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特開2024-107538取引装置、取引システム、取引方法および取引プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107538
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】取引装置、取引システム、取引方法および取引プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 20/38 20120101AFI20240802BHJP
【FI】
G06Q20/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011510
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000232092
【氏名又は名称】NECソリューションイノベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103090
【弁理士】
【氏名又は名称】岩壁 冬樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124501
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 誠人
(72)【発明者】
【氏名】深田 彰
【テーマコード(参考)】
5L020
5L055
【Fターム(参考)】
5L020AA71
5L055AA71
(57)【要約】
【課題】取引が追跡されること抑制するとともに、取引の客観的な正当性を担保できる取引装置を提供する。
【解決手段】アドレス生成手段81は、ブロックチェーンを介した取引に使用する第一のアドレスが既知の第一の取引者に対して、第一のアドレスとは異なる第二のアドレスを生成する。トランザクション生成手段82は、第二のアドレスを用いて、第三のアドレスを用いて行われるブロックチェーンを介した取引が既知の第二の取引者に対して生成されたその第三のアドレスとは異なる第四のアドレスへの取引を示すトランザクションを生成する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロックチェーンを介した取引に使用する第一のアドレスが既知の第一の取引者に対して、前記第一のアドレスとは異なる第二のアドレスを生成するアドレス生成手段と、
前記第二のアドレスを用いて、第三のアドレスを用いて行われるブロックチェーンを介した取引が既知の第二の取引者に対して生成された当該第三のアドレスとは異なる第四のアドレスへの取引を示すトランザクションを生成するトランザクション生成手段とを備えた
ことを特徴とする取引装置。
【請求項2】
第二のアドレスを用いた第四のアドレスへの取引で発生するトランザクション手数料の支払いを、第一のアドレスに代替させる取引代替手段を備えた
請求項1記載の取引装置。
【請求項3】
取引代替手段は、第二のアドレスで保持する残金が当該第二のアドレスを用いた取引で発生するトランザクション手数料を下回る場合に、第二のアドレスを用いた第四のアドレスへの取引で発生するトランザクション手数料の支払いを、第一のアドレスに代替させる
請求項2記載の取引装置。
【請求項4】
第一の取引者が用いる第一のアドレスと第二のアドレスとの対応関係を記憶する記憶手段を備え、
取引代替手段は、第二のアドレスが生成された第一の取引者が用いるアドレスとして既知のアドレスである第一のアドレスを、前記記憶手段に記憶された対応関係から取得する
請求項2または請求項3記載の取引装置。
【請求項5】
生成されたトランザクションをブロックチェーンネットワークに送信してブロックチェーンに記録させるトランザクション送信手段を備えた
請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載の取引装置。
【請求項6】
ブロックチェーンを介した取引を行う第一の取引装置および第二の取引装置を備え、
前記第一の取引装置は、
ブロックチェーンを介した取引に使用する第一のアドレスが既知の第一の取引者に対して、前記第一のアドレスとは異なる第二のアドレスを生成する第一アドレス生成手段と、
前記第二のアドレスを用いて、他のアドレスへの取引を示すトランザクションを生成するトランザクション生成手段とを含み、
前記第二の取引装置は、
前記ブロックチェーンを介した取引に使用する第三のアドレスが既知の第二の取引者に対して、前記第三のアドレスとは異なる第四のアドレスを生成する第二アドレス生成手段を含み、
前記トランザクション生成手段は、前記第二のアドレスを用いて、前記第四のアドレスへの取引を示すトランザクションを生成する
ことを特徴とする取引生成システム。
【請求項7】
ブロックチェーンを介した取引に使用する第一のアドレスが既知の第一の取引者に対して、前記第一のアドレスとは異なる第二のアドレスを生成し、
前記第二のアドレスを用いて、第三のアドレスを用いて行われるブロックチェーンを介した取引が既知の第二の取引者に対して生成された当該第三のアドレスとは異なる第四のアドレスへの取引を示すトランザクションを生成する
ことを特徴とする取引方法。
【請求項8】
第二のアドレスを用いた第四のアドレスへの取引で発生するトランザクション手数料の支払いを、第一のアドレスに代替させる
請求項7記載の取引方法。
【請求項9】
ブロックチェーンを介した第一の取引装置と第二の取引装置との間で行われる取引方法であって、
前記第一の取引装置が、前記ブロックチェーンを介した取引に使用する第一のアドレスが既知の第一の取引者に対して、前記第一のアドレスとは異なる第二のアドレスを生成し、
前記第二の取引装置が、前記ブロックチェーンを介した取引に使用する第三のアドレスが既知の第二の取引者に対して、前記第三のアドレスとは異なる第四のアドレスを生成し、
前記第一の取引装置が、前記第二のアドレスを用いて、前記第四のアドレスへの取引を示すトランザクションを生成する
ことを特徴とする取引方法。
【請求項10】
コンピュータに、
ブロックチェーンを介した取引に使用する第一のアドレスが既知の第一の取引者に対して、前記第一のアドレスとは異なる第二のアドレスを生成するアドレス生成処理、および、
前記第二のアドレスを用いて、第三のアドレスを用いて行われるブロックチェーンを介した取引が既知の第二の取引者に対して生成された当該第三のアドレスとは異なる第四のアドレスへの取引を示すトランザクションを生成するトランザクション生成処理
を実行させるための取引プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロックチェーンを利用して取引を行う取引装置、取引システム、取引方法および取引プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ブロックチェーンは、取引内容を透明化することで不正取引されていないことを証明できるという特徴を有する。ブロックチェーンでは、ランダムな16進数で作成されたアドレスを使用して取引が行われるため、取引者の特定は困難になっている。一方、取引に用いられるアドレスは一意であるため、取引を追跡することも可能である。
【0003】
例えば、特許文献1には、データトレーサビリティを効率的に行う通信方法が記載されている。特許文献1に記載された方法では、対象データに関する処理を実行したとき、その処理の実行前に行った対象データに関する処理の履歴を特定する元識別子と、上記処理の履歴を特定する次回識別子とを対応付けたポインタ情報をテーブルに記憶し、そのテーブルの内容を他の通信装置と同期する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-35494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で、特許文献1に記載された方法等を用いることで取引を追跡することが可能であるため、取引内容が推測されてしまう可能性がある。以下、具体例を用いて、取引が推測可能な状況を説明する。図11は、ブロックチェーンを介した取引の一例を示す説明図である。
【0006】
図11に示す例では、B商店(アドレス:0x234567)が、A商店(アドレス:0x123456)とC商店(アドレス:0x345678)から仕入れをした商品(バッグ、財布)のうち、財布をDさん(アドレス:0x456789)に販売していることを示す。このとき、Dさんは、Dさんが商品を購入した商店がB商店であることを知っている。さらに、Dさんは、B商店が、A商店とC商店からどの程度の仕入れがあるかを、取引内容から調べることが可能である。さらに、Dさんは、A商店がB商店に商品を納める際に用いているアドレスを知ることができる。
【0007】
そのアドレスの取引内容を継続的に追跡することで、Dさんは、B商店の取引相手にC商店が含まれることを知ることができる。結果として、B商店は、どこから商品を仕入れているのか、どの程度仕入れているか等の情報を、他の商店等に知られてしまうことになる。
【0008】
このような取引内容を秘匿するため、暗号化等の技術を用いることも考えられる。一方で、取引内容を暗号化した場合、その内容の客観的な正当性を担保することは難しい。
【0009】
そこで、本発明では、取引が追跡されること抑制するとともに、取引の客観的な正当性を担保できる取引装置、取引システム、取引方法および取引プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による取引装置は、ブロックチェーンを介した取引に使用する第一のアドレスが既知の第一の取引者に対して、第一のアドレスとは異なる第二のアドレスを生成するアドレス生成手段と、第二のアドレスを用いて、第三のアドレスを用いて行われるブロックチェーンを介した取引が既知の第二の取引者に対して生成されたその第三のアドレスとは異なる第四のアドレスへの取引を示すトランザクションを生成するトランザクション生成手段とを備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明による取引システムは、ブロックチェーンを介した取引を行う第一の取引装置および第二の取引装置を備え、第一の取引装置が、ブロックチェーンを介した取引に使用する第一のアドレスが既知の第一の取引者に対して、第一のアドレスとは異なる第二のアドレスを生成する第一アドレス生成手段と、第二のアドレスを用いて、他のアドレスへの取引を示すトランザクションを生成するトランザクション生成手段とを含み、第二の取引装置が、ブロックチェーンを介した取引に使用する第三のアドレスが既知の第二の取引者に対して、第三のアドレスとは異なる第四のアドレスを生成する第二アドレス生成手段を含み、トランザクション生成手段が、第二のアドレスを用いて、第四のアドレスへの取引を示すトランザクションを生成することを特徴とする。
【0012】
本発明による取引方法は、ブロックチェーンを介した取引に使用する第一のアドレスが既知の第一の取引者に対して、第一のアドレスとは異なる第二のアドレスを生成し、第二のアドレスを用いて、第三のアドレスを用いて行われるブロックチェーンを介した取引が既知の第二の取引者に対して生成されたその第三のアドレスとは異なる第四のアドレスへの取引を示すトランザクションを生成することを特徴とする。
【0013】
本発明による他の取引方法は、ブロックチェーンを介した第一の取引装置と第二の取引装置との間で行われる取引方法であって、第一の取引装置が、ブロックチェーンを介した取引に使用する第一のアドレスが既知の第一の取引者に対して、第一のアドレスとは異なる第二のアドレスを生成し、第二の取引装置が、ブロックチェーンを介した取引に使用する第三のアドレスが既知の第二の取引者に対して、第三のアドレスとは異なる第四のアドレスを生成し、第一の取引装置が、第二のアドレスを用いて、第四のアドレスへの取引を示すトランザクションを生成することを特徴とする。
【0014】
本発明による取引プログラムは、コンピュータに、ブロックチェーンを介した取引に使用する第一のアドレスが既知の第一の取引者に対して、第一のアドレスとは異なる第二のアドレスを生成するアドレス生成処理、および、第二のアドレスを用いて、第三のアドレスを用いて行われるブロックチェーンを介した取引が既知の第二の取引者に対して生成されたその第三のアドレスとは異なる第四のアドレスへの取引を示すトランザクションを生成するトランザクション生成処理を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、取引が追跡されること抑制するとともに、取引の客観的な正当性を担保できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の取引システムの第一の実施形態の構成例を示すブロック図である。
図2】第一の実施形態の取引システムを用いた取引の例を示す説明図である。
図3】第一の実施形態の取引装置の動作例を示すフローチャートである。
図4】第一の実施形態の取引システムの動作例を示すフローチャートである。
図5】本発明の取引システムの第二の実施形態の構成例を示すブロック図である。
図6】第二の実施形態の取引システムを用いた取引の例を示す説明図である。
図7】第二の実施形態の取引システムを用いた取引の例を示す説明図である。
図8】第二の実施形態の取引装置の動作例を示すフローチャートである。
図9】本発明による取引装置の概要を示すブロック図である。
図10】本発明による取引システムの概要を示すブロック図である。
図11】ブロックチェーンを介した取引の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。本発明は、ブロックチェーンを介した取引(履歴)が追跡されること抑制し、取引の客観的な正当性を担保できるようにすることを目的とする。なお、本発明における客観的な正当性とは、取引者以外の第三者による判断でも正当であると認められる状況を意味する。また、本実施形態で用いられるブロックチェーンの態様は任意であり、例えば、パブリック型であってもプライベート型であってもよい。
【0018】
また、以下の実施形態では、ブロックチェーンを介した取引(例えば、通貨取引)に使用するアドレス(以下、第一のアドレスと記す。)が既知の取引者の存在を想定する。以下、この取引者を第一の取引者と記す。なお、ここでのアドレスは、例えば、ウォレットアドレスである。
【0019】
実施形態1.
図1は、本発明の取引システムの第一の実施形態の構成例を示すブロック図である。本実施形態の取引システム1は、取引装置100を備えている。なお、取引装置100の数は1台に限定されず、取引者ごとに複数存在してもよい。本実施形態では、取引システム1は、第一の取引者が使用する取引装置100と、第一の取引者が取引を行う相手方の取引者(以下、第二の取引者と記す。)が使用する取引装置100とを備えるものとする。なお、各取引装置100の構成内容は同様であってもよく、一部が異なっていてもよい。各取引装置100は、ブロックチェーンネットワークNWに通信可能に接続される。
【0020】
取引装置100は、記憶部10と、アドレス生成部20と、トランザクション生成部30と、トランザクション送信部40とを含む。
【0021】
記憶部10は、本実施形態の取引装置100が行う各種処理に必要な情報を記憶する。記憶部10は、例えば、磁気ディスク等により実現される。
【0022】
アドレス生成部20は、ブロックチェーンを介した取引に使用するアドレス(すなわち、第一のアドレス)が既知の取引者(すなわち、第一の取引者)に対して、そのアドレス(すなわち、第一のアドレス)とは異なるアドレス(以下、第二のアドレスと記す。)を生成する。
【0023】
具体的には、アドレス生成部20は、取引に利用するブロックチェーンの態様に応じて第二のアドレスを生成する。上述するように、生成されるアドレスは、例えば、ウォレットアドレスである。ブロックチェーンの態様に応じて使用されるアドレスの生成方法は広く知られており、ここでは詳細な説明は省略する。
【0024】
トランザクション生成部30は、第二のアドレスを用いて、第二の取引者のアドレスへの取引を示すトランザクションを生成する。なお、ブロックチェーンの態様に応じたトランザクションを生成する方法も広く知られているため、ここでは、詳細な説明は省略する。
【0025】
ここで、第二の取引者も、ブロックチェーンを介した取引に使用するアドレス(以下、第三のアドレスと記す。)が既知の場合、同様に追跡される可能性がある。そこで、第二の取引者についても、第三のアドレスとは異なる第四のアドレスを準備しておき、トランザクション生成部30は、第二のアドレスを用いて、第四のアドレスへの取引を示すトランザクションを生成する。なお、第三のアドレスとは異なる第四のアドレスは、上記アドレス生成部20が生成する方法と同様であってもよく、異なっていてもよい。
【0026】
なお、各取引者が、それぞれ新たなアドレスを生成するため、取引に使用する新たなアドレスを、各取引者が知る必要がある。そのため、例えば、第一の取引者および第二の取引者は、取引に使用する新たなアドレス(第二のアドレスおよび第四のアドレス)を、事前に相手方に通知しておけばよい。
【0027】
トランザクション送信部40は、生成されたトランザクションをブロックチェーンネットワークにリクエストとして送信して、ブロックチェーンに記録させる。このように、生成されたトランザクションをブロックチェーンに記録させることで、ブロックチェーンの仕組みによりトランザクションの正当性が検証される。さらに、ブロックチェーンのゼロ知識性の性質により、第三者に取引履歴が知られることを抑制できる。
【0028】
図2は、本実施形態の取引システム1を用いた取引の例を示す説明図である。図2に示す例では、B商店、B商店の仕入元であるA商店およびC商店、並びに、顧客であるDさんが、新たなアドレスを生成して取引を行っていることを示す。
【0029】
具体的には、図2に示す例では、既知のアドレス「0x123456」を使用しているA商店が、新たなアドレスとして「0x123465」を生成したことを示す。なお、便宜的に、新たなアドレスを生成したA商店の名称を「A’商店」と記す。同様に、図2に示す例では、既知のアドレス「0x345678」を使用しているC商店が、新たなアドレスとして「0x345687」を生成したことを示す。上記と同様、便宜的に、新たなアドレスを生成したC商店の名称を「C’商店」と記す。さらに、図2に示す例では、既知のアドレス「0x456789」を使用しているDさんが、新たなアドレスとして「0x456798」を生成したことを示す。便宜的に、新たなアドレスを生成したDさんの名称を「D’さん」と記す。
【0030】
また、図2に示す例では、既知のアドレス「0234567」を使用しているB商店がA商店との取引に使用する新たなアドレスとして「0x234576」を生成したことを示す。以下、便宜的に、このアドレスに対するB商店の名称を「B’商店」と記す。同様に、B商店がC商店との取引に使用する新たなアドレスとして「0x235467」を生成し(このB商店の名称を、便宜上「B’ ’商店」と記す。)、B商店がDさんとの取引に使用する新たなアドレスとして「0x324567」を生成したことを示す(このB商店の名称を、便宜上「B’ ’ ’商店」と記す。)。
【0031】
図2に示す例では、取引相手ごとに新たなアドレスを生成する場合を例示した。ただし、新たなアドレスを生成するタイミングは、任意であり、アドレス生成部20は、例えば、取引ごとに新たなアドレスを生成してもよい。取引ごとに新たなアドレスを生成することで、追跡をより抑制することが可能になる。
【0032】
アドレス生成部20と、トランザクション生成部30と、トランザクション送信部40とは、プログラム(取引プログラム)に従って動作するコンピュータのプロセッサ(例えば、CPU(Central Processing Unit )、GPU(Graphics Processing Unit))によって実現される。
【0033】
例えば、プログラムは、取引装置100の記憶部10に記憶され、プロセッサは、そのプログラムを読み込み、プログラムに従って、アドレス生成部20、トランザクション生成部30、および、トランザクション送信部40として動作してもよい。また、取引装置100の機能がSaaS(Software as a Service )形式で提供されてもよい。
【0034】
また、アドレス生成部20と、トランザクション生成部30と、トランザクション送信部40とは、それぞれが専用のハードウェアで実現されていてもよい。また、各装置の各構成要素の一部又は全部は、汎用又は専用の回路(circuitry )、プロセッサ等やこれらの組合せによって実現されてもよい。これらは、単一のチップによって構成されてもよいし、バスを介して接続される複数のチップによって構成されてもよい。各装置の各構成要素の一部又は全部は、上述した回路等とプログラムとの組合せによって実現されてもよい。
【0035】
また、取引装置100の各構成要素の一部又は全部が複数の情報処理装置や回路等により実現される場合には、複数の情報処理装置や回路等は、集中配置されてもよいし、分散配置されてもよい。例えば、情報処理装置や回路等は、クライアントサーバシステム、クラウドコンピューティングシステム等、各々が通信ネットワークを介して接続される形態として実現されてもよい。
【0036】
次に、本実施形態の動作について説明する。図3は、本実施形態の取引装置100の動作例を示すフローチャートである。アドレス生成部20は、第一の取引者に対して、既知の第一のアドレスとは異なる第二のアドレスを生成する(ステップS11)。トランザクション生成部30は、第二のアドレスを用いて、第二の取引者に対して、既知の第三のアドレスとは異なる第四のアドレスへの取引を示すトランザクションを生成する(ステップS12)。そして、トランザクション送信部40は、生成されたトランザクションをブロックチェーンネットワークに送信してブロックチェーンに記録させる(ステップS13)。
【0037】
図4は、本実施形態の取引システム1の動作例を示すフローチャートである。ここでは、取引システム1が、ブロックチェーンを介した取引を行う取引装置100を2台(第一の取引装置、第二の取引装置)備え、第一の取引装置を使用する第一の取引者が、第二の取引装置を使用する第二の取引者と取引を行う場合について説明する。
【0038】
第一の取引装置のアドレス生成部20は、第一の取引者に対して、既知の第一のアドレスとは異なる第二のアドレスを生成する(ステップS21)。また、第二の取引装置のアドレス生成部20は、第二の取引者に対して、既知の第三のアドレスとは異なる第四のアドレスを生成する(ステップS22)。そして、第一の取引装置のトランザクション生成部30は、第二のアドレスを用いて、第四のアドレスへの取引を示すトランザクションを生成する(ステップS23)。なお、ステップS23の処理が行われる前に、生成されたアドレスの情報が、それぞれ相手方に、メールや電話等により通知される。
【0039】
以上のように、本実施形態では、アドレス生成部20が、第一の取引者に対して、既知の第一のアドレスとは異なる第二のアドレスを生成し、トランザクション生成部30が、第二のアドレスを用いて、第二の取引者に対して、既知の第三のアドレスとは異なる第四のアドレスへの取引を示すトランザクションを生成する。よって、取引が追跡されること抑制するとともに、取引の客観的な正当性を担保できる。
【0040】
例えば、上述するように、各取引者が既知のアドレスを用いて通常のブロックチェーンの仕組みで取引を行った場合、そのアドレスを追跡することで取引も追跡されてしまうおそれがある。また、新たな銀行口座等を作成して取引を行うことも考えられるが、口座開設に銀行を介する必要があるため、第三者である銀行に明示的に情報を提示する必要がある。
【0041】
一方、本実施形態では、アドレス生成部20が新たなアドレスを生成する。ここで、本実施形態では、取引にブロックチェーンを利用するため、取引に用いる新たなアドレスを生成する際に第三者による検証が不要である。そのため、個人を特定するための要素が第三者に知られることを抑制できる。その結果として、取引履歴が追跡されることを抑制できる。さらに、ブロックチェーンの仕組みにより、取引の客観的な正当性も担保できる。
【0042】
次に、本実施形態の取引システム1の変形例を説明する。上記実施形態では、新たに生成したアドレスを、メール等で別途通知する場合について説明した。本変形例では、予め決められたアドレス生成ルールに基づいて新たなアドレスを生成する構成について説明する。
【0043】
具体的には、アドレス生成部20は、予め決められたアドレス生成ルールに基づいて、新たなアドレスを生成する。アドレス生成ルールは任意であり、取引先のアドレスが一意に特定できればよい。
【0044】
アドレス生成部20は、例えば、「特定の文字列+相手のアドレス+シリアル番号」のハッシュ値をアドレスとするようなアドレス生成ルールに基づいてアドレスを生成してもよい。このような生成方法の場合、「特定の文字列」を取引先との間で事前に取り決めておけば、取引ごとに取引先にアドレスを通知する必要なくなるため、取引にかかる手間を省くことが可能になる。
【0045】
実施形態2.
次に、本実施形態の取引システムの第二の実施形態を説明する。第二の実施形態では、ブロックチェーンにおける取引に要する手数料を考慮した構成を説明する。
【0046】
ブロックチェーンを使用して取引を行う場合、手数料が発生することが一般的である。アドレスを新しく生成した場合、通常、そのアドレスには残高がないため、そのアドレスでの手数料を支払う場合には、予めそのアドレスに送金する手続きが必要になる。しかし、この送金手続自体にも手数料が必要になってしまうため、新たなアドレスを使用した手続には、二重に手数料が必要になる場合が存在する。そこで、本実施形態では、取引で発生し得る二重の手数料の支払いを抑制する方法について説明する。
【0047】
図5は、本発明の取引システムの第二の実施形態の構成例を示すブロック図である。本実施形態の取引システム2は、取引装置200を備えている。なお、第一の実施形態と同様、取引装置200の数は1台に限定されず、取引者ごとに複数存在してもよい。
【0048】
取引装置200は、記憶部10と、アドレス生成部20と、トランザクション生成部30と、トランザクション送信部40と、取引代替部50とを含む。すなわち、本実施形態の取引装置200は、第一の実施形態の取引装置100と比較し、取引代替部50をさらに備えている点において異なる。それ以外の構成は、第一の実施形態と同様である。
【0049】
本実施形態の記憶部10も、本実施形態の取引装置200が行う各種処理に必要な情報を記憶する。さらに、本実施形態の記憶部10は、第一の取引者が用いている既知の第一のアドレスと、アドレス生成部20が生成したアドレス(すなわち、第二のアドレス)との対応関係を記憶する。なお、第一の実施形態の記憶部10が、この対応関係を記憶していてもよい。
【0050】
取引代替部50は、第二のアドレスを用いた第四のアドレスへの取引で発生するトランザクション手数料の支払いを、第一のアドレスに代替させる。取引代替部50は、例えば、第二のアドレスが生成された第一の取引者が用いるアドレスとして既知のアドレスである第一のアドレスを、記憶部10に記憶された対応関係から取得してもよい。
【0051】
また、取引代替部50は、第二のアドレスで保持する残金が、第二のアドレスを用いた取引で発生するトランザクション手数料を下回る場合に、第一のアドレスに手数料の支払いを代替させてもよい。このようにすることで、必要な取引に限って、代替を依頼することが可能になる。なお、ブロックチェーンにおいて、他のアドレスに手数料の代替を依頼する方法は、広く知られているため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0052】
図6および図7は、本実施形態の取引システム2を用いた取引の例を示す説明図である。通常、新たなアドレスを生成したA商店(以下、A’商店と記す。)は、そのアドレスに残高が存在しないことが一般的である。A’商店がアドレスを生成したB商店(以下、B’商店と記す。)に対して取引を行う場合、A’商店がB’商店に支払う手数料を例えば、A商店のアドレスからA’商店のアドレスに送金しなければならないが、この送金に対しても手数料が発生してしまう(図6参照)。
【0053】
A商店とA’商店は取引主体が同一である。そこで、図7に示すように、取引代替部50は、A’商店の取引で発生する手数料の支払いをA商店に代替するよう依頼する。なお、A商店がB’商店に手数料を支払う方法は、利用するブロックチェーンによって定められており、その方法に基づいて支払いが行われればよい。
【0054】
アドレス生成部20と、トランザクション生成部30と、トランザクション送信部40と、取引代替部50とは、プログラム(取引プログラム)に従って動作するコンピュータのプロセッサによって実現される。
【0055】
次に、本実施形態の動作について説明する。図8は、本実施形態の取引装置200の動作例を示すフローチャートである。なお、新たなアドレスを生成して生成されたトランザクションを送信するまでの処理は、図4に例示するステップS11からステップS13の処理と同様である。
【0056】
取引代替部50は、第二のアドレスで保持する残金が、第二のアドレスを用いた取引で発生するトランザクション手数料を下回るか否か判断する(ステップS31)。残金が手数料を下回る場合(ステップS31におけるYes)、取引代替部50は、第二のアドレスを用いた第四のアドレスへの取引で発生するトランザクション手数料の支払いを、第一のアドレスに代替させる(ステップS32)。なお、残金が手数料を下回らない場合(ステップS31におけるNo)、代替処理を行わず、処理を終了する。
【0057】
以上のように、本実施形態では、取引代替部50が、第二のアドレスを用いた第四のアドレスへの取引で発生するトランザクション手数料の支払いを、第一のアドレスに代替させる。よって、第一の実施形態の効果に加え、取引で発生し得る二重の手数料の支払いを抑制できる。
【0058】
さらに、新しいアドレスに残高が発生した場合、その残高を他の取引では使用できないため、使用できない残高が新しいアドレス分だけ発生してしまうおそれもある。一方、本実施形態では、取引代替部50が、必要な手数料の支払いを他のアドレスに代替させるため、不要な残高が発生することも抑制できる。
【0059】
次に、本発明の概要を説明する。図9は、本発明による取引装置の概要を示すブロック図である。本発明による取引装置80(例えば、取引装置100、取引装置200)は、ブロックチェーンを介した取引に使用する第一のアドレスが既知の第一の取引者に対して、第一のアドレスとは異なる第二のアドレスを生成するアドレス生成手段81(例えば、アドレス生成部20)と、第二のアドレスを用いて、第三のアドレスを用いて行われるブロックチェーンを介した取引が既知の第二の取引者に対して生成されたその第三のアドレスとは異なる第四のアドレスへの取引を示すトランザクションを生成するトランザクション生成手段82(例えば、トランザクション生成部30)とを備えている。
【0060】
そのような構成により、取引が追跡されること抑制するとともに、取引の客観的な正当性を担保できる。
【0061】
また、取引装置80は、第二のアドレスを用いた第四のアドレスへの取引で発生するトランザクション手数料の支払いを、第一のアドレスに代替させる取引代替手段(例えば、取引代替部50)を備えていてもよい。そのような構成によれば、取引で発生し得る二重の手数料の支払いを抑制できる。
【0062】
具体的には、取引代替手段は、第二のアドレスで保持する残金がその第二のアドレスを用いた取引で発生するトランザクション手数料を下回る場合に、第二のアドレスを用いた第四のアドレスへの取引で発生するトランザクション手数料の支払いを、第一のアドレスに代替させてもよい。
【0063】
また、取引装置80は、第一の取引者が用いる第一のアドレスと第二のアドレスとの対応関係を記憶する記憶手段(例えば、記憶部10)を備えていてもよい。そして、取引代替手段は、第二のアドレスが生成された第一の取引者が用いるアドレスとして既知のアドレスである第一のアドレスを、記憶手段に記憶された対応関係から取得してもよい。
【0064】
また、取引装置80は、生成されたトランザクションをブロックチェーンネットワークに送信してブロックチェーンに記録させるトランザクション送信手段(例えば、トランザクション送信部40)を備えていてもよい。
【0065】
図9は、本発明による取引システムの概要を示すブロック図である。本発明によるシステム90(例えば、取引システム1、取引システム2)は、ブロックチェーンを介した取引を行う第一の取引装置60(例えば、取引装置100、取引装置200)および第二の取引装置70(例えば、取引装置100、取引装置200)を備えている。
【0066】
第一の取引装置60は、ブロックチェーンを介した取引に使用する第一のアドレスが既知の第一の取引者に対して、第一のアドレスとは異なる第二のアドレスを生成する第一アドレス生成手段61(例えば、アドレス生成部20)と、第二のアドレスを用いて、他のアドレスへの取引を示すトランザクションを生成するトランザクション生成手段62(例えば、トランザクション生成部30)とを含む。
【0067】
第二の取引装置70は、ブロックチェーンを介した取引に使用する第三のアドレスが既知の第二の取引者に対して、第三のアドレスとは異なる第四のアドレスを生成する第二アドレス生成手段71(例えば、アドレス生成部20)を含む。
【0068】
そして、トランザクション生成手段62は、第二のアドレスを用いて、第四のアドレスへの取引を示すトランザクションを生成する。
【0069】
そのような構成によっても、取引が追跡されること抑制するとともに、取引の客観的な正当性を担保できる。
【0070】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0071】
(付記1)ブロックチェーンを介した取引に使用する第一のアドレスが既知の第一の取引者に対して、前記第一のアドレスとは異なる第二のアドレスを生成するアドレス生成手段と、
前記第二のアドレスを用いて、第三のアドレスを用いて行われるブロックチェーンを介した取引が既知の第二の取引者に対して生成された当該第三のアドレスとは異なる第四のアドレスへの取引を示すトランザクションを生成するトランザクション生成手段とを備えた
ことを特徴とする取引装置。
【0072】
(付記2)第二のアドレスを用いた第四のアドレスへの取引で発生するトランザクション手数料の支払いを、第一のアドレスに代替させる取引代替手段を備えた
付記1記載の取引装置。
【0073】
(付記3)取引代替手段は、第二のアドレスで保持する残金が当該第二のアドレスを用いた取引で発生するトランザクション手数料を下回る場合に、第二のアドレスを用いた第四のアドレスへの取引で発生するトランザクション手数料の支払いを、第一のアドレスに代替させる
付記2記載の取引装置。
【0074】
(付記4)第一の取引者が用いる第一のアドレスと第二のアドレスとの対応関係を記憶する記憶手段を備え、
取引代替手段は、第二のアドレスが生成された第一の取引者が用いるアドレスとして既知のアドレスである第一のアドレスを、前記記憶手段に記憶された対応関係から取得する
付記2または付記3記載の取引装置。
【0075】
(付記5)生成されたトランザクションをブロックチェーンネットワークに送信してブロックチェーンに記録させるトランザクション送信手段を備えた
付記1から付記4のうちのいずれか1つに記載の取引装置。
【0076】
(付記6)ブロックチェーンを介した取引を行う第一の取引装置および第二の取引装置を備え、
前記第一の取引装置は、
ブロックチェーンを介した取引に使用する第一のアドレスが既知の第一の取引者に対して、前記第一のアドレスとは異なる第二のアドレスを生成する第一アドレス生成手段と、
前記第二のアドレスを用いて、他のアドレスへの取引を示すトランザクションを生成するトランザクション生成手段とを含み、
前記第二の取引装置は、
前記ブロックチェーンを介した取引に使用する第三のアドレスが既知の第二の取引者に対して、前記第三のアドレスとは異なる第四のアドレスを生成する第二アドレス生成手段を含み、
前記トランザクション生成手段は、前記第二のアドレスを用いて、前記第四のアドレスへの取引を示すトランザクションを生成する
ことを特徴とする取引生成システム。
【0077】
(付記7)ブロックチェーンを介した取引に使用する第一のアドレスが既知の第一の取引者に対して、前記第一のアドレスとは異なる第二のアドレスを生成し、
前記第二のアドレスを用いて、第三のアドレスを用いて行われるブロックチェーンを介した取引が既知の第二の取引者に対して生成された当該第三のアドレスとは異なる第四のアドレスへの取引を示すトランザクションを生成する
ことを特徴とする取引方法。
【0078】
(付記8)第二のアドレスを用いた第四のアドレスへの取引で発生するトランザクション手数料の支払いを、第一のアドレスに代替させる
付記7記載の取引方法。
【0079】
(付記9)ブロックチェーンを介した第一の取引装置と第二の取引装置との間で行われる取引方法であって、
前記第一の取引装置が、前記ブロックチェーンを介した取引に使用する第一のアドレスが既知の第一の取引者に対して、前記第一のアドレスとは異なる第二のアドレスを生成し、
前記第二の取引装置が、前記ブロックチェーンを介した取引に使用する第三のアドレスが既知の第二の取引者に対して、前記第三のアドレスとは異なる第四のアドレスを生成し、
前記第一の取引装置が、前記第二のアドレスを用いて、前記第四のアドレスへの取引を示すトランザクションを生成する
ことを特徴とする取引方法。
【0080】
(付記10)コンピュータに、
ブロックチェーンを介した取引に使用する第一のアドレスが既知の第一の取引者に対して、前記第一のアドレスとは異なる第二のアドレスを生成するアドレス生成処理、および、
前記第二のアドレスを用いて、第三のアドレスを用いて行われるブロックチェーンを介した取引が既知の第二の取引者に対して生成された当該第三のアドレスとは異なる第四のアドレスへの取引を示すトランザクションを生成するトランザクション生成処理
を実行させるための取引プログラム。
【0081】
(付記11)コンピュータに、
第二のアドレスを用いた第四のアドレスへの取引で発生するトランザクション手数料の支払いを、第一のアドレスに代替させる取引代替処理を実行させる
付記10記載の取引プログラム。
【符号の説明】
【0082】
1,2 取引システム
10 記憶部
20 アドレス生成部
30 トランザクション生成部
40 トランザクション送信部
50 取引代替部
100,200 取引装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11