(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010732
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】ガンマ形ネイル式インプラント
(51)【国際特許分類】
A61B 17/72 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
A61B17/72
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112183
(22)【出願日】2022-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】303047104
【氏名又は名称】株式会社ビー・アイ・テック
(74)【代理人】
【識別番号】100084593
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 勝俊
(72)【発明者】
【氏名】板東 舜一
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL27
4C160LL44
4C160LL56
(57)【要約】
【課題】ラグスクリューを縦通するブレーディングパイプの安定的なトルク伝達機能、押し引き抜き力の向上を目指したガンマ形ネイル式インプラントを提供する。
【解決手段】ラグスクリュー3は、軸芯3bに沿って縦通する角状のブレーディングパイプ7を備え、このパイプ7はスクリュー本体部5から突出され、チップスクリュー部6の背面6rにはその軸芯部にパイプ7の先端部分が嵌合する角状孔8が開口される。角状孔8はチップスクリュー部6の先端6fまで延び、その背面6rで開口する角状孔8の開口周囲には放射状溝9が形成され、スクリュー本体部5の接合面5eに放射状溝9に嵌着する放射状突起10が形成される。チップスクリュー部6の先端6fにおける開口縁部7aには、一部切り欠かれた傾斜底凹部11が形成され、炭素繊維強化熱可塑性樹脂造形品のパイプ7の樹脂を加熱し溶融させることにより抜け止めリップ12を形成させている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断裂した骨片を母骨に一体的に固定して断裂前の状態を復元するに供されるガンマ形ネイル式インプラントにおいて、
母骨に埋設したネイルに支承されているラグスクリューは、炭素繊維強化熱可塑性樹脂のジャーナル部とタッピング用の樹脂コンパウンド製モールドスクリュー殻を被着した炭素繊維強化熱可塑性樹脂のスクリュー本体部とボーリング用のスパイラルカッターを備えたチタン合金製チップスクリュー部とからなり、
前記ラグスクリューは、その軸芯に沿って縦通し断面外郭が角状のブレーディングパイプを備え、該ブレーディングパイプは前記スクリュー本体部から突出され、前記チップスクリュー部の背面にはその軸芯部に前記ブレーディングパイプの先端部分が嵌合する角状孔が開口され、
前記ブレーディングパイプも炭素繊維強化熱可塑性樹脂の造形品であり、前記角状孔はチップスクリュー部の先端まで延びており、
前記チップスクリュー部の背面で開口する角状孔の開口周囲には放射状溝が形成され、前記スクリュー本体部のチップスクリューとの接合面には前記放射状溝に嵌着する放射状突起が形成され、前記チップスクリュー部の先端における開口縁部の一部には、三角断面をなすように切り欠かれた傾斜底凹部が形成され、
該傾斜底凹部には、前記ブレーディングパイプのチップスクリュー部における先端縁の一部を加熱ツールにより加熱変形させ、該チップスクリュー部を前記ラグスクリューとして組み込み完了後に熱可塑性複合材の樹脂を加熱し溶融させることにより抜け止めリップを形成させていることを特徴とするガンマ形ネイル。
【請求項2】
前記放射状突起を設けることなく、前記放射状溝が前記角状孔に連通して設けられ、前記ブレーディングパイプからの溶出樹脂が該放射状溝にも導入されるようになっていることを特徴とする請求項1に記載のガンマ形ネイル。
【請求項3】
前記ブレーディングパイプは、90度ごとの表皮断面配置されたチタン合金製ワイヤーが編み組まれ、四角形の角部造形を助成していることを特徴とする請求項1に記載のガンマ形ネイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガンマ形ネイル式インプラントに係り、詳しくは、断裂した骨片(例えば球状骨頭,
図7(a)中の符号1h) を母骨(例えば大腿骨1)に一体的に固定して断裂前の状態を復元するためのガンマ形ネイルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
事故などに遭遇し、例えば球状骨頭が大腿骨より断裂した場合、その修復のために、ガンマ形ネイル1Aがインプラントとして
図7(a)のごとく埋入される。このインプラントは、回復具合に応じて交換され、健常状態に戻れば抜去される。この種ガンマ形ネイルは、上腕骨、橈骨(とうこつ)、椎体(ついたい)といった箇所においても適用されている。
【0003】
ガンマ形ネイルの構造を、断裂した球状骨頭と大腿骨を例にして述べれば、大腿骨の内部の海面質骨を掘削して拡張した骨髄腔に嵌装固定されるネイル2と、このネイルに枝状(γ状)に支承され(
図7(b)中の符号5dに挿入して)、断裂した骨頭を突き刺すように支持して、大腿骨に引き寄せるラグスクリュー3からなる。なお、1bは横止めスクリュー、2aはエンドキャップである。
【0004】
このラグスクリューやネイルは機械的強度が高く人体に無害なチタン合金製とされるが、治療中のX線照射に対して透過性がないため、撮像がその背後を遮る。正確な治療は施しがたく、X線に不感な材料として複合材を充てることが注目され、特許文献1にその提案がなされている。
【0005】
それは、ポリエーテルエーテルケトン樹脂をマトリックスとしたプリプレグシートを例えば平積みして成形し、その表面をPEEK樹脂製シートで覆って表層を形成させたものとなっている。
【0006】
このような複合材製ガンマ形ネイルのラグスクリューは、骨頭の海面質骨をセルフタッピングして捕捉し保持する能力を高く発揮させるため、その先端部のチップスクリュー部6のみをチタン合金製としている。これは、チップスクリュー部に形成されているスパイラルカッター6a(これはラグスクリュー本体部5の主スクリュー5aと等ピッチで連なる)の金属製化を実現し、ラグスクリュー3の先端の掘削性、耐久性を向上させている。
【0007】
言うまでもないが、主スクリュー5aを備えるラグスクリュー本体部5は進行させるために回転されねばならないが、チップスクリュー部6もラグスクリュー本体部5と一体回転をさせねばならない。回転ズレが生じるとスパイラルカッター6aが掘削形成した螺旋孔を主スクリュー5aが耕すことになり、海面質骨の担持能力を低下させてしまうからである。
【0008】
ラグスクリューを回転させるためにブレーディングパイプ(braiding pipe)7が使用されるが、
図8に示すように、ラグスクリュー本体部5には、その軸芯5bに沿って延びる角状断面の縦孔5cを挿通するブレーディングパイプ7の先端をチップスクリュー部6の軸芯6bに沿って延びる角状孔8に嵌着させ、チップスクリュー部6の回転をラグスクリュー本体部5の回転と一致させている。
【0009】
このブレーディングパイプ7はラグスクリューにトルクを及ぼすにふさわしい外形を持つと共に、ラグスクリューの進行方向を案内すべく予め張られたガイドワイヤー5w(
図7(b)を参照)に案内される貫通丸孔13(
図8を参照)を持った中空体となっている。大腿骨の外皮骨、海面質骨、球面骨頭の海面質骨の順に硬軟ある経路を確実に辿らせるべく計画された進行方向からの逸脱をきたさないことが重要であるからである。なお、計画進行方向の決定やガイドワイヤーの張持具等について本明細書では触れない。
【0010】
ところで、ブレーディングパイプ7は引っ張り力や所定トルクに耐えねばならから、その成形には補強繊維の方向が重要となる。すなわち、引っ張りに対してはロービング材や±0度配向のプリプレグシートが採用され、トルクに対しては±45度配向のプリプレグシートが採用される。よって、ブレーディングパイプ7は丸棒(図示せず)に巻き付けて成形される。従って、断面外形も円形となりがちである。チップスクリュー部6をラグスクリュー3として組み込み完了後に熱可塑性複合材の樹脂を加熱して溶出した樹脂でもって疑似角状断面化される。しかしトルク伝達が甘くなる傾向は否めない.
【0011】
一方、ラグスクリュー本体部とチップスクリュー部との連結はブレーディングパイプに頼らざるを得ないが、ブレーディングパイプ外面とラグスクリュー本体部5の縦孔5c (
図8を参照)、およびチップスクリュー部6の角状孔8の内壁との摩擦力に期待するほかはない。ラグスクリューは前進だけでなく後進も余儀なくされる場合があり、連結力はその引っ張り力や引き抜き力に耐えるものでなければならないからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
以上から把握されるブレーディングパイプには、金属製チップスクリュー部を備えた複合材製のガンマ形ネイルを実現するにはいくつかの問題がある。本発明はこれらの事情に鑑みなされたもので、その目的は、ラグスクリューを縦通するブレーディングパイプの安定的なトルク伝達機能、押し引き抜き力の向上を目指したガンマ形ネイル式インプラントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、断裂した骨片 (例えば球状骨頭) を母骨(例えば大腿骨)に一体的に固定して断裂前の状態を復元するに供されるガンマ形ネイル式インプラントに適用される。その特徴とするところは、母骨1(
図7(a)を参照)に埋設したネイル2 に支承されている
図1に示すラグスクリュー3は、炭素繊維強化熱可塑性樹脂のジャーナル部4とタッピング用の樹脂コンパウンド製モールドスクリュー殻5aを被着した複合材製のスクリュー本体部5とボーリング用のスパイラルカッター6aを備えたチタン合金製チップスクリュー部6とからなる。
ラグスクリュー3は、その軸芯3bに沿って縦通し断面外郭が角状のブレーディングパイプ7を備え、このブレーディングパイプ7はスクリュー本体部5から突出され、チップスクリュー部6の背面6rにはその軸芯部にブレーディングパイプ7の先端部分が嵌合する角状孔8が開口されている。
ブレーディングパイプ7も炭素繊維強化熱可塑性樹脂の造形品であり、角状孔8はチップスクリュー部6の先端6f(
図2を参照)まで延びており、チップスクリュー部6の背面6rで開口する角状孔8の開口周囲には放射状溝9(
図1を参照)が形成され、スクリュー本体部5のチップスクリュー6との接合面5eには放射状溝9に嵌着する放射状突起10(
図3も参照)が形成され、チップスクリュー部6の先端6fにおける開口縁部7a(
図6(a)を参照)には、三角断面をなすように切り欠かれた傾斜底凹部11(
図6(b)を参照)が形成される。
この傾斜底凹部11には、ブレーディングパイプ7のチップスクリュー部6における先端6fを加熱ツール14(
図6(c)を参照)により加熱変形させ、該チップスクリュー部6を前記ラグスクリュー3として組み込み完了後に熱可塑性複合材の樹脂を加熱し溶融させることにより抜け止めリップ12(
図4を参照)を形成させている。
【0015】
放射状突起10を設けることなく、放射状溝9(
図1を参照)が角状孔8に連通して設けられ、ブレーディングパイプ7からの溶出樹脂が放射状溝9(
図4を参照)にも導入されるようになっていてもよい。
【0016】
ブレーディングパイプ7は、90度ごとの表皮断面配置されたチタン合金製ワイヤー15(
図1(a)を参照)が編み組まれ、四角形の角部造形を助成している。
【発明の効果】
【0017】
本発明のガンマ形ネイルによれば、チップスクリュー部6をチタン合金製としたことによりX線撮像によりチップスクリュー部6の進出位置を観察することが可能で、骨片の表皮骨の突き破りの有無も見張りやすくなる。チップスクリュー部6の角状孔8にブレーディングパイプ7の先端部分が嵌合するので、スクリュー本体部5とチップスクリュー部6との一体回転が実現される。放射状突起10の放射状溝9との嵌合によっても、チップスクリュー部6の回転がスクリュー本体部5に遅れることはなくトルク伝達がなされる。これと共に、傾斜底凹部11に沿わされた樹脂による抜け止めリップ12の係止作用により、チップスクリュー部6のスクリュー本体部5からの抜け落ち回避可能にするのみならず、引き抜き強度を高めてラグスクリュー3としての一体性、保形性が達成され、ガンマ形ネイルとしての長期の耐用性向上が図られる。
【0018】
放射状突起10を設けることなく、放射状溝9(
図1を参照)が角状孔8に連通して設けられ、ブレーディングパイプ7からの溶出樹脂が放射状溝9(
図4を参照)にも導入されるようになっていれば、これによっても機械的な一体性が果たされ、トルク伝達精度は向上する。
【0019】
ブレーディングパイプ7の表皮にチタン合金製ワイヤー15が編み組まれていることにより、ブレーディングパイプ7の断面をトルク伝達に好都合な四角形断面の造形が可能になる。さらに、ラグスクリュー3の回転を、X線による金属製ワイヤー15の撮像重なり程度の大小を指標にして確認することができる。この金属製ワイヤーによる視認性向上により、ガンマーネイル全体の位置を確認して、適切な位置にセットされているかを確認する重要な役割も果たす。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】(a)は本発明に係るガンマ形ネイルにおけるラグスクリューのジャーナル部およびスクリュー本体部の一体外観図、(b)はスクリュー本体部の接合面側から見たチップスクリュー部の外観図、(c)はチップスクリュー部の先端側から見た外観図。
【
図2】ラグスクリューのジャーナル部およびスクリュー本体部の一体物にチップスクリュー部を配置した縦断面図。
【
図3】(a)はラグスクリュー本体部とチップスクリューの分離外観図、(b)はラグスクリュー本体部とチップスクリューの合体外観図。
【
図4】ラグスクリューのジャーナル部およびスクリュー本体部の一体物にブレーディングパイプを挿入してチップスクリュー部をラグスクリューとして組み込み完了後に熱可塑性複合材の樹脂を加熱し溶融させて抜け止めリップを形成させたラグスクリューの合体縦断面図。
【
図5】(a)はラグスクリューのジャーナル部およびスクリュー本体部の一体外観図、(b)はスクリュー本体部の接合面側から見た外観図、(c)はチップスクリュー部の外観図。(d)はチップスクリュー部の背後側から見た外観図。(e)はチップスクリュー部の先端側から見た外観図。
【
図6】(a)はチップスクリューの縦断面図、(b)はブレーディングパイプ7の挿入直後図、(c)はブレーディングパイプの先端変形加工図。
【
図7】(a)はガンマ形ネイルのインプラント図、(b)はラグスクリューのネイル取り付け要領図。
【
図8】ブレーディングパイプの挿入後のスクリュー本体部とチップスクリュー部の先行例における合体図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明に係るガンマ形ネイル式インプラントを、その実施の形態を表した図面に基づいて詳細に説明する。この発明は、人体のいくつかの部位で使用できるが、断裂した球状骨頭と大腿骨を例にしてガンマ形ネイル式インプラントを述べる。
【0022】
図7(a)に示す母骨としての大腿骨1に埋設した複合材製のネイル2に支承されているラグスクリュー3は、炭素繊維強化熱可塑性樹脂の
図1(a)に示すジャーナル部とタッピング用の主スクリューである樹脂コンパウンド製モールドスクリュー殻5aを被着した炭素繊維強化熱可塑性樹脂のスクリュー本体部5とボーリング用のスパイラルカッター6aを備えたチタン合金製チップスクリュー部6とからなる。
【0023】
ラグスクリュー3は、その軸芯3bに沿って縦通し断面外郭が角状のねじ込みトルクを伝達するブレーディングパイプ7を備える。このブレーディングパイプ7はスクリュー本体部5から突出され、チップスクリュー部6の背面6rにはその軸芯部にブレーディングパイプ7の先端部分が嵌合する角状孔8が開口されている(
図1(b)のチップスクリュー部6を参照)。
【0024】
ブレーディングパイプ7も炭素繊維強化熱可塑性樹脂の造形品であり、角状孔8はチップスクリュー部6の先端6f(
図2を参照)まで延びている。ちなみに、ブレーディングパイプ7には、
図1からも分かるように貫通丸孔13が設けられている。これは、ブレーディングパイプ7を造形するに不可避な治具の除去跡であるが、ラグスクリューの進行方向を案内するガイドワイヤー5w(
図7を参照)を辿らせるために利用される。
【0025】
チップスクリュー部6の背面6rで開口する角状孔8の開口周囲には放射状溝9(
図1を参照)が形成されており、スクリュー本体部5のチップスクリュー6との接合面5eには放射状溝9に嵌着する放射状突起10(
図3も参照)が形成されている。
【0026】
チップスクリュー部6の先端6fにおける開口縁部8a(
図6(a)を参照)には、三角断面をなすように切り欠かれた傾斜底凹部11(
図2を参照)が、チップ削り出し時に形成される。この傾斜底凹部11には、ブレーディングパイプ7のチップスクリュー部6における先端縁6eの一部を加熱ツール14(
図6(c)を参照)により加熱変形させ、チップスクリュー部6を前記ラグスクリュー3として組み込み完了後に熱可塑性複合材の樹脂を加熱し溶融させることにより抜け止めリップ12(
図4を参照)を形成させている。
【0027】
このように、チップスクリュー部6をチタン合金製としたことによりX線撮像によりチップスクリュー部6の進出位置を観察することが可能で、骨片の表皮骨の突き破りの有無を見張りやすくなる。
【0028】
以上述べた構成によれば、チップスクリュー部6の角状孔8にブレーディングパイプ7の先端部分が嵌合するので、スクリュー本体部5とチップスクリュー部6との一体回転が実現される。放射状突起10の放射状溝9との嵌合によっても、チップスクリュー部6の回転がスクリュー本体部5に遅れることはなくトルク伝達がなされる。これに加えて、ブレーディングパイプ7の先端が傾斜底凹部11に沿って抜け止めリップ12に変形される。係止作用を発揮する抜け止めリップ12と放射状溝9とブレーディングパイプ7との連続性が達成されるので、チップスクリュー部6のスクリュー本体部5からの抜け落ちの回避のみならず、引き抜き強度を高めてラグスクリュー3としての一体性、保形性が達成され、ブレーディングパイプ7の張力強化のみならず、トルク伝達作用の強化が図られ、ガンマ形ネイルとしての長期の耐用性向上が図られる。
【0029】
なお、
図6(a)には、チップスクリュー6の縦断面図が示され、(b)にはブレーディングパイプ7の挿入直後の様子が、(c)にはブレーディングパイプ7の先端変形加工が描かれ、ブレーディングパイプのチップスクリュー6への一連の取り付けと変形要領が表されている。
【0030】
ところで、放射状突起10を設けることなく、放射状溝9(
図1を参照)が角状孔8に連通して設けられ、ブレーディングパイプ7からの溶出樹脂が放射状溝9(
図4を参照)にも導入されるようになっていれば、これによっても機械的な一体性が果たされ、トルク伝達精度は向上する。
【0031】
ブレーディングパイプ7は、90度ごとの表皮層配置されたチタン合金製ワイヤー15(
図1(a)を参照)が編み組まれ、ブレーディングパイプ7の断面をトルク伝達に好都合な角形断面の造形を可能にする。なお、ブレーディングパイプ7は図示しない回動具により回転される。ラグスクリュー3の回転は、X線によるチタン合金製ワイヤー15の撮像重なり程度の大小を指標にして確認することができる。このチタン合金製ワイヤーによる視認性向上により、ガンマーネイル全体の位置を確認して、適切な位置にセットされているかを確認する重要な役割が果たされる。もちろん、複合材化により透過性が高まることによって消影状態にあるネイルやラグスクリューの位置を教えることもできる。
【0032】
ちなみに、ブレーディングパイプ7についてもう少し詳しく述べる。 ロービング束帯の3軸ブレーディングは、長手方向(チューブの軸方向)に傾斜および逆傾斜して交差するように配向されたUDテープによる網状巻層を成形しておく。捩れ剛性が極めて高く、患者の身体からの動的荷重や繰り返し荷重に対する耐力も強いものとなる。
【0033】
ラグスクリューは骨頭内の海綿骨に螺着するスクリュー部と、ネイルの中間部位に軸支されるジャーナル部からなり、反スクリュー側端にはラグスクリューを螺進させるためのレンチ係合部が形成されていれば、ネイルへの取付けが極めて円滑となる。ラグスクリューとしての機能を十二分に果たさせることができ、構造的にも機能的にも安定したものとなる。
【0034】
ちなみに、ブレーディングパイプ7は断面外郭が角状として説明したが、三角,四角、五角など角張ったものであることが好都合であるが、トルク伝達を確実に果たせるような形になっていればよい。チップスクリュー部6やワイヤー15をチタン合金製と開示したが、機械的強度が高く人体に無害な金属であれば十分であり、ネイルやラグスクリューの部位によってはステンレススチールといった金属を採用することもできる。
【符号の説明】
【0035】
1:母骨(大腿骨)、1h:骨頭、1A:ガンマネイル、2:ネイル、3:ラグスクリュー、3b:軸芯、4:ジャーナル部、5:スクリュー本体部、5a:モールドスクリュー殻、5e:接合面、6:チップスクリュー部、6a:スパイラルカッター、6e:先端縁、6r:背面、6f:先端、7:ブレーディングパイプ、7a:開口縁部、8:角状孔、8a:開口縁部、9:放射状溝、10:放射状突起、11:傾斜底凹部、12:抜け止めリップ、14:加熱ツール、15:チタン合金製ワイヤー。