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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107331
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】エッチング組成物
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/308 20060101AFI20240801BHJP
【FI】
H01L21/308 E
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024094703
(22)【出願日】2024-06-11
(62)【分割の表示】P 2021513969の分割
【原出願日】2019-08-08
(31)【優先権主張番号】62/730,043
(32)【優先日】2018-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514251329
【氏名又は名称】フジフイルム エレクトロニック マテリアルズ ユー.エス.エー., インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 智威
(72)【発明者】
【氏名】ゴンサレス、フランク
(57)【要約】
【課題】本開示は、例えば、多段階半導体製造プロセスにおいて中間工程として半導体基板からタングステン(W)及び/又は窒化チタン(TiN)を選択的に除去するために有用なエッチング組成物に関する。
【解決手段】エッチング組成物であって、前記組成物の約65重量%~約90重量%の量のリン酸と、前記組成物の約0.01重量%~約4重量%の量の酢酸と、前記組成物の約0.01重量%~約5重量%の量の硝酸と、水と、を含む、エッチング組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッチング組成物であって、
前記組成物の約65重量%~約90重量%の量のリン酸と、
前記組成物の約0.01重量%~約4重量%の量の酢酸と、
前記組成物の約0.01重量%~約5重量%の量の硝酸と、
水と、
を含む、エッチング組成物。
【請求項2】
前記リン酸が、前記組成物の約70重量%~約85重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記リン酸が、前記組成物の約72重量%~約76重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記酢酸が、前記組成物の約0.1重量%~約3.5重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記酢酸が、前記組成物の約0.3重量%~約0.7重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記硝酸が、前記組成物の約0.05重量%~約4重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記硝酸が、前記組成物の約0.3重量%~約0.7重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記水が、前記組成物の約10重量%~約30重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
Sbをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記Sbが、前記組成物の約1ppb~約100ppbの量で存在する、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
Cu、K、Ca、Na、Fe、Pb、Sr、As、Ni、Mn、Mg、およびLiからなる群から選択される1種または複数種の金属元素をさらに含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
前記Sbの量が、Cu、K、Ca、Pb、Sr、As、Ni、Mn、Mg、およびLiの各々の量よりも多い、請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
前記Sbの量が、NaおよびFeの各々の量よりも多い、請求項9に記載の組成物。
【請求項14】
少なくとも1種の金属腐食防止剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記少なくとも1種の金属腐食防止剤が、式(A)の化合物、式(B)の化合物、式(C)の化合物、または置換テトラゾールを含む、請求項14に記載の組成物:
【化1】


式中、
1A~R5Aは、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは非置換の炭化水素基、ヒドロキシル基、チオール基、カルボキシ基、または置換もしくは非置換のアミノ基であり、但し、ヒドロキシル基、カルボキシ基、および置換もしくは非置換のアミノ基から選択される少なくとも1つの基が式(A)に含まれており、
1B~R4Bは、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシル基、または置換もしくは非置換の炭化水素基であり、
1C、R2CおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または置換もしくは非置換の炭化水素基であるか、または、R1CおよびR2Cは、それらが結合している炭素原子と共に、環を形成している。
【請求項16】
前記少なくとも1種の金属腐食防止剤が、前記組成物の約0.0001重量%~約1重量%の量で存在する、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
約0.1μm~約1μmの平均サイズを有する複数の粒子をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記複数の粒子が、前記組成物の最大で約150個/mlの量で存在する、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
少なくとも1種のアルミニウムエッチング界面活性剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
前記少なくとも1種のアルミニウムエッチング界面活性剤が、式(D):R-N(CH-O(D)(RはC-C24アルキルである)の化合物を含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記少なくとも1種のアルミニウムエッチング界面活性剤が、前記組成物の約0.0001重量%~約1重量%の量で存在する、請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
前記組成物が、リン酸、酢酸、硝酸、および水のみからなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
AlOx、WまたはTiNを含む半導体基板を請求項1~請求項22のいずれか1項に記載の組成物と接触させて前記AlOx、WまたはTiNを除去することを含む、方法。
【請求項24】
前記接触させる工程の後に、前記半導体基板をリンス溶媒でリンスすることをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記リンスする工程の後に、前記半導体基板を乾燥させることをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記方法が、前記半導体基板上のCuまたは誘電体材料を実質的に除去しない、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記方法が、WまたはTiNに対してAlOxを選択的にエッチングする、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
請求項23に記載の方法によって形成された物品であって、半導体デバイスである物品。
【請求項29】
前記半導体デバイスが集積回路である、請求項28に記載の物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2018年9月12日に出願された米国仮出願第62/730,043号の優先権を主張し、その内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
開示の分野
本開示は、金属導体、バリア材料、絶縁体材料(例えば、高k誘電体材料)などの他の露出したまたは下にある材料の存在下で、酸化アルミニウム(AlなどのAlOx)、タングステン(W)および/または窒化チタン(TiN)を選択的にエッチングするための組成物およびプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体産業は、超小型電子デバイス、シリコンチップ、液晶ディスプレイ、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)、プリント配線板、NANDフラッシュメモリ等における電子回路及び電子部品の寸法を急速に減少させ、密度を増加させている。それらの内部の集積回路は、各回路層の間の絶縁層の厚さを絶えず減少させ、一層より小さいフィーチャサイズで、積層されている。フィーチャサイズが縮小するにつれて、パターンはより小さくなり、デバイス性能パラメータはより厳しく、よりロバストになっている。その結果、より小さいフィーチャサイズのために、以前に許容され得た様々な問題はもはや許容され得ないか、または、より問題になっている。
【0003】
先端的集積回路の生産において、より高い密度に関連する問題を最小化し、性能を最適化するために、高k絶縁体と低k絶縁体の両方、および種々のバリア層材料が採用されてきた。
【0004】
半導体デバイス、液晶ディスプレイ、NANDフラッシュメモリ、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)、プリント配線板などには、酸化アルミニウム(AlなどのAlOx)、タングステン(W)、窒化チタン(TiN)が利用され、貴金属のグランド層やキャップ層として利用されている。半導体デバイスでは、WとTiNをバリアメタル、ハードマスク、あるいはゲート材料として、AlOxを誘電体材料として、用いることができる。
【0005】
これらの用途のためのデバイスの構築において、AlOx、WおよびTiNはしばしば、同じエッチング工程でエッチングされる必要がある。AlOx、WおよびTiNの種々のタイプの使用およびデバイス環境において、これらの材料がエッチングされるのと同時に、他の層が接触されるかまたは露出される。これらの他の材料(例えば、金属導体、誘電体、およびハードマーク)の存在下でのAlOx、W、およびTiNの高度に選択的なエッチングは、デバイスの歩留まりおよび長寿命のために必要である。AlOx、WおよびTiNのためのエッチングプロセスは、プラズマエッチングプロセスであってもよい。しかしながら、AlOx、WおよびTiN層上にプラズマエッチングプロセスを使用すると、ゲート絶縁層および半導体基板のいずれかまたは両方に損傷を生じさせる可能性がある。加えて、エッチングプロセスは、ゲート電極によって露出されたゲート絶縁層をエッチングすることによって、半導体基板の一部を除去し得る。トランジスタの電気的特性は、負の影響を受ける可能性がある。そのようなエッチング損傷を回避するために、追加の保護デバイス製造工程を使用することができるが、かなりのコストがかかる。
【0006】
AlOx、WおよびTiNの湿式エッチング法が知られている。そのような方法は、他の試薬と組み合わせたエッチング剤の使用を含み得る。しかし、シリコンベースの誘電体および他の高k誘電体材料(HfOx)との選択性は十分ではなく、デバイス内の他の露出した金属も腐食またはエッチングを受ける可能性がある。
【0007】
したがって、エッチングプロセスの際に、高いAlOx、WまたはTiNエッチング速度を有するが、露出したまたはAlOx、WもしくはTiNと接触した他の半導体材料に対して低いエッチング速度および腐食速度を有するエッチング液が必要である。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、半導体デバイス内に存在する金属導体層、ハードマスク層、および低k誘電体層に対して、AlOx、Wおよび/またはTiNを選択的にエッチングするための組成物およびプロセスに関する。より具体的には、本開示は、Wおよび/またはTiNに対してAlOxを選択的にエッチングするための組成物およびプロセス、ならびに/または、特定の高k誘電体層および/または低k誘電体層に対してWおよび/またはTiNを選択的にエッチングするための組成物およびプロセスに関する。
【0009】
一態様では、本開示は、a)組成物の約65重量%~約90重量%の量のリン酸と、b)組成物の約0.01重量%~約4重量%の量の酢酸と、c)組成物の約0.01重量%~約5重量%の量の硝酸と、d)水と、を含むエッチング組成物を特徴とする。
【0010】
別の態様では、本開示は、AlOx、Wおよび/またはTiNを含む半導体基板を本明細書に記載のエッチング組成物と接触させてAlOx、Wおよび/またはTiNを除去することを含む方法を特徴とする。
【0011】
さらに別の態様では、本開示は、半導体デバイス(例えば、集積回路)である、上述の方法によって形成された物品を特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書で定義されるように、特に断らない限り、表される全てのパーセンテージは、組成物の総重量に対する重量パーセンテージであると理解されるべきである。特に断らない限り、周囲温度は、約16~約27℃であると定義される。
【0013】
一般に、本開示は、(a)組成物の約65重量%~約90重量%の量のリン酸、(b)組成物の約0.01重量%~約4重量%の量の酢酸、(c)組成物の約0.01重量%~約5重量%の量の硝酸、および(d)水を含む(例えば、を含む、から実質的になる、または、からなる)エッチング組成物(例えば、タングステンおよび/または窒化チタンを選択的に除去するためのエッチング組成物)を特徴とする。いくつかの実施形態では、エッチング組成物は、リン酸、酢酸、硝酸からなることができ、またはリン酸、酢酸、硝酸、および水からなることができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、リン酸は、本開示のエッチング組成物の少なくとも約65重量%(例えば、少なくとも約66重量%、少なくとも約67重量%、少なくとも約68重量%、少なくとも約69重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約71重量%、少なくとも約72重量%、少なくとも約73重量%、少なくとも約74重量%、少なくとも約75重量%、少なくとも約80重量%、または少なくとも約85重量%)から最大で約90重量%(例えば、最大で約89重量%、最大で約88重量%、最大で約87重量%、最大で約86重量%、最大で約85重量%、最大で約84重量%、最大で約83重量%、最大で約82重量%、最大で約81重量%、最大で約80重量%、最大で約79重量%、最大で約78重量%、最大で約77重量%、最大で約76重量%、または最大で約75重量%)の量で存在する。理論に束縛されることを望むものではないが、リン酸はエッチングプロセス中に半導体基板上のAlOx、W及び/又はTiNの除去を容易にし、強化することができると考えられる。
【0015】
いくつかの実施態様では、酢酸は、本開示のエッチング組成物の少なくとも約0.01重量%(例えば、少なくとも約0.05重量%、少なくとも約0.1重量%、少なくとも約0.2重量%、少なくとも約0.3重量%、少なくとも約0.4重量%、少なくとも約0.5重量%、少なくとも約1重量%、少なくとも約1.5重量%、少なくとも約2重量%、少なくとも約2.2重量%、少なくとも約2.4重量%、少なくとも約2.5重量%、少なくとも約2.6重量%、少なくとも約2.8重量%、少なくとも約3重量%、少なくとも約3.2重量%)から最大で約4重量%(例えば、最大で約3.8重量%、最大で約3.6重量%、最大で約3.5重量%、最大で約3.4重量%、最大で約3.2重量%、最大で約3重量%、最大で約2.8重量%、最大で約2.6重量%、最大で約2.5重量%、最大で約2重量%、最大で約1.5重量%、最大で約1重量%、最大で約0.9重量%、最大で約0.8重量%、最大で約0.7重量%、最大で約0.6重量%、または最大で約0.5重量%)の量で存在する。理論に束縛されることを望むものではないが、酢酸はエッチングプロセス中に露出される他の材料(例えば、高kまたは低k誘電体材料)に対するAlOx、TiNおよびWのエッチング選択性を制御することができると考えられる。
【0016】
いくつかの実施形態において、硝酸は、本開示のエッチング組成物の少なくとも約0.01重量%(例えば、少なくとも約0.02重量%、少なくとも約0.04重量%、少なくとも約0.05重量%、少なくとも約0.06重量%、少なくとも約0.08重量%、少なくとも約0.1重量%、少なくとも約0.2重量%、少なくとも約0.3重量%、少なくとも約0.4重量%、少なくとも約0.5重量%、少なくとも約1重量%、少なくとも約1.5重量%、少なくとも約2重量%、少なくとも約2.5重量%、または少なくとも約3重量%)から最大で約5重量%(例えば、最大で約4.5重量%、最大で約4重量%、最大で約3.5重量%、最大で約3重量%、最大で約2.5重量%、最大で約2重量%、最大で約1.6重量%、最大で約1.5重量%、最大で約1重量%、最大で約0.9重量%、最大で約0.8重量%、最大で約0.7重量%、最大で約0.6重量%、最大で約0.5重量%、または最大で約0.1重量%)の量で存在する。理論に束縛されることを望むものではないが、硝酸はTiNおよびWなどの金属の酸化剤として働くことができ、エッチングプロセス中に露出される他の材料(例えば、高kまたは低k誘電体材料)に対するTiNおよびWのエッチング選択性を制御することができると考えられる。さらに、理論に束縛されることを望むものではないが、エッチング組成物中の酢酸および硝酸の量を特定の比率(例えば、1:1などの、約1.5:1~1:1.5)に制御することによって、Wエッチング速度とTiNエッチング速度とを特定の比率(例えば、約3:1~約4:1)に調整することができると考えられる。このようなエッチング組成物は、比較的大きな厚さを有するW層と、比較的小さな厚さを有するTiN層とを含む半導体基板に関連して使用するのに好適であり得る。
【0017】
いくつかの実施形態では、水は、本開示のエッチング組成物の少なくとも約10重量%(例えば、少なくとも約12重量%、少なくとも約14重量%、少なくとも約15重量%、少なくとも約16重量%、少なくとも約18重量%、少なくとも約20重量%、少なくとも約21重量%、少なくとも約22重量%、少なくとも約23重量%、または少なくとも約24重量%)から最大で約30重量%(例えば、最大で約29重量%、最大で約28重量%、最大で約27重量%、最大で約26重量%、最大で約25重量%、最大で約23重量%、最大で約21重量%、最大で約20重量%、最大で約19重量%、最大で約17重量%、最大で約15重量%、最大で約13重量%、または最大で約11重量%)の量で存在する。
【0018】
本開示のエッチング組成物は、任意選択で、1種または複数種の任意選択の金属元素を含むことができる。金属元素はエッチング組成物中でイオン形態(例えば、金属イオン)または非イオン形態(例えば、Sbなどの金属)で存在し得る。適切な金属元素の例としては限定されるものではないが、Sb、Cu、K、Ca、Na、Fe、Pb、Sr、As、Ni、Mn、Mg、およびLiが挙げられる。いくつかの実施形態では、各金属元素の量が、エッチング組成物の少なくとも約0.1ppb(例えば、少なくとも約0.5ppb、少なくとも約1ppb、少なくとも約2ppb、少なくとも約4ppb、少なくとも約5ppb、少なくとも約6ppb、少なくとも約8ppb、少なくとも約10ppb、少なくとも約15ppb、少なくとも約20ppb、少なくとも約25ppb、または少なくとも約30ppb)から最大で約100ppb(例えば、最大で約95ppb、最大で約90ppb、最大で約80ppb、最大で約70ppb、最大で約60ppb、最大で約50ppb、最大で約40ppb、または最大で約30ppb)であり得る。いくつかの実施態様において、Sb元素の量は、Cu、K、Ca、Na、Fe、Pb、Sr、As、Ni、Mn、Mg及びLi元素の各々の量よりも多い。エッチング組成物中の金属元素の量は一般に、誘導結合プラズマ質量分析法を使用することによって測定することができる。いくつかの実施形態では、金属元素は、エッチング組成物を調製するために使用される出発材料に関連する不純物である。理論に束縛されることを望むものではないが、金属元素は、エッチングされることを意図しないエッチングプロセス中に露出する特定の金属のエッチングを低減することができる金属エッチング抑制剤として機能することができると考えられる。
【0019】
いくつかの実施形態では、本開示のエッチング組成物は、任意選択で、少なくとも1種(例えば、2種、3種、または4種)の金属腐食防止剤を含むことができる。適切な金属腐食防止剤の例には、式(A)の化合物、式(B)の化合物、式(C)の化合物、または置換テトラゾールが含まれる。
【0020】
【化1】

【0021】
式(A)において、R1A~R5Aは、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは非置換の炭化水素基(例えば、C-C10アルキル基)、ヒドロキシル基、チオール基、カルボキシ基、または置換もしくは非置換のアミノ基であることができ、ただし、ヒドロキシル基、カルボキシ基および置換もしくは非置換のアミノ基から選択される少なくとも1つの基が式(A)に含まれる。式(B)において、R1B~R4Bはそれぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシル基、または置換もしくは非置換の炭化水素基(例えば、C-C10アルキル基)であり得る。一般式(C)において、R1C、R2C及びRはそれぞれ独立して、水素原子または置換もしくは非置換の炭化水素基(例えば、C-C10アルキル基)であってよく、又は、R1C及びR2Cは、それらが結合する炭素原子と共に、環(例えば、5員環、6員環、又は7員環)を形成している。環は、芳香族または非芳香族(例えば、0~2つの二重結合を含む)であってよく、O、N、またはS等の1~3個の任意のヘテロ原子を含むことができる。環は、少なくとも1つ(例えば、2つ、3つ、または4つ)の置換基、例えば、ヒドロキシル基、または、置換もしくは非置換の炭化水素基(例えば、C-C10アルキル基)、で置換されていてもよい。適切な金属腐食防止剤の例には、チオグリセロール、カテコール、ピロガロール、ベンゾトリアゾール、および5-メチルベンゾトリアゾールが含まれる。
【0022】
いくつかの実施形態では、金属腐食防止剤は、エッチング組成物の少なくとも約0.0001重量%(例えば、少なくとも約0.0002重量%、少なくとも約0.0005重量%、少なくとも約0.001重量%、少なくとも約0.002重量%、少なくとも約0.005重量%、少なくとも約0.01重量%、少なくとも約0.02重量%、少なくとも約0.05重量%、少なくとも約0.1重量%、少なくとも約0.2重量%、または少なくとも約0.5重量%)から最大で約1重量%(例えば、最大で約0.9重量%、最大で約0.8重量%、最大で約0.7重量%、最大で約0.6重量%、最大で約0.5重量%、最大で約0.4重量%、最大で約0.3重量%、最大で約0.2重量%、最大で約0.1重量%、最大で約0.05重量%、または最大で約0.01重量%)の量で存在する。理論に束縛されることを望むものではないが、上述の金属腐食防止剤はエッチングプロセス中に露出される半導体基板上の他の金属(例えば、Cu)に対するAlOx、W及び/又はTiNの除去の選択性を改善することができると考えられる。
【0023】
いくつかの実施形態では、本開示のエッチング組成物は、任意選択で、少なくとも1種(例えば、2種、3種、または4種)のアルミニウムエッチング界面活性剤を含むことができる。適切なアルミニウムエッチング界面活性剤の例には、式(D):R-N(CH-O(D)(RはC-C24(例えば、C12-C18)アルキルである)の化合物が含まれる。適切なアルミニウムエッチング界面活性剤の一例は、n-ドデシル-N,N-ジメチルアミン-N-オキシドである:
【0024】
【化2】

【0025】
いくつかの実施形態では、アルミニウムエッチング界面活性剤は、エッチング組成物の少なくとも約0.0001重量%(例えば、少なくとも約0.0002重量%、少なくとも約0.0005重量%、少なくとも約0.001重量%、少なくとも約0.002重量%、少なくとも約0.005重量%、少なくとも約0.01重量%、少なくとも約0.02重量%、少なくとも約0.05重量%、少なくとも約0.1重量%、少なくとも約0.2重量%、または少なくとも約0.5重量%)から最大で約1重量%(例えば、最大で約0.9重量%、最大で約0.8重量%、最大で約0.7重量%、最大で約0.6重量%、最大で約0.5重量%、最大で約0.4重量%、最大で約0.3重量%、最大で約0.2重量%、最大で約0.1重量%、最大で約0.05重量%、または最大で約0.01重量%)の量で存在する。理論に束縛されることを望むものではないが、アルミニウムエッチング界面活性剤は(例えば、エッチング組成物の表面張力を改善することによって)半導体表面の均一性を改善することができると考えられる。
【0026】
いくつかの実施形態では、本開示のエッチング組成物は、任意選択で、少なくとも約0.1μm(例えば、少なくとも約0.2μm、少なくとも約0.3μm、少なくとも約0.4μm、少なくとも約0.5μm、少なくとも約0.6μm、または少なくとも約0.8μm)から最大で約1μm(例えば、最大で約0.9μm、最大で約0.8μm、最大で約0.7μm、最大で約0.6μm、最大で約0.5μm、最大で約0.4μm、最大で約0.2μm)の平均サイズ(例えば、平均直径)を有する複数の粒子を含むことができる。いくつかの実施形態では、複数の粒子は、エッチング組成物の最大で約150個/ml(例えば、最大で約125個/ml、最大で約100個/ml、最大で約90個/ml、最大で約80個/ml、最大で約70個/ml、最大で約60個/ml、最大で約50個/ml、最大で約40個/ml、最大で約30個/ml、最大で約20個/ml、または最大で約10個/ml)および/または0個/ml(例えば、少なくとも約5個/ml)の量で存在する。一般に、粒子サイズ及び粒子数は、Rion KS-42B等の粒子計数器を用いることによって測定することができる。いくつかの実施形態では、粒子は、エッチング組成物を調製するために使用される出発材料に関連する不純物である。理論に束縛されることを望まないが、本明細書に記載されるエッチング組成物中に適切な量(例えば、10~100個/ml)の粒子を含むことはピッティングまたはスピアヘッドエッチング等の異常なエッチングを抑制し得ると考えられる。他方、理論に束縛されることを望むものではないが、エッチング組成物中に100個/mlを超える粒子を含むと、半導体基板の表面上に欠陥が生じる可能性があると考えられる。
【0027】
いくつかの実施形態では、本開示のエッチング組成物は、最大で約1(例えば、最大で約0.9、最大で約0.8、最大で約0.7、最大で約0.6、または最大で約0.5)および/または少なくとも約0(例えば、少なくとも約0.1、少なくとも約0.2、少なくとも約0.3、少なくとも約0.4、または少なくとも約0.5)のpHを有することができる。理論に束縛されることを望むものではないが、1より高いpHを有するエッチング組成物は、十分なAlOx、Wおよび/またはTiNエッチング速度を有さないと考えられ、なぜなら、これらの材料を除去するためには十分に高い酸性度が必要だからであり、また、0より低いpHを有するエッチング組成物は、強い酸性度のために、組成物中の特定の成分を分解し得ると考えられる。
【0028】
さらに、いくつかの実施形態では、本開示のエッチング組成物は、任意選択で、pH調整剤、追加の腐食防止剤、追加の界面活性剤、有機溶媒、殺生物剤、および消泡剤などの添加剤を含むことができる。適切な消泡剤の例としては、ポリシロキサン消泡剤(例えば、ポリジメチルシロキサン)、ポリエチレングリコールメチルエーテルポリマー、エチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマー、およびグリシジルエーテルキャップアセチレンジオールエトキシレート(例えば、本明細書中に参考として援用される米国特許第6,717,019号に記載されるもの)が挙げられる。適切な界面活性剤の例は、カチオン性、アニオン性、非イオン性または両性であり得る。
【0029】
一般に、本開示のエッチング組成物は、比較的高いW/誘電体材料および/またはTiN/誘電体材料エッチング選択性(すなわち、誘電体材料エッチング速度に対するWエッチング速度の高い比率、および/または誘電体材料エッチング速度に対するTiNエッチング速度の高い比率)を有することができる。誘電体材料の例には、SiO、AlOx、高k誘電体材料、および低k誘電体材料が含まれる。いくつかの実施形態では、エッチング組成物は、少なくとも約2(例えば、少なくとも約3、少なくとも約4、少なくとも約5、少なくとも約6、少なくとも約7、少なくとも約8、少なくとも約9、少なくとも約10、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約30、少なくとも約40、または少なくとも約50)および/または最大で約500(例えば、最大で約100)のW/誘電体材料および/またはTiN/誘電体材料エッチング選択性を有することができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、本開示のエッチング組成物は、比較的高いAlOx/Wおよび/またはAlOx/TiNエッチング選択性(すなわち、Wエッチング速度に対するAlOxエッチング速度の高い比率および/またはTiNエッチング速度に対するAlOxエッチング速度の高い比率)を有し得る。いくつかの実施形態では、エッチング組成物は、少なくとも約2(例えば、少なくとも約3、少なくとも約4、少なくとも約5、少なくとも約6、少なくとも約7、少なくとも約8、少なくとも約9、少なくとも約10、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約30、少なくとも約40、または少なくとも約50)および/または最大で約500(例えば、最大で約200または最大で約100)のAlOx/Wおよび/またはAlOx/TiNエッチング選択性を有することができる。このようなエッチング組成物は、比較的大きな厚さを有するAlOx層と、比較的小さな厚さを有するWまたはTiN層と、を含む半導体に関連して使用するのに適している。
【0031】
いくつかの実施形態では、本開示のエッチング組成物は、1種または複数種の添加剤成分を、複数種の場合は任意の組み合わせで、特に除外する(または実質的に含まない)ことができる。本明細書で使用される「実質的に含まない」という用語は、エッチング組成物の最大で約0.1%(例えば、最大で約0.05%、最大で約0.01%、最大で約0.005%、最大で約0.001%、または約0%)である成分の重量%を指す。このような除外される成分は、ポリマー、酸素捕捉剤、第四級アンモニウム塩(水酸化第四級アンモニウムを含む)、アミン、アルカリ塩基(NaOH、KOH、およびLiOHなど)、消泡剤以外の界面活性剤、消泡剤、フッ化物含有化合物、酸化剤(例えば、過酸化物、過酸化水素、硝酸第二鉄、ヨウ素酸カリウム、過マンガン酸カリウム、硝酸、亜塩素酸アンモニウム、塩素酸アンモニウム、ヨウ素酸アンモニウム、過ホウ酸アンモニウム、過塩素酸アンモニウム、過ヨウ素酸アンモニウム、過硫酸アンモニウム、テトラメチルアンモニウム亜塩素酸塩、テトラメチルアンモニウム塩素酸塩、テトラメチルアンモニウムヨウ素酸塩、過ホウ酸テトラメチルアンモニウム、過塩素酸テトラメチルアンモニウム、過ヨウ素酸テトラメチルアンモニウム、過硫酸テトラメチルアンモニウム、尿素過酸化水素、および過酢酸)、研磨剤(例えば、シリカまたはアルミナ研磨剤)、3つ以上のヒドロキシル基を含有するヒドロキシカルボン酸、カルボン酸およびポリカルボン酸(例えば、アミノ基を欠くもの)、スルホン酸、シラン(例えば、アルコキシシラン)、環状化合物(例えば、少なくとも2つの環を含有する環状化合物、例えば置換または非置換ナフタレン、または置換または非置換ビフェニルエーテル)、キレート剤、緩衝剤、非アゾール腐食防止剤、アゾール類(例えば、ジアゾール、トリアゾール、またはテトラゾール)、および塩(例えば、硫酸塩、スルホン酸塩、塩化物塩、硝酸塩、酢酸塩、リン酸塩、および金属ハロゲン化物、カリウム塩(例えば、硝酸カリウム)、ナトリウム塩、および銀塩などの金属塩)からなる群から選択される。
【0032】
本開示のエッチング組成物は、成分を単に一緒に混合することによって調製することができ、またはキット中で2つの組成物をブレンドすることによって調製することができる。キット中の第1の組成物は、硝酸の水溶液であり得る。キット中の第2の組成物は、本開示のエッチング組成物の残りの成分を、2つの組成物のブレンドが本開示の所望のエッチング組成物を生じるように、濃縮された形態で所定の比率で含有することができる。
【0033】
いくつかの実施形態では、本開示は、AlOx、Wおよび/またはTiNを含む(例えば、AlOx、Wおよび/またはTiNを含むことを特徴とする)半導体基板をエッチングする方法を特徴とする。方法は、AlOx、Wおよび/またはTiNを含む半導体基板を本開示のエッチング組成物と接触させて、AlOx、Wおよび/またはTiNを除去することを含む。接触は少なくとも約20℃(例えば、少なくとも約25℃、少なくとも約30℃、少なくとも約40℃、少なくとも約50℃、または少なくとも約60℃)および/または最大で約95℃(例えば、最大で約90℃、最大で約80℃、または最大で約70℃)の温度で行うことができる。方法は、接触工程の後に半導体基板をリンス溶媒でリンスすること、および/またはリンス工程の後に半導体基板を乾燥させることをさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、方法は、半導体基板中のCuまたは誘電体材料(例えば、SiO)を実質的に除去しない。例えば、方法は、半導体基板中の約5重量%を超える(例えば、約3重量%を超える、または約1重量%を超える)Cuまたは誘電体材料を除去しない。
【0034】
いくつかの実施形態では、エッチング方法は、
(A)AlOx、Wおよび/またはTiNを含む半導体基板を提供する工程と、
(B)半導体基板を本明細書に記載のエッチング組成物と接触させる工程と、
(C)半導体基板を1種または複数種の適切なリンス溶媒でリンスする工程と、
(D)任意選択で、(例えば、リンス溶媒を除去し且つ半導体基板の完全性を損なわない任意の好適な手段によって)半導体基板を乾燥させる工程と、
を含む。
【0035】
この方法でエッチングされるAlOx、Wおよび/またはTiNを含む半導体基板は有機および有機金属残留物、さらに、エッチングプロセス中に除去されてもよい一連の金属酸化物を含むことができる。
【0036】
半導体基板は、典型的にはシリコン、シリコンゲルマニウム、GaAsなどのIII-V族化合物、またはそれらの任意の組み合わせから構成される。半導体基板はさらに、相互接続特徴(例えば、金属線および誘電体材料)などの露出された集積回路構造を含むことができる。相互接続の特徴に使用される金属および金属合金にはアルミニウム、銅と合金化されたアルミニウム、銅、チタン、タンタル、コバルト、シリコン、窒化チタン、窒化タンタル、およびタングステンが含まれるが、これらに限定されない。また、半導体基板は、層間誘電体、酸化シリコン、窒化シリコン、炭化シリコン、酸化チタン、および炭素ドープシリコン酸化物の層を含んでもよい。
【0037】
半導体基板は、エッチング組成物をタンク内に配置し、半導体基板をエッチング組成物内に浸漬および/または沈めること、半導体基板上にエッチング組成物を噴霧すること、半導体基板上にエッチング組成物をストリーミングすること、またはそれらの任意の組合せなどの任意の適切な方法によって、本明細書に記載のエッチング組成物と接触させることができる。
【0038】
本開示のエッチング組成物は、室温(例えば、約20~25℃)から約95℃の温度(例えば、約55℃~約95℃、約60℃~約90℃、約60℃~約80℃、または約70℃)で有効に使用することができる。AlOx、Wおよび/またはTiNのエッチング速度は一般に、この範囲で温度と共に増加し、したがって、より高い温度を有するプロセスをより短時間実行することができる。逆に、より低いエッチング温度は、典型的にはより長いエッチング時間を必要とする。いくつかの実施形態では、発明者らは、驚くべきことに、本開示に記載されるエッチング組成物は、WまたはTiNエッチング速度の増加と比較して、高温(例えば、70℃)でAlOxエッチング速度の著しく高い増加を有することができ、それによって、その温度で比較的高いAlOx/WまたはAlOx/TiNエッチング選択性をもたらすことを見出した。
【0039】
エッチング時間は、使用される特定のエッチング方法、厚さ、および温度に応じて、広い範囲にわたって変化し得る。浸漬バッチ型プロセスでエッチングする場合、適切な時間範囲は例えば、約10分まで(例えば、約1分~約7分、約1分~約5分、または約2分~約4分)である。単一ウェーハプロセスのためのエッチング時間は、約30秒~約5分(例えば、約30秒~約4分、約1分~約3分、または約1分~約2分)の範囲であり得る。
【0040】
本開示のエッチング組成物のエッチング能をさらに促進するために、機械的攪拌手段を使用することができる。好適な攪拌手段の例としては、基板上へのエッチング組成物の循環、基板上へのエッチング組成物のストリーミングまたはスプレー、およびエッチングプロセス中の超音波またはメガソニック攪拌が挙げられる。地面に対する半導体基板の配向は、任意の角度とすることができる。水平配向または垂直配向が好ましい。
【0041】
エッチングに続いて、半導体基板は、攪拌手段を使用して又は使用せずに、約5秒から約5分間、適切なリンス溶媒でリンスすることができる。異なるリンス溶媒を使用する複数のリンス工程を使用することができる。適切なリンス溶媒の例としては、脱イオン(DI)水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、N-メチルピロリジノン、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、乳酸エチルおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、またはさらに、pH>8の水性リンス(水酸化アンモニウム希釈水溶液など)を使用することができる。リンス溶媒の例としては、水酸化アンモニウム希釈水溶液、DI水、メタノール、エタノール、およびイソプロピルアルコールが挙げられるが、これらに限定されない。リンス溶媒は、本明細書に記載されたエッチング組成物を適用する際に使用されるものと同様の手段を使用して適用することができる。エッチング組成物は、リンス工程の開始前に半導体基板から除去されていてもよいし、リンス工程の開始時に半導体基板に依然として接触していてもよい。いくつかの実施形態では、リンス工程で使用される温度は、16℃~27℃である。
【0042】
任意選択的に、半導体基板は、リンス工程の後に乾燥される。当技術分野で公知の任意の好適な乾燥手段を使用することができる。好適な乾燥手段の例としては、スピン乾燥、半導体基板を横切る乾燥気体の流動、またはホットプレートもしくは赤外線灯などの加熱手段で半導体基板を加熱すること、マラゴニ乾燥、ロタゴニ乾燥、IPA乾燥、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。乾燥時間は、使用される特定の方法に依存するが、典型的には30秒から数分のオーダーである。
【0043】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるエッチング方法は、さらに、上述の方法によって得られた半導体基板から半導体デバイス(例えば、半導体チップなどの集積回路デバイス)を形成することを含む。
【0044】
本開示は以下の実施例を参照してより詳細に例示されるが、これらは例示の目的のためであり、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例0045】
列挙したパーセンテージは、特に明記しない限り、重量(重量%)によるものである。試験中の制御された攪拌は、特に断らない限り、300rpmで1インチ攪拌バーを用いて行った。
【0046】
一般手順1
配合ブレンド
【0047】
エッチング組成物のサンプルは、計算された量の水に配合物の残りの成分を攪拌しながら添加することによって調製した。均一な溶液が得られた後、任意選択の添加剤(使用する場合)を添加した。
【0048】
一般手順2
材料及び方法
【0049】
評価用0.5”×0.5”テストクーポンにダイシングした市販のパターンなし300mm直径ウエハを用いて、フィルム上のブランケットフィルムエッチング速度測定を行った。試験に使用される主なブランケットフィルム材料には、1)シリコン基板上に堆積された厚さ約1000ÅのWフィルム、2)シリコン基板上に堆積された厚さ約1000ÅのTiNフィルム、3)シリコン基板上の1000ÅのSiO上に堆積された厚さ約250ÅのHfOxフィルム、4)シリコン基板上の1000ÅのSiO上に堆積された厚さ約250ÅのAlOxフィルムが含まれる。
【0050】
ブランケットフィルム試験クーポンを、処理前および処理後の厚さについて測定して、ブランケットフィルムエッチング速度を決定した。WおよびTiN金属ブランケットフィルムについては、CDE Resimap 273、4点プローブを用いてシート抵抗によりフィルム厚を測定した。HfOxおよびAlOxフィルムについては、Woollam M-2000Xを用いたEllipsometryにより処理前および処理後にフィルム厚を測定した。
【0051】
一般手順3
ビーカー試験によるエッチング評価
【0052】
全てのブランケットフィルムエッチング試験は、蒸発損失を最小限にするために、パラフィルム(Parafilm)(登録商標)カバーを常に所定の位置に置いた状態で、250rpmで継続的に攪拌しながら、200gのサンプル溶液を含む600mlのガラスビーカー中で室温(21~23℃;以下特に明記しない限り)で実施した。片側がサンプル溶液に露出するブランケット金属または誘電体フィルムを有するすべてのブランケット試験クーポンを、ダイヤモンドスクライブによって、ビーカースケール試験用の0.5”×0.5”平方の試験クーポンサイズにダイスカットし、個々の試験クーポンを、単一の4”長さの固定プラスチックピンセットクリップを使用して所定の位置に保持した。固定ピンセットクリップによって一方の縁部に保持された試験クーポンを600mLのガラスビーカーに吊り下げ、200gの試験溶液に浸漬し、その間、溶液を室温で250rpmで連続的に攪拌した。各サンプルクーポンを攪拌溶液中に入れた直後に、600mLガラスビーカーの頂部を、Parafilm(登録商標)で覆い、再密封した。処理時間(一般手順3Aに記載の通り)が経過するまで、試験クーポンを攪拌溶液中で静止状態に保持した。試験溶液中での処理時間が経過した後、サンプルクーポンを600mLガラスビーカーから直ちに取り出し、一般手順3Aに従ってリンスした。最後のDIリンス工程の後、全ての試験クーポンを、手持ち式窒素ガス送風機を使用して濾過窒素ガス吹き出し工程にかけ、これにより、全ての痕跡量のDI水を強制的に除去して、試験測定のための最終乾燥サンプルを作製した。
【0053】
一般手順3A(ブランケット試験クーポン)
【0054】
一般手順3に従った10分の処理時間の直後に、試験クーポンを1000ml容量の超高純度脱イオン(DI)水中に20℃で約1リットル/分の溢流速度で30秒間浸漬し、次いで穏やかに攪拌しながらさらに30秒間浸漬した。一般手順3に従って処理を完了した。
【0055】
実施例1
【0056】
配合例1~4(FE-1~FE-4)を一般手順1に従って調製し、一般手順2および3に従って評価した。配合物および試験結果を表1にまとめる。
【0057】
【表1】

【0058】
表1に示すように、FE-2は、水量がFE-1からFE-2に増加するにつれて、FE-1と比較して、改良されたTiNおよびWエッチング速度を示した。さらに、硝酸の量がFE-2からFE-4に増加するにつれて、TiNおよびWのエッチング速度も増加した。
【0059】
実施例2
【0060】
配合例5~8(FE-5~FE-8)を一般手順1に従って調製し、一般手順2および3に従って評価した。配合物および試験結果を表2にまとめる。
【0061】
【表2】

【0062】
表2に示すように、水の量がFE-5からFE-8に増加すると、TiNおよびWエッチング速度も増加した。
【0063】
実施例3
【0064】
配合例9~12(FE-9~FE-12)を一般手順1に従って調製し、一般手順2および3に従って評価した。配合物および試験結果を表3にまとめる。
【0065】
【表3】

【0066】
表3に示すように、硝酸が存在しない場合、FE-9は非常に低いTiNおよびWエッチング速度を示した。さらに、硝酸の量がFE-10からFE-11に増加するにつれて、TiNおよびWのエッチング速度も増加した。さらに、水量がFE-11からFE-12に減少すると、TiNおよびWエッチング速度は減少した。
【0067】
本発明はその特定の実施形態を参照して詳細に説明されてきたが、修正および変形は、説明され特許請求されるものの精神および範囲内であることが理解されるであろう。
【0068】
実施例4
【0069】
配合例13~19(FE-13~FE-19)を一般手順1に従って調製し、一般手順2および3に従って評価した。配合物および試験結果を表4にまとめる。
【0070】
【表4】

【0071】
表4に示すように、Sb量がFE-13からFE16に増加すると、HfOxエッチング速度は減少した。また、Sbの量が100ppbよりも多いか(FE-17)または1ppbよりも少ない(FE-18中)場合、配合物は比較的高いHfOxエッチング速度を示した。理論に束縛されることを望むものではないが、SbはHfOx表面上に不溶性パッシベーション層を形成することができ、それによって、エッチングプロセス中にそのエッチング速度を低下させると考えられる。
【0072】
実施例5
【0073】
配合例20~27(FE-20~FE-27)を一般手順1に従って調製し、一般手順2および3に従って評価した。配合物および試験結果を表5にまとめる。FE-2の配合物および試験結果もまた、比較として表5に含まれる。
【0074】
【表5】

【0075】
表5に示すように、特定の添加剤(例えば、金属腐食防止剤およびアルミニウムエッチング界面活性剤)を添加した場合、TiN/Wエッチング速度の比は改善され、1に近くなった。
【0076】
実施例6
【0077】
配合例28~32(FE-28~FE-32)を一般手順1に従って調製し、一般手順2および3に従って評価した。配合物および試験結果を表6にまとめる。
【0078】
【表6】

【0079】
異常なエッチングに関する評価(スピアヘッド):
1.スピアヘッドなし(1%未満)
2.わずかなスピアヘッド(3%未満)
3.ある程度のスピアヘッド(5%未満)
4.ひどいスピアヘッド(10%超)
【0080】
表6に示すように、0.5ミクロンサイズの粒子が存在し、それらの量が増加した場合、配合物は、スピアヘッド等の異常なエッチングの減少を示した。
【0081】
実施例7
【0082】
配合例33~39(FE-33~FE-39)を一般手順1に従って調製し、一般手順2および3に従って評価した。配合物および試験結果を表7にまとめる。FE-2の配合物および試験結果もまた、比較として表7に含まれる。
【0083】
【表7】

【0084】
表7に示すように、スピアヘッドを制御するには、HPO、HNOおよびHAcの重量パーセンテージが重要である。
【0085】
比較例
【0086】
比較配合例CFE-1~CFE-6を一般手順1に従って調製し、一般手順2および3に従って評価した。配合物および試験結果を表8にまとめる。FE-2の配合物および試験結果もまた、比較として表8に含まれる。
【0087】
【表8】

【0088】
表8に示すように、(1)HPOの重量パーセンテージが90%超または65%未満(CFE-1およびCFE-2参照)、(2)HNOの重量パーセンテージが0.01%未満および5%超(CFE-3およびCFE-4参照)、ならびに(3)HAcの重量パーセンテージが0.01%未満および4%超(CFE-5およびCFE-6参照)の場合、異常なエッチング率が悪かった。
【0089】
実施例8
【0090】
配合例40~57(FE-40~FE-57)を一般手順1に従って調製し、一般手順2および3に従って評価した。エッチング試験は70℃で行った。配合物および試験結果を表9にまとめる。
【0091】
【表9】

【0092】
表9に示すように、FE-40~FE-57は、70℃のエッチング温度において、高いAl/WおよびAl/TiNのエッチング選択性と共に、高いAlエッチング速度を示した。
【0093】
実施例9
【0094】
配合例58(FE-58)を一般手順1に従って調製し、一定時間(すなわち、1時間、4時間、8時間、または24時間)エイジングした後、異なるエッチング温度(すなわち、25℃、50℃、および70℃)で一般手順2および3に従って評価した。FE-58は、74重量%のリン酸、0.5重量%の酢酸、0.5重量%の硝酸、および25重量%の水を含有した。試験結果を表10にまとめる。
【0095】
【表10】

【0096】
表10に示すように、エッチング温度を25℃から70℃に増加させると、試験した3つの材料(すなわち、W、Al、およびTiN)すべてのエッチング速度が増加した。また、25℃から70℃へのエッチング温度の上昇は、WおよびTiNエッチング速度よりもAlエッチング速度においてより大きな上昇をもたらし、その結果、より高いAl/WおよびAl/TiNエッチング選択性をもたらした。

【手続補正書】
【提出日】2024-07-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッチング組成物であって、
前記組成物の約65重量%~約90重量%の量のリン酸と、
前記組成物の約0.01重量%~約4重量%の量の酢酸と、
前記組成物の約0.01重量%~約5重量%の量の硝酸と、
水と、
を含む、エッチング組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0096
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0096】
表10に示すように、エッチング温度を25℃から70℃に増加させると、試験した3つの材料(すなわち、W、Al、およびTiN)すべてのエッチング速度が増加した。また、25℃から70℃へのエッチング温度の上昇は、WおよびTiNエッチング速度よりもAlエッチング速度においてより大きな上昇をもたらし、その結果、より高いAl/WおよびAl/TiNエッチング選択性をもたらした。
本願発明の例示的な態様を以下に記載する。
<1>
エッチング組成物であって、
前記組成物の約65重量%~約90重量%の量のリン酸と、
前記組成物の約0.01重量%~約4重量%の量の酢酸と、
前記組成物の約0.01重量%~約5重量%の量の硝酸と、
水と、
を含む、エッチング組成物。
<2>
前記リン酸が、前記組成物の約70重量%~約85重量%の量で存在する、<1>に記載の組成物。
<3>
前記リン酸が、前記組成物の約72重量%~約76重量%の量で存在する、<1>に記載の組成物。
<4>
前記酢酸が、前記組成物の約0.1重量%~約3.5重量%の量で存在する、<1>に記載の組成物。
<5>
前記酢酸が、前記組成物の約0.3重量%~約0.7重量%の量で存在する、<1>に記載の組成物。
<6>
前記硝酸が、前記組成物の約0.05重量%~約4重量%の量で存在する、<1>に記載の組成物。
<7>
前記硝酸が、前記組成物の約0.3重量%~約0.7重量%の量で存在する、<1>に記載の組成物。
<8>
前記水が、前記組成物の約10重量%~約30重量%の量で存在する、<1>に記載の組成物。
<9>
Sbをさらに含む、<1>に記載の組成物。
<10>
前記Sbが、前記組成物の約1ppb~約100ppbの量で存在する、<9>に記載の組成物。
<11>
Cu、K、Ca、Na、Fe、Pb、Sr、As、Ni、Mn、Mg、およびLiからなる群から選択される1種または複数種の金属元素をさらに含む、<9>に記載の組成物。
<12>
前記Sbの量が、Cu、K、Ca、Pb、Sr、As、Ni、Mn、Mg、およびLiの各々の量よりも多い、<9>に記載の組成物。
<13>
前記Sbの量が、NaおよびFeの各々の量よりも多い、<9>に記載の組成物。
<14>
少なくとも1種の金属腐食防止剤をさらに含む、<1>に記載の組成物。
<15>
前記少なくとも1種の金属腐食防止剤が、式(A)の化合物、式(B)の化合物、式(C)の化合物、または置換テトラゾールを含む、<14>に記載の組成物:
【化1】

式中、
1A ~R 5A は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは非置換の炭化水素基、ヒドロキシル基、チオール基、カルボキシ基、または置換もしくは非置換のアミノ基であり、但し、ヒドロキシル基、カルボキシ基、および置換もしくは非置換のアミノ基から選択される少なくとも1つの基が式(A)に含まれており、
1B ~R 4B は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシル基、または置換もしくは非置換の炭化水素基であり、
1C 、R 2C およびR は、それぞれ独立に、水素原子または置換もしくは非置換の炭化水素基であるか、または、R 1C およびR 2C は、それらが結合している炭素原子と共に、環を形成している。
<16>
前記少なくとも1種の金属腐食防止剤が、前記組成物の約0.0001重量%~約1重量%の量で存在する、<14>に記載の組成物。
<17>
約0.1μm~約1μmの平均サイズを有する複数の粒子をさらに含む、<1>に記載の組成物。
<18>
前記複数の粒子が、前記組成物の最大で約150個/mlの量で存在する、<17>に記載の組成物。
<19>
少なくとも1種のアルミニウムエッチング界面活性剤をさらに含む、<1>に記載の組成物。
<20>
前記少なくとも1種のアルミニウムエッチング界面活性剤が、式(D):R-N(CH -O(D)(RはC -C 24 アルキルである)の化合物を含む、<19>に記載の組成物。
<21>
前記少なくとも1種のアルミニウムエッチング界面活性剤が、前記組成物の約0.0001重量%~約1重量%の量で存在する、<19>に記載の組成物。
<22>
前記組成物が、リン酸、酢酸、硝酸、および水のみからなる、<1>に記載の組成物。
<23>
AlOx、WまたはTiNを含む半導体基板を<1>~<22>のいずれか1項に記載の組成物と接触させて前記AlOx、WまたはTiNを除去することを含む、方法。
<24>
前記接触させる工程の後に、前記半導体基板をリンス溶媒でリンスすることをさらに含む、<23>に記載の方法。
<25>
前記リンスする工程の後に、前記半導体基板を乾燥させることをさらに含む、<24>に記載の方法。
<26>
前記方法が、前記半導体基板上のCuまたは誘電体材料を実質的に除去しない、<23>に記載の方法。
<27>
前記方法が、WまたはTiNに対してAlOxを選択的にエッチングする、<23>に記載の方法。
<28>
<23>に記載の方法によって形成された物品であって、半導体デバイスである物品。
<29>
前記半導体デバイスが集積回路である、<28>に記載の物品。