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特開2024-107367治療薬物の腸内送達のためのシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107367
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】治療薬物の腸内送達のためのシステム
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/52 20060101AFI20240801BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240801BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20240801BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240801BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20240801BHJP
【FI】
A61K9/52
A61K47/12
A61K47/28
A61K47/36
A61K47/42
【審査請求】有
【請求項の数】43
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024095066
(22)【出願日】2024-06-12
(62)【分割の表示】P 2021507492の分割
【原出願日】2019-08-13
(31)【優先権主張番号】62/764,917
(32)【優先日】2018-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518137726
【氏名又は名称】リンドラ セラピューティクス, インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】タイラー グラント
(72)【発明者】
【氏名】ローズマリー カナスティー
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド アルトルーター
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー ベリンガー
(72)【発明者】
【氏名】アリーシャ ウェイト
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ゼール
(72)【発明者】
【氏名】スーザン ロー
(57)【要約】
【課題】治療薬物、例えば、生物学的な巨大分子の徐放及び腸内送達用途で設定されるシステム、並びにそのようなシステムを使用する及び作製する方法を提供すること。
【解決手段】本明細書で記載されるものは、治療薬物の腸内デリバリーシステム、及び腸内デリバリーシステムを経口投与することによる患者への治療薬物の投与方法である。その腸内デリバリーシステムは担体ポリマー及び治療薬物を含む一以上の担体部材を含み、そのシステムは圧縮した状態及び拡張した状態に設定可能であり、かつ外向きの圧力を腸壁に適用することによって小腸の腸壁への接触を維持するようなサイズを取り、小腸の腸粘膜にわたって少なくとも部分の治療薬物を輸送する。
【選択図】図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療薬物の腸内投与のためのシステムであって、:
担体ポリマー及び治療薬物を含む一以上の担体部材、
圧縮した形態及び拡張した形態において設定可能な前記システムであって、ここで前記システムが(1)小腸内で圧縮した形態から拡張した形態に拡張し、又は(2)胃内で圧縮した形態から拡張した形態に拡張し、かつ小腸に到達するまで前記治療薬物の実質的な放出なしに幽門を通過するように設定され;
ここで、前記システムが、小腸の腸壁への外向きの圧力を適用することによって小腸の腸壁への接触を保持し、かつ小腸の腸粘膜にわたって治療薬物の少なくとも部分を輸送するようなサイズを取り;かつ
ここで、前記システムの少なくとも一部が、外向きの圧力を小腸内で放出する期間後構造的な完全性を失うシステム。
【請求項2】
前記システムが小腸内で圧縮した形態から拡張した形態に拡張するように設定される、請求項1のシステム。
【請求項3】
前記システムが胃内で圧縮した形態から拡張した形態に拡張し、かつ小腸に到達するまで治療薬物の実質的な放出なしに幽門を通過するように設定される、請求項1のシステム。
【請求項4】
前記一以上の担体部材が治療薬物を含むコーティングを含む、請求項1~3のいずれか一項のシステム。
【請求項5】
前記コーティングがさらに浸透促進剤を含む、請求項4のシステム。
【請求項6】
前記治療薬物を前記担体ポリマー内に積載した、請求項1~3のいずれか一項のシステム。
【請求項7】
浸透促進剤を前記担体ポリマー内に積載した、請求項6のシステム。
【請求項8】
前記浸透促進剤が粘膜接着剤又は粘膜透過剤である、請求項5又は7のシステム。
【請求項9】
前記浸透促進剤が脂肪酸、胆汁酸塩、キトサン、チオール化したポリマー、又は細胞透過性ペプチドである、請求項8のシステム。
【請求項10】
前記外向きの圧力が、前記システムが小腸に入った後約1時間から約72時間後に放出される、請求項1~9のいずれか一項のシステム。
【請求項11】
外向きの圧力の放出が、小腸を通じる前記担体部材の通過を可能にする、請求項1~10のいずれか一項のシステム。
【請求項12】
前記システムが約1時間から約72時間の間腸粘膜にわたって治療薬物を輸送するように設定される、請求項1~11のいずれか一項のシステム。
【請求項13】
前記システムが、十二指腸の腸壁に外向きの圧力を適用することによって十二指腸の腸壁への接触を保持するようなサイズを取り、かつ前記十二指腸の腸壁にわたって治療薬物の少なくとも一部を輸送する、請求項1~12のいずれか一項のシステム。
【請求項14】
前記一以上の担体部材が中空コアを含む、請求項1~13のいずれか一項のシステム。
【請求項15】
前記一以上の担体部材が固いコアを含む、請求項1~14のいずれか一項のシステム。
【請求項16】
前記一以上の担体部材が、外向きの圧力を小腸内で放出する期間後構造的な完全性を失うように設定される、請求項1~15のいずれか一項のシステム。
【請求項17】
前記一以上の担体部材が前記一以上の担体部材の侵食、分解、又は軟化を通じて構造的な完全性を失うように設定される、請求項16のシステム。
【請求項18】
前記一以上の担体部材が環状に配置される、請求項1~16のいずれか一項のシステム。
【請求項19】
一以上の担体部材を連結し環状を形成する一以上のリンカー、小腸内の期間後、構造的な完全性を失うように設定されるポリマーを含む前記一以上のリンカーをさらに含む、請求項1~18のいずれか一項のシステム。
【請求項20】
前記治療薬物が前記環状の外側の部分上又は内のコーティング内にあるが、前記環状の内側上又は内にない、請求項19のシステム。
【請求項21】
前記システムがさらに、前記システムが拡張した形態である場合に、中心部材から外側に放射する複数のアームに接着したエラストマー中心部材を含み、前記アームは一以上の担体部材を含む、請求項1~17のいずれか一項のシステム。
【請求項22】
前記システムの前記治療薬物が優先的に、前記エラストマー中心部材に関連する前記アームの遠位末端上又は内に配置される、請求項21のシステム。
【請求項23】
前記エラストマー中心部材が、小腸内の期間後、構造的な完全性を失うように設定されるポリマーを含む、請求項22のシステム。
【請求項24】
前記エラストマー中心部材が、エラストマー中心部材の侵食、分解、又は軟化を通じて構造的な完全性を失うように設定される、請求項23のシステム。
【請求項25】
前記エラストマー中心部材が、小腸内の期間後、構造的な完全性を失うように設定されるポリマーを含む一以上のリンカーを通じて前記アームに連結される、請求項21~24のいずれか一項のシステム。
【請求項26】
前記システムが、前記一以上のリンカーの侵食、分解、又は軟化を通じて構造的な完全性を失う、請求項19、20、又は25のシステム。
【請求項27】
前記担体部材が断面にわたって環状、楕円形、又はしずく型を有する、請求項1~26のいずれか一項のシステム。
【請求項28】
前記治療薬物がポリペプチド又はポリヌクレオチドである、請求項1~27のいずれか一項のシステム。
【請求項29】
前記治療薬物が10以上のアミノ酸を含むポリペプチドである、請求項28のシステム。
【請求項30】
前記治療薬物が10以上のヌクレオチドを含むポリヌクレオチドである、請求項28のシステム。
【請求項31】
前記小腸がヒトの小腸である、請求項1~30のいずれか一項のシステム。
【請求項32】
前記システムが保護コーティングによってコートされる、請求項1~31のいずれか一項のシステム。
【請求項33】
前記保護コーティングが腸溶性コーティングである、請求項32のシステム。
【請求項34】
前記システムが逆腸溶性コーティングによってさらにコートされる、請求項32又は33のシステム。
【請求項35】
請求項1~34のいずれか一項のシステムをカプセル化するカプセルを含む治療の剤形。
【請求項36】
前記カプセルが腸溶性カプセルである、請求項35の治療薬の剤形。
【請求項37】
治療薬物を患者に投与する方法であって:
圧縮した形態における腸内デリバリーシステム、担体ポリマー及び治療薬物を含む一以上の担体部材を含む腸内デリバリーシステムを患者に経口投与すること;
腸内デリバリーシステムを拡張した形態に拡張すること;
拡張した腸内デリバリーシステムを用いて、外向きの圧力を前記患者の小腸の腸壁に適用すること;かつ
腸内デリバリーシステムから治療薬物を放出し、小腸の腸粘膜にわたって治療薬物を輸送することを含む方法。
【請求項38】
前記腸内デリバリーシステムが小腸内に拡張される、請求項37の方法。
【請求項39】
前記腸内デリバリーシステムが患者の十二指腸内に拡張する、請求項37又は38の方法。
【請求項40】
前記腸内デリバリーシステムが患者の胃内に拡張され、かつシステムが小腸に入るまでに治療薬物の実質的な放出なしに患者の幽門を通過し小腸内に入る、請求項37の方法。
【請求項41】
少なくとも一部の前記システムが小腸内に外向きの圧力を放出する期間後、構造的な完全性を失う、請求項37~40のいずれか一項の方法。
【請求項42】
前記外向きの圧力が、前記システムが小腸内に入った後、約1~約72時間後に放出される、請求項41の方法。
【請求項43】
前記外向きの圧力の放出が、前記腸内デリバリーシステムが小腸を通過することを可能にする、請求項41又は42の方法。
【請求項44】
前記治療薬物がポリペプチド又はポリヌクレオチドである、請求項37~43のいずれか一項の方法。
【請求項45】
前記治療薬物が10以上のアミノ酸を含むポリペプチドである、請求項44の方法。
【請求項46】
前記治療薬物が10以上のヌクレオチドを含むポリヌクレオチドである、請求項44の方法。
【請求項47】
前記腸内デリバリーシステムが請求項1~34のいずれか一項に記載のシステムである、請求項37~46のいずれか一項の方法。
【請求項48】
前記患者がヒトである、請求項37~46のいずれか一項の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2018年8月15日に出願した米国仮特許出願第62/764,917号の優先権の利益を主張する。その出願の全体の内容は、これによって本明細書に参照によって取り込まれる。
【0002】
本開示は治療薬物、例えば、生物学的な巨大分子の徐放及び腸内送達用途で設定されるシステム、並びにそのようなシステムを使用する及び作製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
多くの治療薬物の投与、特に生物学的な巨大分子、例えば、タンパク質又はオリゴヌクレオチドは、皮下又は静脈内投与に依存する。治療上の経口投与製剤は、注射投与と比較して投与のしやすさ及びコンプライアンスを増加することを高く所望される。しかしながら、経口投与は一般的に胃の酸性環境及び腸壁を通じた乏しい吸収のために効果的でない。ある治療薬物の腸溶性製剤は、経口投与される小腸における徐放用途で開発されているが、そのような製剤は一般的に疎水性の小分子の薬物に限定される。
【0004】
生体分子の腸内送達を増強する以前の試みでは、ナノ粒子送達及び腸壁に穴を開けるニードル又はマイクロニードルの使用を含んでいた。そのような方法は往々にして、低い薬物摂取効率の矛盾を有し、又は徐放を認めない。
【発明の概要】
【0005】
本明細書に記載されるものは、治療薬物の腸内送達のためのシステムである。また、本明細書に記載されるものは、任意の一つの本発明に記載される腸内送達システムを被包するカプセルを含む治療剤形である。さらに記載されるものは、腸内送達システムを経口投与することによる患者に治療薬物を投与する方法である。
【0006】
本明細書に記載されるものは、治療薬物の腸内送達のためのシステムであり:担体ポリマー及び治療薬物を含む一以上の担体部材を含み、そのシステムは圧縮した形態及び拡張した形態において設定可能なシステムであり、ここで、そのシステムは(1)小腸内で圧縮した形態から拡張した形態へ拡張するように、又は(2)胃内で圧縮した形態から拡張した形態へと拡張し、及び小腸に到達するまで治療薬物の実質的な放出なしに幽門を通過するように設定され;ここで、そのシステムは小腸の腸壁への外向きの圧力を適用することによって小腸の腸壁への接触を保持し、かつその小腸の腸粘膜にわたって治療薬物の少なくとも部分を輸送するようなサイズを取り;並びにここで、そのシステムの少なくとも一部が、外向きの圧力を小腸内で放出する期間後構造的な完全性を失う。
【0007】
ある態様において、そのシステムは小腸内で圧縮した形態から拡張した形態へ拡張するように設定される。
【0008】
ある態様において、そのシステムは胃内で圧縮した形態から拡張した形態に拡張し、及び小腸に到達するまで治療薬物の実質的な放出なしに幽門を通過するように設定される。
【0009】
ある態様において、その一以上の担体部材は治療薬物を含むコーティングを含む。
【0010】
ある態様において、そのコーティングはさらに浸透促進剤を含む。
【0011】
ある態様において、その治療薬物は前記担体ポリマー内に積載される。
【0012】
ある態様において、浸透促進剤は前記担体ポリマー内に積載される。ある態様において、その浸透促進剤は粘膜接着剤又は粘膜透過剤である。ある態様において、その浸透促進剤は、脂肪酸、胆汁酸塩、キトサン、チオール化したポリマー、又は細胞透過性ペプチドである。
【0013】
ある態様において、その外向きの圧力は、小腸に前記システムが入った後約1時間から約72時間後に放出される。ある態様において、外向きの圧力の放出は、小腸を通じる前記担体部材の通過を可能にする。
【0014】
ある態様において、そのシステムは約1時間から約72時間の間腸粘膜にわたって治療薬物を輸送するように設定される。
【0015】
ある態様において、そのシステムは、十二指腸の腸壁に外向きの圧力を適用することによって十二指腸の腸壁への接触を保持するようなサイズを取り、かつ前記十二指腸の腸壁にわたって治療薬物の少なくとも一部を輸送する。
【0016】
ある態様において、その一以上の担体部材は中空コアを含む。ある態様において、その一以上の担体部材は固いコアを含む。
【0017】
ある態様において、その一以上の担体部材は外向きの圧力を小腸内で放出する期間後構造的な完全性を失うように設定される。
【0018】
ある態様において、その一以上の担体部材は、その一以上の担体部材の侵食、分解、又は軟化を通じて構造的な完全性を失うように設定される。
【0019】
ある態様において、その一以上の担体部材は、環状に配置される。
【0020】
ある態様において、そのシステムはさらに、一以上の担体部材を連結し環状を形成する一以上のリンカー、小腸内の期間後、構造的な完全性を失うように設定されるポリマーを含む、一以上のリンカーを含む。
【0021】
ある態様において、その治療薬物は、その環状の外側の部分上の又は内のコーティング内にあるが、その環状の内側の部分上又は内にない。
【0022】
ある態様において、そのシステムはさらに、そのシステムが拡張した形態である場合に、中心部材から外側に放射する複数のアームに接着したエラストマー中心部材を含み、そのアームは一以上の担体部材を含んでいる。
【0023】
ある態様において、そのシステムのその治療薬物は優先的に、前記エラストマー中心部材に関連する前記アームの遠位末端上又は内に配置される。
【0024】
ある態様において、前記エラストマー中心部材は、小腸内の期間後、構造的な完全性を失うように設定されるポリマーを含む。ある態様において、前記エラストマー中心部材はそのエラストマー中心部材の侵食、分解、又は軟化を通じて構造的な完全性を失うように設定される。
【0025】
ある態様において、前記エラストマー中心部材は、小腸内の期間後、構造的な完全性を失うように設定されるポリマーを含む一以上のリンカーを通じてそのアームに連結される。
【0026】
ある態様において、そのシステムは前記一以上のリンカーの侵食、分解、又は軟化を通じて構造的な完全性を失う。
【0027】
ある態様において、その担体部材は断面にわたって環状、楕円形、又はしずく型を有する。
【0028】
ある態様において、その治療薬物はポリペプチド又はポリヌクレオチドである。ある態様において、その治療薬物は、10以上のアミノ酸を含むポリペプチドである。ある態様において、その治療薬物は10以上のヌクレオチドを含むポリヌクレオチドである。
【0029】
ある態様において、前記小腸は、ヒトの小腸である。
【0030】
ある態様において、そのシステムは保護コーティングによってコートされる。ある態様において、その保護コーティングは腸溶性コーティングである。ある態様において、そのシステムはさらに逆腸溶性コーティングによってコートされる。
【0031】
また、本明細書に記載されるものは、任意の上記のシステムをカプセル化するカプセルを含む治療薬の剤形である。ある態様において、そのカプセルは腸溶性カプセルである。
【0032】
さらに提供されるものは、治療薬物を患者に投与する方法であって:圧縮した状態における腸内デリバリーシステムであって、担体ポリマー及び治療薬物を含む一以上の担体部材を含むその腸内デリバリーシステムを、患者に経口投与すること;腸内デリバリーシステムを拡張した状態に拡張すること;拡張した腸内デリバリーシステムを用いて、外向きの圧力をその患者の小腸の腸壁に適用すること;並びに腸内デリバリーシステムから治療薬物を放出し、その小腸の腸粘膜にわたって治療薬物を輸送することを含む。
【0033】
本方法のある態様において、その腸内デリバリーシステムは小腸内に拡張される。
【0034】
本方法のある態様において、その腸内デリバリーシステムは患者の十二指腸内に拡張する。
【0035】
本方法のある態様において、その腸内デリバリーシステムは患者の胃内に拡張され、そのシステムが小腸に入るまで治療薬物の実質的な放出なしに小腸内の患者の幽門を通過する。
【0036】
本方法のある態様において、少なくともそのシステムの一部は小腸内に外向きの圧力を放出する期間後、構造的な完全性を失う。ある態様において、その外向きの圧力は、小腸内にそのシステムが入った後、約1~約72時間後に放出される。ある態様において、外向きの圧力の放出は、その腸内デリバリーシステムが小腸を通過することを可能にする。
【0037】
本方法のある態様において、その治療薬物はポリペプチド又はポリヌクレオチドである。ある態様において、その治療薬物は10以上のアミノ酸を含むポリペプチドである。ある態様において、その治療薬物は10以上のヌクレオチドを含むポリヌクレオチドである。
【0038】
本方法のある態様において、その腸内デリバリーシステムは上記のいずれか一つのシステムである。
【0039】
本方法のある態様において、その患者はヒトである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】例示的なドーナツ形の腸内デリバリーシステムを示す。
【0041】
図2】チューブから形成した途切れのない担体部材を有するドーナツ形の腸内デリバリーシステムを示す。
【0042】
図3】小腸の内腔内のドーナツ形の腸内デリバリーシステムを示す。
【0043】
図4】ドーナツ形の外形が小腸の内腔の内径よりも大きい、小腸の内腔内のドーナツ形の腸内デリバリーシステムを示す。
【0044】
図5】単一の担体部材を有し、リンカーによって繋がった担体部材の末端を有する、ドーナツ形の腸内デリバリーシステムの態様を示す。
【0045】
図6】各リンカーが異なる担体部材の2つの末端と連結することを有する、8つのリンカーによる末端同士で連結した8つの担体部材を有するドーナツ形の腸内デリバリーシステムの例を示す。
【0046】
図7】途切れのない担体部材を有する環状の腸内デリバリーシステムを示す。
【0047】
図8図7に示されるシステムの担体部材のしずく型の断面を示す。
【0048】
図9】その担体部材の外表面上にコートした治療薬物を含むコーティングを有する腸内デリバリーシステムを示す。
【0049】
図10】その担体部材の外表面上に治療薬物を含むコーティングを有する、図9に示される腸内デリバリーシステムの側面図を示す。
【0050】
図11】環状のシステムの担体部材を形成する担体ポリマーのらせんを切断する刃の使用を示す。
【0051】
図12図11において示されるように形成した環状の腸内デリバリーシステムを示す。
【0052】
図13】エラストマー中心部材、及び中心部材から放射する6つのアームを含む、拡張した状態における放射状の構造における腸内デリバリーシステムの一の態様を示す。
【0053】
図14図13に示される腸内デリバリーシステムの圧縮した状態を示す。
【0054】
図15】リンカーを通じて中心部材へと接着される、アームの遠位端でその治療薬物がコーティングにおいて配置された放射状の構造を有する腸内デリバリーシステムの態様を示す。
【0055】
図16図15に示されている腸内デリバリーシステムが、拡張した形態において、小腸の内壁内にあることを示す。
【0056】
図17】カプセルにおけるドーナツ形の腸内デリバリーシステムを示す。
【0057】
図18】カプセルにおける、さらにそのシステムがコンパクトになる二つに折りたたまれるドーナツ形の腸内デリバリーシステムを示す。
【0058】
図19】カプセル内の圧縮した形態における放射状の腸内デリバリーシステムを示す。
【0059】
図20】腸内デリバリーシステムを投与したイヌより収集した血漿中のメマンチンバイオアナリシスを示す。その結果は8時間でのTmaxを有する小腸からの良好な曝露を示し、メマンチンの徐放は7日間測定可能だったことを示した。
【発明を実施するための形態】
【0060】
本明細書に記載されるものは、腸内デリバリーシステムであり、それは、治療薬物、そして特にポリペプチド及びポリヌクレオチドのような生物学的な治療薬物において、経口投与によって対象に送達することにおいて有用である。その経口摂取したシステムは胃を通じて小腸内に進み、ここでそれは、腸壁に外向きの圧力を適用することによって小腸(好ましくは、十二指腸)の腸壁への接触を保持する。そのシステムは圧縮した形態から拡張した形態へと拡張し、そして小腸内で拡張しうり、又は胃内で拡張しうり、そして小腸に到達するまでに(例えば、小腸内において分解するのみのシステムの腸溶性コーティングを含むことにより)治療薬物の実質的な放出なく、幽門を通過して小腸内に進む。その持続した接触及び外向きの適用された圧力は、腸内デリバリーシステムの治療薬物が腸粘膜を通じて吸収されることを可能にする。その腸内デリバリーシステムは腸溶性成分(例えば、担体部材、エラストマー中心部材、又はリンカー)を含みうり、それらは、(例えば、約1時間から約72時間のオーダーで)小腸において構造的な完全性を失うように設定される。一旦そのシステムがその構造的な完全性を失うと、その外向きの圧力は放出され、そのシステムは、小腸内の通常の移動(すなわちぜん動)を通じて小腸を通過するだろう。そのシステムの残りの成分は消化管を通じて移動し、排出される。
【0061】
小腸内に入ると、その腸内デリバリーシステムは、腸壁への外向きの圧力を適用することによって、小腸(好ましくは、十二指腸)の腸壁への接触を保持する。腸管の内表面での治療薬物の高い局所濃度は、腸壁にわたる治療薬物の拡散を促進する。加えて、その外向きの圧力は、腸粘膜を操作しうり、それはさらに腸粘膜にわたって、粘膜関門を薄くすることによって患者の血中への治療薬物の浸透性を高める。小分子薬はしばしば腸壁にわたって吸収されるが、ペプチド、タンパク質、及び核酸のような自発的なより大きな治療薬物は、小腸から効率的に吸収されえない。本明細書に記載される腸内デリバリーシステムを用いて腸粘膜を操作することによって、及び腸壁と腸内デリバリーシステムの成分を含む治療薬物との間の接触を保持することによって、少なくとも治療薬物の一部は小腸の腸粘膜にわたって輸送され、それゆえ、小腸のバイオアベイラビリティを増加する。
【0062】
治療薬物の腸内送達のためのシステムは、担体ポリマー及び治療薬物を含む一以上の担体部材を含み、そしてそのシステムは、圧縮した形態及び拡張した形態のように設定可能であり、ここでそのシステムは、(1)小腸内で圧縮した形態から拡張した形態へと拡張し、又は(2)胃内で圧縮した形態から拡張した形態へ拡張し、小腸に到達するまでに治療薬物の実質的な放出なく、幽門を通過する。加えて、そのシステムは、腸壁への外向きの圧力を適用することによって、小腸の腸壁との接触を保持するようなサイズを取り、そして小腸の腸粘膜にわたって治療薬物の少なくとも一部を輸送し、;そしてシステムの少なくとも一部は小腸内の期間後、構造的な完全性を失い、外向きの圧力を放出する。
【0063】
一の例において、その腸内デリバリーシステムは、環状に配置される担体ポリマー及び治療薬物を含む一以上の担体部材を含む。その環状は、例えば、ドーナツ形、楕円形、又はしずく型である。ある態様において、その環状は、任意の結合部又は溶接なく単一の、途切れのない担体部材から形成される。ある態様において、その腸内デリバリーシステムは、治療的な部材を含む一以上の担体部材、及び一以上の担体部材を連結し環状を形成する一以上のリンカーを含む。その担体部材及び/又はリンカーは、腸溶性材料を含みうり又は腸溶性材料により形成されうり、それは小腸内の期間後(例えば、分解、溶解、又は軟化によって)構造的な完全性を失うように設定される。
【0064】
別の例において、その腸内デリバリーシステムは、中心部材から外向きに放射する複数の伸長した担体部材に接着したエラストマー中心部材を含む。その伸長した担体部材は担体ポリマー及び治療薬物を含む。任意に、そのエラストマー中心部材は、一以上のリンカーを通じて担体部材に連結される。ある態様において、その中心部材、その担体部材、及び/又はそのリンカーは、小腸内の期間後に(例えば、分解、溶解又は軟化により)構造的な完全性を失うように設定される(ポリマーのような)腸溶性材料で形成される。
【0065】
腸内デリバリーシステムは、患者に治療薬物を投与するために用いられうる。例えば、本明細書で記載されるものは患者に治療薬物を投与する方法であって、圧縮した形態における腸内デリバリーシステム、担体ポリマー及び治療薬物を含む一以上の担体部材を含む腸内デリバリーシステムを経口投与すること;腸内デリバリーシステムを拡張させて拡張した形態を適用すること、拡張した腸内デリバリーシステムを使用すること、外向き圧力を患者の小腸の腸壁に向け;並びに腸内デリバリーシステムから治療薬物を放出し、小腸の腸粘膜にわたって治療薬物を輸送することを含む。本方法のさらなる詳細は本明細書に提供される。
【0066】
定義
本明細書で用いられるように、その単数形の「a」、「an」、及び「the」は、文脈内に他に明確に示さなければ、複数の参照を含む。
【0067】
本明細書内の値又はパラメータの「約」に関しては、値又はパラメータそれ自体に向けられる、及び特定される値又はパラメータに合理的に近い値又はパラメータである変動を含む(及び記載する)。例えば、「約X」に関する説明は、「X」の説明及びXに合理的に近いそれらの値を含む。「約XからY」のように範囲が示される場合には、そのエンドポイントによって特定される両方の値が含まれること、並びに各エンドポイント又は両方のエンドポイントに近い値が、各エンドポイント又は両方のエンドポイントにおいて含まれることが理解される。
【0068】
「抗体」という用語は、抗原に特異的に結合するポリペプチド又は、一連の相互作用するポリペプチドを意味し、これらに限定されないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル、キメラ抗体、CDRグラフティングした抗体、ヒト化抗体、Fab、Fab’、F(ab)、Fv、ジスルフィド結合したFv、scFv、シングルドメイン抗体(dAb),ダイアボディ、多重特異性抗体、デュアルスペシフィック抗体(dual specific antibody)、抗イディオタイプ抗体、バイスペシフィック抗体(bispecific antibody)、その機能的に活性を有するエピトープ結合断片、二機能性ハイブリッド抗体、単鎖抗体、及びイムノアドへリンのようなFc含有ポリペプチド含む。ある態様において、その抗体は、任意の重鎖アイソタイプ(例えば、IgG、IgA、IgM、IgE、又はIgD)でありうる。ある態様において、その抗体は任意の軽鎖アイソタイプ(例えば、カッパ又はガンマ)でありうる。その抗体はヒト以外の(例えば、マウス、ヤギ、又は任意の他の動物からの)、完全ヒト、ヒト化、又はキメラでありうる。
【0069】
材料又はシステムを記載するために用いられる場合に、「生体適合性」は、材料又はシステムが、生物、例えばヒトに接触する場合に、有害反応を誘発することなく、又は極小の、許容できる有害反応をもたらすのみであることを示す。
【0070】
「担体ポリマー」は薬物と調和する適当なポリマー、又は、本明細書に記載されるシステムにおいて使用のための、薬物を含むコーティングによってコートされうる基質として適当なポリマーである。
【0071】
「賦形剤」は薬物それ自身ではない薬物の製剤に添加される任意の基質である。賦形剤は、これらに限定されないが、結合剤、コーティング剤、希釈剤、崩壊剤、乳化剤、香味料、流動促進剤、潤滑油、及び保存剤を含む。特定の種類の分散剤はより多くの一般的な賦形剤の種類に含まれる。
【0072】
「弾性ポリマー」、「エラストマーポリマー」又は「エラストマー」は、一定期間その元の形から加えられた力による変形可能であり、続いて一旦その加えられた力が除去されると、その元の形に実質的に戻るポリマーである。
【0073】
「腸溶性ポリマー」は、一般的に胃の酸性pH水準に耐性があるが、十二指腸内で見られるより高いpH水準で溶解するポリマーである。
【0074】
「M」はポリマーの重量平均分子量を意味する。
【0075】
「患者」、「個人」、又は「対象」は哺乳動物、好ましくは、ヒト又はイヌ若しくはネコのような飼育動物を意味する。最も好ましい態様において、患者、個人又は対象はヒトである。
【0076】
「実質的な」量に関しては、95%以上を意味する。例えば、治療化合物の「実質的に全ての放出」に関しては、95%以上のその治療薬物の放出を意味する。別の例において、治療薬物の「実質的な放出なし」に関しては、その治療薬物の5%未満の放出を意味する。
【0077】
本明細書に開示されるシステムの「治療的な使用」は、上記に定義されるように、一以上の本明細書に開示されるシステムを使用して疾病又は障害を治療するように定義される。薬物のような、治療薬物の「治療有効量」は、患者に投与される場合に、疾病若しくは障害か一以上の疾病若しくは障害の症状のいずれかを減少若しくは排除する、又は疾病若しくは障害若しくは一以上の疾病若しくは障害の症状の進行を遅らせる、又は疾病若しくは障害若しくは一以上の疾病若しくは障害の症状の重症度を減少するために十分な薬物の量である。治療有効量は単回投与として患者に投与されうり、又は多数回投与として分割され及び投与されうる。
【0078】
そのシステムによって疾病又は障害を「治療すること」及び本発明に開示した方法は、疾病若しくは障害のいずれか、若しくは疾病若しくは障害の一以上の症状を減少又は排除するために、又は疾病若しくは一以上の障害若しくはその疾病若しくは障害の症状の進行を遅らせるために、又はその疾病若しくは障害若しくは一以上のその疾病若しくは障害の症状の重症度を減少するために、本明細書に開示した一以上のそのシステムを、それを必要とする患者に、追加の薬剤の有無にかかわらず、投与することとして定義される。そのシステムによる疾病又は障害の「抑制」及び本明細書に開示される方法は、本明細書に記載される一以上のそのシステムを、その疾病若しくは障害の臨床所見を妨げるために、又はその疾病若しくは障害の有害症状の所見を妨げるために、それを必要とする患者に、追加の薬剤の有無にかかわらず、投与することとして定義される。治療と抑制との間の区別は、治療は疾病又は障害の有害症状が患者に現れた後にもたらされ、一方で、抑制はその疾病又は障害の有害症状が患者に現れる前にもたらされる。抑制は、部分的、実質的に全体的、又は全体的でありうる。ある疾病又は障害は遺伝によるので、遺伝子スクリーニングは用いられうり、その疾病又は障害のリスクのある患者を同定する。本開示のそのシステム及び方法は続いて用いられうり、任意の有害症状の出現を抑制するために、その疾病又は障害の臨床的な症状を発生するリスクのある無症状の患者を治療する。
【0079】
本明細書に記載される本発明の側面及び変動は、側面及び変動「からなる」及び/又は「本質的にからなる」を含むと理解される。
【0080】
値の範囲が提供される場合に、その範囲の上源と下限との間のそれぞれの介在する値、及びその定まった範囲内の任意の他の定まった又は介在する値を本開示のその範囲内に包含することを理解される。また、定まった範囲が上限又は下限を含む場合、それらの含まれる限度のいずれも本開示に含まれる。
【0081】
特に断りのない限り、組成物の成分のパーセンテージは重量パーセント、又は重量/重量パーセントとして示される。組成物内の相対重量パーセンテージに関しては、その組成物内の全ての成分の組み合わせた総重量パーセンテージを合計して100まで加えると考えると理解される。さらに、一以上の成分の相対質量パーセンテージは、その組成物中のその成分の重量パーセントが合計で100になるように、上方又は下方に調整されうることが理解され、任意の特定の成分の重量パーセントがその成分において規定される範囲の限度をはずれないことを提供した。
【0082】
本明細書で用いられるセクションの見出しは組織目的用途のみであり、記載した主題を限定するように解釈されない。その記載は、当業者に本発明を作製及び使用可能であるように提示され、特許出願及びその要求の文脈中に提供される。記載される態様への様々な修飾が当業者に容易に明らかであり、本明細書の全体的な原理が他の態様に適用されうる。それゆえ、本発明は、示される態様に限定されることを意図しないが、本明細書に記載される原理及び特徴と一致する最も広い範囲で認められる。
【0083】
本明細書に言及した全ての出版物、特許、及び特許出願の開示は、これによってそれぞれがそれらの全体において参照によって組み込まれる。参照により組み込まれる任意の参照が本開示と矛盾する場合、本開示が優先するものとする。
【0084】
腸内デリバリーシステムの概要
前記腸内デリバリーシステムは、担体ポリマー及び治療薬物を含む一以上の担体部材を含む。その治療薬物は担体部材のコアをコートする、又は担体部材内に積載されうるコーティングを含まれうる。そのシステムは、圧縮した形態(すなわち、小さい外形)及び拡張した形態(すなわち、大きい外形)において設定可能である。その圧縮した形態はそのシステムが患者によって容易に摂取されることを可能にし、そしてそのシステムは投与された後に拡張する。そのシステムは、拡張した状態において小腸内に入ると、そのシステムが外向きの圧力を腸壁に適用することによって小腸の腸壁内への接触を保持するようなサイズを取る。その外向きの圧力はさらに、その小腸の腸粘膜にわたって少なくとも一部の治療薬物の輸送を可能にする。加えて、そのシステムは、少なくとも一部のシステムが、小腸内の(約1時間と約72時間の間のような)期間後、構造的な完全性を失うように設定され、それは外向きの圧力を放出する。
【0085】
小腸内に配置される拡張した腸内デリバリーシステムによって小腸の糜粥の通過を可能にするために、そのシステムは一以上の開口(例えば、環構造内の中心開口部、又は放射状構造の中心部材の一以上の開口部)を含みうる。その腸内デリバリーシステムは、小腸内に静的に配置されうるが、される必要はない。例えば、そのシステムによって腸壁に適用されるその外向きの圧力は、小腸内のそのシステムの動きを遅らせうる又は停止しうる。さらに本明細書で議論されるように、少なくとも一部のそのシステム(例えば、存在すれば、その担体部材、そのリンカー、及び/又はその中心部材)は、小腸内の期間後に構造的な安定性を失うように設計されうり(例えば、約1時間から約72時間、例えば、約1時間から約2時間、約2時間から約4時間、約4時間から約6時間、約6時間から約8時間、約8時間から約12時間、約12時間から約24時間、約24時間から約36時間、約36時間から約48時間、又は約48時間から約72時間)、それらはその外向きの圧力を放出する。そのシステムが構造上の完全性を失い、そしてその外向きの圧力が放出される場合、そのシステム又はそのシステムの残りの部分(例えば、分解される又は侵食される成分)は、例えば、内腔内で通常の通過速度で小腸を通過しうる。
【0086】
そのシステムは、経口投与用途のサイズである、圧縮した形態からその拡張した形態へ拡張されるように設定される。その腸内デリバリーシステムは、圧縮した形態においてパッケージ化されうり、そのパッケージングから放出される場合に、拡張した形態に拡張する。例えば、そのシステムはカプセルにカプセル化されうり、そして一旦カプセルから放出されると、そのシステムは拡張した形態に拡張する。ある態様において、そのカプセルは腸溶性カプセルである。その腸溶性カプセルは、腸内デリバリーシステムが胃を通過することを可能にし、ここでその腸溶性カプセルの腸溶性材料は胃の環境の低いpHのために保持され、そして小腸に入る。小腸内に入ると、その腸内デリバリーシステムは圧縮した形態から拡張した形態へと拡張する。
【0087】
ある態様において、その腸内デリバリーシステムは、小腸よりもむしろ胃内で拡張した形態に拡張する。その腸内デリバリーシステムは胃内で拡張しうり、そして小腸に到達するまでに治療薬物の実質的な放出なしに幽門を通過して小腸に入る。任意に、腸溶性コーティング(それは、例えば、約2μmから約300μmの厚さ、(例えば、約2μmから約5μm、約5μmから約10μmの厚さ、約10μmから約20μmの厚さ、約20μmから約30μmの厚さ、約30μmから約50μmの厚さ、約50μmから約100μm、約100μmから約150μm、約150μmから約200μm、約200μmから約250μm、又は約250μmから約300μm)を有しうる)は、腸内デリバリーシステムをコートし、胃の環境からそのシステムを保護する。ある態様において、その腸溶性コーティングは、治療薬物を含むコーティングをコートし、そしてある態様において、その腸溶性コーティングは治療薬物を含む。その腸溶性コーティングは、存在すれば、そのマトリックス内に、治療薬物を取り囲む又は含み(それは、その治療薬物を含むその担体部材若しくはそのコーティングをコートし、存在すれば、又はその保護的な組成物内にその治療薬物を含み)、治療薬物の胃内の放出を防止する。その腸溶性コーティングは小腸内で溶解又は分解しうり、それは治療薬物が腸内デリバリーシステムから放出されることを可能にする。
【0088】
その拡張した腸内デリバリーシステムは、外向きの圧力を腸壁に適用することによって小腸(例えば十二指腸)の腸壁への接触を保持するためのサイズを取り、その腸粘膜にわたり少なくとも一部の治療薬物を輸送する。ある態様において、その拡張した腸内デリバリーシステムの直径は、少なくとも小腸又は十二指腸の直径(例えば、小腸の直径の約1から2倍であり、例えば、小腸又は十二指腸の直径の約1倍から約1.1倍、約1.1倍から約1.2倍、約1.2倍から約1.3倍、約1.3倍から約1.4倍、約1.4倍から約1.5倍、約1.5倍から約1.6倍、約1.6倍から約1.7倍、約1.7倍から約1.8倍、約1.8倍から約1.9倍、又は約1.9倍から約2倍)である。ある態様において、その拡張した腸内デリバリーシステムの周径は、少なくとも小腸又は十二指腸の内径(例えば、小腸の直径の約1倍から約2倍、例えば、小腸又は十二指腸の直径の約1倍から約1.1倍、約1.1倍から約1.2倍、約1.2倍から約1.3倍、約1.3倍から約1.4倍、約1.4倍から約1.5倍、約1.5倍から約1.6倍、約1.6倍から約1.7倍、約1.7倍から約1.8倍、約1.8倍から約1.9倍、又は約1.9倍から約2倍)である。小腸又は十二指腸よりも大きい腸内デリバリーシステムは、(圧縮した形態と比較して、未だに拡張しているが)伸長した又は部分的に圧縮した構造として腸管内で静止しうり、それはその腸管腔の軸に斜めの面に、特にその腸内デリバリーシステムが環状のシステムである場合に、位置する。
【0089】
その担体部材は、形成しやすい又はエラストマーのポリマーでありうる、担体ポリマーを含む。ある態様において、その担体ポリマーは、小腸内の期間後、構造的な完全性を失うように設定される、腸溶性ポリマーである。その担体部材は一般的に伸長され、そしてその腸内デリバリーシステムの所望される形を得るように設定されうる。その腸内デリバリーシステムの拡張される形態において、その担体は(例えば、放射状の構造において)一直線でありうり、又は(環状の構造において)曲げられうる。
【0090】
その担体部材は固いコア又は中空のコア(すなわちチューブ状)を有しうる。腸内デリバリーシステムによって腸壁へ適用される外向きの圧力は、固い担体部材の厚さ又はチューブ状の担体部材のチューブの壁の厚さ、及び担体部材の材料に依存する。
【0091】
担体部材の断面は円形(例えば、円形又は楕円形)、半円、三日月形、多角形(例えば、三角形、正方形、長方形、五角形、六角形等)、しずく型、眼の形、又は任意の他の適当な形でありうる。図7は例えば、環状の腸内デリバリーシステム700及び途切れのない担体部材702を示す。A-Aに沿う担体部材の断片は図8に示される。図8に示されるように、その担体部材802の断面はしずく型である。
【0092】
環状の腸内デリバリーシステム
その腸内デリバリーシステムのある態様において、そのシステムは環状である。その環状はその構造のループした構造を意味し、一以上の担体部材は末端同士が接着し、(溶接のように直接的に連結されうる、又は一以上のリンカーによって連結されうる)途切れのないループを形成する。また、その環状は、単一の、途切れのない担体部材を含む態様を意味する。例示的な環状は、しずく型、楕円形、ドーナツ形、及び眼の形の構造を含む。
【0093】
その環状は、線形であるが、柔軟性のある、担体部材の末端同士の、例えば、リンカー(例えば、腸溶性でありうり、小腸内の期間後、構造的な完全性を失うように、軟化されるように、分解されるように、溶解されるように、又は破壊されるように設定されうる接着性のポリマー)を用いて末端を連結することによって、又はその担体部材の末端を共に溶接することによって形成されうる。
【0094】
図1は、例示的なドーナツ形の腸内デリバリーシステム100を示す。その腸内デリバリーシステムは途切れのない担体部材102を含む。そのシステムは外形D及び内径Dを有し、そしてその担体部材の厚さは、外形と内径との間で差異がある。その環状のシステムは内径Dによって定義される開口中心を含む。その開口中心は、その腸内デリバリーシステムが小腸にある場合にその開口中心を通じて糜粥の通過を可能にする。図1のA-Aラインに沿った断面は、図2に示される。図2はドーナツ形の腸内デリバリーシステム200及びチューブから形成した途切れのない担体部材202を示す。その担体部材202はそれゆえ中空コアを有し、それは、Dのコア直径によって定義される。その外径Dは、小腸(又は十二指腸)の内径とほぼ同じ又は内径より大きい。図3は、小腸の管腔内のドーナツ型の腸内デリバリーシステム302を示し、それは、粘膜層304及び筋層306を含む。図3に示される態様において、小腸管腔の軸に平行のそのシステムの中心開口部によって、その腸内デリバリーシステムは腸壁に垂直に配置される。また、その外径Dは、図4に示されるように、小腸の内径よりもより大きくありうる。図4において、ドーナツ型の腸内デリバリーシステムは、その環状が腸管腔の軸に沿って伸長されるように、小腸内に配置され、粘膜層404及び筋層406を含む。この形態において、環状の中心開口部は、管腔の軸に垂直又は斜めでありうる。図3に示される形態及び図4に示される形態の両方において、その環状の腸内デリバリーシステムの外表面は、腸壁に外向きの圧力を適用することによって小腸の腸壁への接触を保持する。担体部材の担体ポリマー内又は担体部材のコーティング内に積載した治療薬物は担体部材から粘膜層(304又は404)へ拡散しうり、それはそのシステムが少なくとも一部の治療薬物を小腸の腸の粘膜にわたって輸送することを可能にする。
【0095】
その環状の腸内デリバリーシステムは、環状を形成する末端同士を連結する、単一の途切れのない担体部材を含みうり、又は一以上の担体部材を含みうる。ある態様において、一以上の担体部材の末端は一以上のリンカーを通じて連結される。そのリンカーの幅は、担体部材の幅とほぼ同じであり、そのシステムの滑らかな表面を作り出す。その担体部材及び/又はそのリンカーの担体ポリマーは、腸溶性材料を含みうり、それは、小腸内の期間後、構造的な完全性を失うように設定される。図5は、単一の担体部材502を有するドーナツ状の腸内デリバリーシステム、及びリンカー504によって結合される担体部材502の末端の態様を示す。図6は8つのリンカー604により末端同士連結される8つの担体部材602を有するドーナツ状の腸内デリバリーシステム、及び異なる担体部材602の二つの末端を連結する各リンカーの例を示す。その環状の腸内デリバリーシステムは任意の適当な数の担体部材及びリンカー、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20又はそれ以上の担体部材及び1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20又はそれ以上のリンカーを含みうる。
【0096】
ある環状の腸内デリバリーシステムの構造において、一以上の担体部材は担体部材の末端を溶接によって、リンカーを通じて担体部材の末端を連結することによって、又はその混合によって(すなわち、ある担体部材は溶接によって、ある担体部材はリンカーによって)連結される。単一の途切れのない担体部材による環状の腸内デリバリーシステムは、(成形を通じて形成されうる)大きなチューブを薄く切ることによって形成されうり、環状を形成する;この工程はリンカーを通じる末端の溶接又は連結を必要としない。
【0097】
追加の環状の腸内デリバリーシステムはしずく型又は眼の型でありうる。これらの例示的な形態は、環状構造内に鋭角を有しうる。これらの構造を形成するために、その担体部材は角度のついた末端を有しうり、それは担体部材の溶接上の又は末端を連結するリンカーの機械的ストレスを減少しうる。
【0098】
図12は別の例の環状の腸内デリバリーシステムを示す。図12に示される腸内デリバリーシステムは、図11に示されるように、刃1104を用いて、らせん状の担体ポリマー1102から切断される単一の担体部材1202を含む。担体部材の切断末端は垂直に切断されうり、又は角度をつけて切断されうる。担体部材の切断末端は、例えば、二つの切断端の間に溶接又はリンカーを配置することによって、結合されうる。
【0099】
その環状のシステムは任意に(エラストマーリンカーでありうる)屈曲又はヒンジを含み、それらはそのシステムを圧縮した形態、例えばカプセル又は他のパッケージングに積載するための折りたたみをガイドするために有用でありうる。
【0100】
環状システムの治療薬物は担体部材内に配置されうり、(例えば、その担体部材の担体ポリマー内に積載され、)又は担体部材にコートされうる(例えば、担体ポリマーにコートされ、治療薬物及びその担体ポリマーを含むコーティングの間に一以上の介在する層を含みうる又は含みえない)。治療薬物を含むコーティングは、腸溶性の担体部材、担体部材の一部又は表面、例えば、環状システムの担体部材の外側の部分又は外表面にコートされうる。図9は、担体部材902の外表面にコートされる治療薬物を含むコーティング904を有する腸内デリバリーシステム900を示す。A-Aに沿った図9に示される腸内デリバリーシステム900の側面斜視図は、図10に示され、それは担体部材1002の外表面上に治療薬物を含むコーティング1004を有する腸内デリバリーシステム1000を示す。
【0101】
治療薬物(例えば、担体部材上に治療薬物を含むコーティング、又は治療薬物を含む担体ポリマー)を含むシステムの一部は、腸壁への接触を維持し、腸壁への外向きの圧力を適用する。治療薬物を有するシステムの一部の維持される接触と共に、外向きの圧力は、少なくとも一部の治療薬物を腸壁にわたって輸送することを可能にする。
【0102】
小腸内の期間後、少なくとも一部のシステム(例えば、一以上の担体部材又は一以上のリンカー)は(例えば、分解、溶解、侵食、又は軟化により)構造的な完全性を失う。構造的な完全性の欠失は、外向きの圧力の放出をもたらす。ある態様において、そのシステムの成分は、小腸内に入った後、約1時間から約72時間(例えば、約1時間から約2時間、約2時間から約4時間、約4時間から約6時間、約6時間から約8時間、約8時間から約12時間、約12時間から約24時間、約24時間から約36時間、約36時間から約48時間、又は約48時間から約72時間)後、構造的な完全性を失う。
【0103】
放射状型腸内デリバリーシステム
腸内デリバリーシステムのある態様において、そのシステムは放射状型で設計される。その放射状型は中心部材から外向きに放射する複数のアームによる中心部材を含む。その中心部材は一般的にエラストマーであり、それはそのシステムが、お互いに近接するアームの(その中心部材に関連する)遠位末端に配置することによって圧縮されることを可能にする。拡張した形態において、そのアーム及びその中心部材はそのシステムが平らになるように、お互いに平面上に置かれている。そのアームは、少なくとも一つの担体部材を含むが、一以上のリンカーによって末端同士を連結した2つ、3つ、4つ以上の担体部材を含みえない。アームが複数の担体部材を含む場合に、その担体部材は同じ又は異なる材料のものでありうる。そのアームは中心部材に直接的に接着されうり、又は一以上のリンカーを通じて接着されうり、これは任意に小腸内の期間後に構造的な完全性を失うように設定されるポリマーを含む。
【0104】
腸内デリバリーシステムのサイズ及び柔軟性に依存して、システムと腸壁間との接触はアーム又はアームの遠位末端の長さに沿いうる。接触は、腸壁に外向きの圧力を適用することによって小腸の腸壁に保持される。治療薬物はアームの長さに沿って区別されうり、好ましくはアームの遠位末端(例えば、担体ポリマー)内に、又は(例えば、担体部材のコーティング内に)上に含まれうる。
【0105】
その放射状構造は任意の適当な数のアーム、例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15以上のアームを含みうる。そのアームは堅く、又は柔らかくありうり、又は堅い部分及び柔らかい部分を含みうる。堅い材料は腸壁への外向きの圧力の適用を促進しうり、一方で、柔らかい材料は腸壁内のより大きな接触範囲をもたらしうる。ある態様において、そのアームは、堅い、中心部材に近接する第一の部分又は第一の担体部材、及び、柔らかい、中心部材から離れている第二の部分又は第二担体部材を含む。ある態様において、そのアームは、柔らかい、中心部材に近接する第一の部位又は第一の担体部材、及び、堅い、中心部材から離れている第二の部分又は第二の担体部材を含む。堅さは一般的にヤング率として測定され、そして(アーム、又はアームの一部のような)成分は約1MPaから約1GPaの間(例えば、約1MPaから約5MPa、約5MPaから約10MPa、約10MPaから約20MPa、約20MPaから約50MPa、約50MPaから約100MPa、約100MPaから約250MPa、約250MPaから約500MPa、約500MPaから約750MPa、又は約750MPaから約1GPa)の堅さを有しうる。
【0106】
放射状型の腸内デリバリーシステムにおける治療薬物はその担体部材上(例えば、コートされうる)、又は内にありうる(例えば担体ポリマー内に積載されうる)。ある態様において、その治療薬物はその担体部材上又は内に均等に分散され、そしてある態様において、その治療薬物は、好ましくは、中心部材に関連する、アームの遠位末端上に又は内に配置される。例えば、ある態様において、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、約97%以上、約98%以上、約99%以上、約99.5%以上の治療薬物が、そのアームの部分の5%の距離、10%の距離、15%の距離、20%の距離、25%の距離、30%の距離、35%の距離又は40%の距離内又は上である。
【0107】
腸内デリバリーシステムの成分(中心部材、担体部材、及び/又はリンカー)は小腸内の期間(例えば約1時間から約72時間、例えば約1時間から2時間、約2時間から約4時間、約4時間から約6時間、約6時間から約8時間、約8時間から約12時間、約12時間から約24時間、約24時間から約36時間、約36時間から約48時間、又は約48時間から約72時間)後、構造的な完全性を失うように設計されうる。例えば、一以上の成分は腸内の侵食する、分解する、溶解する又は軟化する材料、例えば腸溶性材料又はヒドロゲルを含みうる。
【0108】
図13は拡張した形態における放射線構造の腸内送達システムの一の態様を示し、それはエラストマー中心部材1302、及び中心部材1302から放射される6つのアーム1306を含む。例示した態様における各1306アームは、リンカー1304によって中心部材に接着される。そのアームは装置の担体部材であり、そして担体部材内に又は担体部材にコートした治療薬物を含む。図14図13に示された腸内デリバリーシステムの圧縮した形態を示す。その中心部材1402はエラストマーで、それはその装置のアーム1406の可動性を認める。そのアーム1406は、リンカー1404を通じてエラストマー中心部材1402に連結される。圧縮した形態において、そのアーム1406は共にクラスター化し、その中心部材1402は伸ばされる。しかしながら、腸内デリバリーシステムの放出(例えば、カプセルからの放出)は、図13に示されるように、エラストマー中心部材1402を緩和させ、そのアーム1406を外側に再配置する。
【0109】
図15は、放射状構造を有する腸内デリバリーシステム1500の態様を示し、ここでその治療薬物はアーム1506の遠位端でコーティング1508に配置され、リンカーを通じて中心部材1502と接着される。その腸内デリバリーシステム1500は、圧縮した形態において図15に示される。図16図15において示される腸内デリバリーシステムを示すが、拡張した形態で、小腸の管腔内である場合のものを示す。そのシステムのエラストマー中心コア1606は緩和され、(リンカー1608を介して中心コア1606に連結される)システムのアームを中心部材から放射することを可能にする。アームの遠位末端は治療薬物を含むコーティング1610によってコートされる。その腸内デリバリーシステムが小腸の管腔内にある場合に、そのシステムのコーティング1610は腸壁の腸粘膜1602との接触を保持し、腸壁へ外向きの圧力を適用する。コーティング1610における治療薬剤によって、その保持した接触、及び外向きの圧力、治療薬物は、腸粘膜にわたって輸送される。腸粘膜1602を取り巻くものは筋層1604である。
【0110】
小腸内の期間後、少なくとも一部のシステム(例えば、一以上の担体部材、一以上のリンカー、及び/又は中心部材)は構造的な完全性を(例えば、分解、溶解、侵食、又は軟化によって)失う。構造的な完全性の欠失は外向きの圧力の放出をもたらす。ある態様において、そのシステムの成分は小腸に入った、約1時間から約72時間(例えば、約1時間から約2時間、約2時間から約4時間、約4時間から約6時間、約6時間から約8時間、約8時間から約12時間、約12時間から約24時間、約24時間から約36時間、約36時間から約48時間、又は約48時間から約72時間)後に構造的な完全性を失う。
【0111】
腸内デリバリーシステムの成分及び例示的な材料
前記腸内デリバリーシステムの一以上の成分、例えば、担体部材、リンカー、及び/又は中心部材は、エラストマー材料及び/又は小腸内の期間にわたって構造的な完全性を失うように設定した材料、例えば腸溶性材料を含みうる。例えば、その材料は、小腸の期間後、(例えば、水を吸収することによって)侵食、溶解、分解、崩壊及び/又は軟化しうる。
【0112】
本明細書に記載されるシステムは圧縮した形態において設定可能であり、例えば、往々にして長期保存用途で、カプセル内にパッケージ化される。そのシステムの信頼性のある拡張を保証するために、その担体ポリマー、リンカー材料、及び中心部材は、好ましくは圧縮した形態において長期保存下で最小の永久歪みを受ける。そのシステム成分における例示的な材料はエラストマー材料、例えばシリコン(又はシリコンラバー)、他の熱可塑性のエラストマーを含む。
【0113】
本明細書に記載したそのシステムの成分において用いられるいくつかの材料は、腸溶性材料又は腸溶性ポリマーである。腸溶性材料は胃の酸性環境に抵抗するが、より高いpH水準の小腸において、侵食、溶解、分解、膨潤、又は他のものによって、構造的な完全性を欠失するように設定される。本明細書に開示されるシステムにおいて用いられうるいくつかの腸溶性ポリマーは、腸溶性ポリマーの表に挙げられる。
【表1】
【0114】
好ましくは、約5又は約5.5以上のpHで、溶解される腸溶性ポリマーが用いられる。(EUDRAGIT L 100-55の商標名で販売され;EUDRAGITはEvonik Rohm GmbH,Darmstadt,Germanyの登録商標である)メタクリル酸-アクリル酸エチルコポリマー、及び(酢酸/コハク酸)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル又はHPMCAS;Ashland,Inc.,Covington,Kentucky,USA)は、例示的な腸溶性ポリマーである。また、フタル酸酢酸セルロース、コハク酸酢酸セルロース及びフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、適当な腸溶性ポリマーである。
【0115】
ある態様において、本システムにおいて用いられる腸溶性ポリマーは、約4以上のpHで溶解する。ある態様において、本システムで用いられる腸溶性ポリマーは、約5以上のpHで溶解する。ある態様において、本システムで用いられる腸溶性ポリマーは、約6以上のpHで溶解する。ある態様において、本システムで用いられる腸溶性ポリマーは、約7以上のpHで溶解する。ある態様において、本システムで用いられる腸溶性ポリマーは、約7.5以上のpHで溶解する。ある態様において、本システムで用いられる腸溶性ポリマーは、約4~約5の間のpHで溶解する。ある態様において、本システムで用いられる腸溶性ポリマーは、約4~約6の間のpHで溶解する。ある態様において、本システムで用いられる腸溶性ポリマーは、約4~約7の間のpHで溶解する。ある態様において、本システムで用いられる腸溶性ポリマーは、約4~約7.5の間のpHで溶解する。ある態様において、本システムで用いられる腸溶性ポリマーは、約5~約6の間のpHで溶解する。ある態様において、本システムで用いられる腸溶性ポリマーは、約5~約7の間のpHで溶解する。ある態様において、本システムで用いられる腸溶性ポリマーは、約5~約7.5の間のpHで溶解する。ある態様において、本システムで用いられる腸溶性ポリマーは、約6~約7の間のpHで溶解する。ある態様において、本システムで用いられる腸溶性ポリマーは、約6~約7.5の間のpHで溶解する。
【0116】
担体部材及び担体部材のための材料
前記担体部材は、担体ポリマー、及び担体ポリマーに積載される又は担体ポリマーにコートされる治療薬物を含む。担体ポリマーは、同種のポリマーでありうり、二以上のポリマーのブレンドでありうる。加えて、その担体ポリマーは、(ポロゲンのような)一以上の賦形剤とブレンドされうる。例えば、その担体ポリマーは非侵食性ポリマー及びポロゲン(例えば、侵食性ポリマー、腸溶性ポリマー、及び/又は膨潤性ハイドロゲルポリマー)のブレンドでありうる。そのポロゲンは小腸において溶解、侵食、分解、膨潤、及び/又は軟化しうり、非侵食性ポリマーの担体部材の完全性において欠失がなくても、担体部材が構造的な完全性を欠失することをもたらす。ポロゲンの量及び型は、担体部材の構造的な完全性の欠失の所望される割合に基づいて選択されうる。
【0117】
ある態様において、その担体ポリマーは、小腸内の期間にわたり構造的な完全性を、例えば、約1時間から約72時間のオーダーで、失うように設定される。ある態様において、その担体ポリマーは、小腸に入った後、約1時間から約2時間、約2時間から約4時間、約4時間から約6時間、約6時間から約8時間、約8時間から約12時間、約12時間から約24時間、約24時間から約36時間、約36時間から約48時間、又は約48時間から約72時間で構造的な完全性を失う。担体ポリマーの構造的な完全性の欠失は、担体部材の構造的な完全性の欠失をもたらし、それはそのシステムが小腸管腔内にある場合に、外向きに適用した圧力の放出をもたらす。
【0118】
ある態様において、その担体ポリマーは腸溶性ポリマーである。ある態様において、その担体ポリマーはシリコン又はシリコンラバーを含む。ある態様において、その担体ポリマーは熱可塑性エラストマーを含む。本明細書に開示されるシステムにおいて使用のための適当な追加の例示的な担体ポリマーは、これらに限定されないが、親水性セルロース誘導体(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩)、フタル酸酢酸セルロース、ポリビニルピロリドン、エチレン/ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー(カルボマー)、Carbopol(登録商標)酸性カルボキシポリマー、ポリカルボフィル、ポリエチレンオキシド(Polyox WSR)、ポリ多糖及びそれらの誘導体、ポリアルキレンオキシド、ポリエチレングリコール、キトサン、アルギン酸塩、ペクチン、アカシア、トラガント、グアーガム、ローカストビーンガム、ポリビニルピロリドン、酢酸ビニル-ビニルピロリドン共重合体、デキストラン、天然ガム、寒天、アガロース、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、フコイダン、ファーセレラン、ラミナラン、紅藻類(hypnea)、キリンサイ属(eucheuma)、アラビアゴム、ガムガッチ、カラヤゴム、アラビノガラクタン、アミロペクチン、ゼラチン、ジェラン、ヒアルロン酸、プルラン、スクレログルカン、キサンタン、キシログルカン、無水マレイン酸コポリマー、エチレン無水マレイン酸共重合体、ポリメタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸アンモニオコポリマー(例えば、Eudragit RL又はEudragit RS)、アクリル酸エチル-メタクリル酸メチルコポリマー(Eudragit NE)、Eudragit E(ジメチルアミノエチルメチルアクリレート及び中性のメチルアクリル酸エステルに基づくカチオン性コポリマー)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸/ポリエタクリル酸(polyethacrylates)、例えば、ポリメタクリル酸、メタクリル酸メチル、及びアクリル酸エチル、ポリカプロラクトンのようなポリラクトン、ポリ無水物、例えば、ポリ[ビス-(p-カルボキシフェノキシ)-プロパン無水物](poly[bis-(p-carboxyphenoxy)-propane anhydride])、ポリテレフタル酸無水物(poly(tereohthalic acid anhydride))、ポリペプチド、例えば、ポリリジン、ポリグルタミン酸。ポリオルトエステル、例えばDETOSUとジオールとの共重合体、例えばヘキサンジオール、デカンジオール、シクロヘキサンジメタノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、及び米国特許番号4,304,767号に記載される及び開示される参照によって本明細書に組み込まれるそれらのポリオルトエステル、でんぷん、特にアルファ化でんぷん、及びでんぷんベースのポリマー、カルボマー、マルトデキストリン、アミロマルトデキストリン(amylomaltodextrins)、デキストラン、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)、ポリ(エチレンイミン)、ポリウレタン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリヒドロキシ酪酸、及びそれらのコポリマー、混合物、ブレンド、及びその組み合わせを含む。
【0119】
ある態様において、その担体部材は、担体ポリマー及びポロゲンを含む。そのポロゲンは、分解する、侵食する、溶解する、軟化する、膨潤する又はある期間にわたり小腸内で構造的な完全性を失わせる他のものである任意の適当な材料でありうる。ある態様において、そのポロゲンは腸溶性材料であり、例えば、腸溶性ポリマーである。ポロゲンの例は、アルカリ金属塩、例えば塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、リン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、硝酸カリウム等;アルカリ土類金属塩、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム等;及び遷移金属塩、例えば塩化鉄、硫酸鉄、硫酸亜鉛、塩化銅、等を含む。ポロゲンの追加の例は、サッカライド及び糖類、例えば、スクロース、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、アルドヘキソース、アルトロース、タロース、ラクトース、セルロース、単糖類、二糖類、及び水溶性多糖類を含む。追加のポロゲンの例は、ソルビトール、マンニトール、有機的な脂肪族油及び芳香油、多価アルコール、ポリアルキレングリコール、ポリグリコール、アルキレングリコール、ポリ(a,m)アルキレンジオールエステル(poly(a,m)alkylenediol esters)又は、アルキレングリコールに例示されるように、例えばジオール及びポリオール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、及び水溶性高分子材料を含む。ポロゲンのさらなる用いられる例は、Poloxamer;ヒプロメロース(HPMC);Kolliphor RH40;ポリビニルカプロラクタム;ポリ酢酸ビニル(PVAc);ポリエチレングリコール(PEG);Soluplus(BASFより利用可能;ポリビニルカプロラクタムのコポリマー、ポリ酢酸ビニル、及びポリエチレングリコール);コポビドン;Eudragits(E、RS、RL);ポリ(メチルビニルエーテル-alt-マレイン酸無水物);ポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリソルベート;ステアリン酸ポリオキシエチレン;ポリデキストロース;ポリアクリル酸;アルギン酸塩;デンプングリコール酸ナトリウム(SSG);架橋されたポリアクリル酸(carbopol);架橋されたPVP(クロスポピドン);架橋されたセルロース(クロスカルメロース);ケイ酸カルシウム;キサンタンゴム;及びジェランガムを含む。ある特定の有用なポロゲンは、ポビドン、コポビドン、及びポリオキシルヒマシ油を含む。ポロゲンは担体部材の約1重量%から約30重量%の間で構成するために追加されうる。ポロゲンは担体部材の約1重量%から約25重量%、約1重量%から約20重量%、約1重量%から約15重量%、約1重量%から約10重量%、約1重量%から約8重量%、約1重量%から約5重量%、約1重量%から約3重量%、約5重量%から約30重量%、約10重量%から約30重量%、約15重量%から約30重量%、約20重量%から約30重量%、又は約25重量%から約30重量%で構成するために追加されうる。
【0120】
一以上の追加の賦形剤は担体部材、特にその治療薬物が担体部材内に配置される場合に含まれうる。そのような追加の賦形剤は治療薬物を含むコーティングと関連して議論されている;しかしながら、その賦形剤はその担体部材、特にコーティングがそのシステムに存在しない場合に含まれうる。
【0121】
リンカー及び例示的な材料
リンカーはその腸内デリバリーシステムに含まれうり、担体部材同士を連結する、又は中心部材へ担体部材を連結する。そのリンカーはその中心部材及び/又はその担体部材と比較して、小腸内の構造的な完全性を多かれ少なかれ失う傾向がありうる。ある態様において、そのリンカーは腸溶性ポリマー及び/又はポロゲンを含む。例示的な腸溶性ポリマー及びポロゲンは本明細書で定義される。例示の目的で、ある態様において、そのリンカーはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)又は(酢酸/コハク酸)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS)を含む。
【0122】
ある態様において、そのリンカーは可塑剤、例えばトリアセチン、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、ポロクサマー、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、フタル酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、グリセリン、ヒマシ油、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトール-ソルビタン混合物又はジアセチル化モノグリセリドを含む。
【0123】
ある態様において、そのリンカーは、構造的な完全性を(例えば、溶解すること、侵食すること、分解すること、膨潤すること、軟化すること、又はその他のことによって)小腸内の期間にわたって、例えば、約1時間から約72時間のオーダーで、失うように設定される。この特徴は、例えば、その担体部材及び/又はその中心部材が小腸内の期間にわたり構造的な完全性を失うように設定されない場合に、特定の有用なものである。ある態様において、そのリンカーは小腸内に入った後約1時間から約2時間、約2時間から約4時間、約4時間から約6時間、約6時間から約8時間、約8時間から約12時間、約12時間から約24時間、約24時間から約36時間、約36時間から約48時間、又は約48時間から約72時間に構造的な完全性を失う。リンカーの構造的な完全性の欠失はそのシステムの構造的な完全性の欠失をもたらし、それは、そのシステムが小腸の内腔内にある場合、腸壁への外向きの圧力の放出をもたらす。
【0124】
中心部材及び例示的な材料
腸内デリバリーシステムの中心部材は、(例えば、放射状型において)存在すれば、好ましくはエラストマーである(すなわち、エラストマーを含む)。ある態様において、その中心部材はエラストマー材料を含む。
【0125】
ある態様において、その中心部材は(例えば、溶解すること、侵食すること、分解すること、膨潤すること、軟化すること、又は他のことによって)構造的な完全性を小腸内の期間にわたって、例えば、約1時間から約72時間のオーダーで失うように設計される。ある態様において、その中心部材は、小腸内に入って約1時間から約2時間、約2時間から約4時間、約4時間から約6時間、約6時間から約8時間、約8時間から約12時間、約12時間から約24時間、約24時間から約36時間、約36時間から約48時間、又は約48時間から約72時間、構造的な完全性を失う。中心部材の構造的な完全性の欠失はそのシステムの構造的な完全性の欠失をもたらし、それはそのシステムが小腸の内腔内にある場合に、腸壁に外向きの圧力の放出をもたらす。
【0126】
エラストマーは、例えば、折りたたまれる又は圧縮されることによって、腸内デリバリーシステムを、その圧縮したシステムを含む容器又はカプセルを嚥下することによって胃への投与のための適当な形態へ圧縮させることを可能にする。胃内でのそのカプセルが溶解すると、その腸内デリバリーシステムは、そのシステムの所望される滞留時間、患者の幽門括約筋を通じるそのシステムの通過を妨げる形状に拡張する。それゆえ、そのエラストマーは適切な有効期間の間カプセルにおいて圧縮した形態で貯蔵されること、及びそのカプセルから放出されると、その元々の形、又はおおよそその元々の形に拡張すること、が可能でなければならなない。一の態様において、そのエラストマーはシリコンエラストマーである。一の態様において、Dow Corning QP-1液体シリコーンゴムキットにおいて販売されるように、そのエラストマーは液体シリコーンゴム(LSR)から形成される。一の態様において、そのエラストマーは架橋されたポリカプロラクトンである。一の態様において、そのエラストマーは腸溶性ポリマーであり、例えばそれらは腸溶性ポリマーの表に挙げられる。また、ある態様において、そのシステムにおいて用いられるカップリングポリマーはエラストマーである。エラストマーはその放射状型の腸内デリバリーシステムにおいて中心部材としての使用において好ましい。
【0127】
一の態様において、そのカップリングポリマー及びエラストマーの両方は、そのシステムが腸管に入る場合に、又はその患者がそのシステムの通過を誘導するために弱塩基性の溶液を飲んだ場合に、そのシステムを担体ポリマー-薬物の断片にする、より完全な切断を提供する、腸溶性ポリマーである。
【0128】
用いられるエラストマーの例は、それらがDow Corning QP-1キットを用いて形成されるような、シリコン;ウレタン架橋されたポリカプロラクトン;ポリ(アクリロイル-6-アミノカプロン酸)(PA6ACA);ポリ(メタクリル酸-co-エチルアクリラート)(EUDRAGIT L 100-55);並びにポリ(アクリロイル-6-アミノカプロン酸)(PA6ACA)及びポリ(メタクリル酸-co-エチルアクリラート)(EUDRAGIT L 100-55)の混合物を含む。
【0129】
柔軟なカップリングポリマー、すなわち、エラストマーカップリングポリマー又はエラストマーは、腸内デリバリーシステムの放射状型における中心部材として用いられる。放射線状又は星状の形態の中心部材としての使用のための特定の好ましいエラストマーは、シリコンラバーである。液体シリコーンゴム(LSR)は、所望される形に容易に形成され硬化される。架橋されたジメチル及びメチルビニルシロキサンコポリマー並びに補強シリカを含むDow Corning QP-1シリーズは、そのようなシリコンラバーポリマーの例である(ウェブサイト www.dowcorning.com/DataFiles/090276fe8018ed07.pdf参照)。断片化されていない伸長した部材又は担体ポリマー-薬物成分の断片を含む伸長した部材は、続いて中心のシリコンラバーエラストマーへと接着されうる。放射状型における中心エラストマーとして用いられうる別のエラストマーは架橋されたポリカプロラクトンである。
【0130】
治療薬物、コーティング、及び賦形剤
その治療薬物は担体部材内の(すなわち担体ポリマーと混合される)または担体部材上の(すなわち、担体部材をカバーするコーティング又は担体部材の一部)のいずれかでそのシステムに含まれうる。賦形剤は治療薬物内に、例えば、担体部材の担体ポリマーによるコーティング又は担体部材の担体ポリマーとの組み合わせにおいて、含まれうる。賦形剤は、液体環境(例えば小腸内の環境)にさらされると、治療薬物の促進される又は制御される放出を提供しうる;物理的、化学的及び/又は熱的ストレス要因、例えば、システムの加工、製造、貯蔵、又は使用時に対して治療薬剤の安定性を提供しうる;胃腸壁にわたって、例えば内皮細胞の細胞膜を過ぎて又は通り抜けて、治療薬物の移送を促進しうる;又は腸壁でその治療薬物の滞留時間を延長しうる。
【0131】
その治療薬物は小分子薬又は生物分子、例えば、(一本鎖ポリペプチドでありうる、又は二以上の別々の相互作用するポリペプチド鎖でありうる)ポリペプチド又は(一本鎖ポリヌクレオチド又は二本鎖ポリヌクレオチドでありうる)ポリヌクレオチドでありうる。ある態様において、そのポリヌクレオチドは(一本鎖DNA又は二本鎖DNAでありうる)DNA、(一本鎖RNA又は二本鎖RNAでありうる)RNAである。例示的な治療薬物は、これらに限定されないが、天然のポリペプチド、合成の(例えば組換え又は変異型)ポリペプチド、修飾したペプチド、ヌクレオチド、修飾したヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、RNAi、mRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、CpG DNA、siRNA、miRNA、アプタマー、修飾したオリゴヌクレオチド、プラスミド、小分子、天然産物、天然産物の合成アナログ、修飾した天然産物、タンパク質、修飾したタンパク質、又はモルフォリノを含む。そのポリペプチドは、例えば3、4、5、6、7、8、9、約10以上、約15以上、約20以上、約25以上、約30以上、約40以上、約50以上、約75以上、約100以上、又は約150以上のアミノ酸を含みうる。例えば、ある態様において、そのペプチドは約3から約500のアミノ酸、例えば、約3から約10、約10から約15、約15から約20、約20から約25、約25から約30、約30から約40、約40から約50、約50から約75、約75から約100、約100から約150、約150から約250、又は約250から約500のアミノ酸を含む。ある態様において、そのポリペプチドはシグナルポリペプチド、酵素又は抗体又はそれらの断片である。ポリヌクレオチドは、例えば3、4、5、6、7、8、9、約10以上、約15以上、約20以上、約25以上、約30以上、約40以上、約50以上、約75以上、約100以上、又は約150以上のヌクレオチドを含みうる。例えば、ある態様において、そのポリヌクレオチドは約3から約500のヌクレオチド、例えば、約3から約10、約10から約15、約15から約20、約20から約25、約25から約30、約30から約40、約40から約50、約50から約75、約75から約100、約100から約150、約150から約250、又は約250から約500のヌクレオチドを含む。
【0132】
ある態様において、治療薬物を含む担体部材又は担体部材のコーティングは腸内環境において放出を促進する又は制御するように設定された賦形剤を含む。例は可溶化剤、界面活性剤、湿潤剤、塩、脂質、非イオン界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、双性イオン性界面活性剤、ポリソルベート、ポリエーテル、単糖類、複合糖類、複合炭水化物、緩衝剤、イオン対試薬、アルキルグリコシド、親水性ポリマー(天然若しくは合成)、又は両親媒性ポリマー(天然若しくは合成)を含む。腸環環境で放出を促進する又は制御するように設定される他の賦形剤は、イオン化可能な薬物、例えば、イオン化脂質又はポリマーを含みうる。イオン化可能な薬物は、バイオリレバントの範囲(すなわち4から10の間)のpKaを有する一以上の部分を含む。ある態様において、そのイオン化可能な試薬は、4から5の間、5から6の間、6から7の間、7から8の間、8から9の間、または9から10の間のpKaを有する一以上の部分を有する。イオン化脂質の例はD-Lin-DMA、D-Lin-DAP、D-Lin-K-DMA、D-Lin-KC2-DMA、D-Lin-KC3-DMA、D-Lin-KC4-DMA、D-Lin-MC3-DMA、及び他のイオン化脂質様材料を含む。
【0133】
ある態様において、治療薬物を含む担体部材又は担体部材上のコーティングは、保護的な賦形剤を含む。保護的な賦形剤は、貯蔵及び胃腸環境への曝露時に治療薬物を安定化しうる。これらは、凍結防止剤、湿潤剤、凍結保護物質、水置換ポリオール、エーテル、エステル、抗酸化剤、キレート剤、犠牲還元剤、緩衝剤、分子運動性を減らす架橋されたゲル及び、(プロテアーゼ阻害薬のような)酵素切断の阻害を含みうる。抗酸化剤及び犠牲還元剤は疎水性物質、例えばd-αトコフェロール及びその誘導体、親水性物質、例えばメチオニンを含むアミノ酸、アスコルビン酸のようなビタミン類、かつ他のよく見られる薬物を含みうる。キレート剤はEDTA、クエン酸、及びポリヒスチジンのようなポリイオン剤を含む。酵素切断の阻害物(例えば、プロテアーゼ阻害薬)は、とりわけ、金属キレート剤、(大豆由来トリプシンインヒビターのような)トリプシンインヒビター、アプロチニン、ピューロマイシン、セルピン、メシル酸カモスタット、クロモスタチン、オボムコイド、バシトラシン、又はポリマー阻害薬コンジュゲート(例えば、カルボキシメチルセルロース-エラスチン)を含みうる。
【0134】
ある態様において、浸透促進剤(例えば、粘膜付着剤、粘膜浸透剤、細胞膜透過促進剤、又は細胞間結合透過促進剤)は治療薬物又は治療薬物を含むコーティングを有する担体部材において含まれる。粘膜付着剤は好ましくは荷電した/静電的な親和性、構造的な親和性、又はバルクパーティショニングを通じて胃腸壁で関連する薬物を含みうる。例はキトサン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸塩、ポリ(メタクリル酸)、ポロクサマー、ポリビニルピロリドン、及びポリアクリル酸を含む。粘膜浸透剤は、剤形表面若しくはその送達される薬物と粘膜との適合性を促進することによって又は粘液層の完全性を減少することによって作用しうる。例示的な粘膜浸透剤は、ポリエチレングリコールを含み、ポリエチレングリコールと他の合成の生体適合性ポリマー、例えば乳酸グリコール共重合体、又は天然のポリマー、例えばアルギン酸塩若しくはキトサン、とのコポリマーを妨げる。細胞膜及び細胞間結合透過促進剤は細胞表面内又は細胞表面を通過するために利用されうり、活性薬剤の輸送を促進し、そして活性薬剤の取り込み及びバイオアベイラビリティを促進する。浸透促進剤の追加の例は、脂肪酸(例えばC8、C10及びC12脂肪酸、例えばカプリル酸、カプロン酸、及びラウリル酸及びそれらの塩)、胆汁酸塩、キトサン、界面活性剤、グリセリド、ステロイド性界面活性剤、アシルカルニチン、アルカノイルコリン、N-アセチル化したアミノ酸、N-アセチル化した非アミノ酸、及びチオール化したポリマーを含む。また、細胞透過性ペプチドは用いられる。
【0135】
ある態様において、その治療薬物はリポソーム、ナノ粒子(例えば、ナノ-リポソーム又は固体-液体ナノ粒子)、又は自己乳化システム内に製剤化され、それらは促進される輸送及び送達用途で提供されうる。そのような多分子の構成物は、薬物によって調製されうり、剤形内に捕捉されうり又は包埋されうり、又は自己会合又は誘導される自己会合のために、使用の時点で多分子の構築物のin-situ形成のための剤形内の薬物を分散させることによって調製されうる。
【0136】
治療薬物又は治療薬物を含むコーティングを有する担体部材は一以上のポロゲン、崩壊剤、又は浸透圧性薬剤を含みうり、それらは活性薬剤の水和及び/又は放出を促進しうる。例示的なポロゲンは本明細書の他の場所に記載され、これらに限定されないが、糖類、塩、腸溶性ポリマー、及び親水性のポリマーを含みうる。崩壊剤は、同じもの及び架橋された、高分子量の、又は不溶性の薬物、例えばクロスポピドン又はデンプングリコール酸ナトリウムを含みうる。浸透圧性薬剤は一般的に塩及び糖類及び他の低分子薬物からなる。
【0137】
追加の腸溶性材料(例えば腸溶性ポリマー)は治療薬物を含むコーティング内に含まれうり、それは、小腸内で治療薬物の放出を促進し、胃の環境内で治療薬物の放出を制限する。例示的な腸溶性材料は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、(酢酸/コハク酸)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS)又はヒドロキシプロピルメチルセルロール又はヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート)、セラック、酢酸フタル酸セルロース、ポリメタクリル酸、トリメリト酸酢酸セルロース、及びポリ酢酸ビニルフタレートを含みうる。
【0138】
可塑剤は担体部材内の治療薬物又はコーティングに組み込まれうり、加工、貯蔵、及び適用時に柔軟性を提供する。そのシステムは柔軟な及び/又はエラストマー薬物を含み、その治療薬物は、コンフォメーション変化に対抗することができるマトリックス内に保持される、又は乾燥した若しくは水和したマトリックスの柔軟性を提供する若しくは増強する必要があるかもしれない。使用される可塑剤は、フタレート、ホスフェート、クエン酸塩、酒石酸塩、アジピン酸塩、セバシン酸塩、スルホンアミド、コハク酸、グリコレート、グリセロラート、又は低分子量のポリエチレングリコール、安息香酸、ミリステート、及びハロゲン化フェニルを含む。用いられうる特定の可塑剤は、トリアセチン、クエン酸トリエチル(TEC)、PEG、ポロクサマー、クエン酸トリブチル、及びセバシン酸ジブチルを含む。
【0139】
治療薬物を含むコーティングは、(任意の担体部材、そのシステムのリンカー及び/又は中心部材を含む)腸内システム、又はそのシステムの一部に適用されうる。例えば、ある態様において、そのコーティングは担体部材にのみ適用される。ある態様において、そのコーティングは担体部材の一部のみ、例えば、放射状型における担体部材の遠位末端又は環状型におけるシステムの外表面に適用される。環状型の外表面は、中心開口部から離れた部分又は表面を意味する。
【0140】
治療薬物を含むコーティングは、約10μmから約300μmの厚さ(例えば、約10μmから約20μmの厚さ、約20μmから約30μmの厚さ、約30μmから約40μmの厚さ、約40μmから約50μmの厚さ、約50μmから約75μmの厚さ、約75μmから約100μmの厚さ、約100μmから約150μmの厚さ、約150μmから約200μmの厚さ、又は約200μmから約300μmの厚さ)でありうる。そのコーティングは、ヒドロゲルのような膨潤性材料を含み、これは、小環境で水和される場合に、膨潤しうり、コーティングの厚さを増加させる。
【0141】
例示の目的で、そのシステムは、浸漬、勢いよくかき混ぜる、噴霧する、又は治療薬物(及び、存在すれば、一以上の賦形剤)を含む液体若しくはゲルと接触する他のものによってコートされうる。その結果として生じるコーティングは、そのシステム(又は担体部材)上で、固まりうり、脱水、pH誘導される凝集、架橋又は他の硬化プロセスを通じて形成される。適用の間、その治療薬物を、溶媒内で溶解し、乳化し、懸濁しうり、それは、水性物又は有機物型でありうる。その治療薬物は、その溶解性又は懸濁安定性を促進する賦形剤の存在下で溶解されうる又は懸濁されうり、そして、一以上の前記賦形剤はコーティングの一部として組み込まれるようになる。乾燥すると、そのコートは実質的に安定的な物理的な形態であり、腸間膜への直接的な接触においてありうる剤形の表面の全体又は大半に配置される。
【0142】
そのシステムは、その治療薬物が担体部材内にあるか、又は担体部材上にコートされるかどうかで、さらに一以上の追加のコーティング層を含みうる。その追加のコーティング層は一般的に治療薬物を有する任意のコーティングの上端にある。一以上の追加のコーティングは、例えば、放出を修飾するコーティング、(それは例えば、腸溶性コーティング又は抗腸溶性コーティングでありうる)保護的なコーティング、粘膜接着コーティング、又は抗自己接着コーティングを含みうる。例えば、システムは、腸溶性コーティング(例えば、HPMC又はHPMCAS)によってコートされうり、胃の環境から治療薬物を保護し、そのシステムが小腸に入る前にその薬物の放出を防止又は減少する。小腸内に入ると、その腸溶性コーティングは溶解し又は分解し、そして治療薬物は小腸内に放出されうる。腸溶性コーティングを用いて、そのシステムは、胃内で圧縮した形態から拡張した形態に拡張しうり、小腸に到達するまで治療薬物の実質的な放出なしに幽門を通過する。ある態様において、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、又は約1%未満の治療薬物がそのシステムが小腸に到達する前にシステムから放出される。
【0143】
ある態様において、そのシステムは(腸溶性コーティングの上端にありうる)逆腸溶性コーティングを含みうる。逆腸溶性コーティングは胃の環境内で溶解しうる又は分解しうり、逆腸溶性コーティングの包含は、治療薬物の食道の放出を防止しうる又は制限しうる。
【0144】
例示的な抗自己接着コーティングは、例えば、タルクを含みうり、圧縮した形態の場合において、それ自身に接着することからシステムを保護するために作用する。
【0145】
パッケージ化した腸内デリバリーシステム
本明細書に記載した腸内デリバリーシステムは、経口投与の容器、例えばカプセルにおいてパッケージされうる。ある態様において、そのカプセルは腸溶性カプセルであり、そして小腸内でそのシステムを放出するように設定される。ある態様において、そのカプセルは逆腸溶性カプセルであり、そして胃内でそのシステムを放出するように設定される。そのシステムが容器(例えばカプセル)内にある場合に、そのシステムは圧縮した形態において設定される。ビヒクルからの放出は、システムが拡張した形態に拡張することを可能にする。図17はカプセル内のドーナツ状の腸内デリバリーシステムを示す。図18は二つに折りたたまれ、さらにそのシステムをコンパクトにするドーナツ状の腸内デリバリーシステムを示す。図19は、カプセル内の圧縮した形態における放射状の腸内デリバリーシステムを示す。
【0146】
治療薬物の投与方法
治療薬物は患者(例えばヒトの患者)にその患者への圧縮した形態の腸内デリバリーシステムの経口投与することによって投与されうり;その腸内デリバリーシステムを拡張した形態に拡張し;拡張した腸内デリバリーシステムを用いて、その患者の小腸の腸壁への外向きの圧力の放出を適用し、そして腸内デリバリーシステムからの治療薬物を放出し、小腸の腸粘膜にわたって輸送する。その腸内送達は、担体ポリマー及び治療薬物を含む、(伸長した担体部材でありうる)一以上の担体部材を含む。その腸内デリバリーシステムは、例えば、本明細書に記載した、任意の腸内デリバリーシステムでありうる。
【0147】
ある態様において、その腸内デリバリーシステムは患者の小腸、例えば十二指腸内に拡張される。
【0148】
ある態様において、その腸内デリバリーシステムは、患者の胃内に拡張され、そのシステムが小腸に入るまで、実質的な放出なしに、患者の幽門を通過し、小腸に入る。
【0149】
ある態様において、そのシステムの少なくとも一部は、小腸内の期間後、構造的な完全性を失い、外向きの圧力を放出する。
【0150】
ある態様において、その外向きの圧力は、そのシステムが小腸に入った後約1時間から約72時間後に放出される。
【0151】
ある態様において、外向きの圧力の放出は、小腸を通過する腸内送達を可能にする。
【0152】
ある態様において、その治療薬物はポリペプチド又はポリヌクレオチドである。ある態様において、その治療薬物は、10以上のアミノ酸を含むポリペプチドである。ある態様において、その治療薬物は10以上のヌクレオチドを含むポリヌクレオチドである。
【実施例0153】
実施例1:腸内デリバリーシステムの設置
複数の動物に環状の又は放射状型の腸内デリバリーシステムのいずれかを投与し、指定した時点で腸内送達デバイスの可能性及び位置を調査した。
【0154】
そのシステムを製剤化しうり、in vivoのイメージングを促進した。例えば、放射状のシステム、ステンレス鋼の基盤(例えばビーズ)を重合体のドラッグアームに沿って又はアームの重合の間にアームの先端で配置しうる。一方で、放射性トレーサー(例えばバリウムのトレーサー)をそのシステムの放射状のアーム内に包埋しうる又はコーティング内に含みうる。ある例示において、そのシステムを鎮静状態下及び十二指腸内で内視鏡的なovertubeでヨークシャー豚(35~50kg)又はイヌに投与しうる。一連の放射線写真を胸部、十二指腸、及び骨盤の複数の位置(前後方向、左側及び右側の位置)から得た。
【0155】
一連の放射線写真を、十二指腸送達後最大15分間撮影し、外側のカプセルからの展開及び/又は拘束システムを確認しうる。放射線写真は続いて続く4日間は毎日、5日後は一週間に3回得られうる。十二指腸内の腸内デリバリーシステムの位置及び寿命を複数のX線像により確認した。
【0156】
実施例2:イヌにおける放射状腸内デリバリーシステムの十二指腸の設置
6匹のビーグル犬(それぞれ~10kgの体重)を麻酔し、挿管し、そしてメマンチン薬物アームを備えた放射状型のシステムを十二指腸内の幽門を通じて内視鏡的に設置した。それぞれの放射状のシステムは、ドラッグアームの先端に鋼のビーズを含んでおり、それらは継続した十二指腸の設置を確認するためのX線画像を促進した。
【0157】
X線画像を毎日収集し、小腸内の滞留時間をモニターした。血液試料を本試験の10日間を通じて収集し、LC-MS/MSアッセイを用いてメマンチンの量について血漿を加工した。そのイヌを試験期間安全性についてモニターした。
【0158】
十二指腸の設置後の放射状のシステムの排泄は1~9日の範囲を有する5.0±2.9日だった。本研究の期間放射状のシステムの十二指腸の設置の結果として、安全性への懸念を示すと考えられる、小腸内での放射状のシステムの滞留から認められた臨床所見はなかった。
【0159】
本研究期間でイヌより収集した血漿中のメマンチンバイオアナリシスは、図20に示すように、8時間のTmaxを有する小腸からの良い曝露を示し、メマンチンの徐放を7日間測定した。
【0160】
実施例3:動物への腸内送達のためのドーナツ状のシステムの投与
投与及び十二指腸の展開
腸内ドラッグデリバリーをもたらす能力において開発された特定の製剤を評価するために、本明細書に記載されるドーナツ状の腸内デリバリーシステムをより大きな動物モデル、例えばイヌ又はブタへ投与しうる。その治療薬物はタンパク質又は核酸であり、それらをそのドーナツ状のシステムの外側の部分にコートする。そのコーティングはさらに浸透促進剤、例えばカプリン酸ナトリウムを含む。また、動物を都合の良い方法、例えばTelazol及びXylazine(又は、別法としてケタミン又はイソフルレン)を用いて麻酔しうり、内視鏡的なovertubeを、食道、胃内に及び/又は十二指腸内の幽門を通じて挿管する間に、内視鏡的な視覚的なガイダンス下で配置しうる。構造物を含むゼラチンカプセルを食道、胃内及び/又は十二指腸内に直接overtubeを通じて投与しうる。そのovertubeは続けて格納されるだろう。一連のX線を十二指腸に送達後すぐに入手し、ゼラチンカプセルからの展開の工程を実証した。
【0161】
徐放特性/薬物動態を決定すること
動物における薬物放出特性を決定するために、腸内滞留装置を投与する動物から定期的に血液試料を引き抜きうる。例えば、その腸内滞留装置を配置した後、血液試料を約0分、15分、30分、1時間、2時間、4時間、8時間、16時間、24時間で個々より取り出しうる。さらなる血液試料を、その腸内滞留システムを最初に配置した後、最大で14日間毎日動物より取り出しうる。
【0162】
その薬物濃度を液体クロマトグラフィー(LC)を用いて、又は液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)によって定量しうり、そして薬物放出特性を経時的にプロットした。そのシステムの設置後、最大血漿濃度に到達した時をTmaxとして記録しうる。
【0163】
実施例4:動物への腸内送達のための放射状システムの投与
投与及び十二指腸の配置
腸内薬物送達を達成する能力において開発された特定の製剤を評価するために、本明細書で記載されるように、放射状型の腸内ドラッグデリバリーシステムをより大きな動物モデル、例えば、イヌ又はブタへ投与しうる。その治療薬物はタンパク質又は核酸でありうり、それらは放射状型システムのアームの遠位末端にコートされる。さらにそのコートは浸透促進剤、例えばカプリン酸ナトリウムを含む。動物を都合の良い方法、例えばTelazol及びXylazine(又は、別法としてケタミン又はイソフルレン)を用いて麻酔しうり、内視鏡的なovertubeは、食道、胃内に及び/又は十二指腸内の幽門を通じて挿管する間に、内視鏡的な視覚的なガイダンス下で配置されるだろう。構造物を含むゼラチンカプセルを食道、胃内及び/又は十二指腸内に直接overtubeを通じて投与しうる。そのovertubeは続けて格納されるだろう。一連のX線を十二指腸に送達後すぐに得て、ゼラチンカプセルからの展開の工程を実証した。
【0164】
徐放特性/薬物動態を決定すること
動物における薬物放出特性を決定するために、腸内滞留装置を投与する動物から定期的に血液試料を引き抜きうる。例えば、その腸内滞留装置を配置した後、血液試料を約0分、15分、30分、1時間、2時間、4時間、8時間、16時間、24時間で個々より取り出しうる。さらなる血液試料は、その腸内滞留システムを最初に配置した後、最大で14日間毎日動物より取り出しうる。その薬物濃度を液体クロマトグラフィー(LC)を用いて、又は液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)によって定量しうり、そして薬物放出特性を経時的にプロットした。そのシステムの設置後、最大血漿濃度に到達した時をTmaxとして記録しうる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
【手続補正書】
【提出日】2024-06-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療薬物の腸内投与のためのシステムであって
体ポリマー及び治療薬物を含む一以上の担体部材を含み
前記システムが、圧縮した形態及び拡張した形態において設定可能であり、ここで前記システムが(1)小腸内で圧縮した形態から拡張した形態に拡張し、又は(2)胃内で圧縮した形態から拡張した形態に拡張し、かつ小腸に到達するまで前記治療薬物の実質的な放出なしに幽門を通過するように設定され;
前記システムが拡張した形態である場合に、中心部材から外側に放射する複数のアームに接着したエラストマー中心部材をさらに含み;
前記シムテムの治療薬物の約80%以上が、エラストマー中心部材に対してアームの遠位末端上に又は内に配置され;
記システムが、小腸の腸壁への外向きの圧力を適用することによって小腸の腸壁への接触を保持し、かつ小腸の腸粘膜にわたって治療薬物の少なくとも部分を輸送するようなサイズを取り;か
記システムの少なくとも一部が、外向きの圧力を小腸内で放出する期間後構造的な完全性を失うシステム。
【請求項2】
前記システムが小腸内で圧縮した形態から拡張した形態に拡張するように設定される、請求項1のシステム。
【請求項3】
前記システムが胃内で圧縮した形態から拡張した形態に拡張し、かつ小腸に到達するまで治療薬物の実質的な放出なしに幽門を通過するように設定される、請求項1のシステム。
【請求項4】
前記一以上の担体部材が治療薬物を含むコーティングを含む、請求項1~3のいずれか一項のシステム。
【請求項5】
前記コーティングがさらに浸透促進剤を含む、請求項4のシステム。
【請求項6】
前記治療薬物を前記担体ポリマー内に積載した、請求項1~3のいずれか一項のシステム。
【請求項7】
浸透促進剤を前記担体ポリマー内に積載した、請求項6のシステム。
【請求項8】
前記浸透促進剤が粘膜接着剤又は粘膜透過剤である、請求項5又は7のシステム。
【請求項9】
前記浸透促進剤が脂肪酸、胆汁酸塩、キトサン、チオール化したポリマー、又は細胞透過性ペプチドである、請求項8のシステム。
【請求項10】
前記外向きの圧力が、前記システムが小腸に入った後約1時間から約72時間後に放出される、請求項1~9のいずれか一項のシステム。
【請求項11】
外向きの圧力の放出が、小腸を通じる前記担体部材の通過を可能にする、請求項1~10のいずれか一項のシステム。
【請求項12】
前記システムが約1時間から約72時間の間腸粘膜にわたって治療薬物を輸送するように設定される、請求項1~11のいずれか一項のシステム。
【請求項13】
前記システムが、十二指腸の腸壁に外向きの圧力を適用することによって十二指腸の腸壁への接触を保持するようなサイズを取り、かつ前記十二指腸の腸壁にわたって治療薬物の少なくとも一部を輸送する、請求項1~12のいずれか一項のシステム。
【請求項14】
前記一以上の担体部材が中空コアを含む、請求項1~13のいずれか一項のシステム。
【請求項15】
前記一以上の担体部材が固いコアを含む、請求項1~14のいずれか一項のシステム。
【請求項16】
前記一以上の担体部材が、外向きの圧力を小腸内で放出する期間後構造的な完全性を失うように設定される、請求項1~15のいずれか一項のシステム。
【請求項17】
前記一以上の担体部材が前記一以上の担体部材の侵食、分解、又は軟化を通じて構造的な完全性を失うように設定される、請求項16のシステム。
【請求項18】
前記エラストマー中心部材が、小腸内の期間後、構造的な完全性を失うように設定されるポリマーを含む、請求項1~17のいずれか一項のシステム。
【請求項19】
前記エラストマー中心部材が、エラストマー中心部材の侵食、分解、又は軟化を通じて構造的な完全性を失うように設定される、請求項18のシステム。
【請求項20】
前記エラストマー中心部材が、小腸内の期間後、構造的な完全性を失うように設定されるポリマーを含む一以上のリンカーを通じて前記アームに連結される、請求項19のいずれか一項のシステム。
【請求項21】
前記システムが、前記一以上のリンカーの侵食、分解、又は軟化を通じて構造的な完全性を失う、請求項1~17及び20のいずれか一項のシステム。
【請求項22】
前記担体部材が断面にわたって環状、楕円形、又はしずく型を有する、請求項1~21のいずれか一項のシステム。
【請求項23】
前記治療薬物がポリペプチド又はポリヌクレオチドである、請求項1~22のいずれか一項のシステム。
【請求項24】
前記治療薬物が10以上のアミノ酸を含むポリペプチドである、請求項23のシステム。
【請求項25】
前記治療薬物が10以上のヌクレオチドを含むポリヌクレオチドである、請求項23のシステム。
【請求項26】
前記小腸がヒトの小腸である、請求項1~25のいずれか一項のシステム。
【請求項27】
前記システムが保護コーティングによってコートされる、請求項1~26のいずれか一項のシステム。
【請求項28】
前記保護コーティングが腸溶性コーティングである、請求項27のシステム。
【請求項29】
前記システムが逆腸溶性コーティングによってさらにコートされる、請求項27又は28のシステム。
【請求項30】
請求項1~29のいずれか一項のシステムをカプセル化するカプセルを含む治療の剤形。
【請求項31】
前記カプセルが腸溶性カプセルである、請求項30の治療薬の剤形。
【請求項32】
治療薬物を患者に投与するための、圧縮した形態における腸内デリバリーシステムであって、担体ポリマー及び治療薬物を含む一以上の担体部材を含
前記システムが拡張した形態である場合に、中心部材から外側に放射する複数のアームに接着したエラストマー中心部材をさらに含み;
前記シムテムの治療薬物の約80%以上が、エラストマー中心部材に対してアームの遠位末端上に又は内に配置され;
前記腸内デリバリーシステムが患者に経口投与され;
前記腸内デリバリーシステム拡張した形態に拡張され
前記拡張された腸内デリバリーシステムによって、外向きの圧力前記患者の小腸の腸壁に適用され;かつ
前記腸内デリバリーシステムから治療薬物放出され、小腸の腸粘膜にわたって治療薬物輸送される、デリバリーシステム
【請求項33】
前記腸内デリバリーシステムが小腸内に拡張される、請求項32デリバリーシステム
【請求項34】
前記腸内デリバリーシステムが患者の十二指腸内に拡張される、請求項32又は33デリバリーシステム
【請求項35】
前記腸内デリバリーシステムが患者の胃内に拡張され、かつシステムが小腸に入るまでに治療薬物の実質的な放出なしに患者の幽門を通過し小腸内に入る、請求項32デリバリーシステム
【請求項36】
少なくとも一部の前記システムが小腸内に外向きの圧力を放出する期間後、構造的な完全性を失う、請求項3235のいずれか一項のデリバリーシステム
【請求項37】
前記外向きの圧力が、前記システムが小腸内に入った後、約1~約72時間後に放出される、請求項36デリバリーシステム
【請求項38】
前記外向きの圧力の放出が、前記腸内デリバリーシステムが小腸を通過することを可能にする、請求項36又は37デリバリーシステム
【請求項39】
前記治療薬物がポリペプチド又はポリヌクレオチドである、請求項3238のいずれか一項のデリバリーシステム
【請求項40】
前記治療薬物が10以上のアミノ酸を含むポリペプチドである、請求項39デリバリーシステム
【請求項41】
前記治療薬物が10以上のヌクレオチドを含むポリヌクレオチドである、請求項39デリバリーシステム
【請求項42】
前記腸内デリバリーシステムが請求項1~29のいずれか一項に記載のシステムである、請求項3241のいずれか一項のデリバリーシステム
【請求項43】
前記患者がヒトである、請求項3241のいずれか一項のデリバリーシステム