(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107256
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】遺伝子療法をモニタリングする
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6851 20180101AFI20240801BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240801BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240801BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20240801BHJP
C07K 14/76 20060101ALI20240801BHJP
C12Q 1/48 20060101ALI20240801BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240801BHJP
A61K 38/36 20060101ALI20240801BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20240801BHJP
A61K 38/38 20060101ALI20240801BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20240801BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240801BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20240801BHJP
【FI】
C12Q1/6851 Z
C12N15/12
C12N15/62 Z
C07K14/47
C07K14/76
C12Q1/48 Z
A61K48/00
A61K38/36
A61K38/02
A61K38/38
A61P7/04
G01N33/53 M
G01N33/53 D
C12N5/10 ZNA
C12N5/10
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024093669
(22)【出願日】2024-06-10
(62)【分割の表示】P 2021560957の分割
【原出願日】2020-04-14
(31)【優先権主張番号】62/833,875
(32)【優先日】2019-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521058818
【氏名又は名称】ロジックバイオ セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ビー. ネルソン チャウ
(72)【発明者】
【氏名】ジン リャオ
(72)【発明者】
【氏名】スサナ ゴード
(57)【要約】
【課題】遺伝子療法を改善するための技術を提供すること。
【解決手段】特に、本開示は、例えば、ペイロード発現の程度、レベル、及び/または持続性などの遺伝子療法治療の1つ以上の特徴のモニタリング及び/または評価を可能にする技術を提供する。一部の実施形態では、遺伝子療法の組み込みにおいて特に有用である技術を提供する。特に、本開示は、特定の組み込み遺伝子療法技術が、その発現及び/または活性が、遺伝子療法で送達をする目的とするペイロード(例えば、導入遺伝子がコードした産物、及び/または導入遺伝子から発現した産物)の発現及び/または活性と密接に相関し得る新規のバイオマーカー要素を生み出すことができる、ことを実証している。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2019年4月15日に出願した米国仮出願第62/833,875号の優先権を主張するものであり、その全内容を、参照により、本明細書で援用する。
【0002】
配列表
本出願は、2020年4月10日に作成した、名称が「2012538-0082_SL.txt」であり、大きさが26,104バイトである.txtファイルで電子的に提出した配列表を含む。この配列表の全内容を、参照により、本明細書で援用する。
【背景技術】
【0003】
胚発生の初期に受け継いだDNA、または胚発生の初期に獲得をしたDNAのいずれか一方での変化に起因するヒトの疾患のサブセットが存在する。遺伝療法(別名、「遺伝子療法」)の開発者にとって特に興味深いことは、単一遺伝子の突然変異に起因する疾患、別名、単一遺伝疾患である。6,000超の単一遺伝疾患があると考えられている。一般的に、遺伝性突然変異に起因する特定の遺伝病は比較的に稀であるが、調べてみると、遺伝関連疾患の罹患者は驚くほど多い。名称が広く知られている遺伝性疾患として、嚢胞性線維症、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ハンチントン病、及び鎌状赤血球貧血がある。その他のクラスの遺伝病として、有機酸血症などの代謝障害、それに、機能不全の遺伝子が、代謝プロセスの欠陥、及び短期と長期の両方で深刻な罹患率と死亡率を招く有毒副産物の蓄積をもたらすリソソーム蓄積症がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
遺伝子療法は、候補療法の開発面での関心は非常に高いが、遺伝子療法の有効性と過程をモニタリング及び評価する方法についての関心はさほど大きなものではなかった。1つ以上のさらなる治療を併用することを含めて、遺伝子療法を確実ならしめる新規の方法と組成物を、効果的に利用することが待望されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、特に、遺伝子療法を改善するための技術を提供する。特に、本開示は、例えば、ペイロード発現の程度、レベル、及び/または持続性などの遺伝子療法治療の1つ以上の特徴のモニタリング及び/または評価を可能ならしめる技術を提供する。一部の実施形態では、遺伝子療法の組み込みにおいて特に有用である技術を提供する。
【0006】
特に、本開示は、特定の組み込み遺伝子療法技術が、その発現及び/または活性が、遺伝子療法で送達をする目的とするペイロード(例えば、導入遺伝子がコードした産物、及び/または導入遺伝子から発現した産物)の発現及び/または活性と密接に相関し得る新規のバイオマーカー要素を生み出すことができる、ことを実証している。さらに、本開示は、そうすることで、遺伝子療法を、及び/またはその達成具合、安定性、維持などを、モニタリングする、及び/またはその他の方法で評価するための戦略を提供することができる、ことを教示する。
【0007】
特に、一部の実施形態では、現在開示しているバイオマーカーは、遺伝子療法を受けた対象から非侵襲的に採取した生物学的試料から直接に評価することができ、そして、そのようなバイオマーカーの評価によって、ペイロードの状態に関する情報を提供できるという知見を得るに至っており、この知見が無ければ、より侵襲的な手順を経て判断をする必要がある。ほんの一例であるが、本開示は、組織でのペイロードの送達または発現を決定するために、組織生検を実施する必要がないことを実証している。さらに正確に言えば、循環からの(例えば、採血を介した)バイオマーカーの分析を評価して、組織でのペイロードの発現及び/または活性の1つ以上の態様を間接的に明らかにすることができる。これにより、細胞内の箇所に送達するペイロードの分析を簡素化することができ、また、容易ならしめることができる。
【0008】
一部の実施形態では、本開示は、遺伝子療法をモニタリングする方法を提供しており、当該方法は、組み込み遺伝子療法治療を受けた対象から得た生物学的試料において、組み込み遺伝子療法治療で組み込んだバイオマーカーのレベルまたは活性を、遺伝子療法治療の状態の1つ以上の特徴の現れとして検出することを含み、当該遺伝子療法治療の状態の1つ以上の特徴を、ペイロードのレベル、ペイロードの活性、細胞の集団における遺伝子療法治療の組み込みレベル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択する。
【0009】
一部の実施形態では、本開示は、ペイロードを送達する遺伝子組み込み組成物を与えられた対象でのペイロードの送達、レベル、及び/または活性をモニタリングする方法を提供しており、当該方法は、対象から得た生物学的試料において、遺伝子組み込み組成物を取り入れて得たバイオマーカーのレベルまたは活性を、ペイロードの送達、レベル及び/または活性の現れとして検出することを含む。
【0010】
一部の実施形態では、本開示は、組み込み遺伝子療法治療を受けた対象での遺伝子療法治療の状態の1つ以上の特徴を決定する方法を提供しており、当該方法は、a)当該対象から得た生物学的試料を提供する、b)バイオマーカーのレベルを決定する、また、当該バイオマーカーは、対象のゲノムに遺伝子療法で組み込んで得る;及びc)決定したバイオマーカーのレベルに基づいて、当該対象での遺伝子療法治療の状態の1つ以上の特徴を確立する、また、当該決定したバイオマーカーのレベルは、遺伝子療法治療の状態の1つ以上の特徴に対応する。
【0011】
一部の実施形態では、本開示は、それを必要とする対象に対して遺伝子療法治療を送達する方法を提供しており、a)当該対象に対して組み込み遺伝子療法治療を行う、及びb)当該対象から得た生物学的試料において、当該対象のゲノムに遺伝子療法治療で組み込んで得たバイオマーカーのレベルを決定するステップを含む。
【0012】
一部の実施形態では、組み込み遺伝子療法治療、または遺伝子組み込み組成物は、ペイロードを対象のゲノム内の標的部位にコードする配列を含む核酸要素の組み込みを達成する。当業者であれば、様々な標的部位のいずれでも、本明細書に記載した方法及び組成物での使用に好適であることを理解する。例えば、一部の実施形態では、標的部位は、ポリペプチド(例えば、アルブミン)をコードする。一部の実施形態では、核酸要素の組み込みは、ポリペプチドをコードする遺伝子の5’または3’末端で生じる。一部の実施形態では、標的部位は、アルブミンをコードする。
【0013】
様々な実施形態によれば、本明細書に記載した通り、応用の利くあらゆるペイロードを使用し得る。一部の実施形態では、ペイロードは、ペプチド/ポリペプチド/タンパク質、核酸(例えば、shRNA、miRNA)、及びそれらのあらゆる組み合わせである、または、それらを含む。例えば、一部の実施形態では、ペイロードは、細胞内で発現するペプチドである、またはそれを含む。一部の実施形態では、ペイロードは、細胞外に分泌されるペプチドである、またはそれを含む。一部の実施形態では、ペイロードは、病状を治療するための生物学的プロセスを促す細胞内因性または細胞外因性の活性を有するペプチドである。一部の実施形態では、ペイロードは、通常は、肝細胞で発現するペプチドである。一部の実施形態では、ペイロードは、肝細胞で異所的に発現するペプチドである。一部の実施形態では、ペイロードは、メチルマロニル-CoAムターゼ、アルファ-1-アンチトリプシン、またはヒト第IX因子である。
【0014】
本明細書に記載したように、数多くの実施形態は、1つ以上の生物学的試料(例えば、対象から採取した体液または組織の試料)の使用を含む。本開示によれば、様々な生物学的試料のいずれに対しても、様々な実施形態との互換性を持たすことを企図している。例えば、一部の実施形態では、生物学的試料は、毛髪、皮膚、糞便、血液、血漿、血清、脳脊髄液、尿、唾液、涙液、硝子体液、または粘液である、またはそれらを含む。
【0015】
本明細書に記載したように、本明細書に記載した方法及び組成物に利用可能な検出(例えば、バイオマーカーまたは検出可能な部分などのシグナルの検出)は、あらゆる用途に適した方法で達成し得る。例えば、一部の実施形態では、検出するステップは、免疫学的アッセイまたは核酸増幅アッセイである、またはそれを含む。
【0016】
本開示に記載した通り、様々なバイオマーカーの使用に、様々な実施形態との互換性を持たせることを企図している。一部の実施形態では、バイオマーカーは、標的部位がコードするポリペプチドを翻訳した後に、標的部位がコードするポリペプチドに融合する検出可能な部分である、またはそれを含む。一部の実施形態では、バイオマーカーは、標的部位がコードするポリペプチドを翻訳した後に、ペイロードがコードするポリペプチドに融合する検出可能な部分である、またはそれを含む。一部の実施形態では、バイオマーカーは、2Aペプチドである、またはそれを含む。一部の実施形態では、2Aペプチドを、P2A、T2A、E2A及びF2Aからなる群から選択する。一部の実施形態では、バイオマーカーは、Furin開裂モチーフとし得る、またはそれを含み得る。一部の実施形態では、検出可能な部分は、バイオマーカーに結合する作用物質(例えば、抗体またはそのフラグメント)とし得る、またはそれを含み得る。
【0017】
一部の実施形態では、核酸要素の組み込みは、標的部位でコードするポリペプチドの発現を有意に攪乱しない(すなわち、対象は組み込み遺伝子療法治療を受けられず、または対象には遺伝子組み込み組成物が行き渡らないので、標的部位のポリペプチドの発現は実質的に継続する)。一部の実施形態では、外因的に供給したヌクレアーゼを使用しなくとも、組み込みは起こる。一部の実施形態では、外因的に供給した1つ以上のヌクレアーゼを使用すると、組み込みは起こる。
【0018】
様々な実施形態によれば、本明細書に記載した方法及び組成物に、様々な遺伝子療法レジメンとの互換性を持たせることを企図している。例えば、一部の実施形態では、対象は、単回の遺伝子療法治療を受ける、または遺伝子組み込み組成物の単回投与を受ける。一部の実施形態では、対象は、複数回の(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10回以上の)遺伝子療法治療を受ける、または遺伝子組み込み組成物の複数回投与を受ける。
【0019】
加えて、本明細書に記載した方法及び組成物は、遺伝子療法治療を行った後の様々な時点のいずれか(例えば、対象が遺伝子療法を受けて数時間後、数日後、数週間後、または数ヶ月後)で利用可能となることを企図している。したがって、一部の実施形態では、対象が遺伝子療法治療を受けてから、または遺伝子組み込み組成物を与えられてから1、2、3、4、5、6、7、8週間後、またはそれ以後に、検出ステップを行う。一部の実施形態では、対象が遺伝子療法治療を受けてから、または遺伝子組み込み組成物を与えられてから後の複数の時点で、検出ステップを行う。一部の実施形態では、対象が遺伝子療法治療を受けてから、または遺伝子組み込み組成物を与えられてから、少なくとも3ヶ月の期間にわたって(例えば、複数回の)検出ステップを行う。
【0020】
驚くべきことに、一部の実施形態は、遺伝子療法を受けると、人生の様々な段階にある対象に恩恵を与えることができ(例えば、療法のモニタリング及び/または調整を容易ならしめる)、一部の実施形態では、対象の人生の節目で使用し得る方法を提供するという知見を得た。一部の実施形態では、対象が乳児である時に、遺伝子療法治療を受ける、または遺伝子組み込み組成物が与えられる。一部の実施形態では、対象が成人期に達する前に(例えば、子供である時に)、遺伝子療法治療を受ける、または遺伝子組み込み組成物が与えられる。一部の実施形態では、対象が成人である時に、遺伝子療法治療を受ける、または遺伝子組み込み組成物が与えられる。
【0021】
本明細書に記載した方法及び組成物は、遺伝子療法を受ける必要性に加えて、潜在的に交絡因子/条件または複合因子/条件を個々が抱えている様々な対象に対して利用可能となることを特に企図している。加えて、遺伝子療法の一部の形態では、厄介な反応(例えば、自己免疫反応、サイトカインストームなど)を引き起こすことが知られており、またはそうなるものと推測されている。したがって、一部の実施形態では、遺伝子療法に対する自己免疫応答に関して、対象をモニタリングすることをさらに含む方法を提供する。一部の実施形態では、遺伝子療法に対する異常なサイトカイン応答(例えば、サイトカインストーム)に関して、対象をモニタリングすることをさらに含む方法を提供する。
【0022】
本開示は、折に触れて遺伝子療法を調整する(例えば、強化する、または抑制する)必要があることも認識しており、様々な実施形態では、そのような調整の必要性をモニタリングする、及び/または首尾よく調整することが好ましいと企図している。したがって、一部の実施形態では、バイオマーカーのレベルが、組み込み遺伝子療法の治療有効量を達成して得られるレベルよりも低ければ、対象に対してさらなる作用物質(例えば、活性化剤)を投与する、ことをさらに含む方法を提供する。加えて、または代替的に、一部の実施形態では、バイオマーカーのレベルが、ペイロードの最適レベルまたは安全レベルを示すレベルを超えておれば、遺伝子療法によって送達したペイロードの発現を抑制または阻害する対象に対して、さらなる作用物質(例えば、不活性化剤)を送達する、ことをさらに含む方法を提供する。
【0023】
本出願で使用する用語「約(about)」及び「おおよそ(approximately)」は、同等に使用している。本明細書で引用する刊行物、特許、または特許出願は、それらの全内容を、参照により、本明細書で援用する。本出願で使用するあらゆる数字は、約(about)/おおよそ(approximately)の有無に関係なく、関連技術分野の当業者が理解している通常の変動を含む、ことを意味する。
【0024】
本発明のその他の特徴、目的、及び利点は、以下の詳細な説明から明らかである。しかしながら、詳細な説明は、本発明の実施形態を示しているが、例示目的のものに過ぎず、限定を意図するものではないことを理解されたい。本発明の範囲内での様々な変更及び修正は、詳細な説明に接した当業者には自明の事項である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】組み込み前のGeneRide(商標)構築物(AAV)と、それに続く、標的アルブミン、Alb、遺伝子座でのゲノムへのHR媒介性組み込みの概略図を示す。GeneRide(商標)で編集したAlb遺伝子座から発現させると、アルブミン-2Aと導入遺伝子が、別々のタンパク質として同時に作り出される。
【
図2】ゲノムDNA(gDNA)組み込みの例示的な分析方法を示す。図示したように、そのような方法は、アルブミン(Alb)遺伝子座においてGeneRide(商標)で編集したgDNAのアッセイに利用することができる。記載したステップ1では、ロングレンジPCR(LR-PCR)は、プライマーF1/R1を使用して単離したgDNA由来の産物を増幅する。記載したステップ2では、ステップ1で精製した産物を、ネステッドqPCRでプライマーF2/R2を使用して増幅する。
【
図3】エピソームDNAの定量のための例示的な手法を提示している。図示したように、エピソームコピー数は、線状エピソームプラスミドで作成した標準曲線を使用するqPCRで決定することができる。
【
図4】2Aペプチドをコードする核酸配列を含むmRNAの分析のための例示的な手法を提示する。融合mRNAコピー数は、プライマーセットFwd/R
Fを使用したddPCRで決定する。内因性Albコピー数は、プライマーセットFwd/R
Eを使用したddPCRで測定し、そして、正規化のために使用する。
【
図5】血漿でのポリペプチドの検出及び定量のための例示的な手法を提示する。例えば、血漿でのアルブミン-2Aは、図示した方法を介して分析することができる。A)は、捕捉抗体と検出抗体を含むサンドイッチELISAを示す。この図では、アルブミン-2Aを捕捉するための抗2A抗体と、検出のための標識した抗アルブミン抗体を示している。アルブミン;ヒト第IX因子;及び、カニクイザイルA1ATなどのその他のポリペプチドに特異的な補足抗体及び検出抗体を使用して、血漿でのその他のそのようなポリペプチドを検出するために使用することができる。B)は、PBST緩衝剤または10%マウス血清での組換えマウスアルブミン-2Aに基づいた標準曲線を示す。
【
図6】インビボでのエピソームDNAの検出及び分析を実証している。新生児マウス(p2)に、1e14 vg/kgのhF9-DJを注射した。A)エピソームのコピー数は、注射をした後に、経時的に指数関数的に減少する。B)動物の肝臓の成長は、注射した後でも有意な影響を受けない。C)動物の体重の増加は、注射をした後でも有意な影響を受けない。
【
図7】2Aバイオマーカーのインビボでの検出、モニタリング、及び分析を、経時的に実証している。p2の新生児C57マウスに、1e14 vg/kgのhF9-DJを静脈内注射し、そして、注射をして1、2、3、4及び8週間後に採取した(n=5/グループ)。A)肝臓での2AバイオマーカーのゲノムDNA組み込みを、LR-PCR/qPCRで定量し、そして、内因性Albのパーセントとして表した。B~C)血漿でのALB-2Aと総マウスアルブミンを、ELISAで測定した。D)7B及び7Cに提示したデータの相関。血漿での2Aペプチドタグ付きアルブミンと、総アルブミンとの分析は、血漿ALB-2Aで認められた増加が、出生後の内因性アルブミンの指数関数的増加に関連する、ことを確認している。
【
図8】バイオマーカーと共に送達するペイロードのインビボ検出、モニタリング及び分析を、経時的に実証している。p2の新生児C57マウスに、1e14 vg/kgのhF9-DJを静脈内注射し、そして、注射をして1、2、3、4及び8週間後に採取した。A)ヒト第IX因子は、ヒト特異的第IX因子ELISAで、マウス血漿で定量した。B)
図7B及び8Aに提示したデータの相関。
【
図9】2つの用量及び2つの年齢層でのバイオマーカー及びペイロード送達の検出及び分析を実証している。新生児C57マウス(p2)または幼若マウス(p21)に対して、1e13または1e14 vg/kgのhF9-DJを静脈内注射し、そして、注射して8週間後に採取した(n=6~8/グループ)。採取時にp2で投与した動物の週齢は8週齢であり、また、p21で投与した動物の週齢は11週齢であった。A)ELISAで測定した血漿でのALB-2A。B)ELISAで測定した血漿でのヒト第IX因子。C)ddPCRで定量した肝臓での融合mRNAであり、内因性アルブミンmRNAのパーセントとして表している。D)LR-PCR/qPCRで定量した肝臓でのゲノムDNA組み込みであり、内因性Albのパーセントとして表している。E)qPCRで測定した肝臓でのエピソームコピー数/細胞。
【
図10】様々な年齢層の対象に対して、バイオマーカーと共に送達するペイロードのインビボ検出、モニタリング、及び分析を実証している。新生児FvB/NJ(p2)、幼若(p21)、または成体マウス(p42及びp63)に対して、1e14 vg/kgのhF9-DJを静脈内注射し、そして、注射して4週間後に採取した(n=6~9/グループ)。採取時にp2で投与した動物の週齢は4週齢であり、p21で投与した動物の週齢は7週齢であり、p42で投与した動物の週齢は11週齢であり、そして、p63で投与した動物の週齢は14週齢であった。A~B)血漿でのALB-2A及びヒト第IX因子を、ELISAで測定した。C)血漿ALB-2Aとヒト第IX因子との線形回帰から、R
2=0.93が得られる。
【
図11】ゲノム組み込みに関する異なる相同性アームを含むウイルスベクターを介して、バイオマーカーと共に送達するペイロードのインビボ検出、モニタリング及び分析を実証している。新生児FvB/NJマウス(p2)に対して、A1AT-DJを、1e13または1e14 vg/kgの最終用量で静脈内注射した。HA-750bpは、750bpの相同性アームを有する導入遺伝子に対応しており、そして、HA-1kbは、1kbの相同性アームを有する導入遺伝子に対応している。注射をして6週間後に、動物から採取した(n=6~9/グループ)。A~B)マウス血漿でのALB-2A及びカニクイザルA1ATを、ELISAで測定した。C)ALB-2AとA1ATとの線形回帰から、R
2=0.91が得られる。
【
図12】バイオマーカーと共に送達する細胞に固有のペイロードのインビボでの検出、モニタリング、及び分析を実証している。新生児Mut
-/-;Tg
INS-MCK-Mutマウス(p2)に対して、DJ-hMUT(1e13、3e13、または1e14 vg/kg)を、異なる用量で静脈内注射し、そして、3か月間にわたって採取した。A)肝臓でのゲノムDNA組み込みを、LR-PCR/qPCRで定量し、そして、内因性Albのパーセントとして表している。血漿でのALB-2Aを、ELISAで測定した。B)組み込み導入遺伝子であるヒトMUTのタンパク質発現を、MCK-MUTマウスの肝臓溶解物についてウエスタンブロットで測定をした。循環ALB-2Aは、肝臓でのゲノム組み込みのレベル、そして、MUTタンパク質のレベルと直線的な相関を示していると考えられる。
【
図13】ペイロードの発現を、単回投与(すなわち、GeneRide(商標)で編集した肝細胞の選択的増殖)をした後に高めることができる、及び、ペイロードレベルの高まりを、バイオマーカーレベルの分析によってモニタリングできる、ことを実証している。新生児Mut
-/-;Tg
INS-MCK-Mutマウス(p2)に対して、1e14 vg/kgのDJ-hMUTを静脈内注射し、そして、7か月間にわたって採取した。A~B)MUT
-/-マウスでの組み込み導入遺伝子から発現したヒトMUTタンパク質を、肝臓溶解物について、ローディングコントロールとしてβ-アクチンを使用するウエスタンブロットで分析を行った。ALB-2A(2Aに関するブロッティング)及び総アルブミンも、これらの肝臓溶解物において分析した。ビヒクルで処理したMUT
-/-及び野生型B6マウスを、リファレンスとして分析した。注記:導入遺伝子から発現したMUT
-/-肝細胞でのMUTタンパク質はヒトであり、そして、MUT
+/-及び野生型B6での内因性タンパク質はマウスである。
【
図14】最適化したALB-2A ELISA法を利用して、試料希釈剤単体で、または1%マウス血漿で調製した組換えマウスALB-2Aに基づいた標準曲線を実証している。
【
図15】野生型マウス及びNAFLD(DIO)のマウスモデルでのバイオマーカーと共に送達するペイロードのインビボ検出、モニタリング及び分析を実証している。成体マウス(約9週齢)に対して、1e14 vg/kgのhF9-DJを静脈内注射し、そして、1週目と、その後は隔週で計16週間にわたって、血漿試料を採取した。ALB-2A及びヒト第IX因子は、ELISAで、マウス血漿に関して定量を行った。
【
図16】用量依存的方法でのバイオマーカー及びペイロード送達の検出及び分析を実証している。新生児FvBマウス(p2)に対して、4.1e12、1.2e13、3.7e13、1.1e14、3.3e14、及び1e15 vg/kgのcA1AT-DJを静脈内注射し、そして、注射の4週間後に採取をした(n=5/グループ)。A~B)は、それぞれ、ELISAで測定した血漿でのALB-2Aと、cA1ATレベルを示す。C)は、ALB-2AとA1ATとの線形回帰から、R
2=0.97が得られることを示している。
【
図17】用量依存的な方法でのgDNA組み込みとペイロード送達の検出及び分析を実証している。新生児Mut
-/-;Tg
INS-MCK-Mutマウス(p0)に対して、低用量、中用量、及び高用量のDJ-mMUT(2.1e13、6.7e13、または2.0e14 vg/kg)を静脈内注射し、そして、投与の90日後に採取をした。Aは、ELISAで測定した血漿でのALB-2Aレベルを示す(n=18 低用量、n=19 中用量、n=19 高用量)。Bは、肝臓でのパーセントgDNA組み込みを示す(n=26 低用量、n=25 中用量、n=28 高用量)。Cは、両方の分析を用いた、動物のALB-2Aと、パーセントgDNA組み込みとの相関関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
定義
本発明の理解を深めるために、まず、特定の用語を以下に定義する。以下の用語及びその他の用語に関するさらなる定義は、明細書の随所に記載している。
【0027】
約(About):用語「約」とは、本明細書で値について使用する場合では、記載した値と類似している値のことを指す。一般的に、当業者は、この事情に精通しており、この状況にある「約」が網羅している関連する変動の程度を理解している。例えば、一部の実施形態では、用語「約」とは、記載した値の25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%以内、またはそれ未満の値の範囲を含み得る。
【0028】
活性化剤:本明細書で使用する用語「活性化剤」とは、作用物質が非存在である(または、異なるレベルの作用物質が存在する)場合に認めた標的のレベルまたは活性と比較して、その存在またはレベルが、高レベルまたは高活性の標的と相関する作用物質のことを指す。一部の実施形態では、活性化剤とは、その存在またはレベルが、(例えば、公知の活性化剤、例えば、ポジティブコントロールの存在などの適切な基準条件下で認められる)特定の基準レベルまたは活性に匹敵する、または、それらを超える大きさの標的レベルまたは活性と相関する作用物質である。一部の実施形態では、活性化剤は、その効果を発揮するために、活性化要素に結合する、そうでなければ会合する。
【0029】
成人:本明細書で使用する用語「成人」とは、18歳以上のヒトのことを指す。一部の実施形態では、成人は、約90ポンド~約250ポンドの範囲内の体重を有する。
【0030】
関連した:一方の存在、レベル、及び/または形式が、他方のそれらと相関している場合、本明細書でその用語は、2つの事象または実体が互いに「関連している」として使用する。例えば、特定の実体(例えば、ポリペプチド、遺伝子シグネチャー、代謝産物、微生物など)は、その存在、レベル、及び/または形態が、(例えば、関連する集団全体で)疾患、障害、または病態の発生率、及び/またはそれらに対する感受性と相関するのであれば、特定の疾患、障害、または病態に関連すると見なす。一部の実施形態では、2つ以上の実体が、それらが直接的または間接的に相互作用する場合、それらは互いに物理的に「関連して」おり、その結果、それらは、互いに物理的に近接している、及び/または物理的に近接したままである。一部の実施形態では、互いに物理的に関連している2つ以上の実体は、互いに共有結合している;一部の実施形態では、互いに物理的に結合している2つ以上の実体は、互いに共有結合しておらず、例えば、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用、磁力、及びそれらの組み合わせによって非共有結合している。
【0031】
生物学的試料:本明細書で使用する用語「生物学的試料」とは、一般的には、本明細書に記載したように、関心を寄せた生物学的供給源(例えば、組織または生物または細胞培養物)から得た、または誘導した試料のことを指す。一部の実施形態では、関心を寄せた供給源とは、動物またはヒトなどの生物を含む。一部の実施形態では、生物学的試料は、生物学的組織または体液である、またはそれを含む。一部の実施形態では、生物学的試料は、骨髄;血液;血球;腹水;組織または細針生検試料;細胞を含む体液;浮遊核酸;喀痰;唾液;尿;脳脊髄液、腹腔液;胸水;糞便;リンパ液;婦人科で得た体液;皮膚ぬぐい液;膣ぬぐい液;口腔ぬぐい液;鼻腔ぬぐい液;管洗浄または気管支肺胞洗浄などの洗浄液(washings)または洗浄液(lavages);吸引物;剥離物;骨髄標本;組織生検標本;手術標本;糞便、その他の体液、分泌物、及び/または排泄物;及び/または、それらの細胞などとし得る、またはそれらを含み得る。一部の実施形態では、生物学的試料は、個体から得た細胞である、またはそれを含む。一部の実施形態では、得た細胞は、試料を得た個体に由来する細胞である、またはそれらを含む。一部の実施形態では、試料は、あらゆる適切な手段によって、関心を寄せた供給源から直接に得た「一次試料」である。例えば、一部の実施形態では、一次生物学的試料は、生検(例えば、細針吸引または組織生検)、手術、体液(例えば、血液、リンパ液、糞便など)の回収などからなる群から選択する方法で得る。一部の実施形態では、文脈から明らかなように、用語「試料」は、一次試料を処理して(例えば、同試料から1つ以上の成分を除去して、及び/または同試料に1つ以上の作用物質を加えて)得られる調製物のことを指す。例えば、半透膜を使用した濾過。そのような「処理した試料」は、例えば、試料から抽出して得た核酸またはタンパク質、または一次試料を、mRNAの増幅または逆転写、特定の成分の単離及び/または精製などの技術に供して得た核酸またはタンパク質を含み得る。
【0032】
バイオマーカー:本明細書で使用する用語「バイオマーカー」とは、当該技術分野での使われ方と同じものであり、その存在、レベル、または形態が、関心を寄せた特定の生物学的事象または状態と相関しているので、その事象または状態の「マーカー」と見なせる実体のことを指す。特に、本開示は、遺伝子療法のための(例えば、ペイロード発現の程度、レベル、及び/または持続性などの、遺伝子療法治療の1つ以上の特徴(features)または特徴(characteristics)を評価する上で有用な)バイオマーカーを提供する。一部の実施形態では、バイオマーカーは、細胞表面マーカーである。一部の実施形態では、バイオマーカーは、細胞内にある。一部の実施形態では、バイオマーカーは、細胞の外側に認められる(例えば、分泌したもの、そうでなければ、細胞の外側、例えば、血液、尿、涙液、唾液、脳脊髄液などの体液に生成または存在する)。特定の実施形態において、本開示は、遺伝子療法を受けた対象から得た試料から検出することができるバイオマーカーであって、その遺伝子療法の1つ以上の特徴(features)または特徴(characteristics)を評価するために使用する当該バイオマーカーの有効性を実証する;そのような一部の実施形態では、試料は、遺伝子療法を受けていない、及び/またはペイロードが活性でない細胞、組織、及び/または体液に由来する。
【0033】
検出可能な部分:本明細書で使用する用語「検出可能な部分」とは、あらゆる実体(例えば、分子、複合体、またはそれらの部分または成分)のことを指す。一部の実施形態では、検出可能な部分を提供し、及び/または別個の分子実体として利用する;一部の実施形態では、それは、別の分子実体の一部であり、及び/またはそれに関連している。検出可能な部分の例として;様々なリガンド、放射性核種(例えば、3H、14C、18F、19F、32P、35S、135I、125I、123I、64Cu、187Re、111In、90Y、99mTc、177Lu、89Zrなど)、蛍光色素(特定の例示的な蛍光色素については、以下を参照されたい)、化学発光剤(例えば、アクリジナムエステル、安定化ジオキセタンなどがある)、生物発光剤、スペクトル分解可能な無機蛍光半導体ナノ結晶(すなわち、量子ドット)、金属ナノ粒子(例えば、金、銀、銅、プラチナなど)ナノクラスター、常磁性金属イオン、酵素(酵素の特定の例については、以下を参照されたい)、比色標識(例えば、染料、コロイド金などがある)、ビオチン、ジオキシゲニン、ハプテン、抗体、及び/または抗血清またはモノクローナル抗体が利用することができるタンパク質があるが、これらに限定されない。
【0034】
子供:本明細書で使用する用語「子供」とは、2歳~18歳までのヒトのことを指す。体重は、年齢や個々の子供によって大きく異なり、一般的な範囲は、30ポンド~150ポンドである。
【0035】
併用療法:本明細書で使用する用語「併用療法」とは、対象が、2つ以上の療法レジメン(例えば、2つ以上の治療薬、例えば、遺伝子療法及び非遺伝子療法治療法)を同時に受ける状況のことを指す。一部の実施形態では、2つ以上のレジメンを、同時に投与し得る;一部の実施形態では、そのようなレジメンを、連続して投与し得る(例えば、第1のレジメンの全「用量」を、第2のレジメンのあらゆる用量の投与前に投与する);一部の実施形態では、そのような治療薬を、重複投薬計画で投与する。一部の実施形態では、併用療法の「投与」は、1つ以上の作用物質(複数可)またはモダリティ(複数可)を、その他の作用物質(複数可)またはモダリティ(複数可)を受けている対象に対して、組み合わせて投与することに関与し得る。明確にするために、併用療法は、個々の作用物質を、単一の組成物で一緒に(または、必然的に同時であっても)投与することを要しない。
【0036】
組成物:当業者であれば、本明細書で使用する用語「組成物」が、1つ以上の特定の成分を含む別個の物理的実体のことを指すために使用し得る、ことを理解する。一般に、特記しない限り、組成物は、あらゆる形態、例えば、気体、ゲル、液体、固体などとし得る。
【0037】
不活性化剤:本明細書で使用する用語「不活性化剤」とは、その存在またはレベルが、作用物質が無い(または、異なるレベルの作用物質が有る)場合に認められるものと比較して、標的のレベルまたは活性の低下と相関する作用物質のことを指す。一部の実施形態では、不活性化剤は、その存在またはレベルが、(例えば、公知の活性化剤、例えば、ポジティブコントロールの存在など、適切な基準条件下で認められる)特定の基準レベルまたは活性に匹敵する、またはそれよりも低い標的レベルまたは活性と相関する。一部の実施形態では、不活性化剤は、その効果を発揮するために、不活性化要素に結合する、そうでなければ会合する。
【0038】
決定する:本明細書に記載した数多くの方法論は、「決定する」ステップを含む。本明細書に接した当業者であれば、そのような「決定」が、例えば、明示的に本明細書に記載した特定の技術など、当業者が利用可能な様々な技術のいずれかを使用して、利用または達成することができる、ことを理解する。一部の実施形態では、決定は、物理的試料の取り扱いを含む。一部の実施形態では、決定は、データまたは情報の検討及び/または取り扱いを含み、例えば、関連する分析の実行に適合したコンピュータまたはその他の処理ユニットを利用する。一部の実施形態では、決定は、情報源から関連情報及び/または資料を受け取ることを含む。一部の実施形態では、決定は、試料または実体の1つ以上の特徴を、比較可能な基準に対して比較することを含む。
【0039】
遺伝子:本明細書で使用する用語「遺伝子」とは、遺伝子産物(例えば、RNA産物及び/またはポリペプチド産物)をコードするDNA配列のことを指す。一部の実施形態では、遺伝子は、コード配列(例えば、特定の遺伝子産物をコードする配列)を含む;一部の実施形態では、遺伝子は、非コード配列を含む。一部の特定の実施形態では、遺伝子は、コード配列(例えば、エキソニック)と非コード配列(例えば、イントロン)の両方を含み得る。一部の実施形態では、遺伝子は、1つ以上の調節要素(例えば、プロモーター、エンハンサー、サイレンサー、終結シグナル)を含み得るものであり、それらは、例えば、遺伝子発現の1つ以上の態様(例えば、細胞型特異的発現、誘導性発現)を制御し得る、または、それら態様に影響を及ぼし得る。一部の実施形態では、遺伝子は、ゲノム(例えば、染色体、またはその他の複製可能な核酸の中または上)に位置しており、または認められる(または、位置している、または認められるものと同一のヌクレオチド配列を有する)。
【0040】
遺伝子産物または発現産物:本明細書で使用する用語「遺伝子産物」または「発現産物」とは、一般的に、遺伝子から転写したRNA(前処理及び/または後処理)、または、遺伝子から転写したRNAがコードしたポリペプチド(前修飾及び/または後修飾)のことを指す。
【0041】
「改善する(improve)」「増やす(increase)」、「阻害する(inhibit)」または「減らす(reduce)」:本明細書で使用する用語「改善する」「増やす」、「阻害する」、「減らす」、またはそれらの文法的同義語は、ベースライン、またはその他の基準測定値に関連する値のことを示す。一部の実施形態では、適切な基準測定は、特定の作用物質または治療の(例えば、前及び/または後での)存在下または非存在下、または、適切な同等の基準作用物質の存在下での比較可能な条件下での特定のシステム(例えば、単一の個人)での測定とし得る、またはそれを含み得る。一部の実施形態では、適切な基準測定は、関連する作用物質または治療の存在下で、特定の方法で応答することが公知である、または予想される比較可能なシステムにおける測定とし得る、またはそれを含み得る。
【0042】
乳児:本明細書で使用する用語「乳児」とは、2歳未満のヒトのことを指す。乳児の一般的な体重は、3ポンド~20ポンドの範囲である。
【0043】
核酸:本明細書で使用する場合には、その最も広義で、オリゴヌクレオチド鎖に組み込まれている、または組み込むことができあらゆる化合物及び/または物質のことを指す。一部の実施形態では、核酸は、ホスホジエステル結合を介してオリゴヌクレオチド鎖に組み込まれる、または組み込むことができる化合物及び/または物質である。文脈から明らかなように、一部の実施形態では、「核酸」とは、個々の核酸残基(例えば、ヌクレオチド及び/またはヌクレオシド)のことを指す;一部の実施形態では、「核酸」とは、個々の核酸残基を含むオリゴヌクレオチド鎖のことを指す。一部の実施形態では、「核酸」は、RNAである、またはRNAを含む;一部の実施形態では、「核酸」は、DNAである、またはDNAを含む。一部の実施形態では、核酸は、1つ以上の天然の核酸残基である、それらを含む、またはそれからなる。一部の実施形態では、核酸は、1つ以上の核酸類似体である、それを含む、またはそれからなる。一部の実施形態では、核酸類似体は、同類似体が、ホスホジエステル主鎖を利用していないという点で核酸とは異なる。一部の実施形態では、核酸は、1つ以上の天然ヌクレオシド(例えば、アデノシン、チミジン、グアノシン、シチジン、ウリジン、デオキシアデノシン、デオキシチミジン、デオキシグアノシン、及びデオキシシチジン)である、それらを含む、またはそれからなる。一部の実施形態では、核酸は、1つ以上のヌクレオシド類似体(例えば、2-アミノアデノシン、2-チオチミジン、イノシン、ピロロ-ピリミジン、3-メチルアデノシン、5-メチルシチジン、C-5 プロピニル-シチジン、C-5 プロピニル-ウリジン、2-アミノアデノシン、C5-ブロモウリジン、C5-フルオロウリジン、C5-ヨードウリジン、C5-プロピニル-ウリジン、C5-プロピニル-シチジン、C5-メチルシチジン、2-アミノアデノシン、7-デアザアデノシン、7-デアザグアノシン、8-オキソアデノシン、8-オキソグアノシン、0(6)-メチルグアニン、2-チオシチジン、メチル化塩基、挿入塩基、及びそれらの組み合わせ)である、それらを含む、またはそれからなる。一部の実施形態では、核酸は、RNAまたはタンパク質などの機能的遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を有する。一部の実施形態では、核酸は、1つ以上のイントロンを含む。一部の実施形態では、核酸は、天然供給源からの単離、相補的テンプレート(インビボまたはインビトロ)に基づいた重合による酵素的合成、組換え細胞または組換え系での複製、及び化学合成の内の1つ以上によって調製する。一部の実施形態では、核酸は、長さが、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、20、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000以上の残基である。一部の実施形態では、核酸は、部分的または全体的に一本鎖である;一部の実施形態では、核酸は、部分的または全体的に二本鎖である。一部の実施形態では、核酸は、ポリペプチドをコードする、またはポリペプチドをコードする配列の相補体である、少なくとも1つの要素を含むヌクレオチド配列を有する。一部の実施形態では、核酸は、酵素活性を有する。
【0044】
ペプチド:本明細書で使用する用語「ペプチド」または「ポリペプチド」とは、アミノ酸のあらゆるポリマー鎖のことを指す。一部の実施形態では、ペプチドは、自然界で生ずるアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、ペプチドは、自然界では生じないアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、ペプチドは、遺伝子操作したアミノ酸配列を有しており、それは、ヒトの手を介してデザイン及び/または作り出したものである。一部の実施形態では、ペプチドは、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、またはその両方を含む、またはそれらからなり得る。一部の実施形態では、ペプチドは、天然アミノ酸だけを含む、または非天然アミノ酸だけを含む、またはそれからなり得る。一部の実施形態では、ペプチドは、D-アミノ酸、L-アミノ酸、またはその両方を含み得る。一部の実施形態では、ペプチドは、D-アミノ酸だけを含み得る。一部の実施形態では、ペプチドは、L-アミノ酸だけを含み得る。一部の実施形態では、ペプチドは、線状である。一部の実施形態では、用語「ペプチド」を、基準ペプチド、活性、または構造の名称に付加し得る;そのような場合、本明細書では、関連する活性または構造を共有しており、それ故に、同じクラスまたはファミリーのペプチドのメンバーであると見なすことができるペプチドを指すために使用する。そのようなクラスのそれぞれについて、本明細書は、及び/または当業者が知っている、アミノ酸配列及び/または機能が公知であるクラスに属する例示的なペプチドを提供する;一部の実施形態では、そのような例示的なペプチドは、ペプチドクラスまたはファミリーの基準ペプチドである。一部の実施形態では、ペプチドクラスまたはペプチドファミリーのメンバーは、共通の配列モチーフ(例えば、特徴的な配列要素)と有意な配列相同性または同一性を示し、及び/または当該クラスの基準ペプチドと;一部の実施形態では、当該クラスにある全ペプチドと、共通の(一部の実施形態では、同等のレベル、または指定した範囲内の)活性を共有する。例えば、一部の実施形態では、メンバーペプチドは、基準ペプチドに対して全体的な配列相同性または配列同一性を示しており、その程度は、少なくとも約30~40%であり、及び、約50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上を超えることがよくあり、及び/または90%、または、95%、96%、97%、98%、または99%をも超える非常に大きな配列相同性を示す少なくとも1つの領域(例えば、一部の実施形態では、特徴的な配列要素とし得る、またはそれを含み得る保存領域)を含む。このような保存領域は、通常、少なくとも3~4個、及び、最大で20個以上のアミノ酸を含むことが多い;一部の実施形態では、保存領域は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15個以上の連続するアミノ酸の少なくとも一続きの範囲を含む。
【0045】
ポリペプチド:本明細書で使用する用語「ポリペプチド」または「タンパク質」とは、少なくとも3つのアミノ酸残基のポリマーのことを指す。一部の実施形態では、ポリペプチドは、1つ以上の天然アミノ酸を含み、またはすべてが天然アミノ酸である。一部の実施形態では、ポリペプチドは、1つ以上の非天然アミノ酸を含み、またはすべてが非天然アミノ酸である。一部の実施形態では、ポリペプチドは、1つ以上のD-アミノ酸を含み、またはすべてがD-アミノ酸である。一部の実施形態では、ポリペプチドは、1つ以上のL-アミノ酸を含み、またはすべてがL-アミノ酸である。一部の実施形態では、ポリペプチドは、1つ以上のペンダント基、またはその他の修飾、例えば、ポリペプチドのN末端、ポリペプチドのC末端、またはそれらのあらゆる組み合わせにおいて、1つ以上のアミノ酸側鎖を修飾または結合すること、を含む。一部の実施形態では、ポリペプチドは、1つ以上の修飾、例えば、アセチル化、アミド化、アミノエチル化、ビオチン化、カルバミル化、カルボニル化、シトルリン化、脱アミド化、脱イミノ化、エリミニル化、グリコシル化、脂質化、メチル化、ペグ化、リン酸化、スモイル化、またはそれらの組み合わせなどを含む。一部の実施形態では、ポリペプチドは、1つ以上の分子内または分子間ジスルフィド結合に関与し得る。一部の実施形態では、ポリペプチドを、環状とし得る、及び/または環状部分を含み得る。一部の実施形態では、ポリペプチドは、環状ではなく、及び/または環状部分を含まない。一部の実施形態では、ポリペプチドは、線状である。一部の実施形態では、ポリペプチドは、ステープルポリペプチドを含み得る。一部の実施形態では、ポリペプチドは、(例えば、抗体の場合のように)1つ以上のその他のポリペプチドとの非共有性会合または共有性会合による非共有複合体の形成に関与する。一部の実施形態では、ポリペプチドは、自然界に生ずるアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、ポリペプチドは、自然界に生じないアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、ポリペプチドは、遺伝子操作したアミノ酸配列を有しており、それは、ヒトの手を介してデザイン及び/または作り出したものである。一部の実施形態では、用語「ポリペプチド」を、基準ポリペプチド、活性、または構造の名称に付加し得る;そのような場合、本明細書では、関連する活性または構造を共有しており、それ故に、同じクラスまたはファミリーのポリペプチドのメンバーであると見なすことができるポリペプチドを指すために使用する。そのようなクラスのそれぞれについて、本明細書は、及び/または当業者が知っている、アミノ酸配列及び/または機能が公知であるクラスに属する例示的なポリペプチドを提供する;一部の実施形態では、そのような例示的なポリペプチドは、ポリペプチドクラスまたはファミリーの基準ポリペプチドである。一部の実施形態では、ポリペプチドクラスまたはポリペプチドファミリーのメンバーは、共通の配列モチーフ(例えば、特徴的な配列要素)と有意な配列相同性または同一性を示し、及び/または当該クラスの基準ポリペプチドと;一部の実施形態では、当該クラスにある全ポリペプチドと、共通の(一部の実施形態では、同等のレベル、または指定した範囲内の)活性を共有する。例えば、一部の実施形態では、メンバーポリペプチドは、基準ポリペプチドに対して全体的な配列相同性または配列同一性を示しており、その程度は、少なくとも約30~40%であり、及び、約50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上を超えることがよくあり、及び/または90%、または、95%、96%、97%、98%、または99%をも超える非常に大きな配列相同性を示す少なくとも1つの領域(例えば、一部の実施形態では、特徴的な配列要素とし得る、またはそれを含み得る保存領域)を含む。このような保存領域は、通常、少なくとも3~4個、及び、最大で20個以上のアミノ酸を含むことが多い;一部の実施形態では、保存領域は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15個以上の連続するアミノ酸の少なくとも一続きの範囲を含む。一部の実施形態では、有用なポリペプチドは、親ポリペプチドのフラグメントを含み得る。一部の実施形態では、有用なポリペプチドは、複数のフラグメントを含み得るものであり、そのそれぞれは、関心を寄せたポリペプチドに認められるものとは互いに異なる空間的配置で同じ親ポリペプチドに認められる(例えば、親において直接に結合しているフラグメントは、関心を寄せたポリペプチドで空間的に分離し得る、またはその逆となり得る、及び/またはフラグメントは、関心を寄せたポリペプチドでは、親とは異なる順序で存在し得る)ので、関心を寄せたポリペプチドは、その親ポリペプチドの誘導体である。
【0046】
対象:本明細書で使用する用語「対象」とは、生物、一般的には、哺乳動物(例えば、ヒト、一部の実施形態では、出生前のヒト形態を含む)のことを指す。一部の実施形態では、対象は、関連する疾患、障害、または病態に罹患している。一部の実施形態では、対象は、疾患、障害、または病態に対して感受性を示す。一部の実施形態では、対象は、疾患、障害、または病態の1つ以上の症状または特徴を示す。一部の実施形態では、対象は、疾患、障害、または病態のいかなる症状または特徴も示さない。一部の実施形態では、対象は、疾患、障害、または病態に対する感受性またはリスクに特徴的な1つ以上の特徴を有する人物である。一部の実施形態では、対象は、患者である。一部の実施形態では、対象は、診断が下されている、及び/または療法が始まっている、及び/または始まった個体である。
【0047】
実質的に:本明細書で使用する用語「実質的に」とは、関心を寄せた特徴または特性を、全体的またはほぼ全体的な程度(extent)または程度(degree)で示す定性的条件のことを指す。生物学の分野の当業者であれば、生物学的及び化学的現象が、たとえ有るにしても、完璧に進行すること、及び/または完全性を求めて進行すること、または絶対的な結果を達成または回避することが稀である、ことを理解する。したがって、本明細書で使用する用語「実質的に」とは、数多くの生物学的及び化学的現象に固有の完全性が、潜在的に欠如していることを示す。
【0048】
特定の実施形態の詳細な説明
本開示は、遺伝子療法をモニタリング、及び/または、そうでなければ、評価するための技術を提供する。本明細書に記載したように、本開示は、遺伝子療法治療を組み込んだ末に生成するバイオマーカー(複数可)の検出及び評価に関するものであり、その存在及び相対量は、遺伝子療法治療を介して送達するペイロードに関する情報、例えば、送達したペイロードの存在、量、及び/または動態に関する情報を示す。本開示の一態様では、バイオマーカーの存在、量、及び/または動態は、送達したペイロードの存在、量、及び/または動態を決定するための代用指数として機能する。本開示の一部の実施形態では、バイオマーカーは、組み込み遺伝子療法治療を受けた対象から採取した生物学的試料から評価する。本開示の一部の実施形態では、バイオマーカーは、対象から採取した非組織生物学的試料で評価することができる。本開示の一部の実施形態では、ペイロードは、(例えば、適切な導入遺伝子の送達を介して)組み込み遺伝子療法治療を受けた対象の組織に送達され、そして、そこに留まる。
【0049】
遺伝子療法を組み込む
遺伝子療法は、対象の細胞に対して遺伝物質を導入して、一般的には、異常な遺伝子を補償することができるペイロードを発現させ、または、そうでなければ、対象に対して有用な効果を提供する。遺伝子療法を組み込むと、遺伝物質が導入されて、レシピエント細胞に存在する遺伝子配列(すなわち、標的部位)に組み込むことができるようになる。
【0050】
レシピエント細胞または生物において関心を寄せた標的部位に遺伝物質を組み込ませるための様々な技術は、当業者に公知である。そのような組み込んだ遺伝子要素は、宿主細胞または生物に送達するペイロードをコードする核酸配列(すなわち、「導入遺伝子」、本明細書で使用する用語である)を含むことができる。一般的に、導入遺伝子は、ベクターで送達する;導入遺伝子の組み込みを達成するために首尾よく利用することができるウイルス及び非ウイルスベクターシステムの両方は、当業者に公知である。
【0051】
本開示は、様々な組み込み遺伝子療法技術が抱えている問題の原因特定を行う。
【0052】
例えば、本開示は、非効率的または非効果的な組み込みが、遺伝子療法戦略の有用性を制限することを認識している。ベクターが組み込みに失敗すると、一般的には、成長または組織再生のプロセスの間に細胞分裂すると同ベクターを喪失してしまい、そして、送達した導入遺伝子(またはペイロード)が提供した、または提供したであろうあらゆる利益をも喪失してしまう。当初に組み込みが成功しても、その後に、例えば、組換え事象、またはレシピエント細胞の死滅などで成果の喪失を招いた場合でも、同様の困難が生じる。
【0053】
本開示は、数多くの遺伝子組み込み技術または事象が、標的組み込み部位を制御できない、または正確に制御できないこと、及び組み込み部位が、導入遺伝子発現の程度及び/またはタイミングに有意の影響を及ぼすことができる、及び/またはレシピエント細胞の健康または生存能力にも影響を及ぼすことができる、ことをさらに認識している。さらに、本開示は、実に一部の「標的化」遺伝子組み込み技術が、組み込みの部位に悪影響を及ぼし得ることを認識しており、その結果、導入遺伝子の発現は、所望のレベルで、及び/または所望の期間にわたって、達成及び/または維持し得ない。
【0054】
本開示は、数多くの遺伝子療法手法が、プロモーター(例えば、外因性プロモーター)と機能的に関連する導入遺伝子を導入し、そして、そのようなプロモーターの発現の特徴が、制御不能の増殖(例えば、がん)、特に、高レベルの遺伝子発現を駆動するプロモーターのリスクを潜在的に高めるなど、レシピエント細胞に対して悪影響を及ぼす、ことをさらに認識している。
【0055】
したがって、本開示は、数多くの組み込み遺伝子療法治療に横たわるある問題の原因が、関連するペイロードの発現をモニタリングする、特に、特に経時的なモニタリングを失敗している、または、それができていない、ことにあるとの見識を提供する。数多くのペイロードが細胞内にある、または細胞内にあり得る、及び/またはそれらの発現及び/または活性化を意図している組織が、比較的に到達が難しいことが考慮されて、定期的なモニタリングは、あまり試されていない。
【0056】
本開示は、特定の遺伝子組み込み技術が、導入遺伝子の組み込み及びペイロードの発現を成功させる上で効果的なバイオマーカーを生成することができる、という知見に寄与している。さらに、本開示は、そのような特定の技術が、容易に入手可能な生物学的試料(例えば、血液、尿、涙液など)から評価することができるバイオマーカーを生成する、ことを実証している。したがって、本開示は、特に、首尾良く組み込みして生成し、かつ、ペイロード発現を反映するバイオマーカーをモニタリングする(例えば、数多くの実施形態では、複数の時点での検出及び/または定量の)ためのシステムを提供することで、組み込み遺伝子療法を改善する技術を提供する。
【0057】
様々な組み込み的遺伝子療法技術のいずれかを使用し得る、ことが考えられる。一部の実施形態では、組み込み遺伝子療法として、ベクターをベースとしたシステム(例えば、ウイルスベクターをベースとしたシステム)、非ウイルスベクターをベースとしたシステム、ヌクレアーゼ媒介システムの使用とし得る、またはそれらを含み得る、及び/またはGENERIDE(商標)システムの使用、またはそれらのあらゆる組み合わせがあるが、これらに限定されない。
【0058】
ベクターをベースとしたシステム
一部の実施形態では、組み込み遺伝子療法は、ベクターをベースとしたシステム(例えば、ウイルスベクター)とし得る、またはそれを含み得る。一般的に、ベクターをベースとしたシステムは、ウイルスまたはウイルス遺伝物質を含んでおり、そこに外来DNAのフラグメントを挿入して、細胞に移すことができる。そのライフサイクルにDNA段階を含むあらゆるウイルスを、本開示の一部の実施形態の範囲内でウイルスベクターとして使用し得る。ウイルスベクターをベースとしたシステムを、一本鎖DNAウイルス、二本鎖DNAウイルス、そのライフサイクルにDNA段階を有するRNAウイルス、例えば、レトロウイルスとし得るが、これらに限定されない。一部の実施形態では、ウイルスベクターは、医薬として許容可能な製剤、例えば、リポソームまたは脂質粒子(例えば、マイクロ粒子またはナノ粒子)を介して送達し得る。
【0059】
1つの例として、関心を寄せた1つのウイルスは、アデノ随伴ウイルスであるが、これに限定されない。アデノ随伴ウイルス、または「AAV」とは、ウイルス自体、またはその誘導体を意味する。この用語は、別に必要とするものを除いて、すべてのサブタイプと、天然型及び組換え型の両方とを対象としており、例えば、AAVタイプ1(AAV-1)、AAVタイプ2(AAV-2)、AAVタイプ3(AAV-3)、AAVタイプ4(AAV-4)、AAVタイプ5(AAV-5)、AAVタイプ6(AAV-6)、AAVタイプ7(AAV-7)、AAVタイプ8(AAV-8)、AAVタイプ9(AAV-9)、AAVタイプ10(AAV-10)、AAVタイプ11(AAV-11)、トリAAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、霊長類AAV、非霊長類AAV、ヒツジAAV、ハイブリッドAAV(すなわち、あるAAVサブタイプのカプシドタンパク質と、別のサブタイプのゲノム物質とを含むAAV)、変異型AAVカプシドタンパク質を含むAAV、またはキメラAAVカプシド(すなわち、2つ以上の異なるAAV、例えば、AAV-DJ、AAV-LK3、AAV-LK19の血清型に由来する領域またはドメインまたは個々のアミノ酸を有するカプシドタンパク質)がある。「霊長類AAV」とは、霊長類に感染するAAVのことを指し、「非霊長類AAV」とは、非霊長類哺乳類に感染するAAVのことを指し、「ウシAAV」とは、ウシ哺乳類に感染するAAVなどのことを指す。
【0060】
使用するベクター(例えば、ウイルスベクター)に関係なく、標的の組み込みを促すために、標的ベクターは、組み込みの部位に、相同組換えを許容する核酸配列、例えば、アルブミン遺伝子、コラーゲン遺伝子、アクチン遺伝子などとの相同組換えを許容する配列を含む。このプロセスは、「ドナー」分子、例えば、標的ベクターを使用するヌクレオチド配列の相同性、「標的」分子、すなわち、核酸の配列を取り込んでいる核酸、例えば、細胞ゲノムでの標的遺伝子座の修復をテンプレート化することを必要としており、そして、ドナーから標的に向けて遺伝情報の伝達を行う。したがって、対象組成物の標的ベクターにおいて、細胞ゲノムに取り込まれる導入遺伝子は、開裂部位でのゲノム配列に対して十分な相同性、例えば、開裂部位から約50塩基以下以内、例えば、約30塩基以内、約15塩基以内、約10塩基以内、約5塩基以内、または標的組み込み部位に直接に隣接させて、例えば、開裂部位に隣接するヌクレオチド配列と70%、80%、85%、90%、95%、または100%の相同性有する配列に隣接して、それと相同性を有するゲノム配列との間の相同組換えを補助し得る。ドナーとゲノム配列との間の約25、50、100、250、または500ヌクレオチド以上の配列相同性は、両者の間での相同組換えを補助する。
【0061】
非ウイルスベクターシステム
一部の実施形態では、組み込み遺伝子療法は、非ウイルスベクターをベースとしたシステムとし得る、またはそれを含み得る。一部の実施形態では、非ウイルスベクターシステムは、プラスミド、ポリマーをベースとした粒子、ceDNA、リポソーム、ミニサークル、及びそれらの組み合わせとし得る、またはそれらを含み得る。一部の実施形態では、非ウイルスベクターシステムは、化学担体(複数可)の使用、エレクトロポレーション、バリスティックDNA(例えば、粒子衝突)の使用、ソノポレーション、フォトポレーション、マグネトフェクション、ハイドロポレーション、及びそれらのあらゆる組み合わせとし得る、またはそれらを含み得る。
【0062】
上記した説明と同様に、使用する非ウイルスベクターシステム(複数可)のタイプ(複数可)に関係なく、標的の組み込みを促すために、組み込みの部位での相同組換えを許容する1つ以上の核酸配列を使用する/標的部位に送達させる必要がある。
【0063】
ヌクレアーゼを介した組み込み
様々な実施形態によれば、ヌクレアーゼ媒介組み込みは、遺伝子操作を受けた、またはDNAを切断する細菌で初めて同定した酵素である1つ以上のヌクレアーゼを使用する。一般的には、ヌクレアーゼを介した組み込みは、2段階プロセスである。まず、二本鎖DNAの一方または両方の鎖を切断できる外因性ヌクレアーゼを、合成ガイドRNAによって所望の部位に移動させ、そして、個別に切断を行う。ヌクレアーゼに所望の切断(複数可)を入れた後に、細胞のDNA修復機構を作動させて、NHEJ、または、あまり馴染みのないHDRを介して編集プロセスを完了する。
【0064】
一部の実施形態では、NHEJは、それがDNA切断を修復する際に、細胞をコピーするためのDNAテンプレートの非存在下で起こる。これは、細胞が二本鎖切断を修復するために使用する主要な経路または既定の経路である。NHEJメカニズムを使用して、小さな挿入または削除、別名、インデルを導入して、遺伝子の機能をノックアウトすることができる。NHEJは、その修復モードが故に、DNAに挿入と削除を生成し、そして、染色体異常など、オフターゲットの不要な突然変異の導入を招くこともできる。
【0065】
ヌクレアーゼを介したHDRは、ヌクレアーゼ、ガイドRNA、及び切断したDNAと同様のDNAテンプレートの同時送達によって生じる。その結果、細胞は、このテンプレートを使用して、修復DNAを構築して、欠陥のある遺伝子配列を、正しいものに置き換えることができる。一部の実施形態では、HDRメカニズムは、その高い忠実度が故に、ヌクレアーゼをベースとした手法を使用して修正配列を挿入する場合の好ましい修復経路である。しかしながら、ヌクレアーゼで切断した後のゲノムの修復の大部分は、NHEJメカニズムを継続して使用する。頻出するNHEJ修復経路は、切断部位に望ましくない変異を引き起こす可能性があるので、ヌクレアーゼを介したあらゆる組み込み手法が現時点で標的にすることができる疾患の範囲を制限する。
【0066】
GeneRide(商標)技術プラットフォーム
GeneRide(商標)は、ゲノムの忠実度を維持する天然に存在するDNA修復プロセスである相同組換え、またはHRを利用するゲノム編集技術である。HRを使用することで、GeneRide(商標)は、外因性ヌクレアーゼを使用せずに、特定の標的ゲノム位置にポリヌクレオチドを挿入でき、GeneRide(商標)が指令するポリヌクレオチド組み込みは、これらの標的位置で内因性プロモーターを活用して、外因性プロモーターの使用に関連する有害な問題を招かずに、高レベルの組織特異的遺伝子発現を駆動するようにデザインされている。本開示の一部の実施形態では、GeneRide(商標)を、ペイロードをコードするポリヌクレオチドを宿主細胞または生物に送達するために使用する。
【0067】
GeneRide(商標)技術を使用して、治療用ペイロードをコードするポリヌクレオチドを患者のゲノムに正確に組み込むことで、安定した治療効果を提供することができる。GeneRide(商標)は、この持続的な治療効果を奏するようにデザインしているので、小児患者での標的障害に対して利用することができ、その場合、不可逆的な疾患病状が出現する前に、患者の人生の初期に治療を提供することが重要である。
【0068】
一部の実施形態では、GeneRide(商標)は、AAVベクターを使用して、遺伝子を細胞の核に送達する。次いで、HRを使用して、内因性プロモーターが制御する箇所で、修正遺伝子をレシピエントのゲノムに安定的に組み込みを行い、そうすることで、身体が成長し、そして、経時的に変化する場合でも、生涯にわたるタンパク質の生産も可能になる。
【0069】
GeneRide(商標)は、正確で、部位特異的な、安定した、そして持続的な修正遺伝子の組み込みを、宿主細胞の染色体に対して提供することができる。GeneRide構築物を使用した前臨床動物実験では、ゲノムの特定の位置に修正遺伝子が組み込まれていることを認めている。
【0070】
GeneRide(商標)のモジュールを利用して、安定した組織特異的遺伝子発現を送達することができ、この発現は、1つ以上の組織に行き渡る様々な治療法の全体において再現可能である。GeneRide(商標)構築物内の異なる導入遺伝子を置換することにより、その導入遺伝子を送達して、新規の治療適応症に対処することができるようになり、その一方で、構築物のその他のすべての構成要素は実質的に維持している。この手法は、様々なGeneRide(商標)製品候補に関して共通の製造プロセスと分析の活用を可能とし、また、その他の治療プログラムの開発プロセスの短縮を可能ならしめる。
【0071】
非破壊遺伝子標的に関する従前の研究は、参照により、本明細書で援用するWO 2013/158309に記載されている。ヌクレアーゼを使用しないゲノム編集に関する従前の研究は、参照により、本明細書で援用するWO 2015/143177に記載されている。
【0072】
標的部位
本開示に従って使用する遺伝子療法の組み込みは、望ましくは、組み込んだ導入遺伝子と活性な内因性プロモーターとの機能的関連性を達成する組み込みを達成するものであって、そうすることにより、プロモーターからの転写によって、導入遺伝子を介して伸長する転写物が生成される。さらに、数多くの実施形態では、組み込みとは、そのような転写物が、導入遺伝子のオープンリーディングフレーム以外のオープンリーディングフレームを含むように選択した標的部位のことである。
【0073】
数多くの実施形態では、本開示に従った使用のための遺伝子療法の組み込みは、内因性遺伝子の標的部位(例えば、内因性遺伝子内または内因性遺伝子に隣接する特定の位置)での組み込みを達成するものであり、少なくとも遺伝子のプロモーターからの転写によって生成する転写物を伸長して、導入遺伝子を介した転写物の伸長を行う。
【0074】
一部の実施形態では、組み込み遺伝子療法治療または遺伝子組み込み組成物は、ペイロードをコードする配列を含む核酸要素を、対象のゲノムでの標的部位へと組み込むことを達成する。当業者であれば、様々な標的部位のいずれかが、本明細書に記載した方法及び組成物での使用に適切となり得ることを理解する。例えば、一部の実施形態では、標的部位は、ポリペプチドをコードする。一部の実施形態では、標的部位は、対象(例えば、疾患、障害または状態に罹患していない対象)において高度に発現するポリペプチドをコードし得る。一部の実施形態では、核酸要素の組み込みは、ポリペプチドをコードする内因性遺伝子の5’または3’末端で生じる。例として、一部の実施形態では、標的部位は、アルブミンをコードするが、これに限定されない。
【0075】
遺伝的要素及び/または導入遺伝子の組み込み的送達は、肝臓、中枢神経系(例えば、脊椎)、筋肉、腎臓、眼の網膜及び骨髄の造血細胞など、これらに限定されないあらゆる組織に対して達成できることを企図している。
【0076】
ペイロード
様々な実施形態によれば、本明細書に記載した通り、あらゆる利用に適切なペイロードを使用し得る。様々な実施形態によれば、導入遺伝子は、1つ以上のペイロードをコードする。本明細書で使用する用語「ペイロード」及び「関心を寄せた遺伝子」(GOI)は、互換可能に使用し得る。一部の実施形態では、ペイロードは、ペプチド、核酸(例えば、shRNA、miRNA、及び/または1つ以上のペプチドをコードする核酸)、及びそれらのあらゆる組み合わせである、またはそれらを含む。一部の実施形態では、組み込み遺伝子療法治療及び/または遺伝子組み込み組成物は、単一のペイロードを含む。一部の実施形態では、組み込み遺伝子療法治療及び/または遺伝子組み込み組成物は、2つ以上(例えば、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個以上)のペイロードを含む。
【0077】
例えば、一部の実施形態では、ペイロードは、細胞内で発現するペプチド、またはそのようなペプチドをコードする核酸配列(例えば、導入遺伝子)である、またはそれらを含む。細胞内で発現するペプチドの例として、メチルマロニル-CoA ムターゼ(MUT)、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)、グルコース-6-ホスファターゼ触媒サブユニット(G6PC)、プロピオニル-CoAカルボキシラーゼ、サブユニットアルファ(PCCA)、ATP結合カセット サブファミリーB メンバー11(ABCB11)、オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ(OTC)、UDPグルクロノシルトランスフェラーゼ ファミリー1 メンバーA1(UGT1A1)、酸アルファ-グルコシダーゼ(GAA)、ライソゾーム酸性グルコシルセラミダーゼ(GBA)、フラタキシン(FTX)があるが、これらに限定されない。
【0078】
一部の実施形態では、ペイロードは、細胞外に分泌されるペプチド、及び/またはそのようなペプチドをコードする核酸配列(例えば、導入遺伝子)である、またはそれらを含む。分泌したペプチドの例として、ヒト第IX因子(F9)、及びアルファ-1-アンチトリプシン(SERPINA1)があるが、これらに限定されない。
【0079】
一部の実施形態では、ペイロードは、病状を治療するための生物学的プロセスを促す細胞内因性または細胞外因性の活性を有するペプチドである。
【0080】
一部の実施形態では、ペイロードは、通常は、1つ以上の健康な組織において発現するペプチド、またはそのようなペプチドをコードする核酸配列とし得る、またはそれらを含み得る。例えば、一部の実施形態では、ペイロードは、通常は、肝細胞で発現するペプチドである。例えば、一部の実施形態では、ペイロードは、通常は、筋細胞で発現するペプチドである。例えば、一部の実施形態では、ペイロードは、通常は、中枢神経系の細胞で発現するペプチドである。例えば、一部の実施形態では、ペイロードは、通常は、眼の細胞で発現するペプチドである。
【0081】
一部の実施形態では、ペイロードは、通常は、1つ以上の健康な組織では発現しない(例えば、異所的に発現する)ペプチド、またはそのようなペプチドをコードする核酸配列とし得る、またはそれらを含み得る。例えば、一部の実施形態では、ペイロードは、肝細胞で異所的に発現するペプチドである。例えば、一部の実施形態では、ペイロードは、通常は、筋細胞で発現しないペプチドである。例えば、一部の実施形態では、ペイロードは、通常は、中枢神経系の細胞で発現しないペプチドである。例えば、一部の実施形態では、ペイロードは、通常は、眼の細胞で発現しないペプチドである。
【0082】
一部の実施形態では、ペイロードは、(例えば、活性化剤によって活性化する)活性化要素を含み得る。一部の実施形態では、ペイロードは、(例えば、不活性化剤によって活性化する)不活性化要素を含み得る。一部の実施形態では、活性化剤または不活性化剤は、小分子とし得る、またはそれを含み得る。
【0083】
バイオマーカー
本開示は、ペイロードの発現の代用指数として作用することができる検出可能なバイオマーカーを生成する組み込み遺伝子療法技術を提供する。
【0084】
本開示によれば、組み込んだ導入遺伝子の発現は、少なくとも1つの翻訳可能なオープンリーディングフレームを含む転写物の産生に関与しており、当該オープンリーディングフレームは、導入遺伝子がコードするペイロードから分離する、または分離可能なポリペプチドをコードする。一部の実施形態では、転写物の翻訳は、ペイロードをバイオマーカーから分離するために開裂する単一のポリペプチドを生成する;一部の実施形態では、転写物の翻訳は、別個のバイオマーカー及びペイロードポリペプチドを生成する。
【0085】
本開示に記載した通り、様々な実施形態と互換可能となるような、様々なバイオマーカーの使用を企図している。一部の実施形態では、バイオマーカーは、標的部位がコードするポリペプチドを翻訳した後に、標的部位がコードするポリペプチドに融合する検出可能な部分である、またはそれを含む。一部の実施形態では、バイオマーカーは、標的部位がコードするポリペプチドを翻訳した後に、ペイロードがコードするポリペプチドに融合する検出可能な部分である、またはそれを含む。一部の実施形態では、例えば、ペイロードが、内因性タンパク質の修飾形態であり、したがって、そうでなければ、内因性バージョンとは分けて、かつ別に検出することが困難または不可能である場合に、バイオマーカーにペイロードとの関連性を持たせることは有利に作用することとなる。一部の実施形態では、検出可能な部分は、バイオマーカーに結合する作用物質(例えば、抗体またはそのフラグメント、例えば、2Aペプチドに結合する抗体)とし得る、またはそれを含み得る。
【0086】
一部の実施形態では、バイオマーカーは、2Aペプチドである、またはそれを含む。一部の実施形態では、2Aペプチドは、P2A、T2A、E2A及びF2Aからなる群から選択する。一部の実施形態では、バイオマーカーは、Furin開裂モチーフとし得る、またはそれを含み得る。例として、数多くのFurin開裂モチーフが、Tian et al., FurinDB: A Databse of 20-Residue Furin Cleavage Site Motifs, Substrates and Their Associated Drugs, (2011), Int. J. Mol. Sci., vol. 12: 1060-1065に記載されているが、これらに限定されない。特定の例として、一部の実施形態では、2Aペプチドは、アミノ酸配列ATNFSLLKQAGDVEENPGP(配列番号1)を有し得る、または含み得る、そして、そのような2Aペプチドをコードする導入遺伝子は、ヌクレオチド配列gccaccaacttcagcctgctgaaacaggccggcgacgtggaagagaaccctggcccc(配列番号2)を有し得る、または含み得る。一部の実施形態では、2Aペプチドは、配列番号1または配列番号2と、少なくとも80%が同一である(例えば、少なくとも85%、90%、95%、99%が同一である)配列を有する。一部の実施形態では、2Aペプチド、または2Aペプチドをコードする導入遺伝子は、Kim et al., (2011) High Cleavage Efficiency of a 2A Peptide Derived from Porcine Teschovirus-1 in Human Cell Lines, Zebrafish and Mice, PLoS ONE, vol. 6(4):e18556;Wang et al. (2015) 2A self-cleaving peptide-based multi-gene expression system in the silkworm Bombyx mori, Sci Rep., vol. 5: 16273;Yu et al. (2012) Use of Mutated Self-Cleaving 2A Peptides as a Molecular Rheostat to Direct Simultaneous Formation of Membrane and Secreted Anti-HIV Immunoglobulins. PLoS ONE 7(11): e50438;または Trichas et al. (2008), Use of the viral 2A peptide for bicistronic expression in transgenic mice, BMC Biology, vol. 6:40に記載されているようにして、生成し得る、または生成する。
【0087】
一部の実施形態では、バイオマーカーは、タグ(例えば、免疫学的タグ)、例えば、myc、HA、FLAG、またはその他のタグとし得る、またはそれらを含み得る。一部の実施形態では、バイオマーカーは、内部リボソーム侵入部位(IRES)とし得る、またはそれを含み得る。
【0088】
検出可能な部分を検出する
本明細書に記載したように、本明細書に記載した方法及び組成物に利用可能な検出(例えば、バイオマーカーまたは検出可能な部分などのシグナルの検出)は、あらゆる用途に適した方法で達成し得る。例えば、一部の実施形態では、検出ステップは、免疫学的アッセイ、または核酸増幅アッセイである、またはそれを含む。
【0089】
本明細書に記載したように、数多くの実施形態は、1つ以上の生物学的試料(例えば、対象から採取した液体または組織の試料)の使用を含み、そして、バイオマーカーを検出する方法は、特定の実施形態で使用する生物学的試料に応じて変化し得る。本開示によれば、様々な実施形態と互換可能となるような、様々な生物学的試料のいずれかの使用を企図している。例えば、一部の実施形態では、生物学的試料は、毛髪、皮膚、糞便、血液、血漿、血清、脳脊髄液、尿、唾液、涙液、硝子体液、または粘液である、またはそれらを含む。
【0090】
様々な実施形態によれば、そして、使用する特定のバイオマーカー(複数可)に応じて、当業者であれば、生物学的試料でのバイオマーカーの存在及び/または量/レベルを検出または決定する1つ以上の適切な方法を想到する。一部の実施形態では、蛍光、放射能、化学発光、電気化学発光、比色分析、FRET、HTRF、同位体法、パートナー結合(例えば、ビオチン/アビジン、抗体、ハイブリダイゼーション)、または、その他のあらゆる公知のバイオマーカーを検出する方法など、様々なモダリティのいずれかを使用して、バイオマーカーを検出し得る。一部の実施形態では、検出可能な部分(例えば、外因的に加えた検出可能な部分)、例えば、上記したモダリティの1つ以上で記載したタグを含む抗体、または酵素(例えば、ルシフェラーゼ、β-gal)などの結合を介して、バイオマーカーは検出し得る。
【0091】
応用例とさらなる態様
当業者であれば、本明細書に記載した方法が、遺伝子療法が関係する様々な用途において有用であり得ることを容易に理解する。一部の実施形態では、本明細書に記載した方法は、所望のまたは「正常」レベルの発現と比較して、ペイロードが、過剰発現または過少発現しているか否かを評価する上で有用となり得る。一部の実施形態では、本明細書に記載した方法を使用して、遺伝子療法に対して潜在的に有害な反応(例えば、抗薬物抗体、及び/またはサイトカインストームなどの有害な免疫応答の惹起)を予測または特徴決定し得るものであり、したがって、医療介入、及び/または副作用の緩和を潜在的に可能ならしめる。
【0092】
特に、本明細書に記載した方法及び組成物が、様々な疾患、障害、または病態のいずれに対しても利用可能である、ことを想定している。例として、一部の実施形態は、アシドーシス/酸血症(例えば、メチルマロン酸血症)、尿素サイクル障害、血友病、クリグラー・ナジャール病、急性肝性ポルフィリン症、遺伝性ATTRアミロイド症、及び/またはアルファ-1 アンチトリプシン欠乏症(A1ATD)など、これらに限定されないものの治療過程またはその他のパラメーターをモニタリングする上で有用となり得る。
【0093】
様々な実施形態によれば、様々な遺伝子療法レジメンと互換可能となるような、本明細書に記載した方法及び組成物を企図している。例えば、一部の実施形態では、対象は、単回の遺伝子療法治療を受ける、または遺伝子組み込み組成物の単回投与を受ける。一部の実施形態では、対象は、2回以上の複数回(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10回以上)の遺伝子療法治療を受ける、及び/または遺伝子組み込み組成物の投与を2回以上受ける。
【0094】
加えて、遺伝子療法治療(複数可)をした後の様々な時点(例えば、対象が遺伝子療法治療を受けて数時間後、数日後、数週間後、または数ヶ月後)のいずれかにおいて利用可能となるような、本明細書に記載した方法及び組成物を企図している。したがって、一部の実施形態では、対象が、遺伝子療法治療を受けてから、または遺伝子組み込み組成物を与えられてから、1、2、3、4、5、6、7、8週間後またはそれ以後の週に、検出ステップを行う。一部の実施形態では、対象が、遺伝子療法治療を受けた後、または遺伝子組み込み組成物を与えられ後の複数の時点で、検出ステップを行う。一部の実施形態では、検出ステップは、対象が、遺伝子療法治療を受けた後、または遺伝子組み込み組成物を与えられた後の少なくとも3ヶ月の期間にわたって(例えば、複数回)、検出ステップを行う。
【0095】
驚くべきことに、一部の実施形態は、遺伝子療法を受けると、人生の様々な段階にある対象に恩恵を与えることができ(例えば、療法のモニタリング及び/または調整を容易ならしめる)、また、一部の実施形態では、対象の人生の節目で使用し得る方法を提供するという知見を得た。一部の実施形態では、対象が乳児である時に、遺伝子療法治療を受ける、または遺伝子組み込み組成物が与えられる。一部の実施形態では、対象が成人期に達する前に(例えば、子供である時に)、遺伝子療法治療を受ける、または遺伝子組み込み組成物が与えられる。一部の実施形態では、対象が成人である時に、遺伝子療法治療を受ける、または遺伝子組み込み組成物が与えられる。
【0096】
本明細書に記載した方法及び組成物は、遺伝子療法を受ける必要性に加えて、それぞれが潜在的に交絡因子/条件または複合因子/条件を併せ持っている様々な対象に対して利用可能となることを特に企図している。加えて、遺伝子療法の一部の形態では、厄介な反応(例えば、自己免疫反応、サイトカインストームなど)を引き起こすことが知られており、またはそうなるものと推測されている。したがって、一部の実施形態では、遺伝子療法に対する自己免疫応答に関して、対象をモニタリングすることをさらに含む方法を提供する。一部の実施形態では、遺伝子療法に対する異常なサイトカイン応答(例えば、サイトカインストーム)に関して、対象をモニタリングすることをさらに含む方法を提供する。
【0097】
本開示は、折に触れて遺伝子療法を調整する(例えば、強化する、または抑制する)必要があると認識しており、様々な実施形態では、そのような調整の必要性をモニタリングし、及び/または首尾よく調整することが好ましいと考えられる。したがって、一部の実施形態では、バイオマーカーのレベルが、組み込み遺伝子療法の治療有効量を達成して得られるレベルよりも低ければ、対象に対してさらなる作用物質(例えば、活性化剤)を投与する、ことをさらに含む方法を提供する。加えて、または代替的に、一部の実施形態では、バイオマーカーのレベルが、ペイロードの最適レベルまたは安全レベルを示すレベルを超えておれば、遺伝子療法治療によって送達したペイロードの発現を抑制または阻害する対象に対して、さらなる作用物質(例えば、不活性化剤)を送達する、ことをさらに含む方法を提供する。
【実施例0098】
例示
実施例1:バイオマーカーとペイロードの検出のための例示的な方法
本実施例は、本開示によるバイオマーカー及び/またはペイロードの検出、モニタリング、及び/または分析に利用することができる例示的な方法を実証している。実施例2~7では、本明細書に記載した方法及び材料を使用した。
ゲノムDNA組み込み(INT)アッセイ:ロングレンジqPCR
ゲノムDNA(gDNA)を、QiagenのDNeasyキットを使用して、凍結マウス肝臓組織から分離した。プライマーF1/R1(ステップ1)で増幅したロングレンジPCR(LR-PCR)産物を、SPRI磁気ビーズで精製し、そして、プライマーセットF2/R2を利用するネステッドqPCR(ステップ2)で使用した(
図2)。5’ホモロジーアームから関心を寄せた遺伝子(GOI)(約2.1Kb)までの上流のフラグメントを含む合成dsDNAを使用して、標準曲線を作成した。標準と試料を並べて行った。Tfrcは、正規化のロードコントロールとして使用した。
【0099】
エピソームDNAアッセイ
ゲノムDNA(gDNA)を、QiagenのDNeasyキットを使用して、マウス肝臓から分離した。エピソームのコピー数を、線状エピソームプラスミドで作成した標準曲線を使用するqPCR(
図3)で決定した。Tfrcは、正規化のロードコントロールとして使用した。プライマーと内因性Alb遺伝子との交差反応性が故に、ゲノムでの2つのコピーのAlbに関して、アッセイの検出限界は2である。
【0100】
融合mRNAアッセイ
マウス肝臓由来のRNAは、QiagenのRNeasyキットを使用して分離した。融合したmRNAのコピー数を、プライマーセットFwd/R
Fを利用するddPCRで確認した(
図4)。内因性Albのコピー数は、プライマーセットFwd/R
Eを利用するddPCRで測定を行い、そして、正規化に使用した。
【0101】
アルブミン-2A ELISA
血漿でのアルブミン-2Aを、当社の捕捉用ウサギポリクローナル抗2A抗体と、検出用HRP標識ポリクローナルヒツジ抗アルブミン抗体(BioRad AHP102P)とを使用して、化学発光ELISAで測定した(
図5A)。哺乳動物細胞で発現し、かつアフィニティー精製を行った組換えマウスアルブミン-2Aを使用して、マトリックス効果を説明するために、10%コントロールマウス血漿で標準曲線を作成した(
図5B)。1%のカゼイン(Thermo 37528)をブロッキングに使用し、そして、0.1%のものを、試料希釈物を含むPBSTに使用した。
【0102】
アルブミンELISA
血漿での総マウスアルブミンを、捕捉用ポリクローナルヤギ抗マウスアルブミン抗体(abcam ab 19194)と、検出用ポリクローナルヒツジHRP標識抗アルブミン抗体(BioRad AHP102P)とを使用して、化学発光ELISAで測定した。マウスアルブミン標準は、Sigma(SLBX6058)から購入した。1%のカゼイン(Thermo 37528)をブロッキングに使用し、そして、0.1%のものを、試料希釈物を含むPBSTに使用した。
【0103】
高感度アルブミン-2A ELISA
当初のアルブミン-2A ELISAプロトコルを、アッセイの感度を改善し、かつマトリックス干渉を最小限に抑えるように最適化した。当社で開発した組換えウサギモノクローナル抗2A抗体を捕捉用に使用し、そして、HRP標識ポリクローナルヤギ抗アルブミン抗体(abcam ab19195)を検出用に使用した(
図5A)。哺乳動物細胞で発現し、かつ純度>95%にアフィニティー精製した組換えマウスアルブミン-2Aを標準として使用して、1%以下のコントロールマウス血漿または血清において、検量線を作成した(
図14)。1%脱脂粉乳からなる緩衝剤をブロッキングに使用し、そして、試料を、1%BSAを含むPBSTで希釈した。この最適化したプロトコルでの検出下限は、<lng/mLである。
【0104】
ヒト第IX因子ELISA
血漿でのヒト第IX因子を、捕捉用モノクローナルマウス抗ヒト第IX因子抗体(Sigma F2645)と、検出用ヤギポリクローナルHRP標識抗ヒト第IX因子抗体(Affinity Biologicals GAFIX-APHRP)を使用して、化学発光ELISAで測定した。ヒト第IX因子標準は、abcam(ab62544)から購入し、そして、マトリックス効果を説明するために、標準曲線を6%コントロールマウス血漿で作成した。3%BSAをブロッキングに使用し、そして、1%のものを、試料希釈物を含むPBSTに使用した。
【0105】
カニクイザルA1AT ELISA
血漿でのカニクイザルA1ATを、捕捉用ヤギポリクローナル抗A1AT抗体(MP Biomedical 55030)と、検出用ヒツジポリクローナルHRP標識抗A1AT抗体(abcam ab8768)を使用して、化学発光ELISAで測定した。哺乳動物細胞で発現した組換えカニクイザルA1ATを使用して、マトリックス効果を説明するために、10%コントロールマウス血漿で標準曲線を作成した。3%のBSAをブロッキングに使用し、そして、1%のものを、試料希釈物を含むPBSTに使用した。
【0106】
MUTウエスタンブロット
凍結肝臓組織(約60mg)を、2度のビーズ撹拌(3500rpm/撹拌で20秒間)を行ったMP Biomedicals Lysing Matrix D(#116913050)を使用して、溶解緩衝剤(0.5% Igepal-630、50mM Tris-HCl pH7.5、150mM NaCl、Rocheミニ錠剤プロテアーゼ阻害剤カクテルを補充した)で均質化した。肝臓溶解物を遠心分離して清澄化し、そして、総タンパク質を、BCAアッセイで定量した。溶解物(6μg/レーン)を、Trans-Turbo Blotシステム(Bio-Rad)のニトロセルロースメンブレンに転写する前に、MES緩衝剤を使用して、4~12% NuPAGE BisTris midi-gel(Life Technologies)で分割した。LI-COR Odysseyブロッキング緩衝剤でブロックした後に、メンブレンを、(a)ウサギモノクローナル抗MUT抗体(abcam ab134956)及びマウスモノクローナル抗β-アクチン抗体(abcam ab14128)、または(b)ウサギポリクローナル抗2A抗体(当社)及びマウスポリクローナル抗アルブミン(abcam ab19194)とインキュベーションした。二次抗体(抗ウサギIRDye800CW、及び抗マウスIRDye680CT)とのインキュベーションを行った後に、ブロットを、LI-COR Odysseyシステムでスキャンし、そして、画像を、ImageStudioソフトウェアで分析した。
【0107】
導入遺伝子とベクター
ヒト第IX因子導入遺伝子:5’末端にP2Aコード配列を有するコドン最適化ヒトF9 cDNAは、Alb終止コドンの上流側の1.3Kbと下流側の1.4Kbとを有する相同性アームに隣接していた(配列番号3)。
【0108】
ヒトメチルマロニル-CoAムターゼ導入遺伝子:5’末端にP2Aコード配列を有するコドン最適化ヒトMUT cDNAは、Alb終止コドンの上流側の1Kbと下流側の1Kbとを有する相同性アームに隣接していた(配列番号4)。
【0109】
マウスメチルマロニル-CoAムターゼ導入遺伝子:5’末端にP2Aコード配列を有するマウスMUT cDNAは、Alb終止コドンの上流側の1Kbと下流側の1Kbとを有する相同性アームに隣接していた(配列番号5)。
【0110】
カニクイザル アルファ-1-抗トリプシン(カニクイザル-A1AT)導入遺伝子:5’末端にP2Aコード配列を有するコドン最適化カニクイザルSERPINA1 cDNAは、Alb終止コドンの上流側及び下流側の1Kb(配列番号6)または750bp(配列番号:7)を有する相同性アームに隣接していた。
【0111】
ベクター調製:rAAV産生用のすべてのプラスミドを、QiagenのEndoFree Plasmid Gigaprep Kitを使用して調製した。
【0112】
DJベクターは、hF9及びMUTに関するCsCl勾配精製を用いた付着性HEK-293細胞でのトリプルトランスフェクションを使用し、かつ、アフィニティー精製と、それに続くカニクイザル-A1ATに関するイオジキサノール勾配を用いた懸濁HEK-293F細胞でのトリプルトランスフェクションを使用して、研究グレード規模で作成した。物理的力価を、qPCRで定量した。
【0113】
インビボ研究
すべての動物の取り扱いは、研究用動物の飼育に関するInstitutional Animal Care and Use Committee (IACUC)のガイドラインに従って実施した。
【0114】
C57BL/6及びFvB/NJマウスを、Jackson Laboratoryから購入して、新生児(p2)用と若年(p21)用の注射に供する子孫を増やすための繁殖ペアとして使用した。2日齢のマウスに対して、約10μLのベクターを用いて、1e13または1e14 vg/kgの最終用量を、または、ビヒクルグループにはPBSを、顔面静脈を介して静脈内(i.v.)注射をした。21日齢のマウスに対して、約100μLのベクターを用いて、1e13または1e14 vg/kgの最終用量を、または、ビヒクルグループにはPBSを、尾静脈を介して静脈内注射をした。成体マウス(>6週齢)に対して、約200μLのベクターを用いて、1e13または1e14 vg/kgの最終用量を、または、ビヒクルグループにはPBSを、尾静脈を介して静脈内注射をした。動物の体重を、毎週、確認した。断頭したp7動物を除いて、生存中は頬出血から採血を行い、そして、終末出血は心臓穿刺で得た。収集の際に、マウスにCO2を吸入させて安楽死させ、肝臓を回収し、切片化し、そして、直ちに急速凍結した。
【0115】
MUTマウスモデル(Mut-/-;TgINS-MCK-Mut)を、Charles Venditti博士(National Human Genome Research Institute, National Institutes of Health)から入手した。新生児マウス(p1~2)に対して、約10μLのhMUT-DJベクターを用いて、1e13、3e13、または1e14 vg/kgの最終用量を、または、ビヒクルにはPBSを、顔面静脈を介して静脈内注射をした。
【0116】
実施例2:エピソームDNAの検出
本実施例は、本明細書に開示した方法に従って、エピソームDNAを検出及び分析する応用例を実証している。
【0117】
P2Aコード配列と、内因性アルブミン標的部位で組み込むようにデザインしたヒト第IX因子導入遺伝子とを含むウイルスベクターを、新生児マウスに対して静脈内注射をした(実施例1に記載のヒト第IX因子導入遺伝子を参照されたい)。
【0118】
エピソームのコピー数は、注射後、経時的に指数関数的に減少した(
図6A)。エピソームコピーの減少は、肝臓の成長とともに認められた(p7での0.15gが、8週齢では1gになっている)(
図6B)。経時的にエピソームコピー/細胞が減少したにもかかわらず、導入遺伝子の発現は高いままであり、これは、GeneRide(商標)を使用して達成した時のように、最初の1週間以内に、ゲノムに導入遺伝子を安定して組み込めたものと考えられる(例えば、
図7A及び
図8Aを参照されたい)。
【0119】
これらのデータは、肝臓の成長とともに、エピソームDNA/細胞が、経時的に減少することを実証している。これらのデータは、動物の成長及び発達が、高力価のAAV、本明細書での1e14 vg/kgの投与による影響を受けない、ことをさらに実証している(
図6B~6C)。これらのデータは、インビボで送達したウイルスベクターのエピソームコピー数が、投薬及び組織成長の代用指数とすることができる、ことも実証している。具体的には、エピソームのコピー数は、動物に与えた用量に比例する。例えば、動物が、誤った投与を受けた場合(新生児マウスに対して静脈内注射した際に起こり得る)、その動物のエピソームコピーは、十分量を投与した動物よりも著しく小さくなる。
【0120】
実施例3:血漿でのALB-2Aの検出、及び内因性アルブミン発現の変化との相関
本実施例は、2Aペプチドをコードする核酸要素をインビボ送達した後の2A-ペプチド-タグ付きアルブミンの検出及びモニタリングを実証している。本実施例は、血漿でのALB-2Aのレベルの変化が、内因性アルブミン発現の変化と関連する、ことも実証している。
【0121】
実施例2に記載したウイルスベクターを使用して、新生児マウスに対して静脈内注射をした。ゲノム組み込みは、注射をして1週間後には早くも検出することができ、そして、2週間後には、すでに安定状態に達する(
図7A)。循環でのALB-2Aは、最初の3~4週間で増加し、その後、安定する(
図7B)。血漿ALB-2Aで認められた増加は、出生後の内因性アルブミンの指数関数的増加と関連している(
図7C及び
図7D)。
【0122】
これらのデータは、本開示に従って利用する方法が、血漿でのALB-2Aの簡便な検出及び/または分析を可能ならしめ、そして、血漿でのALB-2Aの検出及び/または分析を、2Aペプチドをコードする核酸要素をインビボ送達した後に、比較的早期に(例えば、1週間以内に)達成できることを実証している。これらのデータは、血漿でのALB-2Aのレベルが、2Aペプチドをコードする核酸要素を初めて送達した後に、複数の時間間隔でモニターすることができ、そして、血漿でのALB-2Aのレベルが、2Aペプチドの組み込みのための標的部位(例えば、アルブミン標的部位)でコードされる内因性ポリペプチドのレベルの変化と相関する、ことをさらに実証している。
【0123】
実施例4:初期バイオマーカー及び、ペイロードの検出と分析
本実施例は、本開示に従って利用する方法が、ペイロードをコードする核酸、及びバイオマーカーをコードする核酸をインビボ送達した後のペイロードの初期のインビボ検出及び分析を可能ならしめる、ことを実証している。本実施例は、ペイロード発現の動態が、バイオマーカー発現の動態と類似性を示すことも実証している。
【0124】
実施例2に記載したウイルスベクターを使用して、新生児マウスに対して静脈内注射をした。組み込んだ導入遺伝子から発現するヒト第IX因子の血漿レベルの分析は、ALB-2Aと同様の初期動態を示す(それぞれ、
図8A~8B)。血漿でのALB-2Aの動態と同様に、第IX因子のレベルは、出生後に内因性アルブミンが増えるにしたがって増加した。
【0125】
これらのデータは、ペイロード(例えば、第IX因子)の発現が、ウイルスベクターを介した送達をした後に、比較的早期に(例えば、1週間以内に)検出及び/または分析できることを実証している。これらのデータは、ペイロードを初めて送達した後の複数の時間間隔では、ペイロード(例えば、2Aペプチド)と共に送達したバイオマーカーの血漿レベルの発現動態が、ペイロードと同様の発現動態である、ことも実証している。
【0126】
実施例5:組み込み効率、血漿ALB-2A、及び導入遺伝子は、投与時の動物の年齢の影響を受けない
本実施例は、本開示に従って利用する方法を、発達段階にある幼若者(例えば、乳児)や未成年者など、その治療を受けようとする異なる年齢の対象に対して行う遺伝子療法治療に適用することができる、ことを実証している。本実施例は、本明細書に記載した方法が、成長の遅い組織または成長の早い組織のいずれかに行き着く遺伝子療法の分析に適用することができる、ことをさらに実証している。
【0127】
実施例2に記載したウイルスベクターを使用して、新生児(p2)マウスまたは幼若(p21)マウスに対して静脈内注射を行い、そして、注射の8週間後に採取をした。試験投薬時の年齢に関係なく、血漿でのALB-2A及びヒト第IX因子(それぞれ、
図9A及び9B)、ならびに2AバイオマーカーのRNA組み込み(
図9C)は、容易に検出することができる。ゲノムDNAへの組み込み効率は、投薬を受ける動物の年齢による有意な影響はない(
図9D)。注射をして8週間後のエピソームコピー数は、幼若動物の肝臓の成長の遅さに対応するかのように、p21で投薬した動物では高いままである(
図9E)。
【0128】
これらのデータは、組織を標的とした送達において、異なる年齢の対象、及び/または組織の異なる成長段階など、様々な発達段階にある対象に対して当該バイオマーカー及びペイロードを送達した後に、バイオマーカー(例えば、2A)及びペイロード(例えば、第IX因子)の発現が検出及び/または分析することができる、ことを実証している。本実施例では、DJベクターを使用して、肝臓を標的とした2Aとペイロードの核酸送達をする。
【0129】
実施例6:様々な実施年齢でのペイロードレベルに関する代用指数としてのバイオマーカーレベル
本実施例は、本開示に従って利用する方法が、ペイロードのレベルの代用指数としてバイオマーカーの検出及び分析を可能ならしめることを実証している。本実施例は、代用指数としてのバイオマーカーの使用が、多様な年齢層の対象へのペイロード及びバイオマーカーの送達のために利用し得ることも実証している。
【0130】
実施例2に記載したウイルスベクターを使用して、新生児(p2)、幼若(p21)または成体(p42及びp63)のマウスに対して静脈内注射を行い、そして、注射の4週間後に採取をした。ビヒクル処置と比較して、血漿(
図10A)及びヒト第IX因子(
図10B)でのALB-2Aの容易な検出が、試験をしたそれぞれの年齢層で認められた。ALB-2Aの相対レベルは、試験した年齢層の間のヒト第IX因子レベルを示すものであった(
図10C)。
【0131】
これらのデータは、バイオマーカー(例えば、ALB-2A)の検出が、ペイロード(例えば、第IX因子)の発現を示すものである、ことを実証している。これらのデータは、バイオマーカーの検出と分析が、対象に対して送達したペイロードのレベルの代用指数として有用であることをさらに例示している。さらに、ペイロードレベルの代用指数としてのそのようなバイオマーカーレベルの測定は、多様な年齢層の対象に送達したペイロードの分析において有用である。
【0132】
実施例7:ペイロードレベルの代用指数としてのバイオマーカーレベルは、ベクターデザインの変化として認められる
カニクイザルSERPINA1 cDNAであるP2Aコード配列と、1Kbまたは750bpの相同性アームを含み、内因性アルブミン標的部位に組み込まれるようにデザインした(実施例1に記載したカニクイザル アルファ-1-抗トリプシン(カニクイザイル-A1AT)導入遺伝子を参照されたい)ウイルスベクターを使用して、新生児マウスに対して静脈内注射をした。注射の6週間後に動物から採取を行った。ALB-2Aの血漿レベル(
図11A)は、750bp及び1Kbの両方の相同性アームを含むウイルスベクターで送達した後に検出した。組み込んだ導入遺伝子から発現するカニクイザルA1ATの血漿レベルも、試験した相同性アームの両方のセットについて容易に検出可能であった(
図11B)。ALB-2Aの相対レベルは、カニクイザルA1ATレベルを示していた(
図11C)。
【0133】
実施例8:細胞に固有のペイロードの組み込みと発現に関する代用指数としての血漿バイオマーカーレベル
本実施例では、Mut
-/-;Tg
INS-MCK-Mutマウス(本明細書ではMCK-Mutと称する)と称するMMAのマウスモデルを使用した。このマウスモデルでは、マウスMut遺伝子の機能的コピーが、クレアチンキナーゼプロモーターの制御下にあり、筋細胞でのMut発現を可能にしている。新生児MCK-Mutマウス(p2)に対して、P2Aコード配列と、コドン最適化ヒトMUT cDNA(実施例1に記載のヒトメチルマロニル-CoAムターゼ導入遺伝子を参照されたい)を含むウイルスベクターを、異なる用量で静脈内注射した。動物に対して、3ヶ月の期間にわたって採取を行った。肝臓での血漿ALB-2Aとゲノム組み込みは、容易に検出できた(
図12A)。肝臓及び血漿でのALB-2Aの相対レベルは、肝臓でのMUTタンパク質レベルを示していた(
図12B)。
【0134】
これらのデータは、本開示に従って利用する方法が、細胞固有のペイロード(例えば、MUT)の発現を可能にしており、その発現が、標的部位遺伝子(例えば、ALB-2A)がコードするポリペプチドに融合した検出可能な部分の発現の検出及び分析によって評価することができる、ことを実証している。これらのデータは、細胞固有のペイロード(例えば、MUT)の発現の変化が、検出可能な部分(例えば、2Aペプチド)の血漿レベルに類似の変化を反映することができることをさらに実証しており、その結果、検出可能な部分の血漿レベルの検出は、細胞に固有のペイロードの検出のための代用指数として機能することができる。加えて、これらのデータは、細胞固有のペイロードそれ自体の(例えば、肝生検を介した)検出を必要とせずに、細胞固有のペイロードのレベルをリアルタイムでモニタリングできることを実証している。
【0135】
実施例9:ペイロードのレベルの経時的変化に関する代用指数としてのバイオマーカーレベル
1e14 vg/kgのDJ-hMUTを使用して、新生児MUT-MCKマウス(p2)に対して静脈内注射を行い、そして、7か月間にわたって採取を行った。GeneRideで編集した肝細胞は、機能的なMUTを発現しており、これにより、Mut
-/-内在性肝細胞よりも選択的増殖の利点が得られる。その結果、遺伝子編集した集団が、より迅速に成長することが期待されており、そして、認められている。この増殖は、導入遺伝子ならびにALB-2Aのレベルの高まりとして検出することができる(
図13A~
図13B)。
【0136】
これらのデータは、ペイロードがコードするポリペプチドに対応するタンパク質の野生型発現を欠失した組織において、単回の投与送達した後に経時的にペイロードのレベルが高まることを例示している。これらのデータは、ペイロードのレベルの高まりに伴って、バイオマーカーのレベルが高まる、ことをさらに実証している。当業者であれば、本明細書に開示した方法を利用して、細胞内ペイロード(例えば、MUT)の発現の代用指数として、ALB-2Aなどの血漿バイオマーカーを検出及び分析することができる。
【0137】
実施例10:バイオマーカーとペイロードの長期的検出と分析
本実施例は、本開示に従って利用する方法が、ペイロードをコードする核酸と、バイオマーカーをコードする核酸とをインビボ送達した後に、ペイロードの発現の長期のインビボ評価が可能となることを実証している。本実施例は、ペイロード発現の動態が、バイオマーカー発現の動態と類似性を示すという点で、アッセイの検証も実証している。
【0138】
実施例2に記載したウイルスベクターを使用して、成体マウスに対して静脈注射した。組み込んだ導入遺伝子から発現するヒト第IX因子の血漿レベルの分析は、1週目~16週目までは、ALB-2Aと同様の動態を示しており(
図15A~15B)、注射をしてから最初の数週間以内に安定状態に達するまで急速に増加する。
【0139】
これらのデータは、ペイロード(例えば、第IX因子)の発現が、ウイルスベクターを介した送達した後の長期(例えば、最長で16週間)にわたって評価できる、ことを実証している。重要なことに、これらのデータは、ペイロードの同様の発現動態と、ペイロードを初めて送達した後に、複数の時間間隔を開けてペイロードと共に送達したバイオマーカー(例えば、2Aペプチド)の血漿レベルの発現動態とを検証している。
【0140】
実施例11:用量依存的なバイオマーカー、gDNA、及びペイロードの検出と分析
本実施例は、本開示に従って利用する方法が、ペイロードをコードする核酸と、バイオマーカーをコードする核酸とをインビボ送達した後に、ペイロードの用量依存的検出と分析が可能となる、ことを実証している。
【0141】
これらのデータは、本開示に従って利用する方法が、ペイロード、すなわち、細胞固有のペイロード(例えば、mMUT)または分泌したペイロード(例えば、cA1AT)の用量依存的発現を可能にしており、その発現を、標的部位遺伝子(例えば、ALB-2A)がコードするポリペプチドに融合した検出可能な部分の発現の検出及び分析によって評価できる、ことを実証している。これらのデータは、分泌したペイロード(例えば、cA1AT)の発現の用量依存的な変化が、検出可能な部分(例えば、2Aペプチド)の血漿レベルの類似の変化を反映することができ、その結果、検出可能な部分の血漿レベルの検出が、分泌したペイロードの検出に関する代用指数としての役割を果たすことができる、ことをさらに実証している(
図16A~C)。加えて、これらのデータは、細胞固有のペイロードに関するゲノム組み込みレベルが、検出可能な部分の血漿レベルでの類似の変化とも相関することができる、ことを実証している(
図17A~C)。
【0142】
均等物と範囲
当業者であれば、本明細書に記載した本発明の特定の実施形態の数多くの均等物を認識し、または通常の実験だけを使用して確認することができる。本発明の範囲を、上記した説明に限定することは意図しておらず、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲に記載した通りである。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
遺伝子療法をモニタリングする方法であって、組み込み遺伝子療法治療を受けた対象から得た生物学的試料において、組み込み遺伝子療法治療で組み込んで得たバイオマーカーのレベルまたは活性を、遺伝子療法治療の状態の1つ以上の特徴の現れとして検出するこ
とを含み、前記遺伝子療法治療の状態の1つ以上の特徴を、ペイロードのレベル、ペイロードの活性、細胞の集団における遺伝子療法治療の組み込みレベル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択する、前記方法。
(項目2)
ペイロードを送達する遺伝子組み込み組成物を与えられた対象でのペイロードの送達、レベル、及び/または活性をモニタリングする方法であって、対象から得た生物学的試料において、遺伝子組み込み組成物を取り入れて得たバイオマーカーのレベルまたは活性を、ペイロードの送達、レベル及び/または活性の現れとして検出することを含む、前記方法。
(項目3)
前記ペイロードが、細胞内で発現するペプチドである、またはそれを含む、項目1または項目2に記載の方法。
(項目4)
前記ペイロードが、細胞外に分泌されるペプチドである、またはそれを含む、項目1または項目2に記載の方法。
(項目5)
前記ペイロードが、病状を治療するための生物学的プロセスを促す細胞内因性または細胞外因性の活性を有するペプチドである、またはそれを含む、項目1~4のいずれか1項に記載の方法。
(項目6)
前記ペイロードが、通常は、肝細胞で発現するペプチドである、またはそれを含む、項目1~5のいずれか1項に記載の方法。
(項目7)
前記ペイロードが、肝細胞において異所的に発現するペプチドである、またはそれを含む、項目1~5のいずれか1項に記載の方法。
(項目8)
前記ペイロードが、メチルマロニル-CoAムターゼまたはヒト第IX因子である、またはそれを含む、項目1~5のいずれか1項に記載の方法。
(項目9)
前記組み込み遺伝子療法治療、または遺伝子組み込み組成物が、前記ペイロードを対象のゲノム内の標的部位にコードする配列を含む核酸要素の組み込みを達成する、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目10)
前記標的部位が、ポリペプチドをコードする、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記核酸要素の組み込みが、ポリペプチドをコードする遺伝子の5’または3’末端で生じる、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記標的部位が、アルブミンをコードする、項目9に記載の方法。
(項目13)
前記核酸要素の組み込みが、標的部位でコードしたポリペプチドの発現を有意に妨げない、項目9~11のいずれか1項に記載の方法。
(項目14)
前記生物学的試料が、毛髪、皮膚、糞便、血液、血漿、血清、脳脊髄液、尿、唾液、涙液、硝子体液、または粘液である、またはそれらを含む、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目15)
前記検出のステップが、免疫学的アッセイまたは核酸増幅アッセイを含む、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目16)
前記バイオマーカーが、標的部位がコードするポリペプチドを翻訳した後に、標的部位でコードするポリペプチドに融合する検出可能な部分を含む、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目17)
前記バイオマーカーが、標的部位がコードするポリペプチドを翻訳した後に、ペイロードがコードするポリペプチドに融合する検出可能な部分を含む、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目18)
前記バイオマーカーが、2AペプチドまたはFurin開裂モチーフである検出可能な部分を含む、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目19)
前記2Aペプチドを、P2A、T2A、E2A及びF2Aからなる群から選択する、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記対象が、遺伝子療法治療を受ける、または遺伝子組み込み組成物の単回投与を受ける、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目21)
前記検出ステップを、前記対象が遺伝子療法治療を受けた後、または遺伝子組み込み組成物を与えられた後に、1、2、3、4、5、6、7、8週間またはそれ以上の期間で行う、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目22)
前記検出ステップを、前記対象が遺伝子療法治療を受けた後、または遺伝子組み込み組成物を与えられた後に、複数の時点で行う、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目23)
前記検出ステップを、前記対象が遺伝子療法治療を受けた後、または遺伝子組み込み組成物を与えられた後に、少なくとも3ヶ月の期間で行う、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目24)
前記対象が乳児である時に、遺伝子療法治療を受ける、または遺伝子組み込み組成物が与えられる、上記項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目25)
前記対象が成人期に達する前に、遺伝子療法治療を受ける、または遺伝子組み込み組成物が与えられる、項目1~23のいずれか1項に記載の方法。
(項目26)
前記対象が成人である時に、遺伝子療法治療を受ける、または遺伝子組み込み組成物が与えられる、項目1~23のいずれか1項に記載の方法。
(項目27)
前記方法が、遺伝子療法に対する自己免疫応答について前記対象をモニタリングすることをさらに含む、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目28)
組み込み遺伝子療法治療を受けた対象での遺伝子療法治療の状態の1つ以上の特徴を決定する方法であって:
a)前記対象から得た生物学的試料を提供する;
b)バイオマーカーのレベルを決定する、また、前記バイオマーカーは、前記対象のゲノムに遺伝子療法で組み込んで得る;及び
c)決定したバイオマーカーのレベルに基づいて、前記対象での遺伝子療法治療の状態の1つ以上の特徴を確立する、また、決定したバイオマーカーのレベルは、遺伝子療法治療の状態の1つ以上の特徴に対応する、ことを含む前記方法。
(項目29)
それを必要とする対象に対して遺伝子療法治療を送達する方法であって;
a.前記対象に対して組み込み遺伝子療法治療を行う;及び
b.前記対象から得た生物学的試料において、前記対象のゲノムに遺伝子療法治療で組み込んで得たバイオマーカーのレベルを決定するステップを含む、前記方法。
(項目30)
前記バイオマーカーのレベルが、組み込み遺伝子療法の治療有効量を達成して得られるレベルよりも低ければ、前記対象に対してさらなる治療を行う、ことをさらに含む項目29に記載の方法。
(項目31)
前記組み込み遺伝子療法治療が、ペイロードを前記対象のゲノム内の標的部位にコードする配列を含む核酸要素の組み込みを達成する、項目28~30のいずれか1項に記載の方法。
(項目32)
前記標的部位が、ポリペプチドをコードする、項目31に記載の方法。
(項目33)
前記核酸要素の組み込みが、ポリペプチドをコードする遺伝子の5’または3’末端で生じる、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記標的部位が、アルブミンをコードする、項目31に記載の方法。
(項目35)
前記核酸要素の組み込みが、標的部位でコードしたポリペプチドの発現を有意に妨げない、項目31~33のいずれか1項に記載の方法。
(項目36)
前記生物学的試料が、毛髪、皮膚、糞便、血液、血漿、血清、脳脊髄液、尿、唾液、涙液、硝子体液、または粘液である、またはそれらを含む、項目28~35のいずれか1項に記載の方法。
(項目37)
前記決定のステップが、免疫学的アッセイまたは核酸増幅アッセイを含む、項目28~36のいずれか1項に記載の方法。
(項目38)
前記バイオマーカーが、標的部位がコードするポリペプチドを翻訳した後に、標的部位でコードするポリペプチドに融合する検出可能な部分を含む、項目28~37のいずれか1項に記載の方法。
(項目39)
前記バイオマーカーが、標的部位がコードするポリペプチドを翻訳した後に、ペイロードがコードするポリペプチドに融合する検出可能な部分を含む、項目28~38のいずれか1項に記載の方法。
(項目40)
前記バイオマーカーが、2Aペプチドである検出可能な部分を含む、項目28~39のいずれか1項に記載の方法。
(項目41)
前記2Aペプチドを、P2A、T2A、E2A及びF2Aからなる群から選択する、項目40に記載の方法。
(項目42)
前記対象が、単回の遺伝子療法治療を受ける、項目28~41のいずれか1項に記載の方法。
(項目43)
前記決定ステップを、前記対象が遺伝子療法治療を受けた後に、1、2、3、4、5、6、7、8週間またはそれ以上の期間で行う、項目28~42のいずれか1項に記載の方法。
(項目44)
前記決定ステップを、前記対象が遺伝子療法治療を受けた後に、複数の時点で行う、項目28~43のいずれか1項に記載の方法。
(項目45)
前記決定ステップを、前記対象が遺伝子療法治療を受けた後に、少なくとも3ヶ月の期間で行う、項目28~44のいずれか1項に記載の方法。
(項目46)
前記対象が乳児である時に、遺伝子療法治療を受ける、項目28~45のいずれか1項に記載の方法。
(項目47)
前記対象が成人期に達する前に、遺伝子療法治療を受ける、項目28~45のいずれか1項に記載の方法。
(項目48)
前記対象が成人である時に、遺伝子療法治療を受ける、項目28~45のいずれか1項に記載の方法。
(項目49)
前記方法が、遺伝子療法に対する自己免疫応答について前記対象をモニタリングすることをさらに含む、項目28~48のいずれか1項に記載の方法。
(項目50)
前記方法が、バイオマーカーのレベルが、ペイロードの最適レベルまたは安全レベルを示すレベルを超えておれば、遺伝子療法治療によって送達したペイロードの発現を抑制または阻害する対象に対して、さらなる治療を施すことをさらに含む、項目1~49のいずれか1項に記載の方法。