以降では、CAPSのこのような徴候は、例えば、「癌関連のCAPS」、「移植関連のCAPS」、「RA関連のCAPS」、「感染関連のCAPS」または「SLE関連のCAPS」と呼ばれる場合がある。例えば、Solteszら、(2000)Haematologia(Budep)30(4):303~311;Ideguchiら、(2007)Lupus 16(1):59~64;Mannerら、(2008)Am J Med.Sci.335(5):394~7;Miesbachら、(2006)Autoimmune Rev.6(2):94~7;Gomez-Puertaら、(2006)Autoimmune Rev.6(2):85~8;Gomez-Puertaら、(2006)Semin.Arthritis Rheum.35(5):322~32;Kasamonら、(2005)Haematologia 90(3):50~53;Athersonら、(1998)Medicine 77(3):195~207;およびCanpolatら、(2008)Clin Pediatr 47(6):593~7を参照のこと。したがって、CAPSを発症するリスクのあるヒトは、例えば、原発性のCAPSおよび/またはCAPSに関連することが公知である癌を有するヒトであってもよい。
【0217】
上記から、「補体関連障害を発症するリスクのある」被験体(例えば、AP関連の障害またはCP関連の障害)とは、目的の種内の全ての被験体ではないことは明らかである。
【0218】
「補体関連障害を有する疑いがある」(例えば、別の補体経路関連障害)被験体とは、その疾患の1つ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10以上)の症状を有する被験体である。これらの障害の症状は、特定の障害に依存して変化するが、医学分野の当業者には公知である。例えば、DDDの症状としては、例えば:血尿およびタンパク質尿症の一方または両方;急性腎炎症候群;ドルーゼ発症および/または視力障害;後天性部分性リポジストロフィおよびその合併症;ならびに血清C3腎炎因子(C3NeF)の存在、C3bBbに対する自己抗体、別の補体経路のC3コンバターゼが挙げられる。(例えば、Appelら、(2005)(上記)を参照のこと)。aHUSの症状としては、例えば、重篤な高血圧、タンパク質尿、尿毒症、嗜眠/疲労、興奮性、血小板減少症、微小血管症性溶血性貧血、および腎機能障害(例えば、急性腎不全)が挙げられる。TTPの症状としては、例えば、微小血栓(microthrombi)、血小板減少症、発熱、低ADAMTS13メタロプロテイナーゼ発現または活性、変動性中枢神経系異常(fluctuating central nervous system abnormalities)、腎不全、微小血管症性溶血性貧血、挫傷、紫斑病、悪心および嘔吐(例えば、GI管の虚血から、または中枢神経系の関与から生じる)、心虚血に起因する胸痛、てんかん、ならびに筋肉および関節の疼痛が挙げられる。RAの症状としては、例えば、硬直、腫脹、疲労、貧血、体重減少、発熱、およびしばしば、うずくまるほどの疼痛を挙げることができる。関節リウマチのいくつかの共通の症状としては、1時間以上続く覚醒時の関節硬直;特定の指または腕関節の腫脹;関節まわりの軟部組織の腫脹;ならびに関節の両側での腫脹が挙げられる。腫脹は、疼痛を伴ってまたは伴わずに生じ得、かつ漸進的に悪化する場合も、または進行前に数年間同じままである場合もある。HELLPの症状は、医学分野で公知であって、これには、例えば、倦怠感、上腹部痛、悪心、嘔吐、頭痛、右上腹部痛、高血圧、タンパク質尿症、かすみ目、胃腸消化管出血、低血糖、知覚異常、肝酵素上昇/肝損傷、貧血(溶血性貧血)、および低血小板数(そのいずれかを妊娠または最近の妊娠と組み合わせて)が挙げられる。(例えば、Tomsen(1995)Am J Obstet Gynecol 172:1876~1890;Sibai(1986)Am J Obstet Gynecol 162:311~316;およびPadden(1999)(上記)を参照のこと)。
【0219】
CAPSの症状は、医学分野で周知であって、これには例えば、多数の小血管閉塞の組織病理学的証明;抗リン脂質抗体の存在(通常は高い力価)、血管内血栓、重篤な多臓器不全、悪性高血圧,急性呼吸窮迫症候群、播種性血管内凝固症候群、微小血管症性溶血性貧血、分裂赤血球、および血小板減少症が挙げられる。CAPSは、CAPSを有する患者が一般には、重篤な多臓器機能不全または不全(急速なびまん性小血管虚血および実質器官に優先的に影響する血栓症によって特徴付けられる)を呈するという点でAPSと区別され得る。対照的に、APSは、単一の静脈および動脈の中~大の血管閉塞に関連する。MGの症状としては、例えば、疲労性およびある範囲の筋衰弱関連状態が挙げられ、これには以下が挙げられる:眼瞼下垂(一方または両方の眼の)、複視、不安定な足取り、落ち込んだまたはゆがんだ表情、および咀嚼、会話または嚥下の困難性。ある場合には、被験体は、呼吸筋の部分麻痺または完全麻痺で示され得る。CADの症状としては、例えば、疼痛、発熱、蒼白、貧血、四肢への血流低下(例えば、壊疽を伴う)、および腎疾患または急性腎不全が挙げられる。いくつかの実施形態では、この症状は、低温に曝された後に生じる場合がある。
【0220】
上記から、「補体関連障害を有する疑いがある」被験体とは、目的の種内の全ての被験体ではないことは明らかであろう。
【0221】
いくつかの実施形態では、この方法は、被験体が、被験体において補体関連障害を有するか、有する疑いがあるか、または発症するリスクがあるということを特定する工程を包含し得る。被験体を特定するために適切な方法は、当該分野で公知である。例えば、ヒト被験体が、CFH、CFHR5またはC3遺伝子においてDDD関連変異を有するか否かを決定するための適切な方法(例えば、配列決定技術またはマイクロアレイの使用)は、例えば、Lichtら、(2006)Kidney Int.70:42~50;Zipfelら、(2006)(上記);Aultら、(1997)J Biol.Chem.272:25168~75;Abrera-Abeledaら、(2006)J Med
Genet 43:582~589;Poznanskyら、(1989)J Immunol.143:1254~1258;Jansenら、(1998)Kidney Int.53:331~349;およびHegasyら、(2002)Am J Pathol 161:2027~2034に記載される。特徴的なDDD関連の電子密度の高い沈着物の存在を決定するための方法も当該分野で周知である。例えば、医療従事者は、患者の腎臓から組織生検を得て、その組織を電子顕微鏡で見てもよい。医療従事者はまた、免疫蛍光によって組織を検査して、抗C3抗体および/または光学顕微鏡を用いてC3の存在を検出し、膜性増殖性糸球体腎炎が存在するか否かを決定してもよい。例えば、Walkerら、(2007)Mod.Pathol.20:605~616およびHabibら、(1975)Kidney Int.7:204~215を参照のこと。いくつかの実施形態では、被験体がDDDを有することを特定するのは、C3NeFの存在について血液サンプルをアッセイする工程を包含し得る。血中のC3NeFの存在を検出するための方法は、例えば、Schwertzら、(2001)Pediatr Allergy Immunol.12:166~172に記載される。
【0222】
いくつかの実施形態では、医療従事者は、被験体の血清中で補体活性化が増大しているか否かを決定し得る。補体活性化の増大の指標としては、例えば、CH50の減少、C3の減少、およびC3dg/C3dの増大が挙げられる。例えば、Appelら、(2005)(上記)を参照のこと。いくつかの実施形態では、医療従事者は、ドルーゼおよび/またはAMDのような他の視覚の病理の発症の証拠について被験体の眼を検査し得る。例えば、医療従事者は、網膜機能の試験、例えば、限定するものではないが、暗順応、網膜電図検査および電気眼球図記録を用いてもよい(例えば、Colvilleら、(2003)Am J Kidney Dis.42:E2-5を参照のこと)。
【0223】
被験体が、TTPを有するか、有する疑いがあるか、または発症するリスクがあるかを特定するための方法もまた、当該分野で公知である。例えば、Miyataらは、被験体から得られる生物学的サンプル中でADAMTS13活性を測定するための種々のアッセイを記載している(Curr Opin Hematol(2007)14(3):277~283)。適切なADAMTS13活性のアッセイ、およびヒト被験体におけるADAMTS13活性の表現型的に正常な範囲は、例えば、Tsai(2003)J.Am.Soc.Nephrol 14:1072~1081;Furlanら、(1998)New Engl J Med.339:1578~1584;Matsumotoら、(2004)Blood 103:1305~1310;およびMoriら、(2002)Transfusion 42:572~580に記載される。被験体から得られる生物学的サンプル中のADAMTS13(例えば、ADAMTS13に結合する自己抗体)のインヒビターの存在を検出するための方法は当該分野で公知である。例えば、患者由来の血清サンプルをTTPなしの被験体由来の血清サンプルと混合して、抗ADAMTS13抗体の存在を検出してもよい。別の実施例では、免疫グロブリンタンパク質を、患者血清から単離して、インビトロでADAMTS13活性アッセイに用いて、抗ADAMTS13抗体が存在するか否かを決定してもよい。例えば、Dongら、(2008)Am J
Hematol.83(10):815~817を参照のこと。いくつかの実施形態では、TTPを発症する危険性は、患者がADAMTS13遺伝子に1つ以上の変異を有するか否かを評価することによって決定され得る。ADAMTS13遺伝子における変異を検出するための適切な方法(例えば、核酸アレイまたはDNA配列決定)は、当該分野で公知であって、例えば、Levyら、(上記);Kokameら、(上記);Lichtら、(上記);およびNorisら、(上記)に記載されている。
【0224】
さらに、被験体が、aHUSを有するか、有する疑いがあるか、または発症するリスクがあるかを特定するための方法は、当該分野で公知である。例えば、ヒト被験体が、血小板減少症、微小血管症性溶血性貧血、または急性腎不全を有するか否かを決定するために実験室での試験を行ってもよい。血小板減少症は以下のうちの1つ以上として医学専門家によって診断され得る:(i)血小板数が150,000/mm未満である(例えば、60,000/mm未満);(ii)循環中の血小板破壊の増強を反映する、血小板生残時間の減少;ならびに(iii)血小板新生の二次活性化と一致する末梢血液スメアで観察される巨大血小板。微小血管症性溶血性貧血は、以下の1つ以上として医学の専門家によって診断され得る:(i)ヘモグロビン濃度が10mg/dL未満(例えば、6.5mg/dL未満);(ii)血清乳酸脱水素酵素(LDH)濃度の増大(>460U/L);(iii)高ビリルビン血症、網状赤血球増加症、循環中のヘモグロビンなし、および低いかまたは検出不能なハプトグロビン濃度;ならびに(iv)負のCoomb試験とともに末梢血液スメア中の有棘赤血球またはヘルメット細胞の典型的特質を有する断片化赤血球(分裂赤血球)の検出(例えば、Kaplanら、(1992)「Hemolytic Uremic Syndrome and Thrombotic Thrombocytopenic Purpura,」Informa Health Care(ISBN 0824786637)およびZipfel(2005)「Complement and Kidney Disease,」Springer(ISBN 3764371668)を参照のこと)。
【0225】
被験体はまた、補体の活性化または調節不全の指標としてC3およびC4の血液濃度を評価することによってaHUSを有することが特定され得る。さらに、前述の開示から明らかであるとおり、被験体は、CFI、CFB、CFH、またはMCP(上記)のようなaHUSに関連する遺伝子において1つ以上の変異を保有するとその被験体を特定することによって遺伝的aHUSを有すると特定され得る。遺伝子における変異を検出するための適切な方法としては、例えば、DNA配列決定および核酸アレイ技術が挙げられる。(例えば、Breslinら、(2006)Clin Am Soc Nephrol 1:88~99、およびGoicoechea de Jorgeら、(2007)Proc Natl Acad Sci USA 104:240~245を参照のこと)。
【0226】
TMAの特徴的な症状としては、例えば、熱、微小血管症性溶血性貧血(血液スメア中の分裂赤血球)、腎不全、血小板減少症、および神経学的徴候が挙げられる。
【0227】
被験体が、RAを有するか、有する疑いがあるか、または発症するリスクがあることを診断するための方法もまた、医学分野で公知である。例えば、医療従事者は、手、手首、足、および膝の小さい関節を試験して、対称分布において炎症を特定し得る。医療従事者はまた、多数の試験を行って、感染または痛風に起因する関節炎を含めて他の種類の関節炎症を排除し得る。さらに、関節リウマチは、罹患した患者の血液循環における異常な抗体に関連する。例えば、「リウマチ因子」と呼ばれる抗体は、約80%の患者で見出される。別の態様では、抗シトルリン抗体は関節リウマチを有する多くの患者に存在し、したがって、未解明の関節炎症を有する患者を評価する場合、関節リウマチの診断に有用である。例えば、van Venrooijら、(2008)Ann NY Acad Sci 1143:268~285およびHabibら、(2007)Immunol Invest 37(8):849~857を参照のこと。「抗核抗体」(ANA)と呼ばれる別の抗体もまた、関節リウマチを有する患者で高頻度で見出される。例えば、Benucciら、(2008)Clin Rheumatol 27(1):91~95;Julkunenら、(2005)Scan J Rheumatol 34(2):122~124;およびMiyawakiら、(2005)J Rheumatol 32(8):1488~1494を参照のこと。
【0228】
医療従事者はまた、被験体においてRAを診断するのに役立つ赤血球沈降速度を試験し得る。沈降速度は、関節の炎症のおおまかな測定として用いられ得、そして通常は疾患の激発の間には早く、寛解の間には遅くなる。身体に存在する炎症の程度を測定するために用いられ得る別の血液試験は、C反応性タンパク質である。
【0229】
さらにまた、関節のX線を用いて、被験体が関節リウマチを有することを診断してもよい。RAが進行する場合、X線は、関節での関節リウマチで典型的な骨浸食を示し得る。関節のX線はまた、疾患の進行および関節の損傷を経時的にモニタリングするのに有用であり得る。骨のスキャン、放射性試験手順は、炎症の関節を示し得る。
【0230】
被験体がHELLPを有するか、有する疑いがあるか、または発症するリスクがあることを特定するための方法は、医学分野で公知である。HELLP症候群の特徴的な症状としては、溶血、肝臓酵素の上昇、および低い血小板数が挙げられる。したがって、種々の試験を、被験体由来の血液で行って、溶血のレベル、任意の種々の肝臓酵素の濃度、および血中の血小板レベルを決定してもよい。例えば、分裂赤血球の存在および/または遊離のヘモグロビン、ビリルビンもしくは血清LDHレベルの上昇は、血管内溶血の指標である。慣用的な実験室の試験を用いて、血小板数、ならびに限定するものではないが、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)およびアラニントランスアミナーゼ(ALT)などの肝臓酵素の血液レベルを決定してもよい。被験体がHELLP症候群を有すると特定するために適切な方法はまた、例えば、Sibaiら、(1993)(上記);Martinら、(1990)(上記);Padden(1999)(上記);ならびにGleicherおよびButtino(1998)「Principles & Practice of Medical Therapy in Pregnancy」第3版,Appleton & Lange(ISBN 083857677X)に記載されている。
【0231】
MGを有する被験体を特定するために適切な方法は定性的であってもまたは定量的であってもよい。例えば、医療従事者は、理学的検査を用いて被験体の運動機能の状況を試験してもよい。他の定性的試験としては、例えば、氷嚢試験が挙げられ、ここでは氷嚢を被験体の眼に(眼のMGの場合)適用して、1つ以上の症状(例えば、眼瞼下垂)が冷たさによって改善されるか否かを決定する(例えば、Sethiら、(1987)Neurology 37(8):1383~1385を参照のこと)。他の試験としては、例えば、MG症状が後の休息を改善する傾向に基づく「睡眠試験」が挙げられる。いくつかの実施形態では、定量的試験または半定量的試験を医療従事者が使用して、被験体がMGを有するか、有する疑いがあるか、または発症するリスクがあるかを決定してもよい。例えば、医療従事者は、試験を行って、被験体から得られた血清サンプルにおけるMG関連自己抗体の存在または量を検出してもよい。MG関連の自己抗体としては、例えば、アセチルコリンレセプター(AChR)、筋特異的レセプターチロシンキナーゼ(MuSK)、および/または横紋(striational)タンパク質に結合してそれらの活性を調整する抗体が挙げられる。(例えば、Conti-Fineら、(2006)(上記)を参照のこと)。生物学的サンプル中のMG関連の抗体の存在または量を検出するために有用な適切なアッセイは、当該分野で公知であって、例えば、Hochら、(2001)Nat Med 7:365~368;Vincentら、(2004)Semin Neurol.24:125~133;McConvilleら、(2004)Ann.Neurol.55:580~584;Bonevaら、(2006)J Neuroimmunol.177:119~131;およびRomiら、(2005)Arch Neurol.62:442~446に記載されている。
【0232】
MGを診断するためのさらなる方法としては、例えば、電気診断試験(例えば、単一ファイバー筋電図検査)およびTensilon(またはエンドロフォニウム)試験が挙げられ、これは、アセチルコリンステラーゼインヒビターエンドロフォニウムを被験体に注射する工程、および1つ以上の症状の改善について被験体をモニタリングする工程を包含する。例えば、Pascuzzi(2003)Semin Neurol 23(1):83~88;Katirjiら、(2002)Neurol Clin 20:557~586;および「Guidelines in Electrodiagnostic Medicine.American Association of Electrodiagnostic Medicine,」Muscle Nerve 15:229~253を参照のこと。
【0233】
被験体は、赤血球上のI抗原に結合する自己抗体を凝集させる存在または量(力価)を検出するためのアッセイを用いてCADを有すると特定され得る。抗体は、モノクローナル抗体(例えば、モノクローナルIgMまたはIgA)であっても、またはポリクローナル抗体であってもよい。これらの抗体を検出するための適切な方法は、例えば、ChristensonおよびDacie(1957)Br J Haematol 3:153~164ならびにChristensonら、(1957)Br J Haematol
3:262~275に記載されている。被験体はまた、全血球計算値(CBC)、検尿、生化学的研究およびCoombs試験(血液中の溶血について試験するため)のうちの1つ以上を用いてCADを有すると診断され得る。例えば、生化学的研究を用いて、乳酸脱水素酵素レベルの上昇、非コンジュゲートビリルビンレベルの上昇、低ヘプトグロビンレベル、および/または遊離血漿ヘモグロビンの存在(その全てが急性溶血の指標であり得る)を検出してもよい。CADを検出するために用いられ得る他の試験としては、血清中の補体レベルを検出する工程が挙げられる。例えば、溶血の急性期の間の消費に起因して、測定された血漿補体レベル(例えば、C2、C3、およびC4)はCADで減少する。
【0234】
定型(または感染性)HUSは、aHUSとは異なり、下痢の前駆症状によって特定可能である場合が多く、実際にはしばしば観血的である(これは、志賀毒素産生微生物での感染から生じる)。被験体は、志賀毒素および/または志賀毒素もしくはLPSに対する血清抗体が個体の便で検出される場合、定型HUSを有すると特定できる。抗志賀毒素抗体またはLPSを試験するための適切な方法は当該分野で公知である。例えば、ヒトにおいて志賀毒素Stx1およびStx2またはLPSに結合する抗体を検出するための方法は、例えば、Ludwigら、(2001)J Clin Microbiol 39(6):2272~2279に記載される。
【0235】
この状態の症状は、医学分野の当業者に公知であり、これには、例えば、疼痛、発熱、蒼白、黄疸、皮膚じんま疹、ヘモグロビン尿症、ヘモグロビン血症、貧血、および腎疾患または急性腎不全が挙げられる。いくつかの実施形態では、この症状は、冷温に曝された後に生じ得る。
【0236】
いくつかの実施形態では、この方法は、被験体がPCHを有するか、有する疑いがあるか、または発症するリスクがあることを特定する工程を包含し得る。被験体を特定するための適切な方法は、当該分野で公知である。例えば、被験体は、被験体の血清におけるDonath-Landsteiner抗体の存在を検出するためのアッセイであるDonath-Landsteiner試験を用いてPCHを有すると診断され得る。この手順は、3つのサンプルをインキュベートする工程を包含する-(1)被験体の血清;(2)正常な血清;および(3)被験体の血清と正常血清との混合物-ここでP-抗原は0~4℃で赤血球を発現する。次に、サンプルを37℃に温めて、溶血について視覚的に検査する。Donath-Landsteiner抗体が存在する場合、溶血が、サンプル(1)および(3)で起こらねばならず、ただし(2)で起きてはならない。例えば、Funatoら、(2007)Eur J Haematol 79(5):462;Winら、(2005)Transfus Med.15(3):254;Sokolら、(1998)Immunohematology 14(3):109~12;Eder(2005)Immunohematology 21(2):56~62;およびDacieら、(1957)Br J Haematol 3:77~87を参照のこと。被験体はまた、1回以上の完全血球算定(complete blood cell count)(CBC)、検尿、生化学的研究、およびCoombs試験を用いてPCHを有すると診断され得る。例えば、生化学的研究を用いて、乳酸脱水素酵素レベルの上昇、非コンジュゲートビリルビンレベルの上昇、低ハプトグロビンレベル、および/または遊離の血漿ヘモグロビンの存在(その全てが急性の溶血の指標であり得る)を検出してもよい。PCHを検出するために用いられ得る他の試験としては、血清中の補体レベルを検出する工程が挙げられる。例えば、溶血の急性段階の間の消費に起因して、測定された血漿補体レベル(例えば、C2、C3、およびC4)はPCH中で減少される。また、例えば、Nordhagenら、(1984)Acta Paediatr Scand 73(2):258~262;Lindgrenら、(1985)Transfusion 25(2):142~4;Nordhagenら、(1991)Transfusion 31(2):190~1;およびGarratty(2001)Transfusion 41(8):1073~4も参照のこと。
【0237】
いくつかの実施形態では、組成物は、予防的にPCHを防ぐために、またはPCHの再燃もしくは再発を防ぐために被験体に投与され得る。例えば、以前に進行したMycoplasma感染があったか、またはPCH関連の新生物を有すると新しく診断された被験体は、PCHを防ぐか、その重篤度を弱めるか、またはその再発を防ぐために、本明細書に記載の組成物を投与され得る。
【0238】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるC5インヒビター(例えば、抗C5抗体)は、被験体に対して単独療法として投与され得る。あるいは、上記のとおり、抗体は、別の処置、例えば、DDD、TTP、aHUS、RA、HELLP、MG、CAD、CAPS、tHUS、ドゴー病、または本明細書に記載の任意の他の補体関連障害の別の処置との併用療法として被験体に投与され得る。例えば、併用療法は、被験体(例えば、ヒト患者)に対して、DDDを有するかまたはDDDを発症するリスクがある被験体に治療上の利点を提供する1つ以上の追加の剤(例えば、抗凝固剤、降圧剤、またはコルチコステロイド)を投与する工程を包含し得る。いくつかの実施形態では、併用療法は、被験体(例えば、ヒト患者)に対してC5インヒビター(例えば、抗C5抗体または抗C5a抗体)および免疫抑制剤、例えば、Remicade(登録商標)(RAの処置において使用するための)を投与する工程を包含し得る。いくつかの実施形態では、C5インヒビターおよび1つ以上の追加の活性剤は、同時に投与される。他の実施形態では、C5インヒビターが最初に投与され、そして1つ以上の追加の活性剤が二番目に投与される。いくつかの実施形態では、1つ以上の追加の活性剤が最初に投与され、そしてC5インヒビターが二番目に投与される。
【0239】
本明細書に記載されるC5インヒビター(例えば、抗C5抗体)は、以前に施されたかまたは現在施されている治療を置き換えるか、または増強できる。例えば、抗C5抗体での処置の際、1つ以上の追加の活性剤の投与は、中断または減少、例えば、低レベルで投与され得る。いくつかの実施形態では、以前の治療の投与が維持されてもよい。いくつかの実施形態では、以前の治療は、C5インヒビター(例えば、抗C5抗体または抗C5a抗体)のレベルが治療効果を達成するのに十分なレベルに達するまで維持される。この2つの治療は組み合わせて施されてもよい。
【0240】
いくつかの実施形態では、C5インヒビターは患者に対して長期に投与されてもよい。例えば、補体阻害性剤(例えば、C5インヒビターまたはC5aインヒビター)で長期に処置される患者は、2週以上の期間にわたって(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51もしくは52週;1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11もしくは12カ月;または1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5もしくは12年、またはその患者の余生の間)その剤を、患者の全身の補体活性を阻害するか実質的に阻害する患者血液中の剤の濃度を維持するのに十分な量および投与頻度で用いて処置され得る。患者で全身の補体阻害を維持するために、C5インヒビターを、その患者に長期に、例えば、1週1回、2週ごとに1回、1週2回、1日1回、1カ月に1回、または3週ごとに1回投与してもよい。本明細書に記載される任意の方法のいくつかの実施形態では、C5インヒビターは、患者に対して、その患者の血液中でC5分子1つあたり少なくとも:0.7(例えば、少なくとも0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10以上)という2価C5インヒビター(例えば、全抗体)分子(単数または複数);またはその患者の血液中でC5分子1つあたり1.5(例えば、少なくとも1.6、1.7、1.8、1.9、2、3、4、5、6、7、8、9、または10以上)の一価C5インヒビター(例えば、単鎖抗C5抗体またはその抗体のFabフラグメント)分子(単数または複数)という濃度を維持するのに有効な投与の量および頻度で患者に投与され得る。例えば、いくつかの実施形態では、一価抗C5抗体(例えば、単鎖抗体またはFab抗体フラグメント)は、血液中でC5分子1つあたり少なくとも1.5個(例えば、少なくとも1.6、1.7、1.8、1.9、2、3、4、5、6、または7個以上)の一価抗C5抗体という濃度を維持するのに有効な量および頻度で患者に投与され得る。本明細書に記載される任意の方法のいくつかの実施形態では、抗C5抗体は、患者の血液1ミリリットルあたり少なくとも40μg(例えば、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、75、80、85、90、95、100、110、または120μg以上)という抗体の濃度を維持するのに有効な量および頻度で患者に投与される。例示的な慢性の投薬ストラテジーは、本明細書に記載される(例えば、表1および2を参照のこと)。
【0241】
いくつかの実施形態では、C5インヒビター(またはC5aインヒビター)は、1つ以上の症状が緩和された後でさえ被験体に投与され得る。本明細書に定義されるような、補体関連障害における改善について被験体(例えば、ヒト患者)をモニタリングする工程は疾患のパラメーター、例えば、疾患の1つ以上の症状における改善における変化について被験体を評価する工程を意味する。このような症状としては、本明細書に記載される補体関連障害の任意の症状が挙げられる。いくつかの実施形態では、この評価は、投与後、少なくとも1時間、例えば、少なくとも2、4、6、8、12、24もしくは48時間、または少なくとも1日、2日、4日、10日、13日、20日以上、または少なくとも1週、2週、4週、10週、13週、20週以上行われる。被験体は、以下の期間の1つ以上で評価され得る:処置の開始の前;処置の間;または処置の1つ以上の要素が施された後。評価は、さらなる処置の必要性を評価する工程、例えば、投薬量、投与頻度または処置期間が変化されるべきか否かを評価する工程を包含し得る。選択される治療様式を追加または減少、例えば、本明細書に記載される任意の補体関連障害の任意の処置を追加または減少する必要性を評価する工程も包含し得る。
【0242】
いくつかの実施形態では、補体インヒビターは、それを必要とする患者に対して、血清溶血性活性を20%以下(例えば、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、またはさらに5%未満)に低下および維持するのに有効である量および頻度で長期に投与され得る。例えば、Hillら、(2005)Blood
106(7):2559を参照のこと。いくつかの実施形態では、補体インヒビターは、LDHの正常な範囲の少なくとも20%(例えば、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、またはさらに5%未満)内に血清乳酸脱水素酵素(LDH)レベルを維持するのに有効な量および頻度で患者に投与され得る。Hillら、(2005)(上記)を参照のこと。いくつかの実施形態では、補体インヒビターは、550IU/L未満(例えば、540、530、520、510、500、490、480、470、450、440、430、420、410、400IU/L未満、または300IU/L未満)の血清LDHレベルを維持するのに有効な量および頻度で患者に投与される。いくつかの実施形態では、C5インヒビター(例えば、抗C5抗体、例えば、エクリズマブ)またはC5aインヒビター(例えば、抗C5a抗体)の投与(例えば、慢性投与)は、患者の症状の1つ以上をその正常なレベルまたは値の40%(例えば、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、またはさらに1%)内まで緩和する。例えば、いくつかの実施形態では、抗C5抗体で処置(例えば、長期に処置)されるaHUS患者における血圧上昇は、患者の年齢、人種、身長、体重、性別および身体的健康のヒトの正常であるレベルの40%内のレベルまで低下され得る。
【0243】
いくつかの実施形態では、補体インヒビター(例えば、C5インヒビターまたはC5aインヒビター)は、患者が臨床的寛解した後でさえ被験体に投与される。補体関連障害の臨床的寛解を決定することは十分に医学分野の当業者の技術の範囲内である。例えば、aHUSの臨床的寛解の決定要素は、例えば、Nuernbergerら、(2009)N
Engl J Med 360(5):542~544に記載されている。CAPSの臨床的寛解は、例えば、Mannerら、(2008)Am J Med Sci 335(5):394~397に記載されている。
【0244】
この開示はまた、同種の器官または組織の移植の方法を提供する。この方法は、器官または組織を、それを必要とする患者に対して移植する工程を包含し、ここでは移植する工程の前後に、C5インヒビターは、患者における全身の補体活性を実質的に阻害するのに有効な量および頻度で患者に投与される。本明細書に記載されるとおり、C5インヒビター(例えば、この抗C5抗体)は、患者の血液におけるC5分子1個あたり少なくとも1個のC5インヒビター分子(例えば、少なくとも1個の抗C5抗体)という濃度を維持するための量および頻度で投与され得る。いくつかの実施形態では、一価抗C5抗体(例えば、単鎖抗体またはFab抗体フラグメント)は、血液中のC5分子1個あたり少なくとも1.5個(例えば、少なくとも1.6、1.7、1.8、1.9、2、3、4、5、6、または7個以上)の一価抗C5抗体という濃度を維持するのに有効な量および頻度で患者に投与され得る。いくつかの実施形態では、C5インヒビター(例えば、この抗C5抗体)は、患者の血液中で、少なくとも少なくとも40μg(例えば、41、42、43、44、45、46、47、48、48、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、75、80、85、90、95、100、110、または120μg以上)のインヒビター(例えば、抗C5抗体)という濃度を維持する量および頻度で患者に投与され得る。いくつかの実施形態では、少なくとも800mg(例えば、少なくとも810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000、1100、または1200mg以上)の抗C5抗体(例えば、エクリズマブ)が、患者に対して器官または組織を移植する前24時間内(例えば、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3時間内、または2時間内)に患者に投与される。いくつかの実施形態では、この方法はまた、移植の際に器官または組織における補体活性化を阻害する時間および条件下でドナーの器官または組織とC5インヒビター(例えば、抗C5抗体、例えば、エクリズマブ)とを接触させる工程(例えば、浸漬する工程)を移植の前に包含し得る。この器官は、例えば、皮膚、腎臓、心臓、肺、四肢(例えば、指またはつま先)、または肝臓であってもよい。いくつかの実施形態では、この方法は、C5インヒビター(例えば、抗C5抗体)を、移植のための器官または組織の除去の前にドナー患者に投与する工程を包含し得る。患者は、aHUSを有するか、発症するリスクがあるか、または有する疑いがある場合がある。いくつかの実施形態では、少なくとも700mg(例えば、少なくとも710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000、1100、または1200mg以上)の抗C5抗体が、患者に対して、移植後、24時間内(例えば、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、または2時間内)で投与される。いくつかの実施形態では、抗C5抗体は、移植後に患者に対して長期に投与される。例えば、抗C5抗体は、患者に対して少なくとも9週間(例えば、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51もしくは52週;1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11もしくは12カ月;または1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5もしくは12年、または患者の余生の間)、以下の投薬スケジュールのもとで長期に投与される:少なくとも700mg(例えば、少なくとも710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000、1100、または1200mg以上)の抗C5抗体をこの器官または組織移植後24時間内に;少なくとも700mg(例えば、少なくとも710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000、1100、または1200mg以上)の抗C5抗体を、最初の移植用量後4週間の間、週に1回;少なくとも700mg(例えば、少なくとも710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000、1100、または1200mg以上)の抗C5抗体を第5週の間に1回;ならびに少なくとも700mg(例えば、少なくとも710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000、1100、または1200mg以上)の抗C5抗体をその後投薬スケジュールの残りの期間、隔週に。好ましい実施形態では、この抗C5抗体は、最初の4回の用量がその抗体の少なくとも900mgであり;1200mgが第5週に投与され;そして1200mgがその後慢性の処置スケジュールの残りの間、隔週に患者に投与されるように投与される。追加の例示的な投薬スケジュールは、表1および2に示される。
【0245】
いくつかの実施形態では、この方法は、患者に対して免疫抑制剤を投与する工程を包含する。この方法における使用のための安定な免疫抑制剤としては、限定するものではないが、ATGまたはALG、OKT3、ダクリズマブ、バシリキシマブ、コルチコステロイド類、15-デオキシスペルグアリン、シクロスポリン類、タクロリムス類、アザチオプリン、メトトレキセート、ミコフェノレートモフェチル、6-メルカプトプリン、ブレジニン、ブレキナール、レフルナミド、シクロホスファミド、シロリムス類、抗CD4モノクローナル抗体、CTLA4-Ig、抗CD154モノクローナル抗体、抗LFAlモノクローナル抗体、抗LFA-3モノクローナル抗体、抗CD2モノクローナル抗体、および抗CD45抗体が挙げられる。
【0246】
本明細書に記載される方法を用いて移植され得る器官または組織のタイプとしては、例えば、心臓、腎臓、肺、膵臓、肝臓、血管組織、眼、角膜、レンズ、皮膚、骨髄、筋肉、結合組織、胃腸組織、神経組織、骨、幹細胞、膵島、軟骨、肝細胞および造血系の細胞が挙げられる。
【0247】
いくつかの実施形態では、移植方法は、レシピエント患者における移植片の増殖を少なくとも1カ月(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11もしくは12カ月、または1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくはさらに10年以上)生じる。
【0248】
エキソビボのアプローチ。補体関連障害(例えば、AP関連の障害またはCP関連の障害)を処置または予防するためのエキソビボストラテジーは、本明細書に記載される補体インヒビター(例えば、哺乳動物細胞におけるC5 mRNAに結合し、かつ不活性化を促進する抗C5抗体、抗C5a抗体、または核酸(例えば、siRNA))をコードするポリヌクレオチドを用いて、被験体から得られる1つ以上の細胞をトランスフェクトまたは形質導入する工程を包含し得る。例えば、細胞は、C5タンパク質に結合する抗体の重鎖および軽鎖をコードする単一のベクターでトランスフェクトされてもよく、または細胞は、抗体の重鎖をコードする第一のベクター、および軽鎖をコードする第二のベクターでトランスフェクトされてもよい。
【0249】
次いで、トランスフェクトされた細胞または形質導入された細胞を被験体に戻す。細胞は、限定するものではないが、造血細胞(例えば、骨髄細胞、マクロファージ、単球、樹状細胞、T細胞またはB細胞)、線維芽細胞、上皮細胞、内皮細胞、ケラチノサイト、または筋細胞を含む任意の広範な種々のタイプであり得る。このような細胞は、それらが被験体中で生存する限り、C5インヒビター(例えば、抗C5抗体、抗C5a抗体、または核酸(上記))の供給源(例えば、徐放性または定期的な供給源)として機能し得る。いくつかの実施形態では、ベクターおよび/または細胞は、C5インヒビターの誘導性発現または抑制性の発現のために構成され得る(例えば、Schockettら、(1996)Proc Natl Acad Sci USA 93:5173~5176、および米国特許第7,056,897号を参照のこと)。
【0250】
好ましくは、細胞は、被験体(自系)から得られるが、可能性としては、その被験体以外の同じ種の被験体(同種異系)から得てもよい。
【0251】
被験体から細胞を得て、その細胞を形質導入またはトランスフェクトするために適切な方法は、分子生物学の当該分野で公知である。例えば、形質導入工程は、エキソビボ遺伝子療法に用いられる任意の標準的な手段、例としては、リン酸カルシウム、リポフェクチン、エレクトロポレーション、ウイルス感染(上記参照)、および微粒子銃遺伝子導入によって達成され得る。(例えば、Sambrookら、(上記)およびAusubelら、(1992)「Current Protocols in Molecular Biology」Greene Publishing Associatesを参照のこと)。あるいは、リポソームまたはポリマーマイクロ粒子が用いられてもよい。首尾よく形質導入されている細胞は、例えば、コード配列の発現または薬物耐性遺伝子の発現のために選択され得る。
【0252】
キット
本開示はまた、製品またはキットを特徴とし、これは、表示のある容器;本明細書に記載される1つ以上の補体インヒビターを含む組成物を備える。例えば、このキットは、哺乳動物細胞におけるC5 mRNAに結合し、かつその不活性化を促進する1つ以上の抗C5a抗体、抗C5抗体、および核酸(例えば、siRNAまたはアンチセンス核酸)を備えてもよい。この表示は、補体関連障害(例えば、AP-またはCP関連の障害)、例えば、DDD,aHUS、TTP、HELLP、RA,AMD,tHUS、MG、CAD、PCH、CAPS、ドゴー病、または本明細書に記載の任意の他の補体経路関連障害を有するか、有する疑いがあるか、または発症するリスクがある被験体(例えば、ヒト)に対してこの組成物が投与されることを示す。このキットは必要に応じて、被験体に対する組成物の投与のための手段を備え得る。例えば、このキットは、1つ以上のシリンジを備えてもよい。
【0253】
いくつかの実施形態では、このキットはさらに、1つ以上の追加の活性剤、例えば、本明細書に記載の任意の活性剤を備えてもよい。例えば、このキットは、1つ以上のコルチコステロイド、降圧剤、免疫抑制剤および抗けいれん剤を備えてもよい。
【0254】
以下の実施例は、本発明を例示するものであって、限定するものではない。
【実施例0255】
(実施例1)
ヒト成人患者は、医療従事者によって遺伝型のaHUSを有することが特定される。4週間の間に1週に1回、患者はエクリズマブを含む組成物を900mgの用量で投与される。次いで、この患者は、5週の間に1回少なくとも1200mgのエクリズマブ、およびその後隔週に少なくとも1200mgのエクリズマブを投与される。患者および医療従事者は、最初の処置の間、aHUSの少なくとも2つの公知の症状の実質的な改善を観察する。エクリズマブは、aHUSが寛解することを医療従事者が確認した後でさえ患者に長期に投与される。
【0256】
(実施例2)
約25kgを秤量するヒト患者を、医療従事者によって、aHUSを有すると特定する。2週間の間1週に1回患者に、エクリズマブを含む組成物を少なくとも600mgの用量で投与する。次いで、患者に、第3週の間1回少なくとも600mgのエクリズマブ、そしてその後隔週に少なくとも600mgのエクリズマブを与える。患者および医療従事者は、最初の処置の間、aHUSの少なくとも2つの公知の症状の実質的な改善を観察する。エクリズマブは、aHUSが患者のaHUSの再発を妨げるために寛解状態であることを医療従事者が確認した後でさえ患者に長期に投与される。
【0257】
(実施例3)
約35kgを秤量するヒト患者を、医療従事者によって、CAPSを有すると特定する。2週間の間1週に1回患者に、エクリズマブを含む組成物を少なくとも600mgの用量で投与する。次いで、患者に、第3週の間1回少なくとも900mgのエクリズマブ、そしてその後隔週に少なくとも900mgのエクリズマブを与える。患者および医療従事者は、最初の処置の間、CAPSの少なくとも2つの公知の症状の実質的な改善を観察する。エクリズマブは、患者のCAPSの再発を妨げるために、またはその確率を実質的に低下するために、CAPSが寛解状態であることを医療従事者が確認した後でさえ患者に長期に投与される。
【0258】
(実施例4)
約7kgを秤量するヒト患者を、医療従事者によって、aHUSを有すると特定する。この患者は、aHUSの結果としてその腎臓にTMAを有する。1週間の間この患者に、エクリズマブを含む組成物を少なくとも300mgの用量で投与する。次いで、この患者に、第2週の間1回少なくとも300mgのエクリズマブ、そしてその後3週ごとに少なくとも300mgのエクリズマブを与える。患者および医療従事者は、最初の処置の間、aHUSの少なくとも2つの公知の症状の実質的な改善を観察する。医療従事者はまた、患者の腎臓におけるTMAが解消し、かつ患者が長期にエクリズマブを投与される間、新たにTMAが生じないことを観察する。エクリズマブは、患者のaHUSの再発を妨げるために、またはその確率を実質的に低下するために、aHUSが寛解状態であることを医療従事者が確認した後でさえ患者に長期に投与され、再発から生じ得るその腎臓に対するなんら追加の損傷を生じない。
【0259】
(実施例5)
腎臓移植の必要なヒト患者に、移植操作の前24時間内にエクリズマブを1200mgの用量で静脈内投与する。同種異系の腎臓を患者に移植する。腎臓移植後24時間内に、患者にさらに1200mgのエクリズマブを投与する。エキリズマブの最初の処置後投与の後4週間にわたって週に1回、患者に900mgのエキリズマブを与える。患者には、エクリズマブの最初の処置後投与の後、第5週に1200mgのエクリズマブを与え、次いでその後、隔週に1200mgのエクリズマブを含む投薬スケジュールで維持する。医療従事者は、患者の移植された腎臓の生存において実質的な改善を観察する。
【0260】
本開示は、その特定の実施形態を参照して記載してきたが、種々の変化がなされ得ること、および本開示の真の趣旨および範囲から逸脱することなく等価物が置き換えられ得ることが当業者には理解されるべきである。さらに、多くの改変が、本開示の目的、趣旨および範囲に対する、特定の状況、材料、物質の組成、プロセス、工程段階または工程に対して適合され得る。このような全ての改変が本開示の範囲内であるものとする。
(項目1) 補体関連障害を処置するための方法であって、補体インヒビターを、補体関連障害の処置を必要とする患者に対して、該患者における全身的な補体活性を実質的に阻害するのに有効な量および頻度で長期に投与する工程を包含し、ここで該患者は、補体関連障害を有するか、補体関連障害を有する疑いがあるか、または補体関連障害を発症するリスクがあり、ただし該補体関連障害は、発作性夜間血色素尿症ではない、方法。
(項目2) 同種の器官または組織を移植するための方法であって、器官または組織を、器官または組織の移植を必要とする患者に対して移植する工程を包含し、ここで該移植の前およびその後に、補体インヒビターが、該患者における全身性の補体活性を実質的に阻害するのに有効な量および頻度で該患者に投与される、方法。
(項目3) 前記器官または組織が、肝臓、腎臓、心臓、肺、皮膚、眼、骨髄、および脈管の組織からなる群より選択される、項目2に記載の方法。
(項目4) 前記患者が、補体関連障害を有するか、補体関連障害を有する疑いがあるか、または補体関連障害を発症するリスクがある、項目2または3に記載の方法。
(項目5) 前記補体インヒビターが、血清溶血性活性を20%以下まで低下し、かつ該血清溶血性活性を20%以下に維持するのに有効な量および頻度で患者に長期に投与される、項目1~4のいずれか1項に記載の方法。
(項目6) 前記補体インヒビターが、血清LDHレベルを500IU/L以下に維持するのに有効な量および頻度で患者に対して長期に投与される、項目1~5のいずれか1項に記載の方法。
(項目7) 前記補体インヒビターが、ポリペプチド、ポリペプチドアナログ、核酸、核酸アナログ、および低分子からなる群より選択される、項目1~6のいずれか1項に記載の方法。
(項目8) 前記補体インヒビターが、可溶性のCR1、LEX-CR1、MCP、DAF、CD59、H因子、コブラ毒因子、FUT-175、コンプレスタチン、およびK76 COOHからなる群より選択される、項目1~7のいずれか1項に記載の方法。
(項目9) 前記補体インヒビターがヒト補体成分タンパク質の発現を阻害する、項目1~7のいずれか1項に記載の方法。
(項目10) 前記補体インヒビターが、ヒト補体成分C5、C4、C3、またはC2の切断を阻害する、項目1~7のいずれか1項に記載の方法。
(項目11) 前記補体インヒビターが補体成分C5のフラグメントC5aおよびC5bへの切断を阻害する、項目10に記載の方法。
(項目12) 前記補体インヒビターがヒト補体成分タンパク質に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントである、項目10または11に記載の方法。
(項目13) 前記抗体またはその抗原結合フラグメントがヒト補体成分C5タンパク質に結合する、項目12に記載の方法。
(項目14) 前記抗体が前記補体成分C5タンパク質のα鎖に結合する、項目13に記載の方法。
(項目15) 前記抗体が、前記ヒト補体成分C5のα鎖に結合し、該抗体が、(i)ヒト体液における補体活性化を阻害し、(ii)精製されたヒト補体成分C5の、ヒト補体成分C3bまたはヒト補体成分C4bのいずれかへの結合を阻害し、(iii)該ヒト補体活性化産物がないC5aに結合しない、項目13または14に記載の方法。
(項目16) 前記抗体が、配列番号1~26のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有する前記ヒト補体成分C5タンパク質に結合する、項目13に記載の方法。
(項目17) 前記抗体が、配列番号5のアミノ酸位置8からアミノ酸位置12までに相当するアミノ酸配列を含む、単離されたオリゴペプチドに結合する、項目13に記載の方法。
(項目18) 前記ポリペプチドが、補体成分C5フラグメントC5bに結合する抗体を含む、項目12または13に記載の方法。
(項目19) 前記抗体がモノクローナル抗体である、項目12~18のいずれか1項に記載の方法。
(項目20) 前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、ヒト化抗体、組み換え抗体、ダイアボディ、キメラ化抗体またはキメラ抗体、脱免疫化ヒト抗体、完全ヒト抗体、単鎖抗体、Fvフラグメント、Fdフラグメント、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、およびF(ab’)フラグメントからなる群より選択される、項目12~19のいずれか1項に記載の方法。
(項目21) 前記抗体がエクリズマブである、項目12または13に記載の方法。
(項目22) 前記抗体が、前記患者の血液中でC5分子1個ごとに少なくとも0.7個の抗C5抗体分子という濃度を維持するための量および頻度で該患者に投与される、項目12、13または21のいずれか1項に記載の方法。
(項目23) 前記抗体が、前記患者の血液1ミリリットルあたり少なくとも50μgという該抗体を維持するための量および頻度で該患者に投与される、項目12、13または21のいずれか1項に記載の方法。
(項目24) 前記抗体が、前記患者の血液1ミリリットルあたり少なくとも100μgという該抗体の濃度を維持するために有効な量および頻度で該患者に投与される、項目23に記載の方法。
(項目25) 前記患者の体重が40kg以上である、項目1~24のいずれか1項に記載の方法。
(項目26) 前記抗体が、以下:
少なくとも800mgの該抗体を、1週あたり1回で4週間連続;
少なくとも800mgの該抗体を、第5週の間に1回;および
少なくとも800mgの該抗体を、その後隔週に;
というスケジュールのもとで、少なくとも7週間、前記患者に投与される、項目12、13または21~25のいずれか1項に記載の方法。
(項目27) 前記抗体が、以下:
少なくとも900mgの該抗体を、1週あたり1回で4週間連続;
少なくとも1200mgの該抗体を、第5週の間に1回;および
少なくとも1200mgの該抗体を、その後隔週に;
というスケジュールのもとで、少なくとも7週間、前記患者に投与される、項目26に記載の方法。
(項目28) 前記患者の体重が40kg未満だが、30kg以上である、項目1~24のいずれか1項に記載の方法。
(項目29) 前記抗体が、以下:
少なくとも500mgの該抗体を、1週あたり1回で2週間連続;
少なくとも700mgの該抗体を、第3週の間に1回;および
少なくとも700mgの該抗体を、その後隔週に;
というスケジュールのもとで、少なくとも5週間、前記患者に長期に投与される、項目28に記載の方法。
(項目30) 前記抗体が、以下:
少なくとも600mgの該抗体を、1週あたり1回で2週間連続;
少なくとも900mgの該抗体を、第3週の間に1回;および
少なくとも900mgの該抗体を、その後隔週に;
というスケジュールのもとで、少なくとも5週間、前記患者に長期に投与される、項目29に記載の方法。
(項目31) 前記患者の体重が30kg未満だが、20kg以上である、項目1~24のいずれか1項に記載の方法。
(項目32) 前記抗体が、以下:
少なくとも500mgの該抗体を、1週あたり1回で2週間連続;
少なくとも500mgの該抗体を、第3週の間に1回;および
少なくとも500mgの該抗体を、その後隔週に;
というスケジュールのもとで、少なくとも5週間、前記患者に長期に投与される、項目31に記載の方法。
(項目33) 前記抗体が、以下:
少なくとも600mgの該抗体を、1週あたり1回で2週間連続;
少なくとも600mgの該抗体を、第3週の間に1回;および
少なくとも600mgの該抗体を、その後隔週に;
というスケジュールのもとで、少なくとも5週間、前記患者に長期に投与される、項目32に記載の方法。
(項目34) 前記患者の体重が20kg未満だが、10kg以上である、項目1~24のいずれか1項に記載の方法。
(項目35) 前記抗体が、以下:
少なくとも500mgの該抗体を、1週あたり1回で1週間;
少なくとも200mgの該抗体を、第2週の間に1回;および
少なくとも200mgの該抗体を、その後隔週に;
というスケジュールのもとで、少なくとも4週間、前記患者に長期に投与される、項目34に記載の方法。
(項目36) 前記抗体が、以下:
少なくとも600mgの該抗体を、1週あたり1回で1週間;
少なくとも300mgの該抗体を、第2週の間に1回;および
少なくとも300mgの該抗体を、その後隔週に;
というスケジュールのもとで、少なくとも4週間、前記患者に長期に投与される、項目36に記載の方法。
(項目37) 前記患者の体重が10kg未満だが、5kg以上である、項目1~24のいずれか1項に記載の方法。
(項目38) 前記抗体が、以下:
少なくとも200mgの該抗体を、1週あたり1回で1週間;
少なくとも200mgの該抗体を、第2週の間に1回;および
少なくとも200mgの該抗体を、その後3週間ごとに1回;
というスケジュールのもとで、少なくとも5週間、前記患者に長期に投与される、項目37に記載の方法。
(項目39) 前記抗体が、以下:
少なくとも300mgの該抗体を、1週あたり1回で1週間;
少なくとも300mgの該抗体を、第2週の間に1回;および
少なくとも300mgの該抗体を、その後3週間ごと;
というスケジュールのもとで、少なくとも5週間、前記患者に長期に投与される、項目38に記載の方法。
(項目40) 前記補体インヒビターが、前記移植の前24時間内に前記患者に投与される、項目2~24のいずれか1項に記載の方法。
(項目41) 前記補体インヒビターが、移植の前12時間内に前記患者に投与される、項目2~24または40のいずれか1項に記載の方法。
(項目42) 前記補体インヒビターが、前記器官または組織の前記移植後24時間内に前記患者に投与される、項目2~24、40または41のいずれか1項に記載の方法。
(項目43) 前記補体インヒビターが、前記器官または組織の前記移植後12時間内に前記患者に投与される、項目2~24、40、41または42のいずれか1項に記載の方法。
(項目44) 前記補体インヒビターが、補体成分C5に結合する全抗体であり、前記移植の前、該抗体の少なくとも900mgが前記患者に投与される、項目2~4、または40~43に記載の方法。
(項目45) 前記移植の前、前記抗体の少なくとも1,200mgが前記患者に投与される、項目44に記載の方法。
(項目46) 前記補体インヒビターが、補体成分C5に結合する全抗体であり、前記移植の後、該抗体の少なくとも800mgが前記患者に投与される、項目2~4、または40~45のいずれか1項に記載の方法。
(項目47) 前記移植の後、前記抗体の少なくとも900mgが前記患者に投与される、項目46に記載の方法。
(項目48) 前記移植の後、前記抗C5抗体が以下:
少なくとも800mgの該抗C5抗体を、前記器官または組織移植後24時間内;
少なくとも800mgの該抗C5抗体を、1週あたり1回で4週間;
少なくとも800mgの該抗C5抗体を、第5週の間に1回;および
少なくとも800mgの該抗C5抗体を、その後隔週に;
というスケジュールのもとで、少なくとも7週間、前記患者に投与される、項目46または47に記載の方法。
(項目49) 前記移植の後、前記抗C5抗体が以下:
少なくとも1200mgの該抗C5抗体を前記器官または組織移植後24時間内;
少なくとも900mgの該抗C5抗体を、1週あたり1回で4週間;
少なくとも1200mgの該抗C5抗体を、第5週の間に1回;および
少なくとも1200mgの該抗C5抗体を、その後隔週に;
というスケジュールのもとで、少なくとも7週間、前記患者に投与される、項目46、47または48のいずれか1項に記載の方法。
(項目50) 前記抗体が前記スケジュールのもとで少なくとも21週間前記患者に投与される、項目26、27、29、30、32、33、35、36、38、39、48、または49のいずれか1項に記載の方法。
(項目51) 前記抗体が、前記スケジュールのもとで少なくとも1年間前記患者に投与される、項目26、27、29、30、32、33、35、36、38、39、48、49、または50のいずれか1項に記載の方法。
(項目52) 前記インヒビターが、前記患者の余生の間、該患者に投与される、項目26、27、29、30、32、33、35、36、38、39、または48~51のいずれか1項に記載の方法。
(項目53) 前記インヒビターが、1週間あたり少なくとも1回、前記患者に長期に投与される、項目1~25、28、31、34、37、または40~47のいずれか1項に記載の方法。
(項目54) 前記インヒビターが、2週間ごとに少なくとも1回、前記患者に長期に投与される、項目1~25、28、31、34、37、または40~47のいずれか1項に記載の方法。
(項目55) 前記インヒビターが、前記患者の余生の間、該患者に長期に投与される、項目1~54のいずれか1項に記載の方法。
(項目56) 血栓性微小血管症(TMA)を有するか、TMAを有する疑いがあるか、またはTMAを発症するリスクがある患者においてTMAを処置するための方法であって、ヒト補体のインヒビターを、TMAの処置を必要とする患者に対して投与し、それによって該患者におけるTMAを処置する工程を包含する、方法。
(項目57) 血栓性微小血管症(TMA)を有するか、TMAを有する疑いがあるか、またはTMAを発症するリスクがある患者において、TMAの発症または重篤度を低減するための方法であって、ヒト補体のインヒビターを、TMAの発症または重篤度の低減を必要とする患者に対して投与し、それによって該患者における該TMAの発症または重篤度を低減する工程を包含する、方法。
(項目58) 前記患者が補体関連障害を有する、項目56または57に記載の方法。
(項目59) 前記インヒビターの投与が前記患者の脳において前記TMAの発症または重篤度を低減する、項目56~58のいずれか1項に記載の方法。
(項目60) 前記インヒビターの投与が、腎臓における前記TMAの発症または重篤度を低減する、項目56~59のいずれか1項に記載の方法。
(項目61) 前記患者への前記インヒビターの投与が、該患者における既存のTMAの解決を促進する、項目56~60のいずれか1項に記載の方法。
(項目62) 補体関連障害に関連する1つ以上の症状を緩和するための方法であって、該方法は補体関連障害に関連する1つ以上の症状を緩和するのに有効な量で、ヒト補体のインヒビターを、補体関連障害に関連する1つ以上の症状の緩和を必要とする患者に対して投与する工程を包含し、ここで該症状が該インヒビターの投与後14日内で緩和され、ただし該補体関連障害は、発作性夜間血色素尿症ではない、方法。
(項目63) 前記1つ以上の症状が、前記インヒビターの投与後10日内に緩和される、項目62に記載の方法。
(項目64) 前記1つ以上の症状が、前記インヒビターの投与後5日内に緩和される、項目62または63に記載の方法。
(項目65) 前記1つ以上の症状が、前記インヒビターの投与後2日内に緩和される、項目62~64のいずれか1項に記載の方法。
(項目66) 前記1つ以上の症状が、前記インヒビターの投与後1日内に緩和される、項目62~65のいずれか1項に記載の方法。
(項目67) 前記1つ以上の症状が、前記インヒビターの投与後12時間内に緩和される、項目62~66のいずれか1項に記載の方法。
(項目68) 前記1つ以上の症状が、タンパク質尿、LDHレベルの上昇、高血圧、血小板数減少、および尿排出量減少からなる群より選択される、項目62~67のいずれか1項に記載の方法。
(項目69) 前記1つ以上の症状の少なくとも1つが正常の40%内まで緩和されている、項目62~68のいずれか1項に記載の方法。
(項目70) 前記1つ以上の症状の少なくとも1つが正常の20%内まで緩和されている、項目62~69のいずれか1項に記載の方法。
(項目71) 前記1つ以上の症状の少なくとも1つが、前記患者において完全に緩和される、項目62~70のいずれか1項に記載の方法。
(項目72) 補体関連障害を処置するための方法であって、補体関連障害に罹患している患者に対して、該補体関連障害を処置するのに有効な量でヒト補体のインヒビターを投与する工程を包含し、ここで該インヒビターは、該障害の1つ以上の症状が緩和された後でさえ該患者に投与され、ただし該補体関連障害は、発作性夜間血色素尿症ではない、方法。
(項目73) 前記インヒビターが、1つ以上の症状が完全寛解された後でさえ前記患者に投与される、項目72に記載の方法。
(項目74) 前記インヒビターが、前記患者が臨床寛解に入った後でさえ、該患者に投与される、項目72または73に記載の方法。
(項目75) 前記インヒビターが、前記障害の1つ以上の症状が緩和された後でさえ、少なくとも2カ月間、前記患者に投与される、項目62~74のいずれか1項に記載の方法。
(項目76) 前記インヒビターが、前記障害の1つ以上の症状が緩和された後、少なくとも6カ月間、前記患者に投与される、項目62~75のいずれか1項に記載の方法。
(項目77) 前記インヒビターが、前記障害の1つ以上の症状が緩和された後、少なくとも1年間、前記患者に投与される、項目62~76のいずれか1項に記載の方法。
(項目78) 前記インヒビターが、前記障害の1つ以上の症状が緩和された後、少なくとも2年間、前記患者に投与される、項目62~77のいずれか1項に記載の方法。
(項目79) 前記インヒビターが、前記患者に長期に投与される、項目62~78のいずれか1項に記載の方法。
(項目80) 前記補体関連障害が、膜性増殖性糸球体腎炎、ドゴー病、非定型溶血性尿毒症症侯群、抗体媒介性拒絶、HELLP症候群、および劇症型抗リン脂質抗体症候群からなる群より選択される、項目1または4~79のいずれか1項に記載の方法。
(項目81) aHUSを処置するための方法であって、補体成分C5aのインヒビターを、aHUSの処置を必要とする患者に対して、該患者のaHUSを処置するのに有効な量で投与する工程を包含する、方法。
(項目82) 前記インヒビターが:(i)C5aに結合する抗体;または(ii)該抗体の抗原結合フラグメントである、項目81に記載の方法。
(項目83) 前記抗体が、配列番号12に示されるアミノ酸配列を含むヒトC5aに結合する、項目81または82に記載の方法。
(項目84) 前記抗体がモノクローナル抗体である、項目81~83のいずれか1項に記載の方法。
(項目85) 前記抗体が単鎖抗体である、項目81または84のいずれか1項に記載の方法。
(項目86) 前記抗体がヒト化抗体である、項目81または85のいずれか1項に記載の方法。
(項目87) 前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、組み換え抗体、ダイアボディ、キメラ化抗体またはキメラ抗体、脱免疫化ヒト抗体、完全ヒト抗体、単鎖抗体、Fvフラグメント、Fdフラグメント、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、およびF(ab’)フラグメントからなる群より選択される、項目81~86のいずれか1項に記載の方法。
(項目88) 前記インヒビターが、前記患者における高血圧および血管収縮の一方または両方を緩和する、項目81~87のいずれか1項に記載の方法。
(項目89) 前記高血圧が、前記インヒビターの投与後7日内に緩和される、項目88に記載の方法。
(項目90) 前記インヒビターが前記患者に長期に投与される、項目81~89のいずれか1項に記載の方法。
(項目91) 製品であって:
表示を備えた容器;と
ヒト補体成分C5のインヒビターを含む組成物とを備え、該表示は、補体関連障害を有するか、補体関連障害を有する疑いがあるか、または補体関連障害を発症するリスクがあるヒトに対して、該組成物が投与されることを示しており、ただし該補体関連障害が発作性夜間血色素尿症ではない、製品。
(項目92) 前記インヒビターが、ヒト補体成分C5タンパク質に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントである、項目91に記載の製品。
(項目93) 1つ以上の追加の活性剤をさらに含む、項目91または92に記載の製品。
【配列表】
2024107240000001.app
【外国語明細書】