(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107588
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】画像評価方法、X線診断装置、および画像評価プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/46 20240101AFI20240802BHJP
A61B 6/58 20240101ALI20240802BHJP
A61B 6/03 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
A61B6/03 360Z
A61B6/03 F
A61B6/03 360T
A61B6/03 370E
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011594
(22)【出願日】2023-01-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 月刊インナービジョン、2022年12月号、Vol.37、No.12、第80~84頁 2022/11/25に公開 https://www.innervision.co.jp/sp/ad/suite/canonmedical/technical_notes/2212cxdi 2022/12/1に公開
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 由昌
(72)【発明者】
【氏名】岩井 春樹
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093CA36
4C093FC13
4C093FD03
4C093FF09
4C093FF34
4C093FF37
4C093GA01
4C093GA06
(57)【要約】
【課題】臨床の性能を反映した評価に関する画像を生成すること。
【解決手段】本実施形態に係る画像評価方法は、人体を模擬した人体ファントムに対する第1のX線撮影により生成された第1のX線画像データを取得し、前記人体ファントムおよび画像評価用ファントムに対する第2のX線撮影により生成された第2のX線画像データを取得し、前記第2のX線画像データを画像処理に関する機械学習モデルに入力することで、第3のX線画像データを取得し、前記第1のX線画像データと前記第3のX線画像データとに基づいて、前記画像評価用ファントムに関する画像データを生成する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体を模擬した人体ファントムに対する第1のX線撮影により生成された第1のX線画像データを取得し、
前記人体ファントムおよび画像評価用ファントムに対する第2のX線撮影により生成された第2のX線画像データを取得し、
前記第2のX線画像データを画像処理に関する機械学習モデルに入力することで、第3のX線画像データを取得し、
前記第1のX線画像データと前記第3のX線画像データとに基づいて、前記画像評価用ファントムに関する画像データを生成すること、
を備える画像評価方法。
【請求項2】
前記画像評価用ファントムに関する前記画像データに対して画質評価を実行し、
前記画質評価の結果を算出すること、
をさらに備える請求項1に記載の画像評価方法。
【請求項3】
前記算出された画質評価の結果を表示すること、
をさらに備えた請求項2に記載の画像評価方法。
【請求項4】
前記画像評価用ファントムに関する前記画像データは、前記第1のX線画像データと前記第3のX線画像データとの差分による差分データ、または前記第1のX線画像データと前記第3のX線画像データとを用いた除算による除算データに相当する、
請求項2に記載の画像評価方法。
【請求項5】
前記画質評価の実行は、前記画像評価用ファントムに関する前記画像データの画質についてのパラメータの値を算出することである、
請求項2に記載の画像評価方法。
【請求項6】
前記第1のX線画像データと前記第2のX線画像データとにおいて、前記人体ファントムと、前記第1のX線撮影および前記第2のX線撮影に関する撮影装置との相対的な位置関係は同一である、
請求項1に記載の画像評価方法。
【請求項7】
前記人体ファントムは、前記画像評価用ファントムを支持する支持部を有し、
前記第2のX線撮影において、前記画像評価用ファントムは、前記支持部により支持される、
請求項6に記載の画像評価方法。
【請求項8】
前記第1のX線画像データにおける前記人体ファントムに設けられたマーカーの位置と、前記第2のX線画像データまたは前記第3のX線画像データにおける前記マーカーの位置と、を用いて、前記第1のX線画像データと前記第2のX線画像データまたは前記第3のX線画像データとの位置ずれを補正する、
請求項6に記載の画像評価方法。
【請求項9】
前記第2のX線画像データまたは前記第3のX線画像データにおける前記画像評価用ファントムとは異なる領域の画素値と、前記第1のX線画像データにおける前記領域における画素値と、を用いて、前記第1のX線画像データと前記第2のX線画像データと前記第3のX線画像データとのうち少なくとも一つのデータに含まれる複数の輝度値を補正する、
請求項6に記載の画像評価方法。
【請求項10】
前記画像評価用ファントムに関する前記画像データをディスプレイに表示する、
請求項1に記載の画像評価方法。
【請求項11】
前記機械学習モデルは、前記機械学習モデルに入力されたX線画像データに比べてノイズが低減されたX線画像データ、および/または前記機械学習モデルに入力されたX線画像データに比べてボケが低減されたX線画像データを出力する、
請求項1に記載の画像評価方法。
【請求項12】
前記人体ファントムに関連する部位と前記機械学習モデルの生成において用いられる教師データに関連する部位とは同一である、
請求項1に記載の画像評価方法。
【請求項13】
前記第1のX線画像データを含む複数の第1のX線画像データを取得し、
前記第2のX線画像データを含む複数の第2のX線画像データを取得し、
前記複数の第1のX線画像データを加算平均して第1平均画像データを生成し、
前記複数の第2のX線画像データを前記機械学習モデルに入力することで複数の第3のX線画像データを取得し、
前記第1平均画像データと前記複数の第3のX線画像データとに基づいて生成した、前記画像評価用ファントムに関する複数の前記画像データに対し、それぞれ画質評価を実行し、
複数の前記画質評価の結果に対し加算平均を実行する、
請求項1に記載の画像評価方法。
【請求項14】
前記第1のX線画像データを含む複数の第1のX線画像データを取得し、
前記第2のX線画像データを含む複数の第2のX線画像データを取得し、
前記複数の第2のX線画像データを前記機械学習モデルにそれぞれ入力することで複数の第3のX線画像データを取得し、
前記複数の第1のX線画像データと前記複数の第3のX線画像データとに基づいて、複数の画像データを生成し、
前記生成された複数の画像データを加算平均して、前記画像評価用ファントムに関する前記画像データを生成する、
請求項1に記載の画像評価方法。
【請求項15】
前記第1のX線画像データを含む複数の第1のX線画像データを取得し、
前記第2のX線画像データを含む複数の第2のX線画像データを取得し、
前記複数の第2のX線画像データを前記機械学習モデルにそれぞれ入力することで複数の第3のX線画像データを取得し、
前記複数の第1のX線画像データと前記複数の第3のX線画像データとに基づいて生成した複数の画像データに対しそれぞれ画質評価を実行し、
複数の前記画質評価の結果に対し加算平均を実行する、
請求項1に記載の画像評価方法。
【請求項16】
前記第1のX線画像データを含む複数の第1のX線画像データを取得し、
前記第2のX線画像データを含む複数の第2のX線画像データを取得し、
前記複数の第1のX線画像データを加算平均して第1平均画像データを生成し、
前記複数の第2のX線画像データを前記機械学習モデルに入力することで取得した複数の第3のX線画像データを加算平均して第3平均画像データを生成し、
前記第1平均画像データと前記第3平均画像データとに基づいて、前記画像評価用ファントムに関する前記画像データを生成する、
請求項1に記載の画像評価方法。
【請求項17】
前記画像評価用ファントムに関する前記画像データのモジュレーショントランスファーファンクション(Modulation Transfer Function:MTF)を算出することにより、前記画像データの画質を評価すること、
をさらに備える請求項12乃至16のいずれか一項に記載の画像評価方法。
【請求項18】
前記パラメータの値と前記画質の目標値とを比較し、
前記パラメータの値が前記目標値に到達しているか否かを表示すること、
をさらに備える請求項5に記載の画像評価方法。
【請求項19】
前記パラメータの値が前記目標値に到達していない場合、前記パラメータの値に基づいて撮影条件、もしくは画像処理条件を調整し、
前記調整された撮影条件で前記第1のX線撮影と前記第2のX線撮影を再度実行して、前記パラメータの値を再度算出し、
前記再度算出されたパラメータの値が前記目標値に到達しているか否かを判定することを、前記パラメータの値が前記目標値に到達するまで繰り返すこと、
をさらに備える請求項18に記載の画像評価方法。
【請求項20】
前記パラメータは、信号雑音比(Signal-to-Noise Ratio : SNR)と、コントラストノイズ比(Contrast-to-Noise Ratio: CNR)と、コントラストディテールカーブ(Contrast Detail curve:CD)と、モジュレーショントランスファーファンクション(Modulation Transfer Function:MTF)とのうち少なくとも一つに対応する、
請求項5に記載の画像評価方法。
【請求項21】
X線を発生するX線管と、
前記X線を検出するX線検出器と、
前記X線管と前記X線検出器とを用いて、人体を模擬した人体ファントムに対する第1のX線撮影と、前記人体ファントムおよび画像評価用ファントムに対する第2のX線撮影とを実行する制御部と、
前記第1のX線撮影により第1のX線画像データを生成し、前記第2のX線撮影により第2のX線画像データを生成する画像生成部と、
前記第2のX線画像データを画像処理に関する機械学習モデルに入力することで第3のX線画像データを生成し、前記第1のX線画像データと前記第3のX線画像データとに基づいて、前記画像評価用ファントムに関する画像データを生成する画像処理部と、
を備えるX線診断装置。
【請求項22】
前記X線管と前記X線検出器とを有する撮影装置と前記人体ファントムとの相対的な位置関係は同一に設定されて、前記制御部は、前記第1のX線撮影および前記第2のX線撮影を実行する、
請求項21に記載のX線診断装置。
【請求項23】
コンピュータに、
人体を模擬した人体ファントムに対する第1のX線撮影により生成された第1のX線画像データを取得し、
前記人体ファントムおよび画像評価用ファントムに対する第2のX線撮影により取得された第2のX線画像データを画像処理に関する機械学習モデルに入力することで第3のX線画像データを取得し、
前記第1のX線画像データと前記第3のX線画像データとに基づいて、前記画像評価用ファントムに関する画像データを生成すること、
を実現させる画像評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、画像評価方法、X線診断装置、および画像評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線診断装置により生成されたX線画像に関して、ノイズ低減などの画像処理にディープラーニングなどによる学習済みモデル(例えば、人工知能(AI:artificial intelligence))を用いることがある。学習済みモデルを用いることは、各種空間フィルタなどのルールベースによる画像処理に比して、高い性能を有する画像処理を実現できる。例えば、ノイズ低減で考えると、AIを用いることで画像の信号を保持したままノイズだけを低減することができる。
【0003】
一方、画質を評価するために数値を測定することがある(数値評価)。数値評価は、例えば、モジュレーショントランスファーファンクション(Modulation Transfer Function:MTF、コントラスト伝達関数ともいう)、コントラストノイズ比(Contrast-to-Noise Ratio:CNR)、コントラストディテールカーブ(Contrast Detail curve:CD)などである。従来のルールベースの画像処理であれば、数値評価の画像と臨床の画像との間で線形の関係がある。このため、ルールベースの画像処理において、数値評価で良い結果を示す画像処理であれば、臨床画像でも良い結果を示す。
【0004】
画像処理に用いられるAIは、主に臨床で得られた画像を用いて学習される。一方、臨床とは全く異なる被写体(ファントム)を用いて、数値評価は実施される。数値評価としてMTFを用いる場合、ファントムとしては、タングステンのプレートまたはワイヤーが用いられる。また、数値評価としてCNRを用いる場合、ファントムとしては、PMMA(Poly Methyl Methacrylate:ポリメチルメタクリレート樹脂(ポリメタクリル酸メチル樹脂)、アクリルとも称される)とAL(アルミニウム)とが用いられる。また、数値評価としてCDを用いる場合、ファントムとしては、CDRADまたはCDMAMが用いられる。
【0005】
これらの画像評価用の画像を学習に使用していないAIに、上記ファントムに関する画像を入力しても、期待される画像は出力されない。つまり、臨床で期待した性能を発揮するAIであったとしても、当該性能を反映した数値評価の結果を得られない。すなわち、AIからの出力画像は、学習に用いられた画像に影響を受ける。
【0006】
AIに対する学習時では、当該学習に使用されたデータに対して適切に処理できるように、フィードバックをかけてAIの出力に関する性能が高められる。もちろん未知のデータに対してもAIが適切に処理できるような、いわゆる汎化性能を高める工夫が適宜適用される。しかしながら、臨床で得られた画像(AIの学習時の画像)と数値評価の画像とでは、画像の内容が大きく異なる。よって、AIの汎化性能を高めたとしても、臨床画像の性能を反映した数値評価の結果を得にくい問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、臨床の性能を反映した評価に関する画像を生成することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施形態に係る画像評価方法は、人体を模擬した人体ファントムに対する第1のX線撮影により生成された第1のX線画像データを取得し、前記人体ファントムおよび画像評価用ファントムに対する第2のX線撮影により生成された第2のX線画像データを取得し、前記第2のX線画像データを画像処理に関する機械学習モデルに入力することで、第3のX線画像データを取得し、前記第1のX線画像データと前記第3のX線画像データとに基づいて、前記画像評価用ファントムに関する画像データを生成する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係るX線診断装置1の構成の一例を示すブロック図。
【
図2】
図2は、実施形態に係り、第1のX線撮影において、撮影台に配置された人体ファントムの一例を示す図。
【
図3】
図3は、実施形態に係り、
図2に示す第1のX線撮影の後に実施される第2のX線撮影における人体ファントムと画像評価用ファントムとの位置関係の一例を示す図。
【
図4】
図4は、実施形態に係り、第1のX線撮影において、人体ファントムのX線管側に設けられた支持部の一例を示す図。
【
図5】
図5は、実施形態に係り、
図4に示す第1のX線撮影の後に実施される第2のX線撮影において、人体ファントムのX線管側に設けられた支持部に配置された画像評価用ファントムの一例を示す図。
【
図6】
図6は、実施形態に係り、マーカーが設けられた人体ファントムの一例を示す図。
【
図7】
図7は、実施形態に係り、人体ファントムの腹側に設けられた支持部の一例を示す図。
【
図8】
図8は、実施形態に係り、人体ファントムの腹側と背側との中間に設けられた支持部の一例を示す図。
【
図9】
図9は、実施形態に係り、人体ファントムの背側に設けられた支持部の一例を示す図。
【
図10】
図10は、実施形態に係る画像評価処理の手順の一例を示すフローチャート。
【
図11】
図11は、実施形態に係る撮影条件調整処理の手順の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、画像評価方法、X線診断装置、および画像評価プログラムの実施形態について説明する。以下の実施形態では、同一の参照符号を付した部分は同様の動作をおこなうものとして、重複する説明は適宜省略する。また、以下では、本実施形態に係るX線診断装置として、マンモグラフィ装置を例にとり説明する。なお、本実施形態に係るX線診断装置はマンモグラフィ装置に限定されず、例えば、消化器用のX線診断装置(X線TV装置)、一般撮影用のX線診断装置、循環器用のX線診断装置(X線アンギオグラフィー装置)、回診用X線診断装置、X線コンピュータ断層撮影装置(X線CT(Computed Tomography)装置)などの各種X線診断装置に適用可能である。
【0012】
(実施形態)
図1を用いて、実施形態に係るX線診断装置1を説明する。
図1は、実施形態に係るX線診断装置1の構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すX線診断装置1は、被検体の乳房P1に対するトモシンセシス撮影を実行可能なマンモグラフィ装置である。X線診断装置1は、例えば、乳房P1に対するトモシンセシス撮影を実行することで複数のスライスを収集し、収集した複数のスライスを医師等のユーザに提示する。
【0013】
X線診断装置1は、例えば、
図1に示すように、基台101と、スタンド102とを有する。スタンド102は、基台101上に立設され、撮影台103と、圧迫板104と、X線管105と、X線絞り器106と、X線検出器107と、信号処理回路108とを支持する。ここで、スタンド102は、撮影台103と、圧迫板104と、X線検出器107及び信号処理回路108とを、上下方向へ移動可能に支持する。
【0014】
撮影台103は、被検体の乳房P1を支持する台であり、乳房P1が載せられる支持面を有する。なお、撮影台103は、支持台の一例である。圧迫板104は、撮影台103の上方に配置され、撮影台103に対して平行に対向するように設けられる。ここで、圧迫板104は、撮影台103に接離する方向へ移動可能に設けられる。例えば、圧迫板104は、撮影台103に接近する方向に移動することで、撮影台103上に支持されている乳房P1を圧迫する。圧迫板104によって圧迫された乳房P1は薄く押し広げられ、乳腺の重なりが減少する。
【0015】
X線管105は、X線を発生する。X線管105は、熱電子を発生する陰極(フィラメント)と、熱電子の衝突を受けてX線を発生する陽極(ターゲット)とを有する真空管である。X線管105は、X線高電圧装置111から供給される高電圧を用いて、陰極から陽極に向けて熱電子を照射することにより、X線を発生する。ここで、X線管105は、乳房P1へのX線の照射角度を変化させるよう移動可能に構成される。例えば、トモシンセシス撮影を実行する際、X線管105は、
図1に示すX方向に沿って移動しながら、乳房P1に対してX線を照射する。
【0016】
X線絞り器106は、X線管105と圧迫板104との間に配置され、X線管105が発生させたX線を制御する。例えば、X線絞り器106は、X線の照射範囲を絞り込むコリメータと、X線を調節するフィルタとを有する。
【0017】
X線絞り器106におけるコリメータは、例えば、スライド可能な4枚の絞り羽根を有し、これら絞り羽根をスライドさせることで、X線管105が発生させたX線を絞り込んで乳房P1に照射させる。ここで、絞り羽根は、鉛などで構成された板状部材であり、X線の照射範囲を調整するためにX線管105のX線照射口付近に設けられる。
【0018】
X線絞り器106におけるフィルタは、被検体に対する被曝線量の低減とX線画像データの画質向上を目的として、その材質や厚みによって透過するX線の線質を変化させ、被検体に吸収されやすい軟線成分を低減したり、画像のコントラスト低下を招く高エネルギー成分を低減したりする。また、フィルタは、その材質や厚み、位置などによってX線の線量及び照射範囲を変化させ、乳房P1へ照射されるX線が予め定められた分布になるようにX線を減衰させる。
【0019】
例えば、X線絞り器106は、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構を有し、後述する処理回路114による制御の下、駆動機構を動作させることによりX線の照射を制御する。例えば、X線絞り器106は、処理回路114から受け付けた制御信号に応じて駆動電圧を駆動機構に付加することにより、コリメータの絞り羽根の開度を調整して、乳房P1に対して照射されるX線の照射範囲を制御する。また、例えば、X線絞り器106は、処理回路114から受け付けた制御信号に応じて駆動電圧を駆動機構に付加することにより、フィルタの位置を調整することで、乳房P1に対して照射されるX線の線量の分布を制御する。
【0020】
X線検出器107は、X線を検出する。X線検出器107は、例えば、マトリクス状に配列された検出素子を有するX線平面検出器(Flat Panel Detector:FPD)である。X線検出器107は、X線管105から照射されて乳房P1を透過したX線を検出し、検出したX線量に対応した検出信号を信号処理回路108へと出力する。なお、X線検出器107は、グリッド、シンチレータアレイ及び光センサアレイを有する間接変換型の検出器であってもよいし、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器であっても構わない。
【0021】
例えば、X線検出器107は、X線管105から照射されたX線パルスを検出し、検出したX線量に対応した検出信号を生成する。ここで、X線検出器107は、生成した検出信号を保持する。また、X線検出器107は、X線パルスの照射後に検出信号を信号処理回路108に対して出力する。そして、信号処理回路108は、X線検出器107から出力された検出信号に基づいてX線画像データを生成し、記憶回路112に格納する。なお、信号処理回路108が検出信号に基づいて生成したX線画像データについては、投影データとも記載する。信号処理回路108は、画像生成部に相当する。なお、信号処理回路108により実現される処理の機能は、例えば、画像生成機能として処理回路114に組み込まれてもよい。
【0022】
また、
図1に示すように、X線診断装置1は、入力インターフェース109と、昇降駆動装置110と、X線高電圧装置111と、記憶回路112と、ディスプレイ113と、処理回路114とを有する。
【0023】
入力インターフェース109は、操作者からの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路114に出力する。例えば、入力インターフェース109は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等により実現される。
【0024】
なお、入力インターフェース109は、処理回路114と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。また、入力インターフェース109は、マウスやキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、X線診断装置1本体とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路114へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェース109の例に含まれる。入力インターフェース109は、入力部に対応する。
【0025】
昇降駆動装置110は、撮影台103及び圧迫板104に接続される。例えば、昇降駆動装置110は、撮影台103を上下方向へ昇降させる。また、例えば、昇降駆動装置110は、圧迫板104を上下方向(撮影台103に対して接離する方向)へ昇降させる。例えば、昇降駆動装置110は、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構を有し、処理回路114による制御の下、駆動機構を動作させることにより、撮影台103及び圧迫板104の昇降を制御する。
【0026】
X線高電圧装置111は、処理回路114による制御の下、X線管105に高電圧(管電圧)および管電流を供給する。例えば、X線高電圧装置111は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路を有し、X線管105に印加する高電圧を発生する高電圧発生装置と、X線管105が照射するX線に応じた出力電圧の制御を行うX線制御装置とを有する。なお、高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であってもよい。
【0027】
記憶回路112は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。例えば、記憶回路112は、信号処理回路108が生成した投影データや、処理回路114が再構成したスライスを記憶する。また、例えば、記憶回路112は、X線診断装置1に含まれる回路がその機能を実現するためのプログラムを記憶する。なお、記憶回路112は、X線診断装置1とネットワークを介して接続されたサーバ群(クラウド)により実現されることとしてもよい。記憶回路112は、メモリと称されてもよい。
【0028】
記憶回路112は、X線撮影における被検体の部位に応じた機械学習モデルを記憶する。機械学習モデルは、学習済みモデルと、学習が完了していないモデルとを含む。すなわち、機械学習モデルは、学習が完了していないモデルであってもよい。以下、説明を具体的にするために、機械学習モデルは、学習済みモデルとして説明する。すなわち、学習済みモデルは、当該学習済みモデルの生成に用いられた教師データの種別(部位)に応じて、記憶回路112に予め記憶されている。教師データの種別とは、人体における部位(例えば、頭部、胸部、腹部など)に相当する。換言すれば、記憶回路112は、複数の部位にそれぞれ対応する複数の学習済みモデルを記憶する。
【0029】
ディスプレイ113は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ113は、入力インターフェース109を介して操作者から各種指示や各種設定等を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示する。また、ディスプレイ113は、乳房P1について収集された各種の画像データを表示する。例えば、ディスプレイ113は、トモシンセシス撮影により収集された複数のスライスを順次表示させる。例えば、ディスプレイ113は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイである。ディスプレイ113は、デスクトップ型でもよいし、X線診断装置1本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。また、ディスプレイ113は、各種モニタにより実現されてもよい。ディスプレイ113は、表示部に対応する。
【0030】
処理回路114は、制御機能114a、表示制御機能114b、取得機能114c、画像処理機能141d、算出機能141e、調整機能114fを実行することで、X線診断装置1全体の動作を制御する。例えば、処理回路114は、制御機能114aに対応するプログラムを記憶回路112から読み出して実行することにより、入力インターフェース109を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、処理回路114の各種機能を制御する。
【0031】
また、制御機能114aは、撮影台103、圧迫板104、X線管105、X線絞り器106、X線検出器107、信号処理回路108、昇降駆動装置110及びX線高電圧装置111の動作を制御して、トモシンセシス撮影、第1のX線撮影、および第2のX線撮影などを実行する。制御機能114aを実現する処理回路114は、制御部に相当する。以下では、一例としてトモシンセシス撮影時におけるX線管105の軌道をトモシンセシス軌道とも記載する。第1のX線撮影、および第2のX線撮影は、例えば、X線検出器107に向かって鉛直方向(-Z方向)に向けてX線を投影する一般X線撮影に対応する。また、以下では、X線診断装置1の構成のうちトモシンセシス撮影、第1のX線撮影、および第2のX線撮影に用いられる構成を、撮影装置または撮影系とも記載する。X線診断装置1の撮影系には、例えば、撮影台103、圧迫板104、X線管105、X線絞り器106、X線検出器107、信号処理回路108、昇降駆動装置110及びX線高電圧装置111が含まれる。X線診断装置がX線CT装置により実現される場合、撮影系は、X線CT装置における架台装置(ガントリ)に相当する。
【0032】
具体的には、まず、制御機能114aは、昇降駆動装置110を制御することで、撮影台103及び圧迫板104を昇降させ、撮影台103と圧迫板104との間に被検体の乳房P1を配置する。また、制御機能114aは、X線管105を移動させて、トモシンセシス軌道における初期位置に配置する。次に、制御機能114aは、トモシンセシス軌道に沿ってX線管105を移動させつつ、X線高電圧装置111を制御することでX線管105に対して高電圧を供給させ、X線管105からX線を発生させる。また、制御機能114aは、X線絞り器106を制御することで、乳房P1に対して照射されるX線の照射範囲や線量の分布を制御する。また、制御機能114aは、信号処理回路108を制御することで、X線検出器107から出力された検出信号に基づく複数の投影データを生成させる。
【0033】
なお、
図1においては、高さ方向(鉛直方向)をZ方向とする。また、
図1においては、Z方向に直交し、且つ、トモシンセシス軌道に沿った方向をX方向とする。即ち、制御機能114aは、X線管105をX方向に沿って移動させながら、X線を発生させる。また、
図1においては、Z方向及びX方向に直交する方向をY方向とする。
図1に示す場合、+Y方向は、トモシンセシス撮影時において撮影台103及び圧迫板104に対して被検体が位置する方向に対応する。即ち、被検体は、+Y方向側から、撮影台103及び圧迫板104との間に乳房P1を差し込む。これにより、トモシンセシス撮影時においてX線管105をX方向に沿って移動させても、被検体とX線管105との接触(干渉)は生じないこととなる。また、
図1に示すXY平面は、水平面に対応する。以下、水平面に対して平行な方向(即ち、高さ方向に対して垂直な方向)については、水平方向とも記載する。例えば、X方向及びY方向は、水平方向の一例である。
【0034】
人体を模擬した人体ファントムが撮影台103に設置されると、入力インターフェース109を介したユーザの指示により、制御機能114aは、人体ファントムに対して第1のX線撮影を実行する。人体ファントムは、人体の性状を模して作製される。人体ファントムは、例えば、人体内部の組織に応じた放射線吸収率(例えば、X線吸収率)を有する素材により作製される。人体ファントムは、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA:Polymethyl methacrylate)などを用いて作製される。なお、人体ファントムは、胸部用に限定されず、X線診断装置の種別に応じて、各種人体の部位(頭部用、腹部用等)、全身などが適宜利用可能である。
【0035】
図2は、第1のX線撮影において、撮影台103に配置された人体ファントムHBF1の一例を示す図である。
図2では、人体ファントムHBF1は、撮影台103に設置された支持台SSに支持されている。
図2に示すように、支持台SSは、人体ファントムHBF1を撮影台103から離間させて支持する台または柱に相当する。なお、
図2では、人体ファントムHBF1と支持台SSとは別体として示されているが、人体ファントムHBF1と支持台SSとは一体成型されてもよい。
【0036】
第1のX線撮影の実行後の撮影台103において、人体ファントムに加えて画像評価用のファントム(以下、画像評価用ファントムと呼ぶ)が設置されると、入力インターフェース109を介したユーザの指示により、制御機能114aは、人体ファントムおよび画像評価用ファントムに対して第2のX線撮影を実行する。第1のX線撮影における撮影条件と第2のX線撮影の撮影条件とは、同一である。撮影条件とは、例えば、管電流時間積、管電圧、各種フィルタなどの設定を含むX線の曝射に関する条件である。換言すれば、撮影条件は、X線の曝射に伴う線量を規定するための条件である。また、制御機能114aは、第1のX線撮影および第2のX線撮影に関する撮影装置と前記人体ファントムとの相対的な位置関係は同一に設定されて、第1のX線撮影および第2のX線撮影を実行する。
【0037】
画像評価用ファントムは、画像における画質をパラメータの数値により評価するため(数値評価のため)に用いられるファントムである。画像評価用ファントムは、数値評価用ファントムとも称されてもよい。数値評価のパラメータの値としてMTF(Modulation Transfer Function:モジュレーショントランスファーファンクション)を対象とする場合、タングステンのプレートまたはタングステンのワイヤーで構成される。また、画像評価用ファントムは、数値評価のパラメータの値としてCNR(Contrast-to-Noise Ratio:コントラストノイズ比)を対象とする場合、PMMAとアルミニウムとにより構成される。また、画像評価用ファントムは、数値評価のパラメータの値としてコントラストディテールカーブ(Contrast Detail curve:CD)を対象とする場合、CDRADやCDMAMにより実現される。
【0038】
図3は、
図2に示す第1のX線撮影の後に実施される第2のX線撮影における人体ファントムHBF1と画像評価用ファントムNEFとの位置関係の一例を示す図である。
図3に示すように、画像評価用ファントムNEFは、人体ファントムHBF1と撮影台103と支持台SSとに囲まれた空間において、撮影台103に配置される。すなわち、
図3に示すように、画像評価用ファントムNEFは、人体ファントムHBF1とX線検出器107との間に配置される。
【0039】
なお、上記説明では、第1のX線撮影の後に第2のX線撮影を行うものとして説明したが、第2のX線撮影の後に第1のX線撮影を実行してもよい。また、人体ファントムHBF1とX線管105との間において、人体ファントムHBF1に画像評価用ファントNEFを支持する支持部が設けられてもよい。
【0040】
図4は、第1のX線撮影において、人体ファントムHBF1のX線管105側に設けられた支持部SUの一例を示す図である。なお、
図4では、人体ファントムHBF1と支持部SUとは別体として示されているが、人体ファントムHBF1と支持部SUとは一体成型されてもよい。すなわち、人体ファントムHBF1は、画像評価用ファントムNEFを支持する支持部SUを有していてもよい。このとき、第2のX線撮影において、画像評価用ファントムNEFは、支持部SUにより支持される。
【0041】
図5は、
図4に示す第1のX線撮影の後に実施される第2のX線撮影において、人体ファントムHBF1のX線管105側に設けられた支持部SUに配置された画像評価用ファントムNEFの一例を示す図である。
図5に示すように、画像評価用ファントムNEFは、人体ファントムHBF1とX線管105とに挟まれた空間において、支持部SUに配置される。すなわち、
図5に示すように、画像評価用ファントムNEFは、人体ファントムHBF1とX線管105との間に配置される。
図2、
図3に示された支持台SS、および
図4、
図5に示された支持部SUは、例えば、X線画像に影響を与えないように、X線吸収が小さい物質で構成される。
図2、
図3に示された支持台SS、および
図4、
図5に示された支持部SUの材料は、X線吸収係数が小さい物質であれば、既知の物質が適用可能であるため、説明は省略する。
【0042】
なお、人体ファントムには、第1のX線撮影と第2のX線撮影とにおいて人体ファントムの位置合わせに用いられる高コントラストなマーカーが設けられてもよい。このとき、コントラストなマーカーは人体ファントムにおいて、X線のレイに沿って画像評価用ファントムと重畳しない位置に設けられる。マーカーの材質としては、高コントラストであればよいため、既知の各種物質が適用可能である。
【0043】
図6は、マーカーMKが設けられた人体ファントムHBF2の一例を示す図である。
図6に示す人体ファントムHBF2において、マーカーMKの位置は、人体ファントムHBF2および画像評価用ファントムNEFに関するX線画像に影響与えない位置であれば、任意の位置にかつ任意の個数で設定可能である。
【0044】
なお、画像評価用ファントムNEFを支持する支持部SUは、人体ファントムの内部に設けられてもよい。このとき、人体ファントムの断面には、支持部SUに対応する溝が設けられる。第2のX線撮影に先立って、ユーザにより支持部SUに、画像評価用ファントムNEFが挿入される。
【0045】
図7は、人体ファントムHBF3の腹側に設けられた支持部ISUの一例を示す図である。
図8は、人体ファントムHBF4の腹側と背側との中間に設けられた支持部ISMの一例を示す図である。
図9は、人体ファントムHBF5の背側に設けられた支持部ISDの一例を示す図である。
図7乃至
図9では、人体ファントムHBF3乃至5各々において、一つの支持部ICUが設けられているが、これに限定されず、複数の支持部が人体ファントムに設けられてもよい。
【0046】
処理回路114は、表示制御機能114bに対応するプログラムを記憶回路112から読み出して実行することにより、後述の画像処理機能114dにより収集された各種の画像データを、ディスプレイ113に表示する。また、表示制御機能114bは、後述の算出機能141eにより算出されたパラメータの値を、ディスプレイ113に表示する。このとき、表示制御機能114bは、当該パラメータの値の算出のもとになる画像データとともに、当該パラメータの値をディスプレイ113に表示してもよい。表示制御機能114bを実現する処理回路114は、表示制御部に相当する。
【0047】
処理回路114は、取得機能114cにより、人体を模擬した人体ファントムに対する第1のX線撮影により生成された第1のX線画像データを取得する。具体的には、取得機能114cは、第1のX線撮影において、X線検出器107から出力された検出信号に基づいて信号処理回路108により生成された第1のX線画像データを、信号処理回路108から取得する。取得機能114cは、第1のX線画像データを、記憶回路112に記憶させる。
【0048】
取得機能114cは、人体ファントムおよび画像評価用ファントムに対する第2のX線撮影により生成された第2のX線画像データを取得する。具体的には、取得機能114cは、第2のX線撮影において、X線検出器107から出力された検出信号に基づいて信号処理回路108により生成された第2のX線画像データを、信号処理回路108から取得する。取得機能114cは、第2のX線画像データを、記憶回路112に記憶させる。取得機能114cを実現する処理回路114は、取得部に相当する。
【0049】
処理回路114は、画像処理機能114dにより、トモシンセシス撮影により収集した投影データに対して、対数変換処理やオフセット補正、感度補正、ビームハードニング補正等の補正処理を行なって、補正済みの投影データを生成する。そして、画像処理機能114dは、補正済みの投影データに基づいて、複数のスライスを再構成する。例えば、画像処理機能114dは、は、補正済みの投影データに対してFBP(Filtered Back Projection)法による逆投影処理を実行することによって、XY平面に対して平行な複数のスライスを再構成する。
【0050】
画像処理機能114dは、MLO(Mediolateral-Oblique:内外斜位)画像やCC(Cranio-Caudal:頭尾)画像等のマンモグラフィ画像を収集することもできる。具体的には、制御機能114aは、撮影台103及び圧迫板104の位置をMLO方向やCC方向で固定し、乳房P1に対するX線照射角度を一定に保った状態でX線を照射することにより、MLO画像やCC画像等のマンモグラフィ画像を収集する。
【0051】
画像処理機能114dは、第1のX線撮影および/または第2のX線撮影に用いられる人体ファントムの種別(部位)に対応する学習済みモデルを、記憶回路112から読みだす。例えば、入力インターフェース109を用いて第1のX線撮影および/または第2のX線撮影に用いられる人体ファントムの部位が入力されると、画像処理機能114dは、入力された部位に対応する学習済みモデルを、記憶回路112から読みだす。第1のX線撮影および/または第2のX線撮影に用いられる人体ファントムに関連する部位と当該学習済みモデルの生成において用いられる教師データに関連する部位とは同一である。
【0052】
学習済みモデルは、例えば、画像処理に関する畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network:CNN)などにより実現される。例えば、学習済みモデルは、臨床画像などの人体に関する画像を教師データとして用いてCNNを学習することにより生成される。具体的には、学習済みモデルは、当該学習済みモデルに入力されたX線画像データに比べてノイズが低減されたX線画像データ、および/または学習済みモデルに入力されたX線画像データに比べてボケが低減されたX線画像データを出力する。
【0053】
画像処理機能114dは、取得機能114cにより取得された第2のX線画像データを、画像処理に関する機械学習モデルに入力して、当該機械学習モデルから第3のX線画像データを出力する。すなわち、画像処理機能114dは、第2のX線画像データを画像処理に関する機械学習モデルに入力することで、第3のX線画像データを取得(生成)する。画像処理機能114dは、生成(取得)された第3のX線画像データを、記憶回路112に記憶させる。画像処理機能114dを実現する処理回路114は、画像処理部に相当する。
【0054】
画像処理機能114dは、第1のX線画像データと第3のX線画像データとに基づいて、画像評価用ファントムに関する画像データを生成する。具体的には、画像処理機能114dは、第1のX線画像データと第3のX線画像データとの差分(サブトラクション)により、画像評価用ファントムに関する画像データを生成する。なお、画像評価用ファントムに関する画像データの生成は、上記差分に限定されない。
【0055】
例えば、画像処理機能114dは、第1のX線画像データと第3のX線画像データとに対して、それぞれ対数変換を実行してもよい。次いで、画像処理機能114dは、対数変換された第1のX線画像データと、対数変換された第3のX線画像データとの差分を計算することで、画像評価用ファントムに関する画像データを生成する。対数変換後の差分は、第1のX線画像データと第3のX線画像データとによる除算に相当する。これらのことから、画像評価用ファントムに関する画像データは、第1のX線画像データと前記第3のX線画像データとの差分による差分データ、または第1のX線画像データと第3のX線画像データとを用いた除算(対数変換後の差分)による除算データに相当する。画像処理機能114dは、画像評価用ファントムに関する画像データを、記憶回路112に記憶させる。
【0056】
なお、画像評価用ファントムに関する画像データの生成に先立って、画像処理機能114dは、第1のX線画像データと第3のX線画像データとに対して、各種補正処理を行ってもよい。例えば、画像処理機能114dは、第1のX線画像データにおける人体ファントムに設けられたマーカーの位置と、第2のX線画像データまたは第3のX線画像データにおけるマーカーの位置と、を用いて、第1のX線画像データと第2のX線画像データまたは第3のX線画像データとの位置ずれを補正する。次いで、画像処理機能114dは、位置ずれが補正後された第1のX線画像データと、位置ずれが補正された第3のX線画像データと、に基づいて、画像評価用ファントムに関する画像データを生成する。
【0057】
なお、上記説明では、マーカーを用いた位置ずれの補正の対象のデータは、第1のX線画像データおよび第3のX線画像データであるものとして説明したが、これに限定されない。例えば、マーカーを用いた位置ずれの補正の対象のデータは、第1のX線画像データおよび第2のX線画像データであってもよい。このとき、画像処理機能114dは、位置ずれが補正後された第2のX線画像データを学習済みモデルに入力することで、第3のX線画像データを生成する。
【0058】
例えば、画像処理機能114dは、位置ずれが補正された第1のX線画像データと位置ずれ補正後の第3のX線画像データとを差分することで、画像評価用ファントムに関する画像データを生成する。換言すれば、画像処理機能114dは、マーカーの位置を用いて第1のX線画像データと第3のX線画像データとの位置合わせ(レジストレーション:Registration)を実行する。これにより、第1のX線画像データと第3のX線画像データとにおいて、人体ファントムと、第1のX線撮影および第2のX線撮影に関する撮影装置との相対的な位置関係は同一となる。次いで、画像処理機能114dは、位置合わせ後の第1のX線画像データと第3のX線画像データとを差分することで、画像評価用ファントムに関する画像データを生成する。
【0059】
また、画像評価用ファントムに関する画像データの生成に先立って、画像処理機能114dは、第3のX線画像データにおける画像評価用ファントムとは異なる領域(以下、補正基準領域と呼ぶ)の画素値と、第1のX線画像データにおける補正基準領域における画素値と、を用いて、第1のX線画像データと第2のX線画像データと第3のX線画像データとのうち少なくとも一つのデータに含まれる複数の輝度値を補正する。なお、輝度値の補正は、第2のX線画像データにおける画像評価用ファントムとは異なる領域の画素値と、第1のX線画像データにおける補正基準領域における画素値と、を用いて、第1のX線画像データと第2のX線画像データと第3のX線画像データとのうち少なくとも一つのデータに含まれる複数の輝度値を補正してもよい。画像処理機能114dは、輝度値が補正された第1のX線画像データと第3のX線画像データとに基づいて、画像評価用ファントムに関する画像データを生成する。
【0060】
例えば、画像処理機能114dは、補正基準領域における輝度値の差異が画像の全領域に亘って補正された第1のX線画像データと第3のX線画像データとを差分することで、画像評価用ファントムに関する画像データを生成する。換言すれば、画像処理機能114dは、補正基準領域における輝度値の差異を用いて第1のX線画像データと第2のX線画像データと第3のX線画像データとのうち少なくとも一つにおける輝度値を補正して、画像評価用ファントムに関する画像データを生成する。また、画像処理機能114dは、補正基準領域における輝度値の差異が画像の全領域に亘って補正された第1のX線画像データと第2のX線画像データとを差分することで、画像評価用ファントムに関する画像データを生成してもよい。このとき、画像処理機能114dは、補正基準領域における輝度値の差異を用いて第1のX線画像データと第2のX線画像データと第2のX線画像データとのうち少なくとも一つにおける輝度値を補正して、画像評価用ファントムに関する画像データを生成する。なお、画像処理機能114dは、画像評価用ファントムに関する画像データの生成に先立って、上記位置ずれの補正(レジストレーション)と輝度値の補正との両者を、実行してもよい。
【0061】
処理回路141は、算出機能141eにより、画像評価用ファントムに関する画像データに対して画像評価を実行する。画質評価の実行は、例えば、画像評価用ファントムに関する画像データの画質についてのパラメータの値を算出することである。すなわち、算出機能141eは、当該画像データの画質に関するパラメータの値を算出することで、当該画像評価を実行する。これにより、算出機能141eは、画質評価の結果を算出する。画質に関するパラメータは、例えば、信号雑音比(Signal-to-Noise Ratio:SNR)と、コントラストノイズ比(CNR)と、コントラストディテールカーブ(CD)と、モジュレーショントランスファーファンクション(MTF)とのうち少なくとも一つに対応する。なお、画質に関するパラメータは、上記CNR、CD、MTFに限定されず、他のパラメータであってもよい。画質に関するパラメータの値の算出方法は、既知の方法が適用可能であるため、説明は省略する。算出機能114eを実現する処理回路114は、算出部に相当する。
【0062】
処理回路141は、調整機能114fにより、算出機能141eによって算出されたパラメータの値と、画像評価用ファントムに関する画像データの画質の目標値とを比較する。当該目標値は、予め設定されて、記憶回路112に記憶される。パラメータの値が所定の閾値を超えた場合、調整機能114fは、パラメータの値に応じて撮影条件(X線条件とも称される)を調整する。調整機能114fを実現する処理回路114は、調整部に相当する。
【0063】
図1に示すX線診断装置1においては、各処理機能がコンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路112へ記憶されている。信号処理回路108及び処理回路114は、記憶回路112からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、プログラムを読み出した状態の信号処理回路108及び処理回路114は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。
【0064】
なお、
図1においては単一の処理回路114にて、制御機能114a、表示制御機能114b、取得機能114c、画像処理機能141d、算出機能141e、調整機能114fが実現するものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路114を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路114が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
【0065】
上記信号処理回路108及び処理回路114は、ハードウェア資源として、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサとROM(Read Only Memory)やRAM等のメモリとを有する。また、当該処理回路は、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)やフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)、他の複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)などのプロセッサにより実現されてもよい。
【0066】
以上、実施形態に係るX線診断装置1の全体構成について説明した。かかる構成のもと、実施形態に係るX線診断装置1は、画像評価用ファントムに関する画像データの評価に関する処理(以下、画像評価処理と呼ぶ)を実行する。以下、画像評価処理の手順について、
図10を参照して説明する。
【0067】
図10は、画像評価処理の手順の一例を示すフローチャートである。以下、説明を具体的にするために、第2のX線画像データは学習済みモデルから出力されたデータであって、画像評価処理の手順において位置ずれの補正および輝度値の補正が実行されるものとして説明する。
【0068】
(画像評価処理)
(ステップS101)
撮影台103に人体ファントムが設置される。このとき、当該人体ファントムには、マーカーが設けられているものとする。また、人体ファントムの設置に伴って、設置される人体ファントムの部位は、入力インターフェース109などを介したユーザの指示により入力される。入力インターフェース109を介したユーザの指示により、撮影部は、人体ファントムに対して第1のX線撮影を実行する。X線検出器107は、第1のX線撮影に伴って、X線を検出する。信号処理回路108は、第1のX線撮影によるX線の検出に応じて、第1のX線画像データを生成する。すなわち、信号処理回路108は、第1のX線撮影により第1のX線画像データを生成する。これらにより、人体ファントムを設置して第1のX線撮影が実行され、取得機能114cは、第1のX線画像データを取得する。
【0069】
なお、信号処理回路108は、第1のX線撮影によるX線の検出に応じて、第1の収集データを生成してもよい。このとき、画像処理機能141dは、人体ファントムの部位に応じた学習済みモデルに収集データを入力する。画像処理機能141dは、学習済みモデルから出力されたデータを、第1のX線画像データとして取得する。
【0070】
(ステップS102)
人体ファントムに対して数値評価用ファントムが撮影台103にさらに設置される。入力インターフェース109を介したユーザの指示により、撮影部は、第1のX線撮影と同じ撮影条件で、人体ファントムに対して第2のX線撮影を実行する。X線検出器107は、第2のX線撮影に伴って、X線を検出する。信号処理回路108は、第2のX線撮影によるX線の検出により、第2のX線画像データを生成する。すなわち、信号処理回路108は、第2のX線撮影により第2のX線画像データを生成する。これらにより、人体ファントムと数値評価用ファントムとを設置して第2のX線撮影が実行され、取得機能114cは、第2のX線画像データを取得する。
【0071】
(ステップS103)
画像処理機能141dは、人体ファントムの部位に応じた学習済みモデルを記憶回路112から読みだす。画像処理機能141dは、読み出された学習済みモデルに第2のX線画像データを入力する。画像処理機能141dは、学習済みモデルから出力されたデータを、第3のX線画像データとして取得する。すなわち、画像処理機能141dは、第2のX線画像データを画像処理に関する学習済みモデルに入力することで、第3のX線画像データを生成する。これらにより、取得機能114cは、第3のX線画像データを取得する。
【0072】
(ステップS104)
画像処理機能114dは、第1のX線画像データと第2のX線画像データまたは第3のX線画像データとにおける補正基準領域の画素値を用いて、第1のX線画像データと第2のX線画像データと第3のX線画像データとのうち少なくとも1つのデータに含まれる複数の輝度値を補正する。例えば、画像処理機能114dは、第1のX線画像データにおける補正基準領域(以下、第1基準領域と呼ぶ)に含まれる複数の画素に対応する複数の画素値に基づいて、第1基準領域における輝度値の代表値(以下、第1代表値と呼ぶ)を計算する。代表値は、例えば、平均値、中間値などである。
【0073】
画像処理機能114dは、第3のX線画像データにおける補正基準領域(以下、第2基準領域と呼ぶ)に含まれる複数の画素に対応する複数の画素値に基づいて、第2基準領域における輝度値の代表値(以下、第2代表値と呼ぶ)を計算する。画像処理機能114dは、第1代表値と第2代表値との差分(以下、輝度差と呼ぶ)を計算する。次いで、画像処理機能114dは、輝度差が低減するように(例えば、輝度差がゼロとなるように)、第1のX線画像データと第2のX線画像データと第3のX線画像データとのうち少なくとも一つにおける全領域の輝度値を補正する。これにより、第1のX線画像データと第3のX線画像データとのうち少なくとも一つに対する輝度値の補正(輝度補正)が完了する。上記説明では、輝度補正は、第3のX線画像データにおける補正基準領域を用いているが、これに限定されず、第2のX線画像データにおける補正基準領域を用いてもよい。なお、輝度補正の手法は、上記に限定されず、既知の手法が適宜利用可能である。また、輝度補正が実施されない場合、本ステップにおける処理はスキップされる。
【0074】
(ステップS105)
画像処理機能114dは、人体ファントムにおけるマーカーを用いて、第1のX線画像データと、第3のX線画像データとの位置合わせを実行する。具体的には、画像処理機能114dは、第1のX線画像データにおいて、マーカーの位置を検出する。画像処理機能114dは、第3のX線画像データにおいて、マーカーの位置を検出する。マーカーの位置の検出は、セグメンテーション処理、閾値処理など、既知の手法で実現可能であるため、説明は省略する。また、上記マーカーの位置の検出は、第2のX線画像データにおいて検出されてもよい。画像処理機能114dは、第1のX線画像データにおけるマーカーの位置と、第2のX線画像データまたは第3のX線画像データにおけるマーカーの位置との位置合わせを実行する。位置合わせの処理(レジストレーション、位置ずれ補正)の手法は、上記に限定されず、既知の手法が適宜利用可能である。また、本ステップにおける位置合わせと、ステップS104における輝度補正とを実行する順序は、上記に限定されず、位置合わせを実行してから輝度補正が実行されてもよい。なお、人体ファントムにマーカーが設けられていない場合、本ステップにおける処理はスキップされる。
【0075】
(ステップS106)
輝度値の補正(ステップS104)および位置合わせ後(ステップS105)において、画像処理機能114dは、第1のX線画像データと、第3のX線画像データとに基づいて、画像評価用ファントムに関する画像データを生成する。具体的には、画像処理機能114dは、第1のX線画像データと第3のX線画像データとの差分を計算することで、画像評価用ファントムに関する画像データを生成する。なお、画像処理機能114dは、第1のX線画像データと第3のX線画像データとに対してそれぞれ対数変換を実施し、対数変換された第1のX線画像データと第3のX線画像データとの差分を計算して、画像評価用ファントムに関する画像データを生成してもよい。また、輝度補正および位置ずれ補正が実施されない場合などの一般的な場合では、本ステップでは、画像処理機能114dは、第1のX線画像データと第3のX線画像データとに基づいて、画像評価用ファントムに関する画像データを生成する。本ステップにおいて、表示制御機能114bは、画像評価用ファントムに関する画像データを、ディスプレイ113に表示してもよい。
【0076】
(ステップS107)
算出機能114eは、画像評価用ファントムに関する画像データに対して画質評価を実行する。例えば、算出機能114eは、生成された画像データに基づいて、画像評価に関するパラメータの値を算出する。これにより、算出機能141eは、画質評価の結果を算出する。算出機能114eは、生成された画像データにおける画素値を用いて、例えば、信号雑音比(Signal-to-Noise Ratio:SNR)、コントラストノイズ比(CNR)、コントラストディテールカーブ(CD)、モジュレーショントランスファーファンクション(MTF)などを算出する。なお、画像評価に関するパラメータは、上記に限定されず、算出機能114eは、生成された画像データにおける画素値を用いて、画質評価に関する他のパラメータの値を算出してもよい。
【0077】
(ステップS108)
表示制御機能114bは、算出された画質評価の結果を、ディスプレイ113に表示する。例えば、表示制御機能114bは、生成された画像データと、パラメータの値とを、ディスプレイ113に表示する。なお、表示制御機能114bは、生成された画像データまたはパラメータの値を、ディスプレイ113に表示してもよい。例えば、パラメータの値が算出されない場合、表示制御機能114bは、ステップS106において生成された画像データを表示する。以上により、画像評価処理は終了する。
【0078】
以下、画像評価の結果、すなわち画像評価に関するパラメータの値を用いて撮影条件を調整する処理(以下、撮影条件調整処理と呼ぶ)について説明する。撮影条件調整処理は、
図1に示す画像評価処理におけるステップS108に続いて実行される。
【0079】
図11は、撮影条件調整処理の手順の一例を示すフローチャートである。以下、説明を具体的にするために、上記画像評価処理では、画像評価に関するパラメータとして、コントラストノイズ比(CNR)およびコントラストディテールカーブ(CD)の値を算出するものとして、説明する。
【0080】
(撮影条件調整処理)
(ステップS111)
調整機能114fは、記憶回路112から画質の目標値を読み出す。調整機能114fは、算出機能114eにより算出されたパラメータの値と目標値とを比較する。表示制御機能114bは、パラメータの値が目標値に到達しているか否かを、ディスプレイ113に表示する。例えば、表示制御機能114bは、パラメータの値が目標値に到達している場合は「OK」を、パラメータの値が目標値に到達していない場合は「NG」を、文字列としてディスプレイ113に表示する。このとき、表示制御機能114bは、生成された画像データと、パラメータの値とを、ディスプレイ113に表示してもよい。
【0081】
(ステップS112)
パラメータの値が所定の閾値未満である場合(ステップS112のYes)、ステップS113の処理が実行される。パラメータの値が所定の閾値を超える場合(ステップS112のNo)、撮影条件の調整は実行されず、撮影条件調整処理は終了する。
【0082】
(ステップS113)
パラメータの値が目標値に到達していない場合、調整機能114fは、パラメータの値に応じて、撮影条件もしくは画像処理条件を調整する。例えば、調整機能114fは、パラメータの値と目標値との差分を計算する。次いで、調整機能114fは、当該差分に対する撮影条件(例えば、管電流時間積、管電圧、フィルタの種類など)の対応表(Look Up Table)を記憶回路12から読みだす。調整機能114fは、計算された差分と対応表とに基づいて、撮影条件を調整する。また、パラメータの値が目標値に到達していない場合、調整機能114fは、複数ある学習済みモデルの切り替え、画像処理パラメータの調整を行ってもよい。あるいは、パラメータの値が目標値に到達していない場合、調整機能114fは、学習済みモデルの強度やその他の処理パラメータの変更を行ってもよい。また、調整機能114fは、パラメータの値に応じてX線条件や画像処理条件、機械学習モデルを調整してもよい。
【0083】
具体的には、調整機能114fは、計算された差分とLUTとを照合することにより、撮影条件を調整する。例えば、パラメータの値がCNRまたはCDである場合、調整機能114fは、撮影条件における管電流時間積(mAs)および/または管電圧を上昇させるように、撮影条件を調整する。このとき、調整機能114fは、X線絞り器106におけるフィルタの厚みを下げるように、すなわち、線質を硬くするように、X線の曝射に用いられるフィルタを変更する。
【0084】
以上により、調整機能114fは、現在の撮影条件を、計算された差分に対応する撮影条件に変更する。調整機能114fは、変更された撮影条件を、新たな撮影条件として記憶回路112に記憶させる。このとき、表示制御機能114bは、調整された撮影条件を、ディスプレイ113に表示してもよい。
【0085】
ステップS113の後、ステップS101以降の処理が繰り返される。すなわち、調整された撮影条件で第1のX線撮影と第2のX線撮影が再度実行され、パラメータの値が再度算出される。続いて、再度算出されたパラメータの値が目標値に到達しているか否かを判定することを、当該パラメータの値が目標値に到達するまで繰り返される。
【0086】
以上に述べた実施形態に係るX線診断装置1は、X線を発生するX線管105と当該X線を検出するX線検出器107とを用いて、人体を模擬した人体ファントムに対する第1のX線撮影と、当該人体ファントムおよび画像評価用ファントムに対する第2のX線撮影とを実行し、第1のX線撮影により第1のX線画像データを生成し、第2のX線撮影により第2のX線画像データを生成し、第2のX線画像データを画像処理に関する機械学習モデルに入力することで第3のX線画像データを生成し、第1のX線画像データと第3のX線画像データとに基づいて、画像評価用ファントムに関する画像データ(以下、画像評価データと呼ぶ)を生成する。例えば、実施形態に係るX線診断装置1における画像評価データは、第1のX線画像データと第3のX線画像データとの差分による差分データ、または第1のX線画像データと第3のX線画像データとを用いた除算による除算データに相当する。
【0087】
これにより、実施形態に係るX線診断装置1によれば、臨床画像などを用いて学習された学習済みモデルに、人体ファントムおよび画像評価用ファントムのX線投影による第2のX線画像データが入力されることで、学習済みモデルによる画像処理の効果を有する画像評価データを生成することができる。このため、実施形態に係るX線診断装置1によれば、画像評価用ファントムに関する画像データをディスプレイ113に表示することができる。
【0088】
例えば、実施形態に係るX線診断装置1における学習済みモデルが、学習済みモデルに入力されたX線画像データに比べてノイズが低減されたX線画像データ、および/または学習済みモデルに入力されたX線画像データに比べてボケが低減されたX線画像データを出力するモデルである場合、学習済みモデルによる臨床画像に対する性能(ノイズ低減および/またはボケ低減など)を反映した画像評価データがディスプレイ113に表示される。これにより、実施形態に係るX線診断装置1によれば、ユーザは、学習済みモデルによる臨床画像に対する性能を反映した画像評価データをディスプレイ113にて視認することで、ノイズ低減、および/またはボケの低減に関する画像評価を実施することができる。例えば、X線画像データに関する学習済みモデルの出力に基づいて、入力されたX線画像データにおける信号成分がノイズおよび/またはボケと共に除去されずに適切に維持できているか観測することで、学習済みモデルによる性能を評価することができる。
【0089】
また、実施形態に係るX線診断装置1において、人体ファントムに関連する部位と学習済みモデルの生成において用いられる教師データに関連する部位とは同一である。人体ファントムが示す部位と教師データが示す部位とは同一であるため、実施形態に係るX線診断装置1によれば、学習済みモデルの性能の評価に関して、より好適な画像評価データを生成することができる。これにより、実施形態に係るX線診断装置1によれば、より正解な画像評価を実施することができる。
【0090】
また、実施形態に係るX線診断装置1は、画像評価データに対して画質評価を実行し、画質評価の結果を算出する。また、実施形態に係るX線診断装置1は、算出された画質評価の結果を表示する。また、実施形態に係るX線診断装置1で実行される画質評価は、画像評価データの画質についてのパラメータの値を算出することである。また、実施形態に係るX線診断装置1における当該パラメータは、コントラストノイズ比(Contrast-to-Noise Ratio:CNR)と、コントラストディテールカーブ(Contrast Detail curve:CD)と、モジュレーショントランスファーファンクション(Modulation Transfer Function:MTF)とのうち少なくとも一つに対応する。これにより、本実施形態に係るX線診断装置1によれば、画質評価に関するパラメータの値および/または画像評価データをディスプレイ113に表示することができ、ユーザは、ディスプレイ113に表示された画質評価に関するパラメータの値および/または画像評価データを視認することで、学習済みモデルに関する数値評価(画像評価)を実施することができる。
【0091】
また、実施形態に係るX線診断装置1における第1のX線画像データと第2のX線画像データとにおいて、人体ファントムと、第1のX線撮影および第2のX線撮影に関する撮影装置との相対的な位置関係は同一である。また、実施形態に係るX線診断装置1における人体ファントムは、画像評価用ファントムを支持する支持部を有し、第2のX線撮影において、画像評価用ファントムは支持部により支持される。これらにより、実施形態に係るX線診断装置1によれば、人体ファントムに対する画像評価用ファントムの相対的な位置関係を一定にすることができ、画像評価データの生成精度を向上させることができる。
【0092】
例えば、過去の撮影と現在の撮影とによる画像評価データの比較をユーザが所望する場合、実施形態に係るX線診断装置1によれば、例えば、臨床を模擬した人体ファントムに溝(支持部)を設けて、支持部に数値評価用ファントムを挿入(配置)することができる。このため、実施形態に係るX線診断装置1によれば、数値評価用のファントムの配置の再現性を、容易に高めることができ、過去の撮影におけるファントムの配置を再現することができる。これらのことから、実施形態に係るX線診断装置1によれば、過去の撮影と現在の撮影とにおける画像評価データ(画質評価)の比較および/または数値評価の比較を、容易に実現することができる。また、実施形態に係るX線診断装置1によれば、人体ファントムに支持部を設けたことで、ファントムにユーザが接触せずに数値評価ファントムのみを出し入れすることができる。これにより、実施形態に係るX線診断装置1によれば、X線画像データ間で描出物の位置をより一致させてX線画像データを収集できる。さらには、描出物の位置がより一致しているので、画像評価データを高精度に算出することができる。
【0093】
また、実施形態に係るX線診断装置1は、第1のX線画像データにおける人体ファントムに設けられたマーカーの位置と、第2のX線画像データまたは第3のX線画像データにおけるマーカーの位置と、を用いて、第1のX線画像データと第2のX線画像データまたは第3のX線画像データとの位置ずれを補正する。実施形態に係るX線診断装置1によれば、位置ずれによる補正ができるため、差分データ、または除算データなどの画像評価データを高精度に算出することができる。これにより、画質評価および数値評価の精度を向上させることができる。
【0094】
また、実施形態に係るX線診断装置1は、第2のX線画像データまたは第3のX線画像データにおける画像評価用ファントムとは異なる領域の画素値と、第1のX線画像データにおける当該領域における画素値と、を用いて、第1のX線画像データと第2のX線画像データと第3のX線画像データとのうち少なくとも一つのデータに含まれる複数の輝度値を補正する。実施形態に係るX線診断装置1によれば、輝度値の補正ができるため、差分データ、または除算データなどの画像評価データを高精度に算出することができる。これにより、画質評価および数値評価の精度を向上させることができる。
【0095】
また、実施形態に係るX線診断装置1は、算出されたパラメータの値と画像評価用ファントムに関する画像データの画質の目標値とを比較し、当該パラメータの値が当該目標値に到達しているか否かを表示する。また、実施形態に係るX線診断装置1は、算出されたパラメータの値が当該目標値に到達していない場合、当該パラメータの値に基づいて撮影条件を調整し、調整された撮影条件で第1のX線撮影と第2のX線撮影を再度実行して、パラメータの値を再度算出し、再度算出されたパラメータの値が目標値に到達しているか否かを判定することを、パラメータの値が目標値に到達するまで繰り返す。これにより、実施形態に係るX線診断装置1によれば、数値評価を満たすように、X線撮影に関する撮影条件を調整(設定)することができる。
【0096】
これらのことから、実施形態に係るX線診断装置1によれば、第2のX線画像データに対して学習済みモデル(AI)による処理を実行するため、数値評価用ファントムだけの画像に比べて臨床に近い画像(第3のX線画像データ)を生成することができる。このため、実施形態に係るX線診断装置1によれば、より臨床の結果を反映した処理結果に相当する第3のX線画像データを取得することができる。加えて、実施形態に係るX線診断装置1によれば、第1のX線画像データと第3のX線画像データとに基づいて、例えばサブトラクションにより、数値評価用のファントムだけを描出した画像(画像評価データ)を生成すことができ、従来と同じ方法で数値評価を実行することができる。このため、実施形態に係るX線診断装置1によれば、数値評価用ファントムだけの画像に比べて臨床の結果を反映した数値評価の結果を得ることができ、臨床の性能を反映した数値評価を実行することができる。
【0097】
また、実施形態に係るX線診断装置1によれば、学習が完了していないモデルの損失関数すなわち学習中のモデル(以下、学習途中モデルと呼ぶ)の損失関数に、数値評価の結果を用いることができる。また、実施形態に係るX線診断装置1によれば、複数の学習途中モデルの選定に関して、数値評価の結果を用いることができる。例えば、複数の学習途中モデルから最終的な学習済みモデルを1つ選定する場合、当該選定の過程で様々な評価関数や学習途中のモデルを用いて評価を行う。例えば、最終Epoch(例えば、学習時の最終的なエポック数)や、定量的に選ぶために評価関数が高いモデルが、複数の学習途中モデルから選定される。評価関数は、一般的に損失関数をそのまま流用されることがおおいが、本実施形態のように、評価関数を損失関数とは異なる、よりAIの目的となるものを直接表す指標(数値評価の結果)を選ぶことで、より目的に即したモデルを選定することができる。
【0098】
すなわち、本実施形態では、画質が高いAIモデルを選定することが目的であるため、画像処理で一般的なL1 Lossを評価関数とするのではなく、例えば、本実施形態で求められた画像データからCNR等を求め、当該CNRを評価関数とすることで最良なモデルを選定することができる。本実施形態によれば、モデル(AI)が生成した第3のX線画像データの損失関数/評価関数が、本実施形態により得られた画像データを定量解析した結果、という構造となる。これらのことから、実施形態に係るX線診断装置1によれば、学習が完了していないモデルの損失関数すなわち学習中のモデル(以下、学習途中モデルと呼ぶ)の損失関数に、数値評価の結果を用いることができるため、画質が高い、すなわちより高性能な学習済みモデルを選定することができる。
【0099】
(第1変形例)
本変形例は、画像評価用ファントムに関する画像データ(画像評価データ)のモジュレーショントランスファーファンクション(MTF)を画質に関するパラメータとして算出する際に関するものである。MTFが算出される場合、画像評価データにおいてノイズが多くなると、画像評価ファントムにおけるエッジの評価が難しくなることがある。このため、本変形例では、画像評価データにおけるノイズを低減することについて説明する。
【0100】
制御機能114aによる制御により、撮影部は、複数の第1のX線撮影を実行する。信号処理回路108は、第1のX線撮影によるX線の検出により、複数の第1のX線画像データを生成する。処理回路114は、取得機能114cにより、実施形態における第1のX線画像データを含む複数の第1のX線画像データを取得する。複数の第1のX線画像データ各々の取得の手順は、実施形態と同様なため、説明は省略する。
【0101】
また、制御機能114aによる制御により、撮影部は、複数の第2のX線撮影を実行する。信号処理回路108は、第2のX線撮影によるX線の検出により、複数の第2のX線画像データを生成する。処理回路114は、取得機能114cにより、実施形態における第2のX線画像データを含む複数の第2のX線画像データを取得する。複数の第2のX線画像データ各々の取得の手順は、実施形態と同様なため、説明は省略する。複数の第1のX線撮影の回数と、複数の第2のX線撮影の回数とは同数であって、予め設定される。なお、第1のX線撮影の撮影回数および第2のX線撮影の撮影回数は、入力インターフェース109を介したユーザの指示により、適宜変更可能である。取得機能114cは、複数の第1のX線画像データと複数の第2のX線画像データとを、記憶回路112に記憶させる。
【0102】
処理回路114は、画像処理機能114dにより、複数の第1のX線画像データを加算平均して第1平均画像データを生成する。画像処理機能114dは、第1平均画像データを記憶回路112に記憶させる。
【0103】
処理回路114は、画像処理機能141dにより、人体ファントムの部位に応じた学習済みモデルを記憶回路112から読みだす。画像処理機能141dは、読み出された学習済みモデルに複数の第2のX線画像データをそれぞれ入力する。画像処理機能141dは、学習済みモデルから出力されたデータを、複数の第3のX線画像データとして取得する。すなわち、画像処理機能141dは、複数の第2のX線画像データを画像処理に関する学習済みモデルに入力することで、複数の第3のX線画像データを生成する。これらにより、取得機能114cは、複数の第2のX線画像データを学習済みモデルに入力することで複数の第3のX線画像データを取得する。
【0104】
処理回路114は、画像処理機能114dにより、第1平均画像データと複数の第3のX線画像データとに基づいて生成した、画像評価用ファントムに関する複数の画像データ(複数の画像評価データ)を生成する。例えば、画像処理機能114dは、第1平均画像データと複数の第3のX線画像データとの差分、または第1平均画像データと複数の第3のX線画像データとを用いた除算により、画像評価用ファントムに関する複数の画像データ(複数の画像評価データ)を生成する。なお、画像評価データの生成前において、実施形態と同様に、位置ずれ補正および/または輝度補正が実行されてもよい。
【0105】
処理回路114は、算出機能141eにより、画像評価用ファントムに関する複数の画像データのモジュレーショントランスファーファンクション(MTF)を算出する。これにより算出機能141eは、画像評価データの画質を評価する。すなわち、画像評価用ファントムに関する前記複数の画像データに対し、それぞれ画質評価を実行する。画像評価データの画質の評価は、実施形態と同様なため、説明は省略する。次いで、前記複数の画質評価の結果に対し加算平均が実行される。
【0106】
以上に述べた実施形態の第1変形例に係るX線診断装置1は、第1のX線画像データを含む複数の第1のX線画像データを取得し、第2のX線画像データを含む複数の第2のX線画像データを取得し、複数の第1のX線画像データを加算平均して第1平均画像データを生成し、複数の第2のX線画像データを学習済みモデルに入力することで複数の第3のX線画像データを取得し、第1平均画像データと複数の第3のX線画像データとに基づいて生成した、画像評価用ファントムに関する複数の画像データに対し、それぞれ画質評価を実行し、複数の画質評価の結果に対し加算平均を実行する。また、第1変形例に係るX線診断装置1は、画像評価データのモジュレーショントランスファーファンクション(MTF)を算出することにより、画像評価データの画質を評価する。
【0107】
第1変形例に係るX線診断装置1によれば、複数の第1のX線画像データを加算平均して第1平均画像データを生成することで、複数の第1のX線画像データにおけるノイズを低減することができる。これにより、第1変形例に係るX線診断装置1によれば、実施形態に比べてノイズが低減された第1平均画像データと第3のX線画像データとを用いてMTFが算出されるため、数値評価用ファントムのエッジが評価しやすくなる。すなわち、第1変形例に係るX線診断装置1によれば、実施形態よりもノイズの影響の少ない画像評価データを得ることができるため、MTFに関して正確な数値評価を行うことができる。他の効果は、実施形態と同様なため、説明は省略する。
【0108】
(第2変形例)
本変形例は、第1変形例と同様に、画像評価データのMTFを画質に関するパラメータとして算出する際に関するものである。以下、第1変形例との相違する処理について説明する。
【0109】
処理回路114は、取得機能114cにより、複数の第1のX線撮影を実行により生成された複数の第1のX線画像データを取得する。取得機能114cは、複数の第1のX線撮影を実行により生成された複数の第2のX線画像データを取得する。取得機能114cは、複数の第1のX線画像データと複数の第2のX線画像データとを、記憶回路112に記憶させる。
【0110】
処理回路114は、画像処理機能141dにより、人体ファントムの部位に応じた学習済みモデルを記憶回路112から読みだす。画像処理機能141dは、学習済みモデルに、複数の第2のX線画像データ各々を入力することで、複数の第3のX線画像データを生成する。これらにより、取得機能141cは、複数の第2のX線画像データを学習済みモデルにそれぞれ入力することで、複数の第3のX線画像データを取得する。取得機能114cは、複数の第3のX線画像データを、記憶回路112へ記憶させる。
【0111】
処理回路114は、画像処理機能114dにより、複数の第1のX線画像データと複数の第3のX線画像データとに基づいて、複数の画像データを生成する。例えば、画像処理機能114dは、複数の第1のX線画像データ各々と複数の第3のX線画像データ各々との差分、または複数の第1のX線画像データ各々と複数の第3のX線画像データ各々とを用いた除算により、複数の画像データを生成する。なお、複数の画像データの生成前において、実施形態と同様に、位置ずれ補正および/または輝度補正が実行されてもよい。
【0112】
処理回路114は、画像処理機能114dにより、生成された複数の画像データを加算平均して、画像評価用ファントムに関する画像データ(画像評価データ)を生成する。処理回路114は、算出機能141eにより、画像評価データのモジュレーショントランスファーファンクション(MTF)を算出する。これにより、算出機能141eは、画像評価データの画質を評価する。画像評価データの画質の評価は、実施形態と同様なため、説明は省略する。
【0113】
以上に述べた実施形態の第2変形例に係るX線診断装置1は、第1のX線画像データを含む複数の第1のX線画像データを取得し、第2のX線画像データを含む複数の第2のX線画像データを取得し、複数の第2のX線画像データを機械学習モデルにそれぞれ入力することで複数の第3のX線画像データを取得し、複数の第1のX線画像データと複数の第3のX線画像データとに基づいて、複数の画像データを生成し、生成された複数の画像データを加算平均して、画像評価用ファントムに関する画像データを生成する。本変形例による効果は、第1変形例と同様なため、説明は省略する。
【0114】
(第3変形例)
本変形例は、第1変形例および第2変形例と同様に、画像評価データのMTFを画質に関するパラメータとして算出する際に関するものである。以下、第2変形例との相違する処理について説明する。すなわち、複数の第1のX線画像データと複数の第2のX線画像データと複数の第3のX線画像データとの取得、および複数の画像データの生成は、第2の変形例と同様なため、説明は省略する。
【0115】
処理回路114は、算出機能141eにより、複数の第1のX線画像データと複数の第3のX線画像データとに基づいて生成した複数の画像データに対しそれぞれ画質評価を実行する。これにより、算出機能141eは、複数の画像データに対応する複数の画質評価の結果、すなわち画像評価データのモジュレーショントランスファーファンクション(MTF)を算出する。次いで、算出機能141eは、複数の画像データに対応する複数の画質評価の結果に対し加算平均を実行する。以上により、算出機能141eは、画像評価データの画質を評価する。画像評価データの画質の評価は、実施形態と同様なため、説明は省略する。
【0116】
以上に述べた実施形態の第3変形例に係るX線診断装置1は、第1のX線画像データを含む複数の第1のX線画像データを取得し、第2のX線画像データを含む複数の第2のX線画像データを取得し、複数の第2のX線画像データを機械学習モデルにそれぞれ入力することで複数の第3のX線画像データを取得し、複数の第1のX線画像データと複数の第3のX線画像データとに基づいて生成した複数の画像データに対しそれぞれ画質評価を実行し、複数の画質評価の結果に対し加算平均を実行する。本変形例による効果は、第1変形例および第2変形例などと同様なため、説明は省略する。
【0117】
(第4変形例)
本変形例は、第1乃至第3変形例と同様に、画像評価データのMTFを画質に関するパラメータとして算出する際に関するものである。以下、第3変形例との相違する処理について説明する。すなわち、複数の第1のX線画像データと複数の第2のX線画像データと複数の第3のX線画像データとの取得は、第2の変形例と同様なため、説明は省略する。
【0118】
処理回路114は、算出機能141eにより、複数の第1のX線画像データを加算平均して第1平均画像データを生成する。また、算出機能141eは、複数の第2のX線画像データを機械学習モデルに入力することで取得した複数の第3のX線画像データを加算平均して、第3平均画像データを生成する。画像処理機能114dは、第1平均画像データと第3平均画像データとに基づいて、画像評価用ファントムに関する画像データ(画像評価データ)を生成する。例えば、画像処理機能114dは、第1平均画像データと第3平均画像データとの差分、または第1平均画像データと第3平均画像データとを用いた除算により、画像評価データを生成する。算出機能141eは、画像評価データのモジュレーショントランスファーファンクション(MTF)を算出する。これにより、算出機能141eは、画像評価データの画質を評価する。画像評価データの画質の評価は、実施形態と同様なため、説明は省略する。
【0119】
以上に述べた実施形態の第4変形例に係るX線診断装置1は、第1のX線画像データを含む複数の第1のX線画像データを取得し、第2のX線画像データを含む複数の第2のX線画像データを取得し、複数の第1のX線画像データを加算平均して第1平均画像データを生成し、複数の第2のX線画像データを前記機械学習モデルに入力することで取得した複数の第3のX線画像データを加算平均して第3平均画像データを生成し、第1平均画像データと第3平均画像データとに基づいて、画像評価用ファントムに関する前記画像データを生成する。本変形例による効果は、第1乃至第3変形例などと同様なため、説明は省略する。
【0120】
(第5変形例)
本変形例は、第1乃至第4変形例と同様に、画像評価データのMTFを画質に関するパラメータとして算出する際に関するものである。以下、第1乃至第4変形例との相違する処理について説明する。
【0121】
本変形例では、ステップS101乃至S107までの処理を撮影回数に応じて繰り返す。これにより、処理回路141は、算出機能141eにより、撮影回数に応じた複数のパラメータの値を算出する。次いで、算出機能141eは、複数のパラメータの値に対して加算平均することにより、ステップS108で用いられるパラメータの値を算出する。本変形例による効果は、第1変形例と同様なため、説明は省略する。
【0122】
(応用例)
上記実施形態および第1乃至第5変形例では、X線診断装置を例として説明したが、応用例として、X線CT装置で画像評価処理および撮影条件調整処理を実行することも可能である。このとき、数値評価用ファントムとしては、既知のワイヤファントムが用いられる。X線CT装置で画像評価処理および撮影条件調整処理を実現する場合、第1のX線画像データ、第2のX線画像データ、第3のX線画像データは、それぞれ再構成後の画像データ(以下、再構成後画像データと呼ぶ)に対応するものとなる。なお、再構成画像データは、断面変換後の任意の断面の画像であってもよいし、ボリュームデータであってもよい。本応用例における画像評価処理および撮影条件調整処理の処理手順および効果は、実施形態と同様であるため、説明は省略する。
【0123】
本実施形態における技術的思想を画像評価方法で実現する場合、当該画像評価方法は、人体を模擬した人体ファントムに対する第1のX線撮影により生成された第1のX線画像データを取得し、人体ファントムおよび画像評価用ファントムに対する第2のX線撮影により生成された第2のX線画像データを取得し、第2のX線画像データを画像処理に関する機械学習モデルに入力することで、第3のX線画像データを取得し、第1のX線画像データと第3のX線画像データとに基づいて、画像評価用ファントムに関する画像データを生成する。画像評価方法に対応する処理手順は、画像評価処理の手順に対応するため、説明は省略する。また、画像評価方法による効果は、実施形態と同様なため、説明は省略する。
【0124】
実施形態における技術的思想を画像評価プログラムで実現する場合、当該画像評価プログラムは、コンピュータに、人体を模擬した人体ファントムに対する第1のX線撮影により生成された第1のX線画像データを取得し、当該人体ファントムおよび画像評価用ファントムに対する第2のX線撮影により取得された第2のX線画像データを画像処理に関する機械学習モデルに入力することで第3のX線画像データを取得し、当該第1のX線画像データと当該第3のX線画像データとに基づいて、当該画像評価用ファントムに関する画像データを生成すること、を実現させる。
【0125】
例えば、X線診断装置1やX線CT装置などのコンピュータに画像評価プログラムをインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても、画像評価処理を実現することができる。このとき、コンピュータに当該処理を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(ハードディスクなど)、光ディスク(CD-ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記憶媒体に格納して頒布することも可能である。また、画像評価プログラムの頒布は、上記媒体に限定されず、例えば、インターネットを介したダウンロードなど、電気通信機能を用いて頒布されてもよい。画像評価プログラムにおける処理手順および効果は、実施形態と同様なため、説明は省略する。
【0126】
以上説明した少なくともひとつの実施形態、変形例、応用例等によれば、臨床の性能を反映した評価に関する画像を生成することができる。
【0127】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0128】
1 X線診断装置
101 基台
102 スタンド
103 撮影台
104 圧迫板
105 X線管
106 X線絞り器
107 X線検出器
108 信号処理回路
109 入力インターフェース
110 昇降駆動装置
111 X線高電圧装置
112 記憶回路
113 ディスプレイ
114 処理回路
114a 制御機能
114b 表示制御機能
114c 取得機能
114d 画像処理機能
114e 算出機能
114f 調整機能