IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サッポロビール株式会社の特許一覧

特開2024-107357飲料、飲料の複雑さ向上剤、及び飲料の複雑さ向上方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107357
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】飲料、飲料の複雑さ向上剤、及び飲料の複雑さ向上方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/56 20060101AFI20240801BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20240801BHJP
   C12G 3/04 20190101ALI20240801BHJP
   C12G 3/06 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
A23L2/56
A23L2/00 B
C12G3/04
C12G3/06
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024094967
(22)【出願日】2024-06-12
(62)【分割の表示】P 2019238489の分割
【原出願日】2019-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】303040183
【氏名又は名称】サッポロビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100176773
【弁理士】
【氏名又は名称】坂西 俊明
(72)【発明者】
【氏名】丸山 一樹
(72)【発明者】
【氏名】熊丸 陽奈
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 隆一
(57)【要約】
【課題】複雑さに優れた飲料を提供すること。
【解決手段】カルボン酸エステル及び4-エチルグアイアコールを含有する、飲料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボン酸エステル及び4-エチルグアイアコールを含有する、飲料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料、飲料の複雑さ向上剤、及び飲料の複雑さ向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カルボン酸エステルは、フルーツ様の香気を有するものが多く、香料として利用されている。一方、4-エチルグアイアコールは、ビール、ワイン、清酒、焼酎等のアルコール飲料のオフフレーバーとして知られている(例えば、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】エヌリブ 酒類総合研究所広報誌,独立行政法人酒類総合研究所発行,2016年3月31日,第29号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、カルボン酸エステルと4-エチルグアイアコールを組み合わせることで、カルボン酸エステルそのものから感じられる単純な香りと比べて、本物のフルーツから感じられる複雑にバランスされた香りを感じられること、すなわち複雑さが向上することを見出した。本発明は、この意外な知見に基づくものであり、複雑さに優れた飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、カルボン酸エステル及び4-エチルグアイアコールを含有する、飲料に関する。本発明に係る飲料は、カルボン酸エステル及び4-エチルグアイアコールを組み合わせて含有しているため、複雑さに優れる。また、本発明に係る飲料は、複雑さに優れていることにより、本物のフルーツに近い香りを感じられることで、嗜好性が向上する。
【0006】
上記カルボン酸エステルは、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、吉草酸エステル及びカプロン酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種であってよい。これにより、飲料の複雑さがより優れたものとなる。
【0007】
上記カルボン酸エステルは、酢酸イソアミル、カプロン酸エチル及び酪酸エチルからなる群より選択される少なくとも1種であってよい。これにより、飲料の複雑さがより一層優れたものとなる。
【0008】
上記飲料は、上記4-エチルグアイアコールの含有量が、0.01mg/L以上100mg/L以下であってよい。これにより、飲料の複雑さがより優れたものとなる。
【0009】
上記飲料は、非発酵飲料であってよい。
【0010】
上記飲料は、容器入り飲料であってよい。
【0011】
上記飲料は、アルコール飲料であってよい。
【0012】
上記飲料は、RTD(Ready To Drink)の形態であってよい。
【0013】
上述したとおり、カルボン酸エステルと4-エチルグアイアコールを組み合わせることで、飲料の複雑さを向上させることができる。したがって、本発明は、カルボン酸エステル、及び4-エチルグアイアコールを有効成分とする、飲料の複雑さ向上剤と捉えることもできる。本発明はまた、カルボン酸エステル、及び4-エチルグアイアコールを配合することを含む、飲料の複雑さ向上方法と捉えることもできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複雑さに優れた飲料を提供することができる。本発明に係る飲料は、複雑さに優れていることにより、本物のフルーツに近い香りを感じられることで、嗜好性が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0016】
〔飲料〕
本実施形態に係る飲料は、カルボン酸エステル及び4-エチルグアイアコールを含有する。
【0017】
カルボン酸エステルは、カルボン酸とアルコールとが脱水縮合したことに相当する構造式を有する化合物であれば、特に制限なく使用できる。カルボン酸エステルの具体例としては、例えば、下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0018】
【化1】

一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい炭素原子数6~60の芳香族炭化水素基を示す。
【0019】
及びRにおける炭素原子数1~20の直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、例えば、炭素原子数1~12の直鎖状又は分岐状のアルキル基であってよく、炭素原子数1~8の直鎖状又は分岐状のアルキル基であってよく、炭素原子数1~6の直鎖状又は分岐状のアルキル基であってよい。
【0020】
及びRにおける炭素原子数1~20の直鎖状又は分岐状のアルキル基の具体例として、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、2-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、2-メチルプロピル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、1-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、1,4-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、1-エチル-2-メチル-プロピル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、n-ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、n-オクチル基、イソオクチル基、tert-オクチル基、2-エチルヘキシル基、3-メチルヘプチル基、n-ノニル基、イソノニル基、1-メチルオクチル基、2-エチルヘプチル基、n-デシル基、1-メチルノニル基、n-ウンデシル基、1,1-ジメチルノニル基、n-ドデシル基、n-テトラデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基が挙げられる。
【0021】
及びRにおける炭素原子数6~60の芳香族炭化水素基は、単環式又は多環式の芳香族炭化水素から環を構成する炭素原子に結合する水素原子を1個除いた基を意味する。R及びRにおける炭素原子数6~60の芳香族炭化水素基としては、例えば、炭素原子数6~30の芳香族炭化水素基であってよく、炭素原子数6~18の芳香族炭化水素基であってよい。
【0022】
及びRにおける炭素原子数6~60の芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、トリフェニレニル基、インデニル基、フルオレニル基が挙げられる。
【0023】
置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等のハロゲン原子、アジ基、スルホ基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、水酸基、カルボキシ基、チオール基、無置換アミノ基、炭素原子数1~20の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。
【0024】
置換基における炭素原子数1~20の直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、2-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、2-メチルプロピル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、1-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、1,4-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、1-エチル-2-メチル-プロピル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、n-ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、n-オクチル基、イソオクチル基、tert-オクチル基、2-エチルヘキシル基、3-メチルヘプチル基、n-ノニル基、イソノニル基、1-メチルオクチル基、2-エチルヘプチル基、n-デシル基、1-メチルノニル基、n-ウンデシル基、1,1-ジメチルノニル基、n-ドデシル基、n-テトラデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基等が挙げられる。
【0025】
これらの置換基は、1つのみ含まれてもよく、複数含まれてもよく、複数含まれる場合は互いに同一でも異なっていてもよい。また、これら置換基は上で例示した置換基を有していてもよく、さらに、これらの置換基同士が単結合、置換若しくは無置換のメチレン基、酸素原子又は硫黄原子を介して互いに結合して環を形成していてもよい。
【0026】
カルボン酸エステルは、例えば、酢酸エステル(一般式(1)において、Rがメチル基である化合物)、プロピオン酸エステル(一般式(1)において、Rがエチル基である化合物)、酪酸エステル(一般式(1)において、Rがn-プロピル基である化合物)、吉草酸エステル(一般式(1)において、Rがn-ブチル基である化合物)、カプロン酸エステル(一般式(1)において、Rがn-ペンチル基である化合物)であってよい。
【0027】
カルボン酸エステルの具体例としては、例えば、酢酸イソアミル(一般式(1)において、Rがメチル基であり、Rが3-メチルブチル基である化合物)、カプロン酸エチル(一般式(1)において、Rがn-ペンチル基であり、Rがエチル基である化合物)、酪酸エチル(一般式(1)において、Rがn-プロピル基であり、Rがエチル基である化合物)、酢酸エチル(一般式(1)において、Rがメチル基であり、Rがエチル基である化合物)、イソ酪酸エチル(一般式(1)において、Rが2-プロピル基であり、Rがエチル基である化合物)が挙げられ、酢酸イソアミル、カプロン酸エチル及び酪酸エチルが好ましい。
【0028】
カルボン酸エステルは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0029】
本実施形態に係る飲料のカルボン酸エステル含有量は、カルボン酸エステルの香気を充分に感じられる量(例えば、閾値よりも充分に多い量)であれば特に制限されない。カルボン酸エステル含有量は、使用するカルボン酸エステルの種類に応じて設定してよいが、例えば、飲料全量に対してカルボン酸エステルの総量で、0.001mg/L以上1000mg/L以下であってよく、0.005mg/L以上500mg/L以下であってよく、0.01mg/L以上100mg/L以下であってよく、0.01mg/L以上75mg/L以下であってよく、0.01mg/L以上50mg/L以下であってよく、0.05mg/L以上25mg/L以下であってよく、0.1mg/L以上10mg/L以下であってよい。
【0030】
また、例えば、カルボン酸エステルとして酢酸イソアミルを使用する場合、酢酸イソアミルの含有量は、例えば、飲料全量に対して、0.1mg/L以上100mg/L以下であってよく、0.5mg/L以上50mg/L以下であってよく、1mg/L以上10mg/L以下であってよく、2.5mg/L以上7.5mg/L以下であってよい。
【0031】
また、例えば、カルボン酸エステルとしてカプロン酸エチルを使用する場合、カプロン酸エチルの含有量は、例えば、飲料全量に対して、0.01mg/L以上10mg/L以下であってよく、0.05mg/L以上5mg/L以下であってよく、0.1mg/L以上1mg/L以下であってよく、0.25mg/L以上0.75mg/L以下であってよい。
【0032】
また、例えば、カルボン酸エステルとして酪酸エチルを使用する場合、酪酸エチルの含有量は、例えば、飲料全量に対して、0.01mg/L以上10mg/L以下であってよく、0.05mg/L以上5mg/L以下であってよく、0.1mg/L以上1mg/L以下であってよく、0.25mg/L以上0.75mg/L以下であってよい。
【0033】
本実施形態に係る飲料のカルボン酸エステル含有量は、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.22 低沸点香気成分」に記載の方法に準じて測定することができる。また、本実施形態に係る飲料のカルボン酸エステル含有量は、例えば、使用する原料の種類及び配合量等により調整することができる。また、例えば、カルボン酸エステルそのものを配合すること、カルボン酸エステルを含む原料(例えば、香料組成物)を配合すること等により調整することもできる。
【0034】
4-エチルグアイアコール(以下、「4EG」ともいう。)は、2-メトキシ-4-エチルフェノールとも称される化合物である。4EGは、酒類のオフフレーバーとして知られている。本実施形態に係る飲料は、カルボン酸エステルと4EGを組み合わせていることで、意外にも複雑さが向上するという効果が得られる。
【0035】
本実施形態に係る飲料の4EG含有量は、例えば、飲料全量に対して、0.01mg/L以上100mg/L以下であってよく、0.02mg/L以上75mg/L以下であってよく、0.03mg/L以上50mg/L以下であってよく、0.04mg/L以上40mg/L以下であってよく、0.05mg/L以上30mg/L以下であってよく、0.06mg/L以上25mg/L以下であってよく、0.07mg/L以上20mg/L以下であってよく、0.08mg/L以上15mg/L以下であってよく、0.09mg/L以上10mg/L以下であってよく、0.1mg/L以上5mg/L以下であってよい。
【0036】
本実施形態に係る飲料の4EG含有量は、固相マイクロ抽出(SPME)法に基づき、ガスクロマトグラフ質量分析装置(GC-MS)を用いて測定することができる。なお、定量は標準添加法によって実施することが好ましい。また、本実施形態に係る飲料の4EG含有量は、例えば、使用する原料の種類及び配合量等により調整することができる。また、例えば、4EGそのものを配合すること、4EGを含む原料(例えば、香料組成物)を配合すること等により調整することもできる。
【0037】
本実施形態に係る飲料は、飲料に通常配合される着色料、甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、酸味料、香料、塩類等の添加剤を含んでいてもよい。着色料としては、例えば、カラメル色素、クチナシ色素、果汁色素、野菜色素、合成色素を挙げることができる。甘味料としては、例えば、果糖ぶどう糖液糖、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、グリコーゲン、デンプンを挙げることができる。高甘味度甘味料としては、例えば、ネオテーム、アセスルファムK、スクラロース、サッカリン、サッカリンナトリウム、リチルリチン酸二ナトリウム、チクロ、ズルチン、ステビア、グリチルリチン、ソーマチン、モネリン、アスパルテーム、アリテームを挙げることができる。酸化防止剤としては、例えば、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールを挙げることができる。酸味料としては、例えば、リン酸、乳酸、DL-リンゴ酸、クエン酸、アジピン酸、クエン酸三ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL-酒石酸、L-酒石酸、DL-酒石酸ナトリウム、L-酒石酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、氷酢酸、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、DL-リンゴ酸ナトリウムを挙げることができる。香料としては、例えば、ビールフレーバー、フルーツフレーバーを挙げることができる。塩類としては、例えば、食塩、酸性りん酸カリウム、酸性りん酸カルシウム、りん酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、メタ重亜硫酸カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸カリウム、硫酸アンモニウムを挙げることができる。
【0038】
本実施形態に係る飲料は、アルコール度数が1v/v%以上であるアルコール飲料であってもよく、アルコール度数が1v/v%未満であるノンアルコール飲料であってもよい。なお、本明細書においてアルコールとは、特に言及しない限りエタノールを意味する。
【0039】
アルコール飲料のアルコール度数は、特に制限されず、例えば、1v/v%以上、2v/v%以上、3v/v%以上、4v/v%以上、又は5v/v%以上であってよい。また、ビールテイストアルコール飲料のアルコール度数は、例えば、20v/v%以下、15v/v%以下、10v/v%以下、9v/v%以下、8v/v%以下、7v/v%以下、6v/v%以下、5v/v%以下、4v/v%以下、又は3v/v%以下であってよい。
【0040】
ノンアルコール飲料のアルコール度数は、1v/v%未満であればよく、0.5v/v%以下であってよく、0.1v/v%以下であってよく、0.005v/v%未満(0.00v/v%)であってもよい。
【0041】
本実施形態に係る飲料は、非発泡性であってもよく、発泡性であってもよい。ここで、非発泡性とは、20℃におけるガス圧が0.049MPa(0.5kg/cm)未満であることをいい、発泡性とは、20℃におけるガス圧が0.049MPa(0.5kg/cm)以上であることをいう。発泡性とする場合、ガス圧の上限は0.294MPa(3.0kg/cm)程度としてもよい。
【0042】
本実施形態に係る飲料は、非発酵飲料であってよい。非発酵飲料は、酵母等による発酵を行わずに製造されるものである。なお、非発酵飲料には、酵母等による発酵を行わず、アルコール(例えば、原料用アルコール、スピリッツ、ウォッカ)を配合して製造される飲料も含まれる。
【0043】
本実施形態に係る飲料は、容器に入れて、容器入り飲料として提供することができる。容器は密閉できるものであればよく、金属製(アルミニウム製又はスチール製など)のいわゆる缶容器・樽容器を適用することができる。また、容器は、ガラス容器、ペットボトル容器、紙容器、パウチ容器等を適用することもできる。容器の容量は特に限定されるものではなく、現在流通しているどのようなものも適用することができる。なお、気体、水分及び光線を完全に遮断し、長期間常温で安定した品質を保つことが可能な点から、金属製の容器を適用することが好ましい。
【0044】
本実施形態に係る飲料は、例えば、チューハイテイスト飲料であってよい。また、本実施形態に係る飲料は、RTD(Ready To Drink)又はRTS(Ready To Serve)の形態であってもよい。RTDは、蓋を開けてそのまま飲用されるものである。RTSは、氷、水、湯等で割ることにより飲用されるものである。本明細書において、チューハイテイスト飲料とは、チューハイ、又はチューハイ様の香味を有する飲料を意味する。チューハイテイスト飲料は、フルーツフレーバー、果汁を含有していてもよい。フルーツフレーバー及び果汁の果実種は、例えば、梅、リンゴ、イチゴ、桃等のバラ科果実、レモン、ミカン、グレープフルーツ、オレンジ、ライム、ゆず、かぼす、すだち、シークァーサー等の柑橘類果実、ぶどう果実等が挙げられる。
【0045】
本実施形態に係る飲料は、カルボン酸エステル及び4-エチルグアイアコールを配合すること、及び必要に応じてこれらの含有量を上述した範囲内に調整することの他は、常法に従って製造することができる。カルボン酸エステル及び4-エチルグアイアコールの配合、及びこれらの含有量の調整は、例えば、カルボン酸エステル及び4-エチルグアイアコールを原料液に添加することにより実施することができる。カルボン酸エステル及び4-エチルグアイアコールは、これらそのものを原料液に添加してもよく、これらを含む原料(例えば、香料組成物)を原料液に添加してもよい。本明細書において、原料液とは、飲料のもととなる液を意味する。
【0046】
本実施形態に係る飲料は、例えば、カルボン酸エステル及び4-エチルグアイアコールと、必要に応じて、水、蒸留アルコール(例えば、原料用アルコール、スピリッツ、ウォッカ)及び各種添加剤と、を原料タンクに配合する配合工程を含む製造方法により得ることができる。カルボン酸エステル及び4-エチルグアイアコールは、そのものを配合してもよく、また例えば、これらを含む原料(例えば、香料組成物)を添加することにより配合してもよい。
【0047】
本実施形態に係る製造方法は、配合工程において各成分を混合して得た混合液をろ過するろ過工程と、ろ過工程でろ過したろ過液を殺菌する第一の殺菌工程と、第一の殺菌工程で殺菌した殺菌済みのろ過液をビン、缶、ビン、ペットボトル等の容器に充填する充填工程と、充填工程で容器に充填されたろ過液を容器ごと殺菌する第二の殺菌工程と、を更に含んでいてもよい。
【0048】
配合工程は、各成分がよく混ざるよう、撹拌機等により撹拌しながら混合してもよい。また、ろ過工程は、一般的なフィルター又はストレーナーによって行うことができる。第一の殺菌工程は、処理速度等の観点から、プレート殺菌によって行ってもよく、同様の処理を行うことができるのであれば、これに限定されることなく適用可能である。充填工程は、飲料の製造において通常行われる程度にクリーン度を保ったクリーンルームにて充填してもよい。第二の殺菌工程は、所定の温度及び所定の時間でろ過液を容器ごと加熱することにより行うことができる。第二の殺菌工程を行わない無殺菌充填を行うことも可能である。
【0049】
〔飲料の複雑さ向上剤、及び飲料の複雑さ向上方法〕
カルボン酸エステルと4-エチルグアイアコールを組み合わせることで、カルボン酸エステルそのものから感じられる単純な香りと比べて、本物のフルーツから感じられる複雑にバランスされた香りを感じられること、すなわち複雑さが向上する。したがって、本発明の一実施形態として、カルボン酸エステル及び4-エチルグアイアコールを有効成分とする、飲料の複雑さ向上剤が提供される。また、他の実施形態として、カルボン酸エステル、及び4-エチルグアイアコールを配合することを含む、飲料の複雑さ向上方法が提供される。
【0050】
飲料の複雑さ向上剤、及び飲料の複雑さ向上方法における具体的な態様等は、上述したとおりである。本実施形態に係る飲料の複雑さ向上剤、及び飲料の複雑さ向上方法によれば、飲料の複雑さを向上させることができ、本物のフルーツに近い香りを感じられることで、飲料の嗜好性が向上する。
【実施例0051】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
【0052】
〔試験例1:飲料の製造及び評価〕
水に、カルボン酸エステル(酢酸イソアミル、カプロン酸エチル又は酪酸エチル)及び4-エチルグアイアコール(4EG)を表1~3に示す含有量となるように添加し、飲料を製造した。
【0053】
得られた飲料に対して、選抜された識別能力のある6名のパネルにより、「複雑さ」の評価項目について官能評価を行った。評点1~5の5段階で評価し、6名のパネルの平均値を評価スコアとした。官能評価を行うに際して、パネル間で摺合せを実施し、評価基準を統一させた。
【0054】
「複雑さ」は、カルボン酸エステルそのものから感じられる単純な香り(例えば、溶媒のような香り)と比べて、本物のフルーツから感じられる複雑にバランスされた香りを感じられることであり、評点が高いほど、より本物のフルーツに近い香りが感じられること、すなわち、複雑さが優れていることを示す。結果を併せて表1~3に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
表1~3に示した結果から、カルボン酸エステル(酢酸イソアミル、カプロン酸エチル又は酪酸エチル)に4-エチルグアイアコール(4EG)を組み合わせることで、複雑さが向上することが分かる。
【0059】
〔試験例2:飲料の製造及び評価〕
水に、原料用アルコール(アルコール濃度:65.5v/v%)、カルボン酸エステル(酢酸イソアミル、カプロン酸エチル又は酪酸エチル)及び4-エチルグアイアコール(4EG)を表4~6に示す含有量となるように添加し、飲料(ノンアルコール飲料及びアルコール飲料)を製造した。
【0060】
得られた飲料に対して、試験例1と同様にして、「複雑さ」の評価項目について官能評価を行った。結果を併せて表4~6に示す。
【0061】
【表4】
【0062】
【表5】
【0063】
【表6】
【0064】
表4~6に示した結果から、アルコール飲料とした場合であっても、カルボン酸エステル(酢酸イソアミル、カプロン酸エチル又は酪酸エチル)と4-エチルグアイアコール(4EG)を組み合わせることで向上した複雑さが維持されることが分かる。