(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107483
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】眼科用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4166 20060101AFI20240801BHJP
A61K 31/4745 20060101ALI20240801BHJP
A61K 31/185 20060101ALI20240801BHJP
A61K 33/30 20060101ALI20240801BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240801BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240801BHJP
A61K 31/203 20060101ALI20240801BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20240801BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240801BHJP
【FI】
A61K31/4166
A61K31/4745
A61K31/185
A61K33/30
A61K47/10
A61K9/08
A61K31/203
A61K47/24
A61K47/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2024098469
(22)【出願日】2024-06-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 大輝
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雅貴
(57)【要約】
【課題】(A)アラントイン、ベルベリン、ベルベリン塩、アズレンスルホン酸、アズレンスルホン酸塩、硫酸亜鉛及び乳酸亜鉛から選ばれる1種以上と、(B1)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとを含む眼科用組成物が、経時によりpHが低下するという課題を解決する。
【解決手段】(A)アラントイン、ベルベリン、ベルベリン塩、アズレンスルホン酸、アズレンスルホン酸塩、硫酸亜鉛及び乳酸亜鉛から選ばれる1種以上、及び
(B)(B1)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールと、(B2)ジブチルヒドロキシトルエンとを含有する組成物であり、この組成物中のジブチルヒドロキシトルエン量が50~125ppmである組成物
を含む眼科用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アラントイン、ベルベリン、ベルベリン塩、アズレンスルホン酸、アズレンスルホン酸塩、硫酸亜鉛及び乳酸亜鉛から選ばれる1種以上、及び
(B)(B1)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールと、(B2)ジブチルヒドロキシトルエンとを含有する組成物であり、この組成物中のジブチルヒドロキシトルエン量が50~125ppmである組成物
を含む眼科用組成物。
【請求項2】
(B)組成物中の(B1)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールが、ポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレン(70)グリコール、ポリオキシエチレン(196)ポリオキシプロピレン(67)グリコール及びポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコールから選ばれる1種以上である請求項1記載の眼科用組成物。
【請求項3】
さらに、(C)ビタミンAを含む、請求項1記載の眼科用組成物。
【請求項4】
さらに、(D)ホウ酸、トロメタモール及びエデト酸塩から選ばれる1種以上を含む、請求項1記載の眼科用組成物。
【請求項5】
pHが5~8である、請求項1記載の眼科用組成物。
【請求項6】
ソフトコンタクトレンズ装用時に点眼可能である、請求項1~5のいずれか1項記載の眼科用組成物。
【請求項7】
(A)アラントイン、ベルベリン、ベルベリン塩、アズレンスルホン酸、アズレンスルホン酸塩、硫酸亜鉛及び乳酸亜鉛から選ばれる1種以上、及び
(B1)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール
を含む眼科用組成物において、
上記(B1)成分として、
(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールと、ジブチルヒドロキシトルエンとを含有する組成物であり、この組成物中のジブチルヒドロキシトルエン量が50~125ppmである組成物
を配合する、上記眼科組成物のpHの安定化方法。
【請求項8】
(A)アラントイン、ベルベリン、ベルベリン塩、アズレンスルホン酸、アズレンスルホン酸塩、硫酸亜鉛及び乳酸亜鉛から選ばれる1種以上、
(B1)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、及び
(C)ビタミンAを含む眼科用組成物において、
上記(B1)成分として、
(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールと、ジブチルヒドロキシトルエンとを含有する組成物であり、この組成物中のジブチルヒドロキシトルエン量が50~125ppmである組成物
を配合する、上記眼科組成物中のビタミンAの安定化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールは、眼科用組成物に用いられる界面活性剤であり、特にビタミンAと組み合わせると、ビタミンAによるムチン産生促進作用や角膜修復力を高めることができるため、ドライアイ改善効果をより発揮することができる。また、ビタミンAの保存安定性を向上させること等の効果を有するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、(A)アラントイン、ベルベリン、ベルベリン塩、アズレンスルホン酸、アズレンスルホン酸塩、硫酸亜鉛及び乳酸亜鉛から選ばれる1種以上と、(B1)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとを含む眼科用組成物が、経時によりpHが低下するという課題を知見した。本発明は上記事情に鑑みなされたもので、上記課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、(A)アラントイン、ベルベリン、ベルベリン塩、アズレンスルホン酸、アズレンスルホン酸塩、硫酸亜鉛及び乳酸亜鉛から選ばれる1種以上、及び(B1)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを含む眼科用組成物において、上記(B1)成分として、前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールと、(B2)ジブチルヒドロキシトルエンとを含有する組成物であり、この組成物中のジブチルヒドロキシトルエン量が50~125ppmである組成物(B)を用いることにより、上記課題を解決できることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0006】
従って、本発明は、下記発明を提供する。
1.(A)アラントイン、ベルベリン、ベルベリン塩、アズレンスルホン酸、アズレンスルホン酸塩、硫酸亜鉛及び乳酸亜鉛から選ばれる1種以上、及び
(B)(B1)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールと、(B2)ジブチルヒドロキシトルエンとを含有する組成物であり、この組成物中のジブチルヒドロキシトルエン量が50~125ppmである組成物
を含む眼科用組成物。
2.(B)組成物中の(B1)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールが、ポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレン(70)グリコール、ポリオキシエチレン(196)ポリオキシプロピレン(67)グリコール及びポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコールから選ばれる1種以上である1記載の眼科用組成物。
3.さらに、(C)ビタミンAを含む、1又は2記載の眼科用組成物。
4.さらに、(D)ホウ酸、トロメタモール及びエデト酸塩から選ばれる1種以上を含む、1~3のいずれかに記載の眼科用組成物。
5.pHが5~8である、1~4のいずれかに記載の眼科用組成物。
6.ソフトコンタクトレンズ装用時に点眼可能である、1~5のいずれかに記載の眼科用組成物。
7.(A)アラントイン、ベルベリン、ベルベリン塩、アズレンスルホン酸、アズレンスルホン酸塩、硫酸亜鉛及び乳酸亜鉛から選ばれる1種以上、及び
(B1)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール
を含む眼科用組成物において、
上記(B1)成分として、
(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールと、ジブチルヒドロキシトルエンとを含有する組成物であり、この組成物中のジブチルヒドロキシトルエン量が50~125ppmである組成物
を配合する、上記眼科組成物のpHの安定化方法。
8.(A)アラントイン、ベルベリン、ベルベリン塩、アズレンスルホン酸、アズレンスルホン酸塩、硫酸亜鉛及び乳酸亜鉛から選ばれる1種以上、
(B1)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、及び
(C)ビタミンAを含む眼科用組成物において、
上記(B1)成分として、
(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールと、ジブチルヒドロキシトルエンとを含有する組成物であり、この組成物中のジブチルヒドロキシトルエン量が50~125ppmである組成物
を配合する、上記眼科組成物中のビタミンAの安定化方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、経時によるpH低下が抑制される、(A)アラントイン、ベルベリン、ベルベリン塩、アズレンスルホン酸、アズレンスルホン酸塩、硫酸亜鉛及び乳酸亜鉛から選ばれる1種以上と、(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール組成物とを含む眼科用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の眼科用組成物は、
(A)アラントイン、ベルベリン、ベルベリン塩、アズレンスルホン酸、アズレンスルホン酸塩、硫酸亜鉛及び乳酸亜鉛から選ばれる1種以上、及び
(B)(B1)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールと、(B2)ジブチルヒドロキシトルエンとを含有する組成物であり、この組成物中のジブチルヒドロキシトルエン量が50~125ppmである組成物
を配合してなる眼科用組成物であり、上記(A)及び(B)を含む。
【0009】
[(A)成分]
本発明の(A)成分は、アラントイン、ベルベリン、ベルベリン塩、アズレンスルホン酸、アズレンスルホン酸塩、硫酸亜鉛及び乳酸亜鉛から選ばれる1種以上であり、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。これらは、抗炎症作用を有する成分である。
【0010】
アラントインは、組織修復作用を有し、抗炎症効果を発揮する。アラントインを含む場合の量は、眼科用組成物中、0.01w/v%(質量/体積%、g/100mL)以上が好ましく、0.03w/v%以上がより好ましく、0.06w/v%以上がさらに好ましい。また、1w/v%以下が好ましく、0.75w/v%以下がより好ましく、0.5w/v%以下がさらに好ましく、0.3w/v%以下が特に好ましい。前記下限量以上とすることで、十分にその有効性を発揮することができる。前記上限量以下にすることで、十分にその安全性を確保することができる。また、前記範囲内とすることで、本発明の効果がより発揮されやすくなる。
【0011】
ベルベリン塩としては、ベルベリン硫化物やベルベリン塩化物等の硫酸塩、塩酸塩等が挙げられる。また、水和物等であってもよい。中でも、塩化ベルベリン、硫酸ベルベリンが好ましい。例えば、日本薬局方:ベルベリン塩化物水和物、アルプス工業(株)製等を用いることができる。ベルベリン、ベルベリン塩を含む場合の量は、眼科用組成物中0.005w/v%以上が好ましく、0.01w/v%以上がより好ましい。また、0.1w/v%以下が好ましく、0.025w/v%がより好ましい。前記下限量以上とすることで、十分にその有効性を発揮することができる。前記上限量以下にすることで、十分にその安全性を確保することができる。また、前記範囲内とすることで、本発明の効果がより発揮されやすくなる。
【0012】
アズレンスルホン酸塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。アズレンスルホン酸、その塩を含む場合の量は、眼科用組成物中0.001w/v%以上が好ましく、0.003w/v%以上がより好ましく、0.004w/v%以上がさらに好ましい。また、0.1w/v%以下が好ましく、0.05w/v%以下がより好ましく、0.025w/v%以下がさらに好ましい。前記下限量以上とすることで、十分にその有効性を発揮することができる。前記上限量以下にすることで、十分にその安全性を確保することができる。また、前記範囲内とすることで、本発明の効果がより発揮されやすくなる。
【0013】
硫酸亜鉛及び乳酸亜鉛は、収れん作用を有し、抗炎症効果を発揮する。硫酸亜鉛、乳酸亜鉛を含む場合の量は、眼科用組成物中、0.005w/v%以上が好ましく、0.01w/v%以上がより好ましく、0.05w/v%以上がさらに好ましい。また、1w/v%以下が好ましく、0.5w/v%以下がより好ましく、0.3w/v%以下がさらに好ましく、0.25w/v%以下が特に好ましい。前記下限量以上とすることで、十分にその有効性を発揮することができる。前記上限量以下にすることで、十分にその安全性を確保することができる。また、前記範囲内とすることで、本発明の効果がより発揮されやすくなる。
【0014】
[(B)組成物]
本発明の(B)組成物は、(B1)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールと、(B2)ジブチルヒドロキシトルエンとを含有する組成物であり、この組成物中のジブチルヒドロキシトルエン量が50~125ppm(質量)である組成物である。(B)組成物中に含まれる(B1)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとしては、医薬品添加物規格(2018)に記載されたものを好適に用いることができ、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。エチレンオキシドの平均重合度は3~200が好ましく、20~200がより好ましく、プロピレンオキシドの平均重合度は5~100が好ましく、17~70がより好ましい。ブロック共重合体でもランダム重合体でもよいが、ブロック共重合体が好ましい。具体的には、ポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレン(70)グリコール、ポリオキシエチレン(196)ポリオキシプロピレン(67)グリコール、ポリオキシエチレン(120)ポリオキシプロピレン(40)グリコール、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、ポリオキシエチレン(42)ポリオキシプロピレン(67)グリコール、ポリオキシエチレン(54)ポリオキシプロピレン(39)グリコール、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(20)グリコールが挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。中でも、(C)ビタミンAの安定性及びビタミンAによる角膜修復力がより得られ易くなることから、ポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレン(70)グリコール、ポリオキシエチレン(196)ポリオキシプロピレン(67)グリコール及びポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコールが好ましい。
【0015】
(B)組成物は、(B2)ジブチルヒドロキシトルエン量を50~125ppm含むものである。(B)組成物中、(B2)成分の量は50~125ppmであり、60~120ppmが好ましく、70~110ppmがより好ましい。50ppm以上とすることで、経時によるpH低下が抑制され、(C)ビタミンAの保存安定性をより高めることができ、60ppm以上とすることで、前記効果がより高まる。125ppm以下にすることで、十分にその安全性を確保することができ、120ppm以下とすることで、前記効果がより高まる。(B)組成物の市販品としては、例えば、商品名:Kolliphor P407[BASFジャパン(株)]:ポリオキシエチレン(196)ポリオキシプロピレン(67)グリコール及びジブチルヒドロキシトルエン50~125ppmを含む、商品名:Kolliphor P188[BASFジャパン(株)]:ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール及びジブチルヒドロキシトルエン50~125ppmを含む、等が挙げられる。その他、医薬品添加物事典2021(日本医薬品添加物協会編、薬事日報社発行)に記載されている市販品が挙げられる。これら(B)組成物のうち、経時でのpH低下の抑制効果、及び(C)ビタミンAの保存安定性を向上させることができる点から、Kolliphor P407が好ましい。なお、(B)組成物は、(B)組成物総量中に、(B2)ジブチルヒドロキシトルエンの量が50~125ppmとなるよう調整されていればよい。例えば、(B2)ジブチルヒドロキシトルエン量が50ppm未満の(B)組成物に、(B2)成分を添加して前記範囲内に調整してもよく、(B2)成分が50ppm以下の(B)組成物と、125ppm超の(B)組成物とを混合して前記範囲内に調整してもよく、(B2)成分が125ppm超の(B)組成物と、(B1)成分とを混合して前記範囲内に調整してもよい。
【0016】
Kolliphor P407[BASFジャパン(株)]について、より詳細に説明する。ポリ(エチレンオキシド)(PEO=A)とポリ(プロピレンオキシド)(PPO=B)のABA型コポリマーであり、PEOの相対量:70%、PPOの平均分子量:約4,000である。平均分子量は、10,000~14,600g/molであり、オキシエチレンの濃度は71.5~74.9%である。外観は、ワックス状の粘稠度を持つ白色の粗粒粉末であり、白色からほぼ白色の小粒/粉末である。抗酸化物質であるジブチルヒドロキシトルエンを50~125ppm含み、平均直径約500μmの球形、HLBは約22である。真密度は約1.06g/cm3、かさ密度は約0.50g/cm3、タップ密度は約0.60g/cm3である。主な分解メカニズムは酸化であり、通常は製剤のpH、ヒドロキシル価、分子量によって監視される。
【0017】
(B)組成物の量は、眼科用組成物中0.1~5w/v%が好ましく、0.4~1w/v%がより好ましく、0.4~0.8w/v%がさらに好ましい。上記下限量以上とすることで、(C)成分の安定性及び(C)成分によるムチン産生促進作用や角膜修復作用をより高めることができ、上記上限量以下とすることで、(C)成分の安定性がより高められる。
【0018】
[(C)成分]
本発明の眼科用組成物は、(C)ビタミンAをさらに含むことが好ましい。ビタミンAは、上皮細胞の増殖・分化に必須な物質として知られており、ムチン産生を促進する作用、角膜創傷を治癒する作用を有する。また、抗酸化作用を有する。本発明の眼科用組成物には、前記(B)組成物が含まれるため、ビタミンAの経時保存安定性が高く、ビタミンAによる角膜修復力がより得られ易い。ビタミンAとしては、例えば、ビタミンAそれ自体の他に、ビタミンA油等のビタミンA含有混合物、ビタミンA脂肪酸エステル等のビタミンA誘導体が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。具体的には、レチノールパルミチン酸エステル、レチノール酢酸エステル、レチノール、レチノイン酸、レチノイド等が挙げられる。中でも、レチノールパルミチン酸エステル、レチノール酢酸エステル、レチノイン酸が好ましい。レチノールパルミチン酸エステルは、通常100~180万国際単位/g(以下、I.U./gと略記する)のものが市販されており、具体的には、DSM(株)製レチノールパルミチン酸エステル[174万I.U./g)]、シグマアルドリッチジャパン(同)製パルミチン酸レチノール等が挙げられる。
【0019】
ビタミンAを含む場合の量は、眼科用組成物100mL中1万~10万国際単位(I.U.)が好ましく、3万~8万I.U.がより好ましく、4.8万~7万I.U.がさらに好ましい。例えば、174万I.U./gの場合、眼科用組成物100mL中の量は、0.006~0.057w/v%が好ましく、0.017~0.046w/v%がより好ましく、0.028~0.04w/v%がさらに好ましい。前記下限量以上とすることで、(C)成分によるムチン産生促進作用や角膜修復作用をより高めることができ、前記上限量以下にすることで、(C)成分の保存安定性をより高めることができる。
【0020】
[(D)成分]
本発明の眼科用組成物は、(D)ホウ酸、トロメタモール及びエデト酸塩から選ばれる1種以上を、さらに含むことが好ましい。(D)成分を含む場合の量は、(D)成分の総量として、眼科用組成物中0.3w/v%以上が好ましく、1.0w/v%以上がより好ましく、1.4w/v%以上がさらに好ましい。また、4.2w/v%以下が好ましく、3.5w/v%以下がより好ましく、2.6w/v%以下がさらに好ましく、2.55w/v%以下が特に好ましい。上記下限量以上とすることで、保存効力をより高めることができ、上記上限量以下とすることで、点眼時の刺激感が生じにくくなり、眼科用組成物の使用感がより高められる。また、前記範囲内とすることで、本発明の効果がより発揮されやすくなる。
【0021】
ホウ酸を含む場合の量は、眼科用組成物中0.3w/v%以上が好ましく、1.3w/v%以上が好ましい。また、3w/v%以下が好ましく、2.1w/v%以下がより好ましい。
【0022】
トロメタモールを含む場合の量は、眼科用組成物中0.01w/v%以上が好ましく、0.1w/v%以上がより好ましい。また、1w/v%以下が好ましく、0.4w/v%以下がより好ましい。
【0023】
エデト酸塩としては、エデト酸ナトリウム(エチレンジアミン四酢酸ナトリウム)、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム等が挙げられ、水和物も含まれる。エデト酸塩を含む場合の量は、眼科用組成物中0.005w/v%以上が好ましく、0.01w/v%以上がより好ましい。また、0.2w/v%以下が好ましく、0.05w/v%以下がより好ましい。
【0024】
[その他の成分]
本発明の眼科用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記(A)~(D)成分を除くその他の成分を適量含むことができる。その他の成分としては、薬物、界面活性剤、緩衝剤、局所麻酔剤又は無痛化剤、pH調整剤、安定化剤、脂溶性抗酸化剤、糖類、多価アルコール、粘稠剤、清涼化剤、防腐剤、その他の無機化合物、油性成分等が挙げられる。これらの成分は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて含むことができる。なお、下記に示す成分の量は、含む場合の好ましい範囲であり、眼科用組成物中の量である。
【0025】
薬物としては、例えば、充血除去成分(血管収縮剤)(例えば、塩酸テトラヒドロゾリン、エピネフリン、塩酸エピネフリン、メチルノルエピネフリン、ノルエピネフリン、エフェドリン、メチルエフェドリン、シュードエフェドリン、エフェドリン塩酸塩、ナファゾリン硝酸塩、フェニレフリン塩酸塩、dl-メチルエフェドリン塩酸塩、オキシメタゾリン、メトキサミン、フェニルプロパノラミン、エチレフリン、ミドドリン、トラマゾリン、シネフリン、シラゾリン、キシロメタゾリン及びこれらの薬学的に許容される塩等)、消炎剤(例えば、イプシロンアミノカプロン酸、リゾチーム塩酸塩、プラノプロフェン等)、抗炎症剤(例えば、グリチルリチン酸又はその塩)、収斂剤、抗ヒスタミン剤(例えば、クロルフェニラミンマレイン酸塩、ジフェンヒドラミン塩酸塩、フマル酸ケトチフェン、塩酸オロパタジン等)、抗アレルギー剤(例えば、クロモグリク酸ナトリウム、アシタザノラスト、イブジラスト、トラニラスト、ペミロラストカリウム、アンレキサノクス等)、水溶性ビタミン類(ピリドキシン又はその塩、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、パンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム等)、脂溶性ビタミン類(例えば、ビタミンE;トコフェロール、トコトリエノール、これらの塩、誘導体(エステル)を総称し、具体的には。酢酸d-α-トコフェロール、酢酸dl-α-トコフェロール)、アミノ酸類(例えば、L-アスパラギン酸カリウム、L-アスパラギン酸マグネシウム、L-アスパラギン酸カリウム・マグネシウム(等量混合物)、アミノエチルスルホン酸(タウリン)、コンドロイチン硫酸エステルナトリウム等)、抗菌成分(例えば、サルファ剤(スルファメトキサゾール、スルファメトキサゾールナトリウム、スルフイソキサゾール、スルフイソミジンナトリウム等)、ネオスチグミン等が挙げられる。薬物を含む場合の量は、各薬物の有効な適性量を選択することができるが、眼科用組成物中0.001~5w/v%が好ましく、0.001~1w/v%がより好ましく、0.001~0.1w/v%がさらに好ましい。
【0026】
(B1)成分以外の非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンヒマシ油(具体的には、ポリオキシエチレンヒマシ油3(EO平均付加モル数3)、ポリオキシエチレンヒマシ油10(EO平均付加モル数10)、ポリオキシエチレンヒマシ油20(EO平均付加モル数20)、ポリオキシエチレンヒマシ油35(EO平均付加モル数35)、ポリオキシエチレンヒマシ油40(EO平均付加モル数40)、ポリオキシエチレンヒマシ油50(EO平均付加モル数50)、ポリオキシエチレンヒマシ油60(EO平均付加モル数60)等)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(具体的には、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油5(EO平均付加モル数5)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10(EO平均付加モル数10)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油20(EO平均付加モル数20)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油30(EO平均付加モル数30)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40(EO平均付加モル数40)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50(EO平均付加モル数50)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(EO平均付加モル数60)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油80(EO平均付加モル数80)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油100(EO平均付加モル数100)等)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(具体的には、モノラウリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノパルミチン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート40)、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、トリステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート65)、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート80)等)、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(具体的には、ステアリン酸ポリオキシル40(PEG平均付加モル数40)等)が挙げられる。また、(B)以外の組成物として、ジブチルヒドロキシトルエンを50ppm未満、又は125ppm超を含むポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール含有組成物等が挙げられる。これらの非イオン性界面活性剤を含む場合の量は、眼科用組成物中1.0w/v%以下が好ましく、0.5w/v%以下がより好ましい。
【0027】
両性界面活性剤としては、例えば、グリシン型両性界面活性剤として、アルキルジアミノエチルグリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン等、ベタイン型両性界面活性剤として、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、イミダゾリウムベタイン等が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。これらの界面活性剤を含む場合の量は、眼科用組成物中0.01~0.5w/v%が好ましく、0.05~0.4w/v%がより好ましい。
【0028】
緩衝剤としては、例えば、クエン酸又はその塩(クエン酸ナトリウム等)、リン酸又はその塩(リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等)、酒石酸又はその塩(酒石酸ナトリウム等)、グルコン酸又はその塩(グルコン酸ナトリウム等)、酢酸又はその塩(酢酸ナトリウム等)、氷酢酸、炭酸又はその塩(炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等)、各種アミノ酸類(アスパラギン酸カリウム、アミノエチルスルホン酸、グルタミン酸、グルタミン酸ナトリウム、イプシロン-アミノカプロン酸)等が挙げられる。なお、これらは水和物であってもよい。緩衝剤を含む場合の量は、眼科用組成物中0.001~5w/v%が好ましく、0.005~2w/v%がより好ましく、0.01~1w/v%がさらに好ましい。
【0029】
等張化剤としては、例えば、塩化カリウム、塩化カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、乾燥炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、グリセリン、プロピレングリコール等が挙げられる。等張化剤を含む場合の量は、眼科用組成物中0.00001~3w/v%が好ましく、0.0001~2w/v%がより好ましく、0.005~1.5w/v%がさらに好ましい。
【0030】
局所麻酔剤又は無痛化剤としては、例えば、クロロブタノール、塩酸オキシブプロカイン、塩酸ジブカイン、塩酸テトラカイン、塩酸ピペロカイン、塩酸プロカイン、塩酸プロパラカイン、塩酸ヘキソチオカイン、塩酸リドカイン等が挙げられる。局所麻酔剤又は無痛化剤を含む場合の量は、眼科用組成物中0.001~1w/v%が好ましく、0.01~0.5w/v%がより好ましい。
【0031】
pH調整剤としては、例えば、無機酸又は無機アルカリ剤が挙げられる。具体的には、無機酸としては(希)塩酸が挙げられる。無機アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。また、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等が挙げられる。pH調整剤を含む場合の量は、後述するpHとなるよう適量を配合する。
【0032】
安定化剤としては、例えば、シクロデキストリン、モノエタノールアミン等が挙げられる。また、脂溶性抗酸化剤として、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)等が挙げられる。脂溶性抗酸化剤を含む場合の量は、眼科用組成物中0.001~0.05w/v%が好ましい。具体的に、ジブチルヒドロキシトルエンを含む場合の量は、眼科用組成物中0.001~0.05w/v%が好ましく、0.003~0.01w/v%がより好ましい。なお、前記の好適な量は、(B2)のジブチルヒドロキシトルエンの量も含む。
【0033】
水溶性の安定化剤(抗酸化剤)としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、乾燥亜硫酸ナトリウム(無水亜硫酸ナトリウム)、ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム等の亜硫酸塩、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0034】
なお、本発明の眼科用組成物をソフトコンタクトレンズ装用時に点眼可能な眼科用組成物とする場合、安定化剤は、レンズ吸着性、蓄積性の低いものが好ましく、例えば、シクロデキストリン亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、乾燥亜硫酸ナトリウム(無水亜硫酸ナトリウム)、ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム等の亜硫酸塩等、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム等が挙げられる。水溶性の安定化剤を含む場合の量は、眼科用組成物中0.001~5w/v%が好ましく、0.003~2w/v%がより好ましく、0.005~1w/v%がさらに好ましい。
【0035】
糖類としては、グルコース、シクロデキストリン、キシリトール、ソルビトール、マンニトール等が挙げられる。なお、これらは、d体、l体又はdl体のいずれでもよい。糖類は、湿潤性があるため点眼時のうるおいを高める効果を有し、また等張化剤としても使用できる。糖類を含む場合の量は、眼科用組成物中0.001~5w/v%が好ましく、0.003~2w/v%がより好ましく、0.005~1w/v%がさらに好ましい。
【0036】
多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。多価アルコールは、湿潤性があるため点眼時のうるおいを高める効果を有し、また等張化剤としても使用できる。また、グリセリンやプロピレングリコールは清涼化剤の可溶化剤としても使用できる。多価アルコールを含む場合の量は、眼科用組成物中0.001~5w/v%が好ましく、0.003~2w/v%がより好ましく、0.005~1.5w/v%がさらに好ましい。
【0037】
粘稠剤としては、水溶性高分子化合物等が挙げられ、例えば、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ヒアルロン酸及びその塩、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール、デキストラン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム等が挙げられる。粘稠剤を含む場合、べたつき、ぼやけ等の使用感を損なわない程度で含むことができ、その量は、眼科用組成物中0.001~5w/v%が好ましく、0.003~1w/v%がより好ましく、0.005~0.5w/v%がさらに好ましい。
【0038】
清涼化剤としては、例えば、メントール、ゲラニオール、シネオール、リナロール、アネトール、オイゲノール、カンフル、ボルネオール、リモネン、リュウノウ等が挙げられる。d体、l体又はdl体のいずれでもよい。また、ハッカ油、クールミント油、スペアミント油、ペパーミント油、ユーカリ油、ローズ油、ウイキョウ油、ベルガモット油、ケイヒ油等の精油が挙げられる。これら清涼化剤は、うるおい持続の効果実感を高めることができる。清涼化剤、精油を含む場合の量は、眼科用組成物中0.0005~0.2w/v%がより好ましく、0.001~0.1w/v%がさらに好ましい。
【0039】
防腐剤としては、例えば、クロルヘキシジングルコン酸塩、クロロブタノール、塩化ベンザルコニウム等が挙げられる。これら防腐剤は、眼科用組成物の保存効力を高めることができる。防腐剤を含む場合の量は、眼科用組成物中0.00005~0.2w/v%がより好ましく、0.0001~0.1w/v%がさらに好ましい。
【0040】
その他の無機化合物としては、チオ硫酸ナトリウム、酸化チタン、塩化亜鉛等が挙げられる。これらを含む場合の量は、眼科用組成物中0.001~5w/v%が好ましく、0.003~2w/v%がより好ましく、0.005~1w/v%がさらに好ましい。
【0041】
[眼科用組成物]
眼科用組成物は、「水性眼科用組成物」であることが好ましい。本発明において、「水性眼科用組成物」とは、媒質が水である眼科用組成物をいう。水の量は、組成物中90~99.5w/v%の範囲が好ましい。
【0042】
眼科用組成物は液体が好ましく、20℃における粘度は、1~400mPa・sが好ましく、1~100mPa・sがより好ましく、1~60mPa・sがさらに好ましく、1~30mPa・sが特に好ましい。なお、粘度の測定方法はB型粘度計を用いて測定する。
【0043】
眼科用組成物のpHは、3.5~8.0が好ましく、5.0~7.2がより好ましく、5.5~7.0がさらに好ましい。なお、pHの測定は、25℃でpHメータ(HM-25R、東亜ディーケーケー(株))を用いて行う。
【0044】
本発明の眼科用組成物は、その浸透圧が特に制限されるものではなく、その用途等に合わせて適宜選定することができ、例えば、通常、0.5~5圧比に調整すると好適であり、0.8~2圧比に調整すると、より好適である。なお、浸透圧を調整する場合、調整方法は、例えば眼科用組成物において通常行われる方法によって調整することができる。
【0045】
本発明の眼科用組成物は、その調製方法が特に制限されるものではなく、その剤型、形態の常法に準じて調製することができ、例えば、ビタミンAを含む点眼剤の場合は、まずビタミンAを、(B)組成物中の等の非イオン性界面活性剤等によって予備溶解した後に、精製水に加えて可溶化し、次いで各成分を加えてpH調整することにより調製することができる。
【0046】
本発明の眼科用組成物は、目のかわき、目の異物感(コロコロ・チクチクする感じ)、目の疲れ、目のかすみ(目やにの多いときなど)、ソフトコンタクトレンズ又はハードコンタクトレンズを装着しているときの不快感、結膜充血、目のかゆみ、眼瞼炎(まぶたのただれ)、眼病予防(水泳のあと、ほこりや汗が目に入ったときなど)、紫外線その他の光線による眼炎(雪目など)等の効能効果を有する一般用点眼薬や、ソフトコンタクトレンズ又はハードコンタクトレンズを装着しているときの不快感、涙液の補助(目のかわき)、目の疲れ、目のかすみ(目やにの多いときなど)等の効能効果を有する人工涙液に使用することができる。用法用量としては、1回1滴、1日5~6回まで点眼可能である。
【0047】
本発明の眼科用組成物の剤型は特に限定されず、例えば、点眼剤(コンタクトレンズ装用中に点眼可能な点眼剤を含む)、洗眼剤、コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズ取り外し液等として好適に使用できる。特に点眼剤、コンタクトレンズ装着液として好適に使用でき、点眼剤が特に好ましい。中でも、コンタクトレンズ装用中に点眼可能な眼科用組成物、具体的には、コンタクトレンズ装用中に点眼可能な点眼剤、コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズ取り外し液等のコンタクトレンズ使用者が使用するコンタクトレンズ用眼科用組成物として好適である。
【0048】
コンタクトレンズとしては、ハードコンタクトレンズ(O2ハードコンタクトレンズを含む)、ソフトコンタクトレンズ(イオン性及び非イオン性の双方を含む)、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ、カラーコンタクトレンズ等特に限定されない。防腐剤を含有しない場合には、特にソフトコンタクトレンズ、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用として好適である。特にソフトコンタクトレンズ用点眼剤として好適に使用できる。ソフトコンタクトレンズ用点眼剤として使用する場合、1回につき10~50μL、好ましくは10~30μLを1~3滴1日につき1~6回点眼することができる。ソフトコンタクトレンズとしては特に限定されず、FDAによる4分類(グループI~IV)の全てのソフトコンタクトレンズに用いることができる。
【0049】
[容器]
眼科用組成物の容器としては、上記眼科用組成物が収容される容器本体と、キャップを備えた容器とが用いられる。容器本体の材料としては特に限定されない。眼科用組成物を収容する容器本体(ボトル、本体と称する場合がある。)とキャップとを備える。より具体的には、本体には点眼口が設けられ、本体を密閉する、スクリュータイプ、ワンタッチタイプ等のキャップを有する。なお、本体には点眼口を有する中栓が設けられてもよく、点眼口はキャップに設けられていてもよく、キャップを容器に直接設置して密閉できるようにしてもよい。
【0050】
[眼科組成物のpHの安定化方法]
本発明は、(A)アラントイン、ベルベリン、ベルベリン塩、アズレンスルホン酸、アズレンスルホン酸塩、硫酸亜鉛及び乳酸亜鉛から選ばれる1種以上、及び
(B1)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール
を含む眼科用組成物において、
上記(B1)成分として、
(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールと、ジブチルヒドロキシトルエンとを含有する組成物であり、この組成物中のジブチルヒドロキシトルエン量が50~125ppmである組成物
を配合する、上記眼科組成物のpHの安定化方法を提供する。好ましい範囲及び量は、上記と同じである。
【0051】
[眼科組成物中のビタミンAの安定化方法]
本発明は、
(A)アラントイン、ベルベリン、ベルベリン塩、アズレンスルホン酸、アズレンスルホン酸塩、硫酸亜鉛及び乳酸亜鉛から選ばれる1種以上、
(B1)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、及び
(C)ビタミンAを含む眼科用組成物において、
上記(B1)成分として、
(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールと、ジブチルヒドロキシトルエンとを含有する組成物であり、この組成物中のジブチルヒドロキシトルエン量が50~125ppmである組成物
を配合する、上記眼科組成物中のビタミンAの安定化方法を提供する。好ましい範囲及び量は、上記と同じである。眼科用組成物の経時によるpHの低下が抑えられることで、ビタミンAの分解が抑制されるため、経時安定性が向上する。
【実施例0052】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、組成のw/v%はg/100mLである。
【0053】
[実施例、比較例]
(A)成分、(B)組成物、及びその他成分の混合溶液に希塩酸又は水酸化ナトリウムを適宜使用してpHを7.00に調整し、眼科用組成物を得た。得られた眼科用組成物をガラスアンプルに充填し、70℃環境下にて1週間保存した。
【0054】
[pH]
保存前(製造直後)の眼科用組成物のpH測定を、25℃でpHメータ(HM-25R、東亜ディーケーケー(株))を用いて行った。保存後、眼科用組成物を25℃に戻し、保存前と同様にpHを測定した。結果を表中に併記する。
【0055】
【0056】
上記結果から明らかであるように、(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール及びジブチルヒドロキシトルエン(BHT)を50~125ppm含む組成物を配合することで、70℃環境下にて1週間という過酷条件においても、pHの安定性が得られた。
【0057】
[処方例]
下記組成の眼科用組成物を実施例と同様の方法で調製した。
【表2】
【0058】
【0059】
実施例及び比較例を調製する際に用いた原料を以下に示す。なお、特に明記がない限り、表中の各成分の量は純分換算量である。
・べルベリン塩化物水和物(商品名:日本薬局方 ベルベリン塩化物水和物、アルプス薬品工業(株)、日局)
・ポリオキシエチレン(196)ポリオキシプロピレン(67)グリコール[BHT90ppm](商品名:Kolliphor P407、BASFジャパン(株)、薬添規)
・ポリオキシエチレン(196)ポリオキシプロピレン(67)グリコール[BHT検出限界以下]:(商品名:プロノン#407P、日油(株)、薬添規)
・レチノールパルミチン酸エステル(商品名:レチノールパルミチン酸エステル1.74m174万I.U.、BHA/BHT添加、DSM(株)、日局)
・酢酸d-α-トコフェロール(商品名:理研Eアセテートα、理研ビタミン(株)、局外規)
・ホウ酸(商品名:ホウ酸、関東化学(株)、日局)
・トロメタモール(商品名:2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、関東化学(株)、局外規)
・エデト酸ナトリウム水和物(商品名:エデト酸ナトリウム水和物「製造専用」、富士フィルム和光純薬(株)、日局)
・イプシロンアミノカプロン酸(商品名:ε-アミノ-n-カプロン酸 EKD、積水メディカル(株)局外規)
・L-アスパラギン酸カリウム(商品名:L―アスパラギン酸カリウム、アルプス薬品工業(株)、局外規)
・希塩酸(商品名:希塩酸、小堺製薬(株)、日局)
・水酸化ナトリウム(商品名:水酸化ナトリウム、小堺製薬(株)、日局)
・グリチルリチン酸二カリウム(商品名:局外規グリチルリチン酸二カリウム、丸善製薬(株)本社工場、局外規)
・クロルフェニラミンマレイン酸塩(商品名:マレイン酸クロルフェニラミン(クロルフェニラミンマレイン酸塩)、金剛化学(株)、日局)
・ピリドキシン塩酸塩(商品名:ピリドキシン塩酸塩 塩酸ピリドキシン、BASFジャパン(株)、日局)
・アミノエチルスルホン酸(タウリン)(商品名:タウリン、(株)スリーF、日局)
・コンドロイチン硫酸エステルナトリウム(商品名:局外規コンドロイチン硫酸ナトリウム、マルハニチロ(株)、局外規)
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)(商品名:メトローズ60SH-4000、信越化学工業(株)、日局)
・ポリビニルピロリドン(ポビドン)(商品名:ポビドンK90(Kollidon 90F)、BASFジャパン(株)、日局)
・プロピレングリコール(商品名:日本薬局方プロピレングリコール、(株)ADEKA、日局)
・l-メントール(商品名:l―メントール(薄荷脳)、鈴木薄荷(株)、日局)
・d-ボルネオ―ル(商品名:特沸龍脳(d-ボルネオール)、(株)柳沢正巳商店、薬添規)
・dl-カンフル(商品名:日本薬局方 dl-カンフル、日精バイリス(株)、日局)
・ユーカリ油(商品名:日本薬局方 ユーカリ油、小川香料(株)、日局)