(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107475
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】熱交換器及び空気調和機
(51)【国際特許分類】
F28F 9/013 20060101AFI20240801BHJP
F28F 1/32 20060101ALI20240801BHJP
F28F 21/08 20060101ALI20240801BHJP
F24F 1/0067 20190101ALI20240801BHJP
【FI】
F28F9/013 B
F28F1/32 D
F28F21/08 A
F24F1/0067
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024097785
(22)【出願日】2024-06-18
(62)【分割の表示】P 2021159143の分割
【原出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂巻 智彦
(72)【発明者】
【氏名】大宮 彰
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 友哉
(72)【発明者】
【氏名】仙石 尚人
(57)【要約】
【課題】熱交換器を構成する伝熱管について、出代部分の強度を向上させる。
【解決手段】熱交換器10は、軸方向に延びる複数の伝熱管20と、軸方向におけるピッチを規定する第1バーリング部42を有し、伝熱管20に接続される複数のフィン40と、前記軸方向においてフィン40の一端側に配置されて伝熱管20を支持し、前記一端側に延びる伝熱管20の外周面に沿って前記一端側に延びる第2バーリング部34を有する板材30と、を備え、第2バーリング部34の立上げ量L2が、第1バーリング部42の立上げ量L1の2倍以上である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びる複数の伝熱管(20)と、
前記軸方向におけるピッチを規定する第1バーリング部(42)を有し、前記伝熱管(20)に接続される複数のフィン(40)と、
前記軸方向において前記フィン(40)の一端側に配置されて前記伝熱管(20)を支持し、前記一端側に延びる前記伝熱管(20)の外周面に沿って前記一端側に延びる第2バーリング部(34)を有する板材(30)と、を備え、
前記第2バーリング部(34)の立上げ量(L2)が、前記第1バーリング部(42)の立上げ量(L1)の2倍以上である、熱交換器(10)。
【請求項2】
前記第2バーリング部(34)の板厚(D2)が、前記板材(30)の前記第2バーリング部(34)以外の部分(41)の板厚(D1)の1/2以下である、請求項1に記載の熱交換器(10)。
【請求項3】
前記第2バーリング部(34)の立上げ量(L2)が3mm以上である、請求項1又は請求項2に記載の熱交換器(10)。
【請求項4】
前記伝熱管(20)の材質がアルミニウムを主体とするアルミニウム合金である、請求項1~3の何れか一項に記載の熱交換器(10)。
【請求項5】
利用側熱交換器(51a)を有する利用側ユニット(51)と、熱源側熱交換器(52a)を有する熱源側ユニット(52)と、前記利用側熱交換器(51a)及び前記熱源側熱交換器(52a)を接続する冷媒配管(53)と、を含む冷媒回路(54)で冷媒を循環させて、前記利用側ユニット(51)が配置される対象空間(S1)の空気調和を行う空気調和機(50)であって、
前記利用側熱交換器(51a)が、請求項1~4の何れか一項に記載の前記熱交換器(10)である、空気調和機(50)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱交換器及び空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の伝熱管、及び伝熱管の表面部分に設けられた複数のフィンを有する熱交換器について、伝熱管の軸方向におけるフィンの外側で伝熱管を支持するための板材(以下、管板と称する)を備えた構成が知られている(特許文献1参照)。前記熱交換器の伝熱管は、管板から外側に延びている部分(以下、出代部分とも称する)を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の前記熱交換器は、伝熱管の出代部分で破損することが多い。
【0005】
本開示は、熱交換器を構成する伝熱管について、出代部分の強度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の熱交換器は、軸方向に延びる複数の伝熱管と、前記軸方向におけるピッチを規定する第1バーリング部を有し、前記伝熱管に接続される複数のフィンと、前記軸方向において前記フィンの一端側に配置されて前記伝熱管を支持し、前記一端側に延びる前記伝熱管の外周面に沿って前記一端側に延びる第2バーリング部を有する板材と、を備え、前記第2バーリング部の立上げ量が、前記第1バーリング部の立上げ量の2倍以上である。
【0007】
本開示の熱交換器では、熱交換器を構成する伝熱管について、出代部分の外周面に沿って、第1バーリング部の2倍以上の立上げ量を有する第2バーリング部を設けることによって、出代部分の強度を向上させることができる。
【0008】
(2)本開示の熱交換器は、前記第2バーリング部の板厚が、前記板材の前記第2バーリング部以外の部分の板厚の1/2以下であると好ましい。
【0009】
この場合、第2バーリング部の立上げ量を確保することができる。
【0010】
(3)本開示の熱交換器は、前記第2バーリング部の立上げ量が3mm以上であると好ましい。
【0011】
この場合、出代部分の強度を確実に向上させることができる。
【0012】
(4)本開示の熱交換器は、前記伝熱管の材質がアルミニウムを主体とするアルミニウム合金であると好ましい。
【0013】
本開示の熱交換器では、伝熱管の材質がアルミニウム合金である場合に、出代部分の強度を向上させることができる。
【0014】
(5)本開示の空気調和機は、利用側熱交換器を有する利用側ユニットと、熱源側熱交換器を有する熱源側ユニットと、前記利用側熱交換器及び前記熱源側熱交換器を接続する冷媒配管と、を含む冷媒回路で冷媒を循環させて、前記利用側ユニットが配置される対象空間の空気調和を行う空気調和機であって、前記利用側熱交換器が、前記熱交換器である。
【0015】
この場合、空気調和機の利用側ユニットに用いられる熱交換器について、出代部分の強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本開示の熱交換器(正面側)の概略的な構成図。
【
図2】本開示の熱交換器(上面側)の概略的な構成図。
【
図3】板材による伝熱管の支持部を示した部分断面図。
【
図4】出代部分の長さと伝熱管の破壊圧力比との関係を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(熱交換器の構成)
図1は、本開示の熱交換器(正面側)の概略的な構成図である。
図2は、本開示の熱交換器(上面側)の概略的な構成図である。
図1及び
図2に示す熱交換器10は、本開示の熱交換器の一実施形態であり、例えば蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う冷媒回路を構成する熱交換器として用いることができる。
図1及び
図2に示すように、熱交換器10は、フィンアンドチューブ型の熱交換器であり、伝熱管20、板材30、及びフィン40を備えている。
【0018】
伝熱管20は、複数の直管21及び複数の曲管22が組み合わせて構成されている。本実施形態の熱交換器10では、複数の直管21が、同一平面上において互いに平行で等間隔となるように配置されている。なお、以下の説明では、複数の直管21が列置されている方向を上下方向と称し、複数の直管21が配置されている同一平面に直交する方向を前後方向と称し、複数の直管21が延びている方向を左右方向と称する。なお、本実施形態では、複数の直管21が同一平面上に配置されている場合を例示しているが、本開示の熱交換器における複数の直管の配置位置はこれにされず、例えば、上下方向に隣接する直管同士の配置位置が前後方向にずれていてもよい。
【0019】
直管21の左右方向の端部には、拡径部23が形成されている。伝熱管20では、上下方向に隣接する拡径部23同士が曲管22によって接続されている。伝熱管20は、上下方向に隣接する直管21の拡径部23同士を曲管22で接続することによって一連とされ、
図1における右上方から右下方まで繋がる流路を形成している。
【0020】
熱交換器10は、互いに平行に配置された一対の板材30によって、相互に平行な姿勢で間隔を保ちつつ複数の直管21が支持されると共に、各直管21にろう付けされたフィン40を主体として構成されている。伝熱管20及びフィン40は、後述するアルミニウム合金により構成されている。
【0021】
本実施形態では、伝熱管20の材質をアルミニウム合金としている。具体的には、伝熱管20は、Si、Fe、Mn、Ti、Cu等を含むアルミニウム合金を材料として、製造されている。熱交換器10では、直管21の材質がアルミニウム合金である場合に、出代部分24の強度を向上させることができる。なお、本実施形態の伝熱管20は、アルミニウム合金を材料として製造されているが、本開示の熱交換器における伝熱管は、純粋なアルミニウム製であってもよい。
【0022】
熱交換器10では、複数の直管21を板材30によって支持している。板材30は、前後方向及び上下方向に延びる第1部分31と、左右方向及び上下方向に延びる第2部分32と、を備えたアングル状の板部材である。第1部分31には、直管21を挿通するための孔部33が複数形成されている。第1部分31には、孔部33に挿通された直管21の外周面に沿う円筒状の立ち上がり部分(バーリング部34)が形成されている。バーリング部34は、孔部33に対応する位置に下孔を形成し、当該下孔に型を挿通すると共にプレス加工(バーリング加工)することによって形成される。以下の説明では、説明の便宜上、バーリング部34を第2バーリング部34と称する。円筒状である第2バーリング部34の内孔は、孔部33に連通している。
【0023】
図3は、板材による伝熱管の支持部を示した部分断面図である。
図1~
図3に示すように、フィン40は、上下方向及び前後方向に延びる板状の部材であり、左右方向に平行に複数並べて配置されている。フィン40は、アルミニウム材あるいはアルミニウム合金材で構成されているフィン本体41を有している。フィン40では、フィン本体41の前後方向の中央付近において、上下方向に沿って、伝熱管20の直管21を挿通するための複数の孔部43が形成されている。フィン40には、孔部43に挿通された直管21の外周面に沿う円筒状のバーリング部42が形成されている。バーリング部42は、孔部43に対応する位置に下孔を形成し、当該下孔に型を挿通すると共にプレス加工(バーリング加工)することによって形成される。以下の説明では、説明の便宜上、バーリング部42を第1バーリング部42と称する。円筒状である第1バーリング部42の内孔は、孔部43に連通している。第1バーリング部42は、左右方向に複数配置されるフィン40の左右方向のピッチを規定することができる。換言すると、第1バーリング部42の立上げ量L1(
図3参照)が、熱交換器10におけるフィン40のフィンピッチとなる。
【0024】
熱交換器10では、直管21が、当該直管21の軸方向について、板材30より外側に延びている。以下の説明では、直管21の板材30より外側に延びている部分を出代部分24と称する。なお、本実施形態の熱交換器10では、左右一対の板材30を有しており、板材30の左右外側に出代部分24を備えている、本開示の熱交換器における板材(直管を支持する部材)は少なくとも左右何れか一方に1個以上備えていればよい。
【0025】
(第2バーリング部の立上げ量について)
図4は、出代部分の長さと伝熱管の破壊圧力比との関係を示した図である。
図3に示すように、熱交換器10では、第2バーリング部34の立上げ量L2を、第1バーリング部42の立上げ量L1の2倍以上としている。このような構成の熱交換器10では、第2バーリング部34の立上げ量L2が、従来の熱交換器に比べて増大されている。このような熱交換器10では、出代部分24の外周面に沿って第2バーリング部34を設けることによって、出代部分24の長さを縮小させることができ、これにより、出代部分24の強度を向上させることができる。
【0026】
図3に示すように、熱交換器10では、第2バーリング部34の板厚D2を、板材30の第2バーリング部34以外の部分の板厚D1の1/2以下としている。熱交換器10では、第2バーリング部34の板厚D2が、板材30の第2バーリング部34以外の部分(具体的には、フィン本体41)の板厚D1の1/2以下となるようにバーリング加工を施すことによって、第2バーリング部34の立上げ量L2を確保することができ、これにより、立上げ量L2を立上げ量L1の2倍以上とすることができる。
【0027】
具体的には、本開示の熱交換器10では、第2バーリング部34の立上げ量L2を3mm以上としている。
図4に示す「破壊圧力比」とは、出代部分24が「0」である場合に、伝熱管20が破壊に至る圧力を基準圧力(100%)とし、伝熱管20が基準圧力の何%の圧力で破壊に至るかを示したグラフである。
図4によれば、例えば、出代部分24の長さが10mmであれば、基準圧力の93~94%程度の圧力で伝熱管20が破壊に至ることがわかる。
図4からは、伝熱管20は、出代部分24の長さが長いほど、破壊圧力比が小さくなる(より小さい圧力で破壊が生じる)という性質を有していることが判る。換言すると、出代部分24の長さを短くすれば、伝熱管20の破壊圧力比を大きくすることができる(換言すれば、伝熱管20が破壊されにくくなる)ことが判る。
【0028】
図4に示すように、出代部分の長さと伝熱管の破壊圧力比との関係は、直線状の近似式で表すことができる。具体的には、伝熱管20では、出代部分24の長さを3mm短くした場合、伝熱管20の破壊圧力比を5%程度向上することができる。熱交換器10では、第2バーリング部34の立上げ量L2を3mm以上とすることによって、出代部分24の長さを3mm以上短くした場合と同じ効果を得ることができる。このため、熱交換器10では、第2バーリング部34の立上げ量L2を3mm以上としており、これにより、伝熱管20の破壊圧力比を5%程度向上させることができる。
【0029】
(空気調和機の構成について)
図5は、本開示の空気調和機の概略的な構成図である。
図5に示す空気調和機50は、ビルや工場等の建物Bに設置されて空調対象空間(屋内S1)の空気調和を実現する。空気調和機50は、蒸気圧縮式の冷凍サイクル運転を行うことで空調対象空間を冷暖房する装置であり、利用側ユニット(室内機)51、熱源側ユニット(室外機)52及び冷媒配管53を備えている。利用側ユニット51は、利用側熱交換器51a及び室内ファン51bを備えている。熱源側ユニット52は、熱源側熱交換器52a及び室外ファン52bを備えている。
【0030】
空気調和機50では、利用側熱交換器51aと熱源側熱交換器52aとを冷媒配管53で接続して、冷媒回路54を構成している。なお、冷媒回路54は、図示しない圧縮機、四路切換弁、室外膨張弁を含んでいる。冷媒回路54は、利用側熱交換器51aと熱源側熱交換器52aとの間で冷媒を循環させる。
【0031】
空気調和機50では、利用側熱交換器51aとして前述した熱交換器10を採用している。このような構成の空気調和機50では、利用側ユニット51に用いられる利用側熱交換器51aについて、出代部分24の強度を向上させることができる。このため、空気調和機50では、利用側熱交換器51aがより破壊されにくくなっており、利用側ユニット51(利用側熱交換器51a)の寿命を延ばすことができる。なお、本実施形態では、利用側熱交換器51aに熱交換器10を採用した場合を例示しているが、熱源側熱交換器52aについて熱交換器10を採用してもよい。
【0032】
[実施形態の作用効果]
(1)上記実施形態で示した熱交換器10は、軸方向に延びる複数の直管21と、軸方向におけるピッチを規定する第1バーリング部42を有し、直管21に接続される複数のフィン40と、軸方向においてフィン40の一端側に配置されて直管21を支持し、前記一端側に延びる直管21の外周面に沿って前記一端側に延びる第2バーリング部34を有する板材30と、を備え、第2バーリング部34の立上げ量L2が、第1バーリング部42の立上げ量L1の2倍以上である。
【0033】
このような熱交換器10によれば、熱交換器10を構成する伝熱管20について、出代部分の外周面に沿って、第1バーリング部42の2倍以上の立上げ量を有する第2バーリング部34を設けることによって、出代部分24の強度を向上させることができる。
【0034】
(2)上記実施形態で示した熱交換器10では、第2バーリング部34の板厚D2が、板材30の第2バーリング部34以外の部分の板厚D1の1/2以下となっている。
【0035】
この場合、第2バーリング部34の立上げ量L2を確保することができる。
【0036】
(3)上記実施形態で示した熱交換器10では、第2バーリング部34の立上げ量L2が3mm以上となっている。
【0037】
この場合、出代部分24の強度を確実に向上させることができる。
【0038】
(4)上記実施形態で示した熱交換器10では、直管21の材質がアルミニウムを主体とするアルミニウム合金である。
【0039】
熱交換器10では、直管21の材質がアルミニウム合金である場合に、出代部分24の強度を向上させることができる。
【0040】
(5)上記実施形態で示した空気調和機50は、利用側熱交換器51aを有する利用側ユニット51と、熱源側熱交換器52aを有する熱源側ユニット52と、利用側熱交換器51a及び熱源側熱交換器52aを接続する冷媒配管53と、を含む冷媒回路54で冷媒を循環させて、利用側ユニット51が配置される屋内S1の空気調和を行う。空気調和機50では、利用側熱交換器51aが、熱交換器10である。
【0041】
この場合、空気調和機50の利用側ユニット51に用いられる利用側熱交換器51aについて、出代部分24の強度を向上させることができる。
【0042】
なお、本開示は、以上の例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0043】
10 :熱交換器
11 :室内機
20 :伝熱管
21 :直管(伝熱管)
23 :出代部分
30 :板材
34 :第2バーリング部
40 :フィン
42 :第1バーリング部
50 :空気調和機
51 :利用側ユニット
51a :利用側熱交換器
52 :熱源側ユニット
52a :熱源側熱交換器
53 :冷媒配管
54 :冷媒回路
S1 :(空気調和を行う)対象空間
L1 :(第1バーリング部の)立上げ量
L2 :(第2バーリング部の)立上げ量
D1 :(板材の)板厚
D2 :(第2バーリング部の)板厚