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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107569
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】画像変換方法、及び、画像変換装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 5/30 20060101AFI20240802BHJP
   H04N 1/60 20060101ALI20240802BHJP
   B41J 2/525 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
B41J5/30 C
H04N1/60
B41J2/525
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011561
(22)【出願日】2023-01-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】523031828
【氏名又は名称】株式会社アニー
(74)【代理人】
【識別番号】100185878
【弁理士】
【氏名又は名称】植田 晋一
(72)【発明者】
【氏名】鈴鹿 哲生
(72)【発明者】
【氏名】鈴鹿 京子
【テーマコード(参考)】
2C187
2C262
5C079
【Fターム(参考)】
2C187AC08
2C187BF08
2C187BG05
2C187GA06
2C262BA16
2C262EA04
2C262EA08
2C262EA17
5C079HB01
5C079LA02
5C079LA10
5C079LA31
5C079LB01
5C079LC01
5C079NA03
5C079PA07
(57)【要約】
【課題】ラスター形式での入力画像をベクター形式へ変換する。
【解決手段】画像変換方法は、ラスター形式をベクター形式に変換する画像変換方法である。この方法によれば、ラスター形式で示される入力画像を、所定の大きさの複数の分割領域に分割し、分割領域内の全てのピクセルの赤緑青の輝度を用いて、赤緑青それぞれの分割領域内の輝度平均を求め、分割領域に、赤緑青の3つの単色領域を設け、赤緑青の単色領域の大きさを、それぞれ、分割領域内の赤緑青の輝度平均に応じて変化させ、赤緑青の単色領域を用いて、ベクター形式の画像データを生成して出力する。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラスター形式をベクター形式に変換する画像変換方法であって、
ラスター形式で示される入力画像を、所定の大きさの複数の分割領域に分割し、
前記分割領域内の全てのピクセルの赤緑青の輝度を用いて、赤緑青それぞれの前記分割領域内の輝度平均を求め、
前記分割領域に、赤緑青の3つの単色領域を設け、
前記赤緑青の単色領域の大きさを、それぞれ、前記分割領域内の赤緑青の前記輝度平均に応じて変化させ、
前記赤緑青の単色領域を用いて、ベクター形式の画像データを生成して出力する、画像変換方法。
【請求項2】
前記ベクター形式は、前記単色領域の形状、大きさ、位置、及び、色を示す、請求項1に記載の画像変換方法。
【請求項3】
前記分割領域内の赤緑青の前記輝度平均の平均が閾値を上回る場合には、前記分割領域に前記単色領域を設けず、前記分割領域の全体を白で表示するベクターデータを生成する、請求項1に記載の画像変換方法。
【請求項4】
前記分割領域内の赤緑青の少なくとも1つの輝度平均が閾値を下回る場合には、当該閾値を下回る輝度平均の色の前記単色領域を設けない、請求項1に記載の画像変換方法。
【請求項5】
前記入力画像を、縦又は横に延在する所定幅の挿入線を前記分割領域の間に挿入しながら、前記分割領域に分割する、請求項1に記載の画像変換方法。
【請求項6】
ラスター形式をベクター形式に変換する画像変換装置であって、
ラスター形式で示される入力画像を、所定の大きさの複数の分割領域に分割する分割部と、
分割領域内の全てのピクセルの赤緑青の輝度を用いて、赤緑青それぞれの前記分割領域内の輝度平均を求め、前記分割領域に、赤緑青の3つの単色領域を設け、前記赤緑青の単色領域の大きさを、それぞれ、前記分割領域内の赤緑青の前記輝度平均に応じて変化させる単色変換部と、
前記赤緑青の単色領域を用いて、ベクター形式の画像データを生成して出力する出力部と、を備える画像変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像変換方法、及び、画像変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータにおいて画像を表示する方法の1つとして、ラスター形式と称されるフォーマットが知られている。ラスター形式においては、格子状に並んだピクセル(画素)毎にRGB(赤緑青)の輝度の諧調が変更されることで、全体としてカラー画像が表示される。このようなラスター形式で表示される画像について、表現の幅を広げるために表示態様を変換するソフトウェアが幅広く利用されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2022-517836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンピュータで製作した画像を現実世界において印刷対象にペインティングする方法として、インクジェットやシルクスクリーンが知られている。これらの方法のうち、シルクスクリーンは、多様な素材に印刷可能であること、インクの発色が良いこと、インクジェット印刷では不可能なインクの利用が可能など、表現の幅が広いことが知られており、アートなどの高い表現性が求められる場合での利用に適している。一般に、シルクスクリーンでペインティングを行う場合には、画像に基づいてCMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)のような色毎に版が作成され、版毎に異なる色で色刷りが行われる。
【0005】
しかしながら、ラスター形式で表示される画像は、RGBの輝度に基づいた表現が行われている以上、RGBの3色以外の色が用いられ得るため、正確に色を再現したシルクスクリーンの版を作成することが困難である。特許文献1の技術のように、多種な表現方法を用いたとしてもラスター形式の画像データである以上、ペインティングにおける色の再現性は高くならない。さらに、ラスター形式の画像をシルクスクリーンのペインティングで利用する場合には、画像内の構成の形状や色等をXML形式で記述するベクター形式と比較すると、シルクスクリーンでのペインティングを行う際に色の境界(エッジ)が鮮明にならない。そのため、ラスター形式での入力画像をベクター形式へ変換する方法の開発が期待されている。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、ラスター形式での入力画像をベクター形式へ変換する画像変換方法、及び、画像変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の画像変換方法は、ラスター形式をベクター形式に変換する方法である。この方法によれば、ラスター形式で示される入力画像を、所定の大きさの複数の分割領域に分割し、分割領域内の全てのピクセルの赤緑青の輝度を用いて、赤緑青それぞれの分割領域内の輝度平均を求め、分割領域に、赤緑青の3つの単色領域を設け、赤緑青の単色領域の大きさを、それぞれ、分割領域内の赤緑青の輝度平均に応じて変化させ、赤緑青の単色領域を用いて、ベクター形式の画像データを生成して出力する。
【0008】
本発明の画像変換装置は、ラスター形式をベクター形式に変換する装置である。この画像変換装置は、ラスター形式で示される入力画像を、所定の大きさの複数の分割領域に分割する分割部と、分割領域内の全てのピクセルの赤緑青の輝度を用いて、赤緑青それぞれの分割領域内の輝度平均を求め、分割領域に、赤緑青の3つの単色領域を設け、赤緑青の単色領域の大きさを、それぞれ、分割領域内の赤緑青の輝度平均に応じて変化させる単色変換部と、赤緑青の単色領域を用いて、ベクター形式の画像データを生成して出力する出力部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の画像変換方法及び画像変換装置によれば、ラスター形式の画像を分割して複数の分割領域を設け、これらの分割領域のそれぞれに、赤緑青の3つの単色領域を設ける。そして、分割領域内の赤緑青の輝度平均に応じて、対応する単色領域の形状を変化させ、これらの単色領域を示すベクター方式の画像データを生成する。このようにして、画像全体としては表示内容を判別可能に維持しながら、画像データをラスター形式からベクター形式に変換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る画像変換装置のハードウェアの概略構成図である。
図2】画像変換装置のソフトウェアの概略構成図である。
図3】画像変換処理のフローチャートを示す図である。
図4図3のステップS35の詳細のフローチャートを示す図である。
図5】画像変換処理の説明図である。
図6】画像変換処理後の画像を示す図である。
図7】第2実施形態の画像変換処理の説明図である。
図8】第3実施形態の画像変換処理の説明図である。
図9】第4実施形態の画像変換処理の説明図である。
図10】第5実施形態の前処理の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下図面について本発明の一実施の形態を詳述する。以下の説明において、同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態の画像変換装置のハードウェアの概略構成図である。画像変換装置1は、例えば、パソコン等の機器であって、ラスター形式の入力画像に対して所定の変換処理を行い、シルクスクリーン等のペインティングに用いるベクター形式の画像データを生成して出力する。
【0013】
詳細には、画像変換装置1は、全体を制御するCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)により構成される制御部11と、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び/またはハードディスク等により構成され、プログラムや各種のデータ等を記憶する記憶部12と、外部との通信を行う通信部13と、タッチパネル等の情報表示デバイスに対してデータに応じた表示を行う表示部14と、タッチパネル等の機器からの入力を受け付ける入力部15と、を備える。
【0014】
制御部11、記憶部12、通信部13、表示部14、及び、入力部15は、相互に通信可能に構成されている。なお、画像変換装置1は、記憶部12に記録されているプログラムを実行することにより所定の処理を実行可能に構成されている。この図に示される画像変換装置1のハードウェア構成は一例であって、記憶されているプログラムを動作させることで所定の処理が実行可能に構成されていればよい。
【0015】
図2は、制御部11内の機能ブロックの概略構成図である。制御部11内においては所定のプログラムが記憶されており、記憶されているプログラムが実行されることで、所定の処理を行う。制御部11は、前処理部21、分割部22、単色変換部23、及び、出力部24を備える。なお、図2に示されたソフトウェア構成は一例であって、1つのプロセッサによりこれらの処理が行われてもよいし、複数のプロセッサやマイコンによってそれぞれのブロックと対応する処理が行われてもよい。
【0016】
前処理部21は、変換処理に必要なパラメータの入力を受け付けるとともに、変換対象のラスター形式の画像データの入力を受け付け、受け付けた画像データに対してサイズや解像度の変換等の前処理を行う。
【0017】
分割部22は、前処理部21により前処理された画像を、所定の大きさの領域に分割する。これにより、複数の分割領域が得られる。
【0018】
単色変換部23は、分割部22により生成された分割領域のそれぞれに対して、分割領域を赤緑青(RGB)の単色で表示される3つの単色領域に変換する単色変換処理を行う。この単色変換処理によって、分割部22により生成された分割領域には、RGBのそれぞれに対応する複数の単色領域、すなわち、単色領域(赤(R))、単色領域(緑(G))、及び、単色領域(青(B))が設けられる。
【0019】
出力部24は、単色変換部23による変換処理により生成された単色領域を用いて、記述的に記載した(例えば、拡張可能マークアップ言語(XML形式)を用いた)ベクター形式の画像データを生成して出力する。ベクター形式の画像データは、その後、シルクスクリーンのペインティングに用いられ得る。
【0020】
図3、4は、制御部11において前処理部21、分割部22、単色変換部23、及び、出力部24により行われる一連の処理を示すフローチャートである。図5は、画像変換処理の説明図である。以下では、図3~5を用いて、画像変換処理の詳細について説明する。
【0021】
図3に示すように、ステップS31において、前処理部21は、後述の処理に用いるパラメータの設定を受け付ける。なお、設定されるパラメータとしては、以下のものがある。
明度補正指令値
分割領域の形状
分割領域の大きさ(縦横の長さ)
分割領域の白化設定(閾値)
単色領域の形状、大きさ
単色領域の変換方法(縦可変、横可変)
単色領域の最小表示サイズ(閾値)
インターレースの設定(挿入有無、挿入方向、間隔、幅)
【0022】
これらの設定のうち、明度補正指令値は、前処理部21による前処理(ステップS33)において用いられる。分割領域に関するパラメータは、分割部22による分割処理(ステップS34)において用いられる。単色領域に関するパラメータは、単色変換部23による単色変換処理(ステップS35)において用いられる。インターレースに関するパラメータは、前処理部21による前処理(ステップS33)、及び、分割部22による分割処理(ステップS34)において用いられる。なお、インターレースに関する処理については、図10を用いた第5実施形態において詳細に説明する。
【0023】
ステップS32において、前処理部21は変換対象のラスター形式の入力画像を取得する。入力画像は、画像変換装置1内に記憶されている画像であってもよいし、画像変換装置1外に記憶されており、通信部13を介して取得する画像であってもよい。
【0024】
ステップS33において、前処理部21は、ステップS32において入力された画像に対して、後続の処理のための前処理を行う。まず、前処理部21は、設定される明度補正指令値に基づいて、全体的な明度の調整を行う。例えば、明度補正指令値が120%である場合には、入力画像を構成する画素(ピクセル)の全ての明度を1.2倍にする。
【0025】
後続のステップS34の分割処理においては、設定された分割領域の形状及び大きさに基づいて、入力画像が複数の分割領域に分割される。そのため、前処理部21は、入力画像に対して、縦横の長さが分割領域の縦横の長さの整数倍となるように、拡大や余白の追加・削除を行う。これにより、ステップS34の分割処理において、分割領域に含まれない部分が生じにくくなる。
【0026】
ステップS34において、分割部22は、ステップS32において前処理された画像を、所定の大きさの複数の分割領域に分割する。
【0027】
例えば、図5には、前処理後の入力画像51が左上に示されている。なお、この図においては、画像の大きさや位置を画素(ピクセル、px)の単位で示している。前処理後の入力画像51は、縦横の両方向において192pxの大きさであるものとする。また、これらの図においては、左上を原点として、右方向に向かってxが正、下方向に向かってyが正となるような座標(x,y)が用いられている。そのため、入力画像51の左上角の座標が(0,0)、右上角の座標が(192,0)、左下角の座標が(0,192)、右下角の座標が(192,192)となる。
【0028】
分割部22は、入力画像51を、設定された形状及び大きさに基づいて分割する。この図の例では、分割部22は、入力画像51を、縦横12pxの大きさの正方形の分割領域52に分割する。このように分割された結果、縦横に16個ずつの、計256個の分割領域52が生成される。
【0029】
再び図3を参照すると、ステップS35において、単色変換部23は、ステップS34で生成された分割領域52のそれぞれに対して、RGBと対応する3つの単色領域(R)53、単色領域(G)54、単色領域(B)55を設け、それらの大きさを変更する。ステップS35で行われる単色変換処理の詳細は、図4に示されている。
【0030】
図4に示すように、ステップS351において、単色変換部23は、分割領域52のそれぞれについて、単色変換処理を行う。図5に示される例では、分割領域52のうち、左から13番目、上から5番目の分割領域52に対する単色変換の例が示されている。当該分割領域52は、左上角の座標が(144,48)であり、右上角の座標が(156,48)であり、左下角の座標が(144,60)であり、右下角の座標が(156,60)である。
【0031】
単色変換部23は、まず、分割領域52に存在する全てのピクセルを用いて、RGBそれぞれの輝度の平均割合を求める。この分割領域52内には、右上側の89個のピクセルのRGBの各要素の輝度は、R:100 G:5 B:5であり、左下側の55個のピクセルのRGBの各要素の輝度は、R:255 G:153 B:20である。なお、各ピクセルのRGBの輝度は、256諧調で、0~255の範囲を用いて示されている。
【0032】
単色変換部23は、RGBの各要素の輝度について分割領域52内の全ピクセルの総和を求め、求めた総和に対して分割領域52内のピクセル数(144)で除した後、さらに、最大諧調の255で除することで、分割領域内のRGBの各要素の平均輝度割合を算出する。この例では、分割領域52内のRGBの各要素の平均輝度割合は、62.4%、24.1%、及び、4.2%である。
【0033】
ステップS352において、単色変換部23は、分割領域52の白化設定に基づいて、分割領域52の全体を白で表示するか否かを判定する。具体的には、単色変換部23は、分割領域52内のRGBの平均輝度割合の平均を求め、その平均が設定された閾値を上回るか判定する。
【0034】
図5の例においては、分割領域52内のRGBの各要素の平均輝度割合が62.4%、24.1%、及び、4.2%であるため、それらの平均である30.3%が平均として求められる。例えば、閾値が90%であるとすると、単色変換部23は、算出した平均が閾値を下回るため(S352:Yes)、次にS354の処理を実行する。単色変換部23は、平均が閾値を下回らない場合には(S352:No)、次にS353の処理を実行する。
【0035】
ステップS353において、分割領域52内の全体の平均輝度割合が閾値を下回らない場合(上回る場合)(S352:No)には、単色変換部23は、分割領域52の全体について白(R:255 G:255 B:255)で表示し、分割領域52の単色変換処理を終了する。
【0036】
分割領域52が全体として所定の輝度を上回る場合には、後続の単色変換処理を行ったとしても、シルクスクリーンでのペインティング時に色の再現性が高くならず、くすんで見えてしまうことがある。そこで、分割領域52内の全体の平均輝度割合が閾値を上回る場合には、分割領域52について単色変換を行わずに、全体を白色で表示する。これにより、シルクスクリーンでのペインティング時におけるくすみを防ぐことができる。なお、白化設定を行わない場合には、閾値が100%に設定される。
【0037】
ステップS354において、単色変換部23は、RGBの各要素について、ステップS351において算出された平均輝度割合に応じて所定の単色領域53~55への変換を開始する。単色変換部23は、まず、分割領域52内に3つの単色領域(R)53、単色領域(G)54、及び、単色領域(B)55を設ける。
【0038】
図5には、右下に単色変換処理後の分割領域52が示されている。分割領域52内には、単色領域53~55として、縦長の(y軸方向が長手方向となる)長方形が、横方向に並んで設けられる。これらの単色領域53~55は、縦方向の高さは固定であり、横方向の幅が可変である。なお、RGBの各要素についてステップS355~S357の処理が繰り返され、単色領域(R)53、単色領域(G)54、及び、単色領域(B)55が生成される。
【0039】
ステップS355において、単色変換部23は、単色領域53~55の最小表示サイズの設定に基づいて、単色領域53~55を表示するか否かを判定する。具体的には、単色変換部23は、分割領域52内のRGBの平均輝度割合が、設定された閾値以下であるか否かを判定する。
【0040】
図5の例においては、RGBのそれぞれの平均輝度割合が62.4%、24.1%、及び、4.2%であり、閾値は例えば1%であるものとする。単色変換部23は、RGBの平均輝度割合の全てが閾値を上回るため(S355:Yes)、次にS357の処理を実行する。単色変換部23は、RGBの平均輝度割合が閾値を上回らない場合には(S355:No)、閾値を上回らない色要素と対応する単色領域53~55について、次にS356の処理を実行する。
【0041】
ステップS356において、単色変換部23は、平均輝度割合が閾値を下回る色要素の単色領域53~55を設けずに、単色変換処理を終了する。変換処理後の画像の背景は黒(R:0 G:0 B:0)であるため、単色領域53~55が設けられない場所は、最終的に黒で表示される。
【0042】
ここで、RGBそれぞれの平均輝度割合が所定の閾値を上回っていない場合(S355:No)には、単色領域53~55が極端に小さくなるため、シルクスクリーンでのペインティング時に印刷限界や表示限界を下回り、明瞭な表現を得られない。そこで、平均輝度割合が所定の閾値を下回る単色領域53~55については表示を省略することで、対応する領域には背景色である黒色が表示されるので、不明瞭な表現を防ぐことができる。
【0043】
ステップS357において、単色変換部23は、RGBの平均輝度割合に応じて、単色領域53~55を決定する。図5の例においては、1つの分割領域52には、縦長の長方形の単色領域53~55が3つ含まれることになるため、単色領域53~55の縦方向の長さは12pxで固定されており、横方向の幅が最大4pxで可変となる。
【0044】
単色変換部23は、単色領域(R)53、単色領域(G)54、及び、単色領域(B)55の可変の横方向の幅について、RGBの各要素の平均輝度割合が62.4%、24.1%、及び、4.2%に応じた変換を行うことで求められる。その結果、単色領域(R)53、単色領域(G)54、及び、単色領域(B)55のそれぞれの幅として、2.5px、1.0px、及び、0.2pxを得る。なお、このように変換された単色領域53~55は、分割領域52内で3分割されて得られる場所において、横方向に中央揃えで配置される。
【0045】
ステップS358において、RGBの全てについて単色領域53~55への変換が完了している場合には(S358:Yes)、単色変換処理を終了する。RGBの全ての色について単色領域53~55への変換が完了していない場合には(S358:No)、次に、単色変換部23は、ステップS354の処理に移り、残りの色についての単色領域53~55への変換を実行する。
【0046】
以上の処理によって、1つの分割領域52は、RGBの3つの色要素に応じて単色領域53~55に変換される。図3に示されるように、ステップS35において、全ての分割領域52に対して単色変換処理が行われると、その後、ステップS36の処理が行われる。
【0047】
ステップS36において、出力部24は、全ての分割領域52の変換された単色領域53~55について、XML等を用いて記述的に記載したベクター形式の出力ファイルを作成する。出力ファイルにおいては、全ての分割領域52において変換された単色領域(R)53、単色領域(G)54、及び、単色領域(B)55について、それらの形状、大きさ及び位置等が示される。
【0048】
図5の例では、単色領域53~55の形状が長方形であること(rect)、及び、その配置を示す原点側(左上側)の座標(x、y)、大きさを示す幅及び高さ(width、height)、並びに、色(rgb)が記述的に示される。具体的には、単色領域53~55の左上の座標として、それぞれ、(144.8,48)、(149.5,48)、(153.9,48)が示される。また、単色領域53~55の大きさは、横方向(幅方向)が、それぞれ2.5px、1.0px、及び、0.2pxであり、縦方向(高さ方向)が12pxで共通する。なお、長方形は角に丸みがある形状でもよく、丸みを指定するパラメータ(rx、ry)が含まれてもよい。角に丸みがある設定については、後述の図9を用いた第5実施形態において説明される。
【0049】
なお、出力データにおいては、全体の背景が黒(R:0 G:0 B:0)で表示される。そのため、単色領域53~55が表示されていない部分は、黒(R:0 G:0 B:0)で表示されることになる。
【0050】
図6は、図5に示された入力画像51の全体を単色領域変換した画像である。この図においては、可読性のために分割領域52を示す罫線は示されていない。図6に示されるように、単色変換処理を経た出力画像61は、分割領域52のそれぞれにRGBの単色領域53~55が設けられているが、全体としての表示は識別可能に維持されていることが理解できる。
【0051】
このような画像変換により以下の効果が得られる。変換前のラスター形式の画像は明度に基づいた表現が行われている以上、RGBの3色以外の色も用いられることになるため、ペインティング、特に、シルクスクリーンを用いた場合の色の再現性が低い。これに対して、変換後のベクター形式で出力される画像は、RGBの単色で表示されることになるため、ベクター形式の出力ファイルをペインティングに用いる場合には、色再現性が高くなることが期待できる。さらに、ベクター形式を用いることにより、ラスター形式よりも、ペインティング時における色の境界(エッジ)を鮮明にすることができる。本実施形態によって、全体の画像を判別可能に維持しながらラスター形式からベクター形式に画像データを変換することで、色再現性が高く境界が明瞭なペインティングを行うことが可能となる。
【0052】
(第2実施形態)
第1実施形態においては、単色領域53~55は、縦長(y軸方向が長手方向となる)の長方形であり、横方向(x軸方向)に並設され、RGBの平均輝度割合に応じて横方向の幅を変更した。第2実施形態においては、単色領域53~55は、第1実施形態と同様の縦長の長方形であるが、RGBの平均輝度割合に応じて縦方向の高さを変更する例について説明する。
【0053】
図7は、第2実施形態における単色変換後の分割領域52を示す図である。この図に示されるように、分割領域52内には、RGBに対応する3つの縦長の長方形のRGBの単色領域53~55が、横方向に並んで設けられる。そして、これらの単色領域53~55の高さが、RGBの平均輝度割合に応じて変化される。
【0054】
具体的には、RGBの単色領域53~55の幅は4pxで固定されており、縦方向の高さは最大で12pxで可変となる。RGBのそれぞれの平均輝度割合が62.4%、24.1%、及び、4.2%であるため、RGBの単色領域53~55のそれぞれの高さが、7.5px、2.9px、及び、0.5pxとなる。
【0055】
また、このように変換された単色領域53~55は、分割領域52内のそれぞれの場所において縦方向に中央揃えで配置される。そのため、単色領域(R)53、単色領域(G)54、及び、単色領域(B)55の左上の座標は、それぞれ、(144,50.3)、(148,52.6)、(152,53.7)である。これらの単色領域53~55の座標及び大きさが、出力データに含まれる。
【0056】
このように、単色領域53~55は、平均輝度割合に応じて縦方向の高さを変化させてもよい。その結果、同じ縦長の長方形の単色領域53~55に対して、高さまたは幅のいずれかを変化してもよいため、ペインティング時における表現の幅を広げることができる。
【0057】
(第3実施形態)
第1、2実施形態においては、単色領域53~55は縦長(y軸方向が長手方向)の形状である例について説明した。第3実施形態においては、単色領域53~55は横長(x軸方向が長手方向)の長方形であり、これらの単色領域53~55が縦方向に並設される例について説明する。
【0058】
図8は、第3実施形態における単色変換後の分割領域52を示す図である。この図に示されるように、1つの分割領域52内には、RGBに対応する3つの横長の長方形の単色領域53~55が設けられる。そして、これらの単色領域53~55の高さが、RGBの各要素の平均輝度割合に応じて変化される。
【0059】
具体的には、単色領域53~55の幅は12pxで固定されており、高さは最大で4pxで可変である。RGBのそれぞれの平均輝度割合が62.4%、24.1%、及び、4.2%であるため、RGBの単色領域53~55のそれぞれの高さが、2.5px、1.0px、及び、0.2pxとなる。
【0060】
また、このように変換された単色領域53~55は、分割領域52内のそれぞれの場所において縦方向に中央揃えで配置される。そのため、RGBの単色領域53~55の左上の座標は、それぞれ、(144,48.8)、(144,53.5)、(144,57.9)である。これらのRGBの単色領域53~55の座標及び大きさが、出力されるベクターデータに含まれることになる。
【0061】
このように、単色領域53~55は、縦長の長方形、また、横長の長方形のいずれであってもよい。単色領域53~55の長方形の形状を変化させることで、ペインティング時における表現の幅を広げることができる。
【0062】
(第4実施形態)
第1~3実施形態においては、矩形の単色領域53~55が四隅に角を備える例について説明した。第4実施形態においては、矩形の単色領域53~55の四隅の角が丸みを帯びている例について説明する。
【0063】
図9は、第4実施形態における単色変換後の分割領域52を示す図である。この図に示されるように、RGBの単色領域53~55は、第1実施形態と同様に、縦長の長方形の単色領域53~55の横方向の幅がRGBの平均輝度割合に応じて変化されている。
【0064】
この図には、さらに、左側の単色領域(R)53の下端の拡大図が示されており、単色領域(R)53の角部の曲率を定める半径が設定値に応じて定まる。具体的には、角部の半径をRとし、単色領域(R)53の幅をLとすると、半径Rの幅Lに対する割合(R/L)が設定される。そのため、単色領域(R)53の幅をLに設定値を乗じた値が、半径Rとなる。
【0065】
このように定められた半径Rを記述的に表示したものが、ベクターデータに含まれる。この例においては、単色領域53~55の10%が半径として設定されている。なお、ベクター形式においてはx方向とy方向で丸みは各々設定可能であるが、本実施形態ではxy方向の両方において10%が設定されたものとする。その結果、RGBそれぞれの単色領域53~55において、x方向の丸み(rx)及びy方向の丸み(ry)に同値が設定され、それぞれ、0.25px、0.1px、0.02pxとなる。
【0066】
このように、単色領域53~55に角部に丸みのある長方形とすることができるため、シルクスクリーンでの角部のペインティングの精度が高くない場合には、予め角部に丸みを帯びた長方形の単色領域53~55を設けることで、ペインティング時における画像内の形状の再現性を高めることができる。
【0067】
(第5実施形態)
第1実施形態においては、入力画像51を単純に縦12、横12に分割する例について説明した。第5実施形態においては、入力画像51を前処理した後に分割する例について説明する。
【0068】
図10は、インターレース56が挿入された状態で複数の分割領域52で分割された入力画像51を示す図である。この図によれば、縦方向において3つの分割領域52毎に、横方向に延在する黒いインターレース(挿入線)56が計4本挿入されている。インターレース56の高さは3pxである。その結果、12px四方の分割領域52が縦に15個、横に16個設けられる。
【0069】
インターレース56の挿入方向、幅、及び挿入間隔は設定可能であり、設定に応じて、前処理部21は入力画像51の大きさを変更してもよい。前処理部21は、インターレース56を挿入するために、入力画像51の拡大や余白の追加が適宜なされてもよい。
【0070】
単色変換部23による単色変換処理(ステップS35)においては、分割領域52のそれぞれについてRGBの単色領域53~55に変換される。この単色変化処理においては、インターレース56の部分については、そのまま黒色で示される。そのため、出力ファイルには、インターレース56に関して、その形状、位置、大きさ、及び、黒色であることが示される。
【0071】
このようなインターレース56が挿入された画像を用いる場合には、ペインティング処理においてオフセット設定が容易になるとともに、ペインティング時に版の配置が斜めにズレが生じたとしても、そのズレを容易に検出することができる。
【0072】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0073】
1 画像変換装置
21 前処理部
22 分割部
23 形状変換部
23 単色変換部
24 出力部
51 入力画像
52 分割領域
53~55 単色領域
56 インターレース(挿入線)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10