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特開2024-107313肺、腎臓、または肝臓の線維症疾患の処置に使用するためのPSMPアンタゴニスト
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107313
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】肺、腎臓、または肝臓の線維症疾患の処置に使用するためのPSMPアンタゴニスト
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240801BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240801BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240801BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240801BHJP
   C07K 16/18 20060101ALN20240801BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P1/16
A61P11/00
A61P13/12
C07K16/18 ZNA
C07K16/18
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024094430
(22)【出願日】2024-06-11
(62)【分割の表示】P 2021543303の分割
【原出願日】2020-01-26
(31)【優先権主張番号】62/797,440
(32)【優先日】2019-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/911,511
(32)【優先日】2019-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/913,937
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521325503
【氏名又は名称】メイプル バイオテック エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ワン イン
(72)【発明者】
【氏名】シェ シャオピン
(72)【発明者】
【氏名】ペイ シャオレイ
(72)【発明者】
【氏名】リー チンチン
(72)【発明者】
【氏名】リウ ジョンティアン
(72)【発明者】
【氏名】ソン ジャンミン
(72)【発明者】
【氏名】チュンフイ ディ
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー リウ
(57)【要約】
【課題】肺、腎臓、または肝臓の線維症疾患の処置に使用するためのPSMPアンタゴニストの提供。
【解決手段】PC3分泌型マイクロタンパク質(PSMP)のアンタゴニスト、ならびに、肝線維症、肺線維症、または腎線維症に関連する種々の疾患または障害、例えば、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、アルコール性肝疾患(ALD)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、原発性胆汁性胆管炎(PBC)、薬物誘発肺傷害、急性腎傷害(AKI)、慢性腎疾患(CKD)、ループス腎炎、IgA腎症、および膜性糸球体腎炎などを含めた肝線維症、肺線維症、または腎線維症を処置するためのアンタゴニストの使用が開示される。PSMPアンタゴニストならびに移植片対宿主病(GVHD)および全身性エリテマトーデス(SLE)を処置するためのそれらの使用も開示される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年1月28日出願の米国仮特許出願第62/797,440号、2019年10月7日出願の米国仮特許出願第62/911,511号、および2019年10月11日出願の米国仮特許出願第62/913,937号の利益を主張するものである。前述の出願はそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
配列表の参照
【0002】
本出願は、EFS-Webを介してASCIIフォーマットで提出されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる配列表を含む。2019年12月26日に作成された前記ASCIIコピーは「MAB_0110PC_20191226_Seq_Listing_ST25」という名称であり、サイズは11,153バイトである。
【背景技術】
【0003】
肝線維症および非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)
線維症は、多くの場合、繰り返されるかまたは慢性的な組織傷害に対する創傷治癒反応として生じる細胞外マトリックスの過剰な蓄積であり、器官構造の破壊および機能喪失に至る可能性がある。線維症は、体内のほぼすべての組織に影響を及ぼす。線維症消散の機構は、線維性細胞外マトリックスの分解ならびに線維形成筋線維芽細胞の消失を包含する。
【0004】
慢性肝傷害に対する創傷治癒応答である肝線維症は、肝炎ウイルス感染症、アルコールの乱用、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)または原発性胆汁性胆管炎を含めた種々の原因によって誘発される、肝臓における細胞外マトリックス(ECM)の過剰な沈着によって特徴付けられ、肝機能の喪失および肝臓構造の破壊に至る。ヒトにおける器官線維症の消散に関する最近のエビデンスは、肝臓において観察されたものである。抗ウイルス療法を用いた処置を受けた、B型肝炎ウイルス(HBV)またはHCV感染に関連する肝線維症を有する患者において、肝硬変の場合であっても線維症からの回復および組織学的改善が示されている。
【0005】
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、慢性肝疾患の主な原因であることが明らかになっている。NAFLDは、良性肝臓脂肪症から、より侵襲性の壊死性炎症性顕在化であるNASHまでにわたる複雑な一連の肝疾患である。NASHは、インスリン抵抗性および2型糖尿病などのメタボリックシンドロームの共存症、ならびに高血圧症および脂質異常症に関連する心血管合併症と密接に関連するので、他の肝疾患とは別個のものである。これらの共存症は単なるNAFLDにすでに存在しており、これは、線維症および主要な肝臓の炎症が存在しないことによって定義される。これらの肝臓が関与しない疾患は主要な共存症であり、NAFLDによる死亡率およびステージ2線維症までの初期の線維性NASHの原因である。肝臓に関連する罹患率および死亡率は、ステージ1線維症を超えて初めて、特に肝硬変が出現すると有意に上昇する。したがって、予防および治療は、2つの大きく独立した標的:様々な医薬によって処置可能な代謝合併症、および、承認された薬物が存在しない中等度~進行した線維症(ステージ2~4)に対処するものでなければならない。
【0006】
肝線維症の一般的な実験的齧歯類モデルは、急性肝細胞傷害を誘発するための肝臓毒(例えば、四塩化炭素[CCl])の投与または胆汁うっ滞を誘発するための胆管結紮(BDL)を含み、それぞれ中心周囲肝線維症または門脈周囲肝線維症が生じる。NASHモデルは、病因および/もしくは自然歴(肥満誘発性食餌モデル)を模倣するそれらの能力、または病理組織検査(栄養欠乏食餌モデルもしくは化学的に誘発されたモデル)によって本質的に区別される。メチオニンおよびコリン欠乏(MCD)食は、NASHの最も重症の表現型を最短で生じさせる、極めて一般に使用される食餌の1つである。MCD食は、他の食餌動物モデルと比較して有意な線維症を誘発するものである。また、遺伝モデル(単一遺伝子または多遺伝子)がNASH研究において広く使用されている。
【0007】
線維症の開始は、肝臓に存在するマクロファージおよびクッパー細胞が活性化され、トランスフォーミング成長因子(TGF-β)ならびに肝星細胞(HSC)を活性化する他の炎症促進性サイトカインが放出される炎症期に決定的に依存する。HSCは、ECMの大部分の産生に関与し、肝臓線維形成において中心的な役割を果たす。HSCは、静止状態にあり、肝細胞と類洞内皮との間の空間(ディッセ腔)内にレチノイド貯蔵細胞として位置する。肝臓が傷害を受けると、肝臓における主要なコラーゲン合成細胞であるHSCが活性化され、より速く増殖し、また、走化性、生存およびコラーゲン産生の増強を示す筋線維芽細胞様細胞に分化転換される。HSC活性化は、ケモカイン、活性酸素種、成長因子、マトリックス剛性、マトリックス細胞タンパク質および損傷関連分子パターンなどの複数のメディエーターによって駆動される。
アルコール性肝疾患(ALD)
【0008】
アルコール性肝疾患(ALD)は、世界的に毎年数百万人の患者に影響を及ぼしている。ALDの増悪は、よく特徴付けられており、実際に、脂肪症から、炎症および壊死(脂肪性肝炎)まで、線維症および肝硬変まで、ならびに一部の場合では最終的に肝細胞癌(HCC)までにわたる一連の肝疾患である。脂肪肝(fatty liver)(脂肪症)は、過飲または慢性的なエタノール消費に対する肝臓の応答の最初のステージである。トリグリセリドなどの脂質産物が肝細胞に蓄積することにより、脂質の超酸化および酸化ストレスがもたらされ、その結果、アポトーシス、肝臓の炎症およびHSCの活性化が生じる。
【0009】
アルコール誘発脂肪肝には、肝臓ステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)-1の増加および肝臓ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体(PPAR)α活性の低下が伴う。SREBP1は、主に肝臓で発現され、コレステロール、脂肪酸、およびトリグリセリドの生合成の重要な転写調節因子である。PPARαは、肝臓による脂質代謝のマスター調節因子としての機能を果たす。
【0010】
現在、アルコール性肝疾患に関して最も広く使用されているモデルは、エタノールを含有するLieber-DeCarli液体食を4~6週間にわたって自由に給餌するものである。このモデルでは、肝臓脂肪症およびわずかな線維症を誘発することができる。さらに、国立アルコール乱用・依存症研究所(National Institute on Alcohol Abuse and Alcoholism)(NIAAA)モデルとも称される慢性+過度のアルコール給餌モデルが報告されている。例えば、Bertola et al., Nat. Protoc. 8: 627-37, 2013を参照されたい。NIAAAモデルは、患者における慢性アルコール性肝傷害の急性増悪を模倣するものであり、長年にわたる慢性的な飲酒(慢性的)および最近の過剰なアルコール消費歴(過度(binge))のバックグラウンドを有する多くのアルコール性肝炎患者の飲酒パターンと類似したものである。慢性+過度のアルコール給餌モデルのプロトコールは、Lieber-DeCarliエタノール液体食の自由な慢性経口給餌(例えば、10日間)+単回の過度のエタノール給餌(例えば、エタノール、体重1kg当たり5g、31.5%エタノールの単回用量の強制飼養)である。そのような慢性+過度のエタノール給餌により、マウスにおいて有意な脂肪症、肝傷害、および炎症が相乗的に誘発された。例えば、Bertola et al.、上記を参照されたい。
原発性硬化性胆管炎(PSC)および原発性胆汁性胆管炎(PBC)
【0011】
肝臓胆汁うっ滞は、胆汁流の欠陥によって特徴付けられる。胆汁うっ滞性疾患の中でも、原発性硬化性胆管炎および原発性胆汁性胆管炎は、慢性肝疾患に関連する原因であり、有意な罹患率および死亡率に関連付けられる。
【0012】
原発性硬化性胆管炎(PSC)は、病因不確定の稀な慢性胆汁うっ滞性肝疾患であり、生化学的には胆汁うっ滞によって特徴付けられ、組織学的かつ胆道造影的には胆管の線維性閉塞性炎症によって特徴付けられる。PSCは、臨床的に有意な割合の患者において、肝硬変、末期肝疾患、および/または肝胆道がんに進行するが、疾患経過は高度に変動し得る。
【0013】
原発性胆汁性胆管炎(PBC)は、以前は原発性胆汁性肝硬変として公知であり、肝臓の小さな胆管が傷害を受け、炎症を起こし、最終的に破壊される慢性疾患である。胆管がない場合には、胆汁が増加し、肝損傷が引き起こされる。
【0014】
DDCと称される3,5-ジエトキシカルボニル-1,4-ジヒドロコリジンの慢性給餌は、管内ポルフィリン栓の形成に起因して、原発性硬化性胆管炎(PSC)および原発性胆汁性胆管炎/原発性胆汁性肝硬変(PBC)などの胆汁うっ滞性疾患のin vivoモデルとして提唱されている。DDCにおけるものと同様のこれらの疾患では、一次損傷は胆管細胞に向けられる。マウスにおけるDDCの慢性給餌により、(1)細胆管反応(ductular reaction)を生じる胆管区画のリモデリング、(2)細胆管周囲の線維化、および(3)炎症性浸潤などの、ヒト胆汁うっ滞性疾患の主要な病理組織学的特質が再現される。
肺線維症
【0015】
肺線維症は、強皮症(全身性硬化症)、サルコイドーシス、感染症、および毒性物質または放射線への曝露を含めた多様な病因に関連付けられる。特発性肺線維症(IPF)は、特発性間質性肺炎の最も一般的な形態であり、通常は致死的であり、生存期間中央値は2~3年である。2014年には、線維化促進シグナル伝達阻害剤であるピルフェニドンおよびニンテダニブについて、努力肺活量によって測定されるそれらの肺機能の減退の緩徐化および総死亡率の低下に基づいて、IPFの処置に関するファスト・トラック承認がFDAにより付与された。しかし、IPFにおける線維症消散の促進に関するこれらの薬物の有効性は実証されていない。肺線維症の最も一般的な実験的マウスモデルは、炎症に続いて線維症が誘発される、化学療法薬であるブレオマイシンの気管内投与である。種々の試験により、線維性肺における筋線維芽細胞の大部分が周皮細胞に由来し、中皮間葉転換(MMT)を通じた中皮細胞の寄与を伴うことが見いだされている。
移植片対宿主病(GVHD)
【0016】
GVHD(移植片対宿主病)は、ヒト同種造血幹細胞移植(アロHSCT)後に生じる一般的な合併症であり、これは、HSCTからの回復の主要な障害であると考えられている。単球およびマクロファージがGVHDの間に腸粘液、肝臓、および皮膚に誘引され、蓄積し、疾患を悪化させることが、多くの研究チームによって報告されている。例えば、Zhang et al., J. Leukoc. Biol. 99: 279-87, 2016を参照されたい。当該疾患の進行の理解を助けるため、およびGVHDの蔓延を低減するための有効な方法を見いだすために、GVHDの種々のマウスモデルが確立されている。一般に、例えば、Schroeder et al., Dis. Model Mech. 4: 318-333, 2011を参照されたい。
【0017】
臨床では、GVHDは、症状が生じた時間に基づいて2つの亜型、急性GVHDおよび慢性GVHDに定義される。急性GVHDは、HSCT後の死亡の主要な原因であり、その症状としては、通常HSCT後100日以内に生じる皮疹、胃腸管障害および肝障害が挙げられる。慢性GVHDの症状は、100日~数年後に生じ、体内の単一の器官または部位に制限される場合もあり、広範にわたる場合もある。症状は、以下のいずれかに影響を及ぼすものであり得る:眼、口、爪、皮膚、頭皮および体毛、胃腸管、肺、肝臓、筋肉および関節、生殖器および性器。GVHDは、急性GVHDの重症度に応じてグレードIおよびグレードIIまたはそれよりも高次のGVHDに分類される。グレードIは、肝臓または胃腸管の関与を伴わない、体表面積の50パーセント以下を覆う皮膚GVHDを意味し、その処置は、局部処置(例えば、ステロイド外用薬)の使用および予防措置(例えば、シクロスポリンレベル)の最適化である。より重症の患者は、グレードIIまたはそれよりも高次のGVHDを有するとみなされ、典型的には全身性グルココルチコイド(例えば、メチルプレドニゾロン)を使用した処置が行われる。胃腸の関与を伴う患者への使用に関しては経口ベクロメタゾンが提案されるが、胃腸感染症がある場合には中断すべきである。Zeiser et al., N. Engl. J. Med. 377:
2167-2179, 2017;Zeiser et al., N. Engl.
J. Med. 377: 2565-2579, 2017を参照されたい。
【0018】
急性GVHDの治療方針としては、臨床試験からの初期のデータに従って、共刺激経路遮断、標的化抗インターロイキン-6モノクローナル抗体、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤、キナーゼ阻害剤、プロテアソーム阻害剤、抗炎症性プロテアーゼ阻害剤アルファ-1-抗トリプシン、CTLA-4拮抗作用、CCR5遮断、および養子Treg移入の使用が挙げられる。これらおよび開発中の他の最近の戦略が急性GVHDに対する標準治療になるには、その前に前向き第3相試験での試験を行わなければならない。Zeiser
et al., N. Engl. J. Med. 377: 2167-2179, 2017を参照されたい。
【0019】
数十年にわたって、慢性GVHDの処置に関してはほとんど進展がなく、グルココルチコイド依存性患者またはグルココルチコイド難治性疾患を有する患者の処置に関して食品医薬品局(Food and Drug Administration)(FDA)によって承認された薬物は存在しない。アロ反応性T細胞および抗体産生B細胞の負荷量を低減すること(例えば、移植後にシクロホスファミドを用いて処置すること、ナイーブT細胞の枯渇、およびリツキシマブの使用によるB細胞の枯渇によって)により、最近の進歩が実現されている。新しい治療手法は、慢性GVHDの病理発生、特に、B細胞シグナル伝達およびある特定のT細胞サブセットの持続的な免疫活性化、Treg細胞欠乏、ならびに組織線維化の顕著な役割のよりよい理解に基づく。展望としては、線維症の標的化および機構の刺激(例えば、ピルフェニドンおよびインターロイキン-17またはRORγt阻害剤を用いる)、形質細胞の標的化(例えば、免疫プロテアソーム阻害剤および抗インターロイキン-6受容体を用いる)、ならびにバイオマーカー研究において同定された慢性GVHDの影響を受けている標的器官へのケモカイン誘導性T細胞およびB細胞動員の阻害(例えば、CXCL9阻害剤を用いる)が挙げられる。これらの開発は有望であるが、それでもなお、グルココルチコイドが、長期間使用で実質的な副作用があるにもかかわらず、標準の最先端治療を構成している。Zeiser et al., N. Engl. J. Med. 377: 2565-2579, 2017を参照されたい。
急性腎傷害(AKI)および慢性腎疾患(CKD)
【0020】
腎疾患は、世界的な健康問題としてますます認識されている。例えば、Felix et al., Nat. Rev. Nephrology. 15: 263-27,
2019を参照されたい。急性腎傷害(AKI)および慢性腎疾患(CKD)は、高罹患率および死亡率に結び付けられる。AKIは、腎機能の急速かつ可逆的な減退とみなされ、CKDの加速に関連付けられる。AKIやCKDの病歴を有さない患者と比較して、AKI患者は、新しいCKDまたは末期腎疾患(ESRD)を発症する可能性が高い。逆に、CKDも、AKIにおいて重要な役割を果たす。CKDの患者は、AKIと一致して腎機能の一過性の低下の高リスクを負う場合がある。例えば、Yin-Wu Bao et al., Zoological Research. 39: 72-86, 2018を参照されたい。AKIおよびCKDは、密接に結び付いており、したがって、統合臨床症候群とみなされる。例えば、Chawla et al., N. Engl.
J. Med. 371: 58-66, 2014を参照されたい。
【0021】
AKIおよびCKDの疾患生成および増悪の機構は依然として完全には理解されていない。例えば、John et al., J. Clin. Invest. 124:
2294-2298, 2014を参照されたい。したがって、腎疾患の増悪を緩徐化するために利用可能な戦略はわずかであり、大多数の処置選択肢は、血圧の低下およびタンパク尿の減少に集中している。明白に、追加的な治療の道筋が必要とされている。一般に、例えば、Siew et al., Kidney International.
87: 46-61, 2015を参照されたい。
【0022】
横紋筋融解症は、骨格筋傷害、およびその後の、損傷を受けた筋肉細胞から体循環中への分解産物の放出によって引き起こされる重篤な症候群である。筋損傷は、激しい運動、筋肉低酸素症、薬物適用、または薬物乱用に起因することが多く、AKIなどの生命を脅かす合併症に至る恐れがある。例えば、Koshu et al., Nat. Med. 24: 232-238, 2018を参照されたい。グリセロールの注射によって誘発される実験的AKIは、十分に確立された横紋筋融解症のモデルである。これは、激しい皮質急性尿細管壊死および炎症細胞浸潤によって特徴付けられる。一般に、例えば、Yanqiu et al., Stem Cell Research & Therapy 5: 80, 2014を参照されたい。
【0023】
腎線維症は、腎機能の進行性喪失に寄与するCKDの重要な病理学的現象である。腎線維症は、糸球体硬化症および/または間質性線維症を伴う。糸球体および間質領域の両方への細胞外マトリックス(ECM)タンパク質の異所性かつ過剰な沈着が腎線維症の典型的な特質であり、それにより腎傷害の重症度が増幅される。
【0024】
閉塞性尿路疾患は、小児における末期腎疾患の主要な原因であり、小児腎移植の主要な理由の1つになっている。AKIおよびCKDを研究するために使用される最も一般的な齧歯類モデルは片側性尿管閉塞(UUO)であり、UUOの主要な特徴は、尿流が妨げられた結果としての間質性炎症、尿細管細胞傷害/死および線維化である。例えば、Elena Martinez-Klimova et al., Biomolecules
9: 141, 2019を参照されたい。
【0025】
全身性エリテマトーデス(SLE)は、体の免疫系が、体自身の組織および器官を攻撃した場合に生じる全身性自己免疫疾患である。SLEによって引き起こされる炎症は、多くの異なる体のシステムに影響を及ぼし得る。腎不全はSLEを有する人の主な死亡原因の1つである。ループス腎炎は全身性エリテマトーデス(SLE)の一般的かつ重症の顕在化であり、急性腎傷害および末期腎疾患の両方の重要な原因である。例えば、Davidson et al., Nat. Rev. Rheumatol, 6: 13-20, 2010を参照されたい。ループス腎炎は、Fc受容体および補体の活性化、炎症細胞の動員、ならびに最終的な線維症を含む炎症性事象のカスケードを誘発する、免疫複合体の糸球体沈着によって開始される。例えば、Anne Davidson, Nat. Rev. Rheumatol. 12: 143-153, 2015を参照されたい。ループス腎炎を管理するための現行の手法は、高用量コルチコステロイドとそれに加えて広域スペクトル免疫抑制剤に依拠する。例えば、Feng et al., Nat. Rev. Nephrology. 13: 483-495, 2017;Samir et al., J. Am. Soc. Nephrol. 27: 2929-2939, 2016を参照されたい。ループス腎炎の周知のマウスモデルでは、雌B6D2F1マウスへの雄DBA/2マウス由来のTリンパ球の接種を利用して、免疫賦活性GVH反応、およびマウスがSLE患者の症状を示すループス様疾患を誘発する。例えば、Via et al., J Immunol. 139: 1840-1849, 1987を参照されたい。
【0026】
50年前にJacques Bergerにより同定され、かつてはメサンギウム増殖性糸球体疾患の稀な変形であると考えられていたIgA腎症は、世界的に最も頻度の高い糸球体疾患であり、慢性腎疾患および末期腎不全の重要な原因である。IgA腎症の病原機構は部分的にしか理解されていない。臨床研究および基礎研究からのデータにより、多数の仮説が示唆され、ガラクトース欠乏IgA分子が特定の自己抗体によって認識されるものによると、その結果、糸球体間質に沈着したIgA-IgG免疫複合体の形成がもたらされ、そこでそれらにより腎傷害が誘発される。例えば、Jennifer et
al., Clin. J. Am. Soc. Nephrol. 12: 677-686, 2017を参照されたい。IgA腎症は、免疫複合体疾患として認識される。
PC3分泌型マイクロタンパク質
【0027】
PSMP、すなわちPC3分泌型マイクロタンパク質は、PC3細胞ならびに良性および悪性前立腺組織において最初に発見された(Valtonen-Andre et al., Biol. Chem. 388: 289-95, 2007を参照されたい)。PSMPは、前立腺関連マイクロセミノタンパク質(MSMP)とも称される(Frankenberg et al., BMC Evol. Biol. 11: 373-85, 2011を参照されたい)。MSMPの組織発現は、PC3細胞ならびに良性および悪性前立腺組織における発現は別として、ベータ-マイクロセミノタンパク質ファミリーのメンバーとして精巣のみに制限されることが報告されている(同文献を参照されたい)。オミクス戦略を使用した研究により、PSMPが末梢血単球およびリンパ球を動員するためのCCR2リガンドとして作用する新規の走化性サイトカインであることが明らかになっている(Pei et al., J. Immunol. 192: 1878-86, 2014を参照されたい)。PSMPとCCR2との親和性は、CCL2とCCR2との親和性と同等であることが見いだされている(同文献を参照されたい)。
【0028】
別の研究により、PSMPがヒト大腸炎組織において発現され、DSS誘発マウス大腸炎において有意に上方調節されることが実証された(Pei et al., Sci.
Rep. 7: 5107, 2017を参照されたい)。PSMPは、Ly6Chi単球をCCR2依存的に化学誘引することにより、DSS大腸炎の促進において極めて重要な役割を果たす(同文献を参照されたい)。抗PSMP中和抗体は、マクロファージ浸潤を低減すること、ならびにIL-6、TNFαおよびCCL2の発現を阻害することによって大腸炎を和らげる(同文献を参照されたい)。
最近の研究により、抗VEGF治療抵抗性腫瘍では対照腫瘍と比較してMSMP遺伝子の発現が実質的に上方調節されることが見いだされた。Mitamura et al., Oncogene 37: 722-731, 2018を参照されたい。低酸素により、がん細胞からのMSMP分泌が誘導された。がん細胞における低酸素条件下でのヒストンアセチル化により、転写リプレッサーCCCTC結合因子(CTCF)のMSMPエンハンサー領域への動員が減少した。DOPCナノリポソームを使用してin vivoで送達されたMSMP siRNAにより、腫瘍の抗VEGF治療に対する感受性が回復した。ベバシズマブを用いた処置を受けた卵巣がん患者では、非応答者においてのみ血清中MSMP濃度が有意に上昇した。同文献を参照されたい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0029】
【非特許文献1】Bertola et al., Nat. Protoc. 8: 627-37, 2013
【非特許文献2】Zhang et al., J. Leukoc. Biol. 99: 279-87, 2016
【非特許文献3】Schroeder et al., Dis. Model Mech. 4: 318-333, 2011
【非特許文献4】Zeiser et al., N. Engl. J. Med. 377: 2167-2179, 2017
【非特許文献5】Zeiser et al., N. Engl. J. Med. 377: 2565-2579, 2017
【非特許文献6】Felix et al., Nat. Rev. Nephrology. 15: 263-27, 2019
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0030】
一態様では、本発明は、肝線維症を処置するための方法を提供する。当該方法は、一般に、肝線維症を有する対象に、有効量のPC3分泌型マイクロタンパク質(PSMP)アンタゴニストを投与することを含む。関連する態様では、本発明は、肝線維症の処置に使用するためのPSMPアンタゴニストを提供する。別の関連する態様では、本発明は、肝線維症を処置するための医薬の製造におけるPSMPアンタゴニストの使用を提供する。上記の方法、PSMPアンタゴニスト、または使用の一部の実施形態では、肝線維症は肝硬変に進行している。他の相互排他的でない実施形態では、肝線維症は、B型肝炎ウイルス(HBV)誘発肝線維症、C型肝炎ウイルス(HCV)誘発肝線維症、もしくはアルコール誘発肝線維症であるか、または肝線維症は、非アルコール性脂肪性肝疾患に関連するものである。肝線維症が肝硬変に進行している一部の変形形態では、肝硬変は、原発性胆汁性肝硬変である。肝線維症が非アルコール性脂肪性肝疾患に関連するものである一部の変形形態では、非アルコール性脂肪性肝疾患は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である。一部の実施形態では、肝線維症は、アルコール性肝疾患(ALD)、アルコール性肝炎、アルコール性肝硬変、B型慢性肝炎、C型慢性肝炎、D型慢性肝炎、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、ヘモクロマトーシス、嚢胞性線維症、ウィルソン病、胆道閉鎖症、アルファ1抗トリプシン欠損症、ガラクトース血症、糖原病、遺伝性消化系障害、アラジール症候群、自己免疫性肝炎、原発性硬化性胆管炎(PSC)、原発性胆汁性胆管炎(PBC、以前は原発性胆汁性肝硬変として公知)、感染症、薬物誘発肝傷害、およびバッドキアリ症候群から選択される疾患または障害に関連するものである。
【0031】
別の態様では、本発明は、肺線維症を処置する方法を提供する。当該方法は、一般に、肺線維症を有する対象に、有効量のPC3分泌型マイクロタンパク質(PSMP)アンタゴニストを投与することを含む。関連する態様では、本発明は、肺線維症の処置に使用するためのPSMPアンタゴニストを提供する。別の関連する態様では、本発明は、肺線維症を処置するための医薬の製造におけるPSMPアンタゴニストの使用を提供する。一部の実施形態では、肺線維症は、皮膚筋炎、多発性筋炎、混合性結合組織疾患、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、肺炎、慢性放射線肺炎、塵肺症、感染症、および薬物誘発肺傷害からなる群から選択される疾患または障害に関連するものである。
【0032】
別の態様では、本発明は、非アルコール性脂肪性肝疾患を処置する方法を提供する。当該方法は、一般に、非アルコール性脂肪性肝疾患を有する対象に、有効量のPC3分泌型マイクロタンパク質(PSMP)アンタゴニストを投与することを含む。関連する態様では、本発明は、非アルコール性脂肪性肝疾患の処置に使用するためのPSMPアンタゴニストを提供する。別の関連する態様では、本発明は、非アルコール性脂肪性肝疾患を処置するための医薬の製造におけるPSMPアンタゴニストの使用を提供する。上記の方法、PSMPアンタゴニスト、または使用の一部の実施形態では、非アルコール性脂肪性肝疾患は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である。
【0033】
別の態様では、本発明は、アルコール性肝疾患(ALD)を処置する方法を提供する。当該方法は、一般に、アルコール性肝疾患を有する対象に、有効量のPC3分泌型マイクロタンパク質(PSMP)アンタゴニストを投与することを含む。関連する態様では、本発明は、アルコール性肝疾患の処置に使用するためのPSMPアンタゴニストを提供する。別の関連する態様では、本発明は、アルコール性肝疾患を処置するための医薬の製造におけるPSMPアンタゴニストの使用を提供する。
【0034】
別の態様では、本発明は、原発性硬化性胆管炎(PSC)を処置する方法を提供する。当該方法は、一般に、原発性硬化性胆管炎を有する対象に、有効量のPC3分泌型マイクロタンパク質(PSMP)アンタゴニストを投与することを含む。関連する態様では、本発明は、原発性硬化性胆管炎の処置に使用するためのPSMPアンタゴニストを提供する。別の関連する態様では、本発明は、原発性硬化性胆管炎を処置するための医薬の製造におけるPSMPアンタゴニストの使用を提供する。
【0035】
別の態様では、本発明は、原発性胆汁性胆管炎(PBC)を処置する方法を提供する。当該方法は、一般に、原発性胆汁性胆管炎を有する対象に、有効量のPC3分泌型マイクロタンパク質(PSMP)アンタゴニストを投与することを含む。関連する態様では、本発明は、原発性胆汁性胆管炎の処置に使用するためのPSMPアンタゴニストを提供する。別の関連する態様では、本発明は、原発性胆汁性胆管炎を処置するための医薬の製造におけるPSMPアンタゴニストの使用を提供する。
【0036】
別の態様では、本発明は、移植片対宿主病(GVHD)を処置する方法を提供する。当該方法は、一般に、GVHDを有する対象に、有効量のPC3分泌型マイクロタンパク質(PSMP)アンタゴニストを投与することを含む。関連する態様では、本発明は、GVHDの処置に使用するためのPSMPアンタゴニストを提供する。別の関連する態様では、本発明は、GVHDを処置するための医薬の製造におけるPSMPアンタゴニストの使用を提供する。一部の実施形態では、処置されるGVHDは、急性GVHD(aGVHD)である。他の実施形態では、処置されるGVHDは、慢性GVHD(cGVHD)である。
【0037】
別の態様では、本発明は、全身性エリテマトーデス(SLE)を処置する方法を提供する。当該方法は、一般に、SLEを有する対象に、有効量のPC3分泌型マイクロタンパク質(PSMP)アンタゴニストを投与することを含む。関連する態様では、本発明は、SLEの処置に使用するためのPSMPアンタゴニストを提供する。別の関連する態様では、本発明は、SLEを処置するための医薬の製造におけるPSMPアンタゴニストの使用を提供する。
【0038】
別の態様では、本発明は、ループス腎炎を処置する方法を提供する。当該方法は、一般に、ループス腎炎を有する対象に、有効量のPC3分泌型マイクロタンパク質(PSMP)アンタゴニストを投与することを含む。関連する態様では、本発明は、ループス腎炎の処置に使用するためのPSMPアンタゴニストを提供する。別の関連する態様では、本発明は、ループス腎炎を処置するための医薬の製造におけるPSMPアンタゴニストの使用を提供する。
【0039】
別の態様では、本発明は、腎線維症を処置するための方法を提供する。当該方法は、一般に、腎線維症を有する対象に、有効量のPC3分泌型マイクロタンパク質(PSMP)アンタゴニストを投与することを含む。関連する態様では、本発明は、腎線維症の処置に使用するためのPSMPアンタゴニストを提供する。別の関連する態様では、本発明は、腎線維症を処置するための医薬の製造におけるPSMPアンタゴニストの使用を提供する。上記の方法、PSMPアンタゴニスト、または使用の一部の実施形態では、腎線維症は、IgA腎症、膜性増殖性糸球体腎炎、膜性糸球体腎炎、半月体形成性糸球体腎炎、糖尿病性腎症、高血圧腎症、ループス腎炎、肝性腎症、多嚢胞性腎疾患、アルポート症候群、ファブリー病、原発性高シュウ酸尿症、シスチン蓄積症、コエンザイムQ10関連遺伝子変異により引き起こされる巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、補体3糸球体腎炎、急性または亜急性免疫複合体糸球体腎炎、腎血管炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、最近発症した腎動脈狭窄症(線維筋性または血管炎性)、糖尿病性腎疾患、慢性尿酸腎症、中毒性腎症、細菌性腎盂腎炎、ウイルス性腎症、多発性骨髄腫、および閉塞性腎症から選択される疾患または障害に関連するものである。
【0040】
さらに別の態様では、本発明は、急性腎傷害(AKI)または慢性腎疾患(CKD)を処置するための方法を提供する。当該方法は、一般に、AKIまたはCKDを有する対象に、有効量のPC3分泌型マイクロタンパク質(PSMP)アンタゴニストを投与することを含む。関連する態様では、本発明は、AKIまたはCKDの処置に使用するためのPSMPアンタゴニストを提供する。別の関連する態様では、本発明は、AKIまたはCKDを処置するための医薬の製造におけるPSMPアンタゴニストの使用を提供する。上記のAKIを処置するための方法、PSMPアンタゴニスト、または使用の一部の実施形態では、AKIは、横紋筋融解症誘発性である。CKDを処置するための上記の方法、PSMPアンタゴニスト、または使用の一部の実施形態では、CKDは、IgA腎症、膜性増殖性糸球体腎炎、膜性糸球体腎炎、半月体形成性糸球体腎炎、糖尿病性腎症、高血圧腎症、ループス腎炎、肝性腎症、多嚢胞性腎疾患、アルポート症候群、ファブリー病、原発性高シュウ酸尿症、シスチン蓄積症、コエンザイムQ10関連遺伝子変異により引き起こされる巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、補体3糸球体腎炎、急性または亜急性免疫複合体糸球体腎炎、腎血管炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、最近発症した腎動脈狭窄症(線維筋性または血管炎性)、糖尿病性腎疾患、慢性尿酸腎症、中毒性腎症、細菌性腎盂腎炎、ウイルス性腎症、多発性骨髄腫、および閉塞性腎症から選択される疾患または障害によって引き起こされるものである。
【0041】
上記の方法、PSMPアンタゴニスト、または使用のある特定の実施形態では、PSMPアンタゴニストは、PSMPに特異的に結合する可溶性タンパク質である。特に適切な可溶性タンパク質アンタゴニストとしては、中和抗PSMP抗体が挙げられる。より詳細な変形形態では、抗体は、ヒト化抗体、キメラ抗体、またはヒト抗体である。他の相互排他的でない実施形態では、抗体は、単鎖抗体および/または二重特異性抗体である。典型的には、本発明に従って使用するための抗体は、モノクローナル抗体である。一部の変形形態では、抗体は、例えば、免疫グロブリン重鎖定常領域(例えば、免疫グロブリンFc領域)などの免疫グロブリン定常領域(immunoglobulin constant)を含む。
【0042】
一部の実施形態では、可溶性タンパク質であるPSMPアンタゴニスト(例えば、中和抗PSMP抗体)は、(i)配列番号4に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)および(ii)配列番号5に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体とPSMPへの結合に関して競合するものである。PSMPアンタゴニストが抗体である一部のそのような実施形態では、抗体は、相補性決定領域(CDR)であるCDR-H1Ab、CDR-H2Ab、およびCDR-H3Abを含むVHドメインを含み、VH CDRのセットは、CDRの参照セットであるCDR-H1Ref、CDR-H2Ref、およびCDR-H3Refと比べて3つまたはそれ未満のアミノ酸置換を有し、CDR-H1Refは、配列番号4のCDR-H1であり、CDR-H2Refは、配列番号4のCDR-H2であり、CDR-H3Refは、配列番号4のCDR-H3である(例えば、CDR-H1Ref、CDR-H2Ref、およびCDR-H3Refと比べてアミノ酸置換をゼロ個有するVH CDRのセット、したがって、CDR-H1Abが、配列番号4のCDR-H1であり、CDR-H2Abが、配列番号4のCDR-H2であり、CDR-H3Abが、配列番号4のCDR-H3である)。各VH CDRは、例えば、CDRに関するChothia定義、Kabat定義、AbM定義、または接触定義に従って定義されたものであり得る。具体的な変形形態では、各VH CDRは、CDRに関するChothia定義に従って定義されたものであり、したがって、CDR-H1Refは、配列番号4の残基31~35に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-H2Refは、配列番号4の残基50~69に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-H3Refは、配列番号4の残基99~108に示されるアミノ酸配列を有する。一部のそのような実施形態では、VH CDRのセットは、CDR-H1Ref、CDR-H2Ref、およびCDR-H3Refに対してアミノ酸置換をゼロ個有し、したがって、CDR-H1Abが、配列番号4の残基31~35に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-H2Abが、配列番号4の残基50~69に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-H3Abが、配列番号4の残基99~108に示されるアミノ酸配列を有する。一部の変形形態では、抗体は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有するVHドメインに由来するヒト化VHドメインを含む。他の実施形態では、抗体は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有するVHドメインを含む(例えば、抗体は、配列番号4のVHドメインを含むキメラ抗体である)。
【0043】
PSMPアンタゴニストが、(i)配列番号4に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)および(ii)配列番号5に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体とPSMPへの結合に関して競合する抗体である他の相互排他的でない実施形態では、抗体は、相補性決定領域(CDR)であるCDR-L1Ab、CDR-L2Ab、およびCDR-L3Abを含むVLドメインを含み、VL CDRのセットは、CDRの参照セットであるCDR-L1Ref、CDR-L2Ref、およびCDR-L3Refと比べて3つまたはそれ未満のアミノ酸置換を有し、CDR-L1Refは、配列番号5のCDR-L1であり、CDR-L2Refは、配列番号5のCDR-L1であり、CDR-L3Refは、配列番号5のCDR-L1である(例えば、CDR-L1Ref、CDR-L2Ref、およびCDR-L3Refと比べてアミノ酸置換をゼロ個有するVL CDRのセット、したがって、CDR-L1Abが、配列番号5のCDR-L1であり、CDR-L2Abが、配列番号5のCDR-L2であり、CDR-L3Abが、配列番号5のCDR-L3である)。各VL CDRは、例えば、CDRに関するChothia定義、Kabat定義、AbM定義、または接触定義に従って定義されたものであり得る。具体的な変形形態では、各VL CDRは、CDRに関するChothia定義に従って定義されたものであり、したがって、CDR-L1Refは、配列番号5の残基24~34に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-L2Refは、配列番号5の残基50~56に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-L3Refは、配列番号5の残基89~97に示されるアミノ酸配列を有する。一部のそのような実施形態では、VL CDRのセットは、CDR-L1Ref、CDR-L2Ref、およびCDR-L3Refと比べてアミノ酸置換をゼロ個有し、したがって、CDR-L1Abが、配列番号5の残基24~34に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-L2Abが、配列番号5の残基50~56に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-L3Abが、配列番号5の残基89~97に示されるアミノ酸配列を有する。一部の変形形態では、抗体は、配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するVLドメインに由来するヒト化VLドメインを含む。他の実施形態では、抗体は、配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するVLドメインを含む(例えば、抗体は、配列番号5のVLドメインを含むキメラ抗体である)。
【0044】
上記の方法、PSMPアンタゴニスト、または使用の一部の実施形態では、処置は、併用療法である。
定義
【0045】
別段の定義のない限り、本明細書において使用される全ての科学技術用語は、記載されている方法および組成物が関係する技術分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で使用される場合、以下の用語および句は、特に指定のない限り、それらに帰する意味を有する。
【0046】
「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」という用語は、文脈によりそうでないことが明白に示されない限り、複数の指示対象を包含する。
【0047】
本明細書で使用される場合、「アンタゴニスト」という用語は、生物学的状況において別の化合物の活性を低下させる化合物を示す。
【0048】
本発明の範囲内では、「PSMPアンタゴニスト」は、標的細胞上のPSMPの受容体媒介性生物活性(例えば、走化能)を低下させる化合物である。アンタゴニストは、それらの作用を、細胞表面受容体上の結合部位についてPSMPと競合することによって、PSMPに結合し、PSMPが細胞表面受容体に結合するのを妨げることによって、他のやり方で受容体機能に干渉することによって、PSMPの産生を低下させることによって、または他の手段によって発揮し得る。
【0049】
「ポリペプチド」は、天然に産生されたものであるか合成により作製されたものであるかにかかわらず、ペプチド結合によって接合したアミノ酸残基のポリマーである。約30アミノ酸残基未満のポリペプチドは、一般に「ペプチド」と称される。
【0050】
「タンパク質」は、1つまたは複数のポリペプチド鎖を含む高分子である。タンパク質は、炭水化物基などの非ペプチド性構成成分も含み得る。タンパク質を産生する細胞によって炭水化物および他の非ペプチド性置換基がタンパク質に付加される可能性があり、これは細胞型によって変動する。タンパク質は、本明細書では、それらのアミノ酸骨格構造に関して定義されており、炭水化物基などの置換基は、一般に指定されないが、それにもかかわらず、存在し得る。
【0051】
「抗体」という用語は、本明細書では、抗原の存在に応答して体により産生され、抗原に結合するタンパク質、ならびにその抗原結合性断片および操作されたバリアントを示すために使用される。したがって、「抗体(antibody)」および「抗体(antibodies)」という用語は、ポリクローナル抗体、アフィニティー精製されたポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ならびにF(ab’)およびFab断片などの抗原結合性抗体断片を含む。遺伝子操作されたインタクトな抗体および断片、例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体、単鎖Fv断片、単鎖抗体、ダイアボディ(diabody)、ミニボディ(minibody)、直鎖状抗体、多価または多重特異性ハイブリッド抗体なども含まれる。したがって、「抗体」という用語は、抗原結合部位を含み、その抗原に結合することができる任意のタンパク質を含むように広く使用される。
【0052】
「遺伝子操作された抗体」という用語は、アミノ酸配列がネイティブな(すなわち、天然に存在する)抗体のアミノ酸配列から変わっている抗体を意味する。抗体の生成における組換えDNA技法の関連性のために、天然の抗体に見いだされるアミノ酸の配列に限定する必要はない;抗体を、所望の特徴が得られるように再設計することができる。可能性のあるバリエーションは多数あり、ただ1つまたは少数のアミノ酸の変化から、例えば可変領域または定常領域の完全な再設計までにわたる。定常領域の変化は、一般に、補体結合、細胞との相互作用および他のエフェクター機能などの特徴を改善するかまたは変更するために行われる。典型的には、可変領域の変化は、抗原結合性特徴を改善するため、可変領域の安定性を改善するため、または免疫原性のリスクを低減するために行われる。
【0053】
「抗原結合部位」は、抗体の一部であり、抗体が抗原に結合するために十分な部分である。最小のそのような領域は、典型的には、免疫グロブリン可変ドメインもしくはその断片、または免疫グロブリン可変ドメインもしくはその断片の遺伝子操作されたバリアントである。単一ドメイン結合部位は、ラクダ科動物の抗体から(Muyldermans and Lauwereys, J. Mol. Recog. 12: 131-140, 1999;Nguyen et al., EMBO J. 19: 921-930, 2000を参照されたい)、または単一ドメイン抗体を作製するために他の種のVHドメインから(「dAbs」;Ward et al., Nature 341:
544-546, 1989;Winterらに対する米国特許第6,248,516号を参照されたい)生成することができる。ある特定の変形形態では、抗原結合部位は、天然に存在するまたは天然には存在しない(例えば、変異誘発された)重鎖可変ドメインもしくは軽鎖可変ドメイン、またはこれらの組合せの相補性決定領域(CDR)を2つしか有さないポリペプチド領域である(例えば、Pessi et al., Nature 362: 367-369, 1993;Qiu et al., Nature Biotechnol. 25: 921-929, 2007を参照されたい)。より一般には、抗原結合部位は、共通のエピトープに結合する重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインの両方を含む。本発明の範囲内では、「抗原結合部位」に加えて、抗体は、例えば、第2の抗原結合部位(同じもしくは異なるエピトープまたは同じもしくは異なる抗原に結合し得る)、ペプチドリンカー、免疫グロブリン定常ドメイン、免疫グロブリン ヒンジ、両親媒性へリックス(例えば、Pack and Pluckthun, Biochem. 31: 1579-1584, 1992を参照されたい)、非ペプチドリンカー、オリゴヌクレオチド(例えば、Chaudri et al., FEBS Letters 450: 23-26, 1999を参照されたい)などのうちの1つまたは複数などの、1つまたは複数の追加的な構成成分をさらに含み得、また、単量体または多量体タンパク質であり得る。インタクトな、ネイティブな抗体の構造(すなわち、2つの免疫グロブリン重鎖と2つの免疫グロブリン軽鎖からなる四量体)を有するタンパク質に加えて、抗原結合部位を含む分子の例は、一般に、当技術分野で公知であり、それらとしては、例えば、Fv断片、単鎖Fv断片(scFv)、Fab断片、ダイアボディ、ミニボディ、Fab-scFv融合物、二重特異性(scFv)-IgG、および二重特異性(scFv)-Fabが挙げられる(例えば、Hu et al., Cancer Res. 56: 3055-3061, 1996;Atwell et al., Molecular Immunology 33: 1301-1312, 1996;Carter and Merchant, Curr. Opin. Biotechnol. 8: 449-454, 1997;Zuo et al., Protein Engineering 13: 361-367, 2000;およびLu et al., J. Immunol. Methods 267: 213-226, 2002.を参照されたい)。
【0054】
本明細書で使用される場合、「免疫グロブリン」という用語は、免疫グロブリン遺伝子(複数可)によって実質的にコードされる1つまたは複数のポリペプチドからなるタンパク質を指す。免疫グロブリンの1つの形態は、インタクトな、ネイティブな抗体の基本構造単位を構成する。この形態は、四量体であり、2つの同一の免疫グロブリン鎖の対からなり、各対が軽鎖を1つと重鎖を1つ有する。各対において、軽鎖可変領域と重鎖可変領域は一緒になって抗原への結合を担い、定常領域は抗体エフェクター機能を担う。免疫グロブリンは、典型的には、脊椎動物生物体において抗体として機能する。高等脊椎動物では5つのクラスの免疫グロブリンタンパク質(IgG、IgA、IgM、IgD、およびIgE)が同定されている。IgGが主要なクラスを構成する;IgGは、通常、血漿中に見いだされる2番目に豊富なタンパク質として存在する。ヒトでは、IgGは、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4と称される4つのサブクラスからなる。IgGクラスの重鎖定常領域はギリシャ記号γを用いて識別される。例えば、IgG1サブクラスの免疫グロブリンは、γ1重鎖定常領域を含有する。各免疫グロブリン重鎖は、種における所与のサブクラスに対して本質的に不変である定常領域タンパク質ドメイン(CH1、ヒンジ、CH2、およびCH3;IgG3はCH4ドメインも含有する)からなる定常領域を有する。ヒトおよび非ヒト免疫グロブリン鎖をコードするDNA配列は当技術分野で公知である(例えば、Ellison et al., DNA 1: 11-18,
1981;Ellison et al., Nucleic Acids Res.
10: 4071-4079, 1982;Kenten et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79: 6661-6665, 1982;Seno et al., Nuc. Acids Res. 11: 719-726, 1983;Riechmann et al., Nature 332: 323-327, 1988;Amster et al., Nuc. Acids Res. 8: 2055-2065, 1980;Rusconi and Kohler, Nature 314: 330-334, 1985;Boss et al., Nuc. Acids Res. 12: 3791-3806, 1984;Bothwell et al., Nature 298: 380-382, 1982;van der Loo et al., Immunogenetics 42:
333-341, 1995;Karlin et al., J. Mol. Evol. 22: 195-208, 1985;Kindsvogel et al.,
DNA 1: 335-343, 1982;Breiner et al., Gene 18: 165-174, 1982;Kondo et al., Eur. J. Immunol. 23: 245-249, 1993;およびGenBank受託番号第J00228を参照されたい)。免疫グロブリンの構造および機能の概説については、Putnam, The Plasma Proteins, Vol V, Academic Press, Inc., 49-140, 1987;およびPadlan, Mol. Immunol. 31: 169-217, 1994を参照されたい。「免疫グロブリン」という用語は、本明細書では、その一般的な意味で使用され、文脈に応じて、インタクトな抗体、その構成成分である鎖、または鎖の断片を意味する。
【0055】
全長免疫グロブリン「軽鎖」(約25Kdまたは214アミノ酸)は、NH末端の可変領域遺伝子(約110アミノ酸をコードする)によって、およびCOOH末端のカッパまたはラムダ定常領域遺伝子によってコードされる。全長免疫グロブリン「重鎖」(約50Kdまたは446アミノ酸)は、可変領域遺伝子(約116アミノ酸をコードする)およびガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはイプシロン定常領域遺伝子(約330アミノ酸をコードする)によってコードされ、後者により、抗体のアイソタイプがそれぞれIgG、IgM、IgA、IgD、またはIgEと定義される。軽鎖および重鎖内で、可変領域と定常領域は約12アミノ酸またはそれよりも多くの「J」領域によって接合しており、重鎖は、さらに約10アミノ酸の「D」領域も含む(一般に、Fundamental Immunology (Paul, ed., Raven Press, N.Y., 2nd ed. 1989), Ch. 7を参照されたい)。
【0056】
免疫グロブリン「Fv」断片は、重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)を含有し、これらは、非共有結合性の相互作用によって一緒に保持されている。したがって、免疫グロブリンFv断片は、単一の抗原結合部位を含有する。Fv断片の二量体構造は、変異誘発によってジスルフィド結合を導入することによってさらに安定化することができる(Almog et al., Proteins 31: 128-138, 1998.を参照されたい)。
【0057】
本明細書で使用される場合、「単鎖抗体」という用語は、単一のポリペプチド鎖内に含有される抗原結合部位(例えば、単一のポリペプチド鎖内の重鎖由来の可変領域と軽鎖由来の可変領域の両方)を有する抗体を指す。「単鎖Fv」という用語は、重鎖由来の可変領域と軽鎖由来の可変領域の両方を含むが、定常領域を欠く単鎖抗体を指す。一般に、単鎖Fvは、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、それにより、単鎖Fvが抗原への結合を可能にする所望の構造を形成することが可能になる。単鎖抗体は、例えば、Pluckthun in The Pharmacology
of Monoclonal Antibodies, vol. 113 (Rosenburg and Moore eds., Springer-Verlag, New York, 1994), pp. 269-315によって詳細に考察されている(WIPO公開WO88/01649;米国特許第4,946,778号および同第5,260,203号;Bird et al., Science 242: 423-426, 1988.も参照されたい)。単鎖抗体はまた、二重特異性かつ/またはヒト化されたものであり得る。
【0058】
「Fab断片」は、1つの軽鎖と1つの重鎖のCH1および可変領域とを含有する。Fab断片の重鎖は、別の重鎖分子とジスルフィド結合を形成することができない。「Fab’断片」は、1つの軽鎖と、CH1ドメインとCH2ドメインとの間の定常領域をより多く含有する1つの重鎖とを含有し、したがって、2つの重鎖間に鎖間ジスルフィド結合を形成して、2つの軽鎖と2つの重鎖とを含有する「F(ab’)断片」を形成することができる。
【0059】
「Fc断片」および「Fc領域」という用語は、本明細書で使用される場合、同義であり、細胞の抗体受容体および補体の構成成分C1qへの結合を担う抗体の部分を指す。Fcは、タンパク質結晶を容易に形成する抗体の断片である「結晶性断片(fragment crystalline)」の略である。元々はタンパク質分解消化により説明されていた別個のタンパク質断片により、免疫グロブリンタンパク質の全体的な一般構造を定義することができる。文献において元々定義されている通り、Fc断片は、ジスルフィド連結した重鎖ヒンジ領域ならびにCH2ドメインおよびCH3ドメインからなる。しかし、つい最近、この用語は、CH3、CH2、および第2のそのような鎖とジスルフィド連結した二量体を形成するために十分なヒンジの少なくとも一部分からなる単鎖に適用されている。免疫グロブリンの構造および機能の概説については、Putnam, The Plasma Proteins, Vol. V (Academic Press,
Inc., 1987), pp. 49-140;およびPadlan, Mol.
Immunol. 31: 169-217, 1994を参照されたい。本明細書で使用される場合、Fcという用語は、天然に存在する配列のバリアントを含む。
【0060】
免疫グロブリン軽鎖または重鎖可変領域は、フレームワーク領域とその間に割り込んだ3つの超可変領域とからなる。「超可変領域」という用語は、本明細書では「相補性決定領域」(「CDR」)とも称され、抗体の、抗原への結合を担うアミノ酸残基を指す。CDRは、いくつかの公知の分析方法のいずれかに従って定義することができる。そのような方法の例としては、例えば、Kabat定義、Chothia定義、AbM定義および接触定義が挙げられる。Kabat定義が抗体の残基の番号付けの標準であり、CDR領域を識別するために典型的に使用される。例えば、Johnson & Wu, Nucleic Acids Res. 28: 214-8, 2000を参照されたい。Chothia定義はKabat定義と同様であるが、Chothia定義では、ある特定の構造的ループ領域の位置を考慮に入れる。例えば、Chothia et al., J. Mol. Biol. 196: 901-17, 1986;Chothia et al., Nature 342: 877-83, 1989を参照されたい。AbM定義では、抗体構造をモデル化する、Oxford Molecular Groupによって作製された一連の統合型コンピュータプログラムを使用する。例えば、Martin et al., 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 9268-9272, 1989;”AbMTM、A Computer Program for Modeling Variable Regions of Antibodies”, Oxford, UK; Oxford Molecular, Ltdを参照されたい。AbM定義では、知見データベースと、例えば、Samudrala et al., ”Ab Initio Protein Structure Prediction Using a Combined Hierarchical Approach,” in PROTEINS, Structure, Function and Genetics Suppl. 3:194-198, 1999.によって記載されているものなどのab initio方法の組合せを使用して抗体の三次構造を一次配列からモデル化する。接触定義は、入手可能な複雑な結晶構造の分析に基づく。例えば、MacCallum et al., J. Mol. Biol. 5: 732-45, 1996を参照されたい。VLドメインのCDR L1、L2、およびL3は、本明細書では、それぞれCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3とも称される;VHドメインのCDR H1、H2、およびH3は、本明細書では、それぞれCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3とも称される。
【0061】
「フレームワーク領域」は、超可変領域残基以外(例えば、CDRのKabat定義、Chothia定義、AbM定義、または接触定義によって定義されるCDRの残基以外)の可変ドメイン残基である。異なる軽鎖または重鎖のフレームワーク領域の配列は、種内で比較的保存されている。したがって、「ヒトフレームワーク領域」は、天然に存在するヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域と実質的に(約85%またはそれよりも大きく、通常は90~95%またはそれよりも大きく)同一であるフレームワーク領域である。抗体のフレームワーク領域は、構成物である軽鎖および重鎖のフレームワーク領域の組合せであり、CDRの位置を定め、それらを整列させる働きをする。
【0062】
「キメラ抗体」は、軽鎖および重鎖遺伝子が、典型的には遺伝子操作により、異なる種に属する免疫グロブリン可変領域および定常領域遺伝子から構築された抗体である。例えば、マウスモノクローナル抗体由来の遺伝子の可変セグメントを、ヒト定常領域をコードするセグメント(例えば、ヒトガンマ1またはガンマ3重鎖遺伝子、およびヒトカッパ軽鎖遺伝子)と接合することができる。したがって、治療用キメラ抗体は、典型的にはマウス抗体由来の可変ドメインまたは抗原結合性ドメインとヒト抗体由来の定常ドメインとで構成されるハイブリッドタンパク質であるが、他の哺乳動物種も使用することができる。具体的には、キメラ抗体は、組換えDNA技術によって作製され、免疫グロブリン軽鎖、重鎖、またはその両方のヒンジおよび定常領域の全部または一部が、別の動物の免疫グロブリン軽鎖または重鎖由来の対応する領域で置換されている。このように、親モノクローナル抗体の抗原結合性部分を別の種の抗体の骨格に移植する。キメラ抗体は、必要に応じて、露出している残基を置き換えることによってヒト様表面で「覆う」ことができ、その結果、「ベニア化抗体」が生じる。
【0063】
本明細書で使用される場合、「ヒト抗体」という用語は、ヒトにより産生されるおよび/または当業者に公知のもしくは本明細書に開示されるヒト抗体を作出するための技法のいずれかを使用して作出された抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体を意味する。このヒト抗体の定義は、ヒト重鎖ポリペプチドを少なくとも1つ含むまたはヒト軽鎖ポリペプチドを少なくとも1つ含む抗体を包含する。そのような例の1つは、マウス軽鎖とヒト重鎖ポリペプチドを含む抗体である。ヒト抗体は、当技術分野で公知の種々の技法を使用して作製することができる。一実施形態では、ヒト抗体をファージライブラリーから選択し、この場合、そのファージライブラリーはヒト抗体を発現するものである。例えば、Vaughan et al., Nature Biotechnology 14: 309-314, 1996;Sheets et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95: 6157-6162, 1998;Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol. 227: 381, 1991;Marks et al., J. Mol. Biol. 222: 581, 1991を参照されたい。ヒト抗体は、内在性遺伝子座の代わりにヒト免疫グロブリン遺伝子座が遺伝形質転換により(transgenically)導入された動物、例えば、内在性免疫グロブリン遺伝子が部分的にまたは完全に不活化されたマウスを免疫することによって作出することもできる。この手法は、例えば、米国特許第5,545,807号;同第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,661,016号;および同第7,041,870号に記載されている。あるいは、ヒト抗体は、標的抗原に対して向けられた抗体を産生するヒトBリンパ球を不死化することによって調製することができる(そのようなBリンパ球を個体から回収することができるか、またはin vitroで免疫されていてもよい)。例えば、Cole et al., ”Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy”, Alan R. Liss、p. 77, 1985;Boerner et al., J.
Immunol. 147: 86-95, 1991;および米国特許第5,750,373号を参照されたい。
【0064】
「ヒト化免疫グロブリン」という用語は、ヒトフレームワーク領域と非ヒト(例えば、マウスまたはラット)免疫グロブリン由来の1つまたは複数のCDRとを含む免疫グロブリンを指す。CDRを提供する非ヒト免疫グロブリンは「ドナー」と称され、フレームワークを提供するヒト免疫グロブリンは「アクセプター」と称される。定常領域は存在する必要はないが、存在する場合には、ヒト免疫グロブリン定常領域と実質的に同一である、すなわち、少なくとも約85~90%、好ましくは約95%またはそれよりも大きく同一である。したがって、できる限りCDR以外のヒト化免疫グロブリンの全ての部分が、天然のヒト免疫グロブリン配列の対応する部分と実質的に同一である。一部の場合には、ヒト化抗体は、相応の結合特徴を増強するために、ヒト可変領域フレームワークドメイン内に非ヒト残基を保持し得る(例えば、抗体がヒト化抗体である場合、結合親和性を保存するためにフレームワークの変異が必要になり得る)。「ヒト化抗体」は、ヒト化軽鎖免疫グロブリンおよび/またはヒト化重鎖免疫グロブリンを含む抗体である。例えば、上で定義された典型的なキメラ抗体は、例えば、キメラ抗体の可変領域全体が非ヒトである(または、ベニア化抗体の場合では実質的に非ヒトである)ので、ヒト化抗体には包含されない。
【0065】
「二重特異性」抗体は、それぞれが異なる特異性を有する2つの異なる抗原結合部位を有する抗体である。二重特異性抗体は、例えば、架橋剤との化学的コンジュゲーションによるもの、2つのハイブリドーマ株の体細胞融合によるもの(クアドローマ)、および遺伝子操作によるものを含めた種々の方法によって作製することができる。一般に、例えば、Sedykh et al., Drug Design, Development
and Therapy 12: 195-208, 2018を参照されたい。
【0066】
「ダイアボディ」という用語は、抗原結合部位を2つ有する小さな抗体断片を指し、この断片は、同じポリペプチド鎖内で接続した重鎖可変ドメイン(VH)と軽鎖可変ドメイン(VL)(VH-VL)を含む。同じ鎖上の2つのドメイン間の対形成を可能にするには短すぎるリンカーを使用することにより、これらのドメインは別の鎖の相補的なドメインと対形成するように強制され、抗原結合部位が2つ創出される。ダイアボディは、例えば、EP404,097;WO93/11161;およびHollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444-6448, 1993により詳細に記載されている。
【0067】
「ミニボディ」という用語は、本明細書では、天然に存在するまたは天然には存在しない(例えば、変異誘発された)重鎖可変ドメインもしくは軽鎖可変ドメイン、またはこれらの組合せの相補性決定領域(CDR)を2つしかコードしないポリペプチドを指す。ミニボディの例は、例えば、Pessi et al., Nature 362: 367-369, 1993;およびQiu et al., Nature Biotechnol. 25: 921-929, 2007によって記載されている。
【0068】
「直鎖状抗体」という用語は、Zapata et al., Protein Eng. 8:1057-1062, 1995に記載されている抗体を指す。簡単に述べると、これらの抗体は、抗原結合性領域の対を形成するタンデムなFdセグメントの対(VH-CH1-VH-CH1)を含む。直鎖状抗体は、二重特異性または単一特異性であり得る。
【0069】
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られた抗体を指す、すなわち、集団を構成する個々の抗体のアミノ酸配列が、微量に存在し得る可能性のある天然に存在する変異以外は同一である。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原部位に対して向けられる。さらに、典型的には異なる決定因子(エピトープ)に対して向けられた異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定因子に対して向けられる。「モノクローナル」という修飾語は、抗体の特質が、抗体の実質的に均一な集団から得られたものであることを示し、抗体の作製が任意の特定の方法によるものである必要があるとは解釈されない。例えば、本発明に従って使用するためのモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、例えば、Kohler and Milstein (Nature 256: 495, 1975)に最初に記載されたものなどによって作出することもでき、組換えDNA法、例えば、米国特許第4,816,567号に記載されているものなどによって作出することもできる。モノクローナル抗体はまた、例えば、McCafferty et al. (Nature 348: 552-554, 1990)に記載されている技法を使用して作製されたファージライブラリーから単離することもできる。
【0070】
本明細書における肝線維症、肺線維症、または腎線維症「を処置すること(treating)」または「の処置(treatment of」への言及は、肝線維症、肺線維症、または腎線維症に関連する種々の疾患または障害のいずれかに関する処置を含む。疾患または障害は、肝線維症、肺線維症、または腎線維症がその疾患または障害の病理の一部(例えば、疾患増悪の指標および/または肝臓、肺、もしくは腎臓の機能喪失の原因)であると臨床医に解釈される場合、肝線維症、肺線維症、または腎線維症「に関連する(associated with)」。これに関連して「病理」は、疾患または障害増悪の一部としての予測されたまたは実際の病理学的組織変化のいずれかとしての線維症を含み、したがって、肝線維症、肺線維症、または腎線維症に関連する疾患または障害を有し、本開示に従ってPSMPアンタゴニストの投与を受ける対象は、処置時に疾患または障害の実際の身体的顕在化として線維症を有していても有していなくてもよい。さらに、本明細書における、対象における肝線維症、肺線維症、または腎線維症を処置することおよび肝線維症、肺線維症、または腎線維症を疾患または障害「に関連する(associated with)」として特徴付けることへの言及は、処置される対象が特定の疾患または障害を有するかまたはそれが発生するリスクを有することを意味する。
【0071】
文脈により明確に別段の規定がなされない限り、本明細書における「疾患または障害」への一般的な言及は、肝線維症、肺線維症、腎線維症、移植片対宿主病(GVHD)、または全身性エリテマトーデス(SLE)、ならびに、肝線維症、肺線維症、または腎線維症(例えば、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、アルコール性肝疾患(ALD)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、原発性胆汁性胆管炎(PBC)、急性腎傷害(AKI)、慢性腎疾患(CKD)、ループス腎炎、IgA腎症、または膜性糸球体腎炎)に関連する特定の疾患または障害への言及を含む。
【0072】
「代替足場」という用語は、標的分子(例えば、PSMP)に特異的に結合する1つまたは複数の結合性ドメインが生じるように1つまたは複数の領域を多様化することができる非抗体タンパク質を指す。一部の実施形態では、結合性ドメインは、標的分子に抗体と同様の特異性および親和性で結合する。例示的な代替足場としては、フィブロネクチン(例えば、Adnectins(商標))、β-サンドイッチ(例えば、iMab)、リポカリン(例えば、Anticalins(登録商標))、EETI-II/AGRP、BPTI/LACI-D1/ITI-D2(例えば、Kunitzドメイン)、プロテインA(例えば、Affibody(登録商標))、アンキリンリピート(例えば、DARPins)、ガンマ-B-クリスタリン/ユビキチン(例えば、Affilins)、CTLD(例えば、Tetranectin)、Fynomer、およびAvimerに由来するものが挙げられる。代替足場に関する追加的な情報は、そのそれぞれの全体が参照によって組み込まれるBinz et al., Nat. Biotechnol. 23: 1257-1268, 2005;Skerra, Current Opin. in Biotech. 18: 295-304, 2007;およびSilacci et al., J. Biol. Chem. 289: 14392-14398, 2014において提供される。PSMPアンタゴニストとして機能するように(例えば、PSMPに特異的に結合し、それを中和することによって)操作された代替足場タンパク質は、本明細書では「代替足場PSMPアンタゴニスト」または「代替足場に基づくPSMPアンタゴニスト」と称することができる。
【0073】
「阻害性ポリヌクレオチド」は、第2の(標的)ポリヌクレオチド(例えば、PSMPをコードする遺伝子またはmRNA)の発現(転写または翻訳)を低減するかまたは妨げるDNA分子またはRNA分子である。阻害性ポリヌクレオチドとしては、アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、および外部ガイド配列が挙げられる。「阻害性ポリヌクレオチド」という用語は、リボザイムをコードするDNA分子などの、実際の阻害種をコードするDNA分子およびRNA分子をさらに含む。
【0074】
「処置する(treat)」および「処置(treatment)」という用語は、病理学的状態を好都合に変更する治療的介入および予防的介入を示すために広範に使用される。
【0075】
組成物の「有効量」という用語は、本明細書に記載の処置に関しては、任意の1つまたは複数の有益なまたは所望の結果をもたらすために十分な量である。予防的使用に関しては、有益なまたは所望の結果として、リスクの排除もしくは低減、重症度の緩和、または、疾患もしくは障害の生化学的、組織学的、および/もしくは理学的症状、その合併症、ならびに疾患もしくは障害の発生の間に存在する中間の病理学的表現型を含めた、疾患もしくは障害の発症(outset)の遅延が挙げられる。治療的使用に関しては、有益なまたは所望の結果として、疾患もしくは障害の1つもしくは複数の症状の好転もしくはその発生率の低下、疾患もしくは障害を処置するために必要な他の医薬の用量の減少、別の医薬の効果の増強、疾患もしくは障害の増悪の遅延、および/または患者の器官機能の改善を生じさせることなどの臨床結果が挙げられる。例えば、本明細書に記載の通り対象にPSMPアンタゴニストを投与することによる肝線維症、肺線維症、または腎線維症の処置に関しては、対象における線維症の発症を遅延させる、その重症度を低下させる、もしくはその増悪を低減するために十分であるか、または、対象における肝機能、肺機能、または腎機能の改善を生じさせるために十分である、そのような薬剤の量が、PSMPアンタゴニストの「有効量」とみなされる。
【0076】
有効な投与量は、1回または複数回の投与で施行することができる。有効量の組成物を本発明の方法に従って「有効なレジーム」で投与する。「有効なレジーム」という用語は、処置を実現するのに適した、投与される組成物の量と投与頻度の組合せを指す。本発明の目的に関しては、組成物の有効な投与量は、予防的または治療的処置を直接または間接的に実現するために十分な量である。臨床の場で理解されている通り、組成物の有効な投与量は、別の薬物組成物と併せて実現される場合もあり、そうでない場合もある。したがって、「有効量」は、1種または複数種の治療剤を投与する状況とみなすことができ、単一の薬剤は、1種または複数種の他の薬剤と併せて望ましい結果が実現され得るかまたは実現される場合、有効量で投薬されたとみなすことができる。
【0077】
「患者」または「対象」という用語は、本明細書に記載の疾患または障害の処置に関しては、例えば、ヒトおよび他の霊長類などの哺乳動物を含む。この用語はまた、飼育動物、例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、イヌ、およびネコなども含む。
【0078】
「併用療法」という用語は、指示された治療効果を実現するために少なくとも2種の別個の治療を提供することを伴う治療レジメンを指す。例えば、併用療法は、2種またはそれよりも多くの化学的に別個の活性成分、または薬剤、例えば、PSMPアンタゴニスト(例えば、抗PSMP抗体)と別の薬剤、例えば、別の抗炎症剤または抗線維化剤などを投与することを伴う。併用療法を構成する別個の治療は、例えば、同時の、重複する、または逐次的な投与レジメンとして送達することができる。2種またはそれよりも多くの化学的に別個の薬剤の投与に関しては、活性成分を同じ組成物の一部として投与することもでき、異なる組成物として投与することもできることが理解される。別の組成物として投与する場合、異なる活性成分を含む組成物を、同じ時間または異なる時間に、同じ経路または異なる経路で、同じ投与レジメンまたは異なる投与レジメンを使用して、全て特定の状況が必要とする通りに、ならびに主治医によって決定される通りに、投与することができる。
【0079】
本明細書において実施形態が「含む(comprising)」という言葉と共に記載されている場合は必ず、「からなる(consisting of)」および/または「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語で記載される、他の点では類似の実施形態も提供されることが理解される。
【0080】
「および/または」、例えば、「Xおよび/またはY」という用語は、「XおよびY」または「XまたはY」を意味すると理解されるものとし、両方の意味またはいずれかの意味に対する明示的な支持を提示するとみなされるものとする。
【0081】
本発明の態様または実施形態がマーカッシュ群または他の代替の群分けによって記載されている場合、本発明は、まとめて列挙されている群全体を包含するが、群の各メンバーも個別に包含し、かつ、主要群の可能性のある全てのサブグループを包含するだけでなく、群のメンバーのうちの1つまたは複数が存在しない主要群も包含する。本発明はまた、特許請求された発明における群のメンバーのいずれか1つまたは複数の明示的な除外も想定する。
【図面の簡単な説明】
【0082】
図1図1Aおよび1Bは、硬変のおよび付近の非腫瘍肝組織におけるPSMPの上方調節を例示する図である(実施例1を参照されたい)。免疫組織化学的検査を実施例6に記載の通り実施した。
【0083】
図2図2Aおよび2Bは、原因が異なるヒト肝臓線維化組織におけるPSMPの上方調節を例示する図である(実施例1を参照されたい)。免疫組織化学的検査を実施例6に記載の通り実施した。
【0084】
図3-1】図3A~3Dは、CClによって誘発される肝線維症のマウスモデルにおけるPSMPの上方調節を例示する図である(実施例1を参照されたい)。マウスCCl誘発肝線維症モデル、定量的リアルタイムPCRアッセイ(図3A)、サイトメトリックビーズアッセイ(CBA)(図3Bおよび3C)、および免疫組織化学的検査(図3D)を実施例6に記載の通り実施した。
図3-2】同上。
【0085】
図4図4Aおよび4Bは、胆管結紮によって誘発される肝線維症のマウスモデルにおけるPSMPの上方調節を例示する図である(実施例1を参照されたい)。マウスBDL肝線維症モデル、免疫組織化学的検査、および定量的リアルタイムPCRアッセイを実施例6に記載の通り実施した。
【0086】
図5-1】図5A~5Kは、CCl誘発線維症モデルを使用したPSMPノックアウトマウスにおける肝線維症からの保護を例示する図である(実施例2を参照されたい)。マウスCCl誘発肝線維症モデル、免疫組織化学的検査、免疫ブロッティング分析、ヒドロキシプロリンの決定、および定量的リアルタイムPCRアッセイを実施例6に記載の通り実施した。
図5-2】同上。
図5-3】同上。
図5-4】同上。
【0087】
図6-1】図6A~6Kは、BDL誘発線維症モデルを使用したPSMPノックアウトマウスにおける肝線維症からの保護を例示する図である(実施例2を参照されたい)。マウスBDL誘発肝線維症モデル、免疫組織化学的検査、免疫ブロッティング分析、ヒドロキシプロリンの決定、および定量的リアルタイムPCRアッセイを実施例6に記載の通り実施した。
図6-2】同上。
図6-3】同上。
図6-4】同上。
【0088】
図7-1】図7A~7Lは、CCl誘発線維症モデルにおける中和抗PSMP抗体の保護効果を例示する図である(実施例3を参照されたい)。マウスCCl誘発肝線維症モデル、抗体による処置、免疫組織化学的検査、免疫ブロッティング分析、ヒドロキシプロリンの決定、および定量的リアルタイムPCRアッセイを実施例6に記載の通り実施した。
図7-2】同上。
図7-3】同上。
図7-4】同上。
【0089】
図8-1】図8A~8Kは、CCl誘発線維症モデルにおける中和抗PSMP抗体の治療効果を例示する図である(実施例3を参照されたい)。マウスCCl誘発肝線維症モデル、抗体による処置、免疫組織化学的検査、ヒドロキシプロリンの決定、および定量的リアルタイムPCRアッセイを実施例6に記載の通り実施した。
図8-2】同上。
図8-3】同上。
図8-4】同上。
【0090】
図9-1】図9A~9Lは、CCl誘発線維症モデルにおける中和抗PSMP抗体の用量依存的な治療効果を例示する図である(実施例3を参照されたい)。マウスCCl誘発肝線維症モデル、抗体による処置、免疫組織化学的検査、免疫ブロッティング分析、ヒドロキシプロリンの決定、および定量的リアルタイムPCRアッセイを実施例6に記載の通り実施した。
図9-2】同上。
図9-3】同上。
図9-4】同上。
【0091】
図10-1】図10A~10Lは、PSMPノックアウトマウスにおいてPSMP発現を回復させ、肝線維症を促進するための、AAV8-hPSMPベクターの使用を例示する図である(実施例4を参照されたい)。マウスCCl誘発肝線維症モデル、AAV8の構築および注射、免疫組織化学的検査、ヒドロキシプロリンの決定、ならびに定量的リアルタイムPCRアッセイを実施例6に記載の通り実施した。
図10-2】同上。
図10-3】同上。
図10-4】同上。
【0092】
図11-1】図11A~11Nは、肝臓免疫細胞および炎症促進性サイトカイン産生に対するPSMP欠乏の影響を例示する図である(実施例5を参照されたい)。CClを用いて処置したPSMPノックアウトマウスでは、肝臓マクロファージ浸潤の低減(フローサイトメトリーによって決定された;図11A~11E)および炎症促進性サイトカイン産生の低減(サイトメトリックビーズアッセイ(CBA)によって決定された;図11K-11N)が観察された。好中球、B細胞、およびT細胞などの他の免疫細胞を、フローサイトメトリーを使用して調査し、影響を受けないことが見いだされた(図11F~11J)。マウスCCl誘発肝線維症モデル、フローサイトメトリー、およびCBAを実施例6に記載の通り実施した。
図11-2】同上。
図11-3】同上。
図11-4】同上。
図11-5】同上。
【0093】
図12-1】図12A~12Gは、ブレオマイシンマウスモデルにおける肺線維症の間のPSMPの上方調節およびPSMP欠乏の影響を例示する図である。実施例7を参照されたい。肺およびBALFにおけるPSMPタンパク質レベルをサイトカインビーズアッセイによって測定した(図12Aおよび12B)。図12Cは、PSMPの代表的な肺免疫組織化学染色を示す。体重指数を14日間測定した(図12D)。図12Eは、マッソントリクローム染色の代表的な肺組織学的検査を示す。α-SMAの発現を免疫組織化学的検査によって決定した(図12F)。図12Gは、正常なヒト肺および気道線維症のヒト肺におけるPSMPの代表的な免疫組織化学染色を示す。スケールバー、100μm。、P<0.05;**、p<0.01、n≧6/群。
図12-2】同上。
図12-3】同上。
【0094】
図13図13は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)のマウスモデルにおけるPSMPノックアウトマウスにおける線維症の低減を例示する図である。実施例8を参照されたい。
【0095】
図14図14は、急性GVHD(aGVHD)マウスモデルにおける中和抗PSMP抗体の治療効果(生存時間の延長)を例示するグラフである。実施例9を参照されたい。
【0096】
図15-1】図15A~15Kは、慢性エタノール給餌モデルにおける中和抗PSMP抗体の治療効果を例示する図である。実施例10を参照されたい。図15Aは、慢性エタノール給餌マウスモデルにおけるPSMP中和抗体3D5またはPBSによる処置の実験設計に関する概略図を示す。血清トリグリセリドおよびコレステロールを測定した(図15Bおよび15C)。肝臓組織学的検査を、H&E染色およびオイルレッド染色(図15Dおよび15E)ならびにオイルレッド陽性領域の定量(図15F)によって実施した。肝臓PparaおよびSrebp-1のmRNAレベルをRT-qPCRによって測定した(図15Gおよび15H)。さらなる肝臓組織学的検査をシリウスレッド染色およびその定量によって実施した(図15Iおよび図15J)。肝臓非実質細胞を染色し、フローサイトメトリーによって分析した。浸潤マクロファージ(iMΦ、CD45Ly6GF4/80CD11bhigh)をフローサイトメトリー分析によって定量した(図15K)。(スケールバー、100μm/50μm。、P<0.05;**、p<0.01、一元配置ANOVAによる、n=3~11/群)。
図15-2】同上。
図15-3】同上。
図15-4】同上。
図15-5】同上。
図15-6】同上。
【0097】
図15-7】図15L~15Tは、慢性+過度のアルコール給餌モデルにおける中和抗PSMP抗体の治療効果を例示する図である。実施例10を参照されたい。図15Lは、当該モデルにおけるPSMP中和抗体3D5またはPBSによる処置の実験設計に関する概略図を示す。肝臓中トリグリセリドおよびコレステロールを測定した(図15Mおよび15N)。図15Oは、PBSで処置したマウスおよび3D5で処置したマウス由来の肝組織の代表的なH&E染色を示す。肝臓非実質細胞を染色し、フローサイトメトリーによって分析した。浸潤マクロファージ(iMΦ、CD45Ly6GF4/80CD11bhigh)をフローサイトメトリー分析によって定量した(図15P)。図15Qおよび15Rは、WTマウスおよびPsmp-/-マウス由来の肝組織の代表的なH&E染色(15Q)およびオイルレッドO染色(15R)を示す。ALTの血清中レベルを測定した(図15S)。肝臓Srebp-1およびPparaのmRNAレベルをRT-qPCRによって測定した(図15Tおよび15U)。スケールバー、50μm。、P<0.05;**、p<0.01、一元配置ANOVAによる、n≧4/群。
図15-8】同上。
図15-9】同上。
図15-10】同上。
図15-11】同上。
【0098】
図16図16A~16Cは、マウス肝傷害および線維症におけるPSMPの発現を例示する図である。実施例11を参照されたい。DDC食またはAPAPを用いて処置したWTマウス(白棒)およびPsmp-/-マウス(黒棒)を使用し、PSMPに関する肝臓の免疫組織化学染色(図16A)およびqRT-PCRによるPSMP mRNAレベルの測定(図16Bおよび16C)を実施した。
【0099】
図17-1】図17A~17Iは、DDCマウスにおけるPSMP欠乏の肝線維症からの保護効果を例示する図である。実施例12を参照されたい。WTマウスおよびPsmp-/-マウスに、4週間にわたってDDCを給餌した。肝臓組織学的検査をH&E染色およびシリウスレッド染色(図17A)ならびにその定量(図17Bおよび17C)によって実施した。α-SMAの発現を免疫組織化学的検査およびウエスタンブロッティングによって決定した(図17Aおよび17D)。線維形成遺伝子の肝臓mRNAレベルをqRT-PCRによって測定した(図17E~17I)。
図17-2】同上。
図17-3】同上。
【0100】
図18-1】図18A~18Gは、マウスDDC誘発肝線維症に対する中和抗PSMP抗体の効果を例示する図である。実施例13を参照されたい。図18Aは、マウスにおけるPSMP中和抗体3D5またはmIgGによる処置の実験設計に関する概略図を示す。肝臓組織学的検査を、H&E染色およびシリウスレッド染色(図18B)ならびにその定量(図18Cおよび18D)によって実施した。α-SMAの発現を免疫組織化学的検査およびウエスタンブロッティングによって決定した(図18Bおよび18E)。線維形成遺伝子の肝臓mRNAレベルをqRT-PCRによって測定した(図18Fおよび18G)。
図18-2】同上。
図18-3】同上。
【0101】
図19-1】図19A~19Gは、MCDマウスにおけるPSMP欠乏の肝線維症からの保護効果を例示する図である。実施例14を参照されたい。WTマウスおよびPsmp-/-マウスに6週間にわたってMCDを給餌した。図19Aは、WTマウスにおける代表的なPSMPに関する肝臓の免疫組織化学染色を示す。肝臓組織学的検査を、H&E染色およびシリウスレッド染色(図19B)ならびにその定量(図19Cおよび19D)によって実施した。線維形成遺伝子の肝臓mRNAレベルをqRT-PCRによって測定した(図19E~19G)。
図19-2】同上。
図19-3】同上。
【0102】
図20-1】図20A~20Dは、マウスMCD食誘発肝線維症に対する中和抗PSMP抗体の効果を例示する図である(第4週から第5.5週までの処置)。実施例15を参照されたい。図20Aは、マウスにおけるPSMP中和抗体3D5またはPBSによる処置の実験設計に関する概略図を示す。肝臓組織学的検査を、H&E染色およびシリウスレッド染色(図20B)ならびにその定量(図20Cおよび20D)によって実施した。(スケールバー、100μm。**、P<0.01;***、P<0.001、スチューデントのt検定による、n=5/群)。
図20-2】同上。
【0103】
図20-3】図20E~20Iは、マウスMCD食誘発肝線維症に対する中和抗PSMP抗体の効果を例示する図である(第5週から第8週までの処置)。実施例15を参照されたい。図20Eは、マウスにおけるPSMP中和抗体3D5またはPBSによる処置の実験設計に関する概略図を示す。肝臓組織学的検査を、シリウスレッドおよびα-SMA免疫組織化学染色(図20F)ならびにその定量(図20G~20I)によって実施した。(スケールバー、100μm。**、P<0.01、スチューデントt検定による、対照、n=3;MCD-PBS、n=6;MCD-3D5、n=5)。
図20-4】同上。
【0104】
図21-1】図21Aおよび21Bは、異なる腎疾患組織におけるPSMP発現を例示する図である。実施例16を参照されたい。図21Aは、付近の明細胞癌からのヒト正常腎組織、LN腎組織およびIgAN腎組織におけるPSMPの代表的な免疫組織化学染色を示す。図21Bは、異なる腎疾患におけるPSMP免疫染色の統計学的要約を示す。LN:ループス腎炎、IgAN:IgA腎症、MGN:膜性糸球体腎炎。スケールバー、100μm。**、p<0.01;***、p<0.001、スチューデントt検定による。
【0105】
図21-2】図21C~21Eは、急性腎傷害(AKI)のマウスモデルにおけるPSMP欠乏の影響または中和を例示する図である。実施例16を参照されたい。図21Cは、Psmp-/-またはWTマウスにおけるグリセロールの注射の48時間後の血清中クレアチニンレベルを示す。図21Dおよび21Eは、PSMP中和抗体3D5またはPBSを注射したマウスにおけるグリセロールの注射の48時間後の血清中クレアチニンレベル(21D)およびBUNレベル(21E)を示す。、P<0.05、スチューデントt検定による、n=4~6/群。
【0106】
図21-3】図21F~21Hは、慢性腎疾患(CKD)のマウスモデルにおける中和抗PSMP抗体の治療効果を例示する図である。実施例16を参照されたい。図21Fは、UUOマウスにおけるPSMP中和抗体3D5またはPBSによる処置の実験設計に関する概略図を示す。図21Gおよび21Hは、シリウスレッド染色(21G)による代表的な腎臓組織学的検査、およびその定量(21H;灰色の棒-3D5処置群、黒色の棒-PBS処置群)を示す。スケールバー、100μm。、P<0.05、スチューデントt検定による、n=4~6/群。
図21-4】同上。
図21-5】同上。
【0107】
図22-1】図22A~22Dは、慢性GVHD(cGVHD)マウスモデルにおける中和抗PSMP抗体の治療効果を例示する図である。実施例17を参照されたい。図22Aは、経時的にモニタリングした体重を示す。図22Bは、抗PSMP抗体3D5を用いて処置したマウスと比較した、対照群における毛皮の脱落(fur shedding)を示す。肝損傷、ALTおよびASTの血清マーカーを測定した(図22Cおよび22D)。、P<0.05;**、p<0.01、スチューデントt検定による、n≧6/群。
図22-2】同上。
【0108】
図23-1】図23A~23Cは、ループス腎炎マウスモデルにおける中和抗PSMP抗体の治療効果を例示する図である。実施例18を参照されたい。腎機能マーカーである血清中クレアチニン(図23A)および血中尿素窒素(BUN)(図23B)、血清総IgGレベル(図23C)、ならびに糸球体内の自己抗体沈着(図23D)を測定した。スケールバー、100μm。、P<0.05;**、p<0.01、スチューデントt検定による、n≧6/群。
図23-2】同上。
【発明を実施するための形態】
【0109】
本発明は、一般に、疾患を処置するための、例えば中和抗PSMP抗体を含めたPSMPアンタゴニストの使用を対象とする。具体的には、一部の態様では、本発明は、肝線維症を処置するための、PSMPアンタゴニストの使用に関する。他の態様では、本発明は、肺線維症を処置するための、PSMPアンタゴニストの使用に関する。他の態様では、本発明は、腎線維症を処置するための、PSMPアンタゴニストの使用に関する。さらに他の態様では、本発明は、肝線維症、肺線維症、または腎線維症に関連する疾患または障害、例えば、非アルコール性脂肪性肝疾患(例えば、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH))、アルコール性肝疾患(ALD)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、原発性胆汁性胆管炎(PBC)、薬物誘発肺傷害、急性腎傷害(AKI)、慢性腎疾患(CKD)、ループス腎炎、IgA腎症、および膜性糸球体腎炎から選択される疾患または障害などを処置するための、PSMPアンタゴニストの使用に関する。さらに他の態様では、本発明は、移植片対宿主病(GVHD)または全身性エリテマトーデスを処置するためのPSMPアンタゴニストの使用に関する。
【0110】
本明細書に記載の研究により、PSMPシグナル伝達が肝線維症、肺線維症、および腎線維症の病理発生に関与すること、ならびにin vivoにおいてPSMPを遮断することにより、疾患モデルにおける線維症を好転させることができることが示される。具体的には、本発明者らは、ヒト肝線維症およびマウス肝線維症においてPSMP発現が上方調節されることを見いだした(実施例1を参照されたい)。PSMPノックアウトマウスおよび肝線維症モデルを使用して、本発明者らは、PSMP欠乏により肝線維症の発生が有意に減弱すること(実施例2を参照されたい)、肝臓PSMP発現の回復により、肝線維症がCCR2依存的に促進されること(実施例4を参照されたい)、および、予防的または治療的処置レジメンのいずれかを使用してPSMPシグナル伝達を中和することによって肝線維症が有意に好転すること(実施例3を参照されたい)も示した。さらに、本発明者らは、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)のモデルにおいて線維症を確立するためにはPSMPが必要であること(実施例8を参照されたい)、MCD食誘発NASHモデルにおいて、PSMP欠乏により肝線維症からの保護がもたらされること(実施例14を参照されたい)、および、MCD食誘発NASHモデルにおいてPSMPを中和することにより、肝線維症が緩和されること(実施例15を参照されたい)も示した。本発明者らは、PSMPの中和または欠乏により、慢性エタノール給餌モデルにおける脂肪肝(liver steatosis)および肝線維症が緩和され、また、慢性+過度のアルコール給餌モデル(NIAAAモデルとも称される)における脂肪肝、肝傷害、および炎症が緩和されることも見いだした(実施例10を参照されたい)。本明細書に記載の研究により、DDC食誘発肝線維症モデルおよび急性肝傷害モデルにおいてPSMPが上方調節されること(実施例11を参照されたい)、DDCモデルにおいて、PSMP欠乏により、肝線維症からの保護がもたらされること(実施例12を参照されたい)、ならびに、PSMPを中和することにより、マウスDDC誘発肝線維症が緩和されること(実施例13を参照されたい)も示される。さらにまた、本明細書に記載の研究により、肺線維症のブレオマイシン誘発モデルにおいてPSMPが上方調節されること、このモデルにおけるPSMP欠乏により肺線維症からの保護がもたらされること、および、PSMPシグナル伝達の中和により、このモデルにおける肺線維症が緩和されることが示される(実施例7を参照されたい)。
【0111】
本発明者らは、ヒト腎疾患においてPSMP発現が上方調節されること、グリセロール誘発横紋筋融解症モデルにおいて、PSMPの欠乏および中和により、腎傷害が緩和されること、ならびに、急性腎傷害(AKI)および慢性腎疾患のUUO誘発モデルにおいて、PSMPの中和により腎線維症が緩和されることも見いだした(実施例16を参照されたい)。
【0112】
本発明者らは、急性GVHDマウスモデルにおける生存の延長によって(実施例9を参照されたい)、ならびに慢性GVHDモデルにおける毛皮の脱落の欠如および有意に低いレベルの肝損傷マーカー(実施例17を参照されたい)によって示される通り、PSMPを中和することにより、移植片対宿主病を有効に処置することができることも見いだした。
【0113】
本発明者らは、マウスループスモデルにおける腎機能の改善、血清IgGレベルの低下、および糸球体内の自己抗体沈着の低減によって示される通り、PSMPを中和することにより、全身性エリテマトーデス(SLE)の一般的な顕在化であるループス腎炎を有効に処置することができることも見いだした(実施例18を参照されたい)。
【0114】
本発明の範囲内での使用のためのPSMPアンタゴニストとしては、例えば、PSMP受容体、例えばCCR2などを発現する細胞においてPSMPに結合し、PSMPの活性を低下させる分子が挙げられる。特に適切なPSMPアンタゴニストとしては、中和抗PSMP抗体が挙げられる。適切なPSMPアンタゴニストとしては、例えば、PSMPに特異的に結合し、それを中和する代替足場タンパク質およびペプチドアプタマーを含めた、PSMPとその受容体の相互作用を阻害することができる非抗体可溶性タンパク質も挙げられる。一部の実施形態では、PSMPアンタゴニストは、PSMPに特異的に結合し、それを中和する核酸アプタマーである。他の変形形態では、PSMPとその受容体の相互作用を阻害することができるか、または他のやり方でPSMP受容体を通じたPSMP誘導性細胞内シグナル伝達を阻害することができる小分子アンタゴニストを用いることができる。PSMP遺伝子またはPSMPをコードするmRNAを標的とする阻害性ポリヌクレオチドも使用することができる。
【0115】
候補PSMPアンタゴニスト(例えば、抗体または他の可溶性結合性タンパク質)の中和活性を、例えば、PSMP受容体を発現する細胞を使用した走化性アッセイにおいて評価することができる。例えば、走化性アッセイでは、ヒトCCR2のアイソフォーム(CCR2Aおよび/またはCCR2B、それぞれ配列番号2および配列番号3に示されるアミノ酸配列)のいずれかまたは両方を発現する細胞を利用することができる。CCR2発現細胞を利用する走化性アッセイは当技術分野で公知である。例えば、Pei et al., J. Immunol. 192: 1878-86, 2014を参照されたい。1つの例示的なアッセイでは、CCR2B(配列番号3)を発現するプラスミド(10μg)をHEK293細胞に電気パルス発生装置を使用した電気穿孔(120Vで20ms)によって一過性にトランスフェクトする。48時間後、CCR2Bを発現するHEK293細胞を、48ウェルマイクロ走化性チャンバーを使用した走化性アッセイに使用する。PSMP(配列番号1の残基37~139)(7ng/ml、70ng/ml、または700ng/ml)を候補PSMPアンタゴニスト(10または50μg/ml)で30分間にわたって前処理する。フィルターの下部に遊走する細胞を固定し、Three
Step Stain Setを用いて染色する。ウェル当たり5つのランダムに選択した強拡大視野(×400)で細胞を計数する。候補アンタゴニストの存在下での、CCR2Bを発現するHEK293細胞に向かうPSMPの走化能を、候補アンタゴニストの非存在下での走化能と比べて評価して、候補がPSMP活性の中和に有効であるかどうかを決定する。
【0116】
一部の実施形態では、本発明によるPSMPアンタゴニストは、PSMP(配列番号1の残基37~139)に特異的に結合する可溶性タンパク質(例えば、抗体)である。結合性タンパク質は、(1)閾値レベルの結合活性を示し、かつ(2)対照ポリペプチド分子と有意に交差反応しない場合、特異的に結合するとみなされる。例えば、結合の閾値レベルは、タンパク質がPSMPポリペプチド、ペプチドまたはエピトープに、対照(非PSMP)ポリペプチドに対する結合親和性の少なくとも10倍の親和性で結合する場合に決定される。本発明の範囲内で使用される結合性タンパク質(例えば、抗体)は、10-1またはそれよりも大きい、好ましくは10-1またはそれよりも大きい、より好ましくは10-1またはそれよりも大きい、最も好ましくは10-1またはそれよりも大きい結合親和性(K)を示すことが好ましい。
【0117】
可溶性結合性タンパク質(例えば、抗体)を、結合活性について種々の公知のアッセイのいずれかを使用して評価することができる。例えば、1つのアッセイシステムでは、市販のバイオセンサー機器(BIAcore(商標)、Pharmacia Biosensor、Piscataway、NJ)を用いるが、その場合、結合性タンパク質(例えば、抗PSMP抗体)をセンサーチップの表面に固定し、可溶性標的分子(例えば、PSMP)を含有する試験試料に、セルを通過させる。固定されたタンパク質が標的分子に対する親和性を有する場合、標的に結合し、媒体の屈折率の変化を引き起こし、これが金フィルムの表面プラズモン共鳴の変化として検出される。このシステムにより、会合速度および解離速度を決定し、それらから結合親和性を算出することができ、結合のストイキオメトリーを評価することが可能になる。この機器の使用は、例えば、Karlsson ( J. Immunol. Methods 145: 229-240, 1991)およびCunningham and Wells (J. Mol. Biol. 234: 554-563, 1993)によって開示されている。候補タンパク質分子の結合活性を当技術分野で公知の他のアッセイシステムの範囲内で使用することもできる。そのようなシステムとしては、結合親和性を決定するためのスキャッチャード分析(Scatchard, Ann. NY Acad. Sci. 51: 660-672, 1949を参照されたい)および熱量測定アッセイ(Cunningham et al., Science 253: 545-548, 1991;Cunningham et al., Science 254: 821-825, 1991を参照されたい)が挙げられる。
【0118】
ある特定の実施形態では、PSMPアンタゴニストは、モノクローナル抗体3D5と同じ重鎖および軽鎖可変ドメイン(VHおよびVL)を有する抗体とPSMP(配列番号1の残基37~139)への結合について競合する可溶性タンパク質(例えば、抗体)である。mAb 3D5 VHドメインおよびVLドメインのアミノ酸配列は、本明細書ではそれぞれ配列番号4および配列番号5として示されている。mAb 3D5は、PSMP活性を有効に中和することが示されている。Pei et al., J. Immunol. 192: 1878-86, 2014を参照されたい;実施例3、下記も参照されたい。mAb 3D5のVHドメインおよびVLドメインを有する抗体とPSMPへの結合に関して競合するPSMP結合性タンパク質の能力は、試験PSMP結合性タンパク質(例えば、抗体)またはその機能的結合性断片により、mAb 3D5のVHドメインおよびVLドメインを有する参照抗体(すなわち、それぞれ配列番号4および配列番号5のVHドメインおよびVLドメインを有する)のPSMPへの特異的結合を妨げるかまたは阻害するアッセイによって決定することができる。典型的には、そのようなアッセイは、標的タンパク質、標識されていない試験タンパク質(すなわち、PSMP結合性タンパク質または候補PSMP結合性タンパク質)、および標識された参照抗体を担持する固体表面または細胞に結合させた精製された標的タンパク質(例えば、配列番号1の残基37~139またはその断片)の使用を伴う。競合阻害は、試験タンパク質の存在下で固体表面または細胞に結合した標識の量を決定することによって測定される。通常、試験タンパク質を過剰に存在させ、かつ/または最初に結合させる。競合アッセイによって同定される可溶性PSMP結合性タンパク質(「競合PSMP結合性タンパク質」)としては、参照抗体が結合するものと同じエピトープに結合するタンパク質、参照抗体が結合するエピトープと重複するエピトープに結合するタンパク質、および参照抗体が結合するエピトープと、立体的障害が生じるのに十分な近位にあるエピトープに結合するタンパク質が挙げられる。通常、競合PSMP結合性タンパク質(例えば、競合抗PSMP抗体)が過剰に存在する場合、競合PSMP結合性タンパク質(例えば、競合抗PSMP抗体)は、参照抗体のPSMP標的タンパク質への特異的結合を少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、または少なくとも75%阻害し、一部の場合では、結合は、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、またはそれよりも大きく阻害される。逆に、参照抗体が結合する場合、参照抗体は、その後添加された競合PSMP結合性タンパク質(例えば、競合抗PSMP抗体)の結合を少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、または少なくとも75%阻害することが好ましく、一部の場合では、結合は、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、またはそれよりも大きく阻害される。
【0119】
ある特定の好ましい実施形態では、本発明に従って使用するためのPSMPアンタゴニストは、抗体である。本発明による抗体は、抗原結合特異性を保持するインタクトな抗体の少なくとも一部分を含む、またはそれからなる。適切な抗体としては、例えば、完全ヒト抗体;ヒト化抗体;キメラ抗体;抗体断片、例えば、Fab、Fab’、F(ab)、F(ab’)およびFv抗体断片など;単鎖抗体;ならびに抗体重鎖もしくは軽鎖の単量体もしくは二量体またはそれらの混合物が挙げられる。本発明の好ましい抗体は、モノクローナル抗体である。軽鎖を含む抗体は、カッパまたはラムダ軽鎖を含み得る。
【0120】
ある特定の実施形態では、本発明の抗体は、IgA、IgG、IgE、IgD、またはIgM(そのサブタイプを含む)を含む任意のアイソタイプのインタクトな免疫グロブリンを含む。本発明によるインタクトな免疫グロブリンは、インタクトなIgG(例えば、インタクトなIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4)を含むことが好ましい。
【0121】
ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、およびそれらの抗原結合性抗体断片を調製および単離するための方法は当技術分野で周知である。例えば、Current Protocols in Immunology, (Cooligan et al. eds., John Wiley and Sons, Inc. 2006);Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor, NY, 2nd ed. 1989);およびMonoclonal Hybridoma Antibodies: Techniques and Applications (Hurrell ed., CRC Press, Inc., Boca Raton, FL, 1982)を参照されたい。scFvを含めた抗原結合性断片は、例えば、当技術分野で公知の方法に従ってファージディスプレイライブラリーを使用して調製することができる。組換えヒトポリクローナル抗体を調製するための方法は、Wiberg et al., Biotechnol Bioeng. 94: 396-405, 2006;Meijer et al., J. Mol. Biol. 358: 764-772, 2006;Haurum et al.、米国特許出願公開第2002/0009453号;およびHaurum et al.、米国特許出願公開第2005/0180967号に開示されている。当業者には明らかになる通り、これらの方法は、PSMPに対する抗体の作製に同等に適用可能である。
【0122】
当業者には明らかになる通り、本発明の範囲内で使用するためのポリクローナル抗体は、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ニワトリ、ウサギ、マウス、およびラットなどの種々の温血動物のいずれかに免疫原性ポリペプチドまたはポリペプチド断片を接種することによって生成することができる。免疫原性ポリペプチドの免疫原性は、アラム(水酸化アルミニウム)またはフロイント完全アジュバントもしくは不完全アジュバントなどのアジュバントを使用することによって増加させることができる。免疫に有用なポリペプチドとしては、PSMPと免疫グロブリンポリペプチドとの融合物またはPSMPとマルトース結合性タンパク質との融合物などの融合ポリペプチドも挙げられる。ポリペプチド免疫原は、全長分子またはその一部であり得る。ポリペプチド部分がハプテン様である場合、免疫のために高分子担体(例えば、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、ウシ血清アルブミン(BSA)または破傷風トキソイドなど)に有利に接合または連結することができる。
【0123】
さらに、抗体を、抗体標的に関連する既知のポリペプチド(例えば、PSMPのオルソログ、パラログ、または配列バリアント)に対してスクリーニングして、標的タンパク質への結合に関して高度に特異的な抗体の集団を単離することができる。そのような、関連するポリペプチド分子との交差反応性がないことは、例えば、標準のウエスタンブロット分析(Current Protocols in Molecular Biology (Ausubel et al. eds., Green and Wiley and Sons, NY 1993))またはELISA(酵素イムノアッセイ)(Immunoassay, A Practical Guide (Chan ed.,
Academic Press, Inc. 1987))を使用して、抗体によりPSMPポリペプチドは検出されるが、既知の関連するポリペプチドは検出されないことによって示される。別の例では、PSMPポリペプチドに対して生じた抗体を、不溶性マトリックスに接着させた関連するポリペプチドに吸着させる;PSMPポリペプチドに対して高度に特異的な抗体は、相応のバッファー条件下でマトリックスを素通りする。スクリーニングにより、既知の密接に関連するポリペプチドに対して非交差反応性のポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を単離することが可能になる(Antibodies: A Laboratory Manual (Harlow and Lane eds., Cold Spring Harbor Laboratory Press
1988);Current Protocols in Immunology (Cooligan et al. eds., National Institutes of Health, John Wiley and Sons, Inc. 1995))。特異的抗体のスクリーニングおよび単離は当技術分野において周知である。Fundamental Immunology (Paul ed., Raven Press 1993);Getzoff et al., Adv. in Immunol. 43: 1-98, 1988;Monoclonal Antibodies: Principles and Practice (Goding ed., Academic Press Ltd. 1996);Benjamin et al., Ann. Rev. Immunol. 2: 67-101, 1984を参照されたい。
【0124】
ネイティブなモノクローナル抗体(「mAb」)は、例えば、対象動物(例えば、ラットまたはマウス)を精製された免疫原性タンパク質またはその断片を用いて免疫することによって調製することができる。典型的な手順では、動物それぞれに、精製されたタンパク質または断片の最初の腹腔内(IP)注射を、典型的にはアジュバント(例えば、完全フロイントアジュバントまたはRIBIアジュバント(Sigma-Aldrich,St、Louis、MOから入手可能))と組み合わせて行い、その後、精製されたタンパク質による追加免疫IP注射を、例えば2週間の間隔で行う。第3の追加免疫注射の投与の7~10日後に、動物から採血し、血清を収集する。必要な場合、さらなる追加免疫を行うことができる。力価が高い動物から脾細胞およびリンパ節細胞を回収し、骨髄腫細胞(例えば、マウスSP2/0またはAg8細胞)と従来の方法を使用して融合する。次いで、融合混合物を胸腺細胞のフィーダー層上で培養するか、または妥当な培地補充物質(Hybridoma Fusion and Cloning Supplement;Roche Diagnostics、Indianapolis、INなどの市販の補充物質を含む)を用いて培養する。融合の約10日後に、標準のアッセイ(例えば、ELISA)を使用して特異的抗体を産生するハイブリドーマプールを同定する。陽性プールを、標的タンパク質の活性を遮断するかまたは低下させるそれらの能力についてさらに分析することができる。陽性プールを限界希釈によってクローニングする。
【0125】
ネイティブな抗体のアミノ酸配列は、組換えDNA技法を適用することによって変えることができる。したがって、抗体を再設計して所望の特徴を得ることができる。改変された抗体は、例えば、その改変されていない形態と比べて安定性および/または治療有効性の改善をもたらすことができるものである。可能性のあるバリエーションは多数あり、ただ1つまたは少数のアミノ酸の変化から、例えば可変領域または定常領域の完全な再設計までにわたる。定常領域の変化は、一般に、補体結合、膜との相互作用、および他のエフェクター機能などの特徴を改善するかまたは変更するために行われる。特徴(例えば、エフェクター機能)を変更させるための定常領域の種々の変化が公知である。例えば、Morgan et al., Immunology 86: 319-324, 1995;Lund et al., J. Immunol. 157: 4963-9 157: 4963-4969, 1996;Idusogie et al., J. Immunol. 164: 4178-4184, 2000;Tao et al., J. Immunol. 143: 2595-2601, 1989;Jefferis et al., Immunological Reviews 163: 59-76, 1998;Armour et al., Eur. J. Immunol., 29: 2613-2624, 1999;PCT出願第PCT/GB99/01441号;UK特許出願第9809951.8号を参照されたい。典型的には、可変領域の変化は、抗原結合性特徴を改善するため、可変領域の安定性を改善するため、または免疫原性のリスクを低減するために行われる。ファージディスプレイ技法を用いることもできる。例えば、Huse et al., Science 246: 1275-1281, 1989;Ladner et al.、米国特許第5,571,698号を参照されたい。
【0126】
ヒトに使用するための治療用抗体に関しては、通常、抗体の非ヒト領域を公知の手順に従ってヒト化することが望ましい。ヒト化抗体を作出する方法は、例えば、米国特許第5,530,101号;同第5,821,337号;同第5,585,089号;同第5,693,762号;および同第6,180,370号に開示されている。ヒト化抗体を作出する方法は、例えば、米国特許第7,732,578号にも開示されている。典型的には、ヒト化抗PSMP抗体は、マウスドナー免疫グロブリンの相補性決定領域(CDR)とヒトアクセプター免疫グロブリンの重鎖および軽鎖フレームワークとを含む。多くの場合、変更する、好ましくは抗原結合を改善するために、ヒトフレームワーク領域内のフレームワーク残基をドナー抗体由来の対応する残基で置換する。これらのフレームワーク置換は、当技術分野で周知の方法によって、例えば、CDRとフレームワーク残基の相互作用をモデル化して抗原結合のために重要なフレームワーク残基を同定し、配列を比較して、特定の位置における普通でないフレームワーク残基を同定することによって同定される。例えば、Queen et al.、米国特許第5,585,089号;Riechmann et al., Nature 332: 323, 1988を参照されたい。
【0127】
非ヒト化キメラ抗体を治療的に使用することもできる(例えば、免疫抑制された患者において)。したがって、一部の変形形態では、本発明に従って使用するための抗体は、とりわけ、非ヒト抗PSMP抗体に由来するキメラ抗体である。好ましくは、キメラ抗体は、マウスまたはラット抗体に由来する可変領域およびヒトに由来する定常領域を含み、したがって、キメラ抗体は、ヒト対象に投与された場合に、より長い半減期を有し、免疫原性が低い。キメラ抗体を作製するための方法は当技術分野で公知である。例えば、Morrison, Science 229: 1202, 1985;Oi et al., BioTechniques 4: 214, 1986;Gillies et al., J. Immunol. Methods 125: 191-202, 1989;米国特許第5,807,715号;同第4,816,567号;および同第4,816,397号を参照されたい。
【0128】
本発明は、例えばヒト抗体発現ライブラリー(例えば、ファージディスプレイライブラリー)から選択されるもの;ヒト重鎖遺伝子座およびヒト軽鎖遺伝子座に関してトランスジェニックであり、対応する内在性免疫グロブリン遺伝子座が不活化されている非ヒト動物(例えば、マウス)において作出されるもの;またはPSMP標的抗原に対する抗体を産生するヒトBリンパ球を不死化することによって調製されるものなどの完全ヒト抗体の使用も包含する。
【0129】
本発明に従って使用するための抗体は、例えば、5×10-4M未満、10-4M未満、5×10-5M未満、10-5M未満、5×10-6M未満、10-6M未満、5×10-7M未満、10-7M未満、5×10-8M未満、10-8M未満、5×10-9M未満、10-9M未満、5×10-10M未満、10-10M未満、5×10-11M未満、10-11M未満、5×10-12M未満、10-12M未満、5×10-13M未満、10-13M未満、5×10-14M未満、10-14M未満、5×10-15M未満、または10-15M未満である解離定数(K)を含む結合親和性を有する。
【0130】
本発明の抗体は、例えば、任意の型の分子を抗体に、共有結合による付着により、抗体のそのエピトープへの結合が妨げられないように共有結合により付着させることによって修飾された誘導体をさらに含む。適切な修飾としては、例えば、フコシル化、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、およびアミド化が挙げられる。抗体およびその誘導体は、公知の保護基/ブロック基(protecting/blocking group)、タンパク質分解による切断、細胞リガンドまたは他のタンパク質への連結などによってそれ自体を誘導体化することができる(may themselves by derivatized)。本発明の一部の実施形態では、抗体の重鎖の少なくとも1つがフコシル化されている。特定の変形形態では、フコシル化はN結合である。ある特定の実施形態では、抗体の重鎖の少なくとも1つは、フコシル化されたN結合オリゴ糖を含む。
【0131】
本発明に従って使用するための抗体は、参照抗体と比べて、参照抗体の1つまたは複数の生物学的特性が保持されるような、1つまたは複数のアミノ酸置換、欠失、または付加を有するバリアントを含む。ある特定の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号4および配列番号5に示されるVHおよび/またはVL配列を有する参照抗PSMP中和抗体と比べて、参照抗体のPSMPに特異的に結合し、PSMP活性を中和する能力が保持されるような、1つまたは複数のアミノ酸置換、欠失、または付加を有するバリアントである。当業者は、参照抗体と比べて1つまたは複数のアミノ酸置換、欠失、または付加を有するバリアントを容易に作製することができる。遺伝学的技法(抑制、欠失、変異など)、化学的技法、および酵素的技法を含めたこれらのバリアントを得るための技法は当業者には公知である。
【0132】
一部の実施形態では、本発明に従って使用するための中和抗PSMP抗体は、抗PSMP mAb 3D5の1つまたは複数のCDRを含む。したがって、ある特定の変形形態では、抗体は、3D5 VHドメイン(配列番号4)の重鎖CDR(CDR-H1領域、CDR-H2領域、およびCDR-H3領域のうちの少なくとも1つ)ならびに/または3D5 VLドメイン(配列番号5)の軽鎖CDR(CDR-L1領域、CDR-L2領域、およびCDR-L3領域のうちの少なくとも1つ)を含む。典型的な実施形態では、抗体は、3D5 VHドメイン(配列番号4)のCDRの2つもしくは3つおよび/または3D5 VLドメイン(配列番号5)のCDRの2つもしくは3つを有する。一部の変形形態では、抗体が3D5 VHドメインのCDRの少なくとも1つを有する場合、抗体は、3D5 VLドメインのCDRの少なくとも1つをさらに含む;一部のそのような実施形態では、抗体は、mAb 3D5の3つの重鎖CDR全ておよび3つの軽鎖CDRの全て(すなわち、配列番号4のCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3ならびに配列番号5のCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3)を有する。1つまたは複数のCDRは、例えば、CDRに関するChothia定義、Kabat定義、AbM定義、または接触定義に従って定義されたものであり得る。CDRに関するChothia定義の下では、mAb 3D5のCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3は、それぞれ配列番号4の残基31~35、50~69、および99~108に対応し、mAb 3D5のCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3は、それぞれ配列番号5の残基24~34、50~56、および89~97に対応する。上記の抗体の特定の変形形態では、抗体は、ヒト免疫グロブリンフレームワーク領域、またはヒト免疫グロブリンフレームワーク領域に対して少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%アミノ酸配列同一性を有するそのバリアントを有するVHドメインおよび/またはVLドメインを含む。
【0133】
一部の実施形態では、抗PSMP抗体は、(a)配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一である重鎖可変ドメイン、および/または(b)配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一である軽鎖可変ドメインを含む。
【0134】
一部の実施形態では、本発明に従って使用するための抗PSMP抗体は、重鎖CDRであるCDR-H1Ab、CDR-H2Ab、およびCDR-H3Abを含み、CDRのうちの少なくとも1つは、CDRの参照セットであるCDR-H1Ref、CDR-H2Ref、およびCDR-H3Refと比べてアミノ酸置換をゼロから3つまで含む。ここで、参照CDRは、それぞれ、3D5 VHドメイン(配列番号4)のCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3である。他の実施形態では、本発明に従って使用するための抗PSMP抗体は、軽鎖CDRであるCDR-L1Ab、CDR-L2Ab、およびCDR-L3Abを含み、CDRのうちの少なくとも1つは、CDRの参照セットであるCDR-L1Ref、CDR-L2Ref、およびCDR-L3Refと比べてアミノ酸置換をゼロから3つまで含む。ここで、参照CDRは、それぞれ、3D5 VLドメイン(配列番号5)のCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3である。ある特定の実施形態では、抗PSMP抗体は、上記の重鎖CDRおよび軽鎖CDRのセットの両方を含む。特に適切なPSMP抗体は、CDRであるCDR-H1Ab、CDR-H2Ab、およびCDR-H3Abを含む重鎖可変ドメインと、CDRであるCDR-L1Ab、CDR-L2Ab、およびCDR-L3Abを含む軽鎖可変ドメインとを含み、重鎖CDRのセットは、CDR-H1Ref、CDR-H2Ref、およびCDR-H3Refと比べて6つまたはそれよりも少ない、典型的には5つまたはそれよりも少ない、より典型的には4つまたはそれよりも少ない、最も典型的には3つまたはそれよりも少ないアミノ酸置換を有し、軽鎖CDRのセットは、CDR-L1Ref、CDR-L2Ref、およびCDR-L3Refと比べて6つまたはそれよりも少ない、典型的には5つまたはそれよりも少ない、より典型的には4つまたはそれよりも少ない、最も典型的には3つまたはそれよりも少ないアミノ酸置換を有する。上記のCDRは、例えば、CDRに関するChothia定義、Kabat定義、AbM定義、または接触定義に従って定義されたものであり得る。上記の抗体の特定の変形形態では、VHドメインおよびVLドメインは、それぞれがヒト免疫グロブリンフレームワーク領域、またはヒト免疫グロブリンフレームワーク領域に対して少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%アミノ酸配列同一性を有するそのバリアントを有する。
【0135】
本発明に従って使用するための抗PSMP抗体は、親和性成熟した実施形態を含む。親和性成熟した抗体は、当技術分野で公知の手順によって作製することができる。例えば、Marks et al., Bio/Technology 10: 779-783, 1992;Barbas et al., Proc Nat. Acad. Sci. USA 91: 3809-3813, 1994;Schier et al., Gene 169: 147-155, 1995;Yelton et al.,
J. Immunol. 155: 1994-2004, 1995;Jackson et al., J. Immunol. 154: 3310-9, 1995;Hawkins et al., J. Mol. Biol. 226: 889-896, 1992;およびPCT公開番号第WO2004/058184号を参照されたい。一部の実施形態では、抗PSMP抗体は、mAb 3D5の1つまたは複数のCDRを含む抗体の親和性成熟によって得られる(例えば、(i)配列番号4のCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3を有するVHドメインと(ii)配列番号5のCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3を有するVLドメインとを含む抗体の親和性成熟によって得られる);一部のそのような変形形態では、CDRは、CDRに関するChothia定義、Kabat定義、AbM定義、または接触定義に従って定義されたものである。
【0136】
抗体の親和性を調整するための1つの方法は、「ライブラリースキャニング変異誘発」と称される。一般に、ライブラリースキャニング変異誘発は、以下の通り行われる。当技術分野において認められている方法を使用し、少なくとも1つのCDR(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのCDR)の1つまたは複数のアミノ酸位を、2個またはそれよりも多く(例えば、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、または20個)のアミノ酸で置き換える。これにより、クローンの小さなライブラリー(一部の実施形態では、分析されるアミノ酸位毎に1つ)が生成され、それぞれが、2つまたはそれよりも多くのメンバーという複雑さを有する(位置毎に2個またはそれよりも多くのアミノ酸が置換される場合)。一般に、ライブラリーは、ネイティブな(非置換型)アミノ酸を含むクローンも含む。各ライブラリーからの少数のクローン、例えば、約20~80クローン(ライブラリーの複雑さに応じて)を、標的ポリペプチド(または他の結合標的)に対する結合親和性についてスクリーニングし、結合の増加を有する、同じ結合を有する、減少した結合を有する、または結合を有さない候補を同定する。結合親和性は、例えば、約2倍またはそれよりも大きい結合親和性の差異を検出するBiacore(商標)表面プラズモン共鳴分析を使用して決定することができる。Biacore(商標)は、出発抗体がすでに比較的高い親和性、例えば約10nMまたはそれ未満のKで結合するものである場合に特に有用である。
【0137】
本発明の一部の実施形態では、抗体は、免疫グロブリン定常領域(例えば、免疫グロブリン重鎖定常領域、例えば、Fc領域など)を含む。一部のそのような実施形態では、定常領域は、例えば、ヒトFcガンマ受容体に対して増加したもしくは減少した親和性を有するか、または以下の任意の1つまたは複数に関する活性が低下している(改変されていない抗体と比較して)定常領域などの、天然に存在する(例えば、野生型)定常領域のバリアントである:補体媒介性溶解の誘発、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)の刺激、またはミクログリアの活性化。定常領域の種々の改変を使用して、エフェクター機能の最適なレベルおよび/または組合せを実現することができる。例えば、Morgan
et al., Immunology 86: 319-324, 1995;Lund et al., J. Immunol. 157: 4963-9 157: 4963-4969, 1996;Idusogie et al., J. Immunol. 164: 4178-4184, 2000;Tao et al., J.
Immunol. 143: 2595-2601, 1989;およびJefferis et al., Immunological Reviews 163: 59-76, 1998を参照されたい。一部の実施形態では、定常領域をArmour et al., Eur. J. Immunol., 29: 2613-2624, 1999;PCT出願第PCT/GB99/01441号、および/またはUK特許出願第9809951.8号に記載されている通り改変する。他の実施形態では、定常領域をN結合グリコシル化について脱グリコシル化する。一部の実施形態では、定常領域をN結合グリコシル化について、定常領域内のグリコシル化されたアミノ酸残基またはN-グリコシル化認識配列の一部である隣接する残基を変異させることによって脱グリコシル化する。例えば、N-グリコシル化部位N297をA、Q、K、またはHに変異させることができる。Tao et al., J. Immunol. 143: 2595-2601, 1989;Jefferis et al., Immunological Reviews 163: 59-76, 1998を参照されたい。定常領域をN結合グリコシル化について酵素的に(例えば、炭水化物を酵素PNGアーゼによって除去するなど)、またはグリコシル化欠乏宿主細胞において発現することによって脱グリコシル化することもできる。他の適切なバリアント定常領域は、FcRnおよびFcγRIIb結合活性を保持し、標的の有意な補体依存性溶解または細胞媒介性破壊を誘発しない2つまたはそれよりも多くのヒト免疫グロブリン重鎖CH2ドメインに由来するキメラドメインに基づく配列を含む。PCT公開第WO99/58572号の記載を参照されたい。
【0138】
一部の実施形態では、本発明に従って使用するためのPSMPアンタゴニストは、代替足場に基づく非抗体タンパク質である。例えば、Silverman et al., Nat. Biotechnol. 23: 1556-61, 2005;Zahnd
et al., J. Mol. Biol. 369: 1015-28, 2007;米国特許第7,115,396号;Binz et al., Nat. Biotechnol. 23: 1257-1268, 2005;Skerra, Current Opin. in Biotech. 18: 295-304, 2007;Silacci et al., J. Biol. Chem. 289: 14392-14398, 2014を参照されたい。一部の実施形態では、代替足場アンタゴニストは、PSMPに特異的に結合し、それを中和する。特定の変形形態では、代替足場PSMPアンタゴニストは、Adnectin(商標)、iMab、リポカリン、Kunitzドメイン、Affibody(登録商標)、アンキリンリピート、Afflin、Tetranectin、Fynomer、またはAvimerタンパク質である。代替足場に基づくPSMP結合性タンパク質は、例えば、代替足場フレームワーク内に1つまたは複数のランダム化またはセミランダム化された領域を含む発現ライブラリー(例えば、ファージディスプレイ、リボソームディスプレイ)をスクリーニングすることによって調製することができる。例えば、Koide et al., J. Mol. Biol. 284: 1141-1151, 1998;Zahnd et al.、上記を参照されたい。
【0139】
他の実施形態では、本発明に従って使用するためのPSMPアンタゴニストは、ペプチドアプタマー(例えば、PSMPに特異的に結合し、それを中和するペプチドアプタマー)である。ペプチドアプタマーは、一般に、典型的には小さく安定なタンパク質足場内にループとして包埋した可変ペプチドループ(例えば、約5~20アミノ酸)からなる。ペプチドアプタマーは、アプタマーを特異的な標的との結合親和性についてランダムなプールまたはペプチドライブラリーから選択することによって調製することができる。例えば、ペプチドアプタマーは、酵母ツーハイブリッドスクリーニングによってランダムなペプチドライブラリーから(例えば、Xu et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94: 12473, 1997を参照されたい)、またはファージディスプレイライブラリーから単離することができる。ペプチドアプタマーは、例えば、Reverdatto et al., Curr. Top. Med. Chem. 15: 1082-1101, 2015において総説されている。
【0140】
さらに他の実施形態では、PSMPアンタゴニストは、核酸アプタマー(例えば、PSMPに特異的に結合し、それを中和する核酸アプタマー)である。一般に、核酸アプタマーは、特異的な三次元構造に起因して標的に高い親和性および特異性で結合することができる、リボ核酸(RNA)または一本鎖デオキシリボ核酸(ssDNA)などのオリゴヌクレオチドである。標的高分子に特異的に結合する核酸アプタマーは、そのようなオリゴマーのライブラリーからSELEXなどの技術によって容易に単離することができる。例えば、Stoltenburg et al., Biamal. Eng. 24: 381, 2007を参照されたい。核酸アプタマーは、例えば、Ni et al.,
Curr. Med. Chem. 18: 4206-4214, 2011;およびEsposito et al., Discovery Medicine 11:
487-496, 2011において総説されている。
【0141】
本発明のある特定の態様に従って、PSMPアンタゴニストを使用して肝線維症を処置する。一部の実施形態では、処置される肝線維症は肝硬変に進行している。他の相互排他的でない実施形態では、線維症は、肝臓の線維症によって特徴付けられるかまたはそれをもたらすことが分かっている疾患または障害に関連するものである。例えば、処置される肝線維症は、慢性的なアルコールの乱用(例えば、アルコール性肝疾患(ALD)、アルコール性肝炎、アルコール性肝硬変)、慢性ウイルス性肝炎(例えば、B型肝炎、C型肝炎、もしくはD型肝炎)、肝臓内の脂肪の蓄積(非アルコール性脂肪性肝疾患(例えば、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH))、体内の鉄の蓄積(ヘモクロマトーシス)、嚢胞性線維症、肝臓内の銅の蓄積(ウィルソン病)、形成不良の胆管(胆道閉鎖症)、アルファ1抗トリプシン欠損症、糖代謝の遺伝性障害(例えば、ガラクトース血症、糖原病)、遺伝性消化系障害(例えば、アラジール症候群)、自己免疫性肝疾患(例えば、自己免疫性肝炎、原発性硬化性胆管炎(PSC)、原発性胆汁性胆管炎(PBC、以前は原発性胆汁性肝硬変として公知)、感染症(例えば、梅毒、ブルセラ症)、薬物誘発肝傷害(例えば、メトトレキセート誘発もしくはイソニアジド誘発肝臓傷害)、またはバッドキアリ症候群に関連するものであり得る。
【0142】
本発明の他の態様に従って、PSMPアンタゴニストを使用して肺(lung(pulmonary))線維症を処置する。一部の実施形態では、線維症は、肺の線維症によって特徴付けられるかまたはそれをもたらすことが分かっている疾患または障害に関連するものである。例えば、処置される肺線維症は、皮膚筋炎、多発性筋炎、混合性結合組織疾患、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、肺炎、慢性放射線肺炎、塵肺症、感染症、または薬物誘発肺傷害に関連するものであり得る。肺線維症が塵肺症に関連するものである一部の実施形態では、塵肺症は、シリカ粉塵、アスベスト繊維、超硬合金粉塵、炭塵、穀物粉塵、または鳥類もしくは動物の糞便への曝露によって引き起こされるかまたは悪化するものである。肺線維症が薬物誘発肺傷害に関連するものである一部の実施形態では、肺傷害は、化学療法薬(例えば、メトトレキセート、シクロホスファミド)、心臓医薬(例えば、不整脈を処置するために使用される薬物、例えばアミオダロンなど)、抗生物質(例えば、ニトロフラントイン、エタンブトール)、または抗炎症薬(例えば、リツキシマブ、スルファサラジン)によって誘発される。
【0143】
本発明のさらに他の態様では、PSMPアンタゴニストを使用して非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を処置する。一部のそのような変形形態では、NAFLDは、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である。
【0144】
本発明のさらに他の態様では、PSMPアンタゴニストを使用してアルコール性肝疾患(ALD)を処置する。
【0145】
本発明のさらに他の態様では、PSMPアンタゴニストを使用して原発性硬化性胆管炎(PSC)を処置する。
【0146】
本発明のさらに他の態様では、PSMPアンタゴニストを使用して原発性胆汁性胆管炎(PBC)を処置する。
【0147】
本発明のさらに他の態様では、PSMPアンタゴニストを使用して腎線維症を処置する。一部の実施形態では、線維症は、腎臓の線維症によって特徴付けられるかまたはそれをもたらすことが分かっている疾患または障害に関連するものである。例えば、処置される腎線維症は、IgA腎症、膜性増殖性糸球体腎炎、膜性糸球体腎炎、半月体形成性糸球体腎炎、糖尿病性腎症、高血圧腎症、ループス腎炎、肝性腎症、多嚢胞性腎疾患、アルポート症候群、ファブリー病、原発性高シュウ酸尿症、シスチン蓄積症;コエンザイムQ10関連遺伝子変異により引き起こされる巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、補体3糸球体腎炎、急性もしくは亜急性免疫複合体糸球体腎炎、腎血管炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、最近発症した腎動脈狭窄症(線維筋性もしくは血管炎性)、糖尿病性腎疾患、慢性尿酸腎症、中毒性腎症、細菌性腎盂腎炎、ウイルス性腎症、多発性骨髄腫、または閉塞性腎症に関連するものであり得る。
【0148】
本発明のさらに他の態様では、PSMPアンタゴニストを使用して急性腎傷害(AKI)または慢性腎疾患(CKD)を処置する。PSMPアンタゴニストを使用してCKDを処置する一部の実施形態では、CKDは、IgA腎症、膜性増殖性糸球体腎炎、膜性糸球体腎炎、半月体形成性糸球体腎炎、糖尿病性腎症、高血圧腎症、ループス腎炎、肝性腎症、多嚢胞性腎疾患、アルポート症候群、ファブリー病、原発性高シュウ酸尿症、シスチン蓄積症;コエンザイムQ10関連遺伝子変異により引き起こされる巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、補体3糸球体腎炎、急性もしくは亜急性免疫複合体糸球体腎炎、腎血管炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、最近発症した腎動脈狭窄症(線維筋性もしくは血管炎性)、糖尿病性腎疾患、慢性尿酸腎症、中毒性腎症、細菌性腎盂腎炎、ウイルス性腎症、多発性骨髄腫、または閉塞性腎症によって引き起こされるものである。
【0149】
本発明のさらに他の態様では、PSMPアンタゴニストを使用して移植片対宿主病(GVHD)を処置する。一部の実施形態では、PSMPアンタゴニストを使用して急性GVHD(aGVHD)を処置する。他の実施形態では、PSMPアンタゴニストを使用して慢性GVHD(cGVHD)を処置する。
【0150】
本発明のさらに他の態様では、PSMPアンタゴニストを使用して全身性エリテマトーデス(SLE)を処置する。
【0151】
本発明のさらに他の態様では、PSMPアンタゴニストを使用してループス腎炎を処置する。
【0152】
本発明のさらに他の態様では、PSMPアンタゴニストを使用してIgA腎症を処置する。
【0153】
本発明のさらに他の態様では、PSMPアンタゴニストを使用して膜性糸球体腎炎を処置する。
【0154】
本発明のさらに他の態様では、PSMPアンタゴニストを使用して肝線維症に関連する疾患または障害、例えば、慢性的なアルコールの乱用(例えば、アルコール性肝疾患(ALD)、アルコール性肝炎、アルコール性肝硬変)、慢性ウイルス性肝炎(例えば、B型肝炎、C型肝炎、またはD型肝炎)、肝臓内の脂肪の蓄積(非アルコール性脂肪性肝疾患(例えば、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH))、体内の鉄の蓄積(ヘモクロマトーシス)、嚢胞性線維症、肝臓内の銅の蓄積(ウィルソン病)、形成不良の胆管(胆道閉鎖症)、アルファ1抗トリプシン欠損症、糖代謝の遺伝性障害(例えば、ガラクトース血症、糖原病)、遺伝性消化系障害(例えば、アラジール症候群)、自己免疫性肝疾患(例えば、自己免疫性肝炎、原発性硬化性胆管炎(PSC)、原発性胆汁性胆管炎(PBC、以前は原発性胆汁性肝硬変として公知)、感染症(例えば、梅毒、ブルセラ症)、薬物誘発肝傷害(例えば、メトトレキセート誘発もしくはイソニアジド誘発肝臓傷害)、またはバッドキアリ症候群などを処置する。
【0155】
本発明のさらに他の態様では、PSMPアンタゴニストを使用して肺線維症に関連する疾患または障害、例えば、皮膚筋炎、多発性筋炎、混合性結合組織疾患、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、肺炎、慢性放射線肺炎、塵肺症、感染症、または薬物誘発肺傷害などを処置する。PSMPアンタゴニストを使用して塵肺症を処置する一部の実施形態では、塵肺症は、シリカ粉塵、アスベスト繊維、超硬合金粉塵、炭塵、穀物粉塵、または鳥類もしくは動物の糞便への曝露によって引き起こされるかまたは悪化するものである。PSMPアンタゴニストを使用して薬物誘発肺傷害を処置する一部の実施形態では、肺傷害は、化学療法薬(例えば、メトトレキセート、シクロホスファミド、ブレオマイシン)、心臓医薬(例えば、不整脈を処置するために使用される薬物、例えばアミオダロンなど)、抗生物質(例えば、ニトロフラントイン、エタンブトール)、または抗炎症薬(例えば、リツキシマブ、スルファサラジン)によって誘発されるものである。
【0156】
本発明のさらに他の態様では、PSMPアンタゴニストを使用して腎線維症に関連する疾患または障害、例えば、IgA腎症、膜性増殖性糸球体腎炎、膜性糸球体腎炎、半月体形成性糸球体腎炎、糖尿病性腎症、高血圧腎症、ループス腎炎、肝性腎症、多嚢胞性腎疾患、アルポート症候群、ファブリー病、原発性高シュウ酸尿症、シスチン蓄積症;コエンザイムQ10関連遺伝子変異により引き起こされる巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、補体3糸球体腎炎、急性もしくは亜急性免疫複合体糸球体腎炎、腎血管炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、最近発症した腎動脈狭窄症(線維筋性もしくは血管炎性)、糖尿病性腎疾患、慢性尿酸腎症、中毒性腎症、細菌性腎盂腎炎、ウイルス性腎症、多発性骨髄腫、または閉塞性腎症などを処置する。
【0157】
本明細書に記載の処置方法の実施形態のそれぞれでは、PSMPアンタゴニストを、処置が探求されている疾患または障害の管理に関連する従来の方法体系と一致した様式で送達する。本明細書の開示に従って、有効量のアンタゴニストを、そのような処置を必要とする対象に、疾患または障害を処置するために十分な時間にわたって、それに十分な条件下で投与する。
【0158】
本明細書に記載のPSMPアンタゴニストを投与する対象は、特定の疾患または障害(例えば、肝線維症、肺線維症、腎線維症、または肝線維症もしくは肺線維症に関連する疾患もしくは障害)が発生するリスクが高い患者、および既存の疾患または障害を示している患者を含む。ある特定の実施形態では、対象は、処置が探求されている疾患または障害を有すると診断されている。さらに、対象を、処置の過程中、疾患または障害のあらゆる変化について(例えば、疾患または障害の臨床症状の増加または減少について)モニタリングすることができる。また、一部の変形形態では、対象は、PSMPシグナル伝達経路の阻害をもたらす処置が必要な別の疾患や障害に罹患していない。
【0159】
予防的適用では、医薬組成物または医薬品(medicant)を、特定の疾患または障害にかかりやすいか、または他の点でそのリスクがある患者に、疾患または障害のリスクを排除もしくは低減するか、または発症を遅延させるために十分な量で投与する。治療的適用では、組成物または医薬品を、そのような疾患に罹患している疑いがあるか、またはすでに罹患している患者に、疾患または障害およびその合併症の症状を治癒するかまたは少なくとも部分的に停止させるために十分な量で投与する。これを実現するために適した量は、治療的にまたは薬学的に有効な用量または量と称される。予防的レジームおよび治療的レジームのどちらにおいても、薬剤は通常、十分な応答(例えば、線維症または線維症のバイオマーカーの阻害)が実現されるまで、数回の投薬で投与される。典型的には、応答をモニタリングし、所望の応答が消え始めたら繰り返し投薬を行う。
【0160】
本発明の方法に従った処置の対象患者を同定するために、許容されるスクリーニング方法を用いて、特定の疾患もしくは障害の関連する危険因子を決定すること、または対象において同定された既存の疾患もしくは障害の状態を決定することができる。そのような方法は、例えば、特定の疾患を有すると診断された親類を有するかどうかを決定することを含み得る。スクリーニング方法は、例えば、遺伝性成分(heritable component)を有することが公知の特定の疾患に関する家族性の状態を決定するための従来のワークアップも含み得る。例えば、種々の肝疾患が、ある特定の遺伝性成分(inheritable component)を有することも公知である。例えば、Scorza et al., International Journal of Hepatology, Volume 2014, Article ID 713754, 11 pages (genetic defects causing early chronic liver involvement);Severson et al., World J. Gastroenterol. 22: 6742-6756, 2016 (genetic factors affecting development of nonalcoholic fatty liver disease)を参照されたい。この目的で、分子診断アッセイ(例えば、核酸に基づく診断アッセイ)を常套的に用いて、目的の疾患に関連する遺伝子マーカーを有する個体を同定することができる。既知の患者の総体症状(symptomology)、年齢因子、関連する危険因子などによって示される通りスクリーニングを実行することもできる。これらの方法により、臨床医が、本明細書に記載の処置方法を必要としている患者を常套的に選択することが可能になる。これらの方法に従って、PSMPアンタゴニストの投与を、独立した処置プログラムとして、または他の処置に対するフォローアップ、補助、もしくは調整処置レジメンとして実行することができる。
【0161】
投与のために、PSMPアンタゴニストを医薬組成物として製剤化する。PSMPアンタゴニストを含む医薬組成物は、治療用分子を薬学的に許容される担体と組み合わせて混合物にする、薬学的に有用な組成物を調製するための公知の方法に従って製剤化することができる。組成物は、活性成分と組み合わせた場合に、活性成分が生物活性を保持することを可能にするものであり、また、その投与をレシピエント患者が許容できるものであれば、「薬学的に許容される担体」であると言える。例としては、これだけに限定されないが、リン酸緩衝食塩水溶液、水、油/水エマルションなどのエマルション、および種々の型の湿潤剤などの標準の医薬担体のいずれかが挙げられる。エアロゾルまたは非経口投与に好ましい希釈剤は、リン酸緩衝食塩水(PBS)またはノーマルセーライン(0.9%)である。そのような担体を含む組成物は、周知の従来の方法によって製剤化される(例えば、Gennaro (ed)., Remington’s Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Company, 19th ed. 1995);Allen (ed)., Remington: The Science and Practice of Pharmacy (Pharmaceutic Press, 22nd revised ed)を参照されたい)。製剤は、1種または複数種の賦形剤、保存剤、可溶化剤、緩衝剤、バイアル表面でのタンパク質喪失を防ぐためのアルブミンなどをさらに含み得る。単一特異性のアンタゴニストを個別に製剤化すること、または複合製剤として提供することができる。
【0162】
PSMPアンタゴニストを含む医薬組成物を対象に有効量で投与する。本発明の方法に従って、アンタゴニストを対象に、例えば、筋肉内、皮下、静脈内、心房内、関節内、非経口、鼻腔内、肺内、経皮、胸膜内、髄腔内、および経口投与経路によるものを含めた種々の投与形式によって投与することができる。防止および処置目的で、アンタゴニストを対象に、単回のボーラス送達で、長期間にわたる連続的な送達(例えば、連続的な経皮送達)によって、または繰り返し投与プロトコールで(例えば、毎時、毎日、もしくは毎週のように)投与することができる。正確な用量は、臨床医により、処置される状態の性質および重症度、患者の体質などを考慮に入れて、許容される標準に従って決定される。用量の決定は、当技術分野における通常の技術のレベルの範囲内に入る。
【0163】
これに関連した有効な投与量の決定は、典型的には、動物モデル研究、ヒト臨床試験による追跡調査に基づき、モデル対象における対象疾患または障害の発生または重症度を有意に低下させる有効な投与量および投与プロトコールを決定することによってガイドされる。本発明の組成物の有効用量は、投与手段、標的部位、患者の生理的状態、患者がヒトであるか動物であるか、投与される他の医薬、処置が予防的なものであるか治療的なものであるか、ならびに組成物自体の特定の活性および個体において所望の応答を引き出す能力を含めた多くの異なる因子に応じて変動する。通常、患者はヒトであるが、一部の疾患では、患者は非ヒト哺乳動物であり得る。典型的には、投与量レジメンは、最適な治療応答がもたらされるように、すなわち、安全性および有効性が最適化されるように調整される。したがって、治療的にまたは予防的に有効な量はまた、あらゆる望ましくない副次作用よりも有益な効果が上回る量でもある。PSMPアンタゴニストの投与に関しては、投与量は、典型的には、対象の体重1kg当たり約0.1μgから100mgまで、または1μgから約50mgまで、より通常には10μgから5mgまでにわたる。より具体的な実施形態では、薬剤の有効量は、約1μg/kgから約20mg/kgの間、約10μg/kgから約10mg/kgの間、または約0.1mg/kgから約5mg/kgの間である。この範囲内の投与量は、単回投与、または、例えば、1日当たりまたは毎日、毎週、隔週、または毎月の投与の複数回投与を含めた複数回投与によって実現することができる。例えば、ある特定の変形形態では、レジメンは、最初の投与と、それに続く毎週または隔週の間隔での複数回のその後の投与とからなる。別のレジメンは、最初の投与と、それに続く、毎月または隔月の間隔での複数回のその後の投与とからなる。あるいは、投与は、線維症および/または疾患もしくは障害の臨床症状のモニタリングによって示される通りに、不規則ベースであり得る。
【0164】
肝線維症、肺線維症、または腎線維症の処置に関するPSMPアンタゴニストの有効性を評価するための特に適切な動物モデルは、一般に、当技術分野で公知である。例えば、肝線維症のモデルの1つでは、CCL注射を使用する。例えば、You et al., Mol. Med. Rep. 12: 5594-5600, 2015を参照されたい。CCL毒性肝線維症を、例えば6~8週齢の雄マウスにおいて、CCl(例えば、体重1kg当たり1.0ml、トウモロコシ油中に1:9の比で溶解させたもの)を週に2回、4週間または6週間にわたって腹腔内(i.p.)注射することによって誘発することができる。別の例示的な肝線維症のモデルでは、マウスにおいて胆管結紮(BDL)を使用して胆汁うっ滞を誘発する。例えば、Yongping et al., J. Ethnopharmacol. 169: 200 209, 2015を参照されたい。このモデルを使用すると、マウス(例えば、6~8週齢の雄マウス)において総胆管結紮後ある期間(例えば、14日間)にわたって胆汁うっ滞および付随する線維症が発生する。
【0165】
肺線維症の適切なモデルの1つは、ブレオマイシン誘発肺線維症モデルである。例えば、Rangarajan et al., Nat. Med. 8: 1121-1127, 2018;doi: 10.1038/s41591-018-0087-6を参照されたい。ブレオマイシン誘発肺線維症に関しては、マウス(例えば、6~8週齢の雌C57Bl/6Jマウス)に麻酔をかけた後、気管切開を行い、ブレオマイシンを注射し(例えば、3.5U/kgのブレオマイシンを含有する単回注射液)、注射後、ある期間(例えば、14日間)で肺線維症が発生する。
【0166】
腎(kidney、renal)線維症の適切なモデルは、尿流が妨げられた結果としての尿細管の傷害によって腎線維症が引き起こされた、片側性尿管閉塞(UUO)モデルである。例えば、Elena Martinez-Klimova et al., Biomolecules 9: 141, 2019を参照されたい。
【0167】
肝線維症、肺線維症、または腎線維症に関連する疾患または障害の動物モデルも公知である。アルコール性肝線維症の例示的なモデルは、例えば、Ambade et al.
(Hepatology, 2018, doi: 10.1002/hep.30249)によって記載されている。非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に関しては、種々の食餌性、化学的、および遺伝モデルを使用することができる。一般に、例えば、Hansen et al., Drug Discov Today, 22, 1707, 2017を参照されたい。例えば、NASHモデルの1つは、ストレプトゾトシン(STZ)を高脂肪食(HFD)と共に投与することによる化学的攻撃と食餌性攻撃の複合モデルである。STZ-HFDモデルでは、STZの注射(例えば、生後2日の雄マウスへのSTZ、200μgの単回皮下注射)および典型的には4週齢後に8週間にわたってHFDを自由に給餌することによってNASHを誘発する。別の例示的なNASHモデルは、栄養欠乏食餌モデル - 前臨床NASH研究において一般に使用されるメチオニン-コリン欠乏(MCD)モデルである。MCDモデルでは、MCDを自由に給餌することによってNASHを誘発させる。典型的には、MCDマウスにおいて1~3週間食物を与えた後に肝臓大滴性脂肪症および炎症細胞の浸潤が発生し、第5週から第7週までに頑強な類洞周囲線維症が生じる。原発性硬化性胆管炎(PSC)および原発性胆汁性胆管炎(PBC)などの胆汁うっ滞性疾患に関しては、3,5-ジエトキシカルボニル-1,4-ジヒドロコリジン(DDC)の慢性給餌が例示的なモデルである。
【0168】
急性腎傷害(AKI)および慢性腎疾患(CKD)を研究するために使用される最も一般的な齧歯類モデルは腎線維症の片側性尿管閉塞(UUO)モデル(Elena Martinez-Klimova et al.、上記を参照されたい)である。さらに、横紋筋融解症後のAKIの一般的なマウスモデルは、脚の筋肉へのグリセロールの注射である。例えば、Yanqiu et al., Stem Cell Research & Therapy 5: 80, 2014を参照されたい。ループス腎炎に関してはDBA/2→B6D2F1モデルが周知のモデルであり、このモデルでは、DBA/2マウス脾臓細胞をB6D2F1マウスに輸注する。例えば、Via et al., J Immunol. 139: 1840-1849, 1987を参照されたい。
【0169】
GVHDの処置に関するPSMPアンタゴニストの有効性を評価するための動物モデルも一般に公知である。一般に、例えば、Schroeder et al., Dis.
Model Mech. 4: 318-333, 2011を参照されたい。例示的な急性GVHD(aGVHD)モデルの1つでは、BABL/cマウス(例えば、6~8週齢の雄)がレシピエントとして働き、C57BL/6マウスがドナーになる。C57BL/6マウス由来の脾臓CD3+T細胞および骨髄細胞をマウスの屠殺後に分離する。細胞注入前(例えば、12時間前)に、レシピエントマウスを放射線に曝露させる(例えば、それぞれ4Gyの2回Co60線量、合計8Gy)。CD3+細胞と骨髄細胞を例えば5×10対1×10の比で混合し、次いで、BABL/cマウスに静脈内注射する。典型的には注入から1カ月と定義されるaGVHD期間中、マウスの体重および生存率を2日毎にモニタリングする。さらに、周知の慢性GVHD(cGVHD)マウスモデルは、DBA/2マウス脾臓細胞をB6D2F1マウスに輸注することによって確立されたDBA/2→B6D2F1モデルである(全身性エリテマトーデス(SLE)およびループス腎炎のモデルでもある、例えば、Via et al.、上記を参照されたい)。一般に、例えば、Kim et al., J. Immunol. 181: 7380-7389, 2008を参照されたい。
【0170】
医薬組成物の投与量は、標的部位において所望の濃度が維持されるように、担当臨床医が変動させることができる。例えば、静脈内方式の送達を選択する場合、標的組織における血流中の薬剤の局所濃度は、対象の状態および予測される測定される応答に応じて、1リットル当たり約1~50ナノモルの組成物、時には1リットル当たり約1.0ナノモルから1リットル当たり10ナノモル、15ナノモル、または25ナノモルの間になり得る。例えば、経表皮送達とそれに対して粘膜表面への送達など、送達方式に基づいて、より高いまたは低い濃度を選択することができる。投与量は、例えば、経鼻スプレーとそれに対して、粉剤・散剤(powder)、持続放出経口または注射用粒子、経皮用製剤など、投与される製剤の放出速度に基づいても調整すべきである。同じ血清中濃度レベルを達成するために、例えば、放出量が5ナノモル濃度(標準の条件下で)である徐放粒子は、放出量が10ナノモル濃度である粒子に対して約2倍の投与量で投与されるはずである。
【0171】
PSMPアンタゴニストを含む医薬組成物は、液体形態、エアロゾル、または固体形態で供給することができる。液体形態は、注射液、エアロゾル、液滴、トポロジー溶液および経口懸濁液によって例示される。例示的な固体形態としては、カプセル剤、錠剤、および制御放出形態が挙げられる。後者の形態は、ミニ浸透圧ポンプおよび埋め込み物によって例示される。例えば、Bremer et al., Pharm. Biotechnol. 10: 239, 1997;Ranade, ”Implants in Drug Delivery”, in Drug Delivery Systems
95-123 (Ranade and Hollinger, eds., CRC
Press 1995);Bremer et al., ”Protein Delivery with Infusion Pumps”, in Protein Delivery: Physical Systems 239-254 (Sanders and Hendren, eds., Plenum Press 1997);Yewey et al., ”Delivery of Proteins from a Controlled Release Injectable Implant”, in Protein Delivery: Physical Systems 93-117 (Sanders and Hendren, eds., Plenum Press 1997)を参照されたい。他の固体形態としては、クリーム剤、ペースト剤、他のトポロジー適用などが挙げられる。
【0172】
リポソームにより、治療用ポリペプチドを対象に、例えば、静脈内に、腹腔内に、髄腔内に、筋肉内に、皮下に、または経口投与、吸入、もしくは鼻腔内投与によって送達するための1つの手段がもたらされる。リポソームは、1つまたは複数の脂質二重層と周囲の水性区画からなる顕微鏡的小胞である。一般に、Bakker-Woudenberg et al., Eur. J. Clin. Microbiol. Infect.
Dis. 12 (Suppl. 1): S61, 1993;Kim, Drugs 46: 618, 1993;Ranade, ”Site-Specific Drug Delivery Using Liposomes as Carriers”, in Drug Delivery Systems 3-24 (Ranade and Hollinger, eds., CRC Press 1995)を参照されたい。リポソームは、細胞膜と組成が類似しており、結果としてリポソームを安全に投与することができ、また、リポソームは生分解性である。調製方法に応じて、リポソームは、単層または多層であり得、また、リポソームは、サイズが変動し得、直径が0.02μmから10μmを超えるまでにわたる。種々の薬剤をリポソームに封入することができる:疎水性薬剤は二重層内に分配され、親水性薬剤は内部の水性空間(複数可)に分配される。例えば、Machy et al., Liposomes In Cell Biology And Pharmacology (John Libbey 1987);Ostro et al., American J. Hosp. Pharm. 46: 1576, 1989を参照されたい。さらに、リポソームサイズ、二重層の数、脂質組成、ならびにリポソームの電荷および表面特徴を変動させることにより、封入された薬剤の治療への利用可能性を制御することが可能である。
【0173】
リポソームは、事実上あらゆる細胞型に吸着し、次いで、封入された薬剤をゆっくりと放出することができる。あるいは、吸収されたリポソームが食作用性細胞にエンドサイトーシスによって取り込まれ得る。エンドサイトーシスの後、リポソーム脂質のリソソーム内分解および封入された薬剤の放出が起こる(Scherphof et al., Ann. N.Y. Acad. Sci. 446: 368, 1985を参照されたい)。静脈内投与後、小さなリポソーム(0.1~1.0μm)は、典型的には、主に肝臓および脾臓に位置する細網内皮系の細胞に取り込まれるが、3.0μmよりも大きなリポソームは肺内に沈着する。この細網内皮系の細胞による小さなリポソームの優先的な取り込みを使用して、治療剤の肝臓への送達が行われている。
【0174】
細網内皮系は、大きな用量のリポソーム粒子を用いた飽和、または薬理学的手段による選択的マクロファージ不活化を含めたいくつかの方法によって回避することができる(Claassen et al., Biochim. Biophys. Acta 802: 428, 1984を参照されたい)。さらに、糖脂質で誘導体化されたリン脂質またはポリエチレングリコールで誘導体化されたリン脂質のリポソーム膜への組み入れにより、細網内皮系による取り込みの有意な低下がもたらされることが示されている(Allen et al., Biochim. Biophys. Acta 1068: 133, 1991;Allen et al., Biochim. Biophys. Acta 1150: 9, 1993を参照されたい)。
【0175】
リポソームは、リン脂質組成を変動させることによって、または受容体もしくはカウンター受容体をリポソームに挿入することによって、特定の細胞または器官を標的とするように調製することもできる。例えば、高含有量の非イオン性界面活性剤で調製されたリポソームが肝臓を標的とするために使用されている。例えば、Hayakawaらへの日本特許04-244,018(Japanese Patent 04-244,018);Kato et al., Biol. Pharm. Bull. 16: 960, 1993を参照されたい。これらの製剤は、ダイズホスファチジルコリン(phospatidylcholine)、α-トコフェロール、およびエトキシ化硬化ヒマシ油(HCO-60)をメタノール中に混合し、混合物を真空下で濃縮し、次いで、混合物を水で再構成することによって調製した。ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)とダイズ由来ステリルグルコシド混合物(SG)およびコレステロール(Ch)のリポソーム製剤も肝臓を標的とすることが示されている。Shimizu et al., Biol. Pharm. Bull. 20: 881, 1997を参照されたい。
【0176】
あるいは、抗体、抗体断片、炭水化物、ビタミン、および輸送タンパク質などの種々の標的化カウンター受容体をリポソームの表面に結合させることができる。例えば、肝臓を標的とするために、リポソームを、肝細胞の表面上に排他的に発現されるアシアロ糖タンパク質(ガラクトース)受容体を標的とするように分枝型ガラクトシル脂質誘導体で修飾することができる。Kato and Sugiyama, Crit. Rev. Ther. Drug Carrier Syst. 14: 287, 1997;Murahashi et al., Biol. Pharm. Bull.20: 259, 1997を参照されたい。組織標的化のためのより一般的な手法では、標的細胞を、標的細胞によって発現されるカウンター受容体に特異的なビオチン化抗体で前標識する。Harasym et al., Adv. Drug Deliv. Rev. 32: 99, 1998を参照されたい。遊離の抗体が血漿から消失した後、ストレプトアビジンとコンジュゲートしたリポソームを投与する。別の手法では、標的化抗体をリポソームに直接付着させる。Harasym et al.、上記を参照されたい。
【0177】
タンパク質のマイクロカプセル封入の標準の技法を使用して、抗体および他の可溶性タンパク質をリポソームに封入することができる。例えば、Anderson et al., Infect. Immun. 31: 1099, 1981;Anderson et al., Cancer Res. 50: 1853, 1990;Cohen et al., Biochim. Biophys. Acta 1063: 95, 1991;Alving et al. ”Preparation and Use of Liposomes in Immunological Studies”, in Liposome Technology (Vol. III) 317 (Gregoriadis, ed., CRC Press, 2nd ed. 1993);Wassef et al., Meth. Enzymol. 149:
124, 1987を参照されたい。上記の通り、治療的に有用なリポソームは、種々の構成成分を含有し得る。例えば、リポソームは、ポリ(エチレングリコール)の脂質誘導体を含み得る。Allen et al., Biochim. Biophys. Acta 1150: 9, 1993を参照されたい。
【0178】
治療用タンパク質の高全身レベルを維持するために、分解性ポリマーマイクロスフェアが設計されている。マイクロスフェアは、分解性ポリマー、例えば、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLG)、ポリ酸無水物、ポリ(オルトエステル)、非生分解性エチルビニルアセテートポリマーから調製され、ポリマーの中にタンパク質が閉じ込められている。例えば、Gombotz and Pettit, Bioconjugate Chem. 6: 332, 1995;Ranade, ”Role of Polymers in Drug Delivery”, in Drug Delivery
Systems 51-93 (Ranade and Hollinger, eds., CRC Press 1995);Roskos and Maskiewicz, ”Degradable Controlled Release Systems Useful for Protein Delivery”, in Protein Delivery: Physical Systems 45-92 (Sanders and Hendren, eds., Plenum Press 1997);Bartus et al., Science 281: 1161, 1998;Putney and Burke, Nature Biotechnology
16: 153, 1998;Putney, Curr. Opin. Chem.
Biol. 2: 548, 1998を参照されたい。ポリエチレングリコール(PEG)でコーティングされたナノスフェアも、治療用タンパク質を静脈内投与するための担体をもたらすことができるものである。例えば、Gref et al., Pharm. Biotechnol. 10: 167, 1997を参照されたい。
【0179】
例えば、Ansel and Popovich, Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems (Lea & Febiger, 5th ed. 1990);Gennaro (ed)., Remington’s Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Company, 19th ed. 1995);Ranade and Hollinger, Drug Delivery Systems (CRC Press 1996);およびAllen (ed)., Remington: The Science and Practice of Pharmacy (Pharmaceutic Press, 22nd revised ed)に示されている通り、当業者は他の剤形を考案することができる。
【0180】
医薬組成物は、本明細書に記載のPSMPアンタゴニスト組成物を含む容器を含むキットとして供給することができる。医薬組成物は、例えば、単回投与もしくは複数回投与用の注射用液剤の形態で、または注射前に再構成される滅菌粉剤・散剤として提供することができる。あるいは、そのようなキットは、医薬組成物を投与するための乾燥粉末分散機、液体エアロゾル発生器、またはネブライザーを含み得る。そのようなキットは、医薬組成物の適応症および使用に関する書面の情報をさらに含み得る。
表1:例示的な配列
【表1-1】
【表1-2】
【0181】
本発明を以下の非限定的な例によってさらに例示する。
【実施例0182】
(実施例1)
PSMP発現はヒト肝線維症およびマウス肝線維症において上方調節される
PSMP発現が肝疾患に関連するかどうかを評価するために、PSMPレベルを、異なる肝疾患組織を含有する組織マイクロアレイでの免疫組織化学的検査によって調査した。PSMPは硬変のおよび付近の非腫瘍肝組織において有意に上方調節された(図1Aおよび1B)。この所見は、B型肝炎ウイルス(HBV)誘発肝硬変(n=14)、C型肝炎ウイルス(HCV)誘発肝硬変(n=1)、原発性胆汁性肝硬変(n=5)、およびアルコール誘発肝硬変(n=2)を含めた、原因が異なるヒト肝臓線維化組織において確認された。免疫組織化学的分析により、肝硬変を有する患者では正常なヒト肝組織と比較して肝臓PSMP発現が有意に上昇したことが明らかになった(図2Aおよび2B)。ヒトデータと同様に、CClによって誘発された肝線維症およびBDLによって誘発された肝線維症のマウスモデルにおいても、対照マウス由来の肝臓と比較してPSMPの発現が著しく増加した(図3A~3D、4A、および4B)。これらのデータから、PSMPが硬変の肝臓において上方調節されることが示され、PSMPシグナル伝達の活性化が肝線維症の病理発生に関与し得るという仮説が生じる。
(実施例2)
マウスにおいてPSMPの欠乏により肝線維症からの保護がもたらされる
【0183】
肝線維症におけるPSMPシグナル伝達の役割をさらに調査するために、次いで、CCl処理によって誘発される毒性線維症マウスモデルに供されたPSMPノックアウトマウスにおける線維形成を調査した。マウスを、4週間にわたってCClに繰り返し曝露させ(1週間当たり2回)、Psmp-/-マウスでは、Ccr2-/-マウスと同等の油対照と比較して、ヘマトキシリン・エオシン(H&E)、シリウスレッド染色および肝臓ヒドロキシプロリン含有量によって評価される肝傷害および線維症の有意な減弱が示された(図5A~5D)。一貫して、Psmp-/-マウスでは、Ccr2-/-マウスと一致して、免疫組織化学的検査および免疫ブロッティングによって評価されるHSC活性化のマーカーであるα-SMAの上方調節が顕著に減少した(図5Aおよび5F)。アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の血清中レベルがPsmp-/-マウスにおいて低下する明らかな傾向が示され、これにより、肝損傷が改善したことが示される(図5E)。Ccr2-/-マウスと同様に、原型線維化促進遺伝子(Acta2、Col1a1、Tgfb1、Timp1およびPdgfrb)の肝臓でのmRNA発現が、CCl誘発Psmp-/-マウスにおいて低減した(図5G~5K)。
【0184】
肝線維症におけるPSMPの役割をさらに分析するために、別の十分に確立されたモデルであるBDL肝線維症マウスモデルを用いた。BDL後にも、Psmp-/-マウスにおいてシリウスレッド陽性領域、ヒドロキシプロリン含有量、およびα-SMA発現の有意な低減が示された(図6A~6Dおよび6F)。血清中ALTレベルもPsmp-/-マウスにおいてBDL後に上昇した(図6E)。Psmp-/-マウスでは、Acta2、Col1a1、Tgfb1、Timp1およびPdgfrbのmRNAレベルの有意な低下も見いだされた(図6G-6K)。
【0185】
総合すると、これらの結果から、PSMPシグナル伝達の活性化が肝線維症(hepatic fibrosis)の病理発生に関与する可能性があることが示唆される。
(実施例3)
PSMPシグナル伝達の中和によりマウス肝線維症が緩和される
【0186】
PSMP欠乏によりマウスにおける肝線維症の発生が有意に減弱することに基づいて、特異的なPSMP中和抗体である3D5の、CClによって誘発される肝線維症に対する効果を調査した。まず、4週間のCCl誘発肝線維症のマウスに対する3D5の保護効果を調査するために、マウスを、各CCl注射後に3D5で処置した(図7A)。H&E染色およびシリウスレッド染色アッセイにより、3D5による処置後に、対照およびmIgG処置群と比較して肝傷害および線維症の低減が示された(図7B~7D)。したがって、3D5により、線維性肝臓におけるα-SMA発現が顕著に低減した(図7Bおよび7G)。さらに、3D5処置群では対照およびmIgG処置群と比して肝臓ヒドロキシプロリン含有量が有意に減少した(図7E)。3D5処置群では対照およびmIgG処置群と比してALTの血清中レベルが有意に低下し、これにより、肝機能が改善したことが示される(図7F)。qRT-PCRにより、3D5により線維形成遺伝子(Acta2、Col1a1、Tgfb1、Timp1およびPdgfrb)のmRNAレベルも有意に低下したことが示された(図7H~7L)。
【0187】
さらに、6週間のCCl誘発肝線維症における3D5の治療的潜在性を評価するために、マウスにおいて、3D5による処置を、第4週から第6週まで、CClによる処置と共に使用した(図8A)。3D5による処置を受けたマウスでは、対照およびmIgG処置群と比較して、シリウスレッド陽性領域、ヒドロキシプロリン含有量、α-SMA発現、血清中ALTの有意な低減が示された(図8B~8F)。一貫して、3D5を用いて処置したマウスではActa2、Col1a1、Tgfb1、Timp1、およびPdgfrbのmRNAレベルの有意な低下も観察された(図8G-8K)。
【0188】
異なる用量の3D5(1mg/kg、5mg/kg、および10mg/mL)を使用して、CCl誘発肝線維症を有するマウスを処置した(図9A)。H&E染色およびシリウスレッド染色アッセイにより、肝線維症を有し、3D5を用いて処置されたマウスが、用量依存的に、対照およびmIgG処置群よりも軽度の肝線維症を有したことが示された(図9B~9E)。CClで処置したマウスにおけるα-SMA発現、血清中ALT、線維形成遺伝子(Acta2、Col1a1、Tgfb1、Timp1およびPdgfrb)のmRNA発現のレベルも、3D5による処置後に用量依存的に低下した(図9Bおよび9F~9L)。
【0189】
これらの結果から、マウスにおいて、PSMPシグナル伝達の遮断により肝線維症の病理発生が有意に好転することが示唆される。
(実施例4)
AAV8-hPSMPにより肝臓PSMP発現が回復し、肝線維症がCCR2依存的に促進される
【0190】
肝線維症におけるPSMPの役割をさらに探究するために、AAV8(アカゲザルから単離された遺伝子ベクター、肝細胞に対する親和性が高いことから、肝細胞への形質導入に使用される)を使用して、PSMP-/-マウスにおいてヒトPSMPを過剰発現させた(図10A)。予測通り、AAV8-hPSMPを受けたPSMP-/-マウスでは、hPSMPの発現のレベルが、対照AAV8-ヌルを受けたマウスと比較して強く上昇した(図10E)。次に、この手法を使用して、慢性肝損傷の条件下でのPSMP過剰発現の結果を調査した。AAV8注射後の4週間に、マウスを、CClを用いてさらに4週間にわたって処置して、肝線維症を誘発した(図10A)。AAV8-ヌルを注射したマウスにおいて観察された影響と比較して、PSMP過剰発現によって引き出された肝傷害および線維症の有意な増強が見いだされた(図10B~10D、10F~10L)。
【0191】
データから、PSMP過剰発現により肝線維症の発生が促進されることがさらに示される。
(実施例5)
PSMP欠乏により、CCLによる攻撃によって誘導される肝臓マクロファージ浸潤および炎症促進性サイトカイン産生が阻害される
【0192】
マウスおよびヒトにおいて、慢性傷害の際の肝臓へのマクロファージの浸潤は肝臓の炎症および線維症の増悪に説得力をもって結び付けられている。したがって、CClによる処置後の肝臓における免疫細胞の組成をフローサイトメトリー分析によって調査した。Psmp-/-マウスでは肝臓マクロファージ(iMΦ、CD11bF4/80int)の浸潤およびCD11bCCR2細胞の蓄積が有意に減少した(図11A~11E)。肝内マクロファージと並行して、好中球(CD11bLy6G)、B細胞およびT細胞(CD3、CD4、CD8)などの他の免疫細胞も調査し、これらは、PSMP-ノックアウトマウスにおいてT細胞がいくらか上昇または減少した以外は影響を受けないことが見いだされた(図11F~11J)。
【0193】
次に、肝臓におけるPSMP欠乏に起因する肝臓マクロファージ蓄積の低下の結果を調査した。疾患増悪の間の肝臓マクロファージの重要な機能は、炎症促進サイトカインの分泌である。Psmp-/-マウスでは、CClによる処置でCCL2、TNF-α、IL-6およびIL-12の血清中濃度が低下し、これは、肝内マクロファージの数の低下と一致する(図11K~11N)。
【0194】
これらのデータから、PSMPが、マクロファージの浸潤、そして炎症促進サイトカインの産生に影響を及ぼすことによって線維症を促進し得ることが示される。
(実施例6)
肝線維症に関する研究のための材料および方法
【0195】
本実施例では、実施例1~5に記載されている肝線維症に関する研究のための材料および方法を記載する。
ヒト試料
【0196】
ヒト肝臓試料は全て病院で収集した。肝硬変試料をHBV誘発肝硬変、HCV誘発肝硬変、原発性胆汁性肝硬変、アルコール性誘発肝硬変から収集した。正常な肝組織を、肝腺腫および限局性結節性過形成を含めた非腫瘍疾患に対する肝臓切除を受けた患者から収集した。
動物
【0197】
特定病原体未感染C57BL/6マウスをPeking Experimental Animal Center(Beijing、China)から購入した。PSMPノックアウトマウスはC57BL/6バックグラウンドであった。CCR2ノックアウトマウスはC57BL/6バックグラウンドであり、Professor Yu Zhang(Department of Immunology, Peking University Health Science Center)から入手した。PSMPKOマウスとCCR2KOマウスを交配することにより、PSMPおよびCCR2の2重ノックアウト(DKO)を有するマウスを得た。動物実験は全て、Guidelines for the Care and Use of Laboratory Animalsに従って行い、Ethics Committee of Peking University Health Science Centerにより承認されたものであった。
マウス肝線維症モデル
【0198】
毒性肝線維症のために、6~8週齢の雄マウスにCCl(体重1kg当たり1.0ml、トウモロコシ油中に1:9の比で溶解させたもの)またはビヒクル(トウモロコシ油)の腹腔内(i.p.)注射を週に2回、4週間または6週間にわたって受けさせた。マウスを最終的なCCl(Aladdin、Shanghai、China)注射の2日後に屠殺した。
【0199】
胆汁うっ滞性肝線維症を誘発するために、6~8週齢の雄マウスに総胆管の結紮を行った。偽手術マウスにも同じ手順を行ったが結紮は伴わなかった。胆管結紮(BDL)マウスでは14日間の期間で胆汁うっ滞および付随する線維症が発生した。
抗体による処置
【0200】
PSMPに対する中和抗体(3D5;Pei et al., J. Immunol. 192: 1878-86, 2014)を発現するモノクローナルハイブリドーマ細胞をマウス腹腔に注射し、腹水を得た。腹水中のmAb 3D5を、プロテインGを使用して精製した。保護的処置に関しては、マウスに、5mg/kgの3D5を、4週間全体にわたって週に2回、各CCl注射後に注射した(i.p.)。治療的処置に関しては、マウスに、5mg/kgの3D5を第4週から第6週まで週に2回、各CCl注射後に注射した(i.p.)。
マウスアデノ随伴ウイルス8(AAV8)の構築および注射
【0201】
マウス肝臓においてヒトPSMP遺伝子を過剰発現するAAV8送達系はVigene
Bioscience(Shangdong、China)により構築される。空の随伴アデノウイルス(AAV8-ヌル)が対照としての機能を果たした。ベクターゲノムの力価を、ベクターに特異的なプライマーを用いたqPCRによって測定した。マウスに、AAV8ベクターゲノムを2×1011個含有するウイルス100μlを尾静脈注射した。
サイトメトリックビーズアッセイ(CBA)
【0202】
マイクロスフェア(A37304、Life Technologies)を、ポリクローナルウサギ抗PSMP抗体を製造者の指示に従って用いてコーティングした。コーティングされたビーズを20%FBSで30分間ブロッキングし、次いで、試料に添加して室温で2時間置き、次いで、モノクローナル抗PSMP抗体を添加して1時間置いた。混合物をPEヤギ抗マウス抗体(eBiocience)と懸濁させて室温で30分間置いた。フローサイトメトリーによってデータを取得した。
【0203】
サイトカインIL-6、CCL2、TNF-α、およびIL-12p70をBD(商標)Cytometric Bead Array(CBA)Mouse Inflammation Kit(552364、BD Biosciences)を用いて製造者の指示に従って検出した。フローサイトメトリーによってデータを取得した。
肝臓の組織学的染色および免疫組織学的染色
【0204】
肝臓検体を10%ホルマリン中に保存し、4μm厚の切片に切り取った。次いで、切片をヘマトキシリン・エオシン(H&E)を用いて正常な手順によって、およびシリウスレッド染色を用いて1時間にわたって染色した。シリウスレッド染色を使用して、Ishakスコアリングシステムに従って線維症の程度をグレード付けした。肝線維症(hepatic fibrosis)をIshakスコアリングシステムに従ってグレード付けした:グレード0-線維症なし;グレード1-短い線維性隔壁を伴うまたは伴わない、一部の門脈域の線維性拡大;グレード2-短い線維性隔壁を伴うまたは伴わない、大部分の門脈域の線維性拡大;グレード3-時々の門脈-門脈(P-P)架橋を伴う大部分の門脈域の線維性拡大;グレード4-顕著な架橋[門脈-門脈(P-P)ならびに門脈-中心静脈(P-C)]を伴う門脈域の線維性拡大;グレード5-時々の小結節(不完全な肝硬変)を伴う顕著な架橋(P-Pおよび/またはP-C);グレード6-肝硬変、ほぼ確実または確実。累積的な組織学的スコアは、0(完全に正常)から6(肝硬変を伴う重症疾患)までにわたり得る。
免疫組織化学的検査
【0205】
免疫組織化学的検査(IHC)のために、肝臓検体を10%緩衝ホルマリン中に固定した。PSMP IHC染色をPei et al., J. Immunol. 192: 1878-86, 2014に記載されている通り実施した。α-SMA IHC染色のために、α-SMAに対するモノクローナル抗体(Abcam、ab7817)を使用した。
免疫ブロッティング分析
【0206】
溶解物中のタンパク質をSDS-PAGE電気泳動によって分離し、PVDF膜(Millipore Corporation、MA、USA)に移した。ブロットを、α-SMAに対するウサギポリクローナル抗体と一緒にインキュベートし、増強化学発光(ECL)システムによって可視化した。各バンドのデンシトメトリー測定値を、Quantity-One Protein Analysis Software(Bio-Rad Laboratories、USA)を使用して分析し、内部対照としてGAPDH(β-アクチン)に対して正規化した。
定量的リアルタイムPCRアッセイ
【0207】
組織または細胞をTrizol(Invitrogen)中にホモジナイズした。RT
MasterMix system(ABM Inc.)を使用することによって逆転写(RT)反応を実施した。SYBR Green PCR mix(ABM Inc.)を使用してリアルタイムPCRを行った。全ての遺伝子発現をGapdhに対して正規化した。
肝臓ヒドロキシプロリンの決定
【0208】
マウスの屠殺直後に得た肝臓試料を、改変酸加水分解プロトコールに供して、それらのヒドロキシプロリンレベルを決定した。肝臓のヒドロキシプロリン含有量は、肝臓1グラム当たりのヒドロキシプロリンのmg数として表される。
血清中ALT
【0209】
肝傷害を有するマウスの肝機能を、ASTおよびALTの血清中レベルに基づいてモニタリングした。酵素活性は1リットル当たりの単位数(U/L)として表される。
フローサイトメトリー
【0210】
肝臓単核細胞を取得し、5%ウシ胎仔血清中に20分間にわたってブロッキングし、次いで、CD45-FITC、CD11b-PE、CCR2-APC、Ly6C-PerCP Cy5.5、Ly6G-PerCP Cy5.5、F4/80-APC、およびCD11c-APC(BioLegend)を用いて4℃で30分間染色した。データをFACS caliber(BD Biosciences)から取得し、FlowJo 7.6(TreeStar、Ashland、OR、USA)を使用して分析した。
統計分析
【0211】
全てのデータが平均値±平均値の標準誤差として表される。2つの群間の統計学的有意差を、GraphPad Prism6.0(GraphPad Software、San Diego、CA、USA)を用いてスチューデントt検定によって分析した。2つの群間の統計的に有意な差異は、0.01<p<0.05、**0.001<p<0.01、および***p<0.001によって表される。
(実施例7)
肺線維症の間のPSMP発現およびPSMP欠乏または中和の影響
【0212】
肺線維症の間のPSMP発現およびPSMP欠乏の影響を、線維症のブレオマイシンモデルを使用して分析した。マウスモデルでは、PSMPシグナル伝達の中和によりブレオマイシン誘発肺線維症が緩和される。
方法
【0213】
本研究には6~8週齢の雌C57Bl/6J(WT)マウスを使用した。動物に、腹腔内麻酔した後、気管切開を行った。生理食塩水中に希釈した3.5U/kgのブレオマイシン(BLM)(日本化薬株式会社)を含有する単回注射液、または生理食塩水のみを含有する単回注射液(NS)(対照群)を気管内に滴注した。ブレオマイシンの14日後に、動物を安楽死させて、気管支肺胞洗浄を実施し、生化学的分析および組織学的分析用の肺試料を収集した。肺コラーゲンの総含有量をマッソントリクローム(Masson’s
trichome)染色により、製造者の指示に従って測定した。処置のために、マウスに、単回BLM注射後に10mg/kgのPSMP中和抗体3D5またはPBSを週に1回、3週間にわたって注射した(i.p.)。
【0214】
2群間の比較のためにスチューデントt検定を使用した。全ての検定に片側方法体系を利用した。0.05未満のP値を有意であるとみなした。反復実験は 少なくとも3回の独立した実験からなるものであった。
結果
【0215】
ブレオマイシンを滴注した動物の肺組織では、PSMPの上方調節が観察され(図12Aおよび12C)、これは、気管支肺胞洗浄において観察された現象と一致した(図12B)。WT動物と比較して、PSMP-/-マウスでは、体重喪失の減少が示された(図12D)。これと一致して、ブレオマイシンを滴注したWT動物において観察された肺コラーゲン含有量の増加がPSMP-/-マウスでは有意に低減した(図12E)。3D5を用いて処置したマウスでは、PBSで処置したマウスと比較して、線維芽細胞活性化のマーカーであるα-SMA発現の有意な低減が示された(図12F)。免疫組織化学的分析から、気道線維症のヒト肺ではPSMPの顕著な染色が認められるが、正常な組織ではPSMPの染色が認められないことが明らかになった(図12G)。
(実施例8)
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)モデルにおいてPSMPの欠乏により肝線維症からの保護がもたらされる
方法
【0216】
2日齢の乳仔マウスに、ストレプトゾトシン(STZ、Sigma、MO、USA)200μgを皮下投与した。マウスが4週齢に達したら高脂肪食(HFD、60kcal%の脂肪で構成される)を開始し、12週まで実験期間全体を通して継続した。線維症を、パラフィン切片を用いたシリウスレッド染色によって評価した。
結果
【0217】
PSMP-/-マウスの肝組織において、線維症の有意な低減が観察された(図13)。
(実施例9)
抗PSMP中和抗体を用いた急性GVHDの処置
方法
【0218】
本研究では、6~8週齢の雄BABL/cマウスがレシピエントとして働き、C57BL/6マウスがドナーであった。マウスの屠殺後にC57BL/6マウス由来の脾臓CD3+T細胞および骨髄細胞を分離した。細胞をBABL/cマウスに注入する12時間前に、レシピエントマウスをCo60放射線の2回の線量(各線量4Gy、合計8Gy)に曝露させた。CD3+細胞および骨髄細胞を5×10個と1×10個の比で混合し、BABL/cマウスに静脈内注射した。注入から1カ月の期間中(急性GVHD(aGVHD)期間)、2つの群(mAb 3D5処置群およびIgG対照群)のそれぞれについて、マウスの体重および生存率を2日毎にモニタリングした。
【0219】
PSMPの中和抗体である3D5を毎週、細胞注入後に5mg/kgの用量で腹腔内に注入し、また、陰性対照処置としてマウスIgGを使用した。
結果
【0220】
抗PSMP中和抗体により、aGVHDマウスの生存時間が延長した。体重喪失が30%を超えるまでに達したマウスを生存できないと定義し、屠殺した。図14に示される通り、aGVHDマウスは注入後約19日目に死亡したが、3D5処置群のマウスは注入後約24日目に死亡した。IgGで処置したマウスまたは3D5で処置したマウスの2群におけるaGVHDマウスの生存時間を要約し、有意差を算出した。aGVHDマウスの生存時間には、IgG処置群と3D5処置群との間で有意差が示された。
(実施例10)
慢性エタノール給餌モデルにおいてPSMPシグナル伝達の中和または欠乏により脂肪肝および線維症が緩和される
方法
マウスモデル
【0221】
慢性エタノール給餌モデルでは、等カロリーであり、脂肪(カロリーの35%)およびタンパク質(カロリーの18%)に関して同じ組成を有する市販の対照およびエタノールLieber-DeCarli食を使用する。炭水化物の含有量は、対照食では総カロリーの47%であり(デキストリン-マルトース)、エタノール食では総カロリーの11%であり、炭水化物カロリーの最大36%がエタノールで置き換えられている。
【0222】
エタノールLieber-DeCarli食を用いた慢性エタノール給餌モデルに関しては、10週齢の雌マウス(体重約22g)を、対照食を5日間給餌することによって液体食に順化させた。エタノール由来カロリーのパーセンテージを1週間の期間にわたって次第に上昇させ、次いで、5%エタノール食で8週間維持した。マウスを、実験全体を通してペアフィードした。
【0223】
慢性+過度のアルコール給餌モデルに関しては、8週齢の雌マウス(体重約20g)を、対照食を5日間給餌することによって液体食に順化させた。エタノール由来カロリーのパーセンテージを1週間の期間にわたって次第に上昇させ、次いで、5%エタノール食で10日間維持した。11日目に、マウスに単回用量のエタノール(体重1kg当たり5g、31.5%エタノール)を強制飼養した。強制飼養は常に早朝に実施した。強制飼養後、マウスをエタノール食で保持し、温暖なブランケット上のケージで水を循環させて保持した。強制飼養後、マウスは動きが遅かったが、意識はあり、4~6時間以内に正常な挙動に戻った。マウスを常に強制飼養の9時間後に安楽死させた。
【0224】
慢性エタノール給餌モデルにおける抗体による処置に関しては、マウスに10mg/kgのPSMP中和抗体3D5またはPBSを週に1回、4週間にわたって注射した(i.p.)(アルコール給餌の第5週から開始して第8週の間中、1週間の中間時点で)。慢性+過度のアルコール給餌モデルにおける抗体による処置に関しては、マウスに20mg/kgの3D5またはPBSを強制飼養の1時間前に注射した(i.p.)。
血清脂質含有量
【0225】
血清トリグリセリドまたはコレステロール含有量を、トリグリセリドまたはコレステロールアッセイキット(Zhong Sheng、Beijing、China)を使用して決定した。
病理組織検査
【0226】
肝臓形態を調査し、肝線維症を評価するために、ヘマトキシリン・エオシン(H&E)染色およびシリウスレッド染色を実施した。肝線維症をシリウスレッド染色によって定量した。肝臓検体を10%中性緩衝ホルマリン中に固定し、パラフィンに包埋し、4μmの切片に切り取った。肝臓内の脂肪の蓄積を分析するために、凍結試料から10μmの切片を切り取り、オイルレッドO(Solarbio Science&Technology,Co,Ltd.Beijing、China)を用いて10分間染色した。これらのスライドを水ですすぎ、マイアーのヘマトキシリンで対比染色し、光学顕微鏡法によって分析した。少なくとも10倍(×200)視野で陽性領域を計算した。
肝臓の免疫組織化学染色
【0227】
免疫組織化学染色のために、切片を、10%ヤギ血清溶液を用いて室温で30分間ブロッキングし、その後、α-SMAに対する一次抗体(Abcam、ab32575)と一緒に4℃で終夜インキュベートした。切片を、二次抗体(ZSGB-Bio)および3,3-ジアミノベンジジン(DAB)と一緒にインキュベートし、その後、H&E染色を用いた簡単な対比染色を行い、および中性ガムでマウントした。
生化学的アッセイ
【0228】
アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の血清中レベルを、標準の酵素的手順を使用し、製造者の指示に従って測定した(Nanjing Jiancheng Bioengineering Institute、Nanjing、China)。血清および肝臓中トリグリセリドまたはコレステロール含有量を、トリグリセリドまたはコレステロールアッセイキット(Zhong Sheng、Beijing、China)を使用して決定した。
逆転写反応および定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT-qPCR)
【0229】
組織または細胞をTRIzol(Life Technologies、15596018)中にホモジナイズした。逆転写反応を、Hifair II 1st Strand cDNA Synthesis SuperMix(Yeasen Biotech、11120ES60)を使用して実施した。定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応を、Hieff qPCR SYBR Green Master mix (Yeasen Biotech、11202ES03)を使用して行った。全ての遺伝子発現レベルをGapdhに対して正規化した。
結果
【0230】
血清脂質含有量の分析により、エタノール給餌後、3D5で処置したマウスではPBSで処置したマウスよりもトリグリセリドおよびコレステロールのレベルが低いことが確認された(図15Bおよび15C)。肝臓ヘマトキシリン・エオシン(H&E)およびオイルレッドO染色により、3D5で処置したエタノール給餌マウスではPBSで処置したエタノール給餌マウスよりも脂肪症および線維症の程度が低いことが明らかになった(図15D~15F)。PparaおよびSrebp-1 mRNAの肝臓での発現レベルをRT-qPCRによって測定した。これらの所見と一致して、エタノール給餌マウスにおいて、3D5による処置では、PBSによる処置と比して、Srebp-1の発現が下方調節され、Pparaの発現が上方調節された(図15Gおよび15H)。肝線維症はシリウスレッド染色によってさらに決定された。図15Iおよび15Jに例示される通り、PBS処置群では、マウスは3D5で処置したマウスよりも大きなシリウスレッドを有した。さらに、慢性+過度のアルコール給餌モデルにおいて肝臓における免疫細胞の組成をフローサイトメトリー分析によって調査した。3D5で処置したマウスでは浸潤性肝臓マクロファージ(iMΦ、F4/80CD11bhigh)の蓄積が低減した(図15K)。
【0231】
慢性+過度のアルコール給餌モデルでは(図15L)、肝臓脂質含有量の分析により、エタノール給餌後、3D5で処置したマウスが同様にPBSで処置したマウスよりも低いレベルのトリグリセリドおよびコレステロールを有することが確認された(図15Mおよび15N)。肝臓ヘマトキシリン・エオシン(H&E)から、3D5で処置したエタノール給餌マウスではPBSで処置したエタノール給餌マウスよりも脂肪症の程度が低いことが明らかになった(図15O)。肝臓における免疫細胞の組成もフローサイトメトリー分析によって調査した。3D5で処置したマウスでは浸潤性肝臓マクロファージ(iMΦ、F4/80CD11bhigh)の蓄積が低減した(図15P)。
【0232】
慢性+過度のアルコール給餌モデルでは、H&EおよびオイルレッドO染色によって評価して、Psmp-/-マウスではWTマウスと比較して有意に減弱した肝傷害および脂肪症が示された(図15Qおよび15R)。アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の血清中レベルがPsmp-/-マウスにおいて減少することが示され、これにより、肝損傷の改善が示される(図15S)。一貫して、Psmp-/-マウスではWTマウスと比較してSrebp-1の発現が下方調節され、Pparaの発現が上方調節された(図15Tおよび15U)。
(実施例11)
マウス肝傷害および線維症ではPSMP発現が上方調節される
方法
【0233】
急性肝傷害を誘発するために、6~8週齢の雄WTマウスおよびPsmp-/-マウスに対して、アセトアミノフェン(APAP、体重1kg当たり300mg、温かいPBS(55℃)中に溶解させたもの(Sigma-Aldrich)の単回i.p.注射による誘発を行った(n=5/群)。対照マウスは同様の体積のビヒクルを受けた。注射の24時間後にマウスを安楽死させた。
【0234】
5-ジエトキシカルボニル-1,4-ジヒドロコリジン(DDC)食に関しては、8週齢の雄WTマウスに0.1%DDC(Sigma-Aldrich、St Louis、MO)を補充した食餌を4週間にわたって給餌した(n=5/群)。対照マウスは、標準のマウス食を受けた。抗体による処置に関しては、マウスに5mg/kgのPSMP中和抗体3D5またはmIgGを第3週から第4週まで週に2回注射した(i.p.)。
結果
【0235】
DDC食によって誘発された肝線維症のマウスモデルまたはアセトアミノフェン(APAP)処置によるマウス急性肝傷害モデルでは、対照マウス由来の肝臓と比較してPSMP発現が著しく増加した(図16A~16C)。
(実施例12)
DDCマウスにおいて、PSMP欠乏により肝線維症からの保護がもたらされる
【0236】
他の原因による肝線維症におけるPSMPの役割を分析するために、DDC食モデル(実施例11、方法を参照されたい)を用いた。DDC食モデルは、ヒト胆管線維症の臨床的特色を再現するものである。DDC給餌の4週間後、Psmp-/-マウスでは同様にシリウスレッド陽性領域およびα-SMA発現の有意な低減が示された(図17A~17D)。Psmp-/-マウスにおけるActa2、Col1a1、Tgfb1、Timp1およびPdgfrのmRNAレベルの有意な低下も観察された(図17E~17I)。
(実施例13)
PSMPシグナル伝達の中和によりマウスDDC誘発肝線維症が緩和される
【0237】
DDC食によって誘発される肝線維症(実施例11、方法を参照されたい)に対する3D5の治療的潜在性を評価するために、マウスに第3週から第4週まで3D5による処置を使用した(図18A)。H&E染色およびシリウスレッド染色アッセイにより、3D5による処置後、mIgG処置群と比較して肝傷害および線維症の低減が示された(図18B~18D)。したがって、3D5により、線維性肝臓におけるα-SMA発現が顕著に低減した(図18Bおよび18E)。定量的リアルタイムPCR(qRT-PCR)アッセイにより、3D5により、線維形成遺伝子(Acta2、Col1a1)のmRNAレベルも有意に低下したことが示された(図18Fおよび18G)。
(実施例14)
MCDマウスにおいて、PSMP欠乏により肝線維症からの保護がもたらされる
方法
【0238】
メチオニン-コリン欠乏(MCD)食に関しては、8週齢の雄WTマウスおよびPsmp-/-マウスにMCD食(Research Diets、A02082002B)を6週間にわたって給餌した(n=5/群)。対照マウスは標準のマウス食を受けた。
結果
【0239】
メチオニン-コリン欠乏(MCD)食誘発マウス非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)モデルを構築した。MCD給餌の6週間後、WTマウスではPSMP発現が著しく増加した(図19A)。Psmp-/-マウスでは、WTマウスと比較して、シリウスレッドでの領域染色の有意な減少が示された(図19B~19D)。Psmp-/-マウスの肝臓におけるActa2、Col1a1およびTgfb1のmRNA発現レベルの有意な減少も検出された(図19E~19G)。
(実施例15)
MCD誘発NASHモデルにおいてPSMP中和抗体による処置によりマウス肝線維症が緩和される
方法
【0240】
抗体による処置に関しては、8週齢の雄マウスにメチオニンおよびコリン欠乏(MCD)食を5.5週間にわたって給餌した。マウスに10mg/kgのPSMP中和抗体3D5またはPBSを第4週から第5.5週まで週に1回注射した(i.p.)。別の抗体による処置に関しては、8週齢の雄マウスにMCD食を8週間にわたって給餌した。マウスに10mg/kgのPSMP中和抗体3D5またはPBSを第5週から第8週まで週に1回注射した(i.p.)。
結果
【0241】
MCD食によって誘発される肝線維症に対するPSMP中和抗体3D5の治療的潜在性を評価するために、マウスに第4週から第5.5週まで3D5による処置を使用した(図20A)。H&E染色およびシリウスレッド染色アッセイならびにその定量により、3D5による処置後に、PBS処置群と比較して肝傷害および線維症の低減が示された(図20B~20D)。MCDマウスにおいて第5週から第8週までさらなる3D5による処置を行った(図20E)。シリウスレッドおよびα-SMA免疫組織化学染色およびその定量により、3D5による処置後にPBS処置群と比較して肝線維症の低減が示された(図20F-20I)。
(実施例16)
PSMPの欠乏または中和によりマウス急性腎傷害(AKI)および慢性腎疾患(CKD)が緩和される
方法
マウスモデル
【0242】
UUO群では、6週齢の雄マウス(約20g)の左側の尿管を腹部の左側腹部切開によって露出させ、4-0絹糸縫合を用いて2回結紮した。処置のために、マウスに5mg/kgの3D5またはPBSをUUO後1日目、4日目に注射した(i.p.)。5日後にマウスを屠殺した。
【0243】
グリセロールにより誘発された横紋筋融解症群では、マウスの大腿筋に7.5ml/kgの、PBSで希釈した50%グリセロールを筋肉内注射した。処置のために、マウスに、グリセロールの注射後に5mg/kgの3D5またはPBSを注射した(i.p.)。48時間後にマウスを屠殺した。
【0244】
その後、左側の腎臓を取り出し、横方向に切断し、病理組織検査のために4%パラホルムアルデヒド中に固定したか、または他の実験のために液体窒素でスナップ凍結した。
生化学的アッセイ
【0245】
血清中クレアチニンおよび血中尿素窒素レベルの決定は、臨床の場での腎機能の確認を補助することにおいて大きな価値があるものである。クレアチニンの血清中レベルおよび血中尿素窒素(BUN)を、アッセイキットを使用し、製造者の指示に従って測定した(Nanjing Jiancheng Bioengineering Institute、Nanjing、China)。
病理組織検査および免疫組織化学的分析
【0246】
パラホルムアルデヒドに固定した腎組織をパラフィンに包埋し、4μmに切片作製した。キシレンで切片を脱ろうし、漸減エタノール濃度で再水化し、シリウスレッドで染色した。免疫組織化学染色のために、切片を、10%ヤギ血清溶液を用いて室温で30分間ブロッキングし、その後、α-SMAに対する一次抗体(Abcam、ab32575)と一緒に4℃で終夜インキュベートした。切片を、二次抗体(ZSGB-Bio)および3、3-ジアミノベンジジン(DAB)と一緒にインキュベートし、その後、H&E染色を用いて簡単な対比染色を行い、中性ガムでマウントした。陽性領域を少なくとも10倍(×200)視野で計算した。
結果
ヒト腎疾患ではPSMP発現が上方調節される
【0247】
PSMP発現が腎疾患に関連するかどうかを決定するために、PSMPレベルを免疫組織化学的検査によって最初に調査した。付近の明細胞癌からのヒト正常腎組織ではPSMPの陰性または弱い発現が示された。ループス腎炎、IgA腎炎、および膜性糸球体腎炎の尿細管においてPSMPが上方調節された(図21Aおよび21B)。
PSMPの欠乏および中和により、グリセロールにより誘発された横紋筋融解症が緩和される
【0248】
グリセロールにより誘発された横紋筋融解症のPsmp-/-マウスでは、血清中クレアチニンによって評価して、WTマウスと比較して腎傷害の有意な減弱が示された(図21C)。同時に、血清中クレアチニンおよびBUNレベルを使用して決定される、グリセロール誘発横紋筋融解症のマウスに対するPSMP中和抗体3D5の治療効果を調査した(図21Dおよび21E)。
UUOモデルにおいて、PSMPシグナル伝達の中和により腎線維症が緩和される
【0249】
UUO誘発腎線維症のマウスに対するPSMP中和抗体3D5の治療効果を調査するために、マウスを、UUO後1日目および4日目に3D5を用いて処置した(図21F)。シリウスレッド染色アッセイにより、3D5による処置後にPBS処置群と比較して腎線維症の低減が示された(図21Gおよび21H;灰色の棒-3D5処置群、黒色の棒-PBS処置群)。
(実施例17)
抗PSMP中和抗体を用いた慢性GVHDの処置
【0250】
慢性GVHDは、自己免疫様症候群として現れる多様な臨床的特色のある症候群である。マウスにおけるcGVHD器官損傷には、皮膚、消化管、肝臓、肺、唾液腺、または口腔粘膜が関与し得る。一般に、例えば、Schroeder et al., Dis.
model Mech. 4: 318-333, 2011を参照されたい。
方法
【0251】
本研究では慢性GVHD(cGVHD)モデルを、6週齢の雄DBA2マウス由来の脾臓細胞7×10個を6週齢の雌B6D2F1マウスに照射を伴わずに注入することによって確立した。抗PSMP中和抗体3D5を2.5mg/kgの用量で、毎週、細胞注入後に腹腔内に注入し、陰性対照処置としてマウスIgGを使用した。マウスを体重および外見についてモニタリングし、脾臓細胞注入後80日目に肝機能のマーカーを検出した。
結果
【0252】
抗PSMP中和抗体3D5により、cGVHDマウスの進行が逆転した。図22Aに示される通り、対照群と3D5処置群との間で体重に差異はなかった。脾臓細胞注入後40日目に、眼瞼領域に毛皮の脱落が対照群のマウスで観察されたが、中和抗体3D5群では観察されなかった。図22Bに示される通り、40日目から80日目まで毛皮の脱落は徐々に重度になったが、中和抗体3D5群では毛皮の脱落は観察されなかった。脾臓細胞注入後80日目に、2つの群から末梢血を採取し、肝機能のマーカーを検出した。対照群由来の血清試料中の肝損傷のマーカーであるALTおよびASTは、3D5処置群におけるものよりも有意に高かった(図22Cおよび22D)。
(実施例18)
抗PSMP中和抗体を用いたループスの処置
方法
【0253】
雄DBA/2→雌B6D2F1移植片対宿主病モデルは、マウスループス腎炎モデルとしても周知である。本研究では、マウスループスモデルを、6週齢の雄DBA/2マウス由来の脾臓細胞7×10個を6週齢の雌B6D2F1マウスに注入することによって確立した。マウスIgGまたは抗PSMP中和抗体3D5を2.5mg/kgの用量で、毎週、細胞注入後に腹腔内に注入した。脾臓細胞注入後80日目に腎機能のマーカーを検出した。血清中の総IgGを検出するためのELISAのために、マウスの尾静脈から採血し、血清試料を得た。SigmaのMouse IgG ELISA kit(カタログ番号11333151001)によって、製造者のプロトコールに従って総IgGを検出した。糸球体内の自己抗体沈着を検出するために、腎臓を包埋し、液体窒素でスナップ凍結した。切片(8μm)をアセトンで固定し、FITCとコンジュゲートした抗マウスIgG(BD Biosciences)で染色した。蛍光を共焦点顕微鏡法によって調査した。
結果
【0254】
ループス腎炎患者由来の腎組織においてPSMPの発現が上方調節されることが見いだされたので(実施例16ならびに図21Aおよび21Bを参照されたい)、マウスループスモデルに対するPSMP中和抗体3D5を探究した。脾臓細胞注入後80日目に、3D5で処置したマウスの腎機能を検出し、対照群と比較した。血清中クレアチニンおよび血中尿素窒素(BUN)のレベルによって示される通り、PSMP中和抗体3D5群では対照群と比べて腎機能が有意に改善した(図23Aおよび23B)。ループスにおける腎傷害は腎組織内に沈着した自己抗体に関連し得る。この研究により、PSMP中和抗体3D5により、対照群と比較して血清総IgGレベルおよび糸球体内の自己抗体沈着を低減することができることが示され(図23Cおよび23D)、これにより、PSMPに対する中和抗体3D5がループスの間の腎臓保護の潜在性を有することが示される。
実施形態
【0255】
実施形態1.肝線維症を処置するための方法であって、肝線維症を有する対象に、有効量のPC3分泌型マイクロタンパク質(PSMP)アンタゴニストを投与することを含む方法。
【0256】
実施形態2.PSMPアンタゴニストが、PSMPに特異的に結合する可溶性タンパク質である、実施形態1に記載の方法。
【0257】
実施形態3.可溶性タンパク質が、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)および配列番号5に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体とPSMPへの結合に関して競合するものである、実施形態2に記載の方法。
【0258】
実施形態4.可溶性タンパク質が抗体である、実施形態2に記載の方法。
【0259】
実施形態5.抗体が、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)および配列番号5に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む第2の抗体とPSMPへの結合に関して競合するものである、実施形態4に記載の方法。
【0260】
実施形態6.抗体が、相補性決定領域(CDR)であるCDR-H1Ab、CDR-H2Ab、およびCDR-H3Abを含むVHドメインを含み、前記VH CDRのセット(said set of VH CDRs)が、CDRの参照セットであるCDR-H1Ref、CDR-H2Ref、およびCDR-H3Refと比べて3つまたはそれ未満のアミノ酸置換を有し、CDR-H1Refが、配列番号4のCDR-H1であり、CDR-H2Refが、配列番号4のCDR-H2であり、CDR-H3Refが、配列番号4のCDR-H3である、実施形態5に記載の方法。
【0261】
実施形態7.CDR-H1Abが、配列番号4のCDR-H1であり、CDR-H2Abが、配列番号4のCDR-H2であり、CDR-H3Abが、配列番号4のCDR-H3である、実施形態6に記載の方法。
【0262】
実施形態8.各VH CDRが、CDRに関するChothia定義、Kabat定義、AbM定義、または接触定義に従って定義されたものである、実施形態6に記載の方法。
【0263】
実施形態9.各VH CDRが、CDRに関するChothia定義、Kabat定義、AbM定義、または接触定義に従って定義されたものである、実施形態7に記載の方法。
【0264】
実施形態10.各VH CDRが、CDRに関するChothia定義に従って定義されたものであり、したがって、CDR-H1Refが、配列番号4の残基31~35に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-H2Refが、配列番号4の残基50~69に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-H3Refが、配列番号4の残基99~108に示されるアミノ酸配列を有する、実施形態8に記載の方法。
【0265】
実施形態11.CDR-H1Abが、配列番号4の残基31~35に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-H2Abが、配列番号4の残基50~69に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-H3Abが、配列番号4の残基99~108に示されるアミノ酸配列を有する、実施形態10に記載の方法。
【0266】
実施形態12.抗体が、相補性決定領域(CDR)であるCDR-L1Ab、CDR-L2Ab、およびCDR-L3Abを含むVLドメインを含み、前記VL CDRのセット(said set of VL CDRs)が、CDRの参照セットであるCDR-L1Ref、CDR-L2Ref、およびCDR-L3Refと比べて3つまたはそれ未満のアミノ酸置換を有し、CDR-L1Refが、配列番号5のCDR-L1であり、CDR-L2Refが、配列番号5のCDR-L1であり、CDR-L3Refが、配列番号5のCDR-L1である、実施形態5から11のいずれか1つに記載の方法。
【0267】
実施形態13.CDR-L1Abが、配列番号5のCDR-L1であり、CDR-L2Abが、配列番号5のCDR-L2であり、CDR-L3Abが、配列番号5のCDR-L3である、実施形態12に記載の方法。
【0268】
実施形態14.各VL CDRが、CDRに関するChothia定義、Kabat定義、AbM定義、または接触定義に従って定義されたものである、実施形態12に記載の方法。
【0269】
実施形態15.各VL CDRが、CDRに関するChothia定義、Kabat定義、AbM定義、または接触定義に従って定義されたものである、実施形態13に記載の方法。
【0270】
実施形態16.各VL CDRが、CDRに関するChothia定義に従って定義されたものであり、したがって、CDR-L1Refが、配列番号5の残基24~34に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-L2Refが、配列番号5の残基50~56に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-L3Refが、配列番号5の残基89~97に示されるアミノ酸配列を有する、実施形態14に記載の方法。
【0271】
実施形態17.CDR-L1Abが、配列番号5の残基24~34に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-L2Abが、配列番号5の残基50~56に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-L3Abが、配列番号5の残基89~97に示されるアミノ酸配列を有する、実施形態16に記載の方法。
【0272】
実施形態18.抗体が、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有するVHドメインを含む、実施形態11に記載の方法。
【0273】
実施形態19.抗体が、配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するVLドメインを含む、実施形態17に記載の方法。
【0274】
実施形態20.抗体が、ヒト化抗体またはキメラ抗体である、実施形態4から17のいずれか1つに記載の方法。
【0275】
実施形態21.抗体が、ヒト抗体である、実施形態4または5に記載の方法。
【0276】
実施形態22.抗体が、単鎖抗体である、実施形態4から19のいずれか1つに記載の方法。
【0277】
実施形態23.抗体が、二重特異性抗体である、実施形態4から19のいずれか1つに記載の方法。
【0278】
実施形態24.抗体が、免疫グロブリン定常領域をさらに含む、実施形態4から19のいずれか1つに記載の方法。
【0279】
実施形態25.肝線維症が、肝硬変に進行している、実施形態1から24のいずれか1つに記載の方法。
【0280】
実施形態26.肝線維症が、B型肝炎ウイルス(HBV)誘発肝線維症、C型肝炎ウイルス(HCV)誘発肝線維症、またはアルコール誘発肝線維症である、実施形態1から25のいずれか1つに記載の方法。
【0281】
実施形態27.肝硬変が、原発性胆汁性肝硬変である、実施形態25に記載の方法。
【0282】
実施形態28.肝線維症が、非アルコール性脂肪性肝疾患に関連するものである、実施形態1から25のいずれか1つに記載の方法。
【0283】
実施形態29.非アルコール性脂肪性肝疾患が、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である、実施形態28に記載の方法。
【0284】
実施形態30.肝線維症の処置が、併用療法である、実施形態1から29のいずれか1つに記載の方法。
【0285】
実施形態31.肝線維症の処置に使用するためのPC3分泌型マイクロタンパク質(PSMP)アンタゴニスト。
【0286】
実施形態32.肝線維症を処置するための医薬の製造における、PC3分泌型マイクロタンパク質(PSMP)アンタゴニストの使用。
【0287】
実施形態33.PSMPアンタゴニストが、PSMPに特異的に結合する可溶性タンパク質である、実施形態31に記載のPSMPアンタゴニストまたは実施形態32に記載の使用。
【0288】
実施形態34.可溶性タンパク質が、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)および配列番号5に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体とPSMPへの結合に関して競合するものである、実施形態33に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0289】
実施形態35.可溶性タンパク質が抗体である、実施形態33に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0290】
実施形態36.抗体が、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)および配列番号5に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む第2の抗体とPSMPへの結合に関して競合するものである、実施形態35に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0291】
実施形態37.抗体が、相補性決定領域(CDR)であるCDR-H1Ab、CDR-H2Ab、およびCDR-H3Abを含むVHドメインを含み、前記VH CDRのセットが、CDRの参照セットであるCDR-H1Ref、CDR-H2Ref、およびCDR-H3Refと比べて3つまたはそれ未満のアミノ酸置換を有し、CDR-H1Refが、配列番号4のCDR-H1であり、CDR-H2Refが、配列番号4のCDR-H2であり、CDR-H3Refが、配列番号4のCDR-H3である、実施形態36に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0292】
実施形態38.CDR-H1Abが、配列番号4のCDR-H1であり、CDR-H2Abが、配列番号4のCDR-H2であり、CDR-H3Abが、配列番号4のCDR-H3である、実施形態37に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0293】
実施形態39.各VH CDRが、CDRに関するChothia定義、Kabat定義、AbM定義、または接触定義に従って定義されたものである、実施形態37に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0294】
実施形態40.各VH CDRが、CDRに関するChothia定義、Kabat定義、AbM定義、または接触定義に従って定義されたものである、実施形態38に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0295】
実施形態41.各VH CDRが、CDRに関するChothia定義に従って定義されたものであり、したがって、CDR-H1Refが、配列番号4の残基31~35に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-H2Refが、配列番号4の残基50~69に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-H3Refが、配列番号4の残基99~108に示されるアミノ酸配列を有する、実施形態39に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0296】
実施形態42.CDR-H1Abが、配列番号4の残基31~35に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-H2Abが、配列番号4の残基50~69に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-H3Abが、配列番号4の残基99~108に示されるアミノ酸配列を有する、実施形態41に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0297】
実施形態43.抗体が、相補性決定領域(CDR)であるCDR-L1Ab、CDR-L2Ab、およびCDR-L3Abを含むVLドメインを含み、前記VL CDRのセットが、CDRの参照セットであるCDR-L1Ref、CDR-L2Ref、およびCDR-L3Refと比べて3つまたはそれ未満のアミノ酸置換を有し、CDR-L1Refが、配列番号5のCDR-L1であり、CDR-L2Refが、配列番号5のCDR-L1であり、CDR-L3Refが、配列番号5のCDR-L1である、実施形態37から42のいずれか1つに記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0298】
実施形態44.CDR-L1Abが、配列番号5のCDR-L1であり、CDR-L2Abが、配列番号5のCDR-L2であり、CDR-L3Abが、配列番号5のCDR-L3である、実施形態43に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0299】
実施形態45.各VL CDRが、CDRに関するChothia定義、Kabat定義、AbM定義、または接触定義に従って定義されたものである、実施形態43に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0300】
実施形態46.各VL CDRが、CDRに関するChothia定義、Kabat定義、AbM定義、または接触定義に従って定義されたものである、実施形態44に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0301】
実施形態47.各VL CDRが、CDRに関するChothia定義に従って定義されたものであり、したがって、CDR-L1Refが、配列番号5の残基24~34に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-L2Refが、配列番号5の残基50~56に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-L3Refが、配列番号5の残基89~97に示されるアミノ酸配列を有する、実施形態45に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0302】
実施形態48.CDR-L1Abが、配列番号5の残基24~34に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-L2Abが、配列番号5の残基50~56に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-L3Abが、配列番号5の残基89~97に示されるアミノ酸配列を有する、実施形態47に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0303】
実施形態49.抗体が、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有するVHドメインを含む、実施形態42に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0304】
実施形態50.抗体が、配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するVLドメインを含む、実施形態48に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0305】
実施形態51.抗体が、ヒト化抗体またはキメラ抗体である、実施形態35から48のいずれか1つに記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0306】
実施形態52.抗体が、ヒト抗体である、実施形態35または36に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0307】
実施形態53.抗体が、単鎖抗体である、実施形態35から50のいずれか1つに記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0308】
実施形態54.抗体が、二重特異性抗体である、実施形態35から50のいずれか1つに記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0309】
実施形態55.抗体が、免疫グロブリン定常領域をさらに含む、実施形態35から50のいずれか1つに記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0310】
実施形態56.肝線維症が、肝硬変に進行している、実施形態31から55のいずれか1つに記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0311】
実施形態57.肝線維症が、B型肝炎ウイルス(HBV)誘発肝線維症、C型肝炎ウイルス(HCV)誘発肝線維症、またはアルコール誘発肝線維症である、実施形態31から56のいずれか1つに記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0312】
実施形態58.肝硬変が、原発性胆汁性肝硬変である、実施形態56に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0313】
実施形態39.肝線維症が、非アルコール性脂肪性肝疾患に関連するものである、実施形態31から56のいずれか1つに記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0314】
実施形態60.非アルコール性脂肪性肝疾患が、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である、実施形態59に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0315】
実施形態61.肝線維症の処置が、併用療法である、実施形態31から60のいずれか1つに記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0316】
実施形態62.肺線維症を処置するための方法であって、肺線維症を有する対象に、有効量のPC3分泌型マイクロタンパク質(PSMP)アンタゴニストを投与することを含む方法。
【0317】
実施形態63.PSMPアンタゴニストが、PSMPに特異的に結合する可溶性タンパク質である、実施形態62に記載の方法。
【0318】
実施形態64.可溶性タンパク質が、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)および配列番号5に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体とPSMPへの結合に関して競合するものである、実施形態63に記載の方法。
【0319】
実施形態65.可溶性タンパク質が抗体である、実施形態63に記載の方法。
【0320】
実施形態66.抗体が、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)および配列番号5に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む第2の抗体とPSMPへの結合に関して競合するものである、実施形態65に記載の方法。
【0321】
実施形態67.抗体が、相補性決定領域(CDR)であるCDR-H1Ab、CDR-H2Ab、およびCDR-H3Abを含むVHドメインを含み、前記VH CDRのセットが、CDRの参照セットであるCDR-H1Ref、CDR-H2Ref、およびCDR-H3Refと比べて3つまたはそれ未満のアミノ酸置換を有し、CDR-H1Refが、配列番号4のCDR-H1であり、CDR-H2Refが、配列番号4のCDR-H2であり、CDR-H3Refが、配列番号4のCDR-H3である、実施形態66に記載の方法。
【0322】
実施形態68.CDR-H1Abが、配列番号4のCDR-H1であり、CDR-H2Abが、配列番号4のCDR-H2であり、CDR-H3Abが、配列番号4のCDR-H3である、実施形態67に記載の方法。
【0323】
実施形態69.各VH CDRが、CDRに関するChothia定義、Kabat定義、AbM定義、または接触定義に従って定義されたものである、実施形態67に記載の方法。
【0324】
実施形態70.各VH CDRが、CDRに関するChothia定義、Kabat定義、AbM定義、または接触定義に従って定義されたものである、実施形態68に記載の方法。
【0325】
実施形態71.各VH CDRが、CDRに関するChothia定義に従って定義されたものであり、したがって、CDR-H1Refが、配列番号4の残基31~35に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-H2Refが、配列番号4の残基50~69に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-H3Refが、配列番号4の残基99~108に示されるアミノ酸配列を有する、実施形態69に記載の方法。
【0326】
実施形態72.CDR-H1Abが、配列番号4の残基31~35に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-H2Abが、配列番号4の残基50~69に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-H3Abが、配列番号4の残基99~108に示されるアミノ酸配列を有する、実施形態71に記載の方法。
【0327】
実施形態73.抗体が、相補性決定領域(CDR)であるCDR-L1Ab、CDR-L2Ab、およびCDR-L3Abを含むVLドメインを含み、前記VL CDRのセットが、CDRの参照セットであるCDR-L1Ref、CDR-L2Ref、およびCDR-L3Refと比べて3つまたはそれ未満のアミノ酸置換を有し、CDR-L1Refが、配列番号5のCDR-L1であり、CDR-L2Refが、配列番号5のCDR-L1であり、CDR-L3Refが、配列番号5のCDR-L1である、実施形態66から72のいずれか1つに記載の方法。
【0328】
実施形態74.CDR-L1Abが、配列番号5のCDR-L1であり、CDR-L2Abが、配列番号5のCDR-L2であり、CDR-L3Abが、配列番号5のCDR-L3である、実施形態73に記載の方法。
【0329】
実施形態75.各VL CDRが、CDRに関するChothia定義、Kabat定義、AbM定義、または接触定義に従って定義されたものである、実施形態73に記載の方法。
【0330】
実施形態76.各VL CDRが、CDRに関するChothia定義、Kabat定義、AbM定義、または接触定義に従って定義されたものである、実施形態74に記載の方法。
【0331】
実施形態77.各VL CDRが、CDRに関するChothia定義に従って定義されたものであり、したがって、CDR-L1Refが、配列番号5の残基24~34に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-L2Refが、配列番号5の残基50~56に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-L3Refが、配列番号5の残基89~97に示されるアミノ酸配列を有する、実施形態75に記載の方法。
【0332】
実施形態78.CDR-L1Abが、配列番号5の残基24~34に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-L2Abが、配列番号5の残基50~56に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-L3Abが、配列番号5の残基89~97に示されるアミノ酸配列を有する、実施形態77に記載の方法。
【0333】
実施形態79.抗体が、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有するVHドメインを含む、実施形態72に記載の方法。
【0334】
実施形態80.抗体が、配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するVLドメインを含む、実施形態78に記載の方法。
【0335】
実施形態81.抗体が、ヒト化抗体またはキメラ抗体である、実施形態65から78のいずれか1つに記載の方法。
【0336】
実施形態82.抗体が、ヒト抗体である、実施形態65または66に記載の方法。
【0337】
実施形態83.抗体が、単鎖抗体である、実施形態65から80のいずれか1つに記載の方法。
【0338】
実施形態84.抗体が、二重特異性抗体である、実施形態65から80のいずれか1つに記載の方法。
【0339】
実施形態85.抗体が、免疫グロブリン定常領域をさらに含む、実施形態65から80のいずれか1つに記載の方法。
【0340】
実施形態86.肺線維症の処置が、併用療法である、実施形態65から84のいずれか1つに記載の方法。
【0341】
実施形態87.肺線維症の処置に使用するためのPC3分泌型マイクロタンパク質(PSMP)アンタゴニスト。
【0342】
実施形態88.肺線維症を処置するための医薬の製造における、PC3分泌型マイクロタンパク質(PSMP)アンタゴニストの使用。
【0343】
実施形態89.PSMPアンタゴニストが、PSMPに特異的に結合する可溶性タンパク質である、実施形態87に記載のPSMPアンタゴニストまたは実施形態88に記載の使用。
【0344】
実施形態90.可溶性タンパク質が、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)および配列番号5に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体とPSMPへの結合に関して競合するものである、実施形態89に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0345】
実施形態91.可溶性タンパク質が抗体である、実施形態89に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0346】
実施形態92.抗体が、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)および配列番号5に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む第2の抗体とPSMPへの結合に関して競合するものである、実施形態91に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0347】
実施形態93.抗体が、相補性決定領域(CDR)であるCDR-H1Ab、CDR-H2Ab、およびCDR-H3Abを含むVHドメインを含み、前記VH CDRのセットが、CDRの参照セットであるCDR-H1Ref、CDR-H2Ref、およびCDR-H3Refと比べて3つまたはそれ未満のアミノ酸置換を有し、CDR-H1Refが、配列番号4のCDR-H1であり、CDR-H2Refが、配列番号4のCDR-H2であり、CDR-H3Refが、配列番号4のCDR-H3である、実施形態92に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0348】
実施形態94.CDR-H1Abが、配列番号4のCDR-H1であり、CDR-H2Abが、配列番号4のCDR-H2であり、CDR-H3Abが、配列番号4のCDR-H3である、実施形態93に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0349】
実施形態95.各VH CDRが、CDRに関するChothia定義、Kabat定義、AbM定義、または接触定義に従って定義されたものである、実施形態93に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0350】
実施形態96.各VH CDRが、CDRに関するChothia定義、Kabat定義、AbM定義、または接触定義に従って定義されたものである、実施形態94に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0351】
実施形態97.各VH CDRが、CDRに関するChothia定義に従って定義されたものであり、したがって、CDR-H1Refが、配列番号4の残基31~35に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-H2Refが、配列番号4の残基50~69に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-H3Refが、配列番号4の残基99~108に示されるアミノ酸配列を有する、実施形態95に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0352】
実施形態98.CDR-H1Abが、配列番号4の残基31~35に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-H2Abが、配列番号4の残基50~69に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-H3Abが、配列番号4の残基99~108に示されるアミノ酸配列を有する、実施形態97に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0353】
実施形態99.抗体が、相補性決定領域(CDR)であるCDR-L1Ab、CDR-L2Ab、およびCDR-L3Abを含むVLドメインを含み、前記VL CDRのセットが、CDRの参照セットであるCDR-L1Ref、CDR-L2Ref、およびCDR-L3Refと比べて3つまたはそれ未満のアミノ酸置換を有し、CDR-L1Refが、配列番号5のCDR-L1であり、CDR-L2Refが、配列番号5のCDR-L1であり、CDR-L3Refが、配列番号5のCDR-L1である、実施形態92から98のいずれか1つに記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0354】
実施形態100.CDR-L1Abが、配列番号5のCDR-L1であり、CDR-L2Abが、配列番号5のCDR-L2であり、CDR-L3Abが、配列番号5のCDR-L3である、実施形態99に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0355】
実施形態101.各VL CDRが、CDRに関するChothia定義、Kabat定義、AbM定義、または接触定義に従って定義されたものである、実施形態99に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0356】
実施形態102.各VL CDRが、CDRに関するChothia定義、Kabat定義、AbM定義、または接触定義に従って定義されたものである、実施形態100に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0357】
実施形態103.各VL CDRが、CDRに関するChothia定義に従って定義されたものであり、したがって、CDR-L1Refが、配列番号5の残基24~34に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-L2Refが、配列番号5の残基50~56に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-L3Refが、配列番号5の残基89~97に示されるアミノ酸配列を有する、実施形態101に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0358】
実施形態104.CDR-L1Abが、配列番号5の残基24~34に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-L2Abが、配列番号5の残基50~56に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-L3Abが、配列番号5の残基89~97に示されるアミノ酸配列を有する、実施形態103に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0359】
実施形態105.抗体が、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有するVHドメインを含む、実施形態98に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0360】
実施形態106.抗体が、配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するVLドメインを含む、実施形態104に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0361】
実施形態107.抗体が、ヒト化抗体またはキメラ抗体である、実施形態91から104のいずれか1つに記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0362】
実施形態108.抗体が、ヒト抗体である、実施形態91または92に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0363】
実施形態109.抗体が、単鎖抗体である、実施形態91から106のいずれか1つに記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0364】
実施形態110.抗体が、二重特異性抗体である、実施形態91から106のいずれか1つに記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0365】
実施形態111.抗体が、免疫グロブリン定常領域をさらに含む、実施形態91から106のいずれか1つに記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0366】
実施形態112.肺線維症の処置が併用療法である、実施形態87から111のいずれか1つに記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0367】
実施形態113.非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、アルコール性肝疾患(ALD)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、および原発性胆汁性胆管炎(PBC)からなる群から選択される疾患を処置するための方法であって、NAFLD、ALD、PSC、またはPBCを有する対象に、有効量のPC3分泌型マイクロタンパク質(PSMP)アンタゴニストを投与することを含む方法。
【0368】
実施形態114.非アルコール性脂肪性肝疾患が、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である、実施形態113に記載の方法。
【0369】
実施形態115.PSMPアンタゴニストが、PSMPに特異的に結合する可溶性タンパク質である、実施形態133または114に記載の方法。
【0370】
実施形態116.可溶性タンパク質が、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)および配列番号5に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体とPSMPへの結合に関して競合するものである、実施形態115に記載の方法。
【0371】
実施形態117.可溶性タンパク質が抗体である、実施形態115に記載の方法。
【0372】
実施形態118.抗体が、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)および配列番号5に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む第2の抗体とPSMPへの結合に関して競合するものである、実施形態117に記載の方法。
【0373】
実施形態119.抗体が、相補性決定領域(CDR)であるCDR-H1Ab、CDR-H2Ab、およびCDR-H3Abを含むVHドメインを含み、前記VH CDRのセットが、CDRの参照セットであるCDR-H1Ref、CDR-H2Ref、およびCDR-H3Refと比べて3つまたはそれ未満のアミノ酸置換を有し、CDR-H1Refが、配列番号4のCDR-H1であり、CDR-H2Refが、配列番号4のCDR-H2であり、CDR-H3Refが、配列番号4のCDR-H3である、実施形態118に記載の方法。
【0374】
実施形態120.CDR-H1Abが、配列番号4のCDR-H1であり、CDR-H2Abが、配列番号4のCDR-H2であり、CDR-H3Abが、配列番号4のCDR-H3である、実施形態119に記載の方法。
【0375】
実施形態121.各VH CDRが、CDRに関するChothia定義、Kabat定義、AbM定義、または接触定義に従って定義されたものである、実施形態119に記載の方法。
【0376】
実施形態122.各VH CDRが、CDRに関するChothia定義、Kabat定義、AbM定義、または接触定義に従って定義されたものである、実施形態120に記載の方法。
【0377】
実施形態123.各VH CDRが、CDRに関するChothia定義に従って定義されたものであり、したがって、CDR-H1Refが、配列番号4の残基31~35に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-H2Refが、配列番号4の残基50~69に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-H3Refが、配列番号4の残基99~108に示されるアミノ酸配列を有する、実施形態121に記載の方法。
【0378】
実施形態124.CDR-H1Abが、配列番号4の残基31~35に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-H2Abが、配列番号4の残基50~69に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-H3Abが、配列番号4の残基99~108に示されるアミノ酸配列を有する、実施形態123に記載の方法。
【0379】
実施形態125.抗体が、相補性決定領域(CDR)であるCDR-L1Ab、CDR-L2Ab、およびCDR-L3Abを含むVLドメインを含み、前記VL CDRのセットが、CDRの参照セットであるCDR-L1Ref、CDR-L2Ref、およびCDR-L3Refと比べて3つまたはそれ未満のアミノ酸置換を有し、CDR-L1Refが、配列番号5のCDR-L1であり、CDR-L2Refが、配列番号5のCDR-L1であり、CDR-L3Refが、配列番号5のCDR-L1である、実施形態118から124のいずれか1つに記載の方法。
【0380】
実施形態126.CDR-L1Abが、配列番号5のCDR-L1であり、CDR-L2Abが、配列番号5のCDR-L2であり、CDR-L3Abが、配列番号5のCDR-L3である、実施形態125に記載の方法。
【0381】
実施形態127.各VL CDRが、CDRに関するChothia定義、Kabat定義、AbM定義、または接触定義に従って定義されたものである、実施形態125に記載の方法。
【0382】
実施形態128.各VL CDRが、CDRに関するChothia定義、Kabat定義、AbM定義、または接触定義に従って定義されたものである、実施形態126に記載の方法。
【0383】
実施形態129.各VL CDRが、CDRに関するChothia定義に従って定義されたものであり、したがって、CDR-L1Refが、配列番号5の残基24~34に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-L2Refが、配列番号5の残基50~56に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-L3Refが、配列番号5の残基89~97に示されるアミノ酸配列を有する、実施形態127に記載の方法。
【0384】
実施形態130.CDR-L1Abが、配列番号5の残基24~34に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-L2Abが、配列番号5の残基50~56に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-L3Abが、配列番号5の残基89~97に示されるアミノ酸配列を有する、実施形態129に記載の方法。
【0385】
実施形態131.抗体が、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有するVHドメインを含む、実施形態124に記載の方法。
【0386】
実施形態132.抗体が、配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するVLドメインを含む、実施形態130に記載の方法。
【0387】
実施形態133.抗体が、ヒト化抗体またはキメラ抗体である、実施形態117から130のいずれか1つに記載の方法。
【0388】
実施形態134.抗体が、ヒト抗体である、実施形態117または118に記載の方法。
【0389】
実施形態135.抗体が、単鎖抗体である、実施形態117から132のいずれか1つに記載の方法。
【0390】
実施形態136.抗体が、二重特異性抗体である、実施形態117から132のいずれか1つに記載の方法。
【0391】
実施形態137.抗体が、免疫グロブリン定常領域をさらに含む、実施形態117から132のいずれか1つに記載の方法。
【0392】
実施形態138.非アルコール性脂肪性肝疾患の処置が併用療法である、実施形態116から136のいずれか1つに記載の方法。
【0393】
実施形態139. 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、アルコール性肝疾患(ALD)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、および原発性胆汁性胆管炎(PBC)からなる群から選択される疾患の処置に使用するためのPC3分泌型マイクロタンパク質(PSMP)アンタゴニスト。
【0394】
実施形態140.非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、アルコール性肝疾患(ALD)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、および原発性胆汁性胆管炎(PBC)からなる群から選択される疾患を処置するための医薬の製造における、PC3分泌型マイクロタンパク質(PSMP)アンタゴニストの使用。
【0395】
実施形態141.非アルコール性脂肪性肝疾患が、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である、実施形態139に記載のPSMPアンタゴニストまたは実施形態140に記載の使用。
【0396】
実施形態142.PSMPアンタゴニストが、PSMPに特異的に結合する可溶性タンパク質である、実施形態139から141のいずれか1つに記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0397】
実施形態143.可溶性タンパク質が、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)および配列番号5に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体とPSMPへの結合に関して競合するものである、実施形態142に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0398】
実施形態144.可溶性タンパク質が抗体である、実施形態142に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0399】
実施形態145.抗体が、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)および配列番号5に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む第2の抗体とPSMPへの結合に関して競合するものである、実施形態144に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0400】
実施形態146.抗体が、相補性決定領域(CDR)であるCDR-H1Ab、CDR-H2Ab、およびCDR-H3Abを含むVHドメインを含み、前記VH CDRのセットが、CDRの参照セットであるCDR-H1Ref、CDR-H2Ref、およびCDR-H3Refと比べて3つまたはそれ未満のアミノ酸置換を有し、CDR-H1Refが、配列番号4のCDR-H1であり、CDR-H2Refが、配列番号4のCDR-H2であり、CDR-H3Refが、配列番号4のCDR-H3である、実施形態145に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0401】
実施形態147.CDR-H1Abが、配列番号4のCDR-H1であり、CDR-H2Abが、配列番号4のCDR-H2であり、CDR-H3Abが、配列番号4のCDR-H3である、実施形態146に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0402】
実施形態148.各VH CDRが、CDRに関するChothia定義、Kabat定義、AbM定義、または接触定義に従って定義されたものである、実施形態146に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0403】
実施形態149.各VH CDRが、CDRに関するChothia定義、Kabat定義、AbM定義、または接触定義に従って定義されたものである、実施形態147に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0404】
実施形態150.各VH CDRが、CDRに関するChothia定義に従って定義されたものであり、したがって、CDR-H1Refが、配列番号4の残基31~35に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-H2Refが、配列番号4の残基50~69に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-H3Refが、配列番号4の残基99~108に示されるアミノ酸配列を有する、実施形態148に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0405】
実施形態151.CDR-H1Abが、配列番号4の残基31~35に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-H2Abが、配列番号4の残基50~69に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-H3Abが、配列番号4の残基99~108に示されるアミノ酸配列を有する、実施形態150に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0406】
実施形態152.抗体が、相補性決定領域(CDR)であるCDR-L1Ab、CDR-L2Ab、およびCDR-L3Abを含むVLドメインを含み、前記VL CDRのセットが、CDRの参照セットであるCDR-L1Ref、CDR-L2Ref、およびCDR-L3Refと比べて3つまたはそれ未満のアミノ酸置換を有し、CDR-L1Refが、配列番号5のCDR-L1であり、CDR-L2Refが、配列番号5のCDR-L1であり、CDR-L3Refが、配列番号5のCDR-L1である、実施形態145から151のいずれか1つに記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0407】
実施形態153.CDR-L1Abが、配列番号5のCDR-L1であり、CDR-L2Abが、配列番号5のCDR-L2であり、CDR-L3Abが、配列番号5のCDR-L3である、実施形態152に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0408】
実施形態154.各VL CDRが、CDRに関するChothia定義、Kabat定義、AbM定義、または接触定義に従って定義されたものである、実施形態152に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0409】
実施形態155.各VL CDRが、CDRに関するChothia定義、Kabat定義、AbM定義、または接触定義に従って定義されたものである、実施形態153に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0410】
実施形態156.各VL CDRが、CDRに関するChothia定義に従って定義されたものであり、したがって、CDR-L1Refが、配列番号5の残基24~34に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-L2Refが、配列番号5の残基50~56に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-L3Refが、配列番号5の残基89~97に示されるアミノ酸配列を有する、実施形態154に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0411】
実施形態157.CDR-L1Abが、配列番号5の残基24~34に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-L2Abが、配列番号5の残基50~56に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-L3Abが、配列番号5の残基89~97に示されるアミノ酸配列を有する、実施形態156に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0412】
実施形態158.抗体が、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有するVHドメインを含む、実施形態151に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0413】
実施形態159.抗体が、配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するVLドメインを含む、実施形態157に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0414】
実施形態160.抗体が、ヒト化抗体またはキメラ抗体である、実施形態144から157のいずれか1つに記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0415】
実施形態161.抗体が、ヒト抗体である、実施形態144または145に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0416】
実施形態162.抗体が、単鎖抗体である、実施形態144から159のいずれか1つに記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0417】
実施形態163.抗体が、二重特異性抗体である、実施形態144から159のいずれか1つに記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0418】
実施形態164.抗体が、免疫グロブリン定常領域をさらに含む、実施形態144から159のいずれか1つに記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0419】
実施形態165.非アルコール性脂肪性肝疾患の処置が併用療法である、実施形態139から164のいずれか1つに記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0420】
実施形態166.肝線維症が、アルコール性肝疾患(ALD)、アルコール性肝炎、アルコール性肝硬変、B型慢性肝炎、C型慢性肝炎、D型慢性肝炎、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、ヘモクロマトーシス、嚢胞性線維症、ウィルソン病、胆道閉鎖症、アルファ1抗トリプシン欠損症、ガラクトース血症、糖原病、遺伝性消化系障害、アラジール症候群、自己免疫性肝炎、原発性硬化性胆管炎(PSC)、原発性胆汁性胆管炎(PBC)、感染症、薬物誘発肝傷害、およびバッドキアリ症候群からなる群から選択される疾患または障害に関連するものである、実施形態1から25のいずれか1つに記載の方法。
【0421】
実施形態167.肝線維症が、アルコール性肝疾患(ALD)、アルコール性肝炎、アルコール性肝硬変、B型慢性肝炎、C型慢性肝炎、D型慢性肝炎、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、ヘモクロマトーシス、嚢胞性線維症、ウィルソン病、胆道閉鎖症、アルファ1抗トリプシン欠損症、ガラクトース血症、糖原病、遺伝性消化系障害、アラジール症候群、自己免疫性肝炎、原発性硬化性胆管炎(PSC)、原発性胆汁性胆管炎(PBC)、感染症、薬物誘発肝傷害、およびバッドキアリ症候群からなる群から選択される疾患または障害に関連するものである、実施形態31から56のいずれか1つに記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0422】
実施形態168.肺線維症が、皮膚筋炎、多発性筋炎、混合性結合組織疾患、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、肺炎、慢性放射線肺炎、塵肺症、感染症、および薬物誘発肺傷害からなる群から選択される疾患または障害に関連するものである、実施形態62から86のいずれか1つに記載の方法。
【0423】
実施形態169.肺線維症が、皮膚筋炎、多発性筋炎、混合性結合組織疾患、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、肺炎、慢性放射線肺炎、塵肺症、感染症、および薬物誘発肺傷害からなる群から選択される疾患または障害に関連するものである、実施形態87から112のいずれか1つに記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0424】
実施形態170.移植片対宿主病(GVHD)、全身性エリテマトーデス(SLE)、およびループス腎炎からなる群から選択される疾患または障害を処置するための方法であって、GVHDまたはSLEを有する対象に、有効量のPC3分泌型マイクロタンパク質(PSMP)アンタゴニストを投与することを含む方法。
【0425】
実施形態171.PSMPアンタゴニストが、PSMPに特異的に結合する可溶性タンパク質である、実施形態170に記載の方法。
【0426】
実施形態172.可溶性タンパク質が、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)および配列番号5に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体とPSMPへの結合に関して競合するものである、実施形態171に記載の方法。
【0427】
実施形態173.可溶性タンパク質が抗体である、実施形態171に記載の方法。
【0428】
実施形態174.抗体が、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)および配列番号5に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む第2の抗体とPSMPへの結合に関して競合するものである、実施形態173に記載の方法。
【0429】
実施形態175.抗体が、相補性決定領域(CDR)であるCDR-H1Ab、CDR-H2Ab、およびCDR-H3Abを含むVHドメインを含み、前記VH CDRのセットが、CDRの参照セットであるCDR-H1Ref、CDR-H2Ref、およびCDR-H3Refと比べて3つまたはそれ未満のアミノ酸置換を有し、CDR-H1Refが、配列番号4のCDR-H1であり、CDR-H2Refが、配列番号4のCDR-H2であり、CDR-H3Refが、配列番号4のCDR-H3である、実施形態174に記載の方法。
【0430】
実施形態176.CDR-H1Abが、配列番号4のCDR-H1であり、CDR-H2Abが、配列番号4のCDR-H2であり、CDR-H3Abが、配列番号4のCDR-H3である、実施形態175に記載の方法。
【0431】
実施形態177.各VH CDRが、CDRに関するChothia定義、Kabat定義、AbM定義、または接触定義に従って定義されたものである、実施形態175に記載の方法。
【0432】
実施形態178.各VH CDRが、CDRに関するChothia定義、Kabat定義、AbM定義、または接触定義に従って定義されたものである、実施形態176に記載の方法。
【0433】
実施形態179.各VH CDRが、CDRに関するChothia定義に従って定義されたものであり、したがって、CDR-H1Refが、配列番号4の残基31~35に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-H2Refが、配列番号4の残基50~69に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-H3Refが、配列番号4の残基99~108に示されるアミノ酸配列を有する、実施形態177に記載の方法。
【0434】
実施形態180.CDR-H1Abが、配列番号4の残基31~35に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-H2Abが、配列番号4の残基50~69に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-H3Abが、配列番号4の残基99~108に示されるアミノ酸配列を有する、実施形態179に記載の方法。
【0435】
実施形態181.抗体が、相補性決定領域(CDR)であるCDR-L1Ab、CDR-L2Ab、およびCDR-L3Abを含むVLドメインを含み、前記VL CDRのセットが、CDRの参照セットであるCDR-L1Ref、CDR-L2Ref、およびCDR-L3Refと比べて3つまたはそれ未満のアミノ酸置換を有し、CDR-L1Refが、配列番号5のCDR-L1であり、CDR-L2Refが、配列番号5のCDR-L1であり、CDR-L3Refが、配列番号5のCDR-L1である、実施形態174から180のいずれか1つに記載の方法。
【0436】
実施形態182.CDR-L1Abが、配列番号5のCDR-L1であり、CDR-L2Abが、配列番号5のCDR-L2であり、CDR-L3Abが、配列番号5のCDR-L3である、実施形態181に記載の方法。
【0437】
実施形態183.各VL CDRが、CDRに関するChothia定義、Kabat定義、AbM定義、または接触定義に従って定義されたものである、実施形態181に記載の方法。
【0438】
実施形態184.各VL CDRが、CDRに関するChothia定義、Kabat定義、AbM定義、または接触定義に従って定義されたものである、実施形態182に記載の方法。
【0439】
実施形態185.各VL CDRが、CDRに関するChothia定義に従って定義されたものであり、したがって、CDR-L1Refが、配列番号5の残基24~34に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-L2Refが、配列番号5の残基50~56に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-L3Refが、配列番号5の残基89~97に示されるアミノ酸配列を有する、実施形態183に記載の方法。
【0440】
実施形態186.CDR-L1Abが、配列番号5の残基24~34に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-L2Abが、配列番号5の残基50~56に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-L3Abが、配列番号5の残基89~97に示されるアミノ酸配列を有する、実施形態185に記載の方法。
【0441】
実施形態187.抗体が、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有するVHドメインを含む、実施形態180に記載の方法。
【0442】
実施形態188.抗体が、配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するVLドメインを含む、実施形態186に記載の方法。
【0443】
実施形態189.抗体が、ヒト化抗体またはキメラ抗体である、実施形態173から181のいずれか1つに記載の方法。
【0444】
実施形態190.抗体が、ヒト抗体である、実施形態173または174に記載の方法。
【0445】
実施形態191.抗体が、単鎖抗体である、実施形態173から188のいずれか1つに記載の方法。
【0446】
実施形態192.抗体が、二重特異性抗体である、実施形態173から188でのいずれか1つに記載の方法。
【0447】
実施形態193.抗体が、免疫グロブリン定常領域をさらに含む、実施形態173から188のいずれか1つに記載の方法。
【0448】
実施形態194.疾患の処置が併用療法である、実施形態173から192のいずれか1つに記載の方法。
【0449】
実施形態195.移植片対宿主病(GVHD)、全身性エリテマトーデス(SLE)、およびループス腎炎からなる群から選択される疾患または障害の処置に使用するためのPC3分泌型マイクロタンパク質(PSMP)アンタゴニスト。
【0450】
実施形態196.移植片対宿主病(GVHD)、全身性エリテマトーデス(SLE)、およびループス腎炎からなる群から選択される疾患または障害を処置するための医薬の製造における、PC3分泌型マイクロタンパク質(PSMP)アンタゴニストの使用。
【0451】
実施形態197.PSMPアンタゴニストが、PSMPに特異的に結合する可溶性タンパク質である、実施形態195に記載のPSMPアンタゴニストまたは実施形態196に記載の使用。
【0452】
実施形態198.可溶性タンパク質が、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)および配列番号5に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体とPSMPへの結合に関して競合するものである、実施形態197に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0453】
実施形態199.可溶性タンパク質が抗体である、実施形態197に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0454】
実施形態200.抗体が、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)および配列番号5に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む第2の抗体とPSMPへの結合に関して競合するものである、実施形態199に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0455】
実施形態201.抗体が、相補性決定領域(CDR)であるCDR-H1Ab、CDR-H2Ab、およびCDR-H3Abを含むVHドメインを含み、前記VH CDRのセットが、CDRの参照セットであるCDR-H1Ref、CDR-H2Ref、およびCDR-H3Refと比べて3つまたはそれ未満のアミノ酸置換を有し、CDR-H1Refが、配列番号4のCDR-H1であり、CDR-H2Refが、配列番号4のCDR-H2であり、CDR-H3Refが、配列番号4のCDR-H3である、実施形態200に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0456】
実施形態202.CDR-H1Abが、配列番号4のCDR-H1であり、CDR-H2Abが、配列番号4のCDR-H2であり、CDR-H3Abが、配列番号4のCDR-H3である、実施形態201に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0457】
実施形態203.各VH CDRが、CDRに関するChothia定義、Kabat定義、AbM定義、または接触定義に従って定義されたものである、実施形態201に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0458】
実施形態204.各VH CDRが、CDRに関するChothia定義、Kabat定義、AbM定義、または接触定義に従って定義されたものである、実施形態202に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0459】
実施形態205.各VH CDRが、CDRに関するChothia定義に従って定義されたものであり、したがって、CDR-H1Refが、配列番号4の残基31~35に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-H2Refが、配列番号4の残基50~69に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-H3Refが、配列番号4の残基99~108に示されるアミノ酸配列を有する、実施形態203に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0460】
実施形態206.CDR-H1Abが、配列番号4の残基31~35に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-H2Abが、配列番号4の残基50~69に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-H3Abが、配列番号4の残基99~108に示されるアミノ酸配列を有する、実施形態205に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0461】
実施形態207.抗体が、相補性決定領域(CDR)であるCDR-L1Ab、CDR-L2Ab、およびCDR-L3Abを含むVLドメインを含み、前記VL CDRのセットが、CDRの参照セットであるCDR-L1Ref、CDR-L2Ref、およびCDR-L3Refと比べて3つまたはそれ未満のアミノ酸置換を有し、CDR-L1Refが、配列番号5のCDR-L1であり、CDR-L2Refが、配列番号5のCDR-L1であり、CDR-L3Refが、配列番号5のCDR-L1である、実施形態200から206のいずれか1つに記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0462】
実施形態208.CDR-L1Abが、配列番号5のCDR-L1であり、CDR-L2Abが、配列番号5のCDR-L2であり、CDR-L3Abが、配列番号5のCDR-L3である、実施形態207に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0463】
実施形態209.各VL CDRが、CDRに関するChothia定義、Kabat定義、AbM定義、または接触定義に従って定義されたものである、実施形態207に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0464】
実施形態210.各VL CDRが、CDRに関するChothia定義、Kabat定義、AbM定義、または接触定義に従って定義されたものである、実施形態208に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0465】
実施形態211.各VL CDRが、CDRに関するChothia定義に従って定義されたものであり、したがって、CDR-L1Refが、配列番号5の残基24~34に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-L2Refが、配列番号5の残基50~56に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-L3Refが、配列番号5の残基89~97に示されるアミノ酸配列を有する、実施形態209に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0466】
実施形態212.CDR-L1Abが、配列番号5の残基24~34に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-L2Abが、配列番号5の残基50~56に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-L3Abが、配列番号5の残基89~97に示されるアミノ酸配列を有する、実施形態211に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0467】
実施形態213.抗体が、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有するVHドメインを含む、実施形態206に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0468】
実施形態214.抗体が、配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するVLドメインを含む、実施形態212に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0469】
実施形態215.抗体が、ヒト化抗体またはキメラ抗体である、実施形態199から212のいずれか1つに記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0470】
実施形態216.抗体が、ヒト抗体である、実施形態199または200に記載の方法。
【0471】
実施形態217.抗体が、単鎖抗体である、実施形態199から214のいずれか1つに記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0472】
実施形態218.抗体が、二重特異性抗体である、実施形態199から214のいずれか1つに記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0473】
実施形態219.抗体が、免疫グロブリン定常領域をさらに含む、実施形態199から214のいずれか1つに記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0474】
実施形態220.疾患の処置が併用療法である、実施形態195から219のいずれか1つに記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0475】
実施形態221.腎線維症を処置するための方法であって、腎線維症を有する対象に、有効量のPC3分泌型マイクロタンパク質(PSMP)アンタゴニストを投与することを含む方法。
【0476】
実施形態222.急性腎傷害(AKI)または慢性腎疾患を処置するための方法であって、AKIまたはCKDを有する対象に、有効量のPC3分泌型マイクロタンパク質(PSMP)アンタゴニストを投与することを含む方法。
【0477】
実施形態223.PSMPアンタゴニストが、PSMPに特異的に結合する可溶性タンパク質である、実施形態221または222に記載の方法。
【0478】
実施形態224.可溶性タンパク質が、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)および配列番号5に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体とPSMPへの結合に関して競合するものである、実施形態223に記載の方法。
【0479】
実施形態225.可溶性タンパク質が抗体である、実施形態223に記載の方法。
【0480】
実施形態226.抗体が、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)および配列番号5に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む第2の抗体とPSMPへの結合に関して競合するものである、実施形態225に記載の方法。
【0481】
実施形態227.抗体が、相補性決定領域(CDR)であるCDR-H1Ab、CDR-H2Ab、およびCDR-H3Abを含むVHドメインを含み、前記VH CDRのセットが、CDRの参照セットであるCDR-H1Ref、CDR-H2Ref、およびCDR-H3Refと比べて3つまたはそれ未満のアミノ酸置換を有し、CDR-H1Refが、配列番号4のCDR-H1であり、CDR-H2Refが、配列番号4のCDR-H2であり、CDR-H3Refが、配列番号4のCDR-H3である、実施形態226に記載の方法。
【0482】
実施形態228.CDR-H1Abが、配列番号4のCDR-H1であり、CDR-H2Abが、配列番号4のCDR-H2であり、CDR-H3Abが、配列番号4のCDR-H3である、実施形態227に記載の方法。
【0483】
実施形態229.各VH CDRが、CDRに関するChothia定義、Kabat定義、AbM定義、または接触定義に従って定義されたものである、実施形態227に記載の方法。
【0484】
実施形態230.各VH CDRが、CDRに関するChothia定義、Kabat定義、AbM定義、または接触定義に従って定義されたものである、実施形態228に記載の方法。
【0485】
実施形態231.各VH CDRが、CDRに関するChothia定義に従って定義されたものであり、したがって、CDR-H1Refが、配列番号4の残基31~35に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-H2Refが、配列番号4の残基50~69に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-H3Refが、配列番号4の残基99~108に示されるアミノ酸配列を有する、実施形態229に記載の方法。
【0486】
実施形態232.CDR-H1Abが、配列番号4の残基31~35に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-H2Abが、配列番号4の残基50~69に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-H3Abが、配列番号4の残基99~108に示されるアミノ酸配列を有する、実施形態231に記載の方法。
【0487】
実施形態233.抗体が、相補性決定領域(CDR)であるCDR-L1Ab、CDR-L2Ab、およびCDR-L3Abを含むVLドメインを含み、前記VL CDRのセットが、CDRの参照セットであるCDR-L1Ref、CDR-L2Ref、およびCDR-L3Refと比べて3つまたはそれ未満のアミノ酸置換を有し、CDR-L1Refが、配列番号5のCDR-L1であり、CDR-L2Refが、配列番号5のCDR-L1であり、CDR-L3Refが、配列番号5のCDR-L1である、実施形態226から232のいずれか1つに記載の方法。
【0488】
実施形態234.CDR-L1Abが、配列番号5のCDR-L1であり、CDR-L2Abが、配列番号5のCDR-L2であり、CDR-L3Abが、配列番号5のCDR-L3である、実施形態233に記載の方法。
【0489】
実施形態235.各VL CDRが、CDRに関するChothia定義、Kabat定義、AbM定義、または接触定義に従って定義されたものである、実施形態233に記載の方法。
【0490】
実施形態236.各VL CDRが、CDRに関するChothia定義、Kabat定義、AbM定義、または接触定義に従って定義されたものである、実施形態234に記載の方法。
【0491】
実施形態237.各VL CDRが、CDRに関するChothia定義に従って定義されたものであり、したがって、CDR-L1Refが、配列番号5の残基24~34に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-L2Refが、配列番号5の残基50~56に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-L3Refが、配列番号5の残基89~97に示されるアミノ酸配列を有する、実施形態235に記載の方法。
【0492】
実施形態238.CDR-L1Abが、配列番号5の残基24~34に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-L2Abが、配列番号5の残基50~56に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-L3Abが、配列番号5の残基89~97に示されるアミノ酸配列を有する、実施形態237に記載の方法。
【0493】
実施形態239.抗体が、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有するVHドメインを含む、実施形態232に記載の方法。
【0494】
実施形態240.抗体が、配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するVLドメインを含む、実施形態238に記載の方法。
【0495】
実施形態241.抗体が、ヒト化抗体またはキメラ抗体である、実施形態225から233のいずれか1つに記載の方法。
【0496】
実施形態242.抗体が、ヒト抗体である、実施形態225または226に記載の方法。
【0497】
実施形態243.抗体が、単鎖抗体である、実施形態225から240のいずれか1つに記載の方法。
【0498】
実施形態244.抗体が、二重特異性抗体である、実施形態225から240のいずれか1つに記載の方法。
【0499】
実施形態245.抗体が、免疫グロブリン定常領域をさらに含む、実施形態225から240のいずれか1つに記載の方法。
【0500】
実施形態246.疾患の処置が併用療法である、実施形態225から244のいずれか1つに記載の方法。
【0501】
実施形態247.腎線維症が、IgA腎症、膜性増殖性糸球体腎炎、膜性糸球体腎炎、半月体形成性糸球体腎炎、糖尿病性腎症、高血圧腎症、ループス腎炎、肝性腎症、多嚢胞性腎疾患、アルポート症候群、ファブリー病、原発性高シュウ酸尿症、シスチン蓄積症、コエンザイムQ10関連遺伝子変異により引き起こされる巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、補体3糸球体腎炎、急性または亜急性免疫複合体糸球体腎炎、腎血管炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、最近発症した腎動脈狭窄症(線維筋性または血管炎性)、糖尿病性腎疾患、慢性尿酸腎症、中毒性腎症、細菌性腎盂腎炎、ウイルス性腎症、多発性骨髄腫、および閉塞性腎症からなる群から選択される疾患または障害に関連するものである、実施形態221および223から246のいずれか1つに記載の方法。
【0502】
実施形態248.AKIが、横紋筋融解症誘発性である、実施形態222から246のいずれか1つに記載の方法。
【0503】
実施形態249.CKDが、IgA腎症、膜性増殖性糸球体腎炎、膜性糸球体腎炎、半月体形成性糸球体腎炎、糖尿病性腎症、高血圧腎症、ループス腎炎、肝性腎症、多嚢胞性腎疾患、アルポート症候群、ファブリー病、原発性高シュウ酸尿症、シスチン蓄積症、コエンザイムQ10関連遺伝子変異により引き起こされる巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、補体3糸球体腎炎、急性または亜急性免疫複合体糸球体腎炎、腎血管炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、最近発症した腎動脈狭窄症(線維筋性または血管炎性)、糖尿病性腎疾患、慢性尿酸腎症、中毒性腎症、細菌性腎盂腎炎、ウイルス性腎症、多発性骨髄腫、および閉塞性腎症からなる群から選択される疾患または障害によって引き起こされるものである、実施形態222から246のいずれか1つに記載の方法。
【0504】
実施形態250.腎線維症の処置に使用するためのPC3分泌型マイクロタンパク質(PSMP)アンタゴニスト。
【0505】
実施形態251.急性腎傷害(AKI)または慢性腎疾患(CKD)の処置に使用するためのPC3分泌型マイクロタンパク質(PSMP)アンタゴニスト。
【0506】
実施形態252.腎線維症を処置するための医薬の製造における、PC3分泌型マイクロタンパク質(PSMP)アンタゴニストの使用。
【0507】
実施形態253.急性腎傷害(AKI)および慢性腎疾患(CKD)を処置するための医薬の製造における、PC3分泌型マイクロタンパク質(PSMP)アンタゴニストの使用。
【0508】
実施形態254.PSMPアンタゴニストが、PSMPに特異的に結合する可溶性タンパク質である、実施形態250もしくは251に記載のPSMPアンタゴニストまたは実施形態252もしくは253に記載の使用。
【0509】
実施形態255.可溶性タンパク質が、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)および配列番号5に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体とPSMPへの結合に関して競合するものである、実施形態254に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0510】
実施形態256.可溶性タンパク質が抗体である、実施形態254に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0511】
実施形態257.抗体が、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)および配列番号5に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む第2の抗体とPSMPへの結合に関して競合するものである、実施形態256に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0512】
実施形態258.抗体が、相補性決定領域(CDR)であるCDR-H1Ab、CDR-H2Ab、およびCDR-H3Abを含むVHドメインを含み、前記VH CDRのセットが、CDRの参照セットであるCDR-H1Ref、CDR-H2Ref、およびCDR-H3Refと比べて3つまたはそれ未満のアミノ酸置換を有し、CDR-H1Refが、配列番号4のCDR-H1であり、CDR-H2Refが、配列番号4のCDR-H2であり、CDR-H3Refが、配列番号4のCDR-H3である、実施形態257に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0513】
実施形態259.CDR-H1Abが、配列番号4のCDR-H1であり、CDR-H2Abが、配列番号4のCDR-H2であり、CDR-H3Abが、配列番号4のCDR-H3である、実施形態258に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0514】
実施形態260.各VH CDRが、CDRに関するChothia定義、Kabat定義、AbM定義、または接触定義に従って定義されたものである、実施形態258に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0515】
実施形態261.各VH CDRが、CDRに関するChothia定義、Kabat定義、AbM定義、または接触定義に従って定義されたものである、実施形態259に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0516】
実施形態262.各VH CDRが、CDRに関するChothia定義に従って定義されたものであり、したがって、CDR-H1Refが、配列番号4の残基31~35に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-H2Refが、配列番号4の残基50~69に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-H3Refが、配列番号4の残基99~108に示されるアミノ酸配列を有する、実施形態260に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0517】
実施形態263.CDR-H1Abが、配列番号4の残基31~35に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-H2Abが、配列番号4の残基50~69に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-H3Abが、配列番号4の残基99~108に示されるアミノ酸配列を有する、実施形態262に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0518】
実施形態264.抗体が、相補性決定領域(CDR)であるCDR-L1Ab、CDR-L2Ab、およびCDR-L3Abを含むVLドメインを含み、前記VL CDRのセットが、CDRの参照セットであるCDR-L1Ref、CDR-L2Ref、およびCDR-L3Refと比べて3つまたはそれ未満のアミノ酸置換を有し、CDR-L1Refが、配列番号5のCDR-L1であり、CDR-L2Refが、配列番号5のCDR-L1であり、CDR-L3Refが、配列番号5のCDR-L1である、実施形態257から263のいずれか1つに記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0519】
実施形態265.CDR-L1Abが、配列番号5のCDR-L1であり、CDR-L2Abが、配列番号5のCDR-L2であり、CDR-L3Abが、配列番号5のCDR-L3である、実施形態264に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0520】
実施形態266.各VL CDRが、CDRに関するChothia定義、Kabat定義、AbM定義、または接触定義に従って定義されたものである、実施形態264に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0521】
実施形態267.各VL CDRが、CDRに関するChothia定義、Kabat定義、AbM定義、または接触定義に従って定義されたものである、実施形態265に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0522】
実施形態268.各VL CDRが、CDRに関するChothia定義に従って定義されたものであり、したがって、CDR-L1Refが、配列番号5の残基24~34に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-L2Refが、配列番号5の残基50~56に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-L3Refが、配列番号5の残基89~97に示されるアミノ酸配列を有する、実施形態266に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0523】
実施形態269.CDR-L1Abが、配列番号5の残基24~34に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-L2Abが、配列番号5の残基50~56に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-L3Abが、配列番号5の残基89~97に示されるアミノ酸配列を有する、実施形態268に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0524】
実施形態270.抗体が、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有するVHドメインを含む、実施形態263に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0525】
実施形態271.抗体が、配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するVLドメインを含む、実施形態269に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0526】
実施形態272.抗体が、ヒト化抗体またはキメラ抗体である、実施形態256から269のいずれか1つに記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0527】
実施形態273.抗体が、ヒト抗体である、実施形態256または257に記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0528】
実施形態274.抗体が、単鎖抗体である、実施形態256から271のいずれか1つに記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0529】
実施形態275.抗体が、二重特異性抗体である、実施形態256から271のいずれか1つに記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0530】
実施形態276.抗体が、免疫グロブリン定常領域をさらに含む、実施形態256から271のいずれか1つに記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0531】
実施形態277.疾患の処置が併用療法である、実施形態250から276のいずれか1つに記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0532】
実施形態278.腎線維症が、IgA腎症、膜性増殖性糸球体腎炎、膜性糸球体腎炎、半月体形成性糸球体腎炎、糖尿病性腎症、高血圧腎症、ループス腎炎、肝性腎症、多嚢胞性腎疾患、アルポート症候群、ファブリー病、原発性高シュウ酸尿症、シスチン蓄積症、コエンザイムQ10関連遺伝子変異により引き起こされる巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、補体3糸球体腎炎、急性または亜急性免疫複合体糸球体腎炎、腎血管炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、最近発症した腎動脈狭窄症(線維筋性または血管炎性)、糖尿病性腎疾患、慢性尿酸腎症、中毒性腎症、細菌性腎盂腎炎、ウイルス性腎症、多発性骨髄腫、および閉塞性腎症からなる群から選択される疾患または障害に関連するものである、実施形態250、252および254から277のいずれか1つに記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0533】
実施形態279.AKIが、横紋筋融解症誘発性である、実施形態251および253から277のいずれか1つに記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0534】
実施形態280.CKDが、IgA腎症、膜性増殖性糸球体腎炎、膜性糸球体腎炎、半月体形成性糸球体腎炎、糖尿病性腎症、高血圧腎症、ループス腎炎、肝性腎症、多嚢胞性腎疾患、アルポート症候群、ファブリー病、原発性高シュウ酸尿症、シスチン蓄積症、コエンザイムQ10関連遺伝子変異により引き起こされる巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、補体3糸球体腎炎、急性または亜急性免疫複合体糸球体腎炎、腎血管炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、最近発症した腎動脈狭窄症(線維筋性または血管炎性)、糖尿病性腎疾患、慢性尿酸腎症、中毒性腎症、細菌性腎盂腎炎、ウイルス性腎症、多発性骨髄腫、および閉塞性腎症からなる群から選択される疾患または障害によって引き起こされるものである、実施形態251および253から277のいずれか1つに記載のPSMPアンタゴニストまたは使用。
【0535】
前述のことから、本明細書では例示のために本発明の特定の実施形態が記載されているが、本発明の主旨および範囲から逸脱することなく種々の改変が成され得ることが理解されよう。したがって、本発明は添付の特許請求の範囲による場合を除いて限定されない。本明細書において引用されている全ての刊行物、特許および特許出願は、これによりそれらの全体があらゆる目的に関して参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
肝線維症、肺線維症、または腎線維症の処置に使用するためのPC3分泌型マイクロタンパク質(PSMP)アンタゴニスト。
(項目2)
前記PSMPアンタゴニストが肝線維症の処置に使用するためのものであり、必要に応じて、前記肝線維症が肝硬変に進行している、項目1に記載のPSMPアンタゴニスト。
(項目3)
前記肝線維症が、B型肝炎ウイルス(HBV)誘発肝線維症、C型肝炎ウイルス(HCV)誘発肝線維症、もしくはアルコール誘発肝線維症であるか、または、
前記肝線維症が、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、アルコール性肝疾患(ALD)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、および原発性胆汁性胆管炎(PBC)からなる群から選択される疾患に関連するものであり、必要に応じて、前記非アルコール性脂肪性肝疾患が、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である、項目2に記載のPSMPアンタゴニスト。
(項目4)
前記PSMPアンタゴニストが肺線維症の処置に使用するためのものであり、必要に応じて、前記肺線維症が、薬物誘発肺傷害に関連するものである、項目1に記載のPSMPアンタゴニスト。
(項目5)
前記PSMPアンタゴニストが腎線維症の処置に使用するためのものであり、
必要に応じて、前記腎線維症が、ループス腎炎、IgA腎症、および膜性糸球体腎炎からなる群から選択される疾患または障害に関連するものである、項目1に記載のPSMPアンタゴニスト。
(項目6)
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、アルコール性肝疾患(ALD)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、および原発性胆汁性胆管炎(PBC)からなる群から選択される疾患の処置に使用するための、PC3分泌型マイクロタンパク質(PSMP)アンタゴニスト。
(項目7)
非アルコール性脂肪性肝疾患が、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である、項目6に記載のPSMPアンタゴニスト。
(項目8)
急性腎傷害(AKI)または慢性腎疾患(CKD)の処置に使用するためのPC3分泌型マイクロタンパク質(PSMP)アンタゴニストであって、
必要に応じて、前記AKIが、横紋筋融解症誘発性であり、
必要に応じて、前記CKDが、ループス腎炎、IgA腎症、および膜性糸球体腎炎からなる群から選択される疾患または障害によって引き起こされるものである、
PSMPアンタゴニスト。
(項目9)
移植片対宿主病(GVHD)、全身性エリテマトーデス(SLE)、およびループス腎炎からなる群から選択される疾患または障害の処置に使用するためのPC3分泌型マイクロタンパク質(PSMP)アンタゴニスト。
(項目10)
PSMPに特異的に結合する可溶性タンパク質である、項目1から9のいずれか一項に記載のPSMPアンタゴニスト。
(項目11)
前記可溶性タンパク質が、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)および配列番号5に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体とPSMPへの結合に関して競合するものである、項目10に記載のPSMPアンタゴニスト。
(項目12)
前記可溶性タンパク質が抗体である、項目10に記載のPSMPアンタゴニスト。
(項目13)
前記抗体が、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)および配列番号5に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む第2の抗体とPSMPへの結合に関して競合するものである、項目12に記載のPSMPアンタゴニスト
(項目14)
前記抗体が、相補性決定領域(CDR)であるCDR-H1Ab、CDR-H2Ab、およびCDR-H3Abを含むVHドメインを含み、前記VH CDRのセットが、CDRの参照セットであるCDR-H1Ref、CDR-H2Ref、およびCDR-H3Refと比べて3つまたはそれ未満のアミノ酸置換を有し、
CDR-H1Refが、配列番号4のCDR-H1であり、
CDR-H2Refが、配列番号4のCDR-H2であり、
CDR-H3Refが、配列番号4のCDR-H3である、
項目13に記載のPSMPアンタゴニスト。
(項目15)
CDR-H1Abが、配列番号4のCDR-H1であり、
CDR-H2Abが、配列番号4のCDR-H2であり、
CDR-H3Abが、配列番号4のCDR-H3である、
項目14に記載のPSMPアンタゴニスト。
(項目16)
各VH CDRが、CDRに関するChothia定義、Kabat定義、AbM定義、または接触定義に従って定義されたものである、項目14に記載のPSMPアンタゴニスト。
(項目17)
各VH CDRが、CDRに関するChothia定義、Kabat定義、AbM定義、または接触定義に従って定義されたものである、項目15に記載のPSMPアンタゴニスト。
(項目18)
各VH CDRが、CDRに関するChothia定義に従って定義されたものであり、したがって、
CDR-H1Refが、配列番号4の残基31~35に示されるアミノ酸配列を有し、
CDR-H2Refが、配列番号4の残基50~69に示されるアミノ酸配列を有し、
CDR-H3Refが、配列番号4の残基99~108に示されるアミノ酸配列を有する、
項目16に記載のPSMPアンタゴニスト。
(項目19)
CDR-H1Abが、配列番号4の残基31~35に示されるアミノ酸配列を有し、
CDR-H2Abが、配列番号4の残基50~69に示されるアミノ酸配列を有し、
CDR-H3Abが、配列番号4の残基99~108に示されるアミノ酸配列を有する、
項目18に記載のPSMPアンタゴニスト。
(項目20)
前記抗体が、相補性決定領域(CDR)であるCDR-L1Ab、CDR-L2Ab、およびCDR-L3Abを含むVLドメインを含み、前記VL CDRのセットが、CDRの参照セットであるCDR-L1Ref、CDR-L2Ref、およびCDR-L3Refと比べて3つまたはそれ未満のアミノ酸置換を有し、
CDR-L1Refが、配列番号5のCDR-L1であり、
CDR-L2Refが、配列番号5のCDR-L1であり、
CDR-L3Refが、配列番号5のCDR-L1である、
項目14から19のいずれか一項に記載のPSMPアンタゴニスト。
(項目21)
CDR-L1Abが、配列番号5のCDR-L1であり、
CDR-L2Abが、配列番号5のCDR-L2であり、
CDR-L3Abが、配列番号5のCDR-L3である、
項目20に記載のPSMPアンタゴニスト。
(項目22)
各VL CDRが、CDRに関するChothia定義、Kabat定義、AbM定義、または接触定義に従って定義されたものである、項目20に記載のPSMPアンタゴニスト。
(項目23)
各VL CDRが、CDRに関するChothia定義、Kabat定義、AbM定義、または接触定義に従って定義されたものである、項目21に記載のPSMPアンタゴニスト。
(項目24)
各VL CDRが、CDRに関するChothia定義に従って定義されたものであり、したがって、
CDR-L1Refが、配列番号5の残基24~34に示されるアミノ酸配列を有し、
CDR-L2Refが、配列番号5の残基50~56に示されるアミノ酸配列を有し、
CDR-L3Refが、配列番号5の残基89~97に示されるアミノ酸配列を有する、
項目22に記載のPSMPアンタゴニスト。
(項目25)
CDR-L1Abが、配列番号5の残基24~34に示されるアミノ酸配列を有し、
CDR-L2Abが、配列番号5の残基50~56に示されるアミノ酸配列を有し、
CDR-L3Abが、配列番号5の残基89~97に示されるアミノ酸配列を有する、項目24に記載のPSMPアンタゴニスト。
(項目26)
前記抗体が、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有するVHドメインを含む、項目19に記載のPSMPアンタゴニスト。
(項目27)
前記抗体が、配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するVLドメインを含む、項目25に記載のPSMPアンタゴニスト。
(項目28)
前記抗体が、ヒト化抗体またはキメラ抗体である、項目12から25のいずれか一項に記載のPSMPアンタゴニスト。
(項目29)
前記抗体が、ヒト抗体である、項目12または13に記載のPSMPアンタゴニスト。
(項目30)
前記抗体が、単鎖抗体である、項目12から27のいずれか一項に記載のPSMPアンタゴニスト。
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図4
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図5-4】
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図6-4】
図7-1】
図7-2】
図7-3】
図7-4】
図8-1】
図8-2】
図8-3】
図8-4】
図9-1】
図9-2】
図9-3】
図9-4】
図10-1】
図10-2】
図10-3】
図10-4】
図11-1】
図11-2】
図11-3】
図11-4】
図11-5】
図12-1】
図12-2】
図12-3】
図13
図14
図15-1】
図15-2】
図15-3】
図15-4】
図15-5】
図15-6】
図15-7】
図15-8】
図15-9】
図15-10】
図15-11】
図16
図17-1】
図17-2】
図17-3】
図18-1】
図18-2】
図18-3】
図19-1】
図19-2】
図19-3】
図20-1】
図20-2】
図20-3】
図20-4】
図21-1】
図21-2】
図21-3】
図21-4】
図21-5】
図22-1】
図22-2】
図23-1】
図23-2】
【配列表】
2024107313000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-06-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0043
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0043】
PSMPアンタゴニストが、(i)配列番号4に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)および(ii)配列番号5に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体とPSMPへの結合に関して競合する抗体である他の相互排他的でない実施形態では、抗体は、相補性決定領域(CDR)であるCDR-L1Ab、CDR-L2Ab、およびCDR-L3Abを含むVLドメインを含み、VL CDRのセットは、CDRの参照セットであるCDR-L1Ref、CDR-L2Ref、およびCDR-L3Refと比べて3つまたはそれ未満のアミノ酸置換を有し、CDR-L1Refは、配列番号5のCDR-L1であり、CDR-L2Refは、配列番号5のCDR-L2であり、CDR-L3Refは、配列番号5のCDR-L3である(例えば、CDR-L1Ref、CDR-L2Ref、およびCDR-L3Refと比べてアミノ酸置換をゼロ個有するVL CDRのセット、したがって、CDR-L1Abが、配列番号5のCDR-L1であり、CDR-L2Abが、配列番号5のCDR-L2であり、CDR-L3Abが、配列番号5のCDR-L3である)。各VL CDRは、例えば、CDRに関するChothia定義、Kabat定義、AbM定義、または接触定義に従って定義されたものであり得る。具体的な変形形態では、各VL CDRは、CDRに関するChothia定義に従って定義されたものであり、したがって、CDR-L1Refは、配列番号5の残基24~34に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-L2Refは、配列番号5の残基50~56に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-L3Refは、配列番号5の残基89~97に示されるアミノ酸配列を有する。一部のそのような実施形態では、VL CDRのセットは、CDR-L1Ref、CDR-L2Ref、およびCDR-L3Refと比べてアミノ酸置換をゼロ個有し、したがって、CDR-L1Abが、配列番号5の残基24~34に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-L2Abが、配列番号5の残基50~56に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-L3Abが、配列番号5の残基89~97に示されるアミノ酸配列を有する。一部の変形形態では、抗体は、配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するVLドメインに由来するヒト化VLドメインを含む。他の実施形態では、抗体は、配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するVLドメインを含む(例えば、抗体は、配列番号5のVLドメインを含むキメラ抗体である)。
【外国語明細書】