(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107387
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】錠剤識別支援装置
(51)【国際特許分類】
A61J 3/00 20060101AFI20240801BHJP
【FI】
A61J3/00 310K
A61J3/00 310Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024095357
(22)【出願日】2024-06-12
(62)【分割の表示】P 2020089823の分割
【原出願日】2020-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】592246705
【氏名又は名称】株式会社湯山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】藤瀬 研介
(72)【発明者】
【氏名】吉川 泰行
(57)【要約】
【課題】薬剤師等が行う錠剤を識別する業務を容易化することが可能な錠剤識別支援装置を提供する。
【解決手段】錠剤を含む対象物を載置する載置台部11と、光源部材60を有する錠剤識別支援装置1を形成する。錠剤識別支援装置1は、光源部材60で発生した光を直接、又は、反射部材50と透光性部材12の少なくとも一方を有する調光手段を介して間接的に載置台部11に向かって照射するものとする。さらに、錠剤識別支援装置1は、光源部材60又は調光手段が載置台部11の一部に対して斜め上方となる位置に設けられたものとする。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠剤の種類の識別を支援する錠剤識別支援装置であって、
光源部材と、少なくとも一つの反射部材と、透光性部材と、錠剤を含む対象物を載置する載置台部を有し、
光源部材の上方であって透光性部材よりも上方に、少なくとも一つの反射部材があり、
光源部材で発生させた光であって、前記透光性部材を透過させた光を、反射部材を介して間接的に前記載置台部に向かって照射することが可能である錠剤識別支援装置。
【請求項2】
反射部材の少なくとも一つは、反射面が鉛直下側を向いている平面である請求項1に記載の錠剤識別支援装置。
【請求項3】
反射部材の少なくとも一つは、反射面が斜め下方を向いていて、上方から前記載置台部の中心部分を結ぶ線に対して斜め方向に光を照射する様に設けられている請求項1又は2に記載の錠剤識別支援装置。
【請求項4】
錠剤に斜め上方から光を照射することが可能である請求項1乃至3のいずれかに記載の錠剤識別支援装置。
【請求項5】
対向する側方立壁部を有し、当該側方立壁部の間に載置台部があり、
当該側方立壁部に反射部材の少なくとも一つがあり、前記載置台部を挟んだ両側から光が照射される、請求項1乃至4のいずれかに記載の錠剤識別支援装置。
【請求項6】
反射部材は白色である、請求項1乃至5のいずれかに記載の錠剤識別支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤を識別する際に使用する錠剤識別支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、薬局や病院内の薬剤部(薬剤課)では、処方に関する情報に基づき、調剤された薬剤の鑑査(鑑査業務)が行われている。このような鑑査では、調剤した薬剤の種類、量(数)等が処方箋通りか否かを判別する。
【0003】
このような薬剤の鑑査を支援する鑑査支援システムが特許文献1に開示されている。特許文献1に開示された鑑査支援システムは、撮影機能を有する本体装置と、本体装置を設置する設置台を有しており、本体装置の下方側に配した薬剤、又は、薬剤を内包した薬剤包装を撮影する。そして、撮影によって取得した撮像を解析し、処方された薬剤であるか否かを確認する。
【0004】
しかしながら、薬剤の鑑査は、このような鑑査支援システムを用いず、人が手で行う場合がある。錠剤の鑑査を例に挙げて具体的に説明すると、シャーレ等に載置した錠剤や、錠剤を内包した薬剤包装を机の上に置き、錠剤に付された刻印を人が目視で確認する。そして、刻印の内容から錠剤の種類を特定(識別)し、錠剤の種類や数が処方箋通りか否かを判別する。
【0005】
また、薬局や病院内の薬剤部(薬剤課)等では、このような鑑査の他、患者が持ち込んだ薬剤の鑑別(鑑別業務)が行われることがある。
【0006】
具体的に説明すると、例えば、これから入院する(薬剤が処方される)患者が現在服用している薬剤を把握しておきたい場合等において、患者にどのような薬剤をどれくらい服用しているのか尋ねても、明確な回答が得られない場合がある。すなわち、自分が服用している薬剤の種類を患者自身が把握していない場合がある。そのような場合、患者に薬剤を持ち込んでもらい、その薬剤の種類を薬剤師等が特定する。この場合もまた、上記したように、錠剤に付された刻印等を人が目視で確認し、薬剤の種類を特定する。
つまり、上記した鑑査、鑑別のいずれにおいても、人が目視で薬剤の種類を特定(識別)する作業が行われることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記した鑑査や鑑別等で、錠剤の刻印を目視で確認する作業は、非常に困難な作業である。すなわち、錠剤は、それ自体が小さく、付された刻印が小さいために読み難いという問題がある。加えて、白色の錠剤に凹溝状の刻印が彫られている場合のように、錠剤自体が明るい場所で見え難い色であり、且つ、刻印部分と他の部分が同じ色となる場合等、錠剤の種類によっては、非常に刻印の読み難いものがある。
【0009】
以上のことから、大掛かりなシステムを導入することなく、安価に鑑査、鑑別等の業務を容易化したいという欲求があった。
【0010】
そこで本発明は、薬剤師等が行う錠剤を識別する業務を容易化することが可能な錠剤識別支援装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明の一つの様相は、錠剤の種類の識別を支援する錠剤識別支援装置であって、錠剤を含む対象物を載置する載置台部を有し、光を、反射部材と透光性部材を介して間接的に前記載置台部に向かって照射するものであり、前記反射部材が、上方から前記載置台部の中心部分を結ぶ線に対して斜め方向に光を照射する様に設けられている、錠剤識別支援装置である。
好ましくは、前記載置台部は、対象物を載置する載置面を有し、前記載置面の外側側方となる位置に光源部材が設けられている。
好ましくは、前記載置台部は、対象物を載置する載置面を有し、前記反射部材は、前記載置面側を向く面であって前記載置面に対して斜め方向となる位置にある光源面部を有している。
好ましくは、同一平面における前記光源面部の高さ方向の中心部分と前記載置面の幅方向の中心部分と、を結ぶ線分と、前記載置面のなす角が3度以上35度未満である。
好ましくは、前記光源面部の高さ方向の中心部分は、前記載置面から上方に第一の距離だけ離れた位置にあり、前記第一の距離は、1cm以上3cm以下となる距離である。
好ましくは、前記透光性部材を透過させた光を前記反射部材で反射させ、前記載置台部に向かって照射する。
好ましくは、前記光源部材の側方と、下方と、上方のそれぞれに前記反射部材が設けられており、前記光源部材の上方に前記透光性部材が設けられている。
好ましくは、前記載置台部は、前記載置台部に照射される光の反射を抑制する黒色の反射抑制部材によって構成され、前記載置台部において対象物を載置する載置面が、前記反射抑制部材の一部によって構成される。
好ましくは、前記載置台部は、前記載置台部に照射される光の反射を抑制する微細な凹凸を有する反射抑制部材によって構成され、前記載置台部において対象物を載置する載置面が、前記反射抑制部材の一部によって構成される。
好ましくは、前記光源部材は、前記載置台部における前記対象物を載置する面よりも下方に位置し、前記反射部材で反射させた光を前記載置台部に向かって照射する。
好ましくは、前記載置台部を挟んだ両側から光が照射される。
好ましくは、上から見た平面視において左右方向に離れた位置のそれぞれに前記光源部材の一部と他部、又は、2つの前記光源部材の一方と他方とが配され、前記光源部材の一部と他部、又は、2つの前記光源部材の一方と他方は、いずれも前記左右方向とは交わる方向に延びる部分を有する。
好ましくは、前記光源部材の上方であり、且つ、前記載置台部の側方であって前記載置台部よりも上方に、前記載置台部側へ向かって延びる庇部が形成されている。
好ましくは、上方に向かって伸びる立壁部を有し、前記庇部は、前記立壁部の上部から伸びており、前記透光性部材は、前記光源部材の上方であり、且つ、前記立壁部よりも前記載置台部側の位置であり、且つ、前記庇部から下方に離れた位置に配されており、前記立壁部のうちで前記載置台部側の部分と、前記庇部の下側の部分に前記反射部材が取り付けられている。
好ましくは、透光性部材から載置台部側へ光が照射される。
本発明に関連する様相は、錠剤の種類の識別を支援する錠剤識別支援装置であって、錠剤を含む対象物を載置する載置台部と、光源部材を有し、前記光源部材で発生した光を直接、又は、反射部材と透光性部材の少なくとも一方を有する調光手段を介して間接的に前記載置台部に向かって照射するものであり、前記光源部材又は前記調光手段が、前記載置台部の一部に対して斜め上方となる位置に設けられている、錠剤識別支援装置である。
【0012】
本様相の錠剤識別支援装置によると、鑑査、鑑別等の業務において錠剤が見やすく、特に凹溝状の刻印が形成された錠剤の鑑査、鑑別において、刻印の影を形成することで、刻印の内容を容易に把握できる。このことから、錠剤を識別する業務を容易化できる。
【0013】
上記した様相は、前記載置台部は、対象物を載置する載置面を有し、前記載置台部の一部に対して斜め上方となる位置に設けられた前記光源部材、又は、前記反射部材は、前記載置台部側を向く面である光源面部を有し、前記載置面と平行な方向からみた平面視において、前記光源面部の中心部分と前記載置面の中心部分を結ぶ線分と、前記載置面のなす角が3度以上35度未満である、ことが好ましい。
【0014】
上記した様相は、前記載置台部は、対象物を載置する載置面を有し、前記載置台部の一部に対して斜め上方となる位置に設けられた前記光源部材、又は、前記反射部材は、前記載置台部側を向く面である光源面部を有し、前記光源面部の中心部分は、前記載置面から上方に第一の距離だけ離れた位置にあり、前記第一の距離は、1cm以上3cm以下となる距離である、ことが好ましい。
【0015】
これらの構成によると、錠剤に付された刻印の影がはっきりと形成されるので、錠剤の識別が容易となる。
【0016】
上記した様相は、前記透光性部材を透過させた光を前記反射部材で反射させ、前記載置台部に向かって照射する、ことが好ましい。
【0017】
かかる様相によると、錠剤を視認し易く、且つ、刻印の影を適切な濃さにすることが可能となる。
【0018】
上記した好ましい様相は、前記光源部材の側方と、下方と、上方のそれぞれに前記反射部材が設けられており、前記光源部材の上方に前記透光性部材が設けられている、ことがより好ましい。
【0019】
上記した様相は、前記載置台部は、前記載置台部に照射される光の反射を抑制する反射抑制部材によって構成され、前記載置台部において対象物を載置する載置面が、前記反射抑制部材の一部によって構成される、ことが好ましい。
【0020】
かかる様相によると、錠剤を載置する部分からの光の反射による眩しさを抑制可能であり、識別の対象となる錠剤やその錠剤に付された刻印の影を視認し易くすることが可能となる。
【0021】
上記した好ましい様相は、前記反射抑制部材は、黒色の部材であり、前記対象物を載置する面が微細な凹凸を有する面である、ことがより好ましい。
【0022】
上記した様相は、前記光源部材は、前記載置台部における前記対象物を載置する面よりも下方に位置し、前記反射部材で反射させた光を前記載置台部の上の錠剤に向かって照射する、ことが好ましい。
【0023】
かかる様相によると、載置台部よりも上側の部分において、部材を必要以上に多くすることなく錠剤識別支援装置を形成することが可能となる。また、錠剤識別支援装置を小型化しても、光源部材から反射部材までの距離を十分に確保できるので、光を強すぎない適切なものに調光できる。
また、このように間接照明とすることで、刻印が形成された錠剤の識別を行うとき、刻印の凹凸を適切に見やすくすることが可能となる。具体的に説明すると、錠剤には、刻印が形成された部分と、刻印以外のフラットな部分があり、フラットな部分において光が反射し易い。そして、フラットな部分で光が反射してしまうと、刻印部分が見難くなってしまう。これに対し、かかる様相のように間接照明とすることで、フラットな部分での反射を抑制(又はなくす)ことが可能となり、刻印部分を見やすくすることができる。
【0024】
上記した様相は、前記載置台部を挟んだ両側から光が照射される、ことが好ましい。
【0025】
かかる構成によると、前記載置台部に載置した錠剤に両側から光が照射される。このことにより、刻印の影は残しつつ、不必要な影(錠剤を包装する包装材の影や、錠剤全体の影)が打ち消される(又は目立たなくなる)ので、好ましい。
【0026】
上記した好ましい様相は、平面視において所定方向に離れた位置のそれぞれに前記光源部材の一部と他部、又は、2つの前記光源部材の一方と他方とが配され、前記光源部材の一部と他部、又は、2つの前記光源部材の一方と他方は、いずれも前記所定方向とは交わる方向に延びる部分を有する、ことがより好ましい。
【0027】
上記した様相は、前記光源部材の上方であり、且つ、前記載置台部の側方であって前記載置台部よりも上方に、前記載置台部側へ向かって延びる庇部が形成されている、ことが好ましい。
【0028】
かかる構成によると、載置台部の側方部分を明暗差が和いで自然に光った状態とすることが可能となり、間接光により、強すぎない適切な光で載置台部の上の錠剤を照らすことが可能となるので、錠剤や、その錠剤に付された刻印の影を視認し易くすることができる。
【0029】
上記した好ましい様相は、上方に向かって伸びる立壁部を有し、前記庇部は、前記立壁部の上部から伸びており、前記透光性部材は、前記光源部材の上方であり、且つ、前記立壁部よりも前記載置台部側の位置であり、且つ、前記庇部から下方に離れた位置に配されており、前記立壁部のうちで前記載置台部側の部分と、前記庇部の下側の部分に前記反射部材が取り付けられている、ことがより好ましい。
【発明の効果】
【0030】
本発明によると、薬剤師等が行う錠剤を識別する業務を容易化することが可能な錠剤識別支援装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の実施形態に係る識別支援具を示す斜視図である。
【
図2】
図1の識別支援具を下方からみた様子を示す斜視図である。
【
図4】載置台形成部材を省略して
図3の本体部材を示す図であって、(a)は、上透光性部材を透過させて上方からみた状態を示す斜視図であり、(b)は、下方からみた斜視図である。
【
図5】(a)は、
図1の識別支援具において、光源部材のケーブル部を配線保持部材に保持させた様子を天地逆にして示す説明図であり、(b)は、(a)の光源部材の一部を模式的に示す説明図である。
【
図6】
図3の外郭部材を示す図であって、(a)は斜視図であり、(b)は正面図である。
【
図7】
図1の識別支援具を示すA-A断面図である。
【
図8】
図1の識別支援具を示すB-B断面図である。
【
図9】(a)は、
図1の識別支援具を使用して包装後鑑査を行う様子を示す説明図であり、(b)は、(a)の状態での光の照射方向を模式的に示す説明図である。
【
図10】(a)は、
図9(a)の薬剤包装帯を表側からみた様子を示す説明図であり、(b)は、
図9(a)の薬剤包装帯を裏側からみた様子を示す説明図であり、(c)は、薬剤包装に内包された錠剤を示す斜視図である。
【
図11】反射部材と載置台形成部材の位置関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態に係る識別支援具1(錠剤識別支援装置)について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において、特に断りがない限り、上下の位置関係は、通常の設置状態(
図1)を基準に説明する。また、識別支援具1は、所定方向に長さを有しており、所定方向(長手方向)の一方端側(
図1の左方手前側)を前側とし、他方端側(
図1の右方奥側)を後側として説明する。また、平面視においてこの所定方向と交わる方向(直交する方向であり短手方向)を左右方向として説明する。
【0033】
本実施形態に係る識別支援具1は、
図1、
図2で示されるように、本体部材2と、外郭部材3と、脚部4と、電源部材5(
図2参照)を有しており、これらが一体に組み立てられて形成されている。識別支援具1は、人が容易に持ち運び可能なように小型且つ一体的に形成されており、特に限定されるものではないが、平面視における長さや幅(最長となる方向の長さ)が40cm以下となるように形成している。
【0034】
具体的には、
図3で示されるように、本体部材2を外郭部材3の下板部35(詳しくは後述する)の上に配した状態とする。そして、本体部材2及び外郭部材3に対し、複数(4つ)の脚部4のそれぞれを一時締結要素を介して取り付ける。ここで、「一時締結要素」とは、締結要素の一種であり、締結及びその解除が可能な締結要素であって、例えば、ねじ、ボルト等である。
【0035】
本実施形態では、一時締結要素としてねじを採用しており、脚部4は、略円錐台状となる合成樹脂製(ゴム製)の部材としている。そして、脚部4の内部にねじの頭部を位置させ、脚部4の上面から上方にねじの軸部を突出させた状態とし、本体部材2、外郭部材3、脚部4を一体に締結する。すなわち、外郭部材3の下板部35に設けられたねじ孔35aと、本体部材2の横板部28(詳しくは後述する)に設けられたねじ孔28aとを重ね、これらのねじ孔28a,35aにねじの軸部を挿通した状態とする。このとき、これらのねじ孔28a,35aとねじの軸部を係合させる。なお、ねじは、脚部4と一体に形成してもよく、脚部4とは別体としてもよい。
【0036】
また、
図2、
図3で示されるように、本体部材2の下方側に電源部材5が取り付けられている。電源部材5は、後述する光源部材60(
図5参照)に電力を供給する動作電源として機能する。本実施形態では、電源部材5にUSBバッテリーを採用している。
すなわち、電源部材5は、外部の部材を直接又はケーブルを介して接続可能であり、接続した部材に電力を供給可能な部材である。本実施形態の電源部材5は、外部の部材又はケーブルを接続する接続口として、USBポートを有する。また、この電源部材5は、図示しない操作スイッチ(操作部)を有し、この操作スイッチを操作することで、接続した外部部材に電力を供給する状態と、供給しない状態の切り替えが可能となる。このことから、後述する光源部材60の発光状態と、非発光状態を切り替え可能となっている。
【0037】
本実施形態では、電源部材5を本体部材2に取り付けるための取付手段として、面ファスナーを採用している。すなわち、電源部材5と本体部材2のそれぞれに対となる面ファスナーを取り付け(本体部材2側の面ファスナーは図示しない)、これらの面ファスナーを介して電源部材5を本体部材2に取り付けている。このことから、電源部材5は、本体部材2に対して着脱自在であり、取り付け位置を水平方向に調整可能となる。すなわち、対となる面ファスナーの接合面同士をずらして取り付ける等により、取り付け位置の調整が可能となる。つまり、電源部材5は、取り付けと取り外しが可能であり、取り付け位置の調整が可能な取付手段を介して本体部材2に取り付けられている。また、このような取付手段として、磁石等を採用することも考えられる。
【0038】
本体部材2は、
図3等で示されるように、土台形成部材10と、載置台形成部材11(載置台部、反射抑制部材)と、透光性部材12(調光手段)を備えている。すなわち、土台形成部材10の上に載置台形成部材11と、2つの透光性部材12を取り付けて形成されている。
【0039】
土台形成部材10は、金属製の部材であり、
図4で示されるように、平板状の天板部20と、2つの添板部21と、2つの固定片部22を備えている。なお、天板部20の下面は、上記した片側の面ファスナー(電源部材5の取り付けのための面ファスナーであり、図示しない)が取り付けられる部分でもある。
【0040】
添板部21は、天板部20から下方に垂下される立板状の部分であり、左右方向に厚さを有し、前後方向に延びている。この添板部21は、左右方向に離れた位置に一つずつ設けられている。添板部21は、天板部20の左右方向における端部を折曲させて形成される部分であり、詳細には、天板部20の前端よりもやや後方となる部分から、後端よりもやや前方となる部分までの間を下方に折曲させている。したがって、添板部21は、天板部20の前後方向における中央側に位置しており、前後方向の長さが天板部20の前後方向の長さよりも短い。
【0041】
このため、天板部20には、添板部21の左右方向の外側に隣接する部分に、切欠部26が形成される。この切欠部26は、天板部20よりも上方の空間と、天板部20よりも下方の空間を連通する部分であり、平面視形状が略長方形状であって、左右方向の端部から中央側に向かって延びる切り欠き部分である。
【0042】
固定片部22は、天板部20から下方に延びる立板状の側壁形成部27と、側壁形成部27の下端から突出する水平板状の横板部28が一体となって形成された部分であり、左右方向に長さを有する。側壁形成部27と横板部28は、略L字状に連続し、側壁形成部27は前後方向に、横板部28は上下方向にそれぞれ厚さを有する。
なお、固定片部22は、前後方向で離れた位置にそれぞれ形成され、それぞれの横板部28は、互いに近づく方向に(前後方向の中心側に向かって)突出している。横板部28は、本体部材2を外郭部材3の下板部35の上に載置するとき(
図1、
図3等参照)、下板部35の上面と接触する部分である。また、横板部28には、上記したねじ孔28aが設けられている。つまり、固定片部22は、本体部材2を設置する際に脚部分となる部分であり、ねじを挿通する固定片となる部分でもある。
【0043】
本実施形態では、
図4で示されるように、天板部20の下面であり、側壁形成部27と隣接する位置に配線保持部材30が取り付けられている。
配線保持部材30は、
図5で示されるように、平板状の取付板部30aと、取付板部30aの下面から下方(
図5では上方)に向かって突出する突起部30bを有している。また、配線保持部材30は、結束バンド等の係止具(拘束部材)と共に使用される部材であり、係止具を挿通可能な孔部分31を有する。このことから、配線保持部材30にケーブル等を近接させ、配線保持部材30の一部とケーブル等に係止具を巻き付けることで、ケーブル等を保持することが可能となる。
【0044】
載置台形成部材11は、
図1、
図3で示されるように、上下方向に厚さを有する平板状の部材であり、その一主面となる上面が、識別対象物である錠剤(定形剤)が直接又は間接的に載置される載置面11aとなる。
なお、ここでいう「間接的に載置する」とは、包装材に包装された状態で包装材ごと載置する、又は、シャーレ等の容器、紙等の下敷きの上に載置された状態で容器や下敷きごと載置することを含む。すなわち、錠剤と載置面11aの間に何等かの物が介在した状態で、錠剤が載置面11aの上に載置されている状態とする。
【0045】
ここで、載置台形成部材11の表面は、載置台形成部材11へ向かって照射される光(詳しくは後述する)を吸収する色とすることが好ましい。すなわち、照射される光の色の補色となる色、或いは、黒色であることが好ましい。また、特に限定されるものではないが載置台形成部材11は、緑、深緑、或いは、黒色であることが好ましい。すなわち、載置台形成部材11の表面の色は、有彩色であって12色相環において緑から緑みの青までの範囲の色であり、且つ、マンセル明度が3以下となる色、或いは、無彩色であってマンセル明度が3以下となる色であることが好ましい。
本実施形態では、載置台形成部材11の表面(載置面11a)を黒色としている。また、載置面11aは、照射される光を吸収する色とする構成に替えて、或いは、それに加えて、反射防止塗料が塗布されたものとしてもよい。
【0046】
また、本実施形態では、載置台形成部材11の表面(載置面11a)に微細な凹凸を形成している(図示しない)。ここでいう「微細な凹凸」とは、凸部の最も高い点と凹部の最も低い点との高低差が1mm以下となる凹凸である。
【0047】
透光性部材12は、
図4で示されるように、透光性を有する部材であり、細長く延びた略直方体状の部材である。本実施形態の透光性部材12は、透光性樹脂によって形成される部材であり、特に限定されるものではないが、アクリルブロックを採用している。この透光性部材12は、長手方向が前後方向となる姿勢で土台形成部材10に取り付けられている。また、上下方向に5mm以上15mm以下となる厚さを有し、載置台形成部材11よりも厚く形成している。さらに、この透光性部材12は、左右方向に5mm以上15mm以下となる幅を有する。本実施形態では、上下方向の長さ(厚さ)が、左右方向の長さ(幅)よりも長い。
【0048】
透光性部材12は、
図4(a)で示されるように、長手方向の一方端側の部分と、他方端側の部分が天板部20に載置され、中央側の部分が切欠部26の上方に位置している。つまり、透光性部材12の長手方向(前後方向)の両端側に位置する部分が、天板部20のうち、前後方向で切欠部26を挟んだ両側に位置する部分に載置される。
また、透光性部材12の長手方向における中央側の部分は、一部が天板部20の上に載置され、他の部分が切欠部26と重なっている。本実施形態では、切欠部26の全域が透光性部材12の一部と重なり、透光性部材12によって上方から覆われている。
【0049】
外郭部材3は、
図6で示されるように、下板部35と、2つの起立壁部36(調光手段)を有する金属製の部材である。
下板部35は、平面視形状が四角環状(略ロ字状)となる平板状の部材である。すなわち、下板部35は、中央部分に下板側貫通孔部40を有している。そして、この下板側貫通孔部40は、開口形状が略長方形状となる貫通孔となっている。下板部35には、前後左右に離れたそれぞれの位置に、上記したねじ孔35aが設けられている。
【0050】
起立壁部36は、
図6(b)で示されるように、下板部35の左右方向における端部を上側に折曲させて形成される部分であり、上方に延びる側方立壁部45(立壁部)と、側方立壁部45の上端から左右方向の中央側に延びる庇形成部46(庇部)を有する。
【0051】
側方立壁部45は、立板状の部分であり、左右方向に厚さを有し、前後方向に延びる。
【0052】
庇形成部46は、具体的には、側方立壁部45から斜め上方に延びる傾斜板部46aと、傾斜板部46aの上端(延び方向の端部)からさらに水平方向に延びる上側横板部46bを有する。
ここで、起立壁部36は、左右方向で離れた位置にそれぞれ形成されている。一方の起立壁部36では、傾斜板部46aは、右斜め上側(左右方向の一方側であって上側)に向かって延びており、上側横板部46bは、右方(左右方向の一方側)に向かって延びている。反対に、他方の起立壁部36では、傾斜板部46aは、左斜め上側(左右方向の他方側であって上側)に向かって延びており、上側横板部46bは、左方(左右方向の他方側)に向かって延びている。つまり、2つの上側横板部46bは、互いに近づく方向に延設されている。
【0053】
ここで、起立壁部36の内側部分と下板部35の上面の一部には、反射部材50(調光手段)が取り付けられている。具体的には、上方から順に、上側横板部46bの下面に第一反射部材50a、傾斜板部46aの内側面に第二反射部材50b、側方立壁部45の内側面に第三反射部材50c、下板部35の上面に第四反射部材50dが取り付けられている。
つまり、左右方向で離れた位置にある2つの起立壁部36のそれぞれの内側部分に、反射部材50が取り付けられている。また、下板部35の上面には、左右方向で離れた2箇所にそれぞれ第四反射部材50dが取り付けられている。具体的には、起立壁部36と隣接する部分に、第四反射部材50dが取り付けられる。つまり、左右方向における端部側部分であり、左右方向における端部からやや中央側に離れた位置までの部分である。また、この部分は、庇形成部46(本実施形態では、庇形成部46の一部である傾斜板部46a)の下方側となる部分である。
【0054】
反射部材50は、いずれも薄い板状(シート状又はフィルム状)の部材であり、いずれも前後方向に長い部材となっている。それぞれの反射部材50は、一方の主面が外郭部材3側を向いた取り付け面であり、反対側の主面が光を反射する反射面(光源面部)となる。すなわち、反射部材50は、取り付け面に両面テープを貼り付ける等の適宜な接着手段を介し、外郭部材3に取り付けられる。
【0055】
特に限定されるものではないが、本実施形態では、反射部材50に白色樹脂シートを採用しており、反射面を高反射率の表面としている。なお、反射部材50は、多層膜構造の反射シートを採用してもよく、樹脂シートの表面に銀、アルミ等の金属、又は、金属酸化物を蒸着して形成される反射シートを採用してもよい。
【0056】
以上のことから、本実施形態の識別支援具1は、
図7等で示されるように、脚部4の上側に、土台部分52と、照明台形成部53を有する。具体的には、下側から土台部分52、照明台形成部53の順に位置しており、天板部20の上面よりも上方の部分が照明台形成部53となる。
【0057】
土台部分52は、
図1、
図2で示されるように、側壁形成部27と、側方立壁部45の一部分によって形成される4つの側壁部分によって四方を囲まれている。また、土台部分52の内部空間は、
図2で示されるように、下板側貫通孔部40を介して外部と連通している。下板側貫通孔部40は、電源部材5を取り付けるとき、取付口となる部分である。本実施形態では、
図2、
図7で示されるように、電源部材5の上方側の部分が土台部分52の内部空間に配され、下方側の部分が土台部分52よりも下側に配され、下端部分が脚部4の下端よりも上方に位置した状態で取り付けられる。また、下板側貫通孔部40の開口面積は、電源部材5の平面視における面積よりも十分に大きい。
【0058】
そして、土台部分52の内部空間には、
図7、
図8で示される様に、光源部材60が内蔵されている。
【0059】
光源部材60は、
図5で示されるように、可撓性を有して帯状に延びる発光部61と、発光部61の長手方向における一端側から延びるケーブル部62とを備えた照明装置である。特に限定されるものではないが、本実施形態では、光源部材60にLED照明装置(具体的には、LEDテープライト)を採用している。
すなわち、発光部61は、可撓性を有すると共に細長く伸びる薄いテープ状の基板部と、基板部の片面側で間隔を隔てて並列配置される複数のLED61a(発光体)を有する。つまり、光源部材60は、発光部61の厚さ方向における片面側のみが発光する照明装置であり、点光源であるLED61aを複数備えた照明装置である。ここで、発光部61の片面側で並列する複数のLED61aは、透光性を有する樹脂で覆われている。
なお、作図の都合上、一部のLED61aにのみ符号を付し、他への符号を省略する。また、以下の説明においても同様に、それぞれの図面で同じもの又は主だった部分が同じものが複数描写される場合には、必要に応じて一部の符号を省略する。
【0060】
ケーブル部62は、長手方向の一端側が発光部61と連続しており、他端側に電源部材5と接続可能なコネクタ62a(
図2参照)を有するケーブルである。
【0061】
本実施形態の識別支援具1では、
図8で示されるように、光源部材60の発光部61が平面視で略コ字状となるように延びた状態で配される。具体的には、発光部61は、一方の添板部21の外側(左右方向の外側)で、この添板部21に沿って直線状に延びる部分と、他方の添板部21の外側で、この添板部21に沿って直線状に延びる部分と、これらを繋ぐ部分とを有する。そして、いずれの部分においても、発光する片面側の部分が外側を向いた状態となっている。つまり、発光部61の一部は、発光する部分が左方(左右方向の一方側)を向き、他の一部は、発光する部分が右方(左右方向の他方側)を向く。このように、土台部分52の内部空間には、光源部材60の発光部61と、ケーブル部62の大部分(
図2等参照)が配されている。
なお、本実施形態の識別支援具1は、一つの光源部材60を有する構成としたが、2つ(複数)の光源部材を有する構成としてもよい。例えば、左右方向に離れた位置に光源部材を一つずつ配し、いずれも添板部21の外側で前後方向に延びるように配置してもよい。つまり、2つの光源部材(又は一つの光源部材60の一部と他の一部)は、2つの添板部21を除いた状態において、左右方向で対向するように配置されていてもよい。庇形成部46(
図7参照)の下方側に、直線状に延びた直線型の発光部材(直線型の発光する部分)が配されていればよい。
【0062】
また、本実施形態の識別支援具1では、
図7で示されるように、光源部材60(LED61a)の下方側と、側方外側のそれぞれに第四反射部材50d、第三反射部材50cが位置している。そして、光源部材60(LED61a)の上方に、切欠部26と透光性部材12が下からこの順で位置する。これら第四反射部材50d、第三反射部材50c、切欠部26は、いずれもLED61aから離れた位置にある。また、光源部材60(LED61a)の上方であって、透光性部材12よりも上方(本実施形態では透光性部材12よりも上方に離れた位置)に、第一反射部材50a、第二反射部材50bが位置する。具体的には、本実施形態では、LED61aから鉛直上方に離れた位置に、第二反射部材50bが位置する。
切欠部26は、土台部分52の内部空間と、照明台形成部53において庇形成部46の下方側に位置する空間(以下、側方側空間63とも称す)の境界に位置する。
【0063】
第三反射部材50cは、土台部分52と照明台形成部53に跨って設けられる。具体的には、一部が光源部材60(LED61a)から側方外側に離れた位置にあり、他の一部が切欠部26の側方外側に位置し、さらに他の一部が透光性部材12の側方外側に位置する。本実施形態では、第三反射部材50cの反射面の一部と透光性部材12の側面とが接触している。また、第三反射部材50cの反射面は、左右方向の中心側を向いている。すなわち、左側の第三反射部材50cの反射面は右方を向き、右側の第三反射部材50cの反射面は左方を向く。
【0064】
照明台形成部53では、2つの透光性部材12の間に載置台形成部材11が位置する。すなわち、左右方向の一方側から他方側に向かって、一方の側方立壁部45、一方の透光性部材12、載置台形成部材11、他方の透光性部材12、他方の側方立壁部45がこの順に位置する。また、載置台形成部材11、透光性部材12は、同一平面上に位置しており、載置台形成部材11の載置面11aは、透光性部材12の上面よりも下方に位置する。また、2つの透光性部材12は、いずれも前後方向に(互いに平行に)延びている。載置台形成部材11もまた、左右方向に幅を持ち、前後方向に延びている。
さらに、透光性部材12の延び方向は、その下方側に位置する発光部61の一部(光源部材60のうちで発光する部分)と同方向に延びている(
図7、
図8参照)。すなわち、透光性部材12と、発光部61の一部とは、上下方向で離れた位置に配され、互いに平行に延びている。
【0065】
このとき、側方側空間63に、透光性部材12と、載置台形成部材11及び載置面11aの一部(載置台形成部材11の左右方向における端部側部分)が配される。すなわち、載置台形成部材11の一部から鉛直上方に離れた位置に第一反射部材50aが配され、載置面11aの一部と第一反射部材50aの反射面とが上下方向で離間対向している。すなわち、第一反射部材50aの反射面は、鉛直下側を向いている。
【0066】
また、第二反射部材50bは、載置台形成部材11の左右方向における中心部分から斜め上方に離れた位置に配されている。すなわち、左右方向(水平方向)で外側に離れた位置であり、且つ、上方に離れた位置に配される。本実施形態では、第二反射部材50bは、載置台形成部材11の左右方向における端部からも斜め上方に離れた位置に配されている。つまり、載置台形成部材11の全体から斜め上方に離れた位置に配されている。
このとき、第二反射部材50bの反射面は、斜め下方、すなわち、載置台形成部材11側を向く。なお、第一反射部材50aもまた、載置台形成部材11の左右方向における中心部分から斜め上方に離れた位置に配されている。
【0067】
また、本実施形態では、
図7で示されるように、載置台形成部材11及び載置面11aよりも下方となる位置に光源部材60が配されている。また、載置台形成部材11の左右方向の中心部分(及び載置台形成部材11の全体)よりも左右方向で外側となる位置に、光源部材60の一部(LED61a)が位置している。具体的には、左右方向の一方側であって下側となる位置(右方下側)と、他方側であって下側となる位置(左方下側)のそれぞれに、光源部材60の一部(LED61a)が位置している。
【0068】
ここで、上記したように、光源部材60の発光部61は、厚さ方向における片面側のみが発光する。そして、載置台形成部材11よりも側方外側(左右方向で外側)に位置する部分では、発光部61の発光する部分が側方外側を向いている。
つまり、少なくとも発光部61の一部は、水平方向において、載置台形成部材11とは逆側に向かって発光する。すなわち、水平方向で載置台形成部材11から離れる方向(左右方向で外側に向かう方向)であり、水平方向で載置台形成部材11に向かう方向(左右方向で中心側に向かう方向)とは逆方向に向かって発光する。
【0069】
また、本実施形態では、識別支援具1が略左右対称の部材となっている。すなわち、載置面11aの中心部分から左右方向の片側に位置する各部までの距離と、他方側に位置する対となる各部までの距離が同じとなっている。例えば、載置面11aの中心部分から、一方の起立壁部36までの距離と、他方の起立壁部36の距離とが同じであり、一方の透光性部材12までの距離と、他方の透光性部材12までの距離が同じである。同じく、載置面11aの中心部分から、片側(例えば、左側)に位置するそれぞれの反射部材50までの距離は、いずれも、対応する他方側(例えば、右側)のそれぞれの反射部材50までの距離と同じである。
【0070】
続いて、本実施形態の識別支援具1を用いて、錠剤の鑑査を行う際の手順について説明する。なお、錠剤やカプセル剤等の定形剤は、通常、包装材に包装された状態で患者に提供される。一般的には、医師が出した処方に従って、分包機やPTP自動払い出し装置、或いは薬剤師による手調剤により、患者に渡されるのだが、患者に手渡される前に最終的に処方と照らし合わせて間違いがないかを薬剤師が目視で鑑査する業務を行う調剤鑑査を実行する。以下、この調剤鑑査を例に説明する。
【0071】
まず、上記した電源部材5の操作部を操作する等により、光源部材60を発光させた状態(発光状態)とする。また、前後して、
図9(a)で示されるように、薬剤包装帯65を載置面11aに載置する。なお、特に限定されるものではないが、本実施形態の識別支援具1は、幅方向(左右方向であって
図9(a)では上下方向)の中心側に薬剤包装帯65を載置して使用することを想定している。
【0072】
なお、薬剤包装帯65は、
図10(a)、
図10(b)で示されるように、複数の薬剤包装66が帯状に繋がって形成される薬剤包装66の連続体である。この薬剤包装帯65は、外部の分包装置(図示せず)を使用して薬剤を包装することで作製される。それぞれの薬剤包装66は、薬包紙を2つ折りにして縁部分の三方を圧着することで形成され、特定の患者が一回に服用する一服用分の薬剤が内包される。なお、一又は複数の定形剤が内包される場合もあれば、一又は複数の定形剤と散薬が内包される場合もある。
図10(b)の例では、一つの薬剤包装66に3つの錠剤と1つのカプセル剤が内包されている。
【0073】
薬剤包装66は、内部空間を挟んで対向する2つの部分の片側(以下、表側とも称す)に情報印刷部66aが設けられている。情報印刷部66aは、薬剤包装66に内包された薬剤の処方に関する情報(内包された薬剤の服用時期、内包された薬剤が処方された患者名等)が付された部分である。その一方で、他方側(以下、裏側とも称す)には、印刷が付されておらず、内部が透けて見える状態となっている。
上記した薬剤包装帯65は、複数の薬剤包装66の表側と裏側が揃った状態で作製されている。つまり、薬剤包装帯65の表側では、複数の薬剤包装66のそれぞれの表側部分が並んだ状態となっており、薬剤包装帯65の裏側では、複数の薬剤包装66のそれぞれの裏側部分が並んだ状態となっている。
【0074】
また、薬剤包装66に内包される錠剤には、
図10(c)で示されるように、刻印部67が設けられている。刻印部67は、錠剤の一部の面に付された溝状の部分であり、所定の文字や記号を示すように延びた凹溝である。
【0075】
識別支援具1を用いて錠剤の鑑査を行う際には、
図9(a)で示されるように、薬剤包装帯65の裏側が上側を向く状態で、載置台形成部材11の上に載置する。ここで、
図1等で示されるように、識別支援具1における載置台形成部材11の上側の空間は、所定方向(長手方向であり前後方向)の両端部分が外部と連通するように開放されている。すなわち、載置台形成部材11の上側の空間は、2つの起立壁部36の間に位置し、2つの起立壁部36の離間方向と交わる方向の両端部分及び上部が外部と連通する空間である。
【0076】
このため、
図9(a)で示されるように、識別支援具1を小型化しても、長尺状の薬剤包装帯65を長く延ばした状態で載置台形成部材11の上に載置することができる。このことにより、一つの薬剤包装66に内包された薬剤を鑑査した後、薬剤包装帯65を前後方向(
図9では左右方向)の一方側にずらし、他の薬剤包装66に内包された薬剤を鑑査する。その後、薬剤包装帯65を前後方向(
図9では左右方向)の一方側にずらし、さらに他の薬剤包装66に内包された薬剤を鑑査する、といった具合に、上記の作業を繰り返すことで、複数の薬剤包装66のそれぞれに内包された錠剤を連続的に鑑査できる。このため、監査対象の錠剤(薬剤包装66)が多い場合であっても、効率よく作業できる。
【0077】
また、本実施形態の識別支援具1では、
図9(b)で示されるように、長手方向と交わる方向(左右方向)の端部側から光が照射されるものであり、具体的には、長手方向と交わる方向の両端側のそれぞれ(一端側と他端側の双方)から光が照射される。
【0078】
ここで、左右方向の両端側のそれぞれでは、光源部材60から照射された光が、土台部分52の内部空間において、第三反射部材50c、第四反射部材50dによって反射される。また、第三反射部材50c、第四反射部材50dで反射された反射光と、光源部材60から照射された光が透光性部材12の内部を経て、側方側空間63に照射される。
そして、側方側空間63において、透光性部材12の内部を経て側方側空間63に照射された光が、第一反射部材50a、第二反射部材50bによって反射される。また、第一反射部材50a、第二反射部材50bで反射された光が、載置台形成部材11に向かって照射される。
【0079】
以上のことから、照明台形成部53では、側方側空間63及びその隣接部分が、明暗差が和いで自然に光った状態となり、強すぎない適切な光が載置台形成部材11を照らした状態となる。すなわち、間接光で載置台形成部材11を照らす間接照明の照明台として機能する。このとき、側方側空間63及びその隣接部分は、載置台形成部材11の左右方向における中心部分から外側に離れた位置にある。また、側方側空間63及びその隣接部分は、その大部分(90パーセント以上の部分)が載置面11aよりも上方に位置する。そのことにより、載置台形成部材11の左右方向における中心部分には、斜め上方から光が照射される。このことにより、上記した錠剤(
図10(c)参照)を鑑査する場合、この錠剤に斜め上方から光が照射され、それにより、刻印部67の内部、周辺等に刻印部67に起因する影(以下、溝の影とも称す)が形成される。本実施形態の識別支援具1によると、この溝の影が適切な濃さとなり、特に全体が白色の錠剤に凹溝状の刻印部67が形成されたものを識別するとき、刻印部67によって示される文字等の内容がはっきりと視認できる。
すなわち、反射部材50と、透光性部材12と、起立壁部36及び側方側空間63が調光手段として機能し、光源部材60から照射された光が調光手段によって調光され、載置台形成部材11に向かって照射される。
【0080】
加えて、照明台形成部53では、透光性部材12の側面(左右方向の内側の側面であり、載置台形成部材11側の側面)が、明暗差が和いで自然に光った状態となり、透光性部材12側から載置台形成部材11側へ光が照射される。
【0081】
本実施形態では、
図11で示されるように、前後方向(
図11の手前奥方向)を視線方向とした平面視において、第二反射部材50bの反射面の中心部分X1と、載置面11aの中心部分P1を結ぶ線分と、水平面のなす角θ1を3度以上35度未満としている。より詳細には、なす角θ1を15度程度としている(なお、ここでいう程度とは数パーセントの誤差を含むものとし、以下でも同様とする)。
【0082】
また、同平面視において、左右方向の一方側(左側)に位置する第二反射部材50bの反射面の中心部分X1と、載置面11aにおける左右方向の他方側(左側)端部P2結ぶ線分と、水平面のなす角θ2を1.5度以上19度未満としている。具体的には、なす角θ2を8度程度としている。ここでいう左右方向は、XとP2の水平方向における離間方向でもある。
【0083】
さらに、同平面視において、上記した中心部分X1と載置面11aとの鉛直方向における距離L1を1cm以上3cm以下としており、より詳細には、1.8cmm程度としている。この距離L1は、載置面11aの左右方向の長さL2の8パーセント以上27パーセント以下であり、本実施形態では、16パーセント程度としている。
以上の構成によると、載置面11aに対して適切な光を照射させることが可能となる。
【0084】
上記したように、透光性部材12の上面よりも下方に載置面11aが位置している(
図9等参照)。このため、鑑査を行うとき、薬剤包装帯65(薬剤包装66)が起立壁部36側にずれても、薬剤包装帯65(薬剤包装66)が必要以上に庇形成部46の下方に入り込んでしまうことを防止できる。すなわち、透光性部材12をストッパーとして機能させることができる。
上記した識別支援具1では、載置台形成部材11の一部が庇形成部46の下方に位置しているが、載置台形成部材11が庇形成部46の下方に位置しない構成としてもよい。すなわち、透光性部材12の幅を大きくし、透光性部材12の左右方向における内側端部と、その上方に位置する庇形成部46の左右方向における内側端部とが、上下方向で並んだ状態(左右方向において同一の位置)となるように形成してもよい。この場合、透光性部材12は、薬剤包装帯65(薬剤包装66)が庇形成部46の下方に入り込むことを防止するストッパーとして機能する。
【0085】
上記した識別支援具1で包装後鑑査を行うとき、薬剤包装66内の錠剤は、刻印部67が設けられた面が上方を向くように配置する必要がある。薬剤包装66内の錠剤の向きの調整は、手動で行ってもよく、自動で行ってもよい。すなわち、本発明の錠剤識別支援装置は、上記した識別支援具1と、包装材内の錠剤の向き(姿勢)を調整する姿勢調整装置を一体に形成してもよい。姿勢調整装置は、錠剤が内包された薬剤包装を載置する載置台と、載置台に振動や衝撃を加える振動発生装置(衝撃発生装置)を有するものとし、振動や衝撃によって錠剤をひっくり返す等することで、錠剤の姿勢を調整する装置であってもよい。
【0086】
上記した識別支援具1は、天眼鏡を保持する天眼鏡保持手段や、スマートフォンやカメラ等の撮影手段を保持する撮影手段保持手段や、これらの双方を保持可能な外部部材保持手段を一体に形成してもよい。これらの保持手段は、外郭部材3と一体に形成してもよく、外郭部材3から延びるアーム部と、アーム部の先端に形成されて対象物を保持するハンド部(保持部)を有するものでもよい。アーム部は、延び方向の先端側部分を基端側部分に対して回動可能とし、折曲した姿勢を維持可能なものとしてもよい。つまり、ハンド部が保持する外部部材の配置位置を調整可能としてもよい。ハンド部は、2つの挟持片で対象物を挟持する、又は、対象物を挿入可能な係合部(凹部、環状部分)を設ける等により、対象物を保持するものであってもよい。
【0087】
また、上記した識別支援具1は、通信手段を一体に形成してもよい。例えば、CPU等の演算部と、ROM、RAM等の主記憶装置を有する記憶部(記憶手段)と、I/Оポート等の通信部を備えた制御部を有し、外部の機器と各種信号、各種情報の送受信が可能なものとしてもよい。この制御部は、スマートフォン等の撮影手段が有していてもよい。
そして、撮影手段によって刻印が明確となる状態で錠剤を撮影し(刻印が明確に写された画像を作成し)、通信手段によって作成した画像を鑑査だけを行う鑑査者が使用する機器に送信してもよい。すなわち、薬剤師以外のテクニシャン等が錠剤識別具を使用して撮影作業だけを実行し、画像を受け取った鑑査者(薬剤師)が画像を確認して鑑査を行ってもよい。これにより、作業分担と効率化が図れるだけでなく、確認した薬剤のエビデンスも画像で残すことができ、患者への投与に関する証明として保持することもできる。
【0088】
上記した実施形態では、識別支援具1を使用して包装後鑑査を行う例について説明したが、これに限らず、識別支援具1を用いて包装前鑑査や持参薬の鑑別を行ってもよい。すなわち、識別支援具1は、患者が持参した薬剤(持参薬)を載置し、同様に識別に供することができる。鑑別用として使用した場合には、上記と同様に、撮影した画像を薬剤師に送信することにより、薬剤師は持参薬鑑別報告書の作成に使用することができる。なお、本実施形態の識別支援具1では、製薬メーカーが製造したPTP包装のものを載置し、同様に識別に供することができる。
【0089】
上記した実施形態の識別支援具1は、光源部材60で発生させた光を、透光性部材12を透過させ、且つ、反射部材50で反射させ、載置台形成部材11に向かって照射する例について説明した。しかしながら、本発明はこれに限るものではない。
例えば、透光性部材12、反射部材50を設けず、OLED等を用いた面発光する照明装置を光源部材(光源)とし、この光源部材を載置台形成部材11から斜め上方に離れた位置(例えば、上記した第二反射部材50bの位置)に設けることが考えられる。このとき、照明装置の発光面(光源面部)を載置台形成部材11に向けた状態とする。すなわち、光源部材で発生した光を載置台形成部材11に向けて直接照射する装置としてもよい。しかしながら、眩しさを抑制したより適切な光を照射するという観点から、上記した調光手段を介して光を照射することが好ましい。また、OLED等を用いた照明装置は、高価なものが多く、錠剤識別支援装置の製造コストを低減するという観点からも、上記した構成(透光性部材12、反射部材50を設けた構成)とすることが好ましい。
【0090】
また、反射部材を設けず、光源部材と載置台形成部材11の間に透光性部材を設け、透光性部材を透過させた透過光を載置台形成部材11に向けて照射する装置とすることも考えられる。この場合、例えば、透光性部材を載置台形成部材11から斜め上方に離れた位置に配し、透光性部材よりもさらに斜め上方に離れた位置に光源部材を配する構成が考えられる。
【0091】
この他、透光性部材として、集光性樹脂の板体を採用する構成も考えられる。集光性樹脂の板体は、集光面から入射した光を端面の方向に伝搬し、光を端面に集中して発光するものである。例えば、集光性樹脂の板体を集光面が上方又は下方を向き、端面が載置台形成部材11側を向く姿勢で配置し、集光性樹脂の上方又は下方に光源部材を配置してもよい。このとき、光源部材は、発光する部分を集光面に向け、端面の少なくとも一部を載置台形成部材11から斜め上方に離れた位置に配する。すなわち、光源の発光する部分を側方外側に向ける他、上方又は下方に向ける構成が考えられる。
【0092】
透光性部材は、下方から入射された光が、上方(上面)と側方(側面)のそれぞれから出射するものでもよい。このとき、側面は、水平面に対して垂直な面とせず、水平面に対して傾斜した面(下方下側を向く面)としてもよい。すなわち、透光性部材を通過した光の一部が反射部材を経て(反射部材で反射されて)載置台形成部材11に照射され、他の一部が反射部材を経ずに透光性部材から載置台形成部材11に向かって直接照射されるものとしてもよい。すなわち、透光性部材を通過した光は、反射部材を経て載置台形成部材11に照射されてもよく、反射部材を経ずに透光性部材から載置台形成部材11に向かって直接照射されてもよく、その双方であってもよい。
【0093】
上記した実施形態では、透光性部材12として、5mm以上15mm以下となる厚さを有するアクリルブロックを採用する例について説明した。このような構成によると、載置台形成部材11に照射する光の光むら等を無くす(非常に少なくする)ことが可能となり、なめらかに見える光を照射することができる。透光性部材12の厚さ、原料、光の透過率は、光源部材で発生する光の強さに基づいて変更してもよい。
【0094】
上記した実施形態では、起立壁部36の上側部分を折曲させて庇形成部を形成した例を示したが、本発明は、これに限るものではない。庇形成部は、側方立壁部45の上側で湾曲して延びる(円弧状に延びる)部分であってもよい。
【符号の説明】
【0095】
1;識別支援具(錠剤識別支援装置)、11;載置台形成部材(載置台部、反射抑制部材)、11a;載置面、12;透光性部材(調光手段)、36;起立壁部(調光手段)、45;側方立壁部(立壁部)、46;庇形成部(庇部)、50;反射部材(調光手段)、60;光源部材