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  • 特開-非水電解質二次電池用電極 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107590
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池用電極
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20240802BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240802BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20240802BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240802BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20240802BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240802BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20240802BHJP
   C08L 27/12 20060101ALI20240802BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240802BHJP
   C08L 29/10 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/13
H01M4/525
H01M4/505
H01M10/0568
H01M10/052
H01B1/06 A
C08L27/12
C08K3/22
C08L29/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011596
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】相磯 侑花
(72)【発明者】
【氏名】在原 一樹
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 学
【テーマコード(参考)】
4J002
5G301
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
4J002BD12W
4J002BD14X
4J002BD15W
4J002BD16X
4J002BE04W
4J002DA006
4J002DA016
4J002DA026
4J002DA116
4J002DC006
4J002DE096
4J002DE116
4J002DE136
4J002DE186
4J002DH046
4J002DJ006
4J002FD116
4J002FD206
4J002GF00
4J002GJ02
4J002GQ00
4J002GQ02
5G301CD01
5H029AJ06
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM07
5H029DJ08
5H029DJ09
5H029EJ12
5H029HJ00
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ20
5H050AA12
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA02
5H050DA11
5H050DA13
5H050EA24
5H050EA28
5H050HA00
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA17
(57)【要約】
【課題】非水電解質二次電池において、レート特性を向上させうる手段を提供する。
【解決手段】電極活物質およびバインダを含有する電極活物質層を含む非水電解質二次電池用電極において、下記化学式1

化学式1の各符号は、明細書において定義される通りである、
で表される構造単位を有し、Zの少なくとも一部がアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子またはアンモニウム基であるフッ素系高分子電解質からなる第1のバインダ、および、ポリ(フッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)ポリマーからなる第2のバインダを、電極活物質層に含ませる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極活物質およびバインダを含有する電極活物質層を含む非水電解質二次電池用電極であって、
前記バインダが、下記化学式1
【化1】

化学式1において、
、XおよびXは、それぞれ独立して、ハロゲン原子または炭素数1以上3以下のパーフルオロアルキル基であり、
aおよびgは、0≦a<1、0<g≦1、a+g=1を満たす数であり、
bは、0以上8以下の整数であり、
cは、0または1であり、
d、eおよびfは、それぞれ独立して、0以上6以下の整数であり、0<d+e+fを満たし、
およびRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1以上10以下のパーフルオロアルキル基またはフルオロクロロアルキル基であり、
は、COOZ、SOZ、POまたはPOHZ(Zは、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子またはアンモニウム基である。)である。
で表される構造単位を有し、Zの少なくとも一部がアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子またはアンモニウム基であるフッ素系高分子電解質からなる第1のバインダと、ポリ(フッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)ポリマーからなる第2のバインダとを含む、非水電解質二次電池用電極。
【請求項2】
前記電極活物質層における前記第1のバインダと前記第2のバインダとの質量比(第1のバインダ:第2のバインダ)が20:80~80:20である、請求項1に記載の非水電解質二次電池用電極。
【請求項3】
前記バインダを前記電極活物質層における質量割合で含む混合バインダの電解液吸液率(25℃)が15%以上であり、リチウムイオンに対するイオン伝導率(25℃)が0.15mS/cm以上である、請求項1に記載の非水電解質二次電池用電極。
【請求項4】
前記化学式1におけるZがリチウムである、請求項1に記載の非水電解質二次電池用電極。
【請求項5】
前記フッ素系高分子電解質が、テトラフルオロエチレンとパーフルオロ[2-(フルオロスルホニルエトキシ)プロピルビニルエーテル]との共重合体またはそのリチウム化物である、請求項1に記載の非水電解質二次電池用電極。
【請求項6】
非水電解質二次電池用正極であり、前記電極活物質が、下記一般式(1):
LiNiMnCo (1)
式中、a、b、c、d、xは、0.98≦a≦1.2、0.8≦b≦0.9、0<c≦0.2、0<d≦0.2、0≦x≦0.2、b+c+d+x=1を満たし、MはTi、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、Sr、Crから選ばれる少なくとも1種の元素である、
で表される組成を有する複合酸化物である、請求項1に記載の非水電解質二次電池用電極。
【請求項7】
正極活物質層と、電解質層と、負極活物質層と、がこの順に積層されてなる発電要素を備え、
前記正極活物質層または前記負極活物質層の少なくとも1つが、請求項1~6のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用電極を含む、非水電解質二次電池。
【請求項8】
前記電解質層に含まれる電解液が、フッ化リン酸系のリチウム塩を含む、請求項7に記載の非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池用電極に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境・エネルギー問題の解決へ向けて、種々の電気自動車の普及が期待されている。これら電気自動車の普及の鍵を握るモータ駆動用電源などの車載電源として、二次電池の開発が鋭意行われている。二次電池としては、高エネルギー密度、高出力が期待できるリチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池に注目が集まっている。
【0003】
ここで、特許文献1には、電極活物質層に含まれるバインダとして、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)とフッ素系高分子電解質とを併用することにより、電池の耐久性等を向上させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-33286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者らが検討を行ったところ、特許文献1に記載の技術を用いた非水電解質二次電池は、十分なレート特性を発揮できない場合があることが判明した。
【0006】
そこで本発明は、非水電解質二次電池において、レート特性を向上させうる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その過程で、二次電池を構成する電極活物質層に2種の異なる所定のバインダを含ませることにより、上記課題が解決されうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明の一形態によれば、電極活物質およびバインダを含有する電極活物質層を含む非水電解質二次電池用電極が提供される。そして、当該電極に含有される前記バインダは、下記化学式1
【0009】
【化1】
【0010】
化学式1において、
、XおよびXは、それぞれ独立して、ハロゲン原子または炭素数1以上3以下のパーフルオロアルキル基であり、
aおよびgは、0≦a<1、0<g≦1、a+g=1を満たす数であり、
bは、0以上8以下の整数であり、
cは、0または1であり、
d、eおよびfは、それぞれ独立して、0以上6以下の整数であり、0<d+e+fを満たし、
およびRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1以上10以下のパーフルオロアルキル基またはフルオロクロロアルキル基であり、
は、COOZ、SOZ、POまたはPOHZ(Zは、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子またはアンモニウム基である。)である。
で表される構造単位を有し、Zの少なくとも一部がアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子またはアンモニウム基であるフッ素系高分子電解質からなる第1のバインダと、ポリ(フッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)ポリマーからなる第2のバインダとを含む点に特徴がある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、非水電解質二次電池において、レート特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態である、積層型(扁平型)の非双極型(内部並列接続タイプ)二次電池を模式的に表した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一形態は、電極活物質およびバインダを含有する電極活物質層を含む非水電解質二次電池用電極であって、
前記バインダが、下記化学式1
【0014】
【化2】
【0015】
化学式1において、
、XおよびXは、それぞれ独立して、ハロゲン原子または炭素数1以上3以下のパーフルオロアルキル基であり、
aおよびgは、0≦a<1、0<g≦1、a+g=1を満たす数であり、
bは、0以上8以下の整数であり、
cは、0または1であり、
d、eおよびfは、それぞれ独立して、0以上6以下の整数であり、0<d+e+fを満たし、
およびRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1以上10以下のパーフルオロアルキル基またはフルオロクロロアルキル基であり、
は、COOZ、SOZ、POまたはPOHZ(Zは、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子またはアンモニウム基である。)である。
で表される構造単位を有し、Zの少なくとも一部がアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子またはアンモニウム基であるフッ素系高分子電解質からなる第1のバインダと、ポリ(フッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)ポリマー(以下、「PVdF-HFP」とも称する)からなる第2のバインダとを含む、非水電解質二次電池用電極である。本形態に係る非水電解質二次電池用電極によれば、非水電解質二次電池において、レート特性を向上させることができる。
【0016】
以下、図面を参照しながら、上述した本形態の実施形態を説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の形態のみに制限されない。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20~25℃)、相対湿度40~50%RHの条件で行う。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態である扁平型(積層型)の非双極型(内部並列接続タイプ)二次電池(以下、単に「積層型二次電池」とも称する)を模式的に表した断面図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の積層型二次電池10aは、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素21が、ラミネートフィルム29の内部に封止された構造を有する。ここで、発電要素21は、正極集電体11’の両面に正極活物質層13が配置された正極と、電解液を含有するセパレータからなる電解質層17と、負極集電体12の両面に負極活物質層15が配置された負極とを積層した構成を有している。具体的には、1つの正極活物質層13とこれに隣接する負極活物質層15とが、電解質層17を介して対向するようにして、正極、電解質層および負極がこの順に積層されている。
【0019】
これにより、正極、電解質層および負極は、1つの単電池層19を構成する。したがって、図1に示す積層型二次電池10aは、単電池層19が複数積層されることで、電気的に並列接続されてなる構成を有するともいえる。なお、発電要素21の両最外層に位置する最外層の正極集電体には、いずれも片面のみに正極活物質層13が配置されているが、両面に活物質層が設けられてもよい。すなわち、片面にのみ活物質層を設けた最外層専用の集電体とするのではなく、両面に活物質層がある集電体をそのまま最外層の集電体として用いてもよい。また、図1とは正極および負極の配置を逆にすることで、発電要素21の両最外層に最外層の負極集電体が位置するようにし、該最外層の負極集電体の片面または両面に負極活物質層が配置されるようにしてもよい。
【0020】
正極集電体11’および負極集電体12には、各電極(正極および負極)と導通される正極集電板25および負極集電板27がそれぞれ取り付けられ、ラミネートフィルム29の端部に挟まれるようにしてラミネートフィルム29の外部に導出される構造を有している。正極集電板25および負極集電板27は、それぞれ必要に応じて正極端子リードおよび負極端子リード(図示せず)を介して、各電極の正極集電体11’および負極集電体12に超音波溶接や抵抗溶接等により取り付けられていてもよい。
【0021】
以下、本形態に係る非水電解質二次電池用電極の主要な構成部材について説明する。本形態に係る非水電解質二次電池用電極は、正極活物質と、バインダとを必須に含む電極活物質層を有する。
【0022】
[集電体]
集電体は、後述する正極活物質層や負極活物質層からの電子の移動を媒介する機能を有する。集電体を構成する材料に特に制限はない。集電体の構成材料としては、例えば、金属や、導電性を有する樹脂が採用されうる。
【0023】
具体的には、金属としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス、チタン、銅などが挙げられる。これらのほか、ニッケルとアルミニウムとのクラッド材、銅とアルミニウムとのクラッド材などが用いられてもよい。また、金属表面にアルミニウムが被覆されてなる箔であってもよい。なかでも、電子伝導性や電池作動電位、集電体へのスパッタリングによる負極活物質の密着性等の観点からは、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケルが好ましい。また、後者の導電性を有する樹脂としては、非導電性高分子材料に導電性フィラーが添加された樹脂が挙げられる。
【0024】
なお、集電体は、単独の材料からなる単層構造であってもよいし、あるいは、これらの材料からなる層を適宜組み合わせた積層構造であっても構わない。集電体の軽量化の観点からは、少なくとも導電性を有する樹脂からなる導電性樹脂層を含むことが好ましい。また、単電池層間のリチウムイオンの移動を遮断する観点からは、集電体の一部に金属層を設けてもよい。さらに、後述する正極活物質層や負極活物質層がそれ自体で導電性を有し集電機能を発揮できるのであれば、これらの電極活物質層とは別の部材としての集電体を用いなくともよい。このような形態においては、後述する正極活物質層がそのまま正極を構成し、後述する負極活物質層がそのまま負極を構成することとなる。
【0025】
[電極活物質層]
電極活物質層は、任意に設けられる集電体の表面に形成されてなり、電極活物質およびバインダを必須に含む。電極活物質層は、導電助剤等の他の成分をさらに含んでもよい。本形態に係る電極が正極である場合には、電極活物質は正極活物質であり、本形態に係る電極が負極である場合には、電極活物質は負極活物質である。なお、本明細書において、特記しない限り、正極および負極に共通する事項については「電極」として表記するものとする。
【0026】
(正極活物質)
正極活物質は、充電時にリチウムイオン等のイオンを放出し、放電時にリチウムイオン等のイオンを吸蔵する機能を有する。本形態において、正極活物質の種類は特に制限されないが、より高い容量を有することから、R3mの空間群からなるものであることが好ましい。空間群R3mに帰属される正極活物質は所定の層状構造(層状岩塩型構造)を有する。したがって、このような正極活物質を用いることで、非水電解質二次電池の電池容量を向上させることができる。
【0027】
正極活物質としては、例えば、LiCoO、LiMnO、LiNiO、LiVO、Li(Ni-Mn-Co)O等の層状岩塩型活物質、LiMn、LiNi0.5Mn1.5等のスピネル型活物質、LiFePO、LiMnPO等のオリビン型活物質、LiFeSiO、LiMnSiO等のSi含有活物質等が挙げられる。また上記以外の金属酸化物としては、例えば、LiTi12が挙げられる。これらのなかでも、リチウムとニッケルとを含有する複合酸化物が好ましく用いられ、さらに好ましくはLi(Ni-Mn-Co)Oおよびこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの(以下、単に「NMC複合酸化物」とも称する)が用いられる。NMC複合酸化物は、リチウム原子層と遷移金属(Mn、NiおよびCoが秩序正しく配置)原子層とが酸素原子層を介して交互に積み重なった層状結晶構造を持ち、遷移金属Mの1原子あたり1個のLi原子が含まれ、取り出せるLi量が、スピネル系リチウムマンガン酸化物の2倍、つまり供給能力が2倍になり、高い容量を持つことができる。
【0028】
NMC複合酸化物は、上述したように、遷移金属元素の一部が他の金属元素により置換されている複合酸化物も含む。その場合の他の元素としては、Ti、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、Sr、Cr、Fe、B、Ga、In、Si、Mo、Y、Sn、V、Cu、Ag、Znなどが挙げられ、好ましくは、Ti、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、Sr、Crであり、より好ましくは、Ti、Zr、P、Al、Mg、Crであり、サイクル特性向上の観点から、さらに好ましくは、Ti、Zr、Al、Mg、Crである。
【0029】
NMC複合酸化物は、理論放電容量が高いことから、好ましくは、一般式(1):LiNiMnCo(但し、式中、a、b、c、d、xは、0.98≦a≦1.2、0.6≦b≦0.9、0<c≦0.4、0<d≦0.4、0≦x≦0.3、b+c+d+x=1を満たす。MはTi、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、Sr、Crから選ばれる元素で少なくとも1種類である)で表される組成を有する。ここで、aは、Liの原子比を表し、bは、Niの原子比を表し、cは、Mnの原子比を表し、dは、Coの原子比を表し、xは、Mの原子比を表す。また、本形態に係る非水電解質二次電池用電極において、正極活物質は、上述した一般式(1)において、0.8≦b≦0.9、0<c≦0.2、0<d≦0.2、0≦x≦0.2を満たすNMC複合酸化物(ハイニッケルNMC複合酸化物)であることが特に好ましい。
【0030】
正極活物質の平均粒子径は、高出力化の観点からは、好ましくは1~100μm、より好ましくは1~20μmである。本明細書において、粒子の平均粒子径は、レーザー回折・散乱法の粒度分布測定装置により計測されたメディアン径(D50)を採用するものとする。
【0031】
正極活物質層における正極活物質の含有量は、特に限定されないが、例えば、活物質層の全固形分100質量%に対して、60~99質量%の範囲内であることが好ましく、80~98質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0032】
(負極活物質)
負極活物質は、放電時にリチウムイオン等のイオンを放出し、充電時にリチウムイオン
等のイオンを吸蔵する機能を有する。負極活物質としては、例えば、グラファイト(黒鉛)、ソフトカーボン、ハードカーボン等の炭素材料、リチウム-遷移金属複合酸化物(例えば、LiTi12)、金属材料(スズ、シリコン)、ケイ素含有合金系負極材料(例えば、Si60Sn10Ti30)、リチウム合金系負極材料(例えばリチウム-スズ合金、リチウム-シリコン合金、リチウム-アルミニウム合金、リチウム-アルミニウム-マンガン合金等)などが挙げられる。場合によっては、2種以上の負極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、ケイ素含有合金系負極材料、炭素材料、リチウム-遷移金属複合酸化物、リチウム合金系負極材料が、負極活物質として好ましく用いられる。なお、上記以外の負極活物質が用いられてもよいことは勿論である。
【0033】
負極活物質の平均粒子径(D50)は特に制限されないが、高出力化の観点からは、好ましくは1~100μm、より好ましくは1~20μmである。
【0034】
負極活物質層における負極活物質の含有量は、活物質層の全固形分100質量%に対して、例えば60質量%以上100質量%未満であり、好ましくは80質量%以上99.5%以下であり、より好ましくは95質量%を超えて99.0質量%以下であり、さらに好ましくは97質量%以上98.5質量%以下である。負極活物質の含有量が上記範囲であれば、電池容量と出力特性とを両立させることができる。
【0035】
(バインダ)
バインダは、電極活物質層に含まれる部材を互いに結着することにより、電極活物質層の構造を維持する機能を有する。本形態に係る電極では、電極活物質層が、2種の異なるバインダ(第1のバインダおよび第2のバインダ)を含有する点に特徴がある。なお、本形態に係る電極が用いられる非水電解質二次電池においては、正極活物質層または負極活物質層の少なくとも1つが上記特徴を有していればよい。
【0036】
〈第1のバインダ〉
第1のバインダは、下記化学式1で表される構造単位を有し、Zの少なくとも一部がアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子またはアンモニウム基であるフッ素系高分子電解質からなるものである。ここで、「Zの少なくとも一部」は、フッ素系高分子電解質中のZの10モル%以上であること意味し、50モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましい。
【0037】
【化3】
【0038】
化学式1において、X、XおよびXは、それぞれ独立して、ハロゲン原子または炭素数1以上3以下のパーフルオロアルキル基であり、ハロゲン原子であることが好ましい。aおよびgは、0≦a<1、0<g≦1、a+g=1である。bは0以上8以下の整数である。cは0または1である。d、eおよびfは、それぞれ独立して、0以上6以下の整数である(ただし、0<d+e+fである)。RおよびRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1以上10以下のパーフルオロアルキル基またはフルオロクロロアルキル基であり、炭素数1以上10以下のパーフルオロアルキル基であることが好ましい。Xは、COOZ、SOZ、POまたはPOHZであり、ここでZは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子またはアンモニウム基であり、アルカリ金属であることが好ましく、リチウムであることがより好ましい。前記アンモニウム基は、NH、NH、NH、NHYまたはNY(Y、Y、Y、Yは、アルキル基またはアリール基)である。
【0039】
なかでも、第1のバインダとしてのフッ素系高分子電解質は、テトラフルオロエチレンとパーフルオロ[2-(フルオロスルホニルエトキシ)プロピルビニルエーテル]との共重合体またはそのリチウム化物であることが好ましく、下記化学式2で表される化学構造を有するリチウム化Nafion(Li-Nafion、Nafionは登録商標)であることが特に好ましい。
【0040】
【化4】
【0041】
ここで、第1のバインダとしてのフッ素系高分子電解質(好ましくは上記構造を有するリチウム化Nafion)の重量平均分子量(Mw)は、特に制限されないが、好ましくは1×10~1×10であり、より好ましくは1×10~1×10である。なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)の値としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算の値を採用するものとする。
【0042】
また、第1のバインダとしてのフッ素系高分子電解質(好ましくは上記構造を有するリチウム化Nafion)のEWの値についても特に制限はないが、好ましくは300~2000g/eqであり、より好ましくは600~1500g/eqである。なお、EW(Equivalent Weight)は、プロトン伝導性を有する交換基の当量重量を表している。当量重量は、イオン交換基1当量あたりのイオン交換膜の乾燥重量であり、「g/eq」の単位で表される。
【0043】
第1のバインダとしてのフッ素系高分子電解質については、特許文献1(特開2012-33286号公報)や文献(Jin et al., RSC Advances, 2013, 3, 8889)の記載に基づいて作製することができる。
【0044】
〈第2のバインダ〉
第2のバインダは、ポリ(フッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)ポリマー(PVdF-HFP)である。PVdF-HFPは、フッ化ビニリデンおよびヘキサフルオロプロピレンに由来する構成単位を含む共重合体であれば特に制限されず、必要に応じて第3のコモノマーに由来する構成単位をさらに含んでもよい。PVdF-HFPに含まれるヘキサフルオロプロピレン由来の構成単位の割合は、PVdF-HFPの全構成単位に対して、1モル%以上50モル%以下であることが好ましく、2モル%以上20モル%以下であることがさらに好ましく、3モル%以上10モル%以下であることが特に好ましい。ヘキサフルオロプロピレン由来の構成単位の割合が上記範囲であることにより、電解液への膨潤性、柔軟性が向上しうる。その結果、電極活物質層におけるイオン伝導性や、電子伝導性が向上し、優れた出力特性を発揮することができる(特に、高い放電レートでの放電の際に多くの容量を取り出すことができる)。
【0045】
電極活物質層において、第1のバインダと第2のバインダとの質量比(第1のバインダ:第2のバインダ)は、好ましくは20:80~80:20であり、より好ましくは25:75~75:25であり、さらに好ましくは25:75~65:35であり、特に好ましくは25:75~50:50であり、最も好ましくは25:75~40:60である。当該質量比が上記範囲であると、非水電解質二次電池のレート特性が特に向上しうる。
【0046】
〈他のバインダ〉
第1のバインダおよび第2のバインダを含む電極活物質層は、これらのバインダ以外のバインダ(以下、「他のバインダ」とも称する)を含みうる。ただし、本発明の効果をより一層発揮させる観点からは、第1のバインダおよび第2のバインダを含む電極活物質層における他のバインダの含有量は、バインダの総量に対して、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは3質量%以下であり、特に好ましくは1質量%以下であり、最も好ましくは0質量%である(すなわち、他のバインダを含まない)。他のバインダは、特に制限されず、公知の材料を適宜採用できる。
【0047】
電極活物質層において、バインダの含有量は、電極活物質層の全固形分100質量%に対して、好ましくは3質量%未満であり、より好ましくは2質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下であり、さらにより好ましくは1質量%未満であり、特に好ましくは0.9質量%以下であり、最も好ましくは0.8質量%以下である。バインダは充放電反応に直接寄与しないため、その含有量を上記のように少なくすることにより、非水電解質二次電池のエネルギー密度をより向上させることが可能となる。なお、下限値は電極活物質層の構造を維持できる限りにおいては特に制限されないが、好ましくは0.3質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上である。
【0048】
本形態に係る非水電解質二次電池用電極に含まれるバインダについて、当該バインダを前記電極活物質層における質量割合で含む混合バインダの値として、電解液吸液率(25℃)およびリチウムイオンに対するイオン伝導率(25℃)の値が所定値以上であることが好ましい。具体的に、電解液吸液率の値は、好ましくは15%以上であり、より好ましくは16%以上であり、さらに好ましくは16.5%以上であり、特に好ましくは17%以上であり、最も好ましくは17.1%以上である。電解液吸液率の上限値について特に制限はないが、通常は20%以下である。また、リチウムイオンに対するイオン伝導率の値は、好ましくは0.15mS/cm以上であり、より好ましくは0.18mS/cm以上であり、さらに好ましくは0.20mS/cm以上であり、特に好ましくは0.21mS/cm以上であり、最も好ましくは0.22mS/cm以上である。イオン伝導率の上限値について特に制限はないが、通常は0.30mS/cm以下である。すなわち、本形態に係る非水電解質二次電池用電極の好ましい実施形態では、上記混合バインダについての電解液吸液率が15%以上であり、リチウムイオンに対するイオン伝導率が0.15mS/cmである。なお、電解液吸液率(25℃)およびリチウムイオンに対するイオン伝導率(25℃)の値については、後述する実施例の欄に記載の手法により測定された値を採用するものとする。
【0049】
(導電助剤)
電極活物質層は、導電助剤をさらに含むことが好ましい。導電助剤は、正極活物質層中で電子伝導パス(導電通路)を形成する機能を有する。このような電子伝導パスが正極活物質層中に形成されると、電池の内部抵抗が低減し、高レートでの出力特性が向上しうる。導電助剤としては、アセチレンブラック、カーボンブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、ケッチェンブラック(登録商標)等の粒子状炭素材料、およびカーボンナノチューブ(単層カーボンナノチューブおよび複層カーボンナノチューブ)、カーボンナノファイバー、気相成長炭素繊維、電界紡糸法炭素繊維、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の繊維状炭素材料が挙げられる。導電助剤は、1種のみが単独で使用されてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0050】
電極活物質層に含まれる導電助剤の含有量は、電極活物質層の全固形分100質量%に対して、2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。かような上限値であると、導電助剤同士の凝集が抑制されることにより電子伝導パスが良好に形成されるため、出力特性をより向上することができる。また、非水電解質二次電池のエネルギー密度をより向上させることが可能となる。なお、導電助剤の含有量の下限値は特に制限されないが、0質量%を超え、0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがさらに好ましい。かような下限値であると、電子伝導パスを形成するための十分な導電助剤が存在することから、出力特性をより向上することができる。
【0051】
本形態に係る非水電解質二次電池用電極において、電極活物質層の厚さは特に制限されず、電池についての従来公知の知見が適宜参照されうる。一例を挙げると、電極活物質層の厚さは、通常1~1000μm程度、好ましくは20~800μmであり、より好ましくは30~500μmであり、さらに好ましくは40~200μmである。電極活物質層の厚さが大きいほど、十分な容量(エネルギー密度)を発揮するための電極活物質を保持することが可能となる。一方、電極活物質層の厚さが小さいほど、出力特性が向上しうる(特に、高い放電レートでの放電の際に多くの容量を取り出すことができる)。
【0052】
上述したように、本形態に係る非水電解質二次電池用電極は、電極活物質層に含まれるバインダが第1のバインダおよび第2のバインダを含む点に特徴がある。このような構成とすることにより、本形態に係る電極を有する非水電解質二次電池において、レート特性を向上させることができる(特に、高い放電レートでの放電の際に多くの容量を取り出すことができる)。上記効果が奏される詳細なメカニズムは不明であるが、本発明者らは以下のように推測している。ただし、本発明の技術的範囲は下記メカニズムに何ら制限されない。
【0053】
本発明者らの検討によると、第1のバインダ(フッ素系高分子電解質)と第2のバインダ(PVdF-HFP)とを併用することで、これらを単独で用いる場合や、第1のバインダとPVdFとを併用する場合などと比較して、非水電解質二次電池のレート特性が有意に向上することが判明した。ここで、第1のバインダはポリマー分子内に大量のフッ素原子を含むが、PVdF-HFPもまたPVdFと比較して分子内に多くのフッ素原子を含有する。そして、第1のバインダと第2のバインダとの間でフッ素原子同士が互いに静電力により反発することで、これらのバインダに含まれるフッ素原子がより柔軟に動きやすくなる結果、リチウムイオン等に対するイオン伝導性が向上する。これにより、電極活物質層におけるリチウムイオンの拡散抵抗が低下し、レート特性の大幅な向上が達成されるものと考えられる。
【0054】
本形態に係る非水電解質二次電池用電極は、非水電解質二次電池に適用されることにより、非水電解質二次電池の出力特性を向上することができる。よって、本発明の他の形態によれば、正極活物質層と、電解質層と、負極活物質層と、がこの順に積層されてなる発電要素を備え、前記正極活物質層または前記負極活物質層の少なくとも1つが、上述した本発明の一形態に係る非水電解質二次電池用電極である非水電解質二次電池が提供される。非水電解質二次電池の電極以外の構成要素について、以下に簡単に説明する。
【0055】
[電解質層]
電解質層は、セパレータに電解液(液体電解質)が含浸されてなる構成を有することが好ましい。
【0056】
(電解液)
電解液は、リチウムイオンのキャリヤーとしての機能を有する。電解液は、非水溶媒にリチウム塩が溶解した形態を有する。
【0057】
非水溶媒は、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、プロピオン酸メチル(MP)、酢酸メチル(MA)、ギ酸メチル(MF)、4-メチルジオキソラン(4MeDOL)、ジオキソラン(DOL)、2-メチルテトラヒドロフラン(2MeTHF)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメトキシエタン(DME)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、およびγ-ブチロラクトン(GBL)などが挙げられる。なかでも、非水溶媒は、急速充電特性および出力特性をより向上できるとの観点から、好ましくは鎖状カーボネートであり、より好ましくはジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)およびジメチルカーボネート(DMC)からなる群から選択される少なくとも1種であり、より好ましくはエチルメチルカーボネート(EMC)およびジメチルカーボネート(DMC)から選択される。
【0058】
リチウム塩としては、Li(FSON(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド;LiFSI)、Li(CSON、LiPF、LiPO、LiBF、LiClO、LiAsF、LiCFSO等が挙げられる。なかでも、リチウム塩は、電池出力および充放電サイクル特性の観点から、好ましくはLiPF、LiPO等のフッ化リン酸系のリチウム塩を含む。電解液中におけるリチウム塩の濃度は、0.1~3.0mol/Lであることが好ましく、0.8~2.2mol/Lであることがより好ましい。
【0059】
電解液は、上述した成分以外の添加剤をさらに含有してもよい。かような化合物の具体例としては、例えば、エチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、ジメチルビニレンカーボネート、フェニルビニレンカーボネート、ジフェニルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、ジエチルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、1,2-ジビニルエチレンカーボネート、1-メチル-1-ビニルエチレンカーボネート、1-メチル-2-ビニルエチレンカーボネート、1-エチル-1-ビニルエチレンカーボネート、1-エチル-2-ビニルエチレンカーボネート、ビニルビニレンカーボネート、アリルエチレンカーボネート、ビニルオキシメチルエチレンカーボネート、アリルオキシメチルエチレンカーボネート、アクリルオキシメチルエチレンカーボネート、メタクリルオキシメチルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネート、プロパルギルエチレンカーボネート、エチニルオキシメチルエチレンカーボネート、プロパルギルオキシエチレンカーボネート、メチレンエチレンカーボネート、1,1-ジメチル-2-メチレンエチレンカーボネートなどが挙げられる。これらの添加剤は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。また、添加剤を電解液に使用する場合の使用量は、適宜調整することができる。
【0060】
(セパレータ)
電解質層を構成するセパレータは、電解質を保持して正極と負極との間のリチウムイオン伝導性を確保する機能、および正極と負極との間の隔壁としての機能を有する。セパレータの形態としては、例えば、上記電解液を吸収保持するポリマーや繊維からなる多孔性シートのセパレータや不織布セパレータ等を挙げることができる。
【0061】
[正極集電板および負極集電板]
集電板(25、27)を構成する材料は、特に制限されず、リチウムイオン二次電池用の集電板として従来用いられている公知の高導電性材料が用いられうる。集電板の構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金等の金属材料が好ましい。軽量、耐食性、高導電性の観点から、より好ましくはアルミニウム、銅であり、特に好ましくはアルミニウムである。なお、正極集電板25と負極集電板27とでは、同一の材料が用いられてもよいし、異なる材料が用いられてもよい。
【0062】
[正極リードおよび負極リード]
また、図示は省略するが、集電体11と集電板(25、27)との間を正極リードや負極リードを介して電気的に接続してもよい。正極および負極リードの構成材料としては、公知のリチウムイオン二次電池において用いられる材料が同様に採用されうる。なお、外装体から取り出された部分は、周辺機器や配線などに接触して漏電したりして製品(例えば、自動車部品、特に電子機器等)に影響を与えないように、耐熱絶縁性の熱収縮チューブなどにより被覆することが好ましい。
【0063】
[電池外装体]
電池外装体としては、公知の金属缶ケースを用いることができるほか、図1に示すように発電要素を覆うことができる、アルミニウムを含むラミネートフィルム29を用いた袋状のケースが用いられうる。該ラミネートフィルムには、例えば、PP、アルミニウム、ナイロンをこの順に積層してなる3層構造のラミネートフィルム等を用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。高出力化や冷却性能に優れ、EV、HEV用の大型機器用電池に好適に利用することができるという観点から、ラミネートフィルムが望ましい。また、外部から掛かる発電要素への群圧を容易に調整することができ、所望の電解液層厚みへと調整容易であることから、外装体はアルミネートラミネートがより好ましい。
【0064】
本形態に係る非水電解質二次電池は、優れた出力特性を発揮することができる。したがって、本形態に係る非水電解質二次電池は、EV、HEVの駆動用電源として好適に使用される。
【0065】
なお、以下の実施形態も本発明の範囲に含まれる:請求項2の特徴を有する請求項1に記載の非水電解質二次電池用電極;請求項3の特徴を有する請求項1または2に記載の非水電解質二次電池用電極;請求項4の特徴を有する請求項1~3のいずれかに記載の非水電解質二次電池用電極;請求項5の特徴を有する請求項1~4のいずれかに記載の非水電解質二次電池用電極;請求項6の特徴を有する請求項1~5のいずれかに記載の非水電解質二次電池用電極;請求項1~6のいずれかに記載の非水電解質二次電池用電極を含む、請求項7に記載の非水電解質二次電池;請求項8の特徴を有する請求項7に記載の非水電解質二次電池。
【実施例0066】
以下、実施例および比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明が以下の実施例のみに限定されるわけではない。
【0067】
[実施例1]
<正極の作製>
正極活物質としてのNMC複合酸化物(Ecopro社製、LiNi0.8Mn0.1Co0.1、NMC811、平均粒子径10.2μm)95質量部と、導電助剤としてのアセチレンブラック(AB)(デンカ株式会社製、デンカブラック(登録商標);平均粒子径(一次粒子径):0.023μm)3質量部とからなる粉体組成物を、遊星撹拌型混合混練装置「あわとり練太郎」(ARE-310、株式会社シンキー製)を用いて2000rpmで1分間混合した。次いで、スラリー粘度調整溶媒であるN-メチル-2-ピロリドン(NMP)の適量を上記粉体組成物に添加し、同装置を用いて2000rpmで2分間混合した。その後、Li-Nafion(Ion Power社製LiTHion、EW:1100、Mw:2.3×10、イソプロパノールに分散されたもの)を固形分換算で0.5質量部、およびPVdF-HFP(Arkema製、Kyner Flex 2851)を固形分換算で1.5質量部さらに添加し、同装置を用いて2000rpmで4分間混合して、正極スラリーを作製した。平滑盤上に設置したアルミニウム箔(厚さ20μm)の上に、正極活物質層の質量(目付量)が10mg/cmとなるように、上記で得られた正極スラリーを、ドクターブレードを用いて均一に塗布し、80℃のホットプレート上で1時間乾燥させた。次いで、得られた積層体を、ロールプレス機を用いてプレスした。その後、得られた積層体を真空乾燥機に入れ、真空条件下、130℃にて8時間乾燥させて、本実施例の正極を作製した。なお、得られた正極における正極活物質層の空孔率は25%であり、厚さは31μmであった。
【0068】
<リチウムイオン二次電池(コインセル)の作製>
上記で作製した正極と対極Liとを対向させ、この間にセパレータ(ポリプロピレン製、厚さ:20μm)を2枚配置した。次いで、正極、セパレータおよび対極(Li金属)の積層体をコインセル(CR2032、材質:ステンレス鋼(SUS316))の底部側に配置した。さらに、電極同士の絶縁性を保つためガスケットを装着し、電解液をシリンジにより注入し、スプリングおよびスペーサを積層し、コインセルの上部側を重ねあわせ、かしめることにより密閉して、本実施例のリチウムイオン二次電池(コインセル)を作製した。なお、上記電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)との混合溶媒(体積比3:7)にLiPF 1mol/Lを溶解させて得られた電解液を用いた。
【0069】
[実施例2]
Li-Nafionの配合量を固形分換算で1質量部とし、PVdF-HFPの配合量を固形分換算で1質量部としたこと以外は、上述した実施例1と同じ方法により、本実施例のリチウムイオン二次電池(コインセル)を作製した。
【0070】
[実施例3]
Li-Nafionの配合量を固形分換算で1.5質量部とし、PVdF-HFPの配合量を固形分換算で0.5質量部としたこと以外は、上述した実施例1と同じ方法により、本実施例のリチウムイオン二次電池(コインセル)を作製した。
【0071】
[比較例1]
Li-Nafionを配合せず、PVdF-HFPの配合量を固形分換算で2質量部としたこと以外は、上述した実施例1と同じ方法により、本比較例のリチウムイオン二次電池(コインセル)を作製した。
【0072】
[比較例2]
Li-Nafionの配合量を固形分換算で2質量部とし、PVdF-HFPを配合しなかったこと以外は、上述した実施例1と同じ方法により、本比較例のリチウムイオン二次電池(コインセル)を作製した。
【0073】
[比較例3]
PVdF-HFPをポリフッ化ビニリデン(PVdF)(クレハKFポリマーW#9700、クレハ製)に変更したこと以外は、上述した実施例2と同じ方法により、本比較例のリチウムイオン二次電池(コインセル)を作製した。
【0074】
[比較例4]
Li-Nafionを配合せず、PVdFの配合量を固形分換算で2質量部としたこと以外は、上述した比較例3と同じ方法により、本比較例のリチウムイオン二次電池(コインセル)を作製した。
【0075】
[バインダの電解液吸液率の測定]
バインダの電解液吸液率の値は、電解液への浸漬前および浸漬後のバインダの重量を測定して、以下の式により算出した:
電解液吸液率(%)=[(電解液浸漬後のバインダの重量-電解液浸漬前のバインダの重量)/電解液浸漬前のバインダの重量]×100。
【0076】
測定用試料としては、各実験例において用いたバインダを各実験例の配合割合でN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に溶解し、得られた溶液を支持体上にキャストした後にNMPを除去して、キャスト膜を作製した。キャスト膜の電解液への浸漬は、25℃にて24時間行った。また、電解液吸液率を求めるための電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)との混合溶媒(体積比3:7)にLiPF 1mol/Lを溶解させて得られた電解液を用いた。結果を下記の表1に示す。
【0077】
[バインダのリチウムイオンに対するイオン伝導率の測定]
まず、上述した電解液吸液率の測定と同じ方法により、バインダのキャスト膜に電解液を吸液させた。次いで、電解液を吸液したキャスト膜を2枚のステンレス板で挟んだ積層体に対して交流インピーダンス測定を行った。この交流インピーダンス測定の結果から、バインダのリチウムイオンに対するイオン伝導率の値を算出した。なお、交流インピーダンス測定の際の測定周波数は500kHz~1Hzとし、印加電圧は10mVとし、温度は25℃とした。結果を下記の表1に示す。
【0078】
[レート特性の評価]
レート特性の評価は、25℃に設定した恒温槽(ARSF-0250-10、エスペック株式会社製)の内部に上記で作製したリチウムイオン二次電池(コインセル)を設置して実施した。具体的には、まず、低レート時の容量確認として、CCCVモード(カットオフ電圧4.3V)で0.1Cで定電流充電を行った。カットオフ電圧に達した後は定電圧放電(カットオフ電流0.01C)を行った。次いで、CCモードで0.1Cの放電レートでセル電圧2.5Vまで定電流放電を行った。本条件で、充放電評価を2回行い、この際に2回目に得られた放電容量を基準容量とした。次に、CCCVモードにて、0.1Cにて4.3Vまで充電した後(カットオフ電流0.01C)、3Cの放電レートにて、セル電圧2.5Vになるまで放電処理を行った。この際に得られた3Cにおける充電容量を実効容量とし、基準容量に対する実効容量の百分率を実効容量比[%]として算出した。結果を下記の表1に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
表1に示す結果から、第1のバインダ(Li-Nafion)と第2のバインダ(PVdF-HFP)とを併用している本発明に係る非水電解質二次電池用電極によれば、レート特性を向上させることができることがわかる。これに対し、第1のバインダと第2のバインダの少なくとも一方を用いていない比較例1~4では、十分なレート特性が達成できていないことがわかる。
【符号の説明】
【0081】
10a 積層型二次電池、
11’ 正極集電体
12 負極集電体
13 正極活物質層、
15 負極活物質層、
17 電解質層、
19 単電池層、
21 発電要素、
25 正極集電板(正極タブ)、
27 負極集電板(負極タブ)、
29 ラミネートフィルム。
図1