(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107532
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】通信処理システム、ノイズ計算装置、端末装置、基地局、通信処理方法、および、プログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 12/122 20210101AFI20240802BHJP
H04W 24/10 20090101ALI20240802BHJP
G06F 21/57 20130101ALI20240802BHJP
【FI】
H04W12/122
H04W24/10
G06F21/57
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011499
(22)【出願日】2023-01-30
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、支出負担行為担当官、総務省大臣官房会計課企画官、研究テーマ「安全な無線通信サービスのための新世代暗号技術に関する研究開発、課題ア 5G等のための超高速・大容量に対応した共通鍵暗号方式技術(高速共通鍵暗号)ア-2-3 無線通信プロトコルにおける評価」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】393031586
【氏名又は名称】株式会社国際電気通信基礎技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100143498
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 健
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 宏修
(72)【発明者】
【氏名】松中 隆志
(72)【発明者】
【氏名】三本 知明
(72)【発明者】
【氏名】横山 浩之
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA30
5K067DD47
5K067EE02
5K067EE10
(57)【要約】
【課題】どのような通信状態であっても、通信サービスに大きな影響をもたらすことなく、かつ、通信内容の傍受を行う攻撃等を適切に防止する通信処理システムを実現する。
【解決手段】通信処理システム1000では、端末装置の同時接続数・無線の電波伝搬環境などの要因により変化する無線通信における無線リソースの利用率に応じて、ノイズパラメータを調整し、ノイズ付与処理におけるノイズ付与量(データ撹乱の程度)を調整する。したがって、通信処理システム1000では、攻撃への耐性を劣化させることなく、かつノイズの過度な付与による周波数利用効率の低下を軽減させることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信を行うことができる端末装置とノイズ計算装置と基地局とを備える通信処理システムであって、
通信システムにおける無線リソースの利用率に関する情報である無線リソース利用率データを取得する基地局と、
前記基地局から前記無線リソース利用率データを受信し、前記無線リソース利用率データ、および/または、無線通信環境の混雑度および/または無線の伝搬環境に関する情報に基づいて、端末装置および基地局において実行されるノイズ付与処理のノイズ量を決定するためのノイズパラメータを取得するノイズ計算装置と、
前記ノイズ計算装置により取得された前記ノイズパラメータを受信し、当該ノイズパラメータに基づいて通信データ列に付与するノイズ量を決定し、アプリケーションおよび/または通信サービスを実現するために発生する通信データ列に対して、決定した前記ノイズ量によるノイズ付与処理を実行する端末装置と、
を備える、
通信処理システム。
【請求項2】
前記基地局は、
前記ノイズ計算装置により取得された前記ノイズパラメータを受信し、当該ノイズパラメータに基づいて、前記端末装置との通信を実現するための通信データ列に付与するノイズ量を決定し、前記端末装置への通信を実現するための前記通信データ列に対して、決定した前記ノイズ量によるノイズ付与処理を実行する、
請求項1に記載の通信処理システム。
【請求項3】
前記ノイズ計算装置は、
(1)前記無線リソース利用率データが、無線リソースの利用率が所定の値以下であることを示すデータである場合、前記ノイズ付与処理においてノイズを付与する対象とする通信特徴量を通信量とし、
(2)前記無線リソース利用率データが、無線リソースの利用率が所定の値よりも大きい場合、前記ノイズ付与処理においてノイズを付与する対象とする通信特徴量を通信間隔とすることを示す処理対象特定データを取得し、前記処理対象特定データを、前記端末装置および前記基地局に送信し、
前記端末装置および/または前記基地局は、
前記処理対象特定データを受信し、
前記処理対象特定データで特定される通信特徴量を前記ノイズ付与処理の処理対象とし、前記ノイズ付与処理を実行する、
請求項1に記載の通信処理システム。
【請求項4】
前記ノイズ計算装置は、
(1)前記無線リソース利用率データが、無線リソースの利用率が所定の値以下であることを示すデータである場合、前記ノイズ付与処理においてノイズを付与する対象とする通信特徴量を通信量とし、
(2)前記無線リソース利用率データが、無線リソースの利用率が所定の値よりも大きい場合、前記ノイズ付与処理においてノイズを付与する対象とする通信特徴量を通信間隔とすることを示す処理対象特定データを取得し、前記処理対象特定データを、前記端末装置および前記基地局に送信し、
前記端末装置および/または前記基地局は、
前記処理対象特定データを受信し、
前記処理対象特定データで特定される通信特徴量を前記ノイズ付与処理の処理対象とし、前記ノイズ付与処理を実行する、
請求項2に記載の通信処理システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の通信処理システムに用いられる前記ノイズ計算装置。
【請求項6】
前記ノイズパラメータ、および、前記ノイズ付与処理においてノイズを付与する対象とする通信特徴量を示す処理対象特定データを取得するノイズパラメータ決定部と、
取得した前記ノイズパラメータおよび前記処理対象特定データを含むデータを、前記端末装置および/または前記基地局に送信する通信インターフェースと、
を備える請求項5に記載のノイズ計算装置。
【請求項7】
請求項1から4のいずれかに記載の通信処理システムに用いられる前記端末装置。
【請求項8】
前記ノイズパラメータと、前記ノイズ付与処理においてノイズを付与する対象とする通信特徴量を示す処理対象特定データとを含むデータを前記ノイズ計算装置から受信し、受信した当該データに基づいて、前記ノイズ付与処理を実行する、
請求項7に記載の端末装置。
【請求項9】
請求項1から4のいずれかに記載の通信処理システムに用いられる前記基地局。
【請求項10】
前記ノイズパラメータと、前記ノイズ付与処理においてノイズを付与する対象とする通信特徴量を示す処理対象特定データとを含むデータを前記ノイズ計算装置から受信し、受信した当該データに基づいて、前記ノイズ付与処理を実行する、
請求項9に記載の基地局。
【請求項11】
無線通信を行うことができる端末装置とノイズ計算装置と基地局とを備える通信処理システムで用いられる通信処理方法であって、
通信システムにおける無線リソースの利用率に関する情報である無線リソース利用率データを取得する第1ステップと、
前記無線リソース利用率データ、および/または、無線通信環境の混雑度および/または無線の伝搬環境に関する情報に基づいて、通信データ列にノイズを付与するノイズ付与処理のノイズ量を決定するためのノイズパラメータを取得する第2ステップと、
当該ノイズパラメータに基づいて通信データ列に付与するノイズ量を決定し、アプリケーションおよび/または通信サービスを実現するために発生する通信データ列に対して、決定した前記ノイズ量によるノイズ付与処理を実行する第3ステップと、
を備える通信処理方法。
【請求項12】
請求項11に記載の通信処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システムにおいて、通信内容の傍受による利用アプリおよび/またはサービスの特定を防ぐために、通信信号にノイズを付与する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
通信内容の傍受を防ぐ方法として、暗号技術を用いて通信内容を秘匿する方法が一般的に用いられる。しかしながら、暗号技術を用いて通信内容を秘匿する方法を用いることで、通信内容の傍受を完全に防げるわけではない。例えば、非特許文献1に記載の攻撃方法のように、暗号化された通信の内容を傍受し、単位時間ごとの通信量、通信間隔といった通信の特徴をもとに、暗号化された通信であっても、その通信を実施している端末で利用しているサービスを特定する攻撃方法があり、こうような攻撃方法により通信内容が傍受されることがありうる。
【0003】
このような攻撃方法による攻撃を防ぐ方法として、通信に対して所定量のノイズを付与する方法がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Sangwook Bae, et. al., "Watching the Watchers: Practical Video Identification Attack in LTE Networks", USENIX security 2022.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、通信に対して所定量のノイズを付与する方法では、ノイズによって通信量が増加するため、無線通信においては周波数利用効率が悪化し、特に多数の端末が接続されている環境下、無線の伝搬環境が悪い状態においては、通信サービスに大きな影響をもたらす。
【0006】
そこで、本発明では、上記課題に鑑み、どのような通信状態であっても、通信サービスに大きな影響をもたらすことなく、かつ、通信内容の傍受を行う攻撃等を適切に防止する通信処理システム、ノイズ計算装置、端末装置、基地局、通信処理方法、および、プログラムを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、第1の発明は、無線通信を行うことができる端末装置とノイズ計算装置と基地局とを備える通信処理システムである。
【0008】
基地局は、通信システムにおける無線リソースの利用率に関する情報である無線リソース利用率データを取得する。
【0009】
ノイズ計算装置は、基地局から無線リソース利用率データを受信し、無線リソース利用率データ、および/または、無線通信環境の混雑度および/または無線の伝搬環境に関する情報に基づいて、端末装置および基地局において実行されるノイズ付与処理のノイズ量を決定するためのノイズパラメータを取得する。
【0010】
端末装置は、ノイズ計算装置により取得されたノイズパラメータを受信し、当該ノイズパラメータに基づいて通信データ列に付与するノイズ量を決定し、アプリケーションおよび/または通信サービスを実現するために発生する通信データ列に対して、決定したノイズ量によるノイズ付与処理を実行する。
【0011】
この通信処理システムでは、端末装置の同時接続数・無線の電波伝搬環境などの要因により変化する無線通信における無線リソースの利用率に応じて、ノイズパラメータを調整し、ノイズ付与処理におけるノイズ付与量(データ撹乱の程度)を調整することができる。したがって、この通信処理システムでは、攻撃への耐性を劣化させることなく、かつノイズの過度な付与による周波数利用効率の低下を軽減させることができる。すなわち、この通信処理システム1000では、どのような通信状態であっても、通信サービスに大きな影響をもたらすことなく、かつ、通信内容の傍受を行う攻撃等を適切に防止することができる。
【0012】
なお、「ノイズ付与処理」とは、通信データ列に対して、所定のノイズ量を付与する処理であり、例えば、通信データ列を所定のノイズ量に基づいて撹乱させる処理(例えば、所定期間内の通信量や通信間隔を変化させる処理)を含む概念である。
【0013】
第2の発明は、第1の発明であって、基地局は、ノイズ計算装置により取得されたノイズパラメータを受信し、当該ノイズパラメータに基づいて、端末装置との通信を実現するための通信データ列に付与するノイズ量を決定し、端末装置への通信を実現するための通信データ列に対して、決定したノイズ量によるノイズ付与処理を実行する。
【0014】
これにより、この通信処理システムでは、基地局においてもノイズ付与処理を実行することができ、基地局から送信される通信データについても通信サービスに大きな影響をもたらすことなく、かつ、通信内容の傍受を行う攻撃等を適切に防止することができる。
【0015】
第3の発明は、第1の発明であって、ノイズ計算装置は、(1)無線リソース利用率データが、無線リソースの利用率が所定の値以下であることを示すデータである場合、ノイズ付与処理においてノイズを付与する対象とする通信特徴量を通信量とし、(2)無線リソース利用率データが、無線リソースの利用率が所定の値よりも大きい場合、ノイズ付与処理においてノイズを付与する対象とする通信特徴量を通信間隔とすることを示す処理対象特定データを取得し、処理対象特定データを、端末装置および基地局に送信する。
【0016】
そして、端末装置および/または基地局は、処理対象特定データを受信し、処理対象特定データで特定される通信特徴量をノイズ付与処理の処理対象とし、ノイズ付与処理を実行する。
【0017】
これにより、この通信処理システムでは、通信状態が逼迫し、無線リソースの利用率が所定の値を超える程高い値となった場合、ノイズ付与処理の処理対象とする通信特徴量を通信間隔とするとことで、通信負荷を増加させることなく(無線リソースを過度に消費することなく)、通信内容の傍受を行う攻撃等への耐性を維持させることができる。
【0018】
第4の発明は、第2の発明であって、ノイズ計算装置は、(1)無線リソース利用率データが、無線リソースの利用率が所定の値以下であることを示すデータである場合、ノイズ付与処理においてノイズを付与する対象とする通信特徴量を通信量とし、(2)無線リソース利用率データが、無線リソースの利用率が所定の値よりも大きい場合、ノイズ付与処理においてノイズを付与する対象とする通信特徴量を通信間隔とすることを示す処理対象特定データを取得し、処理対象特定データを、端末装置および基地局に送信する。
【0019】
そして、端末装置および/または基地局は、処理対象特定データを受信し、処理対象特定データで特定される通信特徴量をノイズ付与処理の処理対象とし、ノイズ付与処理を実行する。
【0020】
これにより、この通信処理システムでは、通信状態が逼迫し、無線リソースの利用率が所定の値を超える程高い値となった場合、ノイズ付与処理の処理対象とする通信特徴量を通信間隔とするとことで、通信負荷を増加させることなく(無線リソースを過度に消費することなく)、通信内容の傍受を行う攻撃等への耐性を維持させることができる。
【0021】
第5の発明は、第1から第4のいずれかの発明である通信処理システムに用いられるノイズ計算装置である。
【0022】
これにより、第1から第4のいずれかの発明と同様の効果を奏するノイズ計算装置を実現することができる。
【0023】
第6の発明は、第5の発明であって、ノイズパラメータ、および、ノイズ付与処理においてノイズを付与する対象とする通信特徴量を示す処理対象特定データを取得するノイズパラメータ決定部と、取得したノイズパラメータおよび処理対象特定データを含むデータを、端末装置および/または基地局に送信する通信インターフェースと、を備えるノイズ計算装置である。
これにより、ノイズ付与処理において、処理対象特定データを切り替えることを可能とするノイズ計算装置を実現することができる。
【0024】
第7の発明は、第1から第4のいずれかの発明である通信処理システムに用いられる端末装置である。
【0025】
これにより、第1から第4のいずれかの発明と同様の効果を奏する端末装置を実現することができる。
【0026】
第8の発明は、第7の発明であって、ノイズパラメータと、ノイズ付与処理においてノイズを付与する対象とする通信特徴量を示す処理対象特定データとを含むデータをノイズ計算装置から受信し、受信した当該データに基づいて、ノイズ付与処理を実行する端末装置である。
【0027】
これにより、ノイズ付与処理において、処理対象特定データを切り替えることができる端末装置を実現することができる。
【0028】
第9の発明は、第1から第4のいずれかの発明である通信処理システムに用いられる基地局である。
【0029】
これにより、第1から第4のいずれかの発明と同様の効果を奏する基地局を実現することができる。
【0030】
第10の発明は、第9の発明であって、ノイズパラメータと、ノイズ付与処理においてノイズを付与する対象とする通信特徴量を示す処理対象特定データとを含むデータをノイズ計算装置から受信し、受信した当該データに基づいて、ノイズ付与処理を実行する基地局である。
【0031】
これにより、ノイズ付与処理において、処理対象特定データを切り替えることができる基地局を実現することができる。
【0032】
第11の発明は、無線通信を行うことができる端末装置とノイズ計算装置と基地局とを備える通信処理システムで用いられる通信処理方法であって、第1ステップと、第2ステップと、第3ステップと、を備える。
【0033】
第1ステップは、通信システムにおける無線リソースの利用率に関する情報である無線リソース利用率データを取得する。
【0034】
第2ステップは、無線リソース利用率データ、および/または、無線通信環境の混雑度および/または無線の伝搬環境に関する情報に基づいて、通信データ列にノイズを付与するノイズ付与処理のノイズ量を決定するためのノイズパラメータを取得する。
【0035】
第3ステップは、当該ノイズパラメータに基づいて通信データ列に付与するノイズ量を決定し、アプリケーションおよび/または通信サービスを実現するために発生する通信データ列に対して、決定したノイズ量によるノイズ付与処理を実行する。
【0036】
これにより、第1の発明と同様の効果を奏する通信処理方法を実現することができる。
【0037】
第12の発明は、第11の発明である通信処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0038】
これにより、第1の発明と同様の効果を奏する通信処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを実現することができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、どのような通信状態であっても、通信サービスに大きな影響をもたらすことなく、かつ、通信内容の傍受を行う攻撃等を適切に防止する通信処理システム、ノイズ計算装置、端末装置、基地局、通信処理方法、および、プログラムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】第1実施形態に係る通信処理システム1000の概略構成図。
【
図2】第1実施形態に係る通信処理システム1000の端末装置1、基地局2およびノイズ計算装置3の概略構成図。
【
図3】第1実施形態に係る通信処理システム1000の端末装置1のノイズ付与処理部13の概略構成図。
【
図4】第1実施形態に係る通信処理システム1000で実行される処理のシーケンス図。
【
図5】第1実施形態に係る通信処理システム1000で実行される処理のシーケンス図。
【
図6】第2実施形態に係る通信処理システム2000の概略構成図。
【
図7】第2実施形態に係る通信処理システム1000の端末装置1A、基地局2Aおよびノイズ計算装置3Aの概略構成図。
【
図8】第2実施形態に係る通信処理システム2000の端末装置1Aのノイズ付与処理部13の概略構成図。
【
図9】第2実施形態に係る通信処理システム2000で実行される処理のシーケンス図。
【
図10】第2実施形態に係る通信処理システム2000で実行される処理のシーケンス図。
【発明を実施するための形態】
【0041】
[第1実施形態]
第1実施形態について、図面を参照しながら、以下、説明する。
【0042】
<1.1:通信処理システムの構成>
図1は、第1実施形態に係る通信処理システム1000の概略構成図である。
【0043】
図2は、第1実施形態に係る通信処理システム1000の端末装置1、基地局2およびノイズ計算装置3の概略構成図である。
【0044】
図3は、第1実施形態に係る通信処理システム1000の端末装置1のノイズ付与処理部13の概略構成図である。
【0045】
通信処理システム1000は、
図1に示すように、n個(n:自然数)の端末装置UE1~UEn(便宜上、端末装置UE1~UEnのいずれか1つの端末装置を端末装置1とする)と、基地局2と、ノイズ計算装置3と、通信制御装置4と、M個のサーバSvr1~SvrM(M:自然数)とを備える。
【0046】
第1サーバSvr1~第MサーバSvrMおよび通信制御装置4は、ネットワークNW1(例えば、インターネット)に接続されており、それぞれのサーバおよび/または装置と、互いに通信可能である。また、通信制御装置4と、基地局2と、ノイズ計算装置3とは、所定の通信路またはネットワークを介して接続されており、互いに通信可能である。また、端末装置UE1~UEnと、基地局2と、ノイズ計算装置3とは、所定のネットワーク(例えば、無線通信用ネットワーク)を介して接続されており、互いに通信可能である。なお、本実施形態では、説明便宜のため、端末装置UE1~UEnと、基地局2と、ノイズ計算装置3とは、無線通信用ネットワークを介して、互いに通信が可能な状態で接続されているものとする。
【0047】
(1.1.1:端末装置)
端末装置1(便宜上、端末装置UE1~UEnのいずれか1つの端末装置)は、
図2に示すように、アプリ処理部11と、送信処理部12と、ノイズ付与処理部13と、受信処理部14と、第1通信インターフェースIF1とを備える。
【0048】
アプリ処理部11は、端末装置1で実行される所定のアプリケーションを実行するための処理(例えば、アプリケーション層の処理)を行う機能部であり、受信処理部14から出力されるデータD15を入力し、当該データD15に基づく処理を実行するとともに、アプリケーションを実行するために必要なデータ(例えば、アプリケーションを実行するために、所定のサーバ(例えば、第1サーバSvr1~第MサーバSvrMの1または複数のサーバ)に送信する必要があるデータ)を生成し、生成した当該データを、データD11として、送信処理部12に出力する。
【0049】
送信処理部12は、アプリ処理部11から出力されるデータD11を入力し、当該データD11に対して送信処理を実行し、当該データD11を含む送信用データ(例えば、パケットデータ)を生成する。なお、この送信用データは、暗号化されたデータであってもよい。そして、送信処理部12は、生成した送信用データをデータD12として、ノイズ付与処理部13に出力する。
【0050】
ノイズ付与処理部13は、送信処理部12から出力されるデータD12を入力し、当該データD12に対して、ノイズ付与処理を行う機能部である。ノイズ付与処理部13は、
図3に示すように、通信特徴量取得部131と、離散フーリエ変換処理部132と、ノイズ生成部133と、加算部134と、逆離散フーリエ変換処理部135と、撹乱処理部136とを備える。
【0051】
通信特徴量取得部131は、送信処理部12から出力されるデータD12を入力し、データD12に対して通信特徴量取得処理を行い、所定の期間の通信特徴量を取得する。そして、通信特徴量取得部131は、取得した通信特徴量を含むデータを、データD_Qとして離散フーリエ変換処理部132に出力する。
【0052】
離散フーリエ変換処理部132は、通信特徴量取得部131から出力されるデータD_Qを入力し、データD_Qに対して離散フーリエ変換を行い、当該変換後のデータを、データD_Fとして、加算部134に出力する。
【0053】
ノイズ生成部133は、第1通信インターフェースIF1から出力されるデータD1_paramを入力し、データD1_paramに含まれるパラメータを用いて、ノイズ生成処理を実行する。そして、ノイズ付与処理部13は、ノイズ生成処理により生成したデータを、データD_Lapとして、加算部134に出力する。
【0054】
加算部134は、離散フーリエ変換処理部132から出力されるデータD_Fと、ノイズ生成部133から出力されるデータD_Lapを入力し、両データを加算する処理を行う。そして、加算部134は、当該加算処理の結果データを、データD_F’として、逆離散フーリエ変換処理部135に出力する。
【0055】
逆離散フーリエ変換処理部135は、加算部134から出力されるデータD_F’を入力し、データD_F’に対して、逆離散フーリエ変換を行い、当該変換後のデータを、データD_Q’として撹乱処理部136に出力する。
【0056】
撹乱処理部136は、送信処理部12から出力されるデータD12と、逆離散フーリエ変換処理部135から出力されるデータD_Q’とを入力する。撹乱処理部136は、データD_Q’に基づいて、データD12に対して撹乱処理を行い、当該撹乱処理後のデータを、データD13として、第1通信インターフェースIF1に出力する。
【0057】
受信処理部14は、第1通信インターフェースIF1から出力されるデータD14を入力し、当該データD14に対して、受信処理を行う。なお、受信処理部14は、データD14がノイズ付与されたデータ(例えば、基地局2にて、ノイズ付与処理によりダミーデータが挿入されたデータ)である場合、ノイズ除去処理(例えば、挿入されたダミーデータを削除する処理)を行い、当該ノイズ除去処理後のデータに対して受信処理を行う。そして、受信処理部14は、当該受信処理後のデータを、データD15として、アプリ処理部11に出力する。
【0058】
第1通信インターフェースIF1は、基地局2および/またはノイズ計算装置3とデータ送受信を行うための通信インターフェースである。第1通信インターフェースIF1は、ノイズ付与処理部13から出力されるデータD13を入力し、当該データD13を含む無線通信信号(無線通信により、基地局2および/またはノイズ計算装置3と通信可能な信号)を生成し、生成した当該無線通信信号を送信する(送信先の装置へ送信する)。また、第1通信インターフェースIF1は、外部から無線通信信号を受信し、受信した無線通信信号に含まれるデータを取り出し、当該データに応じて、端末装置1の所定の機能部に出力する。例えば、第1通信インターフェースIF1は、基地局2から送信される無線通信信号Dcomを受信し、受信した無線通信信号Dcomに含まれるデータを取り出し、当該データを、データD14として、受信処理部14に出力する。また、第1通信インターフェースIF1は、ノイズ計算装置3から送信される無線通信信号Dtx_paramを受信し、受信した無線通信信号Dtx_paramに含まれるデータを取り出し、当該データを、データD1_paramとして、ノイズ付与処理部13に出力する。
【0059】
(1.1.2:基地局)
基地局2は、
図2に示すように、端末側通信インターフェースIF21と、NW側通信インターフェースIF22と、通信処理部21と、通信状況取得部22と、送信処理部23と、ノイズ付与処理部24と、受信処理部25と、を備える。
【0060】
端末側通信インターフェースIF21は、端末装置1(端末装置UE1~UEn)および/またはノイズ計算装置3とデータ送受信を行うための通信インターフェースである。端末側通信インターフェースIF21は、通信状況取得部22から出力されるデータD2_rを入力し、当該データD2_rを含む無線通信信号(無線通信により、端末装置1(端末装置UE1~UEn)および/またはノイズ計算装置3と通信可能な信号)を生成し、生成した当該無線通信信号を送信する(送信先の装置(ノイズ計算装置3)へ送信する)。また、端末側通信インターフェースIF21は、ノイズ付与処理部24から出力されるデータD23を入力し、当該データD23を含む無線通信信号(無線通信により、端末装置1(端末装置UE1~UEn)および/またはノイズ計算装置3と通信可能な信号)を生成し、生成した当該無線通信信号を送信する(送信先の装置へ送信する)。
【0061】
また、端末側通信インターフェースIF21は、外部から無線通信信号を受信し、受信した無線通信信号に含まれるデータを取り出し、当該データに応じて、基地局2の所定の機能部に出力する。例えば、端末側通信インターフェースIF21は、端末装置1(端末装置UE1~UEn)から送信される無線通信信号Dcomを受信し、受信した無線通信信号Dcomに含まれるデータを取り出し、当該データを、データD24として、受信処理部25に出力する。
【0062】
NW側通信インターフェースIF22は、通信制御装置4とデータ送受信を行うための通信インターフェースである。NW側通信インターフェースIF22は、通信処理部21出力されるデータを入力し、当該データを含む通信信号(通信制御装置4と接続されている通信路(あるいは、ネットワーク)を介して、通信制御装置4と通信可能な信号)を生成し、生成した当該通信信号を通信制御装置4へ送信する。また、NW側通信インターフェースIF22は、通信制御装置4から送信される通信信号を受信し、受信した通信信号に含まれるデータを取り出し、当該データを通信処理部21に出力する。
【0063】
通信処理部21は、NW側通信インターフェースIF22から出力されるデータを入力し、当該データに応じた通信処理を行う。例えば、NW側通信インターフェースIF22から出力されるデータから、送信先を特定し、特定した送信先へ送信するデータを生成し、生成した当該データを、データD21として、通信処理部21に出力する。また、通信処理部21は、受信処理部25から出力されるデータD25を入力し、当該データD25に応じた通信処理を行う。例えば、データD25から、送信先を特定し、特定した送信先へ送信するデータを生成し、生成した当該データをNW側通信インターフェースIF22に出力する。
【0064】
また、通信処理部21は、基地局2、端末装置1(端末装置UE1~UEn)が無線通信を行っている無線通信用ネットワークの状況(例えば、無線リソースの利用率r(0≦r≦1))を特定するためのデータを取得し(例えば、基地局2において、送受信される通信データの状況から当該データを取得し)、取得した当該データを、データD26として、通信状況取得部22に出力する。
【0065】
通信状況取得部22は、通信処理部21から出力されるデータD26を入力し、当該データD26から、基地局2、端末装置1(端末装置UE1~UEn)が無線通信を行っている無線通信用ネットワークにおける無線リソースの利用率rを取得する。そして、通信状況取得部22は、取得した無線リソースの利用率rを含むデータを、データD2_rとして、端末側通信インターフェースIF21に出力する。
【0066】
送信処理部23は、通信処理部21から出力されるデータD21を入力し、当該データD21に対して送信処理を実行し、当該データD21を含む送信用データ(例えば、パケットデータ)を生成する。なお、この送信用データは、暗号化されたデータであってもよい。そして、送信処理部23は、生成した送信用データをデータD22として、ノイズ付与処理部24に出力する。
【0067】
ノイズ付与処理部24は、端末装置1のノイズ付与処理部13と同様の構成、機能を有している。なお、ノイズ付与処理部24の入力は、送信処理部23から出力されるデータD22であり、ノイズ付与処理部24の出力は、データD23である(
図3の括弧で示したデータを参照)。ノイズ付与処理部24は、データに対して、ノイズ付与処理(ノイズ付与処理部13と同様の処理)を実行することで、データD23を取得し、取得した当該データD23を、端末側通信インターフェースIF21に出力する。
【0068】
受信処理部25は、端末側通信インターフェースIF21から出力されるデータD24を入力し、当該データD24に対して、受信処理を行う。なお、受信処理部25は、データD24がノイズ付与されたデータ(例えば、端末装置1にて、ノイズ付与処理によりダミーデータが挿入されたデータ)である場合、ノイズ除去処理(例えば、挿入されたダミーデータを削除する処理)を行い、当該ノイズ除去処理後のデータに対して受信処理を行う。そして、受信処理部25は、当該受信処理後のデータを、データD25として、通信処理部21に出力する。
【0069】
(1.1.3:ノイズ計算装置)
ノイズ計算装置3は、
図2に示すように、第2通信インターフェースIF3と、傾向分析部31と、ノイズパラメータ決定部32とを備える。
【0070】
第2通信インターフェースIF3は、端末装置1(端末装置UE1~UEn)および/または基地局2とデータ送受信を行うための通信インターフェースである。第2通信インターフェースIF3は、外部から無線通信信号を受信し、受信した無線通信信号に含まれるデータを取り出し、当該データに応じて、ノイズ計算装置3の所定の機能部に出力する。例えば、第2通信インターフェースIF3は、端末装置1(端末装置UE1~UEn)および/または基地局2から送信される無線通信信号Dcomを受信し、受信した無線通信信号Dcomに含まれるデータを取得し、取得した当該データを、データD3_comとして、ノイズパラメータ決定部32に出力する。
【0071】
また、第2通信インターフェースIF3は、ノイズパラメータ決定部32から出力されるデータD3_paramを入力し、当該データD3_paramを含む無線通信信号(無線通信により、端末装置1(端末装置UE1~UEn)および/または基地局2と通信可能な信号)を生成し、生成した当該無線通信信号を送信する(送信先の装置(端末装置1(端末装置UE1~UEn)および/または基地局2)へ送信する)。
【0072】
また、第2通信インターフェースIF3は、通信制御装置4とデータ送受信するための通信インターフェースでもあり、通信制御装置4から出力されるデータD_NWを受信する。そして、第2通信インターフェースIF3は、受信したデータD_NWに含まれる通信の傾向を分析するためのデータを取得し、当該データを、データD3_NWとして、傾向分析部31に出力する。
【0073】
傾向分析部31は、第2通信インターフェースIF3から出力されるデータD3_NWを入力し、当該データD3_NWを用いて、通信の傾向を分析する処理を実行し、当該分析処理結果に基づいて、差分プライバシー処理におけるプライバシー強度を示すデータであるプライバシーバジェットεの最大値εmaxおよび最小値のデータεmin(εmin<εmax)を取得する。そして、傾向分析部31は、取得したプライバシーバジェットεの最大値εmaxおよび最小値のデータminを含むデータを、データD3_εとして、ノイズパラメータ決定部32に出力する。
【0074】
ノイズパラメータ決定部32は、第2通信インターフェースIF3から出力されるデータD3_rおよびデータD3_comと、ノイズパラメータ決定部32から出力されるデータD3_εとを入力する。ノイズパラメータ決定部32は、データD3_r、データD3_com、および、データD3_εに基づいて、ノイズパラメータλ(r)を決定する処理を実行する。そして、ノイズパラメータ決定部32は、当該ノイズパラメータ決定処理により取得されたノイズパラメータλ(r)を含むデータを、データD3_paramとして、第2通信インターフェースIF3に出力する。
【0075】
(1.1.4:通信制御装置、サーバ)
通信制御装置4は、交換局(例えば、5G(第5世代移動通信システム)の伝送網と、外部のネットワーク(例えば、インターネット)とを接続し、通信を行うための交換局)内に設置される装置(例えば、5Gコア装置)であり、ネットワークNW1、基地局2、および、ノイズ計算装置3と通信可能に接続されている。そして、通信制御装置4は、ネットワークNW1、RAN(Radio Access Network)(基地局2を含むネットワーク)、サーバ、および/または、端末装置間での通信を制御する機能を有している。また、通信制御装置4は、U-plane処理機能(UPF(User Plane Function(ユーザープレーン機能(ユーザーデータの送受信機能))))、C-Plane処理機能を有しており、通信制御装置4が管理するネットワークにおける通信の傾向を分析するためのデータを取得することができる。そして、通信制御装置4は、管理するネットワークにおける通信の傾向を分析するためのデータを取得し、取得した当該データを含むデータを、データD_NWとして、ノイズ計算装置3に送信する。
【0076】
第1サーバSvr1~第MサーバSvrMは、それぞれ、所定のアプリケーションを提供するサーバであり、ネットワークNW1に接続されている。第1サーバSvr1~第MサーバSvrMは、それぞれ、端末装置(例えば、
図1では、端末装置UE1~UEn)との間に通信コネクションを確立させて、端末装置からの要求に応じたアプリケーションを提供するサーバ(アプリケーションサーバ)である。第1サーバSvr1~第MサーバSvrMは、それぞれ、ネットワークNW1、通信制御装置4、基地局2(RAN)を介して、端末装置と通信を行うことができる。
【0077】
<1.2:通信処理システムの動作>
以上のように構成された通信処理システム1000の動作について、以下、説明する。
【0078】
図4、
図5は、通信処理システム1000で実行される処理のシーケンス図である。
【0079】
一般に、無線通信システム下において、多くの端末が接続されている状況および無線の伝搬環境が悪い状況など、通信帯域が各端末装置に十分に割り当てられない環境下においては、サービスの利用により発生する通信の特徴(通信量・通信間隔)が変化する。例えば、動画ストリーミングサービスにおいては、ユーザが利用する端末装置の通信環境、特に利用可能な通信帯域に応じて、コンテンツのフレームレートを下げる・画質を劣化させることで、ストリーミングサービスを継続して利用できるように調整する。そのため、上記のような状況下での通信においては、所定の通信の特徴を検知して攻撃を行う攻撃手法に対しては、当該攻撃方法があらかじめ学習した特徴と異なる特徴を示すこととなり、結果としてコンテンツの特定が困難となることが考えられる。
【0080】
本実施形態の通信処理システム1000(例えば、無線通信システム)は、上記のような性質に着目し、無線通信システムにおいて、端末装置の同時接続数・無線の電波伝搬環境などの要因により変化する無線通信における無線リソースの利用率に応じて、攻撃対策のために付与するノイズの量を調整することで、攻撃への耐性を劣化させることなく、かつノイズの過度な付与による周波数利用効率の低下を軽減させるものである。
【0081】
以下では、
図4、
図5のシーケンス図を参照しながら、通信処理システム1000の動作について説明する。
【0082】
(ステップS1):
ステップS1において、通信制御装置4は、管理するネットワークにおける通信の傾向を分析するためのデータを取得し、取得した当該データを含むデータを、データD_NWとして、ノイズ計算装置3に送信する。
【0083】
ノイズ計算装置3の第2通信インターフェースIF3は、通信制御装置4から送信されるデータD_NWを受信し、受信したデータD_NWに含まれる通信の傾向を分析するためのデータを取得し、当該データを、データD3_NWとして、傾向分析部31に出力する。
傾向分析部31は、第2通信インターフェースIF3から出力されるデータD3_NWを用いて、通信の傾向を分析する処理を実行し、当該分析処理結果に基づいて、差分プライバシー処理におけるプライバシー強度を示すデータであるプライバシーバジェットεの最大値εmaxおよび最小値のデータminを取得する。そして、傾向分析部31は、取得したプライバシーバジェットεの最大値εmaxおよび最小値のデータminを含むデータを、データD3_εとして、ノイズパラメータ決定部32に出力する。
【0084】
(ステップS2、ステップS3):
ステップS2において、基地局2の通信処理部21は、基地局2、端末装置1(端末装置UE1~UEn)が無線通信を行っている無線通信用ネットワークの状況(例えば、無線リソースの利用率r)を特定するためのデータを取得し(例えば、基地局2において、送受信される通信データの状況から当該データを取得し)、取得した当該データを、データD26として、通信状況取得部22に出力する。
【0085】
基地局2の通信状況取得部22は、通信処理部21から出力されるデータD26から、基地局2、端末装置1(端末装置UE1~UEn)が無線通信を行っている無線通信用ネットワークにおける無線リソースの利用率rを取得する。そして、通信状況取得部22は、取得した無線リソースの利用率rを含むデータを、データD2_rとして、端末側通信インターフェースIF21に出力する。
【0086】
端末側通信インターフェースIF21は、通信状況取得部22から出力されるデータD2_rを入力し、当該データD2_rを含む無線通信信号Dtx_rを生成し、生成した当該無線通信信号Dtx_rを、ノイズ計算装置3に送信する(ステップS3)。
【0087】
そして、ノイズ計算装置3の第2通信インターフェースIF3は、基地局2から送信される無線通信信号Dtx_rを受信し、無線通信信号Dtx_rに含まれる無線リソースの利用率rを含むデータを取り出し、取り出したデータを、データD3_rとして、ノイズパラメータ決定部32に出力する(ステップS3)。
【0088】
(ステップS4):
ステップS4において、ノイズ計算装置3の第2通信インターフェースIF3は、所定期間端末装置1(端末装置UE1~UEn)と基地局2との間で送受信される通信量を検知するために端末装置1(端末装置UE1~UEn)と基地局2との間で送受信される無線通信信号を受信する。そして、ノイズパラメータ決定部32は、所定期間に第2通信インターフェースIF3により受信した通信データから、所定期間における端末装置1(端末装置UE1~UEn)と基地局2との間で送受信される通信量の時系列データQ(={Q1,Q2,・・・,Qk})を取得する。なお、通信量の時系列データQを取得するためのデータは、第2通信インターフェースIF3から、データD3_comとして、ノイズパラメータ決定部32に出力されるものとする。
【0089】
(ステップS5、S6):
ステップS5において、ノイズパラメータ決定処理が実行される。具体的には、以下の処理が実行される。
【0090】
ノイズ計算装置3のノイズパラメータ決定部32は、下記数式に相当する処理を行い、プライバシーバジェットε(r)を取得する。
【数1】
ε
max:プライバシーバジェットεのとり得る最大値(データD3_εに含まれるデータ)
ε
min:プライバシーバジェットεのとり得る最小値(データD3_εに含まれるデータ)
r:無線リソースの利用率(0≦r≦1)(データD3_rに含まれるデータ)
そして、ノイズパラメータ決定部32は、下記数式に相当する処理を行い、ノイズパラメータλ(r)を取得する。
【数2】
なお、Δ
2(Q)は、所定期間の通信量の時系列データQ(={Q
1,Q
2,・・・,Q
k})のL2感度(L2 sensitivity)である。すなわち、下記数式に示すように、Δ
2(Q)は、所定期間の通信量の時系列データQ(={Q
1,Q
2,・・・,Q
k})において、任意のQ
i,Q
j’∈Q(i,j:整数、1≦i≦k,1≦j≦k)(Q
i,Q
j’は、時系列データQに含まれる互いに異なるデータ(異なる要素のデータ)である)に対して、|Q
i-Q
j’|
2≦Δ
2(Q)を満たす最小値(時系列データQに含まれる2つの要素間のL2ノルムの最小値)である。
【数3】
k:時系列データの個数
そして、ノイズパラメータ決定部32は、上記処理により取得したノイズパラメータλ(r)を含むデータを、データD3_paramとして、第2通信インターフェースIF3に出力する。そして、第2通信インターフェースIF3は、データD3_paramを含む無線通信信号Dtx_paramを生成し、当該無線通信信号Dtx_paramを、端末装置1および基地局2に送信する(ステップS6)。
【0091】
そして、端末装置1および基地局2は、ノイズ計算装置3から送信される無線通信信号Dtx_paramを、それぞれ、第1通信インターフェースIF1、端末側通信インターフェースIF21により受信する。そして、端末装置1の第1通信インターフェースIF1は、ノイズパラメータλ(r)を含むデータD1_paramを、ノイズ付与処理部13に出力し、基地局2の端末側通信インターフェースIF21は、ノイズパラメータλ(r)を含むデータD2_paramを、ノイズ付与処理部24に出力する(ステップS6)。
【0092】
(ステップS7):
ステップS7において、端末装置1のノイズ付与処理部13の通信特徴量取得部131は、送信処理部12から出力されるデータD12を入力し、データD12に対して通信特徴量取得処理を行い、所定の期間の通信特徴量を取得する。具体的には、通信特徴量取得部131は、送信処理部12から出力されるデータD12から、所定の期間の通信量(通信処理部21からノイズ付与処理部13に出力されるデータの通信量)の時系列データQ(={Q1,Q2,・・・,Qk})を取得する。
【0093】
そして、通信特徴量取得部131は、上記により取得した通信特徴量(時系列データQ)を含むデータを、データD_Qとして離散フーリエ変換処理部132に出力する。
【0094】
(ステップS8):
ステップS8において、離散フーリエ変換処理部132は、通信特徴量取得部131から出力されるデータD_Qを入力し、データD_Qから、時系列データQを取り出し、当該時系列データQ(={Q
1,Q
2,・・・,Q
k})に対して離散フーリエ変換を行う。つまり、離散フーリエ変換処理部132は、下記数式に相当する処理を行うことで、離散フーリエ変換データF(={F
1,F
2,・・・,F
k})を取得する。
【数4】
j:整数、1≦j≦k
そして、離散フーリエ変換処理部132は、当該離散フーリエ変換後のデータを、データD_Fとして、加算部134に出力する。
【0095】
また、ノイズ付与処理部13のノイズ生成部133は、第1通信インターフェースIF1を介して、ノイズ計算装置3から送信されたノイズパラメータλ(r)を含むデータD1_paramを入力し、当該データD1_paramからノイズパラメータλ(r)を取得する。
【0096】
そして、ノイズ生成部133は、下記数式に相当する処理を行い、ラプラス分布に基づくノイズLap(λ(r))を生成し、生成したラプラス分布に基づくノイズLap(λ(r))を含むデータを、データD_Lapとして、加算部134に出力する。なお、Lap(λ)は、尺度(スケール)λ、位置(ロケーション)μ=0のラプラス分布に基づいて生成される乱数を表す。
【0097】
(ステップS9):
ステップS9において、加算部134は、離散フーリエ変換処理部132から出力されるデータD_F(=F={F
1,F
2,・・・,F
k})と、ノイズ生成部133から出力されるデータD_Lap(=Lap(λ(r)))を入力し、両データを加算する処理を行う。つまり、加算部134は、下記数式に相当する処理を実行することで、ノイズ付与後データF’(={F
1’,F
2’,・・・,F
k’})を取得する。
【数5】
そして、加算部134は、上記により取得したノイズ付与後データF’(={F
1’,F
2’,・・・,F
k’})を、データD_F’として、逆離散フーリエ変換処理部135に出力する。
【0098】
(ステップS10):
ステップS10において、逆離散フーリエ変換処理部135は、加算部134から出力されるデータD_F’(=F’={F
1’,F
2’,・・・,F
k’})を入力し、データD_F’に対して、逆離散フーリエ変換を行う。つまり、逆離散フーリエ変換処理部135は、下記数式に相当する処理を行うことで、逆離散フーリエ変換データQ’(={Q
1’,Q
2’,・・・,Q
k’})を取得する。
【数6】
j:整数、1≦j≦k
そして、逆離散フーリエ変換処理部135は、上記処理により取得された逆離散フーリエ変換データQ’(={Q
1’,Q
2’,・・・,Q
k’})を、データD_Q’として撹乱処理部136に出力する。
【0099】
(ステップS11):
ステップS11において、撹乱処理部136は、送信処理部12から出力されるデータD12と、逆離散フーリエ変換処理部135から出力されるデータD_Q’とを入力する。撹乱処理部136は、データD_Q’に基づいて、データD12に対して撹乱処理を行う。具体的には、撹乱処理部136は、所定期間の通信量がQ’となるように、例えば、ダミーデータ(あるいはパディングデータ)を挿入する。例えば、データD12から通信量Qi(0≦i≦k)が取得された期間をTi(0≦i≦k)とすると、撹乱処理部136は、期間Tiにおける通信量がQi’となるように、期間Tiにおいて、ダミーデータ(あるいはパディングデータ)を挿入する。例えば、データD12が、通信量Qi(0≦i≦k)が取得された期間Tiにおいて、データ数(例えば、パケット数)が8個であるデータであるとし、逆離散フーリエ変換処理部135により取得された通信量Qi’が、データ数(例えば、パケット数)が10個(=8+2(2個分がラプラス分布から取得されたノイズに相当))に相当する通信量であるとすると、撹乱処理部136は、期間Tiにおける通信量がQi’となるように、期間Tiにおいて、ダミーデータ(あるいはパディングデータ)を2個挿入する。
【0100】
そして、撹乱処理部136は、ダミーデータを挿入した後のデータ(通信量がQ’となったデータ)をデータD13として第1通信インターフェースIF1に出力する。
【0101】
なお、ステップS8~S11において、基地局2のノイズ付与処理部24においても、上記の端末装置1のノイズ付与処理部13で実行された処理と同様の処理(上記ステップS8~S11で説明したのと同様の処理)が実行される。なお、基地局2のノイズ付与処理部24での処理では、上記で説明した端末装置1のノイズ付与処理部13のデータD12がデータD22であり、データD1_paramがデータD2_paramであり、データD13がデータD23である。
【0102】
(ステップS12):
ステップS12において、端末装置1の第1通信インターフェースIF1は、撹乱処理部136からのデータD13から、無線通信信号を生成し、当該無線通信信号を基地局2に送信する。
【0103】
基地局2は、端末装置1から送信される当該無線通信信号を受信する。なお、基地局2の受信処理部25は、端末装置1から送信される当該無線通信信号に含まれるデータD24(ノイズ付与されたデータ)に対して、ノイズ除去処理(例えば、ダミーデータを除去する処理)を行い、当該ノイズ除去処理後のデータに対して受信処理を行う。そして、基地局2は、端末装置1から送信されたデータを所定の宛先(送信先)に送信されるように通信処理を行う(例えば、送信先が所定のサーバである場合、当該サーバに端末装置1から送信されたデータが到達するように、通信制御装置4、ネットワークNWを介して、データ送信を行う)。
【0104】
(ステップS13):
ステップS13において、基地局2の端末側通信インターフェースIF21は、ノイズ付与処理部24から出力されるデータD23から、無線通信信号を生成し、当該無線通信信号を基地局2に送信する。
【0105】
そして、端末装置1は、基地局2から送信される当該無線通信信号を受信し、受信処理部25、アプリ処理部11での処理を実行することで、所定の処理(例えば、所定のアプリケーションを実現する処理)を行う。なお、端末装置1の受信処理部14は、基地局2から送信される当該無線通信信号に含まれるデータD14(ノイズ付与されたデータ)に対して、ノイズ除去処理(例えば、ダミーデータを除去する処理)を行い、当該ノイズ除去処理後のデータに対して受信処理を行う。
【0106】
通信処理システム1000において、通信傾向分析の処理(ステップS1の処理)、無線リソースの利用率rの取得処理(ステップS2の処理)は、それぞれ、所定の周期で実行するものであってもよい。また、通信処理システム1000において、(1)通信制御装置4により取得されるデータD_NWにより、通信状況が大きく変化した場合(例えば、通信制御装置4により取得される通信状況を示す指標値の変化量が所定の閾値を超えた場合)、および/または、(2)無線リソースの利用率rが大きく変化した場合(例えば、基地局2により取得される無線リソースの利用率rの変化量が所定の閾値を超えた場合)、ノイズパラメータλ(r)を取得(更新)する処理を行い、さらに、端末装置1(UE1~UEn)および/または基地局2にて、取得(更新)されたノイズパラメータλ(r)によるノイズ付与処理を行うようにしてもよい。
【0107】
このようにすることで、通信処理システム1000では、端末装置の同時接続数・無線の電波伝搬環境などの要因により変化する無線通信における無線リソースの利用率rに応じて、ノイズパラメータλ(r)を調整し、ノイズ付与処理におけるノイズ付与量(データ撹乱の程度)を調整することができる。つまり、通信処理システム1000では、無線リソースの利用率rが高い程(「1」に近い程)、プライバシーバジェットε(r)(=εmax×r2+εmin×(1-r)2)の値が大きくなり、ノイズパラメータλ(r)(=sqrt(k)×Δ2(Q)/ε(r))の値が小さくなる。そして、このとき(ノイズパラメータλ(r)が小さいとき)、ラプラス分布に基づく乱数Lap(λ(r))の値が小さくなるので、ノイズ付与処理におけるノイズ付与量(データ撹乱の程度)が小さくなる。つまり、通信処理システム1000では、無線リソースの利用率rが高い場合、通信が逼迫状態に近いので、ノイズ付与処理におけるノイズ付与量(データ撹乱の程度)を小さくして、通信サービスを実現するための通信を優先し(優先的に無線リソースを割り当て)、通信サービスを実現するための通信が途絶されないようにする(通信サービスが継続して利用できるように保証する)。一方、通信処理システム1000では、無線リソースの利用率rが低い場合、通信が逼迫状態から遠い状態(通信量が少ない状態)であるので、ノイズ付与処理におけるノイズ付与量(データ撹乱の程度)を大きくして、通信サービスを実現するための通信が確保されることを保証しつつ、通信データの撹乱処理を行い、通信内容の傍受を行う攻撃等への耐性を高める。
【0108】
以上のように、通信処理システム1000では、端末装置の同時接続数・無線の電波伝搬環境などの要因により変化する無線通信における無線リソースの利用率rに応じて、ノイズパラメータλ(r)を調整し、ノイズ付与処理におけるノイズ付与量(データ撹乱の程度)を調整することができる。したがって、通信処理システム1000では、攻撃への耐性を劣化させることなく、かつノイズの過度な付与による周波数利用効率の低下を軽減させることができる。すなわち、通信処理システム1000では、どのような通信状態であっても、通信サービスに大きな影響をもたらすことなく、かつ、通信内容の傍受を行う攻撃等を適切に防止することができる。
【0109】
さらに、通信処理システム1000では、(数式1)~(数式3)を満たすように、ノイズパラメータλ(r)が決定され、(数式4)~(数式6)に相当する処理を行い取得した逆離散フーリエ変換データQ’に基づく撹乱処理を行うため、プライバシーバジェットε=ε(r)であるε-差分プライバシーが保証される。つまり、通信処理システム1000では、無線リソースを過度に消費することなく、通信処理システム1000の利用者(端末装置1(UE1~UEn)の利用者)に対して適切なプライバシー保護(プライバシーバジェットε=ε(r)であるε-差分プライバシーによる保護)を提供(保証)することができる。
【0110】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について、説明する。なお、上記実施形態と同様の部分については、同一符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0111】
<2.1:通信処理システムの構成>
図6は、第2実施形態に係る通信処理システム2000の概略構成図である。
【0112】
図7は、第2実施形態に係る通信処理システム1000の端末装置1A、基地局2Aおよびノイズ計算装置3Aの概略構成図である。
【0113】
図8は、第2実施形態に係る通信処理システム2000の端末装置1Aのノイズ付与処理部13の概略構成図である。
【0114】
第2実施形態の通信処理システム2000は、第1実施形態の通信処理システム1000において、端末装置1(UE1~UEn)を端末装置1Aに置換し、基地局2を基地局2Aに置換し、ノイズ計算装置3をノイズ計算装置3Aに置換した構成を有している。それ以外については、第2実施形態の通信処理システム2000は、第1実施形態の通信処理システム1000は同様である。
【0115】
端末装置1Aは、第1実施形態の端末装置1において、ノイズ付与処理部13をノイズ付与処理部13Aに置換した構成を有している。
【0116】
ノイズ付与処理部13Aは、
図8に示すように、第1実施形態のノイズ付与処理部13において、通信特徴量取得部131を通信特徴量取得部131Aに置換し、撹乱処理部136を撹乱処理部136Aに置換し、さらに、パラメータ取得部137を追加した構成を有している。
【0117】
パラメータ取得部137は、第1通信インターフェースIF1から出力されるデータD1_paramを入力し、当該データD1_paramに含まれるノイズパラメータλ(r)および処理対象とする通信特徴量を特定するデータfeatとを取得する。そして、パラメータ取得部137は、取得したパラメータλ(r)をノイズ生成部133に出力するとともに、取得したデータfeatを含むデータを、データD_featとして、撹乱処理部136Aに出力する。
【0118】
通信特徴量取得部131Aは、第1実施形態の通信特徴量取得部131と同様の機能を有しており、さらに、パラメータ取得部137から出力されるデータD_featを入力し、当該データD_featからデータfeatを取り出し、当該データfeatで特定される通信特徴量を取得対象の通信特徴量Qに設定する。そして、通信特徴量取得部131Aは、処理対象を設定した通信特徴量Qとして、第1実施形態と同様に通信特徴量Qを取得する処理を行い、処理後のデータを、データD_Qとして、離散フーリエ変換処理部132に出力する。
【0119】
撹乱処理部136Aは、第1実施形態の撹乱処理部136と同様の機能を有しており、さらに、パラメータ取得部137から出力されるデータD_featを入力し、当該データD_featからデータfeatを取り出し、当該データfeatで特定される通信特徴量を取得対象の通信特徴量Qに設定する。そして、撹乱処理部136Aは、処理対象を設定した通信特徴量Qとして、第1実施形態と同様にデータ撹乱処理を行い、データ撹乱処理後のデータを、データD13として、第1通信インターフェースIF1に出力する。
【0120】
基地局2Aは、第1実施形態の基地局2において、ノイズ付与処理部24をノイズ付与処理部24Aに置換した構成を有している。
【0121】
ノイズ付与処理部24Aは、端末装置1Aのノイズ付与処理部13Aと同様の機能、構成を有している。
【0122】
ノイズ計算装置3Aは、第1実施形態のノイズ計算装置3において、ノイズパラメータ決定部32をノイズパラメータ決定部32Aに置換した構成を有している。
【0123】
ノイズパラメータ決定部32Aは、第1実施形態のノイズパラメータ決定部32と同様の機能を有しており、さらに、端末装置1Aおよび基地局2Aで実行されるノイズ付与処理の対象とする通信特徴量を指定するデータfeatを取得する機能を有している。ノイズパラメータ決定部32Aは、ノイズパラメータ決定部32と同様の処理を実行することで、ノイズパラメータλ(r)を取得し、さらに、無線リソースの利用率rに基づいて、端末装置1Aおよび基地局2Aで実行されるノイズ付与処理の対象とする通信特徴量を指定するデータfeatを決定する。そして、ノイズパラメータ決定部32Aは、上記により取得したノイズパラメータλ(r)およびデータfeatを含むデータを、データD3_paramとして、第2通信インターフェースIF3に出力する。
【0124】
<2.2:通信処理システムの動作>
以上のように構成された通信処理システム2000の動作について、以下、説明する。
【0125】
図9、
図10は、通信処理システム2000で実行される処理のシーケンス図である。
【0126】
第2実施形態の通信処理システム2000では、(1)無線リソースの利用率rが所定の値th1以下である場合、ノイズ付与処理においてノイズを付与する対象(データ撹乱処理の対象)とする通信特徴量を通信量とし、(2)無線リソースの利用率rが所定の値th1を超えた場合、ノイズ付与処理においてノイズを付与する対象(データ撹乱処理の対象)とする通信特徴量を通信間隔とする(通信量から通信間隔に変更する)。
【0127】
以下では、
図9、
図10のシーケンス図を参照しながら、通信処理システム1000の動作について説明する。
【0128】
(ステップS1~S4):
ステップS1~S4の処理は、第1実施形態のステップS1~S4の処理と同様である。
【0129】
(ステップS5A、S6A):
ステップS5Aにおいて、ノイズ計算装置3Aのノイズパラメータ決定部32Aは、第1実施形態のステップS5と同様の処理を実行する。さらに、ノイズパラメータ決定部32Aは、無線リソースの利用率rと所定の値th1(この所定の値th1は、ノイズ計算装置3Aの内部の記憶部(不図示)に予め記憶保持されている、あるいは、外部から設定される値であるものとする)とを比較する。
【0130】
そして、(1)無線リソースの利用率rが所定の値th1以下である場合、ノイズパラメータ決定部32Aは、ノイズ付与処理においてノイズを付与する対象(データ撹乱処理の対象)とする通信特徴量を通信量とすることを示すデータfeatを生成する。一方、(2)無線リソースの利用率rが所定の値th1を超えている場合、ノイズパラメータ決定部32Aは、ノイズ付与処理においてノイズを付与する対象(データ撹乱処理の対象)とする通信特徴量を通信間隔とすることを示すデータfeatを生成する。
【0131】
そして、ノイズパラメータ決定部32Aは、上記により生成したデータfeatと、ノイズパラメータλ(r)とを含むデータを、データD3_paramとして、第2通信インターフェースIF3に出力し、第2通信インターフェースIF3は、当該データD3_paramを含む無線通信信号Dtx_paramを端末装置1Aおよび基地局2Aに送信する(ステップS6A)。
【0132】
そして、端末装置1Aおよび基地局2Aは、ノイズ計算装置3Aから送信される無線通信信号Dtx_paramを、それぞれ、第1通信インターフェースIF1、端末側通信インターフェースIF21により受信する。そして、端末装置1Aの第1通信インターフェースIF1は、ノイズパラメータλ(r)、データfeatを含むデータD1_paramを、ノイズ付与処理部13Aに出力し、基地局2Aの端末側通信インターフェースIF21は、ノイズパラメータλ(r)、データfeatを含むデータD2_paramを、ノイズ付与処理部24Aに出力する(ステップS6A)。
【0133】
(ステップS70):
ステップS70において、端末装置1Aのパラメータ取得部137は、第1通信インターフェースIF1から出力されるデータD1_paramを入力し、当該データD1_paramに含まれるノイズパラメータλ(r)および処理対象とする通信特徴量を特定するデータfeatとを取得する。そして、パラメータ取得部137は、取得したパラメータλ(r)をノイズ生成部133に出力するとともに、取得したデータfeatを含むデータを、データD_featとして、撹乱処理部136Aに出力する。
【0134】
(ステップS7A):
ステップS7Aにおいて、通信特徴量取得部131Aは、パラメータ取得部137から出力されるデータD_featを入力し、当該データD_featからデータfeatを取り出し、当該データfeatで特定される通信特徴量を取得対象の通信特徴量Qに設定する。そして、通信特徴量取得部131Aは、処理対象を設定した通信特徴量Qとして、第1実施形態と同様に通信特徴量Qを取得する処理を行い、処理後のデータを、データD_Qとして、離散フーリエ変換処理部132に出力する。なお、データD_featにより設定されている処理対象の通信特徴量Qが通信間隔である場合、通信特徴量取得部131Aは、送信処理部12から出力されるデータD12から、所定の期間の通信間隔(通信処理部21からノイズ付与処理部13に出力されるデータの通信間隔)の時系列データQ(={Q1,Q2,・・・,Qk})を取得する。そして、通信特徴量取得部131Aは、上記により取得した通信特徴量(時系列データQ)を含むデータを、データD_Qとして離散フーリエ変換処理部132に出力する。
【0135】
(ステップS8A~S10A):
ステップS8A~S10Aでは、ステップS7Aで設定された通信特徴量Qに対して、第1実施形態のS8~S10と同様の処理が実行される。
【0136】
(ステップS11A):
ステップS11Aにおいて、撹乱処理部136Aは、パラメータ取得部137から出力されるデータD_featを入力し、当該データD_featからデータfeatを取り出し、当該データfeatで特定される通信特徴量を取得対象の通信特徴量Qに設定する。そして、撹乱処理部136Aは、処理対象を設定した通信特徴量Qとして、第1実施形態と同様にデータ撹乱処理を行う。
【0137】
具体的には、(1)データD_featで指定されている処理対象の通信特徴量が通信量である場合、撹乱処理部136Aは、第1実施形態と同様の処理を実行する。一方、(2)データD_featで指定されている処理対象の通信特徴量が通信間隔である場合、撹乱処理部136Aは、撹乱処理部136は、所定期間の通信間隔がQ’(={Q1’,Q2’,・・・,Qk’})となるように、通信データの出力タイミング(送信タイミング)を調整する。そして、このように通信間隔が調整された通信データを、データD13として、第1通信インターフェースIF1に出力する。
【0138】
なお、ステップS70、S7A~S11Aにおいて、基地局2Aのノイズ付与処理部24Aにおいても、上記の端末装置1Aのノイズ付与処理部13で実行された処理と同様の処理(上記ステップS70、S7A~S11Aで説明したのと同様の処理)が実行される。なお、基地局2Aのノイズ付与処理部24Aでの処理では、上記で説明した端末装置1Aのノイズ付与処理部13AのデータD12がデータD22であり、データD1_paramがデータD2_paramであり、データD13がデータD23である。
【0139】
(ステップS12A):
ステップS12Aにおいて、端末装置1Aの第1通信インターフェースIF1は、撹乱処理部136からのデータD13から、無線通信信号を生成し、当該無線通信信号を基地局2Aに送信する。
【0140】
基地局2Aは、端末装置1から送信される当該無線通信信号を受信する。なお、基地局2の受信処理部25は、端末装置1Aから送信される当該無線通信信号に含まれるデータD24(ノイズ付与されたデータ)に対して、ノイズ除去処理(例えば、ダミーデータを除去する処理)を行い、当該ノイズ除去処理後のデータに対して受信処理を行う。そして、基地局2Aは、端末装置1から送信されたデータを所定の宛先(送信先)に送信されるように通信処理を行う(例えば、送信先が所定のサーバである場合、当該サーバに端末装置1から送信されたデータが到達するように、通信制御装置4、ネットワークNWを介して、データ送信を行う)。
【0141】
(ステップS13A):
ステップS13Aにおいて、基地局2Aの端末側通信インターフェースIF21は、ノイズ付与処理部24Aから出力されるデータD23から、無線通信信号を生成し、当該無線通信信号を基地局2に送信する。
【0142】
そして、端末装置1Aは、基地局2Aから送信される当該無線通信信号を受信し、受信処理部25、アプリ処理部11での処理を実行することで、所定の処理(例えば、所定のアプリケーションを実現する処理)を行う。なお、端末装置1Aの受信処理部14は、基地局2Aから送信される当該無線通信信号に含まれるデータD14(ノイズ付与されたデータ)に対して、ノイズ除去処理(例えば、ダミーデータを除去する処理)を行い、当該ノイズ除去処理後のデータに対して受信処理を行う。
【0143】
以上のように、通信処理システム2000では、(1)無線リソースの利用率rが所定の値th1以下である場合、ノイズ付与処理においてノイズを付与する対象(データ撹乱処理の対象)とする通信特徴量を通信量とし、(2)無線リソースの利用率rが所定の値th1を超えた場合、ノイズ付与処理においてノイズを付与する対象(データ撹乱処理の対象)とする通信特徴量を通信間隔とする(通信量から通信間隔に変更する)。通信特徴量を通信間隔として、ノイズ付与処理(データ撹乱処理)を実行する場合、変化するのは、通信間隔であり、通信量は変化しないので、通信処理システム2000における通信量は増加しない。つまり、通信処理システム2000において、通信状態が逼迫し、無線リソースの利用率rが所定の値th1を超える程高い値となった場合、ノイズ付与処理(データ撹乱処理)の処理対象とする通信特徴量を通信間隔とするとことで、通信負荷を増加させることなく(無線リソースを過度に消費することなく)、通信内容の傍受を行う攻撃等への耐性を維持しつつ、通信処理システム2000の利用者(端末装置1A(UE1~UEn)の利用者)に対して適切なプライバシー保護(プライバシーバジェットε=ε(r)であるε-差分プライバシーによる保護)を提供(保証)することができる。
【0144】
すなわち、通信処理システム2000では、どのような通信状態であっても、通信サービスに大きな影響をもたらすことなく、かつ、通信内容の傍受を行う攻撃等を適切に防止することができる。
【0145】
[他の実施形態]
上記実施形態で説明した通信処理システム1000、2000において、端末装置1に注目して、説明したが、通信処理システム1000、2000に含まれる他の端末装置(UE1~UEn)の各装置においても、端末装置1の構成、機能により、端末装置1と同様の処理を実行可能である。
【0146】
また、上記実施形態では、通信処理システム1000、2000に、端末装置1、1A(UE1~UEn)、基地局2、2A、および、ノイズ計算装置3、3Aがそれぞれ別の装置である場合について説明したが、これに限定されることはなく、端末装置1、1A(UE1~UEn)、基地局2、2A、および、ノイズ計算装置3、3Aの所定の機能部を、上記実施形態で説明したのとは異なる装置に含まれる構成としてもよい。例えば、ノイズ計算装置3、3Aの機能部の一部または全部を、基地局2、2Aに含めるようにしてもよい。
【0147】
また、上記実施形態の通信処理システム1000、2000に、端末装置1、1A(UE1~UEn)、基地局2、2A、および、ノイズ計算装置3、3Aにおいて、各ブロックは、LSIなどの半導体装置により個別に1チップ化されても良いし、一部又は全部を含むように1チップ化されても良い。
【0148】
なお、ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0149】
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサーを利用しても良い。
【0150】
また、上記各実施形態の各機能ブロックの処理の一部または全部は、プログラムにより実現されるものであってもよい。そして、上記各実施形態の各機能ブロックの処理の一部または全部は、コンピュータにおいて、中央演算装置(CPU)により行われる。また、それぞれの処理を行うためのプログラムは、ハードディスク、ROMなどの記憶装置に格納されており、ROMにおいて、あるいはRAMに読み出されて実行される。
【0151】
また、上記実施形態の各処理をハードウェアにより実現してもよいし、ソフトウェア(OS(オペレーティングシステム)、ミドルウェア、あるいは、所定のライブラリとともに実現される場合を含む。)により実現してもよい。さらに、ソフトウェアおよびハードウェアの混在処理により実現しても良い。
【0152】
例えば、上記実施形態の各機能部を、ソフトウェアにより実現する場合、
図11に示したハードウェア構成(例えば、CPU(GPUであってもよい)、ROM、RAM、入力部、出力部等をバスBusにより接続したハードウェア構成)を用いて、各機能部をソフトウェア処理により実現するようにしてもよい。
【0153】
また、上記実施形態の各機能部をソフトウェアにより実現する場合、当該ソフトウェアは、
図11に示したハードウェア構成を有する単独のコンピュータを用いて実現されるものであってもよいし、複数のコンピュータを用いて分散処理により実現されるものであってもよい。
【0154】
また、上記実施形態における処理方法の実行順序は、必ずしも、上記実施形態の記載に制限されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で、実行順序を入れ替えることができるものである。また、上記実施形態における処理方法において、発明の要旨を逸脱しない範囲で、一部のステップが、他のステップと並列に実行されるものであってもよい。
【0155】
前述した方法をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム及びそのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、本発明の範囲に含まれる。ここで、コンピュータ読み取り可能な記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD-ROM、MO、DVD、DVD-ROM、DVD-RAM、大容量DVD、次世代DVD、半導体メモリを挙げることができる。
【0156】
上記コンピュータプログラムは、上記記録媒体に記録されたものに限られず、電気通信回線、無線又は有線通信回線、インターネットを代表とするネットワーク等を経由して伝送されるものであってもよい。
【0157】
なお、本発明の具体的な構成は、前述の実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更および修正が可能である。
【符号の説明】
【0158】
1000、2000 通信処理システム
1、1A(UE1~UEn) 端末装置
2、2A 基地局
3,3A ノイズ計算装置
13、13A ノイズ付与処理部
24、24A ノイズ付与処理部
32、32A ノイズパラメータ決定部