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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107464
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】光学素子
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1343 20060101AFI20240801BHJP
   G02F 1/1347 20060101ALI20240801BHJP
   G02F 1/13 20060101ALN20240801BHJP
【FI】
G02F1/1343
G02F1/1347
G02F1/13 505
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024097514
(22)【出願日】2024-06-17
(62)【分割の表示】P 2023500579の分割
【原出願日】2021-12-15
(31)【優先権主張番号】P 2021024714
(32)【優先日】2021-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】黒川 多惠
(72)【発明者】
【氏名】小糸 健夫
(72)【発明者】
【氏名】池田 幸次朗
(57)【要約】
【課題】モアレを低減しつつも良好に配光を制御することができる光学素子を提供すること。
【解決手段】光学素子は、積層された少なくとも2つの液晶セルを含む光学素子であって、少なくとも2つの液晶セルの各々は、第1の方向に第1の透明電極と第2の透明電極とが交互に配置された第1の基板と、第1の方向と交差する第2の方向に第3の透明電極と第4の透明電極とが交互に配置された第2の基板と、第1の基板と第2の基板との間の液晶層と、を含み、第2の透明電極は、第1の方向に屈曲する第1の屈曲部を含み、第4の透明電極は、前記第2の方向に屈曲する第2の屈曲部を含む。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された少なくとも2つの液晶セルを含む光学素子であって、
前記少なくとも2つの液晶セルの各々は、
第1の方向に第1の透明電極と第2の透明電極とが交互に配置された第1の基板と、
前記第1の方向と交差する第2の方向に第3の透明電極と第4の透明電極とが交互に配置された第2の基板と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間の液晶層と、を含み、
前記第1の透明電極は、直線形状を有し、
前記第2の透明電極は、前記第1の方向に屈曲する第1の屈曲部を含み、
前記第4の透明電極は、前記第2の方向に屈曲する第2の屈曲部を含む、光学素子。
【請求項2】
前記第2の方向は、前記第1の方向と直交する、請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記第2の透明電極は、くの字形状を有する、請求項1または請求項2に記載の光学素子。
【請求項4】
前記第1の透明電極を介して隣接する一対の前記第2の透明電極は、前記第1の透明電極の延在方向を軸として線対称に設けられている、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項5】
前記第1の透明電極を介して隣接する一対の前記第2の透明電極は、前記第1の透明電極の延在方向を軸として非対称に設けられている、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項6】
前記第1の透明電極を介して隣接する一対の前記第2の透明電極は、前記第1の屈曲部の数が異なる、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項7】
前記第1の基板と前記第2の基板との間の基板間距離dと、前記第1の透明電極と前記第2の透明電極との第1の最大ピッチpとは、d/p≧1を満たす、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項8】
d/p≧2を満たす、請求項7に記載の光学素子。
【請求項9】
前記第1の最大ピッチpと、前記第1の透明電極と前記第2の透明電極との間の第1の最大電極間距離bとは、p/2≦bを満たす、請求項7または請求項8に記載の光学素子。
【請求項10】
前記基板間距離dと、前記第3の透明電極と前記第4の透明電極との第2の最大ピッチpは、d/p≧1を満たす、請求項7乃至請求項9のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項11】
d/p≧2を満たす、請求項10に記載の光学素子。
【請求項12】
前記第2の最大ピッチpと、前記第3の透明電極と前記第4の透明電極との間の第2の最大電極間距離bとは、p/2≦bを満たす、請求項10または請求項11に記載の光学素子。
【請求項13】
複数の前記第2の透明電極の形状は互いに異なり、
前記第1の透明電極と前記第2の透明電極との第1の最大ピッチpと、前記第1の基板と前記第2の基板との間の基板間距離dと、前記第1の透明電極および前記第2の透明電極の各々の幅aと、前記第1の透明電極と前記第2の透明電極との間の最小電極間距離bとは、a+b<p≦dを満たす、請求項1または請求項2に記載の光学素子。
【請求項14】
+b<p≦d/2を満たす、請求項13に記載の光学素子。
【請求項15】
前記第1の最大ピッチpと、前記第1の透明電極と前記第2の透明電極との間の第1の最大電極間距離bとは、p/2≦bを満たす、請求項13または請求項14に記載の光学素子。
【請求項16】
複数の前記第4の透明電極の形状は互いに異なり、
前記第3の透明電極と前記第4の透明電極との第2の最大ピッチpと、前記基板間距離dと、前記第3の透明電極および前記第4の透明電極の各々の幅aと、前記最小電極間距離bとは、a+b<p≦dを満たす、請求項13乃至請求項15のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項17】
+b<p≦d/2を満たす、請求項16に記載の光学素子。
【請求項18】
前記第2の最大ピッチpと、前記第3の透明電極と前記第4の透明電極との間の第2の最大電極間距離bとは、p/2≦bを満たす、請求項16または請求項17に記載の光学素子。
【請求項19】
前記少なくとも2つの液晶セルは、第1の液晶セルおよび第2の液晶セルを含み、
前記第1の液晶セルの前記第1の屈曲部は、前記第2の液晶セルの前記第1の屈曲部と重畳せず、
前記第1の液晶セルの前記第2の屈曲部は、前記第2の液晶セルの前記第2の屈曲部と重畳しない、請求項1に記載の光学素子。
【請求項20】
前記少なくとも2つの液晶セルは、第1の液晶セルおよび第2の液晶セルを含み、
前記第1の液晶セルの前記第1の透明電極の延在方向と前記第2の液晶セルの前記第1の透明電極の延在方向とのなす角αは、0度より大きく、かつ、4度以下である、請求項1乃至請求項19のいずれか一項に記載の光学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、液晶を利用した光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液晶に印加する電圧を調整し、液晶の屈折率が変化することを利用した光学素子、いわゆる液晶レンズが知られている。また、光源および液晶レンズを用いた照明装置の開発が進められている(例えば、特許文献1、特許文献2、または特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-317879号公報
【特許文献2】特開2010-230887号公報
【特許文献3】特開2014-160277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、液晶レンズを構成する液晶セルが積層された場合において、液晶に電圧を印加する電極の形状および配置が同一であると、光が屈折する方向の分布が同一となり、その結果、液晶セルの積層の仕方によっては光の干渉によるモアレまたは屈折率の波長依存性による色付きが生じる場合があった。平行に設けられた直線形状の電極の場合において、電極間距離が異なるように電極を形成する構成も提案されているが、電極間距離が大きすぎると、液晶セルの液晶が配向しにくくなるため、光の拡散性能(すなわち、光の配光)が低下する虞があった。
【0005】
本発明の一実施形態は、上記問題に鑑み、モアレを低減しつつも良好に配光を制御することができる光学素子を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る光学素子は、積層された少なくとも2つの液晶セルを含む光学素子であって、少なくとも2つの液晶セルの各々は、第1の方向に第1の透明電極と第2の透明電極とが交互に配置された第1の基板と、第1の方向と交差する第2の方向に第3の透明電極と第4の透明電極とが交互に配置された第2の基板と、第1の基板と第2の基板との間の液晶層と、を含み、第2の透明電極は、第1の方向に屈曲する第1の屈曲部を含み、第4の透明電極は、前記第2の方向に屈曲する第2の屈曲部を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態に係る光学素子の模式的な斜視図である。
図2A】本発明の一実施形態に係る光学素子の模式的な断面図である。
図2B】本発明の一実施形態に係る光学素子の模式的な断面図である。
図3A】本発明の一実施形態に係る光学素子において、液晶層の液晶の配向を示す模式的な断面図である。
図3B】本発明の一実施形態に係る光学素子において、液晶層の液晶の配向を示す模式的な断面図である。
図4A】本発明の一実施形態に係る光学素子において、電圧が印加されたときにおける液晶層の液晶分子の配向を示す模式的な断面図である。
図4B】本発明の一実施形態に係る光学素子において、電圧が印加されたときにおける液晶層の液晶分子の配向を示す模式的な断面図である。
図5A】本発明の一実施形態に係る光学素子による光の配光の制御を説明する模式的な断面図である。
図5B】本発明の一実施形態に係る光学素子による光の配光の制御を説明する模式的な断面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る光学素子に含まれる各透明電極に印加する電位を示すタイミングチャートである。
図7】本発明の一実施形態に係る光学素子の液晶セルにおいて、d/pに対する正面相対輝度を示すグラフである。
図8】本発明の一実施形態に係る光学素子の第1の液晶セルの第1の透明電極および第2の透明電極の形状および配置を説明する模式図である。
図9】本発明の一実施形態に係る光学素子の第1の液晶セルの第1の透明電極、第2の透明電極、第3の透明電極、および第4の透明電極の形状および配置を説明する模式図である。
図10】本発明の一実施形態に係る光学素子の第1の液晶セルの第1の透明電極および第2の透明電極の形状および配置を説明する模式図である。
図11】本発明の一実施形態に係る光学素子の第1の液晶セルの第1の透明電極および第2の透明電極の形状および配置を説明する模式図である。
図12】本発明の一実施形態に係る光学素子の第1の液晶セルの第1の透明電極および第2の透明電極の形状および配置を説明する模式図である。
図13】本発明の一実施形態に係る光学素子の第1の液晶セルの第1の透明電極および第2の透明電極の形状および配置を説明する模式図である。
図14】本発明の一実施形態に係る光学素子の第1の液晶セルの第1の透明電極および第2の透明電極と、第2の液晶セルの第1の透明電極および第2の透明電極との積層における配置を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の各実施形態において、図面等を参照しつつ説明する。但し、本発明は、その技術的思想の要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0009】
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、図示の形状そのものが本発明の解釈を限定するものではない。また、図面において、明細書中で既出の図に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、別図であっても同一の符号を付して、重複する説明を省略する場合がある。
【0010】
ある一つの膜を加工して複数の構造体を形成した場合、各々の構造体は異なる機能、役割を有する場合があり、また各々の構造体はそれが形成される下地が異なる場合がある。しかしながらこれら複数の構造体は、同一の工程で同一層として形成された膜に由来するものであり、同一の材料を有する。従って、これら複数の膜は同一層に存在しているものと定義する。
【0011】
ある構造体の上に他の構造体を配置する態様を表現するにあたり、単に「上」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある構造体に接して、直上に他の構造体を配置する場合と、ある構造体の上方に、さらに別の構造体を介して他の構造体を配置する場合との両方を含むものとする。
【0012】
<第1実施形態>
図1図7を参照して、本発明の一実施形態に係る光学素子10について説明する。
【0013】
[1.光学素子の構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る光学素子10の模式的な斜視図である。図1に示すように、光学素子10は、第1の液晶セル110、第2の液晶セル120、および光学弾性樹脂層130を含む。光学弾性樹脂層130は、第1の液晶セル110と第2の液晶セル120との間に設けられている。すなわち、第1の液晶セル110と第2の液晶セル120とは、光学弾性樹脂層130を間に挟んでz軸方向に積層されている。
【0014】
光学弾性樹脂層130は、第1の液晶セル110と第2の液晶セル120とを接着し、固定することができる。光学弾性樹脂層130としては、光学弾性樹脂、例えば、透光性を有したアクリル樹脂を含む接着材を用いることができる。
【0015】
図2Aおよび図2Bは、本発明の一実施形態に係る光学素子10の模式的な断面図である。具体的には、図2Aは、図1に示すA1-A2線に沿って切断されたzx面内の模式的な断面図であり、図2Bは、図1に示すB1-B2線に沿って切断されたyz面内の模式的な断面図である。なお、以下では、x軸方向およびy軸方向を、それぞれ、第1の方向および第2の方向として記載する場合がある。
【0016】
第1の液晶セル110は、第1の基板111-1、第2の基板111-2、第1の透明電極112-1、第2の透明電極112-2、第3の透明電極112-3、第4の透明電極112-4、液晶層113、第1の配向膜114-1、第2の配向膜114-2、およびシール材115を含む。第2の液晶セル120は、第1の基板121-1、第2の基板121-2、第1の透明電極122-1、第2の透明電極122-2、第3の透明電極122-3、第4の透明電極122-4、液晶層123、第1の配向膜124-1、第2の配向膜124-2、およびシール材125を含む。
【0017】
図1では、2つの液晶セル(第1の液晶セル110および第2の液晶セル120)を含む光学素子10を示したが、光学素子10に含まれる液晶セルの数は2つに限られない。光学素子10には、少なくとも2つの液晶セルが含まれていればよい。また、光学素子10は、必ずしも複数の液晶セルが同一の構造を有し、同一の方向で積層される必要はないが、以下では、便宜上、第1の液晶セル110と第2の液晶セル120とが同一の構造を有し、同一の方向で積層されるものとして説明する。そのため、以下では、第1の液晶セル110の構成のみを説明し、便宜上、第2の液晶セル120の構成の説明は省略する場合がある。
【0018】
第1の基板111-1上には、第1の透明電極112-1および第2の透明電極112-2が設けられている。第1の透明電極112-1および第2の透明電極112-2の各々はy軸方向に延在し、第1の透明電極112-1と第2の透明電極112-2とは、x軸方向に交互に配置されている。換言すると、第1の透明電極112-1および第2の透明電極112-2は、第1の基板111-1上に、櫛歯形状で形成されている。また、第1の透明電極112-1および第2の透明電極112-2を覆うように、第1の基板111-1上に第1の配向膜114-1が設けられている。
【0019】
第2の基板111-2上には、第3の透明電極112-3および第4の透明電極112-4が設けられている。第3の透明電極112-3および第4の透明電極112-4の各々は、x軸方向に延在し、第3の透明電極112-3と第4の透明電極112-4とは、y軸方向に交互に配置されている。換言すると、第3の透明電極112-3および第4の透明電極112-4は、第2の基板111-2上に、櫛歯形状で形成されている。また、第3の透明電極112-3および第4の透明電極112-4を覆うように、第2の基板111-2上に第2の配向膜114-2が設けられている。
【0020】
第1の基板111-1と第2の基板111-2とは、第1の基板111-1上の第1の透明電極112-1および第2の透明電極112-2と、第2の基板111-2上の第3の透明電極112-3および第4の透明電極112-4とが対向するように配置されている。したがって、第1の透明電極112-1および第2の透明電極112-2の延在方向と、第3の透明電極112-3および第4の透明電極112-4の延在方向は交差している。なお、第1の透明電極112-1および第2の透明電極112-2の延在方向と、第3の透明電極112-3および第4の透明電極112-4の延在方向は直交していてもよい。また、第1の基板111-1および第2の基板111-2の各々の周辺部には、シール材115が配置されている。すなわち、第1の基板111-1と第2の基板111-2とは、シール材115を介して接着されている。また、第1の基板111-1(より具体的には、第1の配向膜114-1)、第2の基板111-2(より具体的には、第2の配向膜114-2)、およびシール材115で囲まれた空間には、液晶が封入され、液晶層113が形成されている。なお、第1の基板111-1または第2の基板111-2上には、スペーサが散布され、またはフォトスペーサが形成されて、第1の基板111-1と第2の基板111-2とが貼り合わされてもよい。この場合、フォトスペーサにより、液晶層113のギャップを保持することができる。
【0021】
第1の基板111-1および第2の基板111-2の各々として、例えば、ガラス基板、石英基板、またはサファイア基板などの透光性を有する剛性基板が用いられる。また、第1の基板111-1および第2の基板111-2の各々として、例えば、ポリイミド樹脂基板、アクリル樹脂基板、シロキサン樹脂基板、またはフッ素樹脂基板などの透光性を有する可撓性基板を用いる構成も採用可能である。
【0022】
第1の透明電極112-1、第2の透明電極112-2、第3の透明電極112-3、および第4の透明電極112-4の各々は、液晶層113に電界を形成するための電極として機能する。第1の透明電極112-1、第2の透明電極112-2、第3の透明電極112-3、および第4の透明電極112-4の各々として、例えば、インジウム・スズ酸化物(ITO)またはインジウム・亜鉛酸化物(IZO)などの透明導電材料が用いられる。
【0023】
液晶層113は、液晶分子の配向状態に応じて、透過する光を屈折し、または透過する光の偏光状態を変化させることができる。液晶層113の液晶として、例えば、ネマティック液晶などを用いることができる。液晶は、本実施形態においてはポジ型を採用しているが、液晶分子の初期の配向方向などを変更することによりネガ型を採用する構成も可能である。また、液晶には、液晶分子にねじれを付与するカイラル剤が含まれていることが好ましい。
【0024】
第1の配向膜114-1および第2の配向膜114-2の各々は、液晶層113内の液晶分子を所定の方向に配列する。第1の配向膜114-1および第2の配向膜114-2の各々は、例えば、ポリイミド樹脂などを用いることができる。なお、第1の配向膜114-1および第2の配向膜114-2の各々は、ラビング法または光配向法などの配向処理によって配向特性が付与されてもよい。ラビング法は、配向膜の表面を一方向に擦る方法である。また、光配向法は、配向膜に直線偏光の紫外線を照射する方法である。
【0025】
シール材115は、第1の基板111-1と第2の基板111-2とを接着し、固定する。シール材115として、例えば、エポキシ樹脂接着材またはアクリル樹脂接着材などを用いることができる。接着材は、紫外線硬化型であってもよく、熱硬化型であってもよい。
【0026】
光学素子10は、少なくとも2つの液晶セル(第1の液晶セル110および第2の液晶セル120)を含むことにより、無偏光の光の配光を制御することができる。そのため、各基板の外側表面には、例えば、液晶表示素子の表裏面に設けられるような一対の偏光板を設ける必要はない。また、第1の液晶セル110では、第1の透明電極112-1、第2の透明電極112-2、第3の透明電極112-3、および第4の透明電極112-4のそれぞれに、異なる電圧を印加することによって、液晶層113の液晶の配向を制御することができる。第2の液晶セル120も同様である。
【0027】
[2.液晶の配向の制御]
図3Aおよび図3Bを参照して、液晶層113の液晶の配向について詳細に説明する。
【0028】
図3Aおよび図3Bは、本発明の一実施形態に係る光学素子10において、液晶層113の液晶分子の配向を示す模式的な断面図である。図3Aおよび図3Bは、それぞれ、図2Aおよび図2Bに示す第1の液晶セル110の断面図の一部に対応するものである。
【0029】
図3Aおよび図3Bに示すように、第1の基板111-1と第2の基板111-2とは、基板間距離dを有するように貼り合わされている。また、第1の基板111-1の第1の配向膜114-1および第2の基板111-2の第2の配向膜114-2は、それぞれ、x軸方向およびy軸方向に配向処理が行われている。そのため、液晶層113において、第1の基板111-1側の液晶分子は、透明電極に電圧を印加しない状態では、長軸がx軸方向に沿って配向する(図3Aおよび図3Bでは、便宜上、紙面左右方向に配向する液晶分子の配向方向を矢印の記号を用いて示す。)。すなわち、第1の基板111-1側の液晶分子の配向方向は、第1の透明電極112-1と第2の透明電極112-2の延在方向に対して直交している。また、第2の基板111-2側の液晶分子は、透明電極に電圧を印加しない状態では、長軸がy軸方向に沿って配向する(図3Aおよび図3Bでは、便宜上、紙面法線方向に配向する液晶分子の配向方向を丸印の中にバツを付した記号を用いて示す。)。すなわち、第2の基板111-2側の液晶分子の配向方向は、第3の透明電極112-3と第4の透明電極112-4の延在方向に対して直交している。したがって、液晶層113の液晶分子は、z軸方向において、第1の基板111-1から第2の基板111-2に向かうにつれて90度ねじれた状態で配向している。より具体的には、図4Aにおいては、第1の基板111-1側の液晶分子は、第1の配向膜114-1の配向方向に沿ってx軸方向(紙面左右方向)に長軸を向けた状態で配向されている。また、第2の基板111-2側の液晶分子は、第2の配向膜114-2の配向方向に沿ってy軸方向(紙面法線方向)に長軸を向けた状態で配向されている。また、これらの間にある液晶分子は、第1の基板111-1から第2の基板111-2に向かうにつれて徐々に長軸の向きをx軸方向からy軸方向に変化させている。
【0030】
続いて、図4Aおよび図4Bを参照して、電圧が印加されたときにおける液晶層113の液晶の配向について詳細に説明する。
【0031】
図4Aおよび図4Bは、本発明の一実施形態に係る光学素子10において、電圧が印加されたときにおける液晶層113の液晶分子の配向を示す模式的な断面図である。また、図4Aおよび図4Bでは、図3Aおよび図3Bと同様に、第1の配向膜114-1および第2の配向膜114-2の配向方向を、矢印または丸印の中にバツを付した記号を用いて図示している。
【0032】
図4Aおよび図4Bにおいては、第1の透明電極112-1および第3の透明電極112-3にLow電位が印加され、第2の透明電極112-2および第4の透明電極112-4にHigh電位が印加されている(図4Aおよび図4Bでは、便宜上、Low電位およびHigh電位を、それぞれ、「-」および「+」の記号を用いて図示している。)。すなわち、第1の透明電極112-1と第2の透明電極112-2との間および第3の透明電極112-3と第4の透明電極112-4との間には、電位差が生じている。この場合、第1の基板111-1側の液晶分子は、第1の透明電極112-1と第2の透明電極112-2との間に生じる電界(電位分布)にしたがって配向する。すなわち、第1の基板111-1側の液晶分子の長軸は、第1の透明電極112-1から第2の透明電極112-2へ向かう方向に沿って配向する。同様に、第2の基板111-2側の液晶分子は、第3の透明電極112-3から第4の透明電極112-4へ向かう方向に沿って配向する。なお、以下では、同一基板上で隣接する透明電極間に生じる電界を横電界と言う場合がある。
【0033】
さらに、液晶分子の配向について詳細に説明する。第1の基板111-1側の液晶分子は、無電界状態ではx軸方向に配向しているが、当該液晶分子の配向は、第1の透明電極112-1と第2の透明電極112-2との間の横電界の向きと同じである。そのため、平面視において第1の透明電極112-1と第2の透明電極112-2との間のほぼ中央に位置する液晶分子は、当該横電界によっても配向がほとんど変化しない。また、中央よりも第1の透明電極112-1または第2の透明電極112-2に近い液晶分子は、横電界に対応してz軸方向に傾き(チルト)を有して配向する。そのため、図4Aに示すように、第1の透明電極112-1と第2の透明電極112-2との間の横電界の影響によって、第1の基板111-1側の液晶分子は、全体として、隣接する透明電極間ごとに第1の基板111-1からみて第1の透明電極112-1から第2の透明電極112-2へ向かう凸の円弧状に配向する。同様に、第2の基板111-2側の液晶分子は、y軸方向に配向しているが、当該液晶分子の配向は、第3の透明電極112-3と第4の透明電極112-4との間の横電界の向きと同じである。そのため、第3の透明電極112-3と第4の透明電極112-4との間のほぼ中央に位置する液晶分子は、当該横電界によっても配向がほとんど変化しない。また、中央よりも第3の透明電極112-3または第4の透明電極112-4に近い液晶分子は、z軸方向に傾き(チルト)を有して配向する。そのため、図5Cに示すように、第3の透明電極112-3と第4の透明電極112-4との間の横電界の影響によって、第2の基板111-2側の液晶分子は、全体として、隣接する透明電極間ごとに第2の基板111-2からみて第3の透明電極112-3から第4の透明電極112-4へ向かう凸の円弧状に配向する。したがって、液晶層113に入射した光は、第1の基板111-1側または第2の基板111-2側の凸の円弧状に配向された液晶分子の屈折率分布にしたがって拡散されることになる。
【0034】
第1の基板111-1と第2の基板111-2とは、十分に離れた基板間距離dを有しているため、第1の基板111-1の第1の透明電極112-1と第2の透明電極112-2との間の横電界は、第2の基板111-2側の液晶分子の配向に対して影響を及ぼさない、または、無視できるほどに小さい。同様に、第2の基板111-2の第3の透明電極112-3と第4の透明電極112-4との間の横電界は、第1の基板111-1側の液晶分子の配向に対して影響を及ぼさない、または、無視できるほどに小さい。
【0035】
なお、本明細書において、第1の基板111-1側の液晶層113(または、液晶分子)とは、第1の基板111-1の表面からd/2までの液晶層(または、液晶分子)をいう。同様に、第2の基板111-2側の液晶層113(または、液晶分子)とは、第2の基板111-2の表面からd/2までの液晶層(または、液晶分子)をいう。
【0036】
第1の液晶セル110では、第1の透明電極112-1、第2の透明電極112-2、第3の透明電極112-3、および第4の透明電極のそれぞれに印加される電圧を制御することにより、液晶層113の液晶分子の配向を変化させることができる。液晶分子の配向の変化に伴い、液晶層113の屈折率分布が変化する。そのため、第1の液晶セル110は、透過する光を拡散することができる。光学素子10は、第1の液晶セル110の液晶層113および第2の液晶セル120の液晶層123の屈折率分布の変化を利用し、光学素子10を透過する光の配光を制御することができる。
【0037】
[3.光学素子による配光の制御]
図5Aおよび図5Bを参照して、光学素子10による光の配光の制御について詳細に説明する。
【0038】
図5Aおよび図5Bは、本発明の一実施形態に係る光学素子10による光の配光の制御を説明する模式的な断面図である。図5Aおよび図5Bに示す光学素子10は、図2Aに示す第1の液晶セル110および第2の液晶セル120の断面図の一部に対応するものである。図5Aに示す光学素子10では、いずれの透明電極にも電位が印可されていない。また、図5Bに示す光学素子10では、第1の液晶セル110の第1の透明電極112-1および第3の透明電極112-3にLow電位が印加され、第2の透明電極112-2および第4の透明電極112-4にHigh電位が印加されている。同様に、第2の液晶セル120の第1の透明電極122-1および第3の透明電極122-3にLow電位が印加され、第2の透明電極122-2および第4の透明電極122-4にHigh電位が印加されている。なお、図7Bでは、便宜上、Low電位およびHigh電位を、それぞれ、「-」および「+」の記号を用いて図示している。
【0039】
図5Aおよび図5Bに示す光学素子10では、第1の液晶セル110の第1の配向膜114-1および第2の液晶セル120の第1の配向膜124-1は、x軸方向に配向処理が行われている。一方、第1の液晶セル110の第2の配向膜114-2および第2の液晶セル120の第2の配向膜124-2は、y軸方向に配向処理が行われている。したがって、第1の液晶セル110では、第1の配向膜114-1の配向方向はx軸方向であり、第2の配向膜114-2の配向方向はy軸方向である。同様に、第2の液晶セル120では、第1の配向膜124-1の配向方向はx軸方向であり、第2の配向膜124-2の配向方向はy軸方向である。
【0040】
図5Aおよび図5Bでは、光は、第1の液晶セル110の第1の基板111-1に対して垂直な方向から入射し、第2の液晶セル120の第2の基板121-2から出射する。第1の液晶セル110の第1の基板111-1に入射する光は、x軸方向の偏光(P偏光成分)と、y軸方向の偏光(S偏光成分)とを有している。そこで、以下では、便宜上、光源から発せられる光のうち、x軸方向の偏光成分を第1の偏光成分310とし、また、y軸方向の偏光成分を第2の偏光成分320とし、これらの偏光成分が図5Bの光学素子10を透過する過程を説明する。
【0041】
第1の偏光成分310および第2の偏光成分320は、それぞれ、光源から出射された光のP偏光成分およびS偏光成分に対応する(図5B中の(1)参照)。なお、図5Aおよび図5Bでは、P偏光成分は矢印(紙面水平方向を示す矢印)を用いて図示され、S偏光成分は丸印にバツを付した記号(紙面法線方向を示す矢印)を用いて図示されている。
【0042】
第1の液晶セル110の第1の基板111-1側における液晶層113の液晶分子は、長軸がx軸方向に沿って配向されているため、図5Bに示すように、第1の透明電極112-1と第2の透明電極112-2との間に横電界が発生すると、当該液晶分子はx軸方向に屈折率分布を有する。また、第1の液晶セル110の第2の基板111-2側における液晶層113の液晶分子は、長軸がy軸方向に沿って配向されているため、第3の透明電極112-3と第4の透明電極112-4との間に横電界が発生すると、当該液晶分子はy軸方向に屈折率分布を有する。
【0043】
そのため、光学素子10(より具体的には、第1の液晶セル110)に入射する第1の偏光成分310は、第1の基板111-1に入射した後、第2の基板111-2に向かうにつれて、液晶配向のねじれに従ってその偏光成分がS偏光成分に変化する(図5B中の(2)~(4)参照)。より具体的には、第1の偏光成分310は、第1の基板111-1側ではx軸方向に偏光軸を有しているが、液晶層113の厚さ方向に通過する過程でその偏光軸を徐々に変化させ、第2の基板111-2側ではy軸方向に偏光軸を有することとなり、その後、第2の基板111-2側から出射される(図5B中の(5)参照)。ここで、図5Bに示すように、第1の透明電極112-1と第2の透明電極112-2との間に横電界が発生すると、当該横電界の影響で液晶分子の配向状態が図4Aのように変化し、屈折率分布が変化する。また、第1の偏光成分310は、第1の基板111-1側においては、その偏光軸が当該第1の基板111-1側における液晶層113の液晶分子の配向方向に平行であるため、当該液晶分子の屈折率分布の変化に応じてx軸方向に拡散する。また、第1の偏光成分310は、液晶層113内で偏光軸をx軸方向からy軸方向に変化させることによって、第2の基板111-2側においては、その偏光軸が当該第2の基板111-2側における液晶層113の液晶分子の配向方向に平行となる。ここで、図5Bに示すように、第3の透明電極112-3と第4の透明電極112-4との間に横電界が発生すると、当該横電界の影響で液晶分子の配向状態が図4Bのように変化し、屈折率分布が変化する。このため、第1の偏光成分310は、当該液晶分子の屈折率分布の変化に応じてy軸方向に拡散する。
【0044】
また、図5Bに示すように、光学素子10(より具体的には、第1の液晶セル110)に入射する前にS偏光成分であった第2の偏光成分320は、第1の基板111-1に入射した後、第2の基板111-2に向かうにつれて、液晶配向のねじれに従ってその偏光成分がP偏光成分に変化する(図5B中の(2)~(4)参照)。より具体的には、第2の偏光成分320は、第1の基板111-1側ではy軸方向に偏光軸を有しているが、液晶層113の厚さ方向に通過する過程でその偏光軸を徐々に変化させ、第2の基板111-2側ではx軸方向に偏光軸を有することとなり、その後、第2の基板111-2側から出射される(図5B中の(5)参照)。ここで、第1の透明電極112-1と第2の透明電極112-2との間に横電界が発生しても、第2の偏光成分320は、第1の基板111-1側においては、その偏光軸が当該第1の基板111-1側における液晶層113の液晶分子の配向方向に直交しているため、当該液晶分子の屈折率分布の影響を受けず、そのまま拡散せずに通過する。また、第2の偏光成分320は、液晶層113内で偏光軸をy軸方向からx軸方向に変化させることによって、第2の基板111-2側においては、その偏光軸が当該第2の基板111-2側における液晶分子の配向方向とも直交することになるため、当該液晶分子の屈折率分布の影響を受けず、そのまま拡散せずに通過する。
【0045】
すなわち、光学素子10に入射する前にS偏光成分であった第2の偏光成分320は、第1の液晶セル110を通過する過程で偏光軸をy軸方向からx軸方向に変化させてP偏光成分となるものの、第1の偏光成分310のような拡散は生じない。
【0046】
第2の液晶セル120の液晶層123の液晶分子も、第1の液晶セル110の液晶層113の液晶分子と同様の屈折率分布を有する。そのため、第2の液晶セル120内においても、基本的に、第1の液晶セル110内と同様の現象が生じる。一方、第1の偏光成分310および第2の偏光成分320は、第1の液晶セル110を通過することで、その偏光軸が入れ替わるため、液晶層113の液晶分子の屈折率分布の影響を受ける偏光成分も入れ替わる。すなわち、図5Bに示すように、第2の液晶セル120の第1の透明電極122-1と第2の透明電極122-2との間および第3の透明電極122-3と第4の透明電極112-4との間に横電界が発生しても、第2の液晶セル120を通過する第1の偏光成分310はその偏光軸をy軸方向から再びx軸方向に変化するものの(図5B中の(6)~(8)参照)、拡散は生じない。一方、第2の液晶セル120を通過する第2の偏光成分320は、その偏光軸をx軸方向から再びy軸方向に変化しつつ(図5B中の(6)~(8)参照)、かつ、液晶層123の液晶分子の屈折率分布の影響を受けて拡散する。
【0047】
以上からわかるように、光学素子10では、2つの液晶セル(第1の液晶セル110および第2の液晶セル120)を積層させることにより、光学素子10に入射される光の偏光状方向を2度にわたって変化させ、その結果、入射前と入射後での偏光方向を変わらなくすることができる(図5B中の(1)および(9)参照)。他方、当該光学素子10は、液晶セルの液晶層の液晶分子が有する屈折率分布を変化させ、透過する光を屈折させることができる。より具体的には、第1の液晶セル110が第1の偏光成分310(P偏光成分)の光をx軸方向、y軸方向、またはx軸とy軸の両方向に拡散させ、第2の液晶セル120が第2の偏光成分320(S偏光成分)の光をx軸方向、y軸方向、またはx軸とy軸の両方向に拡散させる。したがって、無偏光の光に対して、光の偏光状態を変えることなく、光を拡散させる場合、光学素子10の積層数は偶数であることが好ましい。
【0048】
また、上記では、主として図5Bを用いてそれぞれの偏光成分が光学素子10を通過する過程で拡散および偏光軸を変化させる過程を説明した。図5Aの光学素子10は、各透明電極に電位を印可していない状態(隣り合う透明電極間に電位差がない状態)であり、偏光成分を拡散させない点を除いては図5Bの光学素子と同じように偏光成分の偏光軸を変化させる。説明の重複を避けるべく、図5Aの光学素子を通過する偏光成分の説明は図5Bの(1)~(9)と同じ符号を付してその説明を省略する。
【0049】
なお、図5Aおよび図5Bに示すように、第1の液晶セル110と第2の液晶セル120との間には、光学弾性樹脂層130が設けられている。光は、第1の液晶セル110の第2の基板111-2と光学弾性樹脂層130との界面または第2の液晶セル120の第1の基板121-1と光学弾性樹脂層130との界面においても屈折され得る。そのため、光学弾性樹脂層130の光学弾性樹脂の屈折率は、第1の液晶セル110の第2の基板111-2および第2の液晶セル120の第1の基板121-1の屈折率に近いものが好ましい。また、光学素子10は、光源に近い位置に配置され、光源からの熱によって温度が上昇する場合がある。この場合、光学弾性樹脂層130の光学弾性樹脂の熱膨張の影響を緩和することができるように、光学弾性樹脂層130の厚さは、第1の液晶セル110における第1の基板111-1と第2の基板111-2との間または第2の液晶セル120における第1の基板121-1と第2の基板121-2との間の基板間距離dよりも大きいことが好ましい。
【0050】
光学素子10は、各透明電極に印加する電位によって、透過する光の配光を制御することができる。すなわち、光学素子10は、所定の配光パターンを形成することができる。ここで、一例として、図6を参照して、2つの液晶セル(第1の液晶セル110および第2の液晶セル120)を有する光学素子10を用いたx軸方向に拡がる配光パターンの形成について説明する。
【0051】
図6は、本発明の一実施形態に係る光学素子10に含まれる各透明電極に印加する電位を示すタイミングチャートである。なお、図6に記載された電位の符号(V11など)は、表1のとおりである。
【0052】
【表1】
【0053】
また、以下では、便宜上、各透明電極に印加する電位を、第1の電位(変動電位、例えば、Low電位が0VおよびHigh電位が30V)、第1の電位と位相が反転している第2の電位(変動電位、例えば、Low電位が0VおよびHigh電位が30V)、および第3の電位(中間電位、例えば、15V)として説明する。第3の電位は、Low電位とHigh電位との間の電位であり、固定電位であってもよく、変動電位であってもよい。なお、電圧の値は、図6に記載された0V、15V、および30Vに限られない。
【0054】
第1の液晶セル110では、第1の透明電極112-1および第2の透明電極112-2に、それぞれ、第1の電位および第2の電位が印加される。また、第3の透明電極112-3および第4の透明電極112-4の各々に第3の電位が印加される。第1の透明電極112-1に印加される第1の電位と、第2の透明電極112-2に印加される第2の電位とは、位相が反転している。そのため、第1の透明電極112-1と第2の透明電極112-2との間には、電位差(例えば、+30Vまたは-30V)が生じている。これに対し、第2の基板111-2側の第3の透明電極112-3と第4の透明電極112-4との間は、無電位状態となっている。また、第2の基板111-2側の第3の透明電極112-3および第4の透明電極112-4は、いずれの状態であっても、第1の基板111-1側の第1の透明電極112-1との間または第2の透明電極112-2との間に+15Vまたは-15Vが生じており、絶対値で見た場合に、第1の基板111-1側の一方の透明電極との間および他方の透明電極との間での電位差に偏りはない。
【0055】
これにより、第1の基板111-1側の液晶分子は、第1の透明電極112-1と第2の透明電極112-2との間の電位差に従って配向状態を変化させる(図4Aおよび図4Bなど参照)。一方、第2の基板111-2側の液晶分子は、第3の透明電極112-3と第4の透明電極112-4との間に電位差が生じておらず、また、第1の基板111-1側の電位による影響を受けないほど第1の基板111-1と第2の基板111-2とが十分に離れているため、初期配向方向から配向方向を変化させない。また、第3の透明電極112-3および第4の透明電極112-4に印加される第3の電位は第1の電位と第2の電位との間の中間電位であるため、第1の透明電極112-1と第2の透明電極112-2とに、Low電位とHigh電位とが交互に印加されても容量が蓄積されることはなく、第2の基板111-2側の液晶分子の配向状態が変化することはない。
【0056】
第2の液晶セル120では、第1の透明電極122-1および第2の透明電極122-2に、それぞれ、第1の電位および第2の電位が印加される。また、第3の透明電極122-3および第4の透明電極122-4の各々に第3の電位が印加される。第1の透明電極122-1に印加される第1の電位と、第2の透明電極122-2に印加される第2の電位とは、位相が反転している。そのため、第1の透明電極122-1と第2の透明電極122-2との間には、電位差(例えば、+30Vまたは-30V)が生じている。これに対し、第2の基板121-2側の第3の透明電極122-3と第4の透明電極122-4との間は、無電位状態となっている。また、第2の基板121-2側の第3の透明電極122-3および第4の透明電極122-4は、いずれの状態であっても、第1の基板121-1側の第1の透明電極122-1との間または第2の透明電極122-2との間に+15Vまたは-15Vが生じており、絶対値で見た場合に、第1の基板121-1側の一方の透明電極との間および他方の透明電極との間での電位差に偏りはない。
【0057】
これにより、第1の基板121-1側の液晶分子は、第1の透明電極122-1と第2の透明電極122-2との間の電位差に従って配向状態を変化させる(図4Aおよび図4Bなど参照)。一方、第2の基板121-2側の液晶分子は、第3の透明電極122-3と第4の透明電極122-4との間に電位差が生じておらず、また、第1の基板121-1側の電位による影響を受けないほど第1の基板121-1と第2の基板121-2とが十分に離れているため、初期配向方向から配向方向を変化させない。また、第3の透明電極122-3および第4の透明電極122-4に印加される第3の電位は第1の電位と第2の電位との間の中間電位であるため、第1の透明電極122-1と第2の透明電極122-2とに、Low電位とHigh電位とが交互に印加されても容量が蓄積されることはなく、第2の基板121-2側の液晶分子の配向状態が変化することはない。
【0058】
また、図6に示すように、第1の液晶セル110の第1の透明電極112-1および第2の透明電極112-2の電位変動は、それぞれ、第2の液晶セル120の第1の透明電極122-1および第2の透明電極122-2の電位変動と同期している。
【0059】
各透明電極に上述のような電位を印加した場合、第1の液晶セル110の第1の基板111-1側の液晶層113の液晶分子は、x軸方向の偏光を有する光をx軸方向に屈折することができる。そのため、第1の液晶セル110は、x軸方向の偏光を有する光をx軸方向に拡散することができる。
【0060】
また、第2の液晶セル120の第1の基板121-1側の液晶層123の液晶分子も、x軸方向の偏光を有する光をx軸方向に屈折させる。そのため、第2の液晶セル120も、x軸方向の偏光を有する光をx軸方向に拡散する。
【0061】
すなわち、各透明電極の電位が図6に示すものであるとき、光学素子10は、第1の液晶セル110の第1の基板111-1側から光が入射される(図5Aおよび図5Bに示すように、第1の液晶セル110の下方側から第1の基板111-1に向けて光が照射されることを意味する。)と、第1の液晶セル110を通過する過程において、x軸方向の偏光軸を有する第1の偏光成分310は第1の基板111-1側でx軸方向に拡散しつつ、偏光軸をy軸方向に変化させる。他方、y軸方向の偏光を有する第2の偏光成分320は、拡散することなく、偏光軸をy軸方向からx軸方向に変化させる。そして、これらの偏光成分はそのまま第2の液晶セル120に入射する。第1の液晶セル110内で拡散することなく、y軸方向からx軸方向に偏光軸を変化させた第2の偏光成分320は、第2の液晶セル120を通過する過程において、x軸方向に拡散し、その後、偏光軸をy軸方向に変化させる。他方、第1の液晶セル110内で拡散しつつ偏光軸をx軸方向からy軸方向に変化させた第1の偏光成分310は、拡散することなく偏光軸をy軸方向からx軸方向に変化させる。このように、光学素子10に入射する光は、第1の液晶セル110または第2の液晶セル120を通過する過程で、いずれもx軸方向に拡散することとなる。したがって、光学素子10を透過した光は、x軸方向に拡がる配光パターンを形成することができる。
【0062】
光の配光の分布を示す配光角は、透明電極に印加する電圧の大きさによって制御することができる。例えば、透明電極に印加する電圧を高くすると、配光角が大きくなり、光がより拡散される。また、配光角は、例えば、基板間距離dまたは隣接する透明電極間のピッチpによっても制御することができる。
【0063】
[4.基板間距離とピッチの相関関係]
図7を参照して、基板間距離dとピッチpとの相関関係について詳細に説明する。
【0064】
図7は、本発明の一実施形態に係る光学素子10の液晶セルにおいて、d/pに対する正面相対輝度(0度における相対輝度)を示すグラフである。基板間距離dは、図3A図4Bに示したように、第1の液晶セル110の第1の基板111-1と第2の基板111-2との間の距離(または、第2の液晶セル120の第1の基板121-1と第2の基板121-2との間の距離)である。また、ピッチpは、第1の基板111-1(または第1の基板121-1)または第2の基板111-2(または第2の基板121-2)上の隣接する2つの透明電極の中心間距離である。また、正面相対輝度は、第1の基板111-1(または第1の基板121-1)から入射され、第2の基板111-2(または第2の基板121-2)から出射される光において、第2の基板111-2の垂直方向(0度)から出射される光の輝度である。図7に示すグラフは、光学素子10がない場合(光源のみの場合)の光の輝度を1として規格化されている。したがって、図7に示すグラフのy軸は、光学素子10がない場合の輝度を1とした場合の相対輝度比ということもできる。
【0065】
なお、図7に示すグラフのデータを取得した液晶セルは、第1の基板111-1上に第1の透明電極112-1および第2の透明電極112-2が形成されているが、第2の基板111-2上に第3の透明電極112-3および第4の透明電極112-4が形成されていない。また、輝度の測定時には、第1の透明電極112-1にLow電位(0V)を印加し、第2の透明電極112-2にHigh電位(30V)を印加した。
【0066】
図7に示すように、d/pが大きくなると正面相対輝度は低下するが、d/p<1とd/p≧1とでは正面相対輝度の低下の割合が大きく異なる。d/p<1では、正面相対輝度がd/p=1に近づくにつれて大きく低下するものの、正面輝度比は0.2~0.4程度の正面輝度が測定された。これは、液晶セルによる光の拡散に伴う輝度の低下を示しているものの、当該拡散が未だ十分でないことを示している。これに対し、d/p≧1では、正面相対輝度が0.1以下となり、その後、d/pを大きくしても正面相対輝度は安定している。これは、d/p≧1では液晶セルによる光の拡散が十分であることを示している。すなわち、d/p≧1では、優れた光拡散が得られる。したがって、光学素子10においては、基板間距離dとピッチpがd/p≧1を満たすことが好ましく、d/p≧2を満たすことがさらに好ましい。
【0067】
また、透明電極材料は屈折率が高く、液晶セルの透過率に影響を及ぼす場合がある。そのため、透明電極の幅は小さいことが好ましい。すなわち、隣接する2つの透明電極の間の電極間距離bは、透明電極の幅a以下であることが好ましい。例えば、電極間距離bをピッチpとの関係で表せば、p/2≦bを満たすことが好ましい。
【0068】
以上説明したように、本実施形態に係る光学素子10は、各透明電極に印加する電圧を制御することにより、光学素子10を透過する光の配光を制御することができる。但し、各透明電極が単に直線状に延在されている場合、光の干渉によるモアレまたは屈折率の波長依存性による色付きが生じる。そのため、本実施形態に係る光学素子10は、モアレまたは色付きを低減することができる透明電極の形状および配置を有する。
【0069】
[5.透明電極の形状および配置]
図8は、本発明の一実施形態に係る光学素子10の第1の液晶セル110の第1の透明電極112-1および第2の透明電極112-2の形状および配置を説明する模式図である。
【0070】
図8に示すように、第1の液晶セル110の第1の基板111-1上の第1の透明電極112-1と第2の透明電極112-2とは、x軸方向に交互に配置され、第1の透明電極112-1および第2の透明電極112-2の各々は、y軸方向に延在するように設けられている。第1の透明電極112-1は、y軸方向に直線形状で設けられている。これに対し、第2の透明電極112-2は、x軸方向に屈曲する第1の屈曲部116-1を有するくの字形状で設けられている。すなわち、第2の透明電極112-2は、第1の透明電極112-1の延在方向(y軸方向)に対して所定の角度を有する直線部と、直線部を接続する第1の屈曲部116-1とを含む。なお、所定の角度は、0度以上4度以下と非常に小さい。そのため、第1の透明電極112-1の側縁は第1の配向膜114-1の配向方向(y軸方向)に対して垂直である一方、第2の透明電極112-2の側縁は第1の配向膜114-1の配向方向に対して上記の所定の角度だけ傾くことになる。また、y軸方向に対して角度を有して設けられる第2の透明電極112-2の直線部の幅(長辺間の距離)がaである場合、第2の透明電極112-2のx軸方向の長さはaよりも僅かに大きくなるものの、x軸方向における直線部の長さはaとみなしてよい。したがって、以下では、便宜上、x軸方向における第2の透明電極112-2の長さがaであるとして説明する。
【0071】
また、以下において、電極の延在方向とは、直線的に延在する電極の延在方向に平行な方向を指すものであって、より具体的には、第1の基板111-1側ではy軸方向、第2の基板111-2側ではx軸方向のことを示す。
【0072】
第1の透明電極112-1に隣接する2つの第2の透明電極112-2は、第1の透明電極112-1の延在方向を軸として線対称に設けられている。このため、図8に示すように、左側の第2の透明電極112-2と真ん中の第2の透明電極112-2とは、真ん中の第1の透明電極112-1から見た場合に互いの第1の屈曲部116-1が最も遠い位置にある。また、真ん中の第2の透明電極112-2と右側の第2の透明電極112-2とは、右側の第1の透明電極112-1から見た場合に互いの第1の屈曲部116-1が最も近い位置にある。図8に示す透明電極の形状および配置では、第1の透明電極112-1と第2の透明電極112-2とのピッチおよび第1の透明電極112-1と第2の透明電極との間の電極間距離がy軸方向にわたって徐々に変化するとともに、第2の透明電極112-2がy軸方向に対して傾いているために隣接する第1の透明電極112-1と第2の透明電極112-2との間に形成される電界もy軸方向にわたって微妙に変化する。そのため、光の干渉によるモアレおよび波長依存性による色付きを低減することができる。
【0073】
第1の透明電極112-1と第2の透明電極112-2とは、第1の屈曲部116-1において、第1の最大ピッチpおよび第1の最大電極間距離bを有する。すなわち、p=a+bを満たす。上述したように、光の配向、すなわち、配光角は、基板間距離dおよびピッチpによっても制御することができる。図8に示す透明電極の形状および配置では、d/p≧1を満たすことが好ましく、d/p≧2を満たすことがさらに好ましい。また、第1の最大ピッチpと第1の最大電極間距離bとの関係においては、p/2≦bを満たすことが好ましい。これらの条件を満たすことにより、第1の液晶セル110は、第1の透明電極112-1および第2の透明電極112-2に印加する電圧を制御して、透過する光を十分に拡散させることができる。
【0074】
なお、図8では、第1の屈曲部116-1は第2の透明電極112-2の長さ方向(y軸方向)にわたって1か所にのみ設けられている構成であるが、当該第1の屈曲部116-1が長さ方向にわたって複数設けられる構成も採用可能である。
【0075】
図9は、本発明の一実施形態に係る光学素子10の第1の液晶セル110の第1の透明電極112-1、第2の透明電極112-2、第3の透明電極112-3、および第4の透明電極の形状および配置を説明する模式図である。
【0076】
第1の液晶セル110の第2の基板111-2上の第3の透明電極112-3および第4の透明電極112-4は、90度回転させた第1の透明電極112-1および第2の透明電極112-2と同様の形状および配置を有する。すなわち、第3の透明電極112-3と第4の透明電極112-4とは、y軸方向に交互に配置され、第3の透明電極112-3および第4の透明電極112-4の各々は、x軸方向に延在するように設けられている。第3の透明電極112-3は、x軸方向に直線形状で設けられている。これに対し、第4の透明電極112-4は、y軸方向に屈曲する第2の屈曲部116-2を有するくの字形状で設けられている。また、第3の透明電極112-3に隣接する2つの第4の透明電極112-4は、第3の透明電極112-3の延在方向を軸として線対称に設けられている。そのため、本実施形態に係る光学素子10においても、各透明電極におけるピッチおよび電極間距離が変化しているため、モアレおよび色付きの発生を低減することができる。
【0077】
第3の透明電極112-3と第4の透明電極112-4とは、第2の屈曲部116-2において、第2の最大ピッチpおよび第2の最大電極間距離bを有する。第3の透明電極112-3および第4の透明電極112-4の各々の幅はaであり、p=a+bを満たす。図9に示す透明電極の形状および配置においても、d/p≧1を満たすことが好ましく、d/p≧2を満たすことがさらに好ましい。また、第2の最大ピッチpと第2の最大電極間距離bとの関係においては、p/2≦bを満たすことが好ましい。これらの条件を満たすことにより、第1の液晶セル110は、第3の透明電極112-3および第4の透明電極112-4に印加する電圧を制御して、透過する光を十分に拡散させることができる。
【0078】
以上説明したように、本実施形態に係る光学素子10は、各透明電極に印加する電圧を制御し、透過する光の配光を制御することができる。また、本実施形態に係る光学素子10では、各透明電極におけるピッチおよび電極間距離が変化しているため、モアレおよび色付きを低減することができる。
【0079】
<第2実施形態>
図10を参照して、第1実施形態で説明した第1の透明電極112-1および第2の透明電極112-2の形状および配置とは異なる第1の透明電極112A-1および第2の透明電極112A-2の形状および配置について説明する。
【0080】
図10は、本発明の一実施形態に係る光学素子10の第1の液晶セル110の第1の透明電極112A-1および第2の透明電極112A-2の形状および配置を説明する模式図である。なお、以下では、第1の透明電極112A-1および第2の透明電極112A-2の構成が、第1実施形態で説明した第1の透明電極112-1および第2の透明電極112-2の構成と同様であるとき、その説明を省略する場合がある。
【0081】
図10に示すように、第1の透明電極112A-1と第2の透明電極112A-2とは、x軸方向に交互に配置され、第1の透明電極112A-1および第2の透明電極112A-2の各々は、y軸方向に延在するように設けられている。第1の透明電極112A-1は、y軸方向に直線形状で設けられている。これに対し、第2の透明電極112A-2は、x軸方向に屈曲を有する曲線形状で設けられている。すなわち、第2の透明電極112A-2は、第1の透明電極112A-1の延在方向(y軸方向)に対して湾曲する曲線部と、x軸方向における曲線部の向きが変化する第1の頂部116A-1とを含む。なお、第1の透明電極112A-1に隣接する2つの第2の透明電極112A-2は、第1の透明電極112A-1の延在方向を軸として線対称に設けられている。そのため、第1の透明電極112A-1の側縁は第1の配向膜114-1の配向方向(y軸方向)に対して垂直である一方、第2の透明電極112-2の側縁は第1の配向膜114-1の配向方向に対して湾曲することになる。
【0082】
第1の透明電極112A-1と第2の透明電極112A-2とは、第1の頂部116A-1において、第1の最大ピッチpおよび第1の最大電極間距離bを有する。第1の透明電極112A-1および第2の透明電極112A-2の各々の幅はaであり、p=a+bを満たす。図10に示す透明電極の形状および配置においても、d/p≧1を満たすことが好ましく、d/p≧2を満たすことがさらに好ましい。また、第1の最大ピッチpと第1の最大電極間距離bとの関係においては、p/2≦bを満たすことが好ましい。これらの条件を満たすことにより、第1の液晶セル110は、第1の透明電極112A-1および第2の透明電極112A-2に印加する電圧を制御して、透過する光を十分に拡散させることができる。
【0083】
以上説明したように、本実施形態に係る光学素子10は、各透明電極に印加する電圧を制御し、透過する光の配光を制御することができる。また、本実施形態に係る光学素子10では、各透明電極におけるピッチおよび電極間距離がy軸方向にわたって徐々に変化するとともに、第2の透明電極112-2がy軸方向に対して湾曲しているために隣接する第1の透明電極112-1と第2の透明電極112-2との間に形成される電界もy軸方向にわたって微妙に変化する。そのため、モアレおよび色付きの発生を低減することができる。
【0084】
<第3実施形態>
図11を参照して、第1実施形態および第2実施形態で説明した透明電極の形状および配置とは異なる第1の透明電極112B-1および第2の透明電極112B-2の形状および配置について説明する。
【0085】
図11は、本発明の一実施形態に係る光学素子10の第1の液晶セル110の第1の透明電極112B-1および第2の透明電極112B-2の形状および配置を説明する模式図である。なお、以下では、第1の透明電極112B-1および第2の透明電極112B-2の構成が、第1実施形態で説明した第1の透明電極112-1および第2の透明電極112-2の構成と同様であるとき、その説明を省略する場合がある。
【0086】
図11に示すように、第1の透明電極112B-1と第2の透明電極112B-2とは、x軸方向に交互に配置され、第1の透明電極112B-1および第2の透明電極112B-2の各々は、y軸方向に延在するように設けられている。第1の透明電極112B-1は、y軸方向に直線形状で設けられている。これに対し、第2の透明電極112B-2は、x軸方向に屈曲する第1の屈曲部116B-1を有するくの字形状で設けられている。そのため、本実施形態に係る光学素子10においても、各透明電極におけるピッチおよび電極間距離が変化しているため、モアレおよび色付きの発生を低減することができる。
【0087】
また、図11に示す透明電極の形状および配置では、第1の透明電極112B-1に隣接する2つの第2の透明電極112B-2が、第1の透明電極112B-1の延在方向を軸として非対称に設けられている。具体的には、第1の透明電極112B-1に隣接する2つの第2の透明電極112B-2のそれぞれの第1の屈曲部116B-1が異なる位置に設けられている。そのため、透明電極の配置の対称性を低下させることができるため、さらに、モアレまたは色付きの発生を低減することができる。
【0088】
第1の透明電極112B-1と第2の透明電極112B-2とは、第1の屈曲部116B-1において、第1の最大ピッチpおよび第1の最大電極間距離bを有する。第1の透明電極112B-1および第2の透明電極112B-2の各々の幅はaであり、p=a+bを満たす。図11に示す透明電極の形状および配置においても、d/p≧1を満たすことが好ましく、d/p≧2を満たすことがさらに好ましい。また、第1の最大ピッチpと第1の最大電極間距離bとの関係においては、p/2≦bを満たすことが好ましい。これらの条件を満たすことにより、本実施形態に係る光学素子10の第1の液晶セル110は、第1の透明電極112B-1および第2の透明電極112B-2に印加する電圧を制御して、透過する光を十分に拡散させることができる。
【0089】
以上説明したように、本実施形態に係る光学素子10は、各透明電極に印加する電圧を制御し、透過する光の配光を制御することができる。また、本実施形態に係る光学素子10では、各透明電極におけるピッチおよび電極間距離が変化しているため、モアレおよび色付きの発生を低減することができる。
【0090】
<第4実施形態>
図12を参照して、第1実施形態~第3実施形態で説明した透明電極の形状および配置とは異なる第1の透明電極112C-1および第2の透明電極112C-2の形状および配置について説明する。
【0091】
図12は、本発明の一実施形態に係る光学素子10の第1の液晶セル110の第1の透明電極112C-1および第2の透明電極112C-2の形状および配置を説明する模式図である。なお、以下では、第1の透明電極112C-1および第2の透明電極112C-2の構成が、第1実施形態で説明した第1の透明電極112-1および第2の透明電極112-2の構成と同様であるとき、その説明を省略する場合がある。
【0092】
図12に示すように、第1の透明電極112C-1と第2の透明電極112C-2とは、x軸方向に交互に配置され、第1の透明電極112C-1および第2の透明電極112C-2の各々は、y軸方向に延在するように設けられている。第1の透明電極112C-1は、y軸方向に直線形状で設けられている。これに対し、第2の透明電極112C-2は、x軸方向に屈曲する複数の第1の屈曲部116C-1を含むジグザグ形状で設けられている。そのため、本実施形態に係る光学素子10においても、各透明電極におけるピッチおよび電極間距離が変化しているため、モアレおよび色付きの発生を低減することができる。
【0093】
また、図12に示す透明電極の形状および配置では、第1の透明電極112C-1に隣接する2つの第2の透明電極112C-2が、第1の透明電極112C-1の延在方向を軸として非対称に設けられている。具体的には、第1の透明電極112C-1に隣接する2つの第2の透明電極112C-2のそれぞれが有する第1の屈曲部116C-1の数が異なる。そのため、透明電極の配置の対称性を低下させることができるため、さらに、モアレまたは色付きの発生を低減することができる。
【0094】
第1の透明電極112C-1と第2の透明電極112C-2とは、複数の第1の屈曲部116C-1のうちの1つにおいて、第1の最大ピッチpおよび第1の最大電極間距離bを有する。第1の透明電極112C-1および第2の透明電極112C-2の各々の幅はaであり、p=a+bを満たす。図12に示す透明電極の形状および配置においても、d/p≧1を満たすことが好ましく、d/p≧2を満たすことがさらに好ましい。また、第1の最大ピッチpと第1の最大電極間距離bとの関係においては、p/2≦bを満たすことが好ましい。これらの条件を満たすことにより、本実施形態に係る光学素子10の第1の液晶セル110は、第1の透明電極112B-1および第2の透明電極112B-2に印加する電圧を制御して、透過する光を十分に拡散させることができる。
【0095】
以上説明したように、本実施形態に係る光学素子10は、各透明電極に印加する電圧を制御し、透過する光の配光を制御することができる。また、本実施形態に係る光学素子10では、各透明電極におけるピッチおよび電極間距離が変化しているため、モアレおよび色付きの発生を低減することができる。
【0096】
<第5実施形態>
図13を参照して、第1実施形態~第4実施形態で説明した透明電極の形状および配置とは異なる第1の透明電極112D-1および第2の透明電極112D-2の形状および配置について説明する。
【0097】
図13は、本発明の一実施形態に係る光学素子10の第1の液晶セル110の第1の透明電極112D-1および第2の透明電極112D-2の形状および配置を説明する模式図である。なお、以下では、第1の透明電極112D-1および第2の透明電極112D-2の構成が、第1実施形態で説明した第1の透明電極112-1および第2の透明電極112-2の構成と同様であるとき、その説明を省略する場合がある。
【0098】
図13に示すように、第1の透明電極112D-1と第2の透明電極112D-2とは、x軸方向に交互に配置され、第1の透明電極112D-1および第2の透明電極112D-2の各々は、y軸方向に延在するように設けられている。第1の透明電極112D-1は、y軸方向に直線形状に設けられている。これに対し、第2の透明電極112D-2は、x軸方向に屈曲する複数の第1の屈曲部116D-1を含むジグザグ形状で設けられている。そのため、本実施形態に係る光学素子10においても、各透明電極におけるピッチおよび電極間距離が変化しているため、モアレおよび色付きの発生を低減することができる。
【0099】
また、図13に示す透明電極の形状および配置では、第1の透明電極112D-1に隣接する2つの第2の透明電極112D-2が、第1の透明電極112D-1の延在方向を軸として非対称に設けられている。具体的には、第2の透明電極112D-2の第1の屈曲部116D-1の位置がランダムに設けられている。そのため、透明電極の配置の対称性を低下させることができるため、さらに、モアレまたは色付きの発生を低減することができる。ここで、第2の透明電極112D-2における第1の屈曲部116D-1の位置がランダムであるとは、第2の透明電極112D-2ごとに、第1の屈曲部116D-1の数、位置、および第1の屈曲部116D-1とこれに隣接する第1の透明電極112D-1との間の位置が異なることを言い、端的には第2の透明電極112D-2ごとに形状が異なることを言う。なお、この場合、第1の基板111-1上の複数の第2の透明電極112D-2の形状がすべて異なることが好ましいが、互いに隣接する複数本において形状が異なる組が繰り返し配列されていてもよい。第4の透明電極112D-4も同様である。
【0100】
第1の屈曲部116D-1をランダムに形成する場合、第1の透明電極112D-1と第2の透明電極112D-2との間の最小電極間距離bは、所定の設定値とすることができる。例えば、最小電極間距離bは、ユーザによって設定される値であってもよく、フォトリソグラフィーなどの精度によって決定される値であってもよい。
【0101】
第1の透明電極112D-1と第2の透明電極112D-2とは、複数の第1の屈曲部116D-1のうちの1つにおいて、第1の最大ピッチpおよび第1の最大電極間距離bを有する。第1の透明電極112D-1および第2の透明電極112D-2の各々の幅はaであり、p=a+bを満たす。図13に示す透明電極の形状および配置においても、d/p≧1を満たすことが好ましく、d/p≧2を満たすことがさらに好ましい。但し、図13に示す透明電極の形状および配置においては、最小電極間距離bが設定されており、p>a+bを満たす必要がある。したがって、図13に示す透明電極の形状および配置においては、a+b<p≦dを満たすことが好ましく、a+b<p≦d/2を満たすことがさらに好ましい。
【0102】
また、第1の最大ピッチpと第1の最大電極間距離bとの関係においては、p/2≦bを満たすことが好ましい。これらの条件を満たすことにより、本実施形態に係る光学素子10の第1の液晶セル110は、第1の透明電極112D-1および第2の透明電極112D-2に印加する電圧を制御して、透過する光を十分に拡散させることができる。
【0103】
以上説明したように、本実施形態に係る光学素子10は、各透明電極に印加する電圧を制御し、透過する光の配光を制御することができる。また、本実施形態に係る光学素子10では、各透明電極におけるピッチおよび電極間距離が変化しているため、モアレおよび色付きの発生を低減することができる。
【0104】
<第6実施形態>
図14を参照して、第1の液晶セル110および第2の液晶セル120の積層における透明電極の配置について説明する。
【0105】
図14は、本発明の一実施形態に係る光学素子10の第1の液晶セル110の第1の透明電極112-1および第2の透明電極112-2と、第2の液晶セル120の第1の透明電極122-1および第2の透明電極122-2との積層における配置を説明する模式図である。
【0106】
図14では、第1の液晶セル110と第2の液晶セル120とは、平面視における透明電極の位置が一致するように積層されていない。すなわち、第1の液晶セル110および第2の液晶セル120は、第1の液晶セル110の第1の透明電極112-1の延在方向と第2の液晶セル120の第1の透明電極122-1の延在方向とのなす角αを有して積層されている。角度αは、例えば、0度以上4度以下である。第1の液晶セル110の透明電極の延在方向と、第2の液晶セル120の透明電極の延在方向とをずらすことで、液晶セル間においても対称性を低下させることができる。そのため、モアレおよび色付きの発生を低減することができる。なお、第1の液晶セル110の第1の透明電極112-1の第1の屈折部と、第2の液晶セル120の第1の透明電極112-1の第1の屈折部とは、重畳していないことが好ましい。第2の屈折部も同様である。液晶セル間にける対称性をさらに低下させることができ、さらに、モアレおよび色付きの発生を低減することができる。
【0107】
以上説明したように、本実施形態に係る光学素子10は、各透明電極に印加する電圧を制御し、透過する光の配光を制御することができる。また、本実施形態に係る光学素子10では、液晶セルの積層方向においても各透明電極におけるピッチおよび電極間距離が変化しているため、さらに、モアレおよび色付きを低減することができる。
【0108】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例および修正例に相当し得るものであり、それら変更例および修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。例えば、上述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0109】
また、本実施形態において態様によりもたらされる他の作用効果について本明細書の記載から明らかなもの、または当業者において適宜想到し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0110】
10:光学素子、 110:第1の液晶セル、 111-1:第1の基板、 111-2:第2の基板、 112-1、112A-1、112B-1、112C-1、112D-1:第1の透明電極、 112-2、112A-2、112B-2、112C-2、112D-2:第2の透明電極、 112-3:第3の透明電極、 112-4:第4の透明電極、 113:液晶層、 114-1:第1の配向膜、 114-2:第2の配向膜、 115:シール材、 116-1、116B-1、116C-1、116D-1:第1の屈曲部、 116A-1:第1の頂部、 116-2:第2の屈曲部、 120:第2の液晶セル、 121-1:第1の基板、 121-2:第2の基板、 122-1:第1の透明電極、 122-2:第2の透明電極、 122-3:第3の透明電極、 122-4:第4の透明電極、 123:液晶層、 124-1:第1の配向膜、 124-2:第2の配向膜、 125:シール材、 130:光学弾性樹脂層、 310:第1の偏光成分、 320:第2の偏光成分
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
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