(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107297
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】血管閉塞を治療するためのシステム、デバイス、及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/22 20060101AFI20240801BHJP
【FI】
A61B17/22 528
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024094283
(22)【出願日】2024-06-11
(62)【分割の表示】P 2022522892の分割
【原出願日】2020-10-16
(31)【優先権主張番号】62/916,044
(32)【優先日】2019-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518138011
【氏名又は名称】イナリ メディカル, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ クアン ディン
(57)【要約】
【課題】好適な血管閉塞を治療するための好適なシステム、デバイス、及び方法を提供すること。
【解決手段】ヒト患者の血管内の血餅物質の血管内処理のためのシステム及び方法が本明細書に開示されている。本技術の実施形態によるデバイスは、例えば、近位部分と遠位部分を有する単一構造を形成する相互接続された複数の支柱を含み得る。支柱は、近位部分に複数の第1のセルを形成し、遠位部分に第1のセルよりも小さい複数の第2のセルを形成することができる。デバイスは、血管内の血餅物質に対して引っ張られて、血餅物質と係合し、破壊し、及び/または捕捉する。
【選択図】
図1C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2019年10月16日に出願され、「SYSTEMS,DEVICES,AND METHODS FOR TREATING VASCULAR OCCLUSIONS」と題された米国仮特許出願第62/916,044の権益を主張し、その出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本技術は、概して、ヒト患者の血管内の血餅物質(例えば、塞栓及び/または血栓)の血管内治療のためのシステム、デバイス、及び方法に関する。特に、本技術のいくつかの実施形態は、血餅物質を係合及び除去するための拡張可能なデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
血栓塞栓性事象は、血管の閉塞を特徴とする。脳卒中、肺塞栓症、心臓発作、末梢血栓症、アテローム性動脈硬化症などの血栓塞栓性障害は、多くの人々に影響を及ぼす。これらの障害は、罹患率と死亡率の主な原因である。
【0004】
動脈が血餅によって閉塞されると、組織の虚血が発生する。閉塞が続く場合、虚血は組織梗塞に進行する。しかしながら、血流が急速に回復した場合、梗塞は発症しないか、大幅に制限される。したがって、血流を回復できないと、四肢の喪失、狭心症、心筋梗塞、脳卒中、さらには死に至る恐れがある。
【0005】
静脈循環では、閉塞性物質も深刻な害を引き起こす恐れがある。血餅は、深部静脈血栓症(DVT)として知られる一般的な状態である、下肢及び骨盤の大静脈に発生する恐れがある。DVTは一般に、血液の停滞(例えば、長距離の空の旅、不動など)や凝固(例えば、がん、整形外科などの最近の手術など)の傾向がある場合に発生する。DVTは、下肢からの静脈血の排出を妨げ、腫脹、潰瘍、疼痛、及び感染症を引き起こす恐れがある。DVTはまた、血餅が集まって、次いで、心臓、肺、脳(脳卒中)、腹部器官および/または四肢など、身体の他の部分に移動できるリザーバーを作成する恐れがある。
【0006】
肺循環では、望ましくない物質が肺動脈を閉塞することによって害を引き起こす恐れがあり、これは肺塞栓症として知られている状態である。閉塞が上流の場合、主肺動脈または大枝の肺動脈では、肺内の総血流量、したがって全身を著しく損なう恐れがある。これにより、低血圧やショックを引き起こす恐れがある。閉塞が下流の場合、大から中程度の肺動脈枝では、肺のかなりの部分が血液へのガス交換に関与するのを防ぎ、血中酸素が低くなり、二酸化炭素が蓄積する恐れがある。
【0007】
閉塞した血管を通る血流を回復するための多くの既存の技術がある。例えば、塞栓除去は、血管を切開し、閉塞の位置に先端がバルーンのデバイス(フォガーティカテーテルなど)を配置することを含む外科的手法である。次いで、バルーンは血餅を超えた点で膨張し、閉塞物質を切開点に引き戻すために使用される。次いで、閉塞物質は外科医によって除去される。このような外科的手法は有用であったが、患者を手術にさらすことは外傷性であり得、可能な場合は避けるのが最善である。さらに、フォガーティカテーテルの使用は、カテーテルが引き抜かれるときに血管の内層を損傷し得るリスクがあるため、問題となる恐れがある。
【0008】
経皮的方法も血流を回復するために利用される。一般的な経皮的技術は、バルーン血管形成術と呼ばれ、先端がバルーンのカテーテルが血管に導入される(例えば、典型的には導入カテーテルを介して)。次いで、先端がバルーンのカテーテルを閉塞点まで前進させ、膨張させて狭窄を拡張する。バルーン血管形成術は血管狭窄の治療に適しているが、閉塞性物質がまったく除去されず、拡張後に再狭窄が定期的に発生するため、一般に急性血栓塞栓症の治療には効果的ではない。別の経皮的技術は、血餅の近くにカテーテルを配置すること、及びストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、または他の血栓溶解剤を注入して血餅を溶解することを含む。残念ながら、血栓溶解は典型的には、成功するまでに数時間から数日かかる。さらに、血栓溶解剤は出血を引き起こす恐れがあり、多くの患者では血栓溶解剤をまったく使用できない。
【0009】
血栓摘出術を実施したり、他の異物を除去したりするためのさまざまなデバイスが存在する。しかしながら、そのようなデバイスは、非常に複雑であるか、治療血管に外傷を引き起こすか、または血管に対して適切に固定される能力を欠いている構造を有することが見出されている。さらに、デバイスの多くは非常に複雑な構造を持っているため、製造及び品質管理の問題、ならびに曲がりくねったカテーテルまたは小径のカテーテルを通過する際の送達の問題を引き起こす。より複雑でないデバイスは、ユーザー、特に経験の浅いユーザーが血餅を通り抜けることを可能にする恐れがあり、そのようなデバイスは血餅物質をすべて捕捉及び/または収集できない恐れがある。
【0010】
したがって、塞栓抽出のための改善されたシステム及び方法の必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本技術は、概して、ヒト患者の血管から血餅物質を除去するためのシステム、デバイス、及び方法に関する。いくつかの実施形態では、血餅除去システムは、送達カテーテルと血餅処理デバイスとを含むことができる。血餅処理デバイスは、圧縮構成と拡張構成との間で移動可能な単一構造を形成する複数の相互接続された支柱を含むことができる。拡張構成では、単一構造は、(i)近位接続領域と、(ii)近位接続領域から延びる近位円錐領域と、(iii)近位円錐領域から延びる円筒形領域と、(iv)円筒形領域から延びる遠位円錐形領域と、(v)遠位円錐形領域から延びる遠位接続領域と、を含み得る。いくつかの実施形態では、支柱の第1の部分は、近位円錐領域に第1のセルを形成し、支柱の第2の部分は、遠位円錐領域に第1のセルよりも小さい第2のセルを形成する。
【0012】
いくつかの実施形態では、システムは、操作者によって把持されるように構成されたハンドル、及びハンドルと血餅処理デバイスの近位接続領域との間に結合された第1のシャフトをさらに含む。血餅処理デバイスは、送達カテーテルの管腔内及び送達カテーテルの遠位端の近くで圧縮構成で維持することができる。血餅処理デバイスを拡張構成に移動するために、操作者は、ハンドルを動かして第1のシャフトを前進させ、それにより、血餅処理デバイスを遠位端を越えて送達カテーテルの管腔の外に前進させることができる。血餅処理デバイスが送達カテーテルによってもはや拘束されていないとき、血餅処理デバイスは、拡張構成に拡張(例えば、自己拡張)することができる。いくつかの実施形態では、システムは、第1のシャフトを通って少なくとも部分的に延び、血餅処理デバイスの遠位接続領域に結合された第2のシャフトをさらに含む。第1のシャフトと第2のシャフトとの間の相対的な動きにより、血餅処理デバイスを延長/短縮し、それに応じて放射状に拡張/圧縮することを可能にすることができる。
【0013】
ヒト患者の血管から血餅物質を除去する手順の間、血餅処理デバイスは、血管内の血餅物質の遠位で拡張され、次いで、血餅物質内に近位方向に引っ込められて、血餅物質を捕捉/破壊することができる。本技術の一態様では、血餅処理デバイスのより大きな第1のセルは、血餅処理デバイスが血餅物質に対して引っ張られるときに、それを通して血餅物質を受け入れるように構成され、血餅処理デバイスのより小さな第2のセルは、血餅処理デバイス内に血餅物質を保持するように構成されている。本技術の別の態様では、血餅処理デバイスは、血餅処理デバイスが血餅物質に対して引っ張られるときに血餅処理デバイスが血餅物質を滑らせる(例えば、係合しない)のを阻害するのに十分な半径方向剛性(例えば、円筒形領域)を有する。したがって、血餅処理デバイスを使用して、そうでなければ取り除くのが難しい付着した、組織化された、及び/または慢性的な血餅を捕捉/破壊することができる。
【0014】
本技術の多くの態様を、以下の図面を参照して、よりよく理解することができる。図面中の構成要素は、必ずしも縮尺通りではない。その代わりに、本開示の原理を明確に例示することに重点が置かれている。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
血餅処理システムであって、
管腔を画定する外側カテーテルと、
前記外側カテーテルの前記管腔内に少なくとも部分的に配置される内側カテーテルと、
圧縮構成と拡張構成との間で移動可能な単一構造を形成する複数の相互接続された支柱を含む血餅処理デバイスとを備え、
前記拡張構成で、前記単一構造は、
前記外側カテーテルに結合した近位接続領域と、
前記近位接続領域から延びる近位円錐領域であって、前記支柱の第1の部分が前記近位円錐領域において第1のセルを形成する、近位円錐領域と、
前記近位円錐領域から延びる円筒形領域と、
前記円筒形領域から延びる遠位円錐領域であって、前記支柱の第2の部分が前記遠位円錐領域において第2のセルを形成し、前記第2のセルが前記第1のセルよりも小さい、遠位円錐領域と、
前記遠位円錐領域から延び、前記内側カテーテルに結合された遠位接続領域と、を含む、血餅処理システム。
(項目2)
前記内側カテーテルが、(a)前記血餅処理デバイスの前記遠位接続領域に結合した遠位端部分と、(b)前記外側カテーテルの前記管腔内に浮かぶよう構成された近位端部分と、を有する、項目1に記載の血餅処理システム。
(項目3)
前記内側カテーテルと前記外側カテーテルとが、その中を通るガイドワイヤを受け入れるよう構成されている、項目1に記載の血餅処理システム。
(項目4)
前記外側カテーテルの近位端部分に結合されたハンドルをさらに含み、前記ハンドルが前記内側カテーテルの近位端部分に結合された作動機構を含み、前記作動機構の作動が前記内側カテーテルを前記外側カテーテルに対して平行移動させて、前記血餅処理デバイスを縦方向に圧縮または縦方向に伸長するように構成されている、項目1に記載の血餅処理システム。
(項目5)
管腔を画定する送達カテーテルと、
前記外側カテーテルの近位端部分に結合し、前記送達カテーテルに対して第1の位置と第2の位置との間で移動可能である、ハンドルと、をさらに含み、
前記第1の位置において、前記血餅処理デバイスが、前記圧縮構成の前記送達カテーテルの前記管腔内に拘束され、
前記第2の位置において、前記血餅処理デバイスが、前記拡張構成の前記管腔の遠位に位置する、項目1に記載の血餅処理システム。
(項目6)
前記送達カテーテルの近位端部分に結合するハブをさらに含み、前記ハンドルが、前記第2の位置において前記ハンドルを前記ハブに固定するよう構成されたロック機構を含む、項目5に記載の血餅処理システム。
(項目7)
前記ハンドル、前記送達カテーテル、前記外側カテーテル、及び前記内側カテーテルが、それらを通るガイドワイヤを受け入れるように構成されている、項目5に記載の血餅処理システム。
(項目8)
前記拡張構成において、前記円筒形領域が約0.71インチ~約1.34インチの直径を有する、項目1に記載の血餅処理システム。
(項目9)
前記血餅処理デバイスの前記支柱が、拘束されていない場合、前記圧縮構成から前記拡張構成に自己拡張するように構成されている、項目1に記載の血餅処理システム。
(項目10)
前記血餅処理デバイスの前記支柱が、形状記憶材料を含む、項目1に記載の血餅処理システム。
(項目11)
前記単一構造が、(a)前記近位円錐領域内の第1の数の前記支柱と、(b)前記支柱の前記第1の数よりも大きい前記遠位円錐領域内の第2の数の前記支柱を含む、項目1に記載の血餅処理システム。
(項目12)
血餅除去の方法であって、前記方法が、
ヒト患者の血管内の血餅物質に近接するガイドカテーテルの遠位部分を配置することと、
前記ガイドカテーテルを通して血餅処理デバイスを前進させて、前記血餅物質に近接させることと、
前記血餅物質の遠位の血管内で前記血餅処理を拡大することであって、前記血餅処理デバイスは、近位部分及び遠位部分を有する単一構造を形成する相互接続された複数の支柱を含み、前記支柱が、前記近位部分に複数の第1のセルを形成し、前記遠位部分に複数の第2のセルを形成し、前記第1のセルが前記第2のセルよりも大きい、ことと、
前記ガイドカテーテルの前記遠位部分で吸引を生成することと、
前記血餅材料を通して前記血餅処理デバイスを近位に引っ込めることと、を含む、方法。
(項目13)
前記ガイドカテーテルを通して前記血餅処理デバイスを前進させることが、前記血餅処理デバイスをガイドワイヤ上に前進させることを含む、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記単一構造の前記近位部分が、前記ガイドカテーテルを通って少なくとも部分的に延びる外側カテーテルに結合し、前記単一構造の前記遠位部分が、前記外側カテーテルを通って少なくとも部分的に延びる内側カテーテルに結合する、項目12に記載の方法。
(項目15)
前記ガイドカテーテルを通して前記血餅処理デバイスを前進させることが、前記血餅処理デバイスを、前記ガイドカテーテル、外側カテーテル、及び内側カテーテルを通してガイドワイヤ上に前進させることを含む、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記ガイドカテーテルの前記遠位部分で前記吸引を生成することが、前記血餅処理デバイスを近位に引っ込める前に、前記血餅物質の第1の部分を前記ガイドカテーテルに吸込むために吸引を生成することを含む、項目12に記載の方法。
(項目17)
前記血餅処理デバイスを近位に引っ込めることが、前記血管内に残っている前記血餅物質の第2の部分を通して前記血餅処理デバイスを近位に引っ込めて、前記血餅物質の前記第2の部分を捕捉することを含む、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記血餅物質を通して前記血餅処理デバイスを近位に引っ込めることが、前記血餅物質の少なくとも一部分を捕捉することを含み、前記方法が、前記血餅処理デバイス及び前記捕捉された血餅物質を前記ガイドカテーテルに引っ込めることをさらに含む、項目12に記載の方法。
(項目19)
血餅処理システムであって、
管腔を画定する外側シャフトと、
前記外側シャフトの前記管腔内に少なくとも部分的に配置される内側シャフトと、
近位部分と遠位部分を有する単一構造を形成する複数の相互接続された支柱と、を含み、前記近位部分が前記外側シャフトに結合し、前記遠位部分が前記内側シャフトに結合し、前記支柱が、前記近位部分に複数の第1のセル、及び前記遠位部分の複数の第2のセルを形成し、前記第1のセルが前記第2のセルよりも大きい、血餅処理システム。
(項目20)
前記外側シャフトと前記内側シャフトとが、その中を通るガイドワイヤを受け入れるよう構成されている、項目12に記載の血餅処理システム。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A】本技術の実施形態に従って構成された、展開前構成における血餅処理システムの側面図である。
【
図1B】本技術の実施形態に従って構成された、展開構成における血餅処理システムの側面図である。
【
図1C】本技術の実施形態に従って構成された、
図1Bに示す血餅処理システムの遠位部分の拡張した斜視図である。
【
図2A】本技術の実施形態に従って構成された
図1A~1Cの血餅処理システムの血餅処理デバイスの側面図である。
【
図2B】本技術の実施形態に従って構成された
図1A~1Cの血餅処理システムの血餅処理デバイスの近位向き斜視図である。
【
図2C】本技術の実施形態に従って構成された
図1A~1Cの血餅処理システムの血餅処理デバイスの遠位向き斜視図である。
【
図3】本技術の実施形態による、ヒト患者の血管内から血餅物質を除去するために血餅処理システムを操作するためのプロセスまたは方法のフローチャートである。
【
図4A】本技術の実施形態による、ヒト患者の血管から血餅物質を除去する手順の間の、血餅処理システムの遠位部分の概略図である。
【
図4B】本技術の実施形態による、ヒト患者の血管から血餅物質を除去する手順の間の、血餅処理システムの遠位部分の概略図である。
【
図4C】本技術の実施形態による、ヒト患者の血管から血餅物質を除去する手順の間の、血餅処理システムの遠位部分の概略図である。
【
図4D】本技術の実施形態による、ヒト患者の血管から血餅物質を除去する手順の間の、血餅処理システムの遠位部分の概略図である。
【
図4E】本技術の実施形態による、ヒト患者の血管から血餅物質を除去する手順の間の、血餅処理システムの遠位部分の概略図である。
【
図4F】本技術の実施形態による、ヒト患者の血管から血餅物質を除去する手順の間の、血餅処理システムの遠位部分の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
肺塞栓症を治療するためのシステム、デバイス、及び方法に関して、実施形態の多くを以下に記載するが、本明細書に記載されるものに加えて、他の用途及び他の実施形態は、本技術の範囲内である(例えば、塞栓の治療以外の血管内処置、脳塞栓症を治療するための血管内処置、深部静脈血栓症(DVT)を治療するための血管内処置など)。さらに、本技術のいくつかの他の実施形態は、本明細書に記載のものとは異なる構成、状態、構成要素、及び/または手順を有することができる。さらに、
図1~4Fを参照して記載した実施形態の特定の要素、下部構造、利点、用途、及び/または他の特徴は、本技術の追加の実施形態に従って、互いに適切に交換、置換、またはそうでなければそれで構成され得ることは理解されよう。さらに、
図1~4Fを参照して記載された実施形態の適切な要素は、スタンドアロン及び/または自己完結型デバイスとして使用できる。それゆえに、当業者は、技術が追加の要素を備えた他の実施形態を有することができること、または、技術が
図1~4Fを参照して以下に示され記載される特徴のいくつかを含まずに他の実施形態を有することができることをそれに従って理解するであろう。
【0017】
この記載内の「遠位」及び「近位」という用語に関して、別段の定めがない限り、これらの用語は、操作者及び/または血管系内の場所を参照したカテーテルサブシステムの部分の相対位置を言及することができる。また、本明細書で使用される場合、「後方」、「前方」、「上方」、「下方」などの表示は、言及される構成要素を特定の方向で使用するように制限することを意味するものではない。そのような表示は、図に示されているように、言及される構成要素の方向を指すことが理解されよう。本技術のシステム及びデバイスは、ユーザに適した任意の向きで使用することができる。
【0018】
図1A及び1Bは、本技術の実施形態に従って構成された、血餅処理または血餅除去システム100(「システム100」)の側面図である。システム100は、
図1Aにおいて、拘束構成/展開前構成であり、システム100は、
図1Bにおいて、拡張構成/展開構成である。
図1A及び1Bを一緒に参照すると、図示の実施形態では、システム100は、管腔を画定し、近位端部分103a及び遠位端部分103bを有する送達カテーテル102(例えば、管、シャフトなど;本明細書では外側シャフトとも呼ばれる)を含む。送達カテーテル102の近位端部分103aは、密封可能なハブ、弁などのハブ110に結合されている。送達カテーテル102の管腔は、ハブ110を介してポートアセンブリ112に流体接続され得る。
【0019】
図示の実施形態では、ポートアセンブリ112は、(i)ポートコネクタ116(例えば、ルアーコネクタ/フィッティング)と、(ii)ハブ110に(例えば、ハブ110の分岐または側方ポートに)結合された管セクション118との間で流体接続された流体制御デバイス114を含む。流体制御デバイス114は、送達カテーテル102の管腔をポートコネクタ116に流体接続するように作動可能である。図示の実施形態では、流体制御デバイス114は活栓であり、他の実施形態では、流体制御デバイス114は、クランプ、弁、及び/または他の適切な流体制御デバイスであってよい。システム100を使用する血餅除去手順中に、様々な構成要素(例えば、注射器、真空源など)をポートコネクタ116に結合して、送達カテーテル102の管腔から流体を除去し、及び/またはそこに流体を注入することができる。例えば、いくつかの実施形態では、注射器または他の圧力源をポートコネクタ116に結合し、流体制御デバイス114が閉じている間に真空を引き込むために使用することができ、次に流体制御デバイス114を瞬時にまたはほぼ瞬時に開いて送達カテーテル102の管腔に真空を適用することができる(例えば、血餅物質を除去するために遠位部分103bで吸引を生成するために)。他の実施形態では、一定の真空源(例えば、ポンプ)をポートアセンブリ112に結合して、送達カテーテル102の管腔の持続的な吸込を提供することができる。いくつかの実施形態では、フラッシング流体(例えば、生理食塩水)をポートアセンブリ112を通して注入して、送達カテーテル102の管腔をフラッシングすることができる。
【0020】
図示の実施形態では、システム100は、送達カテーテル102の管腔を通って少なくとも部分的に延び、管腔を規定する中間シャフト104(例えば、カテーテル、チューブなど)、及び中間シャフト104の管腔を通って少なくとも部分的に延びる内側シャフト106(例えば、カテーテル、チューブなど)をさらに含む。したがって、いくつかの実施形態では、送達カテーテル102、中間シャフト104、及び内側シャフト106は同軸に整列/配置されている。システム100は、中間シャフト104及び内側シャフト106に結合された血餅処理デバイス130をさらに含む。送達カテーテル102、中間シャフト104、内側シャフト106、及び血餅処理デバイス130は、集合的に、システム100の処理部分111(例えば、挿入部分)と呼ぶことができる。
図3~4Fを参照して以下でより詳細に説明するように、処理部分111は、血餅除去手順中に血餅処理デバイス130を治療部位に配置するためにガイドカテーテルを通して挿入されるように構成される。
【0021】
図2A~2Cを参照して以下でより詳細に説明するように、血餅処理デバイス130は、複数の相互接続された支柱を含む自己拡張型の単一構造であり得る。
図1Aに示される展開前構成では、血餅処理デバイス130は、送達カテーテル102内に拘束されており、したがって、覆い隠されている。
図1Bに示される展開構成では、血餅処理デバイス130は、送達カテーテル102の遠位端部分103b(例えば、送達カテーテル102の遠位端)を越えて延び、半径方向に拡張される。
【0022】
図1Cは、本技術の実施形態に従って構成された、
図1Bに示すシステム100の遠位部分の拡張した斜視図である。図示された実施形態では、中間シャフト104は、血餅処理デバイス130の近位部分131aに結合された遠位端部分105bを含む。いくつかの実施形態では、血餅処理デバイス130の近位部分131aは、一緒に集められ、中間シャフト104の遠位端部分105bに固定される複数の支柱を含む。例えば、血餅処理デバイス130の近位部分131aの支柱は、接着剤、留め具、ハブまたは他のデバイスなどを介して中間シャフト104の外側表面に固定することができる。内側シャフト106は、血餅処理デバイス130の遠位部分131bに結合された遠位端部分107を含む。いくつかの実施形態では、血餅処理デバイス130の遠位部分131bは、一緒に集められ、内部シャフト106と遠位先端108(例えば、非外傷性先端)との間の摩擦嵌合、圧入などを介して内側シャフト106の遠位端部分107に固定される複数の支柱を含む。他の実施形態では、血餅処理デバイス130の遠位部分131bの支柱は、接着剤、留め具、ハブまたは他のデバイスなどを介して、内側シャフト106の外側表面に固定することができる。
【0023】
再び
図1A及び1Bを一緒に参照すると、中間シャフト104は、ハンドル120を血餅処理デバイス130に動作可能に結合するために、ハンドル120に(例えば、ハンドル120の遠位部分に)結合された近位端部分105aを含む。したがって、中間シャフト104は、ハンドル120と血餅処理デバイス130との間に延在し、動作可能に結合する。いくつかの実施形態では、内側シャフト106の近位端部分(
図1A及び1Bで覆い隠されている)は、システム100のどの部分にも結合されておらず、中間シャフト104の管腔内に浮いている。本技術の一態様では、この配置は、血餅処理デバイス130にかかる外力に応答して、内側シャフト106が中間シャフト104に対して移動することを可能にし、それにより、血餅処理デバイス130が縦方向に伸長/短縮し、それに応じて放射状に圧縮/拡張することを可能にする。他の実施形態では、内側シャフト106の近位端部分は、ハンドル120の作動機構122(
図1A及び1Bに破線で示されている)に結合することができる。作動機構122は、内側シャフト106を近位及び/または遠位に駆動して、それぞれ血餅処理デバイス130を短縮する、及び/または伸長するように構成することができる。より具体的には、いくつかの実施形態では、ハンドル120に対する作動機構122の遠位移動は、内側シャフト106を中間シャフト104に対して遠位に移動させて、血餅処理デバイス130を延長及び半径方向に圧縮することができ、一方で、ハンドル120に対する作動機構122の近位移動は、内側シャフト106を中間シャフト104に対して近位方向に移動させて、血餅処理デバイス130を短縮し、半径方向に拡張することができる。
【0024】
図示の実施形態では、ハンドル120は、それを介してガイドワイヤ(図示せず)を受け入れるように構成された、ルアーハブなどの近位ハブ124をさらに含む。ハンドル120、内側シャフト106、及び先端108は、一緒になって、それを介してガイドワイヤを受け入れるための管腔を画定することができる。いくつかの実施形態では、ガイドワイヤは、約0.035インチ、約0.018インチ、約0.1インチ未満、約0.05インチ未満などの直径を有することができる。いくつかの実施形態では、ハンドル120は、例えば、スピンロックやプッシュインアンドターンロックなどのロック機能126をさらに含む。ロック機能126は、ハブ110の嵌合機能115と選択的に係合する(例えば、ロック係合する)ように構成される。ロック機能126及び嵌合機能115を介してハンドル120をハブ110にロックすることにより、送達カテーテル102に対する中間シャフト104の位置が固定される。図示される実施形態では、中間シャフト104は、ハンドル120がハブ110とロック係合されているときに、中間シャフト104及び血餅処理デバイス130の一部が送達カテーテル102の遠位端部分103bから遠位に延びるように、送達カテーテル102よりも長い。
【0025】
血餅処理デバイス130を展開前構成(
図1A)から展開構成(
図1B)に展開するために、操作者は、ハンドル120をハブ110に向かって遠位に移動させることができ、及び/またはハブ110をハンドル120に向かって移動させることができる。この動きは、送達カテーテル102を通して中間シャフト104を遠位に前進させ、血餅処理デバイス130を送達カテーテル102から遠位に押し出す。血餅処理デバイス130は、送達カテーテル102の管腔から解放されるときに自己拡張することができる。ハンドル120がハブ110に隣接するとき、操作者は、ロック機能126を作動させて、送達カテーテル102に対する中間シャフト104の位置を固定して、例えば、血餅処理デバイス130を展開構成に維持することができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、ハンドル120の近位の動き及び/またはハブ110の遠位の動き(例えば、
図1Bに示される位置から
図1Aに示される位置へ)は、血餅処理デバイス130を送達カテーテル102内に引き戻すことができる。すなわち、いくつかの実施形態では、血餅処理デバイス130は、送達カテーテル102内で再シースされ得る。そのような実施形態では、血餅処理デバイス130は、繰り返し拡張され、次いで、送達カテーテル102内に収縮及び圧縮され得る。いくつかの実施形態では、先端108は、展開前構成(
図1A)において、送達カテーテル102の遠位端部分103bに隣接するように構成されている(例えば、そのようなサイズにされ、成形されている)。これは、血餅処理デバイス130が送達カテーテル102を通して完全に引っ張られるのを抑制または防止することができ、いくつかの実施形態では、送達カテーテル102の管腔を実質的に密封することができる。他の実施形態では、先端108は、先端108、したがって血餅処理デバイス130全体が送達カテーテル102を通して引っ込められることを可能にするようなサイズ及び形状である。
【0027】
図2A~2Cは、それぞれ、本技術の実施形態に従って構成された、拡張構成の血餅処理デバイス130の、側面図、近位向き斜視図、及び遠位向き斜視図である。
図2A~2Cを一緒に参照すると、血餅処理デバイス130は、複数の第1のセル250(例えば、隙間、細孔、開口部など)及び複数の第2のセル252を一緒に画定する複数の支柱240を備える。支柱240は、様々な形状及びサイズを有することができ、いくつかの実施形態では、支柱240は、約0.0125~0.150インチ、約0.075~0.125インチ、約0.090~0.150インチ、及び/または他の寸法の厚さ及び/または直径を有することができる。一般に、支柱240は一緒になって、血栓を含む血管に係合し、捕捉し、破壊し、及び/または血栓の一部(例えば、血管血栓)を、血栓を含む血管から分離するように構成された単一の構造を形成する。
【0028】
図示された実施形態では、(i)第1のセル250は概して近位に面し、第2のセル252は概して遠位に面し、(ii)第1のセル250は第2のセル252よりも大きい。
図2Aに最もよく見られるように、血餅処理デバイス130は、(i)近位部分131aを含む第1の領域242、(ii)第1の領域242の遠位の第2の領域243、(iii)第2の領域243の遠位の第3の(例えば、中央)領域244、(iv)第3の領域244の遠位の第4の領域245、及び(v)第4の領域245の遠位あり、遠位部分131bを含む第5の領域246を含む。図示された実施形態では、支柱240は、
図1Cに示されるように、それぞれ中間シャフト104及び内側シャフト106へのそれらの接続を容易にするために、第1の領域242、及び第5の領域246で一緒に集められる(例えば、互いに近接して配置される)。第2の領域243は、概して近位方向に先細になる(例えば、放射状に狭くなる)円錐形を有することができる。同様に、第4の領域245は、概して遠位方向に先細になる円錐形を有することができる。第3の領域244は、概して、例えば、概して平らな外側支柱表面/境界248を含む管状/円筒の形状を有する。さらに、図示された実施形態では、第1の領域242及び第2の領域243は、第4の領域245及び第5の領域246よりも支柱240が少なく、それにより、より大きな第1のセル250を画定する。逆に、第4の領域245及び第5の領域246は、第1の領域242及び第2の領域243よりも支柱240が多く、それにより、より小さな第2のセル252を画定する。第3の領域244は、支柱240の数が近位方向に(例えば、第4の領域245に向かって)増加する遷移領域であり得、その結果、第1のセル250のいくつかは、第3の領域244において第2のセル252のいくつかに隣接する。他の実施形態では、第1のセル250は、第2の領域243でのみ形成することができ、第3の領域244全体を占めることができ、第4の領域245に延びることができる、などである。
【0029】
いくつかの実施形態では、血餅処理デバイス130は、形状記憶合金及び/または形状記憶ポリマーなどの形状記憶材料から作製される。例えば、血餅処理デバイス130は、ニチノール及び/またはニチノール合金を含むことができる。同様に、血餅処理デバイス130は、溶接、レーザー溶接、切断、レーザー切断、膨張などを含む様々な技術を使用して作製することができる。例えば、いくつかの実施形態では、血餅処理デバイス130は、最初に一片のニチノール(例えば、ニチノール管)からレーザー切断することができ、次いで、凝血処理デバイス130が拡張構成で図示された形状を有するように、ヒートセットプロセスを使用してさらに成形される。例えば、ヒートセットニチノール構造の分野で知られているように、固定具、マンドレル、または型を使用して、血餅処理デバイス130をその所望の構成に保持することができ、次いで、血餅処理デバイス130に適切な熱処理を施して、血餅処理デバイス130の支柱240が、マンドレルまたは型の外側輪郭の形態となるか、そうでなければ形状が設定されるようにできる。ヒートセットプロセスは、よく知られているように、オーブンまたは流動床で実施することができる。したがって、ヒートセットプロセスは、血餅処理デバイス130を形成するために使用される超弾性及び/または形状記憶の材料または複数の材料で、所望の形状、幾何学的形状、曲げ、曲線、鋸歯状、スカラップ、ボイド、穴などをもたらすことができる。したがって、血餅処理デバイス130は、塑性変形することなく半径方向に拘束され得、半径方向の拘束が解放されると自己拡張する。
【0030】
一般に、血餅処理デバイス130のサイズは、血栓が抽出される血管のサイズ(例えば、直径)に基づいて選択することができる。いくつかの実施形態では、血管内に拘束されていない完全に拡張された構成において、血餅処理デバイス130は、約0.025~1.50インチ、約0.70~1.15インチなどの長さL(
図2A)を有することができる。いくつかの実施形態では、血管内に拘束されていない完全に拡張された位置において、血餅処理デバイス130は、約0.025~1.5インチ、約0.71~1.34インチなどの最大直径D(
図2A;例えば、第3の領域244)を有することができる。
【0031】
血餅処理デバイス130は、血餅処理デバイス130が拡張構成で血餅物質を通って/血餅物質に対して引っ込められたとき、血管内から血餅物質を係合し、破壊し、及び/または捕捉するように構成される(例えば、成形、サイズ決定、角度付け、形成など)。例えば、
図3~4Fを参照して以下でより詳細に説明するように、血餅処理デバイス130は、血餅物質を通して/血餅物質に対して近位に引き抜くことができる。本技術の一態様では、より大きな第1のセル250は、血餅処理デバイス130が血餅物質に対して引っ張られるときに、それを通して血餅物質を受け入れるように構成され、より小さな第2のセル252(及び結合する支柱240)は、血餅処理デバイス130内に血餅物質を保持するよう構成される。本技術の別の態様では、血餅処理デバイス130は、血餅処理デバイス130が血餅物質に対して引っ張られるときに血餅処理装置130が血餅物質を滑らせる(例えば、係合しない)のを防ぐのに十分な半径方向の剛性(例えば、第3の領域244)を有する。したがって、血餅処理デバイス130を使用して、付着した、組織化された、及び/または慢性の血餅を捕捉/破壊することができる。いくつかの実施形態では、支柱240の一部(例えば、第2の領域243)を鋭利にすることができ、及び/またはそれに取り付けられるかまたはそれうでない場合はそれと一体化された切断要素(例えば、ナイフまたはナイフエッジ)を含むことができ、血餅物質の破壊/切断をさらに促進できる。
【0032】
図3は、本技術の実施形態による、患者(例えば、ヒト患者)の血管(例えば、肺血管)内から血餅物質を除去するためにシステム100を操作するためのプロセスまたは方法360のフローチャートである。
図4A~4Fは、本技術の実施形態による、患者の血管BVから血餅物質PEを除去する手順の間の、ガイドカテーテル470を通して挿入されたシステム100の遠位部分の概略図である。方法360のいくつかの特徴は、例示のために
図4A~4Fに示される実施形態の文脈で記載されているが、当業者は、方法360が本明細書に記載の他の適切なシステム及び/またはデバイスを使用して実行できることを容易に理解するであろう。
【0033】
図3及び4Aを参照すると、ブロック361において、方法360は、血管BV内の血餅物質PEに近接して(例えば、処理部位に)ガイドカテーテル470の遠位部分471を配置することを含むことができる。図示された実施形態では、ガイドカテーテル470の遠位端は、血餅物質PEの近位部分に近接して配置されている。しかしながら、他の実施形態では、ガイドカテーテル470の遠位端は、少なくとも部分的に血餅物質PE内に配置することができ、またはガイドカテーテル470の遠位端は、血餅物質PEの遠位に配置することができる。血管BVへのアクセスは、例えば、患者の血管系を介して、例えば大腿静脈を介して達成することができる。血管BVが肺血管である場合などのいくつかの実施形態では、導入器(例えば、止血弁を備えたYコネクタ;図示せず)がガイドカテーテル470に接続され、大腿静脈に部分的に挿入することができる。ガイドワイヤ472は、導入器を介して大腿静脈に誘導され、右心房、三尖弁、右心室、肺動脈を通って、主肺動脈にナビゲートされ得る。血餅物質PEの位置に応じて、ガイドワイヤ472は、右肺動脈及び/または左肺動脈の1つ以上の枝に誘導することができる。いくつかの実施形態では、ガイドワイヤ472は、血餅物質PEを通して完全にまたは部分的に伸ばすことができる。他の実施形態では、ガイドワイヤ472は、血餅物質PEのすぐ近位の位置まで伸ばすことができる。
図4Aに示されるように、ガイドワイヤ472を配置した後、ガイドカテーテル470をガイドワイヤ472上に配置し、血餅物質PEに近接する位置まで前進させることができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、圧力源をガイドカテーテル470に結合し、ガイドカテーテル470の管腔を吸込むために使用して、例えば、吸引を生成して(例えば、矢印Aで示されるように)、血餅物質PEの全部または一部をガイドカテーテル470に吸引すること/引き込むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、真空を事前に充填することができ(例えば、ガイドカテーテル470の管腔に流体接続された注射器において)、真空をガイドカテーテル470の管腔に適用して、ガイドカテーテル470の遠位部分471での吸引を瞬間的またはほぼ瞬間的に生成する(例えば、ガイドカテーテル470の遠位部分471で吸引パルスを生成するため)ことができる。そのような方法及び関連するデバイスの特定の詳細は、2019年8月8日に出願され、「SYSTEM FOR TREATING EMBOLISM AND ASSOCIATED DEVICES AND METHODS」と題された米国特許出願第16/536,185号に開示されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0035】
しかしながら、血管BVから血餅材料PEを除去/除去するために吸引が適用されている場合でも、吸引は、すべての血餅材料PEを取り除く/破壊するのに十分ではない可能性がある。例えば、多くの慢性的な(例えば組織化された)血餅は、血管BVの壁に強く付着する可能性があり、それらを取り除くのが困難となる。本技術の一態様では、システム100は、ガイドカテーテル470を通して、ガイドカテーテル470を介して吸引が適用される前、その最中、及び/またはその後に挿入することができ、血餅物質PEが血管BV内に強く付着している場合でも、血餅物質PEを係合し、破壊し、及び/または捕捉することができる。
【0036】
例えば、
図3及び4Bを参照すると、ブロック362において、方法360は、血餅処理デバイス130(送達カテーテル102内で圧縮され、したがって
図4Bでは覆い隠されている)をガイドカテーテル470を通して前進させて血餅物質PEに近接させることを含むことができる。より具体的には、システム100の処理部分111は、先端108が(i)ガイドカテーテル470の遠位部分471の遠位、及び(ii)血管BV内の血餅物質PEの遠位に配置されるまで圧縮された展開前構成でガイドカテーテル470を通って前進することができる。他の実施形態では、チップ108は、血餅物質PE内に配置することができる。いくつかの実施形態では、処理部分111は、ガイドワイヤ472上で前進することができ、一方、他の実施形態では、ガイドワイヤ472は省略され得る。
【0037】
図3及び4Cを参照すると、ブロック363において、方法360は、血餅処理デバイス130が血餅物質PEの遠位に及び/または部分的に血餅物質PE内に拡張されるように、血餅処理デバイス130を圧縮された展開前構成から拡張された展開構成に移動させることを含むことができる。例えば、
図1A及び1Bを参照して上で詳細に説明したように、システム100の操作者は、ハンドル120をハブ110に向かって遠位方向に前進させ、及び/またはハブ110をハンドル120に向かって引っ込めて、中間シャフト104を送達カテーテル102に対して動かして、血餅処理デバイス130を送達カテーテル102の外に前進させ、それにより、血餅処理デバイス130を血管BV内に拡張させる(例えば、自己拡張する)。図示された実施形態では、血餅処理デバイス130(例えば、第3の領域244の外側支柱表面248)は、血管BVの壁に接触する(例えば、係合する、付着するなど)。いくつかの実施形態では、血餅処理デバイス130は、血餅処理デバイス130が血管BVの壁に半径方向外向きの力を及ぼすように、血管BVに比べて大きいサイズである。他の実施形態では、血餅処理デバイス130は、それが血管BVの壁に接触しないようなサイズにすることができる。
【0038】
図3及び4Dを参照すると、ブロック364において、方法360は、血餅処理デバイス130を、血餅物質PE内に/血餅物質PEに向けて、近位に(例えば、矢印Bの方向に)引っ込めることを含むことができる。より具体的には、
図1A及び1Bを参照すると、操作者は、システム100全体を近位方向に引っ張って(例えば、ハブ110を把持することによって)、ガイドカテーテル470の管腔を通して処理部分111を引っ込めることができる。血餅処理デバイス130が引っ込められると、血餅処理デバイス130は、血餅物質PEと係合して、血餅物質PEを捕捉/破壊する。例えば、血餅物質PEは、第1のセル250(
図2A~2C)を通って入り、より小さな第2のセル252(
図2A~2C)によって血餅処理デバイス130内に保持され得る。本技術の一態様では、血餅処理デバイス130は、血餅物質PEが血管BVの壁に強く付着している場合でも、血餅物質PEを血管BVの壁から剪断することができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、内側シャフト106が中間シャフト104の管腔内に浮かんでいる場合、血餅処理デバイス130の長さL(
図2A)は、血餅処理デバイス130が血餅物質PEへと/血餅物質PEに対して引っ張られるにつれて、及び中間シャフト104が、内側シャフト106に対して近位方向に移動するにつれて、増加し得る。他の実施形態では、システム100が作動機構122を含む場合、操作者は、作動機構122を作動させて、中間シャフト104、及び内側シャフト106の相対位置をロックまたは実質的にロックすることによって、血餅処理デバイス130の長手方向及び/または半径方向の剛性を増加させることができる。
【0040】
図3及び4Eを参照すると、ブロック365において、方法360は、血餅処理デバイス130を、引っ込めることを含むことができ、捕捉した血餅物質PEを、ガイドカテーテル470の管腔に捕捉することができる。いくつかの実施形態では、血餅処理デバイス130は、ガイドカテーテル470から完全に取り外すことができる。いくつかの実施形態では、血餅物質PEのいずれかが血管BVに残っている場合、血餅処理デバイス130を洗浄することができ、ブロック362~365を繰り返して、残りの血餅物質PEを捕捉することができる。代替的に、新しい血餅処理デバイス130をガイドカテーテル470を通して再挿入して、残りの血餅物質PEを捕捉することができる。いくつかの実施形態では、血餅処理デバイス130は、必ずしも血餅物質PEを捕捉することなく血餅物質PEを分解することができ、血餅処理デバイス130の収縮後または収縮中に、吸込をガイドカテーテル470に適用して、残りの血餅物質PEを、ガイドカテーテル470へと吸引することができる。最後に、
図3及び4Fを参照すると、ブロック366において、方法360は、血餅物質の十分な部分が患者から除去された後、血管BV及び患者からガイドカテーテル470を除去することを含むことができる。
【0041】
本技術のいくつかの態様は、以下の追加の実施例に示されている。
1.血餅処理システムであって、
管腔を画定する外側カテーテルと、
前記外側カテーテルの前記管腔内に少なくとも部分的に配置される内側カテーテルと、
圧縮構成と拡張構成との間で移動可能な単一構造を形成する複数の相互接続された支柱を含む血餅処理デバイスとを備え、前記拡張構成で、前記単一構造は、
前記外側カテーテルに結合した近位接続領域と、
前記近位接続領域から延びる近位円錐領域であって、前記支柱の第1の部分が前記近位円錐領域において第1のセルを形成する、近位円錐領域と、
前記近位円錐領域から延びる円筒形領域と、
前記円筒形領域から延びる遠位円錐領域であって、前記支柱の第2の部分が前記遠位円錐領域において第2のセルを形成し、前記第2のセルが前記第1のセルよりも小さい、遠位円錐領域と、
前記遠位円錐領域から延び、前記内側カテーテルに結合された遠位接続領域と、を含む、血餅処理システム。
2.前記内側カテーテルが、(a)前記血餅処理デバイスの前記遠位接続領域に結合した遠位端部分と、(b)前記外側カテーテルの前記管腔内に浮かぶよう構成された近位端部分と、を有する、実施例1に記載の血餅処理システム。
3.前記内側カテーテルと前記外側カテーテルとが、その中を通るガイドワイヤを受け入れるよう構成されている、実施例1または実施例2に記載の血餅処理システム。
4.前記外側カテーテルの近位端部分に結合されたハンドルをさらに含み、前記ハンドルが前記内側カテーテルの近位端部分に結合された作動機構を含み、前記作動機構の作動が前記内側カテーテルを前記外側カテーテルに対して平行移動させて、前記血餅処理デバイスを縦方向に圧縮または縦方向に伸長するように構成されている、実施例1~3のいずれか1つに記載の血餅処理システム。
5.管腔を画定する送達カテーテルと、
前記外側カテーテルの近位端部分に結合し、前記送達カテーテルに対して第1の位置と第2の位置との間で移動可能である、ハンドルと、をさらに含み、
前記第1の位置において、前記血餅処理デバイスが、前記圧縮構成の前記送達カテーテルの前記管腔内に拘束され、
前記第2の位置において、前記血餅処理デバイスが、前記拡張構成の前記管腔の遠位に位置する、実施例1~4のいずれか1つに記載の血餅処理システム。
6.前記送達カテーテルの近位端部分に結合するハブをさらに含み、前記ハンドルが、前記第2の位置において前記ハンドルを前記ハブに固定するよう構成されたロック機構を含む、実施例5に記載の血餅処理システム。
7.前記ハンドル、前記送達カテーテル、前記外側カテーテル、及び前記内側カテーテルが、それらを通るガイドワイヤを受け入れるように構成されている、実施例5または実施例6に記載の血餅処理システム。
8.前記拡張構成において、前記円筒形領域が約0.71インチ~約1.34インチの直径を有する、実施例1~7のいずれか1つに記載の血餅処理システム。
9.前記血餅処理デバイスの前記支柱が、拘束されていない場合、前記圧縮構成から前記拡張構成に自己拡張するように構成されている、実施例1~8のいずれか1つに記載の血餅処理システム。
10.前記血餅処理デバイスの前記支柱が、形状記憶材料を含む、実施例1~9のいずれか1つに記載の血餅処理システム。
11.前記単一構造が、(a)前記近位円錐領域内の第1の数の前記支柱と、(b)前記支柱の前記第1の数よりも大きい前記遠位円錐領域内の第2の数の前記支柱を含む、実施例1~10のいずれか1つに記載の血餅処理システム。
12.血餅除去の方法であって、前記方法が、
ヒト患者の血管内の血餅物質に近接するガイドカテーテルの遠位部分を配置することと、
前記ガイドカテーテルを通して血餅処理デバイスを前進させて、前記血餅物質に近接させることと、
前記血餅物質の遠位の血管内で前記血餅処理を拡大することであって、前記血餅処理デバイスは、近位部分及び遠位部分を有する単一構造を形成する相互接続された複数の支柱を含み、前記支柱が、前記近位部分に複数の第1のセルを形成し、前記遠位部分に複数の第2のセルを形成し、前記第1のセルが前記第2のセルよりも大きい、ことと、
前記ガイドカテーテルの前記遠位部分で吸引を生成することと、
前記血餅材料を通して前記血餅処理デバイスを近位に引っ込めることと、を含む、方法。
13.前記ガイドカテーテルを通して前記血餅処理デバイスを前進させることが、前記血餅処理デバイスをガイドワイヤ上に前進させることを含む、実施例12に記載の方法。
14.前記単一構造の前記近位部分が、前記ガイドカテーテルを通って少なくとも部分的に延びる外側カテーテルに結合し、前記単一構造の前記遠位部分が、前記外側カテーテルを通って少なくとも部分的に延びる内側カテーテルに結合する、実施例12または実施例13に記載の方法。
15.前記ガイドカテーテルを通して前記血餅処理デバイスを前進させることが、前記血餅処理デバイスを、前記ガイドカテーテル、外側カテーテル、及び内側カテーテルを通してガイドワイヤ上に前進させることを含む、実施例14に記載の方法。
16.前記ガイドカテーテルの前記遠位部分で前記吸引を生成することが、前記血餅処理デバイスを近位に引っ込める前に、前記血餅物質の第1の部分を前記ガイドカテーテルに吸込むために吸引を生成することを含む、実施例12~15のいずれか1つに記載の方法。
17.前記血餅処理デバイスを近位に引っ込めることが、前記血管内に残っている前記血餅物質の第2の部分を通して前記血餅処理デバイスを近位に引っ込めて、前記血餅物質の前記第2の部分を捕捉することを含む、実施例16に記載の方法。
18.前記血餅物質を通して前記血餅処理デバイスを近位に引っ込めることが、前記血餅物質の少なくとも一部分を捕捉することを含み、前記方法が、前記血餅処理デバイス及び前記捕捉された血餅物質を前記ガイドカテーテルに引っ込めることをさらに含む、実施例12~17のいずれか1つに記載の方法。
19.血餅処理システムであって、
管腔を画定する外側シャフトと、
前記外側シャフトの前記管腔内に少なくとも部分的に配置される内側シャフトと、
近位部分と遠位部分を有する単一構造を形成する複数の相互接続された支柱と、を含み、前記近位部分が前記外側シャフトに結合し、前記遠位部分が前記内側シャフトに結合し、前記支柱が、前記近位部分に複数の第1のセル、及び前記遠位部分の複数の第2のセルを形成し、前記第1のセルが前記第2のセルよりも大きい、血餅処理システム。
20.前記外側シャフトと前記内側シャフトとが、その中を通るガイドワイヤを受け入れるよう構成されている、実施例12に記載の血餅処理システム。
21.血餅処理デバイスであって、
圧縮構成と拡張構成との間で移動可能な単一構造を形成する複数の相互接続された支柱を含み、前記拡張構成で、前記単一構造が、
近位接続領域と、
前記近位接続領域から延びる近位円錐領域であって、前記支柱の第1の部分が前記近位円錐領域において第1のセルを形成する、近位円錐領域と、
前記近位円錐領域から延びる円筒形領域と、
前記円筒形領域から延びる遠位円錐領域であって、前記支柱の第2の部分が前記遠位円錐領域において第2のセルを形成する、前記第2のセルが前記第1のセルよりも小さい、遠位円錐領域と、
前記遠位円錐領域から延びる遠位接続領域と、を含む、血餅処理デバイス。
22.前記近位接続領域に結合され、管腔を画定する第1のシャフトと
前記遠位接続領域に結合され、前記第1のシャフトの前記管腔を通って少なくとも部分的に延びる第2のシャフトと、をさらに含む、実施例21に記載の血餅処理デバイス。
23.前記第2のシャフトが、(a)前記遠位接続領域に結合した遠位端部分と、(b)前記第1のシャフトの前記管腔内に浮かぶよう構成された近位端部分と、を有する、実施例21または実施例22に記載の血餅処理デバイス。
24.前記支柱が、拘束されていない場合、前記圧縮構成から前記拡張構成に自己拡張するように構成されている、実施例21~23のいずれか1つに記載の血餅処理デバイス。25.前記支柱が、形状記憶材料から作製されている、実施例21~24のいずれか1つに記載の血餅処理デバイス。
26.血餅処理デバイスであって、
近位部分と遠位部分を有する単一構造を形成する複数の相互接続された支柱を含み、前記支柱が、前記近位部分に複数の第1のセル、及び前記遠位部分の複数の第2のセルを形成し、前記第1のセルが前記第2のセルよりも大きい、血餅処理デバイス。
【0042】
本技術の実施形態の上記の詳細な説明は、網羅的であること、または技術を上記で開示された正確な形態に限定することを意図していない。本技術の特定の実施形態及び実施例は、例示の目的で上述されているが、当業者が認識するように、本技術の範囲内で様々な均等の修正が可能である。例えば、ステップは所与の順序で提示されているが、代替の実施形態は、異なる順序でステップを実行することができる。本明細書に記載される様々な実施形態は、さらなる実施形態を提供するために組み合わされてもよい。
【0043】
上記から、本技術の特定の実施形態が例示の目的で本明細書に記載されているが、本技術の実施形態の説明を不必要に曖昧にすることを避けるために、周知の構造及び機能は詳細に図示または説明されていないことが理解されよう。文脈が許す場合、単数または複数の用語は、それぞれ複数または単数の用語を含んでもよい。
【0044】
さらに、「または」という単語が、2つ以上の項目のリストを参照して、他の項目から排他的な単一の項目のみを意味するように明示的に限定されていない限り、そのようなリストでの「または」の使用は、(a)リスト内の任意の単一の項目、(b)リスト内のすべての項目、または(c)リスト内の項目の任意の組み合わせを含むものとして解釈されるべきである。さらに、「含むこと」という用語は、同じ特徴及び/または追加のタイプの他の特徴のより多くの数が排除されないように、少なくとも列挙された特徴(複数可)を含むことを意味するために全体を通して使用される。例示の目的で特定の実施形態が本明細書に記載されているが、本技術から逸脱することなく様々な修正を行うことができることも理解されよう。さらに、技術のいくつかの実施形態に関連する利点がそれらの実施形態の文脈で説明されたが、他の実施形態もそのような利点を示す可能性があり、全ての実施形態が必ずしも本技術の範囲内にあるような利点を示す必要はない。したがって、本開示及び関連技術は、本明細書に明示的に示されていないまたは説明されていない他の実施形態を包含することができる。
【外国語明細書】