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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107352
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】ALK2阻害剤の結晶形
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/04 20060101AFI20240801BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20240801BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
C07D487/04 142
C07D487/04 CSP
A61K31/519
A61P43/00 111
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024094803
(22)【出願日】2024-06-12
(62)【分割の表示】P 2021522993の分割
【原出願日】2019-10-25
(31)【優先権主張番号】62/751,255
(32)【優先日】2018-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519165308
【氏名又は名称】ケロス セラピューティクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】KEROS THERAPEUTICS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ベスーン、サラ
(72)【発明者】
【氏名】ディアス、クリスタ
(72)【発明者】
【氏名】エバンス、キャサリン エイ.
(57)【要約】
【課題】ALK2阻害剤である結晶および関連する医薬組成物を提供すること。
【解決手段】ALK2阻害剤である結晶は、以下の構造(I)を有する化合物の結晶である。医薬組成物は、該構造(I)を有する化合物の結晶および1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む。

【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

の構造を有する結晶性化合物。
【請求項2】
前記化合物が無水である、請求項1に記載の結晶性化合物。
【請求項3】
約7.05±0.2、15.16±0.2、21.05±0.2、21.26±0.2、および24.47±0.2の2θ値を有する、請求項1または2に記載の結晶性化合物。
【請求項4】
約3.58±0.2、7.05±0.2、13.8±0.2、14.16±0.2、15.16±0.2、16.18±0.2、16.80±0.2、17.15±0.2、17.69±0.2、18.29±0.2、18.84±0.2、20.29±0.2、21.05±0.2、21.26±0.2、22.68±0.2、23.84±0.2、24.47±0.2、24.84±0.2および28.47±0.2の2θ値を有する、請求項3に記載の結晶性化合物。
【請求項5】
約3.58±0.2、7.05±0.2、10.59±0.2、10.75±0.2、13.80±0.2、14.16±0.2、15.16±0.2、15.68±0.2、16.18±0.2、16.80±0.2、17.15±0.2、17.69±0.2、17.97±0.2、18.29±0.2、18.59±0.2、18.84±0.2、19.27±0.2、20.29±0.2、21.05±0.2、21.26±0.2、21.56±0.2、21.78±0.2、22.68±0.2、23.84±0.2、24.47±0.2、24.84±0.2、25.15±0.2、26.10±0.2、27.12±0.2、27.78±0.2、28.47±0.2、および29.06±0.2の2θ値を有する、請求項4に記載の結晶性化合物。
【請求項6】
実質的に図1に示されるようなXRPDパターンを有し、形態Aと表記されている、請求項1または2に記載の結晶性化合物。
【請求項7】
約9.79±0.2,13.05±0.2,22.91±0.2,23.60±0.2および26.25±0.2の2θ値を有する、請求項1または2に記載の結晶性化合物。
【請求項8】
約3.25±0.2、9.79±0.2、13.05±0.2、16.75±0.2、19.50±0.2、22.91±0.2、23.60±0.2および26.25±0.2の2θ値を有する、請求項7に記載の結晶性化合物。
【請求項9】
約3.25±0.2、9.79±0.2、13.05±0.2、13.61±0.2、14.39±0.2、16.75±0.2、18.50±0.2、19.50±0.2、22.91±0.2、23.60±0.2および26.25±0.2の2θ値を有する、請求項8に記載の結晶性化合物。
【請求項10】
実質的に図2に示されるようなXRPDパターンを有し、形態Bと表記されている、請求項1または2に記載の結晶性化合物。
【請求項11】
式(I):
【化2】

の構造を有する結晶性化合物。
【請求項12】
約6.00±0.2、12.00±0.2、16.14±0.2、17.72±0.2、18.00±0.2、18.64±0.2および23.50±0.2の2θ値を有する、請求項11に記載の結晶性化合物。
【請求項13】
実質的に図3に示されるようなXRPDパターンを有し、遊離塩基と表記されている、請求項11に記載の結晶性化合物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の塩および1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項15】
式(I):
【化3】

の構造を有する結晶性化合物を調製するための方法であって:前記方法は、
a)式(I)化合物を提供すること;
b)酸を加えて混合物を形成すること;および
c)式(I)の化合物を含む混合物から式(I)の化合物を結晶化させること、
を含み、前記結晶性化合物は塩である、方法。
【請求項16】
前記結晶性化合物が無水である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記結晶性化合物が水和物である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記式(I)の化合物が少なくとも1つの溶媒中に存在する、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記酸が少なくとも1つの溶媒中に存在する、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記式(I)の化合物および前記少なくとも1つの溶媒が溶液を形成する、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記式(I)の化合物および前記少なくとも1つの溶媒がスラリーまたは懸濁液を形成する、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記酸および前記少なくとも1つの溶媒が溶液を形成する、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記酸および少なくとも1つの溶媒がスラリーまたは懸濁液を形成する、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記酸は、HCl、HBr、コハク酸、1-OH-2-ナフトエ酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、マロン酸、メタンスルホン酸、リン酸、トルエンスルホン酸および硫酸から選択される、請求項15~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記酸がコハク酸である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
各溶媒は、アセトン、アセトニトリル、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジオキサン、エタノール、酢酸エチル、ヘプタン、ヘキサン、酢酸イソプロピル、メタノール、メチルエチルケトン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、2-プロパノール、1-ブタノール、水またはこれらの任意の組み合わせから独立して選択される、請求項18~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記溶媒は、THF、エタノール、またはそれらの混合物である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記酸は、少なくとも1つの溶媒中に存在し、式(I)の化合物に添加されてスラリーを形成し、前記スラリーから化合物を結晶化するステップは、前記スラリーから前記化合物を沈殿させることを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項29】
前記式(I)の化合物、前記酸および前記少なくとも1つの溶媒が溶液を形成し、前記混合物から前記式(I)の化合物を結晶化するステップが、前記溶液を過飽和状態にして前記式(I)の化合物を溶液から沈殿させることを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項30】
前記溶液を過飽和にするステップが、反溶媒をゆっくりと加えること、前記溶液を冷却させること、前記溶液の体積を減らすこと、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記溶液を過飽和にするステップが、溶液を周囲温度以下に冷却することを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記結晶性化合物を単離することをさらに含む、請求項15~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記結晶性化合物を単離することは、前記混合物から前記結晶化された化合物を得るために遠心分離することを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記結晶性化合物を単離することは、前記混合物から前記結晶化された化合物を濾過することを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記結晶性化合物を減圧下で乾燥させることをさらに含む、請求項32~34に記載のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記結晶性化合物が、請求項1~13のいずれか一項に記載の結晶性化合物である、請求項15~35のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ALK2阻害剤の結晶形に関する。
【背景技術】
【0002】
BMPシグナル伝達ファミリーは、TGF-βスーパーファミリーの多様なサブセットである。20を超える既知のBMPリガンドは、3つの異なるII型(BMPRII、ActRIIaおよびActRIIb)および少なくとも4つのI型(ALK1、ALK2、ALK3、およびALK6)受容体により認識される。二量体リガンドは受容体ヘテロマーの集合を促進し、構成的に活性なII型受容体セリン/スレオニンキナーゼがI型受容体セリン/スレオニンキナーゼをリン酸化することを可能にする。活性化されたI型受容体はBMP応答性(BR-)SMADエフェクター(SMAD1、5、および8)をリン酸化して、TGFシグナル伝達も促進する共SMADであるSMAD4と複合体を形成して核移行を促進する。加えて、BMPシグナルは、SMAD非依存的にMAPKp38のような細胞内エフェクターを活性化することができる。ノギン、コージン、グレムリン、フォリスタチンなどの可溶性BMP阻害剤は、リガンドの隔離によりBMPシグナル伝達を制限する。
【0003】
また、ペプチドホルモンであり、全身の鉄分バランスの中心的な調整因子であるヘプシジンの発現をBMPシグナルが制御する役割も示唆されている。ヘプシジンは、脊椎動物の唯一の鉄輸送体であるフェロポーティンに結合し、その分解を促進する。フェロポーティンの活性が失われると、腸球、マクロファージ、肝細胞などの細胞内貯蔵物から血流に鉄が動員されなくなる。BMPシグナル伝達と鉄代謝との関連性は、治療薬のターゲットとして期待されている。
【0004】
BMPおよびTGF-βスーパーファミリーは、リガンド(現在25種類以上)および受容体(BMPを認識する4つのI型および3つのII型受容体)のレベルで非常に多様な構造を有し、受容体の結合様式もヘテロ4量体であることから、可溶性受容体、内因性阻害剤、中和抗体を介してBMPシグナルを阻害する従来のアプローチは実用的ではなく、効果的でもない。ノギンやフォリスタチンのような内因性阻害剤は、リガンドサブクラスに対する特異性が限られている。単一の受容体はリガンドに対する親和性が限られているが、受容体のヘテロ4量体は特定のリガンドに対する特異性が高い。特定のリガンドまたは受容体に特異的な中和抗体はこれまでにも記載されているが、このシグナル伝達系の構造的な多様性によって制限されているのも事実である。したがって、当技術分野では、BMPシグナル伝達経路に特異的に拮抗し、上記のような治療上または実験上の用途でこれらの経路を操作するために使用できる薬剤が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ALK2阻害剤である結晶および関連する医薬組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、式(I):
【0007】
【化1】
【0008】
の構造を有する結晶性化合物に関するものである。
本発明の別の態様は、式(I)の結晶性化合物を調製するための方法に関する。
特定の実施形態において、本発明は、式(I)の結晶性化合物、および1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む、対象において使用するのに適した医薬調製物を提供する。特定の実施形態において、医薬調製物は、本明細書に記載されるような状態または疾患を治療または予防するのに使用するためのものであり得る。
【発明の効果】
【0009】
以上、本発明によれば、ALK2阻害剤である結晶および関連する医薬組成物が提供できた。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、式(I)モノコハク酸塩の化合物の形態AのXRPDパターンを示す。
図2図2は、式(I)モノコハク酸塩の化合物の形態BのXRPDパターンを示す。
図3図3は、式(I)遊離塩基の化合物のXRPDパターンを示す。
図4図4は、式(I)遊離塩基の化合物の示差走査熱量測定(DSC)および熱重量分析(TGA)スペクトルを示す。
図5図5は、式(I)遊離塩基の化合物の動的蒸気収着スペクトル(DVS)を示す。
図6図6は、式(I)モノコハク酸塩の化合物の形態Aの参照試料およびTHFで調製した形態AのXRPDパターンを示す。
図7図7は、式(I)モノコハク酸塩の化合物の形態AのH-NMRスペクトルを示す。
図8図8は、式(I)モノコハク酸塩の化合物の形態Aの参照試料およびEtOHで調製した形態AのXRPDパターンを示す。
図9図9は、EtOHで調製した式(I)モノコハク酸塩の化合物の形態AのDVSを示す。
図10図10は、式(I)モノコハク酸塩の化合物の形態AのDVS分析前後のXRPDスペクトルと、式(I)モノコハク酸塩の化合物の形態CのXRPDスペクトルとを重ねて示したものである。
図11図11は、EtOHで調製した式(I)モノコハク酸塩の化合物の形態A、式(I)モノコハク酸塩形態Aの参照試料を、式(I)モノコハク酸塩の化合物の形態BのXRPDスペクトルを重ねて示したものである。
図12図12は、式(I)モノコハク酸塩の化合物の形態Aとコハク酸のXRPDスペクトルを示したものである。
図13図13は、式(I)モノコハク酸塩の化合物の形態Aの示差走査熱量測定(DSC)および熱重量分析(TGA)スペクトルを示す。
図14図14は、式(I)モノコハク酸塩の化合物の形態Aおよび形態BのXRPDスペクトルを示したものである。
図15図15は、式(I)モノコハク酸塩の化合物の形態Bの示差走査熱量測定(DSC)および熱重量分析(TGA)スペクトルを示す。
図16図16は、EtOHで調製した式(I)のモノコハク酸塩の化合物の形態BのDVSを示す。
図17図17は、式(I)モノコハク酸塩の形態BのDVS分析前後のXRPDスペクトルを重ねて示したものである。
図18図18は、式(I)モノコハク酸塩の化合物の形態BのH-NMRスペクトルを示す。
図19図19は、式(I)モノコハク酸塩の化合物の形態A、形態Bおよび形態CのXRPDスペクトルを重ねて示したものである。
図20図20は、式(I)モノコハク酸塩の化合物の形態Cの示差走査熱量測定(DSC)および熱重量分析(TGA)スペクトルを示す。
図21図21は、式(I)モノコハク酸塩の化合物の形態CのH-NMRスペクトルを示す。
図22図22は、式(I)モノコハク酸塩の化合物の形態A、形態Bおよび形態DのXRPDスペクトルを重ねて示したものである。
図23図23は、式(I)モノコハク酸塩の化合物の形態AおよびDの混合物の示差走査熱量測定(DSC)を示す。
図24図24は、式(I)モノコハク酸塩の化合物の形態DのH-NMRスペクトルを示す。
図25図25は、形態Aの投与から生じる鉄の血清濃度を示す。
図26図26は、形態Aの投与から生じるトランスフェリン飽和率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
特定の実施形態において、本発明は、式(I):
【0012】
【化2】
【0013】
の構造を有する結晶性化合物を提供する。
特定の実施形態において、式(I)の結晶性化合物は溶媒和されていない(例えば、結晶格子は溶媒の分子を含まない)。特定のそのような実施形態において、式(I)の結晶性化合物は、無水であるか、または実質的に無水である。
【0014】
特定の実施形態において、式(I)の化合物は、塩化物、臭化物、コハク酸塩、キシナホ酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、ヘミリンゴ酸塩、酒石酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、硫酸塩およびビス硫酸塩から選択されるアニオンを有する塩の形態である。好ましい実施形態において、式(I)の化合物は、モノコハク酸塩などのコハク酸塩の形態である。
【0015】
本明細書に記載の任意の結晶性化合物は、本明細書に開示される任意の疾患または状態の治療のための医薬品の製造に使用することができる。
式(I)の化合物のモノコハク酸塩は、以下で詳細に説明するように、少なくとも「形態(Form)A」、「形態B」、「形態C」、および「形態D」として存在する。これらの異なる形態は、本明細書では「多形」として理解される。
【0016】
結晶性化合物の多形は、粉末X線回折(XRPD)によって特徴付けることができる。θは、回折角を表し、単位は度である。特定の実施形態において、XRPDに使用される回折計は、回折角を2倍の回折角θとして測定する。したがって、特定の実施形態において、本明細書に記載される回折パターンは、角度2θに対して測定されたX線強度を指す。
【0017】
特定の実施形態において、式(I)モノコハク酸塩の化合物の第1の無水結晶形態は、約7.05±0.2、15.16±0.2、21.05±0.2、21.26±0.2、および24.47±0.2の2θ値を有する。さらなる実施形態において、式(I)モノコハク酸塩の無水結晶性化合物は、約3.58±0.2、7.05±0.2、13.8±0.2、14.16±0.2、15.16±0.2、16.18±0.2、16.80±0.2、17.15±0.2、17.69±0.2、18.29±0.2、18.84±0.2、20.29±0.2、21.05±0.2、21.26±0.2、22.68±0.2、23.84±0.2、24.47±0.2、24.84±0.2、および28.47±0.2の2θ値を有する。さらに別の実施形態において、式(I)モノコハク酸塩の無水結晶性化合物は、約3.58±0.2、7.05±0.2、10.59±0.2、10.75±0.2、13.80±0.2、14.16±0.2、15.16±0.2、15.68±0.2、16.18±0.2、16.80±0.2、17.15±0.2、17.69±0.2、17.97±0.2、18.29±0.2、18.59±0.2、18.84±0.2、19.27±0.2、20.29±0.2、21.05±0.2、21.26±0.2、21.56±0.2、21.78±0.2、22.68±0.2、23.84±0.2、24.47±0.2、24.84±0.2、25.15±0.2、26.10±0.2、27.12±0.2、27.78±0.2、28.47±0.2、および29.06±0.2の2θ値を有する。
【0018】
特定の実施形態において、式(I)モノコハク酸塩の化合物の無水結晶形態は、実質的に図1に示されるようなXRPDパターンを有しており、形態Aと表記されている。
特定の実施形態において、式(I)モノコハク酸塩の化合物の第2の無水結晶形態は、約9.79±0.2、13.05±0.2、22.91±0.2、23.60±0.2、および26.25±0.2の2θ値を有する。さらなる実施形態において、式(I)モノコハク酸塩の無水結晶性化合物は、約3.25±0.2、9.79±0.2、13.05±0.2、16.75±0.2、19.50±0.2、22.91±0.2、23.60±0.2および26.25±0.2の2θ値を有する。さらに別の実施形態において、式(I)モノコハク酸塩の無水結晶性化合物は、約3.25±0.2、9.79±0.2、13.05±0.2、13.61±0.2、14.39±0.2、16.75±0.2、18.50±0.2、19.50±0.2、22.91±0.2、23.60±0.2および26.25±0.2の2θ値を有する。
【0019】
特定の実施形態において、式(I)モノコハク酸塩の化合物の無水結晶形態は、実質的に図2に示すようなXRPDパターンを有しており、形態Bと表記されている。
特定の実施形態において、式(I)遊離塩基の化合物の第3の無水結晶形態は、約6.00±0.2、12.00±0.2、16.14±0.2、17.72±0.2、18.00±0.2、18.64±0.2および23.50±0.2の2θ値を有する。特定の実施形態において、式(I)モノコハク酸塩の化合物の無水結晶形態は、遊離塩基を表示した図3に実質的に示すようなXRPDパターンを有する。
【0020】
特定の実施形態において、本発明は、式(I)モノコハク酸塩の結晶性化合物と、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物に関する。特定の実施形態において、医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、および懸濁剤から選択される。
【0021】
本明細書で使用される「実質的に純粋な」という用語は、90%を超える純度である結晶多形を指し、これは、対応する非晶質化合物または結晶塩の代替多形を含む他の化合物を10%未満含むことを意味する。好ましくは、結晶多形は、95%を超える純度、またはさらに98%を超える純度である。
【0022】
式(I)の化合物の結晶形を作製する方法
特定の実施形態において、本発明は、式(I)の構造を有する結晶性化合物を調製する方法に関し、同方法は以下を含む:
a)式(I)の化合物を提供すること;
b)酸を加えて混合物を形成すること;および
c)式(I)の化合物を含む混合物から式(I)の化合物を結晶化させること。
【0023】
特定の実施形態において、本発明の方法によって作製された結晶性化合物は無水である。他の実施形態において、本発明の方法によって作製された結晶性化合物は水和物である。
【0024】
特定の実施形態において、式(I)の化合物は、少なくとも1つの溶媒中に存在する。特定の実施形態において、酸は、少なくとも1つの溶媒中に存在する。
特定の実施形態において、式(I)の化合物および少なくとも1つの溶媒は、溶液を形成する。特定の実施形態において、式(I)の化合物および少なくとも1つの溶媒は、スラリーまたは懸濁液を形成する。特定の実施形態において、酸および少なくとも1つの溶媒は、溶液を形成する。特定の実施形態において、酸および少なくとも1つの溶媒は、スラリーまたは懸濁液を形成する。
【0025】
特定の実施形態において、酸は、HCl、HBr、コハク酸、1-OH-2-ナフトエ酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、マロン酸、メタンスルホン酸、リン酸、トルエンスルホン酸、および硫酸から選択される。好ましい実施形態において、酸はコハク酸である。
【0026】
特定の実施形態において、溶媒は、アセトン、アセトニトリル、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジオキサン、エタノール、酢酸エチル、ヘプタン、ヘキサン、酢酸イソプロピル、メタノール、メチルエチルケトン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、2-プロパノール、1-ブタノール、水、またはこれらの任意の組み合わせが含まれる。特定の好ましい実施形態において、例えば形態Aを達成するために、溶媒はTHF、エタノールまたはそれらの混合物である。その他の好ましい実施形態において、例えば形態Bを達成するために、溶媒はエタノールである。
【0027】
特定の実施形態において、酸は、少なくとも1つの溶媒中に存在し、式(I)の化合物に添加されてスラリーを形成し、スラリーから化合物を結晶化するステップは、スラリーから化合物を沈殿させることを含む。
【0028】
特定の実施形態において、式(I)の化合物、酸、および少なくとも1つの溶媒が溶液を形成し、混合物から化合物を結晶化するステップは、溶液を過飽和状態にして式(I)の化合物を溶液から析出させることを含む。
【0029】
特定の実施形態において、式(I)の化合物を含む混合物を過飽和状態にすることは、ヘプタン、ヘキサン、エタノール、または有機溶媒と混和する別の極性または非極性の液体などの反溶媒をゆっくりと添加すること、溶液を冷却すること(溶液をシードするかどうかにかかわらず)、溶液の体積を減らすこと、またはそれらの任意の組み合わせを含む。特定の実施形態において、式(I)の化合物を含む混合物を過飽和状態にすることは、反溶媒を添加すること、溶液を周囲温度以下に冷却すること、および溶液から溶媒を蒸発させるなどして溶液の体積を減少させることを含む。特定の実施形態において、溶液を冷却させることは、受動的(例えば、溶液を周囲温度に放置する)または能動的(例えば、氷浴またはフリーザで溶液を冷却すること)であり得る。
【0030】
特定の実施形態において、調製方法は、結晶を濾過すること、結晶から流体をデカンテーションすること、または他の適切な分離技術によって、結晶を分離することをさらに含む。さらなる実施形態において、調製方法は、結晶を洗浄することをさらに含む。
【0031】
特定の実施形態において、式(I)の化合物を含む混合物はスラリーであり、混合物から化合物を結晶化させるステップは、スラリーから化合物を沈殿させることを含む。いくつかの実施形態において、結晶性化合物は、遠心分離によって単離される。
【0032】
特定の実施形態において、調製方法は、結晶化を誘導することをさらに含む。本方法は、例えば減圧下で結晶を乾燥させることを含むこともできる。特定の実施形態において、沈殿または結晶化を誘導することは、二次核生成を含み、核生成は、種結晶の存在または環境との相互作用(結晶化装置の壁、撹拌インペラー、超音波処理など)で起こる。
【0033】
特定の実施形態において、結晶を洗浄することは、反溶媒、アセトニトリル、エタノール、ヘプタン、ヘキサン、メタノール、テトラヒドロフラン、トルエン、水、またはそれらの組み合わせから選択される液体で洗浄することを含む。本明細書で使用される場合、「反溶媒(anti-solvent)」は、塩結晶が不溶性、最小溶解性、または部分的に可溶性である溶媒を意味する。実際には、塩の結晶が溶解している溶液に反溶媒を加えると、溶液中の塩の結晶の溶解度が低下し、それによって塩の沈殿が刺激される。特定の実施形態において、結晶は、反溶媒と有機溶媒との組み合わせで洗浄される。特定の実施形態において、反溶媒は水であり、他の実施形態では、ヘキサンまたはペンタンなどのアルカン溶媒、またはベンゼン、トルエン、またはキシレンなどの芳香族炭化水素溶媒である。特定の実施形態において、反溶媒はメタノールである。
【0034】
特定の実施形態において、結晶を洗浄することは、式(I)の結晶性化合物を、上述した溶媒または1つ以上の溶媒の混合物で洗浄することを含む。特定の実施形態において、洗浄の前に、溶媒または溶媒の混合物を冷却する。
【0035】
式(I)の化合物の結晶形の用途
様々な実施形態において、本発明は、BMPシグナル伝達経路を阻害する化合物、ならびにBMPシグナル伝達の阻害によって利益を得る対象の疾患または状態を治療または予防する方法を提供するものである。様々な実施形態において、本発明の化合物は、本明細書に開示される式(I)の化合物およびそれらの塩(薬学的に許容される塩を含む)を含む。
【0036】
本明細書で引用されているすべての文献は、その全体が完全に記載されているかのように、参照により組み込まれている。特に定義されていない限り、本明細書で使用されている技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の通常の技術者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。分子生物学における一般的な用語の定義は、ベンジャミン ルイス(Benjamin Lewin)、Oxford University Pressから刊行された「Genes V」、1994年(ISBN 0-19-854287-9);ケンドリュー(Kendrew)他(編)、Blackwell Science Ltdから刊行された「The Encyclopedia of Molecular Biology」、1994年(ISBN 0-632-02182-9);ロバート A.マイヤーズ(Robert A.Meyers)(編)、VCH Publishers,Inc.から刊行された「Molecular Biology and Biotechnology:a Comprehensive Desk Reference」、1995年(ISBN 1-56081-569-8)などがある。アレン(Allen)他、「Remington:The Science and Practice of Pharmacy」、第22版、Pharmaceutical Press(2012年9月15日);ホーンヤク(Hornyak)他、「Introduction to Nanoscience and Nanotechnology」、CRC Press(2008年);シングルトン(Singleton)およびセインスベリ(Sainsbury)、「Dictionary of Microbiology and Molecular Biology」、第3版、改訂版、J.Wiley&Sons(ニューヨーク州ニューヨーク、2006年);スミス(Smith)、「March’s Advanced Organic Chemistry Reactions,Mechanisms and Structure」、第7版、J.Wiley&Sons(ニューヨーク州ニューヨーク、2013年);シングルトン(Singleton)、「Dictionary of DNA and Genome Technology」、第3版、Wiley-Blackwell(2012年11月28日);およびグリーン(Green)およびサムブルック(Sambrook)、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、第4版、Cold Spring Harbor Laboratory Press(ニューヨーク州コールドスプリングハーバー、2012年)は、当業者に、本出願で使用される多くの用語の一般的なガイドを提供する。抗体の調製方法に関する参考資料については、グリーンフィールド(Greenfield)、「Antibodies A Laboratory Manual」、第2版、Cold Spring Harbor Press(ニューヨーク州コールドスプリングハーバー、2013年);ケーラー(Koehler)およびミルシュタイン(Milstein)、「Derivation of specific antibody-producing tissue culture and tumor lines by cell fusion」、Eur.J. mmunol.、1976年7月、6(7):511-9;クイーン(Queen)およびセリック(Selick)、「Humanized immunoglobulins」、米国特許第5,585,089号明細書(1996年12月);およびリーヒマン(Riechmann)他、「Reshaping human antibodies for therapy」、Nature、1988年3月24日、332(6162):323-7、を参照のこと。
【0037】
当業者であれば、本発明の実施に使用できる、本明細書に記載されたものと類似または同等の多くの方法および材料を認識するであろう。本発明の他の特徴および利点は、本発明の実施形態の様々な特徴を例示した添付の図面と併せて、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。実際、本発明は、記載された方法および材料に決して限定されるものではない。便宜上、本明細書、実施例および添付の特許請求の範囲において本明細書で使用される特定の用語をここに収集する。
【0038】
特に明記されていない限り、または文脈から暗示されている場合を除き、以下の用語および句には、以下に示す意味が含まれている。特に明記しない限り、または文脈から明らかでない限り、以下の用語および句は、その用語または句が関連する技術において獲得した意味を排除するものではない。特に定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのものと同じ意味を有する。本発明は、本明細書に記載される特定の方法論、プロトコル、および試薬などに限定されず、それ自体が変化し得ることを理解されたい。本明細書で使用される定義および用語は、特定の実施形態を説明するのを助けるために提供され、発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ制限されるので、請求項の発明を制限することを意図しない。
【0039】
特に明記しない限り、本願の1つ以上の実施形態を説明する文脈(特に特許請求の範囲の文脈)で使用される用語「a」および「an」ならびに「the」および同様の参照は、単数形および複数形の両方を包含するように解釈することができる。本明細書での値の範囲の記載は、単に、範囲内に入る各個別の値を個別に参照するための略記法として機能することを意図している。本明細書で別段の指示がない限り、各個別の値は、あたかも本明細書に個別に記載されているかのように、本明細書に組み込まれる。本明細書に記載されているすべての方法は、本明細書で別段の指示がない限り、または文脈上明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行することができる。本明細書で特定の実施形態に関して提供される任意のおよびすべての例、または例示的な言語(例えば、「など(such as)」)の使用は、単に本出願をよりよく照らすことを意図しており、そうでなければ請求される本出願の範囲に制限を課すものではない。「e.g.」という略語は、ラテン語のexempli gratiaに由来し、本明細書では非限定的な例を示すために使用されている。従って、「e.g.」は用語「for example」と同義である。明細書の如何なる文言も、出願の実施に不可欠なクレームされていない要素を示すものと解釈してはならない。
【0040】
本明細書で使用される場合、「軟組織(soft tissue)」という用語は、身体の他の構造および器官を結合、支持、または取り囲む組織を指すために使用される。「軟組織」という用語は、筋肉、靭帯、腱、筋膜、皮膚、線維組織、脂肪、滑膜、神経および/または血管を指すことができる。
【0041】
本明細書では、「異常な骨形成」という用語は、軟組織など、通常は骨が存在しない領域に骨が生成されることを指す。
用語「患者」、「対象」および「個体」は、本明細書において互換的に使用され、予防的治療を含む治療が提供される動物、特にヒトを指す。本明細書で使用される「対象」という用語は、ヒトおよび非ヒトの動物を指す。「非ヒト動物」および「非ヒト哺乳動物」という用語は、本明細書では互換的に使用され、すべての脊椎動物、例えば、非ヒト霊長類、(特に高等霊長類)、ヒツジ、イヌ、げっ歯類(マウスまたはラットなど)、モルモット、ヤギ、ブタ、ネコ、ウサギ、ウシなどの哺乳類、およびニワトリ、両生類、爬虫類などの非哺乳類を含む。いくつかの実施形態において、対象はヒトである。別の実施形態において、対象は、疾患モデルとしての実験動物または代用動物である。別の実施形態において、対象は、コンパニオンアニマル(例えば、イヌ、ネコ、ラット、モルモット、ハムスターなど)を含む飼いならされた動物である。
【0042】
本明細書では、「異常な骨形成のリスクがある」という用語は、対象の集団において異常な骨形成を引き起こすことが知られている条件にさらされた対象を指す。このような条件にさらされたすべての対象が異常な骨形成を有するようになるわけではないが、これらの条件にさらされたすべての対象は「リスクにさらされている(at risk)」と見なすことができる。そのような条件は、典型的には、外傷、例えば、筋骨格系の外傷、中枢神経系損傷または脊髄損傷を含む。
【0043】
本明細書において使用される場合、障害または状態を「予防する」治療薬とは、統計的試料において、未処理の対照試料と比較して、処理された試料における障害または状態の発生を減少させる、または未処理の対照試料と比較して、障害または状態の1つ以上の症状の発症を遅らせるもしくは重症度を減少させる化合物を指す。
【0044】
「治療する」という用語は、予防的および/または治療的な治療を含む。「予防的または治療的」治療という用語は、当技術分野で認識されており、1つまたは複数の対象組成物の宿主への投与を含む。望ましくない状態(例えば、宿主動物の疾患または他の望ましくない状態)が臨床的に顕在化する前に投与される場合、その治療は予防的(すなわち、望ましくない状態の発症から宿主を保護する)であり、一方、望ましくない状態が顕在化した後に投与される場合、その治療は治療的(すなわち、既存の望ましくない状態またはその副作用を減少、改善、または安定化させることを目的とする)である。
【0045】
本明細書では、「減少する」、「低減した」、「低減」、または「阻害する」という用語はすべて、統計的に有意な量による特性、レベル、または他のパラメータの減少または軽減を意味するために使用される。いくつかの実施形態において、「低減する」、「低減」または「減少する」または「阻害する」は、典型的には、参照レベル(例えば、特定の治療法が欠如している)と比較して少なくとも10%の減少を意味し、例えば、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、またはそれ以上の減少を含むことができる。本明細書で使用される場合、「低減」または「阻害」は、参照レベルと比較して完全な阻害または低減を包含しない。「完全な阻害」は、参照レベルと比較して100%の阻害である。減少は、好ましくは、所与の障害のない個体の正常範囲内であると認められるレベルまで下げることができる。
【0046】
用語「増加した」、「増加する」、「向上する」または「活性化する」という用語はすべて、本明細書において、一般に、統計的に有意な量による特性、レベル、または他のパラメータの増加を意味するために使用される。疑義を回避するために、「増加した」、「増加する」、「向上する」または「活性化する」という用語は、参照レベルと比較して少なくとも10%の増加を意味し、例えば、参照レベルと比較した場合、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、または少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約80%、または少なくとも約90%、または100%の増加を含む100%までの増加または10~100%の間のいずれかの増加を含み、あるいは、参照レベルと比較した場合の少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、または少なくとも約4倍、または少なくとも約5倍または少なくとも約10倍の増加、少なくとも約20倍の増加、少なくとも約50倍の増加、少なくとも約100倍の増加、少なくとも約1000倍以上の増加を含む。
【0047】
「薬学的に許容される」という用語は、過度の毒性なしに対象(例えば、哺乳動物またはヒト)に投与することができる化合物および組成物を指すことができる。
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、活性成分と組み合わせると、成分が生物学的活性を保持することを可能にし、対象の免疫系と非反応性である任意の材料または物質を含むことができる。例としては、限定されるものではないが、リン酸緩衝生理食塩水、水、油/水型のエマルジョンなどのエマルジョン、および様々な種類の湿潤剤などの標準的な医薬担体のいずれかが含まれる。「薬学的に許容される担体」という用語は、組織培養培地を除外する。
【0048】
語句「ALK2の活性」は、ALK-2酵素活性(例えば、キナーゼ活性のような;ALK-2がBMP応答性SMADタンパク質をリン酸化する能力)および/またはALK-2媒介性シグナル伝達(例えば、BMPリガンドの結合によるALK-2の活性化に続く下流のシグナル伝達および転写活性を媒介するALK-2の能力など)を意味する。いくつかの実施形態において、「ALK2の活性」は、ALK2媒介BMPシグナル伝達を意味する。いくつかの実施形態において、「ALK2の活性」は、ALK2媒介BMP応答遺伝子転写(例えば、BMP/ALK2シグナル伝達によって媒介される転写活性)を意味する。
【0049】
語句「ALK5の活性」は、ALK-5酵素活性(例えば、キナーゼ活性のような;TGF-β応答性SMADタンパク質をリン酸化するALK-5の能力;ALK-5がSMAD2またはSMAD3をリン酸化する能力)および/またはALK-5媒介性シグナル伝達(例えば、TGF-βリガンドの結合によるALK-5の活性化に続く下流のシグナル伝達および転写活性を媒介するALK-5の能力)を意味する。いくつかの実施形態において、「ALK5の活性」は、ALK5媒介性TGF-βシグナル伝達を意味する。いくつかの実施形態において、「ALK5の活性」は、ALK5媒介性TGF-β応答性遺伝子転写(例えば、TGFβ/ALK5シグナル伝達によって媒介される転写活性)を意味する。
【0050】
語句「ALK1の活性」は、ALK-1酵素活性(例えば、キナーゼ活性のような;ALK-1がBMP応答性SMADタンパク質をリン酸化する能力)および/またはALK-1媒介性シグナル伝達(例えば、BMPリガンドの結合によるALK-1の活性化に続く下流のシグナル伝達および転写活性を媒介するALK-1の能力など)を意味する。いくつかの実施形態において、「ALK1の活性」は、ALK1媒介BMPシグナル伝達を意味する。いくつかの実施形態において、「ALK1の活性」は、ALK1媒介BMP応答遺伝子転写(例えば、BMP/ALK1シグナル伝達によって媒介される転写活性)を意味する。
【0051】
語句「ALK4の活性」はALK-4酵素活性(例えば、キナーゼ活性のような;ALK-4がアクチビン応答性SMADタンパク質をリン酸化する能力;ALK-4がSMAD2またはSMAD3をリン酸化する能力)および/またはALK-4媒介性シグナル伝達(例えば、アクチビンリガンドの結合によるALK-4の活性化に続く下流のシグナル伝達および転写活性を媒介するALK-4の能力)を意味する。いくつかの実施形態において、「ALK4の活性」は、ALK4媒介アクチビンシグナル伝達を意味する。いくつかの実施形態において、「ALK4の活性」は、ALK4媒介アクチビン応答性遺伝子転写(例えば、アクチビン/ALK4シグナル伝達によって媒介される転写活性)を意味する。
【0052】
語句「ALK6の活性」は、ALK-6酵素活性(例えば、キナーゼ活性のような;ALK-6がBMP応答性SMADタンパク質をリン酸化する能力)および/またはALK-6媒介性シグナル伝達(例えば、BMPリガンドの結合によるALK-6の活性化に続く下流のシグナル伝達および転写活性を媒介するALK-6の能力など)を意味する。いくつかの実施形態において、「ALK6の活性」は、ALK6媒介BMPシグナル伝達を意味する。いくつかの実施形態において、「ALK6の活性」は、ALK6媒介GDF5シグナル伝達を意味する。いくつかの実施形態において、「ALK6の活性」は、ALK6媒介BMP応答遺伝子転写(例えば、BMP/ALK6シグナル伝達によって媒介される転写活性)を意味する。
【0053】
ヒトALK2は509アミノ酸のタンパク質である。タンパク質配列は、例えば、GenBankアクセッション番号NP_1104537.1、(対応するヌクレオチド配列がNM_1111067.2である)、UniProtエントリーQ 04771として公開されている。
【0054】
ヒトのALK5は、少なくとも、503アミノ酸のタンパク質(アイソフォーム1)と426アミノ酸のタンパク質の2つのアイソフォームを有する。ヒトALK5のアイソフォーム1のタンパク質配列は、例えば、GenBankアクセッション番号NP_004603.1(対応するヌクレオチド配列はNM_004612.2)として公開されている。426アミノ酸のアイソフォームのタンパク質配列は、例えば、GenBankアクセッション番号NP_001124388.1 9f(対応するヌクレオチド配列はNM_001130916.1)として公開されている。両方のアイソフォームに関する情報はまた、UniProtエントリーP36897として公開されている。
【0055】
ヒトのALK1は、503アミノ酸のタンパク質である。このタンパク質の配列は、例えば、GenBankアクセッション番号NP_001070869.1(NM_001077401.1に対応するヌクレオチド配列を有する;転写バリアント2)およびNP_000011.2(NM_000020.2に対応するヌクレオチド配列を有する;転写バリアント1)、UniProtエントリーP37023として公開されている。
【0056】
ヒトALK3は、532アミノ酸のタンパク質である。このタンパク質の配列は、例えば、GenBankアクセッション番号NP_004320(対応するヌクレオチド配列はNM_004329.2)、UniProtエントリーP36894として公開されている。
【0057】
ヒトのALK4には、少なくとも3つのアイソフォームが存在する。アイソフォームaは、505アミノ酸のタンパク質である。このタンパク質の配列は、例えば、GenBankアクセッション番号NP_004293(対応するヌクレオチド配列はNM_004302)、UniProtエントリーP36896として公開されている。
【0058】
ヒトALK6のアイソフォームaは、532アミノ酸のタンパク質であり、アイソフォームbは502アミノ酸のタンパク質である。ヒトALK6のアイソフォームaのタンパク質配列は、例えば、GenBankアクセッション番号NP_001243722(対応するヌクレオチド配列はNM_001256793.1)として公開されている。ヒトALK6アイソフォームbのタンパク質配列は、例えば、GenBankアクセッション番号NP_001194(NM_01203.2に対応するヌクレオチド配列を有する)として公開されている。
【0059】
前述の各タンパク質は、インビボでシグナル配列の切断などによりさらに処理され、成熟した形態になることに留意されたい。
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」という用語は、提示された定義された要素に加えて、他の要素も存在し得ることを意味する。「含む」の使用は、限定ではなく包含を意味する。
【0060】
本明細書で使用される場合、「本質的にからなる(consisting essentially of)」という用語は、所与の実施形態に必要な要素を指す。この用語は、本発明のその態様の基本的および新規または機能的特徴に実質的に影響を及ぼさない追加の要素の存在を許容する。
【0061】
「からなる(consisting of)」という用語は、本明細書に記載されている組成物、方法、およびそれらの各構成要素であって、その実施形態の説明に記載されていない任意の要素を含まないものを指す。
【0062】
「任意の」または「任意に」とは、その後に記載された状況が発生してもしなくてもよいことを意味し、説明には状況が発生する例と発生しない例が含まれる。
発現における変化:発現における変化(alternation in expression)とは、生体試料(シェーグレン症候群患者からの試料、例えば唾液腺生検など)において検出可能な遺伝子転写産物(例えば、mRNA)または遺伝子産物(例えば、タンパク質)のレベルが、対照(健常者など)と比較して変化することを指す。発現の「変化」には、発現の増加(アップレギュレーション)または発現の減少(ダウンレギュレーション)が含まれる。
【0063】
骨形成タンパク質6(BMP6):TGF-βスーパーファミリーの成長因子の一つ。BMP6の発現は、平滑筋細胞、成長板軟骨細胞、気管支上皮、角膜、表皮、唾液腺、神経系の細胞など、いくつかの異なる哺乳類の組織や細胞タイプで検出されている(ブレッシング(Blessing)他、J Cell Biol、135(1):227-239、1996年)。インビトロでは、BMP6は、細胞分裂を抑制し、末端上皮の分化を促進し、軟骨内骨形成、骨芽細胞の分化および神経細胞の成熟を誘導することが示されている(ハイキンハイモ(Heikinheimo)他、Cancer Res、59:5815-5821、1999年)。BMP6は、植物関連成長因子(TGFB関連)、VGR、VGR1、VG-1関連タンパク質としても知られている。数多くの異なる種からのBMP6のゲノム、mRNAおよびタンパク質の配列は、アメリカ国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information)のGenBankデータベースなどで公開されている。
【0064】
対照:「対照」とは、シェーグレン症候群の患者から得られた唾液腺試料など、実験試料との比較に使用される試料または標準品をいう。いくつかの実施形態において、対照は、健康なボランティアから得られた試料である(本明細書では、「正常」対照とも呼ばれる)。いくつかの実施形態において、対照は、過去の対照または標準値(すなわちベースラインまたは正常値を表す、以前に試験された対照試料または試料群)である。
【0065】
診断:徴候、症状および/または様々な検査の結果によって疾患を特定するプロセス。その過程で得られた結論は「診断」とも呼ばれる。一般的に行われる検査の形態には、身体検査、血液検査、医用画像、遺伝子分析、尿検査、および生検が含まれる。
【0066】
診断上有意な量:いくつかの実施形態において、「診断上有意な量」とは、ある患者集団と別の患者集団(シェーグレン症候群の患者集団と健常者の集団など)とを区別するのに十分な、生体試料中のBMP6(または他の遺伝子やタンパク質)のレベルの増加または減少を指す。いくつかの例において、診断上有意な増加または減少は、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも8倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍または少なくとも40倍である。RT-PCRは、BMP6の発現を検出する方法の一例として本明細書に記載されている。ELISAなどのイムノアッセイは、BMP6の発現を検出する方法の別の例である。しかしながら、当業者であれば、遺伝子の発現を測定する方法は他にも存在し、使用する方法によっては検出される発現量にばらつきが生じることを認識するであろう。したがって、診断上有意な量は、別の検出方法が使用される場合、変動する可能性がある。他の実施形態において、「診断上有意な量」とは、ある患者集団と他の患者集団(シェーグレン症候群の患者集団と健常者の対照群など)とを区別するのに十分な唾液腺の電位の増加または減少を指す。いくつかの例において、診断上有意な増加または減少は、約10%、約20%、約30%、約40%または約50%である。
【0067】
免疫抑制薬:体の免疫系の反応を低下させる作用を持つ薬剤や化合物を含む。いくつかの実施形態において、免疫抑制薬はコルチコステロイドである。他の実施形態において、免疫抑制薬は、低分子(シクロスポリンなど)またはモノクローナル抗体(サイトカインブロッカーなど)である。
【0068】
阻害剤:遺伝子産物の活性を低下させたり、遺伝子の発現を妨げたりすることができる任意の化合物、核酸分子、低分子、ペプチドまたはポリペプチド(抗体など)のこと。いくつかの例において、阻害剤は、直接的または間接的に、遺伝子によってコードされるタンパク質の活性を低減または阻害することができる。直接的な阻害は、例えば、タンパク質に結合し、それによってタンパク質が受容体などの意図された標的に結合するのを防ぐことによって達成される。間接的な阻害は、例えば、タンパク質の意図された標的、例えば受容体や結合パートナーに結合し、それによってタンパク質の活性を阻害または低下させることによって達成される。いくつかの例において、本開示の阻害剤は、特に、遺伝子の発現(転写、プロセシング、翻訳、翻訳後修飾)を妨害することによって、例えば、遺伝子のmRNAを妨害して遺伝子産物の翻訳をブロックすることによって、または遺伝子産物の翻訳後修飾によって、または細胞内局在の変化を引き起こすことによって、遺伝子の発現を低減または阻害することによって、遺伝子を阻害することができる。本発明の様々な実施形態において、阻害剤は、式(I)の1つ以上の化合物である。
【0069】
発現または活性を阻害する:本明細書で使用される場合、遺伝子(BMP6など)の発現または活性を阻害する薬剤とは、細胞または組織においてその遺伝子(BMP6など)によって発現されるmRNAまたはタンパク質のレベルを低下させるか、またはその遺伝子またはコード化されたタンパク質(BMP6など)の1つ以上の活性を低下させる(排除することを含む)薬剤である。同様に、BMPシグナル伝達を阻害する薬剤は、BMPシグナル伝達経路におけるシグナル伝達事象、例えば下流の標的のリン酸化、例えばSMAD1/5/8のリン酸化などを阻害、遮断または防止する任意の化合物である。
【0070】
発現レベルの測定:試料中に存在する遺伝子産物の量を定量すること。定量化は、数値的または相対的のいずれかである。遺伝子産物(BMP6 mRNAまたはタンパク質など)の発現を検出することは、RT-PCR、抗体結合(例えば、ELISA)、または免疫組織化学など、当技術分野で知られている、または本明細書に記載されている任意の方法を用いて達成することができる。いくつかの実施形態において、検出された変化は、対照と比較した発現の増加または減少である。いくつかの例において、検出された増加または減少は、対照と比較して、少なくとも2倍、少なくとも3倍、または少なくとも4倍の増加または減少である。本発明の方法の他の実施形態において、増加または減少は、診断上有意な量であり、これは、診断の統計的確率を提供するのに十分な大きさの変化を意味する。
【0071】
メチルCpG結合タンパク質2(MECP2):DNAメチル化は、真核生物のゲノムの主要な修飾であり、哺乳類の発生に不可欠な役割を果たしている。ヒトタンパク質MECP2、MBD1、MBD2、MBD3およびMBD4は、それぞれメチルCpG結合ドメイン(MBD)を持つ核内タンパク質ファミリーである。MBD3を除いて、これらの各タンパク質はメチル化されたDNAに特異的に結合することができる。また、MECP2、MBD1、MBD2は、メチル化された遺伝子のプロモーターからの転写を抑制することができる。他のMBDファミリーメンバーとは対照的に、MECP2はX連鎖性で、Xの不活性化を受ける。MECP2は、幹細胞では無意味だが、胚の発生には必須である。MECP2遺伝子の変異は、進行性の神経学的発達障害であり、女性の精神遅滞の最も一般的な原因の1つであるレット症候群のほとんどの症例の原因となっている。MECP2は、RS、RTS、RTT、PPMX、MRX16、MRX79、MRXSL、AUTSX3、MRXS13、およびDKFZp686A24160としても知られている。MECP2のゲノム、mRNA、タンパク質の配列は、アメリカ国立生物工学情報センターのGenBankデータベースなどで公開されている。
【0072】
ノギン(NOG):BMP4やBMP6などのトランスフォーミング成長因子ベータ(TGF-β)スーパーファミリーシグナル伝達タンパク質のメンバーに結合して不活化する分泌タンパク質。このタンパク質は、TGF-βスーパーファミリーのメンバーよりも細胞外マトリックス中を効率的に拡散することで、形態形成のグラデーションを形成する主要な役割を果たしていると考えられる。このタンパク質は、発生の初期と後期の両方において、多面的な効果を持つと考えられる。ノギンのヌクレオチドとアミノ酸の配列は、GenBankデータベースなどで公開されている(ヒトノギンについてはNCBI Gene ID9241を参照)。
【0073】
非ステロイド系抗炎症剤(NSAID):プロスタグランジンの産生を阻害することによって作用する抗炎症剤の一種。NSAIDSは、抗炎症作用、鎮痛作用、解熱作用を示す。NSAIDSの例としては、イブプロフェン、ケトプロフェン、ピロキシカム、ナプロキセン、スリンダック、アスピリン、サブサリチル酸コリン、ジフルニサル、フェノプロフェン、インドメタシン、メクロフェナム酸、サルサレート、トルメチン、サリチル酸マグネシウムなどが含まれる。
【0074】
唾液流量の回復(または唾液流量の増加):シェーグレン症候群および/またはBMP6発現の増加に起因するような、唾液流量が減少している対象において、唾液分泌量を増加させるプロセスをいう。唾液流量の増加は、例えば、唾液流の速度の増加および/または唾液流の体積の増加によって示すことができる。いくつかの実施形態において、唾液流量の回復は、治療薬を投与することによって達成することができる。いくつかの例でにおいて、治療薬は、ピロカルピン(Salagen(登録商標))またはセビメリン(Evoxac(登録商標))などの医薬品である。他の例において、治療薬は、BMP6の発現または活性の阻害剤である。
【0075】
涙液産生の回復:シェーグレン症候群に起因するような涙液の量が減少している対象の涙液の量を増加させるプロセス。いくつかの実施形態において、涙液産生を回復させることは、治療剤を投与することによって達成することができる。特定の例において、治療剤は、BMP6の発現または活性の阻害剤である。
【0076】
唾液腺:唾液を分泌する外分泌腺。本明細書で使用される場合、「唾液腺」は、例えば、耳下腺、小唾液腺、顎下腺、舌下腺、フォンエブナー腺を含む、ヒト対象の任意の唾液腺を含む。口腔内には600以上の小唾液腺がある。
【0077】
シェーグレン症候群(SS):涙液や唾液を分泌する腺を免疫細胞が攻撃して破壊することを特徴とする自己免疫疾患。シェーグレン症候群は、生命を脅かしたり、命を縮めたりするものではないが、生活の質を著しく低下させる可能性がある。この疾患の特徴的な症状は、ドライマウスとドライアイである。シェーグレン症候群は、皮膚、鼻、膣の乾燥も引き起こす可能性があり、腎臓、血管、肺、肝臓、膵臓、脳などの体の他の器官に影響を及ぼすこともある。シェーグレン症候群は、米国では100万~400万人が罹患しており、女性はこの病気を発症する可能性が9倍高くなっている。シェーグレン症候群の患者の大半は、診断時に少なくとも40歳以上である。
【0078】
シェーグレン症候群の対象を特定するために、いくつかの異なる基準を使用でき、以下の1つ以上を含む:(i)眼症状(例えば、持続的なドライアイ、および/または、眼に砂や砂利が入ったような感覚が繰り返し起こる);(ii)口腔症状(例えば、日常的な口渇感、持続的な唾液腺の腫れ、および/または、乾燥した食物を飲み込むために液体を飲むこと);(iii)無麻酔で行ったシルマーテストの陽性結果(5分間で5mm以上)、および/またはローズベンガルスコアまたはその他の眼表面染色スコア(van Bijsterveldのスコアリングシステムによる≧4)として定義される眼病変の客観的証拠;(iv)小唾液腺における病理組織学的検査(フォーカススコアまたはターブリースコアの測定);(v)刺激されていない全唾液流量(15分間で≦1.5ml)に対する陽性結果、大唾液管における閉塞の証拠を伴わないびまん性唾液腺拡張(点状、空洞状、または破壊的なパターン)の存在を示す耳下腺唾液腺造影、および/またはトレーサーの遅延した取り込み、減少した濃度および/または遅延した排泄を示す唾液腺シンチグラフィにより、唾液腺病変の客観的証拠が示された唾液腺病変;または(vi)自己抗体(血清中にRo(SSA)抗原またはLa(SSB)抗原、またはその両方に対する抗体が存在すること)。したがって、いくつかの実施形態において、上記の徴候または症状のうちの1つ以上を示す対象が、本明細書に開示される方法に従う治療のために選択される。
【0079】
他の結合組織疾患が存在しないにもかかわらず、sicca(乾燥)症状(sicca symptomology)が存在することを「原発性シェーグレン症候群」とする。原発性シェーグレン症候群は、病理組織学(項目iv)または血清学(項目vi)のいずれかが陽性である限り、上記6つの基準のうちいずれか4つの基準が陽性である対象、または上記4つ(つまり項目iii、iv、v、vi)の客観的基準のうちいずれか3つの基準が存在する対象においても特徴づけることができる。自己免疫疾患(関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、進行性全身性硬化症、強皮症、多発性筋炎など)を有する患者は、上記の項目iまたは項目iiに加え、項目iii、iv、およびvのうちいずれか2つの基準が存在する場合、「二次性シェーグレン症候群」として特徴づけられる。
【0080】
治療上有効量:薬剤で治療されている対象または細胞において所望の効果を達成するのに十分な特定の薬剤または治療薬の量。薬剤の有効量は、治療される対象または細胞、および治療用組成物の投与方法を含むがこれらに限定されないいくつかの要因に依存するであろう。
【0081】
X(不活性)特異的転写産物(非タンパク質コーディング)(XIST):Xの不活性化は哺乳類の雌における初期発生過程であり、X染色体対の一方を転写的に不活性化し、それにより雄と雌の間の用量等価性を提供する。この過程は、X染色体のX不活性化中心(XIC)と呼ばれる領域など、いくつかの因子によって制御されている。XIST遺伝子は不活性なX染色体のXICのみから発現する。転写産物はスプライシングされるが、タンパク質をコードしていない。転写産物は核内に残り、不活性なX染色体を覆う。XISTは、XCE、XIC、SXI1としても知られている。XISTのゲノムおよびRNA配列は、アメリカ国立生物工学情報センターのGenBankデータベースなどで公開されている。
【0082】
略語
AAV:アデノ随伴ウイルス
ATP:アデノシン三リン酸
BMP6:骨形成タンパク質6
BSA:ウシ血清アルブミン
BW:体重
CGH:比較ゲノムハイブリダイゼーション
ELISA:酵素結合免疫吸着アッセイ
EP:電位
FS:フォーカススコア
HIF-1アルファ:低酸素誘導因子1-アルファ
HO:異所性骨化
HTS:低張液
HV:健常ボランティア
IFN:インターフェロン
IL:インターロイキン
IM:筋肉内
IPA:Ingenuity経路解析
MECP2:メチルCpG結合タンパク質2
MyD88:骨髄分化一次応答遺伝子88
NOD:非肥満糖尿病
OD:光学密度
O/N:一晩
PDGF:血小板由来成長因子
pSS:原発性シェーグレン症候群
qPCR:定量的ポリメラーゼ連鎖反応
RIN:RNA integrity number
RT:室温
RT-PCR:逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応
Runx2:runt関連転写因子2
RVD:調節性容積減少
SFR:唾液流量
SG:唾液腺
SMG:顎下腺
SS:シェーグレン症候群
TEER:経上皮電気抵抗
TGF:トランスフォーミング成長因子
TRIF:TIR-ドメインを含むアダプター誘導インターフェロン-β
WT:野生型
XIST:X(不活性)特異的転写産物(非タンパク質コーディング)
さらに、文脈上別段の必要がない限り、単数形には複数形が含まれ、複数形には単数形が含まれるものとする。
【0083】
本発明は、本明細書に記載される特定の方法論、プロトコル、および試薬などに限定されず、それ自体が変化し得ることを理解されたい。本明細書において使用されている用語は、特定の実施形態を説明するためのものであり、特許請求の範囲によってのみ定義される本発明の範囲を限定するものではない。
【0084】
本明細書において提供される方法および組成物は、部分的に、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物が、BMPI型受容体であるALK2を介したシグナル伝達を阻害することによってBMP阻害剤として作用するという発見に基づく。さらに、本明細書に記載されている1つ以上の結晶性化合物または組成物は、軟組織における異常な骨形成の治療および/または予防に有効であることが本明細書に示されている。したがって、本明細書で提供されるのは、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物での治療を含む、軟組織における異常な骨形成の治療のための方法および組成物である。
【0085】
様々な実施形態において、本発明は、対象の軟組織における異常な骨の形成を治療するための方法を提供し、同方法は、本明細書に記載の治療有効量の1つ以上の結晶性化合物または組成物を投与することを含む。いくつかの実施形態において、対象は、治療前に異常な骨形成を有するか、または有するリスクがあると決定される。いくつかの実施形態において、対象は、筋骨格外傷、脊髄損傷、または中枢神経系損傷を受けている。いくつかの実施形態において、異常な骨の形成は、異所性骨化疾患に関連している。いくつかの実施形態において、異所性骨化疾患は、後天性異所性骨化症、進行性骨化性線維異形成症、強直性脊椎症、外傷性異所性骨化症、火傷または爆傷に関連する異所性骨化症、および関節置換手術に関連する異所性骨化症からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、軟組織は、筋肉、腱、靭帯、および/または筋膜を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの追加の薬剤が対象に投与される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの追加の薬剤は、コルチコステロイド、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、リポキシゲナーゼ阻害剤、ロイコトリエン阻害剤、マスト細胞安定剤、抗ヒスタミン剤、TNF阻害剤、IL-23ブロッカー、またはIL-1シグナル伝達の阻害剤を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される1つ以上の結晶性化合物または組成物の治療有効量は、5mg/kg~250mg/kgの範囲内の用量を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物の治療有効量は、総体重の20%を超える体重減少を引き起こさない。
【0086】
様々な実施形態において、本発明は、対象の軟組織における異常な骨の形成を治療するための方法を提供し、同方法は、治療有効量のBMPI型セリン-スレオニンキナーゼ受容体の阻害剤を対象に投与することを含み、ここで、BMPI型セリン-スレオニンキナーゼ受容体の阻害剤は、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物である。いくつかの実施形態において、BMPI型セリン-スレオニンキナーゼ受容体は、ALK2、ALK3、またはALK6である。いくつかの実施形態において、BMPI型セリン-スレオニンキナーゼ受容体は、ALK2またはALK3である。
【0087】
様々な実施形態において、本発明は、対象の軟組織における異常な骨の形成を治療するための方法を提供し、同方法は、治療有効量のBMPII型セリン-スレオニンキナーゼ受容体の阻害剤を対象に投与することを含み、ここで、BMPII型セリン-スレオニンキナーゼ受容体の阻害剤は、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物である。いくつかの実施形態において、BMPII型セリン-スレオニン受容体は、ACVR2A、ACVR2B、BMPR2、またはTGFβR2である。
【0088】
様々な実施形態において、本発明は、対象においてセリン-スレオニンキナーゼ受容体を阻害するための方法を提供し、同方法は、セリン-スレオニンキナーゼ受容体を阻害するのに有効な条件下で、セリン-スレオニンキナーゼ受容体の阻害剤を対象に投与することを含み、ここで、セリン-スレオニンキナーゼ受容体の阻害剤は、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物である。いくつかの実施形態において、セリン-スレオニンキナーゼ受容体は、BMPI型受容体、BMPII型受容体、またはTGF-βI型受容体である。いくつかの実施形態において、セリン-スレオニンキナーゼ受容体は、BMPI型受容体である。いくつかの実施形態において、BMPI型受容体は、ALK2、ALK3、またはALK6である。いくつかの実施形態において、BMPI型受容体は、ALK2またはALK3である。いくつかの実施形態において、セリン-スレオニンキナーゼ受容体は、BMPII型受容体である。いくつかの実施形態において、BMPII型受容体は、ACVR2A、ACVR2B、BMPR2、またはTGFβR2である。いくつかの実施形態において、セリン-スレオニンキナーゼ受容体は、TGF-βI型受容体である。いくつかの実施形態において、TGF-βI型受容体は、ALK5である。
【0089】
様々な実施形態において、本発明は、セリン-スレオニンキナーゼ受容体を阻害するための1つ以上の化合物を同定するための方法を提供し、同方法は、以下を含む:a)セリン-スレオニンキナーゼ受容体を含む試料を提供すること;b)試料を本明細書に記載された1つ以上の結晶性化合物または組成物と接触させること;およびc)セリン-スレオニンキナーゼ受容体を阻害する1つ以上の化合物を同定するためのアッセイを行うことであって、アッセイがインビトロアッセイ、インビボアッセイ、またはエクスビボアッセイであること。いくつかの実施形態において、セリン-スレオニンキナーゼ受容体は、BMPI型受容体、BMPII型受容体、またはTGF-βI型受容体である。いくつかの実施形態において、アッセイは、インビトロアッセイである。
【0090】
様々な実施形態において、本発明は、シェーグレン症候群を有する対象を治療する方法を提供し、同方法は以下を含む:a)対照と比較して対象の唾液腺においてBMP6の発現が増加した対象を選択すること;b)BMP6の発現または活性を阻害する治療有効量の薬剤を対象に投与し、それによりシェーグレン症候群に罹患した対象を治療することであって、BMP6の発現または活性を阻害する薬剤は、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物である治療すること。いくつかの実施形態において、唾液腺は、小唇唾液腺、耳下腺、または顎下腺である。
【0091】
様々な実施形態において、本発明は、びまん性内因性橋グリオーマ(diffuse intrinsic pontine glioma)(DIPG)を有する対象を治療する方法であって、びまん性内因性橋グリオーマ(DIPG)を有する対象を選択することと、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物の治療有効量を対象に投与することと、を含み、それによって、びまん性内因性橋グリオーマ(DIPG)を有する対象を治療する方法を提供する。
【0092】
様々な実施形態において、本発明は、対象の軟組織における異常な骨の形成を治療するための方法を提供し、同方法は、治療有効量のTGF-βI型受容体セリン-スレオニンキナーゼ受容体の阻害剤を対象に投与することを含み、ここで、TGF-βI型セリン-スレオニンキナーゼ受容体の阻害剤は、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物である。いくつかの実施形態において、TGF-βI型受容体は、ALK5である。
【0093】
様々な実施形態において、本発明は、対象においてセリン-スレオニンキナーゼ受容体を阻害するための方法を提供し、同方法は、セリン-スレオニンキナーゼ受容体を阻害するのに有効な条件下で、セリン-スレオニンキナーゼ受容体の阻害剤を対象に投与することを含み、ここで、セリン-スレオニンキナーゼ受容体の阻害剤は、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物である。いくつかの実施形態において、セリン-スレオニンキナーゼ受容体は、BMPI型受容体、BMPII型受容体、またはTGF-βI型受容体である。いくつかの実施形態において、セリン-スレオニンキナーゼ受容体は、BMPI型受容体である。いくつかの実施形態において、BMPI型受容体は、ALK2、ALK3、またはALK6である。いくつかの実施形態において、BMPI型受容体は、ALK2またはALK3である。いくつかの実施形態において、セリン-スレオニンキナーゼ受容体は、BMPII型受容体である。いくつかの実施形態において、BMPII型受容体は、ACVR2A、ACVR2B、BMPR2、またはTGFβR2である。いくつかの実施形態において、セリン-スレオニンキナーゼ受容体は、TGF-βI型受容体である。いくつかの実施形態において、TGF-βI型受容体は、ALK5である。
【0094】
様々な実施形態において、本発明は、対象における唾液流量を増加させる方法を提供し、同方法は以下を含む:a)対照と比較して対象の唾液腺におけるBMP6の発現が増加した対象を選択すること;b)BMP6の発現または活性を阻害する治療有効量の薬剤を対象に投与し、それにより対象の唾液流量を増加させることであって、ここでBMP6の発現または活性を阻害する薬剤は、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物である増加させること、あるいは顎下腺。
【0095】
様々な実施形態において、本発明は、対象における唾液流量を増加させる方法を提供し、同方法は以下を含む:a)対照と比較して対象の唾液腺におけるBMP6の発現が増加した対象を選択すること;b)BMPシグナル伝達を阻害する治療有効量の薬剤を対象に投与し、それにより対象の唾液流量を増加させ、ここで、BMPシグナル伝達を阻害する薬剤は、本明細書に記載の1つまたは複数の結晶性化合物または組成物である、増加させること。いくつかの実施形態において、唾液腺は、小唇唾液腺、耳下腺、または顎下腺である。
【0096】
異所性骨化疾患
「異所性骨化」という用語は、通常、骨が存在しない軟組織における骨の異常な形成を指す。後天性異所性骨化症は、基本的にあらゆる筋骨格外傷、脊髄損傷、中枢神経系損傷、頭部外傷、脳血管障害、鎌状赤血球貧血、血友病、破傷風、ポリオ、多発性硬化症、中毒性表皮壊死症および火傷などで発生する可能性がある。筋骨格系の外傷の例としては、限定されるものではないが、股関節、膝関節、肩関節、肘関節の人工関節置換術、骨折、関節脱臼、あるいは大腿四頭筋や上腕筋などの軟組織の外傷などが挙げられる。後天性異所性骨化症はまた、発熱、腫れ、および紅斑(例えば、皮膚の局所的な斑状の発赤)と関連している可能性がある。一実施形態において、神経原性異所性骨化は、局所的な外傷と関連していない。
【0097】
遺伝性疾患である進行性骨化性線維異形成症(FOP)および進行性骨化性異形成症(POH)は、異所性骨形成の最も重篤な症状である。FOPははまれに発生し、骨形成タンパクI型受容体をコードするACVR1の変異の結果である。POH患者はGNAS遺伝子の不活性化変異を有し、この変異が母親から遺伝する場合、オルブライト遺伝性骨異栄養症(AHO)を生じる。
【0098】
円周性骨化性筋炎は、線維芽細胞、新しい骨、および/または軟骨が筋肉内で増殖することを特徴とする。
一般的にHOは、怪我をしてから3週間から12週間の間に発症する。異所性骨化は、コンピュータ断層撮影、骨シンチグラフィ、超音波検査で確実に診断することができる。2~6週間後には、異常な骨形成が進行し、X線撮影で検出できるようになる。骨の成熟は通常6ヶ月以内に起こる。
【0099】
異所性骨化症の従来の治療法:従来の治療では、通常、非ステロイド性抗炎症薬(インドメトシン、ロフェコキシブ)、またはビスフォスフォネート(エチドロネート、パミドロネート)、クマジン/ワルファリン、サリチル酸塩、および/または局所放射線を投与することができる。多くの場合、治療の唯一の選択肢は手術である。
【0100】
治療の成果は、HOの標準的な放射線学的評価システムで測定することができ、この評価システムには、ゴニオメータで測定した患部の関節可動域の変化、HOに関連する臨床症状や徴候が客観的に改善するまでの平均時間、標準化された機能的または関節固有の指標の変化に関する測定が含まれる。
【0101】
用途
BMPおよびTGF-βのシグナル伝達経路は、正常な器官形成やパターン形成、また成熟した組織の正常および病的なリモデリングに不可欠である。BMPシグナル伝達経路の欠損は、遺伝性出血性毛細血管拡張症症候群、原発性肺高血圧症、若年性家族性ポリポーシス、さらには散発性の腎細胞癌や前立腺癌など、多くの先天性および後天性の疾患プロセスに関与している。シグナル伝達成分の欠損に関連する特定の疾患状態では、BMPシグナルの減衰が原因である可能性が示唆されているが、一方で、一部の状況では過剰なBMPシグナルが病因となる可能性も示唆されている(ウエイテ(Waite)他、Rev.Genet.、4:763-773、2005;ユ(Yu)他、J.Biol.Chem.、280:24443-24450、2003)。BMPシグナル伝達を実験的に調節することができれば、治療法を検討するための手段、およびこれらの状態の根本原因を決定するための手段を提供することができる。本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物は、BMP1型受容体であるALK2の阻害剤であり、BMP経路を介したシグナル伝達を妨害するために使用することができる。
【0102】
鉄欠乏症や慢性疾患の貧血を含む貧血の治療
総説については、ウェイス(Weiss)他、N.Engl.J.Med.、352:1011-1023、2005を参照されたい。炎症性貧血(慢性疾患貧血とも呼ばれる)は、慢性感染症、自己免疫疾患(全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、キャッスルマン病など)、炎症性腸疾患、がん(多発性骨髄腫を含む)、腎不全などの患者に見られる。炎症性貧血は、多くの場合、ペプチドホルモンであるヘプシジンの不適応な発現によって引き起こされる。ヘプシジンは、マクロファージの細胞内貯蔵庫や腸管上皮細胞からの鉄の輸送を可能にする重要なタンパク質であるフェロポーティンの分解を引き起こす。腎不全患者の多くは、エリスロポエチンの欠乏とヘプシジンの過剰発現を併せ持っている。BMPシグナル伝達は、ヘプシジンの発現を誘導し、BMPアンタゴニストでヘプシジンの発現を阻害すると、鉄レベルが上昇する。本明細書に記載の化合物は、慢性疾患や炎症による貧血、およびそれに伴う高ヘプシジン血症の治療に用いることができる。
【0103】
炎症性サイトカインであるIL-6は、様々な病因の炎症性貧血におけるIL-6の上昇、インビボでのIL-6の慢性投与の影響、IL-6を欠損したネズミの貧血に対する保護などから、炎症状態におけるヘプシジンの発現上昇の主要な原因であると考えられている(ウェイス(Weiss)他、N.Engl.J.Med.、352:1011-1023、2005年)。また、肝細胞株をIL-6で刺激するとヘプシジンの発現が誘導されるが、BMPアンタゴニストで処理するとIL-6誘導によるヘプシジン発現が無効になることが示されている(ユ(Yu)他、Nat.Chem.Biol.、4:33-41、2008年)。さらに、BMPアンタゴニストは、インビボでの病原性細菌の注入によって誘発されるヘプシジン発現を抑制することができる。また、マウスやゼブラフィッシュの全身に鉄を投与すると、肝臓のBMP応答性SMADおよびヘプシジンの発現が急速に活性化され、BMPアンタゴニストがこれらの反応を効果的にブロックすることが示されている(ユ(Yu)他、Nat.Chem.Biol.、4:33-41、2008年)。鉄調節におけるBMPシグナルの機能的重要性は、BMPアンタゴニストがインビボでヘプシジンの発現を阻害し、血清鉄レベルを上昇させることができるという以前の知見によって裏付けられている(データは示されていない)。これらのデータを総合すると、鉄や炎症を介したヘプシジンや循環鉄濃度の調節にはBMPシグナル伝達が必要であることがわかる。したがって、ALK2を介したBMPシグナル伝達を阻害する本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物は、治療上の利益のために多様な状況で鉄の利用能を変化させるために使用することができる。
【0104】
本明細書に記載されている化合物および/または医薬組成物は、貧血状態において、(i)血清鉄濃度を高めるための食事性鉄または経口鉄補給(鉄の静脈内投与よりも安全である)の効果を増強するために;(ii)手術を想定して血液中のヘモグロビンの蓄積を増強する、または手術を想定して自己献血を可能にするために;および(iii)エリスロポエチンおよびその関連物質の有効性を増強し、それにより、エリスロポエチンの既知の毒性および副作用(すなわち、高血圧、心血管イベント、腫瘍の成長)を最小限に抑えながら、貧血のために低用量のエリスロポエチンを投与することを可能にするために、使用することができる。
【0105】
B.進行性骨化性線維異形成症(FOP)の治療
様々な実施形態において、本開示は、対象の軟組織における異常な骨成長を含む疾患または障害の治療および/または予防に関するものである。異所性骨化(HO)は、骨形成細胞への細胞の不適切な分化によって特徴付けられ得る望ましくない骨成長を伴う。この状態では、通常、関節の近くに骨が形成され、この骨形成が関節の可動性を制限することが多い。HOは、神経系の損傷や、関節周辺の筋肉や結合組織などの軟組織に直接傷がついた後に発症することがある。
【0106】
HOの病因としては、外傷性、神経因性、遺伝性の3つが認められている。外傷性HOは、骨折、脱臼、手術、重度の火傷などの後に起こる。最も一般的には、HOは、骨折および観血的整復内固定術(ORIF)または人工股関節置換術(THA)後の股関節周囲にみられる。また、HOは外傷性脳損傷(TBI)、脊髄損傷(SCl)、中枢神経系(CNS)の感染症、腫瘍、脳卒中、破傷風、ポリオ、脊髄癆、多発性硬化症、選択的後根管切除術などの病態と関連していることが多いと言われている。また、特発性筋痙縮の存在もHOの発症と関連している。
【0107】
骨形成タンパク質(BMP)は、骨、軟骨、血管、心臓、腎臓、神経細胞、肝臓、肺などの様々な組織で幅広い生物活性を示す。BMPは、トランスフォーミング成長因子β(TGF-β)ファミリーの一員であり、II型およびI型のセリン-スレオニンキナーゼ受容体に結合し、Smadおよび非Smadシグナル伝達経路を介してシグナルを伝達する。異所性骨化症の一種である進行性骨化性線維異形成症(FOP)は、常染色体優性の稀な疾患であり、100~200万人に1人の割合で発症する。FOPの特徴は、胎児期に大指の奇形が発生し、出生後に異所性軟骨内骨化が進行して、異所性の骨で第2の骨格が形成されることである。古典的なFOPの特徴を持つ患者は、BMP1型受容体であるACRV1(ALK2としても知られる)をコードする遺伝子に同一のヘテロ接合の活性化変異(R206H)を有している。この稀で破滅的な疾患には、現在のところ有効な治療法がない。そのため、異所性骨化や異所性骨化の疾患および障害を治療するための組成物や方法が必要とされている。
【0108】
FOPは、罹患した個体においてALK2の構成的に活性な変異型が存在することによって引き起こされる(ショア(Shore)他、Nat.Genet.、38:525-527、2006年)。本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物などのBMPシグナル伝達の特異的阻害剤は、外傷、筋骨格のストレスまたは炎症に応答して過剰な骨形成を防止するために使用することができる。そのような化合物は、病的な骨の退縮を助けるためにも使用することができる。本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物を全身的または局所的に投与して、外傷または炎症の領域に効果を集中または制限することができる。
【0109】
ALK2阻害剤である本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物は、感受性の高い個体における自発的な骨形成を抑制するための慢性療法として使用することができる。本明細書に記載された1つ以上の結晶性化合物または組成物は、感受性の高い個体における自発的な骨形成を抑制するための慢性療法として使用することができる。一過性の治療は、外傷に関連して最も頻繁に骨腫または病的骨を発症するFOPの個体において、外傷事故の前、最中、または後にも投与することによって、異常な骨形成を防止するために使用することができる。BMP阻害剤(例えば、本明細書に記載されている1つ以上の結晶性化合物または組成物)を用いた一過性の治療は、FOPを有する個体において、必要または緊急の医療または外科的処置(さらには重要な予防接種および抜歯)の前、最中、または直後に使用して、病理学的石灰化を防止することができる。他の骨阻害剤、免疫調節剤または抗炎症剤(NSAID、ステロイド、シクロスポリン、シクロホスファミド、アザチオプリン、メトトレキサート、リツクスマブ、エタネルセプト、または類似の薬剤など)との併用療法は、この障害における異所性骨形成を阻害するBMPアンタゴニストの効果を高めることができる。
【0110】
本明細書では、軟組織における異常な骨形成の治療および/または予防のための方法および組成物が提供される。特定の実施形態において、方法および組成物は、軟組織における異常な骨形成を含む疾患または障害を治療および/または予防する。本明細書に記載の方法および組成物で治療することができる例示的な疾患または障害には、限定されるものではないが、進行性骨化性線維異形成症、強直性脊椎症、外傷性異所性骨化、熱傷または爆傷に関連する異所性骨化、および関節置換手術に関連する異所性骨化などの異所性骨化疾患が含まれる。
【0111】
したがって、本明細書の一態様で提供されるのは、対象の軟組織における異常な骨の形成を治療および/または予防する方法であって、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物を含む医薬組成物の治療有効量を投与することを含む方法である。
【0112】
C.がんの治療
過剰なBMPシグナルは、BMPの過剰発現によって、あるいは逆説的にBMPII型受容体の発現が失われた結果として生じる可能性があり、乳癌、前立腺癌、骨癌、肺癌、腎細胞癌など、ある種の固形癌の発癌、成長、転移に寄与している可能性がある(ユ(Yu)他、J.Biol.Chem.、280:24443-24450、2008年;ウエイテ(Waite)他、Nat.Rev.Genet.、4:763-773、2003年;アラルモ(Alarmo)他、Genes、Chromosomes Cancer、45:411-419、2006年;キム(Kim)他、Cancer Res.、60:2840-2844、2000年;キム(Kim)他、Clin.Cancer Res.、9:6046-6051、2003年;キム(Kim)他、Oncogene、23:7651-7659、2004年)。BMPの過剰発現またはBMPII型受容体欠損に関連するBMP活性の増加が疾患の病因に寄与する場合、BMPI型受容体(リガンドおよびII型受容体の両方の下流)のレベルで本明細書に記載の化合物を用いてBMPシグナル伝達活性を阻害することは、BMPシグナル伝達活性を正常化し、腫瘍の成長または転移を潜在的に阻害する有効な手段となり得る。
【0113】
本明細書に記載されている1つ以上の結晶性化合物または組成物は、本明細書において、癌の治療に使用することが企図されており、例えば、それらは、補助化学療法または一次化学療法のいずれかとして、臨床的利益のために、そのような腫瘍細胞(および他の腫瘍構成細胞タイプ)の成長または転移を遅延するまたは停止するために使用することができる。また、本明細書に記載のBMP阻害剤は、ある種の癌(例えば、前立腺癌や乳癌などの腺癌)の骨転移特性を妨害するために使用することができる。さらに、本明細書に記載された1つ以上の結晶性化合物または組成物は、骨肉腫などの骨を形成するかまたは骨由来の腫瘍における骨芽細胞活性を阻害するために使用することができる(補助化学療法または一次化学療法として)。さらに、本明細書に記載されている1つ以上の結晶性化合物または組成物を使用して、多発性骨髄腫および骨を標的とする腫瘍などの状態で病理学的に増加している破骨細胞活性(その標的遺伝子RANKLの作用を通じてBMPによっても制御される)を阻害することができる。このような状態でBMP阻害剤を適用すると、腫瘍の関与による溶骨性病変や骨折の存在を低減することができる。いくつかの実施形態において、癌はびまん性内因性橋グリオーマ(DIPG)である。
【0114】
D.病的な骨形成の治療
本明細書に記載するように、本明細書に記載された1つ以上の結晶性化合物または組成物を含む組成物は、強直性脊椎炎または他の「血清陰性(seronegative)」脊椎関節症などの炎症性疾患における病的な骨形成/骨融合を治療または改善するために使用することができ、このような疾患における自己免疫および炎症は、骨形成を刺激するようである。化合物の1つの応用例としては、特に強直性脊椎炎や関節リウマチの患者において、関節手術後の過剰な骨形成を防ぐことが挙げられる。また、本明細書に記載するように、本明細書に記載された1つ以上の結晶性化合物または組成物を含む組成物は、全身性エリテマトーデス、強皮症、または皮膚筋炎などの疾患におけるカルシノーシス(ジストロフィー性軟組織石灰化)を予防するために使用することができる。
【0115】
筋肉への鈍的な(blunt)外傷は、特定の個体において筋肉内の異常な骨形成を引き起こし、外傷性骨化性筋炎と呼ばれる障害を引き起こす可能性がある(クッシュナー(Cushner)他、Orthop.Rev.、21:1319-1326、1992年)。また、頭部外傷や火傷は異所性骨形成を誘発し、患者のリハビリや回復を著しく阻害する。本明細書に記載するように、本明細書に記載されている1つ以上の結晶性化合物または組成物による治療は、任意に、そのような状態に対して通常処方される抗炎症薬(例えば、インドメタシンまたはイブプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬)に加えて、素因のある個体における病的な骨の形成を防止するのに役立ち、または最近または遠隔で(recently or remotely)罹患した個体における病変を軽減または退縮させるのに役立つ。ごく稀に、心筋を含む他の筋肉が、損傷や外傷の存在下で骨化を発症することが記載されており、本明細書に記載されているようなBMP阻害剤による同様の治療は、そのような状況において役立つ可能性がある。
【0116】
E.異所性または不適応な骨形成の治療
BMPシグナルおよびその転写標的は、モンケベルグ血管石灰化症およびアテローム性血管疾患における内膜および内側の血管リモデリングおよび石灰化に関与している(ボストロム(Bostrom)他、J.Clin.Invest.、91:1800-1809、1993年;タイソン(Tyson)他、Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.、23:489-494、2003年)。BMPおよびBMPによって誘導された骨分化は、心臓弁の石灰化にも関与している。本来の心臓弁は、すでに異常がある場合には特に石灰化しやすい。典型的な例は二尖性大動脈弁であり、これらの弁は典型的に石灰化して狭窄を引き起こす。石灰化した大動脈弁狭窄症の患者は、弁置換のための心臓手術を必要とすることが多い。異常な石灰化は、人工血管や心臓弁の機能に悪影響を及ぼすことがある。例えば、人工心臓弁が石灰化して狭くなり、しばしば漏れが発生する。
【0117】
本明細書に記載するように、本明細書に記載されている1つ以上の結晶性化合物または組成物は、血管または弁の石灰化疾患を単独で、またはアテローム性疾患、腎疾患、腎骨異栄養症または副甲状腺疾患と併せて抑制するために使用することができる。
【0118】
本明細書に記載された式Iの1つ以上の化合物を含む医薬組成物は、血管または弁膜の石灰化疾患を単独で、またはアテローム性疾患、腎疾患、腎骨異栄養症または副甲状腺疾患と併せて阻害するために使用することができる。
【0119】
本明細書に記載するように、本明細書に記載された1つ以上の結晶性化合物または組成物は、全身または局所的な投与、またはプロテーゼ材料もしくは他のインプラントへの直接的な組み込み(例えば、インプラントまたはプロテーゼの全部または一部を被覆または構成するポリマーとの混和)によって、プロテーゼ血管または弁膜材料の石灰化を阻害するために使用することができる。
【0120】
本明細書に記載するように、本明細書に記載された1つ以上の結晶性化合物または組成物を含む医薬組成物は、全身または局所的な投与、またはプロテーゼ材料もしくは他のインプラントへの直接的な組み込み(例えば、インプラントまたはプロテーゼの全てまたは一部を被覆または構成するポリマーとの混和)によって、プロテーゼ血管または弁膜材料の石灰化を抑制するために使用することができる。
【0121】
いくつかの例において、骨折後の骨折治癒を遅らせること、または不適応な骨形成による機能障害を防ぐために特定の場所の骨折治癒を意図的に阻害することが望まれる。例えば、骨折が発生し、医学的または実用的な理由で手術をすぐに行うことができない場合、決定的な手術または操作を行うことができるまで、本明細書に記載するように、本明細書に記載されている1つまたは複数の結晶性化合物または組成物を使用して、骨折治癒を一時的に「中断」することができる。これにより、例えば、骨片の正しい配置を確保するために、その後の意図的な再骨折の必要性を防ぐことができる。本明細書に記載の1つまたは複数の結晶性化合物または組成物の投与を停止すると、治療期間が比較的短い場合には、通常の骨折治癒プロセスが生じることが予想される。他の症例では、骨折が直接関節に影響を与える場合など、新たな骨成長の量が機能を損なう可能性がある。これらの場合、BMP活性の全体的または局所的な阻害(局所的なインプラントまたはマトリックスからの拡散を介した本明細書に記載のBMPアンタゴニストの全身的または局所的な送達による)を使用して、骨折治癒を阻害するか、または重要な領域における骨折カルスを防止することができる。
【0122】
F.BMPアンタゴニストを用いた免疫系の調節
BMPは、炎症や免疫反応を抑制することが報告されており(チェ(Choi)他、Nat.Immunol.、7:1057-1065、2006年;ケルステン(Kersten)他、BMC Immunol.、6:9、2005年)、それは、感染症(ウイルス性、細菌性、真菌性、寄生虫性、結核性など)と戦う個体の能力を損なう可能性がある。ALK2を介したBMPシグナル伝達の阻害剤である、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物を使用して、炎症反応または免疫反応を増強し、個体が感染症をより迅速に排除できるようにすることができる。本明細書に記載されている1つ以上の結晶性化合物または組成物は、炎症反応または免疫反応を増強し、個体が感染症をより迅速に排除することができるようにするために使用することができる。
【0123】
リンパ球および他の免疫細胞は、その細胞表面にBMP受容体を発現しており、BMPが様々な体液性および細胞性の免疫学的コンパートメントの発達および成熟を制御し、成熟した生物における体液性および細胞性の免疫応答を制御するという証拠が増えつつある。免疫細胞に対するBMPシグナルの影響は、免疫学的に重要な多数のサイトカインの影響で一般的に知られているように、状況に固有である可能性が高く、したがって、特定のリンパ球集団の発達または機能を増強または減少させるかどうかを経験的に決定する必要がある。本明細書に記載されているような化合物を用いたBMP拮抗作用は、治療のために細胞性免疫、自然免疫、体液性免疫のコンパートメントの発達を意図的に偏らせるための効果的な戦略、あるいは成熟した免疫系における免疫反応を治療的に逸脱させるための戦略となりうる。これらの戦略は、細胞性免疫、自然免疫、または体液性免疫の先天的な障害を対象としたり、免疫反応が不適切に弱い障害(例えば、他の手段で免疫化が困難または効果がない場合に、抗原感作の成功を促進するためのアジュバントとして)を対象としたり、または免疫反応が過剰または不適切な障害(例えば、自己免疫および自己感作)を対象としたりする。また、本明細書に記載のBMPアンタゴニストは、一部の文脈において、免疫寛容の意図的な誘導にも有効であると考えられる(すなわち、同種移植や自己免疫において)。
【0124】
G.皮膚疾患の治療
培養ケラチノサイトの増殖-インビトロにおいて、BMPはケラチノサイトの増殖を抑制し、分化を促進する(ボッチカレブ(Botchkarev)他、Differentiation、72:512-526、2004年の総説)。皮膚移植(例えば、火傷の後)を必要とする患者において、皮膚移植片は培養されたケラチノサイトから作られる。ケラチノサイトは、他の動物(異種移植片)に由来することができるが、これらは一般的に免疫系によって拒絶されるため、一時的なものに過ぎない。ケラチノサイトは患者自身に由来することができ、実験室でシート状の細胞に成長させることができる(培養上皮自家移植片)。患者自身が自分の体に由来するケラチノサイトを拒絶することはまずないであろう。ケラチノサイトの培養物に本明細書に記載のBMPアンタゴニストを添加することで、ケラチノサイトの増殖を促進し、患者がより早く移植を受けられるようにすることができる。
【0125】
上皮化の改善-BMP6は皮膚の損傷にて高発現し、高レベルのBMP6が異なる病因のヒト慢性創傷で検出される(カイザー(Kaiser)他、J.Invest.Dermatol.、111:1145-1152、1998年)。BMP6を皮膚に過剰発現させたマウスでは、皮膚の傷の再上皮化と治癒が著しく遅れた(カイザー(Kaiser)他、J.Invest.Dermatol.、111:1145-1152、1998年)。上皮化の改善は、瘢痕形成を減少させることができる。本明細書に記載された1つ以上の結晶性化合物または組成物の局所的または全身的な投与は、例えば、褥瘡(床ずれ)または非治癒もしくは治癒不良の皮膚潰瘍(例えば、末梢血管疾患、糖尿病、静脈無力症の患者)の治療において、皮膚創傷の上皮化を増強するために本明細書において企図されている。化合物はまた、瘢痕形成を減少させることも期待される。
【0126】
毛髪の成長促進-頭皮の毛包の成長は、成長期(anagen)、退行期(catagen)、休止期(telogen)の3つの段階を経て周期的に行われる。最近の証拠では、BMPシグナルが休止期から成長期への移行を遅らせることが示されている(プリカス(Plikus)他、Nature、451:340-344、2008年)。本明細書に記載されている1つ以上の結晶性化合物または組成物を用いてBMPシグナル伝達を阻害すると、休止期を短縮し、成長期の毛包の数を増加させることができる。本明細書に記載された1つ以上の結晶性化合物または組成物は、毛包が不足している状況、または毛髪が成長するよりも頻繁に失われている状況を治療するために使用することができる。これらの状況には、アンドロゲン性脱毛症(男性型脱毛症)、壮年性脱毛症、および休止期脱毛症が含まれる。
【0127】
尋常性乾癬の治療-尋常性乾癬は、皮膚の外傷とそれに続く修復および炎症(ケブナー現象)の後に発生する可能性のある炎症性の皮膚疾患である。マウスの皮膚でBMP6を過剰発現させると、乾癬患者に見られるものと同様の皮膚病変が生じることから、BMPは乾癬の原因となる修復・炎症メカニズムに関与していると考えられている(ブレッシング(Blessing)他、J.Cell.Biol.、135:227-239、1996年)。本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物を局所的または全身的に投与して、確立した乾癬を治療したり、皮膚損傷後の乾癬の発症を予防したりすることができる。
【0128】
角膜瘢痕の治療-BMP6の発現は、結膜瘢痕と関連する(Andreevら、Exp.Eye Res.83:1162-1170、2006年)。本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物は、角膜瘢痕およびその結果としての失明を予防または治療するために使用することができる。
【0129】
H.全身性高血圧症の治療
BMP4を注入すると、マウスに全身性高血圧が誘発される(ミリヤラ(Miriyala)他、Circulation、113:2818-2825、2006年)。血管平滑筋細胞は様々なBMPリガンドを発現している。BMPは電圧ゲート式カリウムチャネルの発現を増加させ、それによって血管平滑筋の収縮を増加させる(ファントツィ(Fantozzi)他、Am.J.Physiol.Lung Cell.Mol.Physiol.、291:L993-1004、2006年)。したがって、本明細書に記載の1つまたは複数の結晶性化合物または組成物は、本明細書において、BMPシグナル伝達を阻害することが企図されており、それは血圧を低下させるために使用できる。高血圧患者における血圧の持続的な低下は、心筋梗塞、うっ血性心不全、脳血管障害、および腎不全を予防することが期待される。本明細書に記載されているような治療は、局所的な送達を介して(例えば、エアロゾルを介して)、肺高血圧症のように、特定の血管床における高血圧を標的とするために使用することができる。
【0130】
肺高血圧症の治療
BMPシグナル伝達は、肺高血圧症の発症に寄与している。例えば、BMP4レベルを低下させたマウスは、低濃度の酸素を長時間呼吸することで誘発される肺高血圧症や肺血管リモデリングから保護される(フランク(Frank)他、Circ.Res.、97:496-504、2005年)。さらに、II型BMP受容体をコードする遺伝子(BMPRII)の変異は、散発性および家族性肺動脈性肺高血圧症の患者に頻繁に見られる。BMPシグナルの減少が肺高血圧症を引き起こすのではないかと予測されるかもしれない。しかしながら、ユ(Yu)および共同研究者(ユ他、J.Biol.Chem.、280:24443-24450、2008年)は、BMPRIIの欠損は、逆説的にBMPリガンドのサブセットによるBMPシグナル伝達を増加させることを報告しており、したがって、BMPシグナル伝達の増加は、実際に肺高血圧症の発症に寄与する可能性があるとしている。
【0131】
本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物は、肺動脈性高血圧症のリスクがある患者(例えば、BMPRII変異を有する患者)における肺動脈性高血圧症の発症を予防するため、または特発性または後天性肺動脈性高血圧症の患者を治療するために使用することができる。本明細書に記載されているように治療された個体における肺高血圧症の減少は、息切れ、右心室肥大、および右心室不全の減少をもたらすことが期待される。
【0132】
本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物を含む医薬組成物は、肺動脈性高血圧症のリスクがある患者(例えば、BMPRII変異を有する患者)における肺動脈性高血圧症の発症を予防するため、または特発性もしくは後天性肺動脈性高血圧症の患者を治療するために使用することができる。本明細書に記載されているように治療された個体における肺高血圧症の減少は、息切れ、右心室肥大、および右心室不全の減少をもたらすことが期待される。
【0133】
心室肥大症の治療
高血圧ラットの心室肥大では、BMP-10レベルが上昇しており、このBMPリガンドは新生児ラット心室筋細胞の培養で肥大を誘導する(ナカノ(Nakano)他、Am.J.Physiol.Heart.Circ.Physiol.、293:H3396-3403、2007年)。BMP-10シグナル伝達の阻害は、心室肥大の予防/治療に用いることができる。心室肥大は、拡張機能障害によるうっ血性心不全を引き起こす可能性がある。本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物を含む医薬組成物は、うっ血性心不全を予防/治療することができる。
【0134】
神経学的障害の治療
脊髄損傷および神経障害の治療-BMPは、脊髄損傷後の成人脊髄における軸索再生の強力な阻害剤である(ミツウラ(Matsuura)他、J.Neurochem.、2008年)。BMPの発現は、脊髄挫傷後の損傷部位周辺のオリゴデンドロサイトやアストロサイトで上昇していることが報告されている。BMP阻害剤であるノギンを髄腔内に投与すると、脊髄挫傷後の運動能力が向上し、皮質脊髄路が有意に再生した。
【0135】
RGMaは、脊髄損傷後の軸索の成長と回復、およびシナプスの再形成を阻害するが、その効果はRGMaに対する抗体で阻害される(ハタ(Hata)他、J.Cell.Biol.、173:47-58、2006年;キョート(Kyoto)他、Brain Res.、1186:74-86、2007年)。RGMaはBMPシグナル伝達を増強する(バビット(Babitt)他、J.Biol.Chem.、280:29820-29827、2005年)ことから、BMPシグナル伝達が軸索の成長と回復を妨げる原因となっている可能性がある。
【0136】
これらの考察に基づき、本明細書に記載された1つ以上の結晶性化合物または組成物による治療は、脊髄損傷後の軸索成長および回復を増加させることが期待される。本明細書に記載の治療は、糖尿病を含む広範な障害に関連する神経障害を予防/治療することが期待されるであろう。さらに、本明細書に記載されている1つ以上の結晶性化合物または組成物を用いた治療は、神経障害に関連する痛みと運動機能障害の両方を治療するために使用することができる。
【0137】
中枢神経系の炎症に関連する神経障害の治療-BMP4および5は、多発性硬化症およびクロイツフェルト-ヤコブ病の病変において検出されている(ダイニンガー(Deininger)他、Acta Neuropathol.、90:76-79、1995年)。また、BMPは、多発性硬化症の動物モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎のマウスでも検出されている(アラ(Ara)他、J.Neurosci.Res.、86:125-135、2008年)。本明細書に記載の治療は、多発性硬化症だけでなく、中枢神経系の炎症、またはBMPシグナル伝達によって媒介される不適応な傷害修復プロセスに関連する他の神経疾患の予防または治療に使用することができる。
【0138】
認知症の治療-BMPシグナルの阻害剤は、マウスの神経前駆細胞におけるニューロン新生を促進することができる(コイケ(Koike)他、J.Biol.Chem.、282:15843-15850、2007年)。本明細書に記載されている1つ以上の結晶性化合物または組成物を本明細書に記載されているように処理することは、脳血管障害およびアルツハイマー病、ならびに他の認知症を含む、ニューロンの加速度的な損失に関連する様々な神経学的障害において、ニューロン新生を増強するために使用することができる。
【0139】
記憶と学習の変化-BMPシグナル伝達は、記憶および認知行動に関わる神経細胞の発達と維持に重要な役割を果たしている。例えば、BMPアンタゴニストであるコージンを欠損させたマウスでは、空間学習能力は向上するが、新規環境での探索活動が低下する(サン(Sun)他、J.Neurosci.、27:7740-7750、2007年)。本明細書に記載されている1つ以上の結晶性化合物または組成物を本明細書に記載されているように処理することは、記憶または学習を変更または防止するために使用することができ、例えば、麻酔のためにまたは苦痛を引き起こす可能性が高い他の状況で記憶喪失を誘導すること、または心的外傷後ストレス障害を防止することができる。
【0140】
アテローム性動脈硬化症の治療
BMPリガンドは、血管壁において炎症を起こし、動脈硬化を促進することが多くの証拠によって示されている(チャン(Chang)他、Circulation、116:1258-1266、2007年)。BMP4の発現をノックダウンすると炎症シグナルが減少し、BMPアンタゴニスト(例えば、フォリスタチンやノギン)をノックダウンすると炎症シグナルが増加した。本明細書に記載されているように、本明細書に記載された1つまたは複数の結晶性化合物または組成物での治療は、アテローム性動脈硬化症、自己免疫疾患、および他の血管炎に関連する血管炎症を減少させるために使用することができる。アテローム性動脈硬化症を減少させることにより、本明細書に記載の治療は、急性冠症候群(狭心症および心臓発作)、一過性虚血発作、脳卒中、末梢血管疾患、および他の血管虚血性事象を減少させるであろう。さらに、アテローム性動脈硬化症が動脈瘤形成の病因に寄与する限りにおいて、本明細書に記載の化合物を使用して動脈瘤形成の進行を遅らせ、動脈瘤構造の発生頻度や血管手術の必要性を減少させることができる。
【0141】
マトリックスリモデリングに影響を与えるBMPおよびBMP誘導遺伝子産物の多くは、初期のアテローム性動脈硬化病変で過剰に発現しているため、BMPシグナルはプラークの形成および進行を促進する可能性がある(ボストロム(Bostrom)他、J Clin Invest.、91:1800-1809、1993年;ドーア(Dhore)他、Arterioscler Thromb Vasc Biol.、21:1998-2003、2001年)。このように、動脈硬化性プラークにおけるBMPシグナル伝達活性は、不適応な損傷修復の一形態を示すこともあれば、炎症の一因となることもある。また、BMPシグナルは、時間の経過とともに、血管の常在または新生細胞集団を骨芽細胞様細胞に分化させ、血管の内膜および内側の石灰化を引き起こす可能性がある(ルスカ(Hruska)他、Circ Res.、97:105-112、2005年)。石灰化した血管疾患、すなわち動脈硬化症は、血管の伸展性の低下、心血管イベントおよび死亡率のリスクの増加と関連しており、基礎となるアテローム性動脈硬化疾患と関連する場合には特に問題となる(ボストロム(Bostrom)他、Crit Rev Eukaryot Gene Expr.、10:151-158、2000年)。しかしながら、動脈硬化性病変および石灰化病変の両方とも、その進行に寄与するシグナルを遮断できれば、退縮しやすい可能性がある(サノ(Sano)他、Circulation、103:2955-2960、2001年)。特定の態様において、本明細書に記載された1つ以上の結晶性化合物または組成物による治療は、インビボでのアテローム性プラークおよび血管石灰化の進行を制限するために使用することができる。
【0142】
シェーグレン症候群の治療
シェーグレン症候群は、免疫細胞が涙や唾液を分泌する腺を攻撃して破壊する自己免疫疾患である。シェーグレン症候群はリウマチ性疾患と考えられており、関節、筋肉、皮膚、その他の臓器に炎症を引き起こす。この疾患の特徴的な症状は、ドライマウスとドライアイである。シェーグレン症候群は、皮膚、鼻、膣の乾燥も引き起こす可能性があり、腎臓、血管、肺、肝臓、膵臓、脳などの体の他の器官に影響を及ぼすこともある。シェーグレン症候群は、米国で100万人~400万人が罹患しており、現在、米国で2番目に多い自己免疫性リウマチ性疾患である。シェーグレン症候群の患者の大半は、診断時に40歳以上で、女性の方が9倍も発症しやすいと言われている。シェーグレン症候群は、原発性リウマチ性疾患として、または全身性エリテマトーデス(「ループス」)、強皮症、胆汁性肝硬変または関節リウマチなどの他のリウマチ性疾患と関連する二次性疾患として起こりうる。
【0143】
シェーグレン症候群は、安定した症状を維持したり、悪化したり、寛解したりしながら、身体の重要な器官にダメージを与える可能性がある。患者の中には、ドライアイや口内炎などの軽度の症状しか出ない人もいれば、健康な状態が続いた後に重度の病気になる人もいる。多くの患者は対症療法で問題を解決することができるが、目がかすむ、常に目の不快感がある、口内炎が再発する、耳下腺が腫れる、声が枯れる、飲み込みや食事が困難になるなどの症状に悩まされる患者もいる。また、衰弱した疲労感や関節痛は、生活の質を著しく損なう可能性がある。
【0144】
現在、シェーグレン症候群の治療法は確立されておらず、腺の分泌を回復させるための特別な治療法も存在していない。治療は一般的に対症療法と支持療法で、目や口の乾きの症状を和らげる水分補給療法などが含まれる。筋骨格の症状には、非ステロイド性抗炎症薬が用いられる。重度の合併症がある個人には、多くの場合、コルチコステロイドや免疫抑制剤が処方されることがある。これらの薬剤は重大な副作用を引き起こす可能性がある。さらに、この疾患の診断は、現在のところ、客観的および主観的な乾燥、自己抗体、単核浸潤などの適応症の組み合わせに基づいており、主にシェーグレン症候群の診断に到達するためには、他の既知の疾患を排除するプロセスとなっている。したがって、シェーグレン症候群の患者を正確に診断するだけでなく、この疾患を治療するための有効な治療標的を特定することが求められている。
【0145】
骨形成タンパク質6(BMP6)は、成長因子であるTGF-βスーパーファミリーの一員である。BMP6の発現は、平滑筋細胞、成長板軟骨細胞、気管支上皮、角膜、表皮、唾液腺、神経系の細胞など、いくつかの異なる哺乳類の組織や細胞タイプで検出されている(ブレッシング(Blessing)他、J Cell Biol、135(1):227-239、1996年)。インビトロでは、BMP6は、細胞分裂を抑制し、末端上皮の分化を促進し、軟骨内骨形成、骨芽細胞の分化および神経細胞の成熟を誘導することが示されている(ハイキンハイモ(Heikinheimo)他、Cancer Res、59:5815-5821、1999年)。
【0146】
DNAメチル化は、真核生物のゲノムの主要な修飾であり、哺乳類の発生に不可欠な役割を果たしている。ヒトタンパク質MECP2、MBD1、MBD2、MBD3およびMBD4は、それぞれメチルCpG結合ドメイン(MBD)を持つ核内タンパク質ファミリーである。MBD3を除いて、これらの各タンパク質はメチル化されたDNAに特異的に結合することができる。また、MECP2、MBD1、MBD2は、メチル化された遺伝子のプロモーターからの転写を抑制することができる。他のMBDファミリーメンバーとは対照的に、MECP2はX連鎖性で、Xの不活性化を受ける。
【0147】
Xの不活性化は哺乳類の雌における初期発生過程であり、X染色体対の一方を転写的に不活性化し、それにより雄と雌の間の用量等価性を提供する。この過程は、X染色体のX不活性化中心(XIC)と呼ばれる領域など、いくつかの因子によって制御されている。XIST遺伝子(X(不活性)特異的転写産物(非タンパク質コーディング))は不活性なX染色体のXICのみから発現する。転写産物はスプライシングされるが、タンパク質をコードしていない。転写産物は核内に残り、不活性なX染色体を覆う。
【0148】
また、本明細書では、BMP6の発現が増加している対象を選択し、BMP6の発現または活性を阻害する治療有効量の薬剤を対象に投与することにより、シェーグレン症候群に罹患した対象を治療する方法であって、薬剤が本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物である方法が提供される。また、本明細書では、治療上有効な量の本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物を対象に投与し、それによって対象を治療することを含む、シェーグレン症候群に罹患した対象を治療する方法が提供される。
【0149】
男性のシェーグレン症候群患者は、男性では典型的に発現しない非コードRNAであるXISTを発現する。また、男性のシェーグレン症候群患者は、DNAメチル化に関与する他のタンパク質と同様に、MECP2をダウンレギュレートするという知見も記載されている。いくつかの実施形態において、生物学的試料は、小唾液腺などの唾液腺である。
【0150】
男性シェーグレン症候群患者の一部では、Y染色体遺伝子の発現がダウンレギュレートされており、RNAプロセシングおよびウイルス複製を調節するリボソームタンパク質、ならびにDNAメチル化を調節するタンパクの発現もダウンレギュレートされている。これらの所見はシェーグレン症候群の診断と治療に利用できる追加のマーカを提供する。
【0151】
さらに、XISTの発現が増加している男性の対象を選択し、XISTの発現を阻害する薬剤の治療有効量を同対象に投与することにより、シェーグレン症候群の男性の対象を治療する方法を提供する。さらに、XISTの発現が増加している男性の対象を選択し、治療有効量の本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物を対象に投与することにより、シェーグレン症候群の男性対象を治療する方法も提供される。さらに、MECP2の発現が低下している男性の対象を選択し、治療有効量の本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物を対象に投与することにより、シェーグレン症候群の男性対象を治療する方法も提供される。また、治療上有効な量の本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物を男性の対象に投与し、それによって男性の対象を治療することを含む、シェーグレン症候群に罹患した男性の対象を治療する方法が提供される。
【0152】
シェーグレン症候群の患者は、健常対照者と比較して、唾液腺におけるBMP6の発現が統計的に有意に増加していることを示す。唾液腺におけるBMP6の過剰発現は、唾液腺全体の電位を上昇させる。本明細書では、BMP6シグナル伝達の阻害剤を投与すると、唾液腺における唾液流量が増加するという知見が開示されており、阻害剤は、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物である。
【0153】
本明細書では、対象の唾液流量を増加させる方法が提供される。いくつかの実施形態において、方法は、対象にBMP6シグナル伝達の阻害剤を投与することを含み、阻害剤は、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物である。他の実施形態において、方法は、対照と比較して対象の唾液腺におけるBMP6の発現が増加している対象を選択することと、対象にBMP6シグナル伝達の阻害剤を投与することと、を含み、阻害剤は、本明細書に記載の1つまたは複数の結晶性化合物または組成物である。場合によっては、対象はシェーグレン症候群に罹患している。
【0154】
いくつかの実施形態において、BMP6の発現増加を示す唾液腺は、小唇唾液腺、耳下腺、または顎下腺である。
いくつかの実施形態において、BMP6の阻害剤は、唾液腺に局所的に投与され、同阻害剤は、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物である。
【0155】
いくつかの実施形態において、BMP6シグナル伝達の阻害剤は、BMPI型受容体ALK2および/またはBMPI型受容体ALK3を阻害し、阻害剤は、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物である。
【0156】
いくつかの実施形態において、生物学的試料は、唾液腺組織(例えば、唾液腺の生検によって得られた組織)などの組織試料である。いくつかの例において、唾液腺は、小唇唾液腺、耳下腺、または顎下腺である。他の実施形態において、生物学的試料は、唾液、涙、血液または血清試料などの体液試料である。
【0157】
いくつかの実施形態では、開示された方法は、シェーグレン症候群と診断された対象に適切な治療を提供することをさらに含む。いくつかの例では、適切な治療は、唾液分泌を促進する薬剤(例えば、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物)を投与すること、コルチコステロイドを投与すること、免疫抑制剤を投与すること、非ステロイド性抗炎症剤を投与すること、BMP6の発現または活性を阻害する薬剤を投与すること、BMPシグナル伝達を阻害する薬剤(例えば、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物)を投与すること、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0158】
また、唾液腺におけるBMP6の発現が増加している対象を選択し、BMP6の発現または活性を阻害する治療有効量の薬剤を対象に投与することにより、対象の唾液流量を増加させる方法を提供する。いくつかの例において、薬剤は、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物である。いくつかの実施形態において、唾液腺は、小唇唾液腺、耳下腺、または顎下腺である。
【0159】
いくつかの実施形態において、BMPシグナル伝達を阻害する薬剤は、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物である。
いくつかの実施形態において、BMP6の発現もしくは活性を阻害する、またはBMPシグナル伝達を阻害する薬剤は、唾液腺に局所的に投与され、その薬剤は、本明細書に記載された1つ以上の結晶性化合物または組成物である。他の実施形態において、BMP6の発現もしくは活性を阻害する、またはBMPシグナル伝達を阻害する薬剤は、全身に投与され、その薬剤は、本明細書に記載の1つまたは複数の結晶性化合物または組成物である。
【0160】
いくつかの実施形態において、方法は、シェーグレン症候群と診断された対象に適切な治療法を提供することをさらに含む。いくつかの例では、適切な治療法は、唾液分泌を促進する薬剤(例えば、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物)を投与すること、コルチコステロイドを投与すること、免疫抑制剤を投与すること、非ステロイド性抗炎症剤を投与すること、BMP6の発現または活性を阻害する薬剤を投与すること、BMPシグナル伝達を阻害する薬剤(例えば、式Iの1つ以上の化合物)を投与すること、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0161】
いくつかの実施形態では、開示された方法は、シェーグレン症候群と診断された男性の対象に適切な治療を提供することをさらに含む。いくつかの例において、適切な治療は、唾液分泌を促進する薬剤(例えば、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物)を投与すること、コルチコステロイドを投与すること、免疫抑制剤を投与すること、非ステロイド性抗炎症剤を投与すること、BMP6の発現または活性を阻害する薬剤を投与すること、BMPシグナル伝達を阻害する薬剤(例えば、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物)を投与すること、XISTの発現を阻害する薬剤を投与すること、MECP2をコードする核酸分子を投与すること、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0162】
さらに、XISTの発現が増加した男性の対象および/またはMECP2の発現が減少した男性の対象を選択し、(i)XISTの発現を阻害する治療有効量の薬剤を対象に投与するか、(ii)MECP2をコードする治療有効量の核酸分子を対象に投与するか、または(i)および(ii)の両方を行うことにより、シェーグレン症候群の男性の対象を治療する方法が提供される。
【0163】
さらに、XISTの発現が増加した男性の対象および/またはMECP2の発現が減少した男性の対象を選択し、(i)XISTの発現を阻害する治療有効量の薬剤を対象に投与するか、(ii)MECP2をコードする治療有効量の核酸分子を対象に投与するか、または(i)および(ii)の両方を行うことにより、男性の対象の唾液流量を増加させる方法も提供される。
【0164】
例示的なXIST阻害剤には、例えば、XIST核酸分子と特異的にハイブリダイズするアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはsiRNA分子が含まれる。XISTの核酸配列は、GenBank(登録商標)アクセッション番号NR-001564に寄託されているヒトXIST RNA配列のように、一般に入手可能である。XISTを標的とする適切なアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはsiRNAは、公開されているXIST配列を用いて当業者が設計することができる。XISTアンチセンス転写物Tsixは、開示された方法で使用できる既知のXISTの阻害剤である(センナー(Senner)およびブロックドルフ(Brockdorff)、Curr Opin Genet Dev、19(2):122-126、2009年;スタブロポウロス(Stavropoulos)他、Proc Natl Acad Sci USA、98(18):10232-10237、2001年)。
【0165】
本明細書に記載されているように、男性SS患者では、XISTの発現、MECP2の発現低下、Y染色体遺伝子発現の明らかな抑制など、性染色体遺伝子の発現に著しい変化が確認された。このような遺伝子発現パターンは、「自己免疫性Xist Y染色体不活性化症候群(AXYIS)」と呼ばれ、関節リウマチ、2型糖尿病、全身性硬化症、リンパ腫など、pSSに関連する自己免疫疾患と診断された男性の患部組織でも確認された。
【0166】
特に、本明細書に記載されているのは、男性のシェーグレン症候群患者のサブセットにおいて、Y染色体遺伝子の発現がダウンレギュレートされており(例えば、遺伝子RPS4Y1、RPS4Y2、JAR1D1D、CYORF15BおよびCYORF14の発現がダウンレギュレートされている)、RNAプロセッシングおよびウイルス複製を制御するリボソームタンパク質(例えば、RPS4Y1、RPS4Y2、RPS4Xなど)、DNAのメチル化を制御するタンパク質(MDB6、NASPなど)の発現がダウンレギュレートされるという知見である。さらに、シェーグレン症候群の男性患者のX染色体のオプシン(OPN1LW、OPN1MW、OPN1MW2)およびtex28領域には、かなりの数の重複や欠失が確認された。これらの知見は、男性のシェーグレン症候群の診断および治療に利用できる追加のマーカを提供するものである。
【0167】
本明細書では、治療を必要とする対象(唾液腺においてBMP6の発現が増加している対象など)においてシェーグレン症候群を治療する方法であって、BMP6を阻害する薬剤、例えば、BMP6の発現(mRNAまたはタンパク質発現)または少なくとも1つの生物学的活性を阻害する化合物を対象に投与することによる方法であって、薬剤または化合物は、本明細書に記載の1つまたは複数の結晶性化合物または組成物である方法を提供する。また、薬剤または化合物は、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物などの、BMPシグナル伝達を阻害する薬剤または化合物であってもよい。
【0168】
様々な実施形態において、本発明は、シェーグレン症候群の対象者を治療する方法、または対象の唾液流量を増加させる方法を提供し、同方法は、対照と比較して対象の唾液腺におけるBMP6の発現が増加している対象を選択し、BMP6の発現もしくは活性を阻害する薬剤、またはBMPシグナル伝達を阻害する薬剤の治療有効量を対象に投与し、それによって対象のシェーグレン症候群を治療するか、または対象の唾液流量を増加させることを含み、薬剤は本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物である。いくつかの実施形態において、唾液腺は、小唇唾液腺、耳下腺、または顎下腺である。いくつかの実施形態において、BMP6の発現または活性を阻害する薬剤は、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物である。
【0169】
びまん性内因性橋グリオーマ(DIPG)の治療
びまん性内因性橋グリオーマ(DIPG)(びまん性内因性橋グリオーマとも呼ばれる)は、脳幹の橋(pons)(中央)に位置する腫瘍である。脳幹とは、大脳と脊髄をつなぐ、脳の一番下の部分である。びまん性内因性橋グリオーマは、進行性骨化性線維異形成症と同じACVR1の機能変異の獲得と関連している。
【0170】
様々な実施形態において、本発明は、びまん性内因性橋グリオーマ(DIPG)を有する対象を治療する方法であって、びまん性内因性橋グリオーマ(DIPG)を有する対象を選択することと、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物の治療有効量を対象に投与することと、を含み、それによって、びまん性内因性橋グリオーマ(DIPG)を有する対象を治療する方法を提供する。
【0171】
インビトロおよびインビボにおける胚性幹細胞および成体幹細胞を含む前駆細胞の増殖、生着および分化
BMPシグナルは、前駆細胞および幹細胞集団の分化および再生を調節するために重要であり、一部の状況および組織では、系統への分化を阻止する(一方、他の状況では分化を誘導する)。本明細書に記載されている1つ以上の結晶性化合物または組成物を本明細書に記載されているように処理することで、(i)インビボまたはインビトロで幹細胞または多能性細胞集団の多能性状態を維持する;(ii)インビボまたはインビトロで幹細胞または多能性細胞集団を増殖させる;(iii)インビボまたはインビトロで幹細胞または多能性細胞集団の分化を誘導する;(iv)単独で、あるいは他の治療法と組み合わせて、あるいは他の治療法と順番に、インビボまたはインビトロで幹細胞や多能性細胞の分化を操作・誘導する;そして、(v)分化した細胞集団から多能性細胞や前駆細胞集団への脱分化を調節する、ために使用することができる。
【0172】
多くの幹細胞や前駆細胞は、それらが増殖するか、特定の組織系列に分化するか、特定の組織に定着・統合するか、あるいはプログラムされた細胞死を迎えるかを決定するために、BMPシグナルを必要とする。多くの場合、BMPシグナルは、成長因子(bFGF、PDGF、VEGF、HBEGF、PIGFなど)、ソニックヘッジホッグ(SHH)、ノッチ、Wntシグナル伝達経路によって提供されるシグナルと相互作用して、これらの変化をもたらす(オキタ(Okita)他、Curr.Stem Cell Res.、Stem Cell Res.Ther.、1:103-111、2006年)。本明細書に記載されている1つ以上の結晶性化合物または組成物で本明細書に記載されているように処理することで、幹細胞(例えば、胚性幹細胞)または組織前駆細胞の分化を、治療的適用のために特定の系統に向けて誘導することができる(パーク(Park)他、Development、131:2749-2762、2004年;パシュムフォロウシュ(Pashmforoush)他、Cell、117:373-386、2004年)。あるいは、特定の細胞集団について、本明細書に記載のBMP阻害剤は、臨床応用に有効であるのに十分な数の細胞を産生するために、分化を防止し、増殖を促進するのに有効であり得る。本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物、ならびに他のBMPアンタゴニストまたは成長因子またはシグナル伝達分子の正確な用量および/または組み合わせは、各細胞および組織タイプに非常に特異的であり得る。
【0173】
例えば、特定の胚性幹細胞株では、特定の培養した胚性幹細胞株の分化を阻害して多能性を維持するために、白血病抑制因子(LIF)との共培養が必要である(オキタ(Okita)他、Curr.Stem Cell Res.、Stem Cell Res.Ther.、1:103-111、2006年)。本明細書に記載されている1つ以上の結晶性化合物または組成物を本明細書に記載されているように使用することは、LIFの非存在下で多能性を維持するために使用することができる。他のES細胞株は、多能性を維持するために、特定のフィーダー細胞層との共培養を必要とする。フィーダー細胞層、またはそのDNAもしくはタンパク質成分の汚染が懸念され、ヒト治療のための細胞の使用が複雑化または妨げられる場合、本明細書に記載された1つ以上の結晶性化合物または組成物を単独で、または他の薬剤と組み合わせて使用することは、多能性の維持に効果的である。
【0174】
別の例において、いくつかの状況では、培養中のLIFの停止の直前にノギンなどのタンパク質でBMPシグナルを拮抗させると、心筋細胞系への分化を誘導することができる(ユアサ(Yuasa)他、Nat.Biotechnol.、23:607-611、2005年)。本明細書に記載されている1つ以上の結晶性化合物または組成物などの薬理学的BMPアンタゴニストを本明細書に記載されているように使用すると、より強力ではないとしても同様の効果を得ることができる。そのような分化した細胞は、治療的に罹患した心筋に導入することができる。あるいは、そのような治療は、実際には、すでに罹患した心筋に帰巣している生着した前駆細胞に対してより効果的である可能性がある。ノギンのようなBMPのタンパク質アンタゴニストを全身に投与することは、非常に高価であり、投与方法も複雑である。本明細書中に記載されるBMPアンタゴニストの送達は、全身的にまたは局所的に、そのような前駆細胞のインサイチュで機能する心筋細胞への分化にバイアスをかけ得る。
【0175】
化合物の哺乳類への応用
本明細書に記載されるように、本明細書に記載されている1つ以上の結晶性化合物または組成物を含む医薬組成物は、当業者によって適切であると判断される投与量および投与レジメンを使用して、対象(例えば、ヒト、家庭用ペット、家畜、または他の動物)を治療するために使用することができ、これらのパラメータは、例えば、治療される障害の種類および程度、対象の全体的な健康状態、化合物の治療指数、および投与経路に応じて変化し得る。標準的な臨床試験を使用して、本明細書に記載されるように、本明細書に記載されている1つ以上の結晶性化合物または組成物を含む任意の特定の医薬組成物の投与量および投与頻度を最適化することができる。使用することができる例示的な投与経路には、経口、非経口、静脈内、動脈内、皮下、筋肉内、局所、頭蓋内、眼窩内、眼球内、脳室内、嚢内、脊髄内、槽内、腹腔内、鼻腔内、エアロゾル、または坐剤による投与、が含まれる。本明細書に記載されている方法および組成物と共に使用することができる製剤を製造するための方法は、当該技術分野でよく知られており、例えば、レミントン(Remington):The Science and Practice of Pharmacy(第20版、編、A.R.ゲナロ(Gennaro))、Lippincott Williams & Wilkins、2000、に記載されている。
【0176】
昆虫におけるBMPシグナル伝達の阻害
本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物は、節足動物のBMP受容体対脊索動物のBMP受容体に対する活性、およびおそらく選択性さえも有し得る。節足動物の幼虫または卵においてBMPシグナル伝達を阻害すると、深刻な発生異常を引き起こす可能性が高く、おそらく、例えば、この経路が阻害された場合にゼブラフィッシュおよびショウジョウバエで観察されるのと同じ背側化を介して、繁殖する能力が損なわれると考えられる。節足動物のBMP受容体とヒトのBMP受容体との間に非常に強い選択性を持つBMPアンタゴニストは、現在の戦略よりも明らかに毒性が低く、環境に優しい殺虫剤や害虫駆除剤として使用することができる。
【0177】
エクスビボでの応用
治療方法において患者に投与されることに加えて、本明細書に記載されるように、本明細書に記載された1つ以上の結晶性化合物または組成物は、細胞および組織、ならびに患者に移植される構造材料(上記を参照)をエクスビボで処理するために使用することもできる。例えば、本明細書に記載される1つ以上の結晶性化合物または組成物は、例えば、移植において使用され得る外植された組織を治療するために使用され得る。
【0178】
高コレステロール血症または高リポタンパク血症の治療
低分子または組み換えのBMP阻害剤での処理は、低密度リポタンパク質受容体欠損マウス(LDLR-/-)において、マクロファージの蓄積やカテプシン活性を介した血管炎症、アテローム形成、血管石灰化を低減する。理論にとらわれることなく、血管炎症への影響を説明する可能性として、酸化LDL(oxLDL)は、ヒト大動脈内皮細胞のBMP2発現を増加させ、活性酸素種(ROS)の産生を誘導することがわかっている。低分子BMP阻害剤や組み換えBMP阻害剤による阻害効果から、oxLDLによる活性酸素生成にはBMPシグナル伝達が必要であると考えられる。低分子BMP阻害剤で処理すると、HMG-CoA還元酵素の活性を阻害することなく、血漿中の低密度リポ蛋白質レベルが低下することから、LDLコレステロール生合成の制御にBMPシグナル伝達が関与していることが示唆される。また、低分子のBMP阻害剤は、高脂肪食を与えたLDLR欠損マウスに見られる肝脂肪症を抑制することがわかっている。低分子BMP阻害剤や組み換えBMP阻害剤は、インビトロの肝細胞でApoB-100の合成を阻害する。これらの結果は、BMPシグナル伝達が血管石灰化や動脈硬化に関与していることを示しており、BMPシグナル伝達が動脈硬化の病因に寄与している可能性を示す少なくとも2つの新しいメカニズムを提供している。これらの研究は、BMPシグナル伝達経路が動脈硬化の治療標的であることを強調するとともに、血管の酸化ストレス、炎症、脂質代謝の制御におけるBMPシグナル伝達のいくつかの新しい機能を明らかにしている。
【0179】
様々な実施形態において、本明細書に記載されているように、本明細書に記載された1つ以上の結晶性化合物または組成物は、患者におけるApoB-100の循環レベルの低下に使用されてもよい。様々な実施形態において、本明細書に記載されているように、本明細書に記載された1つ以上の結晶性化合物または組成物は、患者におけるApoLDLの循環レベルの低下に使用されてもよい。様々な実施形態において、本明細書に記載されているように、本明細書に記載された1つ以上の結晶性化合物または組成物は、先天性または後天性の高コレステロール血症、高脂血症、または高リポタンパク質血症を含む、高コレステロール血症、高脂血症、または高リポタンパク質血症の治療に使用されてもよい。いくつかの実施形態において、先天性高コレステロール血症、高脂血症、または高リポタンパク血症は、常染色体優性高コレステロール血症(ADH)、家族性高コレステロール血症(FH)、多遺伝子性高コレステロール血症、家族性複合高脂血症(FCHL)、高アポベータリポタンパク血症、または小高密度LDL症候群(LDL表現型B)である。
【0180】
いくつかの実施形態において、後天性の高コレステロール血症、高脂血症、または高リポタンパク質血症は、糖尿病、高脂血症の食事および/または座りがちな生活習慣、肥満、メタボリックシンドローム、内因性または二次性の肝疾患、原発性胆汁性肝硬変または他の胆汁うっ滞障害、アルコール依存症、膵炎、ネフローゼ症候群、末期腎疾患、甲状腺機能低下症、チアジド系薬剤、β遮断薬、レチノイド、高活性抗レトロウイルス薬、エストロゲン、プロゲスチン、グルココルチコイドなどの投与による医原病に関連している。様々な実施形態において、本明細書に記載されているように、本明細書に記載された1つ以上の結晶性化合物または組成物は、シトステロール症、脳腱性黄色腫症、または家族性低ベタリポ蛋白質血症などの、脂質吸収または代謝の欠陥に関連する疾患、障害、または症候群の治療に使用することができる。
【0181】
様々な実施形態において、本明細書に記載されている1つまたは複数の結晶性化合物または組成物は、高脂血症によって引き起こされる疾患、障害、または症候群、例えば、冠動脈疾患およびその症状(例えば、心筋梗塞、狭心症、不安定狭心症などの急性冠動脈症候群、心筋梗塞に起因するうっ血性心不全などの心機能障害、心筋虚血・梗塞に伴う不整脈など)、脳の一部に供給する動脈の閉塞による脳卒中、脳出血、末梢動脈疾患(例えば、腸間膜虚血、腎動脈狭窄、四肢虚血および跛行、鎖骨下盗血症候群、腹部大動脈瘤、胸部大動脈瘤、仮性動脈瘤、壁内血腫、または穿通性大動脈潰瘍、大動脈解離、大動脈狭窄、血管石灰化、腱に影響を与える黄色腫または強膜および皮膚の黄色腫などの黄色腫、黄色腫、または肝脂肪症、の治療において使用され得る。
【0182】
様々な実施形態において、本明細書に記載されているように、本明細書に記載された1つ以上の結晶性化合物または組成物、あるいはそれらの組み合わせは、正常な循環脂質レベルまたは代謝を示す個体のように、循環脂質レベルに関係なく、前述の疾患、障害、または症候群の治療に使用することができる。
【0183】
様々な実施形態において、本明細書に記載されているように、本明細書に記載された1つ以上の結晶性化合物または組成物は、冠動脈疾患、脳疾患、または末梢血管疾患から生じる二次的な心血管イベントの低減に使用されてもよい。様々な実施形態において、本明細書に記載されているように、本明細書に記載された1つ以上の結晶性化合物または組成物は、正常な循環コレステロールおよび脂質レベルを示す個体の治療に使用されるなど、脂質レベルに関係なく個体を治療するために使用されてもよい。様々な実施形態において、本明細書に記載されているように、本明細書に記載された1つ以上の結晶性化合物または組成物は、HMG-CoA還元酵素阻害剤と併用して投与してもよい。
【0184】
様々な実施形態において、本明細書に記載されているように、本明細書に記載された1つ以上の結晶性化合物または組成物は、心血管リスクのマーカ(例えば、C反応性タンパク質)が上昇しているか、または例えばフラミンガムリスクスコアが上昇している個体など、心血管疾患の予防に使用されてもよい。様々な実施形態において、本明細書に記載されているように、本明細書に記載された1つ以上の結晶性化合物または組成物は、正常な循環コレステロールおよび脂質レベルを示す個体において、心血管疾患を予防するために使用することができる。
【0185】
様々な実施形態において、本明細書に記載されているように、本明細書に記載された1つ以上の結晶性化合物または組成物は、前述の疾患、障害、または症候群の治療または予防に使用され、治療を受ける患者は、以下の状態の1つ以上と診断されていない、および/または罹患していない:アテローム性動脈硬化症、自己免疫疾患、および他の血管炎に関連する血管炎症;アテローム性動脈硬化疾患、アテローム性プラーク、および/または血管石灰化;動脈瘤および/または動脈瘤形成;急性冠症候群(狭心症および心臓発作)、一過性脳虚血発作、脳卒中、末梢血管疾患、または他の血管虚血性事象。
【0186】
様々な実施形態において、本明細書に記載された1つまたは複数の結晶性化合物または組成物は、前述の疾患、障害、または症候群の治療または予防に(例えば、患者におけるApoB-100および/またはLDLの循環レベルを低下させるために);先天性または後天性の高コレステロール血症、高脂血症、または高リポタンパク質血症を含む、高コレステロール血症、高脂血症、または高リポタンパク質血症の治療のために;脂質の吸収または代謝の欠陥に関連する疾患、障害、または症候群の治療のために;高脂血症に起因する疾患、障害、または症候群の治療のために;冠動脈、脳、または末梢血管疾患に起因する二次的な心血管イベントの軽減のために;冠動脈、脳、または末梢血管疾患に起因する二次的な心血管イベントの軽減のために)使用され、治療を受けている患者はまた、以下の状態の1つ以上とも診断されている、および/または、罹患している:アテローム性動脈硬化症、自己免疫疾患、およびその他の血管炎に関連する血管炎症、アテローム性動脈硬化症、アテローム性プラーク、および/または血管石灰化、動脈瘤および/または動脈瘤形成、急性冠症候群(狭心症および心筋梗塞)、一過性脳虚血発作、脳卒中、末梢血管疾患、またはその他の血管虚血性事象。
【0187】
T.軟骨欠損症の治療
特定のBMP受容体を選択的に阻害することで、間葉系幹細胞が作製した足場の石灰化や鉱物化を防ぎ、軟骨形成を可能にする(ヘリングマン(Hellingman)他、Tissue Eng Part A.、2011年4月、17(7-8):1157-67.、Epub:2011年1月17日)。したがって、いくつかの実施形態において、本明細書に記載された本発明の化合物は、軟骨損傷または欠損を有する患者における軟骨の修復/再生を促進するために有用であり、また、間葉系幹細胞などの適切な細胞から、例えば移植用の軟骨組織をエクスビボまたはインビトロで製造する際にも有用である。
【0188】
U.選択性の程度が異なる化合物の適用:特定のBMPI型受容体を介したBMPシグナル伝達を阻害する化合物、またはTGF-β、アクチビン、AMPキナーゼ、もしくはVEGF受容体を介したシグナル伝達にも影響を与える化合物。
【0189】
様々な実施形態において、本明細書に記載される本発明の化合物のいくつかは、特定のBMPI型受容体に対して比較的高い選択性を有するであろう。特定の疾患の病因は、1つの特定の受容体のシグナル伝達の機能不全に起因する可能性がある。例えば、進行性骨化性線維異形成症は、異常な(構成的に活性な)ALK2の機能によって引き起こされる疾患である(ユ(Yu)他、Nat.Chem.Biol.、4:33-41、2008年)。そのような場合、様々な実施形態において、BMPI型受容体のサブセットの機能に特異的に拮抗する本明細書に記載の本発明の化合物は、毒性または副作用の低減、またはより大きな有効性、あるいはその両方の利点を有し得る。
【0190】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される本発明の化合物は、BMP対TGF-β、アクチビン、AMPキナーゼ、およびVEGF受容体シグナル伝達に対して高度の選択性を有し得る。他の化合物は、特異性が低くてもよく、BMPシグナル伝達に加えて他の経路を標的にしてもよい。腫瘍の治療において、例えば、特定の患者の腫瘍の分子表現型解析によって複数の経路の調節異常が明らかになった場合、BMPシグナル伝達だけでなく、上記の経路の1つ以上を阻害する薬剤が有益な効果(例えば、腫瘍サイズの縮小)をもたらす可能性がある。
【0191】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の本発明の化合物(例えば、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物)は、ALK1またはALK3またはALK4またはALK5またはALK6に対するALK2の高度な選択性を有する。ALK1またはALK3またはALK4またはALK5またはALK6に対するALK2の選択的な阻害は、望ましくない効果または毒性を最小限に抑えることができる。ALK3を慢性的に阻害すると、腸腺窩幹細胞リサイクルにおける既知の重要性と若年性家族性ポリポーシスにおけるALK3機能の関与により、正常な粘膜上皮ターンオーバーを損なう可能性がある。ALK1が阻害されると、正常な血管リモデリングが損なわれ、ヒト遺伝性毛細血管拡張症症候群2型(HHT2)と同様の合併症(毛細血管漏出、AV奇形、出血など)を引き起こす可能性がある。したがって、ALK3およびALK1に比べてALK2を選択的に阻害する化合物は、非選択的な阻害剤を使用することで遭遇する可能性のあるこの種の毒性を回避するのに役立つ可能性がある。
【0192】
特定の実施形態において、本発明は、ヒトにおけるALK2の活性を阻害する方法であって、ヒトALK1の活性に対してヒトALK2の活性を選択的に阻害する、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物をヒトに投与することを含む方法を提供する。いくつかのそのような実施形態において、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物は、ヒトALK1の活性を阻害するためのIC50よりも約2倍低いIC50で、ヒトALK2の活性を阻害する。いくつかのそのような実施形態において、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物は、ヒトALK1の活性を阻害するためのIC50よりも5倍低いIC50で、ヒトALK2の活性を阻害する。いくつかのそのような実施形態において、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物は、ヒトALK1の活性を阻害するためのIC50よりも10倍低いIC50で、ヒトALK2の活性を阻害する。いくつかのそのような実施形態において、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物は、ヒトALK1の活性を阻害するためのIC50よりも15倍または20倍または30倍または40倍または50倍または100倍または200倍または300倍または400倍または500倍または600倍または800倍または1000倍または1500倍または2000倍または5000倍または10000倍または15000倍または20000倍または40000倍または50000倍または60000倍または70000倍または80000倍または90000倍または100000倍低いIC50で、ヒトALK2の活性を阻害する。
【0193】
特定の実施形態において、本発明は、ヒトにおけるALK2の活性を阻害する方法であって、ヒトALK3の活性に対してヒトALK2の活性を選択的に阻害する、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物をヒトに投与することを含む方法を提供する。いくつかのそのような実施形態において、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物は、ヒトALK3の活性を阻害するためのIC50よりも15倍低いIC50で、ヒトALK2の活性を阻害する。いくつかのそのような実施形態において、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物は、ヒトALK3の活性を阻害するためのIC50よりも20倍低いIC50で、ヒトALK2の活性を阻害する。いくつかのそのような実施形態において、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物は、ヒトALK3の活性を阻害するためのIC50よりも30倍低いIC50で、ヒトALK2の活性を阻害する。いくつかのそのような実施形態において、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物は、ヒトALK3の活性を阻害するためのIC50よりも50倍または100倍または200倍または300倍または400倍または500倍または600倍または800倍または1000倍または1500倍または2000倍または5000倍または10000倍または15000倍または20000倍または40000倍または60000倍または70000倍または80000倍または90000倍または100000倍低いIC50で、ヒトALK2の活性を阻害する。
【0194】
特定の実施形態において、本発明は、ヒトにおけるALK2の活性を阻害する方法であって、ヒトALK4の活性に対してヒトALK2の活性を選択的に阻害する、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物をヒトに投与することを含む方法を提供する。いくつかのそのような実施形態において、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物は、ヒトALK4の活性を阻害するためのIC50よりも1000倍低いIC50で、ヒトALK2の活性を阻害する。いくつかのそのような実施形態において、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物は、ヒトALK4の活性を阻害するためのIC50よりも2000倍低いIC50で、ヒトALK2の活性を阻害する。いくつかのそのような実施形態において、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物は、ヒトALK4の活性を阻害するためのIC50よりも3000倍低いIC50で、ヒトALK2の活性を阻害する。いくつかのそのような実施形態において、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物は、ヒトALK4の活性を阻害するためのIC50よりも4000倍または5000倍または6000倍または7000倍または8000倍または9000倍または10000倍または12000倍または14000倍または16000倍または18000倍または20000倍または25000倍または30000倍または40000倍または50000倍または60000倍または70000倍または80000倍または90000倍または100000倍低いIC50で、ヒトALK2の活性を阻害する。
【0195】
特定の実施形態において、本発明は、ヒトにおけるALK2の活性を阻害する方法であって、ヒトALK6の活性に対してヒトALK2の活性を選択的に阻害する、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物をヒトに投与することを含む方法を提供する。いくつかのそのような実施形態において、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物は、ヒトALK6の活性を阻害するためのIC50よりも2倍低いIC50で、ヒトALK2の活性を阻害する。いくつかのそのような実施形態において、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物は、ヒトALK6の活性を阻害するためのIC50よりも5倍低いIC50で、ヒトALK2の活性を阻害する。いくつかのそのような実施形態において、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物は、ヒトALK6の活性を阻害するためのIC50よりも10倍低いIC50で、ヒトALK2の活性を阻害する。いくつかのそのような実施形態において、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物は、ヒトALK6の活性を阻害するためのIC50よりも15倍または20倍または30倍または40倍または50倍または100倍または200倍または300倍または400倍または500倍または600倍または800倍または1000倍または1500倍または2000倍または5000倍または10000倍または15000倍または20000倍または40000倍または50000倍または60000倍または70000倍または80000倍または90000倍または100000倍低いIC50で、ヒトALK2の活性を阻害する。
【0196】
一態様において、本発明は、ヒトにおけるALK2の活性を阻害する方法であって、ヒトALK5の活性に対してヒトALK2の活性を選択的に阻害する、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物をヒトに投与することを含む方法を提供する。いくつかのそのような実施形態において、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物は、ヒトALK5の活性を阻害するためのIC50よりも1000倍低いIC50で、ヒトALK2の活性を阻害する。いくつかのそのような実施形態において、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物は、ヒトALK5の活性を阻害するためのIC50よりも2000倍低いIC50で、ヒトALK2の活性を阻害する。いくつかのそのような実施形態において、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物は、ヒトALK5の活性を阻害するためのIC50よりも3000倍低いIC50で、ヒトALK2の活性を阻害する。いくつかのそのような実施形態において、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物は、ヒトALK5の活性を阻害するためのIC50よりも4000倍または5000倍または6000倍または7000倍または8000倍または9000倍または10000倍または12000倍または14000倍または16000倍または18000倍または20000倍または25000倍または30000倍または40000倍または50000倍または60000倍または70000倍または80000倍または90000倍または100000倍低いIC50で、ヒトALK2の活性を阻害する。
【0197】
本明細書において使用される場合、障害または状態を「予防する」治療薬とは、統計的試料において、未処理の対照試料と比較して、処理された試料における障害または状態の発生または頻度を減少させる、または未処理の対照試料と比較して、障害または状態の1つ以上の症状の発症を遅らせるもしくは重症度を減少させる化合物を指す。したがって、癌の予防には、例えば、予防的治療を受けている患者の集団における検出可能な癌の成長の数を、未治療の対照集団と比較して減少させること、および/または、治療を受けた集団における検出可能な癌の成長の出現を、未治療の対照集団と比較して、例えば、統計的および/または臨床的に有意な量だけ遅延させることが含まれる。感染症の予防には、例えば、治療を受けた集団における感染症の診断数を未治療の対照集団と比較して減少させること、および/または治療を受けた集団における感染症の症状の発現を未治療の対照集団と比較して遅らせることが含まれる。痛みの予防には、例えば、治療を受けた集団と治療を受けていない対照集団の対象が経験する痛みの感覚の大きさを減少させること、または代替的に遅延させることが含まれる。
【0198】
「治療する」という用語は、予防的および/または治療的な治療を含む。「予防的または治療的」治療という用語は、当技術分野で認識されており、1つまたは複数の対象組成物の宿主への投与を含む。望ましくない状態(例えば、宿主動物の疾患または他の望ましくない状態)が臨床的に顕在化する前に投与される場合、その治療は予防的(すなわち、望ましくない状態の発症から宿主を保護する)であり、一方、望ましくない状態が顕在化した後に投与される場合、その治療は治療的(すなわち、既存の望ましくない状態またはその副作用を減少、改善、または安定化させることを目的とする)である。
【0199】
併用療法
特定の例において、本明細書に記載される本明細書に記載される1つ以上の結晶性化合物または組成物は、他の現在または将来の薬物療法と組み合わせて使用することができる。その理由は、BMPを単独で阻害する効果は、それだけでは最適ではない可能性があり、および/または、BMPシグナル伝達と機能的に相互作用する別の経路に作用する治療法、またはBMP経路自体に作用する治療法と組み合わせて、相乗効果またはより高い効果を得ることができるからである。特定の例において、本明細書に記載のBMP阻害剤(例えば、本明細書に記載の1つまたは複数の結晶性化合物または組成物)を追加の薬物療法と併用することで、追加の薬物療法の用量を、単剤療法(例えば、本明細書に記載のBMP阻害剤がない場合)で使用した場合に治療効果を達成する量よりも少なくなるように減らすことができる。
【0200】
併用療法のいくつかの非限定的な例には、以下が含まれ得る。
エリスロポエチン(Epogen(登録商標))と本明細書に記載のBMPアンタゴニストとの共投与は、上述したようなある種の炎症性貧血、特に慢性炎症とエリスロポエチン不全との両方が貧血を促進するように作用する末期腎疾患などの疾患に特に有効であると考えられる。
【0201】
特定の実施形態において、本明細書に記載されるBMP阻害剤(例えば、本明細書に記載される1つ以上の結晶性化合物または組成物)は、HMG-CoA還元酵素阻害剤(例えば、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、シンバスタチンなど)、フィブラート系薬剤(例えば、ベザフィブラート、シプロフィブラート、クロフィブラート、ゲムフィブロジル、フェノフィブラートなど)、エゼチミブ、ナイアシン、コレステリルエステル転送タンパク質(CETP)阻害剤(例えば、トルセトラピブ、アナセトラピブ、ダルセトラピブなど)、コレスチラミン、コレスチポール、プロブコール、デキストロチロキシン、胆汁酸隔離剤、またはこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない他の抗高脂血症剤または抗脂質血症剤と一緒に投与され得る。
【0202】
特定の実施形態において、本明細書に記載のBMP阻害剤(例えば、本明細書に記載の1つまたは複数の結晶性化合物または組成物)は、糖尿病の治療薬と併用して投与することができ、これらには、限定されるものではないが、スルホニル尿素(例えば、クロルプロパミド、トルブタミド、グリブリド、グリピジド、またはグリメピリド)、肝臓で生成されるグルコースの量を減少させる薬剤(例えば、メトホルミン)、メグリチニド(例えば、レパグリニドまたはナテグリニド)、腸からの炭水化物の吸収を減少させる薬剤(例えば、アカルボースなどのアルファグルコシダーゼ阻害剤)、血糖コントロールに効果のある薬剤(例えば、プラムリンチド、エキセナチド)、DPP-IV阻害剤(シタグリプチンなど)、インスリン治療、チアゾリジノン系薬剤(トログリタゾン、シグリタゾン、ピオグリタゾンまたはロシグリタゾンなど)、オキサジアゾリジンジオン、α-グルコシダーゼ阻害剤(例えば、ミグリトールまたはアカルボース)、β細胞のATP依存性カリウムチャネルに作用する薬剤(例えば、トルブタミド、グリベンクラミド、グリピジド、グリカジド、レパグリニドなど)、ナテグリニド、グルカゴン阻害剤、グルコン生成および/またはグリコーゲン分解の刺激に関与する肝酵素の阻害剤、またはこれらの組み合わせなど、が含まれる。
【0203】
特定の実施形態において、本明細書に記載のBMP阻害剤(例えば、本明細書に記載の1つまたは複数の結晶性化合物または組成物)は、肥満の治療薬と併用して投与することができ、これらには、限定されるものではないが、オルリスタット、シブトラミン、フェンジメトラジン、フェンテルミン、ジエチルプロピオン、ベンズフェタミン、マジンドール、デキストロアンフェタミン,リモナバント、セチリスタット、GT389-255、APD356、プラムリンチド/AC137、PYY3-36、AC162352/PYY3-36、オキシントモデュリン、TM30338、AOD9604、オレイル-エストロン、ブロモクリプチン、エフェドリン、レプチン、プソイドエフェドリン、またはこれらの製薬上許容される塩、あるいはこれらの組み合わせ、が含まれる。
【0204】
特定の実施形態において、本明細書に記載のBMP阻害剤(例えば、本明細書に記載の1つまたは複数の結晶性化合物または組成物)は、抗高血圧剤と併用して投与することができ、これらには、限定されるものではないが、β-ブロッカー(例えば、アルプレノロール、アテノロール、チモロール、ピンドロール、プロプラノロール、メトプロロール)、ACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害剤(例えば、ベナゼプリル、カプトプリル、エナラプリル、フォシノプリル、リシノプリル、キナプリルおよびラミプリル)、カルシウムチャネル遮断剤(例えば、ニフェジピン、フェロジピン、ニカルジピン、イスラジピン、ニモジピン、ジルチアゼムおよびベラパミル)、α遮断薬(例えば、ドキサゾシン、ウラピジル、プラゾシンおよびテラゾシン)、またはこれらの組み合わせ、が含まれる。特定の実施形態において、本明細書に記載のBMP阻害剤は、赤血球造血刺激剤(例えば、エリスロポエチン)を含むがこれらに限定されない貧血(例えば、腎不全および血液透析に関連する炎症の貧血)の治療と併せて投与され得る。
【0205】
SU-5416などのチロシンキナーゼ受容体阻害剤と、本明細書に記載されているBMP阻害剤(例えば、の化合物の1つ以上)は、特に腫瘍に対する抗血管新生療法において、血管新生を阻害する際に相乗効果を発揮する可能性がある。BMPシグナル(BMP-4)は、幹細胞または前駆細胞の造血/内皮共通前駆細胞へのコミットメントに重要であると考えられており、血管新生に必要な成熟内皮細胞の増殖、生存、および移動を促進する可能性がある(パーク(Park)他、Development、131:2749-2762、2004年)。したがって、本明細書に記載されているような化合物を用いたBMPシグナルの拮抗は、内皮前駆体および細胞のレベルでの血管新生のさらなる阻害をもたらす可能性がある。同様に、本明細書に記載のBMP阻害剤(例えば、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物)と、イマチニブ(Gleevec(登録商標))などの他のチロシンキナーゼ受容体阻害剤と、による併用治療は、特定の腫瘍の血管リモデリングおよび血管新生を阻害するために使用され得る。
【0206】
ソニックヘッジホッグアゴニストと本明細書に記載のBMP阻害剤(例えば、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物)との組み合わせは、SHH活性が毛包のテロゲン(休止)期からの移行を刺激することが知られており(パラディーニ(Paladini)他、J.Invest.Dermatol.、125:638-646、2005年)、一方でBMP経路を阻害するとテロゲン期が短縮される(プリクス(Plikus)他、Nature、451:340-344、2008年)ことから、毛髪成長を促進するのに特に有用であると考えられる。両者を併用することで、anagen期または成長期の時間が相対的に長くなることが予想される。
【0207】
ノッチモジュレータ(例えば、ガンマ-セクレターゼ阻害剤)および本明細書に記載のBMPアンタゴニスト(例えば、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物)を組み合わせて使用すると、骨の分化を阻害するように設計された用途では、両方の経路が協調的に機能して細胞の分化をもたらすことを示唆する証拠が増えているため、いずれかの薬剤を単独で使用するよりも効果的であるかもしれない(クルッペル(Kluppel)他、Bioessays、27:115-118、2005年)。これらの治療法は、一方または両方の経路が異常をきたしている腫瘍の治療において、相乗効果を発揮する可能性がある(カトウ(Katoh)、Stem Cell Rev.、3:30-38、2007年)。
【0208】
インディアンヘッジホッグ(IHH)アンタゴニストとBMPアンタゴニスト(例えば、本明細書に記載されているように、本明細書に記載された1つ以上の結晶性化合物または組成物)を組み合わせて使用することで、病的な骨形成を阻害することができる。IHHは、骨前駆体の軟骨細胞または軟骨形成細胞へのコミットメント(commitment)を担う。軟骨内骨形成は、(BMPシグナルおよびIHHシグナルによって促進される)軟骨形成およびBMPシグナルによって開始されるミネラル化プログラムによるそれらの後続の石灰化の両方の調整された活性を含む(セキ(Seki)他、J.Biol.Chem.、279:18544-18549、2004年;ミニナ(Minina)他、Development、128:4523-4534、2001年)。したがって、IHHアンタゴニストと、本明細書に記載された1つ以上の結晶性化合物または組成物とを、本明細書に記載されたように共投与することは、(FOPにおけるような)過活動のBMPシグナルによる病的な骨成長、または上述の病的な骨形成の炎症性または外傷性障害のいずれかにおいて、より効果的であると考えられる。
【0209】
SmoアンタゴニストとBMPアンタゴニストの両方が膠芽腫の治療に効果があるという強い実験的証拠が存在する。本明細書に記載の化合物(例えば、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物)は、膠芽腫を治療するためにSmoアンタゴニストと組み合わせて使用することができる。
【0210】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物は、以下からなる群から選択される薬剤と組み合わせて投与される:コルチコステロイド、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、リポキシゲナーゼ阻害剤、ロイコトリエン阻害剤、肥満細胞安定化剤、抗ヒスタミン剤、腫瘍壊死因子(TNF)阻害剤、IL-23遮断薬、IL1-RA療法、細胞障害性療法、ビスフォスフォネート、抗リウマチ薬、CTA4-Ig療法、抗成長因子療法、インターロイキン-1シグナル阻害薬。
【0211】
本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物と組み合わせて使用するための例示的なコルチコステロイドには、プレドニゾン、コルチゾール、およびヒドロコルチゾンが含まれるが、これらに限定されない。一実施形態において、コルチコステロイドはプレドニゾンである。
【0212】
本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物と組み合わせて使用するための例示的なNSAIDには、ナプロキセン、イブプロフェン、メロキシカム、ジクロフェナク、アスピリン、ピロキシカム、スリンダク、メクロフェナム酸およびインドメタシンが含まれるが、これらに限定されない。
【0213】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物は、メクロフェナム酸ナトリウムまたはジレトンなどのリポキシゲナーゼ阻害剤と組み合わせて投与される。
【0214】
本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物と組み合わせて使用するための例示的なロイコトリエン阻害剤には、モンテルカスト、ザフィルルカストおよびプランルカストが含まれるが、これらに限定されない。
【0215】
本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物と組み合わせて使用するための肥満細胞安定剤の非限定的な例には、クロモリンナトリウム、クロモグリク酸、ケトチフェン、オロパタジン、オマリズマブ、ペミロラスト、ケルセチン、テオフィリン、カフェイン、パラキサンチン、アミノフィリン、およびテオブロミンが含まれるが、これらに限定されない。
【0216】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物は、抗ヒスタミン剤、例えば、ジフェンヒドラミン、セチリジン、ラニチジン、ファモチジン、クロルフェナミン、クロロジフェンヒドラミン、およびフェキソフェニジンなどと組み合わせて投与される。
【0217】
本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物との使用が企図される例示的な抗腫瘍壊死因子(抗TNF)薬剤には、インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、セルトリズマブ、ブプロピオン、およびゴリムマブが含まれるが、これらに限定されない。
【0218】
本明細書に記載されている1つ以上の結晶性化合物または組成物での使用が企図されているインターロイキン-23(IL-23)シグナル伝達の例示的な阻害剤には、ウステキヌマブおよびBI-855066が含まれるが、これらに限定されない。
【0219】
本明細書に記載されている1つ以上の結晶性化合物または組成物との使用が企図されているインターロイキン-1(IL-1)シグナル伝達の例示的な阻害剤またはIL-1RA療法には、アナキンラ、カナキヌマブ、およびリロナセプトが含まれるが、これらに限定されない。
【0220】
本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物と組み合わせて使用するための例示的な細胞毒性療法には、メトトレキサート、シクロホスファミド、5-フルオロウラシル、ドキソルビシン、ビンクリスチン、ブレオマイシン、プロカルバジン、プレドニシロン、ダカルバジン、エトポシド、シスプラチン、オキサリプラチンなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0221】
本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物と組み合わせて使用するための例示的なビスフォスフォネートには、アレンドロネート(FOSAMAX(商標))、イバンドロネート(BONIVA(商標))、リセドロネート(ACTONEL(商標)、ATELVIA(商標))、およびゾレドロン酸(RECLAST(商標))が含まれるが、これらに限定されない。
【0222】
本明細書に記載の1つまたは複数の結晶性化合物または組成物と組み合わせて使用するための例示的な抗成長因子療法には、抗PDGF療法、抗FGF療法、および抗VEGF療法が含まれるが、これらに限定されない。
【0223】
本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物と組み合わせて使用するための例示的な疾患修飾性抗リウマチ薬には、アザチオプリン(IMURAN(商標))、シクロホスファミド(CYTOXAN(商標))、シクロスポリン(NEORAL(商標))、ヒドロキシクロロキン(PLAQUENIL(商標))、レフルノミド(ARAVA(商標))、メトトレキサート(RHEUMATREX(商標)、TREXALL(商標))、スルファサラジン(AZULFIDINE(商標))、およびトファシチニブ(XELJANZ(商標))などが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0224】
さらなる実施形態において、本明細書に記載の1つまたは複数の結晶性化合物または組成物は、シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチルなどと組み合わせて投与することができる。
【0225】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物は、少なくとも1つの追加の薬剤と組み合わせて投与され、少なくとも1つの追加の薬剤は、抗炎症剤を含んでいる。例示的な抗炎症剤には、サブスタンスPの活性の阻害剤;サブスタンスPの分泌の阻害剤;サブスタンスPの効果の阻害剤;ヒスタミンの活性の阻害剤;ヒスタミンの分泌の阻害剤;ヒスタミンの効果の阻害剤;マスト細胞の機能の阻害剤;Toll様受容体シグナル伝達の阻害剤;MyD88の阻害剤;TRIFの阻害剤;アピラーゼ;およびATPの加水分解を触媒する薬剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0226】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物は、少なくとも1つの追加の薬剤と組み合わせて投与され、少なくとも1つの追加の薬剤は、抗成長因子剤を含む。例示的な抗成長因子剤には、PDGFリガンドの阻害剤;PDGF-AAの阻害剤;PDGF-BBの阻害剤;PDGFR-α受容体機能の阻害剤;PDGFR-β受容体機能の阻害剤;アクチビンAに対する中和抗体;アクチビンBに対する中和抗体;アクチビンAリガンドに対する中和抗体;アクチビンBリガンドに対する中和抗体;INHBAでコードされるインヒビンbAサブユニットを含むヘテロ二量体リガンドに対する中和抗体;INHBB遺伝子でコードされるインヒビンbBサブユニットを含むヘテロ二量体リガンドに対する中和抗体;BMPリガンドのリガンドトラップ;アクチビンリガンドのリガンドトラップ;II型アクチビン受容体ActRIIAの可溶性細胞外ドメインのリガンドトラップ;II型アクチビン受容体ActRIIBの可溶性細胞外ドメインのリガンドトラップ;BMPI型受容体ALK2の可溶性細胞外ドメインのリガンドトラップ;BMPI型受容体ALK3の可溶性細胞外ドメインのリガンドトラップ;およびBMPI型受容体ALK6の可溶性細胞外ドメインのリガンドトラップ、が含まれるが、これらに限定されない。
【0227】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物は、少なくとも1つの追加の薬剤と組み合わせて投与され、少なくとも1つの追加の薬剤は、抗骨形成シグナル剤または抗軟骨形成シグナル剤を含んでいる。例示的な抗骨形成シグナル剤または抗軟骨形成シグナル剤には、RAR-γアゴニスト;非選択的RARアゴニスト;骨形成転写因子Runx2の活性を阻害する薬剤;骨形成転写因子Runx2の発現を阻害する薬剤;骨形成転写因子Runx2の分解を促進する薬剤;軟骨性転写因子Sox9の活性を阻害する薬剤、軟骨性転写因子Sox9の発現を阻害する薬剤、軟骨性転写因子Sox9の分解を促進する薬剤、HIF-1αの活性を阻害する薬剤、およびHIF-1αの発現を阻害する薬剤、が含まれるが、これらに限定されない。
【0228】
特定の実施形態において、本発明の化合物は、単独で使用してもよいし、別の種類の治療薬と併用してもよい。本明細書では、「併用投与(conjoint administration)」という語句は、2つ以上の異なる治療用化合物を、先に投与された治療用化合物が体内でまだ有効である間に第2の化合物が投与されるように(例えば、2つの化合物が対象において同時に有効であり、2つの化合物の相乗効果を含む場合がある)投与する任意の形態を指す。例えば、異なる治療用化合物は、同じ製剤でも別の製剤でも、同時または順次に投与することができる。特定の実施形態において、異なる治療用化合物は、互いに1時間以内、12時間以内、24時間以内、36時間以内、48時間以内、72時間以内、または1週間以内に投与することができる。いくつかの実施形態において、追加の治療用化合物は、式(I)の化合物、式(I)Iの化合物、または式(I)IIの化合物の投与に先立って、または投与後に、約5分以内から約168時間以内に投与される。したがって、このような治療を受ける対象は、異なる治療用化合物の併用効果の恩恵を受けることができる。
【0229】
特定の実施形態において、本発明の化合物を1つ以上の追加の治療剤(例えば、1つ以上の追加の化学療法剤)と併用投与することにより、本発明の化合物または1つ以上の追加の治療剤の各個別の投与に比べて、改善された有効性が得られる。ある種の実施形態において、併用投与によって付加的な効果が得られ、付加的な効果とは、本発明の化合物および1つ以上の追加治療剤の個々の投与による効果のそれぞれの合計を意味する。
【0230】
併用する場合、本明細書に記載されている1つ以上の結晶性化合物または組成物は、本明細書に記載されている少なくとも1つの追加薬剤とは別個にまたは異なる製剤で投与することができ、または本明細書に記載されている1つ以上の結晶性化合物または組成物と追加薬剤とを含む単一の製剤で投与することができる。本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物は、少なくとも1つの追加薬剤と同時にまたは同時並行にて投与することができる。本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物の投与は、同じまたは異なる投与様式(例えば、経口、静脈内、注射など)を使用して投与することができる。本明細書に記載の1つまたは複数の結晶性化合物または組成物と、少なくとも1つの追加薬剤の投与は、同時に、15分以内、30分以内に行うことができ、または少なくとも1時間(例えば、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも7時間、少なくとも8時間、少なくとも9時間、少なくとも10時間、少なくとも11時間、少なくとも12時間またはそれ以上)を隔てて行うことができる。当業者であれば、本明細書に記載されている1つ以上の結晶性化合物または組成物と、少なくとも1つの追加の薬剤とを含む併用治療について、例えば、副作用を軽減するため、薬剤のうちの1つからの代謝干渉を防ぐため、本明細書に記載されている4つの1つ以上の結晶性化合物または組成物の活性を高めるため、またはそうでなければ薬力学的または薬物動態学的因子を改善するために、適切な投与レジメンを容易に決定することができる。
【0231】
明細書では、上記のような少なくとも1つの追加の薬剤と、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物との組み合わせが、単独で投与される各薬剤の効果の合計よりも大きい相乗効果をもたらすことが企図されている。そのような実施形態において、本明細書に記載された1つ以上の結晶性化合物または組成物を、本明細書に記載された1つ以上の結晶性化合物または組成物を単独で投与したときの治療効果に必要とされる用量よりも低い用量の第2の薬剤と組み合わせて投与することが企図される。
【0232】
投与量および投与方法
一態様において、本明細書に記載の方法は、対象における異常な骨形成を含む疾患または障害(例えば、異所性骨化疾患)を治療するための方法を提供する。一実施形態において、対象は、哺乳類であり得る。別の実施形態において、アプローチはすべての哺乳動物に関して有効であるが、哺乳動物はヒトであり得る。本発明の方法は、本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物を含む有効量の医薬組成物を対象に投与することを含む。
【0233】
薬剤の投与量範囲は、効力に依存し、所望の効果、例えば、異常な骨形成の少なくとも1つの症状の減少をもたらすのに十分な量を含む。投与量は、容認できない有害な副作用を引き起こすほど大きくてはいけない。一般に、投与量は、阻害剤の種類(例えば、抗体またはフラグメント、低分子、siRNAなど)、および患者の年齢、状態、および性別によって異なる。投与量は、当業者によって決定することができ、合併症が発生した場合に個々の医師によって調整することもできる。典型的には、投与量は、0.1mg/kg体重~1g/kg体重の範囲である。いくつかの実施形態において、投与量の範囲は、0.1mg/kg体重~1g/kg体重、0.1mg/kg体重~500mg/kg体重、0.1mg/kg体重~250mg/kg体重、0.1mg/kg体重~100mg/kg体重、0.1mg/kgkg体重~50mg/kg体重、0.1mg/kg体重~10mg/kg体重、10mg/kg~100mg/kg、15mg/kg~100mg/kg、20mg/kg~100mg/kg、25mg/kg~100mg/kg、30mg/kg~100mg/kg、40mg/kg~100mg/kg、50mg/kg~100mg/kg、60mg/kg~100mg/kg、70mg/kg~100mg/kg、75mg/kg~100mg/kg、25mg/kg~50mg/kg、50mg/kg~200mg/kg、75mg/kg~250mg/kg、100mg/kg~300mg/kg、100mg/kg~200mg/kg、100mg/kg~400mg/kg、100mg/kg~500mg/kg、100mg/kg~750mg/kg、200mg/kg~1000mg/kg、300mg/kg~1000mg/kg、400mg/kg~1000mg/kg、500mg/kg~1000mg/kg、600mg/kg~1000mg/kg、700mg/kg~1000mg/kg、800mg/kg~1000mg/kg、900mg/kg~1000mg/kg、250mg/kg~750mg/kg、300mg/kg~600mg/kg、またはそれらの間の任意の範囲、である。
【0234】
特定の実施形態において、薬剤の用量は少なくとも10mg/kg/日であり;他の実施形態において、薬剤の用量は、少なくとも20mg/kg/日、少なくとも25mg/kg/日、少なくとも30mg/kg/日、少なくとも40mg/kg/日、少なくとも50mg/kg/日、少なくとも60mg/kg/日、少なくとも70mg/kg/日、少なくとも80mg/kg/日、少なくとも90mg/kg/日、少なくとも100mg/kg/日、少なくとも125mg/kg/日、少なくとも150mg/kg/日、少なくとも175mg/kg/日、少なくとも200mg/kg/日、少なくとも250mg/kg/日、少なくとも300mg/kg/日、少なくとも400mg/kg/日、少なくとも500mg/kg/日、またはそれ以上、である。
【0235】
いくつかの実施形態において、ヒト対象において使用するための薬剤の投与量範囲は、10mg/日~250mg/日、15mg/日~200mg/日、20mg/日~200mg/日、25mg/日~200mg/日、25mg/日~175mg/日、25mg/日~150mg/日、25mg/日~125mg/日、25mg/日~100mg/日、25mg/日~75mg/日、25mg/日~50mg/日、50mg/日~200mg/日、75mg/日~200mg/日、100mg/日~200mg/日、125mg/日~200mg/日、150mg/日~200mg/日、175mg/日~200mg/日、50mg/日~200mg/日、50mg/日~175mg/日、50mg/日~150mg/日、50mg/日~100mg/日、50mg/日~75mg/日、75mg/日~200mg/日、75mg/日~175mg/日、75mg/日~150mg/日、75mg/日~125mg/日、75mg/日~100mg/日、100mg/日~200mg/日、100mg/日~175mg/日、100mg/日~125mg/日、125mg/日~200mg/日、125mg/日~175mg/日、125mg/日~150mg/日、150mg/日~200mg/日、150mg/日~175mg/日、175mg/日~200mg/日、またはそれらの間の任意の範囲である。
【0236】
一実施形態において、軟組織における異常な骨形成の治療のためにヒトで使用される本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物の用量は、腫瘍性疾患および癌の治療に典型的に使用される本明細書に記載の1つ以上の結晶性化合物または組成物の用量よりも少ない。
【0237】
上記に記載された用量の投与は、限られた期間、繰り返し行うことができる。いくつかの実施形態において、用量は、1日1回、または1日複数回、例えば、1日3回に限定されない。別の実施形態において、上記の用量は、数週間または数ヶ月間毎日投与される。治療期間は、対象の臨床経過および治療への反応性に依存する。最初に高い治療量を投与した後、比較的低い維持量を継続的に投与することが企図される。
【0238】
治療有効量とは、がんの少なくとも1つの症状において、統計的に有意で測定可能な変化をもたらすのに十分な薬剤の量である(下記の「有効性の測定」を参照)。このような有効量は、特定の薬剤の臨床試験や動物実験で測定できる。
【0239】
本明細書に記載の方法および組成物において有用な薬剤は、全身投与することも、経口投与することもできる。本明細書では、薬剤は、静脈内(ボーラスまたは連続注入による)、吸入、鼻腔内、腹腔内、筋肉内、皮下、腔内に送達することもでき、所望であれば蠕動手段により送達することができ、または当業者に知られている他の手段により送達することができることが企図されている。
【0240】
いくつかの実施形態において、活性化合物を投与するために使用される薬学的に許容される製剤は、対象への活性化合物の「徐放性」などの持続的な送達を提供する。例えば、製剤は、薬学的に許容される製剤を対象に投与した後、少なくとも1週間、2週間、3週間、または4週間、薬剤または組成物を送達することができる。好ましくは、本明細書に記載の方法に従って治療される対象は、少なくとも30日間(反復投与または持続送達システムの使用、あるいはその両方によって)活性組成物で治療される。
【0241】
本明細書で使用される「持続的送達」という用語は、投与後の一定期間、好ましくは少なくとも数日、1週間、数週間、1ヶ月またはそれ以上にわたって、生体内で組成物を継続的に送達することを含むことを意図している。活性化合物の持続的な送達は、例えば、組成物の治療効果が経時的に継続することによって実証することができる(例えば、薬剤の持続的な送達は、対象における癌症状の継続的な改善または維持された改善によって実証することができる)。
【0242】
少なくとも1つの薬剤を含む治療用組成物は、従来、単位用量で投与することができる。治療用組成物に関して使用される場合、用語「単位用量」は、対象のための単一用量として適した物理的に別個の単位を意味し、各単位は、必要な生理学的に許容される希釈剤、すなわち、担体またはビヒクルに関連して所望の治療効果を生じるように計算された所定量の活性物質を含有する。
【0243】
組成物は、投与形態に適合した方法で、治療上有効な量を投与する。投与量および投与時期は、治療対象、活性成分を利用するための対象のシステムの能力、および望む治療効果の程度に依存する。薬剤は、例えば、抗体または標的化リポソーム技術などの標的化部分によって標的化することができる。いくつかの実施形態において、薬剤は、例えば、抗リガンド抗体(Ab)と特定の標的に向けられたAbとの化学的結合によって生成される二重特異性抗体を使用することによって組織を標的とすることができる。化学的コンジュゲートの制限を回避するために、抗体の分子コンジュゲートを使用して、細胞表面分子にリガンドおよび/またはキメラ阻害剤を向ける組換え二重特異性一本鎖抗体を産生することができる。薬剤への抗体の添加は、薬剤が所望の標的部位(例えば、腫瘍部位)に相加的に蓄積することを可能にする。抗体ベースまたは非抗体ベースの標的化部分を使用して、リガンドまたは阻害剤を標的部位に送達することができる。好ましくは、調節されていないまたは疾患に関連する抗原のための天然の結合剤がこの目的のために使用される。
【0244】
投与されるべき活性成分の正確な量は、医師の判断に依存し、各個人に特有のものである。しかしながら、全身適用に適した投与量範囲が本明細書に開示されており、投与経路に依存する。投与方法も様々であるが、初回投与後、1回または複数回の間隔をあけて、注射などの方法で繰り返し投与することが一般的である。あるいは、インビボ治療のために指定された範囲で血液または骨格筋組織の濃度を維持するのに十分な持続的な静脈内注入が企図される。
【0245】
有効性の測定
本明細書に記載されているような、骨の異常成長からなる疾患に対する所定の治療法の有効性は、当業者であれば判断することができる。しかしながら、疾患または障害の兆候または症状のいずれか1つまたはすべてが有益な方法で変化し(例えば、骨化の減少、異常な骨成長の退行、痛みの減少、可動域の増加など)、疾患の他の臨床的に認められた症状またはマーカが改善され、あるいは、本明細書に記載された1つ以上の結晶性化合物または組成物を含む薬剤による治療後に、例えば少なくとも10%改善された場合、本明細書で使用される用語として、治療は「有効な治療」とみなされる。有効性は、疾患または障害の安定化、入院または医療介入の必要性によって評価されるように、個人が悪化しないことによっても測定することができる(すなわち、疾患の進行が停止するか、少なくとも遅れる)。これらの指標を測定する方法は、当業者に知られており、および/または本明細書に記載されている。治療は、個人または動物(いくつかの非限定的な例は、ヒト、または哺乳類を含む)における疾患の任意の治療を含み、以下を含む:(1)疾患を抑制すること、例えば、異常な骨の成長を阻止する、または進行を遅らせること;または(2)疾患を緩和すること、例えば、症状の退行を引き起こすこと;および(3)疾患の発症(例えば、外傷後の骨化)を予防する、またはその可能性を低減すること。
【0246】
ある疾患の治療に有効な量とは、それを必要とする哺乳動物に投与したときに、その疾患に対して本明細書で定義されている有効な治療をもたらすのに十分な量を意味する。薬剤の有効性は、例えば、異常な骨成長のサイズの縮小、異常な骨の沈着の遅延、骨成長の退行、可動性の改善などの異常な骨成長の物理的指標を評価することによって決定することができる。
【0247】
医薬組成物
特定の実施形態において、本発明は、式(I)の結晶性化合物および1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物、ならびにそのような結晶性化合物および1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を使用して調製される製剤に関する。特定の実施形態において、医薬調製物は、本明細書に記載されるような状態または疾患を治療または予防するのに使用するためのものであり得る。特定の実施形態において、医薬調製物は、ヒト患者における静脈内での使用に適した十分に低いパイロジェン活性を有する。特定の実施形態において、本発明はまた、栄養補助食品、獣医、および農業関連の使用に適した調製物に関する。
【0248】
例示的な薬学的に許容される賦形剤が本明細書に提示され、例えば、結合剤、崩壊剤、潤滑剤、腐食剤、可溶化剤、懸濁助剤、乳化剤、コーティング剤、シクロデキストリン、および/または緩衝剤が含まれる。投与量は、患者の症状、年齢、体重、治療または予防する障害の性質と重症度、投与経路、および薬剤の形態によって異なるが、一般的には、成人の患者には1日あたり0.01~3000mgの化合物を投与することが推奨されており、これを単回で投与してもよいし、分割して投与してもよい。担体と組み合わせて1つの剤形を作ることができる有効成分の量は、一般的に治療効果をもたらす化合物の量となる。
【0249】
所与の患者における治療の有効性に関して最も効果的な結果をもたらす投与の正確な時間および/または組成物の量は、特定の化合物の活性、薬物動態およびバイオアベイラビリティ、患者の生理学的状態(年齢、性別、疾患の種類および段階、一般的な身体状態、所定の投与量に対する反応性、および投薬の種類を含む)、投与経路などに依存する。しかしながら、上記のガイドラインは、治療を微調整するための基礎として使用することができ、例えば、最適な投与時間および/または量を決定することができるが、これには、対象をモニタし、投与量および/またはタイミングを調整することからなる日常的な実験以上のことは必要ではない。
【0250】
特定の実施形態において、組成物が投与される個体は、ヒトなどの哺乳動物、または非ヒト哺乳動物である。ヒトなどの動物に投与される場合、組成物または化合物は、好ましくは、例えば、本発明の化合物および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物として投与される。薬学的に許容される担体は当技術分野で周知であり、例えば、水または生理学的に緩衝された生理食塩水または他の溶媒またはビヒクル(グリコール、グリセロールなど)、オリーブ油などの油、または注射可能な有機エステルなどの水溶液が含まれる。好ましい実施形態において、そのような医薬組成物がヒトへの投与、特に侵襲的投与経路(すなわち、上皮バリアを通る輸送または拡散を回避する注射または移植などの経路)のためのものである場合、水溶液は、パイロジェンフリーまたは実質的にパイロジェンフリーである。賦形剤は、例えば、薬剤の遅延放出をもたらすために、または1つまたは複数の細胞、組織または器官を選択的に標的化するために選択することができる。医薬組成物は、錠剤、カプセル剤(スプリンクルカプセルおよびゼラチンカプセルを含む)、顆粒、再構成用の凍結乾燥物(lyophile)、散剤、液剤、シロップ、坐剤、注射剤などの投与単位形態であり得る。組成物はまた、経皮送達システム、例えば、皮膚パッチに存在させてもよい。組成物はまた、眼の粘膜投与による点眼薬などの局所投与に適した溶液中に存在することができる。
【0251】
薬学的に許容される担体は、例えば、本発明の化合物などの化合物の安定化、溶解性の増加、または吸収の増加に作用する生理学的に許容される薬剤を含有することができる。そのような生理学的に許容される薬剤としては、例えば、グルコース、スクロースまたはデキストランのような炭水化物、アスコルビン酸またはグルタチオンのような抗酸化剤、キレート剤、低分子量タンパク質または他の安定剤または賦形剤が挙げられる。生理学的に許容される薬剤を含む薬学的に許容される担体の選択は、例えば、組成物の投与経路に依存する。調製物または医薬組成物は、自己乳化ドラッグデリバリーシステムまたは自己微小乳化ドラッグデリバリーシステムであり得る。医薬組成物(調製物)はまた、リポソームまたは他のポリマーマトリックスであってよく、それらは、例えば、本発明の化合物をその中に組み込むことができる。例えば、リン脂質または他の脂質を含むリポソームは、毒性がなく、生理学的に許容され、代謝可能な担体であり、製造および投与が比較的簡単である。
【0252】
「薬学的に許容できる」という語句は、本明細書においては、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題または合併症を伴わずにヒトおよび動物の組織と接触して使用するのに適し、合理的な利益/リスク比と釣り合う化合物、材料、組成物、および/または剤形を指すために使用される。
【0253】
本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」という句は、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒またはカプセル化材料などの薬学的に許容される材料、組成物またはビヒクルを意味する。各担体は、製剤の他の成分と適合性があり、患者に害を及ぼさないという意味で「許容可能」でなければならない。薬学的に許容される担体として役立つことができる材料のいくつかの例には、以下が含まれる:(1)糖(ラクトース、グルコース、スクロースなど);(2)でん粉(コーンスターチ、バレイショデンプンなど);(3)セルロース及びその誘導体(カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、酢酸セルロースなど);(4)トラガカント末;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)賦形剤(ココアバター、坐薬用ワックスなど);(9)油(落花生油、綿実油、紅花油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油及び大豆油など);(10)グリコール類(プロピレングリコールなど);(11)ポリオール類(グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコールなど);(12)エステル類(オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなど);(13)寒天;(14)緩衝剤(水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなど);(15)アルギン酸;(16)パイロジェンフリー水;(17)等張生理食塩水;(18)リンゲル液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸塩緩衝液;(21)医薬品製剤に使用されるその他の非毒性の適合性物質。特定の実施形態において、本発明の医薬組成物は、非発熱性であり、すなわち、患者に投与されたときに有意な温度上昇を誘発しない。
【0254】
「薬学的に許容される塩」という用語は、化合物の比較的毒性のない無機および有機の酸付加塩を指す。これらの塩は、化合物の最終的な単離および精製中にインサイチュで調製することができ、または遊離塩基形態の精製化合物を適切な有機または無機酸と別々に反応させ、こうして形成された塩を単離することによって調製することができる。代表的な塩には、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、吉草酸、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチル酸塩、メシル酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリルスルホン酸塩、およびアミノ酸塩などが含まれる。結晶性塩の調製は、以下の実施例に詳述されている(例えば、ベージュ(Berge)他、(1977)、「Pharmaceutical Salts」、J.Pharm.Sci.、66:1-19を参照されたい)。
【0255】
他の場合において、本発明の方法において有用な化合物は、1つ以上の酸性官能基を含み得、したがって、薬学的に許容される塩基と薬学的に許容される塩を形成することができる。これらの場合の「薬学的に許容される塩」という用語は、化合物の比較的毒性のない無機および有機の塩基付加塩を指す。これらの塩は、同様に、化合物の最終的な単離および精製中にその場で調製することができ、またはその遊離酸形態の精製された化合物を、薬学的に許容される金属カチオンの水酸化物、炭酸塩、または重炭酸塩などの適切な塩基、アンモニア、または薬学的に許容される有機第一級、第二級、または第三級アミンと別々に反応させることによって調製することができる。代表的なアルカリ塩またはアルカリ土類塩には、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩などが含まれる。塩基付加塩の形成に有用な代表的な有機アミンには、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジンなどが含まれる(例えば、上記のベージュ他を参照のこと)。
【0256】
医薬組成物(調製物)は、例えば経口投与(例えば、水性または非水性の溶液または懸濁液、錠剤、カプセル(スプリンクルカプセルおよびゼラチンカプセルを含む)、ボーラス、散剤、顆粒剤、舌への適用のためのペースト);口腔粘膜からの吸収(例えば、舌下)、肛門に、直腸に、または、膣内に(例えば、ペッサリー、クリームまたはフォームなど);非経口的に(例えば、滅菌溶液または懸濁液として、筋肉内、静脈内、皮下または髄腔内を含む);鼻腔内;腹腔内;皮下;経皮(例えば皮膚に貼るパッチ);および局所的に(例えば、皮膚に塗布するクリーム、軟膏、スプレー、または点眼薬として)、を含む多数の投与経路の任意のものによって対象に投与され得る。化合物はまた、吸入用に処方されてもよい。特定の実施形態において、化合物は、滅菌水に単純に溶解または懸濁されてもよい。適切な投与経路およびそれに適した組成物の詳細は、例えば、米国特許第5,059,059号明細書、米国特許第6,110,973号明細書、米国特許第5,763,493号明細書、米国特許第5,731,000号明細書、米国特許第5,541,231号明細書、米国特許第5,427,798号明細書、米国特許第5,358,970号明細書および米国特許第4,172,896号明細書、ならびにそこに引用されている特許に見出すことができる。
【0257】
製剤は、簡便には単位剤形で提示することができ、薬学の分野でよく知られている任意の方法によって調製することができる。担体材料と組み合わせて単一の剤形を生成することができる活性成分の量は、治療される宿主、特定の投与様式に応じて変化するであろう。担体材料と組み合わせて単一の剤形を生成することができる活性成分の量は、一般に、治療効果を生成する化合物のその量である。一般に、100パーセントのうち、この量は、有効成分の約1パーセントから約99パーセント、好ましくは約5パーセントから約70パーセント、最も好ましくは約10パーセントから約30パーセントの範囲である。
【0258】
これらの製剤または組成物を調製する方法は、本発明の化合物などの活性化合物を、担体、および任意選択的に1つ以上の補助成分と混合する(bring into association)ステップを含む。一般に、製剤は、本発明の化合物を液体担体または細かく分割された固体担体、あるいはその両方と均一かつ密接に混合し、次いで必要に応じて生成物を成形することによって調製される。
【0259】
経口投与に適した本発明の製剤は、活性成分としてそれぞれ所定量の本発明の化合物を含有する、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、トローチ剤(通常、スクロースとアカシアまたはトラガカントの風味をつけたベースを使用する)、凍結乾燥物、粉末剤、顆粒剤、または水性もしくは非水性液体中の溶液もしくは懸濁液として、または水中油型もしくは油中水型の液体エマルジョンとして、またはエリキシル剤もしくはシロップとして、またはパスチル剤(ゼラチンとグリセリン、またはスクロースとアカシアのような不活性塩基を使用する)および/または洗口剤などの形態であり得る。組成物または化合物は、ボーラス、舐剤またはペーストとして投与することもできる。
【0260】
経口投与用のカプセル剤(スプリンクルカプセルおよびゼラチンカプセルを含む)、錠剤、丸剤、糖衣錠、散剤、顆粒などのための固体剤形を調製するために、活性成分を、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムなどの1つ以上の薬学的に許容される担体、および/または以下のいずれかと混合する:(1)充填剤または増量剤(デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、および/またはケイ酸など);(2)結合剤(カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよび/またはアカシアなど);(3)湿潤剤(グリセロールなど);(4)崩壊剤(寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプンまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ある種のケイ酸塩および炭酸ナトリウムなど);(5)溶解遅延剤(パラフィンなど);(6)吸収促進剤(四級アンモニウム化合物など);(7)湿潤剤(セチルアルコールおよびグリセロールモノステアレートなど);(8)吸収剤(カオリン、ベントナイト粘土など);(9)滑剤(タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム及びそれらの混合物など);(10)錯化剤(修飾および非修飾シクロデキストリンなど);(11)着色剤。カプセル(スプリンクルカプセルおよびゼラチンカプセルを含む)、錠剤および丸薬の場合、医薬組成物はまた、緩衝剤を含み得る。同様のタイプの固体組成物はまた、ラクトースまたは乳糖、ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどのような賦形剤を使用して、軟質および硬質充填ゼラチンカプセルの充填剤として使用され得る。
【0261】
錠剤は、任意選択で1つまたは複数の補助成分を用いて、圧縮または成形によって製造することができる。圧縮錠剤は、結合剤(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウムまたは架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、界面活性剤または分散剤を使用して調製することができる。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を適切な機械で成形することによって製造することができる。
【0262】
錠剤、ならびに糖衣錠、カプセル剤(スプリンクルカプセルおよびゼラチンカプセルを含む)、丸剤および顆粒剤などの医薬組成物の他の固体剤形は、必要に応じて、割線が付与される(scored)か、あるいはコーティングおよびシェル、例えば腸溶性コーティングおよび薬学的製剤化技術において周知の他のコーティングを用いて調製されてもよい。それらはまた、例えば、所望の放出プロファイルを提供するために様々な比率でヒドロキシプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、リポソームおよび/またはミクロスフェアを用いて、その中で活性成分のゆっくりした、または制御された放出を提供するように製剤化されてもよい。それらは、例えば、細菌保持フィルタによる濾過によって、または使用直前に滅菌水またはいくつかの他の滅菌注射可能媒体に溶解することができる滅菌固体組成物の形態の滅菌剤を組み込むことによって、滅菌され得る。これらの組成物はまた、任意選択的に不透明化剤を含有することができ、それらは、胃腸管の特定の部分においてのみ、または優先的に、任意選択的に、遅延様式で、活性成分を放出する組成物であり得る。使用可能な包埋組成物の例には、ポリマー物質およびワックスが含まれる。活性成分は、適当な場合には、1種以上の上記賦形剤と共にマイクロカプセル化された形態であってもよい。
【0263】
経口投与に有用な液体剤形には、薬学的に許容されるエマルジョン、再構成のための凍結乾燥物、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシルが含まれる。有効成分に加えて、液体投与形態は、例えば、水または他の溶媒、シクロデキストリンおよびそれらの誘導体、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(特に綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物など、当技術分野で一般的に使用される不活性希釈剤を含有してもよい。
【0264】
不活性希釈剤に加えて、本発明の組成物はまた、湿潤剤、潤滑剤、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどの乳化剤および懸濁剤、または甘味剤、香味料、着色剤、芳香剤、防腐剤、または抗酸化剤などのアジュバントを含むことができる。
【0265】
懸濁剤は、活性化合物に加えて、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、メタヒドロキシアルミニウム、ベントナイト、寒天およびトラガカント、ならびにそれらの混合物などの懸濁化剤を含み得る。
【0266】
直腸、膣、または尿道投与用の医薬組成物の製剤は、坐剤として提示することができ、これは1つ以上の活性化合物を、例えば、カカオバター、ポリエチレングリコール、坐剤ワックスまたはサリチル酸塩を含む1つ以上の適切な非刺激性賦形剤または担体と混合することによって調製することができ、それは、室温では固体であるが、体温では液体であるため、直腸または膣腔内で溶融し、活性化合物を放出する。
【0267】
口腔に投与するための医薬組成物の製剤は、マウスウォッシュ、経口スプレー、または経口軟膏として提供することができる。
代替的または追加的に、組成物は、カテーテル、ステント、ワイヤ、または他の管腔内デバイスを介した送達のために処方することができる。このようなデバイスを介した送達は、膀胱、尿道、尿管、直腸、または腸への送達に特に有用であり得る。
【0268】
膣内投与に適した製剤には、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム、または当技術分野で適切であることが知られているような担体を含むスプレー製剤も含まれる。
【0269】
局所または経皮投与用の剤形には、粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチおよび吸入剤が含まれる。活性化合物は、無菌条件下で、薬学的に許容される担体、および必要とされる可能性のある任意の防腐剤、緩衝液、または噴射剤と混合することができる。
【0270】
軟膏、ペースト、クリームおよびゲルは、活性化合物に加えて、動物性および植物性脂肪、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルクおよび酸化亜鉛、またはこれらの混合物などの賦形剤を含有してもよい。
【0271】
粉末およびスプレーは、活性化合物に加えて、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウムおよびポリアミド粉末、またはこれらの物質の混合物などの賦形剤を含有することができる。スプレーはさらに、クロロフルオロ炭化水素および揮発性非置換炭化水素、例えばブタンおよびプロパンのような通常の噴射剤を含むことができる。
【0272】
本明細書に記載の化合物は、代替的に、エアロゾルによって投与することができる。これは、水性エアロゾル、リポソーム調製物、または組成物を含む固体粒子を調製することによって達成される。非水性(例えば、フルオロカーボン推進剤)懸濁液を使用することができる。ソニックネブライザーは、化合物の分解を引き起こす可能性のあるせん断への薬剤の曝露を最小限に抑えるため、好ましい。
【0273】
通常、水性エアロゾルは、従来の薬学的に許容される担体および安定剤と一緒に薬剤の水溶液または懸濁液を処方することによって作製される。担体および安定剤は、特定の組成物の必要条件によって異なるが、典型的には、非イオン界面活性剤(Tween(登録商標)、Pluronic(登録商標))、ソルビタンエステル、レシチン、Cremophors(登録商標)、ポリエチレングリコールのような薬学的に許容される共溶媒、血清アルブミンのような無害なタンパク質、オレイン酸、グリシンのようなアミノ酸、緩衝液、塩、糖、または糖アルコールを含む。エアロゾルは一般的に等張溶液から調製される。
【0274】
経皮パッチは、本発明の化合物の身体への制御された送達を提供するという付加的な利点を有する。そのような剤形は、活性化合物を適切な媒体に溶解または分散させることによって製造することができる。吸収促進剤を使用して、皮膚を横切る化合物の流れを増加させることもできる。そのようなフラックスの速度は、速度制御膜を設けるか、またはポリマーマトリックスまたはゲルに化合物を分散させることによって制御することができる。
【0275】
眼科用処方物、眼軟膏、粉末、溶液などもまた、本発明の範囲内であると考えられる。代表的な眼科用処方物は、米国特許出願公開第2005/0080056号明細書、米国特許出願公開第2005/0059744号明細書、米国特許出願公開第2005/0031697号明細書及び米国特許出願公開第2005/004074号明細書、並びに米国特許第6,583,124号明細書に記載されており、これらの内容は参照により本明細書に組み込まれる。必要に応じて、液体眼科用製剤は、涙液、房水または硝子体液と同様の特性を有するか、またはそのような液体と適合可能である。好ましい投与経路は、局所投与(例えば、点眼剤などの局所投与、またはインプラントを介した投与)である。
【0276】
本明細書で使用される「非経口投与」および「非経口投与される」という語句は、通常は注射による、経腸および局所投与以外の投与様式を意味し、限定されるものではないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、被膜内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管内、皮下(subcutaneous)、表皮下(subcuticular)、関節内、被膜下内、くも膜下内、脊髄内および胸骨内の注射および注入を含む。非経口投与に適した薬学的組成物は、使用直前に滅菌注射可能な溶液または分散液に再構成され得る1種以上の薬学的に許容される滅菌等張水性もしくは非水性溶液、分散液、懸濁液もしくはエマルジョン、または滅菌粉末と組み合わせた1種以上の活性化合物を含み、これらは、処方物を、意図されたレシピエントの血液または懸濁化剤もしくは増粘剤と等張にする抗酸化剤、緩衝液、静菌剤(bacteriostats)、溶質を含み得る。
【0277】
本明細書で使用される「全身投与」、「全身投与される」、「末梢投与」および「末梢投与される」という句は、リガンド、薬剤、その他の物質を中枢神経系に直接投与するのではなく、患者の体内に入り、代謝および他の同様のプロセスを経るように投与することを意味し、例えば皮下投与などが挙げられる。
【0278】
本発明の医薬組成物に採用することができる好適な水性および非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの好適な混合物、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルが挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用、分散液の場合は必要な粒子径の維持、界面活性剤の使用などによって維持することができる。
【0279】
これらの組成物はまた、防腐剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤などのアジュバントを含み得る。微生物の作用の防止は、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などの各種抗菌剤や抗真菌剤を含有させることによって確保することができる。糖、塩化ナトリウムなどの等張化剤を組成物に含めることも望ましい場合がある。さらに、モノステアリン酸アルミニウムやゼラチンなどの吸収を遅延させる薬剤を配合することにより、注射剤の吸収を延長させることができる。
【0280】
場合によっては、薬物の効果を延長するために、皮下または筋肉内注射からの薬物の吸収を遅らせることが望ましい。これは、水溶性が低い結晶性またはアモルファス材料の液体懸濁液を使用することによって達成することができる。その場合、薬物の吸収速度はその溶解速度に依存し、溶解速度は結晶の大きさと結晶形に依存する可能性がある。あるいは、非経口的に投与された薬物形態の遅延吸収は、薬物を油性ビヒクルに溶解または懸濁することによって達成される。
【0281】
注射可能なデポ型は、ポリラクチド-ポリグリコリドのような生分解性ポリマー中に、対象化合物のマイクロカプセル化マトリックスを形成することによって作製される。ポリマーに対する薬物の比率、および使用される特定のポリマーの性質に応じて、薬物放出の速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が挙げられる。デポ注射用製剤はまた、体内組織と適合性のあるリポソームまたはマイクロエマルジョンに薬物を封入することによって調製される。
【0282】
薬剤の調製物は、経口的、非経口的、局所的、または直腸的に与えられ得る。無論、それぞれの投与経路に適した形で投与される。例えば、それらは、錠剤またはカプセルの形態で、注射、吸入、点眼薬、軟膏、坐剤、注入によって、ローションまたは軟膏によって局所的に、そして坐剤によって経直腸的に、投与される。経口投与が好ましい。
【0283】
本発明の方法で使用するために、活性化合物は、それ自体で、または例えば、薬学的に許容される担体と組み合わせて0.1~99.5%(より好ましくは0.5~90%)の活性成分を含む医薬組成物として与えることができる。
【0284】
導入方法は、再充填可能な(rechargeable)デバイスまたは生分解性のデバイスによって提供されてもよい。近年、蛋白質性バイオ医薬品を含む薬物の制御された送達のために、様々な徐放性高分子デバイスが開発され、インビボで試験されている。生分解性ポリマーおよび非分解性ポリマーの両方を含む種々の生体適合性ポリマー(ヒドロゲルを含む)を使用して、特定の標的部位における化合物の持続放出のためのインプラントを形成することができる。
【0285】
これらの化合物は、治療のために、経口、経鼻(例えばスプレー)、経直腸、膣内、非経口、槽内、および局所的(例えば、粉末、軟膏またはドロップ)、例えば、口腔内および舌下を含む、任意の適切な投与経路によってヒトおよび他の動物に投与することができる。
【0286】
選択された投与経路に関係なく、適切な水和形態で使用され得る化合物、および/または本発明の医薬組成物は、当業者に知られている従来の方法によって薬学的に許容される剤形に処方される。
【0287】
医薬組成物中の活性成分の実際の投与量レベルは、患者に毒性を及ぼすことなく、特定の患者、組成物、および投与様式について、所望の治療応答を達成するのに有効な活性成分の量が得られるように変更することができる。
【0288】
選択された投与レベルは、採用された特定の化合物もしくは化合物の組み合わせ、またはそのエステル、塩もしくはアミドの活性、投与経路、投与時間、採用された特定の化合物の排泄率、治療期間、採用された特定の化合物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物および/または材料、治療を受ける患者の年齢、性別、体重、状態、一般的な健康状態および以前の病歴など、医療技術の分野でよく知られているような要因を含む様々な要因に依存する。一般的に、本発明の組成物は、非経口投与のために、他の物質の中でも、本明細書に開示された化合物を約0.1~30%w/v含む水溶液で提供されてもよい。典型的な投与量の範囲は、1日あたり約0.01~約50mg/kg体重で、1回の単回投与または2~4回の分割投与で与えられる。各分割投与は、本発明の同じ化合物または異なる化合物を含んでいてもよい。
【0289】
当業者である医師または獣医師は、必要とされる医薬組成物の治療有効量を容易に決定し、処方することができる。例えば、医師または獣医師は、所望の治療効果を得るために必要とされるレベルよりも低いレベルで医薬組成物または化合物の投与を開始し、所望の効果が得られるまで投与量を徐々に増加させることができる。主題の治療方法に関する化合物の「治療有効量」は、治療対象となる疾患や状態、または美容目的のための臨床的に許容される基準、例えば、あらゆる医療行為に適用される妥当な利益/リスク比で、(哺乳類、好ましくはヒトに)所望の投与レジメンの一部として投与された場合に、症状を緩和し、状態を改善し、または病状の発症を遅らせる製剤中の化合物の量を指す。化合物の有効量は、対象の体重、性別、年齢、および病歴に応じて異なることが一般的に理解されている。有効量に影響を与える他の要因としては、患者の症状の重さ、治療対象の疾患、化合物の安定性、および必要に応じて本発明の化合物と一緒に投与される別の種類の治療薬などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。薬剤の複数回投与により、より多くの総用量を送達することができる。本発明の化合物を複数回投与することにより、より多くの総投与量を得ることができる。有効性および投与量を決定する方法は、当業者に知られている(アイセルベーカー(Isselbacher)他、1996年、「Harrison’s Principles of Internal Medicine」、第13版、1814-1882、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0290】
一般に、本発明の組成物および方法で使用される活性化合物の適切な1日用量は、治療効果を生み出すのに有効な最低用量である化合物の量である。このような有効量は、一般的に上述の要因に依存する。
【0291】
所望であれば、1日の有効量の活性化合物は、1、2、3、4、5、6またはそれ以上のサブ用量として、1日を通して適切な間隔で別々に投与することができ、任意に、単位剤形で投与することができる。本発明の特定の実施形態において、活性化合物は、1日2回または3回投与されてもよい。好ましい実施形態において、活性化合物は、1日1回投与されるであろう。
【0292】
この治療を受ける患者は、必要とする任意の動物であり、霊長類、特にヒト、およびウマ、ウシ、ブタ、ヒツジなどの他の哺乳類;ならびに家禽およびペット全般を含む。
特定の実施形態において、本発明の化合物は、単独で使用してもよいし、別の種類の治療薬と併用してもよい。本明細書では、「併用投与(conjoint administration)」という語句は、2つ以上の異なる治療用化合物を、先に投与された治療用化合物が体内でまだ有効である間に第2の化合物が投与されるように(例えば、2つの化合物が患者において同時に有効であり、2つの化合物の相乗効果を含む場合がある)投与する任意の形態を指す。例えば、異なる治療用化合物は、同じ製剤でも別の製剤でも、同時または順次に投与することができる。特定の実施形態において、異なる治療用化合物は、互いに1時間以内、12時間以内、24時間以内、36時間以内、48時間以内、72時間以内、または1週間以内に投与することができる。したがって、そのような治療を受ける個体は、異なる治療化合物の複合効果から利益を得ることができる。
【0293】
本発明は、本発明の組成物および方法における本発明の化合物の薬学的に許容される塩の使用を含む。特定の実施形態において、本発明の企図される塩には、これらに限定されないが、アルキル、ジアルキル、トリアルキルまたはテトラアルキルアンモニウム塩が含まれる。特定の実施形態において、本発明の企図される塩には、L-アルギニン、ベネンタミン、ベンザチン、ベタイン、水酸化カルシウム、コリン、デアノール、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、2-(ジエチルアミノ)エタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-メチルグルカミン、ヒドラバミン、1H-イミダゾール、リチウム、L-リジン、マグネシウム、4-(2-ヒドロキシエチル)モルホリン、ピペラジン、カリウム、1-(2-ヒドロキシエチル)ピロリジン、ナトリウム、トリエタノールアミン、トロメタミンおよび亜鉛の塩が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、本発明の企図される塩には、これらに限定されないが、Na、Ca、K、Mg、Znまたは他の金属塩が含まれる。
【0294】
薬学的に許容される酸付加塩はまた、水、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどとの様々な溶媒和物として存在することができる。そのような溶媒和物の混合物も調製することができる。そのような溶媒和物の供給源は、結晶化の溶媒からのもの、調製または結晶化の溶媒に固有のもの、またはそのような溶媒に付随するものであり得る。いくつかの実施形態において、開示された化合物の溶媒和物は、ジメチルスルホキシド溶媒和物であり得る。
【0295】
ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどの湿潤剤、乳化剤および潤滑剤、ならびに着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味料、香味料および芳香剤、防腐剤および抗酸化剤もまた、組成物中に存在し得る。
【0296】
薬学的に許容される抗酸化剤の例には以下が含まれる:(1)アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどの水溶性抗酸化剤;(2)パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロールなどの油溶性抗酸化剤;(3)クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などの金属キレート剤。
【0297】
現在一般的に説明されている本発明は、本発明の特定の態様および実施形態を説明する目的でのみ含まれ、本発明を限定することを意図しない以下の実施例を参照することにより、より容易に理解される。
【実施例0298】
実施例1:式I遊離塩基の化合物の合成
ステップ1:化合物4の合成
【0299】
【化3】
【0300】
DMSO(2100mL、3容量)中の2-ブロモマロンアルデヒド(700g、4.64モル)およびDIEA(889mL、5.1モル)の溶液に、DMSO(1050mL、1.5容量)中の1-メチル-4-(ピペリジン-4-イル)ピペラジン(1020g、5.56モル)の溶液を加えた。反応物を50℃に加熱し、一晩撹拌した。得られた溶液に、DMSO(350mL、0.5容量)中の3-アミノピラゾール(385.2g、4.64モル)の40℃溶液を加えた。氷酢酸(1.30L、22.4モル)を添加漏斗で添加した。添加により50.8℃から63.6℃の発熱が観察された。反応物を95℃に6時間加熱し、室温に冷却し、一晩撹拌した。得られた固形物を濾過により除去し、DMSO(2×350mL)で洗浄し、3Lの4ネックのRBFに移した。MTBE(3000mL)を加え、スラリーを3時間撹拌した。固形物を濾過し、MTBE(2×700mL)で洗浄し、真空下55℃で2時間乾燥した。505.0gの化合物4を単離した。収率=36.3%。
【0301】
H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ=8.43(d,J=2.5Hz,1H),8.09(d,J=2.7Hz,1H),7.94(d,J=2.3Hz,1H),6.57(s,1H),3.55(br d,J=12.3Hz,2H),2.73-2.53(m,7H),2.47(br s,3H),2.40-2.25(m,5H),1.99(br d,J=12.7Hz,2H),1.73(dq,J=4.0,12.0Hz,3H)。
【0302】
ステップ2:化合物5の合成
【0303】
【化4】
【0304】
6-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン(800g、2.66モル)、クロロホルム(9600mL)およびTHF(2400mL)の0~5℃溶液に、固体のNBS(477g、2.66モル)を、内部温度を<5℃に維持しながら3時間かけて少しずつ加えた。得られたスラリーを一晩撹拌しながら室温まで温めた。反応物を濾過し、望ましくない固形物をクロロホルム(2×800mL)ですすいだ。濾液を分液漏斗に移し、飽和NaHCO(6000mL、7.5容量)で洗浄した。層を分離し、水層をクロロホルム(1600mL、2容量)で逆抽出した。底部の有機層を合わせ、ブライン(5000mL)で洗浄した。上部の水層をクロロホルム(1600mL、2容量)で逆抽出した。底部の有機層を約4容量が残るまで濃縮した。濃縮されたスラリーをヘプタン(3×2400mL)と溶媒交換し、毎回4容量(volumes)まで濃縮し、得られたスラリーを周囲温度で一晩撹拌した。スラリーをろ過し、MTBE(2×1600mL)で洗浄し、真空下、40℃で一晩乾燥して、黄褐色の固体化合物5を889g得た。収率=85.6%。
【0305】
H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ=8.48(d,J=2.5Hz,1H),8.03(d,J=2.7Hz,1H),7.92(s,1H),3.55(br d,J=12.3Hz,2H),3.07-2.81(m,1H),2.76-2.65(m,4H),2.62(br s,4H),2.50-2.27(m,8H),1.98(br d,J=12.7Hz,2H),1.73(dq,J=3.8,12.0Hz,3H)。
【0306】
ステップ3:式I遊離塩基の化合物の合成
【0307】
【化5】
【0308】
フラスコ中の3-ブロモ-6-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン(化合物5、500g、1.32モル)、7-フルオロ-6-メトキシ-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)キノリン(420g、1.05当量)、2-MeTHF(7.5リットル、15容量)および3MのKPO(1.32リットル、2.64容量、3当量)のスラリーを、室温で窒素流を用いて30分間脱気した。脱気したスラリーにPdCl(dppf)DCM(75.4g)を加え、得られた混合物をさらに30分間窒素で脱気した。反応物を60℃に加熱し、60℃で一晩撹拌した。得られた混合物を冷却し、最小容量まで濃縮した。濃縮物に、CHCl(7リットル、14容量)および水(3.5リットル、7容量)を加え、30分間撹拌した後、層を分離した。水層(最上層)を2×5リットル(2×10容量)のCHClで抽出した。合わせた有機層を最小容量に濃縮し、8.5リットル(17容量)の1:1MeOH:CHClまで取り出した。得られた溶液に250gのネキサゲン(Nexagen)チオプロピルシリカルゲルおよび250gのNorit(登録商標)CA1炭素を加えた。得られたスラリーを50℃に一晩加熱した。スラリーを室温で濾過して固形物を除去し、得られた濾液を最小容量に濃縮した。濃厚なスラリーを8.5リットル(17容量)のDCMに取り、得られた溶液に250gのネキサゲンチオプロピルシリカゲルおよび250gのNorit(登録商標)CA1炭素を加え、得られたスラリーを一晩35℃に加熱した。スラリーを室温で濾過して固形物を除去した。濾液を分液漏斗に入れ、水層を除去した。得られた溶液を、固体が形成されたEtOAcと溶媒交換した。得られたスラリーをEtOAcで希釈して全容量を5リットル(10容量)にした。MTBE(2.5リットル)を添加し、得られたスラリーを室温で一晩撹拌した。固形物を濾過し、2×2.5リットル(2×5容量)のMTBEで洗浄し、430gの表題化合物を得た。(全体の収率68.5%)。
【0309】
H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ=8.83(d,J=4.5Hz,1H),8.57(d,J=2.7Hz,1H),8.31(s,1H),8.22(d,J=2.7Hz,1H),7.80(d,J=12.0Hz,1H),7.60-7.53(m,2H),3.90(s,3H),3.75-3.55(m,3H),2.89-2.73(m,2H),2.68(br s,4H),2.60-2.39(m,5H)2.33(s,3H),2.16-1.98(m,2H,1.79(dq,J=3.7,11.9Hz,2H)。
【0310】
実施例2A:式Iモノコハク酸塩のアモルファス化合物の合成
【0311】
【化6】
【0312】
7-フルオロ-6-メトキシ-4-(6-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)キノリン(701.93g、1.48モル)およびエタノール(14リットル、200プルーフ(Proof))を70℃で2時間撹拌した。コハク酸溶液(176g、1.49モル)およびエタノール(5リットル、200プルーフ)をゆっくり加え、内容物を75℃で8時間撹拌して、完全な塩を形成させた。得られたスラリーを、真空下で5リットルに濃縮し、その際に内部温度を常に20℃以上に維持した。ヘプタンを加え全量14リットルとし、内部温度を20℃以上に維持しながらスラリーを再度濃縮した。プロトンNMR(CDCl)で測定したヘプタンに対するエタノールの溶媒比が5重量%以下になるように、上記の濃縮/再置換を6回行った。最終スラリーを20℃に冷却し、固形物を濾過し、洗浄はしなかった。固形物を真空下45℃のオーブンに入れ、恒量にして、表題の化合物を黄色固体として得た(864.1g、収率98.6%)。
【0313】
H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ=8.83(d,J=2.6Hz,1H),8.79(d,J=4.6Hz,1H),8.66(d,J=2.7Hz,1H),8.61(s,1H),7.83(d,J=12.3Hz,1H),7.70(s,1H),7.68(d,J=4.6Hz,1H),3.90(s,3H),3.74(br d,J=12.6Hz,2H),2.78-2.62(m,3H),2.61-2.52(m,3H),2.47-2.33(m,9H),2.23(s,3H),1.90(br d,J=11.7Hz,2H),1.65-1.55(m,2H)。
【0314】
実施例2B:式Iモノコハク酸塩のアモルファス化合物の合成
【0315】
【化7】
【0316】
7-フルオロ-6-メトキシ-4-(6-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)キノリン(16g、0.336モル)およびエタノール(360mL、200プルーフ)を70℃で2時間撹拌した。コハク酸溶液(4.0g、0.339モル)およびエタノール(160mL、200プルーフ)をゆっくり加え、内容物を75℃で8時間撹拌して、完全な塩を形成させた。得られたスラリーを、真空下で160mLに濃縮し、その際に内部温度を常に20℃以上に維持した(正しい多形体を得るために重要)。ヘプタンを総量160mLになるように加え、スラリーを20℃以上で8時間撹拌した。最終スラリーを20℃に冷却し、固形物をろ過し、2×23mLの1:1=エタノール:ヘプタンで洗浄した。固形物を真空下の45℃のオーブンに入れ、恒量になるまで乾燥させて、表題の化合物を固体として得た(18.26g、収率91%)。
【0317】
H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ=8.83(d,J=2.6Hz,1H),8.79(d,J=4.6Hz,1H),8.66(d,J=2.7Hz,1H),8.61(s,1H),7.83(d,J=12.3Hz,1H),7.70(s,1H),7.68(d,J=4.6Hz,1H),3.90(s,3H),3.74(br d,J=12.6Hz,2H),2.78-2.62(m,3H),2.61-2.52(m,3H),2.47-2.33(m,9H),2.23(s,3H),1.90(br d,J=11.7Hz,2H),1.65-1.55(m,2H)。
【0318】
実施例3~7の分析方法
X線粉末回折
CuKα放射線(40kV、40mA),θ-2θゴニオメータおよび0.6mmの発散と受信スリット、およびLynxeye(登録商標)検出器を用いてBruker D8回折計でX線粉末回折(XRPD)パターンを収集した。機器は、認証されたコランダム標準(NIST1976)を用いて性能チェックされている。データ収集に使用されたソフトウェアは、Diffrac Plus XRD Commander v2.6.1であり、データは、Materials Data(登録商標)Jade Software v9.7.0を使用して分析および提示された。試料は、2~50mgの試料をワセリンの薄層で被覆されたゼロバックグラウンドホルダーに移し、ガラスプレートで平らにして調製し、周囲温度で分析した。分析中に試料をそれ自身の平面内で回転させた。機器のパラメータを以下の表1に示す。
【0319】
【表1】
【0320】
示差走査熱量測定
TA Instruments(登録商標)Q1000 DSC、s/n1000-0189を用いて示差走査熱量測定(DSC)分析を行った。試料を秤量し、アルミニウム製の密閉パンと手動ピンホール付きの蓋に入れた。パンはTzero(商標)プレスを用いて圧着した。試料を10℃/分で25~350℃まで分析した。データをUniversal Analysis 2000、v4.5Aを用いて処理した。
【0321】
熱重量分析
TA Instruments(登録商標)Q50 TGA、s/n50-0180を用いて熱重量分析(TGA)を行った。風袋を量った白金TGAパンに試料を装填し、10℃/分で25~350℃まで分析した。データをUniversal Analysis 2000、v4.5Aを用いて処理した。
【0322】
動的蒸気吸着/脱着
Hiden Isochema社のIGAsorp,s/n IGSA126を用いて動的蒸気吸着/脱着(DVS)分析を行った。試料を機器の風袋を量ったバスケットに装填し、40℃で1時間乾燥させた。次に、試料を25℃で以下の相対湿度(%RH)ステップで分析した:吸着(%RH):0.0、10.0、20.0、30.0、40.0、50.0、60.0、70.0、80.0、90.0、95.0、脱着(%RH):90.0、80.0、70.0、60.0、50.0、40.0、30.0、20.0、10.0、0.0。
【0323】
実施例3A:式I遊離塩基の化合物の特性評価
上記のXRPD技術を用いて、式I遊離塩基の化合物は結晶性であり、以下のピークを示した:pg.4 図3。さらに、熱データは、遊離塩基が無水であり、溶媒和されていないことを示す(図4)。DSCは、オンセット(onset)が238.6℃の鋭い吸熱を示し、融解を示す。TGAでは、266.3℃で分解するまで重量減少はわずか(0.4%)であった。DVSデータによると、材料は吸湿性がなく、重量増加と損失が0.5%であり、脱着時にはわずかなヒステリシスがある(図5)。DVS分析後のXRPDでは変化は観察されなかった。
【0324】
実施例4A:式Iモノコハク酸塩の形態Aの結晶性化合物の合成
2gの式I遊離塩基の化合物を60mLの容器に添加した。0.5gのコハク酸を30mLのTHFに溶解し、次いで酸溶液を遊離塩基固体に添加し、周囲温度で一晩撹拌した。0.45μmナイロンフィルタチューブを用いた遠心分離によって固形物を単離し、XRPD(図6)およびNMR(図7)分析の前に真空下で約2時間乾燥した。両分析は、形態Aがスケールアップから単離されることを示した。2.6ppmのピークは1モルのコハク酸に起因する。スケールアップの収率は88%であった。
【0325】
実施例4B:式Iモノコハク酸塩の形態Aおよび形態Cの結晶性化合物の合成
2gの式I遊離塩基の化合物を20mLのシンチレーションバイアルに添加した。0.5gのコハク酸を20mLのEtOHに溶解し、次いで酸溶液を遊離塩基固体に添加し、周囲温度で一晩撹拌した。固形物を、0.45μmのナイロンフィルタチューブを用いた遠心分離によって単離し、XRPD分析(図8)の前に周囲条件下で乾燥し、これは、形態Aがスケールアップから単離されることを示した。スケールアップの収率は79%であった。この材料はDVS(図9)でも分析した。DVSは、材料が吸湿性であり、重量の増加および損失が38%であり、脱着時に顕著なヒステリシスを有することを示す。これは、実施例3Aの生成物に類似している。この材料は、80%RH以下で非吸湿性である。DVS後のXRPD分析(図10)は、この材料が高度に無秩序化し、水和物、形態Cに変化することを示している。
【0326】
実施例4C:式Iモノコハク酸塩の形態Aおよび形態Bの結晶性化合物の合成
100mgの式I遊離塩基の化合物を1グラム(dram)のバイアルに添加した。25mgのコハク酸を1mLのEtOHに溶解し、次いで酸溶液を遊離塩基固体に添加し、1日間スラリー化した。固形物を、0.45μmのナイロンフィルタチューブを用いた遠心分離によって単離し、XRPD分析の前に周囲条件下で乾燥し、これは、物質が形態Aおよび形態Bの混合物であることを示した(図11)。
【0327】
実施例5:多形体溶媒スクリーニング試験
30の実験は、最初に式Iモノコハク酸塩の化合物の安定な多形スクリーニングの一部として行われ、表2に詳述され、表3は、式Iモノコハク酸塩の化合物で始まり、より安定な多形の形成を促進する結晶化技術、例えば、徐冷、徐蒸発、蒸気拡散、および長時間にわたるスラリーのような技術を用いて実施された19の実験を示す。表4.3は、式Iの化合物のコハク酸塩形成を研究するために、遊離塩基から出発して、他の化学量論が存在するかどうかを決定するために、コハク酸の種々の比率にて、11の実験を実施したことを示す。
【0328】
安定な多形および塩形成の実験は、形態A、形態B、形態C、または形態の混合物のいずれかをもたらした。形態Cは、水または水を含有することが知られている溶媒(すなわちエタノールまたはTHF)を含有する系から生じた水和物であってもよい。形態Bは、スクリーニング中の種々の条件および溶媒系に由来する無水多形であると特徴付けられた。すべての多形は、式Iの遊離塩基およびコハク酸の化合物との1:1の化学量論的塩であることが確認された。コハク酸塩の他の化学量論は確認されなかった。
【0329】
【表2】
【0330】
【表3-1】
【0331】
【表3-2】
【0332】
実施例6:安定な多形溶媒スクリーニング試験
式(I)形態Aの化合物を出発物質として使用して、以下の表4の実験は、形態Aおよび形態Bの両方とも無水であるため、両者の間の相違を特定した。エタノールおよびヘプタンの比率を変化させ、これらの溶媒を使用した温度条件を調べた。その理由は、これらが最終的な結晶化条件として選択されたためである。長時間の徐冷やスラリー化(slurries)のようなより安定した多形の形成を促進する結晶化技術を用いて追加実験を行った。衝突沈殿(crash precipitation)、衝突冷却、高速蒸発技術など、準安定形態を対象とした他の実験も実施した。
【0333】
形態A、B、およびCに加えて、混合物中で新しい多形が形態Dとして同定された。特性データに基づくと、この物質は水和物である可能性が高い。形態Cの無秩序なXRPDパターンはより結晶性の高い形態Dのパターンとは異なる。
【0334】
【表4-1】
【0335】
【表4-2】
【0336】
形態Aは、無水で溶媒和されていない結晶性の固体である(図12)。DSCは、184.3℃のオンセットを伴う鋭い吸熱を示す(図13)。201.1℃で分解するまで、TGAで最小重量損失(minimal weight loss)(0.5%)が観察される。
【0337】
形態Bは、無水で溶媒和されていない結晶性に乏しい固体である(図14)。DSCは138.6℃で小さな吸熱を示し、続いて169.6℃のオンセットを伴う鋭い吸熱を示す。最初の小さな吸熱現象の性質を決定するには、ホットステージ顕微鏡が必要であろう。178.0℃で分解するまで、TGAでは最小重量減少(0.9%)が観察された(図15)。DVSデータは、材料がわずかに吸湿性であり、重量の増加および損失が12%であり、脱着時にわずかなヒステリシスがあることを示している(図16)。B型は全体的に吸湿性が低いが、相対湿度が低い場合でも直ちに吸湿を開始する。DVS後のXRPD分析は、形態Bとも一致している(図17)。プロトンNMRにおける化学シフトは、この物質が、残留溶媒が存在しない化学構造と一致することを示す(図18)。2.6ppmのピークはコハク酸1モルに起因する。
【0338】
形態Cは、水和または溶媒和された(図19)無秩序な物質である。DSCは、最初に最大83.7℃の幅広い吸熱を示し、次に最大120.8℃の別の吸熱を示し、その直後に最大134.8℃の発熱が続く。最後の鋭い吸熱は、181.8℃のオンセットを伴って観察される。これは、形態Cが脱溶媒および再結晶して184℃の溶融物を有する形態Aになることを示唆している(図20)。プロトンNMRの化学シフトは化学構造と一致しており、残留溶媒は存在せず、形態Cが実際に水和物であることを示している(図21)。2.6ppmのピークは1モルのコハク酸に起因する。
【0339】
形態Dは、図22に示される比較XRPDスペクトルの矢印によって示されるように、形態Aまたは形態Bとの混合物として上記のように得られた。形態Dは、エタノールまたはヘプタンのいずれかを使用して得られた。熱データは、形態Dが水和または溶媒和されていることを示している(図23)。熱データは、形態Dが水和または溶媒和されていることを示す(図23)。DSCは、最大49.8℃の最初の幅広い吸熱に続いて、最大132.3℃の小さな発熱が生じ、その直後に、最大134.8℃の発熱が生じる。最後の鋭い吸熱は、182.7℃のオンセットを伴って観察される。したがって、形態Dは脱溶媒して再結晶し、184℃の溶融物を有する形態Aになる。この試料には形態Aの混合物も含まれていたので、再結晶を促進した可能性のある形態Aのシードが存在していた。プロトンNMRの化学シフトは化学構造と一致しており、残留溶媒はほとんど存在せず(1.5重量%EtOH)、形態Dがおそらくは水和物であることを示している(図24)。2.6ppmのピークは1モルのコハク酸に起因する。
【0340】
実施例7:式Iの形態Aおよび形態Bの化合物の競合スラリー
無水の形態Aと無水の形態Bとの間の熱力学的に安定な多形を決定するために、3つの異なる溶媒系:すなわちエタノール,テトラヒドロフランおよび2-ブタノン(MEK)/水(95:5)中で競合スラリーを行った。各溶媒系を、表5に示すように、5℃、周囲温度(RT)、および40℃の3つの異なる温度で評価した。エタノールおよびテトラヒドロフランは、材料の溶解度に基づいて選択した。潜在的なプロセス溶媒としてMEKを選択し、溶解度を高めるために水を添加した。
【0341】
【表5】
【0342】
5%の水の添加は、水和物、形態Cへの部分的な変換をもたらした。THFのような水を含有することが知られている溶媒の使用も、形態Cへの部分的な変換ももたらした。したがって、さらなる競合スラリーを、3つのさらなる溶媒系:エタノール/ヘプタン(1:5)、酢酸エチル/水(97:3)およびイソプロパノール/水(99:1)において実施した。エタノール/ヘプタン系は、-15℃、5℃、周囲温度(RT)および40℃で評価した。含水システムは、周囲温度(ambient temperature)でのみ評価した。結果は以下の表6のとおりである。スラリーは、上記のスラリーで実施された5日間ではなく7日間実施した。形態Dも水を含む競合スラリーに含まれた。
【0343】
【表6】
【0344】
上記の結果は、5日間にわたって行われたスラリーと比較して、形態Bの存在が減少するため、時間の経過とともに形態Aが最も安定した多形であることを示す。検討した広い温度範囲(約40℃~-15℃)は、形態Aと形態Bの間に臨界転移温度が存在するかどうかを決定するために設計した。形態Aはより高い融解吸熱事象を有したが、形態Bの方が融解熱量が大きいので、熱力学的な安定性は形態Aにあると考えられる。
【0345】
97:3のEtOAc/水スラリーは形態Cに完全に変換したが、99:1のIPA/水スラリーは形態Aに変換した。これらのデータは、水分活性が低い場合は、無水の形態Aが熱力学的に最も安定していることを示す。水分活性が高い場合、水和物の形態Cがより好ましい。
【0346】
実施例8:血清鉄濃度
この試験では、形態Aの投与による血液の鉄パラメータを評価した。8週齢の健康な雄のSprague-Dawleyラットに経口強制投与により毎日、ビヒクルまたは形態Aを1mgおよび2.5mgの用量で投与した。投与90日後に試験を終了し、血清試料を採取して鉄パラメータを分析した。採取した血液を室温で凝固させた後、遠心分離機でスピンダウンし、血清を分取した。血清鉄および不飽和鉄結合能(UIBC)は、Cobas(登録商標)6000(Roche)血液化学分析器を用い測定した。トランスフェリン飽和度は、総血清鉄レベルに対する総鉄結合能のパーセンテージとして計算した。
【0347】
実施例9:鉄不応性鉄欠乏性貧血に対する形態Aの影響
鉄不応性鉄欠乏性貧血(IRIDA)のマウスモデルを用いてIRIDAにおける形態Aの影響を決定した。簡単に説明すると、8週齢のC57BL/6マウスに、ルシフェラーゼ(対照)またはTMPRSS6(0.75mg/kg)のいずれかを標的とした脂質カプセル化siRNAを3日毎に静脈内投与した。TMPRSS6siRNAを受けるコホートがヘプシジンを増加させ、血清ヘモグロビンおよび血清鉄を減少させる時点まで、マウスはsiRNA処理を受ける。この時点で、マウスをさらにビヒクルまたは形態Aのいずれかを受けるようにランダム化する。マウスは、最初のsiRNA投与の12日後に安楽死させる。全血を採取し、血液学的パラメータについてアッセイする。さらに、血清を採取し、ELISAによってヘプシジン濃度を測定し、比色分析によって総鉄含有量を測定する。
【0348】
参照による組み込み
本明細書に記載されるすべての刊行物および特許は、それぞれの個々の刊行物または特許が、具体的かつ個別に、参照により組み込まれるように示されたかのように、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。矛盾がある場合、本明細書中の任意の定義を含む本出願が支配する。
【0349】
均等物
本発明の特定の実施形態が議論されてきたが、上記の明細書は例示的なものであり、限定的なものではない。本明細書および以下の特許請求の範囲を検討すると、本発明の多くの変形が当業者に明らかになるであろう。本発明の全範囲は、特許請求の範囲、それらの均等物の全範囲、および明細書、ならびにそのような変形を参照することによって決定されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
【手続補正書】
【提出日】2024-07-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0349
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0349】
均等物
本発明の特定の実施形態が議論されてきたが、上記の明細書は例示的なものであり、限定的なものではない。本明細書および以下の特許請求の範囲を検討すると、本発明の多くの変形が当業者に明らかになるであろう。本発明の全範囲は、特許請求の範囲、それらの均等物の全範囲、および明細書、ならびにそのような変形を参照することによって決定されるべきである。
以下に、上記実施形態から把握できる技術思想を付記として記載する。
[付記1]
式(I):
【化8】

の構造を有する結晶性化合物。
[付記2]
前記化合物が無水である、付記1に記載の結晶性化合物。
[付記3]
約7.05±0.2、15.16±0.2、21.05±0.2、21.26±0.2、および24.47±0.2の2θ値を有する、付記1または2に記載の結晶性化合物。
[付記4]
約3.58±0.2、7.05±0.2、13.8±0.2、14.16±0.2、15.16±0.2、16.18±0.2、16.80±0.2、17.15±0.2、17.69±0.2、18.29±0.2、18.84±0.2、20.29±0.2、21.05±0.2、21.26±0.2、22.68±0.2、23.84±0.2、24.47±0.2、24.84±0.2および28.47±0.2の2θ値を有する、付記3に記載の結晶性化合物。
[付記5]
約3.58±0.2、7.05±0.2、10.59±0.2、10.75±0.2、13.80±0.2、14.16±0.2、15.16±0.2、15.68±0.2、16.18±0.2、16.80±0.2、17.15±0.2、17.69±0.2、17.97±0.2、18.29±0.2、18.59±0.2、18.84±0.2、19.27±0.2、20.29±0.2、21.05±0.2、21.26±0.2、21.56±0.2、21.78±0.2、22.68±0.2、23.84±0.2、24.47±0.2、24.84±0.2、25.15±0.2、26.10±0.2、27.12±0.2、27.78±0.2、28.47±0.2、および29.06±0.2の2θ値を有する、付記4に記載の結晶性化合物。
[付記6]
実質的に図1に示されるようなXRPDパターンを有し、形態Aと表記されている、付記1または2に記載の結晶性化合物。
[付記7]
約9.79±0.2,13.05±0.2,22.91±0.2,23.60±0.2および26.25±0.2の2θ値を有する、付記1または2に記載の結晶性化合物。
[付記8]
約3.25±0.2、9.79±0.2、13.05±0.2、16.75±0.2、19.50±0.2、22.91±0.2、23.60±0.2および26.25±0.2の2θ値を有する、付記7に記載の結晶性化合物。
[付記9]
約3.25±0.2、9.79±0.2、13.05±0.2、13.61±0.2、14.39±0.2、16.75±0.2、18.50±0.2、19.50±0.2、22.91±0.2、23.60±0.2および26.25±0.2の2θ値を有する、付記8に記載の結晶性化合物。
[付記10]
実質的に図2に示されるようなXRPDパターンを有し、形態Bと表記されている、付記1または2に記載の結晶性化合物。
[付記11]
式(I):
【化9】

の構造を有する結晶性化合物。
[付記12]
約6.00±0.2、12.00±0.2、16.14±0.2、17.72±0.2、18.00±0.2、18.64±0.2および23.50±0.2の2θ値を有する、付記11に記載の結晶性化合物。
[付記13]
実質的に図3に示されるようなXRPDパターンを有し、遊離塩基と表記されている、付記11に記載の結晶性化合物。
[付記14]
付記1~13のいずれか一項に記載の塩および1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
[付記15]
式(I):
【化10】

の構造を有する結晶性化合物を調製するための方法であって:前記方法は、
a)式(I)化合物を提供すること;
b)酸を加えて混合物を形成すること;および
c)式(I)の化合物を含む混合物から式(I)の化合物を結晶化させること、
を含み、前記結晶性化合物は塩である、方法。
[付記16]
前記結晶性化合物が無水である、付記15に記載の方法。
[付記17]
前記結晶性化合物が水和物である、付記15に記載の方法。
[付記18]
前記式(I)の化合物が少なくとも1つの溶媒中に存在する、付記15に記載の方法。
[付記19]
前記酸が少なくとも1つの溶媒中に存在する、付記15に記載の方法。
[付記20]
前記式(I)の化合物および前記少なくとも1つの溶媒が溶液を形成する、付記18に記載の方法。
[付記21]
前記式(I)の化合物および前記少なくとも1つの溶媒がスラリーまたは懸濁液を形成する、付記18に記載の方法。
[付記22]
前記酸および前記少なくとも1つの溶媒が溶液を形成する、付記19に記載の方法。
[付記23]
前記酸および少なくとも1つの溶媒がスラリーまたは懸濁液を形成する、付記19に記載の方法。
[付記24]
前記酸は、HCl、HBr、コハク酸、1-OH-2-ナフトエ酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、マロン酸、メタンスルホン酸、リン酸、トルエンスルホン酸および硫酸から選択される、付記15~23のいずれか一項に記載の方法。
[付記25]
前記酸がコハク酸である、付記24に記載の方法。
[付記26]
各溶媒は、アセトン、アセトニトリル、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジオキサン、エタノール、酢酸エチル、ヘプタン、ヘキサン、酢酸イソプロピル、メタノール、メチルエチルケトン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、2-プロパノール、1-ブタノール、水またはこれらの任意の組み合わせから独立して選択される、付記18~25のいずれか一項に記載の方法。
[付記27]
前記溶媒は、THF、エタノール、またはそれらの混合物である、付記26に記載の方法。
[付記28]
前記酸は、少なくとも1つの溶媒中に存在し、式(I)の化合物に添加されてスラリーを形成し、前記スラリーから化合物を結晶化するステップは、前記スラリーから前記化合物を沈殿させることを含む、付記15に記載の方法。
[付記29]
前記式(I)の化合物、前記酸および前記少なくとも1つの溶媒が溶液を形成し、前記混合物から前記式(I)の化合物を結晶化するステップが、前記溶液を過飽和状態にして前記式(I)の化合物を溶液から沈殿させることを含む、付記15に記載の方法。
[付記30]
前記溶液を過飽和にするステップが、反溶媒をゆっくりと加えること、前記溶液を冷却させること、前記溶液の体積を減らすこと、またはそれらの任意の組み合わせを含む、付記29に記載の方法。
[付記31]
前記溶液を過飽和にするステップが、溶液を周囲温度以下に冷却することを含む、付記29に記載の方法。
[付記32]
前記結晶性化合物を単離することをさらに含む、付記15~31のいずれか一項に記載の方法。
[付記33]
前記結晶性化合物を単離することは、前記混合物から前記結晶化された化合物を得るために遠心分離することを含む、付記32に記載の方法。
[付記34]
前記結晶性化合物を単離することは、前記混合物から前記結晶化された化合物を濾過することを含む、付記32に記載の方法。
[付記35]
前記結晶性化合物を減圧下で乾燥させることをさらに含む、付記32~34に記載のいずれか一項に記載の方法。
[付記36]
前記結晶性化合物が、付記1~13のいずれか一項に記載の結晶性化合物である、付記15~35のいずれか一項に記載の方法。