IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本スタッドウェルディング株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-スタッド溶接部の外観撮影治具 図1
  • 特開-スタッド溶接部の外観撮影治具 図2
  • 特開-スタッド溶接部の外観撮影治具 図3
  • 特開-スタッド溶接部の外観撮影治具 図4
  • 特開-スタッド溶接部の外観撮影治具 図5
  • 特開-スタッド溶接部の外観撮影治具 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107519
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】スタッド溶接部の外観撮影治具
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/84 20060101AFI20240802BHJP
【FI】
G01N21/84 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011478
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000228981
【氏名又は名称】日本スタッドウェルディング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】尾籠 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】河村 雄太
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA07
2G051AB13
2G051CA04
2G051CA07
2G051CC11
(57)【要約】
【課題】狭隘な場所にスタッドを密接して溶接した場合でも、手数を要することなく、スタッド溶接部の鉛直方向と水平方向からの観察を可能にすることで、正確に余盛高さ及び幅を確認することができるようにしたスタッド溶接部の外観撮影治具を提供すること。
【解決手段】スタッド溶接部Wを挟んで180°対称位置に、溶接対象面Pに対して所定の角度θ傾斜して対向して配置するようにした2個のミラー2、2と、スタッド溶接部W及び2個のミラー2、2に写ったスタッド溶接部Wを撮影する2個のカメラ3、3と、2個のミラー2、2及び2個のカメラ3、3を一体に取り付けるようにした支持体1とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタッド溶接部の外観を撮影するスタッド溶接部の外観撮影治具であって、
前記スタッド溶接部を挟んで180°対称位置に、溶接対象面に対して所定の角度傾斜して対向して配置するようにした2個のミラーと、
前記スタッド溶接部及び2個のミラーに写ったスタッド溶接部を撮影する2個のカメラと、
前記2個のミラー及び2個のカメラを一体に取り付けるようにした支持体とを備えてなることを特徴とするスタッド溶接部の外観撮影治具。
【請求項2】
前記支持体の2個のミラー及び2個のカメラを取り付けた箇所を含む面と直交する一方向側を開放するようにしてなることを特徴とする請求項1に記載のスタッド溶接部の外観撮影治具。
【請求項3】
前記2個のミラーを、溶接対象面に対して50±3°の範囲で傾斜して対向して配置するようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のスタッド溶接部の外観撮影治具。
【請求項4】
前記2個のミラーを、ミラーの先端縁間の距離が、スタッドの直径の1.5~1.7倍の範囲になるように対向して配置するようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のスタッド溶接部の外観撮影治具。
【請求項5】
前記2個のミラーの横方向の幅寸法が、スタッドの直径の1.5~1.7倍の範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載のスタッド溶接部の外観撮影治具。
【請求項6】
前記2個のミラーの縦方向の幅寸法が、スタッドの直径の0.75~0.85倍の範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載のスタッド溶接部の外観撮影治具。
【請求項7】
前記2個のカメラを、カメラ間の距離が、スタッドの直径の1.9~2.1倍の範囲になるように配置するようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のスタッド溶接部の外観撮影治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタッド溶接部の外観撮影治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スタッド溶接部の外観検査として、表1及び図5に示す検査が行われている。
【0003】
【表1】
【0004】
このスタッド溶接部の外観検査は、通常、目視検査方法により行われており、必要に応じて、カメラを用いた撮影が併用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、目視検査方法で、正確に余盛高さ及び幅を確認するためには、スタッド溶接部を鉛直方向と水平方向から観察する必要があるが、例えば、狭隘な場所にスタッドを密接して溶接した場合には、鉛直方向からしか観察することができないという問題があった。
また、カメラを用いて撮影を行う場合でも、図6(a)に示すように、鉛直方向と水平方向からの合計4回の撮影が必要となり、手数を要するとともに、図6(b)~(c)に示すように、狭隘な場所にスタッドを密接して溶接した場合には、鉛直方向からしか撮影することができないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記スタッド溶接部の外観検査に伴う問題点に鑑み、例えば、狭隘な場所にスタッドを密接して溶接した場合でも、手数を要することなく、スタッド溶接部の鉛直方向と水平方向からの観察を可能にすることで、正確に余盛高さ及び幅を確認することができるようにしたスタッド溶接部の外観撮影治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のスタッド溶接部の外観撮影治具は、
スタッド溶接部の外観を撮影するスタッド溶接部の外観撮影治具であって、
前記スタッド溶接部を挟んで180°対称位置に、溶接対象面に対して所定の角度傾斜して対向して配置するようにした2個のミラーと、
前記スタッド溶接部及び2個のミラーに写ったスタッド溶接部を撮影する2個のカメラと、
前記2個のミラー及び2個のカメラを一体に取り付けるようにした支持体とを備えてなることを特徴とする。
【0008】
この場合において、前記支持体の2個のミラー及び2個のカメラを取り付けた箇所を含む面と直交する一方向側を開放するようにすることができる。
【0009】
また、前記2個のミラーを、溶接対象面に対して50±3°の範囲で傾斜して対向して配置することができる。
【0010】
また、前記2個のミラーを、ミラーの先端縁間の距離が、スタッドの直径の1.5~1.7倍の範囲になるように対向して配置することができる。
【0011】
また、前記2個のミラーの横方向の幅寸法を、スタッドの直径の1.5~1.7倍の範囲に設定することができる。
【0012】
また、前記2個のミラーの縦方向の幅寸法を、スタッドの直径の0.75~0.85倍の範囲に設定することができる。
【0013】
また、前記2個のカメラを、カメラ間の距離が、スタッドの直径の1.9~2.1倍の範囲になるように配置することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のスタッド溶接部の外観撮影治具によれば、2個のミラー及び2個のカメラを支持体に一体に取り付けることにより、例えば、狭隘な場所にスタッドを密接して溶接した場合でも、手数を要することなく、スタッド溶接部の鉛直方向と水平方向からの撮影を可能にすることで、正確に余盛高さ及び幅を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明のスタッド溶接部の外観撮影治具の一実施例を示し、(a)は正面図、(b)は(a)のA-A断面図、(c)は(a)のB-B断面図である。
図2】同スタッド溶接部の外観撮影治具を用いてスタッド溶接部の撮影を行う場合の例を示す説明図で、(a1)は一般的なスタッドの場合の正面図、(b1)は同側面図、(a2)は長尺スタッドの場合の正面図、(b2)は同側面図、(a3)は曲げスタッドの場合の正面図、(b3)は同側面図である。
図3】同スタッド溶接部の外観撮影治具を用いてスタッド溶接部の撮影を行う場合の一例を示す説明図で、(a)は正面図、(b)は狭隘な場所にスタッドを密接して溶接した場合の平面図、(c)は同正面図である。
図4】同スタッド溶接部の外観撮影治具を用いて撮影したスタッド溶接部を示し、(a)は撮影した写真、(b)はその説明図である。
図5】スタッド溶接部の外観検査の一例を示す説明図である。
図6】カメラを用いてスタッド溶接部の撮影を行う場合の一例を示す説明図で、(a)は鉛直方向と水平方向から撮影を行う場合の正面図、(b)は狭隘な場所にスタッドを密接して溶接した場合の平面図、(c)は同正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のスタッド溶接部の外観撮影治具の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0017】
図1図4に、本発明のスタッド溶接部の外観撮影治具の一実施例を示す。
このスタッド溶接部の外観撮影治具は、図1に示すように、スタッド溶接部Wの外観を撮影するスタッド溶接部の外観撮影治具であって、スタッド溶接部Wを挟んで180°対称位置に、溶接対象面Pに対して所定の角度θ傾斜して対向して配置するようにした2個のミラー2、2と、スタッド溶接部W及び2個のミラー2、2に写ったスタッド溶接部W
を撮影する2個のカメラ3、3と、2個のミラー2、2及び2個のカメラ3、3を一体に取り付けるようにした支持体1とを備えるようにしている。
【0018】
支持体1は、2個のミラー2、2及び2個のカメラ3、3を取り付けた箇所を含む面と直交する一方向側が開放された形状にするようにしている。具体的には、支持体1は、平面視したとき、略U字状に形成した中間部12に2個のカメラ3、3を取り付け、中間部12の両端部から下方に延設した脚部13、13に2個のミラー2、2を取り付け、中間部12の中央部から上方に操作部11を延設し、操作部11に沿って2個のカメラ3、3のケーブル31、31を付設するようにする。
これにより、支持体1を開放側からスタッド溶接部Wの外観を撮影する所定位置に設置することで、支持体1がスタッドSと干渉することがないようにしている。
【0019】
2個のミラー2、2の溶接対象面Pに対する傾斜角度θは、50±3°の範囲(本実施例においては、約50°。)に設定するようにする。
傾斜角度θが、47°より小さいと、撮影可能な範囲が狭く、スタッド溶接部の外観全体を撮影することが困難になる。
一方、傾斜角度θが、53°より大きいと、撮影した画像の歪みが大きく、外観検査を正確に行うことが困難になる。
【0020】
2個のミラー2、2は、ミラー2、2の先端縁間の距離L1が、スタッドSの直径Dの1.5~1.7倍の範囲(本実施例においては、スタッドSの直径D:φ25mm、距離L1:約40mm。)になるように対向して配置するようにしている。
【0021】
2個のミラー2、2の大きさは、ミラー2、2の横方向の幅寸法W1が、スタッドSの直径Dの1.5~1.7倍の範囲(本実施例においては、スタッドSの直径D:φ25mm、横方向の幅寸法W1:約40mm。)になるように設定するようにし、縦方向の幅寸法W2が、スタッドSの直径Dの0.75~0.85倍の範囲(本実施例においては、スタッドSの直径D:φ25mm、縦方向の幅寸法W2:約20mm。)になるように設定するようにしている。
【0022】
2個のカメラ3、3は、例えば、画角が約50°のカメラを使用した場合、カメラ3、3間の距離L2が、スタッドSの直径Dの1.9~2.1倍の範囲(本実施例においては、スタッドSの直径D:φ25mm、距離L2:約50mm。)になるように、カメラ3、3と母材M表面間の距離Hが、スタッドSの直径Dの2.3~2.5倍の範囲(本実施例においては、スタッドSの直径D:φ25mm、距離H:約60mm。)になるように配置するようにしている。
【0023】
2個のカメラ3、3の撮影範囲(画角)は、少なくとも、スタッド溶接部Wの180°の範囲及び一方のミラー2(に写ったスタッド溶接部W)の範囲を撮影するように設定するようにしている。
【0024】
なお、本実施例のスタッド溶接部の外観撮影治具の上記諸元値は、直径Dがφ25mmのスタッドSに適合したものであるが、直径Dがφ25mmより小径のスタッド、例えば、直径Dがφ20mm程度のスタッドにも、そのまま適用することができる。
【0025】
また、本実施例のスタッド溶接部の外観撮影治具には設けていないが、必要に応じて、適宜の照明装置(図示省略)を支持体1に付設することができる。
【0026】
このスタッド溶接部の外観撮影治具は、支持体1を開放側からスタッド溶接部Wの外観を撮影する所定位置に設置することで、支持体1がスタッドSと干渉することがないよう
にしているため、図2(a1)~(b1)に示す一般的なスタッドSのほか、図2(a2)~(b2)に示す長尺スタッドS1や図2(a3)~(b3)に示す曲げスタッドS2のスタッド溶接部Wの外観を撮影することが可能である。
【0027】
このスタッド溶接部の外観撮影治具によれば、2個のミラー2、2及び2個のカメラ3、3を支持体1に一体に取り付けることにより、図3(a)に示すように、実質的に、スタッド溶接部Wの鉛直方向と水平方向からの撮影を、2個のカメラ3、3を連動させることによって、1回の撮影で行うことができるとともに、図3(b)~(c)に示すように、狭隘な場所にスタッドSを密接して溶接した場合でも、撮影が可能となる。
【0028】
このスタッド溶接部の外観撮影治具を用いてスタッド溶接部Wを実際に撮影した写真(2個のカメラ3、3で撮影した2つの画像を並べて結合した写真。このように、2つの画像を並べて結合することで、写真の管理を簡易に行うことができる。)を図4(a)に、その説明を図4(b)に示す。
これにより、正確にスタッド溶接部Wの余盛高さ及び幅を確認することができる。
この場合、撮影した画像は歪んでいる(特に、余盛の高さ方向の寸法は、2個のミラー2、2の溶接対象面Pに対する傾斜角度θの関係で、圧縮されている。)ため、余盛高さ及び幅の判定は、歪みを考慮した補正を加えて行うようにする。この補正は、具体的には、計算式を用いて行うこともできるが、例えば、予め基準となるスタッド溶接部Wを撮影しておき、この画像と比較することで、余盛高さ及び幅の判定を簡易に行うことができる。
【0029】
以上、本発明のスタッド溶接部の外観撮影治具について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明のスタッド溶接部の外観撮影治具は、手数を要することなく、スタッド溶接部の鉛直方向と水平方向からの観察を可能にすることで、正確に余盛高さ及び幅を確認することができることから、例えば、狭隘な場所にスタッドを密接して溶接する際等に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0031】
1 支持体
11 操作部
12 中間部
13 脚部
2 ミラー
3 カメラ
31 ケーブル
M 母材
P 溶接対象面
S スタッド
S1 長尺スタッド
S2 曲げスタッド
W 溶接部
図1
図2
図3
図4
図5
図6