(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107376
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】蒸気抜きパウチ
(51)【国際特許分類】
B65D 30/16 20060101AFI20240801BHJP
B65D 81/34 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
B65D30/16 C
B65D81/34 U
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024095270
(22)【出願日】2024-06-12
(62)【分割の表示】P 2020071559の分割
【原出願日】2020-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100176658
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】森田 佐保
(57)【要約】
【課題】底開き性を向上させることで開口性を良くし、加熱処理後の開封後に、蒸気抜きパウチからそのまま内容物である食品を喫食しやすくする蒸気抜きパウチを提供する。
【解決手段】本発明の蒸気抜きパウチは、対向する第1シートおよび第2シートと、第1シートと第2シートの間の底シートとを含み、蒸気抜き部を備え、底シートの対向する面同士を接合する部分の内縁の下端から、底サイドシール部の内縁と底中間シール部の内縁とが交わる部分を含めた、底中間シール部の外縁に対する仮想垂直線までの幅方向の長さ(A1)と、底シートの対向する面同士を接合する部分の内縁の下端から、底サイドシール部の内縁と底中間シール部の内縁とが交わる部分を含めた、底中間シール部の外縁に対する仮想垂直線までの幅方向の長さ(A2)が等しく、A1の長さと底中間シール部の内縁の幅方向の長さ(B)とA2の長さの比が1:1:1~1:3:1である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する第1シートおよび第2シートと、前記第1シートと前記第2シートの間に側面視V字状に折り込んで介在させた底シートとを含み、内容物から発生する蒸気を排出する蒸気抜き部を備える蒸気抜きパウチであって、
左右の側シール部と、第1の底シール部と、第2の底シール部とが形成され、
前記左右の側シール部は、直線状であり、前記第1シートと前記第2シートを接合する部分と、折り込まれた前記底シートの対向する面同士を接合する部分と、を含み、
前記第1の底シール部は、前記第1シートと前記底シートとを接合する部分で、第1の左右の底サイドシール部と、前記第1の左右の底サイドシール部の間で前記第1の左右の底サイドシール部に連接する直線状の第1の底中間シール部と、を含み、
前記第2の底シール部は、前記第2シートと前記底シートとを接合する部分で、第2の左右の底サイドシール部と、前記第2の左右の底サイドシール部の間で前記第2の左右の底サイドシール部に連接する直線状の第2の底中間シール部と、を含み、
前記左の側シール部における、折り込まれた前記底シートの対向する面同士を接合する部分の内縁の下端から、前記左の側シール部に連接する前記第1または第2の底サイドシール部の内縁と前記第1または第2の底サイドシール部に連接する前記第1または第2の底中間シール部の内縁とが交わる部分を含めた、前記第1または第2の底中間シール部の外縁に対する仮想垂直線までの幅方向の長さ(A1)と、前記右の側シール部における、折り込まれた前記底シートの対向する面同士を接合する部分の内縁の下端から、前記右の側シール部に連接する前記第1または第2の底サイドシール部の内縁と前記第1または第2の底サイドシール部に連接する前記第1または第2の底中間シール部の内縁とが交わる部分を含めた、前記第1または第2の底中間シール部の外縁に対する仮想垂直線までの幅方向の長さ(A2)が等しく、
前記A1の長さと、前記第1または第2の底中間シール部の内縁の幅方向の長さ(B)と、前記A2の長さの比が、1:1:1~1:3:1であり、
前記左の側シール部の幅方向の長さ(E1)と、前記右の側シール部の幅方向の長さ(E2)が等しく、
前記第1シート、前記第2シート、及び前記底シートのそれぞれは、最外層、中間層、シーラント層を含む複数の層が積層された層構造を有し、
前記内容物を収容する空間を規定する面は、前記シーラント層によって形成されている、
ことを特徴とする、蒸気抜きパウチ。
【請求項2】
前記左または右の側シール部の一部に開封誘導部が形成され、
前記開封誘導部は、前記蒸気抜き部と前記底シートの折り込み部との間に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の蒸気抜きパウチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジ等による食品などの加熱に用いられる蒸気抜きパウチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子レンジ等による食品などの加熱に用いられる蒸気抜きパウチとして、対向する2枚のフィルムと底フィルムとを有し、側部に蒸気抜き部を有する蒸気抜きパウチが知られている。
例えば、特許文献1には、対向する2枚のフィルムと、その2枚のフィルムの間に介在させた底面フィルムと、を有し、側シール部に設けられた蒸気抜き部より下方に開封手段が設けられている蒸気抜きパウチが記載されている。この蒸気抜きパウチにより、開封位置と内容物との距離を近くすることができるため、内容物を取り出しやすくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の蒸気抜きパウチでは、電子レンジ等による加熱処理後の開封後に、そのパウチからそのまま内容物である食品を喫食しようとすると、パウチの底開き性が悪く、開口性が劣るため、食品を喫食しづらいという問題がある。
そこで、本発明は、蒸気抜きパウチの底開き性を向上させることで開口性を良くし、電子レンジ等による加熱処理後の開封後に、その蒸気抜きパウチからそのまま内容物である食品を喫食しやすくする蒸気抜きパウチを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、
対向する第1シートおよび第2シートと、前記第1シートと前記第2シートの間に側面視V字状に折り込んで介在させた底シートとを含み、内容物などから発生する蒸気を排出する蒸気抜き部を備える蒸気抜きパウチであって、
左右の側シール部と、第1の底シール部と、第2の底シール部とが形成され、
前記左右の側シール部は、略直線状であり、前記第1シートと前記第2シートを接合する部分と、折り込まれた底シートの対向する面同士を接合する部分とを含み、
前記第1の底シール部は、前記第1シートと前記底シートとを接合する部分で、第1の左右の底サイドシール部と、その第1の左右の底サイドシール部の間でその第1の左右の底サイドシール部に連接する略直線状の第1の底中間シール部とを含み、
前記第2の底シール部は、前記第2シートと前記底シートとを接合する部分で、第2の左右の底サイドシール部と、その第2の左右の底サイドシール部の間でその第2の左右の底サイドシール部に連接する略直線状の第2の底中間シール部とを含み、
前記左の側シール部における、前記折り込まれた底シートの対向する面同士を接合する部分の内縁の下端から、その左の側シール部に連接する第1または第2の底サイドシール部の内縁とその第1または第2の底サイドシール部に連接する第1または第2の底中間シール部の内縁とが交わる部分を含めた、その第1または第2の底中間シール部の外縁に対する仮想垂直線までの幅方向の長さ(A1)と、前記右の側シール部における、前記折り込まれた底シートの対向する面同士を接合する部分の内縁の下端から、その右の側シール部に連接する第1または第2の底サイドシール部の内縁とその第1または第2の底サイドシール部に連接する第1または第2の底中間シール部の内縁とが交わる部分を含めた、その第1または第2の底中間シール部の外縁に対する仮想垂直線までの幅方向の長さ(A2)が等しく、
前記A1の長さと、第1または第2の底中間シール部の内縁の幅方向の長さ(B)と、前記A2の長さの比が、1:1:1~1:3:1である、
ことを特徴とする、蒸気抜きパウチである。
【0006】
請求項2に記載の発明は、
前記A1の長さと、
前記Bの長さと、
前記A2の長さと、
前記底シートの折り込み部から前記底シートの下端までの高さ方向の長さ(C)と、
略直線状の第1または第2の底中間シール部の高さ方向の長さ(D)との関係が、
(A1+B+A2)×2≧(C-D)×3.14×2
であることを特徴とする、請求項1に記載の蒸気抜きパウチである。
【0007】
請求項3に記載の発明は、
前記左の側シール部の幅方向の長さ(E1)と、前記右の側シール部の幅方向の長さ(E2)が等しいことを特徴とする、
請求項1または2に記載の蒸気抜きパウチである。
【0008】
請求項4に記載の発明は、
前記左または右の側シール部の一部に開封誘導部が形成され、
前記開封誘導部は、前記蒸気抜き部と前記底シートの折り込み部との間に設けられていることを特徴とする、
請求項1から3のいずれかに記載の蒸気抜きパウチである。
【0009】
請求項5に記載の発明は、
前記Cの長さと、
前記開封誘導部から前記底シートの下端までの高さ方向の長さ(F)との関係が、
C×2≦F
であることを特徴とする、請求項2から4のいずれかに記載の蒸気抜きパウチである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の蒸気抜きパウチにより、左右の底サイドシール部の幅方向の長さ(A1とA2)を等しくし、かつ、底サイドシール部の幅方向の長さ(A1)と、底中間シール部の内縁の幅方向の長さ(B)と、底サイドシール部の幅方向の長さ(A2)の比を、1:1:1~1:3:1とすることで、底開き性が向上する。
また、閉鎖された蒸気抜きパウチが電子レンジなどで加熱処理された場合、内容物などから発生した蒸気によって蒸気抜きパウチの内圧が上がり、蒸気パウチの収容部が大きく膨らむ。この際、蒸気抜き部からの蒸気排出により、蒸気抜きパウチの破裂を回避することができる。
さらに、底開き性が向上することで、加熱処理後に開封した際の開口性も向上するため、内容物を容易に取り出すことができ、食器に移し替えずその蒸気抜きパウチを器として、その蒸気抜きパウチからそのまま内容物である食品を喫食しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】開口部が閉じられる前の蒸気抜きパウチの正面図。
【
図2】開口部が閉じられた後の蒸気抜きパウチの正面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、必要に応じて図面を参照して、本発明に係る蒸気抜きパウチ100の実施形態の例について説明する。
【0013】
図1は、開口部30が閉じられる前の蒸気抜きパウチ100の正面図を示す図である。
図2は、開口部30が閉じられた後の蒸気抜きパウチ100の正面図を示す図である。なお、
図1は、内容物200が収容されていない状態であり、
図2は、内容物200が収容された後に開口部30が閉じられた後の状態を示す。
【0014】
蒸気抜きパウチ100は、対向する第1シート11および第2シート12と、第1シート11と第2シート12の間に側面視V字状に折り込んで介在させた底シート13とを含む。
図1や
図2に示される蒸気抜きパウチ100は、1枚のシートにより構成される。1枚のシートが折り曲げられることによって対向する第1シート11と第2シート12が形成され、第1シート11と第2シート12の底部11A、12Aに配置された底シート13が形成される。
図1や
図2に示される蒸気抜きパウチ100と異なり、第1シート11と第2シート12と底シート13が個別に形成され、3枚のシートで構成されていてもよい。
【0015】
内容物200である食品は、例えば、シチューおよびスープなどのように流動性を有する食品が挙げられる。
【0016】
蒸気抜きパウチ100の正面視の外郭形状は任意に選択可能であり、
図1に示される長方形以外に、逆台形や正方形などが挙げられる。また、蒸気抜きパウチ100全体の幅方向の長さおよび高さ方向の長さは、例えば、収容される内容物200の量、および、持ち運びやすさとの関係から決められることが好ましい。ここで、幅方向とは、後述する略直線状の第1または第2の底中間シール部23C、24Cの外縁23Cb、24Cbに略平行な方向である。また、高さ方向とは、幅方向に垂直な方向である。
【0017】
蒸気抜きパウチ100は、左右の側シール部21、22と、第1の底シール部23と、第2の底シール部24とが形成される。この各シール部21~24と開口部30を閉鎖する閉鎖シール部25とに囲まれた部分が収容部40となる。前記左右の側シール部21、22は、第1シート11と第2シート12を接合する部分21A、22Aと、折り込まれた底シート13の対向する面同士を接合する部分21B、22Bとを含む。ここで、左右の側シール部21、22の左右は、
図1に示されるように第1シート11を正面とした場合の第1シート11に対する左右をさす。
【0018】
左右の側シール部21、22における第1シート11と第2シート12を接合する部分21A、22Aは、例えば、
図1に示されるように、開口部30から底シート13の折り込み部50まで、第1シート11と第2シート12のそれぞれの左右端に沿うように略直線状に設けられている。左右の側シール部21、22における、折り込まれた底シート13の対向する面同士を接合する部分21B、22Bは、例えば、
図1に示されるように、折り込まれた底シート13の左右端に沿うように、また上記の左右の側シール部21、22における第1シート11と第2シート12を接合する部分21A、22Aに連なるように、略直線状に設けられている。ここで、底シート13の折り込み部50は、左または右の側シール部21、22における第1シート11と第2シート12が接合する部分21A、22Aの内縁21Aa、22Aaと、その第1シート11と第2シート12が接合する部分21A、22Aに連接する第1または第2の底サイドシール部23A、24A、23B、24Bの内縁23Aa、24Aa、23Ba、24Baとが交わる部分を含む。ここで、内縁とは、蒸気抜きパウチ100の内方部側の縁である。
【0019】
前記第1の底シール部23は、第1シート11と底シート13とを接合する部分で、第1の左右の底サイドシール部23A、23Bと、その第1の左右の底サイドシール部23A、23Bの間でその第1の左右の底サイドシール部23A、23Bに連接する略直線状の第1の底中間シール部23Cとを含む。ここで、第1の左右の底サイドシール部23A、23Bの左右は、
図1に示されるように第1シート11を正面とした場合の第1シート11に対する左右をさす。
【0020】
第1の左の底サイドシール部23Aは、左の側シール部21から第1の底中間シール部23Cにかけて斜めに形成された部分を含み、第1の右の底サイドシール部23Bは、右の側シール部22から第1の底中間シール部23Cにかけて斜めに形成された部分を含む。
【0021】
第1の左右の底サイドシール部23A、23Bは、例えば、
図1に示されるように、前記左右の側シール部21、22における、第1シート11と第2シート12を接合する部分21A、22Aの下端に連なるように、左右の側シール部21、22のそれぞれから第1の底中間シール部23Cにかけて斜めに形成された部分を含む。左の側シール部21における第1シート11と第2シート12を接合する部分21Aの内縁21Aaの下端と第1の左の底サイドシール部23Aの内縁23Aaの上端は連接し、右の側シール部22における第1シート11と第2シート12を接合する部分22Aの内縁22Aaの下端と第1の右の底サイドシール部23Bの内縁23Baの上端は連接する。前記左右の側シール部21、22における、第1シート11および第2シート12を接合する部分21A、22Aの内縁21Aa、22Aaと第1の底シール部23における内縁23Aa、23Ca、23Baは、蒸気抜きパウチ100の開封前の内方部の正面視の外郭を規定している。
【0022】
第2の底シール部24も上記第1の底シール部23と同じく、以下の構造となる。
第2の底シール部24は、第1シート11と底シート13とを接合する部分で、第2の左右の底サイドシール部24A、24Bと、その第2の左右の底サイドシール部24A、24Bの間でその第2の左右の底サイドシール部24A、24Bに連接する略直線状の第2の底中間シール部24Cとを含む。ここで、第2の左右の底サイドシール部24A、24Bの左右は、
図1に示されるように第2シート12を正面とした場合の第2シート12に対する左右をさす。
【0023】
第2の左の底サイドシール部24Aは、右の側シール部22から第2の底中間シール部24Cにかけて斜めに形成された部分を含み、第2の右の底サイドシール部24Bは、左の側シール部21から第2の底中間シール部24Cにかけて斜めに形成された部分を含む。
【0024】
第2の左右の底サイドシール部24A、24Bは、例えば、
図1に示されるように、前記右左の側シール部22、21における、第1シート11と第2シート12を接合する部分22A、21Aの下端に連なるように、右左の側シール部22、21のそれぞれから第2の底中間シール部24Cにかけて斜めに形成された部分を含む。右の側シール部22における第1シート11と第2シート12を接合する部分22Aの内縁22Aaの下端と第2の左の底サイドシール部24Aの内縁24Aaの上端は連接し、左の側シール部21における第1シート11と第2シート12を接合する部分21Aの内縁21Aaの下端と第2の右の底サイドシール部24Bの内縁24Baの上端は連接する。前記右左の側シール部22、21における、第1シート11および第2シート12を接合する部分22A、21Aの内縁22Aa、21Aaと第2の底シール部24における内縁24Aa、24Ca、24Baは、蒸気抜きパウチ100の開封前の内方部の正面視の外郭を規定している。
【0025】
図1や
図2に示される蒸気抜きパウチ100は、第1シート11と第2シート12の形状が同じであり、第1シート11と底シート13を接合する底シール部23の形状と第2シート12と底シート13を接合する底シール部24の形状は同じである。また、第1の左の底サイドシール部23Aと第1の右の底サイドシール部23Bの形状は左右対称であり、第2の左の底サイドシール部24Aと第2の右の底サイドシール部24Bの形状も左右対称である。
【0026】
図2に示される蒸気抜きパウチ100は、内容物200が収容されて収容部40が膨らみ、底シート13の折り込み部50の折り込みが解かれる。左の側シール部21と右の側シール部22とは、正面視の高さ方向において、底シート13から開口部30に向かうにつれて離間している。また、別の例として、左の側シール部21と右の側シール部22とは、高さ方向において平行に形成されていてもよい。
【0027】
図1におけるA1は、左の側シール部21における、折り込まれた底シート13の対向する面同士を接合する部分21Bの内縁21Baの下端(
図1におけるh)から、その左の側シール部21に連接する第1または第2の底サイドシール部23A、24Bの内縁23Aa、24Baとその第1または第2の底サイドシール部23A、24Bに連接する第1または第2の底中間シール部23C、24Cの内縁23Ca、24Caとが交わる部分(
図1におけるi)を含めた、その第1または第2の底中間シール部23C、24Cの外縁23Cb、24Cbに対する仮想垂直線26までの幅方向の長さを示す。ここで、外縁とは、蒸気抜きパウチ100の外方部側の縁である。
【0028】
一方、
図1におけるA2は、右の側シール部22における、折り込まれた底シート13の対向する面同士を接合する部分22Bの内縁22Baの下端(
図1におけるj)から、その右の側シール部22に連接する第1または第2の底サイドシール部23B、24Aの内縁23Ba、24Aaとその第1または第2の底サイドシール部23B、24Aに連接する第1または第2の底中間シール部23C、24Cの内縁23Ca、24Caとが交わる部分(
図1におけるk)を含めた、その第1または第2の底中間シール部23C、24Cの外縁23Cb、24Cbに対する仮想垂直線26までの幅方向の長さを示す。上記A1とA2の長さは等しい。
【0029】
また、前記A1の長さと、第1または第2の底中間シール部23C、24Cの内縁23Ca、24Caの幅方向の長さ(B)と、前記A2の長さの比は、1:1:1~1:3:1である。A1とBとA2の長さの比を上記のようにすることで、電子レンジなどによる加熱処理時に第1または第2の左右の底シール部23A、24B、23B、24Aの後退がなく、かつ、より大きく底開きすることができる。
【0030】
前記A1の長さと、前記Bの長さと、前記A2の長さと、底シート13の折り込み部50から底シート13の下端までの高さ方向の長さ(C)と、略直線状の第1または第2の底中間シール部23C、24Cの高さ方向の長さ(D)との関係は、(A1+B+A2)×2≧(C-D)×3.14×2であることが好ましい。その理由は、収容部40の底部の最大外周が底シート13の開き以上でないと、第1または第2の底サイドシール部23A、24Bの内縁23Aa、24Baとその第1または第2の底サイドシール部23A、24Bに連接する第1または第2の底中間シール部23C、24Cの内縁23Ca、24Caとが交わる部分(
図1におけるi)が後退するおそれがあるからである。ここで、底シート13の下端とは、底シート13のうちの、高さ方向最も低い部分である。
図1では、底シート13の下端は、第1または第2の底中間シール部23C、24Cの下端となる。
【0031】
左の側シール部21の幅方向の長さ(E1)と、右の側シール部22の幅方向の長さ(E2)が等しい。少なくとも、蒸気抜きパウチ100を加熱処理し開封後に器として使用する際に、開口が左右対称となり、喫食し易くなる。
【0032】
さらに、蒸気抜きパウチ100は、内容物200などから発生する蒸気を排出する蒸気抜き部60を備える。この蒸気抜き部60は、閉鎖シール部25が形成された状態における収容部40の圧力の上昇にともない開口し、内容物200などの蒸気を外部に排出できるように構成されている。蒸気抜き部60の形状は種々の形状を取り得る。例えば、蒸気抜き部60は、左右どちらかまたは両方の側シール部21、22の一部を構成している。左または右の側シール部21、22と独立し、第1シート11または第2シート12の内方部でもよい。
図1に示される蒸気抜き部60は、右の側シール部22における、第1シート11と第2シート12を接合する部分21A、22Aの一部に、幅方向の外側から内側に凹む形状のシール部分を有する。この幅方向の外側から内側に凹む形状のシール部分のシール強度は、このシール部に連接する側シール部より弱い。この蒸気抜き部60における幅方向の最も内側の部分である先端部は、第1シート11と第2シート12の各シートにおいて、収容部40の圧力が上昇した場合に強い応用集中が生じる場所に設けられている。収容部40の圧力が所定の圧力範囲内の圧力まで上昇した場合、蒸気抜き部60が開口する。具体的には、収容部40の圧力の上昇にともない、蒸気抜き部60の先端部において接合されている第1シート11と第2シート12が剥離し、収容部40と外部とを連通する蒸気抜き通路が蒸気抜き部60に形成される。電子レンジなどによる加熱により蒸気が排出し、収容部40の圧力上昇が抑えられ、蒸気抜きパウチ100の破裂が回避される。
【0033】
また、左または右の側シール部21、22の一部に開封誘導部70が形成される。開封誘導部70は、蒸気抜き部60と底シート13の折り込み部50との間に設けられている。閉鎖された蒸気抜きパウチ100が加熱された場合、内容物200などから発生した蒸気によって、第1シート11または第2シート12の高さ方向における蒸気抜き部60と底シート13との間の部分が大きく膨らむ。この第1シート11または第2シート12の大きく膨らんだ部分を引き裂くことにより、より広い開口幅を保った上で内容物200を容易に取り出すことが出来る。また、開封誘導部70は、高さ方向において蒸気抜き部60に近い位置に形成されることが好ましい。収容部40に多くの内容物200を収容できるからである。なお、
図1では、開封誘導部70が左の側シール部21のみに形成されているが、右の側シール22のみ、または、左右の側シール部21、22の両方に形成されていても良い。
【0034】
前記Cの長さと、開封誘導部70から底シート13の下端までの高さ方向の長さ(F)との関係は、開口幅と内容物の液面高さとのバランスを考慮し、C×2≦Fとすることが好ましい。
【0035】
開封誘導部70は例えば、
図1に示されるように、左の側シール部21の内縁21Aに向かうにつれて窄まる三角形状を呈する切り欠きでもよい。
図1では、この開封誘導部70を挟み込むように摘まみ部71も設けられている。開封誘導部70は、
図1に示される切り欠き以外に、例えば、ノッチ、切り込みなどでもよい。
【0036】
さらに、開封誘導部70から始まるミシン目などの開封誘導線を設けても良い。開封誘導線は例えば、一方の側シール部に形成された開封誘導部70から始まり、もう一方の側シール部に達するまで水平に形成されている。開封誘導線に沿って、第1シート11および第2シート12の大きく膨らんだ部分を容易に引き裂くことができ、容易に内容物200を取り出せる。
【0037】
なお、蒸気抜きパウチが1枚のシートから構成される場合、第1および第2の底中間シール部を設けなくても良い。この場合、以下の通りとなる。
【0038】
前記第1の底シール部に第1の底中間シール部23Cは設けられておらず、第1の左右の底サイドシール部のみを含む。
【0039】
第1の左の底サイドシール部は、左の側シール部21から底シート13の下端にかけて斜めに形成された部分を含み、第1の右の底サイドシール部は、右の側シール部22から底シート13の下端にかけて斜めに形成された部分を含む。
【0040】
第1の左右の底サイドシール部は、例えば、前記左右の側シール部21、22における、第1シート11と第2シート12を接合する部分21A、22Aの下端に連なるように、左右の側シール部21、22のそれぞれから底シート13の下端にかけて斜めに形成された部分を含む。前記左右の側シール部21、22における、第1シート11および第2シート12を接合する部分21A、22Aの内縁21Aa、22Aaと、第1の底シール部23における内縁と底シート13の下端は、蒸気抜きパウチ100の開封前の内方部の正面視の外郭を規定している。
【0041】
第2の底シール部24も上記第1の底シール部23と同じく、以下の構造となる。
前記第2の底シール部に第2の底中間シール部24Cは設けられておらず、第2の左右の底サイドシール部のみを含む。
【0042】
第2の左の底サイドシール部は、右の側シール部22から底シート13の下端にかけて斜めに形成された部分を含み、第2の右の底サイドシール部は、左の側シール部21から底シート13の下端にかけて斜めに形成された部分を含む。
【0043】
第2の左右の底サイドシール部は、例えば、前記左右の側シール部22、21における、第1シート11と第2シート12を接合する部分22A、21Aの下端に連なるように、右左の側シール部22、21のそれぞれから底シート13の下端にかけて斜めに形成された部分を含む。前記右左の側シール部22、21における、第1シート11および第2シート12を接合する部分22A、21Aの内縁22Aa、21Aaと、第2の底シール部24における内縁と底シート13の下端は、蒸気抜きパウチ100の開封前の内方部の正面視の外郭を規定している。
【0044】
上記のように第1および第2の底中間シール部23C、24Cが設けられていない場合も、蒸気抜きパウチは、第1シート11と第2シート12の形状が同じであり、第1シート11と底シート13を接合する底シール部23の形状と第2シート12と底シート13を接合する底シール部24の形状は同じである。また、第1の左の底サイドシール部と第1の右の底サイドシール部の形状は左右対称であり、第2の左の底サイドシール部と第2の右の底サイドシール部の形状も左右対称である。
【0045】
また、左の側シール部21における、折り込まれた底シート13の対向する面同士を接合する部分21Bの内縁21Baの下端から、その左の側シール部21に連接する第1または第2の底サイドシール部の内縁と底シート13の下端とが交わる部分を含めた、その底シート13の下端に対する仮想垂直線までの幅方向の長さをA3とする。
【0046】
また、右の側シール部22における、折り込まれた底シート13の対向する面同士を接合する部分22Bの内縁22Baの下端から、その右の側シール部22に連接する第1または第2の底サイドシール部の内縁と底シート13の下端とが交わる部分を含めた、その底シート13の下端に対する仮想垂直線までの幅方向の長さをA4とする。
【0047】
さらに、第1の左の底サイドシール部と底シート13の下端が交わる部分および第1の右の底サイドシール部と底シート13の下端が交わる部分、または、第2の左の底サイドシール部と底シート13の下端が交わる部分および第2の右の底サイドシール部と底シート13の下端が交わる部分の幅方向の長さをB1とする。
【0048】
また、A3とB1とA4の長さの比は、1:1:1~1:3:1である。A3と1とA4の長さの比を上記のようにすることで、電子レンジなどによる加熱処理時に第1または第2の左右の底シール部の後退がなく、かつ、より大きく底開きすることができる。
【0049】
前記A3の長さと、前記B1の長さと、前記A4の長さと、底シート13の折り込み部50から底シート13の下端までの高さ方向の長さ(C)との関係は、(A1+B+A2)×2≧C×3.14×2であることが好ましい。その理由は、収容部40の底部の最大外周が底シート13の開き以上でないと、第1または第2の左の底サイドシール部と底シート13の下端が交わる部分、または第1または第2の右の底サイドシール部と底シート13の下端が交わる部分が後退するおそれがあるからである。ここで、底シート13の下端とは、底シート13のうちの、高さ方向最も低い部分である。
【0050】
第1シート11、第2シート12、および底シート13はそれぞれ、複数の層が積層された層構造を備えている。上記各シート11~13の層構造は任意に選択できる。上記各シート11~13は全て同じ層構造を備えていても良いし、第1シート11と第2シート12が同じ層構造で、底シート13が第1シート11や第2シート12と異なる層構造を備えていても良いし、上記各シート11~13が全て異なる層構造を備えていても良い。
図1に示される蒸気抜きパウチ100の各シート11~13は全て同じ層構造を備えている。
【0051】
各シート11~13は、例えば、最外層、中間層、シーラント層、第1接着層、および、第2接着層を含む。各シート11~13は、例えば、ドライラミネート法、エクストルーダー法、熱ラミネート法などにより製造することができる。第1接着剤は、最外層と中間層とを接着するように最外層と中間層との間に設けられている。第2接着層は中間層とシーラント層とを接着するように中間層とシーラント層との間に設けられている。
【0052】
最外層は主にガス遮断性、印刷適正、および、耐熱性に優れる。最外層は例えば透明蒸着層である。最外層を構成する材料の一例は無機薄膜が蒸着されたポリエチレンテレフタレート(以下では、「透明蒸着PET」という)である。中間層は主に耐熱性および防湿性に優れる。中間層を構成する材料の一例はナイロンである。より好ましい例では、中間層を構成する材料は樹脂の流れ方向の引き裂き性に優れたナイロン(以下では、「直線カット性NY」という)である。以下では、第1シート11および第2シート12を構成する材料の樹脂の流れ方向をMD(Machine Direction)方向と称し、MD方向と直交する方向をTD(Transverse Direction)方向と称する。第1シート11と第2シート12のMD方向は幅方向に沿う方向である。第1シート11と第2シート12のTD方向は高さ方向に沿う方向である。第1接着層を構成する材料の一例はポリエステル系接着剤である。第2接着層を構成する材料の一例はポリエステル系接着剤である。
【0053】
シーラント層は、耐熱性、ヒートシール性、および、耐衝撃性に優れる。シーラント層を構成する材料の一例はMD方向の引き裂き性に優れた無延伸ポリプロピレン(以下では、「直線カット性CPP」という)である。MD方向の引き裂き性に優れるとは、例えば、JIS規格のK7128-1に規定されるトラウザー引裂法に準拠する引裂き力が1.2N以下の場合をいう。トラウザー引裂法では、TD方向の長さが50mm、MD方向の長さが150mmの長方形の試験片の中央に75mmの切り込みを入れ、23℃の恒温室内において、速度200mm/分でMD方向への引裂き力を測定した。直線カット性CPPは例えば、100重量部のプロピレン・エチレンブロック共重合体に対して、低結晶性エチレン系エラストマーを3~10重量部の割合で含む。低結晶性エチレン系エラストマーは例えば、密度が0.865~0.890g/cm3の範囲に含まれ、かつ、JIS規格のK7122に規定される融解時の吸熱量が5~30J/gの範囲に含まれる。
【0054】
蒸気抜きパウチ100の使用例として、例えば下記が挙げられる。
内容物200である食品が収容された蒸気抜きパウチ100は、内容物200を加熱するために、例えば、電子レンジが使用される。収容部40の圧力の上昇にともない、蒸気抜き部60で開口し、内容物200などから発生する蒸気が蒸気抜き部60から外部に排出されることで収容部40の圧力上昇が抑えられ、蒸気抜きパウチ100の破裂が回避される。加熱処理後、左の側シール部21に形成された開封誘導部70に挟まれた摘まみ部71を持って、開封誘導部70から開封する。上記底シール部23、24の所定寸法により、底開き性が向上するため、第1シート11と第2シート12がより離間した状態でシート11、12を引き裂くことになり、引裂き強度を強める必要がある。しかし、第1シート11および第2シート12に、上記のように、MD方向の引き裂き性に優れた材料によって構成されたシーラント層を含めることで、収容部40が広がった状態においてもなお容易に第1シート11と第2シート12を引き裂くことができる。第1シート11と第2シート12を引き裂くことで、蒸気抜きパウチ100が上下に分離され、蒸気抜きパウチ100の下部分で底シート13を含む部分を器として使用し、内容物200である食品を容易に取り出すことができる。さらに、上記底シール部23、24の所定寸法により、底開き性が向上することで、開封時の開口性も向上し、開封後にそのまま収容された食品を喫食しやすくなる。
【実施例0055】
1.底シール部の形成に関する底開き性などの評価試験
下記の実施例1A~3Aおよび比較例1A~7Aともに、
図1に示される蒸気抜きパウチ100を使用した。蒸気抜きパウチ100には、内容物200としてカレー100gが収容され、電子レンジにより600Wで1分間加熱処理した。また、下記の実施例1A~3Aおよび比較例1A~7Aともに、第1シート11、第2シート12よび底シート13は全て同じ層構造を備え、各シートの層構成は、最外層側から、透明蒸着PET(無機薄膜が蒸着されたポリエチレンテレフタレート)(12μm)/ポリエチレンテレフタレート(12μm)/耐熱無延伸ポリプロピレン(直線カット性CPP)(60μm)の層構造を備える。また、実施例1A~3Aおよび比較例1A~7Aともに、正面視の高さ方向の最大の長さが158mm、正面視の幅方向の最大の長さが150mmの蒸気抜きパウチ100を使用した。
【0056】
<実施例1A>
B、A1、およびA2の長さがすべて等しく44.66mmであり、E1およびE2の長さが等しく8mmであり、Cの長さ-Dの長さが85mmの蒸気抜きパウチ100を使用した。
【0057】
<実施例2A>
Bが67mm、A1およびA2の長さが等しく33.5mmであり、E1およびE2の長さは等しく、また実施例1と同じく8mmであり、Cの長さ-Dの長さも実施例1Aと同じく85mmの蒸気抜きパウチ100を使用した。
【0058】
<実施例3A>
Bが80.4mm、A1およびA2の長さが等しく26.8mmであり、E1およびE2の長さは等しく、また実施例1と同じく8mmであり、Cの長さ-Dの長さも実施例1Aと同じく85mmの蒸気抜きパウチ100を使用した。
【0059】
<比較例1A>
B、A1、およびA2の長さがすべて等しく、また実施例1Aと同じく44.66mmであり、E1の長さは実施例1Aと同じく8mmであり、E2の長さは6mmであり、Cの長さ-Dの長さも実施例1Aと同じく85mmの蒸気抜きパウチ100を使用した。
【0060】
<比較例2A>
B、A1、およびA2の長さは実施例2Aと同じく、Bの長さが67mm、A1およびA2の長さが等しく33.5mmであり、E1の長さは実施例1Aと同じく8mmであり、E2の長さは6mmであり、Cの長さ-Dの長さも実施例1Aと同じく85mmの蒸気抜きパウチ100を使用した。
【0061】
<比較例3A>
B、A1、およびA2の長さは実施例3Aと同じく、Bの長さが80.4mm、A1およびA2の長さが等しく26.8mmであり、E1の長さは実施例1Aと同じく8mmであり、E2の長さは6mmであり、Cの長さ-Dの長さも実施例1Aと同じく85mmの蒸気抜きパウチ100を使用した。
【0062】
<比較例4A>
Bの長さは26.8、A1およびA2の長さは等しく53.6、E1およびE2の長さは等しく、また実施例1Aと同じく8mmであり、Cの長さ-Dの長さも実施例1Aと同じく85mmの蒸気抜きパウチ100を使用した。
【0063】
<比較例5A>
Bの長さは89.33、A1およびA2の長さは等しく22.33、E1およびE2の長さは等しく、また実施例1Aと同じく8mmであり、Cの長さ-Dの長さも実施例1Aと同じく85mmの蒸気抜きパウチ100を使用した。
【0064】
<比較例6A>
Bの長さは134、A1およびA2の長さは等しく0、E1およびE2の長さは等しく、また実施例1Aと同じく8mmであり、Cの長さ-Dの長さも実施例1Aと同じく85mmの蒸気抜きパウチ100を使用した。
【0065】
<比較例7A>
Bの長さは0、A1およびA2の長さは等しく67、E1およびE2の長さは等しく、また実施例1Aと同じく8mmであり、Cの長さ-Dの長さも実施例1Aと同じく85mmの蒸気抜きパウチ100を使用した。
【0066】
<評価>
上記の実施例1A~3Aおよび比較例1A~7Aを用いて、「加熱処理時の第1または第2の左右の底シール部23A、24B、23B、24Aの後退有無」(表1では「左右の底シール部の後退の有無」と記載)、「加熱処理後の底開き性」(表1では「底開き性」と記載)、および「開封後の開口幅」(表1では「開口幅」と記載)を評価した。その結果を表1に示した。表1において、「左右の底シール部の後退有無」において第1または第2の左右の底シール部23A、24B、23B、24Aの後退が発生しないときは「なし」と、第1または第2の左右の底シール部23A、24B、23B、24Aの後退が発生したときは「あり」(僅かに発生した時は「僅かにあり」)と記載した。また、表1において、底開き性が良好であるときは「〇」、底開き性は、喫食可能だが十分ではない程度であるときは「△」、底開き性が不良であるときは「×」と記載した。また、「開封後の開口幅」とは、開封後の開口時の最大開口幅である。
【0067】
表1における「総合評価」では、第1または第2の左右の底シール部23A、24B、23B、24Aの後退が発生せず、かつ、底開き性が良好であるとき「〇」とし、第1または第2の左右の底シール部23A、24B、23B、24Aの後退が発生するか、または、底開き性が不十分(△)や不良(×)であるときは「×」と記載した。
【0068】
【0069】
評価の結果、実施例1A~3Aについては、電子レンジ加熱処理時、第1または第2の左右の底シール部23A、24B、23B、24Aの後退が発生せず、また、底開き性は良好であった。また、実施例1Aおよび3Aの開口幅はそれぞれ90mmであり、実施例2Aの開口幅は100mmであった。一方、比較例1A~3Aについては、電子レンジ加熱処理時、第1または第2の左右の底シール部23A、24B、23B、24Aの後退が発生しなかったが、底開き性は、喫食可能だが十分ではない程度であった。比較例4については、電子レンジ加熱処理時、第1または第2の左右の底シール部23A、24B、23B、24Aの後退が僅かに発生し、底開き性は良好であった。比較例5については、電子レンジ加熱処理時、第1または第2の左右の底シール部23A、24B、23B、24Aの後退が発生し、底開き性は良好であった。比較例6Aについては、電子レンジ加熱処理時、第1または第2の左右の底シール部23A、24B、23B、24Aの後退が発生し、底開き性は、喫食可能だが十分ではない程度であった。比較例7Aについては、電子レンジ加熱処理時、第1または第2の左右の底シール部23A、24B、23B、24Aの後退が発生し、底開き性は不良であった。比較例1A~7Aの開口幅は、表1に示されるとおりである。
【0070】
上記評価結果より、総合評価は、実施例1A~3Aのすべてついて「〇」であり、比較例1A~7Aのすべてについて「×」であった。
【0071】
底シール部の形成に関して、上述のとおり、実施例1A~3Aおよび比較例1A~3Aについては、A1の長さとBの長さとA2の長さの比は、1:1:1~1:3:1の範囲に含まれる。一方、比較例4A~7Aについては、A1の長さとBの長さとA2の長さの比は、1:1:1~1:3:1の範囲に含まれない。また、実施例1A~3Aおよび比較例4A~7Aについては、E1とE2の長さが等しいが、一方、比較例1A~3Aについては、E1とE2の長さが異なる。
【0072】
よって、A1の長さとBの長さとA2の長さの比が、1:1:1~1:3:1の範囲に含まれ、かつ、E1とE2の長さが等しい場合、総合評価は「〇」、つまり、電子レンジ加熱時に第1または第2の左右の底シール部23A、24B、23B、24Aの後退が発生せず、かつより大きく底開きすることが分かる。なお、開口幅と底開き性は両立していることが必要である。
【0073】
2.開封誘導部の位置に関するカット性などの評価試験
下記の実施例1B~3Bおよび比較例1B、2Bともに、
図1に示される蒸気抜きパウチ100の開封誘導部70から始まるミシン目などの開封誘導線が設けられている蒸気抜きパウチを使用した。この開封誘導線は、第1の側シール部21Aに形成された開封誘導部70から始まり、第2の側シール部22に達するまで水平に形成されている。
【0074】
内容物200として水が100ml収容された蒸気抜きパウチを、電子レンジにより600Wで1分40秒加熱処理した。また、下記の実施例1B~3Bおよび比較例1B、2Bともに、第1シート11、第2シート12および底シート13は全て同じ層構造を備え、各シート11~13の層構成は、最外層側から、ガスバリア性アルミナ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム(凸版印刷株式会社製の「GL-ARH」を使用)(12μm)/直線カットNY(15μm)/無延伸ポリプロピレン(直線カット性CPP)(東レフィルム加工株式会社製の(「ZK500R」を使用)(60μm)の層構造を備える。また、実施例1B~3Bおよび比較例1B、2Bともに、正面視の高さ方向の最大の長さが158mm、正面視の幅方向の最大の長さが140mm、右の側シール部22の一部を構成する蒸気抜き部60は、右の側シール部22の外縁の上端から高さ方向の長さが58mmの位置に形成され、さらに、底シート13の折り込み部50から底シートの下端までの高さ方向の長さ(C)が45mmである蒸気抜きパウチを使用した。なお、実施例1B~3Bおよび比較例1B、2Bともに、左の側シール部21に開封誘導部70が形成されているが、その開封誘導部70の位置がそれぞれ異なる。表2において、「開封誘導部70の位置」は、開封誘導部70から底シート13の下端までの高さ方向の長さ(F)を示す。
【0075】
<実施例1B>
開封誘導部70の位置は、90mmである蒸気抜きパウチ100を使用した。
【0076】
<実施例2B>
開封誘導部70の位置は、80mmである蒸気抜きパウチ100を使用した。
【0077】
<実施例3B>
開封誘導部70の位置は、72mmである蒸気抜きパウチ100を使用した。
【0078】
<比較例1B>
開封誘導部70の位置は、70mmである蒸気抜きパウチ100を使用した。
【0079】
<比較例2B>
開封誘導部70の位置は、60mmである蒸気抜きパウチ100を使用した。
【0080】
<評価>
上記の実施例1B~3Bおよび比較例1B、2Bを用いて、「加熱処理後の開封直後の天面視の開口幅および加熱処理後に開封してから10分経過後の天面視の開口幅」、「加熱処理後の開封時におけるカット性」(表2では「カット性」と記載)、「内容物200取り出し時の火傷のリスク」(表2では「火傷のリスク」と記載)、および「開封後に蒸気抜きパウチ100を器として使用した場合の、その器の出し入れの容易性」(表2では「器の出し入れ」と記載)を評価した。
【0081】
その結果を表2に示した。上記「カット性」とは、第1シート11と第2シート12を容易に引き裂かれた否かを示す。表2において、「カット性」については、第1シート11と第2シート12を容易に引き裂くことができたときを「易」とし、第1シート11と第2シート12を容易ではないが引き裂くことができたときを「可」とし、第1シート11と第2シート12を引き裂くことができたが困難であったときを「難」と記載した。また、表2の「火傷のリスク」については、加熱処理後の蒸気抜きパウチ100からの内容物200取り出し時に火傷のリスクが低かったときを「低」とし、加熱処理後の蒸気抜きパウチ100からの内容物200取り出し時に火傷のリスクがややあったときを「ややあり」とし、加熱処理後の蒸気抜きパウチ100からの内容物200取り出し時に火傷のリスクが高かったときを「高」として記載した。また、表2の「器の出し入れ」については、加熱処理後の開封後に蒸気抜きパウチ100を器として使用した場合の、その器の出し入れが容易であったときを「易」とし、加熱処理後の開封後に蒸気抜きパウチ100を器として使用した場合の、その器の出し入れが容易ではないが可能であったときを「可」として記載した。
【0082】
また、表2における「総合評価」では、カット性が易しく、火傷のリスクが低く、かつ、器の出し入れが可能または容易のため、喫食がしやすいときを「〇」とし、喫食は不便だが可能であるときを「△」とし、喫食不可能であるときを「×」として記載した。
【0083】
【0084】
評価の結果、実施例2Bについては、カット性が易しく、火傷のリスクが低く、かつ、器の出し入れが可能から容易の範囲であった。一方、実施例1Bは、カット性が易しく、火傷のリスクは低く、器の出し入れは可能の範囲であった。実施例3Bは、カット性が可能から易しい範囲であり、火傷のリスクはややあり、器の出し入れは容易であった。比較例1Bと2Bはともに、カット性は難しく、火傷のリスクは高く、器の出し入れは容易であった。
【0085】
上記評価結果より、総合評価は、実施例2Bについて「〇」であり、実施例1Bと3Bについて「△」であり、比較例1Bと2Bについて「×」であった。
【0086】
上記および表2から分かる通り、蒸気抜き部60と底シート13の折り込み部50との間に設けられる開封誘導部70の位置が、蒸気抜きパウチ100の幅方向の長さに対して側シール部21の上端に近くなればなるほど、第1シート11および第2シート12のカット性の難易度が下がり、かつ、内容物200の熱や蒸気が内容物100取り出し時に手にあたる可能性が低くなるため、火傷のリスクが低くなる。しかし、開封誘導部70の位置が蒸気抜きパウチ100の幅方向の長さに対して高すぎると蒸気抜きパウチ100がたわみ易く、器としては適さない。一方、蒸気抜き部60と底シート13の折り込み部50との間に設けられる開封誘導部70の位置が、蒸気抜きパウチ100の幅方向の長さに対して低い、つまり、側シール部21の下端に近くなればなるほど、第1シート11および第2シート12のカット性の難易度が上がり、かつ、内容物200の熱や蒸気が内容物100取り出し時に手にあたる可能性が高くなるため、火傷のリスクが高くなる。また、開封誘導部70の位置が蒸気抜きパウチ100の幅方向の長さに対して低いほど蒸気抜きパウチ100がたわみ難く安定し、器として適する。よって、カット性と器としての使用感はトレードオフの関係にあることを確認した。
【0087】
以上の通り、本発明の蒸気抜きパウチにより、左右の底サイドシール部の幅方向の長さ(A1とA2)を等しくし、かつ、底サイドシール部の幅方向の長さ(A1)と、底中間シール部の内縁の幅方向の長さ(B)と、底サイドシール部の幅方向の長さ(A2)の比を、1:1:1~1:3:1とすることで、底開き性が向上する。
また、閉鎖された蒸気抜きパウチが電子レンジなどで加熱処理された場合、内容物から発生した蒸気によって内圧が上がり、収容部が大きく膨らむが、蒸気抜き部からの蒸気排出により、蒸気抜きパウチの破裂を回避することができる。
さらに、底開き性が向上することで、加熱処理後に開封した際の開口性も向上するため、内容物を容易に取り出すことができ、食器に移し替えずその蒸気抜きパウチを器として、その蒸気抜きパウチからそのまま内容物である食品を喫食しやすくなる。