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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107389
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】飛行体
(51)【国際特許分類】
   B64U 20/70 20230101AFI20240801BHJP
   B64U 50/19 20230101ALI20240801BHJP
   B64U 10/13 20230101ALI20240801BHJP
   B64C 3/58 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
B64U20/70
B64U50/19
B64U10/13
B64C3/58
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024095384
(22)【出願日】2024-06-12
(62)【分割の表示】P 2021151757の分割
【原出願日】2020-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】517331376
【氏名又は名称】株式会社エアロネクスト
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 陽一
(57)【要約】
【課題】飛行体(特にマルチコプター)のボディ形状を、機体の巡航姿勢において、本体部による不要なプラスの揚力が少なく、抗力も少ない形状とすることにより、巡航速度を向上し得る飛行体を提供すること。
【解決手段】プロペラ及びモータを含む回転翼を複数備える飛行体であって、逆翼型形状の本体部を備える、ことを特徴とする飛行体。本体部は、巡航時に、揚力を生まない、または、マイナスの揚力を生む迎角である。本体部は、前記本体部はプラスの迎角12度以下である。さらに、搭載物を搭載可能な搭載部を備える。搭載部は、接続部を介して前記本体部に接続されている。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロペラ及びモータを含む回転翼を複数備える飛行体であって、
逆翼型形状の本体部を備える、
ことを特徴とする飛行体。
【請求項2】
前記本体部は、巡行時に、揚力を生まない、または、マイナスの揚力を生む迎角である、
ことを特徴とする請求項1に記載の飛行体。
【請求項3】
巡航時に、前記本体部はプラスの迎角12度以下である、
ことを特徴とする請求項2に記載の飛行体。
【請求項4】
さらに、搭載物を搭載可能な搭載部を備える、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の飛行体。
【請求項5】
前記搭載部は、接続部を介して前記本体部に接続されている、
ことを特徴とする請求項4に記載の飛行体。
【請求項6】
前記接続部は、前記搭載部を所定の姿勢に保つ、
ことを特徴とする請求項5に記載の飛行体。
【請求項7】
前記所定の姿勢は、水平である、
ことを特徴とする請求項6に記載の飛行体。
【請求項8】
さらに、動翼を前記本体部に備える、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の飛行体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ドローン(Drone)や無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)などの飛行体(以下、「飛行体」と総称する)を用いたサービスの実用化に向けた研究や実証実験が進められている。一般的にマルチコプターと呼ばれる、固定ピッチプロペラを複数備え、機体を傾けることで移動を行う飛行体(以下、マルチコプターと総称する)は、主翼にティルトローター及びティルトウイング機構等を備えるVTOL機に比べて構造が単純なため、製作やメンテナンスが容易であり、故障個所が少ないというメリットがある。
【0003】
しかし、マルチコプター形状の機体は、主翼の生む揚力を用いて飛行するVTOL機等に比べて燃費が劣る他、本体部によって生まれる抗力が考慮されていない。このような状況を鑑みて、特許文献1においては、回転翼の負荷を軽減する飛行体が開示されている。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2020/0001995号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、回転翼の回転軸と、本体部の基準平面の法線との間の角度を5から30度の間とすることで、回転翼航空機が前進するときに正の迎角を形成し、本体部が生む揚力により、回転翼の負荷を軽減し、飛行可能時間の向上を目的とする機体(以下、従来機体と総称する)が開発されている。
【0006】
マルチコプターは、空中に留まっている間は常にエネルギーを消費し続ける。従来機体はエネルギー消費を軽減し、飛行可能時間を向上させる。しかし、図16図17に示されるように、従来機体のように、巡航時に本体部10がプラスの揚力を生み、回転翼の負荷が軽減される形状において、巡航速度を上げるために回転翼の回転数を上昇させた場合、回転翼が発生する上方への揚力と、本体部10が生む揚力によって飛行体が上昇する力が共に増加するため、飛行体が水平方向に前進できず、斜め上に向かってしまう等、前進速度の低下が起こる。
【0007】
また、飛行体が上方向へ向かわないように回転翼の回転数を抑えた場合には、回転数の減少量に応じて推進力も低下するため、飛行体の巡航速度は低下する。
【0008】
実用化されるサービスとして挙げられる輸送や点検、撮影などにおいては、移動速度が求められ、特に輸送分野においては特に顕著である。また、移動速度を向上させることは、飛行システム全体でのエネルギー消費がシステム全体の燃費の向上につながる。例えば、ある地点Aから地点Bへの飛行において、飛行体が空中に留まる時間が減少するほど、消費するエネルギーは少なくなる。従来機体のように回転翼の負荷を軽減する事でも消費エネルギーは少なくなるが、上述のように引き換えに本体部10の迎角により上昇するために地点Bまで最短距離で到達できないか、または、それを防ぐために回転翼の回転数を抑えることにより速度が低下することで、結果として地点Bへの到達は遅れ、飛行時間の増加分はエネルギー消費が増えることとなる。
【0009】
マルチコプターをより高速に移動させるには、推力を発生させる回転翼の回転をより早くする必要があり、回転翼の回転高速化は、回転翼にかかる負荷を強くすることにより可能となる。
【0010】
回転翼の回転数を減少させないために、機体を重くして夫々の回転翼の受け持ち荷重を増やす方法があるが、機体を不要なウエイトにより重くすることは、燃費に悪影響を与えることは明らかである。
【0011】
そこで、本発明は、飛行体(特にマルチコプター)のボディ形状を、機体の巡航姿勢において、本体部が抗力を抑えつつ、不要なプラスの揚力が少ない形状とすることにより、巡航速度を向上し得る飛行体を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、プロペラ及びモータを含む回転翼を複数備える飛行体であって、逆翼型形状の本体部を備える、ことを特徴とする飛行体を提供することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、飛行体の巡航速度を向上する本体形状を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】巡航時における本発明による飛行体を側面から見た概念図である。
図2図1の飛行体の機能ブロック図である。
図3図1の飛行体のホバリング時の側面図である。
図4図1の飛行体のホバリング時の上面図である。
図5】一般的な翼型を示した図である。
図6図5の翼型の揚力特性を示したグラフである。
図7図5の翼型の抵抗特性を示したグラフである。
図8】本発明による飛行体の構成例の、巡航時の側面図である。
図9図8の飛行体のホバリング時の側面図である。
図10図8の飛行体のホバリング時の上面図である。
図11図8の飛行体の本体形状を示した模式図である。
図12図11の形状の揚力特性を示したグラフである。
図13図11の形状の抵抗特性を示したグラフである。
図14】本発明による飛行体の構成例の、巡航時の側面図である。
図15図14の飛行体のホバリング時の側面図である。
図16】従来機体が巡航している時の側面図である。
図17図16の機体がホバリングしている時の側面図である。
図18図16の機体がホバリングしている時の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態の内容を列記して説明する。本発明の実施の形態による飛行体は、以下のような構成を備える。
[項目1]
プロペラ及びモータを含む回転翼を複数備える飛行体であって、
逆翼型形状の本体部を備える、
ことを特徴とする飛行体。
[項目2]
前記本体部は、巡航時に、揚力を生まない、または、マイナスの揚力を生む迎角である、
ことを特徴とする項目1に記載の飛行体。
[項目3]
前記本体部はプラスの迎角12度以下である、
ことを特徴とする項目1に記載の飛行体。
[項目4]
さらに、搭載物を搭載可能な搭載部を備える、
ことを特徴とする項目1ないし項目3のいずれかに記載の飛行体。
[項目5]
前記搭載部は、接続部を介して前記本体部に接続されている、
ことを特徴とする項目4に記載の飛行体。
[項目6]
前記接続部は、前記搭載部を所定の姿勢に保つ、
ことを特徴とする項目5に記載の飛行体。
[項目7]
前記所定の姿勢は、水平である、
ことを特徴とする項目6に記載の飛行体。
[項目8]
さらに、動翼を前記本体部に備える、
ことを特徴とする項目1ないし項目7のいずれかに記載の飛行体。
【0016】
<本発明による実施形態の詳細>
以下、本発明の実施の形態による飛行体について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
<第1の実施の形態の詳細>
【0018】
図1に示されるように、本発明の実施の形態による飛行体100は飛行を行うために少なくとも本体部10、プロペラ110及びモータ111からなる複数の回転翼、モータを支えるモータマウントやフレーム21等の要素を含む飛行部20を備えており、それらを動作させるためのエネルギー(例えば、二次電池や燃料電池、化石燃料等)を搭載していることが望ましい。
【0019】
なお、図示されている飛行体100は、本発明の構造の説明を容易にするため簡略化されて描かれており、例えば、制御部等の詳しい構成は図示していない。
【0020】
飛行体100は図の矢印Dの方向(-Y方向)を前進方向としている(詳しくは後述する)。
【0021】
なお、以下の説明において、以下の定義に従って用語を使い分けることがある。前後方向:+Y方向及び-Y方向、上下方向(または鉛直方向):+Z方向及び-Z方向、左右方向(または水平方向):+X方向及び-X方向、進行方向(前方):-Y方向、後退方向(後方):+Y方向、上昇方向(上方):+Z方向、下降方向(下方):-Z方向
【0022】
プロペラ110は、モータ111からの出力を受けて回転する。プロペラ110が回転することによって、飛行体100を出発地から離陸させ、移動させ、目的地に着陸させるための推進力が発生する。なお、プロペラ110は、右方向への回転、停止及び左方向への回転が可能である。
【0023】
本発明の飛行体が備えるプロペラ110は、1以上の羽根を有している。任意の羽根(回転子)の数(例えば、1、2、3、4、またはそれ以上の羽根)でよい。また、羽根の形状は、平らな形状、曲がった形状、よじれた形状、テーパ形状、またはそれらの組み合わせ等の任意の形状が可能である。なお、羽根の形状は変化可能である(例えば、伸縮、折りたたみ、折り曲げ等)。羽根は対称的(同一の上部及び下部表面を有する)または非対称的(異なる形状の上部及び下部表面を有する)であってもよい。羽根はエアホイル、ウイング、または羽根が空中を移動される時に動的空気力(例えば、揚力、推力)を生成するために好適な幾何学形状に形成可能である。羽根の幾何学形状は、揚力及び推力を増加させ、抗力を削減する等の、羽根の動的空気特性を最適化するために適宜選択可能である。
【0024】
また、本発明の飛行体が備えるプロペラは、固定ピッチ、可変ピッチ、また固定ピッチと可変ピッチの混合などが考えられるが、これに限らない。
【0025】
モータ111は、プロペラ110の回転を生じさせるものであり、例えば、駆動ユニットは、電気モータ又はエンジン等を含むことが可能である。羽根は、モータによって駆動可能であり、モータの回転軸(例えば、モータの長軸)の周りに回転する。
【0026】
羽根は、すべて同一方向に回転可能であるし、独立して回転することも可能である。羽根のいくつかは一方の方向に回転し、他の羽根は他方方向に回転する。羽根は、同一回転数ですべて回転することも可能であり、夫々異なる回転数で回転することも可能である。回転数は移動体の寸法(例えば、大きさ、重さ)や制御状態(速さ、移動方向等)に基づいて自動又は手動により定めることができる。
【0027】
飛行体100は、フライトコントローラやプロポ等により、風速と風向に応じて、各モータの回転数や、飛行角度を決定する。これにより、飛行体は上昇・下降したり、加速・減速したり、方向転換したりといった移動を行うことができる。
【0028】
飛行体100は、事前または飛行中に設定されるルートやルールに準じた自律的な飛行や、プロポを用いた操縦による飛行を行うことができる。
【0029】
上述した飛行体100は、図2に示される機能ブロックを有している。なお、図2の機能ブロックは最低限の参考構成である。フライトコントローラは、所謂処理ユニットである。処理ユニットは、プログラマブルプロセッサ(例えば、中央処理ユニット(CPU))などの1つ以上のプロセッサを有することができる。処理ユニットは、図示しないメモリを有しており、当該メモリにアクセス可能である。メモリは、1つ以上のステップを行うために処理ユニットが実行可能であるロジック、コード、および/またはプログラム命令を記憶している。メモリは、例えば、SDカードやランダムアクセスメモリ(RAM)などの分離可能な媒体または外部の記憶装置を含んでいてもよい。カメラやセンサ類から取得したデータは、メモリに直接に伝達されかつ記憶されてもよい。例えば、カメラ等で撮影した静止画・動画データが内蔵メモリ又は外部メモリに記録される。
【0030】
処理ユニットは、回転翼機の状態を制御するように構成された制御モジュールを含んでいる。例えば、制御モジュールは、6自由度(並進運動x、y及びz、並びに回転運動θ、θ及びθ)を有する回転翼機の空間的配置、速度、および/または加速度を調整するために回転翼機の推進機構(モータ等)を制御する。制御モジュールは、搭載部、センサ類の状態のうちの1つ以上を制御することができる。
【0031】
処理ユニットは、1つ以上の外部のデバイス(例えば、端末、表示装置、または他の遠隔の制御器)からのデータを送信および/または受け取るように構成された送受信部と通信可能である。送受信機は、有線通信または無線通信などの任意の適当な通信手段を使用することができる。例えば、送受信部は、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、赤外線、無線、WiFi、ポイントツーポイント(P2P)ネットワーク、電気通信ネットワーク、クラウド通信などのうちの1つ以上を利用することができる。送受信部は、センサ類で取得したデータ、処理ユニットが生成した処理結果、所定の制御データ、端末または遠隔の制御器からのユーザコマンドなどのうちの1つ以上を送信および/または受け取ることができる。
【0032】
本実施の形態によるセンサ類は、慣性センサ(加速度センサ、ジャイロセンサ)、GPSセンサ、近接センサ(例えば、ライダー)、またはビジョン/イメージセンサ(例えば、カメラ)を含み得る。
【0033】
図1及び図3に示されるように、本発明の実施の形態における飛行体100が備える飛行部20は、進行時に進行方向に向かい前傾する。前傾した回転翼は、上方への揚力と、進行方向への推力を生み出し、これにより飛行体100が前進する。
【0034】
飛行体100は、搭載する処理ユニットやバッテリー、搭載物等を内包可能な本体部10を備えている。本体部10は、飛行部20と固定して接続されており、本体部10は飛行部20の姿勢変化に伴い、その姿勢が変化する。飛行体100の移動中、長時間維持されることが期待される巡航時の飛行体100の姿勢における、本体部10の形状を最適化し、速度を向上させることで、効率的に飛行時間を短縮する。
【0035】
本体部10は、飛行や離着陸に耐え得る強度を持つ外皮を備えていることが望ましい。例えば、プラスチック、FRP等は、剛性や防水性があるため、外皮の素材として好適である。これらの素材は、飛行部20に含まれるフレーム21(アーム含む)と同じ素材であってもよいし、異なる素材であってもよい。
【0036】
また、飛行部20が備えるモータマウント、フレーム21、及び本体部10は、夫々の部品を接続して構成してもよいし、モノコック構造や一体成形を利用して、一体となるように成形してもよい(例えば、モータマウントとフレーム21を一体に成形する、モータマウントとフレーム21と本体部10すべてを一体に成形する、等)。部品を一体とすることで、各部品のつなぎ目を滑らかにすることが可能となるため、ブレンデッドウィングボディやリフティングボディといった飛行体が持つ、抗力の軽減や燃費の向上が期待できる。
【0037】
飛行体100が備える本体部10の形状は、飛行体100が巡航時の姿勢において抗力が少なく、不要な揚力が少ない形状(以下で説明する「逆翼型」形状)である。より好ましくは、さらに抗力の少ない形状(例えば、流線形)であるとよく、発生する揚力がマイナス方向であってもよい。図1では、本体部10によるマイナスの揚力が図示されている。
【0038】
図5では、翼型の一例(Gottingen508)を示している。例えば図16等に記載の従来機の本体部10のような、揚力を生むために用いられる一般的な翼型Aは、キャンバーライン13が、中央部が上方向に凸な曲線形状(以下、アーチ状と総称する)となり、また、キャンバーライン13が翼弦12より上側となる量が多いもしくはすべて翼弦12より上側となる。一方、例えば図1等に記載の本願発明の本体部10のような、一般的な翼型Aを上下反転させた翼型Bは、キャンバーライン13が逆アーチ状となり、また、キャンバーライン13が翼弦12より下側となる量が多いもしくはすべて翼弦12より下側となる。この、翼型Bのようにキャンバーライン13が逆アーチ状となり、また、キャンバーライン13が翼弦12より下側となる量が多いもしくはすべて翼弦12より下側となる形状について、以下、逆翼型形状と総称する。
【0039】
図5の翼型Aと翼型Bを、標準大気において約10m/sの大気に相対させた場合の、揚力特性を示したグラフを図6、抵抗特性を示したグラフを図7にそれぞれ示している。理想的には本体部10による抗力が少ないほうがよいので、例えば最大抗力が0.04以下や0.03以下(なお、許容される最大抗力は適宜設定され得る)である迎角における揚力を翼型A及び翼型Bのそれぞれについて参照すると、図6に示されるように、逆翼型である翼型Bは翼型Aよりも揚力を小さくなっている。すなわち、逆翼型形状は、他の形状(特に翼型形状)と比して、抗力が少なく、不要な揚力も少ない形状であるといえる。特に、逆翼型形状においては、プラスの迎角であっても、プラスの揚力を生まない、もしくは、マイナスの揚力を生む(図6においては、プラス迎角約12度以下であればプラスの揚力を生まないと見てとれる)ことが示されている。なお、図6に示されるように、翼型Aにおいてもプラスの揚力を生まない、もしくは、マイナスの揚力を生む迎角範囲も存在するが、図7に示されるように抗力が大きく増加するため、前進の効率は低下する。
【0040】
したがって、前進する飛行体100が備える本体部10の形状は、逆翼型形状であると、本体部10による抗力が少なく、不要な揚力も少ないため、前進時の効率が向上する。
【0041】
より好ましくは、本体部10の形状が逆翼型であり、且つ、飛行体100が巡航時の姿勢において揚力を生まない迎角であるとよい。この場合、従来機の本体部による揚力が発生しないため、巡航時において回転翼の回転速度を抑えなくてもよく、飛行体の巡航速度を低下させない。さらに好ましくは、本体部10の形状が、飛行体100が逆翼型であり、且つ、巡航時の姿勢においてマイナスの揚力を生む迎角の場合には、揚力を生まない場合と比較して回転翼による揚力が抑えられるため、回転数の上昇に伴い揚力が増加することが許容され、併せて増加する推力により飛行体の巡航速度を向上させることが可能となる。
【0042】
図8図10に示されるように、飛行体100は、例えば宅配等の荷物を運ぶ用途等に利用するために、搭載物(輸送対象物)を内部に格納するなどして搭載可能な搭載部30を備えていてもよい。また、搭載部30は、本体部10や飛行部20と独立して変位可能となるよう、回動軸や1以上の自由度を有するジンバルといった接続部31を介して接続することで、飛行体100の姿勢にかかわらず、搭載部30及び内包する輸送対象物を所定の姿勢(例えば水平)に保つことが可能となる。
【0043】
搭載部30の姿勢保持をより積極的に行う場合には、角度を検出するセンサや、モータやサーボ等、搭載部の姿勢を保持し得る機構を使用してもよいし、ジンバルによる接続部31の位置を搭載部30の重心より上に設け、搭載部30の自重を利用した姿勢保持を行ってもよい。
【0044】
図11に示した模式図のように、図8の飛行体100の本体部10のような翼型Dは、キャンバーライン13が逆アーチ状となり、また、キャンバーライン13が翼弦12より下側となる逆翼型形状であり、上述と翼型Bと同様の効果が得られる。なお、翼型Aの他の例として、翼型Dを上下反転させた翼型Cを比較対象とする。
【0045】
図11の翼型C及び翼型Dを標準大気において約10m/sの大気に相対させた場合の、揚力特性を示したグラフを図12、抵抗特性を示したグラフを図13にそれぞれ示している。これらのグラフからも、同じ抗力の範囲内(例えば、最大抗力が0.04以下や0.03以下など)である迎角においては、逆翼型である翼型Dが翼型Cよりも揚力を小さくなっている。したがって、図11の逆翼型形状の本体部を備える飛行体でも、不要な揚力を抑え、かつ、抗力の増加を抑えることが可能となる。
【0046】
巡航時の本体部10が示す揚力特性及び抵抗特性は、巡航速度や本体部の形状、寸法等の様々な要因により変化するため、本体部の形状は飛行体の用途や運用環境を考慮して決定されることが望ましい。このとき、不要な揚力が少ない(さらには、マイナス揚力が発生する)形状を、より少ない抗力の増加で達成可能となる形状を選択することで、効率良く飛行体の前進速度を向上させる。
【0047】
<第2の実施の形態の詳細>
本発明による第2の実施の形態の詳細において、第1の実施の形態と重複する構成要素は同様の動作を行うので、再度の説明は省略する。
【0048】
図14及び図15に示されるように、本体部10は動翼11を備えていてもよい。動翼11を展開し、スポイラーの役割を持たせることで、本体部10が生む揚力を減少させることが可能となる。例えば、図5及び図11に示されるように、動翼11が展開していない状態ではプラスの揚力が大きい形状でも、動翼11を展開することによって本体部10が不要な揚力を少なくする、より好ましくは揚力を生まない、さらに好ましくはマイナスの揚力を生むことができる形状となる。特に、巡航速度が低速(例えば、対気速度10km/h程度)の用途の飛行体では、プラスの揚力を生む量の減少量よりも抗力の減少量を重視した形状に動翼11を備える本体部10を用いる方法が好ましい。
【0049】
また、動翼が展開せずともプラスの揚力を生まない本体部10に、さらに動翼11を設け、マイナスの揚力をより増やすことも可能である。
【0050】
各実施の形態における飛行体の構成は、複数を組み合わせて実施することが可能である。飛行体の製造におけるコストや、飛行体が運用される場所の環境や特性に合わせて、適宜好適な構成を検討することが望ましい。
【0051】
上述した実施の形態は、本発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良することができると共に、本発明にはその均等物が含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0052】
10 本体部
11 動翼
12 翼弦線
13 キャンバーライン
20 飛行部
21 フレーム
30 搭載部
31 接続部
100 飛行体
110a~110h プロペラ
111a~111h モータ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【手続補正書】
【提出日】2024-07-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロペラ及びモータを含む回転翼を複数有する飛行部と、
前記飛行部と接続する本体部を備え、
前記本体部は、動翼を有する、
ことを特徴とする飛行体。
【請求項2】
前記本体部は、前記動翼を展開せずに巡行する場合に、揚力を生まない形状である、
ことを特徴とする請求項1に記載の飛行体。
【請求項3】
前記本体部は、前記動翼を展開せずに巡行する場合に、マイナスの揚力を生む形状である、
ことを特徴とする請求項1に記載の飛行体。
【請求項4】
前記本体部は、前記動翼を展開せずに巡行する場合に、プラスの揚力を生む形状である、
ことを特徴とする請求項1に記載の飛行体。
【請求項5】
前記動翼は、前記本体部の上面に設けられる、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の飛行体。
【請求項6】
前記本体部は、巡行時に、マイナスの揚力を増やすために動翼を展開する、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の飛行体。
【請求項7】
さらに、搭載物を搭載可能な搭載部を備える、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載の飛行体。
【請求項8】
前記搭載部は、接続部を介して前記本体部に接続され、前記本体部と独立して変位可能である、
ことを特徴とする請求項に記載の飛行体。