(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107349
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】仮想ブレーキ及び仮想クラッチを備える二輪車
(51)【国際特許分類】
B60L 7/14 20060101AFI20240801BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
B60L7/14
B60L15/20
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024094788
(22)【出願日】2024-06-12
(62)【分割の表示】P 2020004188の分割
【原出願日】2020-01-15
(31)【優先権主張番号】62/793127
(32)【優先日】2019-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】523044769
【氏名又は名称】ライブワイヤー イーブイ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー アルフレッド ニット
(72)【発明者】
【氏名】ジム ウィリアムズ
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル ニコラス ライティンガー
(72)【発明者】
【氏名】ジェームス サドーカス
(57)【要約】
【課題】 改善された車両の電気モーターを動作させる方法を提供すること。
【解決手段】 当該方法は、車両に含まれる第1の制御装置の位置を検出するステップと、
車両に含まれる第2の制御装置の位置を検出するステップと、第1の制御装置の検出位置を第1の要求されたトルクに関連付けるステップと、第2の制御装置の位置を第2の要求されたトルクに関連付けるステップと、第1の要求されたトルク及び第2の要求されたトルクに基づいて、電子制御ユニットを用いて第1の要求されたトルクを第2の要求されたトルクで乗算することによりトルク指令を決定するステップと、車両に含まれる電気モーターに前記トルク指令を伝達するステップとを含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の電気モーターを動作させる方法であって、当該方法は、
前記車両に含まれる第1の制御装置の位置を検出するステップであって、該第1の制御装置は、前記車両の駆動トルクを制御する、ステップと、
前記車両に含まれる第2の制御装置の位置を検出するステップであって、該第2の制御装置は、前記車両の車輪の制動力を制御するためのものである、ステップと、
前記第1の制御装置の検出位置を第1の要求されたトルクに関連付けるステップと、
前記第2の制御装置の位置を第2の要求されたトルクに関連付けるステップであって、該第2の要求されたトルクは前記第2の制御装置の位置に基づいて0~100%の間のパーセントで表される、ステップと、
前記第1の要求されたトルク及び前記第2の要求されたトルクに基づいて、電子制御ユニットを用いて前記第1の要求されたトルクを前記第2の要求されたトルクで乗算することによりトルク指令を決定するステップと、
前記車両に含まれる電気モーターに前記トルク指令を伝達するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
二輪車両の電気モーターを動作させるためのシステムであって、当該システムは、前記車両に含まれる少なくとも1つの電子制御ユニットを含み、
前記少なくとも1つの電子制御ユニットは、
前記車両に含まれるとともに、前記車両の駆動トルクを制御する第1の制御装置の位置を検出することと、
前記車両に含まれる第2の制御装置の位置を検出することと、
前記第1の制御装置の検出位置を第1の要求されたトルクに関連付けることと、
前記第2の制御装置の位置を第2の要求されたトルクに関連付けることと、
前記第1の要求されたトルク及び前記第2の要求されたトルクに基づいてトルク指令を決定することと、
合計されるトルク値にトルクリミットを適用することと、
前記車両に含まれる電気モーターに前記トルク指令を伝達することと、
を行うように構成されている、システム。
【請求項3】
前記電子制御ユニットは、前記第1の要求されたトルクと前記第2の要求されたトルクとを合計することにより前記トルク指令を決定する、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記電子制御ユニットは、前記第1の要求されたトルクと前記第2の要求されたトルクとの積に基づいて前記トルク指令を決定する、請求項2に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2019年1月16日に出願された米国仮出願第62/793127号の優先権を主張する。係る仮出願の内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書に記載の実施形態は車両に関し、より具体的には、油圧ブレーキ等の機械摩擦ブレーキを補完するか又は機械摩擦ブレーキを置き換えて、クラッチ又はクラッチ及びブレーキの組み合わせをシミュレートするために回生制動システムを備えた電動パワートレインを用いる二輪車両に関する。従って、本明細書に記載の実施形態は、機械ブレーキ又はクラッチをシミュレートする仮想ブレーキ又はクラッチを提供できる。
【背景技術】
【0003】
油圧ブレーキ等の機械摩擦ブレーキはコストと重さを増加させる。これは車両、とりわけ電動オートバイ等の電気自動車の性能に影響を与える。さらに、機械摩擦ブレーキは運動エネルギーを消散させる。消散させなければ、運動エネルギーは車両に含まれる電力貯蔵部を充電するのに使用できるものであり、運動エネルギーの消散は電動車両の範囲及び動作を制限し得る。機械クラッチも同様に二輪車両にコスト及び重さに加える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本明細書に記載の実施形態は、例えば電動オートバイ等の車両の少なくとも1つの車輪を回生制動するための方法及びシステムを提供する。一部の実施形態では、二輪車両の後輪等の車両の車輪を制動する唯一の機構として回生制動が用いられる。後部の油圧ブレーキを回生制動に置き換えることにより、車両のコスト、重さ及び複雑さが低減され、上述したように車両の性能に影響を与える。
【課題を解決するための手段】
【0005】
例えば、一実施形態は二輪車両を提供する。二輪車両は電気モーターと、二輪車両を推進するために電気モーターに駆動可能に連結される車輪と、第1の複数の位置の間を移動可能な駆動トルク制御装置(drive torque control)と、第2の複数の位置の間を移動可能な回生制動制御装置(regenerative brake control)とを含む。車両は電子制御ユニットも含む。電子制御ユニットは、第1の複数の位置から駆動トルク制御装置の位置を検出することと、駆動トルク制御装置の検出位置を要求された駆動トルクにマッピングすることと、第2の複数の位置から回生制動制御装置の位置を検出することと、回生制動制御装置の位置を要求された制動トルクにマッピングすることと、要求された駆動トルクと要求された制動トルクとを合計してトルク指令を決定することと、トルク指令を電気モーターに伝達することと、を行うように構成されている。一部の実施形態では、トルク指令に基づいて電気モーターを介して提供される回生制動は、車輪の制動のために設けられる唯一の機構である。
【0006】
別の実施形態は、二輪車両の電気モーターを動作させる方法を提供する。当該方法は、二輪車両に含まれる第1の制御装置(first control)の位置を検出するステップであって、該第1の制御装置は、二輪車両の駆動トルクを制御する、ステップと、二輪車両に含まれる第2の制御装置(second control)の位置を検出するステップと、第1の制御装置の検出位置を第1の要求されたトルクにマッピングするステップと、第2の制御装置の位置を第2の要求されたトルクにマッピングするステップと、第1の要求されたトルク及び第2の要求されたトルクに基づいて、電子制御ユニットを用いてトルク指令を決定するステップと、車両に含まれる電気モーターにトルク指令を伝達するステップと、を含む。
【0007】
さらに別の実施形態は、二輪車両の電気モーターを動作させるためのシステムを提供する。当該システムは、二輪車両に含まれる少なくとも1つの電子制御ユニットを含む。少なくとも1つの電子制御ユニットは、車両に含まれるとともに、二輪車両の駆動トルクを制御する第1の制御装置の位置を検出することと、二輪車両に含まれる第2の制御装置の位置を検出することと、第1の制御装置の検出位置を第1の要求されたトルクにマッピングすることと、第2の制御装置の位置を第2の要求されたトルクにマッピングすることと、第1の要求されたトルク及び第2の要求されたトルクに基づいてトルク指令を決定することと、車両に含まれる電気モーターにトルク指令を伝達することと、を行うように構成されている。
【0008】
本発明の他の特徴及び態様は、以下の詳細な説明及び添付の図面を考慮に入れることにより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る二輪車両の斜視図である。
【
図4】
図4は、一実施形態に係るツイストグリップ及び回生制動制御装置を含む
図1の二輪車両を示す。
【
図5】
図5は、一実施形態に係る、
図1の二輪車両の電気モーターの動作方法を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、一実施形態に係る、
図1の二輪車両に含まれる回生制動制御装置の位置に基づき要求されるトルクを生成するための入力処理を概略的に示す。
【
図7】
図7は、一実施形態に係る、
図1の二輪車両における仮想ブレーキ及び仮想クラッチを生成するための入力処理を概略的に示す。
【
図8】
図8は、一実施形態に係る、仮想ブレーキ及び仮想クラッチのプロセスフローを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1つ以上の実施形態を以下の説明で記載し且つ添付の図面に示す。これらの実施形態は本明細書に記載の特定の詳細に限定されず、様々な形で変更され得る。さらに、本明細書に記載していない他の実施形態も存在し得る。また、1つのコンポーネントにより実行されるとして本明細書に記載する機能は、複数のコンポーネントにより分散的に実行されてもよい。同様に、複数のコンポーネントにより実行されるとして本明細書に記載する機能は、集約して単一のコンポーネントにより実行され得る。同様に、特定の機能を実行するものとして記載するコンポーネントは、本明細書に記載しない追加の機能も実行し得る。例えば、特定の形に「構成」された装置又は構造体は、少なくともそのような形で構成されるが、記載されていない形でも構成され得る。さらに、本明細書に記載の一部の実施形態は、非一時的なコンピュータ読取可能媒体に記憶される命令を実行することにより、記載する機能(又はその一部)を実行するように構成される1つ以上の電子プロセッサを含み得る。同様に、本明細書に記載の実施形態は、記載する機能を実行するために1つ以上の電子プロセッサにより実行可能な命令を記憶する非一時的なコンピュータ読取可能媒体として実施され得る。本願で用いる「非一時的なコンピュータ読取可能媒体」は全てのコンピュータ読取可能媒体を含むが、一時的な伝搬信号からなるものではない。従って、非一時的なコンピュータ読取可能媒体は、例えば、ハードディスク、CD-ROM、光学記憶装置、磁気記憶装置、ROM(リードオンリーメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、レジスタメモリ、プロセッサキャッシュ又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0011】
加えて、本明細書で用いる表現及び用語は説明を目的としたものであり、限定的に解釈すべきではない。例えば、本明細書における「含む」、「含有する」、「含まれる」、「有する」及びそれらの変形体の使用は、列挙される項目及びその同等物に加えて追加の項目を含むことを意味する。「接続」及び「連結」という用語は幅広く用いられ、直接的及び間接的な接続及び連結の双方を含む。さらに、「接続」及び「連結」は物理的又は機械的な接続又は連結に限定されず、直接的又は間接的であるかを問わず電気的な接続又は連結を含むことができる。加えて、有線接続、無線接続又はその組み合わせを用いて電子通信及び通知が行われてもよく、直接的又は種々の種類のネットワーク、通信チャネル及び接続を介して1つ以上の中間デバイスを介して送信され得る。さらに、第1及び第2、上及び下等の関係用語は1つの実体(entity)又は動作を別の実体又は動作から区別するためだけに本明細書で用いられ、実際にそのような関係又は順序がそのような実体又は動作の間に必要とすること又は含意することを意味するものではない。
【0012】
図1は、一実施形態に係る二輪車両20を示す。なお、本明細書に記載のシステム及び方法は、任意の種類の二輪車両(例えば、オートバイ、モペット、電気自転車等)に適用可能であり得る。二輪車両20は前輪22及び後輪24(例えば、1つの前輪22と、1つの軌道を定義するために1つの前輪22と一直線になった1つの後輪24と)を含む。車両20は、メインフレーム28を有するフレーム構造を含む。フロントフォーク32は、メインフレーム28の前方で前輪22を支持する。フロントフォーク32はメインフレーム28のヘッドチューブ36に回転可能に連結されている。ハンドルバー40は、運転手がフロントフォーク32及び前輪22の向きを制御できるようにフロントフォーク32に連結されている。リアスイングアーム44は、リアスイングアーム44内で後輪24が回転するように支持する。リアスイングアーム44は、後輪24及びスイングアーム44が共にメインフレーム28に対して軸Aを中心にピボットサスペンション動作(pivoting suspension movements)をできるようにする。軸Aでの枢動支持に加えて、スイングアーム44は、(例えば、コイルバネ及び油圧ダンパを含む)ショックアブソーバユニット46を介してメインフレーム28に連結されている。車両20は、少なくとも1つのシート48(例えば、オペレータ及び任意で後部同乗者のためのサドルシート)と、少なくとも一組のフットサポート50(例えば、横方向に延びるフットペグ)とをさらに含む。
【0013】
図示のように、車両20は、電力貯蔵部54(例えばバッテリーパック)と、電力貯蔵部54に電気的に連結される電気モーター58とを含む電動パワートレインにより駆動される電動オートバイであり、車両20を駆動するために電力貯蔵部54からの貯蔵電気エネルギーが回転運動エネルギーに変換される。図示のように、電気モーター58は、駆動スプロケット66と、後輪24にしっかりと固定される被駆動スプロケット68との周りに巻き付けられる環状体の形態のエンドレス駆動部材62(例えばベルト又はチェーン)を介して後輪24に動力を与える。エンドレス駆動部材62を駆動する駆動スプロケット66は、軸Aを中心に電気モーター58の出力シャフト70と一体的に回転するように固定されている。そのため、車両20には、電気モーター58と駆動スプロケット66との間のマルチスピードトランスミッションが設けられておらず、ギアボックスも設けられていない。一部の実施形態では、電気モーター58は高トルク密度を有する高極数モーターを含む。
【0014】
車両20は、車輪22、24の一方又は両方を制動するために回生制動を用いる。具体的には、車両20は、車輪22、24の一方又は両方のための機械摩擦ブレーキ(例えば、油圧ブレーキ)を補完するか又は機械摩擦ブレーキを置き換えるために、電気モーター58の回生能力を用いる。例えば、
図4に示すように、車両20のハンドルバー40は、各車輪22、24のための制動制御装置を含む。具体的には、図示のように、車両20は、(油圧ブレーキ等の機械摩擦ブレーキを介して)前輪22の制動を制御するためにハンドルバー40の右側に従来のフロントブレーキレバー70を含み、後輪24の回生制動を制御するためにハンドルバー40の左側に制御装置72を含む。以下で説明するように、一部の実施形態では、制御装置72は回生制動制御装置として動作する。車両20の運転手は、制御装置72を用いて電動パワートレインから各種量の負のトルクを要求し、そして、要求されたトルクを加えて車両20を停止又は減速させる(即ち、後輪24を停止又は減速させる)。後輪24の制動の間、制動エネルギーは機械摩擦ブレーキ(例えば、ブレーキキャリパー/ローター摩擦)の適用を介して熱として消散されるのではなく、捕捉されて電力貯蔵部54に戻される。そのため、一部の実施形態では、後輪24のために機械摩擦ブレーキが設置されておらず、車両20のコスト、重さ及び複雑さを低減する。例えば、一部の実施形態では、電動パワートレインは、オートバイに設置される従来の油圧ブレーキと少なくとも同じ量の制動力を提供し、改良された油圧ブレーキの等のより改良された機械制動システムに係るコストや重さが避けられる。
【0015】
図4に示すように、一部の実施形態では、制御装置72は、後輪24を制動するために運転手がハンドルバー40の方に引っ張る枢動可能な(枢動)レバーを含む。レバーを引っ張るか又は枢動させる量又は度合いは、運転手が必要とする制動の量に等しい。そのため、一部の実施形態では、制御装置72は、運転手がハンドルバー40の方にレバーをどれだけ引っ張るかに基づいて、回生制動の量を運転手が連続的に変化させることができるようにする。運転手がレバーを引っ張らない場合、レバーは、制御装置72を介して後輪24の制動が求められないホーム位置に(バネ又は同様の付勢部材を用いて)付勢される。なお、一部の実施形態では、制御装置72は、
図4に示す枢動レバーとは異なる種類のアクチュエータを含み得る。さらに、一部の実施形態では、制御装置72は、車両20上のハンドルバー40とは異なる他の場所に位置し得る。例えば、一部の実施形態では、制御装置72は、
図4に示す手動のレバーに代えてフットペダルを含む。
【0016】
後輪24に適用される回生制動の量は、制御装置72を介して受信される入力と、ハンドルバー40に連結される回転ツイストグリップを介して受信される入力とを含む入力の組み合わせに基づいて制御され得る。例えば、
図4に示すように、車両20は、複数の位置を通って回転可能なツイストグリップ74を含む。車両20に含まれるツイストグリップセンサは、例えばホール効果センサ、回転エンコーダ等を介してツイストグリップ74の位置を検出するように構成されている。
図4では、ツイストグリップ74がハンドルバー40の右側に位置するものとして示されているが、他の実施形態では、ツイストグリップ74はハンドルバー40の左側に位置し得る。また、一部の実施形態では、車両20(即ち、後輪24)のために要求された駆動トルクに関して運転手からの入力を受けるために、図示の回転可能なツイストグリップ74の代わりに異なる種類のアクチュエータ(例えば、ペダル、枢動レバー等)が使用され得る。本明細書では、そのようなアクチュエータを概して駆動トルク制御装置と呼ぶことがある。
【0017】
ツイストグリップ74の検出位置は、要求された駆動トルクにマッピングされる。一部の実施形態では、ツイストグリップ74の現在位置と関連するトルク要求との間のマッピングは、毎分回転数(RPM)等の電気モーター58の動作パラメータに基づき決定され得る車両20の現在の速度にも基づき得る。例えば、一部の実施形態において、現在のツイストグリップの位置及び電流速度を、要求された駆動トルクにマッピングするのに二次元参照テーブルが用いられ得る。
【0018】
また、一部の実施形態では、車両20は、複数の乗車モード(ride modes)のうちの1つのモードで動作させることができる。複数の乗車モードは、運転手が手動で選択することにより、車両20の動作条件に基づいて自動的に選択することにより又はその両方により選択できる。各乗車モードは、最高の速度又は加速を提供すること、効率的なエネルギー使用を提供すること等により、車両20の異なる動作を提供し得る。従って、これらの実施形態では、現在作動中の乗車モードのための特定の二次元テーブルが、ツイストグリップ74の位置及び電流速度を要求された駆動トルクにマッピングするのに用いられ得る。
【0019】
ツイストグリップ74の位置に基づいて決定されるトルク要求とは独立して、制御装置72の位置に基づき第2の(負の)トルク要求が生成される。このマッピングは方程式又は一次元参照テーブルを用いて行われ得る。例えば、ツイストグリップ74と同様に、制御装置72の位置が(例えば、光学センサ、機械センサ、電気センサ等を含む)制御センサにより検出され、検出された位置が要求された制動トルクにマッピングされる。一部の実施形態では、マッピングを行うために方程式が用いられる場合、方程式は、例えば制御装置72の検出位置を所定の最大位置で除算することにより制御装置72の作動の割合を決定することを含み得る。そのような実施形態では、要求される制動トルク(N/m)を算出するために利用可能な回生制動トルクの最大量が制御装置72の作動の割合に乗じられ得る。一部の実施形態では、異なるオートバイ、運転手、運転条件等のために制御装置72の作動を構成できるよう、制御装置72の最大位置、利用可能な最大制動トルク又はその両方がメモリ又はソフトウェアにおいて定義され得る。一部の実施形態では、制御装置72の位置により定義される要求された回生制動トルクは、上述したツイストグリップ74と同様に、現在選択されている乗車モードに基づき変化し得る。しかしながら、他の実施形態では、制御装置72を通じて要求される回生制動の量は、現在選択されている乗車モードに関係なく同じである。
【0020】
一部の実施形態では、ツイストグリップ74の位置(回転)により定義される要求された駆動トルクは、電気モーター58のためのモーターコントローラーに送信される電気モーター58のためのトルク指令を決定するために、制御装置72の位置により定義される要求された制動トルクと合計される。そのため、生成されたトルク指令は、ツイストグリップ74を介して運転手により要求される任意の量の駆動トルク及び制御装置72を介して運転手により要求される任意の量の制動トルクを構成する混合指令を表す。トルク指令が負の場合、電気モーター58は後輪24を回生制動し、回生制動の間に捕捉されたエネルギーが電力貯蔵部54に保存され得る。トルク指令が正の場合、電気モーター58は後輪24を駆動して車両20を前進させる。しかしながら、トルク指令により表される駆動トルクの量は先のトルク指令より小さいこともあり、トルク指令が正であっても車両20の減速をもたらし得る。
【0021】
一部の実施形態では、合計に基づきトルク指令をモーターコントローラーに送信する前に、合計されたトルク値又は合計に含まれる個々のトルク値にトルクリミットが適用され、牽引制御又はアンチロック制動等の高度な制動機能を提供されるようにモーターコントローラーに送信されるトルク指令を電動パワートレインの動作リミット内で維持され得る。他の実施形態では、車両20に含まれるモーターコントローラー又は他の構成要素は、電気モーター58を介してトルク要求が実行される前に、トルク要求をさらに処理し得る。
【0022】
ツイストグリップ74の位置により定義される要求された駆動トルクは正又は負であり得る。即ち、このトルク要求は、牽引力又は回生制動を要求できる。例えば、ツイストグリップ74の位置により定義されるトルク要求は、車両20のコスト削減を提供するために負のトルク(回生制動)を含み得る。従って、本願で用いられる(ツイストグリップ74の位置に基づき定義される)「要求された駆動トルク」は正であっても負であってもよい。しかしながら、制御装置72を介して要求される任意の回生制動制御(負のトルク)に加えて又は独立して、ツイストグリップ74の位置に基づき要求される負のトルクが存在する。
【0023】
図5は、一実施形態に係る車両20の電気モーター58のために、例えば回生制動トルク等の仮想ブレーキを生成する方法80を示すフローチャートである。方法80は、オートバイに含まれる電子制御ユニット(例えば、
図6のECU600)によって行われる。
図6に示すように、ECU600は、マイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路等の電子プロセッサ602を含み得る。一部の実施形態では、ECU600は、例えば、回生制動、マッピング又はテーブル等のためのリミット又は他の所定のパラメータを記憶するための非一時的なコンピュータ読取可能メモリ604も含む。ECU600は、1つ以上の有線又は無線通信チャネル又はネットワークを介して車両20に含まれる他の構成要素と通信を行うための入出力インターフェース606も含む。例えば、ECU600は、ツイストグリップセンサ84、制御センサ90、電気モーター58の動作パラメータを監視する1つ以上のセンサ607(例えば、RPMを検出する)等からデータを受信するように構成されてもよく、トルク指令を含むデータを電気モーター58のためのモーターコントローラー608に送信するように構成されてもよい。なお、ECU600により行われるものとして本明細書に記載の機能は、複数の電子制御ユニットに分散されてもよい。例えば、一部の実施形態では、車両20に含まれる他のECU、センサ等の他の構成要素は、方法80の少なくとも一部を行い得る。
【0024】
図5に示すように、方法80は、ツイストグリップ74の位置を検出することを(ブロック82で)含む。上述したように、ツイストグリップセンサ84は、回転エンコーダ、ホール効果センサ等を用いてツイストグリップ74の位置を(複数の位置の中から)検出し、利用可能な最大駆動トルクの0%~100%の値を表し得るツイストグリップ74の現在位置を出力するように構成され得る。一部の実施形態では、ツイストグリップ74及びツイストグリップセンサ84の適切な動作を確かなものにするために冗長センサーアセンブリ(例えば、センサーアセンブリ)が用いられ得る。ツイストグリップセンサ84は、ツイストグリップ74の位置(604A)を判定するだけでなく、故障又は他のエラーを検出するようにも構成され得る。また、一部の実施形態では、ツイストグリップセンサ84は、故障又は他のエラーについて種々のチェックを適用し得る。上述したように、ECU600はツイストグリップセンサ84と通信を行い得る。従って、一部の実施形態では、ECU600は、ツイストグリップセンサ84から受信されるデータに基づいてツイストグリップ74の現在位置を検出する。
【0025】
方法80は、ツイストグリップ74の検出位置を要求された駆動トルクにマッピングすることも(ブロック86で)含む。上述したように、ツイストグリップ74の位置は、ツイストグリップの位置及びオートバイの速度(電気モーター58のRPM)を要求された駆動トルクにマッピングする二次元テーブルを用いて、要求された駆動トルクにマッピングされ得る。一部の実施形態では、車両20が複数の乗車モードを含む場合、各乗車モード毎に要求された駆動トルクが計算されてもよく、ECU600は、現在作動中の乗車モードについて算出された要求された駆動トルクを選択できる。他の実施形態では、ECU600は現在作動中の乗車モードについてのみ要求された駆動トルクを計算し得る。
【0026】
方法80は、制御装置72の位置を検出することも(ブロック88で)含む。上述したように、制御センサ90は、制御装置72の位置を(複数の位置の中から)検出し、利用可能な所定の最大制動トルクの0%~100%の値を表し得る制御装置72の現在の位置を出力するように構成され得る。一部の実施形態では、制御センサ90は、故障又は他のエラーについて種々のチェックを適用し得る。上述したように、ECU600は制御センサ90と通信を行い得るため、ECU600は、制御センサ90から受信したデータに基づいて制御装置72の現在の位置を検出し得る。
【0027】
方法80は、制御装置72の位置を要求された制動トルクにマッピングすることも(ブロック92で)含む。上述したように、制御装置72の位置は、要求された制動トルクに一次元テーブル又は方程式を用いてマッピングされ得る。例えば、
図7は、マッピングを行うためにECU600により適用され得る1つの方程式を概略的に示す。
図7に示すように、ECU600は、制御装置72の現在位置を(メモリ又はソフトウェアに記憶された)最大位置で除算し、得られた結果を最大制動トルク(N/m)で乗算する。乗算の結果は要求された制動トルク(N/m)を表す。上述したように、ECU600は、故障又は他のエラーについて種々のチェックも行い得る。
【0028】
図5に戻って、ECU600は、要求された駆動トルク及び要求された制動トルクに基づいて、ブロック94でトルク指令を決定する。そして、結果として得られたトルク指令が電気モーター58のためにモーターコントローラー608に(ブロック96で)送信される。一部の実施形態では、トルク指令の決定は、(ツイストグリップ74の位置により定義される)要求された駆動トルクと(制御装置72の位置により定義される)要求された制動トルクとを合計することを含む。
【0029】
一部の実施形態では、オートバイの車輪を制動する唯一の機構として回生制動が用いられる場合、アンチロックブレーキシステムや牽引制御装置等の追加の制動機能も回生制動を用いて車両20で実施され、それらの追加の機能等のシステム(例えば、油圧ABSユニット)を提供するために重く高価なシステムの必要性が回避され得る。加えて、制御装置72の機械的動作及び制御装置72の位置の要求された制動トルクへのマッピングの双方の構成を通して、回生制動は、油圧式リアブレーキ等の従来の機械摩擦ブレーキの機能及び感覚を(本明細書で仮想ブレーキの提供とも呼ぶ本明細書に記載のプロセスを介して)再現できる。これにより、性能又は運転手の経験を犠牲にすることなく、機械制動システムのコスト、重さ及び複製を解消できる。例えば、制御装置72は電子制御装置又はレバーであるが、制御装置72を介して加えられる付勢力は、運転手が恰も従来のブレーキレバーを作動させているようなフィードバックを運転手に提供するように構成され得る。具体的には、従来のブレーキレバー(又はペダル)は、レバー(又はペダル)が作動されるほど抵抗が大きくなるため、制御装置72は同様のフィードバックを運転手に与えることができる。さらに、運転手が従来の摩擦ブレーキ(油圧ブレーキ)を適用し、ツイストグリップ74を作動させて適用されたブレーキを効果的に「走り抜ける(drive through)」ことができるように、回生制動を介して適用される最大量のトルクも、同様に、ツイストグリップ74の作動を介して要求できる最大駆動トルク未満になるように(制御装置72の位置の制動トルクへのマッピングを介して)構成できる。
【0030】
一部の実施形態では、制御装置72を介して適用される付勢力は、(上述した「仮想ブレーキ」に代えて又は「仮想ブレーキ」に加えて)、運転手が恰も車両20の従来のクラッチを作動させているかのようなフィードバックを運転手に提供するように構成され得る(本明細書では仮想クラッチを提供することと記載)。具体的には、制御装置72に付勢力が加えられた場合、(正又は負のトルク量のいずれかのための)トルク要求が生成され、オートバイの電気モーター58に適用され得る。要求に含まれるトルクの量は制御装置72の位置に対応する。例えば、制御装置72が完全に作動されている場合(例えば、制御装置72が枢動レバーの場合、完全に引き込まれている)、対応するトルク要求は0%であり、制御装置72が作動されていない場合(例えば、制御装置72が枢動レバーの場合に引き込まれていない)、対応するトルク要求は100%である。適用されるトルクの量は、制御装置72の特定の位置(制御装置72が作動される量)に基づいて、0%~100%の間の任意のパーセントであり得る。仮想クラッチを実施する際、ECU600は、方法80のブロック94でトルク指令を決定する際に、要求された駆動トルク及び要求されたトルクを乗算し(制御装置72の位置に対応するパーセント)と、得られた結果に基づいてトルク指令におけるトルクの量を決定するように構成され得る。即ち、制御装置72の適用により、(それが正又は負のトルクに関わらず)要求されたトルク指令がゼロに近づくように削減され、レバーが完全に引き込まれた場合に、回生設定又はツイストグリップ74の位置に関わらず0トルクが要求される。
【0031】
ECU600は、仮想ブレーキ及び仮想クラッチのいずれか又は双方を提供するように構成され得る。一部の実施形態では、仮想クラッチのみが設けられる場合、車両20は純粋な機械制動システムのみを含み得る。仮想ブレーキ及び仮想クラッチの双方が設けられる実施形態では、車両20の運転手は、別々の又は共通の入力機構(例えば、ダイヤル、スイッチ等)を介して仮想ブレーキ又は仮想クラッチのいずれかを係合させるために選択し得る。例えば、
図8は、仮想ブレーキのプロセスフロー802A及び仮想クラッチのプロセスフロー802Bを示す概略
図800である。車両20のユーザは、入力機構804(スイッチとして図示)を介してどのプロセスを用いるか選択し得る。仮想ブレーキのプロセスフロー802Aに示すように、
図5の方法80のブロック86で決定される駆動トルク要求(要求された駆動トルク806A)が要求されたトルク(制動トルク要求808A)に加えられる。要求されたトルク808Aを決定するプロセスにおいて、仮想ブレーキの場合には、ECU600は、制御装置72の位置をツイストグリップ74の最大位置で除算することにより要求されたトルク808Aを決定し、結果として得られたものが最大(制動)トルクで乗算され得る(
図7)。
【0032】
図8に戻って、仮想クラッチのプロセスフロー802Bは、要求された駆動トルク(要求された駆動トルク806B)に制御装置72の位置(位置808B)を乗算することを含み得る。ここで、トルク指令810に従って加えられるトルクの量は、ツイストグリップ74の位置とは独立して決定される。
【0033】
一部の実施態様では、上述したように、回生制動のみを用いて後輪24が制動される。しかしながら、他の実施形態では、後輪24は機械ブレーキも含む。運転手は、機械ブレーキを車両20上の別個のアクチュエータを作動させることにより作動させ得る。例えば、一部の実施形態では、運転手は、1つ以上の乗車モードを選択することを通じて回生制動を選択的にオン/オフにすることができ得る。例えば、運転手が利用可能な乗車モードのうちの1つ以上が回生制動を提供するのに対して、他の乗車モードは機械摩擦制動のみを提供し得る。また、一部の実施形態では、運転手は、回生制動又は機械制動を適用するために同じアクチュエータを用い得る。適用される制動の種類は、現在選択されている乗車モード、車両20の現在の動作パラメータ、現在の環境条件等に基づき得る。例えば、一部の実施形態では、車両20に含まれる制御システムは、回生制動、機械制動又はその組み合わせのいずれを適用するかを自動的に決定し得る。従って、一部の実施形態では、単一の制動制御装置の作動を通じて、運転手は要求された制動量を指定し、車両20に含まれる制御システムは、要求を満たすために適用すべき制動の種類(状況によっては、異なる種類の制動の組み合わせを含む)を自動的に決定し得る。
【0034】
また、後輪24について上述した制動は、前輪22にも同様に適用され得る。従って、一部の実施形態では、車両20は、いかなる機械式の摩擦ブレーキを何ら含まず、むしろ、車両20を減速及び停止のための唯一の機構として回生ブレーキを用いる。
【0035】
加えて、本明細書に記載の車両20は、開示した回生制動及び関連する制御を含むオートバイの一例として提示したものである。しかしながら、本明細書に記載の回生制動は、他のオートバイ20(及び他のタイプの車両)で用いることができる。例えば、一部の実施形態では、車両20は、電動パワートレインの代わりに又は電動パワートレインに加えて、内燃機関(ICE)によって動力が供給される。この実施形態では、ICEを含む車両20は、上述したように、車両20の両輪を制動するための唯一の機構として回生制動を用い得る。あるいは、ICEを含む車両20は、例えば後輪24等の一方の車輪を制動する唯一の機構として回生制動を用い得るが、他方の車輪を制動するために摩擦ディスクブレーキ等の機械ブレーキを含み得る。
【0036】
本発明の様々な特徴及び利点は、下記の特許請求の範囲に記載されている。
【符号の説明】
【0037】
20 車両
22 前輪
24 後輪
28 メインフレーム
32 フロントフォーク
36 ヘッドチューブ
40 ハンドルバー
44 スイングアーム
46 ショックアブゾーバーユニット
48 シート
54 電力貯蔵部
58 電気モーター
62 エンドレス駆動部材
66 駆動スプロケット
68 被駆動スプロケット
72 制御装置
74 ツイストグリップ
84 ツイストグリップセンサ
90 制御センサ
600 ECU
【外国語明細書】