IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 井関農機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-作業車両 図1
  • 特開-作業車両 図2
  • 特開-作業車両 図3
  • 特開-作業車両 図4
  • 特開-作業車両 図5A
  • 特開-作業車両 図5B
  • 特開-作業車両 図5C
  • 特開-作業車両 図5D
  • 特開-作業車両 図6A
  • 特開-作業車両 図6B
  • 特開-作業車両 図6C
  • 特開-作業車両 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107241
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20240801BHJP
【FI】
A01B69/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024093244
(22)【出願日】2024-06-07
(62)【分割の表示】P 2020209657の分割
【原出願日】2020-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】楫野 豊
(72)【発明者】
【氏名】藤家 久定
(72)【発明者】
【氏名】山下 智志
(72)【発明者】
【氏名】田中 誠治
(57)【要約】
【課題】遠隔操作を行う際に誤操作の発生を抑制することができる作業車両を提供する。
【解決手段】前輪を備え、前記前輪を操舵するステアリング装置を有し、圃場内を走行可能な走行車体と、前記ステアリング装置を制御する制御装置と、前記走行車体を遠隔操作するために、前記制御装置へ前記走行車体に対する走行信号を出力する遠隔操作装置とを備え、前記遠隔操作装置は、少なくとも4つの押しボタンを有し、4つの前記押しボタンのうち2つの前記押しボタンが同時に押下されることで前記走行車体の遠隔操作が可能であり、前記制御装置は、前記遠隔操作装置において同時に押下された2つの前記押しボタンの組み合わせに応じて、前記ステアリング装置の左右操舵を実行し、4つの前記押しボタンを単独で押下しても、前記ステアリング装置の左右操舵が実行されない。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪を備え、
前記前輪を操舵するステアリング装置を有し、圃場内を走行可能な走行車体と、
前記ステアリング装置を制御する制御装置と、
前記走行車体を遠隔操作するために、前記制御装置へ前記走行車体に対する走行信号を出力する遠隔操作装置と
を備え、
前記遠隔操作装置は、
少なくとも4つの押しボタンを有し、4つの前記押しボタンのうち2つの前記押しボタンが同時に押下されることで前記走行車体の遠隔操作が可能であり、
前記制御装置は、
前記遠隔操作装置において同時に押下された2つの前記押しボタンの組み合わせに応じて、前記ステアリング装置の左右操舵を実行し、
4つの前記押しボタンを単独で押下しても、前記ステアリング装置の左右操舵が実行されないこと
を特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記走行車体は、走行装置を有し、
前記制御装置は、
前記遠隔操作装置において同時に押下された2つの前記押しボタンの組み合わせに応じて、前記走行装置による前記走行車体の前後進を実行し、
4つの前記押しボタンを単独で押下しても、前記走行装置による前記走行車体の前後進が実行されないこと
を特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記制御装置は、
4つの前記押しボタンのうち前記走行車体を一時停止させる第3操作ボタンと、前記走行車体のエンジンを停止する第4操作ボタンを同時に押下されると前記走行装置による前記走行車体の後進を実行すること
を特徴とする請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記遠隔操作装置の操作面には、機体の前進、後進、左旋回および右旋回のそれぞれを示す表記が前記押しボタン以外の位置に施されていること
を特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場で作業を行う作業車両には、走行車体の位置を測定しつつ自律走行するものがある。このような作業車両においては、圃場の端に沿って有人走行しながら走行軌跡を記録することで圃場形状を特定し、特定した圃場形状に沿って枕地領域を設定し、設定した枕地領域の内側に無人走行するための経路(作業経路)を設定し、設定した作業経路の終端を作業終了位置として設定する技術が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-133701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記したような従来技術では、作業終了位置が圃場の端から枕地領域分内側にあるため、作業車両が作業終了位置に到達した後、すなわち、作業車両が無人走行を終了した後、この作業車両に作業者が再度乗り込むためには、圃場内に枕地領域分侵入して停車中の作業車両まで圃場内を歩かなければならず不便であるため、無人の作業車両を遠隔操作できるようにすれば、作業者が圃場内にほとんど入ることなく乗り込むことができるが、遠隔操作は操作が容易であるがゆえに誤操作が発生する可能性があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、遠隔操作を行う際に誤操作の発生を抑制することができる作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、実施形態に係る作業車両は、前輪を備え、前記前輪を操舵するステアリング装置を有し、圃場内を走行可能な走行車体と、前記ステアリング装置を制御する制御装置と、前記走行車体を遠隔操作するために、前記制御装置へ前記走行車体に対する走行信号を出力する遠隔操作装置とを備え、前記遠隔操作装置は、少なくとも4つの押しボタンを有し、4つの前記押しボタンのうち2つの前記押しボタンが同時に押下されることで前記走行車体の遠隔操作が可能であり、前記制御装置は、前記遠隔操作装置において同時に押下された2つの前記押しボタンの組み合わせに応じて、前記ステアリング装置の左右操舵を実行し、4つの前記押しボタンを単独で押下しても、前記ステアリング装置の左右操舵が実行されないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
実施形態に係る作業車両によれば、遠隔操作を行う際に誤操作の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る作業車両を示す概略左側面図である。
図2図2は、実施形態に係る作業車両の制御系の一例を示すブロック図である。
図3図3は、圃場内における自律走行の説明図である。
図4図4は、遠隔操作装置を示す正面図である。
図5A図5Aは、機体の前進操作時に押下される押しボタンの説明図である。
図5B図5Bは、機体の後進操作時に押下される押しボタンの説明図である。
図5C図5Cは、機体の左旋回操作時に押下される押しボタンの説明図である。
図5D図5Dは、機体の右旋回操作時に押下される押しボタンの説明図である。
図6A図6Aは、変形例(その1)に係る遠隔操作装置を示す正面図である。
図6B図6Bは、変形例(その2)に係る遠隔操作装置を示す正面図である。
図6C図6Cは、変形例(その3)に係る遠隔操作装置を示す正面図である。
図7図7は、変形例(その4)に係る遠隔操作装置を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本願の開示する作業車両の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
<作業車両(トラクタ)の全体構成>
まず、図1を参照して実施形態に係る作業車両1の全体構成について説明する。図1は、実施形態に係る作業車両1を示す概略左側面図である。なお、以下では、作業車両1としてトラクタを例に説明する。また、作業車両であるトラクタ1は、自走しながら圃場で農作業を行う農用トラクタである。
【0010】
また、作業車両であるトラクタ1は、操縦者(作業者ともいう)が搭乗して圃場内を走行しながら所定の作業を実行する他、制御装置100を中心とする制御系による各部の制御により、圃場内を自律走行しながら所定の作業を実行する。
【0011】
なお、図1を用いた説明において、前後方向とは、トラクタ1の直進時における進行方向であり、進行方向前方側を「前」、後方側を「後」と規定する。トラクタ1の進行方向とは、トラクタ1の直進時において後述する操縦席8からステアリングホイール9へと向かう方向である。
【0012】
また、左右方向とは、前後方向に対して水平に直交する方向である。以下では、「前」側へ向けて左右を規定する。すなわち、操縦者が操縦席8に着席して前方を向いた状態で、左手側が「左」、右手側が「右」である。上下方向とは、鉛直方向である。前後方向、左右方向および上下方向は、互いに3次元で直交する。さらに、トラクタ1あるいは走行車体2を指して「機体」という場合がある。
【0013】
図1に示すように、トラクタ1は、走行車体2と、作業機6とを備える。走行車体2は、圃場内を走行可能であり、走行装置として、前輪3と、後輪4とを備える。前輪3は、左右一対で設けられた操舵用の車輪である。後輪4は、左右一対で設けられた駆動用の車輪(駆動輪)である。なお、走行車体2は、走行装置として、車輪(前輪3および後輪4)に代えてクローラ装置を備えてもよい。この場合、走行クローラが駆動輪である。
【0014】
駆動輪である後輪4には、ボンネット5内に収容された駆動源であるエンジンEで発生した回転動力が、走行装置である動力伝達装置(ミッションケース)12内に設けられた変速装置(トランスミッション)121(図2参照)で適宜減速されて伝達される。後輪4は、エンジンEから伝達された回転動力によって駆動される。変速装置121は、エンジンEから伝達される回転動力を複数(たとえば、1速~8速)の変速段のうちいずれかの変速段に切り替える。
【0015】
走行車体2は、エンジンEで発生し、かつ、変速装置121で減速された動力を、4WDクラッチを介して前輪3にも伝達可能に構成される。この場合、4WDクラッチが動力を伝達すると、エンジンEから伝達される動力によって前輪3および後輪4の四輪が駆動される。また、4WDクラッチが動力の伝達を遮断すると、エンジンEから伝達される動力によって後輪4のみの二輪が駆動される。このように、走行車体2は、二輪駆動(2WD)と四輪駆動(4WD)とを切り替え可能に構成される。
【0016】
走行車体2の後部には、圃場内で作業を行う作業機6が連結され、作業機6を駆動する動力を伝達するPTO(Power take-off)軸71を有するPTO装置7が設けられる。走行車体2の中央部には、操縦者がトラクタ1を操縦する場合に座る操縦席8が設けられる。
【0017】
操縦席8の前方には、ステアリング装置として、前輪3の操舵用のハンドルであるステアリングホイール9が設けられる。なお、ステアリングホイール9や、ステアリングホイールを駆動する駆動部などは、ステアリング装置を構成する。ステアリングホイール9は、ハンドルポスト10の上端部に設けられる。ハンドルポスト10の下方、操縦席8に操縦者が座った場合における操縦者の足元付近には、各種操作ペダル11(アクセルペダルやブレーキペダル、クラッチペダルなど)が設けられる。
【0018】
また、走行車体2の後部には、作業機6を昇降させる昇降装置13が設けられる。昇降装置13は、作業機6を上昇させることで、作業機6を非作業位置に移動させる。また、昇降装置13は、作業機6を下降させることで、作業機6を対地作業位置に移動させる。昇降装置13は、油圧式の昇降シリンダ131と、リフトアーム132と、リフトロッド133と、ロアリンク134と、トップリンク135を備える。
【0019】
リフトアーム132は、昇降シリンダ131に作動油が供給されると、軸AXまわりに作業機6を上昇させるように回動し、昇降シリンダ131から作動油が排出されると、軸AXまわりに作業機6を下降させるように回動する。なお、リフトアーム132の基部(軸AX付近)には、リフトアーム132の回動角度を検出するリフトアームセンサが設けられる。作業機6の高さは、リフトアームセンサの検出値に基づいて算出される。
【0020】
また、リフトアーム132は、リフトロッド133を介してロアリンク134に連結される。このように、昇降装置13は、ロアリンク134とトップリンク135とで、走行車体2に対して作業機6を昇降可能に連結する。
【0021】
なお、図1においては、作業機6がロータリ耕耘機の場合を例示している。ロータリ耕耘機は、PTO装置7のPTO軸71から伝達された動力によって耕耘爪61が回転することで、圃場面(土壌)を耕起する。
【0022】
トラクタ1は、制御装置100(図2参照)を備える。制御装置100は、エンジンEを制御するとともに、走行車体2の走行速度を制御する。また、制御装置100は、作業機6を制御する。
【0023】
また、トラクタ1は、測位装置150を備える。測位装置150は、走行車体2の上部に設けられ、走行車体2の位置を測定する。測位装置150は、たとえば、GNSS(Global Navigation Satellite System)であり、上空を周回している航法衛星Sからの電波を受信して測位および計時することができる。
【0024】
また、トラクタ1は、作業者による情報処理端末(タブレット端末などの携帯端末)160の操作で特定の圃場における各種作業の設定を行うことができる。情報処理端末160は、インターネットなどの通信ネットワークに接続可能であり、通信ネットワークを介して作業管理装置と互いに接続可能である。この場合、作業管理装置は、いわゆるクラウドコンピューティングが可能なシステムである。情報処理端末160と作業管理装置とは、たとえば、無線LAN(Local Area Network)で接続される。
【0025】
情報処理端末160は、たとえば、ハードディスク、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などで構成される記憶部と、タッチパネルにより構成される表示部および操作部とを備える。なお、操作部として、各種キーやボタンなどが別に設けられてもよい。作業管理装置は、CPU(Central Processing Unit)などを有する処理装置やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)などの記憶装置、さらには、入出力装置が設けられたコンピュータなどである。
【0026】
また、トラクタ1は、遠隔操作装置(以下、リモコンという)170を備える。リモコン170は、作業者が走行車体2を遠隔操作する場合に使用される。リモコン170は、走行車体2を遠隔操作するために、制御装置100へ走行車体2に対して、前進、後進、左旋回、右旋回、停止などの走行に関する走行信号を出力する。
【0027】
なお、制御装置100は、リモコン170に対して常時通信可能に構成される。制御装置100は、たとえば、リモコン170との通信途絶が確定した場合にはトラクタ1を停止させるように各部を制御することで、リモコン170による遠隔操作が不能な状態におけるトラクタ1(走行車体2)の自律走行を停止させることができる。
<作業車両(トラクタ)の制御系>
次に、図2を参照して制御装置100を中心とする作業車両(トラクタ)1の制御系について説明する。図2は、実施形態に係る作業車両(トラクタ)1の制御系の一例を示すブロック図である。図2に示すように、制御装置100は、エンジンECU(Electronic
Control Unit)101と、走行系ECU102と、作業機昇降系ECU103とを備える。
【0028】
エンジンECU101は、エンジンEの回転数を制御する。走行系ECU102は、駆動輪(後輪4)の回転を制御することで、走行車体2(図1参照)の走行速度を制御する。作業機昇降系ECU103は、昇降装置13を制御して作業機6を昇降駆動する。
【0029】
制御装置100は、電子制御によって各部を制御することが可能であり、CPU(Central Processing Unit)などを有する処理部をはじめ、各種プログラムや圃場ごとに予め設定された走行車体2の後述する予定走行経路Rなどの必要なデータ類が記憶される記憶部などを備える。
【0030】
図2に示すように、制御装置100には、測位装置(GNSS)150、エンジン回転センサ110、車速センサ111、変速センサ112、切れ角センサ309などの各種センサ類が接続される。エンジン回転センサ110は、エンジンEの回転数を検出する。車速センサ111は、走行車体2(図1参照)の走行速度(車速)を検出する。変速センサ112は、変速装置121において複数の変速段のうちいずれの変速段であるかを検出する。切れ角センサ309は、上記したように、前輪3(図1参照)の切れ角を検出する。
【0031】
制御装置100には、測位装置150から圃場などにおける走行車体2の位置情報、エンジン回転センサ110からエンジンEの回転数、車速センサ111から走行車体2の走行速度、変速センサ112から現在の変速段、切れ角センサ309から前輪3の切れ角がそれぞれ入力される。なお、制御装置100は、トラクタ1を自律走行させる場合、上記したように、切れ角センサ309の検出値を用いて、前輪3の切れ角をフィードバックしながらステアリングホイール9に連結されたステアリングシリンダを制御することで、ステアリングホイール9を操舵する。
【0032】
制御装置100においては、エンジンECU101がエンジンEに接続され、走行系ECU102が変速装置121に接続され、作業機昇降系ECU103が昇降装置13に接続される。エンジンECU101は、エンジンEに向けて回転制御信号を出力する。走行系ECU102は、変速装置121に向けて変速段切替制御信号を出力する。作業機昇降系ECU103は、昇降装置13に向けて作業機昇降信号を出力する。また、昇降装置13は、作業機昇降系ECU103から出力された作業機昇降信号に基づいて作業機6を昇降させる。
【0033】
また、制御装置100においては、トラクタ1を自律走行させる場合には、作業機6による作業内容に応じた予定走行経路R(図3参照)が予め圃場ごとに定められ、データ化されて記憶部に記憶される。制御装置100は、測位装置150の測定結果に基づいて、記憶された予定走行経路Rに沿って走行するように、エンジンE、変速装置121、昇降装置13などを制御する。予定走行経路Rは、圃場の形状、大きさ、圃場内に形成された畝の幅、長さおよび本数、さらには、作物の種類などに応じて設定される。なお、予定走行経路Rについては、図3を用いて後述する。
【0034】
また、上記したように、制御装置100は、たとえば、トラクタ1の作業者が携行可能な情報処理端末(携帯端末)160と無線接続される。制御装置100は、作業者の操作による情報処理端末160からの指示信号に基づいてトラクタ1の各部を制御する。なお、制御装置100は、トラクタ1の機体情報データベースを保持し、型式などの情報の受け渡しを携帯端末160などからも行えるように構成してもよい。
【0035】
また、上記したように、制御装置100は、トラクタ1の作業者が携行可能なリモコン170と無線接続される。制御装置100は、作業者の操作によるリモコン170からの指示信号(走行信号)に基づいて、走行装置およびステアリング装置を制御する。
<圃場内における自律走行>
次に、図3を参照して作業車両(トラクタ)1の圃場F1内における自律走行について説明する。図3は、圃場F内における自律走行の説明図である。たとえば、自律走行しながら作業を行うトラクタ1による耕耘作業の場合、制御装置100(図2参照)の導出部は、トラクタ1(走行車体2および作業機6)の全長、全幅、トレッド、作業機6(たとえば、ロータリ耕耘機)の能力、圃場F1の形状や面積などが含まれる情報などに基づいて、適切な旋回位置や、耕深などが規定された走行経路(予定走行経路)Rを生成するための情報を導出する。
【0036】
図3に示すように、トラクタ1は、予定走行経路Rに沿って、圃場F1の出入り口から圃場F1内に進入し、適切に旋回走行しながら耕耘作業を自動で行う。なお、トラクタ1は、プログラムによっては、耕耘作業の後、圃場F1の出入り口から圃場F1外に出て、所定の場所で停止するといった制御も可能である。
【0037】
トラクタ1(走行車体2)は、たとえば、畦F2の内側、すなわち、圃場F1の端から内側の所定の領域を枕地領域A1として、枕地領域A1において周回しながら対地作業を行う。トラクタ1は、枕地領域A1よりも内側の領域A2において、予め設定された作業開始位置P1から作業終了位置P2まで、直進と旋回とを繰り返しながら対地(耕耘)作業を行う。
【0038】
ここで、作業終了位置P2は、圃場F1の端から枕地領域A1分内側にある。このため、トラクタ1が作業終了位置P2に到達した後(作業終了後)に作業者Hがトラクタ1に再度乗り込むためには、少なくとも枕地領域A1分だけ圃場F1内に侵入する必要があり、不便である。本実施形態によれば、リモコン170を利用して、このような不便を解消することができる。
<リモコンの操作面>
次に、図4を参照してリモコン170の操作面171について説明する。図4は、遠隔操作装置(リモコン)170を示す正面図である。図4に示すように、リモコン170は、その本体の正面部に、作業者によって操作される操作面171を有する。操作面171のたとえば上半部の領域には、押しボタン式の複数の操作ボタン172が配設される。操作面171には、少なくとも4つの操作ボタン172(第1操作ボタン172a~第4操作ボタン172d)が配設される。また、操作面171のたとえば下半部の領域には、押しボタン式の電源ボタン173と、押しボタン式のホーンボタン174とがさらに配設される。
【0039】
第1操作ボタン172aおよび第2操作ボタン172bは、それぞれトラクタ1(図1参照)を走行させる場合に押下される。第3操作ボタン172cは、トラクタ1を一時停止させる場合に押下される。第4操作ボタン172dは、トラクタ1を停止(エンジンEの停止)させる場合に押下される。
【0040】
また、第1操作ボタン172a~第4操作ボタン172dは、図中において二点破線で示すような矩形の4つの頂点となる位置に配置される。具体的には、第1操作ボタン172aと第2操作ボタン172bとは矩形の上辺を形成する2つの頂点となる位置に配置され、第3操作ボタン172cと第4操作ボタン172dとは矩形の下辺を形成する2つの頂点となる位置に配置され、第1操作ボタン172aと第4操作ボタン172dとは矩形の左辺を形成する2つの頂点となる位置に配置され、第2操作ボタン172bと第3操作ボタン172cとは矩形の右辺を形成する2つの頂点となる位置に配置される。
【0041】
電源ボタン173は、リモコン170を電源ONする場合に押下される。ホーンボタン174は、トラクタ1に警告音を発生させる場合に押下される。このようなホーンボタン174を有することで、たとえば、畦からトラクタ1を監視している作業者が、トラクタ1の前方に鳥などを発見した場合にホーンボタン174を押下して警告音を発生させることで、鳥などを追い払うことができる。これにより、トラクタ1の作業中、鳥を障害物と認識して、鳥を検知する度に自動停止することによる作業効率の低下を抑制することができる。
【0042】
また、リモコン170は、トラクタ1の自律走行の開始前および終了後の少なくともいずれかにおいて、第1操作ボタン172a~第4操作ボタン172dのうち2つの操作ボタン172(たとえば、第1操作ボタン172aと第2操作ボタン172b、など)が同時に押下されることで、トラクタ1を遠隔操作することが可能である。この場合、作業者は、2つの操作ボタン172を同時に押下しなければならないため、1つの操作ボタン172を押下して操作する場合に比べて誤操作が抑制される。
【0043】
そして、制御装置100(図2参照)は、リモコン170において同時に押下された2つの操作ボタン172の組み合わせに応じて、走行装置によるトラクタ1(走行車体2)の前進および後進、ステアリング装置の左操舵および右操舵を実行する。
【0044】
また、リモコン170の操作面171には、作業者が認識しやすいように、押下される操作ボタン172の位置から作業者がトラクタ1の動作を認識しやすいように、「前進」、「後進」、「左旋回」、「右旋回」の表記が施されている。このような表記は、文字による表記の他、たとえば、トラクタ1の図柄と、トラクタ1の進行方向を示す矢印とを組み合わせたものでもよい。また、左右の旋回を示すための表記においては、ステアリングホイール9の図柄と、ステアリングホイール9を切る方向を示す矢印とを組み合わせたものでもよい。
【0045】
図5A~5Dには、リモコン170による操作時に押下される押しボタン(第1操作ボタン172a~第4操作ボタン172d)の組み合わせを示している。図5Aは、機体の前進操作時に押下される押しボタン(操作ボタン)172の説明図であり、図5Bは、機体の後進操作時に押下される押しボタン(操作ボタン)172の説明図であり、図5Cは、機体の左旋回操作時に押下される押しボタン(操作ボタン)172の説明図であり、図5Dは、機体の右旋回操作時に押下される押しボタン(操作ボタン)172の説明図である。
【0046】
図5Aに示すように、第1操作ボタン172aと第2操作ボタン172bとが同時に押下されると、制御装置100(図2参照)は、トラクタ1の前進を実行する。図5Bに示すように、第3操作ボタン172cと第4操作ボタン172dとが同時に押下されると、制御装置100は、トラクタ1の後進を実行する。
【0047】
図5Cに示すように、第1操作ボタン172aと第4操作ボタン172dとが同時に押下されると、制御装置100は、ステアリング装置の左操舵、すなわち、トラクタ1の左旋回を実行する。図5Dに示すように、第2操作ボタン172bと第3操作ボタン172cとが同時に押下されると、制御装置100は、ステアリング装置の右操舵、すなわち、トラクタ1の右旋回を実行する。
【0048】
また、制御装置100は、2つの操作ボタン172が同時に押下されている間のみ2つの操作ボタン172の組み合わせに応じて、トラクタ1の前進、後進、左旋回、右旋回を実行する。
【0049】
上述してきたように、実施形態に係るトラクタ1によれば、リモコン170の4つの操作ボタン172(第1操作ボタン172a~第4操作ボタン172d)のうち2つの操作ボタン172を所定の組み合わせで同時に押下することで走行車体2を遠隔操作するため、走行車体2の自律走行の開始前および終了後の少なくともいずれかにおいて誤操作を抑えながら走行車体2を遠隔操作することが可能となる。このため、走行車体2の自律走行の開始前および終了後の少なくともいずれかにおいて、たとえば、走行車体2を遠隔操作で畦際まで移動させれば、作業者Hが圃場内にほとんど入ることなく走行車体2(トラクタ1)に乗り込むことができ、便利であり、作業性が向上するようになる。とくに、代掻き作業では、圃場F1内を歩くことがより困難なため、作業者Hが圃場内にほとんど入ることなくトラクタ1に乗り込むことができれば作業性は大幅に向上する。
【0050】
また、上記リモコン170に既存のリモコンを利用することもでき、コストアップすることなく機能の追加が可能である。
【0051】
また、リモコン170における4つの操作ボタン172の配置が、同時に押下される2つの操作ボタン172の位置と、リモコン170の遠隔操作による走行車体2の動き(前進、後進、左旋回、右旋回など)とが略一致する配置となる。すなわち、同時に押下される2つの操作ボタン172の組み合わせが、作業者Hが走行車体2の動きをイメージしやすい位置の組み合わせとなるため、誤操作をさらに確実に抑えることができる。
【0052】
また、リモコン170における2つの操作ボタン172が同時に押下されている間のみ走行車体2が動くため、誤操作をさらに確実に抑えることができる。
【0053】
なお、上記した実施形態では、リモコン170の操作面171には4つの操作ボタン172(第1操作ボタン172a~第4操作ボタン172d)が配設されているが、これに限定されず、操作ボタン172が5つ以上配設されてもよい。操作ボタン172が5つ以上の場合も、同時に押下される操作ボタン172の組み合わせに応じて、トラクタ1の前進、後進、左旋回、右旋回が実行される。
<リモコンの変形例>
次に、図6A~6C、図7を参照して、上記したリモコン170の変形例について説明する。図6A~6Cは、変形例(その1~3)に係る遠隔操作装置(リモコン)270,370,470を示す正面図である。また、図7は、変形例(その4)に係る遠隔操作装置(リモコン)570を示す正面図である。
【0054】
図6Aに示すように、リモコン270の操作面271には、4つの押しボタン式の操作ボタン272a~272dが配設される。操作ボタン272aおよび操作ボタン272bは、それぞれトラクタ1(図1参照)を走行させる場合に押下される。操作ボタン272cは、トラクタ1を一時停止させる場合に押下される。操作ボタン272dは、トラクタ1を停止(エンジン停止)させる場合に押下される。
【0055】
また、リモコン270においても、4つの操作ボタン272a~272dは、矩形の4つの頂点となる位置に配置される。リモコン270は、トラクタ1の自律走行の開始前および終了後の少なくともいずれかにおいて、4つの操作ボタン272a~272dのうちの2つ(たとえば、操作ボタン272aと操作ボタン272b、など)が同時に押下されることで、トラクタ1を遠隔操作することが可能である。
【0056】
また、リモコン270の操作面271には、作業者の目印となる目印線273がX字状となるように表記されている。このような目印線273によって、トラクタ1の自律走行の開始前および終了後の少なくともいずれかにおいて誤操作を抑えながらトラクタ1を遠隔操作することが可能となる。
【0057】
また、図6Bに示すように、リモコン370の操作面371には、4つの押しボタン式の操作ボタン372a~372dが配設される。操作ボタン372aおよび操作ボタン372bは、それぞれトラクタ1を走行させる場合に押下される。操作ボタン372cは、トラクタ1を一時停止させる場合に押下される。操作ボタン372dは、トラクタ1を停止(エンジン停止)させる場合に押下される。
【0058】
また、リモコン370においても、4つの操作ボタン372a~372dは、矩形の4つの頂点となる位置に配置される。リモコン370は、トラクタ1の自律走行の開始前および終了後の少なくともいずれかにおいて、4つの操作ボタン372a~372dのうちの2つ(たとえば、操作ボタン372aと操作ボタン372b、など)が同時に押下されることで、トラクタ1を遠隔操作することが可能である。
【0059】
また、リモコン370の4つの操作ボタン372a~372d上には、作業者の目印となる目印線373が全体的にX字状となるように表記されている。このような目印線373によって、トラクタ1の自律走行の開始前および終了後の少なくともいずれかにおいて誤操作を抑えながらトラクタ1を遠隔操作することが可能となる。
【0060】
また、図6Cに示すように、リモコン470の操作面471には、4つの押しボタン式の操作ボタン472a~472dが配設される。操作ボタン472aおよび操作ボタン472bは、それぞれトラクタ1を走行させる場合に押下される。操作ボタン472cは、トラクタ1を一時停止させる場合に押下される。操作ボタン472dは、トラクタ1を停止(エンジン停止)させる場合に押下される。
【0061】
また、リモコン470においても、4つの操作ボタン472a~472dは、矩形の4つの頂点となる位置に配置される。リモコン470は、トラクタ1の自律走行の開始前および終了後の少なくともいずれかにおいて、4つの操作ボタン472a~472dのうちの2つ(たとえば、操作ボタン472aと操作ボタン472b、など)が同時に押下されることで、トラクタ1を遠隔操作することが可能である。
【0062】
また、リモコン470の操作面471には、作業者の目印となる目印線473が、4つの操作ボタン472a~472dを除いて、全体的にX字状となるように表記されている。このような目印線473によって、トラクタ1の自律走行の開始前および終了後の少なくともいずれかにおいて誤操作を抑えながらトラクタ1を遠隔操作することが可能となる。
【0063】
また、図7に示すように、リモコン570の操作面571には、4つの押しボタン式の操作ボタン572a~572dが配設される。操作ボタン572aおよび操作ボタン572bは、それぞれトラクタ1を走行させる場合に押下される。操作ボタン572cは、トラクタ1を一時停止させる場合に押下される。操作ボタン572dは、トラクタ1を停止(エンジン停止)させる場合に押下される。
【0064】
また、リモコン570においても、4つの操作ボタン572a~572dは、矩形の4つの頂点となる位置に配置される。リモコン570は、トラクタ1の自律走行の開始前および終了後の少なくともいずれかにおいて、4つの操作ボタン572a~572dのうちの2つ(たとえば、操作ボタン572aと操作ボタン572b、など)が同時に押下されることで、トラクタ1を遠隔操作することが可能である。
【0065】
また、リモコン570の操作面571には、作業者の目印となる目印線573がX字状となるように表記されている。また、リモコン570の操作面571において目印線573で区画された4つの領域574a~574dには、異なる色彩が施されている。このように、目印線573で区画された4つの領域574a~574dが色分けされることで、トラクタ1の自律走行の開始前および終了後の少なくともいずれかにおいて誤操作を抑えながらトラクタ1を遠隔操作することが可能となる。
【0066】
なお、リモコン570の目印線573は、4つの操作ボタン572a~572d上に全体的にX字状となるように表記されてもよいし、4つの操作ボタン572a~572dを除いて、全体的にX字状となるように表記されてもよい。
【0067】
上述してきた実施形態により、以下の作業車両1が実現される。
【0068】
(1)走行装置およびステアリング装置を有し、圃場内を走行可能な走行車体2と、走行車体2が予め設定された走行経路Rに沿って自律走行するよう走行装置およびステアリング装置を制御する制御装置100と、走行車体2を遠隔操作するために、制御装置100へ走行車体2に対する走行信号を出力する遠隔操作装置170とを備え、遠隔操作装置170は、少なくとも4つの押しボタン172(172a~172d)を有し、走行車体2の自律走行の開始前および終了後の少なくともいずれかにおいて4つの押しボタン172のうち2つの押しボタン172が同時に押下されることで走行車体2の遠隔操作が可能であり、制御装置100は、遠隔操作装置170において同時に押下された2つの押しボタン172の組み合わせに応じて、走行装置による走行車体2の前後進、ステアリング装置の左右操舵を実行する作業車両1。
【0069】
このような作業車両1によれば、遠隔操作装置170の4つの押しボタン172のうち2つの押しボタン172を所定の組み合わせで同時に押下することで走行車体2を遠隔操作するため、走行車体2の自律走行の開始前および終了後の少なくともいずれかにおいて誤操作を抑えながら走行車体2を遠隔操作することが可能となる。このため、走行車体2の自律走行の開始前および終了後の少なくともいずれかにおいて、たとえば、走行車体2を遠隔操作で畦際まで移動させれば、作業者Hが圃場内にほとんど入ることなく走行車体2(作業車両1)に乗り込むことができ、便利であり、作業性が向上するようになる。
【0070】
(2)上記(1)において、遠隔操作装置170には、4つの押しボタン172が矩形の4つの頂点となる位置に配置され、制御装置100は、矩形の上辺を形成する2つの頂点となる位置に配置された2つの押しボタン172が同時に押下されると走行装置による走行車体2の前進を実行し、矩形の下辺を形成する2つの頂点となる位置に配置された2つの押しボタン172が同時に押下されると走行装置による走行車体2の後進を実行し、矩形の左辺を形成する2つの頂点となる位置に配置された2つの押しボタン172が同時に押下されるとステアリング装置の左操舵を実行し、矩形の右辺を形成する2つの頂点となる位置に配置された2つの押しボタン172が同時に押下されるとステアリング装置の右操舵を実行する作業車両1。
【0071】
このような作業車両1によれば、上記(1)の効果に加えて、遠隔操作装置170における4つの押しボタン172の配置が、同時に押下される2つの押しボタン172の位置と、遠隔操作装置170の遠隔操作による走行車体2の動き(前進、後進、左旋回、右旋回など)とが略一致する配置となる。すなわち、同時に押下される2つの押しボタン172の組み合わせが、作業者Hが走行車体2の動きをイメージしやすい位置の組み合わせとなるため、誤操作をさらに確実に抑えることができる。
【0072】
(3)上記(1)または(2)において、制御装置100は、2つの押しボタン172が同時に押下されている間のみ2つの押しボタン172の組み合わせに応じて、走行装置による走行車体2の前後進、ステアリング装置の左右操舵を実行する作業車両1。
【0073】
このような作業車両1によれば、上記(1)または(2)の効果に加えて、遠隔操作装置170における2つの押しボタン172が同時に押下されている間のみ走行車体2が動くため、誤操作をさらに確実に抑えることができる。
【0074】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 作業車両(トラクタ)
2 走行車体
3 前輪
4 後輪
5 ボンネット
6 作業機
7 PTO装置
8 操縦席
9 ステアリングホイール
10 ハンドルポスト
11 操作ペダル
12 動力伝達装置(ミッションケース)
13 昇降装置
61 耕耘爪
71 PTO軸
131 昇降シリンダ
132 リフトアーム
133 リフトロッド
134 ロアリンク
135 トップリンク
100 制御装置
101 エンジンECU
102 走行系ECU
103 作業機昇降系ECU
110 エンジン回転センサ
111 車速センサ
112 変速センサ
150 測位装置(GNSS)
160 情報処理端末(携帯端末)
170 遠隔操作装置(リモコン)
172 押しボタン(操作ボタン)
172a 第1操作ボタン
172b 第2操作ボタン
172c 第3操作ボタン
172d 第4操作ボタン
AX 軸
A1 枕地領域
A2 内側領域
E エンジン
F1 圃場
F2 畦
H 作業者
P1 作業開始位置
P2 作業終了位置
R 走行経路(予定走行経路)
S 航法衛星
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図7