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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107353
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】電気的接続構造及び電気的接続装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 1/067 20060101AFI20240801BHJP
   G01R 1/073 20060101ALI20240801BHJP
   G01R 31/28 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
G01R1/067 C
G01R1/073 E
G01R31/28 K
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024094845
(22)【出願日】2024-06-12
(62)【分割の表示】P 2019181411の分割
【原出願日】2019-10-01
(71)【出願人】
【識別番号】000153018
【氏名又は名称】株式会社日本マイクロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100180275
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 倫太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161861
【弁理士】
【氏名又は名称】若林 裕介
(72)【発明者】
【氏名】久我 智昭
(57)【要約】
【課題】少ない部品数で形成して、弾性部材の摺動性と、接触対象との電気的な接触安定性とを向上させ電気的接触子の導通性を向上する。
【解決手段】本発明の電気的接続構造は、電気的接触子が、第1接触部と第1接触部を軸方向に弾性する竹の子バネ構造の第1弾性部と第2接触部と第2接触部を軸方向に弾性する竹の子バネ構造の第2弾性部と第1弾性部と第2弾性部を弾性し連結する連結部とを有し、第1接触部及び又は第2接触部の先端面と第1の接触対象及び又は第2の接触対象の表面とが相対的に傾いて対向し、第1接触部の先端面と第1接触対象の表面とが接触し第2接触部の先端面と第2の接触対象の表面とが接触すると電気的接触子の変形により第1弾性部及び第2弾性部の内側部材の外壁と外側部材の内壁とが電気的に接触可能となる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の接触対象と、第2の接触対象と、前記第1の接触対象及び前記第2の接触対象に電気的に接触する電気的接触子とを備え、前記電気的接触子を介して、前記第1の接触対象と前記第2の接触対象との間の電気的接続を行なう電気的接続構造であって、
前記電気的接触子が、前記第1の接触対象と接触する第1接触部と、前記第1接触部を軸方向に弾性する竹の子バネ構造の第1弾性部と、前記第2の接触対象と接触する第2接触部と、前記第2接触部を軸方向に弾性する竹の子バネ構造の第2弾性部と、前記第1弾性部と前記第2弾性部とのそれぞれの弾性を可能とし、前記第1弾性部と前記第2弾性部とを連結する連結部とを有し、
前記第1接触部及び又は前記第2接触部の先端面と、前記第1の接触対象及び又は前記第2の接触対象の表面とが相対的に傾いて対向し、
前記第1接触部の先端面と前記第1接触対象の表面とが接触し、前記第2接触部の先端面と前記第2の接触対象の表面とが接触すると、前記電気的接触子の変形により、前記第1弾性部及び前記第2弾性部の、内側部材の外壁と外側部材の内壁とが電気的に接触可能となる
ことを特徴とする電気的接続構造。
【請求項2】
前記第1接触部及び又は前記第2接触部の前記先端面に垂直な方向と、前記第1の接触対象及び又は前記第2の接触対象の表面に垂直な方向とが対向していないことを特徴とする請求項1に記載の電気的接続構造。
【請求項3】
前記第1の接触対象及び又は前記第2の接触対象の表面に垂直な方向が、前記電気的接触子の軸方向に対してずれていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気的接続構造。
【請求項4】
前記第1の接触対象が配線端子であり、前記第2の接触対象が被検査体の電極端子であり、前記電気的接触子が、前記配線端子と前記被検査体の前記電極端子とに電気的に接触するプローブであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の電気的接続構造。
【請求項5】
第1の接触対象と第2の接触対象とに接触させる複数の電気的接触子を備える電気的接続装置において、
前記複数の電気的接触子が、請求項1~4のいずれかに記載の電気的接続構造で形成されているものであることを特徴とする電気的接続装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的接続構造及び電気的接続装置に関し、例えば、半導体ウェハ上の集積回路や被検査体の通電試験に用いる電気的接続構造及び電気的接続装置に適用し得るものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハ上に形成された集積回路や、パッケージ化された集積回路等の被検査体は、それぞれの製造段階において電気的特性の検査が行なわれる。半導体ウェハ上の集積回路の電気的検査には、プローブカード等の電気的接続装置が用いられ、パッケージ化された集積回路の電気的検査にはソケット等の電気的接続装置が用いられる。このような電気的接続装置では、第1の接触対象と第2の接触対象に接触する電気的接触子が用いられ、電気的接触子を介して第1の接触対象と第2の接触対象との間で電気信号の導通を行なっている。
【0003】
従来、電気的接触子には、様々なものがあるが、複数の構成部品を組み合わせて形成される電気的接触子がある。このような複数の構成部品で形成される電気的接触子を用いて、第1の接触対象と第2の接触対象との間で電気信号を導通させる場合、構成部品同士の接触箇所で抵抗が大きくなり、電気的な導通性に影響が生じ得る。
【0004】
特許文献1には、薄肉帯状の基板を曲げ加工して、螺旋状の筒状スリーブと、筒状スリーブの一端に第1端子と、筒状スリーブの他端に第2端子とを一体成形したスプリングプローブが開示されている。このようなスプリングプローブは、薄肉帯状の基板で一体的に形成されているので、導電性が良好となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-12992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のスプリングプローブを用いて、第1の接触対象と第2の接触対象との間に電気信号を導通させた場合、スプリングプローブにおける電気的な導通経路は、螺旋状に巻回した1対のコイルスプリングを経由するので、経路長が長くなってしまい、電気的な導通性の向上が要求される。
【0007】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、少ない部品数で形成され、弾性部材の摺動性と、接触対象との電気的な接触安定性とを向上させると共に、電気的接触子における導通性を向上できる電気的接続構造及び電気的接続装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するために、第1の本発明の電気的接続構造は、第1の接触対象と、第2の接触対象と、第1の接触対象及び第2の接触対象に電気的に接触する電気的接触子とを備え、電気的接触子を介して、第1の接触対象と第2の接触対象との間の電気的接続を行なう電気的接続構造であって、電気的接触子が、第1の接触対象と接触する第1接触部と、第1接触部を軸方向に弾性する竹の子バネ構造の第1弾性部と、第2の接触対象と接触する第2接触部と、第2接触部を軸方向に弾性する竹の子バネ構造の第2弾性部と、第1弾性部と第2弾性部とのそれぞれの弾性を可能とし、第1弾性部と第2弾性部とを連結する連結部とを有し、第1接触部及び又は第2接触部の先端面と、第1の接触対象及び又は第2の接触対象の表面とが相対的に傾いて対向し、第1接触部の先端面と第1接触対象の表面とが接触し、第2接触部の先端面と第2の接触対象の表面とが接触すると、電気的接触子の変形により、第1弾性部及び前記第2弾性部の、内側部材の外壁と外側部材の内壁とが電気的に接触可能となることを特徴とする。
【0009】
第2の本発明の電気的接続装置は、第1の接触対象と第2の接触対象とに接触させる複数の電気的接触子を備える電気的接続装置において、複数の電気的接触子が、第1又は第2の本発明の電気的接触子であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、少ない部品数で形成され、弾性部材の摺動性と、接触対象との電気的な接触安定性とを向上させると共に、電気的接触子における導通性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態に係る接続子の構成を示す構成図である。
図2】第1の実施形態の接続子を形成する前の板状部材の構成を示す構成図である。
図3】第1の実施形態に係る電気的接続装置の構成を示す構成図である。
図4】第1の実施形態の接続子の製造方法を説明する説明図である(その1)。
図5】第1の実施形態の接続子の製造方法を説明する説明図である(その2)。
図6】第1の実施形態の接続子のハウジング状態と荷重を受けたときの状態を例示する図である。
図7】第1の実施形態に係る第1傾斜接触部と接触端子との接触状態を説明する説明図である。
図8】第1の実施形態の接続子の変形前及び変形後の構成及び平面視の構成と、電気的な導通経路を説明する説明図である。
図9】変形実施形態に係る第1傾斜接触部と接触端子との接触状態を説明する説明図である。
図10】第2の実施形態の電気的接触子を形成する前の板状部材の構成を示す構成図である。
図11】第2の実施形態に係る電気的接触子の構成を示す構成図である。
図12】第3の実施形態の電気的接触子を形成する前の板状部材の構成を示す構成図である。
図13】第3の実施形態に係る電気的接触子の構成を示す構成図である。
図14】変形実施形態に係る板状部材の構成を示す構成図である。
図15】変形実施形態に係る板状部材及び電気的接触子の構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(A)第1の実施形態
以下では、本発明に係る電気的接続構造及び電気的接続装置の第1の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
第1の実施形態では、本発明に係る電気的接触子を、後述するように、電気的接続装置の構成部材である電気的接続ユニットに搭載される接続子に適用する場合を例示する。本発明に係る電気的接触子は、第1の接触対象と第2の接触対象に電気的に接触し、第1の接触対象と第2の接触対象との間で電気信号を導通可能なものに適用できる。なお、第1の実施形態では、電気的接続ユニットの接続子に、本発明の電気的接触子を適用する場合を例示するが、本発明は被検査体の電極端子と接続するプローブ等にも適用できる。
【0014】
また、第1の実施形態では、本発明に係る電気的接続装置が、半導体ウェハ上に形成されている集積回路を被検査体とし、当該被検査体の電気的検査に用いられる電気的接続装置とする場合を例示する。なお、本発明に係る電気的接続装置は、本発明に係る電気的接触子を用いて、第1の接触対象と第2の接触対象との間で電気信号を導通させて電気的に接続させるものに適用できる。
【0015】
(A-1)第1の実施形態の構成
(A-1-1)電気的接続装置
図3は、第1の実施形態に係る電気的接続装置の構成を示す構成図である。
図3の電気的接続装置10は、主要な構成部材を図示しているが、これらの構成部材に限定されず、実際には図3に示していない構成部材も有する。また、以下では、図3中の上下方向に着目して、「上」、「下」を言及するものとする。
【0016】
図3において、この実施形態に係る電気的接続装置10は、平板状の支持部材12と、前記支持部材12の下面12aに保持される平板状の配線基板14と、前記配線基板14と電気的に接続される電気的接続ユニット15と、前記電気的接続ユニット15と電気的に接続すると共に複数のプローブ20を有するプローブ基板16とを有する。
【0017】
電気的接続装置10は、支持部材12、配線基板14、電気的接続ユニット15、プローブ基板16を組み立てる際に、多数の固定部材(例えば、ボルト等の螺合部材など)を用いているが、図3ではこれらの固定部材を図示していない。
【0018】
電気的接続装置10は、例えば半導体ウェハ上に形成された半導体集積回路等を被検査体2とし、被検査体2の電気的な検査を行なうものである。具体的には、被検査体2をプローブ基板16に向けて押圧し、プローブ基板16の各プローブ20の先端部と被検査体2の電極端子2aとを電気的に接触させ、図示しないテスタ(検査装置)から被検査体2の電極端子2aに電気信号を供給し、さらに被検査体2の電極端子2aからの電気信号をテスタ側に与えることにより、被検査体2の電気的な検査を行なう。
【0019】
検査対象である被検査体2はチャックトップ3の上面に載置される。チャックトップ3は、水平方向のX軸方向、水平面上においてX軸方向に対して垂直なY軸方向、水平面(X-Y平面)に対して垂直なZ軸方向に位置調整が可能であり、さらに、Z軸回りのθ方向に回転姿勢も調整可能である。被検査体2の電気的検査を実施する際には、上下方向(Z軸方向)に昇降可能なチャックを移動させて、被検査体2の電極端子2aをプローブ基板16の各プローブ20の先端部に電気的に接触させる。そのため、電気的接続装置10のプローブ基板16の下面と、チャックトップ3の上面の被検査体2とが相対的に近づくように移動させる。
【0020】
[支持部材]
支持部材12は、配線基板14の変形(例えば、撓み等)を抑えるものである。例えば、プローブ基板16は多数のプローブ20を有しているため、配線基板14側に取り付けられるプローブ基板16の重量は大きくなっている。また、被検査体2の電気的な検査の行なう際、プローブ基板16が、チャックトップ3上の被検査体2によって押し付けられることにより、プローブ基板16の下面に突出しているプローブ20の先端部と被検査体2の電極端子2aとが電気的に接触する。このように、電気的検査の際、下から上に向けて突き上げる反力(コンタクト荷重)が作用し、配線基板14にも大きな荷重が加えられる。支持部材12は、配線基板14の変形(例えば、撓み等)を抑える部材として機能する。
【0021】
また、支持部材12には、上面と下面とを貫通させた複数の貫通孔121が設けられている。複数の貫通孔121のそれぞれは、後述するプローブ基板16の上面に配置させる複数のアンカー50のそれぞれの位置と対応する位置に設けられており、かつ、配線基板14に設けた複数の貫通孔141のそれぞれの位置と対応する位置に設けられている。
【0022】
支持部材12の各貫通孔121には、スペーサ(以下、「支持部」とも呼ぶ。)51が、支持部材12の上方から下方に向けて挿通され、スペーサ(支持部)51の下端部と、対応するアンカー50とが固定可能な構成となっている。例えば、スペーサ(支持部)51の下端部は雄ネジ部となっており、またプローブ基板16の上面に配置されるアンカー50の略中央部は雌ネジ部501となっており、スペーサ(支持部)51の下端部(雄ネジ部)がアンカー50の雌ネジ部501に螺合することで固定できる。これにより、プローブ基板16の上面と、支持部材12の上面との間の距離を所定の距離長に保持できるようにしている。
【0023】
[配線基板]
配線基板14は、例えばポリイミド等の樹脂材料で形成されたものであり、例えば略円形板状に形成されたプリント基板等である。配線基板14の上面の周縁部には、テスター(検査装置)のテストヘッド(図示しない)と電気的に接続するための多数の電極端子(図示しない)が配置されている。また、配線基板14の下面には、配線パターンが形成されており、配線パターンの接続端子14aが、電気的接続ユニット15に設けられている接続子30の上端部と電気的に接続するようになっている。
【0024】
さらに、配線基板14の内部には配線回路(図示しない)が形成されており、配線基板14の下面の配線パターンと、配線基板14の上面の電極端子とは、配線基板14内部の配線回路を介して接続可能となっている。したがって、配線基板14内の配線回路を介して、配線基板14の下面の配線パターンの接続端子14aに電気的に接続する電気的接続ユニット15の各接続子30と、配線基板14の上面の電極端子に接続するテストヘッドとの間で電気信号を導通させることができる。配線基板14の上面には、被検査体2の電気的検査に必要な複数の電子部品も配置されている。
【0025】
また、配線基板14には、当該配線基板14の上面と下面とを貫通させた複数の貫通孔141が設けられている。複数の貫通孔141のそれぞれは、プローブ基板16の上面に配置される複数のアンカー50のそれぞれの位置と対応する位置に配置され、かつ、支持部材12の複数の貫通孔121のそれぞれの位置と対応する位置に配置されている。
【0026】
なお、各貫通孔141の開口形状は、挿通される支持部51の形状に対応した形状とすることができる。また、各貫通孔141に支持部51を挿通可能にするために、各貫通孔141の内径は、支持部51の外径と同程度又はわずかに大きくなっている。
【0027】
この実施形態では、支持部51が円柱部材である場合を例示するため、貫通孔141の開口形状が略円形である場合を例示するが、これに限定されない。例えば、支持部51の断面形状が略正方形等の直角柱の部材や、当該断面形状が多角形の多角柱の部材等であってもよく、そのような例の場合でも、貫通孔141の開口形状は、支持部51を挿通可能な形状とすることができる。
【0028】
[電気的接続ユニット]
電気的接続ユニット15は、複数の接続子30を有している。電気的接続装置10の組み立て状態では、各接続子30の上端部を、配線基板14の下面の配線パターンの接続端子14aに電気的に接続し、また各接続子30の下端部を、プローブ基板16の上面に設けられたパッド161aに接続する。プローブ20の先端部が被検査体2の電極端子に電気的に接触するので、被検査体2の電極端子はプローブ20及び接続子30を通じてテスター(検査装置)と電気的に接続するので、被検査体2はテスター(検査装置)による電気的な検査が可能となる。
【0029】
例えば、電気的接続ユニット15には、各接続子30を挿通するための複数の挿通孔があり、各挿通孔に接続子30が挿通されることにより、各接続子30の上端部及び下端部が突出するようになっている。なお、電気的接続ユニット15において、複数の接続子30を装着する仕組みは、貫通孔を設ける構成に限定されず、種々の構成を広く適用できる。電気的接続ユニット15の周囲にはフランジ部151が設けられている。
【0030】
[プローブ基板]
プローブ基板16は、複数のプローブ20を有する基板であり、略円形若しくは多角形(例えば16角形等)に形成されたものである。プローブ20は、例えば、カンチレバー型のプローブ等を用いることができるが、これに限定されない。また、プローブ基板16は、例えばセラミック板で形成される基板部材161と、この基板部材161の下面に形成された多層配線基板162とを有する。
【0031】
セラミック基板である基板部材161の内部には、板厚方向に貫通する多数の導電路(図示しない)が形成されており、また基板部材161の上面には、パッド161aが形成されており、基板部材161内の導電路の一端が、当該基板部材161の上面の対応するパッド161aと接続するように形成されている。さらに、基板部材161の下面では、基板部材161内の導電路の他端が、多層配線基板162の上面に設けられた接続端子と接続されるように形成されている。
【0032】
多層配線基板162は、例えばポリイミド等の合成樹脂部材で形成された複数の多層基板で形成されており、複数の多層基板の間に配線路(図示しない)が形成されている。多層配線基板162の配線路の一端は、セラミック基板である基板部材161側の導電路の他端と接続しており、多層配線基板162の他端は、多層配線基板162の下面に設けられたプローブランドに接続されている。多層配線基板162の下面に設けられたプローブランドには、複数のプローブ20が配置されており、プローブ基板16の複数のプローブ20は、電気的接続ユニット15を介して、配線基板14の対応する接続端子14aと電気的に接続している。
【0033】
(A-1-2)接続子(電気的接触子)
図1は、第1の実施形態に係る接続子30の構成を示す構成図である。図2は、第1の実施形態の接続子30を形成する前の板状部材の構成を示す構成図である。
【0034】
図1の接続子30は、図2の板状部材40を成形加工(例えば、丸め加工、曲げ加工など)して形成される。すなわち、図2の板状部材40は、図1の接続子30の成形加工前の部材であり、導電性材料で形成された板状の部材である。したがって、接続子30は、1枚の板状部材を成形加工して形成されることになるので、電気信号の導通性を安定化させることができる。換言すると、複数の部品を組み合わせて形成される電気的接触子は、複数の部品同士が互いに接触しあって電気信号を導通することになるので、複数の部品間の接触箇所で抵抗が大きくなり、導通性が不安定になることがある。これに対して、板状部材を成形加工して形成される接続子30は、部品間の接触箇所がない若しくは少なくすることができるので、抵抗値を小さくでき、電気信号の導通性を安定化できる。
【0035】
図1に示すように、電気的接触子の一例である接続子30は、筒状部32と、第1の接触対象としての配線基板14の接続端子14aと接触する第1接触部34と、第1接触部34が接続端子14aと接触して荷重を受けたときに上下方向に弾性的に付勢する上部弾性部33と、第2の接触対象としての基板部材161のパッド161aと接触する第2接触部36と、第2接触部36がパッド161aと接触して荷重を受けたときに上下方向に弾性的に付勢する下部弾性部35とを有する。
【0036】
第1接触部34の先端には、第1の接触対象と接触する先端面(以下では、「接触面」とも呼ぶ。)があり、当該先端面が傾斜している。また、第2接触部36の先端には、第2の接触対象と接触する先端面(以下、「接触面」とも呼ぶ。)があり、当該先端面が傾斜している。なお、以下では、第1接触部34の先端の傾斜している先端面を第1傾斜接触部341と呼び、第2接触部36の先端の傾斜している先端面を第2傾斜接触部361と呼んで説明する。
【0037】
図2に示すように、板状部材40は、本体部42と、上部アーム部43と、上部アーム部43の先端に設けられた第1先端部44と、第1先端部44の先端に設けられた第1傾斜部441と、下部アーム部45と、下部アーム部45の先端に設けられた第2先端部46と、第2先端部46の先端に設けられた第2傾斜部461とを有する。
【0038】
なお、板状部材40は、例えば貴金属又は金属で形成された板状部材、若しくは、板状の部材の表面を貴金属又は金属でメッキ加工して得た板状部材である。板状部材を打ち抜き加工等を施して、板状部材40の形状が形成できる。また例えば、板状部材40は、第1の接触対象及び又は第2の接触対象と接触する箇所(後述する第1先端部44及び又は第2先端部46)を貴金属等とし、それ以外の部分を例えばバイメタル等の弾性(例えばバネ性)の優れた部材で形成してもよい。このように、第1の接触対象及び又は第2の接触対象との接触箇所を貴金属等とすることで導通性を良好とすることができると共に、それ以外の部分を例えばバイメタル等の部材とすることで、その部分の弾性(例えばバネ性)を良好することができる。
【0039】
[本体部]
本体部42は、略長方形状の板状の部分である。後述するように、丸め加工により板状部材40の左側の構成要素側から巻回していき、接続子30を形成する。接続子30が形成されると、本体部42は、巻回された上部アーム部43と下部アーム部45を覆う筒状部32となる。
【0040】
ここで、本体部42の4辺の端部のうち、上端部421と下端部422の端部は、横方向に直線状に形成され、互いに平行に形成される。板状部材40を巻回して形成される接続子30の筒状部32は、接続子30をハウジングする際の接続子30の高さ方向の位置決め部として機能することになる。したがって、本体部42の上端部421と下端部422の端部を直線状に平行とすることで、ハウジングされる接続子30の姿勢を安定化できる。
【0041】
[上部アーム部]
上部アーム部43は、本体部42の4辺の端部のうち、いずれか1つの端部(図2では左側端部)と一体的に連結しており、本体部42の左側端部の上部に位置しており、本体部42の左側端部から左斜め上方向に延出する部材である。
【0042】
上部アーム部43は、本体部42と連結している基端部431から先端側(すなわち第1先端部44側)にいくほど、上下方向(y方向)の長さが小さくなる先細り形状(テーパ形状)としても良いし、基端部431から先端側に亘って同一幅としてもよい。この実施形態では、先細り形状の場合を例示する。より具体的には、本体部42と連結している上部アーム部43の基端部431のy方向の長さを「a1」とし、上部アーム部43の先端部432のy方向の長さを「a2」とすると、a1≧a2の関係がある。この実施形態では、上部アーム部43が先細り形状である場合を例示する。
【0043】
このように、上部アーム部43を先細り形状とすることで、丸め加工により、上部アーム部43が巻回されると、例えば竹の子バネ構造の上部弾性部33が形成される。つまり、上部アーム部43が巻回されて形成される上部弾性部33のうち、巻回された内側の部材の下端部を、巻回された外側の部材の上端部が覆った状態となる。そして、上部弾性部33は、上下方向に弾性的に第1接触部34を付勢する。ここで、竹の子バネとは、板状部材を螺旋状に巻き、巻回した内側部材の一部が外側部材に覆われて形成される円錐状のバネである。
【0044】
上部アーム部43の基端部431は、本体部42の左側端部の上部角部423からわずかに下がった位置(上部角部423から離間した位置)から延出している。ここで、上部角部423から基端部431までの本体部42の左側端部の一部を「段部424」と呼ぶ。このように、上部角部423から段部424を設けた位置から上部アーム部43を延出することにより、丸め加工により、板状部材40を巻回していくと、巻回された上部アーム部43(上部弾性部33)の基端部431が、本体部42に覆われる状態となる。
【0045】
そうすると、板状部材40が巻回されて形成された接続子30が電気的接続ユニット15にハウジングされ、第1接触部34が荷重を受けると、上部弾性部33の基端部431が筒状部32に内包された状態で、上部弾性部33が上下方向に弾性的にストロークすることになる。したがって、バネとして弾性的に駆動する上部弾性部33の破損を防止することができる。
【0046】
[第1先端部]
第1先端部44は、上部アーム部43の先端に設けられており、垂直上方に延出された部分である。丸め加工により、第1先端部44が巻回されることにより、巻回された第1先端部44は接続子30の第1接触部34として機能する。
【0047】
[第1傾斜部]
第1傾斜部441は、第1先端部44の先端に設けられた傾斜面である。丸め加工により第1先端部44が巻回されることにより、第1傾斜部441は、接続子30の第1傾斜接触部341として機能する。第1傾斜部441は、x方向に対して、所定角度(図2の例ではθ1)で傾斜している。傾斜角度θ1は、後述する下部アーム部45の第2傾斜部461の傾斜角度θ2と同じであっても良いし、異なる角度であってもよい。図2の例では、第1傾斜部441が右斜め上方向に傾斜し、後述する第2傾斜部461が右斜め下方向に傾斜する場合を例示する。第1傾斜部441と第2傾斜部461の傾斜方向はそれぞれ対称的(板状部材40のy方向中点を通るx方向直線で線対称)である場合を例示し、より具体的には、第1傾斜部441が左斜め下方向に傾斜し、第2傾斜部461が左斜め上方向に傾斜としている。
【0048】
[下部アーム部]
下部アーム部45は、本体部42の4辺の端部のうち、いずれか1つの端部(図2では左側端部)と一体的に連結しており、本体部42の左側端部のうち下部に位置しており、本体部42の左側端部から左斜め下方向に延出する部材である。下部アーム部45の基端部451は、上部アーム部43の基端部431の位置よりも下方に位置しており、本体部42の左側端部において、下部アーム部45の基端部451と上部アーム部43の基端部431は離間している。
【0049】
下部アーム部45も、上部アーム部43と同様に、本体部42と連結している基端部451から先端側(すなわち第2先端部46側)にいくほど、上下方向(y方向)の長さが小さくなる先細り形状(テーパ形状)としても良いし、基端部451から先端側に亘って同一幅としてもよい。この実施形態では、先細り形状である場合を例示する。より具体的には、本体部42と連結している下部アーム部45の基端部451のy方向の長さを「b1」とし、下部アーム部45の先端部452のy方向の長さを「b2」とすると、b1≧b2の関係がある。
【0050】
このように、下部アーム部45が先細り形状となっていることで、丸め加工により、下部アーム部45が巻回されると、例えば竹の子バネ状の下部弾性部35が形成される。つまり、下部アーム部45が巻回されて形成される下部弾性部35のうち、巻回された内側の部材の上端部を、巻回された外側の部材の下端部が覆った状態となる。そして、下部弾性部35は、上下方向に弾性的に第2接触部36を付勢する。
【0051】
下部アーム部45の基端部451は、本体部42の左側端部の下部角部425からわずかに上の位置(下部角部425から離間した位置)から延出している。ここで、下部角部425から基端部451までの本体部42の左側端部の一部を「段部426」と呼ぶ。このように、下部角部425から段部426を設けた位置から下部アーム部45を延出することにより、丸め加工により、板状部材40を巻回していくと、巻回された下部アーム部45(下部弾性部35)の基端部451が、本体部42に覆われる状態となる。
【0052】
そうすると、板状部材40が巻回されて形成された接続子30が電気的接続ユニット15にハウジングされ、第2接触部36が荷重を受けると、下部弾性部35の基端部451が筒状部32に内包された状態で、下部弾性部35が上下方向に弾性的にストロークすることになる。したがって、バネとして弾性的に駆動する下部弾性部35の破損を防止できる。
【0053】
[第2先端部]
第2先端部46は、下部アーム部45の先端に設けられており、垂直下方に延出された部分である。丸め加工により、第2先端部46が巻回されることにより、巻回された第2先端部46は接続子30の第2接触部36として機能する。
【0054】
[第2傾斜部]
第2傾斜部461は、第2先端部46の先端に設けられた傾斜面である。丸め加工により第2先端部46が巻回されることにより、第2傾斜部461は、接続子30の第2傾斜接触部361として機能する。第2傾斜部461は、x方向に対して、所定角度(図2の例ではθ2)で傾斜している。
【0055】
[接続子の製造方法]
図4及び図5は、実施形態の接続子30の製造方法を説明する説明図である。
図4(A)において、まず、板状部材40の第1先端部44及び第2先端部46に対して丸め加工を施し、第1傾斜部441を先端に有する第1先端部44を巻回することで、第1傾斜接触部341を先端に有する第1接触部34が形成される。同様に、第2傾斜部461を先端に有する第2先端部46を巻回することで、第2傾斜接触部361を先端に有する第2接触部36が形成される。
【0056】
ここで、板状部材40を巻回して接続子30を成形する際、第1傾斜接触部341と第2傾斜接触部361との傾斜方向が対称的(線対称)となっていることが望ましい。したがって、第1先端部44と第2先端部46とを巻回する際には、第1傾斜部441と第2傾斜部461の部分を丸めずに同じように巻回する。換言すると、第1傾斜部441及び第2傾斜部461の傾斜を活かした状態で、接続子30の第1傾斜接触部341及び第2傾斜接触部361が成形される。これにより、第1傾斜接触部341及び第2傾斜接触部361は傾斜面となる。
【0057】
図4(A)において、上部アーム部43及び下部アーム部45に対して丸め加工を施して、上部アーム部43及び下部アーム部45の先端側から基端部431及び451に向けて巻回していく。例えば、ここでは、図4及び図5の平面視で、反時計回りで巻回する場合を例示する。上部アーム部43及び下部アーム部45を巻回する際、巻回に係る中心軸を一致又は略一致させる。また、上部アーム部43及び下部アーム部45の巻回数を同じ数としてもよい。
【0058】
また、上部アーム部43及び下部アーム部45は、基端部431及び451から先端側に掛けて先細り形状(テーパ形状)であるため、上部アーム部43及び下部アーム部45の巻回を繰り返していくことで、上部弾性部33の内側の部材の下端部の一部は、外側の部材の上端部に覆われ、また、下部弾性部35の内側の部材の上端部の一部は、外側の部材の下端部に覆われていき、上部弾性部33及び下部弾性部35が形成される。このようにして、竹の子バネ構造の上部弾性部33及び下部弾性部35が形成される。
【0059】
図4(B)に示すように、上部アーム部43及び下部アーム部45が基端部431及び451まで巻回されて、上部弾性部33及び下部弾性部35が形成されると、さらに上部弾性部33及び下部弾性部35に対して丸め加工を施して、上部弾性部33及び下部弾性部35の基端部431及び451を本体部42で包み込むように筒状に丸めていく。
【0060】
図5(A)に示すように、上部アーム部43の基端部431は、上部角部423から段部424を設けた位置から延出しており、下部アーム部45の基端部451は、下部角部425から段部426を設けた位置から延出しているので、上部弾性部33及び下部弾性部35の基端部431及び451が、筒状の巻回される本体部42の内側に覆われた状態となる。
【0061】
そして、図5(B)に示すように、本体部42の残り部分を巻回させて、筒状部32が形成されると、接続子30が形成される。このように、接続子30は、導電性材料の板状部材40を巻回して成形されるので、電気信号の導通性を安定化させることができる。なお、本体部42の端部は、内側の本体部42の表面に固定されるようにしてもよい。つまり、本体部42を巻回して形成される筒状部32の外形構造を保持するために、本体部42の端部と筒状部32とが接触する1又は複数の箇所を、例えば溶接や接着剤等で固定するようにしてもよい。なお、筒状部32の外形構造の固定方法は、溶接や接着剤に限定されるものではなく、カシメを打つ等してもよい。
【0062】
[電気的な導通経路]
次に、第1の実施形態の接続子30を介して、第1の接触対象と第2の接触対象との間に電気的信号を印加したときの、接続子30における電気的な導通経路を、図面を参照して説明する。
【0063】
図6は、第1の実施形態の接続子30のハウジング状態と荷重を受けたときの状態を例示する図である。なお、接続子30のハウジング方法及びハウジング構造は一例であり、図6の構造に限定されない。図7は、第1の実施形態に係る第1傾斜接触部と接触端子との接触状態を説明する説明図である。図8(A)は、接続子の変形前の構成及び平面視の構成を示す図であり、図8(B)は、接続子全体の変形後の構成及び平面視の構成を示すと共に、電気的な導通経路を説明する説明図である。
【0064】
図6(A)に示すように、電気的接続ユニット15には、接続子30を挿通するための貫通孔60が設けられている。この貫通孔60に接続子30が挿通されて、接続子30が収容される。貫通孔60の外径は、接続子30の外形よりわずかに大きい若しくは同程度とする。また、貫通孔60の下部には、貫通孔60の上部の内径よりもわずかに内径が小さくなっており、貫通孔60の内面に段差61が設けられている。この貫通孔60の内面の段差61に、挿通された接続子30の筒状部32の下端部321が支持されるようになっている。接続子30の筒状部32の下端部321はフラットな端面であり、段差61により支持されることで、挿通された接続子30は安定した姿勢で収容される。
【0065】
図6(B)では、貫通孔60に挿通された接続子30が、第1の接触対象である接続端子14aと、第2の接触対象であるパッド161aとに接触して荷重を受けた状態を示している。つまり、接続子30の第1接触部34と接続端子14aとが接触して、上部弾性部33が圧縮荷重を受け、また第2接触部36とパッド161aとが接触して、下部弾性部35が圧縮荷重を受けている状態である。
【0066】
接続子30の軸方向(上下方向)の両端にある上部弾性部33と下部弾性部35は、それぞれ互いに非対称に形成されているので、上部弾性部33と下部弾性部35はそれぞれ独立して上下方向の弾性を有する。
【0067】
竹の子バネ構造の上部弾性部33の基端部431は筒状部32の内側にあるので、荷重を受けた上部弾性部33は、筒状部32の内側にある基端部をバネ機能の端として上下方向に弾性することになる。同様に、下部弾性部35の基端部451は筒状部32の内側にあり、荷重を受けた下部弾性部35は、筒状部32の内側にある基端部451をバネ機能の端として上下方向に弾性することになる。そうすると、筒状部32が、荷重を受けた上部弾性部33及び下部弾性部35の上下方向に動くストロークを規制できるので、バネ機能としての上部弾性部33及び下部弾性部35の破損を防止できる。
【0068】
ここで、図6(B)の接続端子14aとパッド161aとの接触面は、それぞれフラットな面である。これに対して、第1接触部34及び第2接触部36の接触面である第1傾斜接触部341及び第2傾斜接触部361は傾斜面である。
【0069】
つまり、接続端子14aの接触面(表面)と、第1接触部34の接触面(第1傾斜接触部341)とは相対的に傾いて対向している。換言すると、図7(A)の例では、接続子30の軸方向と直線A(以下「中心軸A」とも呼ぶ。)と、接続端子14aの表面の法線(表面に垂直な線)とが一致するが、第1接触部34の先端面の法線と、接続端子14aの表面の法線とが異なるように、接続端子14aの接触面(表面)と、第1接触部34の接触面(第1傾斜接触部341)とが対向する。なお、第2接触部の接触面(表面)と、第2接触部36の接触面(第2傾斜接触部361)との相対的な関係も同様である。
【0070】
図7(A)及び図7(B)に示すように、第1接触部34の第1傾斜接触部341は傾いた状態で、フラット面でなる接続端子14aと接触することになる。同様に、第2接触部36の第2傾斜接触部361も傾斜面であるため、第2傾斜接触部361は傾いた状態で、フラット面でなるパッド161aと接触する。
【0071】
そして、図6(B)、図7(B)、図8(B)に示すように、第1傾斜接触部341及び第2傾斜接触部361が接続端子14a及びパッド161aに面接触すると、第1接触部34及び第2接触部36が傾くので曲げ荷重が作用し、接続子30全体はわずかに撓み(変形し)、上部弾性部33及び下部弾性部35が、筒状部32の内側で一方向側(例えば図6(B)の右側)に移動し、筒状部32の内面と電気的に接触する。さらに、上部弾性部33及び下部弾性部35では、内側部材の下端部の外壁と、外側の部材の上端部の内壁とが電気的に接触可能となる。
【0072】
換言すると、第1傾斜接触部341及び第2傾斜接触部361が第1の接触対象及び第2の接触対象に電気的に接触可能となり、接続子30全体が変形し、上部弾性部33及び下部弾性部35の内側部材の外壁と外側部材の内壁とが電気的に接触可能となると共に、上部弾性部33及び下部弾性部35が筒状部32の内面に電気的に接触可能となる。つまり、接続子30の構成部材が一方の側(図8(B)では右側)に寄って密になり、電気的な接触が可能となる。
【0073】
このように、接続子30の変形により、上部弾性部33及び下部弾性部35の各部材は一部で電気的に接触し、さらに上部弾性部33及び下部弾性部35は筒状部32の内面に電気的に接触するので、接続子30は板状部材40を巻回して螺旋状に形成されているが、電気的な導通経路Rは、第1の接触対象と第2の接触対象との間の上下方向の略直線的な経路となる(図8(B)参照)
【0074】
より具体的には、電気的な導通経路Rは、「接続端子14a」⇔「第1傾斜接触部341」⇔「第1接触部34と上部弾性部33の接触箇所」⇔「上部弾性部33の部材間の接触箇所」⇔「筒状部32」⇔「下部弾性部35の部材間の接触箇所」⇔「下部弾性部35と第2接触部36との接触箇所」⇔「第2傾斜接触部361」⇔「パッド161a」となる。そのため、電気的な導通経路Rは、接続子30を介した第1の接触対象と第2の接触対象との間の最短経路となる。
【0075】
また、筒状部32から突出させる上部弾性部33及び下部弾性部35の上下方向の高さ長を調整することで、荷重を受けたときの上部弾性部33及び下部弾性部35のストロークを調整することができる。換言すると、可動ストロークが大きいので、接触対象との接触荷重の大きさの程度に応じて、接続子30の付勢力の程度を幅広く設定できる。
【0076】
さらに、筒状部32の上下方向の長さ(高さ)は変わらないので、接続子30の高さ方向の位置決めを確実にすることができる。
【0077】
また、上部弾性部33及び下部弾性部35は、竹の子バネとして機能するので、荷重を受けた上下方向に動作する上部弾性部33及び下部弾性部35の摺動性を向上させることができる。つまり、接続子が複数の構成部品で形成される場合、複数の構成部品の間に荷重が作用して上下方向の弾性を有するので、その摺動不良が生じることがある。しかし、この実施形態の接続子30は、従来よりも構成部品数を減らした構造であるので、摺動性が向上する。
【0078】
(A-2)第1の実施形態の効果
以上のように、第1の実施形態の電気的接触子(接続子)は、従来よりも少ない構成部品数で構成されているので、摺動性を向上でき、かつ、接触対象との電気的な接触安定性を向上することができる。
【0079】
さらに、第1の実施形態によれば、第1接触部及び第2接触部の先端を、傾斜面でなる第1傾斜接触部及び第2傾斜接触部とすることで、電気的接触子を第1の接触対象及び第2の接触対象と接触させた際に、電気的接触子全体が変形し、竹の子バネ構造の上部弾性部及び下部弾性部を構成する部材同士が電気的に接触すると共に、上部弾性部及び下部弾性部が筒状部の内面と電気的に接触するので、電気的接触子を介した電気的な導通経路が短くなる。その結果、電気的な導通経路における抵抗値が低くなり、電気的な導通性が向上する。
【0080】
(B)第2の実施形態
次に、本発明に係る電気的接続構造及び電気的接続装置の第2の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0081】
(B-1)第2の実施形態の構成
図10は、第2の実施形態の電気的接触子を形成する前の板状部材の構成を示す構成図である。図11は、第2の実施形態に係る電気的接触子の構成を示す構成図である。
【0082】
図10に示すように、第2の実施形態の板状部材40Dは、本体部42Dと、本体部42Dの左側端部の上部から左斜め上方向に延出する上部アーム部43と、上部アーム部43の先端に設けられた第1先端部44と、本体部42Dの右側端部の下部から右斜め下方向に延出する下部アーム部45Dと、下部アーム部45Dの先端に設けられた第2先端部46Dとを有する。
【0083】
第2の実施形態においても、第1先端部44の先端面は傾斜面でなる第1傾斜部441を有しており、第2先端部46Dの先端面は傾斜面でなる第2傾斜部461Dを有している。
【0084】
なお、第2の実施形態の板状部材40Dにおいて、上部アーム部43と、上部アーム部43の先端に設けられた第1先端部44及び第1傾斜部441は、第1の実施形態で説明した各構成要素と同じであるため、同一符号を付している。
【0085】
板状部材40Dは、第1の実施形態と同様に、例えば貴金属又は金属で形成された板状部材、若しくは、板状の部材の表面を貴金属又は金属でメッキ加工して得た板状部材であり、板状の部材を打ち抜き加工等を施して形成される。また例えば、板状部材40Dは、第1の接触対象及び又は第2の接触対象と接触する箇所を貴金属等とし、それ以外の部分を例えばバイメタル等の弾性(例えばバネ性)の優れた部材で形成してもよい。
【0086】
下部アーム部45Dは、本体部42Dの4辺の端部のうち、上部アーム部43が設けられている端部(左側端部)と対向する対向端部(右側端部)と一体的に連結しており、本体部42Dの右側端部から右斜め下方向に延出する。
【0087】
下部アーム部45Dは、第1の実施形態と同様に、本体部42D側の基端部451Dから先端側にいくほど、上下方向の幅長が小さくなる先細り形状(テーパ形状)となっている。また、第2の実施形態においても、他の実施形態と同様、本体部42Dに対して、下部アーム部45Dの基端部451Dは、上部アーム部43の基端部431よりも下方に位置をずらして延出し、かつ、本体部42Dの右側端部の下部角部425Dからわずかに上の位置から延出している。ここで、下部角部425Dから基端部451Dまでの本体部42Dの左側端部の一部を「段部426D」と呼ぶ。
【0088】
第2先端部46Dは、下部アーム部45Dの先端に設けられており、垂直下方に延出された部分である。
【0089】
本体部42Dは、基本的には、第1の実施形態と同様に略長方形状であるが、上部アーム部43の基端部431の下側端部427が、上部アーム部43の基端部431の上側にある段部424の位置よりも、本体部42Dの中央部寄りに位置している。同様に、本体部42Dは、下部アーム部45Dの基端部451Dの上側端部428が、下部アーム部45Dの下側にある段部426Dの位置よりも、本体部42Dの中央部寄りに位置している。
【0090】
このように、上部アーム部43の下側端部427と下部アーム部45Dの上側端部428の各位置を、本体部42Dの中央部寄りとすることにより、丸め加工によって電気的接触子30Dの筒状部32を形成する際に、巻回した上部アーム部43(又は下部アーム部45D)と、これに対向する本体部42Dの端部(対向端部)との干渉を回避することができる。つまり、上部アーム部43の下側端部427と下部アーム部45Dの上側端部428の各位置を、本体部42Dの中央部寄りとすることが、逃げ構造を形成することになる。
【0091】
第2の実施形態では、上部アーム部43の巻回方向と、下部アーム部45Dの巻回方向とが互いに異なる方向である。例えば、上部アーム部43の巻回方向は、図10の平面視野で反時計回りであり、下部アーム部45Dの巻回方向は、図10の平面視野で時計回りなどのようにする。
【0092】
まず、上部アーム部43に丸め加工を施して上部アーム部43を反時計回りで巻回していき、下部アーム部45Dに丸め加工を施して下部アーム部45Dを時計回りで巻回していく。
【0093】
次に、上部アーム部43を巻回して上部弾性部33と、下部アーム部45Dを巻回して下部弾性部35Dが形成されると、本体部42Dについては、1点鎖線(中心線)の中心に向けて、本体部42Dの左右からそれぞれ均等に巻回していく。これにより、図11(A)に例示する電気的接触子30Dが形成される。
【0094】
ここで、図11(A)及び図11(B)を参照して、筒状部32の形成方法を説明する。上部アーム部43を巻回して形成された上部弾性部33の基端部431は、当該基端部431が連結している本体部42Dの左側部分により包み込まれるように巻回される。つまり、上部弾性部33の基端部431が、本体部42Dの左側部分の内側に巻かれる。同様に、下部アーム部45Dを巻回して形成された下部弾性部35Dの基端部451Dは、当該基端部451Dが連結している本体部42Dの右側部分に包み込まれるように巻回される。
【0095】
このように、上部弾性部33を、本体部42Dの左側部分で巻き込むと同時に、下部弾性部35Dを、本体部42Dの右側部分で巻き込んで、本体部42Dの左側端部と右側端部とを合わせる(接触させる)ことで、筒状部32を形成する。つまり、本体部42Dの右側端部の上側端部428の裏側で、上部弾性部33を包み込むように覆い、本体部42Dの左側端部の下側端部427の裏側で、下部弾性部35Dを包み込むように覆うようにする。これにより、図11(B)に例示する電気的接触子30Dが形成される。なお、図11(B)では、本体部42Dで形成した筒状部32は、本体部42Dの左側端部と右側端部とが接触させる構造を例示したが、これに限定されるものではない。
【0096】
図11(C)に例示するように、本体部42Dの左側端部と右側端部とをわずかに離間させて対向させるようにしてもよい。また、図11(A)~図11(C)において、本体部42Dを巻回して筒状部32を形成する際に、筒状部32の外形構造を保持するために、本体部42Dの左側端部及び又は右側端部の任意の1又は複数の箇所に、例えば溶接や接着剤等で固定するようにしてもよい。例えば図11(B)において、本体部42Dの左側端部と右側端部とが接触する1又は複数の箇所に、例えば溶接や接着剤等で固定したり、図11(C)において、本体部42Dの左側端部(及び又は、右側端部)と、これに対向する筒状部32の端部とが接触する1又は複数の箇所に、例えば溶接や接着剤等で固定したりしてもよい。なお、筒状部32の外形構造の固定方法は、溶接や接着剤に限定されるものではなく、カシメを打つ等してもよい。
【0097】
上部アーム部43と下部アーム部45Dは、本体部42Dに対して高さ方向の位置をずらして延出しているので、上部弾性部33と下部弾性部35Dを、本体部42Dで包み込むように巻回しても、上部弾性部33と下部弾性部35Dは、互いに干渉することがない。その結果、電気的接触子30Dの上部弾性部33と下部弾性部35Dは、それぞれ独立して軸方向に弾性を有する。
【0098】
このように、上部アーム部43と下部アーム部45Dの巻回方向を互いに異なる方向とすることにより、第1接触部34が第1の接触対象と接触し、第2接触部36Dが第2の接触対象と接触して荷重がかかったときに、上部弾性部33に作用する応力と、下部弾性部35Dに作用する応力とを打ち消すことができる。したがって、第1接触部34が第1の接触対象に接触したときの接点と、第2接触部36Dが第2の接触対象と接触したときの接点に生じる回転荷重を軽減することができる。
【0099】
また、第1接触部34の第1傾斜接触部341が第1の接触対象に接触し、第2接触部36Dの第2傾斜接触部361Dが第2の接触対象に接触すると、第1の実施形態と同様に、電気的接触子30D全体が変形するので、上部弾性部33及び下部弾性部35Dの構成部材が一方側で電気的に接触可能となる。したがって、第1の接触対象と第2の接触対象との間で略直線的な導通経路が形成され、電気的な導通性が向上する。
【0100】
(B-2)第2の実施形態の効果
以上のように、第2の実施形態によれば、第1の実施形態で説明した効果が得られると共に、上部アーム部と下部アーム部の巻回方向を互いに異なる方向とすることにより、上部弾性部に作用する応力と、下部弾性部に作用する応力とを打ち消すことができ、接点における回転荷重を軽減することができる。
【0101】
(C)第3の実施形態
次に、本発明に係る電気的接続構造及び電気的接続装置の第3の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0102】
(C-1)第3の実施形態の構成
図12は、第3の実施形態の電気的接触子を形成する前の板状部材の構成を示す構成図である。図13は、第3の実施形態に係る電気的接触子の構成を示す構成図である。
【0103】
図12に示すように、第3の実施形態の板状部材40Eは、本体部42Eと、本体部42Eの左側端部から左斜め上方向に延出する上部アーム部43と、上部アーム部43の先端に設けられた第1先端部44と、本体部42Eの右側端部から右斜め下方向に延出する下部アーム部45Eと、下部アーム部45Eの先端に設けられた第2先端部46Eとを有する。
【0104】
第3の実施形態においても、第1先端部44の先端面は傾斜面でなる第1傾斜部441を有しており、第2先端部46Eの先端面は傾斜面でなる第2傾斜部461Eを有している。
【0105】
第1及び第2の実施形態では、板状部材40及び40Dには、略矩形形状の本体部42及び42Dが存在しており、板状部材40及び40Dを巻回して接続子30及び30Dを形成したときに、筒状部32が形成される場合を例示した。この筒状部32は、接続子30及び30Dをハウジングしたときに、上部弾性部33と、下部弾性部35及び35Dの上下方向のストロークを規制するストッパーとして機能する。
【0106】
これに対して、第3の実施形態では、板状部材を巻回して、より簡単に接続子を製造できるようにしたものである。つまり、略矩形形状としていた本体部42Eを帯状とすることで、板状部材40E全体の形状も帯状とした。また、本体部42Eを帯状とすることで、板状部材40E全体及びこれから形成される電気的接触子30Eのサイズを小型化することができる。
【0107】
図12に示すように、第3の実施形態の板状部材40Eは、斜め方向に延びた細長い板状部材ともいえる。例えば、図12では、本体部42Eの上下方向の幅の長さが、上部アーム部43の基端部431(又は下部アーム部45Eの基端部451E)の上下方向の幅長と同じであり、本体部42Eが平行四辺形の場合を例示するが、本体部42Eの形状は、図12に限定されない。
【0108】
上部アーム部43の巻回方向と、下部アーム部45Eの巻回方向とは互いに異なる方向とする。例えば、図12の平面視野で、上部アーム部43を反時計回りで巻回し、下部アーム部45Eを時計回りで巻回する等のようにしてもよい。また、上部アーム部43及び下部アーム部45Eを巻回して、上部弾性部33及び下部弾性部35Eを形成する際、例えば密着巻きで形成するようにしてもよい。つまり、上部アーム部43同士(又は下部アーム部45E同士)を同一径で巻いていく方法としてもよい。
【0109】
そして、例えば上部アーム部43を巻回し、上部アーム部43の基端部431の外側を本体部42Eで覆うように巻回していき、図13に示すように、本体部42Eの内側に上部弾性部33が形成される。同様に、下部アーム部45Eを巻回し、下部アーム部45の基端部451Eの外側を本体部42Eで覆うように巻回していき、図13に示すように、本体部42Eの内側に下部弾性部35Eが形成される。
【0110】
ここで、巻回された本体部42Eを、上部弾性部33と下部弾性部35Eとを連結する連結部32Eと呼ぶ。電気的接触子30Eの連結部32Eは、竹の子バネ構造の上部弾性部33及び下部弾性部35Eの両方の外側を覆うように位置する。したがって、上部弾性部33と下部弾性部35Eが圧縮荷重を受けたときに、上部弾性部33と下部弾性部35Eはそれぞれ独立して、軸方向に上下方向の弾性を有する。
【0111】
また、第2の実施形態と同様に、上部アーム部43と下部アーム部45Eの巻回方向を互いに異なる方向とすることにより、第1接触部34が第1の接触対象と接触し、第2接触部36E第2の接触対象と接触して荷重がかかったときに、上部弾性部33に作用する応力と、下部弾性部35Eに作用する応力とを打ち消すことができる。したがって、第1接触部34が第1の接触対象に接触したときの接点と、第2接触部36E第2の接触対象と接触したときの接点に生じる回転荷重を軽減することができる。
【0112】
さらに、第1及び第2の実施形態と同様に、上部弾性部33の第1傾斜接触部341が第1の接触対象に接触し、第2接触部36Eの第2傾斜接触部361Eが第2の接触対象に接触すると、電気的接触子30E全体が変形するので、上部弾性部33及び下部弾性部35Eの構成部材が一方側で電気的に接触可能となる。したがって、第1の接触対象と第2の接触対象との間で略直線的な導通経路が形成され、電気的な導通性が向上する。
【0113】
(C-2)第3の実施形態の効果
以上のように、第3の実施形態によれば、第1及び第2の実施形態で説明した効果が得られると共に、板状部材を巻回して形成する接続子をより簡単に製造できるようにしたものである。
【0114】
(D)他の実施形態
上述した第1~第3の実施形態においても種々の変形実施形態を言及したが、本発明は、以下の変形実施形態にも適用できる。
【0115】
(D-1)第1~第3の実施形態では、電気的接触子の一例として接続子30に適用する場合を例示したがこれに限らず、本発明の電気的接触子は、配線パターンの配線端子(例えば、第1の接触対象)と、例えば半導体集積回路等の被検査体の電極端子(例えば、第2の接触対象)とに電気的に接触させるプローブに適用できる。
【0116】
さらに、第1~第3の実施形態では、電気的接触子の第1接触部及び第2接触部の両方の先端が傾斜面(第1傾斜接触部、第2傾斜接触部)である場合を例示したが、第1接触部及び第2接触部のうちいずれか一方の接触部が傾斜面(傾斜接触部)でもよい。
【0117】
例えば、フラットな接触面の配線端子と、例えば半球体(半球面)の電極端子とに電気的に接触するプローブに、本発明の電気的接触子を適用する場合、半球面の電極端子と接触する第2接触部の先端を例えばニードル形状とし、半球面の電極端子の表面にニードル形状の第2接触部を突き刺し、一方フラットな接触面の配線端子と接触する第1接触部の先端を傾斜面(第1傾斜接触部)としてもよい。この場合、電極端子の表面を突き刺している第2接触部が軸となり、第1傾斜接触部が傾いた状態で配線端子と接触するので、プローブ全体又は構成要素の一部が撓み(変形し)、電気的な導通経路が短くなり、電気的な導通性が向上する。勿論、第1の実施形態で説明した通り、プローブの第1接触部及び第2接触部の両方の先端が傾斜面(第1傾斜接触部、第2傾斜接触部)であっても、電気的な導通性が向上する。
【0118】
(D-2)第1~第3の実施形態では、例えば第1の接触対象の接続端子14aの表面と、第1接触部34の先端面(第1傾斜接触部341)とが相対的に傾いている場合、すなわち、第1の接触対象の接続端子14aの表面の法線方向と、第1接触部34の先端面(第1傾斜接触部341)の法線方向とが相対的に異なる場合を例示した。
【0119】
その変形例として、図9(A)、図9(B)に例示するように、第1の接触対象としての接続端子14aが傾いており(水平性を保持しておらず)、第1の接触対象の接続端子14aの表面と、第1接触部34の先端面(第1傾斜接触部341)とが、相対的に傾いている場合にも本発明を適用できる。つまり、図9(A)の例では、接続端子14aの表面の法線と、接続子30の中心軸Aとが一致していない場合である。この場合でも、第1の実施形態と同様に、第1接触部34が接続端子14aと面接触することで、接続子30が変形し、電気的な導通経路が短くなり、同様の効果が得られる。
【0120】
(D-3)電気的接触子の形成前の板状部材は、第1~第3の実施形態で説明した形状に限らない。例えば、板状部材は以下のような形状であってもよい。
【0121】
例えば、図2の板状部材40の上部アーム部43の形状が、例えば弓形等の円弧状、若しくは、屈曲した形状であってもよい。このように、上部アーム部43の形状を円弧状に湾曲した形状若しくは折れ曲がった形状とし、上下方向の幅長を細くすることにより、上部アーム部43を巻回して形成した上部弾性部33は、上下方向の付勢力を小さく(低荷重)することができる。つまり、第1接触部34が第1接触対象と接触するときの接触荷重を小さくすることができる。
【0122】
また例えば、先細りの下部アーム部45の上下方向の幅長を、上部アーム部43より太くするようにしてもよい。このように、下部アーム部45を太くすることにより、下部アーム部45を巻回して形成した下部弾性部35は、上下方向の付勢力を大きく(高荷重)することができる。つまり、第2接触部36が第2接触対象と接触するときの接触荷重を大きくすることができる。
【0123】
さらに例えば、第1の実施形態では、上部アーム部43と下部アーム部45とが、本体部42の4辺の端部のうち同じ端部から延出されている場合を例示したが、この形状に限らない。例えば、上部アーム部43が、本体部42の左側端部の上部から左斜め上方向に延出し、下部アーム部45が、本体部42の右側端部の下部から右斜め下方向に延出する形状でもよい。
【0124】
また例えば、本体部42から延出している上部アーム部43の基端部431から先端側に掛けてくり抜き加工が施されて、1又は複数の略台形形状のスリット部が形成され、同様に、下部アーム部45の基端部451から先端側に掛けてくり抜き加工が施されて、1又は複数の略台形形状のスリット部が形成されるようにしてもよい。上部アーム部及び又は下部アーム部に設けるスリット部の数、形状等は限定されない。このように、上部アーム部及び又は下部アーム部に、1又は複数のスリット部を設けることにより、板状部材を巻回して形成した接続子の第1接触部及び第2接触部の荷重の大きさや、上部弾性部及び下部弾性部の上下方向のストロークを調整することができる。
【0125】
(D-4)上述した実施形態において例示した、筒状部の外形構造を保持するために、筒状部の任意の箇所に、所定の方法(例えば溶接や接着剤等)で固定するようにしてもよい。
【0126】
(D-5)図14は、変形実施形態に係る板状部材の構成を示す構成図である。図14の板状部材40Cは、図11(B)の第2の実施形態の電気的接触子30Dを形成するための板状部材の変形例である。図14の板状部材40Cと図12の板状部材40Eとの異なる点は、下部アーム部45Dの第2先端部46Dの先端面の傾きである。
【0127】
電気的接触子30Dにおける電気的な導通経路を有効に機能させるためには、最終的に作り込んだ図11(B)の電気的接触子30Dの状態で、第1接触部34の第1傾斜接触部341と、第2接触部36Dの第2傾斜接触部361Dとの傾斜面が線対称(例えば、第1傾斜接触部341は右斜め上方向、第2傾斜接触部361Dは右斜め下方向)にすることが望ましい。
【0128】
しかし、実際に電気的接触子30Dを作り込む際、上部アーム部43と、下部アーム部45Dとをそれぞれ巻回して形成するが、上部アーム部43と下部アーム部45Dとの巻く数が必ずしも一致するとは限らない。そのため、図12の板状部材40Dの形状に限定されず、図14の例のように、上部アーム部43の第1先端部44の第1傾斜部441と、下部アーム部45Dの第2先端部46Dの第2先端部461Cの傾斜が平行又は略平行であってもよい。なお、第1傾斜部441と第2傾斜部461Cとの傾斜が平行又は略平行であれば、図14の形状に限定されない。
【0129】
(D-6)図15は、変形実施形態に係る板状部材及び電気的接触子の構成を示す構成図である。
【0130】
例えば、本発明の電気的接触子を、パッケージ化された集積回路の電気的検査に用いられるテストソケット等のソケットに搭載されるプローブ等に適用するようにしてもよい。
その場合、電気的接触子の接触対象が、例えば半田ボール等の半円球状であることがある。そこで、この変形実施形態では、半田ボール等を接触対象とする場合にも対応可能な電気的接触子を、図15を参照しながら説明する。
【0131】
図15(B)に示すように、第2の実施形態の電気的接触子30Aは、筒状部32と、第1の接触対象としての配線基板14の接続端子14aと接触する第1接触部34と、第1接触部34が接続端子14aと接触して荷重を受けたときに上下方向に弾性的に付勢する上部弾性部33と、筒状部32の下端部321に複数の第2接触部37とを有する。
【0132】
図15(A)に示すように、板状部材40Aは、本体部42と、上部アーム部43と、上部アーム部43の先端に設けられた第1先端部44と、第1先端部44の先端に設けられた傾斜面である第1傾斜部441と、本体部42の下端部422に山形形状の凸部である複数の山形突起部47とを有する。なお、板状部材40Aは、第1の実施形態と同様に、例えば貴金属又は金属で形成された板状部材、若しくは、板状の部材の表面を貴金属又は金属でメッキ加工して得た板状部材であり、板状の部材を打ち抜き加工等を施して形成される。また例えば、板状部材40Aは、第1の接触対象及び又は第2の接触対象と接触する箇所を貴金属等とし、それ以外の部分を例えばバイメタル等の弾性(例えばバネ性)の優れた部材で形成してもよい。
【0133】
図15(B)の電気的接触子30Aは、図15(A)の板状部材40Aに対して成形加工(丸め加工等)を施して、板状部材40Aを巻回して丸めることで形成される。板状部材40Aを巻回して電気的接触子30Aが形成されると、筒状部32の下端部321及び第2接触部37はクラウン形状の接触部として機能する。
【0134】
なお、図15(A)の板状部材40Aに対して丸め加工を施して、図15(B)の電気的接触子30Aを形成する製造方法は、基本的には、第1の実施形態と同じであるので、ここでは製造方法の詳細な説明は省略する。
【0135】
図15(A)、図15(B)の例では、3個の山形突起部47を設ける場合を例示したが、山形突起部47の数は特に限定されるものではなく、2個若しくは4個以上であってもよい。また、接触対象とする半田ボールの大きさ(外形)等に応じて、山形突起部47の設置間隔を決定することができる。
【0136】
複数の第2接触部37は、筒状部32の下端部321に山形形状の凸部(突起部)として設けられている。このような形状とすることで、複数の第2接触部(山形突起部47)37と筒状部32の下端部321とが、半田ボール80に対して電気的に接触することができ、筒状部32の下端部321に第2接触部(山形突起部47)37を設けることにより、第2接触部(山形突起部47)37が半田ボール80の表面に当たり(突き刺さり)電気的接触性を確実にすることができる。また、上述した例では、山形突起部47としての第2接触部37が筒状部32の下端部321にある場合を例示したが、接触対象との接触態様に応じて、筒状部32の上端部に山形突起部47としての第2接触部37を設けるようにしてもよい。
【0137】
この場合、例えば筒状部32の複数の第2接触部37が、接触対象である半田ボールと電気的に接触することで軸となり、第1傾斜接触部341が傾いた状態で配線端子と電気的に接触するので、プローブ全体又は構成要素の一部が撓み(変形し)、電気的な導通経路が短くなり、電気的な導通性が向上する。
【0138】
以上のように、この変形実施形態によれば、上述した実施形態で説明した効果に加えて、接触対象が半田ボール等のような半球体状のものであっても、当該接触対象との電気的接触性を確実にすることができる。
【符号の説明】
【0139】
30、30D及び30E…接続子(電気的接触子)、32…筒状部、33…上部弾性部、34…第1接触部、341…第1傾斜接触部、35、35D及び35E…下部弾性部、36、36D及び36E…第2接触部、361、361D及び361E…第2傾斜接触部、37…第2接触部、
40、40A、40D、40C及び40E…板状部材、42、42D及び42E…本体部、43…上部アーム部、44…第1先端部、441…第1傾斜部、45、45D及び45E…下部アーム部、46、46D及び46E…第2先端部、461、461C及び461D…第2傾斜部、47…山形突起部、421…上端部、422…下端部、423…上部角部、424…段部、425及び425D…下部角部、426及び426D…段部、431…基端部、432…先端部、451…基端部、452及び452D…先端部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15