(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107298
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】眼を治療するための組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 36/062 20060101AFI20240801BHJP
【FI】
A61K36/062
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024094284
(22)【出願日】2024-06-11
(62)【分割の表示】P 2021504408の分割
【原出願日】2019-07-24
(31)【優先権主張番号】62/703,941
(32)【優先日】2018-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/519,149
(32)【優先日】2019-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】509127664
【氏名又は名称】ジョンソン・アンド・ジョンソン・サージカル・ビジョン・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】リ・ウェン-ファ・ティン
(72)【発明者】
【氏名】マームード・カリド
(72)【発明者】
【氏名】パルサ・ラミン
(72)【発明者】
【氏名】ランドハワ・マンプリート
(72)【発明者】
【氏名】バイ・ミンギ
(72)【発明者】
【氏名】ホリヴァ・ケネス・ティー
(57)【要約】
【課題】角膜からかつ/又は角膜内でのヒアルロン酸の産生/放出/送達/排出を誘導、促進、及び/又は改善する1種若しくは2種以上の抽出物を含む、眼を治療するための組成物を提供する。
【解決手段】組成物が、i)少なくとも0.3mg/mLの眼の角膜組織内の角膜流体中のピキア・アノマーラの抽出物の濃度を達成するための、安全かつ有効な量のピキア・アノマーラの抽出物と、ii)任意選択で、安全かつ有効な量の透過促進剤と、iii)任意選択で、眼科的に許容可能な担体と、を含み、抽出物は、固形物の総重量に対して少なくとも30%のマンナンを含有する加水分解物を含む、組成物。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
角膜からかつ/又は前記角膜内でのヒアルロン酸の、産生、放出、送達、及び/又は排出が減少した又は低レベルの患者において、角膜組織細胞においてヒアルロン酸産生を増加させるための方法における使用のための組成物であって、前記方法は前記患者の眼に前記組成物を局所投与する工程を含み、前記組成物が、
i)少なくとも0.3mg/mLの前記眼の角膜組織内の角膜流体中のピキア・アノマーラの抽出物の濃度を達成するための、安全かつ有効な量のピキア・アノマーラの抽出物と、
ii)任意選択で、安全かつ有効な量の透過促進剤と、
iii)任意選択で、眼科的に許容可能な担体と、を含み、
前記抽出物は、固形物の総重量に対して少なくとも30%のマンナンを含有する加水分解物を含む、組成物。
【請求項2】
前記組成物中の前記抽出物が、180~800,000Daの重量平均分子量を有するオリゴ糖及び多糖類を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物中の前記抽出物が、DP1~DP4444の平均重合度を有するオリゴ糖及び多糖類を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
透過促進剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記透過促進剤が、前記組成物全体の0.01%(w/v)~20%(w/v)の濃度で存在する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項6】
前記透過促進剤が、前記組成物全体の0.1%(w/v)~10%(w/v)の濃度で存在する、請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
前記透過促進剤が、前記組成物全体の0.25%(w/v)~5%(w/v)の濃度で存在する、請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
前記透過促進剤が、ポリオキシエチレン、脂肪酸のポリオキシエチレンエーテル、モノオレイン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ポリオキシエチレン、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、フシジン酸及びその誘導体、EDTA、EDTA二ナトリウム、コール酸、デオキシコール酸、グリココール酸、グリコデオキシコール酸、タウロコール酸、タウロデオキシコール酸、コール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、グリココール酸塩、デオキシコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、グリコデオキシコール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸ナトリウム、ケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、サポニン、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸アンモニウム、デカメトニウム、臭化デカメトニウム、及び臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、又は上記のいずれかの混合物から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項9】
前記患者の涙中のヒアルロン酸濃度が、タンパク質1ミリグラム当たり10ナノグラム未満である場合に投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記患者の涙中のヒアルロン酸濃度が、タンパク質1ミリグラム当たり15ナノグラム未満である場合に投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記患者の涙中のヒアルロン酸濃度が、タンパク質1ミリグラム当たり20ナノグラム未満である場合に投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記患者の涙中のヒアルロン酸濃度が、タンパク質1ミリグラム当たり25ナノグラム未満である場合に投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記患者の涙中のヒアルロン酸の濃度を上昇させて、タンパク質1ミリグラム当たり10ナノグラム以上とするために前記患者の眼に投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記患者の涙中のヒアルロン酸の濃度を上昇させて、タンパク質1ミリグラム当たり15ナノグラム以上とするために前記患者の眼に投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記患者の涙中のヒアルロン酸の濃度を上昇させて、タンパク質1ミリグラム当たり20ナノグラム以上とするために前記患者の眼に投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記患者の涙中のヒアルロン酸の濃度を上昇させて、タンパク質1ミリグラム当たり25ナノグラム以上とするために前記患者の眼に投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記抽出物がヒアルロジンである、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角膜からかつ/又は角膜内でのヒアルロン酸の産生/放出/送達/排出を誘導、促進、及び/又は改善する1種若しくは2種以上の化合物及び/又は抽出物を含む組成物、並びに眼を治療するための組成物を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
「ドライアイは、涙液膜の恒常性の損失を特徴とし、涙液膜不安定性及び遠視性、眼球表面炎症及び損傷、並びに神経感覚異常が病因的役割を果たす眼の症状を伴う眼の表面の多要因疾患である。」Craig,J.P.et al.TFOS DEWS II definition and classification report.Ocul Surf.2017;15:276-283。ドライアイは、異常な又は不十分な涙液の形成、及びムチン分泌の欠乏(すなわち、角膜炎症)をもたらす可能性がある。ドライアイ症状は、リウマチ性関節炎、シェーグレン症候群、全身性エリスリマトーデス、並びに全身性硬化症及びサルコイドーシスなどの涙(すなわち、涙生成)腺を損傷する自己免疫異常などの様々な基礎疾患の結果として顕在化する場合がある。ドライアイはまた、レーシック(登録商標)手術などの眼科手術後に誘導される可能性がある。ドライアイは、米国において1300万人を超える個体が罹患していると推定される。
【0003】
基礎病理にもかかわらず、ドライアイは、通常、眼球前涙液膜の急速な破壊を伴い、露出した外表面の脱水をもたらす。角膜及び結膜の湿った状態を維持するためには正常な涙液の形成が必要であり、これは、角膜の透明性を維持するために、両方の潰瘍を予防するのに役立つ。加えて、涙液は、眼の表面上の眼瞼の動き(例えばまばたき)及び眼からの異物の除去を促進する。涙液は、通常、眼における感染を予防するのに有用なリゾチームを含有する。ドライアイは、眼における重度の痛みに対する軽度の不快感に関連する可能性がある。それが長期間にわたって発生すると、かすみ眼、異物感、及び/又は灼熱感、及び痒みを引き起こす可能性がある。治療なしに状態が持続される場合、更に角膜潰瘍及び/又は瘢痕をもたらす可能性がある。
【0004】
ドライアイ症状としては、眼の痛み又は倦怠感、まばたきの増加、及び充血した眼が挙げられる。更に、細菌は、引っ掻きを介して侵入し、感染を引き起こす可能性があり、引っ掻きが十分に深い場合には、人の視覚に影響を及ぼす可能性がある。眼精疲労に加えて、ドライアイの原因としては、シェーグレン症候群、シュベニ・ジョンソン症候群、火傷及び眼への損傷、並びに斜辺薬、精神薬、緑内障を治療するための点眼剤、並びに他のそのような薬物の副作用が挙げられる。
【0005】
点眼剤は、ドライアイを治療するための効果的な方法である。このような点眼剤は、通常、ドライアイ治療活性物質を含み、このような点眼剤中の一般的な活性物質はヒアルロン酸である。ヒアルロン酸は、生物学的に誘導された高分子物質であり、非常に高い保水性及び高粘弾性、良好な増粘特性、及び良好な糸状形成機能などの特有の特性を有し、様々な種類の皮膚の問題などを治療するための局所剤において保湿剤として使用されている。乾燥が全身にわたって見られるシェーグレン症候群によって引き起こされるドライアイの場合、ヒアルロン酸を含有する点眼剤の点眼が有効である。しかしながら、点眼剤として点眼されるとき、ヒアルロン酸は角膜上での比較的短い滞留時間を有し、したがって、ヒアルロン酸点眼剤の効果は、約2時間又は3時間しか持続せず、これは、患者がより頻繁に(例えば、1日当たり5~10回)点眼剤を点眼しなければならないことを意味する。
【0006】
ヒアルロン酸(hyaluronic acid、HA)は、眼内の上角膜細胞によって産生される。特に、有意に高いヒアルロン酸濃度は、高齢者よりも若年のヒト集団の角膜において見出されている。(Pacella,E.,Pascella,F.,De Paolis,G.,et al.のGlycosaminoglycans in the human cornea:age-related changes.Ophthalmol.Eye Dis.7:1-5,2015を参照)。
【0007】
ヒアルロン酸はまた、一般的な創傷の治癒において有用であり、全体的な眼の健康維持に不可欠である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、角膜から又は角膜内でのヒアルロン酸の産生及び/又は放出を促進及び/又は改善すると考えられる眼科用医薬組成物が必要とされている。
【0009】
本発明者らは、角膜からかつ/又は角膜内でのヒアルロン酸の産生/放出/送達/排出を、十分な角膜流体レベルで誘導、促進、及び/又は改善することができるピキア属の抽出物又は抽出物源を発見した。
【0010】
したがって、本発明の一態様は、角膜からかつ/又は角膜内でのヒアルロン酸の産生/放出/送達/排出を誘導、促進、及び/又は改善するための方法であって、安全かつ有効な量のピキア属の1種若しくは2種以上の抽出物又は抽出物源を含む眼科用組成物を投与する工程を含む、方法に関する。
【0011】
本発明の別の態様は、角膜からかつ/又は角膜内でのヒアルロン酸の産生/放出/送達/排出を誘導、促進、及び/又は改善するための方法であって、角膜からかつ/又は角膜内でのヒアルロン酸の産生/放出/送達/排出を誘導、促進、及び/又は改善する、安全かつ有効な量のピキア属の1種若しくは2種以上の抽出物又は抽出物源を含む眼科用組成物を投与する工程を含み、涙中のヒアルロン酸の濃度を上昇させて、タンパク質1ミリグラム当たり、10(又は約10)以上、任意選択で15(又は約15)以上、任意選択で20(又は約20)以上、任意選択で25(又は約25)ナノグラム以上、任意選択で30(又は約30)以上、任意選択で35(又は約35)以上、任意選択で40(又は約40)以上、又は任意選択で45(又は約45)ナノグラム~タンパク質1ミリグラム当たり、100(又は約100)、任意選択で90(又は約90)、任意選択で80(又は約80)、任意選択で70(又は約70)、又は任意選択で60(又は約60)ナノグラムとするために、組成物が、タンパク質1ミリグラム当たり、10(又は約10)ナノグラム未満、任意選択で15(又は約15)ナノグラム未満、任意選択で20(又は約20)ナノグラム未満、又は任意選択で25(又は約25)ナノグラム未満のヒアルロン酸濃度を有する患者の涙中に投与され得る、方法に関する。
【0012】
特定の実施形態では、本発明の化合物及び/又は抽出物に起因する、患者の涙中の上述のヒアルロン酸の濃度は、最大少なくとも約2時間、任意選択で約4時間、任意選択で約6時間、任意選択で約8時間、任意選択で約10時間、任意選択で約12時間、又は任意選択で約12~約24時間維持される。
【0013】
上記に詳述されるヒアルロン酸の濃度は、Dreyfuss法(以下の定義において記載)を使用して求められる。
【0014】
本発明の別の態様は、角膜からかつ/又は角膜内でのヒアルロン酸の産生/放出/送達/排出を誘導、促進、及び/又は改善して、ドライアイ又はドライアイに関連する症状を治療(例えば、低減)及び/又は予防するための方法であって、安全かつ有効な量のピキア属の1種若しくは2種以上の抽出物又は抽出物源を含む眼科用組成物を投与する工程を含む、方法に関する。
【0015】
本発明の別の態様は、角膜表面内及び/又は角膜表面上のヒアルロン酸の濃度ように、角膜からかつ/又は角膜内でのヒアルロン酸の産生/放出/送達/排出を誘導、促進、及び/又は改善する、安全かつ有効な量のピキア属の1種若しくは2種以上の抽出物又は抽出物源を含む組成物を投与することにより、角膜からかつ/又は角膜内でのヒアルロン酸の減少した又は低レベルの産生/放出/送達/排出に起因する、眼の症状を予防及び/又は治療する方法に関する。
【0016】
本発明の別の態様は、角膜からかつ/又は角膜内でのヒアルロン酸の産生/放出/送達/排出を増加させる、安全かつ有効な量のピキア属の1種若しくは2種以上の抽出物又は抽出物源を含む組成物を投与することにより、患者の眼内かつ/又は眼上の創傷(例えば、非ドライアイ関連の眼の外傷、術後外科創傷、又は非特異的創傷)の治癒を促進するか、又は治癒速度を増加させる方法に関する。特定の実施形態では、上述の方法は、安全かつ有効な量のピキア属の1種若しくは2種以上の抽出物又は抽出物源を含む組成物を投与しない場合、そのような患者によって通常産生されるヒアルロン酸の濃度レベルを超えて、角膜からかつ/又は角膜内でのヒアルロン酸の産生/放出/送達/排出を増加させる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、角膜からかつ/又は角膜内でのヒアルロン酸の産生/放出/送達/排出が減少した又は低レベルの患者を治療するための方法であって、(任意選択で、そのようなヒアルロン酸の産生/放出/送達/排出の増加を必要とする患者の)患者の眼に組成物を局所投与する工程を含み、組成物が、
i)少なくとも約0.3mg/mLの眼の角膜組織内の角膜流体中のピキア属抽出物濃度を達成するための、安全かつ有効な量のピキア属の1種若しくは2種以上の抽出物又は抽出物源と、
ii)任意選択で、安全かつ有効な量の透過促進剤と、
iii)任意選択で、眼科的に許容可能な担体と、を含む、方法に関する。
【0018】
本発明は、(任意選択で、眼の創傷の治癒の促進又は治癒速度の増加を必要とする患者の)眼内かつ/又は眼上のそのような創傷の治癒を促進するか、又は治癒速度を増加させる方法であって、そのような患者に組成物(すなわち、特定の実施形態では、安全かつ有効な量のピキア属の1種若しくは2種以上の化合物及び/又は抽出物若しくは抽出物源を投与しない場合(又はそれらなしで)、そのような患者によって産生されるヒアルロン酸の濃度レベルを超えて、角膜からかつ/又は角膜内でのヒアルロン酸の産生/放出/送達/排出を増加させる)を局所投与する工程を含み、組成物が、
i)少なくとも約0.3mg/mLの眼の角膜組織内の角膜流体中のピキア属抽出物濃度を達成するための、安全かつ有効な量のピキア属の1種若しくは2種以上の抽出物又は抽出物源と、
ii)任意選択で、安全かつ有効な量の透過促進剤と、
iii)任意選択で、眼科的に許容可能な担体と、を含む、方法。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】24及び48時間でのピキア・アノマーラ抽出物の局所適用後の上角膜細胞におけるHA産生の増加を示す棒グラフを図示する。
【
図2】ピキア・アノマーラ抽出物を含有する増殖培地内に上角膜細胞を配置した48時間後の、上角膜細胞におけるHA産生の統計的に有意な増加を示す棒グラフを図示する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
当業者であれば、本明細書の記載に基づいて本発明を最大限に利用できると考えられる。以下の具体的な実施形態は、あくまで例示的なものとして解釈され得、いかなる意味においても以下の開示を限定するものとして解釈してはならない。
【0021】
本発明の組成物は、本明細書に記載される本発明の要素、工程及び制限事項、並びに本明細書に記載される追加若しくは任意成分、構成成分、又は制限事項を含む、これらからなる、又はこれらから本質的になることができる。
【0022】
本明細書で使用する場合、用語「含む(comprising)」(及びその文法的変形)は、「有する(having)」又は「含む(including)」を包括する意味で用いられ、「のみからなる(consisting only of)」とする排他的な意味では用いられない。本発明で使用する場合、用語「a」及び「the」は、単数に加えて複数も包含すると理解される。
【0023】
別段の定めがある場合を除き、本明細書で用いられる全ての科学技術用語は、本発明が属する技術分野における当業者が一般に理解するものと同じ意味を有する。また、本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、それらが本明細書と矛盾しない範囲で、参照によりその全体が組み込まれる。本明細書で使用するとき、全ての百分率は、特に規定しない限り、組成物全体の重量による。
【0024】
本明細書で使用するとき、用語「角膜」又は「角膜の」は、虹彩、瞳孔、及び前房を覆う眼の透明な前方部分を含み、かつ/又はこれらに関連し、透明な前方部分の層は、(上角膜細胞を含む)角膜上皮層、(前方限界膜としても知られる)ボーマン膜、(固有質でもある)角膜実質、(後方限界膜でもある)デスメ膜、及び角膜内皮(およそ5μm厚であるミトコンドリアに富んだ細胞の単純な扁平又は低立方状単層)を含む。
【0025】
多様な層の機能は以下のとおりである。
上皮は、
・化学物質及び水に対するバリアを提供し、
・微生物に対するバリアを提供し、
・眼の屈折力に寄与する涙液膜-角膜境界面の内側部分としての滑らかな光学面を提供し、
・重要な免疫学的機能を行うランゲルハンス細胞を収容する。
ボーマン膜は、
・角膜形状の維持を助ける。
角膜実質は、
・角膜に機械的強度を提供し、
・角膜の透明性を提供し、
・屈折レンズとして機能する。
デスメ膜は、
・内皮細胞の休止層として機能する。
角膜内皮は、
・角膜実質から水を除去することによって角膜の透明度を維持する。
【0026】
角膜上皮層は、5~7層の細胞でかなり均一に構成される。角膜上皮は、厚さ約50μである。上皮は、平滑な正則曲面を提供するように均一であり、非ケラチン化された層状扁平上皮から構成される。理論に束縛されるものではないが、角膜上皮層は、タイトジャンクション構造(すなわち、組織への化学的浸透を通常阻害するこれらのタイトジャンクション構造[例えば、膜又は膜バリア])を更に含有し、タイトジャンクション構造は、ピキア属の1種若しくは2種以上の抽出物又は抽出物源の拡散を妨害するか、又は拡散に対するバリアとして作用することができ、角膜上皮を横切って角膜組織内へのピキア属の1種若しくは2種以上の抽出物又は抽出物源の拡散を低減することによって、角膜組織内に蓄積し、ヒアルロン酸の産生に関与するそのような組織の細胞部分と接触することができる抽出物の濃度レベルを低減すると考えられる。
【0027】
本明細書で使用するとき、「角膜からかつ/又は角膜内でのヒアルロン酸の減少した又は低レベルの産生/放出/送達/排出」という語句は、正常な(すなわち、非疾患の)人の涙におけるヒアルロン酸の濃度よりも低いヒアルロン酸の濃度を意味し、あるいは特定の実施形態では、Dreyfuss JL,Regatieri CV,Coelho B,et al.のAltered hyaluronic acid content in tear fluid of patients with adenoviral conjunctivitis.Acad Bras Cienc.2015;87(1):455-462に記載の方法を使用して決定されるように、タンパク質1ミリグラム当たり25(又は約25)ナノグラム未満である。この方法(Dreyfussの方法)を以下に再現する。
・試料収集
涙液を収集するために、5分間、局所麻酔薬を使用せずに、各眼の側頭側の眼瞼下にシルマーストリップを配置した。ストリップを室温で乾燥させて、分析まで-20℃で保管した。
・涙液試料の調製
100μLの蒸留水を使用して、シルマーストリップから涙液化合物を溶出させ、ヒアルロン酸及びタンパク質含量分析を行った。
・ヒアルロン酸測定
涙液中のヒアルロン酸含量を、非同位体蛍光アッセイにより測定した(Martins Jr,Passerotti CC,Maciel RM,Sampaio Lo,Dietrich CP and Nader HB.2003.)Practical determination of hyaluronan by a new noncompetitive fluorescence-based assay on serum of normal and cirrhotic patients.Anal Biochem 319:65-72を参照されたい)。溶出した涙液及び標準濃度のヒアルロン酸(Sigma、ミズーリ州、セントルイス)を、ヒアルロン酸結合タンパク質が予めにコーティングされた96マルチウェルプレート(FluoroNUNC Maxisorp-microtiterplate,Roskilde,Denmark)に添加した。次いで、プレートをビオチン化ヒアルロン酸結合タンパク質及びユーロピウム標識化ストレプトアビジン(Amershan,Piscataway,NJ)と共に、プレートを連続的にインキュベートした。その後、固相に残存するユーロピウムは強化溶液によって遊離され、時間分解蛍光光度計(Perkin-Elmer Life Sciences Wallac Oy、フィンランド、トゥルク)を使用して蛍光を測定した。データ(counts/s)は、MultiCalcソフトウェアプログラム(Perkin-Elmer Life Sciences Wallac Oy)を使用して自動的に処理され、値はng/mgを単位とするタンパク質の量として表される。
・タンパク質分析
総涙液タンパク質濃度を、製造業者の取扱説明書(Protein Assay Kit,Bio-Rad,Hercules,CA)に従って比色分析キットを使用して決定した。タンパク質のプロファイルを、前述のようにドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)によって分析した(Laemmli UK.1970.)Cleavage of structural proteins during the assembly of the head of bacteriophage T4.Nature 227:680-685を参照)。簡潔に述べると、涙液試料からの10μgのタンパク質を、還元条件下で3~20%線形勾配ポリアクリルアミドゲルに適用した。電気泳動後、ゲルを、クマシーブルー(Bio-Rad,Hercules,CA)により染色した。各タンパク質バンドは、Mac用のソフトウェアImageJ Version 10.2(米国国立衛生研究所、Bethesda,Maryland,USA)を使用して、各タンパク質バンドを濃度測定によって定量化した。結果は、任意の密度測定単位(arbitrary densitometric unit、ADU)によって表される。
【0028】
本明細書で使用するとき、ある成分を「本質的に含まない」組成物とは、組成物の総重量に基づいて、その成分を約2重量%以下しか有しない組成物を意味する。好ましくは、ある成分を本質的に含まない組成物は、組成物の総重量に基づいて、約1重量%以下、より好ましくは約0.5重量%以下、より好ましくは約0.1重量%以下、より好ましくは約0.05重量以下、より好ましくは約0.01重量%以下しか当該成分を有しない。特定のより好ましい実施形態では、ある成分を本質的に含まない組成物は、その成分を含まない、すなわち組成物中にその成分が存在しない。
【0029】
本明細書で使用するとき、「眼科的に許容可能な」とは、この用語がさす成分が、過度の毒性、不適合性、不安定性、刺激、アレルギー反応などを伴わず、組織(例えば、眼又は眼窩周囲皮膚組織の軟組織)と接触して使用するのに好適であることを意味する。当業者に認識されるように、化粧用として/皮膚科学的に許容可能な塩は、酸性/アニオン性又は塩基性/カチオン性の塩である。
【0030】
本明細書で使用するとき、用語「安全かつ有効な量」とは、角膜の1つ又は2つ以上の層からかつ/又は層内でのヒアルロン酸の産生/放出/送達/排出を誘導、促進、及び/又は改善するのに十分であるが、深刻な副作用を回避できる程度に少ない、開示された抽出物、化合物、又は組成物の量を意味する。安全かつ有効な量の化合物、抽出物、又は組成物は、例えば、エンドユーザーの年齢、健康状態、及び環境曝露、治療の期間及び性質、利用される特定の抽出物、成分、又は組成物、利用される特定の眼科学的に許容可能な担体、並びに同様の要因に応じて異なる。
【0031】
特定の実施形態では、本明細書にて開示する本発明は、本明細書に具体的に開示されていない任意の化合物若しくは要素(又は、化合物群若しくは要素群)がなくとも実施し得るものである。
【0032】
一般に、IUPAC命名法は、本明細書において、以下の用語の定義に従って使用される。
【0033】
用語「C1~8アルキル」は、単独で使用されようと、置換基の一部として使用されようと、1~8個の炭素原子を有する飽和脂肪族分枝鎖又は直鎖一価炭化水素ラジカルを指す。例えば、「C1~8アルキル」は、具体的には、ラジカルメチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2-ブチル、tert-ブチル、1-ブチル、1-ペンチル、2-ペンチル、3-ペンチル、1-ヘキシル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、1-ヘプチル、2-ヘプチル、3-ヘプチル、1-オクチル、2-オクチル、3-オクチルなどを含む。この用語はまた、対応するアルキルジイルラジカルも指し得る。アルキル及びアルキルジイルラジカルは、末端炭素原子を介して又は鎖内の原子を介してコア分子に結合し得る。同様に、利用可能な原子価が許せば、任意の数の置換基変数が、アルキル又はアルキルジイルラジカルに結合し得る。
【0034】
用語「C1~4アルキル」は、単独で使用されようと、置換基の一部として使用されようと、特定の数の炭素原子を有する飽和脂肪族分枝鎖又は直鎖一価炭化水素ラジカル又はアルキルジイル連結基を指し、当該ラジカルは、炭素原子から1個の水素原子を除去することによって得られ、当該アルキルジイル連結基は、鎖内の2個の炭素原子のそれぞれから1個の水素原子を除去することによって得られる。用語「C1~4アルキル」は、直鎖又は分枝鎖配置の1~4個の炭素原子を有するラジカルを指す。例えば、「C1~4アルキル」は、具体的には、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2-ブチル、tert-ブチル、1-ブチルなどのラジカルを含む。アルキル及びアルキルジイルラジカルは、末端炭素原子を介して又は鎖内の原子を介してコア分子に結合し得る。同様に、利用可能な原子価が許せば、任意の数の置換基変数が、アルキル又はアルキルジイルラジカルに結合し得る。
【0035】
用語「C2~4アルケニル」は、2~4個の炭素原子を有するアルケニルラジカルを指す。例えば、具体的には、ラジカルエテニル、プロペニル、アリル(2-プロペニル)、ブテニルなどを含む。上述のように、アルケニルラジカルも同様にコア分子に結合し得、指定される場合は更に置換されてもよい。
【0036】
用語「ハロ」は、それ自体又は他の用語と組み合わせて、フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨードなどのハロゲン原子を意味する。
【0037】
用語「置換された」は、1個又は2個以上の水素原子が、利用可能な原子価が許す量の置換基で置換されているコア分子を指す。置換は、コア分子には限定されず、置換基ラジカルでも生じ得、それによって、ラジカルは連結基になる。
【0038】
用語「独立して選択される」は、置換基変数群から選択され得る2つ又はそれ以上の置換基を指し、選択された置換基は同じであっても異なっていてもよい。
【0039】
用語「依存的に選択される」は、コア分子内の置換について指定の組み合わせで特定される1つ又は2つ以上の置換基変数(例えば、化合物の表のリストに記載されている置換基の群を指す変数)を指す。
【0040】
無機塩基由来の許容可能な塩としては、例えば、ナトリウム又はカリウムの塩などが挙げられる。有機塩基由来の許容可能な塩としては、例えば、一級、二級、又は三級のアミンなどと形成された塩が挙げられる。
【0041】
角膜内でのヒアルロン酸の産生/放出/送達/排出を誘導、促進、及び/又は改善する化合物及び/又は抽出物。
本発明は、角膜からかつ/又は角膜内でのヒアルロン酸の産生/放出/送達/排出を誘導、促進、及び/又は改善する1種若しくは2種以上の化合物及び/又は抽出物を含む。
【0042】
特定の実施形態では、角膜からかつ/又は角膜内でのヒアルロン酸の産生/放出/送達/排出を誘導、促進、及び/又は改善する化合物及び/又は抽出物は、ピキア属の抽出物又は抽出物源であるか、あるいはピキア属の抽出物又は抽出物源を含む。
【0043】
ピキア属は、サッカロミセス科の酵母の属である。この属の100を超える種が既知である。本発明の組成物に使用するのに好適な種としては、ピキア・アノマーラ、ピキア・ギリエルモンディ、ピキア・ノルベジェンシス、及びピキア・オーメリが挙げられる(これらから選択されるか、又はこれらからなる群から選択される)。ピキア・アノマーラ(以前はハンゼヌラ・アノマーラと命名されていた)は、生乳及びチーズで見出すことができる。ピキア属の酵母の抽出物は、マンノースモノマーで構成される多糖類であるマンナンを多く含んでいる。ピキア属の抽出物又は抽出物源は、植物の果実又は他の地上部から単離されてもよい。ピキア属の任意の眼科的に許容される抽出物を使用してもよい。ピキア属由来の上記種の抽出物又は抽出物源の混合物を使用してもよい。
【0044】
特定の実施形態では、本発明で使用されるピキア属由来の抽出物、又は抽出物源は、ピキア・アノマーラの抽出物である。特定の実施形態では、ピキア・アノマーラの好適な抽出物は、キウイ植物の果実又は葉に存在するピキア・アノマーラの株から産生される。別の実施形態では、ピキア・アノマーラの抽出物は、PRO-LIPISKIN又はUNFLAMAGYL(登録商標)としてSilab-Franceから市販されており、抽出物は、サトウキビに存在するピキア・アノマーラの株から産生される。
【0045】
一実施形態では、ピキア・アノマーラ抽出物は、共に参照により本明細書に組み込まれている仏国特許第2897266号及び同第2938768号に記載されているような以下のプロセスに従って得られる。
【0046】
特定の実施形態では、以下に記載される抽出プロセスは、ピキアの抽出物由来のタンパク質の多くを除去し、マンナンに関しては、活性物質を濃縮する。このプロセスは、ペプチド及び小タンパク質を得るための、タンパク質の少なくとも1つの酵素加水分解工程と、特定の実施形態では、このような分子のサイズの選択に基づいて濾過によってこれらの小ペプチド及び小タンパク質を除去する更なる工程を含む。
【0047】
特定の実施形態では、ピキア・アノマーラ抽出物を含むピキア属の抽出物は、ピキア属のタンパク質を連続的に又は同時にのいずれか一方で加水分解するための1つ又は2つ以上の加水分解酵素を含む抽出プロセスによって得られる。
【0048】
特定の実施形態では、酵素加水分解を使用して、ピキア属の抽出物中のタンパク質を、5000Da未満の重量平均分子量を有するタンパク質画分に分解する。好適な加水分解酵素としては、特定の実施形態では、パパイン、トリプシン、キモトリプシン、サブチリシン、ペプシン、サーモリシン、プロナーゼ、フラバスタシン、エンテロキナーゼ、因子Xaプロテアーゼ、チューリン、ブロメライン、プロテイナーゼK、ゲネナーゼI、テルミターゼ、カルボキシペプチダーゼA、カルボキシペプチダーゼB、コラゲナーゼ又はこれらの混合物から選択される少なくとも1つのペプチダーゼが挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
特定の実施形態では、ピキア属の抽出物を得るために使用される酵素は、結果として生じる可溶性相と不溶性相とを分離する前に不活性化される。
【0050】
一実施形態では、ピキア・アノマーラ抽出物は、以下を有するものとして特徴付けられる。
-5~300g/Lの固形分含量、
-4~9のpH、
-2~170g/Lのタンパク質含量、及び
-1~100g/Lの範囲の糖含量
【0051】
特定の実施形態では、ピキア属の抽出物は、乾燥ピキア属の抽出物の総重量の30重量%以上のマンナン含量、又は任意選択で、乾燥ピキア属の抽出物の総重量の少なくとも50重量%のマンナン含量を含む。
【0052】
特定の実施形態では、ピキア属の抽出物を含有する相を、砂が存在する105℃(又は約105℃)のオーブン熱の中を、一定重量が得られる/観察されるまで通過させることにより、ピキア属の抽出物の相を乾燥させる(かつ固形分含量を測定する)。
【0053】
特定の実施形態では、ピキア属の乾燥抽出物の固形分含量は、10~200g/L、又は任意選択で、26~40g/Lである。
【0054】
特定の実施形態では、室温(25℃)で電位差法により測定されるpHは、4.5~8.5の値、任意選択で、6.0~7.0となる。
【0055】
総糖含量の判定に、デュボワ法を使用することができる。濃縮硫酸及びフェノールの存在下で、還元糖から橙黄色の化合物が得られる。標準範囲から、サンプルの総糖含量を測定することができる。特定の実施形態では、ピキア属の乾燥抽出物の総糖含量は、7~145g/L、又は任意選択で、18~29g/Lである。特定の実施形態では、ピキア属の乾燥抽出物は、ピキア属の乾燥抽出物の全固形分の重量と比較して、ピキア属の乾燥抽出物の少なくとも30重量%の総糖重量を含有し、任意選択で、ピキア属の乾燥抽出物の少なくとも50重量%を含有する。
【0056】
特定の実施形態では、ピキア属の乾燥抽出物の炭水化物画分は、約180~約800,000Da、任意選択で、約5000~約515,000Da、任意選択で、約6000~約270,000Daの重量平均分子量を有するオリゴ糖及び多糖類の形態の(又は本質的にそれらの形態の)マンノース及びグルコースから構成される。特定の実施形態では、ピキア属の乾燥抽出物中のオリゴ糖及び多糖類の、少なくとも70%(又は約70%)、任意選択で、少なくとも75%(又は約75%)、少なくとも80%(又は約80%)、任意選択で、少なくとも85%(又は約85%)、少なくとも90%(又は約90%)、任意選択で、少なくとも95%(又は約95%)、又は100%(又は約100%)は、前述の重量平均分子量の範囲内にある。
【0057】
タンパク質含量タンパク質の測定は、ケルダール法によって得られる。特定の実施形態では、ピキア属の乾燥抽出物のタンパク質含量は、4~90g/L、又は任意選択で、12~18g/Lである。ピキア属の乾燥抽出物は、ピキア属の乾燥抽出物中の全固形分の、45%未満のタンパク質、又は任意選択で、30%未満のタンパク質を含有する。
【0058】
特定の実施形態では、ピキア属の乾燥抽出物は、マンナン、オリゴ糖及び多糖類の形態で重合したマンノースを含み、その重量平均分子量は、約180~約800,000Da、任意選択で、約5000~約515,000Da、任意選択で、約6000~約270,000Daのピキア属の乾燥抽出物を含む。特定の実施形態では、ピキア属の乾燥抽出物中のオリゴ糖及び多糖類の、少なくとも70%(又は約70%)、任意選択で、少なくとも75%(又は約75%)、少なくとも80%(又は約80%)、任意選択で、少なくとも85%(又は約85%)、少なくとも90%(又は約90%)、任意選択で、少なくとも95%(又は約95%)、又は100%(又は約100%)は、前述の重量平均分子量の範囲内にある。
【0059】
特定の実施形態では、抽出プロセスは、タンパク質の酵素加水分解の工程後に、5000Da未満の重量平均分子量を有するタンパク質を(例えば、濾過により)除去する工程を含む。したがって、ピキア属の抽出物は、5000Da未満の重量平均分子量を有するタンパク質及び/又はペプチドを含まないか、又は実質的に含まない。
【0060】
特定の実施形態では、上記の抽出プロセスは、濾過前にピキア属の抽出物を脱臭、脱色及び/又は安定化させる工程を含んでもよい。濾過は、プレス濾過、及び滅菌濾過であり得る。
【0061】
特定の実施形態では、使用される抽出物は、様々なピキア・アノマーラに属する。産生プロセスの特定の非限定的な例を以下に記載する。
-ピキア・アノマーラの抽出物(又は酵母)を、成長に適合した培養培地中で培養し、次いで遠心分離してバイオマスを回収する。
-次いで、バイオマスをボールミルで粉砕する。次いで、粉砕された材料を、1リットル当たり50グラムの濃度で水に再懸濁させた後、基本培地で30℃で6時間、酵素加水分解する。
-加水分解後、産生物を遠心分離し、滅菌前に濾過する。
-異なるサイズのフィルタ上で連続的に濾過することにより、固形物の総重量に対して少なくとも30%のマンナンを含有する加水分解物が得られ、かつ/又は特定の重量平均分子量のタンパク質が得られる。(得られた加水分解物は淡黄色の透明な液体水溶液の形態である。)
【0062】
特定の実施形態では、ピキア・アノマーラ抽出物は、以下の製造例に従って得られる。
【0063】
1.ピキア・アノマーラ抽出物A:
I.ピキア・アノマーラ抽出物Aの抽出:
ピキア・アノマーラ抽出物Aの調製は、以下の工程を含む。
-成長に適合した環境における酵母ピキア・アノマーラの培養、
-バイオマスを回収するための遠心分離、
-バイオマスの可溶化、
-塩基性pHでの酵素加水分解、
-可溶性相と不溶性相との分離、
-熱処理
-濾過、及び
-滅菌濾過。
II.ピキア・アノマーラ抽出物Aの特性評価:
上記のピキア・アノマーラ抽出物Aは、以下を特徴とする。
- -48~84g/Lの固形分含量、
- -4~9のpH、
- -19~48g/Lのタンパク質含量、及び
- -10~42g/Lの総糖含量。
【0064】
2.ピキア・アノマーラ抽出物B
I.ピキア・アノマーラ抽出物Bの抽出:
ピキア・アノマーラ抽出物Bの調製は、以下の工程を含む。
-成長に適合した環境における酵母ピキア・アノマーラの培養、
-バイオマスを回収するための遠心分離、
-バイオマスの可溶化、
-酸pHでの酵素加水分解、
-可溶性相と不溶性相との分離、
-熱処理
-濾過、及び
-滅菌濾過。
II.ピキア・アノマーラ抽出物Bの特性評価:
上記のピキア・アノマーラ抽出物Bは、以下を特徴とする。
- -58~95g/Lの固形分含量、
- -4~9のpH、
- -23~54g/Lのタンパク質含量、及び
- -12~32g/Lの総糖含量。
【0065】
3.ピキア・アノマーラ抽出物C
I.ピキア・アノマーラ抽出物Cの抽出:
ピキア・アノマーラ抽出物Cの調製は、以下の工程を含む。
-成長に適合した環境における酵母ピキア・アノマーラの培養、
-バイオマスを回収するための遠心分離、
-バイオマスの可溶化、
-基本培地での連続的な酵素加水分解、
-可溶性相と不溶性相との分離、
-熱処理
-濾過、及び
-滅菌濾過。
II.ピキア・アノマーラ抽出物Cの特性評価:
上記のピキア・アノマーラ抽出物Cは、以下を特徴とする。
- -91~195g/Lの固形分含量、
- -4~9のpH、
- -36~111g/Lのタンパク質含量、及び
- -18~65g/Lの総糖含量。
【0066】
4.ピキア・アノマーラ抽出物D
I.ピキア・アノマーラ抽出物Dの抽出:
ピキア・アノマーラ抽出物Dの調製は、以下の工程を含む。
-成長に適合した環境における酵母ピキア・アノマーラの培養、
-バイオマスを回収するための遠心分離、
-バイオマスの可溶化、
-酸pHで少なくとも2つの酵素と同時に加水分解、
-可溶性相と不溶性相との分離、
-熱処理
-濾過、及び
-滅菌濾過。
II.ピキア・アノマーラ抽出物Dの特性評価:
上記のピキア・アノマーラ抽出物Dは、以下を特徴とする。
- -5~53g/Lの固形分含量、
- -4~9のpH、
- -2~30g/Lのタンパク質含量、及び
- -1~18g/Lの総糖含量。
【0067】
5.ピキア・アノマーラ抽出物E
I.ピキア・アノマーラ抽出物Eの抽出:
ピキア・アノマーラ抽出物Eの調製は、以下の工程を含む。
-成長に適合した環境における酵母ピキア・アノマーラの培養、
-バイオマスを回収するための遠心分離、
-ヒドログリコール性環境におけるバイオマスの可溶化、
-酸pHで少なくとも2つの酵素と同時に加水分解、
-可溶性相と不溶性相との分離、
-熱処理
-濾過、及び
-滅菌濾過。
II.ピキア・アノマーラ抽出物Eの特性評価:
上記のピキア・アノマーラ抽出物Eは、以下を特徴とする。
- -172~300g/Lの固形分含量、
- -4~9のpH、
- -69~170g/Lのタンパク質含量、及び
- -34~100g/Lの総糖含量。
【0068】
特定の実施形態では、ピキア属の抽出物又は抽出物源は、DP1~DP4444の平均重合度を有するオリゴ糖及び多糖類を含み、DP30~DP2860、任意選択で、DP35~DP1500の平均重合度を有するオリゴ糖及び多糖類を含む。特定の実施形態では、ピキア属の乾燥抽出物中のオリゴ糖及び多糖類の、少なくとも70%(又は約70%)、任意選択で、少なくとも75%(又は約75%)、少なくとも80%(又は約80%)、任意選択で、少なくとも85%(又は約85%)、少なくとも90%(又は約90%)、任意選択で、少なくとも95%(又は約95%)、又は100%(又は約100%)は、前述の平均重合度の範囲内にある。
【0069】
特定の実施形態では、ピキア属の抽出物、又は抽出物源は、少なくとも0.3mg/mL(又は約0.3mg/mL)、任意選択で、少なくとも0.5mg/mL(又は約0.5mg/mL)、任意選択で、少なくとも1mg/mL(又は約1mg/mL)、任意選択で、少なくとも1.5mg/mL(又は約1.5mg/mL)、任意選択で、少なくとも2mg/mL(又は約2mg/mL)、任意選択で、少なくとも2.5mg/mL(又は約2.5mg/mL)、任意選択で、少なくとも3mg/mL(又は約3mg/mL)、任意選択で、少なくとも3.5mg/mL(又は約3.5mg/mL)、任意選択で、少なくとも4mg/mL(又は約4mg/mL)、任意選択で、少なくとも4.5mg/mL(又は約4.5mg/mL)、任意選択で、少なくとも5mg/mL(又は約5mg/mL)、又は少なくとも5.5mg/mL(又は約5.5mg/mL)、任意選択で、少なくとも6mg/mL(又は約6mg/mL)、又は、任意選択で、少なくとも6.5mg/mL(又は約6.5mg/mL)、任意選択で、少なくとも7mg/mL(又は約7mg/mL)、任意選択で、少なくとも7.5mg/mL(又は約7.5mg/mL)、任意選択で、少なくとも8mg/mL(又は約8mg/mL)、任意選択で、少なくとも8.5mg/mL(又は約8.5mg/mL)、任意選択で、少なくとも9mg/mL(又は約9mg/mL)、任意選択で、少なくとも8.5mg/mL(又は約8.5mg/mL)、任意選択で、少なくとも9mg/mL(又は約9mg/mL)、任意選択で、少なくとも9.5mg/mL(又は約9.5mg/mL)、又は任意選択で、少なくとも10mg/mL(又は約10mg/mL)、100mg/mL(又は約100mg/mL)まで、任意選択で、95mg/mL(又は約95mg/mL)まで、任意選択で、90mg/mL(又は約90mg/mL)まで、任意選択で、85mg/mL(又は約85mg/mL)まで、任意選択で、80mg/mL(又は約80mg/mL)まで、任意選択で、75mg/mL(又は約75mg/mL)まで、任意選択で、70mg/mL(又は約70mg/mL)まで、任意選択で、65mg/mL(又は約65mg/mL)まで、任意選択で、60mg/mL(又は約60mg/mL)まで、任意選択で、55mg/mL(又は約55mg/mL)まで、任意選択で、50mg/mL(又は約50mg/mL)まで、任意選択で、45mg/mL(又は約45mg/mL)まで、任意選択で、40mg/mL(又は約40mg/mL)まで、任意選択で、35mg/mL(又は約35mg/mL)まで、任意選択で、30mg/mL(又は約30mg/mL)まで、任意選択で、25mg/mL(又は約25mg/mL)まで、任意選択で、20mg/mL(又は約20mg/mL)まで、任意選択で、15mg/mL(又は約15mg/mL)までの濃度のピキアの抽出物を、局所適用後に、使用者の角膜組織細胞(すなわち、内部の角膜液面)に提供するように、又はこれらに接触して提供するように本発明の組成物中に存在している。
【0070】
特定の実施形態では、ピキア属の抽出物又は抽出物源は、本発明の組成物中に、組成物全体の0.01重量%(又は約0.01重量%)から、任意選択で、0.05重量%(又は約0.05重量%)から、任意選択で、0.1重量%(又は約0.1重量%)から、任意選択で、0.5重量%(又は約0.5重量%)から、任意選択で、1重量%(又は約1重量%)から、任意選択で、1.5重量%(又は約1.5重量%)から、任意選択で、2重量%(又は約2重量%)から、任意選択で、2.5重量%(又は約2.5重量%)から、任意選択で、3重量%(又は約3重量%)から、任意選択で、3.5重量%(又は約3.5重量%)から、任意選択で、4重量%(又は約4重量%)から、任意選択で、4.5重量%(又は約4.5重量%)から、任意選択で、5重量%(又は約5重量%)から、任意選択で、5.5重量%(又は約5.5重量%)から、任意選択で、6重量%(又は約6重量%)から、任意選択で、6.5重量%(又は約6.5重量%)から、任意選択で、7重量%(又は約7重量%)から、任意選択で、7.5重量%(又は約7.5重量%)から、任意選択で、8重量%(又は約8重量%)から、任意選択で、8.5重量%(又は約8.5重量%)から、任意選択で、9重量%(又は約9重量%)から、任意選択で、9.5重量%(又は約9.5重量%)から、任意選択で、10重量%(又は約10重量%)から、任意選択で、10.5重量%(又は約10.5重量%)から、任意選択で、11重量%(又は約11重量%)から、任意選択で、11.5重量%(又は約11.5重量%)から、任意選択で、12重量%(又は約12重量%)から、任意選択で、12.5重量%(又は約12.5重量%)から、任意選択で、13重量%(又は約13重量%)から、任意選択で、13.5重量%(又は約13.5重量%)から、任意選択で、14重量%(又は約14重量%)から、任意選択で、14.5重量%(又は約14.5重量%)から、任意選択で、15重量%(又は約15重量%)から、任意選択で、15.5重量%(又は約15.5重量%)から、任意選択で、16重量%(又は約16重量%)から、任意選択で、16.5重量%(又は約16.5重量%)から、任意選択で、17重量%(又は約17重量%)から、任意選択で、17.5重量%(又は約17.5重量%)から、任意選択で、18重量%(又は約18重量%)から、任意選択で、18.5重量%(又は約18.5重量%)から、任意選択で、19重量%(又は約19重量%)から、任意選択で、19.5重量%(又は約19.5重量%)から、任意選択で、20重量%(又は約20重量%)から、任意選択で、20.5重量%(又は約20.5重量%)から、30重量%(又は約30重量%)まで、任意選択で、35重量%(又は約35重量%)まで、任意選択で、40重量%(又は約40重量%)まで、任意選択で、45重量%(又は約45重量%)まで、任意選択で、50重量%(又は約50重量%)まで、任意選択で、55重量%(又は約55重量%)まで、任意選択で、60重量%(又は約60重量%)まで、任意選択で、65重量%(又は約65重量%)まで、任意選択で、70重量%(又は約70重量%)まで、任意選択で、75重量%(又は約75重量%)まで、任意選択で、80重量%(又は約80重量%)まで、任意選択で、85重量%(又は約85重量%)まで、任意選択で、90重量%(又は約90重量%)まで、任意選択で、95重量%(又は約95重量%)まで、又は任意選択で、100重量%(又は約100重量%)の濃度で存在する。
【0071】
透過促進剤
特定の実施形態では、本発明の組成物は、任意選択で、透過促進剤を含む。
【0072】
好適な透過促進剤は、サポニン、ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレン4-、9-、10-、及び23-ラウリルエーテルなどの脂肪酸のポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレン10-及び20-セチルエーテル、ポリオキシエチレン10-及び20-ステアリルエーテル、モノオレイン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ポリオキシエチレン、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタンなどのポリオキシエチレンソルビタン、デカメトニウム、臭化デカメトニウム、及び臭化ドデシルトリメチルアンモニウムなどの界面活性剤;天然ポリ酸(例えば、クエン酸)、リン酸塩(例えば、ピロリン酸二ナトリウム)、ホスホン酸塩、ビスホスホン酸塩(例えば、エトリドロン酸)、アミノカルボン酸(例えば、エチレンジアミン四酢酸(ethylenediaminetetraacetic acid、EDTA)及びEDTA二ナトリウム)及びエチレンジアミン-N、N’-二コハク酸(ethylenediamine-N,N'-disuccinic acid、EDDS))などのキレート化剤;コール酸、デオキシコール酸、グリココール酸、グリコデオキシコール酸、タウロコール酸、タウロデオキシコール酸、コール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、グリココール酸塩、デオキシコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、グリコデオキシコール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸ナトリウム、ケノデオキシコール酸、及びウルソデオキシコール酸などの胆汁酸塩及び胆汁酸;サポニンEDTA、フシジン酸、ポリオキシエチレン9-ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン20-ステアリルエーテル、グリココール酸塩、又は上記のいずれかの混合物を含む、フシジン酸誘導体、グリチルリジン酸、及びグリチルリチン酸アンモニウムを単独で又は組み合わせてのいずれか一方で含む(これらから選択されるか、又はこれらからなる群から選択される)。
【0073】
投与される透過促進剤の濃度は、眼の粘膜又は他のバリア膜を介した化合物及び/又は抽出物の吸収を十分に増加させるために必要な最小量であるべきである。概ね、組成物全体(w/v)の0.01%(又は約0.01%)から、任意選択で、0.05%(又は約0.05%)から、任意選択で、0.1%(又は約0.1%)から、任意選択で、0.15%(又は約0.15%)から、任意選択で、0.2%(又は約0.2%)から、任意選択で、0.25%(又は約0.25%)から2%(又は約2%)まで、任意選択で、2.5%(又は約2.5%)まで、任意選択で、3%(又は約3%)まで、任意選択で、3.5%(又は約3.5%)まで、任意選択で、4%(又は約4%)まで、任意選択で、4.5%(又は約4.5%)まで、任意選択で、5%(又は約5%)まで、任意選択で、5.5%(又は約5.5%)まで、任意選択で、6%(又は約6%)まで、任意選択で、6.5%(又は約6.5%)まで、任意選択で、7%(又は約7%)まで、任意選択で、7.5%(又は約7.5%)まで、任意選択で、8%(又は約8%)まで、任意選択で、8.5%(又は約8.5%)まで、任意選択で、9%(又は約9%)まで、任意選択で、9.5%(又は約9.5%)まで、任意選択で、10%(又は約10%)まで、任意選択で、10.5%(又は約10.5%)まで、任意選択で、11%(又は約11%)まで、任意選択で、11.5%(又は約11.5%)まで、任意選択で、12%(又は約12%)まで、任意選択で、12.5%(又は約12.5%)まで、任意選択で、13%(又は約13%)まで、任意選択で、13.5%(又は約13.5%)まで、任意選択で、14%(又は約14%)まで、任意選択で、14.5%(又は約14.5%)まで、任意選択で、15%(又は約15%)まで、任意選択で、15.5%(又は約15.5%)まで、任意選択で、16%(又は約16%)まで、任意選択で、16.5%(又は約16.5%)まで、任意選択で、17%(又は約17%)まで、任意選択で、17.5%(又は約17.5%)まで、任意選択で、18%(又は約18%)まで、任意選択で、18.5%(又は約18.5%)まで、任意選択で、19%(又は約19%)まで、任意選択で、19.5%(又は約19.5%)まで、任意選択で、20%(又は約20%)までの範囲に及ぶ濃度が、本発明の組成物で有用である。
【0074】
眼科的に許容可能な担体
本発明の組成物はまた、水性、水中油型エマルション、又は油中水型エマルション担体も含む。担体は、眼科的に許容可能である。有用な水中油型担体及び水-油担体は、米国特許公開第20030165545A1号、並びに米国特許第9480645号、同第8828412号、及び同第8496976号に見出すことができ、これらの特許文献の各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0075】
眼科的に許容可能な担体(又は、本発明の組成物)は、任意選択で、1つ若しくは2つ以上の更なる賦形剤及び/又は1つ若しくは2つ以上の更なる有効成分を含んでもよい。このような任意選択の構成成分の例について、以下に説明する。
【0076】
眼科用組成物において使用される賦形剤としては、粘滑剤、等張化剤、防腐剤、キレート剤、緩衝剤(本発明の有機酸以外、及びそれに加えて)、並びに界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。その他の賦形剤としては、可溶化剤、安定化剤、快適性増強剤、ポリマー、皮膚軟化剤、pH調整剤(本発明の有機酸以外、及びそれに加えて)、並びに/又は潤滑剤が挙げられる。水、水と水混和性溶媒の混合物、例えば0.5%~5%の非毒性水溶性ポリマーを含む植物油又は鉱物油、天然生成物、例えば寒天及びアカシア、デンプン誘導体、例えば酢酸デンプン及びヒドロキシプロピルデンプン、並びに他の合成生成物、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、酸化ポリエチレン、及び、好ましく架橋したポリアクリル酸、並びにこれらの組み合わせをも含む任意の種々の賦形剤が、本発明の組成物において使用されてよい。
【0077】
本発明の実施形態と共に使用される粘滑剤又は平滑化剤としては、セルロース誘導体(ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒプロメロース、又はこれらの混合物など)、ヒアルロン酸、タマリンド種子抽出物、グリセリン、ポリビニルピロリドン、酸化ポリエチレン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、及びポリアクリル酸、並びにこれらの混合物が挙げられるが、これに限定されない。特定の実施形態では、ヒアルロン酸、プロピレングリコール、タマリンド種子抽出物、グリセリン及び/又はポリエチレングリコール400のうちの1つ若しくは2つ以上が、粘滑剤又は平滑化剤である。特定の実施形態では、粘滑材又は平滑化剤は、ヒアルロン酸、タマリンド種子抽出物又はこれらの混合物から選択される。
【0078】
本発明の組成物は、被験者の眼への適用に対して眼科的に適している。用語「水溶性」は、通常、賦形剤が約50重量%よりも多く、より好ましくは約75重量%よりも多く、特に約90重量%よりも多い水である水性製剤を表す。特定の実施形態では、本発明の組成物はまた、眼を刺激する化合物を本質的に含まない。特定の実施形態では、本発明の組成物は、遊離脂肪酸及びC1~C4アルコールを本質的に含まない。特定の実施形態では、本発明の組成物は、組成物全体の40重量%(又は約40重量%)未満、任意選択で、35重量%(又は約35重量%)未満、任意選択で、30重量%(又は約30%)未満、任意選択で、25重量%(又は約25重量%)未満、任意選択で、20重量%(又は約20重量%)未満、任意選択で、15重量%(又は約15重量%)未満、任意選択で、10重量%(又は約10重量%)未満、又は任意選択で、5重量%(又は約5重量%)未満の非アルコール、有機賦形剤又は溶媒を含む。これらの液滴は、好ましくは無菌であり得、したがって、製剤の静菌成分を不要にし得る単回用量のアンプルから送達され得る。あるいは、滴は、当該技術分野において周知である装置のような、送達される際に組成物から任意の防腐剤を抽出する装置を好ましくは備え得る、多回用量ボトルから送達され得る。
【0079】
特定の実施形態では、本発明の組成物は等張性である、又は蒸発及び/若しくは疾患により引き起こされるあらゆる涙の高張性と闘うために、わずかに低張性である。これは、製剤のオスモル濃度をキログラム当たり210~320ミリオスモル(mOsm/kg)又はその近傍のレベルに近づけるために、等張化剤を必要とする場合がある。本発明の組成物は、一般に、220~320mOsm/kgの範囲のオスモル濃度を有する、又は任意選択で、235~300mOsm/kgの範囲のオスモル濃度を有する。眼科用組成物は、一般に、無菌水溶液として製剤化することができる。
【0080】
本発明の組成物のオスモル濃度は、組成物の意図される使用と適合する値に等張化剤を用いて調節され得る。例えば、組成物の浸透圧は、水中の塩化ナトリウム約0.9w/v%に相当する正常な涙液の浸透圧に近似するように調節されてもよい。好適な等張性調整剤の例としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、及び塩化マグネシウム、デキストロース、グリセリン、プロピレングリコール、マンニトール、ソルビトールなど及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、組成物の張度を調整するために塩化ナトリウムと塩化カリウムとの組み合わせを使用する。
【0081】
本発明の組成物はまた、医薬的に活性な化合物を投与するために使用することができる。このような化合物としては、緑内障治療薬、鎮痛剤、抗炎症薬及び抗アレルギー薬、並びに抗菌薬が挙げられるが、これらに限定されない。医薬的に活性な化合物のより具体的な例としては、ベタキソロール、チモロール、ピロカルピン、炭酸脱水酵素阻害剤及びプロスタグランジン、ドーパミン作動性アンタゴニスト、術後抗高血圧剤、例えばパラアミノクロニジン(アプラクロニジン)塩、シプロフロキサシン、モキシフロキサシン、及びトブラマイシンなどの抗感染症剤、非ステロイド性及びステロイド性抗炎症薬、例えばナプロキセン、ジクロフェナク、ネパフェナク、スプロフェン、ケトロラク、テトラヒドロコルチゾール及びデキサメタゾン、PDE4阻害剤などのドライアイ治療薬、並びにH1/H4阻害剤、H4阻害剤、オロパジン又はこれらの混合物などの抗アレルギー薬が挙げられる。
【0082】
本発明の製剤を構成する成分の濃度が変化し得ることも、想定されている。当業者は、所与の製剤中の成分の添加、置換、及び/又は削除に応じて濃度が変化し得ることを理解するであろう。
【0083】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、意図される使用と適合性のあるpHを有してもよく、多くの場合、4(又は約4)~10(又は約10)、任意選択で、6(又は約6)~8(又は約8)、任意選択で、6.5(又は約6.5)~7.5(又は約7.5)、又は任意選択で、6.8(又は約6.8)~7.2(又は約7.2)の範囲である。
【0084】
特定の実施形態では、リン酸塩、ホウ酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、ヒスチジン、トリス、ビス-トリスなど、及びこれらの混合物などの様々な従来の緩衝剤が用いられてもよい。ホウ酸塩緩衝剤としては、ホウ酸及びその塩、例えば、ホウ酸ナトリウム又はホウ酸カリウムが挙げられる。ホウ酸又はホウ酸の塩を溶液中で生成する、四ホウ酸カリウム又はメタホウ酸カリウムも使用してもよい。ホウ酸ナトリウム十水和物などの水和塩も使用し得る。リン酸緩衝液としては、リン酸及びその塩、例えば、M2HPO4及びMH2PO4が挙げられ、ここで、Mはナトリウム及びカリウムなどのアルカリ金属である。水和塩も使用し得る。本発明の一実施形態では、Na2HPO4.7H2O及びNaH2PO2.H2Oは緩衝剤として使用される。リン酸塩という用語はまた、溶液中にリン酸又はリン酸の塩を生成する化合物を含む。加えて、上記緩衝剤のための有機対イオンも用いられてもよい。緩衝剤の濃度は、一般に、約0.01~2.5w/v%で変化し、より好ましくは約0.05~約0.5w/v%で変化する。
【0085】
特定の実施形態では、本発明の組成物の粘度は、TA Instrument AR 2000レオメータを使用して測定されるとき、約1~約500cps、任意選択で、約10~約200cps、又は任意選択で、約10~約100cpsの範囲である。TA Instrument AR 2000レオメータは、40mmの鋼板形状を用いるTA Rheological AdvantageソフトウェアのAR2000フロー試験方法と共に使用されるべきであり、粘度範囲は、0sec-1~200sec-1の剪断速度を制御する定常状態流量を測定することによって得られるべきである。
【0086】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、点眼溶液、洗眼溶液、コンタクトレンズ潤滑及び/若しくは再湿潤溶液、スプレー、ミスト、又は組成物を眼に投与する任意の他の様式の形態として、及びその形態において有用である。
【0087】
本発明の組成物はまた、コンタクトレンズ用の充填溶液として及び充填溶液の形態において有用であり得る。特定の実施形態では、充填溶液として、本発明の組成物はブリスターパッケージで封止されてもよく、また滅菌が施されるのに好適であってもよい。
【0088】
ブリスターパッケージ及び滅菌技術の例は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる以下の参考文献、米国特許第D435,966号、同第4,691,820号、同第5,467,868号、同第5,704,468号、同第5,823,327号、同第6,050,398号、同第5,696,686号、同第6,018,931号、同第5,577,367号、及び同第5,488,815号に開示されている。製造プロセスのこの部分は、抗アレルギー剤で眼科用デバイスを処理する、すなわち、パッケージを封止する前に抗アレルギー剤を溶液に添加し、続いてパッケージを滅菌する別の方法を提示する。これは、抗アレルギー剤を用いて眼科用デバイスを処理する好ましい方法である。
【0089】
滅菌は、異なる温度及び時間で行い得る。好ましい滅菌条件は、約100℃で約8時間~約150℃で約0.5分間の範囲である。より好ましい滅菌条件は、約115℃で約2.5時間~約130℃で約5.0分間の範囲である。最も好ましい滅菌条件は約124℃で約18分間である。
【0090】
充填溶液として使用する場合、本発明の組成物は水系溶液であってもよい。典型的な溶液としては、生理食塩水、他の緩衝液及び脱イオン水が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、充填溶液は、塩化ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、又は同酸の対応するカリウム塩を含む、塩を含有する脱イオン水又は生理食塩水の水系溶液であるが、これらに限定されない。これらの成分は一般に化合して、酸及びその共役塩基を含む緩衝液を形成するので、酸及び塩基が加わっても、pHには比較的小さな変化しか起こらない。特定の実施形態では、充填溶液のpHは上記のとおりである。緩衝液は更に、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、水酸化ナトリウム、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-2,2’,2”-ニトリロトリエタノール、n-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノエタンスルホン酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、酢酸、酢酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸など、及びこれらの組み合わせを含んでもよい。好ましくは、溶液は、リン酸塩緩衝生理食塩水又は脱イオン水である。特に好ましい溶液は、約500ppm~約18,500ppmのホウ酸ナトリウム、最も特に好ましくは約1000ppmのホウ酸ナトリウムを含有する。
【0091】
充填溶液中に組み込まれたいずれかの成分が酸化的分解を受ける場合、そのような成分を含有する充填溶液を安定化させる剤を添加してもよい。このような「酸化安定化剤」としては、限定するものではないが、EDTAと、デイクエストと、デスフェラールと、シリカと、キトサン、セルロース及びその誘導体などのキチン誘導体と、N,N,N’,N’,N”,N”-ヘキサン(2-ピリジル)-1,3,5-トリス(アミノメチル)ベンゼンと、クラウンエーテル、ノット及びカテナンを含有するリガンドなどの特定のマクロ環式配位子とが挙げられるが、これらに限定されない。David A.Leigh et al Angew.Chem Int.Ed.,2001,40,No.8,pgs.1538-1542及びJean-Claude Chambron et al.のPure & Appl.Chem.,1990,Vol.62,No.6、pgs.1027-1034を参照。酸化安定化剤としては、2,2’,2”,6,6’,6”-ヘキサン-(1,1-ジメチルエチル)4,4’,4”-[(2,4,6-トリメチル-1,3,5-ベンゼントリイル)-トリメチレン]-トリフェノール(Irganox 1330)、1,3,5トリス[3,5-ジ(1,1-ジメチルエチル)4-ヒドロキシベンジル]-1H,3H,5H-1,3,5-トリアジン-2,4,6トリオン、ペンタエリスリチルテトラキス[3-[3,5-ジ(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]-プロピオネート]、オクタデシル-3-[3,5-ジ(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]-プロピオネート、トリス[2,4-ジ(1,1-ジメチルエチル)-フェニル]-ホスファイト、2,2’-ジ(オクタデシルオキシ)-5,5’-スピロビ(1,3,2-ジオキサホスホリナン)、ジオクタデシルジスルフィド、ジオクタデシル-3,3’-チオジプロピオネート、ジオクタデシル-3,3’-チオジプロピオネート、ブチルヒドロキシトルエン、エチレンビス[3,3-ジ[3-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]ブチレート]及びこれらの混合物からなる群から選択される化合物などの酸化を抑制する他の化合物が挙げられ得る。好ましい酸化安定化剤は、ジエチレントリアミン五酢酸(「DTPA」)、又はCaNa3DTPA、ZnNa3DTPA、及びCa2DTPAなどのDTPAの塩である。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる「Methods for Stabilizing Oxidatively Unstable Pharmaceutical Compositions」と題された、2006年3月17日出願の米国特許出願公開第60/783,557号及びその対応する非仮出願を参照。特定の実施形態では、溶液中の酸化安定化剤の濃度は、約2.5μmol/リットル~約5000μmol/リットル、任意選択で、約20μmol/リットル~約1000μmol/リットル、任意選択で約100μmol/リットル~約1000μmol/リットル、又は任意選択で約100μmol/リットル~約500μmol/であり得る。
【0092】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、週に1回、5日毎に1回、3日毎に1回、2日毎に1回、1日に2回、1日に3回、1日に4回、1日に5回、1日に6回、1日に8回、毎時間、又はより高頻度を含む任意の投与頻度での投与のために、製剤化される。このような投与頻度はまた、ユーザの治療ニーズに応じて変化する持続期間にて維持される。特定の治療レジメンの持続期間は、1回の投与から月又は年にわたるレジメンまで変化し得る。当業者は、特定の適応症に関する治療レジメンを決定することに精通しているであろう。
【0093】
本発明のこのような組成物を含有する組成物及び製品は、当業者に周知の方法を用いて調製することができる。
【実施例0094】
以下の実施例にて示されるような本発明の任意の組成物は、本発明の組成物の具体的な実施形態を示すものであり、本発明を限定するものではない。その他の変更は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、当業者により実行されることができる。
【0095】
以下の試験方法を実施例で使用した。
【0096】
(実施例1)
ピキア・アノマーラ発酵抽出物(ヒアルロジン)は、角膜組織細胞に局所適用されたときに、ヒト上角膜3D組織においてヒアルロン酸分泌を誘導した。理論に束縛されるものではないが、このような局所適用は、ピキア・アノマーラ発酵抽出物がヒト上角膜組織のタイトジャンクション構造(すなわち、組織内への化学的浸透を通常阻害するこれらの構造[例えば、膜又は薄膜バリア])を通って拡散し、上角膜組織の内側に到達することを必要とすると考えられる。
【0097】
上角膜3Dヒト組織は、MatTek Company(Ashland,MA,USA)から購入した。上角膜3Dヒト組織を受容すると、製造業者の取扱説明書に従って、それをMatTekアッセイ培地で一晩インキュベートした。上角膜3Dヒト組織を、1群当たり3つの組織を有する5つの処置群に分割した。4種類の濃度のリン酸緩衝水溶液(PBS)ビヒクル中のピキア・アノマーラ発酵抽出物(ヒアルロジン)1.95mg/mL、7.8mg/mL、19.5mg/mL、及び39mg/mLを、それぞれ、(ピキア・アノマーラ発酵抽出物を上述のタイトジャンクション構造を通して送達するように)処置群のうちの4つの角膜上皮表面に局所適用した。5つの処置群全てにおける上角膜組織を2日間インキュベートした。ピキア・アノマーラ発酵抽出物は、Silab(St.Viance,France)により供給された。2日後、製造業者のプロトコルに従って、HA酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)キット(K-1200,Echelon,Salt Lake City,UT,USA)を使用して、ヒアルロン酸(HA)分泌を測定するために培養培地を収集した。活性を評価するために、比色変化は、マイクロプレートリーダー(SpectraMax M2E,Molecular Devices,Sunnyvale,CA,USA)を使用して測定した。このアッセイは、競合酵素結合免疫吸着アッセイ法を採用するため、試料中のHA濃度と比色分析の変化との間に逆相関がある。標準曲線を生成して、x軸上のHA濃度及びy軸上の吸光度を用いて、対応するHA濃度を示した。結果を
図1に示す。
【0098】
結果は、試験された濃度における局所適用が、角膜細胞におけるHA産生の誘導を指向的に示すことを示唆しているが、タイトジャンクション構造(又は、他の表面膜若しくは薄膜層バリア)などの因子は、内部角膜組織に到達するピキア・アノマーラの濃度を低減し得る。このような状況では、浸透促進剤を組み込む本発明の実施形態が有用であり得る。
【0099】
(実施例2)
上記のタイトジャンクション構造(又は、膜若しくは薄膜バリア)によって潜在的に引き起こされる妨害を低減するために、ヒト上角膜3D組織におけるヒアルロン酸分泌の誘導は、角膜組織の底部細胞層(すなわち、組織への化学的浸透を阻害するタイトジャンクション構造を有しない細胞層)を増殖培地中に浸漬するように、角膜組織をピキア・アノマーラ発酵抽出物(ヒアルロジン)を含有する増殖培地(すなわち、「処置」培地)と接触させることによって観察された。角膜組織の底部細胞層をピキア・アノマーラ発酵抽出物を含有する増殖培地と接触させることによって、抽出物は、任意のタイトジャンクション構造又は他の表面バリアを最初に通過する必要なく直接接触し、内側角膜組織内へと上方に移動することができ、角膜組織細胞へのピキア・アノマーラの改善された生物学的利用能をもたらす。
【0100】
上角膜3Dヒト組織は、MatTek Company(Ashland,MA,USA)から購入した。上角膜3Dヒト組織を受領してから、製造元の使用説明書に従って、これらの組織をMatTekアッセイ培地で終夜インキュベートした。上角膜3Dヒト組織を、1群当たり3つの組織を有する5つの処置群に分割した。ピキア・アノマーラ発酵抽出物(ヒアルロジン)を処置群のうちの4つの培養培地に添加して、それぞれ0.39mg/mL、0.78mg/mL、1.56mg/mL、及び1.95mg/mLの培地濃度をそれぞれ生成し、ヒト上角膜組織の底部細胞層を接触させた。処置群の5つ全ての上角膜組織を2日間インキュベートした。ピキア・アノマーラ発酵抽出物は、Silab(St.Viance,France)により供給された。2日後、製造業者のプロトコルに従って、HA酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)キット(K-1200,Echelon,Salt Lake City,UT,USA)を使用して、ヒアルロン酸(HA)分泌を測定するために培養培地を収集した。活性を評価するために、比色変化は、マイクロプレートリーダー(SpectraMax M2E,Molecular Devices,Sunnyvale,CA,USA)を使用して測定した。このアッセイは、競合酵素結合免疫吸着アッセイ法を採用するため、試料中のHA濃度と比色分析の変化との間に逆相関がある。標準曲線を生成して、x軸上のHA濃度及びy軸上の吸光度を用いて、対応するHA濃度を示した。結果を
図2に示す。
【0101】
結果は、角膜組織細胞におけるHA産生の統計的に有意な増加が、少なくとも0.3mg/mLのピキア・アノマーラのそのような組織環境濃度(すなわち、そのような内部角膜組織細胞と接触するピキア・アノマーラ抽出物の濃度[例えば、角膜液面濃度])で観察されたことを示す。
【0102】
実施例3~4に示されるように、本発明の1種若しくは2種以上の化合物及び/又は抽出物を含有する溶液を調製することができる。
【0103】
(実施例3)
表1は、従来の混合技術を使用して、その構成成分を以下に記載されるように組み込むことができる、(製剤3A及び3Bに示すような)そのような製剤の構成成分を示す。
【0104】
【表1】
*280~290mOsm/Kgの張度に調整
**pH7.2に調整
***100重量/重量%までの適量
【0105】
実施例3A~3Bに関して、ヒアルロン酸ナトリウムは、CONTIPRO A.S.(DOLNI,DOBROUC,CZECH REPUBLIC)により供給することができる
【0106】
実施例3A及び3Bに関して、ピキア・アノマーラ抽出物は、SILAB(SAINT VIANCE,FRANCE)により供給することができる。
【0107】
実施例3A~3Bに関して、ポリソルベート20は、Merck KGaA(DARMSTADT,GERMANY)により供給することができる。
【0108】
実施例3A~3Bに関して、ポリソルベート80は、Merck KGaA(DARMSTADT,GERMANY)により供給することができる。
【0109】
実施例3Aに関して、ポリエチレングリコール400は、Clariant Produkte(BURGKIRCHEN,GERMANY)により供給することができる。
【0110】
実施例3A~3Bに関して、ホウ酸は、Merck KGaA(DARMSTADT,GERMANY)により供給することができる。
【0111】
実施例3A~3Bに関して、ホウ酸ナトリウムは、Merck KGaA(DARMSTADT,GERMANY)により供給することができる。
【0112】
実施例3A~3Bに関して、塩化ナトリウムは、Caldic(DUSSELDORF,GERMANY)により供給することができる。
【0113】
実施例3A~3Bに関して、塩化カリウムは、Merck KGaA(DARMSTADT,GERMANY)により供給することができる。
【0114】
実施例3A~3Bに関して、塩化カルシウム二水和物は、Merck KGaA(DARMSTADT,GERMANY)により供給することができる。
【0115】
実施例3A~3Bに関して、塩化マグネシウムは、KGaA(DARMSTADT,GERMANY)により供給することができる。
【0116】
実施例3A~3Bに関して、ポリクオタニウム-42(33%水溶液)は、DSM BIOMEDICAL(BERKELEY,CA,USA)により供給することができる。
【0117】
実施例3A~3Bに関して、亜塩素酸ナトリウム二水和物は、Oxychem(WICHITA,KS,USA)により供給することができる。
【0118】
実施例3A~3Bに関して、1N水酸化ナトリウムは、VWR(RADNER,PA,USA)により供給することができる。
【0119】
実施例3A~3Bに関して、1N塩酸は、VWR(RADNER,PA,USA)により供給することができる。
【0120】
溶液3Aは、以下のように調製することができる。
1.1500mLビーカーに、800グラムの精製水USPを添加する。
2.上記に、10gのポリソルベート80及び50gのポリソルベート20を添加する。両者が十分混合及び溶解するまで、溶液を混合する。
3.上記に、20.0gのピキア・アノマーラ抽出物を添加する。ピキア・アノマーラ抽出物が溶解するまで溶液を混合する。
4.溶液を0.45マイクロメートルのフィルタを通して濾過し、1500mLビーカーに戻す。
5.工程4の溶液に、2.0グラムのヒアルロン酸ナトリウムを添加する。溶液を混合して、ヒアルロン酸ナトリウムを完全に溶解させる。
6.次に、以下の成分を順次添加し、次のものを添加する前に各々を溶解させる:2.5グラムのポリエチレングリコール400、6.0グラムのホウ酸、0.05グラムのホウ酸ナトリウム、1.0グラムの塩化カリウム、0.06グラムの塩化カルシウム二水和物、0.06グラムの塩化マグネシウム、及び0.0015グラムのポリクオタニウム42(水溶液)。
7.混合を継続しながら、0.14グラムの亜塩素酸ナトリウム二水和物を添加し、かつ混合して溶解させる。
8.処方物の張度を求め、塩化ナトリウムで280mOsm/Kgに調整する。
9.1N水酸化ナトリウム及び/又は1N塩酸を用いて、処方物のpHを7.2のpHに調整する。
10.精製水USPを用いて溶液を1000.0グラムにし、かつ10分間混合して完全に均一にする。
11.0.22マイクロメートルのフィルタを用いて溶液を濾過する。
【0121】
溶液3Bは、以下のように調製することができる。
1.1500mLビーカーに、800グラムの精製水USPを添加する。
2.上記に、20gのポリソルベート10及び100gのポリソルベート20を添加する。両者が十分混合及び溶解するまで、溶液を混合する。
3.上記に、50gのピキア・アノマーラ抽出物を添加する。ピキア・アノマーラ抽出物が溶解するまで溶液を混合する。
4.溶液を0.45マイクロメートルのフィルタを通して濾過し、1500mLビーカーに戻す。
5.工程4の溶液に、1.5グラムのヒアルロン酸ナトリウムを添加する。溶液を混合して、ヒアルロン酸ナトリウムを完全に溶解させる。
6.次に、以下の成分を順次添加し、次のものを添加する前に各々を溶解させる:6.0グラムのホウ酸、0.05グラムのホウ酸ナトリウム、1.0グラムの塩化カリウム、0.06グラムの塩化カルシウム二水和物、0.06グラムの塩化マグネシウム、及び0.0015グラムのポリクオタニウム42(水溶液)。
7.混合を続けながら、0.14グラムの塩化ナトリウム二水和物を添加し、かつ混合して溶解させる。
8.処方物の張度を求め、塩化ナトリウムで280mOsm/Kgに調整する。
9.1N水酸化ナトリウム及び/又は1N塩酸を用いて、処方物のpHを7.2のpHに調整する。
10.精製水USPを用いて溶液を1000.0グラムにし、かつ10分間混合して完全に均一にする。
11.0.22マイクロメートルのフィルタを用いて溶液を濾過する。
【0122】
(実施例4)
表2は、従来の混合技術を使用して、その構成成分を以下に記載されるように組み込むことができる、(製剤4A及び4Bに示すような)本発明の製剤の構成成分を示す。
【0123】
【表2】
*280~290mOsm/Kgの張度に調整
**pH7.2に調整
***100.00%体積までの適量
【0124】
実施例4A及び4Bに関して、ピキア・アノマーラ抽出物は、SILAB(SAINT VIANCE,FRANCE)により供給することができる。
【0125】
実施例4A~4Bに関して、ポリソルベート20は、Merck KGaA(DARMSTADT,GERMANY)により供給することができる。
【0126】
実施例4A~4Bに関して、ポリソルベート80は、Merck KGaA(DARMSTADT,GERMANY)により供給することができる。
【0127】
実施例4A~4Bに関して、ホウ酸は、Merck KGaA(DARMSTADT,GERMANY)により供給することができる。
【0128】
実施例4A~4Bに関して、ホウ酸ナトリウムは、Merck KGaA(DARMSTADT,GERMANY)により供給することができる。
【0129】
実施例4A~4Bに関して、塩化ナトリウムは、Caldic(DUSSELDORF,GERMANY)により供給することができる。
【0130】
実施例4A~4Bに関して、塩化カリウムは、Merck KGaA(DARMSTADT,GERMANY)により供給することができる。
【0131】
実施例4A~4Bに関して、ヒプロメロースE3 2910は、DOW CHEMICAL(PLAQUEMINE,LOUISIANA,USA)により供給することができる。
【0132】
実施例4A~4Bに関して、グリセリンは、Emery Oleochemicals GmbH(DUSSELDORF,GERMANY)により供給することができる。
【0133】
実施例4A~4Bに関して、リン酸二ナトリウムは、Merck KGaA(DARMSTADT,GERMANY)により供給することができる。
【0134】
実施例4A~4Bに関して、クエン酸ナトリウムは、Merck KGaA(DARMSTADT,GERMANY)により供給することができる。
【0135】
実施例4A~4Bに関して、乳酸ナトリウムは、乳酸ナトリウム(50%水溶液)としてMerck KGaA(DARMSTADT,GERMANY)により供給することができる。
【0136】
実施例4A~4Bに関して、グルコースは、Roquette Freres(LASTREM,FRANCE)により供給することができる。
【0137】
実施例4A~4Bに関して、グリシンは、Merck KGaA(DARMSTADT,GERMANY)により供給することができる。
【0138】
実施例4A~4Bに関して、アスコルビン酸は、DSM NUTRITIONAL Products(DRAKEMYRE,SCOTLAND,UK)により供給することができる。
【0139】
実施例4A~4Bに関して、ポリクオタニウム42は、ポリクオタニウム42(33%水溶液)としてDSM BIOMEDICAL(BERKELEY,CA)により供給することができる。
【0140】
実施例4A~4Bに関して、エデト酸二ナトリウムは、Merck NV/SA(OVERIJSE,BELGIUM)により供給することができる。
【0141】
実施例4A~4Bに関して、1N水酸化ナトリウムは、VWR(RADNER,PA,USA)により供給することができる。
【0142】
実施例4A~4Bに関して、1N塩酸は、VWR(RADNER,PA,USA)により供給することができる。実施例4A~4Bに関して、亜塩素酸ナトリウム二水和物は、Oxychem(WICHITA,KS,USA)により供給することができる。
【0143】
溶液4Aは、以下のように調製することができる。
1.1500mLビーカーに、800グラムの精製水USPを添加する。
2.上記に、10gのポリソルベート80及び30gのポリソルベート20を添加する。両者が十分混合及び溶解するまで、溶液を混合する。
3.上記に、10.0gのピキア・アノマーラ抽出物を添加する。ピキア・アノマーラ抽出物が溶解するまで溶液を混合する。
4.溶液を0.45マイクロメートルのフィルタを通して濾過し、1500mLビーカーに戻す。
5.上記に、1.98gのヒプロメロースE3 Premiumを添加する。ヒプロメロースE3 Premiumが溶解するまで溶液を混合する。
6.次に、以下の成分を順次添加し、次のものを添加する前に各々を溶解させる:2.50グラムのグリセリン、4.0グラムのホウ酸、0.22グラムのホウ酸ナトリウム、0.27グラムのリン酸二ナトリウム、4.00グラムのクエン酸ナトリウム二水和物、1グラムの塩化カリウム、0.57グラムの乳酸ナトリウム(50%水溶液)、0.13グラムの塩化マグネシウム、0.036グラムのグルコース、0.0002グラムのグリシン、0.0001グラムのアスコルビン酸、0.10グラムのエデト酸二ナトリウム、0.030グラムのポリクオタニウム-42(33%水溶液)、及び0.14グラムの亜塩素酸ナトリウム。
7.溶液の張度を求め、かつ塩化ナトリウムで280mOsmに調整する。
8.溶液のpHを測定し、かつ1N水酸化ナトリウム及び/又は1N塩酸で7.2に調整する。
9.溶液を精製水で1,000.00グラムの体積にし、かつ10分間混合する。
10.0.22マイクロメートルのフィルタを用いて溶液を濾過する。
【0144】
溶液4Bは、以下のように調製することができる。
1.1500mLビーカーに、800グラムの精製水USPを添加する。
2.上記に、10gのポリソルベート80及び50gのポリソルベート20を添加する。両者が十分混合及び溶解するまで、溶液を混合する。
3.上記に、20.0gのピキア・アノマーラ抽出物を添加する。ピキア・アノマーラ抽出物が溶解するまで溶液を混合する。
4.溶液を0.45マイクロメートルのフィルタを通して濾過し、1500mLビーカーに戻す。
5.上記に、1.98gのヒプロメロースE3 Premiumを添加する。ヒプロメロースE3 Premiumが溶解するまで溶液を混合する。
6.次に、以下の成分を順次添加し、次のものを添加する前に各々を溶解させる:2.50グラムのグリセリン、4.0グラムのホウ酸、0.22グラムのホウ酸ナトリウム、0.27グラムのリン酸二ナトリウム、4.00グラムのクエン酸ナトリウム二水和物、1グラムの塩化カリウム、0.57グラムの乳酸ナトリウム(50%水溶液)、0.13グラムの塩化マグネシウム、0.036グラムのグルコース、0.0002グラムのグリシン、0.0001グラムのアスコルビン酸、0.05グラムのエデト酸二ナトリウム、0.015グラムのポリクオタニウム-42(33%水溶液)、及び0.14グラムの亜塩素酸ナトリウム。
7.溶液の張度を求め、かつ塩化ナトリウムで280mOsmに調整する。
8.溶液のpHを測定し、かつ1N水酸化ナトリウム及び/又は1N塩酸で7.2に調整する。
9.溶液を精製水で1,000.00グラムの体積にし、かつ10分間混合する。
10.0.22マイクロメートルのフィルタを用いて溶液を濾過する。
【0145】
本発明の実施形態
1.角膜からかつ/又は角膜内でヒアルロン酸の産生/放出/送達/排出が減少した又は低レベルの患者を治療するための方法であって、患者の眼に組成物を局所投与する工程を含み、組成物が、
i)少なくとも約0.3mg/mLの眼の角膜組織内の角膜流体中のピキア属抽出物濃度を達成するための、安全かつ有効な量のピキア属の1種若しくは2種以上の抽出物又は抽出物源と、
ii)任意選択で、安全かつ有効な量の透過促進剤と、
iii)任意選択で、眼科的に許容可能な担体と、を含む、方法。
2.組成物中のピキア属の抽出物が、約180~約800,000Daの重量平均分子量を有するオリゴ糖及び多糖類を含む、実施形態1(又は、以下の実施形態のいずれか)に記載の方法。
3.組成物中のピキア属の抽出物が、DP1~DP4444の平均重合度を有するオリゴ糖及び多糖類を含む、実施形態1及び/又は2(又は、以下の実施形態のいずれか)に記載の方法。
4.組成物が、透過促進剤を含む、実施形態1~3のいずれか1つ又はこれらの組み合わせ(又は、以下の実施形態のいずれか)に記載の方法。
5.透過促進剤が、組成物全体の約0.01%(w/v)~約20%(w/v)の濃度で存在する、実施形態1~4のいずれか1つ又はこれらの組み合わせ(又は、以下の実施形態のいずれか)に記載の方法。
6.透過促進剤が、組成物全体の約0.1%(w/v)~10%(w/v)の濃度で存在する、実施形態1~5のいずれか1つ又はこれらの組み合わせ(又は、以下の実施形態のいずれか)に記載の方法。
7.透過促進剤が、組成物全体の約0.25%(w/v)~5%(w/v)の濃度で存在する、実施形態1~6のいずれか1つ又はこれらの組み合わせ(又は、以下の実施形態のいずれか)に記載の方法。
8.透過促進剤が、ポリオキシエチレン、脂肪酸のポリオキシエチレンエーテル、モノオレイン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ポリオキシエチレン、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、フシジン酸及びその誘導体、EDTA、EDTA二ナトリウム、コール酸、デオキシコール酸、グリココール酸、グリコデオキシコール酸、タウロコール酸、タウロデオキシコール酸、コール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、グリココール酸塩、デオキシコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、グリコデオキシコール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸ナトリウム、ケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、サポニン、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸アンモニウム、デカメトニウム、臭化デカメトニウム、及び臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、又は上記のいずれかの混合物から選択される、実施形態1~7のいずれか1つ又はこれらの組み合わせ(又は、以下の実施形態のいずれか)に記載の方法。
9.患者の涙中のヒアルロン酸濃度が、タンパク質1ミリグラム当たり約10ナノグラム未満である場合に、組成物が投与される、実施形態1~8のいずれか1つ又はこれらの組み合わせ(又は、以下の実施形態のいずれか)に記載の方法。
10.患者の涙中のヒアルロン酸濃度が、タンパク質1ミリグラム当たり約15ナノグラム未満である場合に、組成物が投与される、実施形態1~9のいずれか1つ又はこれらの組み合わせ(又は、以下の実施形態のいずれか)に記載の方法。
11.患者の涙中のヒアルロン酸濃度が、タンパク質1ミリグラム当たり約20ナノグラム未満である場合に、組成物が投与される、実施形態1~10のいずれか1つ又はこれらの組み合わせ(又は、以下の実施形態のいずれか)に記載の方法。
12.患者の涙中のヒアルロン酸濃度が、タンパク質1ミリグラム当たり約25ナノグラム未満である場合に、組成物が投与される、実施形態1~11のいずれか1つ又はこれらの組み合わせ(又は、以下の実施形態のいずれか)に記載の方法。
13.患者の涙中のヒアルロン酸の濃度を上昇させて、タンパク質1ミリグラム当たり約10ナノグラム以上とするために、組成物が患者の眼に投与される、実施形態1~12のいずれか1つ又はこれらの組み合わせ(又は、以下の実施形態のいずれか)に記載の方法。
14.患者の涙中のヒアルロン酸の濃度を上昇させて、タンパク質1ミリグラム当たり約15ナノグラム以上とするために、組成物が患者の眼に投与される、実施形態1~13のいずれか1つ又はこれらの組み合わせ(又は、以下の実施形態のいずれか)に記載の方法。
15.患者の涙中のヒアルロン酸の濃度を上昇させて、タンパク質1ミリグラム当たり約20ナノグラム以上とするために、組成物が患者の眼に投与される、実施形態1~14のいずれか1つ又はこれらの組み合わせ(又は、以下の実施形態のいずれか)に記載の方法。
16.患者の涙中のヒアルロン酸の濃度を上昇させて、タンパク質1ミリグラム当たり約25ナノグラム以上とするために、組成物が患者の眼に投与される、実施形態1~15のいずれか1つ又はこれらの組み合わせ(又は、以下の実施形態のいずれか)に記載の方法。
【0146】
〔実施の態様〕
(1) 角膜からかつ/又は角膜内でのヒアルロン酸の産生/放出/送達/排出が減少した又は低レベルの患者を治療するための方法であって、前記患者の眼に組成物を局所投与する工程を含み、前記組成物が、
iv)少なくとも約0.3mg/mLの眼の角膜組織内の角膜流体中のピキア属抽出物濃度を達成するための、安全かつ有効な量のピキア属の1種若しくは2種以上の抽出物又は抽出物源と、
v)任意選択で、安全かつ有効な量の透過促進剤と、
vi)任意選択で、眼科的に許容可能な担体と、を含む、方法。
(2) 前記組成物中の前記ピキア属の抽出物が、約180~約800,000Daの重量平均分子量を有するオリゴ糖及び多糖類を含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記組成物中の前記ピキア属の抽出物が、DP1~DP4444の平均重合度を有するオリゴ糖及び多糖類を含む、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記組成物が、透過促進剤を含む、実施態様1に記載の方法。
(5) 前記透過促進剤が、前記組成物全体の約0.01%(w/v)~約20%(w/v)の濃度で存在する、実施態様1及び/又は2に記載の方法。
【0147】
(6) 前記透過促進剤が、前記組成物全体の約0.1%(w/v)~10%(w/v)の濃度で存在する、実施態様3に記載の方法。
(7) 前記透過促進剤が、前記組成物全体の約0.25%(w/v)~5%(w/v)の濃度で存在する、実施態様4に記載の方法。
(8) 前記透過促進剤が、ポリオキシエチレン、脂肪酸のポリオキシエチレンエーテル、モノオレイン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ポリオキシエチレン、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、フシジン酸及びその誘導体、EDTA、EDTA二ナトリウム、コール酸、デオキシコール酸、グリココール酸、グリコデオキシコール酸、タウロコール酸、タウロデオキシコール酸、コール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、グリココール酸塩、デオキシコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、グリコデオキシコール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸ナトリウム、ケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、サポニン、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸アンモニウム、デカメトニウム、臭化デカメトニウム、及び臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、又は上記のいずれかの混合物から選択される、実施態様4に記載の方法。
(9) 前記患者の涙中のヒアルロン酸濃度が、タンパク質1ミリグラム当たり約10ナノグラム未満である場合に、前記組成物が投与される、実施態様1に記載の方法。
(10) 前記患者の涙中のヒアルロン酸濃度が、タンパク質1ミリグラム当たり約15ナノグラム未満である場合に、前記組成物が投与される、実施態様1に記載の方法。
【0148】
(11) 前記患者の涙中のヒアルロン酸濃度が、タンパク質1ミリグラム当たり約20ナノグラム未満である場合に、前記組成物が投与される、実施態様1に記載の方法。
(12) 前記患者の涙中のヒアルロン酸濃度が、タンパク質1ミリグラム当たり約25ナノグラム未満である場合に、前記組成物が投与される、実施態様1に記載の方法。
(13) 前記患者の涙中のヒアルロン酸の濃度を上昇させて、タンパク質1ミリグラム当たり約10ナノグラム以上とするために、前記組成物が前記患者の眼に投与される、実施態様1に記載の方法。
(14) 前記患者の涙中のヒアルロン酸の濃度を上昇させて、タンパク質1ミリグラム当たり約15ナノグラム以上とするために、前記組成物が前記患者の眼に投与される、実施態様1に記載の方法。
(15) 前記患者の涙中のヒアルロン酸の濃度を上昇させて、タンパク質1ミリグラム当たり約20ナノグラム以上とするために、前記組成物が前記患者の眼に投与される、実施態様1に記載の方法。
【0149】
(16) 前記患者の涙中のヒアルロン酸の濃度を上昇させて、タンパク質1ミリグラム当たり約25ナノグラム以上とするために、前記組成物が前記患者の眼に投与される、実施態様1に記載の方法。