(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107582
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】飲料
(51)【国際特許分類】
A23L 2/38 20210101AFI20240802BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20240802BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20240802BHJP
A23L 27/20 20160101ALI20240802BHJP
A23L 33/10 20160101ALN20240802BHJP
A23L 27/00 20160101ALN20240802BHJP
【FI】
A23L2/38 H
A23L2/00 B
A23L2/00 F
A23L2/52
A23L27/20 D
A23L33/10
A23L27/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011586
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】592262543
【氏名又は名称】日本メナード化粧品株式会社
(72)【発明者】
【氏名】加藤 怜
(72)【発明者】
【氏名】洲嵜 真一
【テーマコード(参考)】
4B018
4B047
4B117
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018MD07
4B018MD08
4B018MD09
4B018MD10
4B018MD18
4B018MD20
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4B018MD64
4B018ME10
4B047LB08
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4B117LC03
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4B117LK06
4B117LK08
4B117LK12
4B117LK15
4B117LL01
(57)【要約】
【課題】 本発明は、シトロネロールとプロピオン酸エチルを含有することによる霊芝胞子油の不快味、不快臭を低減した飲料並びにシトロネロールとプロピオン酸エチルを含有することによる霊芝胞子油の不快味、不快臭を改善する方法を提供する。
【解決手段】
成分(A)霊芝胞子油を含有し、
下記成分(B)、(C):
(B)シトロネロール
(C)プロピオン酸エチル
を含有することで、霊芝胞子油の不快味、不快臭を低減させることを特徴とする飲料を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A)霊芝胞子油を含有し、
下記成分(B)、(C):
(B)シトロネロール
(C)プロピオン酸エチル
を含有することを特徴とする飲料
【請求項2】
成分(A)~(C)の含有量が、
(A)霊芝胞子油 1w/v%以下
(B)シトロネロール 0.0001~0.01w/v%
(C)プロピオン酸エチル 0.0005~0.01w/v%
であることを特徴とする請求項1に記載の飲料
【請求項3】
シトロネロール及びプロピオン酸エチルを含有することによる霊芝胞子油の不快味、不快臭を低減する方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、霊芝胞子油の不快味、不快臭を低減させた飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、臓器・組織に存在する幹細胞が老化することが明らかになりつつある(非特許文献1)。具体的に幹細胞の老化とは、増殖能力や分化能力が低下することであり、臓器や組織の再生能力の低下の原因と考えられている。例えば、脳に存在する神経幹細胞や血液細胞を生み出す造血幹細胞の増殖能力は、加齢に伴い著しく低下することが報告されている(非特許文献2、3)。また、皮膚や皮下脂肪組織に存在する幹細胞は、加齢により数が減少し、分化能力が低下することが報告されている(非特許文献4、5)。
【0003】
以上の知見から、各臓器・組織に存在する幹細胞を増殖させる技術は、組織恒常性維持、損傷組織の修復・再生、各種疾患の予防・治療・改善等、抗加齢(抗老化)の用途に極めて有効であると考えられる。
【0004】
マンネンタケ(学名:Ganoderma lucidum)は、マンネンタケ科のキノコであり、霊芝(レイシ)、サルノコシカケとも呼ばれる。マンネンタケ(霊芝)は、β-グルカンやテルペノイド等を含み、免疫力向上作用、抗ガン作用、血圧低下作用、血糖値低下作用等の様々な作用を有する。マンネンタケの子実体、菌糸体又はその培養物の抽出物には幹細胞の未分化維持効果及び増殖促進効果があることが知られている(特許文献1、2)。
【0005】
近年、マンネンタケ胞子超臨界抽出物(以下、「霊芝胞子油」と記載する)を有効成分として用いることで、幹細胞が増殖促進されるという技術が報告されている(特許文献3)。
【0006】
霊芝胞子油の効果を十分に得るためには、霊芝胞子油を継続して摂取する必要があり、そのためには容易に摂取できる飲料の形態が好ましい。一方で、霊芝胞子油を含有する飲料には、特有の不快味や不快臭があるという問題があった。そのため、継続して摂取することは困難であり、霊芝胞子油を飲料の原料として使用する場合には、その特有の不快味、不快臭を低減させる工夫が必要となる。
【0007】
油の劣化風味のマスキング方法として、ごま粉砕物を用いた技術が知られているが(特許文献4)、この方法では固形物を用いており、配合できる食品の種類に制限ができてしまうため好ましくない。
【0008】
また、マイクロカプセル化によって難水溶性物質の臭気又は呈味をマスキングできる技術も知られている(特許文献5)。しかし、この技術はグミ組成物に限られており、透明な清涼飲料水などへの応用は困難であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008-301726号公報
【特許文献2】特開2011-211956号公報
【特許文献3】特開2020-171242号公報
【特許文献4】特開2022-108628号公報
【特許文献5】特開2021-069287号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Beane O.S.ら,PLos One,2014年,Vol.9,12号,e115963
【非特許文献2】Molofsky A.V.ら, Nature, 2006年, Vol. 443, 7110号, pp. 448-452
【非特許文献3】Geiger H.ら, Nat. Rev. Immunol., 2013年, Vol. 13, 5号, pp. 376-389
【非特許文献4】Akamatsu H.ら,J. Dermatol., 2016年,Vol. 43, pp. 311-313
【非特許文献5】Yamada T.ら,J. Dermatol. Sci., 2010年,Vol. 58, pp. 36-42
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、霊芝胞子油の不快味、不快臭が低減された飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
成分(A)霊芝胞子油を含有し、
下記成分(B)、(C):
(B)シトロネロール
(C)プロピオン酸エチル
を含有することにより霊芝胞子油の不快味、不快臭を低減できる飲料を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、霊芝胞子油の不快味、不快臭を低減させることに優れている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明における飲料とは、食品分野における清涼飲料水を指し、例えば栄養飲料、美容飲料、健康飲料、炭酸飲料等が挙げられる。
【0015】
本発明における(A)霊芝胞子油とは、マンネンタケ胞子の超臨界抽出物のことであり、そのマンネンタケ胞子は、マンネンタケ科マンネンタケ属の霊芝の胞子であれば特に限定はされず、例えば、赤霊芝、黒霊芝、紫霊芝、青霊芝、黄霊芝、白霊芝の胞子が挙げられる。中でも赤霊芝(Ganoderma lucidum)、黒霊芝(Ganoderma sinense、Ganoderma japonicum、Ganoderma atrum)の胞子がより好ましい。
【0016】
本発明において、マンネンタケ胞子には、胞子及び複数個の胞子が内生した胞子のうを包含するものとする。マンネンタケ胞子の抽出には、回収したマンネンタケ胞子をそのまま用いてもよいが、胞子の細胞壁を物理的な力によって崩壊させるための破壁処理を行うことが好ましい。
【0017】
本発明において、霊芝胞子油を得るための抽出方法は、マンネンタケ胞子に超臨界状態にある流体(超臨界流体)を接触させる方法であれば特に限定はされないが、安全かつ容易に脱溶剤を行なうことができる点で、超臨界状態にある二酸化炭素(超臨界二酸化炭素)による抽出方法が好ましい。また、食用油等の抽出に用いる従来周知の溶媒抽出法も採用できる。
【0018】
超臨界状態にある二酸化炭素による抽出条件としては、温度は31~100℃が好ましく、31~80℃がより好ましく、31~60℃がさらに好ましく、また、圧力は7~100MPaが好ましく、7~50MPaが好ましく、7~30MPaがさらに好ましい。なかでも、温度が31~80℃で、かつ圧力が7~50MPaであることが特に好ましく、温度が31~60℃で、かつ圧力が7~30MPaであることが最も好ましい。尚、霊芝胞子油は市販品を用いることができる。
【0019】
本発明における成分(A)霊芝胞子油の含有量は、特に限定されないが、1w/v%以下が好ましく、0.1w/v%以下がより好ましい。含有量が1w/v%より高いと、飲料に配合させることが困難になる可能性がある。
【0020】
本発明に係る成分(B)シトロネロールとは、分子式C10H20O、分子量156.27の化合物であり、ジヒドロゲラニオールとも呼ばれる。性状は無色の液体で、甘いバラ様の香りを有する。シトロネロールは香料成分の食品添加物として認められている。
【0021】
本発明におけるシトロネロールの含有量は、特に限定されないが、0.0001~0.01w/v%が好ましく、より好ましくは0.0004~0.001w/v%である。0.0001w/v%未満では、霊芝胞子油の不快味、不快臭を低減させる効果が十分に得られない傾向があり、0.01w/v%を超えるとシトロネロールの香りが強く、香料成分特有の不快味を感じる場合もある。
【0022】
本発明に係る成分(C)プロピオン酸エチルとは、分子式C5H10O2、分子量102.13の化合物である。性状は無~淡黄色の液体で、バナナやパイナップルのような果実香を有する。プロピオン酸エチルは香料成分の食品添加物として認められている。
【0023】
本発明におけるプロピオン酸エチルの含有量は、0.0005~0.01w/v%が好ましく、より好ましくは0.002~0.007w/v%である。0.0005w/v%未満では、霊芝胞子油の不快味、不快臭を低減させる効果が十分に得られない傾向があり、0.01w/v%を超えるとプロピオン酸エチルの香りが強く、香料成分特有の不快味を感じる場合もある。
【0024】
本発明の飲料には、必要に応じて他の副原料を配合することができる。例えば、ショ糖、ブドウ糖、果糖、麦芽糖、蜂蜜、水飴、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、キシリトール等の甘味料、ステビア、スクラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、ネオテーム等の高甘味度甘味料、りんご、ぶどう、みかん、マスカット、ライチ等の果汁、カラメル色素、カカオ色素等の色素、香料、キサンタンガム、タマリンドガム等の増粘剤、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、リンゴ酸、リンゴ酸ナトリウム、リン酸、グルコン酸、乳酸ナトリウム等のpH調整剤、乳化剤、アスコルビン酸、ピリドキシン、ナイアシン、トコフェロール等のビタミン類、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、マンガン等のミネラル類、高麗人参抽出物、エゾウコギ抽出物、カンゾウ抽出物、オオバコ抽出物、ショウガ抽出物、チンピ抽出物、ケイヒ抽出物、キキョウ抽出物、クコの実抽出物、サンザシ抽出物等の植物抽出物、霊芝抽出物、ツバメの巣エキス、コラーゲンペプチド、N-アセチルグルコサミン、セラミド、ヒアルロン酸、テアニン、タウリン、カルニチン、オルニチン、コンドロイチン硫酸、ローヤルゼリー等の健康維持に役立つ原料等である。
【0025】
本発明の飲料の製造方法については特に限定されず、一般に流通している飲料と同様の方法で製造できる。また、充填する容器についても特に限定されず、一般に流通している飲料と同様の容器に充填して使用することができる。
【実施例0026】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲がこれらに限定されるものではない。尚、実施例の成分は市販品を用い、霊芝胞子油は超臨界二酸化炭素による抽出品を用いた。
【0027】
下記の表1に挙げた組成を有する飲料を調製し、7名の専門パネルに各飲料を飲用してもらい、「霊芝胞子油特有の不快味」、「霊芝胞子油特有の不快臭」、「香料成分特有の不快味」を評価した。尚、評価基準は下記の通りである。
「霊芝胞子油特有の不快味」
(評価基準)
(イ):気になる
(ロ):やや気になる
(ハ):特に気にならない
(判定基準)
(評価の人数) (判定)
(イ)0名、(ロ)0名、(ハ)7名 :◎
(イ)0名、(ロ)1名、(ハ)6名 :〇
(イ)1名、或いは(ロ)2名 :△
(イ)2名以上、或いは(イ)、(ロ)合わせて3名以上 :×
「霊芝胞子油特有の不快臭」
(評価基準)
(イ):気になる
(ロ):やや気になる
(ハ):特に気にならない
(判定基準)
(評価の人数) (判定)
(イ)0名、(ロ)0名、(ハ)7名 :◎
(イ)0名、(ロ)1名、(ハ)6名 :〇
(イ)1名、或いは(ロ)2名 :△
(イ)2名以上、或いは(イ)、(ロ)合わせて3名以上 :×
「香料成分特有の不快味」
(評価基準)
(イ):気になる
(ロ):やや気になる
(ハ):特に気にならない
(判定基準)
(評価の人数) (判定)
(イ)0名、(ロ)0名、(ハ)7名 :◎
(イ)0名、(ロ)1名、(ハ)6名 :〇
(イ)1名、或いは(ロ)2名 :△
(イ)2名以上、或いは(イ)、(ロ)合わせて3名以上 :×
【0028】
(製造方法)
シトロネロール製剤(シトロネロールとして1w/v%含有)、プロピオン酸エチル製剤(プロピオン酸エチルとして1w/v%含有)に水を加えて撹拌後、霊芝胞子油製剤(霊芝胞子油として1w/v%含有)を加え、水を用いて全量を1000mLとした。ろ過を行い、容器に充填後、殺菌して各飲料を得た。尚、シトロネロール製剤は、シトロネロール1gにエタノールを60g加えて混合した後、水を加えて100mLとし、プロピオン酸エチル製剤は、プロピオン酸エチル1gにエタノールを60g加えて混合した後、水を加えて100mLとした。また、霊芝胞子油製剤は、霊芝胞子油1gにモノオレイン酸デカグリセリル5gとグリセリン5gを加えて加熱混合した後、加熱した水を加えて100mLとし、常温まで冷やして調製した。
【0029】
【0030】
表1の実施例1に示したように、成分(B)シトロネロールと成分(C)プロピオン酸エチルを含有した場合、全ての項目において優れた結果が得られた。一方で、比較例1~3に示したように、成分(B)シトロネロールと成分(C)プロピオン酸エチルを両方とも含有しない場合や、成分(B)シトロネロールと成分(C)プロピオン酸エチルのどちらか一方しか含有しない場合においては、霊芝胞子油特有の不快味、霊芝胞子油特有の不快臭の項目において満足する結果が得られなかった。
【0031】
【0032】
表2の実施例2~8に示したように、成分(A)霊芝胞子油に対し成分(B)シトロネロール、成分(C)プロピオン酸エチルを含有した場合、全ての項目において満足する結果が得られた。また、成分(B)シトロネロールを0.0004~0.001w/v%、成分(C)プロピオン酸エチルを0.002~0.007w/v%含有した場合において、特に優れた結果が得られた。一方で、比較例4~6に示したように、成分(B)シトロネロールと成分(C)プロピオン酸エチルを両方とも含有しない場合や、成分(B)シトロネロールと成分(C)プロピオン酸エチルのどちらか一方しか含有しない場合においては、霊芝胞子油特有の不快味、霊芝胞子油特有の不快臭の項目において満足する結果が得られなかった。
【0033】
次に、本発明のその他の実施例を示す。いずれにおいても、同様の評価項目において満足する結果が得られた。
【0034】
(実施例9:清涼飲料水1)
(成分) (w/v%)
(1)霊芝胞子油製剤 10.0
(2)シトロネロール製剤 0.05
(3)プロピオン酸エチル製剤 0.5
(4)クエン酸 0.3
(5)水飴 2.5
(6)ショ糖 3.0
(7)N-アセチルグルコサミン 3.0
(8)高麗人参抽出物 0.1
(9)チンピ抽出物 0.1
(10)精製水 残 余
【0035】
尚、実施例9の清涼飲料水1における霊芝胞子油の含有量は0.1w/v%、シトロネロールの含有量は0.0005w/v%、プロピオン酸エチルの含有量は0.005w/v%である。
【0036】
(実施例10:清涼飲料水2)
(成分) (w/v%)
(1)霊芝胞子油製剤 10.0
(2)シトロネロール製剤 0.04
(3)プロピオン酸エチル製剤 0.6
(4)リンゴ酸 0.2
(5)クエン酸 0.3
(6)クエン酸ナトリウム 0.2
(7)スクラロース 0.01
(8)アセスルファムカリウム 0.01
(9)りんご果汁 3.0
(10)果糖 1.0
(11)コラーゲンペプチド 3.0
(12)コンドロイチン硫酸 0.1
(13)精製水 残 余
【0037】
尚、実施例10の清涼飲料水2における霊芝胞子油の含有量は0.1w/v%、シトロネロールの含有量は0.0004w/v%、プロピオン酸エチルの含有量は0.006w/v%である。