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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107515
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】コークス炉の監視装置
(51)【国際特許分類】
   C10B 29/08 20060101AFI20240802BHJP
【FI】
C10B29/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011471
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】樋口 修哉
(72)【発明者】
【氏名】怒田 邦広
(72)【発明者】
【氏名】高橋 保
(57)【要約】
【課題】コークス炉に対して工事を行うことなく炉締めスプリングの長さを測定することができ、しかも、装置全体としてメンテナンス性の良好なコークス炉の監視装置を提供する。
【解決手段】炉壁11と、炉壁11の両側に配置されたバックステー12と、炉壁11の上部に設置された上部クロスタイロッド13と、上部クロスタイロッド13における押出機4側の端部に取り付けられた上部クロスタイロッドスプリング14と、上部タイロッドスプリング14の両側のそれぞれに設けられた上部ばね受け部15、16とを備えたコークス炉1の監視装置3であって、一方の上部ばね受け部15と他方のばね受け部16とを一緒に撮影する撮影装置26と、撮影装置26によって撮影された画像データに基づいて一方の上部ばね受け部15と他方のばね受け部16との間の距離を測定する解析装置27とを備えている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークス炉の炉長方向に延びる炉壁と、前記炉長方向で前記炉壁の両側に配置されたバックステーと、前記炉壁の上部に設置されており、前記炉長方向に延びる上部クロスタイロッドと、前記炉長方向で前記上部クロスタイロッドの両端部のうち、前記コークス炉の押出機側の端部に取り付けられた上部クロスタイロッドスプリングと、前記上部クロスタイロッドスプリングの両側のそれぞれに設けられたばね受け部とを備え、前記ばね受け部のうち、前記炉長方向で前記上部クロスタイロッドスプリングを挟んで前記コークス炉の外側の一方のばね受け部は前記外側への移動が阻止されており、前記炉長方向で前記上部クロスタイロッドスプリングを挟んで前記コークス炉の内側の他方のばね受け部は前記上部クロスタイロッドスプリングの弾性力によって前記バックステーに押し付けられるコークス炉の監視装置であって、
前記一方のばね受け部と前記他方のばね受け部とを一緒に撮影する撮影装置と、
前記撮影装置によって撮影された画像データに基づいて前記一方のばね受け部と前記他方のばね受け部との間の距離を測定する解析装置とを備えている
コークス炉の監視装置。
【請求項2】
前記撮影装置は、前記押出機に設けられている請求項1に記載のコークス炉の監視装置。
【請求項3】
前記撮影装置は、前記コークス炉の炭化室からコークスを押し出すために、前記炭化室に前記押出機が停止しているときに、前記一方のばね受け部と前記他方のばね受け部とを一緒に撮影する請求項2に記載のコークス炉の監視装置。
【請求項4】
前記撮影装置は、前記一方のばね受け部と前記他方のばね受け部とを一緒に照らす照明装置を更に備えている請求項1に記載のコークス炉の監視装置。
【請求項5】
前記撮影装置の画角は予め決まっている請求項1に記載のコークス炉の監視装置。
【請求項6】
前記撮影装置の高さと、水平面に対する前記撮影装置の撮影角度との少なくとも一方を調整する調整装置を更に備えている請求項1に記載のコークス炉の監視装置。
【請求項7】
前記距離が予め設定された上限値以上である場合、あるいは、前記距離が予め設定された下限値以下である場合に、警告を発する警告手段を更に備えている請求項1ないし6のいずれか一項に記載のコークス炉の監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉の監視装置に関し、特に、コークス炉の炉壁の締め付けを監視する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コークス炉の長寿命化に資する管理方法の一つとして、炉締め管理がある。炉締め管理とは、コークス炉の炉長方向に炉壁を締め付ける炉締めスプリングの弾性力つまり炉締め力を適切な水準に維持することを意味している。具体的には、炉壁を締め付けるために圧縮されている状態の炉締めスプリングの長さを測定し、その長さに基づいて炉締め力の調整を行う。
【0003】
炉締めスプリングの設置環境は、高温、粉塵等の悪環境になっているため、圧縮状態の炉締めスプリングの長さを測定するセンサ等を炉締めスプリングの近傍に設置することは、センサの動作環境の点で適していない。そのため、炉締めスプリングの長さの測定および炉締めスプリングの長さの調整は人手に頼らざるを得ない場合がある。人手によって炉締めスプリングの長さの測定および調整を行うと、それらの精度に個人差が生じる可能性があり、また、悪環境で炉締めスプリングの長さの測定および調整を行うため、安全性の点で懸念がある。
【0004】
そこで、炉壁を締め付けている圧縮状態の炉締めスプリングの長さを測定する装置が従来検討されている。特許文献1には、実施例1として、コークス炉の炭化室からコークスを押し出す押出機が停止したときに、炉締めスプリングの両側の押さえ板同士の間にシリンダを配置してシリンダのストロークの変位を測定する測定装置が記載されている。当該測定装置は測定したシリンダストロークの変位に基づいて炉締めスプリングの長さを測定するようになっている。また、特許文献1には、実施例2として、炉締めスプリングの両側の押さえ板のうちの一方に支持突起を一体に取り付け、押出機が停止したときに、支持突起にシリンダを押し当ててシリンダのストロークの変位を測定する測定装置が記載されている。当該測定装置は、実施例1の装置と同様に、測定したシリンダストロークの変位に基づいて炉締めスプリングの長さを測定するようになっている。さらに、特許文献1には、実施例3として、押出機が停止したときに、支持突起にレーザー距離計のレーザーを照射することによって炉締めスプリングの長さを測定する非接触タイプの測定装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3-264807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の実施例1ないし3では、悪環境でシリンダを使用した測定装置や非接触タイプの測定装置を使用することになるため、それらの測定装置に故障や不具合が生じる可能性がある。また、コークス炉には、多数の炉締めスプリングが設置されている。そのため、いずれかの炉締めスプリングの長さを測定するときや、測定しているときに、測定装置に故障や不具合が生じると、悪環境で測定装置のメンテナンスをせざるを得ない可能性がある。更に、高所かつ高温環境下での作業となるため、安全性に問題がある。すなわち、装置全体としてメンテナンス性が悪い。また、特許文献1の実施例2や実施例3の装置では、コークス炉に設置されている全ての炉締めスプリングの押さえ板に支持突起を設置しなければならず、作業負荷が高い。
【0007】
本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、コークス炉に対して工事を行うことなく炉締めスプリングの長さを測定することができ、しかも、装置全体としてメンテナンス性の良好なコークス炉の監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の目的を達成するために、
[1]コークス炉の炉長方向に延びる炉壁と、前記炉長方向で前記炉壁の両側に配置されたバックステーと、前記炉壁の上部に設置されており、前記炉長方向に延びる上部クロスタイロッドと、前記炉長方向で前記上部クロスタイロッドの両端部のうち、前記コークス炉の押出機側の端部に取り付けられた上部クロスタイロッドスプリングと、前記上部クロスタイロッドスプリングの両側のそれぞれに設けられたばね受け部とを備え、前記ばね受け部のうち、前記炉長方向で前記上部クロスタイロッドスプリングを挟んで前記コークス炉の外側の一方のばね受け部は前記外側への移動が阻止されており、前記炉長方向で前記上部クロスタイロッドスプリングを挟んで前記コークス炉の内側の他方のばね受け部は前記上部クロスタイロッドスプリングの弾性力によって前記バックステーに押し付けられるコークス炉の監視装置であって、前記一方のばね受け部と前記他方のばね受け部とを一緒に撮影する撮影装置と、前記撮影装置によって撮影された画像データに基づいて前記一方のばね受け部と前記他方のばね受け部との間の距離を測定する解析装置とを備えているコークス炉の監視装置。
[2]前記撮影装置は、前記押出機に設けられている上記の[1]に記載のコークス炉の監視装置。
[3]前記撮影装置は、前記コークス炉の炭化室からコークスを押し出すために、前記炭化室に前記押出機が停止しているときに、前記一方のばね受け部と前記他方のばね受け部とを一緒に撮影する上記の[2]に記載のコークス炉の監視装置。
[4]前記撮影装置は、前前記一方のばね受け部と前記他方のばね受け部とを一緒に照らす照明装置を更に備えている上記の[1]に記載のコークス炉の監視装置。
[5]前記撮影装置の画角は予め決まっている上記の[1]に記載のコークス炉の監視装置。
[6]前記撮影装置の高さと、水平面に対する前記撮影装置の撮影角度との少なくとも一方を調整する調整装置を更に備えている上記の[1]に記載のコークス炉の監視装置。
[7]前記距離が予め設定された上限値以上である場合、あるいは、前記距離が予め設定された下限値以下である場合に、警告を発する警告手段を更に備えている上記の[1]ないし[6]のいずれかに記載のコークス炉の監視装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、撮影装置によって撮影された画像データに基づいて炉締めスプリングの両側に配置された一方のばね受け部と他方のばね受け部との間の距離を測定する。前記距離は上部タイロッドスプリングの長さであるため、本発明によれば、上述したように、コークス炉に対して工事を行うことなく、上部タイロッドスプリングの長さを測定することができる。そして、上部タイロッドスプリングの長さに基づいてコークス炉の炉締め管理を行うことができる。また、本発明の監視装置には、悪環境で動作する箇所はほぼないため、故障や不具合が生じ難い。そのため、装置全体としてメンテナンス性が良好になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係るコークス炉の一例を示す図である。
図2】炉壁の一例を示す斜視図である。
図3図2に示すA矢視図である。
図4】炉壁の一部を拡大して示す図である。
図5】監視装置の構成の一例を示す図である。
図6】監視装置による一対の上部ばね受け部の撮影条件を説明するための図である。
図7】炭化室からコークスを押し出すために、炭化室と互いに隣接する予め設定された位置に押出機が停止している状態を示す図である。
図8】画像処理の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を本発明の実施形態を通じて具体的に説明する。以下の実施形態は、本発明の好適な一例を示すものであり、これらの例によって何ら限定されるものではない。
【0012】
図1は本発明の実施形態に係るコークス炉の一例を示す図である。図1に示すコークス炉は室炉式と称されるコークス炉1である。コークス炉1は、石炭を乾留する炭化室2と燃料ガスを燃焼させる図示しない燃焼室とを備え、それらの炭化室2と燃焼室とが交互に配列されている。炭化室2と燃焼室とが配列される方向が炉団方向となっている。
【0013】
燃焼室で燃料ガスを燃焼することによって生じた熱は燃焼室と炭化室2との間の図示しない炉壁を介して炭化室2に伝達されて炭化室2内の石炭を乾留するようになっている。炉壁は主として耐火物によって形成されており、コークス炉1の炉長方向(図1での左右方向。)に予め設定された締め付け力で締め付けられるようになっている。具体的には、炉長方向で炉壁の両端部のうち、押出機4側の一方の端部に、図示しない炉締めスプリングがそれぞれ設けられており、炉締めスプリングによって炉壁が締め付けられる。本実施形態では、炉締めスプリングの長さを監視することによって上述した締め付け力を管理する監視装置3が、炭化室2からコークスを押し出す押出機4の上部に設けられている。監視装置3については後述する。
【0014】
コークス炉1の上部を装炭車5が走行可能に構成されている。装炭車5は炭化室2に石炭を装炭するものであって、図示しない石炭塔に蓄えられている石炭をその内部に受け入れて、コークス炉1にまで運んで炭化室2に装炭するようになっている。
【0015】
炭化室2と燃焼室との下側に、燃焼排ガスの熱を蓄えると共に、その蓄えた熱によって燃焼室に供給する燃料ガスや空気を予熱する蓄熱室6が設けられている。
【0016】
炉長方向でコークス炉1の両側に、炉団方向に延びるレール7がそれぞれ設置されている。図1でコークス炉1の右側のレール7に沿って移動可能に押出機4が設けられている。押出機4は、炭化室2ごとに、設計上、決められた位置に停車して炭化室2からコークスを排出する装置である。押出機4は炉長方向に進退する押し出しラム8を備えており、押し出しラム8によって炉長方向でコークス炉1を挟んで押出機4とは反対側に炭化室2からコークスを押し出すようになっている。
【0017】
図1でコークス炉1の左側のレール7に沿って移動可能にガイド車9が設けられている。ガイド車9は押出機4と連携してレール7上を走行し、押出機4によって炭化室2から押し出されたコークスを受けて消火車10に案内するように構成されている。消火車10は図示しない消火塔や図示しないCDQ(Cokes Dry Quenching System)に炭化室2から押し出されたコークスを搬送するように構成されている。
【0018】
図2は炉壁11の一例を示す斜視図であり、図3は、図2に示すA矢視図である。図2および図3に示す炉壁11は主として耐火煉瓦などの耐火物によって形成されており、炉長方向で炉壁11の両側にバックステー12がそれぞれ配置されている。バックステー12は以下に説明する上部クロスタイロッド13および下部クロスタイロッド17と共に炉壁11を拘束するものであり、コークス炉1の炉高方向に延びている。
【0019】
炉壁11の上側に上部クロスタイロッド13が設けられている。図2に示す例では、炉団方向で炉壁11の両側に上部クロスタイロッド13がそれぞれ設けられている。上部クロスタイロッド13の片側に、具体的には、炉長方向で押出機4側の一方の端部に、本実施形態に係る炉締めスプリングに相当する上部クロスタイロッドスプリング(以下、単に上部スプリングと記す。)14が取り付けられている。上部スプリング14の両側のそれぞれに、上部クロスタイロッド13に沿って移動可能に一対の上部ばね受け部15、16が設けられている。なお、上部クロスタイロッド13の他方の端部は図示しない固定手段によってバックステー12に固定される。
【0020】
炉長方向で上部クロスタイロッド13におけるそれらの上部ばね受け部15、16よりもコークス炉1の外側に、図示しないナットが取り付けられており、ナットよりも外側に上部ばね受け部15、16が移動できないようになっている。すなわち、上部ばね受け部15、16のうち、一方の上部ばね受け部15はナットに接触し、他方の上部ばね受け部16は上部スプリング14の弾性力によってバックステー12に押し付けられるようになっている。上部スプリング14はそれらの上部ばね受け部15、16の間に圧縮された状態で配置されており、バックステー12を介して炉壁11に上部スプリング14の弾性力が炉締め力として常時作用している。なお、図3に炉締め力を黒矢印で記載してある。
【0021】
炉壁11の下側に下部クロスタイロッド17が設けられている。図2に示す例では、炉団方向で炉壁11の両側に下部クロスタイロッド17がそれぞれ設けられている。下部クロスタイロッド17の片側に、具体的には、炉長方向で押出機4側の一方の端部に、下部クロスタイロッドスプリング(以下、単に下部スプリングと記す。)18が取り付けられている。下部スプリング18の両側のそれぞれに、下部クロスタイロッド17に沿って移動可能に一対の下部ばね受け部19、20が設けられている。
【0022】
炉長方向で下部クロスタイロッド17におけるそれらの下部ばね受け部19、20よりもコークス炉1の外側に、図示しないナットが取り付けられており、ナットよりも外側に下部ばね受け部19、20が移動できないようになっている。すなわち、下部ばね受け部19、20のうち、一方の下部ばね受け部19はナットに接触し、他方の下部ばね受け部20は下部スプリング18の弾性力によってバックステー12に押し付けられるようになっている。下部スプリング18はそれらの下部ばね受け部19、20の間に圧縮された状態で配置されており、バックステー12を介して炉壁11に下部スプリング18の弾性力が炉締め力として常時作用している。
【0023】
炉長方向で炉壁11とバックステー12との間には、図2および図3に示すように、炉長方向で炉壁11の両側の側面を覆う保護板21が設けられている。炉長方向でバックステー12と保護板21との間に、図3に示すように、炉高方向に一定の間隔でインナースプリング22が圧縮された状態で配置されている。上部スプリング14および下部スプリング18に加えて、インナースプリング22の弾性力がバックステー12を介して炉壁11に炉締め力として常時作用している。
【0024】
図4は炉壁11の一部を拡大して示す図である。図4に示すように、炉長方向で上部クロスタイロッド13における各上部ばね受け部15、16よりもコークス炉1の外側にナット23が取り付けられている。ナット23によって炉長方向でコークス炉1の外側への上部ばね受け部15の移動を阻止するようになっている。上部クロスタイロッド13におけるナット23よりも炉長方向でコークス炉1の外側に反力受け部24が設けられている。反力受け部24よりも炉長方向でコークス炉1の外側に他のナット25が設けられている。他のナット25によって炉長方向でコークス炉1の外側への反力受け部24の移動を阻止するようになっている。
【0025】
反力受け部24は上部スプリング14の長さつまり炉締め力を調整する際に使用するものである。炉締め力を調整方法について簡単に説明すると、反力受け部24と、一対の上部ばね受け部15、16のうち、炉長方向でコークス炉1の外側の一方の上部ばね受け部15との間に、例えば油圧ジャッキを配置する。油圧ジャッキによって上部スプリング14を圧縮し、その状態で上部クロスタイロッド13におけるナット23の位置を変更して上部スプリング14による炉締め力を調整する。なお、下部クロスタイロッド17の一方の端部においても、上部クロスタイロッド13の一方の端部とほぼ同様に反力受けが構成されているため、その記載を省略する。
【0026】
監視装置3について説明する。監視装置3は一方の上部ばね受け部15と他方の上部ばね受け部16との間の距離つまり上部スプリング14の長さを測定して炉締め力を管理するものである。図5は監視装置3の構成の一例を示す図である。図5に示すように、監視装置3は本実施形態に係る撮影装置に相当するカメラ26を備えている。そのカメラ26によって上部スプリング14の両側に位置する一対の上部ばね受け部15、16を一緒に撮影するようになっている。監視装置3はカメラ26で撮影した画像データに基づいて上部ばね受け部15、16同士の間の距離を測定するようになっている。そのため、コークス炉1に設置されている多数の一対の上部ばね受け部15、16のそれぞれについて、監視装置3による撮影条件はほぼ一定となっている。ここで、「一対の上部ばね受け部15、16を一緒に撮影する」とは、カメラ26の画角内に、あるいは、カメラ26による撮影の範囲内に一対の上部ばね受け部15、16のそれぞれが入っており、その状態で撮影することを意味している。
【0027】
上部スプリング14の長さを測定して炉締め力を管理する理由について説明する。上部スプリング14には、下部スプリング18と比較して、コークス炉設備の鉛直荷重や、レンガ膨張力等の様々な力が伝達される。そして、前記力によって上部スプリング14が繰り返し伸縮し、それが要因となってナット23の緩みが生じて上部スプリング14の長さが変化する可能性があるためである。なお、レンガ膨張力とは、燃焼室から伝達される熱によって煉瓦が熱膨張するときに、当該熱膨張する煉瓦が他の煉瓦や他の部材に作用する力を意味している。
【0028】
図6は、監視装置3による一対の上部ばね受け部15、16の撮影条件を説明するための図である。図6に示すように、設計上、決められた位置に押出機4が移動して停止した場合に、水平方向でのカメラ26とバックステー12との間の距離D1はほぼ一定となっている。また、水平方向でのカメラ26と上部スプリング14の中間部との間の距離D2、および、炉高方向でのカメラ26と上部ばね受け部15、16との間の距離D3はほぼ一定となっている。さらに、カメラ26の画角、水平面に対するカメラ26の撮影角度θもほぼ一定となっている。
【0029】
図5の説明に戻る。図5に示すように、カメラ26で撮影した画像データは解析装置27に出力され、解析装置27によって上部ばね受け部15、16同士の間の距離を算出するようになっている。解析装置27はマイクロコンピュータを主体にして構成され、入力されたデータ、予め記憶させられているデータ、および、計算式等を使用して演算を行い、その演算結果つまり、上部ばね受け部15、16同士の間の距離を出力部28に出力するように構成されている。
【0030】
入力されるデータは例えば上述したカメラ26で撮影した画像データである。予め記憶されているデータは例えば上述した撮影条件である。また、上部ばね受け部15、16同士の間の距離の上限値および下限値が予め求められ、それらの値が閾値として解析装置27に予め記憶されている。さらに、上部ばね受け部15、16同士の間の距離が上限値である場合の画像データ、および、下限値である場合の画像データが上述した撮影条件で予め撮影され、それらの画像データが解析装置27に予め記憶されている。
【0031】
出力部28は、例えば、解析装置27で算出した上部ばね受け部15、16同士の間の距離をオペレーターに表示するモニターであってよい。あるいは、出力部28は、解析装置27で算出した上部ばね受け部15、16同士の間の距離が上限値以上である場合や下限値以下である場合に、音や振動、光によって周囲に報知し、あるいは、警告を発する警告手段を備えていてもよい。なお、カメラ26は撮影対象を照らす照明装置を備えていてもよく、また、撮影するときのカメラ26の高さや撮影角度を調整する調整装置を備えていてもよい。それらの照明装置、調整装置は、照明装置や調整装置として従来知られているものとほぼ同様に構成されたものであってよい。
【0032】
次に、本実施形態に係るコークス炉1の監視装置3の作用・効果について説明する。コークス炉1での石炭の乾留が終了すると、炭化室2からコークスを押し出すために、炭化室2と互いに隣接する設計上、決められた位置に押出機4が移動して停止する。図7はその状態を示している。押出機4の上部には、図7に示すように、監視装置3が設置されており、監視装置3のカメラ26の撮影角度θや高さは予め設定されている。つまり、カメラ26の画角は、上述したように、ほぼ一定となっており、その画角に撮影対象である一対の上部ばね受け部15、16が入るようになっている。そのため、各炭化室2からコークスを押し出すために、設計上、決められた位置に押出機4が停止すると、その都度、カメラ26の画角に撮影対象である一対の上部ばね受け部15、16が入る。
【0033】
予め設定された位置に押出機4が停止すると、あるいは、予め設定された位置に押出機4が停止した状態でオペレーターによってカメラ26による撮影が指示されると、これらをトリガーとしてカメラ26による撮影が行われる。現時点での画像データはカメラ26から解析装置27に出力される。
【0034】
解析装置27では、カメラ26で撮影した現時点での画像データに基づいて上部ばね受け部15、16同士の間の距離が算出される。具体的には、上述した画像データには、上部ばね受け部15、16が一緒に写っているため、当該画像データに対して各上部ばね受け部15、16の各エッジを検出する画像処理を行う。エッジを検出する画像処理は従来知られたものであってよい。図8は画像処理の一例を示す図である。図8に示す「+」のシンボルは、画像処理によって検出した各上部ばね受け部15、16のエッジをそれぞれ示している。
【0035】
検出した各エッジ部分の座標に基づいて、エッジの近似直線をそれぞれ算出する。近似直線の算出方法は従来知られた算出方法であってよい。算出した近似直線を図8にそれぞれ記載してある。図8に示す符号「L1o」は、炉長方向で一方の上部ばね受け部15の外側のエッジの近似直線を示しており、図8に示す符号「L2o」は、炉長方向で一方の上部ばね受け部15の内側のエッジの近似直線を示している。図8に示す符号「L1i」は、炉長方向で他方の上部ばね受け部16の外側のエッジの近似直線を示しており、図8に示す符号「L2i」は、炉長方向で他方の上部ばね受け部15の内側のエッジの近似直線を示している。
【0036】
次いで、一方の上部ばね受け部15の各エッジの近似直線L1o、L2oを通り、それらの近似直線L1o、L2oに垂直に交わる直線L3を算出する。また、各近似直線L1o、L2oと直線L3との交点をそれぞれ算出する。それらの交点を図8に「○」のシンボルで記載してある。そして、それらの交点同士の間の画素数を算出する。また、一方の上部ばね受け部15の板厚は設計上、決まっている。そのため、一方の上部ばね受け部15の板厚を上述した画素数で除算して1画素当たりの長さを算出する。これと同様の計算を、他方の上部ばね受け部16についても行い、他方の上部ばね受け部16での1画素当たりの長さを算出する。
【0037】
そして、一方の上部ばね受け部15での1画素当たりの長さと、他方の上部ばね受け部16での1画素当たりの長さとに基づいて、各ばね受け部15、16同士の間の1画素当たりの長さ、すなわち、変化量を算出する。その変化量に基づいて、各ばね受け部15、16同士の間の画素数、および、各上部ばね受け部15、16の間の長さを算出する。
【0038】
あるいは、現時点での画像データと、上部ばね受け部15、16同士の間の長さが上限値および下限値である場合の画像データと、を互いに比較して、現時点での上部ばね受け部15、16同士の間の長さを算出してもよい。例えば、上部ばね受け部15、16同士の間の長さが上限値や下限値である場合の画像データに画像処理を行って、当該画像データ上で各上部ばね受け部15、16を検出し、前記画像データ上での各上部ばね受け部15、16の長さをそれぞれ測定する。画像処理は上述したエッジを検出する画像処理であってよい。一方、上限値や下限値は設計上、決まっているため、それらの値を前記画像データに当てはめる。
【0039】
また、カメラ26で撮影した現時点での画像データに対して上記と同様の画像処理を行って当該画像データ上で各上部ばね受け部15、16を検出し、前記画像データ上での各上部ばね受け部15、16の長さを測定する。つまり、各上部ばね受け部15、16の上限値や下限値は予め決まっている。また、上部ばね受け部15、16同士の間の長さが上限値や下限値である場合の画像データ上での長さ、および、現時点での画像データでの上部ばね受け部15、16同士の間の長さはそれぞれ算出できる。そのため、それらの値を比例式に当てはめることによって現時点での各上部ばね受け部15、16の間の長さを求める。
【0040】
こうして解析装置27で算出した現時点での上部ばね受け部15、16同士の間の距離は解析装置27から出力部28に出力されて表示される。
【0041】
解析装置27で算出した現時点での上部ばね受け部15、16同士の間の距離が、上限値以上であり、あるいは、下限値以下である時には、図示しない警告手段によって警告が発せられる。警告が発せられた場合には、例えば、一方の上部ばね受け部15と反力受け部24との間に油圧ジャッキが配置される。そして、油圧ジャッキによって上部スプリング14を圧縮し、その状態で、上部クロスタイロッド13におけるナット23の位置が調整される。こうして、上部スプリング14の長さつまり炉締め力が調整される。
【0042】
このように、本実施形態に係るコークス炉1の監視装置3によれば、カメラ26によって撮影した画像データに基づいて上部ばね受け部15、16同士の間の距離を測定する。そのため、コークス炉1に対して工事を行うことがない。また、コークス炉1の周囲が高温、粉塵の多い環境であったとしても、本実施形態に係るコークス炉1の監視装置3には、上述した環境で動作する箇所はほぼない。そのため、故障や不具合が生じ難い装置とすることができる。それらの結果、装置全体としてメンテナンス性が良好になる。また、上部ばね受け部15、16同士の間の距離の測定を人手によらずに行うため、測定精度を従来になく向上でき、しかも、安全な装置とすることができる。更に、画像センサによる測定のため、人手による測定作業を最小化でき、作業費を削減することができる。
【0043】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されない。例えば、監視装置3の撮影装置は画像データを取得することができればよく、上述したカメラ26に代えて3Dレーザースキャナーであってもよい。また、本実施形態では、炭化室2の入口側の各上部ばね受け部15、16を撮影対象として炉締め管理を行ったが、撮影対象とするばね受け部は炭化室2の出口側の各上部ばね受け部15、16であってもよい。あるいは、炭化室2の入口側や出口側の下部ばね受け部19、20であってもよい。炉締め力が変化することに起因して上部スプリング14や下部スプリング18の長さが変化するためである。
【0044】
1 コークス炉1
2 炭化室2
3 監視装置
4 押出機
5 装炭車
6 蓄熱室
7 レール
8 押し出しラム
9 ガイド車
10 消火車
11 炉壁
12 バックステー
13 上部クロスタイロッド
14 上部クロスタイロッドスプリング
15、16 上部ばね受け部
17 下部クロスタイロッド
18 下部クロスタイロッドスプリング
19、20 下部ばね受け部
21 保護板
22 インナースプリング
23 ナット
24 反力受け部
25 他のナット
26 カメラ
27 解析装置
28 出力部
D1 水平方向でのカメラとバックステーとの間の距離
D2 水平方向でのカメラと上部スプリングの中間部との間の距離
D3 炉高方向でのカメラとばね受け部との間の距離
図1
図2
図3
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図8