IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士電機株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107574
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20240802BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20240802BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20240802BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20240802BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240802BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
H01L29/78 657D
H01L29/78 655G
H01L29/78 652T
H01L29/91 C
H01L29/91 F
H01L29/78 653A
H01L29/78 652J
H01L29/78 652M
H01L29/78 652D
H01L29/78 655A
H01L29/78 658A
H01L27/06 102A
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011570
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 俊貴
(72)【発明者】
【氏名】松井 俊之
(72)【発明者】
【氏名】内藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】上村 和貴
【テーマコード(参考)】
5F048
【Fターム(参考)】
5F048AC10
5F048BA14
5F048BA15
5F048BB19
5F048BC03
5F048BC12
5F048BD07
5F048BF02
5F048BF06
5F048BF07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】第1導電型の半導体基板に設けられ、第2導電型のベース領域を含むトランジスタ部と、半導体基板に設けられ、第2導電型のアノード領域を含むダイオード部と、半導体基板のおもて面側において、ダイオード部に設けられた第1トレンチコンタクトと、を有する半導体装置の製造方法であって、ダイオード部の逆回復損失とダイオード部の順方向電圧のトレードオフ条件を取得する段階と、半導体装置に要求されるターゲット特性を決定する段階と、ターゲット特性に応じた第1トレンチコンタクトの第1深さが、トレードオフ条件のうち、ターゲット特性を実現するための条件であるダイオード条件を満たすか否かを判定する段階と、第1トレンチコンタクトの深さが第1深さである半導体装置を製造する段階と、を備える。
【選択図】図8A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の半導体基板に設けられ、第2導電型のベース領域を含むトランジスタ部と、前記半導体基板に設けられ、第2導電型のアノード領域を含むダイオード部と、前記半導体基板のおもて面側において、前記ダイオード部に設けられた第1トレンチコンタクトと、を有する半導体装置の製造方法であって、
前記ダイオード部の逆回復損失と前記ダイオード部の順方向電圧のトレードオフ条件を取得する段階と、
前記半導体装置に要求されるターゲット特性を決定する段階と、
前記ターゲット特性に応じた前記第1トレンチコンタクトの第1深さが、前記トレードオフ条件のうち、前記ターゲット特性を実現するための条件であるダイオード条件を満たすか否かを判定する段階と、
前記第1トレンチコンタクトの深さが前記第1深さである前記半導体装置を製造する段階と、
を備える、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1深さが前記ダイオード条件を満たすか否かを判定する段階は、
前記アノード領域のドーピング濃度が第1ドーピング濃度である場合の前記ダイオード条件を取得する段階と、
前記第1深さが前記第1ドーピング濃度における前記ダイオード条件を満たすか否かを判定する段階と、
を有する、
請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1ドーピング濃度は、前記ベース領域のドーピング濃度である、
請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1深さが前記第1ドーピング濃度における前記ダイオード条件を満たす場合に、
前記半導体装置を製造する段階は、前記第1トレンチコンタクトの深さが前記第1深さである前記半導体装置を製造する段階を有し、
前記第1深さが前記第1ドーピング濃度における前記ダイオード条件を満たさない場合に、
前記第1深さが前記ダイオード条件を満たすか否かを判定する段階は、
前記アノード領域のドーピング濃度が前記第1ドーピング濃度よりも低い第2ドーピング濃度である場合の前記ダイオード条件を取得する段階と、
前記第1深さが前記第2ドーピング濃度における前記ダイオード条件を満たすか否かを判定する段階と、
を有する、
請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1深さが前記第2ドーピング濃度における前記ダイオード条件を満たす場合に、
前記半導体装置を製造する段階は、前記第1トレンチコンタクトの深さが前記第1深さである前記半導体装置を製造する段階を有し、
前記第1深さが前記第2ドーピング濃度における前記ダイオード条件を満たさない場合に、
前記第1深さが前記ダイオード条件を満たすか否かを判定する段階は、
前記アノード領域のドーピング濃度が前記第2ドーピング濃度よりも低い第3ドーピング濃度である場合の前記ダイオード条件を取得する段階と、
前記第1深さが前記第3ドーピング濃度における前記ダイオード条件を満たすか否かを判定する段階と、
を有する、
請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記半導体装置は、前記半導体基板のおもて面側において、前記トランジスタ部に設けられた第2トレンチコンタクトを有し、
前記第2トレンチコンタクトの深さと前記トランジスタ部の閾値電圧との関係を示す閾値条件を取得する段階と、
前記ターゲット特性に応じた前記第2トレンチコンタクトの第2深さが、前記閾値条件のうち、前記ターゲット特性を実現するための条件であるトランジスタ条件を満たすか否かを判定する段階と、を備え、
前記半導体装置を製造する段階は、前記第2トレンチコンタクトの深さが前記第2深さである前記半導体装置を製造する段階を有する、
請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記第1深さが前記ダイオード条件を満たすか否かを判定する段階は、
前記アノード領域のドーピング濃度が前記ベース領域のドーピング濃度である場合の前記ダイオード条件を取得する段階と、
第1深さが前記ベース領域のドーピング濃度における前記ダイオード条件を満たすか否かを判定する段階と、
を有する、
請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第2深さがトランジスタ条件を満たすか否かを判定する段階は、前記第1深さと同一となる前記第2深さが前記トランジスタ条件を満たすか否かを判定する段階を有する、
請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記第1深さが前記ダイオード条件を満たすか否かを判定する段階は、
前記アノード領域のドーピング濃度が前記ベース領域のドーピング濃度と異なる第1ドーピング濃度である場合の前記ダイオード条件を取得する段階と、
前記第1深さが前記第1ドーピング濃度における前記ダイオード条件を満たすか否かを判定する段階と、
を有する、
請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記第2深さがトランジスタ条件を満たすか否かを判定する段階は、前記第1深さと同一となる前記第2深さが前記トランジスタ条件を満たすか否かを判定する段階を有する、
請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記ダイオード条件は、予め定められた範囲の前記第1トレンチコンタクトの深さに応じた条件を含み、
前記第1深さが前記ダイオード条件を満たすか否かを判定する段階は、前記第1深さが前記予め定められた範囲に含まれるか否かを判定する段階を有する、
請求項1から10のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記第1深さは、0μm以上、1.0μm以下である、
請求項1から10のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記第1深さは、0.3μm以上、0.4μm以下である、
請求項1から10のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記アノード領域のドーピング濃度は、1e12/cm以上、1e14/cm以下である、
請求項1から10のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記半導体装置は、前記第1トレンチコンタクトの下方に設けられ、前記ベース領域よりもドーピング濃度の高い第2導電型のプラグコンタクト領域を有する、
請求項1から10のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記半導体装置は、前記ベース領域の上方に設けられた第1導電型のエミッタ領域を有し、
前記第2深さは、前記半導体基板の前記おもて面から前記エミッタ領域の下端までの深さよりも深い、
請求項6から10のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項17】
前記半導体装置は、前記第1トレンチコンタクトおよび前記第2トレンチコンタクトの下方に設けられ、前記ベース領域よりもドーピング濃度の高い第2導電型のプラグコンタクト領域を有する、
請求項6から10のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「FWD素子のスナップバックを抑制することのできる半導体装置」が記載されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2012-156564号公報
[特許文献2] 特開2016-154218号公報
[特許文献3] 特開2017-41601号公報
[特許文献4] 特開2021-144998号公報
【発明の概要】
【0003】
本発明の態様においては、第1導電型の半導体基板に設けられ、第2導電型のベース領域を含むトランジスタ部と、前記半導体基板に設けられ、第2導電型のアノード領域を含むダイオード部と、前記半導体基板のおもて面側において、前記ダイオード部に設けられた第1トレンチコンタクトと、を有する半導体装置の製造方法であって、前記ダイオード部の逆回復損失と前記ダイオード部の順方向電圧のトレードオフ条件を取得する段階と、
前記半導体装置に要求されるターゲット特性を決定する段階と、前記ターゲット特性に応じた前記第1トレンチコンタクトの第1深さが、前記トレードオフ条件のうち、前記ターゲット特性を実現するための条件であるダイオード条件を満たすか否かを判定する段階と、前記第1トレンチコンタクトの深さが前記第1深さである前記半導体装置を製造する段階と、を備える、半導体装置の製造方法を提供する。
【0004】
上記半導体装置の製造方法において、前記第1深さが前記ダイオード条件を満たすか否かを判定する段階は、前記アノード領域のドーピング濃度が第1ドーピング濃度である場合の前記ダイオード条件を取得する段階と、前記第1深さが前記第1ドーピング濃度における前記ダイオード条件を満たすか否かを判定する段階と、を有してよい。
【0005】
上記いずれかの半導体装置の製造方法において、前記第1ドーピング濃度は、前記ベース領域のドーピング濃度であってよい。
【0006】
上記いずれかの半導体装置の製造方法において、前記第1深さが前記第1ドーピング濃度における前記ダイオード条件を満たす場合に、前記半導体装置を製造する段階は、前記第1トレンチコンタクトの深さが前記第1深さである前記半導体装置を製造する段階を有し、前記第1深さが前記第1ドーピング濃度における前記ダイオード条件を満たさない場合に、前記第1深さが前記ダイオード条件を満たすか否かを判定する段階は、前記アノード領域のドーピング濃度が前記第1ドーピング濃度よりも低い第2ドーピング濃度である場合の前記ダイオード条件を取得する段階と、前記第1深さが前記第2ドーピング濃度における前記ダイオード条件を満たすか否かを判定する段階と、を有してよい。
【0007】
上記いずれかの半導体装置の製造方法において、前記第1深さが前記第2ドーピング濃度における前記ダイオード条件を満たす場合に、前記半導体装置を製造する段階は、前記第1トレンチコンタクトの深さが前記第1深さである前記半導体装置を製造する段階を有し、前記第1深さが前記第2ドーピング濃度における前記ダイオード条件を満たさない場合に、前記第1深さが前記ダイオード条件を満たすか否かを判定する段階は、前記アノード領域のドーピング濃度が前記第2ドーピング濃度よりも低い第3ドーピング濃度である場合の前記ダイオード条件を取得する段階と、前記第1深さが前記第3ドーピング濃度における前記ダイオード条件を満たすか否かを判定する段階と、を有してよい。
【0008】
上記いずれかの半導体装置の製造方法において、前記半導体装置は、前記半導体基板のおもて面側において、前記トランジスタ部に設けられた第2トレンチコンタクトを有し、前記第2トレンチコンタクトの深さと前記トランジスタ部の閾値電圧との関係を示す閾値条件を取得する段階と、前記ターゲット特性に応じた前記第2トレンチコンタクトの第2深さが、前記閾値条件のうち、前記ターゲット特性を満たすための条件であるトランジスタ条件を満たすか否かを判定する段階と、を備え、前記半導体装置を製造する段階は、前記第2トレンチコンタクトの深さが前記第2深さである前記半導体装置を製造する段階を有してよい。
【0009】
上記いずれかの半導体装置の製造方法において、前記第1深さが前記ダイオード条件を満たすか否かを判定する段階は、前記アノード領域のドーピング濃度が前記ベース領域のドーピング濃度である場合の前記ダイオード条件を取得する段階と、第1深さが前記ベース領域のドーピング濃度における前記ダイオード条件を満たすか否かを判定する段階と、を有してよい。
【0010】
上記いずれかの半導体装置の製造方法において、前記第2深さがトランジスタ条件を満たすか否かを判定する段階は、前記第1深さと同一となる前記第2深さが前記トランジスタ条件を満たすか否かを判定する段階を有してよい。
【0011】
上記いずれかの半導体装置の製造において、前記第1深さが前記ダイオード条件を満たすか否かを判定する段階は、前記アノード領域のドーピング濃度が前記ベース領域のドーピング濃度と異なる第1ドーピング濃度である場合の前記ダイオード条件を取得する段階と、前記第1深さが前記第1ドーピング濃度における前記ダイオード条件を満たすか否かを判定する段階と、を有してよい。
【0012】
上記いずれかの半導体装置の製造において、前記第2深さがトランジスタ条件を満たすか否かを判定する段階は、前記第1深さと同一となる前記第2深さが前記トランジスタ条件を満たすか否かを判定する段階を有してよい。
【0013】
上記いずれかの半導体装置の製造方法において、前記ダイオード条件は、予め定められた範囲の前記第1トレンチコンタクトの深さに応じた条件を含み、前記第1深さが前記ダイオード条件を満たすか否かを判定する段階は、前記第1深さが前記予め定められた範囲に含まれるか否かを判定する段階を有してよい。
【0014】
上記いずれかの半導体装置の製造方法において、前記第1深さは、0μm以上、1.0μm以下であってよい。
【0015】
上記いずれかの半導体装置の製造方法において、前記第1深さは、0.3μm以上、0.4μm以下であってよい。
【0016】
上記いずれかの半導体装置の製造方法において、前記アノード領域のドーピング濃度は、1e12/cm以上、1e14/cm以下であってよい。
【0017】
上記いずれかの半導体装置の製造方法において、前記半導体装置は、前記第1トレンチコンタクトの下方に設けられ、前記ベース領域よりもドーピング濃度の高い第2導電型のプラグコンタクト領域を有してよい。
【0018】
上記いずれかの半導体装置の製造方法において、前記半導体装置は、前記ベース領域の上方に設けられた第1導電型のエミッタ領域を有し、前記第2深さは、前記半導体基板のおもて面から前記エミッタ領域の下端までの深さよりも深くてよい。
【0019】
上記いずれかの半導体装置の製造方法において、前記半導体装置は、前記第1トレンチコンタクトおよび前記第2トレンチコンタクトの下方に設けられ、前記ベース領域よりもドーピング濃度の高い第2導電型のプラグコンタクト領域を有してよい。
【0020】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1A】半導体装置100の上面の一例を示す。
図1B図1Aにおけるa-a'断面の一例を示す。
図1C図1Bのb-b'断面におけるドーピング濃度分布の一例を示す。
図2】ダイオード部80の逆回復損失Errとダイオード部80の順方向電圧Vfのトレードオフ条件の一例を示す。
図3】第2トレンチコンタクト67の深さに対するトランジスタ部70の閾値電圧Vthの閾値条件の一例を示す。
図4A図1Aにおけるa-a'断面の変形例を示す。
図4B図4Aのc-c'断面におけるドーピング濃度分布の一例を示す。
図5A図1Aにおけるa-a'断面の変形例を示す。
図5B図5Aのd-d'断面におけるドーピング濃度分布の一例を示す。
図6A図1Aにおけるa-a'断面の変形例を示す。
図6B図6Aのe-e'断面におけるドーピング濃度分布の一例を示す。
図7A】第1トレンチコンタクト66の深さおよびアノード領域13のドーピング濃度とトレードオフ条件との関係の一例を示す。
図7B】第1トレンチコンタクト66の深さおよびアノード領域13のドーピング濃度とトレードオフ条件との関係の変形例を示す。
図8A】半導体装置100の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図8B図8AにおけるステップS120の一例を示すフローチャートである。
図9A】半導体装置100の製造方法の変形例を示すフローチャートである。
図9B図9AにおけるステップS300の一例を示すフローチャートである。
図9C図9AにおけるステップS300の変形例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0023】
本明細書においては半導体基板の深さ方向と平行な方向における一方の側を「上」、他方の側を「下」と称する。基板、層またはその他の部材の2つの主面のうち、一方の面を上面、他方の面を下面と称する。「上」、「下」の方向は、重力方向または半導体装置の実装時における方向に限定されない。
【0024】
本明細書では、X軸、Y軸およびZ軸の直交座標軸を用いて技術的事項を説明する場合がある。直交座標軸は、構成要素の相対位置を特定するに過ぎず、特定の方向を限定するものではない。例えば、Z軸は地面に対する高さ方向を限定して示すものではない。なお、+Z軸方向と-Z軸方向とは互いに逆向きの方向である。正負を記載せず、Z軸方向と記載した場合、+Z軸および-Z軸に平行な方向を意味する。
【0025】
本明細書では、半導体基板の上面および下面に平行な直交軸をX軸およびY軸とする。また、半導体基板の上面および下面と垂直な軸をZ軸とする。本明細書では、Z軸の方向を深さ方向と称する場合がある。また、本明細書では、X軸およびY軸を含めて、半導体基板の上面および下面に平行な方向を、水平方向と称する場合がある。
【0026】
本明細書において「同一」または「等しい」のように称した場合、製造ばらつき等に起因する誤差を有する場合も含んでよい。当該誤差は、例えば10%以内である。
【0027】
本明細書においては、不純物がドーピングされたドーピング領域の導電型をP型またはN型として説明している。本明細書においては、不純物とは、特にN型のドナーまたはP型のアクセプタのいずれかを意味する場合があり、ドーパントと記載する場合がある。本明細書においては、ドーピングとは、半導体基板にドナーまたはアクセプタを導入し、N型の導電型を示す半導体またはP型の導電型を示す半導体とすることを意味する。
【0028】
本明細書においてP+型またはN+型と記載した場合、P型またはN型よりもドーピング濃度が高いことを意味し、P-型またはN-型と記載した場合、P型またはN型よりもドーピング濃度が低いことを意味する。また、本明細書においてP++型またはN++型と記載した場合には、P+型またはN+型よりもドーピング濃度が高いことを意味する。また、本明細書においてP--型またはN--型と記載した場合には、P-型またはN-型よりもドーピング濃度が低いことを意味する。
【0029】
図1Aは、半導体装置100の上面の一例を示す。本例の半導体装置100は、トランジスタ部70およびダイオード部80を有する半導体チップである。ダイオード部80は、トランジスタ部70と隣接して形成される。例えば、半導体装置100は、逆導通絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(RC-IGBT:Reverse Conducting Insulated Gate Bipolar Transistor)である。図1Aにおいてはチップ端部周辺のチップ上面を示しており、他の領域を省略している。
【0030】
また、図1Aにおいては半導体装置100における半導体基板の活性領域を示すが、半導体装置100は、活性領域を囲んでエッジ終端構造部を有してよい。活性領域は、半導体装置100をオン状態に制御した場合に電流が流れる領域を指す。エッジ終端構造部は、半導体基板の上面側の電界集中を緩和する。エッジ終端構造部は、例えばガードリング、フィールドプレート、リサーフおよびこれらを組み合わせた構造を有する。
【0031】
半導体基板10は、第1導電型の半導体材料で形成された基板である。半導体基板10は、シリコン基板であってよく、炭化シリコン基板であってよく、窒化ガリウム等の窒化物半導体基板等であってもよい。本例の半導体基板10は、シリコン基板である。なお、本明細書で単に上面視と称した場合、半導体基板10の上面側から見ることを意味している。
【0032】
トランジスタ部70は、半導体基板10の裏面23側に設けられたコレクタ領域22を半導体基板10の上面に投影した領域である。コレクタ領域22については後述する。トランジスタ部70は、IGBT等のトランジスタを含む。本例では、トランジスタ部70はIGBTである。なお、トランジスタ部70は、MOSFET等の他のトランジスタであってもよい。
【0033】
ダイオード部80は、半導体基板10の裏面23側に設けられたカソード領域82を半導体基板10の上面に投影した領域である。カソード領域82については後述する。ダイオード部80は、半導体基板10の上面においてトランジスタ部70と隣接して設けられた還流ダイオード(FWD:Free Wheel Diode)等のダイオードを含む。
【0034】
本例の半導体装置100は、半導体基板10のおもて面21において、ゲートトレンチ部40と、ダミートレンチ部30と、エミッタ領域12と、アノード領域13と、ベース領域14と、コンタクト領域15と、ウェル領域17とを備える。おもて面21については後述する。また、本例の半導体装置100は、半導体基板10のおもて面21の上方に設けられたエミッタ電極52およびゲート金属層50を備える。
【0035】
エミッタ電極52は、ゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、エミッタ領域12、アノード領域13、ベース領域14、コンタクト領域15およびウェル領域17の上方に設けられている。また、ゲート金属層50は、ゲートトレンチ部40およびウェル領域17の上方に設けられている。
【0036】
エミッタ電極52およびゲート金属層50は、金属を含む材料で形成される。エミッタ電極52の少なくとも一部の領域は、アルミニウム(Al)等の金属、または、アルミニウム‐シリコン合金(AlSi)、アルミニウム‐シリコン‐銅合金(AlSiCu)等の金属合金で形成されてよい。ゲート金属層50の少なくとも一部の領域は、アルミニウム(Al)等の金属、または、アルミニウム‐シリコン合金(AlSi)、アルミニウム‐シリコン‐銅合金(AlSiCu)等の金属合金で形成されてよい。エミッタ電極52およびゲート金属層50は、アルミニウム等で形成された領域の下層にチタンやチタン化合物等で形成されたバリアメタルを有してよい。エミッタ電極52およびゲート金属層50は、互いに分離して設けられる。
【0037】
エミッタ電極52およびゲート金属層50は、層間絶縁膜38を挟んで、半導体基板10の上方に設けられる。層間絶縁膜38は、図1Aでは省略されている。層間絶縁膜38には、コンタクトホール55、コンタクトホール56およびコンタクトホール60が貫通して設けられている。
【0038】
コンタクトホール55は、ゲート金属層50とトランジスタ部70内のゲート導電部とを接続する。コンタクトホール55の内部には、タングステン等で形成されたプラグ金属層が形成されてもよい。
【0039】
コンタクトホール56は、エミッタ電極52とダミートレンチ部30内のダミー導電部とを接続する。コンタクトホール56の内部には、タングステン等で形成されたプラグ金属層が形成されてもよい。
【0040】
接続部25は、エミッタ電極52またはゲート金属層50等のおもて面側電極と、半導体基板10とを電気的に接続する。一例において、接続部25は、ゲート金属層50とゲート導電部との間に設けられる。接続部25は、エミッタ電極52とダミー導電部との間にも設けられている。接続部25は、不純物がドープされたポリシリコン等の、導電性を有する材料である。本例の接続部25は、N型の不純物がドープされたポリシリコン(N+)である。接続部25は、酸化膜等の絶縁膜等を介して、半導体基板10のおもて面21の上方に設けられる。
【0041】
ゲートトレンチ部40は、半導体基板10のおもて面21側において、予め定められた延伸方向に延伸した複数のトレンチ部の一例である。ゲートトレンチ部40は、予め定められた配列方向(本例ではX軸方向)に沿って予め定められた間隔で配列される。本例のゲートトレンチ部40は、半導体基板10のおもて面21に平行であって配列方向と垂直な延伸方向(本例ではY軸方向)に沿って延伸する2つの延伸部分41と、2つの延伸部分41を接続する接続部分43を有してよい。
【0042】
接続部分43は、少なくとも一部が曲線状に形成されることが好ましい。ゲートトレンチ部40の2つの延伸部分41の端部を接続することで、延伸部分41の端部における電界集中を緩和できる。ゲートトレンチ部40の接続部分43において、ゲート金属層50がゲート導電部と接続されてよい。
【0043】
ダミートレンチ部30は、半導体基板10のおもて面21側において、予め定められた延伸方向に延伸した複数のトレンチ部の一例である。ダミートレンチ部30は、エミッタ電極52と電気的に接続されたトレンチ部である。ダミートレンチ部30は、ゲートトレンチ部40と同様に、予め定められた配列方向(本例ではX軸方向)に沿って予め定められた間隔で配列される。本例のダミートレンチ部30は、半導体基板10のおもて面21においてI字形状を有するが、ゲートトレンチ部40と同様に、半導体基板10のおもて面21においてU字形状を有してよい。即ち、ダミートレンチ部30は、延伸方向に沿って延伸する2つの延伸部分31と、2つの延伸部分を接続する接続部分33を有してよい。
【0044】
本例のトランジスタ部70は、2つのゲートトレンチ部40と2つのダミートレンチ部30を繰り返し配列させた構造を有する。即ち、本例のトランジスタ部70は、1:1の比率でゲートトレンチ部40とダミートレンチ部30を有している。例えば、トランジスタ部70は、2本の延伸部分41の間に1本のダミートレンチ部30を有する。
【0045】
但し、ゲートトレンチ部40とダミートレンチ部30の比率は本例に限定されない。ゲートトレンチ部40とダミートレンチ部30の比率は、2:3であってもよく、2:4であってもよい。また、トランジスタ部70は、全てのトレンチ部をゲートトレンチ部40として、ダミートレンチ部30を有しなくてもよい。
【0046】
トランジスタ部70において、ダイオード部80と隣接する境界には、表面にエミッタ領域12が形成されない中間領域90を備える。また、トランジスタ部70において、中間領域90に隣接する部分には、複数のダミートレンチ部30が連続して配列されてよい。中間領域90に隣接する部分に形成されるダミートレンチ部30も、延伸部分31と接続部分33とを有してよい。
【0047】
ダイオード部80との境界において連続して配列されるダミートレンチ部30の数は、ダイオード部80と離れたトランジスタ部70の内側において連続して配列されるダミートレンチ部30の数よりも多くてよい。図1Aの例では、ダイオード部80との境界におけるトランジスタ部70(すなわち、中間領域90およびその隣接部分)では、接続部分33および延伸部分31を有するダミートレンチ部30が設けられている。図1Aの例では、接続部分33を介して接続された2本の延伸部分31が、延伸部分31の延伸方向とは垂直な配列方向に連続して配列されている。これに対して、トランジスタ部70の内側では、ゲートトレンチ部40の延伸部分41および直線形状のダミートレンチ部30が1本ずつ交互に配列されている。
【0048】
ウェル領域17は、後述するドリフト領域18よりも半導体基板10のおもて面21側に設けられた第2導電型の領域である。ウェル領域17は、半導体装置100のエッジ側に設けられるウェル領域の一例である。ウェル領域17は、一例としてP+型である。ウェル領域17は、ゲート金属層50が設けられる側の活性領域の端部から、予め定められた範囲で形成される。ウェル領域17の拡散深さは、ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の深さよりも深くてよい。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の、ゲート金属層50側の一部の領域は、ウェル領域17に形成される。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の延伸方向の端の底は、ウェル領域17に覆われてよい。
【0049】
コンタクトホール60は、トランジスタ部70において、エミッタ領域12およびコンタクト領域15の各領域の上方に形成される。コンタクトホール60は、ダイオード部80において、アノード領域13の上方に設けられる。コンタクトホール60は、中間領域90において、コンタクト領域15の上方に設けられる。いずれのコンタクトホール60も、Y軸方向両端に設けられたウェル領域17の上方には設けられていない。このように、層間絶縁膜には、1又は複数のコンタクトホール60が形成されている。1又は複数のコンタクトホール60は、延伸方向に延伸して設けられてよい。
【0050】
メサ部71は、トランジスタ部70において、ダミートレンチ部30またはゲートトレンチ部40の少なくとも1つに隣接して設けられる。メサ部71は、半導体基板10のおもて面21において、ウェル領域17と、エミッタ領域12と、ベース領域14と、コンタクト領域15とを有する。メサ部71では、エミッタ領域12およびコンタクト領域15が延伸方向において交互に設けられている。
【0051】
メサ部91は、中間領域90に設けられている。メサ部91は、半導体基板10のおもて面21において、コンタクト領域15を有する。本例のメサ部91は、Y軸方向の負側において、ベース領域14およびウェル領域17を有する。
【0052】
メサ部81は、ダイオード部80において、隣り合うダミートレンチ部30に挟まれた領域に設けられる。メサ部81は、半導体基板10のおもて面21において、アノード領域13を有する。本例のメサ部81は、Y軸方向の負側において、ベース領域14およびウェル領域17を有する。
【0053】
ベース領域14は、半導体基板10のおもて面21側に設けられた第2導電型の領域である。ベース領域14は、一例としてP-型である。ベース領域14は、半導体基板10のおもて面21において、メサ部71、メサ部81およびメサ部91のY軸方向における両端部に設けられてよい。なお、図1Aは、当該ベース領域14のY軸方向の一方の端部のみを示している。
【0054】
エミッタ領域12は、ベース領域14の上方に設けられた第1導電型の領域である。エミッタ領域12は、一例としてN+型である。本例のエミッタ領域12は、メサ部71のおもて面21において、ゲートトレンチ部40と接して設けられている。エミッタ領域12は、メサ部71を挟んだ2本のトレンチ部の一方から他方まで、X軸方向に延伸して設けられてよい。エミッタ領域12は、コンタクトホール60の下方にも設けられている。
【0055】
また、エミッタ領域12は、ダミートレンチ部30と接してもよいし、接しなくてもよい。本例のエミッタ領域12は、ダミートレンチ部30と接している。
【0056】
コンタクト領域15は、ベース領域14の上方に設けられ、ベース領域14よりもドーピング濃度の高い第2導電型の領域である。本例のコンタクト領域15は、一例としてP+型である。本例のコンタクト領域15は、メサ部71およびメサ部91のおもて面21に設けられている。コンタクト領域15は、メサ部71を挟んだ2本のトレンチ部の一方から他方まで、X軸方向に設けられてよい。コンタクト領域15は、ゲートトレンチ部40またはダミートレンチ部30と接してもよいし、接しなくてもよい。本例のコンタクト領域15は、ダミートレンチ部30およびゲートトレンチ部40と接している。コンタクト領域15は、コンタクトホール60の下方にも設けられている。
【0057】
アノード領域13は、半導体基板10のおもて面21に設けられた第2導電型の領域である。アノード領域13は、一例としてP-型である。アノード領域13は、メサ部81のおもて面21において、ダミートレンチ部30と接して設けられている。アノード領域13は、メサ部81を挟んだ2本のトレンチ部の一方から他方まで、X軸方向に延伸して設けられてよい。アノード領域13は、コンタクトホール60の下方にも設けられている。
【0058】
アノード領域のドーピング濃度は、1e12/cm以上、1e14/cm以下であってよい。アノード領域13のドーピング濃度は、ベース領域14のドーピング濃度よりも高くてよく、ベース領域14のドーピング濃度と同一であってよく、ベース領域14のドーピング濃度よりも低くてよい。本例のアノード領域13のドーピング濃度は、ベース領域14のドーピング濃度と同一である。アノード領域13のドーピング濃度がベース領域14のドーピング濃度と同一である場合、アノード領域13とベース領域14とは、同一のイオン注入工程で形成することができる。
【0059】
エミッタ領域12は、メサ部71に設けられているが、メサ部81およびメサ部91には設けられなくてよい。コンタクト領域15は、メサ部71およびメサ部91に設けられているが、メサ部81には設けられなくてよい。アノード領域13は、メサ部81に設けられているが、メサ部71およびメサ部91には設けられなくてよい。
【0060】
トランジスタ部70において、半導体基板10の裏面23には、P+型のコレクタ領域22が形成される。図1Aにおいては、コレクタ領域22が形成される領域を点線で示している。
【0061】
ダイオード部80において、半導体基板10の裏面23には、N+型のカソード領域82が形成される。図1Aにおいては、カソード領域82が形成される領域を点線で示している。半導体基板の下面と隣接する領域においてカソード領域82が形成されていない領域には、P+型のコレクタ領域22が形成されてよい。
【0062】
図1Bは、図1Aにおけるa-a'断面の一例を示す。a-a'断面は、トランジスタ部70において、エミッタ領域12を通過するXZ面である。本例の半導体装置100は、a-a'断面において、半導体基板10、層間絶縁膜38、エミッタ電極52およびコレクタ電極24を有する。エミッタ電極52は、半導体基板10および層間絶縁膜38の上方に形成される。
【0063】
ドリフト領域18は、半導体基板10に設けられた第1導電型の領域である。本例のドリフト領域18は、一例としてN-型である。ドリフト領域18は、半導体基板10において他のドーピング領域が形成されずに残存した領域であってよい。即ち、ドリフト領域18のドーピング濃度は半導体基板10のドーピング濃度であってよい。
【0064】
バッファ領域20は、ドリフト領域18よりも半導体基板10の裏面23側に設けられた第1導電型の領域である。本例のバッファ領域20は、一例としてN型である。バッファ領域20のドーピング濃度は、ドリフト領域18のドーピング濃度よりも高い。バッファ領域20は、ベース領域14の下面側から広がる空乏層が、第2導電型のコレクタ領域22に到達することを防ぐフィールドストップ層として機能してよい。
【0065】
コレクタ領域22は、トランジスタ部70において、バッファ領域20の下方に設けられる。コレクタ領域22は、第2導電型を有する。本例のコレクタ領域22は、一例としてP+型である。
【0066】
カソード領域82は、ダイオード部80において、バッファ領域20の下方に設けられる。コレクタ領域22とカソード領域82との境界は、トランジスタ部70とダイオード部80との境界である。即ち、本例の中間領域90の下方には、コレクタ領域22が設けられている。
【0067】
コレクタ電極24は、半導体基板10の裏面23に形成される。コレクタ電極24は、金属等の導電材料で形成される。
【0068】
ベース領域14は、トランジスタ部70において、ドリフト領域18の上方に設けられる。ベース領域14は、ゲートトレンチ部40に接して設けられる。ベース領域14は、ダミートレンチ部30に接して設けられてよい。
【0069】
エミッタ領域12は、メサ部71において、ベース領域14の上方に設けられる。エミッタ領域12は、メサ部71において、ベース領域14とおもて面21との間に設けられる。エミッタ領域12は、メサ部71において、ゲートトレンチ部40と接して設けられる。エミッタ領域12は、メサ部71において、ダミートレンチ部30と接してもよいし、接しなくてもよい。
【0070】
コンタクト領域15は、メサ部91において、ベース領域14の上方に設けられる。コンタクト領域15は、メサ部91において、ダミートレンチ部30に接して設けられる。
【0071】
蓄積領域16は、トランジスタ部70において、ドリフト領域18よりも半導体基板10のおもて面21側に設けられる第1導電型の領域である。本例の蓄積領域16は、一例としてN+型である。但し、蓄積領域16が設けられなくてもよい。本例の蓄積領域16は、ダイオード部80に設けられていないが、蓄積領域16は、ダイオード部80に設けられてもよい。
【0072】
また、蓄積領域16は、ゲートトレンチ部40に接して設けられる。蓄積領域16は、ダミートレンチ部30に接してもよいし、接しなくてもよい。蓄積領域16のドーピング濃度は、ドリフト領域18のドーピング濃度よりも高い。
【0073】
アノード領域13は、メサ部81において、ドリフト領域18の上方に設けられる。アノード領域13は、ダミートレンチ部30と接して設けられる。
【0074】
1つ以上のゲートトレンチ部40および1つ以上のダミートレンチ部30は、おもて面21に設けられる。各トレンチ部は、おもて面21からドリフト領域18まで設けられる。エミッタ領域12、アノード領域13、ベース領域14、コンタクト領域15および蓄積領域16の少なくともいずれかが設けられる領域においては、各トレンチ部はこれらの領域も貫通して、ドリフト領域18に到達する。トレンチ部がこれらの領域を貫通するとは、これらの領域を形成してからトレンチ部を形成する順序で製造したものに限定されない。トレンチ部を形成した後に、トレンチ部の間にこれらの領域を形成したものも、トレンチ部がこれらの領域を貫通したものに含まれる。
【0075】
ゲートトレンチ部40は、おもて面21に形成されたゲートトレンチ、ゲート絶縁膜42およびゲート導電部44を有する。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁を覆って形成される。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁の半導体を酸化または窒化して形成してよい。ゲート導電部44は、ゲートトレンチの内部においてゲート絶縁膜42よりも内側に形成される。ゲート絶縁膜42は、ゲート導電部44と半導体基板10とを絶縁する。ゲート導電部44は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。ゲートトレンチ部40は、おもて面21において層間絶縁膜38により覆われる。
【0076】
ゲート導電部44は、半導体基板10の深さ方向において、ゲート絶縁膜42を挟んでメサ部71側で隣接するベース領域14と対向する領域を含む。ゲート導電部44に所定の電圧が印加されると、ベース領域14のうちゲートトレンチに接する界面の表層に、電子の反転層によるチャネルが形成される。
【0077】
ダミートレンチ部30は、ゲートトレンチ部40と同一の構造を有してよい。ダミートレンチ部30は、おもて面21側に形成されたダミートレンチ、ダミー絶縁膜32およびダミー導電部34を有する。ダミー絶縁膜32は、ダミートレンチの内壁を覆って形成される。ダミー導電部34は、ダミートレンチの内部に形成され、且つ、ダミー絶縁膜32よりも内側に形成される。ダミー絶縁膜32は、ダミー導電部34と半導体基板10とを絶縁する。ダミートレンチ部30は、おもて面21において層間絶縁膜38により覆われる。
【0078】
層間絶縁膜38は、半導体基板10の上方に設けられる。本例の層間絶縁膜38は、おもて面21と接して設けられる。層間絶縁膜38の上方には、エミッタ電極52が設けられている。層間絶縁膜38には、エミッタ電極52と半導体基板10とを電気的に接続するための1又は複数のコンタクトホール60が設けられている。コンタクトホール55およびコンタクトホール56も同様に、層間絶縁膜38を貫通して設けられてよい。層間絶縁膜38は、BPSG(Boro‐phospho Silicate Glass)膜であってもよいし、BSG(borosilicate glass)膜であってもよいし、PSG(Phosphosilicate glass)膜であってもよいし、HTO膜であってもよいし、これらの材料を積層したものであってもよい。層間絶縁膜38の膜厚は、例えば1.0μmであるが、これに限定されない。
【0079】
本例の半導体装置100は、半導体基板のおもて面21側において、トレンチコンタクト部65を有する。トレンチコンタクト部65は、第1トレンチコンタクト66と、第2トレンチコンタクト67とを含む。
【0080】
トレンチコンタクト部65は、複数のトレンチ部のうち隣接する2つのトレンチ部の間において、半導体基板10のおもて面21側に設けられる。本例のトレンチコンタクト部65は、延伸方向に延伸して設けられる。トレンチコンタクト部65は、コンタクトホール60と、コンタクトホール60の内部に充填された金属層を有する。コンタクトホール60の内部は、エミッタ電極52と同一の材料で充填されてもよいし、エミッタ電極52と異なる材料で充填されてもよい。コンタクトホール60の内部は、タングステン、チタン、チタン合金、またはチタンシリサイド等が充填されてよい。
【0081】
本例におけるトレンチコンタクト部65は、コンタクトホール60に露出した半導体基板10に設けられた溝である。トレンチコンタクト部65の溝は、おもて面21に対して深さ方向に垂直な側壁を有してよく、おもて面21に対して予め定められた角度を備えた側壁を有してよい。本例のトレンチコンタクト部65の溝は、おもて面21に対して予め定められた角度を備えた側壁を有したテーパ形状となっている。
【0082】
第1トレンチコンタクト66は、半導体基板10のおもて面21側において、ダイオード部80に設けられる。第1トレンチコンタクト66の深さは、0μm以上、1.0μm以下であってよく、0.3μm以上、0.4μm以下であってよい。
【0083】
第2トレンチコンタクト67は、半導体基板10のおもて面21側において、トランジスタ部70に設けられる。第2トレンチコンタクトの深さは、半導体基板10のおもて面21からエミッタ領域12の下端までの深さよりも深くてよい。即ち、第2トレンチコンタクトは、エミッタ領域12を深さ方向に貫通して設けられてよい。
【0084】
第2トレンチコンタクト67の深さは、第1トレンチコンタクト66の深さと同一であってよく、第1トレンチコンタクト66の深さよりも深くてよく、第1トレンチコンタクト66の深さよりも浅くてよい。本例の第2トレンチコンタクト67の深さは、第1トレンチコンタクト66の深さと同一である。第1トレンチコンタクト66の深さと第2トレンチコンタクト67の深さとが同一である場合、第1トレンチコンタクト66と第2トレンチコンタクト67とは、同一の工程で形成することができる。
【0085】
プラグコンタクト領域19は、ベース領域14よりもドーピング濃度の高い第2導電型の領域である。本例のプラグコンタクト領域19は、トレンチコンタクト部65の下方の全面に設けられる。即ち、プラグコンタクト領域19は、第1トレンチコンタクト66および第2トレンチコンタクト67の両方の下方に設けられる。本例のプラグコンタクト領域19は、トレンチコンタクト部65に充填された金属層の下端と接して設けられる。プラグコンタクト領域19の下端は、第1トレンチコンタクト66の下方において、アノード領域13と接してよい。プラグコンタクト領域19の下端は、第2トレンチコンタクト67の下方において、ベース領域14と接してよい。プラグコンタクト領域19の上端の深さ位置は、半導体基板10の深さ方向において、トレンチコンタクト部65の底面よりもおもて面21側に位置してよい。即ち、プラグコンタクト領域19は、トレンチコンタクト部65の底面を覆うように設けられてよい。
【0086】
図1Cは、図1Bのb-b'断面におけるドーピング濃度分布の一例を示す。位置P0は半導体基板10のおもて面21の位置を表し、位置Pt1は第1トレンチコンタクト66の底面の深さ位置を表し、位置Paはアノード領域13の下端の深さ位置を表している。位置Paは、ドーピング濃度が、ドリフト領域18のドーピング濃度と同一となる位置であってよい。
【0087】
本例のアノード領域13は、半導体基板10の上面側からイオン注入をすることによって設けられる。アノード領域13は、注入されたイオンが拡散していくことによって形成されてよい。すなわち、アノード領域13におけるドーピング濃度分布は、半導体基板10のおもて面21の位置P0からアノード領域13の下端の深さ位置Paにかけて、徐々に低下していく分布であってよい。但し、アノード領域13におけるドーピング濃度分布は、これに限定されない。アノード領域13におけるドーピング濃度分布は、アノード領域13の中央付近においてピークを有する分布であってよく、アノード領域13の下端において最大となる分布であってもよい。
【0088】
ダイオード部80におけるホール電流は、第1トレンチコンタクト66の底面から主に流れる。すなわち、主として第1トレンチコンタクト66の底面からアノード領域13へホールが注入される。したがって、図1Cの斜線の領域で示した、第1トレンチコンタクト66の底面の深さ位置Pt1からアノード領域13の下端の深さ位置Paまでのドーピング濃度の積算量がダイオード部80の動作特性に影響してよい。
【0089】
第1トレンチコンタクト66の底面の深さ位置Pt1からアノード領域13の下端の深さ位置Paまでのドーピング濃度の積算量を小さくすると、注入されるホールの量が減少するので、ダイオード部80の逆回復損失Errを低減することができる。したがって、第1トレンチコンタクト66の底面の深さ位置を深くし、および/または、アノード領域13のドーピング濃度を低くすることで、Pt1からPaまでのドーピング濃度の積算量が減少するので、ダイオード部80の逆回復損失Errを低減することができる。一方、Pt1からPaまでのドーピング濃度の積算量が小さくなると、注入されるホールの量が減少するので、ダイオード部80の順方向電圧Vfは高くなる。
【0090】
第1トレンチコンタクト66の底面の深さ位置Pt1からアノード領域13の下端の深さ位置Paまでのドーピング濃度の積算量を大きくすると、注入されるホールの量が増加するので、ダイオード部80の順方向電圧Vfを低くすることができる。したがって、第1トレンチコンタクト66の底面の深さ位置を浅くし、および/または、アノード領域13のドーピング濃度を高くすることで、Pt1からPaまでのドーピング濃度の積算量が増加するので、ダイオード部80の順方向電圧Vfを低くすることができる。一方、Pt1からPaまでのドーピング濃度の積算量が大きくなると、注入されるホールの量が増加するので、ダイオード部80の逆回復損失Errは増加する。
【0091】
以上のように、ダイオード部80の逆回復損失Errとダイオード部80の順方向電圧Vfとは、トレードオフの関係にある。ダイオード部80の逆回復損失Errとダイオード部80の順方向電圧Vfのトレードオフの関係は、第1トレンチコンタクト66の深さによって制御されてよく、アノード領域13のドーピング濃度によって制御されてよく、第1トレンチコンタクト66の深さおよびアノード領域13のドーピング濃度によって制御されてよい。また、第1トレンチコンタクト66の深さは、アノード領域13のドーピング濃度分布、すなわち、Pt1からPaまでのドーピング濃度の積算量に応じて決定されてよい。
【0092】
図2は、ダイオード部80の逆回復損失Errとダイオード部80の順方向電圧Vfのトレードオフ条件の一例を示す。ダイオード部80の逆回復損失Errが増加するとダイオード部80の順方向電圧Vfは減少し、ダイオード部80の逆回復損失Errが減少するとダイオード部80の順方向電圧Vfは増加する。トレードオフ条件は、図2に示すようにグラフ形式で与えられてよく、関数式で与えられてよく、数値データ形式で与えられてよい。トレードオフ条件は、ダイオード部80の逆回復損失Errとダイオード部80の順方向電圧Vfとの関係を与えるものであれば、特に限定されない。
【0093】
半導体装置100の製造方法においては、トレードオフ条件のうち、ターゲット特性を実現するための条件であるダイオード条件を取得してよい。ターゲット特性は、半導体装置100に要求される特性であってよい。一例として、ターゲット特性は、ダイオード部80の逆回復損失Errの範囲を含んでよく、逆回復損失Errの下限値および/または上限値を含んでよい。別の例として、ターゲット特性は、ダイオード部80の順方向電圧Vfの範囲を含んでよく、下限値および/または上限値を含んでよい。本例のターゲット特性は、Errの上限値が10mJであり、かつ、Vfの上限値が2.3Vである。本例において、トレードオフ条件のうち、Errが10mJとなる点からVfが2.3Vとなる点までが、ターゲット特性を実現するための条件であるダイオード条件として取得されてよい。
【0094】
図3は、第2トレンチコンタクト67の深さに対するトランジスタ部70の閾値電圧Vthの閾値条件の一例を示す。トランジスタ部70の閾値電圧Vthは、第2トレンチコンタクト67の深さに対して単調に増加する。閾値条件は、図3に示すようにグラフ形式で与えられてよく、関数式で与えられてよく、数値データ形式で与えられてよい。閾値条件は、第2トレンチコンタクト67の深さとトランジスタ部70の閾値電圧Vthとの関係を与えるものであれば、特に限定されない。
【0095】
半導体装置100の製造方法においては、閾値条件のうち、ターゲット特性を実現するための条件であるトランジスタ条件を取得してよい。一例として、ターゲット特性は、トランジスタ部70の閾値電圧Vthの範囲を含んでよく、閾値電圧Vthの下限値および/または上限値を含んでよい。本例のターゲット特性は、閾値電圧Vthの上限値がVMである。また、トランジスタ条件は、予め定められた範囲の第2トレンチコンタクト67の深さに応じた条件を含んでよい。すなわち、トランジスタ条件は、第2トレンチコンタクト67の深さの範囲を含んでよく、第2トレンチコンタクト67の深さの下限値および/または上限値を含んでよい。本例のトランジスタ条件は、第2トレンチコンタクト67の深さの下限値がPeであるという条件を含む。なお、下限深さPeは、エミッタ領域の深さであってよい。すなわち、第2トレンチコンタクト67の深さは、半導体基板10のおもて面21からエミッタ領域12の下端までの深さよりも深くてよい。
【0096】
以上のように、第1トレンチコンタクト66の深さ、アノード領域13のドーピング濃度、および、第2トレンチコンタクト67の深さを適切に設計することで、ダイオード条件およびトランジスタ条件を満たし、半導体装置100に要求されるターゲット特性を実現することができる。なお、第1トレンチコンタクト66の深さおよびアノード領域13のドーピング濃度と、トレードオフ条件との関係の詳細については、後述する。
【0097】
図4Aは、図1Aにおけるa-a'断面の変形例を示す。本例のアノード領域13はP--型であり、アノード領域13のドーピング濃度がベース領域14のドーピング濃度と相違する点で、図1Bの例と相違する。本例では、図1Bの例と相違する点について特に説明し、その他は図1Bの例と同一であってよい。アノード領域13のドーピング濃度を低くすることで、ダイオード部80の逆回復損失Errを低減することができる。
【0098】
図4Bは、図4Aのc-c'断面におけるドーピング濃度分布の一例を示す。なお、図1Cの例におけるドーピング濃度分布は点線で示されている。アノード領域13のドーピング濃度を低くすることで、Pt1からPaまでのドーピング濃度の積算量が減少するので、ダイオード部80の逆回復損失Errを低減することができる。
【0099】
半導体装置100の製造方法においては、ダイオード条件およびトランジスタ条件を満たすために、トランジスタ部70とダイオード部80とが異なる製造工程を有してよい。すなわち、アノード領域13のドーピング濃度とベース領域14のドーピング濃度とは相違してよく、アノード領域13を形成するイオン注入工程とベース領域14を形成するイオン注入工程とが、別々に設けられてよい。
【0100】
図5Aは、図1Aにおけるa-a'断面の変形例を示す。本例のアノード領域13はP-型であるが、第1トレンチコンタクト66の深さが第2トレンチコンタクト67の深さよりも深い点で、図1Bの例と相違する。本例では、図1Bの例と相違する点について特に説明し、その他は図1Bの例と同一であってよい。第1トレンチコンタクト66の深さを深くすることで、ダイオード部80の逆回復損失Errを低減することができる。
【0101】
図5Bは、図5Aのd-d'断面におけるドーピング濃度分布の一例を示す。なお、図1Cの例における第1トレンチコンタクト66の深さはPt1'である。第1トレンチコンタクト66の深さを深くすることで、Pt1からPaまでのドーピング濃度の積算量が減少するので、ダイオード部80の逆回復損失Errを低減することができる。
【0102】
半導体装置100の製造方法においては、ダイオード条件およびトランジスタ条件を満たすために、トランジスタ部70とダイオード部80とが異なる製造工程を有してよい。すなわち、第1トレンチコンタクト66の深さと第2トレンチコンタクト67の深さとは相違してよく、第1トレンチコンタクト66の形成工程と第2トレンチコンタクト67の形成工程とが、別々に設けられてよい。
【0103】
図6Aは、図1Aにおけるa-a'断面の変形例を示す。本例のアノード領域13はP--型であり、アノード領域13のドーピング濃度がベース領域14のドーピング濃度と相違し、かつ、第1トレンチコンタクト66の深さが第2トレンチコンタクト67の深さよりも深い点で図1Bの例と相違する。本例では、図1Bの例と相違する点について特に説明し、その他は図1Bの例と同一であってよい。アノード領域13のドーピング濃度を低くし、かつ、第1トレンチコンタクト66の深さを深くすることで、ダイオード部80の逆回復損失Errを低減することができる。
【0104】
図6Bは、図6Aのe-e'断面におけるドーピング濃度分布の一例を示す。なお、図1Cの例におけるドーピング濃度分布は点線で示されており、図1Cの例における第1トレンチコンタクト66の深さはPt1'である。アノード領域13のドーピング濃度を低くし、かつ、第1トレンチコンタクト66の深さを深くすることで、Pt1からPaまでのドーピング濃度の積算量が減少するので、ダイオード部80の逆回復損失Errを低減することができる。
【0105】
半導体装置100の製造方法においては、ダイオード条件およびトランジスタ条件を満たすために、トランジスタ部70とダイオード部80とが異なる製造工程を有してよい。すなわち、アノード領域13のドーピング濃度とベース領域14のドーピング濃度とは相違してよく、アノード領域13を形成するイオン注入工程とベース領域14を形成するイオン注入工程とが、別々に設けられてよく、かつ、第1トレンチコンタクト66の深さと第2トレンチコンタクト67の深さとは相違してよく、第1トレンチコンタクト66の形成工程と第2トレンチコンタクト67の形成工程とが、別々に設けられてよい。
【0106】
図7Aは、第1トレンチコンタクト66の深さおよびアノード領域13のドーピング濃度とトレードオフ条件との関係の一例を示す。破線で示されたトレードオフ条件は、図2で示したトレードオフ条件と同一である。黒丸は、第1ドーピング濃度を表し、白丸は第2ドーピング濃度を表す。第2ドーピング濃度は、第1ドーピング濃度よりも低い。各点に示された0.15μm等の数値は、第1トレンチコンタクト66の深さを表す。
【0107】
アノード領域13が同一のドーピング濃度(例えば、第1ドーピング濃度)を有する場合、第1トレンチコンタクト66の深さが深くなるにつれて、ダイオード部80の逆回復損失Errを低減する方向に、トレードオフ条件を満たすように移動する。第1トレンチコンタクト66の深さが同一(例えば、0.15μm)である場合、アノード領域13のドーピング濃度が低下するにつれて、ダイオード部80の逆回復損失Errを低減する方向に、トレードオフ条件を満たすように移動する。
【0108】
本例において、第1ドーピング濃度におけるトレードオフ条件の範囲と第2ドーピング濃度におけるトレードオフ条件の範囲とは重複していないが、これらの範囲は重複してよい。例えば、第1ドーピング濃度において第1トレンチコンタクト66の深さが1.05μmの場合のトレードオフ条件は、第2ドーピング濃度において第1トレンチコンタクト66の深さが0.15μmの場合のトレードオフ条件に一致してよい。別の例として、第1ドーピング濃度において第1トレンチコンタクト66の深さが0.95μmの場合のトレードオフ条件は、第2ドーピング濃度において第1トレンチコンタクト66の深さが0.05μmの場合のトレードオフ条件に一致してよい。即ち、本例においては、予め定められた範囲の第1トレンチコンタクト66の深さのみを示している。このように、ダイオード条件は、予め定められた範囲の第1トレンチコンタクト66の深さに応じた条件を含んでよい。
【0109】
例えば、ターゲット特性として、Vf=2.3Vと決定した場合、第1ドーピング濃度におけるダイオード条件は、第1トレンチコンタクト66の深さが1.05μmである。該第1トレンチコンタクト66の深さは、予め定められた範囲(本例において、0.15μmから0.95μm)に含まれないので、第1トレンチコンタクト66の深さは、第1ドーピング濃度におけるダイオード条件を満たすことができない。そこで、第2ドーピング濃度におけるダイオード条件を取得すると、第1トレンチコンタクト66の深さが0.15μmでVf=2.3Vを満たすことができ、第1トレンチコンタクト66の深さが予め定められた範囲に含まれるので、アノード領域13のドーピング濃度が第2ドーピング濃度において第1トレンチコンタクト66の深さを0.15μmとすることで、ターゲット特性を実現する半導体装置100を製造することができる。
【0110】
図7Bは、第1トレンチコンタクト66の深さおよびアノード領域13のドーピング濃度とトレードオフ条件との関係の変形例を示す。本例は、予め定められた範囲の第1トレンチコンタクト66の深さが0.35μmから0.75μmであり、第3ドーピング濃度が含まれる点で、図7Aの例と相違する。第2ドーピング濃度は、第1ドーピング濃度よりも低く、第3ドーピング濃度は、第2ドーピング濃度よりも低い。図7Aの例と同様に、第1ドーピング濃度におけるダイオード条件、第2ドーピング濃度におけるダイオード条件、第3ドーピング濃度におけるダイオード条件の順に、ターゲット特性を実現するためのアノード領域13のドーピング濃度と第1トレンチコンタクト66の深さを設計してよい。
【0111】
以上の例においては、ドーピング濃度を冠する数字が大きくなるにつれてドーピング濃度が低くなる例を示したが、ドーピング濃度の大小関係はこれに限定されない。ドーピング濃度を冠する数字が大きくなるにつれてドーピング濃度が高くなってよく、ドーピング濃度を冠する数字とは無関係に、ドーピング濃度が変更されてよい。また、以上の例においては、予め定められた範囲の第1トレンチコンタクト66の深さが0.15μmから0.95μmおよび0.35μmから0.75μmである例を示したが、予め定められた範囲の第1トレンチコンタクト66の深さはこれに限定されない。予め定められた範囲の第1トレンチコンタクト66の深さは、0μm以上、1.0μm以下であってよく、0.3μm以上、0.4μm以下であってよい。さらに、以上の例では、あるドーピング濃度におけるダイオード条件を取得してから、該ドーピング濃度における第1トレンチコンタクト66の深さについて判定することを説明したが、第1トレンチコンタクト66の深さにおけるダイオード条件を取得してから、該深さにおけるアノード領域13のドーピング濃度について判定してもよい。
【0112】
図8Aは、半導体装置100の製造方法の一例を示すフローチャートである。本例は、半導体装置100の製造方法の一例を示しており、これに限定されない。
【0113】
ステップS100において、ダイオード部80の逆回復損失Errとダイオード部80の順方向電圧Vfのトレードオフ条件を取得する。トレードオフ条件は、予め実験によって取得されてよく、予めシミュレーションによって取得されてよい。トレードオフ条件は、アノード領域13のドーピング濃度および第1トレンチコンタクト66の深さと関連付けて取得されてよい。
【0114】
ステップS110において、半導体装置100に要求されるターゲット特性を決定する。一例として、ターゲット特性は、ダイオード部80の逆回復損失Errの範囲を含んでよく、逆回復損失Errの下限値および/または上限値を含んでよい。別の例として、ターゲット特性は、ダイオード部80の順方向電圧Vfの範囲を含んでよく、下限値および/または上限値を含んでよい。
【0115】
なお、トレードオフ条件を取得する段階(S100)とターゲット特性を決定する段階(S110)との先後は問わない。ターゲット特性を決定した後に、トレードオフ条件を取得してもよい。
【0116】
ステップS120において、ターゲット特性に応じた第1トレンチコンタクト66の第1深さが、トレードオフ条件のうち、ターゲット特性を実現するための条件であるダイオード条件を満たすか否かを判定する。第1深さは、第1トレンチコンタクト66の設計深さであって、ダイオード条件を満たすか否かを判定する対象となる深さである。すなわち、第1深さは実際に製造される半導体装置100における第1トレンチコンタクト66の深さであるとは限らない。例えば、S120において第1深さがダイオード条件を満たすと判定された場合、第1トレンチコンタクト66の深さが第1深さである半導体装置100が製造されてよく、S120において第1深さがダイオード条件を満たさないと判定された場合、第1深さがダイオード条件を満たすと判定されるまで、第1深さが異なる深さに変更されてよく、アノード領域13のドーピング濃度が異なるドーピング濃度に変更されてよい。第1深さがダイオード条件を満たさないと判定される場合を含むS120のフローチャートの一例については、後述する。
【0117】
図7Aおよび図7Bに関連付けて説明したように、ダイオード条件は、予め定められた範囲の第1トレンチコンタクト66の深さに応じた条件を含んでよい。この場合、第1深さがダイオード条件を満たすか否かを判定する段階(S120)は、第1深さが予め定められた範囲に含まれるか否かを判定する段階を有してよい。
【0118】
ステップS130において、第1トレンチコンタクト66の深さが第1深さである半導体装置100を製造する。第1深さは、ダイオード条件を満たすと判定された第1深さであってよい。第1トレンチコンタクト66の深さが第1深さである半導体装置100は、当業者によって通常行われる方法により製造されることができる。第1トレンチコンタクト66の深さが第1深さとなる半導体装置100を製造することができる製造方法であれば、半導体装置100の製造方法は限定されない。
【0119】
本例の半導体装置100の製造方法において、第1トレンチコンタクト66の第1深さがダイオード条件を満たすか否かを判定する段階(S120)を備えることで、トレードオフ条件のうち予め定められたターゲット特性を実現する半導体装置100を有効に製造することができる。すなわち、アノード領域13のドーピング濃度の調整のみによってターゲット特性を実現する半導体装置100を製造する場合と比較して、より高い自由度で半導体装置100を製造することができる。また、第1トレンチコンタクト66の深さを調整する場合、エッチング工程におけるエッチング深さを変更すればよいので、イオン注入エネルギーや注入するイオン濃度を調整する必要のあるアノード領域13のドーピング濃度を調整する場合と比較して、容易に設計変更を適用することができる。さらに、第1トレンチコンタクト66の深さを調整する場合、アノード領域13のドーピング濃度を調整する場合に必要となり得るイオン注入装置の変更を回避することができ、アノード領域13のドーピング濃度が低くなった場合の製造バラツキを低減することができる。
【0120】
図8Bは、図8AにおけるステップS120の一例を示すフローチャートである。本例は、ステップS120の一例を示しており、これに限定されない。
【0121】
第1深さがダイオード条件を満たすか否かを判定する段階(S120)は、アノード領域13のドーピング濃度が第iドーピング濃度である場合のダイオード条件を取得する段階(S122)と、第1深さが第iドーピング濃度におけるダイオード条件を満たすか否かを判定する段階(S124)とを有してよい。第iドーピング濃度は、アノード領域13のドーピング濃度の設計ドーピング濃度であって、ダイオード条件を満たすか否かを判定する対象となるドーピング濃度である。すなわち、第iドーピング濃度は実際に製造される半導体装置100におけるアノード領域13のドーピング濃度であるとは限らない。例えば、S124において、第1深さがS122において取得された第iドーピング濃度におけるダイオード条件を満たすと判定された場合、アノード領域13のドーピング濃度が第iドーピング濃度である半導体装置100が製造されてよく、S124において、第1深さが第iドーピング濃度におけるダイオード条件を満たさないと判定された場合、第1深さがダイオード条件を満たすと判定されるまで、アノード領域13のドーピング濃度が異なるドーピング濃度に変更されてよい。すなわち、S122とS124は、S124において第1深さが第iドーピング濃度におけるダイオード条件を満たすと判定されるまで、繰り返し行われてよい。
【0122】
より具体的には、第1深さがダイオード条件を満たすか否かを判定する段階(S120)は、アノード領域13のドーピング濃度が第1ドーピング濃度である場合のダイオード条件を取得する段階と、第1深さが第1ドーピング濃度におけるダイオード条件を満たすか否かを判定する段階とを有してよい。一例として、第1ドーピング濃度は、ベース領域14のドーピング濃度である。アノード領域13のドーピング濃度がベース領域14のドーピング濃度と同一である場合、アノード領域13とベース領域14とは、同一のイオン注入工程で形成されることができる。したがって、第1ドーピング濃度としてベース領域14のドーピング濃度を採用することで、アノード領域13とベース領域14とを同一のイオン注入工程で形成することができる半導体装置100を優先的に設計することができる。
【0123】
第1深さが第1ドーピング濃度におけるダイオード条件を満たす場合に、半導体装置100を製造する段階(S130)は、第1トレンチコンタクト66の深さが第1深さである半導体装置100を製造する段階を有してよい。すなわち、S124で第1深さが第1ドーピング濃度におけるダイオード条件を満たすと判定された場合、図8Bにおいて示されたS120は終了し、図8Aにおける第1トレンチコンタクト66の深さが第1深さである半導体装置100を製造する段階(S130)に進んでよく、第1トレンチコンタクト66の深さがダイオード条件を満たすと判定された第1深さである半導体装置100を製造してよい。
【0124】
第1深さが第1ドーピング濃度におけるダイオード条件を満たさない場合に、第1深さがダイオード条件を満たすか否かを判定する段階(S120)は、アノード領域13のドーピング濃度が第1ドーピング濃度よりも低い第2ドーピング濃度である場合のダイオード条件を取得する段階(S122)と、第1深さが第2ドーピング濃度におけるダイオード条件を満たすか否かを判定する段階(S124)とを有してよい。すなわち、S124において第1深さが第1ドーピング濃度におけるダイオード条件を満たさないと判定された場合には、S122に戻り、第1ドーピング濃度とは異なるドーピング濃度である第2ドーピング濃度におけるダイオード条件を取得し、再びS124に進み、第1深さが第2ドーピング濃度におけるダイオード条件を満たすか否かを判定してよい。
【0125】
第2ドーピング濃度は、第1ドーピング濃度よりも低くてよく、第1ドーピング濃度よりも高くてよい。本例の第2ドーピング濃度は、第1ドーピング濃度よりも低い。アノード領域13のドーピング濃度が低くなると、ダイオード部80の逆回復損失Errは減少し、アノード領域13のドーピング濃度が高くなると、ダイオード部80の逆回復損失Errは増加する。また、アノード領域13のドーピング濃度が低くなると、ダイオード部80の順方向電圧Vfは増加し、アノード領域13のドーピング濃度が高くなると、ダイオード部80の順方向電圧Vfは減少する。したがって、第1深さが第1ドーピング濃度におけるダイオード条件を満たさない場合であって、該第1深さにおけるダイオード部80の逆回復損失Errがターゲット特性である逆回復損失Errを超過する場合には、第2ドーピング濃度は第1ドーピング濃度よりも低く設定されてよく、該第1深さにおけるダイオード部80の順方向電圧Vfがターゲット特性である順方向電圧Vfを超過する場合には、第2ドーピング濃度は第1ドーピング濃度よりも高く設定されてよい。
【0126】
第1深さが第2ドーピング濃度におけるダイオード条件を満たす場合に、半導体装置100を製造する段階(S130)は、第1トレンチコンタクト66の深さが第1深さである半導体装置100を製造する段階を有してよい。すなわち、S124で第1深さが第2ドーピング濃度におけるダイオード条件を満たすと判定された場合、図8Bにおいて示されたS120は終了し、図8Aにおける第1トレンチコンタクト66の深さが第1深さである半導体装置100を製造する段階(S130)に進んでよく、第1トレンチコンタクト66の深さがダイオード条件を満たすと判定された第1深さである半導体装置100を製造してよい。
【0127】
第1深さが第2ドーピング濃度におけるダイオード条件を満たさない場合に、第1深さがダイオード条件を満たすか否かを判定する段階(S120)は、アノード領域13のドーピング濃度が第2ドーピング濃度よりも低い第3ドーピング濃度である場合のダイオード条件を取得する段階(S122)と、第1深さが第3ドーピング濃度におけるダイオード条件を満たすか否かを判定する段階(S124)とを有してよい。すなわち、S124において第1深さが第2ドーピング濃度におけるダイオード条件を満たさないと判定された場合には、S122に戻り、第2ドーピング濃度とは異なるドーピング濃度である第3ドーピング濃度におけるダイオード条件を取得し、再びS124に進み、第1深さが第3ドーピング濃度におけるダイオード条件を満たすか否かを判定してよい。第3ドーピング濃度は、第2ドーピング濃度よりも低くてよく、第2ドーピング濃度よりも高くてよい。本例の第3ドーピング濃度は、第2ドーピング濃度よりも低い。
【0128】
以上のように、S122とS124は、S124において第1深さが第iドーピング濃度におけるダイオード条件を満たすと判定されるまで、繰り返し行われてよい。以上の例においては、第3ドーピング濃度におけるダイオード条件を取得し、判定する段階までを説明したが、同様に第4ドーピング濃度、第5ドーピング濃度、・・・、と第1深さが第iドーピング濃度におけるダイオード条件を満たすと判定されるまで、繰り返し行われてよい。また、以上の例においては、ドーピング濃度を冠する数字が大きくなるにつれてドーピング濃度が低くなる例を示したが、ドーピング濃度の大小関係はこれに限定されない。ドーピング濃度を冠する数字が大きくなるにつれてドーピング濃度が高くなってよく、ドーピング濃度を冠する数字とは無関係に、ドーピング濃度が変更されてよい。さらに、以上の例においては、第iドーピング濃度におけるダイオード条件を取得してから、該ドーピング濃度における第1トレンチコンタクト66の深さについて判定することを説明したが、第1トレンチコンタクト66の深さにおけるダイオード条件を取得してから、該深さにおけるアノード領域13のドーピング濃度について判定してもよい。
【0129】
図9Aは、半導体装置100の製造方法の変形例を示すフローチャートである。本例のフローチャートは、ダイオード条件とともにトランジスタ条件を考慮する点で、図8Aの例と相違する。本例では、図8Aの例と相違する点について特に説明し、その他は図8Aの例と同一であってよい。
【0130】
ステップS210において、第2トレンチコンタクト67の深さとトランジスタ部70の閾値電圧Vthとの関係を示す閾値条件を取得する。閾値条件は、予め実験によって取得されてよく、予めシミュレーションによって取得されてよい。なお、トレードオフ条件を取得する段階(S200)と、閾値条件を取得する段階(S210)と、ターゲット特性を決定する段階(S220)との順序は問わない。
【0131】
ステップS240において、ターゲット特性に応じた第2トレンチコンタクト67の第2深さが、閾値条件のうち、ターゲット特性を満たすための条件であるトランジスタ条件を満たすか否かを判定する。第2深さは、第2トレンチコンタクト67の設計深さであって、トランジスタ条件を満たすか否かを判定する対象となる深さである。すなわち、第2深さは実際に製造される半導体装置100における第2トレンチコンタクト67の深さであるとは限らない。例えば、S240において第2深さがトランジスタ条件を満たすと判定された場合、第2トレンチコンタクト67の深さが第2深さである半導体装置100が製造されてよい。
【0132】
第1深さがダイオード条件を満たすか否かを判定する段階(S230)と第2深さがトランジスタ条件を満たすか否かを判定する段階(S240)との先後は問わない。第2深さがトランジスタ条件を満たすか否かを判定した後で、第1深さがダイオード条件を満たすか否かを判定してよく、第1深さがダイオード条件を満たすか否かを判定すると同時に第2深さがトランジスタ条件を満たすか否かを判定してよい。第1深さがダイオード条件を満たすか否かを判定する段階(S230)と第2深さがトランジスタ条件を満たすか否かを判定する段階(S240)とを組み合わせて行う段階(S300)については、後述する。
【0133】
半導体装置を製造する段階(S250)は、第2トレンチコンタクト67の深さが第2深さである半導体装置100を製造する段階を有してよい。すなわち、半導体装置を製造する段階(S250)は、図8Aにおける半導体装置を製造する段階(S130)と同様に第1トレンチコンタクト66の深さが第1深さである半導体装置100を製造する段階を有してよく、かつ、第2トレンチコンタクト67の深さが第2深さである半導体装置100を製造する段階を有してよい。
【0134】
図9Bは、図9AにおけるステップS300の一例を示すフローチャートである。本例は、ステップS300の一例を示しており、これに限定されない。
【0135】
ステップS302で、アノード領域13のドーピング濃度とベース領域14のドーピング濃度とが同一のドーピング濃度であり、かつ、第1トレンチコンタクト66の深さと第2トレンチコンタクト67の深さとが同一である設計をする。すなわち、第1深さがダイオード条件を満たすか否かを判定する段階(S230)は、アノード領域13のドーピング濃度がベース領域14のドーピング濃度である場合のダイオード条件を取得する段階と、第1深さがベース領域14のドーピング濃度におけるダイオード条件を満たすか否かを判定する段階を有してよく、第2深さがトランジスタ条件を満たすか否かを判定する段階(S240)は、第1深さと同一となる第2深さがトランジスタ条件を満たすか否かを判定する段階を有してよい。
【0136】
アノード領域13のドーピング濃度がベース領域14のドーピング濃度と同一である場合、アノード領域13とベース領域14とは、同一のイオン注入工程で形成されることができる。また、第1トレンチコンタクト66の深さと第2トレンチコンタクト67の深さとが同一である場合、第1トレンチコンタクト66と第2トレンチコンタクト67とは、同一の工程で製造することができる。
【0137】
ステップ304で、アノード領域13のドーピング濃度とベース領域14のドーピング濃度とが同一のドーピング濃度であり、かつ、第1トレンチコンタクト66の深さと第2トレンチコンタクト67の深さとが相違する設計をする。すなわち、第1深さがダイオード条件を満たすか否かを判定する段階(S230)は、アノード領域13のドーピング濃度がベース領域14のドーピング濃度である場合のダイオード条件を取得する段階と、第1深さがベース領域14のドーピング濃度におけるダイオード条件を満たすか否かを判定する段階を有してよく、第2深さがトランジスタ条件を満たすか否かを判定する段階(S240)は、第1深さと相違する第2深さがトランジスタ条件を満たすか否かを判定する段階を有してよい。
【0138】
アノード領域13のドーピング濃度がベース領域14のドーピング濃度と同一である場合、アノード領域13とベース領域14とは、同一のイオン注入工程で形成されることができる。
【0139】
ステップS306で、アノード領域13のドーピング濃度とベース領域14のドーピング濃度とが相違するドーピング濃度であり、かつ、第1トレンチコンタクト66の深さと第2トレンチコンタクト67の深さとが同一である設計をする。すなわち、第1深さがダイオード条件を満たすか否かを判定する段階(S230)は、アノード領域13のドーピング濃度がベース領域14のドーピング濃度と異なる第1ドーピング濃度である場合のダイオード条件を取得する段階と、第1深さが第1ドーピング濃度におけるダイオード条件を満たすか否かを判定する段階とを有してよく、第2深さがトランジスタ条件を満たすか否かを判定する段階(S240)は、第1深さと同一となる第2深さがトランジスタ条件を満たすか否かを判定する段階を有してよい。
【0140】
第1トレンチコンタクト66の深さと第2トレンチコンタクト67の深さとが同一である場合、第1トレンチコンタクト66と第2トレンチコンタクト67とは、同一の工程で製造することができる。
【0141】
ステップS308で、アノード領域13のドーピング濃度とベース領域14のドーピング濃度とが相違するドーピング濃度であり、かつ、第1トレンチコンタクト66の深さと第2トレンチコンタクト67の深さとが相違する設計をする。すなわち、第1深さがダイオード条件を満たすか否かを判定する段階(S230)は、アノード領域13のドーピング濃度がベース領域14のドーピング濃度と異なる第1ドーピング濃度である場合のダイオード条件を取得する段階と、第1深さが第1ドーピング濃度におけるダイオード条件を満たすか否かを判定する段階とを有してよく、第2深さがトランジスタ条件を満たすか否かを判定する段階(S240)は、第1深さと相違する第2深さがトランジスタ条件を満たすか否かを判定する段階を有してよい。
【0142】
ステップS302からステップS308の順序は、これに限定されない。一例として、ステップS306はステップS304の前に行われてよい。ステップ302の設計は、イオン注入工程およびトレンチコンタクト形成工程を同一にすることができる最も効率的な製造方法であるので、他のステップに先行して行われてよい。
【0143】
図9Cは、図9AにおけるステップS300の変形例を示すフローチャートである。本例のフローチャートは、図9Bのフローチャートをより具体的に示す一例であってよい。
【0144】
ステップS350において、アノード領域13のドーピング濃度がベース領域14のドーピング濃度である場合のダイオード条件を取得し、ステップS352において、第1深さがベース領域14のドーピング濃度におけるダイオード条件を満たすか否かを判定する。ステップS350およびステップS352は、ステップS302および/またはステップS304に対応し、アノード領域13のドーピング濃度とベース領域14のドーピング濃度とが同一のドーピング濃度であるという条件を課してよい。
【0145】
第1深さがベース領域14のドーピング濃度におけるダイオード条件を満たす場合(YES)、アノード領域13のドーピング濃度とベース領域14のドーピング濃度とが同一のドーピング濃度であるという条件を満たすことができるので、ステップ354に進む。第1深さがベース領域14のドーピング濃度におけるダイオード条件を満たさない場合(NO)、アノード領域13のドーピング濃度とベース領域14のドーピング濃度とが同一のドーピング濃度であるという条件を満たすことができないので、ステップ356に進む。
【0146】
ステップS354において、第1深さと同一となる第2深さがトランジスタ条件を満たすか否かを判定する。ステップS354は、ステップS302に対応し、第1トレンチコンタクト66の深さと第2トレンチコンタクト67の深さとが同一であるという条件を課してよい。
【0147】
第1深さと同一となる第2深さがトランジスタ条件を満たす場合(YES)、アノード領域13のドーピング濃度とベース領域14のドーピング濃度とが同一のドーピング濃度であり、かつ、第1トレンチコンタクト66の深さと第2トレンチコンタクト67の深さとが同一である設計が完了し、ステップS300は終了する。第1深さと同一となる第2深さがトランジスタ条件を満たさない場合(NO)、第1トレンチコンタクト66の深さと第2トレンチコンタクト67の深さとが同一であるという条件を満たすことができないので、ステップS362に進む。
【0148】
ステップS356において、アノード領域13のドーピング濃度がベース領域14のドーピング濃度と異なる第iドーピング濃度である場合のダイオード条件を取得し、ステップS358において、第1深さが第iドーピング濃度におけるダイオード条件を満たすか否かを判定する。ステップS356およびステップS358は、ステップS306および/またはステップS308に対応し、アノード領域13のドーピング濃度とベース領域14のドーピング濃度とが相違するドーピング濃度であるという条件を課してよい。ステップS356およびステップS358は、図8BにおけるステップS122およびステップS124にそれぞれ対応してよく、繰り返し行われてよい。ステップS356およびステップS358が1回または繰り返し行われた結果、第1深さが第iドーピング濃度におけるダイオード条件を満たす場合(YES)、ステップS360に進む。
【0149】
ステップS360において、第1深さと同一となる第2深さがトランジスタ条件を満たすか否かを判定する。ステップS360は、ステップS306に対応し、第1トレンチコンタクト66の深さと第2トレンチコンタクトの深さとが同一であるという条件を課してよい。
【0150】
第1深さと同一となる第2深さがトランジスタ条件を満たす場合(YES)、アノード領域13のドーピング濃度とベース領域14のドーピング濃度とが相違するドーピング濃度であり、かつ、第1トレンチコンタクト66の深さと第2トレンチコンタクト67の深さとが同一である設計が完了し、ステップS300は終了する。第1深さと同一となる第2深さがトランジスタ条件を満たさない場合(NO)、第1トレンチコンタクト66の深さと第2トレンチコンタクト67の深さとが同一であるという条件を満たすことができないので、ステップS362に進む。
【0151】
ステップ362において、トランジスタ条件を満たす第2深さを決定する。トランジスタ条件は閾値条件を介して、第2トレンチコンタクト67の深さのみを拘束する条件である。すなわち、第2深さが第1深さと同一であるという条件がなく、独立して第2深さを決定することができる場合、トランジスタ条件を満たす第2深さが必ず存在してよい。ステップS362は、ステップS304および/またはステップS308に対応し、第1トレンチコンタクト66の深さと第2トレンチコンタクト67の深さとが相違するという条件を満たしてよい。
【0152】
以上のように、本例のフローチャートに基づけば、図9Bのフローチャートにおけるいずれかの設計をもたらすことができる。ただし、本例のフローチャートは、ステップS300の一例を示しており、これに限定されない。
【0153】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0154】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0155】
10・・・半導体基板、12・・・エミッタ領域、13・・・アノード領域、14・・・ベース領域、15・・・コンタクト領域、16・・・蓄積領域、17・・・ウェル領域、18・・・ドリフト領域、19・・・プラグコンタクト領域、20・・・バッファ領域、21・・・おもて面、22・・・コレクタ領域、23・・・裏面、24・・・コレクタ電極、25・・・接続部、・・・30・・・ダミートレンチ部、31・・・延伸部分、32・・・ダミー絶縁膜、33・・・接続部分、34・・・ダミー導電部、38・・・層間絶縁膜、40・・・ゲートトレンチ部、41・・・延伸部分、42・・・ゲート絶縁膜、43・・・接続部分、44・・・ゲート導電部、50・・・ゲート金属層、52・・・エミッタ電極、55・・・コンタクトホール、56・・・コンタクトホール、60・・・コンタクトホール、65・・・トレンチコンタクト部、66・・・第1トレンチコンタクト、67・・・第2トレンチコンタクト、70・・・トランジスタ部、71・・・メサ部、80・・・ダイオード部、81・・・メサ部、82・・・カソード領域、90・・・中間領域、91・・・メサ部、100・・・半導体装置
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C