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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107487
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】外観検査方法および外観検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/892 20060101AFI20240801BHJP
【FI】
G01N21/892 A
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024098603
(22)【出願日】2024-06-19
(62)【分割の表示】P 2018225613の分割
【原出願日】2018-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白 洗燦
(72)【発明者】
【氏名】盧 海一
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 章司
(57)【要約】
【課題】基材と反射防止層との層間に存在する微細な欠陥も検出可能な外観検査方法を提供する。
【解決手段】検査対象の光学部材(11)は、偏光子(3)を含む基材(6)の一主面上に反射防止層(1)を備える。投光部(21)から、波長410nm以下の光を、光学部材(11)の第一主面に照射し、光学部材からの反射光を撮像部(31)で撮像する。撮像部(31)を光学部材の法線方向または法線を挟んだ一方向側に配置し、投光部(21)を光学部材の法線を挟んだ他方向側に配置し、光学部材の法線方向を基準とする投光角度φは、光学部材の法線方向を基準とする撮像角度θよりも大きい。光学部材(11)を一方向に移動させながら、検査を実施してもよい。
【選択図】図4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一主面および第二主面を有し偏光子を含む基材の第一主面上に反射防止層を備える光学部材の外観検査方法であって、
投光部から、波長410nm以下の光を、前記光学部材の第一主面に照射し、前記光学部材からの反射光を撮像部で撮像し、
前記撮像部は前記光学部材の法線方向または法線を挟んだ一方向側に配置され、前記投光部は前記光学部材の法線を挟んだ他方向側に配置され、前記光学部材の法線方向を基準とする投光角度φが、前記光学部材の法線方向を基準とする撮像角度θよりも大きい、外観検査方法。
【請求項2】
第一主面および第二主面を有し偏光子を含む基材の第一主面上に反射防止層を備える光学部材の外観検査に用いられる外観検査装置であって、
前記光学部材の第一主面側に配置され、波長410nm以下の光を前記光学部材の第一主面に照射する投光部、および
前記光学部材の第一主面側において、前記光学部材からの反射光を撮像可能に配置されている撮像部
を備え、
前記撮像部は前記光学部材の法線方向または法線を挟んだ一方向側に配置され、前記投光部は前記光学部材の法線を挟んだ他方向側に配置されており、前記光学部材の法線方向を基準とする投光角度φが、前記光学部材の法線方向を基準とする撮像角度θよりも大きい、外観検査装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止層を備える光学部材の欠陥を光学的に検査するための外観検査方法および外観検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の画像表示装置には、偏光板、位相差フィルム、カバーウインドウ等の様々な光学部材が用いられている。また、フィルムやガラス等の基材の表面に反射防止層や透明導電膜等の機能性薄膜を備える光学部材も用いられている。
【0003】
これらの光学部材に、傷や打痕等の変形、混入異物、表面付着異物、汚れ等の欠陥が存在すると、表示特性の低下を招く。そのため、欠陥を含む製品の流出防止等を目的として、光学部材の製造工程や完成品の出荷前に、外観検査が行われている。光学部材の外観検査は、例えば、検査員の目視により行われる。また、光学部材に光を照射し、透過光または反射光をカメラにより撮像し、得られた画像に基づいて欠陥の有無等を判定する検査装置を用いた検査も行われている。
【0004】
例えば、特許文献1では、反射防止膜を備える透明基板に光を照射し、その透過光を撮像することにより、欠陥の有無を検査する方法が開示されている。特許文献2では、検査対象となる透明部材の背面にミラーを配置し、透明部材に紫外光を照射して、透明部材を透過しミラーで反射した紫外光を紫外線カメラで検出する方法が開示されており、透明部材の表面および内部に存在する欠陥を高いコントラストで画像に映し出して、欠陥を判別可能であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-172707号公報
【特許文献2】特開2004-257776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、製品の内部や層間に存在する欠陥の検出には透過光学系を用いた検査が行われている。特に、透明部材や偏光板等の基材の表面に反射防止層を備える光学部材は、基材と反射防止層との界面での光反射量が小さくなるように反射防止層が設計されており、反射防止層側からの照射光の反射率が小さいため、一般には透過光学系での検査が行われる。
【0007】
しかし、透過光学系では、光遮蔽性の低い欠陥の検出は困難である。例えば、反射防止フィルムでは、基材表面に、シリコン等による汚れがスジ状に付着した欠陥が発生する場合がある。基材表面に付着した汚れは、光吸収量が小さいため、透過光学系での検出が困難であり、特に、シリコンの付着汚等の白色に視認される汚れはその傾向が顕著である。また、基材表面に反射防止層が形成され、基材と反射防止層との層間に汚れが存在する場合は、反射防止層が基材表面からの反射光量を低減する作用を有しているため、反射光学系による欠陥の検出も容易ではない。
【0008】
ディスプレイの高輝度化や高画質化が進んでおり、反射防止フィルム等の光学部材に対する要求特性が高まっている。これに伴って、層間の付着汚れのように、従来の外観検査装置による検査では検出が困難な微細な欠陥も問題視されるようになっている。このような事情に鑑み、本発明は、層間の微細な汚れ等の欠陥を検出可能な外観検査方法および外観検査装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態では、第一主面および第二主面を有する基材の第一主面上に反射防止層を備える光学部材を検査対象として外観検査を実施する。外観検査においては、波長410nm以下の光を光学部材に照射する投光部と、光学部材からの反射光を撮像する撮像部とを備える検査装置を用いる。光学検査においては、投光部から、波長410nm以下の光を、光学部材の第一主面(反射防止層形成面)に照射し、光学部材からの反射光を撮像部で撮像する。外観検査においては、光学部材を一方向に移動させながら、投光部から光学部材の第一主面に光を照射し、反射光を撮像部で撮像してもよい。
【0010】
撮像部が光学部材の法線方向または法線を挟んだ一方向側に配置され、投光部は光学部材の法線を挟んだ他方向側に配置されていることが好ましい。撮像部が光学部材の法線方向に配置される場合、光学部材の法線を挟んだ一方向側と他方向側の両方に、投光部を配置してもよい。
【0011】
光学部材の法線方向を基準とする投光角度φは、光学部材の法線方向を基準とする撮像角度θよりも大きいことが好ましい。正反射光の検出を抑制し、光学部材からの散乱反射光を効率的に検出してコントラストを高める観点から、撮像角度θと投光角度φの差は7°以上が好ましい。
【0012】
撮像角度θと投光角度φの合計が35°~55°が好ましい。例えば、撮像角度θは0°~30°であり、投光角度φが5°~50°である。
【0013】
紫外線を用いた反射光学系の検査は、特に、基材と反射防止層との界面に存在する欠陥の検出に適している。基材と反射防止層との界面に存在する欠陥としては、例えば基材の表面に付着したシリコン等の汚れが挙げられる。
【0014】
検査対象の光学部材としては、偏光子を含む基材(偏光板)の一主面に反射防止層が形成された反射防止層付き偏光板が挙げられる。基材の反射防止層形成面にはハードコート層が設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
反射光学系で、光学部材からの反射紫外線を撮像することにより、透過光学系では検出が困難な層間に存在する微細な汚れ等の欠陥を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】反射防止層付き偏光板の積層構成例を示す断面図である。
図2】反射防止層付き偏光板の積層構成例を示す断面図である。
図3】光学部材を搬送しながら光学検査を実施する様子を示す構成図である。
図4】照明およびカメラと光学部材との配置を示す断面図である。
図5】照明およびカメラと光学部材との配置を示す断面図である。
図6】照明およびカメラと光学部材との配置を示す断面図である。
図7】実施例の検査画像である。
図8】実施例および比較例の検査画像である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態は、基材の一方の面に反射防止層を備える光学部材の外観検査方法、および光学部材の外観検査を実施するための外観検査装置に関し、反射紫外線を撮像することを特徴とする。
【0018】
[光学部材の構成]
外観検査の対象となる光学部材は、面状の基材の一方の主面に反射防止層を備える。基材は、ガラス等の剛性基材でもよく、樹脂フィルム等の可撓性基材でもよい。また、光学部材は枚葉でもよく、長尺状でもよい。長尺状の光学部材の外観を検査する場合は、ロールトゥーロール方式で光学部材を一方向に搬送しながら検査を実施してもよい。
【0019】
図1は、反射防止層を備える光学部材の一例である反射防止層付き偏光板の構成断面図である。図1に示す反射防止層付き偏光板11は、ハードコート層付き偏光板6の表面に反射防止層1を備える。偏光板は、一般に、偏光子3の片面または両面に透明保護フィルム4,5が貼り合わせられた構成を有する。
【0020】
偏光子3としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて所定方向に配向させたポリビニルアルコール(PVA)系偏光子が用いられる。PVA系偏光子として、厚みが10μm以下の薄型の偏光子を用いてもよい。
【0021】
偏光子3の片面または両面に貼り合わせられる透明保護フィルム4,5としては、可撓性の透明フィルムが用いられる。透明フィルムの可視光透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である。透明フィルムの厚みは10~300μm程度である。透明フィルムを構成する樹脂材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル類;ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー;ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレン系ポリマー;ポリノルボルネン等の環状ポリオレフィン;ポリカーボネート等が挙げられる。
【0022】
偏光子3と透明保護フィルム4,5とは、適宜の接着剤を介して貼り合わせられる。接着剤としては、アクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン、エポキシ系ポリマー、フッ素系ポリマー、ゴム系ポリマー等をベースポリマーとするものが挙げられる。
【0023】
透明保護フィルムの表面にはハードコート層が設けられていてもよい。反射防止層1形成面側の透明保護フィルム4の表面にハードコート層2が設けられることにより、偏光板の表面硬度や耐擦傷性等の機械特性を向上できる。ハードコート層2を構成する硬化性樹脂としては、熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂等が挙げられる。硬化性樹脂の種類としてはポリエステル系、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、アミド系、シリコーン系、シリケート系、エポキシ系、メラミン系、オキセタン系、アクリルウレタン系等の各種の樹脂が挙げられる。ハードコート層2の厚みは特に限定されないが、高い硬度を実現するためには、0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましい。塗布による形成の容易性を考慮すると、ハードコート層の厚みは15μm以下が好ましく、12μm以下がより好ましく、10μm以下がさらに好ましい。
【0024】
ハードコート層2上に反射防止層1を形成する前に、ハードコート層2と反射防止層1との密着性向上等を目的として、ハードコート層2の表面処理が行われてもよい。表面処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理、オゾン処理、プライマー処理、グロー処理、アルカリ処理、酸処理、カップリング剤による処理等の表面改質処理が挙げられる。
【0025】
反射防止層としては、光の多重干渉作用による反射光の打ち消し効果を利用して反射を防止する多層薄膜タイプや、表面に微細構造を付与することにより反射率を低減させるタイプのものが挙げられる。多層薄膜タイプの反射防止層では、屈折率の異なる複数の薄膜を積層することにより、可視光の広帯域の波長範囲において、反射率を小さくできる。反射防止層1を構成する薄膜の材料としては、金属の酸化物、窒化物、フッ化物等が挙げられる。反射防止層1は、好ましくは、高屈折率層と低屈折率層の交互積層体である。
【0026】
高屈折率層は、例えば屈折率が1.9以上、好ましくは2.0以上である。高屈折率材料としては、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)等が挙げられる。低屈折率層は、例えば屈折率が1.6以下、好ましくは1.5以下である。低屈折率材料としては、酸化シリコン、窒化チタン、フッ化マグネシウム、フッ化バリウム、フッ化カルシウム、フッ化ハフニウム、フッ化ランタン等が挙げられる。低屈折率層と高屈折率層に加えて、屈折率1.6~1.9程度の中屈折率層が設けられてもよい。高屈折率層および低屈折率層の膜厚は、それぞれ、5~200nm程度であり、屈折率や積層構成等に応じて、可視光の反射率が小さくなるように、各層の膜厚を設計すればよい。
【0027】
反射防止層1の表面には防汚層(不図示)が設けられていてもよい。防汚層を設けることにより、指紋、手垢、埃等の外部環境からの汚染を防止できるとともに、付着した汚染の除去が容易となる。防汚層の材料としては、フッ素基含有シラン系化合物や、フッ素基含有有機化合物等が挙げられる。また、ダイアモンドライクカーボン等も防汚層の材料として用いることができる。防汚層の厚みは、例えば0.01~2μm程度である。
【0028】
図2に示すように、反射防止層付き偏光板12は、偏光板6の反射防止層1が設けられていない側の面に、偏光板6を画像表示パネル等と貼り合わせるための粘着剤層8が付設されていてもよい。粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等が用いられる。粘着剤層8の厚みは、5~200μm程度である。
【0029】
粘着剤層8の表面には、離型フィルム9が仮着されていることが好ましい。離型フィルムの基材としては、ポリエステル類、セルロース系ポリマー、アクリル系ポリマー、スチレン系ポリマー、アミド系ポリマー、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、ポリカーボネート等が用いられる。離型フィルムは、粘着剤層との接触面が離型処理されている。離型剤としては、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系、脂肪酸アミド系等の離型材料や、シリカ粉等を含有する溶液が用いられる。離型フィルムの厚みは、10~150μm程度である。
【0030】
反射防止層付き偏光板は、偏光子と表面に設けられた反射防止層とを含んでいれば、その積層構成は、図1および図2に示す形態に限定されない。例えば、偏光板は、偏光子3の一方の面の透明保護フィルム5を省略した片保護偏光板でもよい。また、偏光子3に貼り合わせられた透明保護フィルム4の上に、さらに別の基材フィルムを積層し、当該基材フィルムにハードコート層および反射防止層が設けられていてもよい。
【0031】
[光学検査]
外観検査では、反射防止層を備える光学部材に投光部から紫外光を照射し、光学部材からの反射紫外線を撮像部で撮影する。紫外線を用いた反射光学系の検査により、基材と反射防止層との層間に存在する汚れ等の欠陥を検出できる。
【0032】
反射防止層は、可視光の反射率、特に視感度の高い波長550nm付近の光の反射率が小さくなるように設計されている。反射防止層が設けられた光学部材に反射防止層側から可視光を照射した場合、反射防止層と基材との界面での光の反射はわずかである。一方、反射防止層および基材を透過して、光学部材の裏面(反射防止層が設けられていない面)と空気との界面では、屈折率差が大きいため、光の反射率が大きい。そのため、透明基材の表面に反射防止層が設けられた光学部材に可視光を照射して、その反射光を撮像した場合、反射光の大部分は裏面反射光であり、基材と反射防止層との界面に存在する欠陥を検出することは困難である。
【0033】
一方、光学部材が反射防止層を備える場合でも、波長410nmよりも短波長の光(紫外線)を照射した場合は、反射防止層と基材との界面での紫外線の反射率が、可視光の反射率に比べて高いため、反射防止層と基材の層間に存在する汚れ等の欠陥も反射光学系により検出が可能となる。特に、基材が偏光子を含む場合は、反射防止層を透過した紫外線が、偏光子により吸収されるため、裏面反射が小さく、反射防止層と基材との界面での反射光の比率が高くなる。そのため、反射防止層と基材の層間に存在する欠陥がより検出されやすくなり、薄いスジ状の汚れのような微細な欠陥も検出が可能となる。特に、欠陥が白色の場合は、欠陥が存在する部分(白色)と欠陥が存在しない部分(偏光子の黒色部分)とのコントラスト(明暗比)が大きいため、紫外線を用いた反射光学系により、欠陥を高精度で検出できる。
【0034】
投光部は、光学部材に紫外線を照射できるものであれば特に限定されない。紫外線を含む光源としては、LED,ブラックライト、ケミカルランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ等が挙げられる。光源から放出される光は、紫外線に加えて可視光を含んでいてもよい。光学部材に均一に光を照射可能であり、かつ光の波長範囲が狭いことから、投光部の光源としては紫外LEDが好ましい。紫外LEDの中心波長は、300~405nmが好ましい。
【0035】
投光部の光源が可視光を含む場合は、撮像部(カメラ)が反射紫外線を選択的に撮像できることが好ましい。例えば、光源と光学部材との間、または光学部材とカメラとの間に、バンドパスフィルタやカットオフフィルタ等の光学フィルタを配置することにより、可視光をカットすればよい。
【0036】
撮像部は、紫外線を受光し撮像できるものであれば特に限定されず、モノクロカメラでもよい。検査対象の光学部材を固定して検査を実施する場合は、受光素子が面状に配置されたエリアカメラが用いられる。光学部材を一方向に移動させながら撮影する場合は、エリアカメラを用いてもよく、受光素子が一列に配置されたラインスキャンカメラを用いてもよい。
【0037】
図3は、光学部材を一方向(y方向)に搬送しながら光学検査を実施する様子を示す構成図である。図4は、図3のC1-C2線における断面図(yz断面図)である。図3に示す実施形態では、外観検査装置が光学部材を一方向(y方向)に連続的に搬送するための搬送機構(不図示)を備えており、長尺状の光学部材11(反射防止層付き偏光板)をy方向に向かって連続搬送しながら、回転ロール51と回転ロール52の間で、光学検査を実施する。
【0038】
光学部材11は、図3の上側の面に反射防止層1を備え、回転ロール51側から回転ロール52側に向けて一定速度で搬送されている。検査装置は、光学部材11に光を照射する照明21(投光部)、および光学部材11からの反射紫外線を撮像するラインスキャンカメラ31(撮像部)を備える。ラインスキャンカメラ31は、光学部材の法線方向(z方向)を基準(0°)とする撮像角度θで、光学部材11の幅方向(x方向)に延在する線状の撮像領域Qを撮影するように配置されている。照明21は、x方向に延在するLEDリニアアレイであり、光学部材11の法線方向を基準とする投光角度φで、領域Qに光を照射するように配置されている。
【0039】
光学部材11を連続搬送しながら、ラインスキャンカメラ31で撮像した反射輝度パターン(反射光のx方向の輝度分布)を、順次画像メモリ(不図示)に読み込んで蓄積し、画像化する。画像メモリにより生成した画像(2次元イメージ)はディスプレイに表示される。図3では、1台のラインスキャンカメラで、光学部材11の幅方向(x方向)の全体をする実施形態を示しているが、光学部材11の幅が大きい場合は、幅方向に複数のラインスキャンカメラを配置してもよい。
【0040】
照明21から光学部材に照射する光は、波長410nm以下の光(紫外線)を含んでいる。図3の実施形態では、照明21としてx方向に延在するLEDリニアアレイを用いているが、光学部材の幅方向に均一に光を照射できるものであれば、照明21の形状は特に限定されない。また、幅方向に複数の照明を配置してもよい。
【0041】
長尺の光学部材を一方向に搬送しながら紫外線を照射し、光学部材からの反射紫外光を撮像することにより、連続的に欠陥の有無を検査できる。この方式は、光学部材の製造後の品質検査に加えて、光学部材の製造工程におけるインライン検査にも適用可能である。また、ラインスキャンカメラを用いることにより、投光角度φおよび撮像角度θが視野内で均一となるため、コントラストのムラが小さくなり、薄い汚れのような微細な欠陥も高感度で検出可能となる。
【0042】
照明21およびカメラ31の配置は、光学部材11での反射光をカメラ31で撮像可能であれば特に限定されない。反射紫外光の検出感度を高める観点から、図4に示すように、カメラ31を光学部材11の法線(撮像領域Qにおける法線)を挟んだ一方向側に配置し、照明21を光学部材の法線を挟んだ他方向側に配置することが好ましい。図5に示すように、カメラ31を光学部材11の法線方向に配置してもよい。
【0043】
照明21から光学部材11の撮像領域Qまでの距離(投光距離)、およびカメラ31から光学部材11の撮像領域Qまでの距離(撮像距離)は特に限定されず、光の照射強度、撮像領域の幅(光学部材11の幅)、光学部材11の搬送速度、カメラ31の解像度等に応じて、設定すればよい。投光距離は、20~500mm程度であり、撮像距離は40~1000mm程度である。撮像距離は投光距離よりも大きいことが好ましい。
【0044】
基材と反射防止層との層間に存在する汚れ等の欠陥は、光を散乱反射しやすい。そのため、散乱反射光をカメラにより撮像すれば、欠陥が存在する部分からの反射紫外線量が多いため、基材と反射防止層との層間に欠陥が存在する部分が「明領域」として検出される。特に、基材と反射防止層との層間に存在するシリコン汚れ等の白色の欠陥は、反射紫外線量が多いため、高精度での検出が可能である。
【0045】
投光角度φと撮像角度θが同一である場合は、正反射光の輝度が高く、検査画像のコントラストが小さくなる傾向がある。正反射光の影響を低減し高コントラストの検査画像を得るためには、投光角度φと撮像角度θの差は7°以上が好ましく、10°以上がより好ましく、12°以上がさらに好ましい。
【0046】
図5に示すように、カメラ31を光学部材11の法線方向に配置する場合(θ≒0°の場合)、投光角度φは20°~60°が好ましく、30°~55°がより好ましく、40°~50°がさらに好ましい。投光角度φが過度に小さいと、正反射光の影響が大きく、検査画像のコントラストが低下する傾向がある。一方、投光角度φが過度に大きいと、反射防止層1を透過する光の量が低下し、これに伴って、反射防止層と基材との界面に到達する光の量が低下するため、層間の欠陥からの散乱反射光が少なく、検査画像のコントラストが低下する傾向がある。なお、カメラ31を光学部材11の法線方向に配置する場合、撮像角度θが厳密に0°である必要はなく、±5°程度の範囲内であってもよい。
【0047】
カメラ31を光学部材11の法線方向に配置する場合、図6に示すように、光学部材の法線を挟んだ一方向側に第一投光部としての照明21を配置し、光学部材の法線を挟んだ他方向側に第二投光部としての照明22を配置してもよい。法線を挟んだ両方向に配置された照明から紫外線を照射することにより、コントラストが向上する傾向がある。
【0048】
法線を挟んだ両方向に照明21および照明22を配置する場合、それぞれの投光角度φおよびφが、上記の投光角度φの範囲内であることが好ましい。φとφは同一でも異なっていてもよい。検査画像のコントラスト向上の観点からは、φとφの差は10°以下が好ましく、5°以下がより好ましく、3°以下がさらに好ましく、1°以下が特に好ましい。理想的にはφとφの差は0°である。
【0049】
図4に示すように、カメラ31を光学部材11の法線を挟んだ一方向側に配置し、照明21を光学部材の法線を挟んだ他方向側に配置する場合、投光角度φが撮像角度θよりも大きいことが好ましい。投光角度φを相対的に大きくすることにより、基材と反射防止層との層間に存在する欠陥からの散乱反射光量が増大し、検査画像のコントラストが向上する傾向がある。前述のように、正反射光の影響を低減する観点から、撮像角度θと投光角度φの差は7°以上が好ましく、10°以上がより好ましく、12°以上がさらに好ましい。
【0050】
層間に存在する欠陥からの散乱反射は、反射角度45°±5°の範囲で特に大きくなる傾向がある。そのため、投光角度φと撮像角度θの合計は、35°~55°が好ましく、40°~50°がより好ましく、43°~47°がさらに好ましく、44°~46°が特に好ましい。φとθの合計は理想的には45°である。
【0051】
以上の観点から、正反射光の影響を低減し、層間に存在する欠陥による散乱反射光を効率的に検出するためには、撮像角度θは0°~30°が好ましく、投光角度φは5°~50°が好ましい。光学部材11の法線を挟んだ一方向側にカメラ31を配置し、光学部材11の法線を挟んだ他方向側に照明21を配置する形態では、撮像角度θは5°~20°がより好ましく、8°~17°がさらに好ましく、10°~15°が特に好ましく、投光角度φは20°~40°がより好ましく、23°~37°がさらに好ましく、25°~35°が特に好ましい。
【0052】
図3では、光学部材を一方向に連続搬送しながら、光学部材からの反射光をラインスキャンカメラで撮像する実施形態を示したが、光学部材を固定し、エリアカメラ(ビデオカメラまたはスチールカメラ)により光学部材からの反射紫外光を撮像してもよい。また、光学部材を固定し、ラインスキャンカメラ(および照明)を一方向に移動させて、2次元イメージを生成してもよい。
【0053】
検査対象の光学部材は、長尺状フィルムに限定されず、枚葉でもよい。光学部材が枚葉である場合、光学部材を固定してエリアカメラによる検査を実施してもよく、光学部材を移動ステージやコンベアに載置して一方向に移動させながらエリアカメラまたはラインスキャンカメラによる検査を実施してもよい。
【0054】
反射防止層と基材との層間に存在する欠陥を反射紫外光により検出する方法では、裏面反射を抑制することにより、反射防止層と基材との界面での反射光を選択的に撮像し、欠陥部分と正常部とのコントラストを向上できる。また、欠陥が白色である場合は、欠陥からの反射光が大きく、欠陥部分と非欠陥部分との反射紫外線量の差が大きいため、裏面反射が大きい場合でも、紫外線を用いた反射光学系による欠陥の検出が可能である。
【0055】
裏面反射を抑制可能な実施形態として、検査対象が反射防止層付き偏光板である例を示したが、基材が偏光子を含まない場合でも、適宜の方法により裏面反射を低減可能である。例えば、基材の裏面に黒色フィルム等の光吸収性(紫外線吸収性)のフィルムを仮着することにより、裏面反射を低減できる。また、光吸収性のステージ上に検査対象の光学部材を載置して検査を実施する方法、光学部材を連続搬送しながらブラックロール等の光吸収性の回転ロール上で検査を実施する方法等により裏面反射を低減してもよい。
【実施例0056】
以下に、反射防止層付き偏光板を検査対象とする光学検査の例を示すが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
【0057】
[検査対象]
ヨウ素を含侵した延伸ポリビニルアルコール系偏光子の両面に透明保護フィルムを備え、一方の透明保護フィルムの表面にハードコート層および多層薄膜の反射防止層が設けられた反射防止層付き偏光板を検査対象とした。検査対象には、ロールトゥーロールによる製造時の長手方向に沿って白色のスジ状の欠陥が存在していた。このスジ状の欠陥は、ハードコート層と反射防止層の間に付着したシリコン汚れであることを分析にて確認した。
【0058】
[実施例1~7]
波長385nmの紫外LEDから、投光距離85~100mmで、上記の検査対象に紫外線を照射し、反射光を2Kモノクロカメラ(256階調)で撮像した。投光角度φおよび撮像角度θを表1に示すように変更し、シリコン汚れに起因するスジの部分(明領域)および正常部分(暗領域)の明度から、コントラスト(明暗比)を求めた。
【0059】
[比較例1]
検査対象の反射防止層付き偏光板の反射防止層形成面に、法線方向から投光距離40mmで紫外LED光を照射し(投光角度:0°)、裏面側に配置した2Kモノクロカメラにより透過光を撮像した(撮像角度:180°)。
【0060】
[比較例2および比較例3]
照射光を白色LEDに変更し、2Kモノクロカメラにより、表1に示す投光角度φおよび撮像角度θで、反射光を撮像した。
【0061】
実施例および比較例の検査に用いた照明および光学系と、明暗比を表1に示す。また、得られた検査画像を図7および図8に示す。
【表1】
【0062】
紫外LEDを用い、反射紫外光を撮像した実施例1~7では、検査画像において、スジ状の欠陥部分が明領域として観察され、欠陥の検出が可能であった。透過光学系の比較例1では欠陥は検出できなかった。また、可視光を用いた比較例2,3でも欠陥は検出できなかった。
【0063】
投光角度と撮像角度の差が5°の実施例7では、スジ状の欠陥を検出できたものの、正反射光の影響が大きく(図8参照)、他の実施例に比べると、十分なコントラストが得られなかった。この結果から、反射防止層と基材との界面に存在するシリコン汚れ等の欠陥の検出には、散乱反射紫外光を撮像する方法が適していることが分かる。
【0064】
実施例の中でも、特に、実施例3および実施例4が、コントラストが高く、スジ状の欠陥を鮮明に検出可能であった。これらの結果から、撮像角度および投光角度を調整することにより、欠陥の検出感度を向上できることが分かる。
【0065】
実施例6は、実施例4の撮像角度θと投光角度φを入れ替えたものであり、実施例4に比べるとコントラストが低下していた。この結果から、投光角度φを大きくして、正反射光の反射角φよりも小さな角度θで散乱する紫外線を検出することにより、欠陥の検出感度を向上できることが分かる。
【符号の説明】
【0066】
11,12 光学部材(反射防止層付き偏光板)
6 基材(ハードコート層付き偏光板)
1 反射防止層
2 ハードコート層
3 偏光子
4,5 透明保護フィルム
8 粘着剤層
9 離型フィルム
21,22 照明
31 ラインスキャンカメラ
51,52 回転ロール

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8